以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1〜図13は、この発明の第1実施の形態を示す。この実施の形態のヒューズ付きガス栓1は、図1〜図5に示すように、栓本体2、ガス弁3、保持部材4、受け部材5及びヒューズ弁6を有している。
栓本体2は、外筒部2A、内筒部2B及び接続筒部2Cを有している。外筒部2A、内筒部2B及び接続筒部2Cは、いずれも両端が開口したストレートな円筒体として形成されている。各筒部2A〜2Cは、必ずしも断面円形にする必要がなく、断面非円形であってもよい。外筒部2A、内筒部2B及び接続筒部2Cの内部により、ガスが流れるガス通路2Dが構成されている。
外筒部2Aの一端部(上流側の端部;図1において右端部。以下、説明の便宜上、ヒューズ付きガス栓1の構成を図1の左右を用いて説明することとする。勿論、この発明は、そのような方向性に限定されるものではない。)の外周面には、テーパ雄ねじ部2aが形成されている。このテーパ雄ねじ部2aには、一次側のガス管(図示せず)が螺合固定される。そして、一次側ガス管から外筒部2Aの内部の右端部にガスが供給される。したがって、外筒部2Aの内部の右端部が、ガス通路2Dの最も上流側になっている。なお、テーパ雄ねじ部2aに代えてストレートな雄ねじ部を形成してもよく、外筒部2Aの内周面の開口部側の端部にテーパ雌ねじ部又はストレートな雌ねじ部形成してもよい。
内筒部2Bの右端側には、内筒部2Bの大部分を占める小径部(内管部)2bが形成され、他端部には外径及び内径が小径部2bの外径及び内径よりそれぞれ大径である大径部2cが形成されている。小径部2bと大径部2cとは、同軸に配置されている。小径部2bの内周面と大径部2cの内周面との間には、段差面2dが形成されている。小径部2bの大径部2cに隣接する左端部には、フランジ部2eが環状に形成されている。フランジ部2eの外径は、大径部2cの外径より大径になっている。
小径部2bは、外筒部2Aの内部にその左端開口部から挿入されている。小径部2bの左端部は、外筒部2Aの左端開口部に螺合されている。そして、フランジ部2eが外筒部2Aの左端面に突き当たるまで螺合されることにより、内筒部2Bが外筒部2Aに固定されている。なお、小径部2bと外筒部2Aとの螺合箇所は、接着剤によって封止されているが、Oリング等のシール部材によって封止してもよい。
小径部2bは、外筒部2Aと同軸に配置されている。しかも、小径部2bのうちの外筒部2Aとの螺合箇所を除く部分は、外筒部2Aの内径より小径になっている。この結果、小径部2bの外周面と外筒部2Aの内周面との間には、環状の隙間2Eが形成されている。勿論、この隙間2Eもガス通路2Dの一部を構成している。
小径部2bの周壁部には、これを径方向に貫通する連通孔2fが形成されている。連通孔2fは、小径部2bと外筒部2Aとの螺合箇所に隣接して配置されている。したがって、連通孔2fの外側の開口部は、隙間2Eの左端部に面している。つまり、連通孔2fは、隙間2Eの左端部に連通している。したがって、外筒部2Aに供給されたガスは、連通孔2fを通って内筒部2Bの内部に流入する。後述するように、小径部2bの図1における右端開口部が保持部材4によって閉じられている。したがって、外筒部2A内に流入したガスは、連通孔2fを通ってのみ内筒部2B内に流入する。
大径部2cは、外筒部2Aから左方に突出させられている。大径部2cの内周には、接続筒部2Cの右端部が螺合固定されている。したがって、内筒部2B内に流入したガスは、内筒部2Bの他端部開口部から接続筒部2C内に流入する。接続筒部2Cの左端側の外周面には、日本工業規格(JIS S 2135)で定められた寸法及び形状を有するプラグ部2gが形成されている。ガス栓1の使用時には、プラグ部2gに同規格で定められたソケット(図示せず)が外挿して接続される。したがって、外筒部2Aに流入したガスは、内筒部2B及び接続筒部2Cの内部を通ってソケットに流入し、さらにソケットに接続されたガス管を介してガス機器(図示せず)に供給される。なお、大径部2cと接続筒部2Cとの螺合箇所は、接着剤によって封止されているが、Oリング等のシール部材によって封止してもよい。また、ソケットの構造は周知であり、この発明との関連性も低いのでその説明を省略する。
上記のように、ガス通路2Dの長手方向の中間部には、小径部2bが設けられている。この結果、ガス通路2Dが、小径部2bより上流側に位置する第1部分2Fと、小径部2bより下流側に位置する第2部分2Gとに区分されている。このガス栓1においては、外筒部2Aの内部が第1部分2Fになっており、接続筒部2Cの内部が第2部分2Gになっている。第1部分2Fと第2部分2Gとは、連通孔2f及び小径部2bの内部によって連通されている。
接続筒部2Cの内部には、その右端から略中央部まで延びるストレート孔部2hが形成されている。このストレート孔部2hは、その軸線を接続筒部2Cの軸線と一致させて配置されている。したがって、ストレート孔部2hの軸線は、内筒部2Bの軸線(小径部2bの軸線)とも一致している。ストレート孔部2hの内径は、小径部2bの内径より大径になっている。ストレート孔部2hの内周面の右端部には、環状に延びる凹部が形成されている。この凹部は、図1の右側の側部が開放されているが、その開放された側部が段差面(第1当接部)2dによって閉じられている。この結果、凹部と段差面とによって左右両側部が閉じられた断面「コ」字状の装着凹部2iが形成されている。この装着凹部2iには、シール部材7が装着されている。
シール部材7は、ゴムその他の柔軟性を有する樹脂からなるものであり、円形のリング状に形成されている。シール部材7は、断面略「V」字状をなしており、その幅(シール部材7の軸線方向の寸法)が径方向内側へ向かうにしたがって大きくなっている。シール部材7の断面形状は、「V」字状に限定されるものでなく、断面「コ」字状であってもよく、あるいは中空又は中実の円形であってもよい。シール部材7の外径は、その外周部が装着凹部2iの底面に押圧接触するよう、装着凹部2iの底面の直径より大径であることが望ましいが、同等又はストレート孔部2hの内径より大径である限りにおいて装着凹部2iの底面の直径より若干小径であってもよい。シール部材7の内径は、ストレート孔部2hの内径より小径になっている。したがって、シール部材7の内周部は、装着凹部2iから内側に突出している。シール部材7の幅は、装着凹部2iに対してストレート孔部2hの軸線方向へ移動することができるように定められていてもよく、移動することができないように定められていてもよい。後者の場合には、ストレート孔部2hの軸線方向におけるシール部材7の一側部が段差面2dに常時接触し、他側部が装着凹部2iの一側面(図1において左側面)に常時接触する。
接続筒部2Cの内周面には、弁座2jが環状に形成されている。弁座2jは、ストレート孔部2hより左側(ガス通路2Dの下流側)に配置されている。弁座2jは、左方へ向かって小径になるテーパ面によって構成されており、ストレート孔部2hと同軸に配置されている。弁座2jの最大内径は、ストレート孔部2hの内径より小径になっている。弁座2jは、テーパ面に代えて、円弧面その他の曲面によって構成してもよい。
内筒部2B及び接続筒部2Cの内部には、ガス弁3が内筒部2B及び接続筒部2Cの長手方向(ガス通路2Dの長手方向)へ移動可能に挿入されている。ガス弁3は、右側の上流側弁部3Aと左側の下流側弁部(弁体)3Bとを有している。上流側弁部3Aと下流側弁部3Bとは、互いに別体に構成されている。しかし、両者は、後述する場合を除き、一体に移動する。したがって、上流側弁部3Aと下流側弁部3Bとは、一体に形成してもよい。
上流側弁部3Aは、両端が開口した金属製の円筒体によって構成されている。図6及び図7に示すように、上流側弁部3Aの周方向の一側部には、その長手方向の一端から他端まで延びるスリット3aが形成されている。それによって、上流側弁部3Aが断面C字状に形成され、弾性的に拡縮径可能になっている。上流側弁部3Aの外径は、内筒部2Bの内径より所定の寸法だけ大径に設定されている。したがって、上流側弁部3Aは、弾性的に縮径した状態で内筒部2Bに挿入されており、上流側弁部3Aの外周面は、上流側弁部3A自体の弾性力によって内筒部2Bの内周面に押し付けられている。しかも、上流側弁部3Aは、内筒部2Bにその長手方向(ガス通路2Dの長手方向)へ摺動可能に挿入されている。上流側弁部3Aは、図1に示す第1閉位置と図3に示す第1開位置との間を移動可能(摺動可能)である。
上流側弁部3Aは、スリット3aが連通孔2fに対して内筒部2Bの周方向へ180°離れた状態で内筒部2Bに挿入されている。内筒部2Bの内周面のスリット3aと対向する箇所には、凹部2kが形成されている。この凹部2kには、球体8がその一部を内筒部2Bの内部に突出させた状態で挿入されている。内筒部2Bの内部に突出した球体8の一部は、スリット3aにその長手方向へ相対移動可能に、かつ上流側弁部3Aの周方向へは移動不能に挿入されている。この結果、上流側弁部3Aが、内筒部2Bに対しその長手方向へは移動可能であるが、周方向へは位置固定されている。
上流側弁部3Aの左端部(下流側の端部)には、切欠き部3bが形成されている。この切欠き部3bは、内筒部2Bの周方向には連通孔2fと同一位置に配置されており、図3に示すように、上流側弁部3Aが第1開位置に位置すると連通孔2fと対向する。しかも、切欠き部3bは、連通孔2fより一回り大きな寸法を有しており、上流側弁部3Aが第1開位置に位置すると、切欠き部3bの周縁部が連通孔2fを囲むように外側に位置する。したがって、上流側弁部3Aが第1開位置に位置すると、連通孔2fに流入したガスは、上流側弁部3Aの周壁部にぶつかることなく切欠き部3bを通って上流側弁部3Aの左側の端部(下流側の端部)に流入する。
図1に示すように、切欠き部3bは、上流側弁部3Aが第1閉位置に移動すると、連通孔2fより左側に位置する。したがって、上流側弁部3Aが第1閉位置に移動すると、上流側弁部3Aの周壁部の右端部が連通孔2fと対向してこれを閉じる。しかも、上記のように、上流側弁部3Aの外周面が上流側弁部3A自体の弾性によって内筒部2Bの内周面に押圧接触しているので、連通孔2fの内側の開口部は、上流側弁部3Aによって確実に閉じられる。したがって、上流側弁部3Aが第1閉位置に位置すると、外筒部2Aと内筒部2Bとの間が遮断される。つまり、ガス通路2Dが閉じられ、ガス栓1が閉状態になる。
次に、説明の便宜上、下流側弁部3Bを説明する前に保持部材4について説明すると、保持部材4は、図8及び図9に示すように、その右端部に底部4aを有し、左端が開口させられている。つまり、保持部材4は、有底円筒状に形成されている。図1〜図5に示すように、保持部材4は、その開口部を先にした状態で小径部2bの内部にその右端開口部から挿入されており、右端部が小径部2bの右端開口部に螺合固定されている。この結果、小径部2bの右端開口部が保持部材4によって閉じられている。したがって、外筒部2A内のガスは、内筒部2B内に連通孔2fを通ってのみ流入する。なお、保持部材4と小径部2bとの螺合箇所は、接着剤によって封止されているが、Oリング等のシール部材によって封止してもよい。
保持部材4のうちの底部4aを除く部分の外径は、内筒部2Bの内径より小径になっている。この結果、保持部材4の外周面と内筒部2Bの内周面との間には、環状の隙間9が形成されている。この環状の隙間9の左端部には、上流側弁部3Aの右端部が左右方向へ移動可能に挿入されている。上流側弁部3Aと底部4aとの間には、コイルばねからなる付勢手段としての主ばね10が配置されている。主ばね10の右端部は、保持部材4の底部4aに突き当たっており、左端部は上流側弁部3Aにリング11を介して突き当たっている。したがって、上流側弁部3Aは、主ばね10によって第1開位置から第1閉位置に向かって左方へ付勢されており、ガス栓1の不使用時には第1閉位置に位置させられている。
図3に示すように、上流側弁部3Aが第1開位置に位置しているときには、保持部材4の左端部が切欠き部3b(以下、上流側弁部3Aが開位置に位置しているときの切欠き部3bを「開位置の切欠き部3b」と称する。)を越えてその左側まで延びている。したがって、保持部材4の周壁部の左端部は、開位置の切欠き部3bと対向する。開位置の切欠き部3bと対向する保持部材4の周壁部には、窓孔4b(図8参照)が形成されている。窓孔4bは、切欠き部3bより一回り大きな寸法を有しており、開位置の切欠き部3bを囲むように配置されている。したがって、連通孔2f及び切欠き部3bを通過したガスは、直ちに窓孔4bに流入し、窓孔4bから保持部材4内に流入する。保持部材4内に流入したガスは、保持部材4の左端開口部から上流側弁部3Aの左端部内に流入する。なお、窓孔4bは、周方向に180°離れて二つ形成されている。これは、二つの窓孔4bのうちのいずれか一方が必ず開位置の切欠き部3bと対向するようにするためのものである。窓孔4bは一つだけ形成してもよい。
次に、下流側弁部3Bについて説明すると、下流側弁部3Bは、円筒状をなす筒部(分離部)3cを有している。筒部3cの外径は、小径部2bの内径とほぼ同一に設定されている。筒部3cの右端部(上流側の端部)は、小径部2bの内周面の左端部に摺動可能に挿入されている。筒部3cの右端面は、上流側弁部3Aの左端面に突き当てられている。したがって、筒部3c(下流側弁部3B)は、主ばね10により上流側弁部3Aを介して左方に付勢されており、通常時は上流側弁部3Aと一緒に移動する。よって、上流側弁部3Aが第1閉位置に移動すると、下流側弁部3Bも第1閉位置に移動し、上流側弁部3Aが第1開位置に移動すると、下流側弁部3Bも第1開位置に移動する。
筒部3cの内部は、通路孔(連通孔)3dとされている。通路孔3dは、筒部3cの中央部をその右端面から左端面まで貫通している。通路孔3dの右端開口部には、上流側弁部3Aから左方に流出したガスが流入する。特に、この実施の形態では、筒部3cの右端面が上流側弁部3Aの左端面に接触しているので、上流側弁部3A内のガスが通路孔3d内に直接流入する。筒部3cと上流側弁部3Aとの間には、リング等を介在させてもよい。通路孔3d内に流入したガスは、通路孔3dの左端開口部から流出して接続筒部2Cのストレート孔部2h内に流入する。つまり、通路孔3dの左端開口部から流出したガスは、筒部3cより下流側に位置するガス通路2Dの内部であって、弁座2jより上流側のガス通路2D内に流入する。
筒部3cの下流側の部分は、接続筒部2Cのストレート孔部2hに挿入されている。ストレート孔部2hの内径は、小径部2bの内径より大径になっている。したがって、筒部3cの外周面とストレート孔部2hの内周面との間には、環状の隙間12が形成されている。
筒部3cの外周面の下流側の端部には、環状突出部3eが形成されている。この環状突出部3eの外径は、ストレート孔部2hと同等か僅かに小径であり、ストレート孔部2hの内周面に左右方向へ移動可能に挿入されている。図3に示すように、環状突出部3eは、上流側弁部3A及び下流側弁部3Bが第1開位置に移動すると、シール部材7に突き当たり、これを接続筒部2Cの軸線方向に押して段差面2dに押圧接触させる。換言すれば、上流側弁部3A及び下流側弁部3Bが第1開位置に移動すると、シール部材7の図3における左右の両側部が環状突出部3e及び段差面2dにそれぞれ押圧接触する。この結果、段差面2dと環状突出部3eとの間がシール部材7によって封止され、ひいてはストレート孔部2h(ガス通路2D)の内周面と下流側弁部3Bの外周面との間がシール部材7によって封止される。しかも、シール部材7は、押し潰されると弾性変形して拡径し、その外周部が装着凹部2iの底面により一層強く押圧接触する。これにより、ストレート孔部2hの内周面と下流側弁部3Bの外周面との間がより一層確実に封止される。
このように、下流側弁部3Bが第1開位置に移動すると、筒部3cの外周面とストレート孔部2hの内周面との間が封止されるので、弁座2jより上流側に位置するガス通路2Dの内部が、筒部3cより上流側に位置する上流側部分2Hと、筒部3cより下流側に位置する下流側部分2Iに区分される。上流側部分2Hと下流側部分2Iとは、下流側弁部3Bが第1開位置に位置しているときには通路孔3dの内部だけを介して連通する。したがって、通路孔3dを開閉することによってガス通路2Dを開閉することができる。
通路孔3dの内周面には、ヒューズ弁座3fが形成されている。このヒューズ弁座3fは、通路孔3dの長手方向の中間部に配置されているが、通路孔3dの左側の開口部に接するように配置してもよい。ヒューズ弁座3fは、軸線を筒部3cの軸線と一致させたテーパ面によって形成されており、左方へ向かって小径になっている。ヒューズ弁座3fは、テーパ面に代えて、外側に凸の球面又は他の曲面によって構成してもよい。
筒部3cの左端面には、左側に向かって延びる支持腕部3gが二つ形成されている。二つの支持腕部3gは、筒部3cの周方向へ互いに180°離れて配置されている。したがって、筒部3cから流出したガスは、二つの支持腕部3f,3f間に形成された隙間を通って抵抗なく接続筒部2Cの内部(ストレート孔部2hの内部)に流入する。支持腕部3g,3gの先端部には、弁部3hが形成されている。弁部3hは、下流側弁部3Bが第1開位置に位置しているときには、弁座2jに対して右側(上流側)に離間しているが、上流側弁部3A及び下流側弁部3Bが主ばね10によって第1閉位置まで移動させられると、弁座2jに着座する。換言すれば、弁部3hが弁座2jに着座することによって上流側弁部3A及び下流側弁部3Bの第1閉位置が定められている。弁部3hが弁座2jに着座すると、ガス通路2Dが閉じられてガス栓1が閉状態になる。
上流側弁部3A及び下流側弁部3Bが第1閉位置に位置している状態において、プラグ部2gにソケットが外挿されると、図3に示すように、ソケットに設けられた押しロッドRが弁部3hの左端面に突き当たり、下流側弁部3B及び上流側弁部3Aを主ばね10の付勢力に抗して右側(上流側)へ移動させる。ソケットがプラグ部2gに対し所定の接続位置まで外挿されると、下流側弁部3B及び上流側弁部3Aが所定の位置まで移動する。このときの下流側弁部3B及び上流側弁部3Aの位置が第1開位置である。下流側弁部3B及び上流側弁部3Aが第1開位置に位置した状態では、保持部材4の先端部が下流側弁部3Bの筒部3c内に入り込んでいる。したがって、連通孔2fから切欠き部3b及び窓孔4aを通って保持部材4の内部に流入したガスは、上流側弁部3Aの内部に入ることなく、下流側弁部3Bの通路孔3d内に直接入り、さらに通路孔3dを通って接続筒部2Cのストレート孔部2h内に入り込む。そして、接続筒部2Cからソケットに流入し、ガス器具に供給される。
ソケットをプラグ部2gから取り外すと、押しロッドRが左方へ移動する。その結果、上流側弁部3A及び下流側弁部3Bが主ばね10によって左側(下流側)移動させられる。上流側弁部3A及び下流側弁部3Bは、弁部3hが弁座2jに着座すると、それ以上左側へ移動することができなって停止する。つまり、第1閉位置において停止する。上流側弁部3A及び下流側弁部3Bが第1閉位置において停止すると、連通孔2fが上流側弁部3Aによって閉じられるとともに、ガス通路2Dの下流側の端部が弁部3gによって閉じられる。この結果、ガス栓1が閉状態になる。
保持部材4の左端部と下流側弁部3Bとの間には、コイルばねからなる付勢手段としての副ばね13が設けられている。副ばね13は、下流側弁部3Bを左側(下流側)へ付勢している。したがって、仮に上流側弁部3Aが第1開位置から第1閉位置側へ移動する途中に不慮の事故によって停止したとしても、下流側弁部3Bは副ばね13によって第1閉位置まで移動させられて、ガス通路2Dを閉じる。これにより、ガス栓1の安全性の向上が図られている。
図1及び図2に示すように、上流側弁部3A及び下流側弁部3Bが第1閉位置に位置しているときには、保持部材4の先端部が下流側弁部3Bより右側に位置しており、上流側弁部3Aの内部にのみ入り込んでいる。図3に示すように、上流側弁部3A及び下流側弁部3Bが第1開位置に位置すると、保持部材4が上流側弁部3A及び下流側弁部3Bに対して相対的に左方へ移動する結果、保持部材4の先端部が上流側弁部3Aを通過して下流側弁部3B内に入り込む。ただし、必ずしもこのように構成する必要はなく、保持部材4の先端部は、常時、上流側弁部3Aの内部又は下流側弁部3Bの内部に位置させてもよい。
保持部材4の先端部の内部には、受け部材(停止部)5が固定して設けられている。受け部材5には、ヒューズ弁6が支持されている。
すなわち、図6及び図10〜図13に示すように、受け部材5は、両端が開口した断面円形の筒部5aを有している。この筒部5aは、その軸線を保持部材4の軸線と一致させた状態で保持部材4の内周面の先端部に嵌合固定されている。筒部5aの右端面は、窓孔4bより左側(下流側)に配置されている。したがって、窓孔4bを通って保持部材4の内部に流入したガスは、筒部5a内に流入し、筒部5aを通って下流側弁部3Bの通路孔3d内に流入する。
筒部5aの右端面には、右側(上流側)に向かって延びる複数(この実施の形態では3つ)の支持腕部(停止部)5bが設けられている。支持腕部5bは、周方向へ互いに離間して配置されている。したがって、支持腕部5b,5b間には、隙間が形成されており、窓孔4bから保持部材4内に流入したガスは、その隙間を通って筒部5a内に入り込む。
支持腕部5bの長手方向の中間部には、支持筒部(支持部)5cが設けられている。支持筒部5cは、その軸線を筒部5aの軸線と一致させて配置されている。支持筒部5cの左端面は、図3及び図4に示すように、第1開位置に位置しているときの上流側弁部3Aの左端面とほぼ同一位置に位置するように配置されている。したがって、支持筒部5cの左端面は、連通孔2fの左端より若干左側(下流側)に位置し、しかも窓孔4bの左端面より若干右側に位置させられている。支持筒部5cの右端面は、連通孔2fの左右方向の略中央と一致するように配置されているが、連通孔2fの中央より上流側に配置してもよく、下流側に配置してもよい。
支持筒部5cには、ヒューズ弁6が左右方向へ移動可能に支持されている。ヒューズ弁6は、柄の長いキノコ状をなしており、左側に向かって膨出するように湾曲した略半球状のヒューズ弁部6aと、このヒューズ弁部6aの右端面中央部から右方へ向かって延びるガイド軸部6bとを有している。
ヒューズ弁部6aは、その右端面(上流側の端面)が支持筒部5cの左端面(下流側の端面)に突き当たった位置と、第1開位置に位置している下流側弁部3Bのヒューズ弁座3fに着座した図4に示す位置との間を移動可能である。ヒューズ弁部6aの右端面が支持筒部5cの左端面に突き当たっているときのヒューズ弁6の位置が第2開位置であり、ヒューズ弁部6aがヒューズ弁座3fに着座しているときのヒューズ弁6の位置が第2閉位置である。ヒューズ弁6が第2開位置に位置しているときには、ヒューズ弁部6aの右端部が連通孔2fの中央より若干左側(下流側)に位置している。ヒューズ弁部6aは、ヒューズ弁6が第2開位置に位置しているとき、ヒューズ弁部6a全体が連通孔2fより下流側に位置するように配置してもよい。ただし、保持部材6内のガスが受け部材5の筒部5aに流入する際に、ヒューズ弁部6aが流入するガスに対して大きな抵抗とならないように考慮する必要がある。
ガイド軸部6bは、支持筒部5cより十分に長い長さを有しており、支持筒部5cの内部、つまりガイド孔5d内に左右方向へ移動可能に挿通されている。しかも、ガイド軸部6bの先端部(上流側の端部)は、支持腕部5bを越えて上流側に延びている。ガイド軸部6bが支持筒部5cに挿通されることにより、ヒューズ弁6が上流側弁部3A及び下流側弁部3Bの軸線上を移動することができるようになっている。
支持腕部5bを越えて上流側(右側)に延びるガイド軸部6bの先端部には、止め輪14が固定されている。この止め輪14は、ヒューズ弁6が第2閉位置を若干の距離(例えば、2〜5mm程度)だけ越えて下流側へ移動すると、支持腕部5bの先端面に突き当たるように配置されている。止め輪14が支持腕部5bに突き当たると、ヒューズ弁6がそれ以上下流側へ移動することができなくなって停止する。
上記止め輪14と支持筒部5cとの間に位置するガイド軸部6bには、コイルばねからなるヒューズばね15が設けられている。ヒューズばね15の一端部(上流側の端部)は、止め輪14に突き当たり、他端部(下流側の端部)は、支持筒部5cに突き当たっている。したがって、ヒューズばね15の一端部は、支持腕部5bより上流側に位置している。一方、ヒューズばね15の他端部は、複数(この実施の形態で3つ)の支持腕部5bによって囲まれている。ヒューズばね15のコイル部の外径は、支持腕部5bに内接する内接円の直径とほぼ同一か、僅かに小径に設定されている。
ヒューズばね15は、止め輪14を介してガイド軸部6bを右方へ付勢し、ひいてはヒューズ弁6を第2閉位置から第2開位置へ向かう方向へ付勢している。ヒューズ弁6は、通常時はヒューズばね15によって第2開位置に位置させられている。
ヒューズばね15の付勢力は、ガス通路2D内を流れるガスの流量が正常の範囲又はそれ以下のときにはヒューズ弁6が第2開位置から第2閉位置側へ移動することを阻止し、ガスの流量が正常の範囲を越えた異常時には、ヒューズ弁6がガスによって第2開位置から第2閉位置まで移動することを許容するような大きさに設定されている。したがって、ソケットがプラグ部2gに接続された状態、つまりガス栓1が開いた状態において、ガス通路2D内を流れるガスの流量が正常であるときには、ヒューズばね15の付勢力によってヒューズ弁部6aが支持筒部5cの左端面に押し当てられて、ヒューズ弁6が第2開位置に位置させられている。その一方、ガス通路2D内を流れるガスの流量が過剰になった場合、例えばソケットに接続されたガス管がソケット又はガス器具から外れてガス通路2D内を流れるガスの流量が過剰になった場合には、ヒューズ弁6がガスの圧力によりヒューズばね15の付勢力に抗して第2開位置から第2閉位置まで移動させられ、ヒューズ弁部6aがヒューズ弁座3fに着座する。その結果、下流側弁部3Bの通路孔3dが閉じられ、ひいてはガス通路2Dが閉じられる。したがって、ガス漏れ等の事故を未然に防止することができる。
なお、シール部材7が設けられていないと、上流側部分2H内のガスが、内筒部2Bの内周面と筒部3cの外周面との間の隙間、ストレート孔部2hの内周面と筒部3cの外周面との間の隙間12(図1参照)及びストレート孔部2hの内周面と環状突出部3eの外周面との間の隙間を通って下流側部分2I内に流入し、そこからソケットを介して外部に漏れるおそれがある。しかるに、このヒューズ付きガス栓1において、下流側弁部3Bが第1開位置に位置し、かつヒューズ弁6が第2閉位置に位置しているときには、筒部3cの外周面とストレート孔部2hの内周面との間がシール部材7によって封止されている。したがって、ヒューズ弁6が第2閉位置に位置しているときにガスが漏れることを確実に防止することができる。
ヒューズばね15のピッチ及びヒューズばね15を構成する線材の直径は、ヒューズ弁6が第2閉位置に位置したときは勿論のこと、ヒューズ弁6が第2閉位置を越えて下流側へ若干移動したとしても線材の1ピッチ間に隣接する部分どうしが接触しないように定められている。すなわち、ヒューズ弁6が第2開位置から第2閉位置まで移動させられると、その移動距離の分だけヒューズばね15が圧縮される。しかし、このときには、ヒューズばね15を構成する線材の1ピッチ間に隣接する部分どうしが接触することがない。
下流側弁部3Bが第1開位置に位置し、かつヒューズ弁6が第2閉位置に位置している状態において、ソケットがプラグ部2gから抜け出る方向へ移動させられると、それに伴って下流側弁部3B(及び上流側弁部3A)が主ばね10によって下流側へ移動させられる。すると、ヒューズ弁座3fに着座したヒューズ弁6がガスによって押されて下流側弁部3Bと一緒に下流側へ移動させられる。ヒューズ弁6が例えば2〜5mm程度の若干の距離だけ下流側へ移動すると、止め輪14が受け部材5の支持腕部(停止部)5bの先端面(右端面)に突き当たり、それ以上下流側へ移動することができなくなる。したがって、その後は下流側弁部3B及び上流側弁部3Aだけが主ばね10によって第1閉位置まで下流側へ移動させられる。一方、ヒューズ弁座3fから離間したヒューズ弁6は、ヒューズばね15によって第2開位置まで戻される。
止め輪14が支持腕部5bに突き当たることによってヒューズ弁6が停止させられたとき、ヒューズばね15が最も圧縮される。しかし、この状態においても、ヒューズばね15を構成する線材の1ピッチ間に隣接する部分どうしが接触することがないように、ヒューズばね15のピッチ及びヒューズばね15を構成する線材の直径が定められている。したがって、ヒューズばね15は、座屈することがない。よって、ヒューズばね15の一部が塑性変形してその付勢力が変化してしまったり、あるいは線材の隣接する部分どうしが絡み合って元の状態に戻ることができなくなったりすることを確実に防止することができる。
上記構成のヒューズ付きガス栓1は、図6と図7との比較から明らかなように、次のようにして組み立てることができる。まず、内筒部2B、接続筒部2C、シール部材7及び下流側弁部3Bを組み立ててユニット化する。また、保持部材4、受け部材5、ヒューズ弁6、ヒューズばね15及び止め輪14を組み立ててユニット化する。
内筒部2B、接続筒部2C、シール部材7及び下流側弁部3Bのユニット化に際しては、まず内筒部2Bの大径部2cの左端開口部からシール部材7及び下流側弁部3Bを順次挿入し、その後、大径部2cに接続筒部3Cを螺合固定する。これによって、内筒部2B、接続筒部2C、シール部材7及び下流側弁部3Bをユニット化することができる。
保持部材4、受け部材5、ヒューズ弁6、ヒューズばね15及び止め輪14のユニット化に際しては、まず受け部材5の筒部5aにヒューズ弁6のガイド軸部6bを挿通する。その後、筒部5aから右方に突出したガイド軸部6bにヒューズばね15を外挿し、さらにガイド軸部6bの右端部に止め輪14を固定する。これによって、受け部材5にヒューズ弁6、ヒューズばね15及び止め輪14を受け部材5に組み付ける。その後、ヒューズ弁6、ヒューズばね15及び止め輪14が組みつけられた受け部材5を保持部材4の左端開口部から挿入し、受け部材5の筒部5aを保持部材4の左端開口部に嵌合固定する。これによって、保持部材4、受け部材5、ヒューズ弁6、ヒューズばね15及び止め輪14をユニット化することができる。
その後、ユニット化された内筒部2Bの内部にその右端開口部から副ばね12、上流側弁部3A、リング11及び主ばね10を順次挿入し、さらにユニット化された保持部材4を挿入する。そして、保持部材4を内筒部2Bに螺合固定する。その後、内筒部2Bの小径部2bを外筒部2Aに挿入して螺合固定する。これによってヒューズ付きガス栓1の組立が完了する。これから明らかなように、ヒューズ付きガス栓1の組立に際しては、数点の部品をユニット化して取り扱うことができるので、組立を容易に行うことができる。
上記構成のヒューズ付きガス栓1においては、ヒューズばね15が最も圧縮された状態においてもヒューズばね15を構成する線材の1ピッチ間に隣接する部分どうしが接触することがない。したがって、ヒューズばね15が座屈することを防止することができる。よって、ヒューズばね15の一部が塑性変形してその付勢力が変化してしまったり、線材の隣接する部分どうしが絡み合って元の状態に戻ることができなくなってしまったりするような事態を確実に防止することができる。
特に、この実施の形態においては、ヒューズばね15が複数の支持腕部5bによって囲まれているので、ヒューズばね15が座屈することをより一層確実に防止することができる。
また、この実施の形態のヒューズ付きガス栓1においては、下流側弁部3Bの通路孔3dの内部にヒューズ弁座3fを設けているから、ヒューズ弁6がヒューズ弁座3fに着座するときには、弁部6aを含むヒューズ弁6の少なくとも下流側の端部が下流側弁部3B内に入り込む。ヒューズ弁6が下流側弁部3B内に入り込む分だけガス通路2Dの長さを短くし、栓本体2の長さを短くすることができる。したがって、ヒューズ付きガス栓1の長さを短くすることができる。
さらに、この実施の形態では、ガス通路2Dを上流側弁部3A及び下流側弁部3Bによって閉じるようにしているから、ガス通路2Dを確実に閉じることができる。しかも、上流側弁部3Aの内部にヒューズ弁6を挿入しているので、二つの弁部3A,3Bとヒューズ弁6とを一列に配置した場合に比して栓本体2の長さを短くすることができる。よって、ヒューズ付きガス栓1の閉状態の確実性を向上させることができるとともに、ガス栓1の長さを短くすることができる。
図14は、この発明の第2実施の形態を示す。この実施の形態のヒューズ付きガス栓1´においては、上記実施の形態の外筒部2Aに代えて外筒部2A´が用いられている。外筒部2A´は、下流側において二股に分かれており、下流側の端部には二つの分岐筒部2J,2Kが形成されている。二つの分岐筒部2J,2Kは、互いに平行に延びており、外筒部2A´の上流側端部とも平行になっている。二つの分岐筒部2J,2Kは、必ずしも互いに平行にする必要がない。例えば、二つの分岐筒部2J,2Kは、下流側へ向かうにしたがって互いに離間するように互いに傾斜させてもよく、また外筒部2A´の上流側の端部に対して傾斜させてもよい。二つの分岐筒部2J,2Kの上流側の端部のうち、互いに隣接した側部は、外筒部2A´の上流側端部に連通されている。
各分岐筒部2J,2Kの各下流側端部には、内筒部2B、2Bがそれぞれ螺合固定されている。各内筒部2Bには、接続筒部2Cが螺合固定されている。そして、内筒部2B及び接続筒部2Cの内部には、上記の実施の形態と同様に、ガス弁3、保持部材4、受け部材5及びヒューズ弁6等の各部品が収容されており、上記の実施の形態と同様に構成されている。そこで、それらの構成については、上記実施の形態の対応する構成に付した符号と同一の符号を付すにとどめ、その説明を省略する。
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において各種の変形例を採用することができる。
例えば、上記の実施の形態においては、内筒部2Bのフランジ部2e及び大径部2cを外筒部2Aから外部に突出させているが、例えば内筒部2Bの左端面が外筒部2Aの左端面と一致するように、内筒部2B全体を外筒部2Aに挿入してもよい。この場合にも、内筒部2Bの左端開口部に接続筒部2Cが螺合固定される。
また、上記の実施の形態においては、ヒューズ付きガス栓1の開閉を、ガス通路2Dの開閉を上流側弁部3Aによる連通孔2fの開閉と、上流側弁部3Bの弁部3hの弁座2jへの着座、離間による開閉とによって行っているが、前者については省略してもよい。
さらに、上記の実施の形態においては、内筒部2Bに保持部材4を設け、この保持部材4にヒューズ弁6を移動可能に保持させているが、ヒューズ弁6は内筒部2Bに直接保持させてもよい。