JP6396251B2 - フィルムコーティング組成物並びに経口固形製剤及びその製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、これら医薬用で市販されているけん化度が85.0モル%〜89.0モル%のPVAをコーティング基剤として用いた場合、PVA水溶液の粘着性が高いため、コーティング中に固形製剤同士が付着したり、また固形製剤がコーティング機内に付着してしまうため、スプレー噴霧速度を高くすることができず、生産性が低いという問題があった。また、PVAは、防湿性は高いものの、90%RH以上の高湿度条件下においては、水分子によりPVA分子同士の水素結合が阻害されることにより、防湿性が低下するという欠点があった。
これらのいずれの方法も、PVAの粘着性を改善し、けん化度が85.0モル%〜89.0モル%の部分けん化タイプのPVA単独でコーティングを行った時よりもスプレー速度を上げられるため、コーティング時間を短縮することができる。
[1]平均けん化度が85.0モル%〜89.0モル%であるポリビニルアルコール(a)と(メタ)アクリル系ポリマー(b)とを含む経口固形製剤用フィルムコーティング組成物であり、当該ポリビニルアルコール(a)が、以下に示す要件(a-1)および要件(a-2)を満たす、ポリビニルアルコールであることを特徴とする経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
要件(a-1):ポリビニルアルコールの5.0質量%水溶液100.0gに対して、1−プロパノールを130.0ml加え、撹拌して得られる液の20℃における液の透明度が50.0%以下である。
要件(a-2):ポリビニルアルコールの5.0質量%水溶液100.0gに対して、1−プロパノールを230.0ml加え、撹拌した液を、20℃で24時間静置して得られる上澄み液の濃度が0.75質量%以上である。
[2]フィルムコーティング組成物中における(メタ)アクリル系ポリマー(b)が、アクリル酸メチル・メタクリル酸メチルコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS、カルボキシビニルポリマー、ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー及びポリアクリル酸から選択される1種以上であることを特徴とする[1]記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
[3]フィルムコーティング組成物中におけるポリビニルアルコール(a)と(メタ)アクリル系ポリマー(b)の質量比が、90:10〜60:40であることを特徴とする[1]または[2]に記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
[4]フィルムコーティング組成物中におけるポリビニルアルコール(a)の質量割合が40質量%以上であり、(メタ)アクリル系ポリマー(b)の質量割合が4質量%以上40質量%以下であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
[5]さらに可塑剤(c)を含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
[6]ポリビニルアルコール(a)の4質量%水溶液粘度が2.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
[7]薬物を含有する錠剤に対して、[1]〜[6]のいずれかに記載のフィルムコーティング組成物で被覆されていることを特徴とする経口固形製剤。
[8]薬物を含有する錠剤に、[1]〜[6]のいずれかに記載のフィルムコーティング組成物を含む水溶液及び/又は水性溶液を塗布又は噴霧し、錠剤表面に当該フィルムコーティング組成物を被覆させる工程を含むことを特徴とする経口固形剤の製造方法。
本発明のフィルムコーティング組成物とは、通常は、フィルムコーティングに使用するコーティング液における溶媒以外の構成成分のことを示し、以下に述べる各成分の重量比および重量割合は、通常は、水および溶剤以外の構成成分における割合を示す。
また、本発明のフィルムコーティング組成物を用いてコーティング液を調製する場合、あらかじめ固形物からなる各構成成分または固形物と液状成分を混合した後に、水または有機溶剤に溶解または分散する方法、各構成成分をそれぞれ水または有機溶剤に溶解した溶液あるいは分散液を混合する方法を用いることができる。尚、該混合、溶解及び分散方法は、特に限定されない。
本発明の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物に用いるPVA(a)について詳しく説明する。
本発明で用いられるPVA(a)は、平均けん化度が85.0モル%〜89.0モル%であって、かつ、けん化度分布が従来のPVAより広いことが好ましい。
PVAの平均けん化度は、JIS K6726のけん化度測定方法に従って測定される。
前記撹拌は、均一に行われることが好ましい。
前記撹拌方法は、特に限定されないが、例えば、スターラーを用いて500rpmで撹拌することが好ましい。
また、1−プロパノールの滴下速度は、特に限定されないが、例えば10ml/minが好ましい。
該透明度は、好ましくは30.0%以下であり、より好ましくは20.0%以下である。
ここで求められる透明度の意味としては、けん化度の高いPVA成分は1−プロパノールに溶解しにくいため、PVA水溶液に一定量の1−プロパノールを添加すると、高けん化度成分が析出し、濁り成分となるため、前記条件で透明度が50.0%以下になることということは、高けん化度成分を多く含んでいること、すなわち高けん化度側のけん化度分布が広いことを示す。
前記撹拌は、均一に行われることが好ましい。
前記撹拌方法は、特に限定されないが、例えば、スターラーを用いて500rpmで撹拌することが好ましい。
また、1−プロパノールの滴下速度は、特に限定されないが、例えば10ml/minが好ましい。
本発明のフィルムコーティング組成物に用いられるPVA(a)は、平均けん化度が85.0モル%〜89.0モル%の範囲にあって、かつ、前記の要件(a-1)を満たす、すなわち高けん化度側のけん化度分布が広いものであり、かつ、前記の要件(a-2)を満たす、すなわち低けん化度側のけん化度分布が広いものであること、すなわち高けん化度側、低けん化度側の両方の分布が広いことが好ましい。
使用するPVAの要件(a-1)の条件で測定される透明度が50.0%以下であれば、このようなPVAを用いてコーティング試験を行っても、錠剤同士の付着が起きにくく、コーティング不良を防止でき、コーティング時間を短くできるため好ましい。
また、使用するPVAの要件(a-2)の条件で測定される上澄み液濃度が0.75質量%以上であれば、このようなPVAを用いてコーティング試験を行っても、錠剤同士の付着が起きにくく、コーティング不良を防止でき、コーティング時間を短くできるため好ましい。
その後、得られた塊状物、ゲル状物あるいは粒状物を粉砕し、必要に応じて添加したアルカリを中和した後、固形物と液分を分離し、固形物を乾燥することによりPVAを得ることができる。
4質量%水溶液粘度が2.0mPa・s以上の場合、コーティング後に錠剤表面に形成されるフィルムの強度が高くなるため、好ましい。4質量%水溶液粘度が10mPa・s以下の場合、粘度が低いため、コーティング時のスプレー速度を上げることができ、生産性が向上するため、好ましい。
本発明に用いる(メタ)アクリル系ポリマー(b)としては、例えば、アクリル系モノマー(例えば、アクリル酸エステル、アクリル酸およびその塩等)及びメタクリル系モノマー(例えば、メタクリル酸エステル、メタクリル酸およびその塩等)から選ばれる1種以上を重合あるいは共重合して得られるポリマー、アクリル系モノマー及びメタクリル系モノマーから選ばれる1種以上とそれ以外のモノマーとのコポリマー、アクリルユニット、メタクリルユニットを含まないポリマーにアクリル系モノマー及びメタクリル系モノマーから選ばれる1種以上をグラフト共重合したコポリマー等が挙げられる。
本発明におけるフィルムコーティング組成物中には、PVA(a)と(メタ)アクリル系ポリマー(b)の他に可塑剤(c)を含有しても良い。
可塑剤(c)としては、経口投与可能なものが好ましく、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレン類[例えば、ポリエチレングリコール(以下、PEGとも略記する)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリエチレングリコールエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の水溶性ポリオキシエチレン類;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60等の非水溶性ポリオキシエチレン類等]、糖類(例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、スクロース、ラクトース、マルトース、フルクトース等)、糖アルコール類(例えば、マンニトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトール、ペンタエリスリトール等)、アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等)、ジ乃至テトラアルカンジオール(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等)、3以上のヒドロキシル基を有するポリオール又はその多量体(例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン等)、ポリプロピレングリコール、高級脂肪酸又はそのエステル(例えば、ステアリン酸等)、硫酸塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等)、クエン酸エステル(例えば、クエン酸トリエチル等)、トリアセチン、フタル酸エステル系可塑剤(例えば、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル等)、ポリソルベート等が挙げられる。これら可塑剤は1種または2種以上を使用することができる。
PEGとしては、例えば、マクロゴール200、マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール600、マクロゴール1000、マクロゴール1500、マクロゴール1540、マクロゴール4000、マクロゴール6000、マクロゴール20000、マクロゴール35000等が挙げられ、平均分子量が400〜6000のPEG(例えば、マクロゴール400、マクロゴール600、マクロゴール1000、マクロゴール1500、マクロゴール1540、マクロゴール4000)が特に好ましい。
本発明のフィルムコーティング組成物は、PVA(a)、(メタ)アクリル系ポリマー(b)および可塑剤(c)の他に無機化合物を含有してもよい。
無機化合物としては、例えば、タルク、酸化チタン、顔料、コロイダルシリカなどが挙げられる。これらは1種単独もしくは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
これらの無機化合物の中でも、タルクが、PVAの粘着性の改善やコーティング後の錠剤表面平滑性の向上の点から好ましい。また酸化チタンも、コーティング後の錠剤表面の色相改善の点から好ましい。
本発明のフィルムコーティング組成物中におけるPVA(a)と(メタ)アクリル系ポリマー(b)の含有量の質量比としては、例えば、95:5〜5:95であり、好ましくは95:5〜30:70(例えば、90:10〜60:40)であり、より好ましくは85:15〜65:35(例えば、80:20〜70:30)である。
PVAの比率が90%以下であれば、高湿度下におけるコーティング錠剤の防湿性が高くなるため好ましい。
一方で、PVAの比率が60%以上であれば、錠剤表面に形成されるフィルムの柔軟性が優れたものとなり、錠剤が吸湿などにより膨張した際に、割れが発生しにくくなるとともに、コーティング皮膜の水溶性が高くなり、速溶錠としての使用が容易になるため好ましい。
本発明は、薬物を含有する錠剤に対して、本発明のフィルムコーティング組成物で被覆された経口固形製剤も含む。
本発明の経口固形製剤は、通常は、薬物を含有する芯部と、芯部を被覆する被覆部からなり、該被覆部が前記フィルムコーティング組成物を少なくとも含む。芯部としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤等が挙げられるが、その中でも特に錠剤が好ましい。
前記薬物は、経口投与可能な薬物であれば特に限定されるものではない。
賦形剤としては、白糖、乳糖、マンニトール、グルコース等の糖類、でんぷん、結晶セルロース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。
結合剤としては、PVA、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン、グルコース、白糖、乳糖、麦芽糖、デキストリン、ソルビトール、マンニトール、ヒドロキシエチルセルロース、HPMC、ヒドロキシプロピルセルロース、マクロゴール類、アラビアゴム、ゼラチン、寒天、でんぷん等が挙げられる。
また、滑択剤、凝集防止剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、コロイダルシリカ、ステアリン酸、ワックス類、硬化油、ポリエチレングリコール類、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
更に、医薬化合物の溶解補助剤としては、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、アジピン酸等の有機酸等が挙げられる。
これら添加剤は、1種又は2種以上を使用することができる。また、これら添加剤の含有量は、薬剤の種類等に応じて適宜決定することができる。
本発明のフィルムコーティング組成物の錠剤への被覆方法としては、特に限定されず、従来公知のコーティング手段を用いることができる。一般的に行われているのはスプレーコーティングであるが、その場合は、パンコーティング装置、ドラムタイプコーティング装置等を用いて行うことができ、これらの装置に付帯するスプレー装置にはエアースプレー、エアレススプレー等を用いることができる。
尚、以下の実施例及び比較例中、特にことわりのないかぎり、「%」及び「部」は質量基準を表す。
(比較合成例1)
市販のポリ酢酸ビニル樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JMR-30LL 重合度590)を100℃で真空乾燥して水分を除去した後、メタノールに溶解し、ポリ酢酸ビニルの46質量%メタノール溶液を得た。この溶液500質量部を40℃に加温し、35℃に調整した水酸化ナトリウムの3質量%メタノール溶液16質量部を加え、プロペラタイプの撹拌翼を用いて300rpmで、1分間撹拌した後、40℃で40分間静置することでけん化反応を行った。得られたゲル状物を粉砕し、メタノール570質量部と酢酸メチル230質量部及び水17質量部からなる混合溶媒に浸漬し、ゆっくりと撹拌しながら更に1時間、40℃でけん化反応を行ったのち、pHが8〜9になるように1質量%酢酸水溶液を加えて中和を行った後、固形物と液分を分離し、固形物を60℃で8時間乾燥し、PVA樹脂を得た。
ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液に水酸化ナトリウム溶液を加えて撹拌する際、撹拌速度を60rpmで、30秒間行い、通常の条件よりも不均一になるように混合を実施した以外は、比較合成例1と同様にして、PVA樹脂を得た。
JIS K6726の方法で測定したこのPVA樹脂の平均けん化度は88.2モル%で、4質量%水溶液粘度は5.2mPa・sであった。また、このPVA樹脂の5.0質量%水溶液100gに1−プロパノールを130ml加えた時の20℃における液の透明度は18.5%であり、このPVA樹脂の5.0質量%水溶液100gに1−プロパノールを230ml加え、20℃で24時間静置した後の上澄み液濃度は、0.83質量%であった。PVA樹脂の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、及び1−プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度の値を表1に示す。
ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液に水酸化ナトリウム溶液を加えて撹拌する際、撹拌速度を20rpmで、60秒間行い、通常の条件よりも不均一になるように混合を実施した以外は、比較合成例1と同様にして、PVA樹脂を得た。
PVA樹脂の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、及び1−プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度の値を表1に示す。
けん化反応を行う際、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液濃度を55質量%とし、この溶液500質量部に添加する水酸化ナトリウム溶液を23質量部とした以外は比較合成例1と同様にして、PVA樹脂を得た。PVA樹脂の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、及び1−プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度の値を表1に示す。
けん化反応を行う際、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液と水酸化ナトリウムとの混合液の容器の上半分にバンドヒーターを巻いて50℃に加熱し、けん化反応時の温度が上半分を50℃、下半分が室温(25℃)になるように温度勾配を設け、静置する時間を50分とした以外は比較合成例1と同様にして、PVA樹脂を得た。PVA樹脂の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、及び1−プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度の値を表1に示す。
ポリ酢酸ビニルの46質量%メタノール溶液500質量部をそれぞれ別の容器に250質量部ずつに分け、40℃に加温し、35℃に調整した水酸化ナトリウムの3質量%メタノール溶液を、一方には10質量部、もう一方には6質量部を加え、いずれも同時に300rpmで1分間撹拌した後、40℃で40分静置して別々にけん化反応を行って得られたゲル状物を一緒に粉砕した以外は、比較合成例1と同様にして、PVA樹脂を得た。PVA樹脂の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、及び1−プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度の値を表1に示す。
市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JL−05E けん化度:80.2モル%、4質量%水溶液粘度:5.1mPa・s)40質量部と市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JT−05 けん化度:94.0モル%、4質量%水溶液粘度:5.6mPa・s)60質量部をポリエチレン袋に入れ、袋を約100回振り、PVA粉末を均一に混合して、けん化度分布の広いPVA樹脂を作成した。PVA樹脂の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、及び1−プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度の値を表1に示す。
装置:ハイコーター(HC−FZ−Labo、フロイント産業製)
錠剤仕込み量:1000g
給気温度:70−80℃
排気温度:44−52℃
給気空気量:0.6m3/min
スプレーガン数:1個
スプレーガン エア量(アトマイズドエア):30L/min
スプレーガン エア量(パターンエア):9L/min
スプレー速度:チューブポンプの吐出量で調整
パン回転数:18rpm
コーティング試験において、コーティング溶液をスプレー塗布する際のスプレー速度を2.0g/minで開始し、錠剤同士及び錠剤とパンとの貼り付きが起こらない場合は、徐々にスプレー速度を高くしていき、錠剤同士又は錠剤とパンとの貼り付きが発生するまでスプレー速度を上げた。その後、一旦、スプレー速度を落とし、錠剤同士又は錠剤とパンとの貼り付きが発生しない速度になったことを確認し、10分間そのスプレー速度でコーティング試験を継続して貼り付きが発生しないことを確認し、該スプレー速度を最大スプレー速度とした。一方、初期のスプレー速度2.0g/minで錠剤同士又は錠剤とパンとの貼り付きが起こる場合は、徐々にスプレー速度を落としていき、10分間そのスプレー速度で貼り付きが発生しないことを確認し、該スプレー速度を最大スプレー速度とした。さらに、最大スプレー速度から、錠剤に対し固形分で3質量%の被覆を施すための最短コーティング時間を算出した。
固形分濃度が10質量%のコーティング組成物の溶液もしくは分散液を、PETシート上にキャスティングし、20℃×65%RHの恒温恒湿機内で乾燥して、厚さ100μmのフィルムを得た。得られたフィルムの水蒸気透過度をL80−5000型水蒸気透過度計(Systech Instruments社製)を用いてJIS K7129の方法に従った方法で25℃、90%相対湿度差の条件下で測定した。
固形分濃度が10質量%のコーティング組成物の溶液もしくは分散液を、PETシート上にキャスティングし、20℃×65%RHの恒温恒湿機内で乾燥して、厚さ100μmのフィルムを得た。得られたフィルムを10cm×3cmの長方形状に切り取り、JIS K7127の方法に従い、以下の条件で引張伸度を測定した。
・使用装置:オートグラフAGS−J((株)島津製作所)
・チャック幅:3cm
・引張速度:50mm/min.
・測定室内条件:20℃、65%RH
合成例1のPVA樹脂24質量部を精製水270質量部に添加し、80℃まで加温しながら1時間撹拌し、その後、30℃まで冷却しながら撹拌を行い、PVA樹脂の水溶液を得た。この水溶液を撹拌しているところにアミノアルキルメタクリレートコポリマー(エボニックデグサ製、EUDRAGITR EPO)6質量部を少しずつ添加し、1時間撹拌を行いながら分散させ、コーティング液を調製した(PVA:アミノアルキルメタクリレートコポリマー=8:2 水溶液濃度:10質量%)。このコーティング液を用い、乳糖及びコーンスターチを主体とした素錠に対してコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間、コーティング組成物の水蒸気透過度及びフィルムの引張伸度を評価した。コーティング組成物の配合割合を表2に示す。
合成例1のPVAとアミノアルキルメタクリレートコポリマーを含むフィルムコーティング液の最大スプレー速度は5.00g/minで、3質量%の被覆を施すためのコーティング時間は60分であった。また、90%RHにおける水蒸気透気度は、200g/m2・day、コーティング組成物皮膜(フィルム)の伸度は180%であった。結果を表3に示す。
合成例2のPVA樹脂24質量部とアミノアルキルメタクリレートコポリマー(エボニックデグサ製、EUDRAGITR EPO)6質量部をあらかじめ混合した組成物を、精製水270質量部に加え、30℃で2時間撹拌し、コーティング液を調製した(PVA:アミノアルキルメタクリレートコポリマー=8:2 水溶液濃度:10質量%)。コーティング組成物の配合割合を表2に示す。
このコーティング液を用い、乳糖及びコーンスターチを主体とした素錠に対してコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間、コーティング組成物フィルムの水蒸気透過度及び引張伸度を評価した。結果を表3に示す。
合成例1のPVA樹脂に代えて、それぞれ合成例3〜6のPVA樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にしてコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間、コーティング組成物フィルムの水蒸気透過度及び引張伸度を評価した。コーティング組成物の配合割合を表2に、結果を表3に示す。
実施例1のアミノアルキルメタクリレートコポリマーに代えて、メタクリル酸コポリマーL(エボニックデグサ製、EUDRAGITR L100)を用いた以外は、実施例2と同様にしてコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間、コーティング組成物フィルムの水蒸気透過度及び引張伸度を評価した。コーティング組成物の配合割合を表2に、結果を表3に示す。
合成例1のPVAとアミノアルキルメタクリレートコポリマーの質量比を表2に示した割合にした以外は実施例1と同様にしてコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間、コーティング組成物フィルムの水蒸気透過度及び引張伸度を評価した。コーティング組成物の配合割合を表2に、結果を表3に示す。
合成例1のPVAとアミノアルキルメタクリレートコポリマー(エボニックデグサ製、EUDRAGITR EPO)、可塑剤(ステアリン酸、ポリエチレングリコール6000)および無機化合物(タルク、酸化チタン)をそれぞれ表2に示した割合にして濃度10質量%のコーティング液を作成した以外は、実施例1と同様にしてコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間、コーティング組成物フィルムの水蒸気透過度及び引張伸度を評価した。コーティング組成物の配合割合を表2に、結果を表3に示す。
市販の部分けん化PVA(日本酢ビ・ポバール製 JP−05 けん化度:88.2モル%、4質量%水溶液粘度:5.3mPa・s)30質量部を精製水270質量部に添加し、80℃まで加温しながら1時間撹拌し、その後、30℃まで冷却しながら撹拌を行い、コーティング溶液を調製した(PVA水溶液濃度:10質量%)。このコーティング溶液を用い、乳糖及びコーンスターチを主体とした素錠に対してコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間、コーティング組成物フィルムの水蒸気透過度及び引張伸度を評価した。なお、使用したJP−05の1−プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度の値を表1に、コーティング組成物の配合割合を表2に、結果を表3に示す。
合成例1のPVA樹脂に代えて、市販の部分けん化PVA(日本酢ビ・ポバール製 JP−05 けん化度:88.2モル%、4質量%水溶液粘度:5.3mPa・s)を使用した以外は、実施例1と同様にしてコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間、コーティング組成物フィルムの水蒸気透過度及び引張伸度を評価した。コーティング組成物の配合割合を表2に、結果を表3に示す。
合成例1のPVA樹脂に代えて、比較合成例1のPVA樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にしてコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間、コーティング組成物フィルムの水蒸気透過度及び引張伸度を評価した。コーティング組成物の配合割合を表2に、結果を表3に示す。
合成例1のPVA樹脂に代えて、市販の部分けん化PVA(日本酢ビ・ポバール製 JP−05 けん化度:88.2モル%、4質量%水溶液粘度:5.3mPa・s)を使用した以外は、それぞれ実施例11および12と同様にして、コーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間、コーティング組成物フィルムの水蒸気透過度及び引張伸度を評価した。コーティング組成物の配合割合を表2に、結果を表3に示す。
市販の部分けん化PVA(日本酢ビ・ポバール製 JP−05 けん化度:88.2モル%、4質量%水溶液粘度:5.3mPa・s)とアミノアルキルメタクリレートコポリマー(エボニックデグサ製、EUDRAGITR EPO)、可塑剤(ポリエチレングリコール6000)および無機化合物(タルク、酸化チタン)を表2に示した割合にした以外は、実施例1と同様にしてコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間、コーティング組成物フィルムの水蒸気透過度及び引張伸度を評価した。コーティング組成物の配合割合を表2に、結果を表3に示す。
Claims (8)
- 平均けん化度が85.0モル%〜89.0モル%であるポリビニルアルコール(a)と
(メタ)アクリル系ポリマー(b)とを含む経口固形製剤用フィルムコーティング組成物であり、当該ポリビニルアルコール(a)が、以下に示す要件(a-1)および要件(a-2)を満たす、ポリビニルアルコールであることを特徴とする経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
要件(a-1):ポリビニルアルコールの5.0質量%水溶液100.0gに対して、1−プロパノールを130.0ml加え、撹拌して得られる液の20℃における液の透明度が50.0%以下である。
要件(a-2):ポリビニルアルコールの5.0質量%水溶液100.0gに対して、1−プロパノールを230.0ml加え、撹拌した液を、20℃で24時間静置して得られる上澄み液の濃度が0.75質量%以上である。 - フィルムコーティング組成物中における(メタ)アクリル系ポリマー(b)が、アクリル酸メチル・メタクリル酸メチルコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS、カルボキシビニルポリマー、ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー及びポリアクリル酸から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
- フィルムコーティング組成物中におけるポリビニルアルコール(a)と(メタ)アクリル系ポリマー(b)の質量比が、90:10〜60:40であることを特徴とする請求項1または2に記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
- フィルムコーティング組成物中におけるポリビニルアルコール(a)の質量割合が40質量%以上であり、(メタ)アクリル系ポリマー(b)の質量割合が4質量%以上40質量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
- さらに可塑剤(c)を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
- ポリビニルアルコール(a)の4質量%水溶液粘度が2.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
- 薬物を含有する錠剤に対して、請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルムコーティング組成物で被覆されていることを特徴とする経口固形製剤。
- 薬物を含有する錠剤に、請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルムコーティング組成物を含む水溶液及び/又は水性溶液を塗布又は噴霧し、錠剤表面に当該フィルムコーティング組成物を被覆させる工程を含むことを特徴とする経口固形剤の製造方法。
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