以下に、図面を参照しながら、実施形態に係る半導体電力変換装置について詳細に説明する。なお、各図は実施形態とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
図1は、実施形態の半導体モジュール16の構成部材の一例を説明する分解斜視図である。実施形態の半導体モジュール16は、いわゆる両面放熱型及び垂直実装型の電力変換装置として構成されている。
半導体モジュール16は、第1導電体34と、第2導電体36と、第1半導体素子38と、第2半導体素子40と、第1凸型導電体44aと、第2凸型導電体44bと、第1電力端子46aと、接続部48と、複数の接合体42a〜42fを有している。
第1導電体34は、例えば、銅により形成された略直方体形状である。第1導電体34は、平坦な矩形状の第1接合面34a、第1接合面34aと直交する平坦な矩形状の第1放熱面34bを有している。さらに、第1導電体34は、第1接合面34aと対向する平坦な矩形状の面34c、第1放熱面34bと対向するとともに第1接合面34aと直交する平坦な矩形状の面34d、第1接合面34a及び第1放熱面34bと直交する平坦な矩形状の面34e、面34eと対向するとともに第1接合面34a及び第1放熱面34bと直交する平坦な矩形状の面34fを有している。なお、第1導電体34は、第1接合面34a及び第1接合面34aと直交する第1放熱面34bを有していればよく、略直方体形状以外の形状であってもよい。第1接合面34aの形状は、矩形状以外の形状であってもよい。第1放熱面34bの形状は、矩形状以外の形状であってもよい。
第2導電体36は、例えば、銅により形成された略直方体形状である。第2導電体36は、平坦な矩形状の第2接合面36a、第2接合面36aと直交する平坦な矩形状の第2放熱面36bを有している。さらに第2導電体36は、第2接合面36aと対向する平坦な矩形状の面36c、第2放熱面36bと対向するとともに第2接合面36aと直交する平坦な矩形状の面36d、第2接合面36a及び第2放熱面36bと直交する平坦な矩形状の面36e、面36eと対向するとともに第2接合面36a及び第2放熱面36bと直交する平坦な矩形状の面36fを有している。第2接合面36aは、第1接合面34aと対向している。第2放熱面36bは、第1放熱面34bを含む仮想平面上に位置している。これは、後述する図6に示す受熱面18a上に半導体モジュール16を配置した際に、第1放熱面34bから受熱面18aまでの間隔を第2放熱面36bから受熱面18aまでの間隔と略同じにするためである。第1導電体34及び第2導電体36それぞれの放熱性は、第1放熱面34b及び第2放熱面36bから受熱面18aまでの距離(最短の放熱経路)に依存する。第1放熱面34bから受熱面18aまでの距離及び第2放熱面36bから受熱面18aまでの距離が短ければ、第1導電体34及び第2導電体36それぞれの放熱性は向上する。第1放熱面34bから受熱面18aまでの間隔が第2放熱面36bから受熱面18aまでの間隔と略同じであれば、何れかの導電体の放熱性は犠牲になることはない。言い換えれば、第1放熱面34bから受熱面18aまでの間隔が第2放熱面36bから受熱面18aまでの間隔が異なれば、受熱面18aまでの間隔が広い導電体の放熱性は、受熱面18aまでの間隔が狭い導電体の放熱性よりも悪くなる。
なお、第2導電体36は、第2接合面36a、及び、第1放熱面34bを含む仮想平面上に位置し第2接合面36aと直交する第2放熱面36bを有していればよく、略直方体形状以外の形状であってもよい。第2接合面36aの形状は、矩形状以外の形状であってもよい。第2放熱面36bの形状は、矩形状以外の形状であってもよい。
第1半導体素子38は、パワー半導体素子、例えば、IGBT(insulated gate bipolar transistor)である。第1半導体素子38は、第1導電体34と第2導電体36との間に挟まれて、これらの導電体に接合されている。第1半導体素子38は、電極38a及び電極38bを有している。第1半導体素子38は、矩形板状に形成され、第1面に電極38a、第1面と対向する第2面に電極38aと異なる電極38bを有している。なお、第1半導体素子38は、電極38a及び電極38bを有していればよく、その形状は、矩形板状以外の形状であってもよい。第1半導体素子38の第2面に、複数、例えば、4つの接続端子38cが形成されている。そして、第1半導体素子38の第1面及び第2面は、電極部分および接続端子部分を除いて、絶縁膜、例えば、ポリイミドのフィルムで覆われている。
第1半導体素子38は、第1導電体34の接合面34aと平行に配置され、電極38a(コレクタ)が第1接続体、例えば、矩形状の半田シート42aにより第1導電体34の第1接合面34aに接合されている。
第2半導体素子40は、第1導電体34と第2導電体36との間に挟まれて、第1導電体34と第2導電体36とに接合されている。第2半導体素子40は、ダイオードを有している。第2半導体素子40は、電極40a及び電極40aを有している。第2半導体素子40は、矩形板状に形成され、第1面に電極40a、第1面と対向する第2面に電極40aと異なる電極38bを有している。なお、第2半導体素子40は、電極40a及び電極40bを有していればよく、その形状は、矩形板状以外の形状であってもよい。第2半導体素子40の第1面及び第2面は、矩形状の電極部分を除いて、絶縁膜、例えば、ポリイミドのフィルムで覆われている。
第2半導体素子40は、第1導電体34の接合面34aと平行に配置され、更に、隙間を置いて第1半導体素子38と並んで配置されている。第2半導体素子40は、電極40aが第2接続体、例えば、矩形状の半田シート42bにより第1導電体34の第1接合面34aに接合されている。
第1凸型導電体44aは、第1半導体素子38の電極38b上に第3接続体、例えば、矩形状の半田シート42cにより接合されている。
第1凸型導電体44aは、例えば、銅により形成され、扁平な直方体形状の本体と、本体の一方の主面から第2導電体36の接合面36a側に突出し、本体よりも小径で扁平な直方体形状の凸部45aを一体に有している。第1凸型導電体44aは、本体の平坦な主面側が半田シート42cにより第1半導体素子38の電極38bに電気的かつ機械的に接合されている。なお、第1凸型導電体44aは、第1半導体素子38の電極38bに電気的かつ機械的に接合できる形状であればよく、上述のような形状に限定されない。
第2凸型導電体44bは、第2半導体素子40の他方の電極上に第4接続体、例えば、矩形状の半田シート42dにより接合されている。第2凸型導電体44bは、例えば、銅により形成され、扁平な直方体形状の本体と、本体の一方の主面から第2導電体36の接合面36a側に突出し、本体よりも小径で扁平な直方体形状の凸部45bと、を一体に有している。そして、第2凸型導電体44bは、本体の平坦な主面側が半田シート42dにより第2半導体素子40の電極40bに電気的かつ機械的に接合されている。なお、第2凸型導電体44bは、第2半導体素子40の電極40bに電気的かつ機械的に接合できる形状であればよく、上述のような形状に限定されない。
なお、第1および第2凸型導電体44a、44bは、別体に限らず、2つの本体を一体に形成し、2つの凸部を共通の本体上に設ける構成としてもよい。
第1電力端子46aは、独立して形成され、その基端部が第5接続体、例えば、矩形状の半田シート42eにより第1導電体34の接合面34aに接合されている。つまり、第1電力端子46aは、第1導電体34に電気的に接合されている。第1電力端子46aは、第1導電体34及び第2導電体36と対向しない位置まで延出する。
第2電力端子46bは、その基端部が接続部48に連結されている。つまり、第2電力端子46bは、第2導電体36に電気的に接合されている。第2電力端子46bは、第1導電体34及び第2導電体36と対向しない位置まで延出する。
接続部48は、細長い矩形板状の導電金属板で形成されている。この接続部48には、それぞれ位置決め用の矩形状の第1開口51aおよび第2開口51bが並んで形成されている。第1開口51aは、第1凸型導電体44aの凸部45aが嵌合可能な大きさで、かつ、第1凸型導電体44aの本体よりも小さく形成されている。同様に、第2開口51bは、第2凸型導電体44bの凸部45bが嵌合可能な大きさで、かつ、第2凸型導電体44bの本体よりも小さく形成されている。接続部48の第2導電体36側の表面には、第1および第2開口51a、51bを含む領域に亘って浅い矩形状の凹所56が形成されている。更に、接続部48は、その上縁から上方に突出する3本の支持突起を一体に有している。真ん中の支持突起から一本の信号端子50が上方へ延びている。すなわち、5本の信号端子50の内、エミッタ分岐端子50aは、接続部48から分岐して延び、他の信号端子50とほぼ平行に位置している。
接続部48及び第2電力端子46bは、第1及び第2凸型導電体44a、44bの凸部45a、45bが第1開口51a、第2開口51bにそれぞれ係合した状態で、第1及び第2凸型導電体44a、44bに接合されている。
更に、接続部48、第1及び第2凸型導電体44a、44bの凸部45a、45bは、接続部48の凹所56内に配置された第6接続体、例えば、矩形状の半田シート42fにより、第2導電体36の接合面36aに電気的および機械的に接合されている。すなわち、接続部48、第1及び第2凸型導電体44a、44b、及び第2導電体34の3部材は、半田シート42fにより相互に接合されている。
以上により、第1半導体素子38及び第2半導体素子40は、第1導電体34と第2導電体36との間に挟まれ配置されている。第1半導体素子38の第1電極38aは、第1導電体34の第1接合面34aと電気的に接続し、第1半導体素子38の第2電極38bは、第2導電体36の第2接合面36aと電気的に接合している。同様に、第2半導体素子40の第1電極40aは、第1導電体34の第1接合面34aと電気的に接続し、第2半導体素子40の第2電極40bは、第2導電体36の第2接合面36aと電気的に接合している。例えば、第1半導体素子38及び第2半導体素子40は、第1接合面34a及び第2接合面36aに対して平行に、かつ、第1放熱面34b及び第2放熱面36bに対して垂直に配置されている。
信号端子50は、第1導電体34の接合面34aと平行に延びている。信号端子50のうちの4本の基端は、ボンディングワイヤ(図示せず)により、第1半導体素子38の接続端子38cに接続されている。実施形態の半導体モジュール16は、例えば5本の信号端子50を有している。信号端子50は、細長い棒状に形成され、互いに平行に延びている。なお、信号端子50を構成する端子数は、5本以外の本数であってもよい。
図2は、実施形態の半導体モジュール16の等価回路の一例を示す図である。
信号端子50は、前述した接続部48から分岐した、すなわち、接続部48に導通しているエミッタ分岐端子(コレクタ、エミッタ間電圧モニタ端子)(分岐信号端子)50a、電流(エミッタセンス電流)モニタ端子50b、ゲート(ゲート、エミッタ間電圧)端子50c、チップ温度モニタ端子50d、50eを含んでいる。信号端子50b、50c、50d、50eのそれぞれの基端と第1半導体素子38の対応する接続端子38cとを図示しないボンディングワイヤ(導線)で接続している。第1半導体素子38は、第1導電体34および第2導電体36を介して、第1電力端子46a、第2電力端子46bに接続されている。同様に、第2半導体素子40は、第1導電体34および第2導電体36を介して、第1電力端子46a、第2電力端子46bに接続されている。
図3は、実施形態の半導体モジュール16の一例を示す斜視図である。図4は、実施形態の半導体モジュール16の一例を底面側から見た斜視図である。なお、図4では、第2絶縁体62は、半導体モジュール16から分解して示している。
半導体モジュール16は、第1絶縁体52と、第2絶縁体62をさらに有している。本実施形態では、第1放熱面34b及び第2放熱面36bを含む仮想平面と直交する方向(以降、第1方向という)において、複数の信号端子50側の外面を半導体モジュール16の上面、第2絶縁体62側の外面を半導体モジュール16の底面というものとする。
第1絶縁体52は、半導体モジュール16の構成部材を絶縁する絶縁層である。第1絶縁体52は絶縁性を有する材料で構成されていればよく、その材料は限定されない。第1絶縁体52は、第1半導体素子38及び第2半導体素子40を封止している。さらに、第1絶縁体52は、第1絶縁体52は、第1導電体34のうちの第1放熱面34b以外の面(図1に示す例では第1接合面34a、面34c、面34d、面34e、面34f)及び第2導電体36のうちの第2放熱面36b以外の面(図1に示す例では第2接合面36a、面36c、面36d、面36e、面36f)を被覆している。さらに、第1凸型導電体44a、第2凸型導電体44b、接続部48、第1電力端子46aの基端部、第2電力端子46bの基端部、及び信号端子50の基端部を被覆している。
第1絶縁体52は、互いに平行な2つの側面52a、52bと、これらの側面52a、52bと直交する平坦な底面52cと、底面に対向する上面52dと、2つの端面52eと、パーティングライン54を有している。図4に示すように、第1絶縁体52の底面52cは、第1放熱面34b及び第2放熱面36bを含む仮想平面上に位置している。
パーティングライン54は、成形型を型抜きする際に形成される。パーティングライン54は、リードフレームの接続部48、第1電力端子46a及び第2電力端子46bを含む仮想平面内に位置し、第1絶縁体52の上面52d及び両端面52eに沿って残っている。また、パーティングライン54は、側面52b側にずれて位置している。
第1絶縁体52の上面52dにおいて、パーティングライン54と側面52aとの間の部分は、パーティングライン54から側面52aに向かって底面52c側へ僅かに傾斜して延び、パーティングライン54と側面52bとの間の部分は、パーティングライン54から側面52bに向かって底面52c側へ僅かに傾斜して延びている。
第1絶縁体52の各端面52eにおいて、パーティングライン54と側面52aとの間の部分は、パーティングライン54から側面52aに向かって他方の端面52e側へ僅かに傾斜して延び、パーティングライン54と側面52bとの間の部分は、パーティングライン54から側面52bに向かって他方の端面52e側へ僅かに傾斜して延びている。
第1電力端子46aは、パーティングライン54の位置で第1絶縁体52の一方の端面52eから第1絶縁体52の外方に延出(突出)している。第1電力端子46aの接触部47aは、側面52a側へ直角に折り曲げられ、第1絶縁体52の端面52eと隙間を置いて対向している。また、接触部47aは、略直角に折り曲げられ、第1絶縁体52に対して、第1絶縁体52の中央近傍に位置している。
第2電力端子46bは、パーティングライン54の位置で第1絶縁体52の他方の端面52eから第1絶縁体52の外方に延出し、更に、第2電力端子46bの接触部47bは、側面52a側へ直角に折り曲げられ、第1絶縁体52の端面52eと隙間を置いて対向している。また、接触部47aは、略直角に折り曲げられ、第1絶縁体52に対して、第1絶縁体52の中央近傍に位置している。
5本の信号端子50は、パーティングライン54の位置で第1絶縁体52の上面52dから第1方向に沿って突出している。また、5本の信号端子50は、それぞれ2箇所で折曲げられ、信号端子50の延出端側の端部53aは、第1絶縁体52の中央近傍に位置している。信号端子50の少なくとも端部53aの外面には、図示しない導電膜が形成されている。
第2絶縁体62は、半導体モジュール16の構成部材を絶縁する絶縁層である。第2絶縁体62は、絶縁性を有する材料で構成されていればよく、その材料は限定されない。第2絶縁体62は、第1放熱面34b及び第2放熱面36bを被覆している。第2絶縁体62は、第1放熱面34b及び第2放熱面36bを被覆する平坦な矩形状の第1面62a、及び、第1面62aと対向し第1放熱面34b及び第2放熱面36bを含む仮想平面と平行な平坦な矩形状の第2面62bを有している。第2絶縁体62は、第1方向において均一の厚さで形成された平板形状である。第1面62aは、第1放熱面34b及び第2放熱面36bを含む平坦な仮想平面上に位置するため、平坦面で構成されている。第2面62bは、後述する図6に示す冷却器12の平坦な受熱面18aに接着させるため、平坦面で構成されている。なお、第1面62a及び第2面62bの形状は、矩形状以外の形状であってもよい。第2絶縁体62が平板形状で形成されているのは、第1放熱面34bから受熱面18aまでの距離と第2放熱面36bから受熱面18aまでの距離を略同じにするためである。第2絶縁体62の第1方向における厚さは、図6に示す冷却器12の受熱面18aに対する絶縁性、及び、第1導電体34と第2導電体36の放熱性のバランスを考慮して所定の厚さに決定される。第2絶縁体62の厚さは、例えば、0.2mmで形成されている。
以上により、第1導電体34は、第1絶縁体52または第2絶縁体62の何れかによって、露出することなく被覆されることで絶縁されている。同様に、第2導電体36は、第1絶縁体52または第2絶縁体62の何れかによって、露出することなく被覆されることで絶縁されている。
以下、上記半導体モジュール16を搭載した装置の一例として半導体電力変換装置10について説明する。
図5は、制御回路基板を取り外した状態の半導体電力変換装置10の一例を示す斜視図である。
図6は、半導体電力変換装置10の支持フレーム14および冷却器12の一例を示す斜視図である。
図7は、制御回路基板を含む半導体電力変換装置10全体の一例を示す斜視図である。
図5ないし図7に示すように、半導体電力変換装置10は、冷却器12、冷却器12上に固定された支持フレーム14、および、冷却器12上に載置され、支持フレーム14により支持された複数の半導体モジュール16を有している。
冷却器12は、平坦な矩形状の受熱面18aを有する扁平な直方体形状の冷却ブロック18を有している。この冷却ブロック18は、例えば、アルミニウムで形成されている。また、冷却ブロック18内には、水等の冷却媒体を流す冷媒流路20が形成されている。
支持フレーム14は、受熱面18aに対応する大きさの矩形状の外枠と、外枠間を延びる互いに平行な複数の連結梁とを一体に有し、これら外枠および連結梁により例えば、4列に並んだ、それぞれ矩形状の設置空間部22を形成している。また、支持フレーム14には、後述する半導体モジュール16に電気的に接続される複数の接続端子24を有する複数のバスバー26、複数の入力端子28、および2組の3相の出力端子30が設けられている。バスバー26の接続端子24は、各設置空間部22の各側縁に沿って、複数個ずつ間隔を置いて並んで配置されている。そして、支持フレーム14は、例えば、インサートモールドにより、複数の端子と一体に樹脂により成形されている。また、支持フレーム14は、例えば、複数のねじにより冷却ブロック18の受熱面18a上に固定されている。
図5に示すように、半導体モジュール16は、例えば、6個ずつ、4列に並んで支持フレーム14に設置されている。各列において、6個の半導体モジュール16は、支持フレーム14の設置空間部22内に配置され、第2絶縁体62の第2面62aが冷却器12の受熱面18aと接するように受熱面18a上に設置されている。第2絶縁体62の第2面62aは、例えば接着剤で受熱面18aに対して接着されている。第1導電体34及び第2導電体36は、第2絶縁体62を介して冷却器12に熱的に接続される。第1半導体素子38および第2半導体素子40で発生した熱は、第1導電体34及び第2導電体36を介して冷却器12に放熱される。各半導体モジュール16の電力端子は、バスバー26の接続端子24に接触し、バスバー26に電気的に接続されている。また、各半導体モジュール16の複数の信号端子50は、第1方向に沿って突出している。
本実施形態の半導体モジュール16は、上述したように第1放熱面34b及び第2放熱面36bが既に第2絶縁体62で被覆されている。そのため、本実施形態の半導体モジュール16は、受熱面18a上に配置する際に、受熱面18aに対する更なる絶縁処理を必要としない。
さらに、本実施形態の半導体モジュール16は、受熱面18a上に配置する際に、第1放熱面34bから受熱面18aまでの間隔及び第2放熱面36bから受熱面18aまでの間隔を第2絶縁体62のみによって管理できる。第2絶縁体62の第1方向の厚さは、上述したように絶縁性及び放熱性のバランスを考慮して所定の厚さに決定されている。半導体モジュール16を受熱面18a上に置くだけで、第1放熱面34bから受熱面18aまでの間隔及び第2放熱面36bから受熱面18aまでの間隔は、第2絶縁体62で規定された所定の間隔になる。そのため、半導体モジュール16は、受熱面18a上に配置後のさらなる間隔調整を必要としない。
さらに、本実施形態の半導体モジュール16は、受熱面18a上に置くだけで、第1放熱面34b及び第2放熱面36bを含む仮想平面が受熱面18aに対して平行関係になる。第1放熱面34b及び第2放熱面36bを含む仮想平面は、第2絶縁体62の第2面62bと平行関係にあるため、第2面62bと接する受熱面18aとも平行関係になるからである。そのため、第1放熱面34bから受熱面18aまでの間隔は、第2絶縁体62で規定された所定の間隔に対応し、第1放熱面34bの何れの領域においても同じである。ここで、第1放熱面34bが受熱面18aと平行関係にない場合を想定する。この場合、第1放熱面34bから受熱面18aまでの間隔は、第1放熱面34bの第1の領域と第2の領域とでばらつく。例えば、第1放熱面34bの第1の領域から受熱面18aまでの間隔が絶縁性及び放熱性を考慮した所定の間隔にあるとしても、第1放熱面34bの第2の領域から受熱面18aまでの間隔は、この所定の間隔よりも広い場合がある。第2の領域における放熱性は、第1の領域における放熱性よりも低下する。以上より、第1放熱面34bが受熱面18aと所定間隔をあけて平行関係にある場合の第1導電体34全体としての放熱性は、第1放熱面34bが受熱面18aと平行関係にない場合の第1導電体34全体としての放熱性よりも高い。これは、第2放熱面36bと受熱面18aとの関係においても同様である。本実施形態の半導体モジュール16は、受熱面18a上に単に置くだけであっても、第1導電体34及び第2導電体36の放熱性を低下させることはない。
さらに、本実施形態の半導体モジュール16は、受熱面18a上に複数個配置する場合であっても、上述したような半導体モジュール16の放熱性、及び、放熱性に起因する各半導体モジュール16の性能は、半導体モジュール16間でばらつくことはない。これは、どの半導体モジュール16であっても、上述したように、第2絶縁体62により、第1放熱面が34b及び第2放熱面36bを受熱面18aと平行にし、第1放熱面が34bから受熱面18aまでの間隔及び第2放熱面が36bから受熱面18aまでの間隔を絶縁性及び放熱性を考慮した所定の間隔にすることができるからである。
ここで、例えば、第2絶縁体62が予め取り付けられていない半導体モジュールを想定する。このような半導体モジュールは、受熱面18a上に配置する際に、例えば、受熱面18a上に広げて塗布した樹脂により、第1放熱面34b及び第2放熱面36bを受熱面18aから絶縁するとともに、第1放熱面34b及び第2放熱面36bを受熱面18aに接着させる。この場合には、受熱面18a上の樹脂の厚さを所定の厚さで均一にして塗布するなどの高精度な管理が要求される。そのため、第1放熱面34b及び第2放熱面36bが受熱面18aに対して平行関係になるように半導体モジュールを受熱面18aに配置することは、困難である。さらに、第1放熱面34b全面において、第1放熱面34bと受熱面18aとの距離を絶縁性及び放熱性のバランスを考慮した所定の厚さに保つように半導体モジュールを受熱面18aに配置することは、困難である。同様に、第2放熱面36b全面において、第2放熱面36bと受熱面18aとの距離をこの所定の厚さに保つように半導体モジュールを受熱面18aに配置することは、困難である。したがって、このような半導体モジュールを受熱面18a上に複数個配置する場合、各半導体モジュールの放熱性、及び、放熱性に起因する各半導体モジュールの性能は、半導体モジュール16間でばらつく。結果として、第2絶縁体62が予め取り付けられていない半導体モジュールは、配置不良に起因する半導体電力変換装置の性能の低下を引き起こす可能性が高い。
以上により、本実施形態によれば、半導体モジュール16を受熱面18a上に複数個配置する場合であっても、放熱性を損わせることなく冷却器12の受熱面18a上に半導体モジュール16を容易に固定することができる。結果として、本実施形態によれば、半導体モジュール16の配置不良に起因する半導体電力変換装置10の性能の低下を防ぐことができる。
図7に示すように、半導体電力変換装置10は、半導体モジュール16および装置全体の入出力および動作を制御する制御回路基板32を有している。制御回路基板32は、支持フレーム14とほぼ等しい大きさの矩形状に形成されている。制御回路基板32は、半導体モジュール16上に重ねて設置され、図示しない固定ねじ等により支持フレーム14に取り付けられている。各半導体モジュール16の信号端子50は、制御回路基板32に電気的に接続されている。
半導体モジュール16は、支持フレーム14の設置空間部22内に配置され、半導体モジュール16は、第1絶縁体62の第2面62cが受熱面18aと接するように、受熱面18a上に設置されている。半導体モジュール16の第1電力端子46aおよび第2電力端子46bの接触部47a、47bは、それぞれバスバー26の接続端子24に接触し、バスバー26に電気的に接続されている。また、半導体モジュール16の複数の信号端子50は、上方へ突出している。
一列に並んだ複数の半導体モジュール16において、隣合う2つの半導体モジュール16は、第1絶縁体52の側面同志が隣接対向して、あるいは、互いに当接した状態で配置されている。隣合う2つの半導体モジュール16の内、一方は、他方に対して180度反転した向きで配置してもよい。いずれの向きで配置した場合でも、半導体モジュール16の第1電力端子46aおよび第2電力端子46bは、バスバー26の接続端子24に確実に係合する。また、この場合でも、いずれの向きで配置した場合でも、半導体モジュール16の信号端子50は、絶縁体52の中央部に位置し、制御回路基板32に対して所定位置に配置される。
図7に示すように、制御回路基板32を半導体モジュール16上に設置することにより、各半導体モジュール16の信号端子50の端部は、制御回路基板32に形成されたスルーホールに挿通され、図示しない半田等により制御回路基板32に電気的に接続される。
なお、本実施形態の半導体モジュール16では、第2絶縁体62は、第1絶縁体52よりも熱伝導率が高い材料を用いてもよい。第1絶縁体52は、例えば、シリカフィラーを樹脂に混ぜた安価な材料で構成されている。樹脂は、例えば、エポキシ樹脂などが用いられるが、これに限定されない。第2絶縁体62は、例えば、熱伝導性かつ絶縁性を有しているフィラーを樹脂に混ぜた材料で構成されている。樹脂は、例えば、エポキシ樹脂や、ポリイミド樹脂などが用いられるが、これに限定されない。フィラーは、例えば、窒化ホウ素(BN)フィラー、アルミナフィラーなどが用いられるが、これに限定されない。半導体モジュール16を受熱面18a上に配置した際に、第2絶縁体62は、第1放熱面34bと受熱面18aの間、及び、第2放熱面36bと受熱面18aの間に存在する。つまり、第2絶縁体62は、第1放熱面34bから受熱面18a及び第2放熱面36bから受熱面18aまでの最短の放熱経路に位置している。第2絶縁体62が上述のような高い熱伝導率を有する材料で構成されていれば、第1導電体34及び第2導電体36の放熱性は高まる。一方、半導体モジュールを受熱面18a上に配置した際に、第1絶縁体52は、第1放熱面34bと受熱面18aの間、及び、第2放熱面36bと受熱面18aの間に存在しない。第2絶縁体62は、第1放熱面34bから受熱面18a及び第2放熱面36bから受熱面18aまでの最短の放熱経路に位置していない。そのため、第1絶縁体52が高い熱伝導率を有していなくても、半導体モジュール16全体としての放熱性が低下することはない。なお、第1絶縁体52は、第2絶縁体62と同様の高い熱伝導率を有する材料で構成されていてもよいが、高い熱伝導率を有する材料はコストがかかる。そのため、コスト面を考慮すれば、第1絶縁体52は、第2絶縁体62よりも熱伝導率が低い安価な材料で構成されている方が好ましい。
なお、第2絶縁体62が上述したような熱伝導性かつ絶縁性を有しているフィラーを樹脂に混ぜた材料で構成されている場合、第2面62bは切削加工が施されていてもよい。切削加工は、例えば、ダイヤモンドチップを用いたフライス加工によって行われる。第2面62bは、切削加工によってフィラーが微細な凹凸として表れる。そのため、第2面62bは、荒れた状態の切削面となる。半導体モジュール16を冷却器12の受熱面18a上に例えばシリコーン接着剤で接着する際、シリコーン接着剤は、第2面62bの凹凸部分に入り込み硬化する。第2面62bの凹凸部分よるアンカー効果により、半導体モジュール16と冷却器12との接合強度は大きくなる。
図8は、実施形態の半導体モジュール16の製造方法の一例を説明するための図である。なお、図8は、第1接合面34a及び第1放熱面34bに直交する平面における半導体モジュール16の断面の一例を示す図である。半導体モジュール16の製造方法は、例えば、リフロー工程と、1次モールド工程と、1次除去加工工程と、2次モールド工程とを有している。
図8の(a)は、半導体モジュール16のリフロー工程後の状態を示す図である。リフロー工程は、半導体モジュール16の構成部材を半田で接合する工程である。
リフロー工程では、第1導電体34と、第2導電体36と、第1半導体素子38と、第2半導体素子40と、第1凸型導電体44aと、第2凸型導電体44bと、第1電力端子46aと、接続部48と、信号端子50を、図1を用いて説明したように接合する。
リフロー工程では、第1半導体素子38が有する第1電極38aを第1導電体34が有する第1接合面34aに電気的に接続し、第1半導体素子38が有する第2電極38bを第1接合面34aと対向した第2導電体36が有する第2接合面36aに電気的に接続する。同様に、第2半導体素子40が有する第1電極40aを第1導電体34が有する第1接合面34aに電気的に接続し、第2半導体素子40が有する第2電極40bを第1接合面34aと対向した第2導電体36が有する第2接合面36aに電気的に接続する。なお、リフロー工程時における第1導電体34は、第1接合面34aと直交し、面34dと対向する面34gを有している。リフロー工程時における第1導電体34は、面34dに直交する方向の幅が図1を用いて説明した第1導電体34の幅よりも大きく形成されている。同様に、リフロー工程時における第2導電体36は、第2接合面36aと直交し、面36dと対向する面36gを有している。リフロー工程時における第2導電体36は、面36dに直交する方向の幅が図1を用いて説明した第2導電体36の幅よりも大きく形成されている。その理由は、第1導電体34の面34gがリフロー工程時における部品搭載位置のばらつきにより、第2導電体36の面36gを含む仮想平面上に位置しないことがあるからである。第1導電体34及第2導電体36は、後述する1次除去加工工程において第1導電体34の面34g及び第2導電体36の面36gを除去することで、第1接合面34aと直交する第1放熱面34bを第1導電体34に形成するとともに、第2接合面36aと直交し、第1放熱面34bを含む仮想平面上に位置する第2放熱面36bを第2導電体36に形成するための余裕を持たせた大きさである。
図8の(b)は、半導体モジュール16の1次モールド工程後の状態を示す図である。1次モールド工程は、第1絶縁体52を用いて、第1半導体素子38及び第2半導体素子40を封止し、第1導電体34、第2導電体36、第1凸型導電体44a、第2凸型導電体44b、接続部48、第1電力端子46aの基端部、第2電力端子46bの基端部、及び信号端子50の基端部を被覆する工程である。1次モールド工程は、例えば、図示しない金型に第1絶縁材料を注入するトランスファーモールドで行われる。第1絶縁材料は、第1絶縁体52を形成する。第1絶縁材料を注入するためのゲート位置は、第1導電体34の面34g近傍または第2導電体36の面36g近傍に設置される。1次モールド工程は、既存のモールド装置で行うことができる。金型温度は、例えば、180℃、成形圧力は、例えば、15MPa程度である。1次モールド工程で用いられる第1絶縁体52を形成するための金型は、第1電力端子46a、第2電力端子46b、信号端子50の位置で合わせられる。1次モールド工程により、第1絶縁体52は、第1導電体34の全面および第2導電体36の全面を被覆している。第1絶縁体52は、上述した側面52a、52b、上面52d、2つの端面52eに加えて、上面52dと対向する底面52fを有している。成形型を型抜きする際に、第1絶縁体52には、上面52d、2つの端面52e、底面52fに亘ってパーティングライン54が形成される。第1電力端子46aは、パーティングライン54の位置で第1絶縁体52の一方の端面52eから延出している。第2電力端子46bは、パーティングライン54の位置で第1絶縁体52の他方の端面52eから延出している。信号端子50は、パーティングライン54の位置で上面52dから延出している。
図8の(c)は、半導体モジュール16の1次除去加工工程後の状態を示す図である。1次除去加工工程は、第1絶縁体52、第1導電体34及び第2導電体36の一部を除去加工することで、第1接合面34aと直交し第1絶縁体52から露出した第1導電体34の第1放熱面34b、第2接合面36aと直交し第1放熱面34bを含む仮想平面上に位置し第1絶縁体52から露出した第2導電体36の第2放熱面36b、及び、第1放熱面34b及び第2放熱面36bを含む仮想平面上に位置し第1放熱面34b及び第2放熱面36bの周りを囲む第1絶縁体52の外面(底面52c)を含む除去加工面16aを形成する工程である。なお、除去加工は、例えば、研削、研磨、切り落としなどであるが、これらに限定されるものではない。
半導体モジュール16を除去加工する方向は、パーティングライン54が形成された第1絶縁体52の面のうち、第1電力端子46a、第2電力端子46b、及び、信号端子50が延出していない面に対して行われる。ここでは、底面52fに対して除去加工される。パーティングライン54が形成された底面52fを除去加工するので、第1絶縁体52の面のうちパーティングライン54が形成された面は減る。半導体モジュール16を除去加工する方向は、第1接合面34aまたは第2接合面36aと直交する平面に直交する方向(以降、第2方向という)でもある。半導体モジュール16を除去加工する方向は、面34gが第1接合面34aと直交する平坦面で形成されていれば、面34gと直交する方向でもある。同様に、半導体モジュール16を除去加工する方向は、面36gが第2接合面36aと直交する平坦面で形成されていれば、面36gと直交する方向でもある。第1除去加工工程は、第2方向に沿って、面34gまたは面36近傍の第1絶縁体52の外面から行われる。はじめに、第1除去加工工程により、面34gを被覆していた第1絶縁体52及び面36gを被覆していた第1絶縁体52は、除去加工される。面34gが露出した後、第1導電体34が面34g側からさらに第2方向に沿って除去加工されると、第1導電体34には、第1接合面34aと直交し、第1導電体34から露出した面(図1で説明した第1放熱面34b)が形成される。面36gが露出した後、第2導電体36が面36g側からさらに第2方向に沿って除去加工されると、第2導電体36には、第2接合面36aと直交し、第1放熱面34bを含む仮想平面上に位置し、第1導電体34から露出した面(図1で説明した第2放熱面36b)が形成される。第1導電体34の除去加工に伴い、第1導電体34の第1接合面34a、面34c、面34e及び面34fを被覆している第1絶縁体52の一部も除去加工される。同様に、第2導電体36の除去加工に伴い、第2導電体36の第1接合面36a、面36c、面36e及び面36fを被覆している第1絶縁体52の一部も除去加工される。そのため、第1絶縁体52には、第1放熱面34b及び第2放熱面36bを含む仮想平面上に位置し、第1放熱面34b及び第2放熱面36bの周りを囲む底面52cが形成される。以上により、1次除去加工工程後、半導体モジュール16には、同一仮想平面上に位置する第1放熱面34b、第2放熱面36b及び底面52cを含む除去加工面16aが形成される。ここでは、例えば、ダイヤモンドチップを用いたフライス加工によって行われる。
図8の(d)は、半導体モジュール16の2次モールド工程後の状態を示す図である。2次モールド工程は、第1放熱面34b及び第2放熱面36bを被覆する第2絶縁体62を除去加工面16aに形成する工程である。
図9は、2次モールド工程の一例となる工程を説明するための図である。なお、図9は、第1接合面34a及び第1放熱面34bに直交する平面における半導体モジュール16の断面の一例を示す図である。
図9(a)に示すように、半導体モジュール16の製造方法は、金型72を準備し、除去加工面16aに第2絶縁体62を形成するための第2絶縁材料82を金型72に配置する工程を有している。なお、この工程は、1次モールド工程よりも前に行われてもよい。
金型72は、平坦な第1面72aを有している。第1面72aには、掘り込み部72bが形成されている。掘り込み部72bは、第1面72aと直交する方向に所定の深さを有し、第1面72aと平行な第2面72cを有している。掘り込み部72bの開口は、第2面72cに相当する形状で形成されている。なお、掘り込み部72bの開口は、第2面72cよりも大きい形状であってもよい。
掘り込み部72bは、図3を用いて説明した第2絶縁体62を除去加工面16aに形成するために用いられる。そのため、掘り込み部72bの形状は、第2絶縁体62の形状を規定している。掘り込み部72bは、例えば、第2面72cが矩形状で形成された略直方体形状である。なお、第2面72cは、矩形状以外の形状で形成されていてもよい。掘り込み部72bの深さは、第2絶縁体62の第1方向の厚さを規定する。そのため、掘り込み部72bの深さは、上述したように冷却器12の受熱面18aに対する絶縁性、及び、第1導電体34と第2導電体36の放熱性のバランスを考慮して決定される第2絶縁体62の厚さに相当する。掘り込み部72bの所定の深さは、例えば、0.2mmで形成されている。
掘り込み部74の開口は、除去加工面16a全面が嵌らない程度の大きさで構成されている。掘り込み部74の開口は、さらに、除去加工面16aを第1面72aに接触させたときに、第1放熱面34b全面及び第2放熱面36b全面と対向する大きさで構成されている。掘り込み部74の開口は、除去加工面16aを第1面72aに接触させたときに、第1放熱面34b及び第2放熱面36bが第1面72aと接触することなく第2面72cと対向し、第1絶縁体52の外面52cの一部が第1面72aに接触する大きさである。
第2面72cの中央近傍には、第2絶縁体62を形成するための第2絶縁材料82が配置されている。第2絶縁材料82を第2面72cの中央近傍に配置するのは、掘り込み部72bを第2絶縁材料82で充填する作業は煩雑だからである。第2絶縁材料82の体積は、掘り込み部74の容積以上である。仮に、第2絶縁材料82が掘り込み部74の容積より少ないとすると、第2絶縁材料82は、掘り込み部74を充填できない。そうすると、除去加工面16aには、設計どおりの第2絶縁体62を形成できない。金型72は、例えば100℃以上に加熱されている。そのため、第2絶縁材料82は、軟化して変形可能になる。
図9の(a)に示すように、半導体モジュール16の製造方法は、金型72の第1面72aと直交する方向に沿って、除去加工面16aと第1面72aとの相対距離を近づける工程を有している。第1面72aと直交する方向は、第2面72cと直交する方向と同じである。半導体モジュール16は、除去加工面16aが第1面72aと平行関係にある状態を維持される。第1放熱面34b全面及び第2放熱面36b全面が第2面72cと対向する状態を維持しながら、除去加工面16aと第1面72aとの相対距離は近づけられる。例えば、半導体モジュール16は、除去加工面16aと直交する方向に上面52d側から荷重が加えられることで、除去加工面16aと第1面72aとの平行関係を保ちつつ固定された金型72に近づく。半導体モジュール16は、除去加工面16aが金型72の第1面72aに接触するまで荷重が加えられる。なお、除去加工面16aと第1面72aとの相対距離が近づけばよいため、例えば、半導体モジュール16は固定され、金型72は可動であってもよい。この場合、金型72は、第1面72aと直交する方向に沿って荷重が加えられることで、除去加工面16aと第1面72aとの平行関係を保ちつつ固定された半導体モジュール16に近づく。また、半導体モジュール16及び金型72はともに可動であってもよい。この場合、半導体モジュール16は、除去加工面16aと直交する方向に上面52d側から荷重が加えられ、さらに、金型72は、第1面72aと直交する方向に沿って荷重が加えられる。半導体モジュール16及び金型72は、除去加工面16aと第1面72aとの平行関係を保ちつつ互いに近づく。
図9の(b)に示すように、半導体モジュール16の製造方法は、金型72に形成された掘り込み部72bの第2面72cに配置された第2絶縁材料82と除去加工面16aとを接触させることで、除去加工面16aと直交する方向の厚さが一定の第2絶縁体62を除去加工面16aに形成する工程を有している。
第1放熱面34b全面及び第2放熱面36b全面が第2面72cと対向する状態を維持しながら除去加工面16aと第1面72aとの相対距離を近づけていくと、第2面72cに配置された第2絶縁材料82の頂部は、除去加工面16aと接触する。さらに除去加工面16aと第1面72aとの相対距離を近づけていくと、第2絶縁材料82は、除去加工面16aと第2面72cとで挟まれ、第2面72cと直交する方向の両側から加圧される。第2絶縁材料82は、第2面72cと直交する方向に縮むとともに第2面72c方向に延びるように変形する。第2絶縁材料82の変形に伴い、除去加工面16aは、第2絶縁材料82で徐々に被覆される。さらに除去加工面16aが第1面72aに接触すると、除去加工面16aは、掘り込み部72bの開口を塞ぐように金型72と合わされる。第2絶縁材料82は、除去加工面16aと掘り込み部72bとで形成される空間内に行き渡る。掘り込み部72bは、第2絶縁材料82で充填された状態になる。なお、第1放熱面34b及び第2放熱面36bは、第1面72aと接触することなく第2面72cと対向し、第1絶縁体52の外面52cの一部は、第1面72aに接触するため、除去加工面16aが掘り込み部74に嵌ることはない。
半導体モジュール16により変形された第2絶縁材料82は、除去加工面16aに貼り付き、第2絶縁体62を形成する。第2絶縁体62は、第1放熱面34bと第2放熱面36bを被覆する。第2絶縁体62は、除去加工面16aと直交する方向の厚さが一定の厚さで構成されている。なお、除去加工面16aが第1面72aに接触するとき、除去加工面16aは、掘り込み部72bの開口全体を塞がなくてもよい。掘り込み部72bの開口の一部が除去加工面16aで塞がれていなければ、掘り込み部72b全体に行き渡る量以上の余分な第2絶縁材料82は、除去加工面16aからの圧力により、除去加工面16によって塞がれていない開口の一部を介して掘り込み部72bから溢れ出る。
その後、図9の(c)に示すように、半導体モジュール16の製造方法は、金型72を半導体モジュール16から取り外して、半導体モジュール16のアフターキュアを行う工程を備えている。金型72は、底面52c及び第2絶縁体62から取り外される。第2絶縁体62は、アフターキュアにより、完全に硬化する。
上述のような金型72を用いて半導体モジュール16の除去加工面16aに第2絶縁体62を形成する工程によれば、第2絶縁体62は、除去加工面16aに貼り付けられると共に、除去加工面16aと直交する方向の厚さが一定の厚さで構成される。本実施形態に係る半導体モジュール16の製造方法は、除去加工面16aに第2絶縁体62を貼り付ける工程と、除去加工面16aと直交する方向における第2絶縁体62の厚さを一定の厚さに調整する工程とを1つの工程で行うことができる。したがって、本実施形態に係る半導体モジュール16の製造方法は、製造工程数を減らすことができる。
さらに、本実施形態に係る半導体モジュール16の製造方法によれば、第2絶縁体62を成形するための金型は、金型72のみ用意すればよい。樹脂材料の成形は、通常2つの金型を用いて行われるが、本実施形態では、半導体モジュール16自体が第2絶縁材料82を成形するために用いられる金型72の対となる金型として機能する。つまり、除去加工面16aが金型72に接触する時、除去加工面16aは、掘り込み部72bの開口を塞ぐように金型72と合わされる。第2絶縁材料82は、除去加工面16aと掘り込み部72bとで模られる形状に成形される。したがって、本実施形態に係る半導体モジュール16の製造方法は、第2絶縁体62を成形する際に用いる金型を簡素化することができる。
以上により、本実施形態によれば、受熱面18a上に複数個配置する場合であっても、放熱性を損わせることなく冷却器12の受熱面18a上に容易に固定することができる半導体モジュール16を簡易に製造することができる。
次に、2次モールド工程前の第2絶縁材料82のプリフォーム工程について説明する。プリフォーム工程は、除去加工面16aを金型72に接触させる前に、第2面72cに配置された第2絶縁材料82を成形する工程である。第2絶縁材料82は、金型72上で軟化して変形可能な状態のときに成形される。なお、第2絶縁材料82は、金型72上で成形することなく、ここで説明するプリフォーム工程と同様の工程により他の金型で成形された後のものを第2面72cに配置してもよい。
図10は、実施形態のプリフォーム工程の一例を説明するための図である。図10は、第1面72aと直交する面における金型72の断面図である。
第2絶縁材料82は、凸状の曲面形状に成形されている。第2絶縁材料82は、第2面72cと直交する方向における高さが第2面72cの第1地点で最も高く、第1地点よりも遠い第2面72cの第2地点の高さが第1地点よりも遠くなるにつれ徐々に低くなる曲面形状に成形されていてもよい。第2絶縁材料82は、第2面72cと直交する方向の高さが最も高い第2面72cの位置を第1地点とした場合、第1地点よりも遠い第2地点の高さが第1地点より遠くなるにつれ徐々に低くなる曲面形状に成形されていてもよい。第2絶縁材料82は、例えば、半球状、楕円体、半円筒形状等に成形されている。なお、第2絶縁材料82が配置される第2面72cの位置は特に限定されないが、第2絶縁材料82は、第2面72cの中央近傍に配置されていれば、掘り込み部72b全体に行き渡りやすくなる。第2絶縁材料82の頂部の位置は、例えば、第2面72cの中央近傍にあるが、この位置に限られるものではない。
第2絶縁材料82は、例えば、金型74を用いて成形されるが、他の手段で成形されてもよい。金型74は、上記のように第2絶縁材料82を成形可能な形状にかたどられている。図10(a)に示すように、金型74は、第2面72cに直交する方向に沿って、第2面72cに近づけられる。金型74は、図10(b)に示すように、金型74は、第2面72cに対して押し当てることで、第2絶縁材料82を成形する。
プリフォーム工程前の第2絶縁材料82の形状がばらついていても、プリフォーム工程後の第2絶縁材料82の形状は、常に同じになる。上述の半導体モジュール16の製造過程において第2絶縁材料82と除去加工面16aとを接触させたときに、プリフォームされた第2絶縁材料82は、掘り込み部72b内でほぼ同じような広がり方をする。そのため、複数の半導体モジュール16それぞれに形成される第2絶縁体62は、ほぼ同じ形状となる。したがって、プリフォーム工程によれば、半導体モジュール16に対する第2絶縁体62の形成ミスを防止することができる。なお、金型74は、常に同じ形状に第2絶縁材料82を成形できればよいため、高精度な形状の金型を必要としない。そのため、プリフォーム工程に金型74を用いることは、大きなコストアップとはならない。
さらに、図10に示すような形状に成形された第2絶縁材料82によれば、第1面72aと直交する方向に沿って除去加工面16aと第1面72aとの相対距離を近づけていく過程において、除去加工面16aと第2絶縁材料82との間隔は、第2絶縁材料82の頂部と対向する除去加工面16aの位置が最も狭く、この地点よりも遠くなるにつれ徐々に広くなる。第1面72aと直交する方向に沿って除去加工面16aと第1面72aとの相対距離を近づけていくと、第2絶縁材料82の頂部が最初に除去加工面16aに接触する。さらに除去加工面16aを第1面72aに近づけるにつれ、第2絶縁材料82は、頂部が接触した地点から離れる方向に順々に除去加工面16aを被覆していく。第2絶縁材料82は、空気を巻き込むことなく除去加工面16aを被覆する。第2絶縁体62と除去加工面16aとの間にボイドが発生することはない。図10に示すように成形された第2絶縁材料82により第2絶縁体62が形成された半導体モジュール16は、ボイドに起因する放熱性の低下を招くことはない。
図11は、実施形態のプリフォーム工程の他の例を説明するための図である。図11は、金型72を第1面72a側から見た平面図である。第2面72cは、略矩形状で形成されている。第2絶縁材料82は、第2面72cの中央近傍に配置されている。
略矩形状の第2面72c上における第2絶縁材料82の外縁は、第2面72cの各辺と略平行な辺を有している。図11に示す例では、第2絶縁材料82の外縁は、第2面72cの4辺と略平行な4辺を有している。
さらに、第2絶縁材料82の外縁は、第2面72cの4つの頂点近傍において、第2面72cの中央部分から第2面72cの4つの頂点に向けて突出した形状に成形されている。第2絶縁材料82の外縁は、第2面72cの各辺と略平行な第2絶縁材料82の各辺を延して形成される仮想的な頂点よりも、この仮想的な頂点の近傍にある第2面72cの頂点の近くに位置する形状に成形されていてもよい。第2絶縁材料82の外縁は、仮想的な頂点からこの仮想的な頂点の近傍にある第2面72cの頂点に向けて突出する形状に成形されていてもよい。第2絶縁材料82の外縁は、第2面72cの頂点から第2絶縁材料82までの間隔が第2面72cの辺とこの辺に略平行な第2絶縁材料82の辺との間隔以下となるように成形されていてもよい。第2絶縁材料82の外縁は、第2面72cの略相似形状の頂点部分よりも第2面72cの頂点側に突出した形状に成形されていてもよい。
第2絶縁材料82が掘り込み部72の角部の近くに配置されていなければ、第2絶縁材料82は、除去加工面16aからの圧力により第2面72cの中央近傍から離れる方向に延びるように変形したとしても、確実に掘り込み部72の角部まで到達しない可能性がある。掘り込み部72bの開口の一部が除去加工面16aで塞がれていなければ、第2絶縁材料82は、掘り込み部72の角部を充填することなく、開口の一部を介して掘り込み部72bから溢れ出ることもある。
図11に示すように成形された第2絶縁材料82は、掘り込み部72の角部近傍へ効率よく広がり、掘り込み部72の角部における充填性を高めることができる。半導体モジュール16の除去加工面16aには、掘り込み部72で規定する設計どおりの第2絶縁体62を高精度に形成可能である。
なお、図11に示す第2絶縁材料82は、図10に示した曲面形状を組み合わせてもよい。第2絶縁材料82は、第2面72cと直交する方向における高さが第2面72cの中央近傍の第1地点で最も高く、第1地点から第2面72cの頂点の近くに位置する第2地点にかけて徐々に低くなる曲面形状に成形されていてもよい。このような第2絶縁材料82は、空気を巻き込むことなく除去加工面16aを被覆できるだけでなく、掘り込み部72の角部近傍への充填性を高めることができる。
なお、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、半導体モジュールおよび電力変換装置の構成部材の寸法、形状等は、前述した実施形態に限定されることなく、設計に応じて種々変更可能である。