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JP6307005B2 - 摩擦攪拌点接合における接合状態の評価方法、並びに、この評価方法を用いた摩擦攪拌点接合装置 - Google Patents

摩擦攪拌点接合における接合状態の評価方法、並びに、この評価方法を用いた摩擦攪拌点接合装置 Download PDF

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JP6307005B2 JP2014216644A JP2014216644A JP6307005B2 JP 6307005 B2 JP6307005 B2 JP 6307005B2 JP 2014216644 A JP2014216644 A JP 2014216644A JP 2014216644 A JP2014216644 A JP 2014216644A JP 6307005 B2 JP6307005 B2 JP 6307005B2
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Description

本発明は、摩擦攪拌点接合における接合状態の評価方法と、この評価方法を用いた摩擦攪拌点接合装置とに関し、特に、複動式の摩擦攪拌点接合において、被接合物の接合状態を良好に評価することが可能な方法と、この方法を用いた摩擦攪拌点接合装置とに関する。
自動車、鉄道車両、航空機等の輸送機器においては、金属材料を連結するときには、抵抗スポット溶接またはリベット接合が用いられていた。しかしながら、近年では、摩擦攪拌接合が注目されている。この摩擦攪拌接合は、摩擦熱を利用して金属材料を接合する方法であり、先端にピン部材を有する円柱状の回転工具(接合ツール)を用いる。この回転工具は、被接合物に向かって進退移動可能に構成され、高速で回転しながら所定範囲の圧力もしくは速度等で進出移動することで、被接合物(金属材料)中に押し込まれる(圧入される)。回転工具が圧入された部位では、金属材料が軟化するため、この軟化した金属材料を攪拌することで被接合物同士が接合される。
摩擦攪拌点接合法においては、回転工具として、円柱状のピン部材のみを用いる単動式と、ピン部材およびショルダ部材を用いる複動式とが知られている。複動式に用いられるショルダ部材は、ピン部材の外側に位置する円筒状であって、ピン部材と同一の軸線周りに回転するとともに当該軸線方向に進退移動可能に構成されている。
ところで、単動式の摩擦攪拌点接合法の分野では、被接合物の接合状態(例えば、接合強度、または接合領域等)を評価するための技術が種々提案されている。例えば、特許文献1では、加工時(摩擦攪拌点接合時)に、被接合物となる部材の発熱状態を検出し、この部材に対する回転ツールの押し込み状態を検出し、発熱状態と押し込み状態とから部材の加工状態を検出する加工管理方法が開示されている。
また、特許文献2では、被接合物の接合強度を推定するために、予め定められる接合条件に従って、摩擦攪拌による被接合物の変形状態を数値解析によって算出する形状算出工程と、この工程で算出される変形状態に基づいて、接合物の接合強度を算出する強度算出工程とを含む接合強度推定方法を提案している。
特開2002−292478号公報 特開2005−186083号公報
このように、単動式の摩擦攪拌点接合法の分野では、被接合物の接合状態を評価するための技術が知られている。しかしながら、複動式の摩擦攪拌点接合法の分野では、被接合物の接合状態を評価するための技術は、今のところ、ほとんど提案されていない。
また、複動式の摩擦攪拌点接合法では、ピン部材およびショルダ部材という2種類の回転工具によって攪拌部を埋め戻すため、外観上において接合強度を判別する方法は少ない。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、複動式の摩擦攪拌点接合法において、被接合物の接合状態を良好に評価することが可能な技術を提案することを目的とする。
本発明に係る摩擦攪拌点接合における接合状態の評価方法は、前記の課題を解決するために、回転工具として、軸線周りに回転し、かつ、当該軸線方向に進退移動可能に構成されている円柱状のピン部材と、当該ピン部材の外側を囲うように位置し、当該ピン部材と同一の軸線周りに回転するとともに当該軸線方向に進退移動可能に構成されている円筒状のショルダ部材と、をそれぞれ進退移動可能な状態で用い、被接合物の表面を前記回転工具により部分的に攪拌することによって、当該被接合物を接合し、その後に、当該接合部に生じている凹み量を、少なくとも前記接合部の接合強度の指標として用いる構成である。
本発明者らの鋭意検討の結果、接合部およびその周辺に凹みが生じていると、接合部の接合強度が低下すること、並びに、特に接合部がプラグ破断する場合、凹み量と接合強度との間にリニアな関係が生じることが明らかとなった。それゆえ、前記構成によれば、凹み量を接合強度の指標として用いることで、複動式の摩擦攪拌点接合において被接合物の接合強度を評価することが可能となる。
また、接合部およびその周辺に凹みが生じている理由は、ピン部材とショルダ部材との間に材料が入り込み接合部の材料が減少していたり、接合部の周囲に変形部が生じたり、接合部に近接する被接合物のエッジ部がある場合には、エッジ部に変形部が生じているためであることも明らかとなった。それゆえ、前記構成によれば、凹み量は、接合強度の指標だけでなく、エッジ部の変形の指標とすることもできるため、部品の変形等の品質(部品品質)も評価することが可能となる。
前記構成の接合状態の評価方法においては、前記被接合物の接合後に、当該接合部の凹み量を測定し、測定した前記凹み量が予め設定される閾値未満であるときには、前記接合部の接合状態が良好であると判定し、測定した前記凹み量が前記閾値以上であるときには、前記接合部の接合状態が不良であると判定する構成であってもよい。
また、前記構成の接合状態の評価方法においては、前記回転工具の当接面を、接合前後の前記被接合物の前記表面に当接させて、それぞれの位置を検出し、接合前の前記当接面の位置と接合後の前記当接面の位置との差分を、前記凹み量として算出する構成であってもよい。
また、本発明に係る摩擦攪拌点接合装置は、前記の課題を解決するために、回転工具によって被接合物を部分的に攪拌することにより接合する摩擦攪拌点接合装置であって、前記回転工具として、軸線周りに回転し、かつ、当該軸線方向に進退移動可能に構成されている円柱状のピン部材と、当該ピン部材の外側を囲うように位置し、当該ピン部材と同一の軸線周りに回転するとともに当該軸線方向に進退移動可能に構成されている円筒状のショルダ部材と、を備えているとともに、前記ピン部材および前記ショルダ部材を、それぞれ前記軸線に沿って進退移動するように動作させる工具駆動部と、前記工具駆動部の動作を制御する接合制御部と、を備え、さらに、前記回転工具の当接面が前記被接合物に当接した時点の位置を検出する工具当接位置検出部と、当該工具当接位置検出部により検出された、接合前の前記当接面の位置と接合後の前記当接面の位置との差分を、接合部の凹み量として算出する凹み量算出部と、を備えている構成である。
前記構成の摩擦攪拌点接合装置においては、前記ショルダ部材の外側に位置し、前記被接合物を表面から押圧するクランプ部材をさらに備え、前記工具当接位置検出部は、接合前後における前記クランプ部材の当接面の位置を、前記回転工具の当接面の位置と見なして検出し、前記凹み量算出部は、接合前後における前記クランプ部材の当接面の位置の差分を、前記凹み量として算出する構成であってもよい。
本発明では、以上の構成により、複動式の摩擦攪拌点接合法において、被接合物の接合状態を良好に評価することが可能となる、という効果を奏する。
本発明の実施の形態に係る接合状態の評価方法が適用される、一般的な摩擦攪拌点接合装置の要部構成の一例を示す模式的ブロック図である。 摩擦攪拌点接合により接合された被接合物において、エッジディスタンス(ED)を説明する模式図である。 図2に示す被接合物において、接合部の厚みが低下した(凹んだ)状態を説明する模式図である。 被接合物の凹み量とエッジ部の変形との関係を模式的に示す対比図である。 本発明の実施の形態1に係る接合状態の評価方法の代表的な一例を示す工程図である。 本発明の実施の形態2に係る摩擦攪拌点接合装置の要部構成の一例を示す模式的ブロック図である。 図6に示す摩擦攪拌点接合装置による、凹み量の測定の一例を示す模式図である。 図6に示す摩擦攪拌点接合装置の代表的な変形例の一例を示す模式的ブロック図である。 図6に示す摩擦攪拌点接合装置の代表的な変形例の他の例を示す模式的ブロック図である。 図9に示す摩擦攪拌点接合装置が備える回転工具位置センサの一例を示す模式図である。 本発明の代表的な実施例の結果を示すグラフである。
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
(実施の形態1)
[代表的な摩擦攪拌点接合装置の構成]
まず、本発明に係る接合状態の評価方法が適用される、複動式の摩擦攪拌点接合装置の基本的な構成について、図1を参照して具体的に説明する。
図1に示すように、本実施の形態で例示される摩擦攪拌点接合装置150は、回転工具10、工具駆動部20、クランプ部材30、裏当て部材40、および接合制御部51等を備えている。
回転工具10は、図示しない工具固定部により支持され、工具駆動部20によって進退移動および回転するように構成されている。クランプ部材30は、回転工具10の周囲に位置するように設けられ、クランプ押圧駆動部31により被接合物60を押圧するように構成されている。裏当て部材40は、回転工具10(およびクランプ部材30)に対向する位置に設けられており、回転工具10と裏当て部材40との間に被接合物60が配される。工具駆動部20およびクランプ押圧駆動部31は、接合制御部51によって制御される。
回転工具10は、ピン部材11およびショルダ部材12から構成されている。ピン部材11は、略円筒形または略円柱形であり、図示しない工具固定部により進退移動および回転可能に支持されている。このピン部材11は、工具駆動部20に含まれる回転駆動部23により軸線(回転軸)周りに回転し、工具駆動部20に含まれるピン駆動部21により、軸線方向(図1では上下方向)に沿って進退移動可能となっている。ショルダ部材12は、中空を有する略円筒状であり、中空内にピン部材11が内挿され、ピン部材11の外側において当該ピン部材11を囲むように工具固定部により支持されている。このショルダ部材12は、回転駆動部23によりピン部材11と同一の軸線周りに回転し、工具駆動部20に含まれるショルダ駆動部22により、軸線方向に沿って進退移動可能となっている。
このように、ピン部材11およびショルダ部材12は、いずれも工具固定部によって支持され、いずれも回転駆動部23により軸線周りに一体的に回転する。さらに、ピン部材11およびショルダ部材12は、ピン駆動部21およびショルダ駆動部22により、それぞれ軸線方向に沿って進退移動可能に構成されている。なお、ピン部材11は単独で進退移動可能であるとともに、ショルダ部材12の進退移動に伴っても進退移動可能となっている構成であってもよいし、ピン部材11およびショルダ部材12が互いに独立して進退移動可能な構成であってもよい。
クランプ部材30は、ショルダ部材12の外側に設けられ、ショルダ部材12と同様に、中空を有する円筒状であって、中空内にショルダ部材12が内挿されている。したがって、ピン部材11の外周に略円筒状のショルダ部材12が位置し、ショルダ部材12の外周に略円筒状のクランプ部材30が位置している。言い換えれば、クランプ部材30、ショルダ部材12およびピン部材11が、それぞれ同軸芯状の入れ子構造となっている。クランプ部材30は、被接合物60を一方の面(表面60c)から押圧するものであり、本実施の形態では、裏当て部材40側に付勢され、クランプ押圧駆動部31によって駆動される。クランプ押圧駆動部31は、本実施の形態では、工具駆動部20に一体的に設けられている。
裏当て部材40は、前記の通り、ピン部材11およびショルダ部材12の進出方向側に位置し、その上面が被接合物60を支持する支持面となっている。裏当て部材40は、被接合物60の表面60cをピン部材11およびショルダ部材12に向けた状態で、当該被接合物60の裏面60dを支持面により支持する。図1に示す例では、支持面は、平板状の被接合物60の裏面60dに当接するように平坦な面となっている。
なお、前述したクランプ部材30および裏当て部材40は、本実施の形態では、被接合物60に当接することにより、接合時における被接合物60の位置を保持する、被接合物保持部材として位置づけられる。
上記構成の回転工具10、工具駆動部20、クランプ押圧駆動部31、クランプ部材30および裏当て部材40の位置関係を整理すると、工具駆動部20およびクランプ押圧駆動部31の下方に回転工具10およびクランプ部材30が位置し、そのさらに下方に裏当て部材40が位置している。また、回転工具10を構成するピン部材11およびショルダ部材12、並びにクランプ部材30は、それぞれ当接面を備えている。回転工具10は工具駆動部20により進退移動し、クランプ部材30は、クランプ押圧駆動部31により押圧動作を行う。前述したとおり、回転工具10およびクランプ部材30は、裏当て部材40に対向しており、これらの間に被接合物60が配されるので、回転工具10およびクランプ部材30のそれぞれの当接面は、工具駆動部20およびクランプ押圧駆動部31により被接合物60の表面60c(第一面、一方の面)に当接可能となっている。
本実施の形態では、被接合物60は、第一板材61および第二板材62から構成されており、これら板材61,62の一部を重ね合わせた部位(重ね合わせ部)を回転工具10により接合する。第一板材61が上側に位置し、第二板材62が下側に位置するので、第一板材61の上面が被接合物60の表面60cとなり、第二板材62の下面が被接合物60の裏面60dとなる。
本実施の形態における回転工具10、工具固定部、工具駆動部20、クランプ部材30、クランプ押圧駆動部31、裏当て部材40、および接合制御部51の具体的な構成は特に限定されず、広く摩擦攪拌接合の分野で公知の構成を好適に用いることができる。例えば、工具駆動部20を構成するピン駆動部21、ショルダ駆動部22、および回転駆動部23は、本実施の形態では、いずれも摩擦攪拌接合の分野で公知のモータおよびギヤ機構等から構成されている。また、裏当て部材40は、摩擦攪拌点接合を実施できるように被接合物60を適切に支持することができるものであれば、その構成は特に限定されない。
また、クランプ押圧駆動部31は、クランプ部材30に付勢を与えたり加圧力を与えたりする構成であればよく、例えば、スプリング、ガス圧、油圧、サーボモータ等を用いた機構を好適に用いることができる。さらに、クランプ押圧駆動部31は、独立した駆動機構ではなく、ショルダ駆動部22に一体化された構成であってもよい。例えば、クランプ部材30がスプリング等を介してショルダ駆動部22に取り付けられる構成であれば、ショルダ駆動部22が、ショルダ部材12とともにクランプ部材30を進退移動させることができる。
なお、本実施の形態に係る摩擦攪拌点接合装置150は、図1には示されない他の機構または部材等を備えてもよいことは言うまでもない。また、本発明は、図1に示す構成の摩擦攪拌点接合装置150のみに限定されず、図1に示される部材または機構の一部が含まれていなくてもよい。例えば、クランプ部材30は、本発明において備えていると好ましい構成の一つであるが、備えていなくてもよい。また、裏当て部材40も、摩擦攪拌点接合装置150の構成として備えている必要はない。この場合、裏当て部材40は、摩擦攪拌点接合装置150とは別体として準備されればよく、回転工具10による接合時に、被接合物60の裏面60dに当接させればよい。
[摩擦攪拌点接合方法の一例]
次に、摩擦攪拌点接合装置150による被接合物60の接合について簡単に説明する。まず、回転工具10を被接合物60に接近させ、クランプ部材30を上側の第一板材61の表面60cに当接させるとともに、裏当て部材40を下側の第二板材62の裏面60dに当接させる。これにより、クランプ部材30と裏当て部材40とで板材61,62が挟み込まれ、クランプ部材30による押圧でクランプ力が発生する。
次に、接合制御部51の制御によって工具駆動部20が制御され、工具駆動部20(ピン駆動部21およびショルダ駆動部22)により、ピン部材11およびショルダ部材12を被接合物60の表面60cに当接させる。そして、工具駆動部20(回転駆動部23)により、ピン部材11およびショルダ部材12を表面60cに当接させた状態で回転させる。これにより、第一板材61の当接領域における金属材料が摩擦により発熱することで軟化し、塑性流動部が生じる。
次に、ピン駆動部21によりピン部材11をショルダ部材12から突き出すか、ショルダ駆動部22によりショルダ部材12をピン部材11から突き出す。これにより、ピン部材11またはショルダ部材12が、表面60cからさらに第一板材61の内部に進入(圧入)する。このとき、金属材料の軟化部位は、上側の第一板材61から下側の第二板材62にまで及び、塑性流動部が増加する。
さらに、塑性流動部の軟化した金属材料は、一方の回転工具10(ピン部材11またはショルダ部材12)により押し退けられ、他方の回転工具10(ショルダ部材12またはピン部材11)の直下に流動するので、他方の回転工具10が後退して一方の回転工具10から見て浮き上がる。なお、必要に応じて、工具駆動部20、突き出た一方の回転工具10を徐々に後退させる(引き込ませる)とともに、この後退に伴って他方の回転工具10を第一板材61に進入(圧入)させてもよい。
その後、一方の回転工具10を徐々に引き込ませる。このとき、回転工具10は、引き込み動作中であっても、その先端による加圧力は維持されている。それゆえ、一方の回転工具10が引き込まれる間、他方の回転工具10による回転および押圧が維持されるので、塑性流動部の軟化した材料は、一方の回転工具10の直下から他方の回転工具10の直下に流動し、その結果、一方の回転工具10の圧入により生じた凹部が埋め戻されていく。その後、ピン部材11の当接面およびショルダ部材12の当接面を、互いに段差がほとんど生じない程度に合わせる(面一とする)。これにより、第一板材61の表面60cが整形され、実質的な凹部が生じない程度の略平坦な面が得られる。
最後に、回転工具10および裏当て部材40を板材61,62から離し、一連の摩擦攪拌点接合が終了する。このとき、回転工具10の当接による回転(および押圧)は板材61,62に加えられなくなるので、板材61,62の双方に及ぶ塑性流動部では、塑性流動が停止し、軟化した金属材料が硬化して接合部となる。これにより、2枚の板材61,62は接合部によって連結されることになる。
ここで、本発明が接合対象とする被接合物60は、代表的には、金属で構成されているものであればよく、その金属の種類は具体的に限定されない。具体的な一例としては、アルミニウム系材料(アルミニウムまたはその合金)が挙げられるが、被接合物60はアルミニウム系材料以外にも、例えば、チタン、鉄等の他の金属またはその合金で構成されているものであってもよい。さらに、本発明は、アルミニウムとチタン、またはアルミニウムと鉄等、異種金属の接合にも有効であるので、被接合物60は、複数種類の金属から構成されてもよい。加えて、被接合物60は金属に限定されず、各種樹脂等のように摩擦攪拌接合が適用可能な材料であってもよい。
[接合状態の評価方法]
次に、摩擦攪拌点接合における接合状態の評価方法について、図2〜図4を参照して具体的に説明する。まず、被接合物60のエッジディスタンス(ED)について図2を参照して具体的に説明する。なお、図2は、重ね合わせ部60aの接合部60bにより第一板材61および第二板材62が連結された状態を模式的に示しており、接合部60bを中心とする部分断面図を、接合部60bを中心とする部分平面図に対応させて示している。
図2の上図は、EDの標準的な最小値(リベット接合等で採用される値)を模式的に示している。EDは、接合点である接合部60bの中心から第一板材61のエッジ部61a(または第二板材62のエッジ部62a)までの距離であり、標準的なEDの最小値は、接合部60bの直径dの2倍(ED=2d)に設定される。また、接合部60bが重ね合わせ部60aの中央に位置していれば、重ね合わせ部60aの幅は4dとなる。
ここで、図2の下図に示すように、EDを例えば2dからdに減少させることができれば、重ね合わせ部60aの幅は2dとなるので、第一板材61および第二板材62においては、網掛けの部分が不要となる。それゆえ、ED=dが実現できれば、図2の上図に示す標準的なEDの場合に比べて、被接合物60の継手構造に必要な材料を削減することができるので、継手構造そのものの軽量化を図ることが可能になる。さらに、図2には図示しないが、EDは、例えば2dから0.5dまで減少させることも可能である。
後述する実施例からも明らかなように、本発明者らの鋭意検討によれば、回転工具10の直径(すなわち、ショルダ部材12の直径(ショルダ径))Dを接合点の直径dと見なした(d=D)ときに、複動式の摩擦攪拌点接合法では、EDの最小値を約1.5Dまで減少させても継手構造のせん断強度が低下しなかった。しかしながら、EDが1.5Dを下回ると、継手構造のせん断強度が低下することが確認された。ここで、本発明者らがさらに鋭意検討した結果、EDが1.5Dを下回ると、図3に模式的に示すように、特に第一板材61のエッジ部61aに変形部61bが発生し、これに伴い、接合部60bおよびその周囲に凹み61cが生じることが明らかとなった。
前述したように、回転工具10が被接合物60に回転しながら圧入することによって、被接合物60には塑性流動部が発生し、この塑性流動部の流動が停止することで、接合部60bが生じる。塑性流動部は、基本的には、回転工具10の直下となる位置に発生するが、塑性流動部の周囲には、塑性流動まで至らないとしても、通常よりも材料が軟化した領域(軟化領域)が生じる。図3では、重ね合わせ部60aのうち、上側の第一板材61のエッジ部61a側に位置する点線の円で示す領域が、第一板材61における模式的な軟化領域に相当する。
EDが概ね1.5d以上であれば、軟化領域は第一板材61のエッジ部61aにまで至らないため、エッジ部61aには変形部61bが生じないと考えられる。しかしながら、EDが1.5dを下回ると、軟化領域がエッジ部61aにまで至るため、この軟化領域がエッジ部61aから外側に向かって弛緩することになり、結果として変形部61bが生じる。
しかも、変形部61bは、単にエッジ部61aの形状を変化させるだけでなく、凹み61cを生じさせる。凹み61cの発生は、第一板材61の板厚(厚み)を減少させることになり、接合部60bによる継手構造のせん断強度の低下にもつながる。図3では、第一板材61の変形部61bの変形量(エッジ部61aからの突出量)をdxとし、凹み61cの凹み量をr0としている。
なお、塑性流動部は、図3(あるいは図2)に示すように、第一板材61を貫通して生じ、回転工具10と被接合物60の表面60c(被接合箇所)との摩擦熱は、下側の第二板材62においても伝わるので、第二板材62にも軟化領域が生じる。それゆえ、図2および図3には図示しないが、第二板材62のエッジ部62aにおいても、同様に変形部が生じる。ただし、第二板材62では、第一板材61に比べて入熱量が少なくなる。そのため、材料の軟化領域も小さくなるので、第二板材62の変形部については、その変形の程度は変形部61bに比べて小さくなる場合が多い。そのため、図2および図3では、第二板材62の軟化領域、並びに第二板材62の変形部については図示していない。
さらに、後述する実施例に示すように、特に接合部60bがプラグ破断する場合には、凹み量とせん断強度との間には、実質的にリニアな関係があることが明らかとなっている(図11参照)。接合部60bの破断形態が第一板材61側のプラグ破断であると見なせば、継手としての被接合物60の接合強度は、第一板材61の板厚と接合部60bの円周長との積の大きさに関係すると見なすことが可能となる。
例えば、図4の上図に示すように、凹み61c(つまり変形部61b)が生じていない状態(理想状態)では、凹み量Rc=0であるので第一板材61の板厚Jt0は最大となる。これに対して、図4の中図に示すように、凹み量Rc=r1の凹み61cが生じている状態であれば、第一板材61の板厚Jt1は、板厚Jt0よりも小さくなる(Jt1=Jt0−r1<Jt0)。それゆえ、この状態では、標準状態よりも接合部60bのせん断強度が低下する。さらに、図4の下図に示すように、凹み61cの凹み量Rc=r2が、r1よりも大きい状態(r2>r1)であれば、第一板材61の板厚Jt2は、板厚Jt1よりもさらに小さくなる(Jt2=Jt0−r2<Jt1<Jt0)。それゆえ、この状態では、標準状態よりも接合部60bのせん断強度がさらに低下する。
このように、本発明では、被接合物60を接合した後に、接合部60bに凹み61cが生じているときには、当該凹み61cの程度(凹み量Rc)を、少なくとも接合部60bの接合強度の指標として用いている。凹み61cの程度が小さければ、せん断強度の低下が小さいため、接合部60bの接合強度が高いと評価することができる。また、凹み61cの程度が小さければ、変形部61bの発生の程度も小さいため、被接合物60の部品品質が高いと評価することもできる。
本発明に係る接合状態の評価方法の一例について、図5を参照して具体的に説明する。まず、図1に示すような複動式の摩擦攪拌点接合装置150を用いて、被接合物60を接合する。そして、接合が完了すれば(ステップS01)、接合部60bの凹み量Rcを測定する(ステップS02)。
凹み量Rcの測定方法は特に限定されず、例えば、公知の測定機器を用いて、接合部60bおよびその周辺(重ね合わせ部60a)の厚みを測定し、接合前の厚みと比較することにより算出する方法が挙げられる。このとき、接合前の厚みは、前記測定機器で接合前に実測してもよいし、実測せずに、第一板材61の厚みと第二板材62の厚みとを加算したものを採用してもよい。また、後述する実施の形態2で説明するように、接合前後における回転工具10またはクランプ部材30の当接面の位置に基づいて、被接合物60の重ね合わせ部60aの厚みを測定し、凹み量Rcの算出に利用してもよい。
次に、測定した凹み量Rcが、予め設定される閾値以上であるか否かを判定する(ステップS03)。この閾値の具体的な値は特に限定されず、第一板材61および第二板材62の厚み、接合部60bに要求される接合強度、厚み測定に利用した測定機器の性能等に応じて適宜設定することができる。
後述する実施例では、ED=2D、ED=1.5D、ED=Dの接合サンプル、およびED=Dでエッジ部61aの変形を抑制した接合サンプルは、値にある程度のばらつきはあるものの強度と凹み量にリニアな関係が存在する。そこで、後述する実施例の条件であれば、例えば、強度要求が4400Nであれば0.040mmを閾値に設定することができる。あるいは、強度要求が4000Nであれば閾値を0.100mmに設定してもよい。
次に、凹み量Rcが閾値以上であれば(ステップS03でYES)、接合強度または部品品質が不適であると見なすことができるので、接合状態が不良であると判定する(ステップS04)。一方、凹み量Rcが閾値以上でなければ、すなわち閾値未満であれば(ステップS03NO)、接合状態が良好であると判定し(ステップS05)、一連の評価方法を終了する。
ここで、本実施の形態では、接合状態の良否判定のみで評価方法を終了してもよいが、例えば、図5に示すように、接合状態が不良であると判定された(ステップS04)後に、さらに、凹み量Rcの大きさに基づいて、接合部60bの接合強度の低下(あるいはエッジ部61aに生じた変形部61bの変形の程度)を判定してもよい(ステップS05)。例えば、後述する実施例では、凹み量Rcとせん断強度との間に成立する実質的にリニアな関係を、例えば、「せん断強度[単位:N]=−8000×凹み量[単位:mm]+4900」という一次関数に近似できる(図11参照)ので、この一次関数に基づいて、凹み量Rcの大きさからせん断強度の近似値を推定するような判定を行うことができる。同様に、変形部61bの変形の程度も、上記のような一次関数等に近似できるのであれば、凹み量Rcから変形の程度(部品品質の程度)も判定することができる。
このように、本発明では、凹み量Rcを少なくとも接合強度の指標として用いることで、接合部60bの接合強度を評価することが可能となるとともに、凹み量Rcをエッジ部61aの変形の指標とすることもできるので、被接合物60の部品品質も凹み量Rcで評価することが可能となる。なお、図5に示す評価方法は、公知の演算素子または論理回路を用いて実行されてもよいし、所定のマニュアルを作成して参照することにより、接合作業を行う作業者によって実行されてもよい。
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、本発明に係る接合状態の評価方法の基本的な構成について説明したが、本実施の形態2では、この接合状態の評価方法を適用した摩擦攪拌点接合装置の一例について、図6〜図9を参照して具体的に説明する。
図6に示すように、本実施の形態に係る摩擦攪拌点接合装置50Aは、前記実施の形態1で例示した一般的な摩擦攪拌点接合装置150と同様の構成を有しているが、工具当接位置検出部52および凹み量算出部53を備えている点が異なっている。
工具当接位置検出部52は、接合の前後においてピン部材11またはショルダ部材12が被接合物60に当接した時点の位置を検出するものである。
接合時には、ピン部材11またはショルダ部材12は、材料が軟化するまでの間、被接合物60の表面60cで、わずかではあるが一定時間留まることになる。そこで、ショルダ部材12を例に挙げると、工具当接位置検出部52は、接合制御部51から得られるショルダ部材12の位置情報(エンコーダで得られる移動速度等)から、当該ショルダ部材12が被接合物60に当接して一定時間留まった時点の位置を、接合前位置として検出する。
同様に、接合後には、ピン部材11またはショルダ部材12は、軟化した材料が硬化するまでの間、被接合物60の表面60cで一定時間留まることになる。そこで、ショルダ部材12を例に挙げると、当該ショルダ部材12が被接合物60に当接して一定時間留まった時点の位置を、接合後位置として検出する。
なお、ピン部材11による接合前位置および接合後位置の検出も同様である。また、工具当接位置検出部52は、裏当て部材40の支持面(裏当て面)から、被接合物60の公称の板厚あるいは予め測定した板厚分だけオフセットされた位置を、接合前位置として検出してもよい。
凹み量算出部53は、工具当接位置検出部52により検出された接合前位置と接合後位置との差分から、凹み量を算出する。
工具当接位置検出部52および凹み量算出部53の具体的な構成は特に限定されない。本実施の形態では、接合制御部51が、マイクロコンピュータのCPUであって、工具駆動部20の動作に関する演算を行うよう構成されていれば、工具当接位置検出部52および凹み量算出部53は、接合制御部51の機能構成となっていればよい。すなわち、接合制御部51としてのCPUが、図示しない記憶部等に格納されるプログラムに従って動作することにより、工具当接位置検出部52および凹み量算出部53が実現される構成であればよい。
また、工具当接位置検出部52は、接合制御部51で生成されるモータ回転情報(モータの回転角度または回転速度等)から、接合前位置および接合後位置を検出できる構成であってもよい。この場合、工具当接位置検出部52は、接合制御部51の機能構成に限定されず、公知のスイッチング素子、減算器、比較器等による論理回路等として構成されてもよい。同様に、凹み量算出部53も、接合制御部51の機能構成に限定されず、公知のスイッチング素子、減算器、比較器等による論理回路等として構成されてもよい。
工具当接位置検出部52および凹み量算出部53による凹み量の算出について、具体的に説明する。図7の上図に示すように、回転工具10(ピン部材11およびショルダ部材12の少なくとも一方)の当接面を、接合前の被接合物60の表面60cに当接させる。このとき、工具当接位置検出部52は、前記の通り、接合前位置P1を検出する。次に、接合制御部51の制御によって工具駆動部20が制御され、前記実施の形態1で説明したように、被接合物60の接合が行われる。接合後、図7の下図に示すように、工具当接位置検出部52は、前記の通り、接合後位置P2を検出する。接合前位置P1および接合後位置P2は、凹み量算出部53に入力され、凹み量算出部53は、接合前位置P1と接合後位置P2との差分から、凹み量Rcを算出する(図7に示す例では、Rc=r0)。
このように、本発明に係る摩擦攪拌点接合における接合状態の評価方法では、回転工具10の当接面を、接合前後の被接合物60の表面60cに当接させて、それぞれの位置を検出し、接合前の前記当接面の位置と接合後の前記当接面の位置との差分を、凹み量Rcとして算出する構成であってもよい。
また、この構成に用いられる摩擦攪拌点接合装置50Aは、回転工具10(ピン部材11およびショルダ部材12)、工具駆動部20、並びに接合制御部51に加えて、回転工具10の当接面が被接合物60の表面60cに当接した時点の位置を検出する工具当接位置検出部52と、当該工具当接位置検出部52により検出された、接合前の当接面の位置と接合後の当接面の位置との差分を、接合部60bの凹み量として算出する凹み量算出部53とを備えている構成であればよい。
前記構成によれば、通常の接合動作時において、接合終了後の回転工具10の位置から凹み量をリアルタイムで測定することが可能となる。それゆえ、接合後に、凹み量を測定するための機器を別途用いる必要がなく、また、凹み量を測定する工程を、実質的に、一連の接合動作における一工程に含めることができる。その結果、接合動作を進めながら接合状態の評価を行うことができるので、より効率的な接合状態の評価が可能となるとともに、接合状態の評価結果を接合制御に利用することも可能となる。
なお、本発明は、図6に示す構成の摩擦攪拌点接合装置50Aに限定されず、例えば、図8に示すように、クランプ部材30を備えている摩擦攪拌点接合装置50Bであってもよいし、図9に示すように、クランプ部材30に加えて回転工具位置センサ35を備えている摩擦攪拌点接合装置50Cであってもよい。
図8に示す摩擦攪拌点接合装置50Bでは、工具当接位置検出部52は、前記の通り、回転工具10の当接面の位置を検出する構成であってもよいが、クランプ部材30の当接面の位置を、回転工具10の当接面の位置と見なして検出してもよい。このとき、凹み量算出部53は、接合前後におけるクランプ部材30の当接面の位置の差分を、凹み量Rcとして算出すればよい。
クランプ部材30は、前述したように、ショルダ部材12の外側に位置し、被接合物60の表面60cを押圧するものである。したがって、塑性流動部が生じていない限り、接合前後においては、クランプ部材30の当接面は、実質的に回転工具10の当接面の位置と同じであるとみなすことができる。
また、図9に示す摩擦攪拌点接合装置50Cでは、工具当接位置検出部52を備えていない代わりに、回転工具位置センサ35を備えている。この構成では、図8に示す摩擦攪拌点接合装置50Bと同様に、クランプ部材30の当接面の位置を、回転工具10の当接面の位置と見なして検出しているが、回転工具10の進退移動による当接面の位置の変化pは、回転工具位置センサ35により検出している。
回転工具位置センサ35の具体的な構成は特に限定されないが、例えば、図10に示すように、クランプ部材30に基づいて回転工具10(図10ではショルダ部材12)の当接面の位置を間接的に検出する小型センサを挙げることができる。
摩擦攪拌点接合装置50Cには、図10に示すように、ショルダ部材12とともに進退移動するプレート15が設けられているが、回転工具位置センサ35(小型センサ)は、このプレート15の下面と、クランプ部材30の上面との間に設けられており、プレート15とクランプ部材30との間隔を検出する。小型センサは、コアおよびコイルを備えており、コイルがクランプ部材30の上面に位置し、コアがプレート15の下面に位置する。なお、小型センサの構成はこれに限定されず、例えば、コイルがプレート15の下面に位置し、コアがクランプ部材30の上面に位置してもよい。
図10に示す例では、プレート15とクランプ部材30との間にスプリング31a(ショルダ駆動部22に一体化されたクランプ押圧駆動部31の一例)が設けられており、プレート15とクランプ部材30との間隔(便宜上、プレート・クランプ間隔とする)を例えばc0に保持している。そして、ショルダ部材12が被接合物60の表面60cに圧入されると、スプリング31aが押さえ付けられて、プレート・クランプ間隔がc0からc1に縮小する。
このとき、小型センサ(回転工具位置センサ35)のコアは、プレート15を介してショルダ部材12の進退移動とともに上下移動するため、小型センサは、前記間隔がc0からc1に変化したことを検出する。図9に示す例では、回転工具10(ピン部材11およびショルダ部材12)は被接合物60に圧入していないが、図10に示すように、ショルダ部材12が被接合物60に圧入していれば、回転工具10の位置の変化pは「圧入深さ」となる。それゆえ、ショルダ部材12の圧入深さpは、圧入前のプレート・クランプ間隔c0から圧入時のプレート・クランプ間隔c1を差し引いた値(p=c0−c1)となる。したがって、この圧入深さpは、前記の通り「回転工具10の進退移動による当接面の位置の変化」(図9参照)に相当する。図10に示すように、クランプ部材30は、被接合物60の表面60c上から移動しないので、プレート・クランプ間隔を小型センサで検出することにより、ショルダ部材12(回転工具10)の当接面の位置の変化を間接的に取得することができる。
本発明について、実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。
回転工具10として直径D=7.0mmの複動式のものを用いた。なお、複動式の回転工具10はピン部材11およびショルダ部材12から構成されるので、回転工具10の直径Dは、ショルダ径に相当する。この直径Dを接合部60b(接合点)の直径dと見なす(d=D)。
被接合物60のうち第一板材61として、25mm×125mm×1.016mm(厚さ)の7075−T6アルミニウム板を、第二板材62として、25mm×125mm×1.27mm(厚さ)の2024−T3アルミニウム板材を準備し、重ね合わせ部60aの幅が4D,3D,または2Dとなるように、第一板材61および第二板材62を重ね合わせた。この重ね合わせ部60aの中央部を回転工具10により接合して、接合サンプルを作製した。なお、重ね合わせ部60aの幅が4Dの場合、ED=2Dとなる(図2の上図参照)。また、重ね合わせ部60aの幅が3Dの場合、ED=1.5Dとなる。また、重ね合わせ部60aの幅が2Dの場合、ED=Dとなる(図3参照)。
ED=2Dの接合サンプル(便宜上、「2Dサンプル」とする)を合計10個作製し、ED=1.5Dの接合サンプル(便宜上、「1.5Dサンプル」とする)を合計10個作製し、ED=Dの接合サンプル(便宜上、「Dサンプル」とする)を合計10個作成し、それぞれの各接合サンプルに対して、接合後1時間後にせん断引張り試験を実施することにより、接合部60bのせん断強度(単位:N)を計測した。また、それぞれの接合サンプルについて、実施の形態2で例示したように、回転工具10の当接面の接合前位置P1および接合後位置P2から凹み量(単位:mm)を算出した。
凹み量を横軸にせん断強度を縦軸にとったグラフに対して、2Dサンプルの結果を白抜きの菱形でプロットし、1.5Dサンプルの結果を黒の正方形でプロットし、Dサンプルの結果を黒の三角形でプロットした。その結果を図11に示す。
また、Dサンプルとは別に、ED=Dであり、かつ、エッジ部61aの変形を抑制した接合サンプルを作製した。具体的には、重ね合わせ部60aの幅が2Dとなるように第一板材61および第二板材62を重ね合わせ、上側の第一板材61のエッジ部61aに対して、アルミニウムブロックを当接させ、この状態で、重ね合わせ部60aの中央部を回転工具10により接合した。
この接合サンプルでは、エッジ部61aにアルミニウムブロックが当接しているので、エッジ部61aの変形が抑制され、その結果、凹み61cの発生も抑制されていることになる。この接合サンプル(便宜上、「(D+P)サンプル」とする)を合計10個作成し、前記と同様に引張り試験を実施するとともに凹み量を算出した。この(D+P)サンプルの結果は、白抜きの円で前記グラフにプロットした。その結果を図11に示す。
図11の結果から明らかなように、2Dサンプル、1.5Dサンプル、およびDサンプルの各プロットは、実質的に一つの直線上に位置していると見なすことができる。それゆえ、せん断強度と凹み量とは、互いにリニアな関係にあることが分かる。このようなリニアな関係を一次関数的に表現すると、例えば、「せん断強度[単位:N]=−8000×凹み量[単位:mm]+4900」という関係式に近似することができる。このように、本実施例の結果によれば、凹み量に基づいて、接合部60bの接合強度を評価することが可能であることが分かる。
また、(D+P)サンプルは、Dサンプルに比べてエッジ部61aに生じる変形部61bの程度が小さく、そのため、凹み量も小さくなっている。そして、図11から明らかなように、(D+P)サンプルも、2Dサンプル、1.5DサンプルおよびDサンプルと同様に、実質的に一つの直線状に位置していると見なすことができる。これにより、エッジ部61aの変形の程度が小さければ、良好なせん断強度を実現できることが分かる。したがって、凹み量に基づいてエッジ部61aの変形の程度も評価できるので、凹み量が、被接合物60の部品品質の評価にも適用できることが分かる。
なお、本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明は、複動式の摩擦攪拌点接合を用いて被接合物を接合する分野に広く好適に用いることができる。
10 回転工具
11 ピン部材(回転工具)
12 ショルダ部材(回転工具)
30 クランプ部材
35 回転工具位置センサ(小型センサ)
50A,50B 摩擦攪拌点接合装置
51 接合制御部
52 工具当接位置検出部
53 凹み量算出部
60 被接合物
60b 接合部(接合点)
61 第一板材(被接合物)
61a エッジ部
61b 変形部
61c 凹み
62 第二板材(被接合物)
62a エッジ部

Claims (5)

  1. 回転工具として、
    軸線周りに回転し、かつ、当該軸線方向に進退移動可能に構成されている円柱状のピン部材と、
    当該ピン部材の外側を囲うように位置し、当該ピン部材と同一の軸線周りに回転するとともに当該軸線方向に進退移動可能に構成されている円筒状のショルダ部材と、
    をそれぞれ進退移動可能な状態で用い、
    被接合物の表面を前記回転工具により部分的に攪拌することによって、当該被接合物を接合し、その後に、当該接合部に生じている凹み量を、少なくとも前記接合部の接合強度の指標として用い
    前記被接合物の接合後に、当該接合部の凹み量を測定し、
    測定した前記凹み量が予め設定される閾値未満であるときには、前記接合部の接合状態が良好であると判定し、
    測定した前記凹み量が前記閾値以上であるときには、前記接合部の接合状態が不良であると判定することを特徴とする、
    摩擦攪拌点接合における接合状態の評価方法。
  2. 前記回転工具の当接面を、接合前後の前記被接合物の前記表面に当接させて、それぞれの位置を検出し、
    接合前の前記当接面の位置と接合後の前記当接面の位置との差分を、前記凹み量として算出することを特徴とする、
    請求項に記載の摩擦攪拌点接合における接合状態の評価方法。
  3. 前記凹み量と前記接合部とのせん断強度とは、当該接合部のプラグ破断において一次関数として近似される関係にあり、
    前記接合部の接合強度の評価のために、算出された前記凹み量の大きさから前記一次関数に基づいて、前記接合物のプラグ破断におけるせん断強度の近似値を推定することを特徴とする、
    請求項2に記載の摩擦攪拌点接合における接合状態の評価方法。
  4. 回転工具によって被接合物を部分的に攪拌することにより接合する摩擦攪拌点接合装置であって、
    前記回転工具として、
    軸線周りに回転し、かつ、当該軸線方向に進退移動可能に構成されている円柱状のピン部材と、
    当該ピン部材の外側を囲うように位置し、当該ピン部材と同一の軸線周りに回転するとともに当該軸線方向に進退移動可能に構成されている円筒状のショルダ部材と、
    を備えているとともに、
    前記ピン部材および前記ショルダ部材を、それぞれ前記軸線に沿って進退移動するように動作させる工具駆動部と、
    前記工具駆動部の動作を制御する接合制御部と、
    を備え、
    さらに、請求項1から3のいずれか1項に記載の摩擦攪拌点接合装置における接合状態の評価方法を実行すべく、前記被接合物の接合後に、当該接合部の凹み量を測定するために、
    前記回転工具の当接面が前記被接合物に当接した時点の位置を検出する工具当接位置検出部と、
    当該工具当接位置検出部により検出された、接合前の前記当接面の位置と接合後の前記当接面の位置との差分を、接合部の凹み量として算出する凹み量算出部と、
    を備えていることを特徴とする、
    摩擦攪拌点接合装置。
  5. 前記ショルダ部材の外側に位置し、前記被接合物を表面から押圧するクランプ部材をさらに備え、
    前記工具当接位置検出部は、接合前後における前記クランプ部材の当接面の位置を、前記回転工具の当接面の位置と見なして検出し、
    前記凹み量算出部は、接合前後における前記クランプ部材の当接面の位置の差分を、前記凹み量として算出することを特徴とする、
    請求項4に記載の摩擦攪拌点接合装置。
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