JP6319383B2 - 伸びフランジ成形部品の製造方法 - Google Patents
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Description
絞り成形は、通常、パンチ、ダイ、およびブランクホルダーからなる金型を用いて行われ、金属板の周囲をダイとブランクホルダーで押さえた状態で、パンチとダイの間の距離を近づけて金属板に絞り加工を施す方法である。また、曲げ成形は、通常、パンチ、パッドおよびダイからなる金型を用いて行われ、金属板をパンチとパッドで挟んだ状態で、ダイを相対移動させることによって曲げ加工を施す方法である。
これに対し、特許文献1に記載の技術がある。この特許文献1に記載の技術は、L字形状を有する部品をプレス成形するに際し、金属素材の一部を、ダイ金型における天板部に対応する部位上でスライドさせながら縦壁部及びフランジ部を成形するというものである。
また、絞り成形は成形荷重が高くなるため、980MPa以上の超ハイテン材の素材を絞り成形だけで製造しようとすると場合、プレス機の荷重不足が問題となるおそれがある。
以上のことから、本発明の態様によれば、仮に強度レベル980MPa級以上の超ハイテン材から伸びフランジ成形を伴って伸びフランジ成形部品を製造する場合であっても、伸びフランジワレを抑制しつつ低い成形荷重で製造することが可能となる。
また、成形材料となるプレス成形前の素板(ブランク材)は、通常、打ち抜き加工やレーザー加工で形成されるため、材料端面にはバリや微小なキズなどが残留しており、変形を加えたときに局所的な応力集中が発生しやすい状態になっている。そのため、材料端面には成形途中で伸びフランジワレと称する亀裂が発生し、超ハイテン材(強度レベルが980MPa級以上の高強度鋼板)の場合、その亀裂が急速に伝播して大きなワレが発生しやすい。
このため、本発明の態様では、第2工程後にフランジ部の外側部位をトリミングして、フランジ部の外周縁を成形し、それに併せて、上記伸びフランジ割れを抑制するために設けた屈曲形状部を除去している。
本実施形態では、980MPa級以上の超ハイテン材をプレス成形前の素板(ブランク材)として用いて、伸びフランジ成形部となる部位を有する伸びフランジ成形部品を製造する場合を例に挙げて説明する。本発明の製造方法は、強度が980MPa以下の金属板からなる素材であっても適用可能である。
また、以下においては、伸びフランジ成形部品における伸びフランジ成形部となる部位を含む部分に着目して説明するものとし、各図においては当該部分のみを図示しており、当該部分を「伸びフランジ成形部1」という。なお、金型においても当該部位を成形する部位のみを図示している。他の部位も同時に成形しても良いことは勿論である。
第1工程では、プレス成形前の平板状の素板(ブランク材)に対し、ダイとパンチによるプレス成形によって、天板部3の第1凹状外周縁部3aを形成すると共にその第1凹状外周縁部3aに沿って縦壁部5の一部5Aを形成し、同時に、フランジ部7となる位置の外周部位に屈曲形状部8を形成することで、図2に示すような屈曲形状部付き中間部品を製造する工程である。
第2工程では、残りの縦壁部5の部分とフランジ部7を曲げ成形して、第2の中間部品とする工程である。
第3工程では、第2の中間部品から屈曲形状部8をトリミングして、すなわち、フランジ部7の外周縁を成形して、上記の伸びフランジ成形部品とする工程である。
以下、各工程について詳細に説明する。
第1工程は、第1凹状外周縁部3a及びその第1凹状外周縁部3aに連続する縦壁部5の一部5Aをプレス成形(曲げ成形)で形成すると同時、図2に示すように、フランジ部7となる位置より外周位置に屈曲形状部8を形成する。その屈曲形状部8は、第2凹状外周縁部7aに沿って稜線9が延在し且つ板厚方向に屈曲した屈曲形状部8を形成する。本実施形態の屈曲形状部8は、例えば板厚方向に屈曲したステップ状の段部形状からなる。
第1工程で用いる金型の例について、図3を参照して説明する。
第1工程で使用する第1工程用の金型は、図3に示すような、上型を構成するダイ13と、下型を構成するパンチ11を有する。
パンチ11は、パンチ本体部20とパンチ本体部20に連続するフランジ形成部21とを有する。パンチ本体部20の上面20aは、ブランク材10の天板部3となる位置に当接する部分である。そのパンチ本体部20の上面20aに対しフランジ形成部21の上面21aが下方にオフセットしていて、パンチ本体部20とフランジ形成部21との境界部に段差が形成されている。その境界部の角部であるパンチ肩部20bが、第1凹状外周縁部3aの輪郭形状と同じ形状で延在している。またパンチ本体部20の上面20aとフランジ形成部21の上面21aとのオフセット量が、形成する縦壁部5の一部5Aの高さと同じ量に設定されている。
これによって、パンチ11の上面には、フランジ形成部21の位置に対し、第1凹状外周縁部3aと同様な形状で延びる凹部が形成される。
これによって、ダイ13の下面には、ダイ本体部22位置に対して、第1凹状外周縁部3aと同様な形状で延びる凸部が形成される。
図3に示すように、ブランク材10を、天板部3となる位置の外周部が、すなわち第1凹状外周縁部3aとなる位置がパンチ本体部20及びダイ本体部22の肩部20b、22bと板厚方向で対向するように、パンチ11とダイ13との間に配置した後に、相対的にダイ13をパンチ11に接近させて、ブランク材10をダイとパンチ11とで挟み込んでプレス形成する。
すなわち、フランジ形成部21の段部21bとダイ本体部22の段部22cとが係合するようにブランク材10を挟み込むことで、段部21b、22cで挟まれたブランク材10の部分が板厚方向へ段状に屈曲して、図4に示すような屈曲形状部8が形成される。
図2では、第2凹状外周縁部7aに沿って該第2凹状外周縁部7a若しくは第1凹状外周縁部3aと平行若しくは略平行に稜線9が延びるように、屈曲形状部8が形成された場合を例示している。しかし、屈曲形状部8は、第2凹状外周縁部7a若しくは第1凹状外周縁部3aと平行若しくは略平行に稜線9が延在していなくても良い。また、屈曲形状部8は、第2凹状外周縁部7aに沿って断続的に形成されていても良い。また、屈曲形状部8は、第2凹状外周縁部7aの全周に沿って稜線9が延びるように形成されていなくても良い。第1凹状外周縁部3aのうち、湾曲の曲率が大きい、つまり成形解析などで伸びフランジ割れが発生すると予想される箇所及びそれに続く近辺だけに沿って稜線9が延在するように屈曲形状部8を形成しても良い。
また、パンチ本体部20の肩部20bに対しダイ本体部22の肩部22bが接近してブランク材10を挟み込むことで、天板部3の第1凹状外周縁部3aが形成されると共に、その第1凹状外周縁部3aに沿って該第1凹状外周縁部3aに連続する縦壁部5の一部5Aが形成される。
第2工程は、第1工程で成形した、図2に示すような屈曲形状部8を付与した屈曲形状部付き中間部品を、第2の中間部品に曲げ成形する工程である。
この第2工程では、第1工程で形成した屈曲形状部付き中間部品の天板部3を、パンチ30とパッド31で挟んだ状態で、ダイ32をパンチ30に沿って相対移動させることで、残りの縦壁部5を曲げ成形すると共に、フランジ部7を天板部3側に屈曲するように曲げ成形する。
第2工程で用いる第2工程用金型について、図6を参照して説明する。
ここで、以下の説明では屈曲形状部8が上側に突出するように屈曲成形されている場合で説明する。
第2工程用金型は、図6に示すように、下型を構成するパンチ30と、上型を構成するダイ32、及び屈曲形状部付き中間部品における天板部3に相当する部位を挟圧するパッド31とを有している。
パンチ30は、天板部挟圧用の立上り部30Aと、パンチ延長部30Bとを有する。パンチ延長部30Bは、立上り部30Aとは別体になっていても良い。天板部挟圧用の立上り部30Aが第1のパンチとなり、パンチ延長部30Bが第2のパンチを構成する。そのパンチ延長部30Bは、立上り部30Aの下端部分に連続してブランク材の少なくともフランジ部7の形成位置に下側から対向可能なフランジ対向面30aを有する。
また、立上り部30Aの側面30bは、第1凹状外周縁部3aと同じ曲率の湾曲面が形成されており、伸びフランジ成形部における縦壁部5を成形する形状になっている。即ち、立上り部30Aの側面の高さは、縦壁部5と同じ高さに設定されている。
パッド31は、パンチ30における立上り部30Aの上面に対して離接可能に設けられており、屈曲形状部付き中間部品における天板部3に相当する部位を、パンチ30の立上り部30A上面と協働して挟圧可能となっている。即ち、パッド31は、下面が天板部3の第1凹状外周縁部3aに沿った形状を有して、天板部3における少なくとも第1凹状外周縁部3a側に沿った部分を、パンチ30と一緒に挟み込み可能となっている。
ダイ32のパンチ側側面は、立上り部30Aの側面30bと協働して縦壁部5を成形する湾曲面になっている。そのダイ32のパンチ側側面は、その上部側面には外方(パンチ30側)に張り出した張出部32aが形成され、その張出部32aがパンチ30の上面に、素材を介して当接することで、それ以上、ダイ32が下方に移動することが規制される。すなわち、その規制位置が、ダイ32を下降させたときの成形下死点の位置となる。また、その張出部32aから下端位置までのダイ側面の高さが、縦壁部5の高さに設定されている。
このように設定することで、ダイ32の逃がし部32dによりできる空隙(凹部)内に屈曲形状部8が配置される結果、屈曲形状部8が、第2工程の曲げ成形中に拘束、狭圧されることがない。このように、曲げ成形中に屈曲形状部8を含む部位が拘束されず自由に変形することで、フランジ部について、特定の部位に応力集中することが低減し、ワレの発生をより防止することができる。
以上のように構成された第2工程用金型を用いた第2工程について、第2工程用金型の動作を、図7を参照して説明する。
図7(a)は、パンチ30とパッド31で屈曲形状部付き中間部品の天板部3を狭圧した状態を、図7(b)はダイ32を相対的にプレス成形下死点まで移動させたときの状態を示している。
この状態で、図7(b)の位置まで、ダイ32をパンチ30の側面に沿って、フランジ対向面30aに向けて相対移動させることで、縦壁部5及びフランジ部7を曲げ成形する。
また、上記で規定した屈曲形状部8を第1工程において、少なくとも伸び成形されるフランジ部の湾曲部近傍に成形することで、第2凹状外周縁部7aとなる部分が第2工程時に伸びフランジ変形を受けた場合でも、屈曲形状部8の形状剛性によりひずみが分散し易く、第2凹状外周縁部7aとなる部分にひずみが集中することを防ぐことができる。
このように、第2凹状外周縁部7aとなる部分に作用する引張応力を均一化することで、屈曲形状部8の外側の端面に対しても均一化された応力が作用することになり、端面にバリや微小なキズなどが残留していても応力集中が緩和して、この点においてもワレ抑制効果を奏することができる。
以上のようにして、ワレが発生することなく第2の中間部品が成形される。
ここで、屈曲形状部8が上方に突出する場合で説明したが、屈曲形状部8が下方に突出する場合には、パンチ30のパンチ延長部30B側に屈曲形状部を逃がす凹部形状を形成しても良い。又、パンチ30のパンチ延長部30Bとダイ32の対向する両方の面に屈曲形状部を逃がすための凹部形状を形成しても良い。
第3工程では、第2の中間部品のフランジ部7の外側の部位をトリミングして、第2凹状外周縁部7aを形成する。これによって、伸びフランジ成形部を含む伸びフランジ成形部品が製造される。このトリミングされる部位には、屈曲形状部8が含まれる。
以上のように、本実施形態においては、第1工程で第1凹状外周縁部3aと該第1凹状外周縁部3aに連続する縦壁部5の一部5Aとをプレス成形すると共に屈曲形状部8を形成し、第2工程で、その屈曲形状部付き中間部品を第2の中間部品に曲げ成形し、第3工程で第2の中間部品のフランジ部7の外側の部位をトリミングするので、プレス成形前の素板として980MPa級以上の超ハイテン材を用いた場合であっても、ワレを抑制でき、良好に伸びフランジ成形部を含む伸びフランジ成形部品を製造することができる。
(1)ブランク材を、第1凹状外周縁部3aに沿って縦壁部5の一部5Aをプレス成形(曲げ成形)すると同時に、フランジ部7よりも外側位置に第2凹状外周縁部7aに沿って稜線9が延び且つ板厚方向に屈曲した屈曲形状部8を形成する第1工程と、第1工程後に、天板部3となる位置を固定して上記縦壁部5と上記フランジ部7を曲げ成形する第2工程と、を備える。
以上のことから、本実施形態によれば、仮に強度レベル980MPa級以上の超ハイテン材から伸びフランジ成形を伴って伸びフランジ成形部品を製造する場合であっても、伸びフランジワレを抑制しつつ低い成形荷重で製造することが可能となる。
予め、プレス成形前の素板(ブランク材)に対し、打ち抜き加工やレーザー加工でトリミングすると、材料端面にはバリや微小なキズなどが残留しており、変形を加えたときに局所的な応力集中が発生しやすい状態になっている。そのため、材料端面には成形途中で伸びフランジワレと称する亀裂が発生し、超ハイテン材(強度レベルが980MPa級以上の高強度鋼板)の場合、その亀裂が急速に伝播して大きなワレが発生しやすい。
これに対し、第2工程後にフランジ部7の外側部位をトリミングして、フランジ部7の外周縁を成形することで、更にフランジ部7の端面に伸びフランジワレが生じ難くなる。
この範囲に抑えることで、仮に強度レベル980MPa級以上の超ハイテン材を使用したとしても、伸びフランジ割れをより確実に抑えることが可能となる。
(4)また、第2工程用の金型に、屈曲形状部8を逃がす逃がし部32dを設ける。
この構成によれば、屈曲形状部8を含む部位が、成形中に、第2工程用の金型で拘束されていないため3次元的に自由に変形する(移動する又は逃げる)ことができ、この点でも成形途中の部品の端面に集中して作用する引張応力をより緩和することができる。
この範囲に屈曲形状部8の高さを規定することで、仮に強度レベル980MPa級以上の超ハイテン材を使用したとしても、伸びフランジ割れをより確実に抑えることが可能となる。
980MPa級冷延鋼板(板厚1.6mm)をブランク材として用いて、図7に示すAピラーと同形状の部品を製造するに際して、上記実施形態で示した第1工程、第2工程、第3工程を経る3段階の製造方法によって本発明例1の成形品を製造した。
すなわち、加工工程は、上記のように第1工程で縦壁部5の一部5A(高さ30mm)を形成すると同時に屈曲形状部8を形成した。次に第2工程で、残りの縦壁部5及びフランジ部7を曲げ成形した。その後、第3工程として、フランジ部7の外側の部位をトリミングして、本発明例1の成形品とした。なお、縦壁部の高さを100mmとした。
本発明例1の成形品と比較例1の成形品の伸びフランジ部品を比較した。その評価結果は、本発明例1では、湾曲部のフランジ部において、全くワレが発生しなかったのに対して、比較例1では図8に示す部位にワレが発生していた。
以上のように、Aピラーを製造するに際して、本発明例1の比較例1に対する優位性を明らかにできた。
1180MPa級冷延鋼板(板厚1.6mm)をブランク材として用いて、図8に示すセンターピラーと同形状の部品を製造するに際して、上記実施形態で示した第1工程、第2工程、第3工程を経る3段階の製造方法によって本発明例2の成形品を製造した。
すなわち、加工工程は、上記のように第1工程で縦壁部5の一部5A(高さ30mm)を形成すると同時に屈曲形状部8を形成した。次に第2工程で、残りの縦壁部5及びフランジ部7を曲げ成形した。その後、第3工程として、フランジ部7の外側の部位をトリミングして、本発明例2の成形品とした。なお、縦壁部の高さを100mmとした。
本発明例2の成形品と比較例2の成形品の伸びフランジ部品を比較した。その評価結果は、本発明例2では、湾曲部のフランジ部において、全くワレが発生しなかったのに対して、比較例2では図9に示す部位にワレが発生していた。
以上のように、センターピラーを製造するに際して、本発明例2の比較例2に対する優位性を明らかにできた。
3 天板部
3a 第1凹状外周縁部
5 縦壁部
5A 縦壁部の一部
7 フランジ部
7a 第2凹状外周縁部
8 屈曲形状部
9 稜線
10 ブランク材
11 パンチ
13 ダイ
20 パンチ本体部
21 フランジ形成部
21b 段部
22 ダイ本体部
22c 段部
23 パッド部
30 パンチ
30A 天板部挟圧用の立上り部(第1のパンチ)
30B パンチ延長部(第2のパンチ)
31 パッド
32 ダイ
32d 逃がし部
Claims (2)
- 外周縁の一部が内方に凹むように湾曲した凹状外周縁部を有する天板部と、その天板部の上記凹状外周縁部に連続する縦壁部と、その縦壁部に連続して上記天板部側に屈曲するフランジ部とを備える伸びフランジ成形部品を製造する伸びフランジ成形部品の製造方法であって、
ブランク材を、ダイとパンチでプレス成形することで、上記凹状外周縁部に沿って上記縦壁部の一部を成形すると共に、上記フランジ部となる位置よりも外側に上記フランジ部の外周縁部となる位置に沿って稜線が延在し且つ板厚方向に屈曲した屈曲形状部を形成する第1工程と、
上記第1工程後に、上記天板部となる位置を固定して上記縦壁部と上記フランジ部を曲げ成形する第2工程と、
上記第2工程後に、上記フランジ部の外側の部位をトリミングする第3工程と、
を備えることを特徴とする伸びフランジ成形部品の製造方法。 - 上記第2工程は、上記天板部となる位置を第2工程用のパンチとパッドで挟持して固定し、第2工程用のダイで上記縦壁部と上記フランジ部を曲げ成形し、且つ、ブランク材を挟んで上記ダイと対向する面を有する第2のパンチを備え、
上記第2工程用のダイ及び第2のパンチの上記ブランク材と対向する面であって、少なくとも上記屈曲形状部の屈曲による当該屈曲形状部の突出側の面には、上記屈曲形状部との接触を回避可能な凹状の逃がし部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載した伸びフランジ成形部品の製造方法。
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