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JP6398567B2 - 車両の遠隔制御に用いられる命令判定装置および命令判定装置用のプログラム - Google Patents

車両の遠隔制御に用いられる命令判定装置および命令判定装置用のプログラム Download PDF

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Description

本発明は、車両の遠隔制御に用いられる命令判定装置および命令判定装置用のプログラムに関するものである。
従来、車両外に設置されたセンターから車両に送信された遠隔制御命令に従って車両を走行させる遠隔制御の技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。これに対し、センター以外の装置からセンターを偽装した遠隔制御命令を送信することで、車両をクラッキングする技術について、近年研究が行われている。
特開2011−255757号公報
車両のクラッキングを目的とした不正な遠隔制御命令のうちでも、車両の安全な走行に悪影響を与えるような遠隔制御命令は、特に排除されることが望ましい。
本発明は上記点に鑑み、車両の遠隔制御の技術において、車両の安全な走行に悪影響を与える遠隔制御命令の実行を禁止する技術を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、異なるアクチュエータを制御する複数のECU(21〜23)が搭載された車両(1)の外部から送信された遠隔制御命令(31、52)を受信する受信手段(110、210)と、受信した前記遠隔制御命令が、前記車両の安全な走行に悪影響を及ぼすか否かを、受信した前記遠隔制御命令が、前記車両の安全な走行に悪影響を及ぼすか否かを、前記遠隔制御命令の対象となる道路(30、50)の情報、または、前記車両に搭載されたECU(21〜23)がアクチュエータを制御する制御量の情報、または、前記遠隔制御命令の対象となる道路を前記車両が通ったときの走行履歴に基づいて、判定する判定手段(140、340)と、前記判定手段が悪影響を及ぼすと判定したことに基づいて、前記複数のECUのうち前記遠隔制御命令の命令対象となっているECUを運転者に報知すると共に手動運転切替ボタンを表示し、前記手動運転切替ボタンを前記運転者が選択する操作を行うと、前記遠隔制御命令に従った前記車両の制御を禁止することで前記運転者の運転操作に前記車両を従わせる禁止手段(150、350)と、を備えたことを特徴とする命令判定装置である。
また、請求項に記載の発明は、異なるアクチュエータを制御する複数のECU(21〜23)が搭載された車両(1)に搭載される命令判定装置(17)に用いるプログラムであって、前記車両の外部から送信された遠隔制御命令(31、52)を受信する受信手段(110、210)、受信した前記遠隔制御命令が、前記車両の安全な走行に悪影響を及ぼすか否かを、前記遠隔制御命令の対象となる道路(30、50)の情報、または、前記車両に搭載されたECU(21〜23)がアクチュエータを制御する制御量の情報、または、前記遠隔制御命令の対象となる道路を前記車両が通ったときの走行履歴データに基づいて、判定する判定手段(140、340)、および前記判定手段が悪影響を及ぼすと判定したことに基づいて、前記複数のECUのうち前記遠隔制御命令の命令対象となっているECUを運転者に報知すると共に手動運転切替ボタンを表示し、前記手動運転切替ボタンを前記運転者が選択する操作を行うと、前記遠隔制御命令に従った前記車両の制御を禁止することで前記運転者の運転操作に前記車両を従わせる禁止手段(150)として、前記命令判定装置を機能させるプログラムである。
これらのように、命令判定装置は、遠隔制御命令が車両の安全な走行に悪影響を及ぼすか否かを、遠隔制御命令の対象となる道路の情報、または、車両に搭載されたECUがアクチュエータを制御する制御量の情報、または走行履歴データに基づいて、判定する。したがって、道路の状況またはECUによるアクチュエータ制御の内容という、遠隔制御の場面または対象に関連する情報を用いて、遠隔制御命令の安全性を判定できる。
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
本発明の第1実施形態に係る車両遠隔制御システムの構成図である。 安全性チェック処理のフローチャートである。 一事例の状況を示す図である。 通常画面41を示す図である。 遠隔制御画面42を示す図である。 問題報知画面43を示す図である。 表示装置の表示画面41、42、43の配置を示す図である。 第2実施形態における安全性チェック処理のフローチャートである。 一事例の状況を示す図である。 データ判定処理のフローチャートである。 挙動予測の内容を例示する図である。 車両の挙動の修正例を示す図である。
(第1実施形態)
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1に示す通り、本実施形態に係る車両遠隔制御システムは、車両1、センター2、通信ネットワーク3、中継局4、遠隔制御器5、車載システム10等を備えている。
センター2は、車両1の外部の施設に設置され、通信ネットワーク3および無線通信の中継局4を介して車載システム10と通信することで、車両1を遠隔制御する。具体的には、センター2は、通信ネットワーク3、中継局4を介して車載システム10に後述する遠隔制御命令を送信する。車載システム10は、このセンター2からの遠隔制御命令に従って、車両1を走行させる。
遠隔制御器5は、例えば、悪意を持ってセンター2になりすまして車両1を遠隔制御しようとする者によって操作され、操作内容に応じた車両1の駆動、制動、操舵の内容を、遠隔制御命令として、車載システム10に送信する。また、遠隔制御器5は、車載システム10からセンター2に送信される走行状態情報を傍受する場合もある。本実施形態では、車載システム10は、このような遠隔制御器5からの遠隔制御命令に対しては、従わない場合がある。
なお、遠隔制御命令は、遠隔制御エリアに車両1が到着する前に、車両1へ送信する必要がある。遠隔制御命令が車両1に送信される際、データ通信の時間的な遅延が生ずるため、センサ群12の出力をセンター2に送ってリアルタイムの運転制御を行うことは容易ではない。そのため、センター2では、どの遠隔制御エリアでどのような車両制御を行うかがあらかじめ定められている。そして、センター2は、遠隔制御エリア毎に、その遠隔制御エリア内全体における車両制御を実現するための遠隔制御命令が、あらかじめ記憶されている。したがって、センター2は、ある遠隔制御エリアの開始地点から所定距離以内に車両1が近づいたときに、当該遠隔制御エリア用の遠隔制御命令を車両1に送信する。遠隔制御器5が送信する遠隔制御命令についても、遠隔制御エリア全体についての命令である。
車載システム10は、車両1に搭載され、通信装置11、センサ群12、表示装置13、操作装置14、記憶装置15、ゲートウェー16、コントローラ17、駆動制御ECU21、制動制御ECU22、操舵制御ECU23等を含んでいる。
通信装置11は、上述のセンター2、遠隔制御器5と通信する装置である。具体的には、ゲートウェー16から取得した走行状態情報をセンター2に対して送信すると共に、センター2、遠隔制御器5から遠隔制御命令を受信する。受信した遠隔制御命令は、ゲートウェー16およびコントローラ17に出力する。
センサ群12は、車両1の状態および車両1の周囲の状態を検出する種々のセンサを含んでいる。具体的には、センサ群12は、車両の前方、横方向、後方を撮影する車載カメラを含んでいる。また、センサ群12は、車速センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ、GPS受信機等の、車両の挙動および位置を検出するセンサを含んでいる。また、センサ群12は、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダルセンサ、ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキペダルセンサ、ステアリングハンドルの切り角を検出するステアリングセンサ等、車両1に乗車した運転者の運転操作内容を検出するセンサを含んでいる。
表示装置13は、車両1に乗車した運転者に画像を表示する装置である。操作装置14は、車両1に乗車した運転者が操作可能な装置(例えば、タッチパネル、メカニカルスイッチ)である。記憶装置15は、走行履歴データ、周知の地図データ等を記憶する記憶媒体である。
ゲートウェー16は、通信装置11から遠隔制御命令を取得し、取得した遠隔制御命令を駆動制御ECU21、制動制御ECU22、操舵制御ECU23に振り分けて送信する。また、ゲートウェー16は、センサ群12から出力される情報のうち、車載カメラの撮影画像、車速、加速度、ヨーレート、現在位置を、センター2に送信するための走行状態情報として、通信装置11に出力する。
コントローラ17(命令判定装置の一例に相当する)は、通信装置11から遠隔制御命令を取得し、取得した遠隔制御命令に基づいて、現在以降の車両1の走行軌跡を予測する。そして、その予測した走行軌跡に基づいて、必要に応じて、表示装置13に注意情報を表示させ、また、必要に応じて、遠隔制御命令に従った車両1の走行の遠隔制御を禁止する。このコントローラ17は、例えば、各種プログラムを実行することで後述する各処理(図2、図8の処理)を実現する周知のマイクロコンピュータとして実現可能である。
車内LAN18には、センサ群12、ゲートウェー16、駆動制御ECU21、制動制御ECU22、操舵制御ECU23が接続されており、センサ群12、駆動制御ECU21、制動制御ECU22、操舵制御ECU23は、この車内LAN18を介して通信を行う。
駆動制御ECU21は、センサ群12からアクセルペダル踏み込み量等の情報を取得し、取得した当該情報に基づいて、車両1の動力系および駆動系(走行用モータ、エンジン、トランスミッション等)のアクチュエータの作動を制御する電子制御装置である。ただし、駆動制御ECU21は、ゲートウェー16から遠隔制御命令の命令セットを受信した場合、アクセルペダル踏み込み量の情報に関わらず、受信した命令セットの内容に従って、車両1の動力系および駆動系を制御する。
制動制御ECU22は、センサ群12からブレーキペダル踏み込み量等の情報を取得し、取得した当該情報に基づいて、車両1の制動装置(アクチュエータ)の作動を制御する電子制御装置である。ただし、制動制御ECU22は、ゲートウェー16から遠隔制御命令の命令セットを受信した場合、ブレーキペダル踏み込み量の情報に関わらず、受信した命令セットの内容に従って制動装置を制御する。
操舵制御ECU23は、センサ群12からステアリングハンドルの切り角等の情報を取得し、取得した当該情報に基づいて、車両1の操舵輪の舵角を変化させるアクチュエータの作動を制御する電子制御装置である。ただし、操舵制御ECU23は、ゲートウェー16から遠隔制御命令の命令セットを受信した場合、ステアリングハンドルの切り角の情報に関わらず、受信した命令セットの内容に従って制動装置を制御する。
次に、上記のような車両遠隔制御システムの作動について説明する。まず、コントローラ17は、車両1の走行中に、記憶装置15に走行履歴データを繰り返し(例えば0.1秒に1回)記録する。走行履歴データは、センサ群12から取得した車両1の実際の挙動に関する情報(現在位置、走行速度、加速度、走行方向、アクセルペダル踏み込み量、ブレーキペダル踏み込み量、ステアリング切り角等)を、時系列で記録する。
また、コントローラ17は、通信装置11が受信した遠隔制御命令の安全性に問題があるか否かを判定するため、車両1の主電源(例えばIG)がオンになっている間、図2に示す安全性チェック処理を常時実行するようになっている。
本実施形態の一事例として、図3に示すように、車両1が道路30(直線道路でもよいし、カーブ道路でもよい)を走行している事例について説明する。この事例では、車両1の通信装置11が、道路30(遠隔制御エリアの一例に相当する)において、遠隔制御命令31を受信する。遠隔制御命令31を受信する前、車載システム10は、他の遠隔制御命令に基づいて車両1の駆動、制動、操舵を制御していてもよいし、車両1に搭乗する運転者の操作に基づいて車両1の駆動、制動、操舵を制御していてもよい。あるいは、遠隔制御命令31を受信する前、車載システム10は、遠隔制御命令にも運転者の操作にも基づかずセンサ群12の出力内容に基づいて車両1の駆動、制動、操舵を自動的に制御していてもよい。
通信装置11は、遠隔制御命令31を受信した場合、受信した遠隔制御命令31を、ゲートウェー16およびコントローラ17に出力する。ゲートウェー16は、この遠隔制御命令31を通信装置11から取得した場合、すぐにECU21〜23に振り分けて送信するのではなく、自機のメモリ中に一旦保持する。
コントローラ17は、安全性チェック処理において、まずステップ110で、遠隔制御データの取得を待っている。そして、上記のように通信装置11から遠隔制御命令31を取得すると、ステップ115に進む。
ステップ115では、認証処理を行う。具体的には、受信した遠隔制御命令31が正規のセンター2から送信されたものであるか否かを特定する。センター2は、車両1宛に遠隔制御命令を送信する際、その遠隔制御命令のヘッダに正規のコードを含める。コントローラ17は、受信した遠隔制御命令のヘッダに当該正規のコードが含まれているか否かで、受信した遠隔制御命令が正規のセンター2から送信されたものであるか否かを特定する。
したがって、センター2から上記遠隔制御命令31が送信された場合、コントローラ17は、ステップ115で、受信した遠隔制御命令31が正規のセンター2から送信されたものであることを特定する。
一方、遠隔制御器5から上記遠隔制御命令31が送信された場合、何らかの不正な方法で遠隔制御器5に正規のコードが登録されない限り、遠隔制御器5から送信された遠隔制御命令31のヘッダには正規のコードが含まれない。したがって、コントローラ17は、ステップ115で、受信した遠隔制御命令31が正規のセンター2から送信されたものでないことを特定する。
しかしながら、何らかの不正な方法で遠隔制御器5に正規のコードが登録され、かつ、遠隔制御器5が遠隔制御命令31のヘッダに当該正規のコードを含めて送信する場合がある。遠隔制御器5の使用者が、なりすましの意図を持って遠隔制御器5を使用している場合がそれに該当する。この場合、コントローラ17は、ステップ115で、受信した遠隔制御命令31が正規のセンター2から送信されたものであると特定してしまう。
続いてステップ120では、ステップ115の特定結果に従って、受信した遠隔制御命令31が正規のセンター2から送信されたものであるか否かを判定する。
センター2が遠隔制御命令31を送信した場合は、受信した遠隔制御命令31が正規のセンター2から送信されたものであると判定し、ステップ125に進む。また、遠隔制御器5が遠隔制御命令31を送信し、遠隔制御命令31のヘッダに正規のコードが含まれない場合は、受信した遠隔制御命令31が正規のセンター2から送信されたものでないと判定し、ステップ160に進む。ステップ160では、受信した遠隔制御命令31を破棄するよう、ゲートウェー16に破棄命令を出力する。ゲートウェー16は、この破棄命令に従い、遠隔制御命令31をECU21〜23に出力することなく、破棄する。
これにより、ECU21〜23が、遠隔制御命令31に基づかずに車両1の駆動、制動、操舵を制御する。具体的には、車両1に搭乗する運転者の運転操作に従って車両1の駆動、制動、操舵を制御するか、あるいは、センサ群12からの情報に基づいて、車両1に搭乗する運転者の運転操作によらず自動的に、車両1の駆動、制動、操舵を制御する。ステップ160の後はステップ110に戻る。
また、遠隔制御器5が遠隔制御命令31を送信し、遠隔制御命令31のヘッダに正規のコードが含まれる場合は、受信した遠隔制御命令31が正規のセンター2から送信されたものであると判定し、ステップ125に進む。
なお、遠隔制御命令31には、1つまたは複数の命令セットが含まれ、1つの命令セットには、命令対象のECUの名称と、当該ECUに設定する時系列制御量とが含まれる。時系列制御量は、時刻毎の制御量(例えば、制動装置のホイールシリンダ圧、エンジンに供給する燃料の混合比、アクセルスロットル開度)の値が含まれる。
ステップ125では、遠隔制御命令31に含まれる命令セット毎に、当該命令セット中の制御量と同種の制御量の情報を、ECU21、22、23から取得する。具体的には、コントローラ17は、命令セット毎に、当該命令セット中の制御量と同じ種類の制御量のデータを命令セット中のECUに要求するデータ要求を作成し、作成したデータ要求をゲートウェー16に送信する。するとゲートウェー16は、取得した各データ要求の要求先のECUに対して、当該データ要求を送信する。
ECU21、22、23のうち、このデータ要求を受信したECUは、データ要求によって要求される制御量の、現在値、および、既に作成されていれば近い未来(例えば、現在から数秒以内)の予定値とを、回答データとして、ゲートウェー16に送信する。するとゲートウェー16は、当該回答データをコントローラ17に出力する。このようにして、コントローラ17は、遠隔制御命令31に含まれる命令セット毎に、当該命令セット中の制御量と同種の制御量の情報を取得する。
続いてステップ130では、各ECU21、22、23から取得した回答データに基づいて、車両1の未来の走行軌跡を予測する。具体的には、回答データの制御量の値が各ECU21、22、23で実現した場合の車両1の未来の走行軌跡を、センサ群12から取得した情報も用いて、予測する。車両の挙動を制御するECU21、22、23の制御量から車両の走行軌跡をシミュレーションして予測する方法は周知であるので、ここではその詳細な方法については説明を省略する。
続いてステップ135では、受信した遠隔制御命令31に基づく車両1の挙動を予測する。具体的には、遠隔制御命令31の各命令セットに含まれる値が各ECU21、22、23で実現した場合(つまり、車両1が遠隔制御命令31に従って走行した場合)の車両1の未来の走行軌跡を、センサ群12から取得した情報も用いて、予測する。遠隔制御命令31、すなわち、ECU21〜23の制御内容についての命令から、車両の走行軌跡をシミュレーションして予測する方法は周知であるので、ここではその詳細な方法については説明を省略する。
続いてステップ140では、ステップ130、135の予測結果に基づいて、遠隔制御命令31の安全性に問題があるか否かを判定する。すなわち、遠隔制御命令31が車両1の安全な走行に悪影響を及ぼすか否かを判定する。
具体的には、道路30上で車両1の現在位置から共に直線的に伸びる正常ライン32と遠隔制御ライン33との成す角度θの絶対値が第1基準値を超えている場合、問題があると判定し、超えていない場合、問題がないと判定する。
ここで、正常ライン32は、ステップ130で予測した未来の走行軌跡に基づいて決定する。具体的には、現在の車両1の走行方向(例えば、GPS受信機から取得する)を基準方向とする。そして、ステップ130で予測した走行軌跡上の複数個の点を(例えば等間隔で)選択し、車両1から選択した各点までの方向が上記基準方向に対して成す角度の平均値すなわち平均角度を算出する。そして、当該基準方向から当該平均角度だけずれた方向に車両1から伸びる直線を、正常ライン32とする。
このように、ECU21〜22がアクチュエータを制御する制御量の情報に基づいて、遠隔制御命令31の対象となる道路30の情報を特定し、特定した情報に基づいて正常ライン32を決定することができる。したがって、より正確な情報を用いて遠隔制御命令31が車両1の安全な走行に悪影響を及ぼすか否かを判定できる。
また例えば、記憶装置15に記録されている走行履歴データに基づいて、車両1の現在位置およびその前方の道路における過去の走行軌跡を算出し、ステップ130で予測した未来の走行軌跡に対して上述の通り行った処理を、上記過去の走行軌跡に対して行うことで、正常ライン32を決定してもよい。ここで、車両1の現在位置およびその前方の道路における過去の走行軌跡としては、当該道路を過去に1回のみ走行している場合は、そのときの走行軌跡を用いる。また、当該道路を過去に複数回走行している場合は、その複数回分の走行軌跡を代表する走行軌跡を算出して用いる。複数の走行軌跡を代表する走行軌跡としては、例えば、当該複数の走行軌跡のうち、車両1の現在位置に最も近い位置を通る走行軌跡を採用してもよいし、車両1の現在の走行速度に最も近い平均車速を有する走行軌跡を採用してもよい。
また例えば、センサ群12の車載カメラによって撮影された車両1の前方の撮影画像に基づいて、道路30上の白線を検出し、ステップ130で予測した走行軌跡に対して上述の通り行った処理を、白線に対して行うことで、正常ライン32を決定してもよい。
このように、車載カメラの出力に基づいて、遠隔制御命令31の対象となる道路30の情報を特定し、特定した情報に基づいて正常ライン32を決定することができる。したがって、より新鮮な情報を用いて遠隔制御命令31が車両1の安全な走行に悪影響を及ぼすか否かを判定できる。
また例えば、記憶装置15に記憶された地図データに基づいて、車両1の前方の道路形状を特定し、その道路形状に沿って車両1から前方に伸びるラインを正常ライン32としてもよい。
このように、地図データに基づいて、遠隔制御命令31の対象となる道路30の情報を特定し、特定した情報に基づいて正常ライン32を決定することができる。したがって、遠隔制御命令31が車両1の安全な走行に悪影響を及ぼすか否かの判断材料を容易に取得することができる。
また、遠隔制御ライン33は、ステップ135で予測した走行軌跡に基づいて決定する。具体的には、ステップ135で予測した走行軌跡に基づいて正常ライン32を決定したのと同じ方法を採用する。つまり、現在の車両1の走行方向を基準方向とする。そして、ステップ135で予測した走行軌跡上の複数個の点を選択し、車両1から選択した各点までの方向が上記基準方向に対して成す角度の平均値すなわち平均角度を算出する。そして、当該基準方向から当該平均角度だけずれた方向に車両1から伸びる直線を、遠隔制御ライン33とする。
このようにして算出される角度θの絶対値は、値が大きいほど遠隔制御命令の内容が正常な走行から大きくずれていることになる。したがって、角度θの絶対値が大きいほど、車両が道路からはみ出すまでの余裕時間が短くなる。
このように、コントローラ17は、正常ライン32と遠隔制御ライン33との比較によって、遠隔制御命令31が車両1の安全な走行に悪影響を及ぼすか否かを判定する。したがって、遠隔制御命令31による車両1の走行方向に関する異常を検知することができる。
なお、角度θの絶対値の代わりに、ステップ135で予想した走行軌跡に基づいて走行した場合に車両1が道路をはみ出してしまうまでの時間tの逆数を採用してもよい。時間tは、ステップ135で予想した走行軌跡そのものから算出することもできるし、角度θ、車速、および道路30の幅、道路30中の車両の横方向位置等に基づいて算出することもできる。
問題がないと判定した場合、ステップ145に進み、受信した遠隔制御命令31を使用するよう、ゲートウェー16に使用命令を出力する。ゲートウェー16は、この使用命令に従い、遠隔制御命令31中の各命令セットを、ECU21〜23のうち命令対象のECUに出力する。これにより、ECU21〜23の各々は、受信した命令セットに従って、車両1に搭乗する運転者の操作によらず、車両1の駆動、制動、操舵を制御する。つまり、遠隔制御命令31による車両1の走行の遠隔制御が実現する。ステップ145の後、ステップ110に戻る。
ステップ140で問題があると判定した場合、ステップ150に進む。ステップ150では、車両1に搭乗する運転者への報知を行う。ここで、ステップ150における当該運転者への報知について説明する。
ステップ150を実行していない状態、すなわち、通常の状態では、コントローラ17は、表示装置13に対して、図4に示すような通常画面41を表示させている。この通常画面41は、大部分が、安全運転支援用の画像(例えば車載カメラの撮影画像)またはメディア情報またはカーナビゲーション情報を表示するメイン画像41aによって占められている。メディア情報とは、記憶装置15に記録されている楽曲、画像、動画に関する情報である。そして、通常画面41の他の部分には、車内LAN18に接続されているECU12〜15の情報を表示するサムネイル画像41b〜41eが複数個配置されている。そして、特定のECUが異常になると、該当するECUのサムネイル画像の表示状態を変化させる。
また、コントローラ17は、通常画面41が表示されているときに、図2のステップ145を実行して遠隔制御命令31による車両1の走行の遠隔制御を実現させると、通常画面41の右上隅に、遠隔制御モードであることを示すアイコン41gを表示させる。運転者はこのアイコンを確認することで、車両1が遠隔制御されていることを確認できる。
運転者が遠隔制御の具体的な状況を確認するために、操作装置14に対して所定の操作を行うと、コントローラ17は、通常画面41に代えて、図5に示す遠隔制御画面42を表示装置13に表示させる。
この遠隔制御画面42は、通常画面41と同じく、メイン画像41a、サムネイル画像41b〜41eを含んでいる。ただし、メイン画像41aは、通常画面41中のものよりも小さい。また、遠隔制御画面42は、遠隔制御の詳細に関する情報を表示する詳細表示画像42fを含んでいる。
遠隔制御画面42が表示されているとき、運転者が、操作装置14の所定の操作(ステアリングスイッチの操作、表示装置13の表示画面のタッチ操作、ジェスチャ操作、音声コマンド等)を行ったとする。すると、コントローラ17は、詳細表示画像42fを更に大きくし、メイン画像41gを更に小さくして画面端部に移動させる。これにより、遠隔制御の詳細について更に詳しく表示できるようになる。あるいはこのとき、メイン画像41a画面を透明に近い状態にして、詳細表示画像42fに重ね合わせるようにしてもよい。
そして、コントローラ17は、図2のステップ150において、遠隔制御命令31に問題があることを当該運転者に報知するため、図6に示すような問題報知画面43を表示装置13に表示させる。図5の遠隔制御画面42の背景(画像41a〜41e、42f以外の部分)が黒系統であるのに対し、問題報知画面43は、背景の色が赤系統または黄色系統の色になっており、かつ、「注意」の文字を含んでいることで、当該運転者の注意をより強く喚起する。
また、問題報知画面43では、安全に問題のある遠隔制御命令31がECU21〜24のうちどのECUを対象としているかが表示される。このために、コントローラ17は、サムネイル画像41b〜41eのうち、遠隔制御命令31中の命令セットが命令対象としている全ECUに対応するサムネイル画像41c、41dを、例えばより詳細に表示する等の方法で、強調表示する。また、コントローラ17は、詳細表示画像42f中でも、遠隔制御命令31中の命令セットが命令対象としている全ECUの情報を、他の情報よりも強調して表示する。
また、コントローラ17は、メイン画像41a内に、手動運転切替ボタン43hを表示させる。これにより、運転者は、緊急な処理が必要であること(不安全状態)を、一目で知ることができる。運転者が操作装置14に対して手動運転切替ボタン43hを選択する操作を行うと、コントローラ17は、受信した遠隔制御命令31を破棄するよう、ゲートウェー16に破棄命令を出力する。ゲートウェー16は、この破棄命令に従い、遠隔制御命令31をECU21〜23に出力することなく、破棄する。これにより、ステップ160と同様に、遠隔制御命令31による車両1の走行の遠隔制御が禁止される。
なお、画面41、42、43の表示位置は、図7、図8に示すように、2つのメータ44、45(例えば、車速表示メータおよびエンジン回転数表示メータ)の間であってもよい。
また、ステップ150では、上述の角度θ(または時間tの逆数)の絶対値が第1基準値よりも大きい第2基準値を超えたときに、問題報知画面43よりも更に強く運転者の注意を喚起する警報画面(例えば、より高い輝度の画面)を表示装置13に表示させてもよい。その場合、警報画面に上述の手動運転切替ボタン43hを含めてもよい。手動運転切替ボタン43hが選択された場合の作動は同じである。
あるいは、コントローラ17は、警報画面に上述の手動運転切替ボタン43hを含めるまでもなく、運転者の操作装置14に対する操作がなくとも、受信した遠隔制御命令31を破棄するよう、ゲートウェー16に破棄命令を自動的に出力する。ゲートウェー16は、この破棄命令に従い、遠隔制御命令31をECU21〜23に出力することなく、破棄する。これにより、ステップ160と同様に、遠隔制御命令31による遠隔制御が禁止される。ステップ150の後は、ステップ110に戻る。
このように、悪意によって遠隔制御器5から通信装置11に遠隔制御命令31が送信され、それが正規のセンター2から送信されたデータであると判定されたとしても、車両1の安全性に問題がある遠隔制御命令31であれば、運転者に警告の報知が行われる。それと共に、操作装置14を押すというワンタッチ操作で選択可能な手動運転切替ボタン43hを表示する。そして、運転者の当該ワンタッチ操作によって、遠隔制御命令31が破棄される。したがって、遠隔制御器5を用いて車両1の安全性を脅かそうとする者の企ては失敗する。
以上のように、本実施形態のコントローラ17は、遠隔制御器5から送信された遠隔制御命令31を受信し(ステップ110)、受信した遠隔制御命令31が、車両の安全な走行に悪影響を及ぼすか否かを、遠隔制御命令31の対象となる道路の情報、または、車両1に搭載されたECU21〜23がアクチュエータを制御する制御量の情報に基づいて、判定し(ステップ140)、悪影響を及ぼすと判定した場合、運転者の操作に基づいて、遠隔制御命令に従った車両の制御を禁止する(ステップ150)。
このように、コントローラ17は、遠隔制御命令31が車両1の安全な走行に悪影響を及ぼすか否かを、遠隔制御命令の対象となる道路の情報、または、車両1に搭載されたECU21〜23がアクチュエータを制御する制御量の情報に基づいて、判定する。したがって、道路の状況またはECU21〜23によるアクチュエータ制御の内容という、遠隔制御の場面または対象に関連する情報を用いて、遠隔制御命令31の安全性を判定できる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して、図2の安全性チェック処理を図8の処理に置き換えたものである。
以下、本実施形態の車両遠隔制御システムの作動について説明する。コントローラ17は、通信装置11が受信した遠隔制御命令の安全性に問題があるか否かを判定するため、車両1の主電源(例えばIG)がオンになっている間、図8に示す安全性チェック処理を常時実行するようになっている。
本実施形態の一事例として、図9に示すように、車両1が道路50(直線道路でもよいし、カーブ道路でもよい)を走行している事例について説明する。この道路50の路面には、停止線51が描かれている。道路50は、構造が複雑で、初めて走行する運転者では注意が必要な道路である。例えば、道路50は、停止ラインを見逃しやすい道路であってもよいし、カーブの先に停止標識がある道路であって停止標識が見にくい道路であってもよいし、道路幅が狭い道路であってもよい。
このような場合、センター2は、「このあたりの道路は複雑で事故が多いため遠隔制御にてあなたを誘導します」というメッセージ車両1に送信し、コントローラ17は、通信装置11を介してこのメッセージを受信し、当該メッセージを表示装置13に表示させる場合がある。そしてその後、センター2は、車両1が停止線52で停止するよう、車両1に停止線52を含む遠隔制御エリア53の遠隔制御命令を送信する場合がある。
この場合、例えば、センター2のユーザが、当該遠隔制御エリア53のために、
(A)停止位置X
(B)制動操作を開始するときの速度V(以下、制動開始速度という)
(C)制動を開始する位置P
をセンター2にあらかじめ入力する。なお、停止位置Xは、停止線52から車両1側に距離Lだけ手前側(車両1側)に移動した位置であり、Lの値はユーザが設定できる。距離Lは0でもよいし0より大きくてもよい。なお、センター2に当該遠隔制御エリア53の高精細デジタル地図が含まれていれば、その高精細デジタル地図中に含まれている遠隔制御エリア53の情報(停止線の詳細な位置、制限速度、詳細な道路形状等)に基づいて、停止位置X、制動開始速度V、制動開始位置Pを自動的に決定するようになっていてもよい。
そしてセンター2は、正規のコードを含むヘッダと、このデータX、V、Pとを含む遠隔制御命令を、車載システム10に送信する。また、遠隔制御器5は、不正の目的を有する者に操作されることで、正規のコードを含むヘッダと、このデータX、V、Pとを含む不正の遠隔制御命令を送信する場合がある。
この事例では、車両1の通信装置11が、道路50において、遠隔制御命令52を受信する。遠隔制御命令52を受信する前、車載システム10は、他の遠隔制御命令に基づいて車両1の駆動、制動、操舵を制御していてもよいし、車両1に搭乗する運転者の操作に基づいて車両1の駆動、制動、操舵を制御していてもよい。あるいは、遠隔制御命令52を受信する前、車載システム10は、遠隔制御命令にも運転者の操作にも基づかずセンサ群12の出力内容に基づいて車両1の駆動、制動、操舵を自動的に制御していてもよい。
通信装置11は、遠隔制御命令31を受信した場合、受信した遠隔制御命令31を、ゲートウェー16およびコントローラ17に出力する。ゲートウェー16は、この遠隔制御命令31を通信装置11から取得した場合、すぐにECU21〜23に振り分けて送信するのではなく、自機のメモリ中に保持する。
コントローラ17は、安全性チェック処理において、まずステップ210で、ヘッダに正規のコードを含む遠隔制御データの取得を待っている。そして、上記のように通信装置11からヘッダに正規のコードを含む遠隔制御命令52を取得すると、ステップ215に進む。受信した遠隔制御命令52は、センター2が送信した遠隔制御命令である場合も、遠隔制御器5が送信した遠隔制御命令である場合もある。
続いてステップ215では、受信した遠隔制御命令52からデータX、V、Pを抽出する。続いてステップ220では、データ判定処理を行う。データ判定処理では、図10に示すように、まずステップ310で、データX、V、Pの値が通常範囲を超えているか否かを、個別に判定する。データX、V、Pの通常範囲は、それぞれあらかじめ決定された範囲である。これら範囲は、その遠隔制御エリアに対しても同じ範囲になっている。
続いてステップ320では、遠隔制御エリア53の高精細デジタル地図が記憶装置15に記録されているか否か判定する。この高精細デジタル地図は、通常の地図データよりも位置精度が高い(例えば、誤差1cm以下の)地図データであり、遠隔制御エリア53における制限速度、停止線51の位置、道路形状等の詳細の情報が含まれる情報である。記録されていないと判定した場合はステップ380に進み、記録されていると判定した場合はステップ330に進む。
ステップ330では、遠隔制御エリア53の高精細デジタル地図の情報と、停止位置X、制動開始速度V、制動開始位置Pとを比較する。
例えば、停止位置Xについて、高精細デジタル地図中の停止線51の位置を越えているか否か、すなわち、停止線51の位置から見て停止位置Xが現在の車両1の位置と反対側にあるか否か、を特定する。また例えば、停止位置Xについて、高精細デジタル地図中の交差点内かつ交差点の中央付近の位置に入っているか否かを特定する。
また、制動開始速度Vについて、例えば、高精細デジタル地図中の遠隔制御エリア53の制限速度を超えているか否かを特定する。
また、制動開始位置Pについて、高精細デジタル地図中の停止線51(または停止位置X)の位置との距離を算出し、算出した距離が安全距離よりも短くなっているか否かを特定する。
この距離が小さい場合、車両1が止まりきれず停止位置Xをオーバーランする可能性が高い。あるいは、車両1を停止位置Xで停止させるために非常に大きい減速度で車両1を減速させなければならない。
ここで、安全距離は、例えば、高精細デジタル地図中の遠隔制御エリア53の制限速度を初速として制動開始位置Pから一定の限界減速度で減速すると仮定した場合の、車両1の制動距離として算出する。ここで、限界減速度は、人体に悪影響を与えない最大の減速度として、あらかじめ定められた値としてもよいし、あるいは、車両1の減速性能(車両1の重量、制動制御ECU22の性能等)に基づいてあらかじめ定められた達成可能な最大の減速度であってもよい。
続いてステップ340では、ステップ330の比較結果に基づいて、受信した遠隔制御命令52の安全性に問題があるか否か判定する。すなわち、遠隔制御命令52が車両1の安全な走行に悪影響を及ぼすか否かを判定する。
例えば、以下の条件(a)〜(e)のいずれか1つでも満たされていれば、問題がありと判定し、1つも満たされていなければ、問題なしと判定する。
(a)停止位置Xが停止線51の位置を越えている。
(b)停止位置Xが交差点内かつ交差点の中央付近の位置に入っている。
(c)制動開始速度Vが遠隔制御エリア53の制限速度を超えている。
(d)制動開始位置Pから停止線51までの距離が安全距離よりも短くなっている。
(e)制動開始位置Pから停止位置Xまでの距離が安全距離よりも短くなっている。
問題があると判定した場合、ステップ350に進み、問題がないと判定した場合、ステップ370に進む。条件(a)〜(e)のいずれか1つでも満たされているということは、遠隔制御器5から不正な遠隔制御命令52を受信した可能性が高い。
このように、高精細デジタル地図データに基づいて、遠隔制御命令31の対象となる道路30の情報を特定し、特定した情報に基づいてステップ340の判定を行うことができる。したがって、遠隔制御命令52が車両1の安全な走行に悪影響を及ぼすか否かの判断材料を容易に取得することができる。
また、コントローラ17は、遠隔制御命令52に含まれる車両1の位置の指示値X、Pまたは車両1の速度の指示値V、遠隔制御命令の対象となる道路50の情報と比較することで、遠隔制御命令52が車両1の安全な走行に悪影響を及ぼすか否かを判定する。このようになっていることで、例えば遠隔制御命令52に従った走行軌跡を予測するまでもなく、簡易に遠隔制御命令52が車両1の安全な走行に悪影響を及ぼすか否かを判定することができる。
ステップ350では、停止位置X、制動開始速度V、制動開始位置Pの値を補正する。例えば、条件(a)〜(e)のすべてが満たされなくなるよう、停止位置Xを車両1側にずらしたり、制動開始速度Vを低下させたり、制動開始位置Pを車両1側にずらしたりする。続いてステップ360では、遠隔制御52の送信元、修正する前の遠隔制御命令52、修正後の遠隔制御命令52(補正後の停止位置X、制動開始速度V、制動開始位置P)を互いに関連付けて記録する。ステップ360に続いては、ステップ370に進む。
ステップ340で問題なしと判定されてステップ370に進んだ場合は、補正されていない停止位置X、制動開始速度V、制動開始位置Pを用いて、遠隔制御エリア53における車両1の挙動を予測する。ステップ360からステップ370に進んだ場合は、補正後の停止位置X、制動開始速度V、制動開始位置Pを用いて、遠隔制御エリア53における車両1の挙動(具体的には、位置および速度の推移)を予測する。
ここで、停止位置X、制動開始速度V、制動開始位置Pに基づいて車両の挙動(具体的には、位置および速度の推移)を予測する方法の詳細について、図11を参照して説明する。
コントローラ17は、制動開始位置Pにおける速度を制動開始速度Vとし、停止地点Xにおける速度を0にするという拘束条件に従った上で、車両1の速度および減速度どのように変化させるかを、車両1の上述の減速性能等に基づいて決定する。
例えば、図11に示すように、上記拘束条件を満たし、車両の減速性能の限界ライン60よりも急制動とならない速度および減速度の推移パターンとしては、線61〜65がある。
線61は、最初の減速が小さく停止目標の近くで制動をかける減速パターンを表す。線62は、一定減速度で減速するパターンを表す。線63は最初に大きな制動力をかけ、その後制動力を弱めるパターンを表す。線64は最初に短時間で大きな制動力をかけてその後制動力を弱めるパターンを表す。線65は、停止位置Xに近づくまで減速はせず、停止位置xの近くで急激に大きな制動力をかけて減速するパターンを表す。
線66は、これ以上の減速度では人体に悪影響が及ぶとされる人体限界減速度を表す線である。コントローラ17は、一時的にでも人体限界減速度線66を越えるような線64、65のパターンを選ぶことはない。
したがって、コントローラ17は、上記線61、62、63のパターンのうちどれを選択してもよい。例えば、最初に車両を大きめに減速させて、後半の減速を小さくして、ゆっくりと車両1を停止させることが、運転者に不安をおこさせないので、線63のパターンを選択してもよい。
ステップ380に進む場合は、高精細デジタル地図が準備されていない遠隔制御エリアの遠隔制御命令が送られてきたことになり、この場合はデータX、V、Pのチェックが十分に行えない。したがって、コントローラ17は、ステップ380では、補正していない距離X、制動開始速度V、制動開始位置Pを用いて、遠隔制御エリア53における車両1の挙動(具体的には、位置および速度の推移)を予測する。そして、この予測結果には、「予測計算に問題あり」という付帯データを関連付ける。
ステップ370、380の後は、データ判定処理を修了してステップ225に進む。ステップ225では、ステップ220のデータ判定処理の結果に基づいて、予測した車両1の挙動に問題があるか否かを判定する。具体的には、直前のデータ判定処理においてステップ370、380のいずれかで予測された車両1の挙動に、「予測計算に問題あり」という付帯データが関連付けられていれば、問題があると判定し、そうでなければ、問題がないと判定する。つまり、直前のデータ判定処理においてステップ370が実行されていれば問題がないと判定し、ステップ380が実行されていれば問題があると判定する。
問題がないと判定した場合、ステップ230に進み、制動開始位置Pから車両1までの距離が所定距離(例えば20メートル)以内になるまで待つ。そして、制動開始位置Pに車両1が近づき、制動開始位置Pから車両1までの距離が所定距離以内になると、ステップ235に進む。
ステップ235では、ステップ370で予測された車両1の挙動を実現するため、各ECU21〜23に送信するための命令セットを作成する。各命令セットには、命令対象のECUの名称と、ステップ370で予測された車両1の挙動を実現するために当該ECUに設定する時系列制御量とが含まれる。そして、作成した命令セットをゲートウェー16に出力する。そしてゲートウェー16は、これら命令セットをコントローラ17から受け取ると、車内LAN18を介して、命令対象のECU21〜23に送信する。これにより、ECU21〜23の各々は、受信した命令セットに従って、車両1に搭乗する運転者の操作によらず、車両1の駆動、制動、操舵を制御する。
このような場合、直前のデータ判定処理でステップ350、360をバイパスしてステップ370で車両1の挙動が予測された場合は、受信した遠隔制御命令52をそのまま実現する車両1の走行の遠隔制御が実現する。
また、直前のデータ判定処理でステップ350、360が実行されてステップ370で車両1の挙動が予測された場合は、受信した遠隔制御命令52に対して修正が施されるので、遠隔制御命令52そのままに基づく車両1の走行の遠隔制御の実現は禁止される。
ステップ225で問題ありと判定された場合は、ステップ240に進み、制動開始位置Pから車両1までの距離が所定距離(例えば100メートル)以内になるまで待つ。そして、制動開始位置Pに車両1が近づき、制動開始位置Pから車両1までの距離が所定距離以内になると、ステップ245に進む。
ステップ245では、測定処理を行う。具体的には、センサ群12の車載カメラが撮影した最新の撮影画像に基づいて、車両1の前方の道路形状を特定し、更に一時停止を指示する道路標識(一時停止標識、路面の停止線)の位置を特定する。
続いてステップ250では、ステップ245で特定した道路形状および一時停止を指示する道路標識の位置に基づいて、車両1の位置から一時停止すべき位置までの道路に沿った距離を特定する。そして、車両1がこの距離を走行した時点で停止するよう、停止位置X、制動開始速度V、制動開始位置Pを算出する。例えば、上記一時停止すべき位置を停止位置Xとし、制動開始位置Pを停止位置Xの50メートル手前とし、制動開始速度Vを現在の車両1の車速とする。ステップ250では更に、ステップ370と同じ方法で、上記停止位置X、制動開始速度V、制動開始位置Pを用いて、遠隔制御エリア53における車両1の挙動を予測する。
続いてステップ255では、ステップ250で算出した車両1の挙動に問題があるか否か判定する。例えば、車載カメラが撮影した最新の撮影画像を用いて、車両1の前方の道路形状を特定し、更に一時停止を指示する道路標識(一時停止標識、路面の停止線)の位置を特定し、ステップ245の特定結果と整合するか否かに基づいて、問題があるか否かを判定してもよい。また例えば、停止位置Xまでの各位置について予測した車両1の車速と、各位置における道路の曲率半径に基づいて、車速が安全にカーブを曲がることができる範囲を超えて大きいか否かに基づいて、問題があるか否かを判定してもよい。問題がないと判定した場合はステップ235に進む。ステップ235における処理内容は既に説明した通りである。
問題があると判定した場合はステップ260に進み、車両1を更に減速、あるいは車両1を直ちに減速させて停止位置Xよりも手前で強制的に停止させるよう、停止位置X、制動開始速度V、制動開始位置Pを再作成する。例えば、図12に示すように、ステップ250で算出した車両1の挙動63は、停止線の位置を正しい位置52’ではなく誤った位置52であるとして算出されており、時点t1においてステップ255で、正しい位置52’を検出できたとする。その場合、コントローラ17は、正しい位置52’に基づいて停止位置X、制動開始速度Vを(制動開始位置Pは同じであると仮定して)再作成して、その新たに再作成したデータX’、V’およびを制動開始位置Pを満たす挙動67を算出する。そして、現在の車両1の車速を挙動67に滑らかに近づけるような挙動68を算出し、当該挙動を実現させるよう、ゲートウェー16を介してECU21〜22に命令セットを出力する。この場合、新たな挙動68、停止位置Xを確保するために(衝突防止のために)急ブレーキになるような減速度も許容する。
ステップ260の後は、ステップ255に戻って再度問題の有無を判定してもよいし、あるいは、ステップ255に戻らずに直ちにステップ235に進んでもよい。
なお、上記各実施形態において、コントローラ17が、ステップ110、210を実行することで受信手段の一例として機能し、ステップ140、340を実行することで判定手段の一例として機能し、ステップ150、350を実行することで禁止手段の一例として機能する。
以上のように、本実施形態のコントローラ17は、遠隔制御器5から送信された遠隔制御命令52を受信し(ステップ210)、受信した遠隔制御命52が、車両1の安全な走行に悪影響を及ぼすか否かを、遠隔制御命令52の対象となる道路の情報に基づいて、判定し(ステップ340)、悪影響を及ぼすと判定したことに基づいて、遠隔制御命令52を修正することで、遠隔制御命令52にそのまま従った車両の制御を禁止する(ステップ350)。
このように、コントローラ17は、遠隔制御命令52が車両1の安全な走行に悪影響を及ぼすか否かを、遠隔制御命令52の対象となる道路の情報に基づいて、判定する。したがって、道路の状況という、遠隔制御の場面に関連する情報を用いて、遠隔制御命令52の安全性を判定できる。
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。また、本発明は、上記各実施形態に対する以下のような変形例も許容される。なお、以下の変形例は、それぞれ独立に、上記実施形態に適用および不適用を選択できる。すなわち、以下の変形例のうち任意の組み合わせを、上記実施形態に適用することができる。
(変形例1)
なお、上記第1実施形態では、車両1の運転者が手動運転切替ボタン43hを選択する操作を行うと、遠隔制御命令31を破棄するようになっている。しかし、かならずしもこのようになっておらずともよい。例えば、車両1の運転者が、遠隔制御命令31中の命令セットのうち、特定のECUによる制御機能を止める旨の操作を操作装置14に対して行うことができるようになっていてもよい。
そのような操作がされた場合、コントローラ17は、ECU21〜23のうち当該特定の特定のECUのみには遠隔制御命令31中の命令セットが送信されず、他のECUには遠隔制御命令31中の命令セットが送信されるよう、ゲートウェー16を制御してもよい。この場合であっても、遠隔制御命令31そのままに従った遠隔制御は禁止されたことになる。
(変形例2)
上記実施形態では、走行履歴データに、車両1の実際の挙動に関する情報として、現在位置、走行速度、加速度、走行方向、アクセルペダル踏み込み量、ブレーキペダル踏み込み量、ステアリング切り角等が記録されるようになっている。しかし走行履歴データに記録されるデータとして、以下に列挙する(1)〜(16)の情報を追加してもよい。
(1)始動操作(例えば主電源オン操作)があった時刻
(2)主電源停止操作があった時刻
(3)車両の主電源オンから車両の作動開始(例えばエンジン始動)までの時間
(4)走行開始時の車両の安定性の情報
(5)ギアチェンジ(例えば、前進、後退)の、時刻毎の内容
(6)前方の車両との車間距離の、時刻毎の内容
(7)図示しない走行安定化制御装置(スタビライザ)の作動の時刻毎の作動状態
(8)車高の時刻毎の状態
(9)車両の照明用ランプの点灯、消灯および光軸方向制御の時刻毎の状態
(10)表示装置がカメラの撮影画像を表示する形式(死角表示、鳥瞰表示等)の時刻毎の状態
(11)オーディオ装置の音量の時刻毎の状態
(12)座席の配置および姿勢の時刻毎の状態
(13)ワイパ動作の時刻毎の状態
(14)ドアロック動作の時刻毎の状態
(15)ドアのウインドウ動作の時刻毎の状態
(16)各種ECU21〜23がアクチュエータを制御する制御量
1 車両
15 記憶装置
17 コントローラ(命令判定装置)
31、52 遠隔制御命令
21〜23 ECU

Claims (8)

  1. 異なるアクチュエータを制御する複数のECU(21〜23)が搭載された車両(1)の外部から送信された遠隔制御命令(31、52)を受信する受信手段(110、210)と、
    受信した前記遠隔制御命令が、前記車両の安全な走行に悪影響を及ぼすか否かを、前記遠隔制御命令の対象となる道路(30、50)の情報、または、前記複数のECU(21〜23)がアクチュエータを制御する制御量の情報、または、前記遠隔制御命令の対象となる道路を前記車両が通ったときの走行履歴データに基づいて、判定する判定手段(140、340)と、
    前記判定手段が悪影響を及ぼさないと判定したことに基づいて、前記遠隔制御命令に従った前記車両の制御を禁止する禁止手段(150、350)と、を備え
    前記判定手段が悪影響を及ぼすと判定したことに基づいて、前記複数のECUのうち前記遠隔制御命令の命令対象となっているECUを運転者に報知すると共に手動運転切替ボタンを表示し、前記手動運転切替ボタンを前記運転者が選択する操作を行うと、前記遠隔制御命令に従った前記車両の制御を禁止することで前記運転者の運転操作に前記車両を従わせる禁止手段(150、350)と、を備たことを特徴とする命令判定装置。
  2. 前記判定手段(140)は、前記車両に搭載されたセンサ(12)の出力に基づいて、前記遠隔制御命令の対象となる道路の情報を特定することを特徴とする請求項1に記載の命令判定装置。
  3. 前記判定手段(140)は、前記車両の記憶装置(15)に記録された地図データに基づいて、前記遠隔制御命令の対象となる道路の情報を特定することを特徴とする請求項1または2に記載の命令判定装置。
  4. 前記判定手段は、前記遠隔制御命令(31)の対象となる道路の情報に基づいた正常ライン(32)、または、前記アクチュエータを制御する制御量の情報に基づいた正常ライン(32)を、前記車両が前記遠隔制御命令に従って走行した場合の未来の走行軌跡に基づく遠隔制御ライン(33)とを比較することで、受信した前記遠隔制御命令が、前記車両の安全な走行に悪影響を及ぼすか否かを判定することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の命令判定装置。
  5. 前記判定手段は、前記遠隔制御命令(52)に含まれる前記車両の位置の指示値(X、P)または前記車両の速度の指示値(V)を、前記遠隔制御命令の対象となる道路(50)の情報と比較することで、受信した前記遠隔制御命令が、前記車両の安全な走行に悪影響を及ぼすか否かを判定することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の命令判定装置。
  6. 前記禁止手段は、前記判定手段が悪影響を及ぼすと判定したことに基づいて、前記車両の運転者に報知を行い、運転者が当該報知に対して所定の操作を行ったことに基づいて、車両の制御を禁止することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の命令判定装置。
  7. 前記禁止手段は、前記判定手段が悪影響を及ぼすと判定したことに基づいて、前記遠隔制御命令を補正することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の命令判定装置。
  8. 異なるアクチュエータを制御する複数のECU(21〜23)が搭載された車両(1)に搭載される命令判定装置(17)に用いるプログラムであって、
    前記車両の外部から送信された遠隔制御命令(31、52)を受信する受信手段(110、210)、
    受信した前記遠隔制御命令が、前記車両の安全な走行に悪影響を及ぼすか否かを、前記遠隔制御命令の対象となる道路(30、50)の情報、または、前記車両に搭載されたECU(21〜23)がアクチュエータを制御する制御量の情報、または、前記遠隔制御命令の対象となる道路を前記車両が通ったときの走行履歴データに基づいて、判定する判定手段(140、340)と、
    受信した前記遠隔制御命令が、前記車両の安全な走行に悪影響を及ぼすか否かを、前記遠隔制御命令の対象となる道路(30、50)の情報、または、前記車両に搭載されたECU(21〜23)がアクチュエータを制御する制御量の情報に基づいて、判定する判定手段(140、340)、および
    前記判定手段が悪影響を及ぼすと判定したことに基づいて、前記複数のECUのうち前記遠隔制御命令の命令対象となっているECUを運転者に報知すると共に手動運転切替ボタンを表示し、前記手動運転切替ボタンを前記運転者が選択する操作を行うと、前記遠隔制御命令に従った前記車両の制御を禁止することで前記運転者の運転操作に前記車両を従わせる禁止手段(150)として、前記命令判定装置を機能させるプログラム。
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