以下、本発明に係る建設機械の実施の形態について、昇降式キャブを備えた油圧ショベルを例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図中、建設機械の代表例である油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とにより車体が構成されている。ここで、上部旋回体3の前部左側には、後述する昇降式のキャブ29が設けられ、このキャブ29は、図4に示す下降位置と図5に示す上昇位置との間で昇降する構成となっている。
上部旋回体3の前側には、ブーム4A、アーム4B、バケット4C等を含んで構成された作業装置4が俯仰動可能に設けられている。この作業装置4は、例えば建築用廃材、鉄屑等のスクラップをトラックの荷台に対して積上げ、積下ろしするスクラップ作業等を行うものである。
上部旋回体3は、下部走行体2上に旋回装置を介して旋回可能に設けられている。上部旋回体3は、支持構造体をなす車体フレームとしての旋回フレーム5と、旋回フレーム5の後端に設けられ作業装置4との重量バランスをとるカウンタウエイト6と、カウンタウエイト6よりも前側に位置して旋回フレーム5上に搭載されたエンジン、熱交換装置等の搭載機器(図示せず)と、この搭載機器を覆う外装カバー7と、後述する左,右の後支柱8,9、左,右の前支柱10,11、後ガイド部材12、左前ガイド部材22、右前ガイド部材25、昇降支持台27、昇降シリンダ28、キャブ29等を含んで構成されている。
旋回フレーム5は上部旋回体3のベースとなるもので、旋回フレーム5の前部左側には、昇降支持台27を介して上,下方向に昇降可能となったキャブ29が配置されている。旋回フレーム5上には、キャブ29の後側に位置する左後支柱8および右後支柱9と、キャブ29の前側に位置する左前支柱10および右前支柱11との合計4本の支柱が立設されている。また、図4および図5に示すように、旋回フレーム5には、左,右の後支柱8,9の後側に位置して上,下方向に延びる左,右のフレーム側ブラケット5A(左側のみ図示)が立設され、これら各フレーム側ブラケット5Aには、後述するケーブル・ホース案内部材30が取付けられる。
左後支柱8は、キャブ29の左後側に位置し、右後支柱9に対して左,右方向に間隔をもって配置されている。左後支柱8は、前面8A、後面8B、左側面8C、右側面8Dを有する正方形の断面形状を有する角筒体からなり、下端が旋回フレーム5に固定された状態で上,下方向に延びている。左後支柱8の前面8A、後面8B、左側面8C、右側面8Dの4面には、それぞれ薄板状の表面板8Eが固着されている。
この場合、図12に示すように、油圧ショベル1をトレーラ100に積載して公道を輸送する場合に、路面から高さ制限位置までの距離をH0とし、路面から左後支柱8の上端8Fまでの距離をH1とすると、距離H1は距離H0よりも小さく(H1<H0)設定されている。このように、左後支柱8の上端8Fは、輸送時の高さ制限よりも低い位置に配置されている。これにより、油圧ショベル1をトレーラ100に積載して輸送するときに、左,右の後支柱8,9を分解する煩雑な作業を不要にできる構成となっている。ここで、輸送高さ制限とは、輸送車両に荷物を積載して公道を走行するときに、道路関連法令、その他の法令によって定められた高さである。
右後支柱9は、キャブ29の右後側に位置し、左後支柱8に対して左,右方向に間隔をもって配置されている。右後支柱9は、左後支柱8と同様な角筒体からなり、下端が旋回フレーム5に固定された状態で上,下方向に延びている。右後支柱9の前面9A、後面9B、左側面9C、右側面9Dの4面には、それぞれ表面板9Eが固着されている。ここで、右後支柱9の上端9Fは、左後支柱8の上端8Fと同じ高さ位置、即ち、輸送時の高さ制限よりも低い位置に配置されている。
左前支柱10は、キャブ29の左前側に位置し、左後支柱8に対して前,後方向に間隔をもって、かつ右前支柱11に対して左,右方向に間隔をもって配置されている。左前支柱10は、左,右の後支柱8,9よりも上,下方向の長さが小さい角筒体からなり、下端が旋回フレーム5に固定された状態で上,下方向に延びている。左前支柱10の前,後、左,右の4面には、それぞれ薄板状の表面板10Aが固着されている。
右前支柱11は、キャブ29の右前側に位置し、右後支柱9に対して前,後方向に間隔をもって、かつ左前支柱10に対して左,右方向に間隔をもって配置されている。右前支柱11は、左前支柱10と同様な角筒体からなり、下端が旋回フレーム5に固定された状態で上,下方向に延びている。右前支柱11の前,後、左,右の4面にはそれぞれ表面板11Aが固着されている。
後ガイド部材12は、左後支柱8および右後支柱9に係合して設けられ、これら左,右の後支柱8,9に沿って上,下方向に昇降するものである。ここで、後ガイド部材12は、後述の後ガイド筒13と、この後ガイド筒13に設けられた複数の上側摺動部材16および下側摺動部材20とを含んで構成されている。
後ガイド筒13は、図3に示すように、全体としてキャブ29の後側を左,右方向に延びる矩形の枠状に形成され、後述する昇降支持台27の後端に固定されている。後ガイド筒13は、左,右方向に延びる長方形の板体からなり左端側が左後支柱8の前面8Aに対面すると共に右端側が右後支柱9の前面9Aと対面する前面板13Aと、左,右方向に延びる長方形の板体からなり、左端側が左後支柱8の後面8Bに対面すると共に右端側が右後支柱9の後面9Bと対面する後面板13Bと、左後支柱8の左側面8Cと左,右方向で対面した状態で前面板13Aと後面板13Bとの間を連結し、後ガイド筒13の外側(左側面)に配置された左外板13Cと、右後支柱9の右側面9Dと左,右方向で対面した状態で前面板13Aと後面板13Bとの間を連結し、後ガイド筒13の外側(右側面)に配置された右外板13Dとによって囲まれている。
さらに、後ガイド筒13内には、左後支柱8の右側面8Dと左,右方向で対面した状態で前面板13Aと後面板13Bとの間を連結する左内板13Eと、右後支柱9の左側面9Cと左,右方向で対面した状態で前面板13Aと後面板13Bとの間を連結する右内板13Fとが設けられている。これにより、後ガイド筒13は、前面板13A、後面板13B、左外板13C、左内板13Eによって左後支柱8を取囲む断面四角形の左後ガイド筒部14と、前面板13A、後面板13B、右外板13D、右内板13Fによって右後支柱9を取囲む断面四角形の右後ガイド筒部15とを有している。
後ガイド筒13の前面板13A、後面板13B、左外板13C、左内板13Eのうち左後支柱8と対面する上部位置には、後述する上側摺動部材16を取付けるための矩形の上部角孔13Gがそれぞれ1個ずつ(合計4個)形成されている(図9参照)。一方、後ガイド筒13の前面板13A、後面板13B、左外板13C、左内板13Eのうち左後支柱8と対面する下部位置には、後述する下側摺動部材20を取付けるための矩形の下部角孔(図示せず)がそれぞれ1個ずつ形成されている。
これと同様に、後ガイド筒13の前面板13A、後面板13B、右外板13D、右内板13Fのうち右後支柱9と対面する上部位置と下部位置とには、上側摺動部材16を取付けるための上部角孔(図示せず)と、下側摺動部材20を取付けるための下部角孔(図示せず)とが形成されている。
上側摺動部材16は、後ガイド筒13の上側部位のうち左後支柱8および右後支柱9に対面する部位にそれぞれ4個ずつ、合計8個設けられている。ここで、各上側摺動部材16はほぼ同一の構成を有しているので、前面板13Aの左端側に配置される上側摺動部材16について、図9および図10を参照して説明する。
上側摺動部材16は、複数(例えば6本)のボルト17Aを用いて後ガイド筒13の前面板13Aに着脱可能に固定される固定具17と、複数(例えば2本)のボルト18Aを用いて固定具17に取付けられる摺動板18とにより構成されている。
ここで、固定具17には、摺動板18を上,下方向から挟んで位置決めすると共に、後ガイド筒13の上部角孔13Gに嵌合する嵌合突起17Bが設けられている。固定具17の左,右方向の両側には、ボルト17Aが挿通される6個のボルト挿通孔17Cが穿設され、各ボルト挿通孔17Cには、ボルト17Aの頭部を収容する座ぐり穴17C1が形成されている。また、固定具17には、固定具17を上,下方向に貫通すると共に上,下方向の中央部が板厚方向に貫通する油通路17Dが形成され、固定具17の下端面17E、上端面17F、前面17Gには、後述の給脂ホース19を接続するためのホース接続口17Hがそれぞれ設けられている。なお、給脂ホース19は、3個のホース接続口17Hのうち1個に接続され、他の2個のホース接続口17Hは、封止栓17Jによって封止される。
摺動板18は、左後支柱8の前面8Aに設けられた表面板8Eに摺動可能に当接(摺接)する摺動面18Bを有している。摺動面18Bには、上,下方向に延びる縦溝および左,右方向に延びる横溝からなる十字状の油溝18Cが形成され、この油溝18Cの縦溝と横溝とが交わる中央部には、摺動板18の板厚方向に貫通する油孔18Dが穿設されている。この油孔18Dは、摺動板18を固定具17の嵌合突起17Bに嵌合させた状態で、固定具17の油通路17Dに連通する。
摺動板18は、固定具17の嵌合突起17Bに嵌合した状態で、ボルト18Aを用いて摺動板18に固定される。この状態で、固定具17の嵌合突起17Bと摺動板18とを後ガイド筒13の上部角孔13Gに挿通し、ボルト17Aを用いて固定具17を後ガイド筒13の前面板13Aに固定することにより、摺動板18の摺動面18Bを左後支柱8の表面板8Eに摺動可能に当接させることができる。この場合、ボルト17Aの頭部は、固定具17に設けた座ぐり穴17C1内に収容され、固定具17の前面17Gよりも外側に突出することがないので、後述するケーブル・ホース案内部材30を、後ガイド筒13に近接した位置に配置することができる。
上側摺動部材16を構成する固定具17の下端面17Eに設けられたホース接続口17Hには、給脂ホース19の一端が接続されている。給脂ホース19の他端は、後述する昇降支持台27に設けられた給脂ホースブラケット27Eに固定されている。給脂ホース19は、その他端に接続された給脂ポンプ(図示せず)から潤滑油が供給されることにより、この潤滑油を、固定具17の油通路17D、摺動板18の油孔18Dを通じて油溝18Cへと導く。これにより、摺動板18と左後支柱8の表面板8Eとの摺動面に潤滑油が供給される。
下側摺動部材20は、後ガイド筒13の下側部位のうち左後支柱8および右後支柱9に対面する部位にそれぞれ4個ずつ、合計8個設けられている。これら各下側摺動部材20も、上述した上側摺動部材16と同様に、固定具17と摺動板18とを含んで構成され、固定具17には給脂ホース19の一端が接続されている(図7参照)。そして、各上側摺動部材16と各下側摺動部材20とは、後ガイド筒13と共に後ガイド部材12を構成している。
後ガイド筒13を構成する前面板13Aの上部位置で上側摺動部材16の取付け位置(上部角孔13Gの位置)よりも下側には、後述するケーブル・ホース案内部材30の一端が取付けられるブラケットとしての左,右のガイド筒側ブラケット21が設けられている。ここで、左,右のガイド筒側ブラケット21は同一の構成を有しているため、左側のガイド筒側ブラケット21について説明する。
ガイド筒側ブラケット21は、図9ないし図11に示すように、矩形状をなす鋼板材を略U字状に折曲げることにより形成されている。このガイド筒側ブラケット21は、溶接等の手段を用いて上部角孔13Gよりも下側で前面板13Aに固着され、ガイド筒側ブラケット21と前面板13Aとの間には、給脂ホース19を収容するホース収容空間21Aが形成されている。このように、ガイド筒側ブラケット21は、上側摺動部材16の固定具17に接続された給脂ホース19を跨いだ状態で、後ガイド筒13の前面板13Aに固定されている。ここで、ガイド筒側ブラケット21のうち後ガイド筒13の前面板13Aと対面する面には、上,下方向および左,右方向に間隔をもって4個の裏ナット21Bが固着され、ガイド筒側ブラケット21には、後述するケーブル・ホース案内部材30の一端30Bが取付けられる。
ガイド筒側ブラケット21の左,右方向の中央部には、ガイド筒側ブラケット21の上端縁から下向きにV字状に凹陥した切欠き部21Cが形成されている。この切欠き部21Cは、図11に示すように、上側摺動部材16の固定具17に接続された給脂ホース19に対応する部位に配置されている。これにより、固定具17のホース接続口17Hに対し、スパナ等の工具類(図示せず)を用いて給脂ホース19を取付け、取外しする場合に、この工具類を切欠き部21Cを通じて、ガイド筒側ブラケット21と後ガイド筒13との間のホース収容空間21A内に挿入することができる構成となっている。
左前ガイド部材22は、左前支柱10に係合して設けられ、当該左前支柱10に沿って上,下方向に昇降するものである。図2および図3に示すように、左前ガイド部材22は、左前支柱10を外側から取囲む左前ガイド筒23と、この左前ガイド筒23に設けられた複数の摺動部材24とを含んで構成されている。ここで、左前ガイド筒23は、左前支柱10の前面、後面および左,右の側面と対面する断面四角形の角筒体からなり、後ガイド筒13の高さ寸法よりも短尺に形成されている。左前ガイド筒23の前面、後面および左,右の側面に設けられた摺動部材24は、後ガイド部材12を構成する上側摺動部材16と同様に、左前ガイド筒23に着脱可能に固定される固定具24Aと、該固定具24Aに取付けられ左前支柱10の表面板10Aに摺動可能に当接する摺動板(図示せず)とにより構成されている。
右前ガイド部材25は、右前支柱11に係合して設けられ、当該右前支柱11に沿って上,下方向に昇降するものである。右前ガイド部材25は、右前支柱11を外側から取囲む右前ガイド筒26と、この右前ガイド筒26に設けられた複数の摺動部材24とを含んで構成されている。ここで、右前ガイド筒26は、右前支柱11の前面、後面および左,右の側面と対面する断面四角形の角筒体からなり、後ガイド筒13の高さ寸法よりも短尺に形成されている。右前ガイド筒26の前面、後面および左,右の側面には、左前ガイド部材22と同様な摺動部材24がそれぞれ設けられている。
昇降支持台27は、後ガイド部材12、左前ガイド部材22および右前ガイド部材25に取付けられ、旋回フレーム5の前部左側に上,下方向に昇降可能に配置されている。この昇降支持台27は、キャブ29を支持し、後述の昇降シリンダ28を伸縮させることによりキャブ29を上,下方向に昇降させるものである。ここで、昇降支持台27は、例えば上面27A、前面27B、左側面27C、右側面27Dによって囲まれた前,後方向に延びる長方形の箱状に形成されている。昇降支持台27の後端部には、後ガイド部材12の後ガイド筒13が固定され、昇降支持台27の前面27Bには、左前ガイド部材22の左前ガイド筒23と、右前ガイド部材25の右前ガイド筒26が固定されている。
従って、昇降シリンダ28を伸縮させて昇降支持台27を昇降させたときには、後ガイド部材12が左,右の後支柱8,9に沿って昇降支持台27を案内し、左前ガイド部材22が左前支柱10に沿って昇降支持台27を案内し、右前ガイド部材25が右前支柱11に沿って昇降支持台27を案内する。さらに、昇降支持台27の左側面27Dには、給脂ホースブラケット27Eが設けられ、この給脂ホースブラケット27Eには、後ガイド部材12の上側摺動部材16および下側摺動部材20に一端が接続された各給脂ホース19の他端が接続される構成となっている。
昇降シリンダ28は、旋回フレーム5と後ガイド部材12との間に設けられ、旋回フレーム5に対して昇降支持台27を上,下方向に昇降させるものである。この昇降シリンダ28は、油圧シリンダによって構成され、チューブ28Aと、該チューブ28A内に挿嵌されたピストン(図示せず)と、一端側がピストンに固定され他端側がチューブ28Aの外部に突出したロッド28Bとを含んで構成されている。昇降シリンダ28は、例えばチューブ28Aが上側となる状態で、左後支柱8と右後支柱9との間に位置して後ガイド筒13内に配置されている。昇降シリンダ28のチューブ28Aは、ブラケット等(図示せず)を介して後ガイド筒13に固定され、昇降シリンダ28のロッド28Bの先端(下端)は、旋回フレーム5に取付けられている。従って、昇降シリンダ28を伸縮させることにより、旋回フレーム5に対し、後ガイド部材12、左,右の前ガイド部材22,25、昇降支持台27を一体的に昇降させることができる。
キャブ29は、昇降支持台27の上面27Aに防振マウント(図示せず)を介して支持されている。キャブ29は、上面29A、前面29B、後面29C、左側面29D、右側面29Eによって囲まれた箱体として形成され、オペレータが搭乗する運転室を画成している。キャブ29内には、オペレータが着席する運転席、作業装置4等を操作する油圧パイロット式の操作装置(いずれも図示せず)が配置されている。キャブ29は、昇降シリンダ28を伸縮させることにより、図4に示す下降位置と図5に示す上昇位置との間で昇降する。
キャブ29の上面29Aには、天窓29Fを落下物から保護するためのガード部材29Gが設けられ、このガード部材29Gの上端29Hが、キャブ29の上端となっている。ここで、図12に示すように、油圧ショベル1をトレーラ100に積載して公道を走行する場合に、路面から高さ制限位置までの距離をH0とし、路面からキャブ29の上端29Hまでの距離をH2とすると、距離H2は距離H0よりも小さく(H2<H0)設定されている。即ち、キャブ29の上端29Hは、輸送時の高さ制限よりも低い位置に配置されている。なお、キャブ29の外形寸法は仕様に応じて変化するため、路面からキャブ29の上端29Hまでの距離H2も仕様に応じて変化するが、キャブ29は、その仕様に関わらず、上端29Hが輸送時の高さ制限よりも低い位置に収まるように形成されるものである。
旋回フレーム5に設けられたフレーム側ブラケット5Aとキャブ29との間には、左,右の後支柱8,9を上方から跨ぐように、左,右のケーブル・ホース案内部材30が設けられている。ケーブル・ホース案内部材30は、キャブ29内に配置された油圧パイロット式の操作装置から旋回フレーム5に搭載されたコントロールバルブ(図示せず)にパイロット圧を供給する油圧ホース31(図4参照)、キャブ29内に配置された電気機器と旋回フレーム5に搭載された電気機器との間を接続するケーブル等(図示せず)を収容するものである。ここで、左,右のケーブル・ホース案内部材30は同一の構成を有しているので、左側のケーブル・ホース案内部材30について説明する。
ケーブル・ホース案内部材30は、図8ないし図10に示すように、断面四角形状をなす多数個の枠体30Aが相互にピン結合されることにより、全体として可撓性を有する角筒状に形成されている。ケーブル・ホース案内部材30は、キャブ29が図4に示す下降位置と図5に示す上昇位置との間で昇降するときに、このキャブ29の昇降動作に追従して図示の如く変形しつつ、内部に収容した油圧ホース31、ケーブル等が一定の軌道で無理なく屈曲するように支持(案内)するものである。
ここで、ケーブル・ホース案内部材30の一端30Bには、ガイド筒側ブラケット21の各裏ナット21Bに対応する4個のボルト挿通孔30Cが穿設され、各ボルト挿通孔30Cに挿通されたボルト30Dを、ガイド筒側ブラケット21の各裏ナット21Bに螺着することにより、ケーブル・ホース案内部材30の一端30Bが、ガイド筒側ブラケット21に取付けられている。一方、ケーブル・ホース案内部材30の長さ方向の中間部は、左後支柱8の上方に配置され、ケーブル・ホース案内部材30の他端30Eは、左後支柱8の後側で旋回フレーム5上に立設されたフレーム側ブラケット5Aに、ボルト等を用いて取付けられている。
このように、本実施の形態では、後ガイド筒13の上部位置に、左後支柱8を取囲む4個の上側摺動部材16と、右後支柱9を取囲む4個の上側摺動部材16をそれぞれ取付け、後ガイド筒13の前面板13Aのうち上側摺動部材16の取付け位置よりも下側には、ガイド筒側ブラケット21を設けている。従って、図8等に示すように、ケーブル・ホース案内部材30の一端30Bを、上側摺動部材16よりも下側に配置されたガイド筒側ブラケット21に取付けることができる。これにより、後ガイド筒13の上端近傍に上側摺動部材16を配置することができ、後ガイド筒13の上端と摺動板18の上端との間の距離Aを可及的に小さくすることができる。この結果、上側摺動部材16と下側摺動部材20との上,下方向の間隔を大きく確保し、後ガイド筒13を左,右の後支柱8,9の上端まで安定した状態で移動させることにより、左,右の後支柱8,9の長さを無駄なく利用し、キャブ29の昇降量を大きく確保できる構成となっている。
本実施の形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、この油圧ショベル1をトレーラに積載して作業現場に輸送する場合には、例えば図12に示すように、油圧ショベル1の上部旋回体3から作業装置4を取外し、キャブ29を下降位置に降ろした状態で、この油圧ショベル1をトレーラ100に積載する。
このとき、油圧ショベル1に設けられた左,右の後支柱8,9の上端8F,9Fの路面からの距離H1は、路面から規定された高さ制限位置までの距離H0よりも小さく(H1<H0)設定され、左,右の後支柱8,9の上端8F,9Fは、規定された輸送時の高さ制限内に収められている。これにより、トレーラ100を用いた油圧ショベル1の輸送時に、左,右の後支柱8,9を分解する煩雑な作業を不要とすることができ、輸送作業の作業性を高めることができる。
次に、油圧ショベル1を作業現場まで輸送した後には、この油圧ショベル1の上部旋回体3に作業装置4を取付けた状態で、オペレータMがキャブ29に搭乗する。オペレータMは、走行用の操作装置(図示せず)によって油圧ショベル1を作業場所まで自走させた後、作業装置4用の操作装置(図示せず)によって作業装置4を作動させる。これにより、例えば作業装置4のバケット4Cによって掬い上げた建設用廃材、鉄屑等のスクラップを、トラックの荷台に積上げるスクラップ作業を行うことができる。
ここで、トラックの荷台が、下降位置にあるキャブ29よりも高い位置にある場合には、キャブ29内で作業装置4を操作するオペレータMから、トラックの荷台に積上げられたスクラップが見にくくなる。この場合には、昇降シリンダ28を伸長させて昇降支持台27を持上げることにより、キャブ29を、下降位置から図5に示す上昇位置に変位させることができる。
このとき、昇降支持台27の後側に取付けられた後ガイド部材12の上側摺動部材16および下側摺動部材20が、左後支柱8および右後支柱9に沿って上昇し、昇降支持台27の前側に取付けられた左前ガイド部材22および右前ガイド部材25の摺動部材24が、左前支柱10および右前支柱11に沿って上昇することにより、昇降支持台27は、キャブ29を伴って安定的に上昇位置まで移動することができる。これにより、キャブ29内のオペレータMは、トラックの荷台を上方から見下しながら作業装置4を操作することができ、スクラップ作業の作業性を高めることができる。
この場合、本実施の形態による油圧ショベル1は、後ガイド筒13の上部位置に上側摺動部材16を取付け、後ガイド筒13の前面板13Aのうち上側摺動部材16の取付け位置よりも下側に、ガイド筒側ブラケット21を設けている。これにより、ケーブル・ホース案内部材30の一端30Bを、上側摺動部材16よりも下側に配置されたガイド筒側ブラケット21に取付けることができる。従って、後ガイド筒13の上端近傍に上側摺動部材16を配置することができるので、上側摺動部材16の摺動板18の上端と後ガイド筒13の上端との間の距離Aを可及的に小さくすることができる(図8参照)。
この結果、上側摺動部材16が設けられた後ガイド筒13を、左,右の後支柱8,9の上端8F,9Fの近傍まで安定した状態で移動させることができるので、左,右の後支柱8,9の長さを無駄なく利用することができ、キャブ29の昇降量(上,下方向のストローク)を大きく確保することができる。従って、キャブ29を上昇位置まで移動させた状態で、キャブ29内のオペレータの視点をさらに高い位置に設定することができ、スクラップ作業の作業性を一層高めることができる。
しかも、上側摺動部材16は、後ガイド筒13に着脱可能に固定される固定具17と、該固定具17に取付けられ、左,右の後支柱8,9の表面板8E,9Eに摺動可能に当接する摺動板18とにより構成し、固定具17の下端には、摺動板18と左,右の後支柱8,9の表面板8E,9Eとの摺動面に潤滑油を供給する給脂ホース19を接続している。この上で、後ガイド筒13の上部位置で上側摺動部材16の取付け位置よりも下側に、固定具17に接続された給脂ホース19を跨ぐガイド筒側ブラケット21を設けたので、このガイド筒側ブラケット21にケーブル・ホース案内部材30の一端30Bを取付けることにより、ケーブル・ホース案内部材30の一端30Bを、上側摺動部材16の取付け位置よりも下側に配置することができる。
さらに、後ガイド筒13に設けたガイド筒側ブラケット21には、上側摺動部材16の固定具17に接続された給脂ホース19に対応する部位に、V字状に凹陥した切欠き部21Cが形成されている。これにより、固定具17の下端面17Eに設けたホース接続口17Hに対し、スパナ等の工具類(図示せず)を用いて給脂ホース19を取付け、取外しする場合に、この工具類を切欠き部21Cを通じて、ガイド筒側ブラケット21と後ガイド筒13との間に形成されたホース収容空間21A内に挿入することができる。この結果、固定具17のホース接続口17Hに対する給脂ホース19の取付け、取外し作業を迅速かつ容易に行うことができる。
なお、実施の形態では、左,右の後支柱8,9の上端8F,9Fを、キャブ29の上端29Hよりも低い位置に配置した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、左,右の後支柱8,9の上端8F,9Fが、輸送時の高さ制限よりも低い位置に配置されていれば、左,右の後支柱8,9の上端8F,9Fをキャブ29の上端29Hよりも高い位置に配置する構成としてもよい。
また、実施の形態では、キャブ29の後側に左,右方向に間隔をもって左後支柱8および右後支柱9からなる2本の後支柱を立設すると共に、キャブ29の前側に左前支柱10および右前支柱11からなる2本の前支柱を立設した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば3本以上の後支柱、前支柱を設ける構成としてもよい。
さらに、実施の形態では、クローラ式の下部走行体2を有する油圧ショベル1を例示したが、本発明はこれに限らず、例えばホイール式の油圧ショベル等の他の建設機械にも広く適用することができる。