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JP6386278B2 - 透明遮熱断熱部材及びその製造方法 - Google Patents

透明遮熱断熱部材及びその製造方法 Download PDF

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JP6386278B2 JP2014141827A JP2014141827A JP6386278B2 JP 6386278 B2 JP6386278 B2 JP 6386278B2 JP 2014141827 A JP2014141827 A JP 2014141827A JP 2014141827 A JP2014141827 A JP 2014141827A JP 6386278 B2 JP6386278 B2 JP 6386278B2
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Description

本発明は、透明遮熱断熱部材及びその製造方法に関する。
地球温暖化防止及び省エネルギーの観点から、ビルディングの窓、ショーウインドウ、自動車の窓面等から太陽光の熱線(赤外線)をカットし、内部の温度を低減させることが広く行われている。また、最近では、省エネルギーの観点から、夏場の温度上昇の原因となる熱線をカットする遮熱性のみならず、冬場の室内からの暖房熱の流出を抑え暖房負荷を低減させる断熱機能をも付与した遮熱断熱部材が提案され市場投入されつつある(例えば、特許文献1〜4参照。)。
特開2013−010341号公報 特開2013−151103号公報 特開2005−343113号公報 国際公開WO2012/096304号パンフレット
特許文献1には、基材の一方の面に反射層及び保護層を順に積層して形成された赤外線反射フィルムが開示されている。また、特許文献1では、上記保護層は、上記反射層に積層されるオレフィン系樹脂層と、該オレフィン系樹脂層に積層されて最外層となるハードコート層とで構成され、上記オレフィン系樹脂層の厚みは5〜30μmに設定されている。しかし、上記保護層は、接着層を介して上記反射層に積層されているため、上記接着層の材質又は上記接着層の厚みによっては、該接着層が赤外線を吸収してしまい、上記赤外線反射フィルムの断熱性能が低下する恐れがあった。また、長期に亘って高温高湿状態に置かれると不活性なオレフィン系樹脂が接着層から剥離する恐れがあった。
また、特許文献2には、透明で遮熱断熱機能を有する透明積層部(赤外線反射層)の外側に酸化ケイ素よりなる保護層が形成されているとともに、上記透明積層部と上記保護層との間にオレフィン系樹脂よりなるスキージ応力緩和層が形成された透明積層フィルム(赤外線反射フィルム)が開示されている。しかし、上記スキージ応力緩和層は、接着層を介して上記透明積層部の表面に接着されているため、上記接着層の材質又は上記接着層の厚みによっては、該接着層が赤外線を吸収してしまい、特許文献1の場合と同様に上記透明積層フィルムの断熱性能が低下する恐れがあった。また、長期に亘って高温高湿状態に置かれると不活性なオレフィン系樹脂が接着層から剥離する恐れがあった。
また、特許文献3には、ポリエステル系フィルムの一方の面にアルミニウム蒸着層及びハードコート層を順に積層して形成された日射遮蔽フィルムが開示されている。しかし、上記ハードコート層の厚みは0.5〜30μmに設定されているため、上記ハードコート層がエステル結合やウレタン結合等を含むアクリル系樹脂のように赤外線吸収が大きな材料を用いて形成されている場合、上記ハードコート層の厚みが厚くなると、上記ハードコート層での赤外線の吸収が大きくなり、上記日射遮蔽フィルムの断熱性能が低下する恐れがあった。また、上記ハードコート層が電離放射線硬化型樹脂で形成されている場合、上記電離放射線硬化型樹脂は硬化収縮が大きいため、金属層であるアルミニウム蒸着層に直接上記電離放射線硬化型樹脂を塗工すると、上記金属層と上記ハードコート層との密着性が低下し、上記ハードコート層が剥離する恐れがあった。
また、特許文献4には、基板、遠赤外線反射層及びハードコート層がこの順で配された遠赤外線反射積層体が開示されている。また、特許文献4では、上記ハードコート層は、リン酸基、スルホン酸基及びアミド基から選ばれる1種以上の極性基を有する架橋樹脂を含んでいるため、金属層、金属酸化物層等からなる遠赤外線反射層との相互作用により密着性は向上する。しかし、上記ハードコート層が、紫外線を含む光に長期間曝されると、上記架橋樹脂の劣化等により、上記遠赤外線反射層との密着性が低下する恐れがあった。
本発明は上記問題を解決したもので、保護層を特定の樹脂で形成するとともに、保護層と赤外線反射層との間に特定の樹脂からなるプライマー層を配置させることにより、保護層の耐擦傷性及び密着性に優れた透明遮熱断熱部材を提供するものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために前述のプライマー層について鋭意検討した結果、意外にも、酸基又は水酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂が、赤外線反射層及び保護層の両層に対して密着性に優れ、保護層の耐擦傷性を確保できること、及び透明遮熱断熱部材の垂直放射率と熱貫流率の増大を抑制できることを見出し、本発明をなすに至った。
本発明の透明遮熱断熱部材は、透明基材と、前記透明基材の上に形成された機能層とを含む透明遮熱断熱部材であって、前記機能層は、前記透明基材側から赤外線反射層前記赤外線反射層に接するプライマー層と、前記プライマー層に接する保護層と、をこの順に積層して含み、前記赤外線反射層は、導電性積層膜からなり、前記プライマー層は、酸基又は水酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂からなり、前記保護層は、電離放射線硬化型樹脂又は熱硬化型樹脂からなることを特徴とする。
また、本発明の透明遮熱断熱部材の製造方法は、透明基材の上に赤外線反射層を形成する工程と、前記赤外線反射層の上に、プライマー層形成用塗布液を塗布してプラマー層を形成する工程と、前記プライマー層の上に、重量平均分子量が10,000〜100,000の電離放射線硬化型樹脂オリゴマーを含む保護層形成用塗布液を塗布した後に、電離放射線を照射して保護層を形成する工程とを含むことを特徴とする。
本発明によれば、保護層の耐擦傷性及び密着性に優れ、遮熱機能及び断熱機能に優れた透明遮熱断熱部材を提供できる。また、本発明によれば、プライマー層形成用塗布液の塗工性に優れた透明遮熱断熱部材の製造方法を提供できる。
図1は、本発明の透明遮熱断熱部材の一例を示す概略断面図である。 図2は、本発明の透明遮熱断熱部材の他の例を示す概略断面図である。
本発明の透明遮熱断熱部材は、透明基材と、上記透明基材の上に形成された機能層とを備えている。また、上記機能層は、上記透明基材側から赤外線反射層、プライマー層及び保護層をこの順に積層して備え、上記プライマー層は、酸基又は水酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂からなり、上記保護層は、電離放射線硬化型樹脂又は熱硬化型樹脂からなることを特徴とする。
上記構成とすることにより、本発明の透明遮熱断熱部材は、保護層の耐擦傷性及び密着性に優れると共に、遮熱機能及び断熱機能に優れる。
以下、本発明の透明遮熱断熱部材を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の透明遮熱断熱部材の一例を示す概略断面図である。図1において、本発明の透明遮熱断熱部材10は、透明基材11と、赤外線反射層12と、プライマー層13と、保護層14と、粘着剤層15とを備え、赤外線反射層12、プライマー層13及び保護層14により機能層17を構成している。また、図2は、本発明の透明遮熱断熱部材の他の例を示す概略断面図である。図2において、本発明の透明遮熱断熱部材20は、透明基材11と、赤外線反射層12と、プライマー層13と、保護層14と、粘着剤層15と、コレステリック液晶ポリマー層16とを備え、赤外線反射層12、プライマー層13及び保護層14により機能層17を構成している。即ち、図2に示す透明遮熱断熱部材は、図1に示す透明遮熱断熱部材の透明基材11と粘着剤層15との間にコレステリック液晶層16を更に備えるものである。
<保護層>
上記保護層は、電離放射線硬化型樹脂又は熱硬化型樹脂から構成されている。これにより、保護層の耐擦傷性を向上できる。
上記保護層の厚みは、0.1μm〜2.5μmであることが好ましく、0.5μm〜1.5μmがより好ましい。上記保護層の厚みがこの範囲内であれば、保護層を形成する電離放射線硬化型樹脂又は熱硬化型樹脂が多少赤外線を吸収する樹脂であっても、赤外線の吸収量は少ないため、本発明の透明遮熱断熱部材の断熱性を低下させることを抑制できる。
また、通常、0.1μm〜2.5μmと薄い保護層を赤外線反射層に直接設けた場合、赤外線反射層との密着性が悪くなり、上記保護層の耐擦傷性を確保しにくい。しかし、本発明では、後述するプライマー層の効果で、上記保護層が0.1μm〜2.5μmと薄くても、赤外線反射層との密着性が優れるので、上記保護層の硬度を確保して、耐擦傷性を向上できる。
また、上記保護層側のJIS R3106に基づく垂直放射率は、0.3以下であることが好ましい。上記垂直放射率が0.3以下であれば、赤外線の吸収が小さいため、本発明の透明遮熱断熱部材の断熱性能を確保できる。
[電離放射線硬化型樹脂]
上記電離放射線硬化型樹脂からなる保護層は、電離放射線硬化型樹脂オリゴマー又は電離放射線硬化型樹脂モノマーに電離放射線を照射して硬化させて形成する。
上記電離放射線硬化型樹脂オリゴマーの重量平均分子量は、10,000〜100,000であることが好ましい。上記重量平均分子量が上記範囲内であれば、上記保護層を形成するために用いる保護層形成用塗布液の塗工性が向上すると共に、形成した保護層の耐擦傷性を向上できる。本発明では、上記オリゴマーの重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)法により測定するものとする。
即ち、上記重量平均分子量が10,000より小さいと、上記保護層形成用塗布液を、後述する変性ポリオレフィン樹脂からなる比較的濡れ性が低いプライマー層に塗工した際に、上記保護層形成用塗布液が上記プライマー層に馴染まず、ハジキといった製膜不良を起こしやすく、外観不良となる傾向がある。また、上記重量平均分子量が100,000より大きいと、一般的に電離放射線により硬化する際に分子量あたりの反応点となる不飽和結合基数が少なくなるため、塗膜の架橋密度が低下し、保護層としての耐擦傷性を十分に発揮できなくなる傾向がある。
重量平均分子量が10,000〜100,000である電離放射線硬化型樹脂オリゴマーとしては、例えば、ウレタン系、エポキシ系、ポリエステル系等の多官能アクリレートオリゴマー等を用いることができる。中でも、ウレタン系多官能アクリレートオリゴマーが、形成する保護層の硬度と柔軟性のバランスが取りやすいため好ましい。上記ウレタン系多官能アクリレートオリゴマーとしては、例えば、アクリレートの重合体を主鎖骨格に持ち、末端に反応性を有するアクリロイル基を持ったウレタンアクリレートを反応させることで得られる。
上記多官能アクリレートオリゴマーについては、市販品を用いることもできる。例えば、共栄社化学社製の“BPZA−66”、“BPZA−100”(商品名)、大成ファインケミカル社製の“アクリット8KX−012C”、“8KX−077”(商品名)、日立化成工業社製の“ヒタロイド7975”、“ヒタロイド7975D”、“ヒタロイド7988”(商品名)、ダイセル・オルネクス社製の“ACA−200M”、“ACA−230AA”、“ACA−Z250”、“ACA−Z251”、“ACA-Z300”、“ACA−Z320”(商品名)等を用いることができる。
上記保護層形成用塗布液の上記プライマー層への製膜性が低下しない範囲であれば、上記電離放射線硬化型樹脂オリゴマーに代えて、電離放射線硬化型樹脂モノマーを用いることができ、例えば、不飽和基を2つ以上有する多官能アクリレートモノマー等を用いことができる。具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサントリメタクリレート等のアクリレート;ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等のポリウレタンポリアクリレート;ポリエステルポリアクリレート等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とから生成されるエステル類;1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン等のビニルベンゼン及びその誘導体等が挙げられる。
また、上記電離放射線硬化型樹脂モノマーは、上記電離放射線硬化型樹脂オリゴマーと混合して用いることもできる。
[熱硬化型樹脂]
上記熱硬化型樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。上記熱硬化型樹脂からなる保護層は、熱硬化型樹脂前駆体を加熱して硬化させて形成する。
形成した保護層の硬度を向上させるため、上記熱硬化型樹脂前駆体としては、シリコーン樹脂前駆体が好ましく、そのシリコーン樹脂前駆体の中でも、アルコキシシラン系化合物からなる熱硬化型樹脂前駆体が最も好ましい。
上記アルコキシシラン系化合物からなる熱硬化型樹脂前駆体としては、例えば、信越シリコーン社製の“KP−86”(商品名)、モメンティブパフォーマンスマテリアルジャパン社製の“SHC−900”、“トスガード510”(商品名)等が挙げられる。
<プライマー層>
上記プライマー層は、酸基又は水酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂から構成されている。これにより、上記保護層と上記赤外線反射層との密着性を向上できる。更に、上記変性ポリオレフィン樹脂は、その主成分がポリオレフィンであるので、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂等と比較して、赤外線領域波長の光の吸収が極めて小さく、その結果、垂直放射率及び熱貫流率の増大を抑制することができる。
上記プライマー層は、特に、酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂から形成することが好ましい。上記プライマー層の密着性をより向上できるからである。また、上記プライマー層の密着性が低下しなければ、上記プライマー層は、水酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂から形成することができる。
上記変性ポリオレフィン樹脂の骨格となるポリオレフィン樹脂としては特に限定はされないが、ポリプロピレンやポリプロピレン−α−オレフィン共重合体が好ましく用いられる。上記ポリプロピレン−α−オレフィン共重合体のα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、これらのうち1種又は数種を用いることができる。上記ポリプロピレン−α−オレフィン共重合体におけるポリプロピレンの比率は特に限定はされないが、有機溶剤に対する溶解性の観点から、50モル%以上90モル%以下であることが好ましい。
上記酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂は、特に限定はされないが、例えば、上記ポリオレフィン樹脂にα,β−不飽和カルボン酸やその酸無水物の少なくとも1種をグラフト共重合することにより酸変性して得ることができる。上記α,β−不飽和カルボン酸や酸無水物としては特に限定はされないが、例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、アコニット酸、クロトン酸、イソクロトン酸、アクリル酸等やその無水物が挙げられ、これらは単独で使用しても2つ以上を併用してもよい。これらの中でも、汎用性の点から、無水マレイン酸、無水イタコン酸の少なくも1種を上記ポリオレフィン樹脂にグラフト共重合して変性するのが好ましい。
上記α,β−不飽和カルボン酸やその酸無水物のポリオレフィン樹脂に対するグラフト共重合の量は、0.2〜30質量%の範囲が好ましく、1.0〜10.0質量%の範囲がより好ましい。上記グラフト共重合の量が0.2質量%未満であると、有機溶媒に対する溶解性が低くなって、プライマー層形成用塗布液としての安定性が悪くなる恐れや、赤外線反射層との密着性が不十分となる恐れがあり、逆に、30質量%を超えると、赤外線領域波長の光の吸収が大きくなり始め、垂直放射率及び熱貫流率が増大する恐れがある。
上記酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂の製造は、溶融法又は溶液法等の公知の方法により行うことができる。
また、上記酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂は、(メタ)アクリル酸系モノマーを更に加えてアクリル変性することにより、極性溶媒に対する溶解性やハードコート剤等との密着性や相溶性をより向上させることもできる。これらは、具体的には、上記酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂の酸変性部分と反応する官能基(水酸基やグリシジル基)を有する不飽和結合含有化合物を反応させ、二重結合を導入した後に、(メタ)アクリル酸系モノマーをグラフト共重合することにより得ることができる。
上記官能基を有する不飽和結合含有化合物としては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸ポリプロピレングリコール、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸ポリプロピレングリコール、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等を用いることが好ましい。これらの不飽和結合含有化合物は、酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂に対して10〜90質量%程度用いることが好ましい。
このように、酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂に二重結合を導入した後に、グラフト共重合させる(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。上記(メタ)アクリル酸としては、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ポリプロピレングリコール、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸系モノマーは、単独又は2種以上を混合して使用できる。
また、上記水酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂は、酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂に二重結合を導入した後に、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸系モノマーをグラフト共重合させることにより得ることができる。
上記変性ポリオレフィン樹脂のGPC法で測定した重量平均分子量は、10,000〜200,000の範囲であることが好ましい。上記重量平均分子量が10 ,000 より小さいと、プライマー層としての凝集力が劣る傾向にあり、上記重量平均分子量が200,000より大きいとプライマー層形成用塗布液の粘度の増加により作業性が低下する傾向にある。
上記酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂については、市販品を用いることができ、例えば、三井化学社製の“ユニストール902”(商品名)、東洋紡社製の“ハードレン”(商品名)、日本製紙ケミカル社製の“アウローレン”(商品名)、三菱化学社製の“サーフレン”(商品名)、住化ケムテックス社製の“スミフィット”(商品名)、住友精化社製の“ザイクセン”(商品名)等が挙げられる。上記水酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂についても、市販品を用いることができ、例えば、三井化学社製の“ユニストール901”(商品名)、三菱化学社製の“ポリテール”(商品名)等が挙げられる。
上記プライマー層は、上記赤外線反射層の上に、プライマー層形成用塗布液を塗工することにより、直接形成されていることが好ましい。これにより、上記プライマー層と上記赤外線反射層との接着性をより向上できる。
上記プライマー層の厚みは、0.05μm〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.05μm〜5μmである。上記厚みが0.05μmを下回ると赤外線反射層との密着性が十分には得られず、上記厚みが10μmを超えると、使用する変性ポリオレフィン樹脂の種類や変性量によっては、ヘーズ値が増大したり、あるいは、赤外線領域波長の光の吸収が大きくなり、その結果、垂直放射率及び熱貫流率が大きくなったりする場合がある。
上記プライマー層には、アンチブロッキング剤として、赤外線領域波長の光の吸収が大きくならない程度に有機物や無機物のようなフィラーを適宜添加することができる。
上記フィラーとしては、全光線透過率やヘーズ等の光学特性に影響を与えない範囲で、例えば無機フィラーや有機フィラーを用いることができる。上記無機フィラーとしては、例えば、シリカ、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、マイカ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。また、上記有機フィラーとしては、例えば、シリコーン樹脂系フィラー、アクリル樹脂系フィラー、スチレン樹脂系フィラー、フッ素樹脂系フィラー、ポリブタジエン樹脂系フィラー等が挙げられる。
これらのフィラーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記フィラーの平均粒子径(個数平均径)は、アンチブロッキング性が付与でき、透明遮熱断熱部材としての特性、外観に影響を与えない限りにおいては、特に限定はされないが、上記プライマー層の厚さの0.5倍〜2.0倍程度の大きさであることが好ましい。
<赤外線反射層>
上記赤外線反射層は、導電性積層膜から構成されていることが好ましく、更に上記導電性積層膜は、可視光領域の光透過率を向上させる目的で、少なくとも上記透明基材側から金属酸化物層と、銀、銅、金、白金、アルミニウム等の金属又はこれらの合金により形成される金属層と、上記金属酸化物層とをこの順に備えていることが好ましい。上記導電性積層膜を少なくとも上記三層の構造にすることにより、上記透明遮熱断熱部材の可視光線領域の光透過率と断熱機能をより向上できる。また、上記導電性積層膜は、可視光領域の光透過率を低減させない限りにおいては、金属酸化物層/金属層/金属酸化物層/金属層/金属酸化物層等というように5層、7層、9層の多層構造としてもよい。但し、9層を超える構成にした場合には、可視光線領域の光透過率が低下する傾向にある。
上記金属酸化物層は、酸化インジウムスズ、酸化インジウム亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化アルミニウム等による金属酸化物材料が適宜使用可能であり、これらの材料をスパッタリング法、蒸着法等のドライコーティング法により形成することが可能で、上記金属酸化物層の一層当たりの厚さは、0.005μm〜0.1μmとすればよい。
また、上記金属層は、銀、銅、金、白金、アルミニウム等の金属又はこれらの合金から形成可能であり、具体的には上記金属又は上記合金を用いてスパッタリング法、蒸着法等のドライコーティング法により上記金属層を形成することができ、上記金属層の一層当たりの厚さは、可視光領域の光透過率と赤外線反射率が共に高くなるように、0.005μm〜1.0μmの間で適宜調整すればよい。
また、上記赤外線反射層の波長5.5〜25.2μmの光の平均反射率は、80%以上に設定することが好ましい。これにより、本発明の透明遮熱断熱部材に断熱機能を確実に付与できる。
<透明基材>
本発明の透明遮熱断熱部材を構成する透明基材としては、透光性を有する材料で形成されていれば特に限定されない。上記透明基材としては、例えば、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート等)、脂環式ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂(例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、セルロース系樹脂(例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等)、ノルボルネン系樹脂等の樹脂を、フィルム状又はシート状に加工したものを用いることができる。上記樹脂をフィルム状又はシート状に加工する方法としては、押し出し成形法、カレンダー成形法、圧縮成形法、射出成形法、上記樹脂を溶剤に溶解させてキャスティングする方法等が挙げられる。上記樹脂には、酸化防止剤、難燃剤、耐熱防止剤、紫外線吸収剤、易滑剤、帯電防止剤等の添加剤を添加してもよい。上記透明基材の厚みは、例えば、10μm〜500μmであり、加工性、コスト面を考慮すると25μm〜125μmが好ましい。
<コレステリック液晶ポリマー層>
本発明の透明遮熱断熱部材は、その透明性を損なわなければ、上記透明基材の上記赤外線反射層側とは反対側にコレステリック液晶ポリマー層を更に形成してもよい。これにより、本発明の透明遮熱断熱部材の遮熱機能をより向上させることができる。
上記コレステリック液晶ポリマー層は、重合性官能基を有する液晶化合物と、重合性官能基を有するキラル剤と、多官能アクリレート化合物とを含む材料を光重合して形成することができる。
コレステリック液晶ポリマーは、棒状分子であるネマチック液晶化合物に少量の光学活性化合物(キラル剤)を添加することにより得ることができる。このコレステリック液晶ポリマーは、ネマチック液晶化合物が幾重にも重なる層状の構造を有している。この層内では、それぞれのネマチック液晶化合物が一定方向に配列しており、互いの層は液晶化合物の配列方向が螺旋状になるように集積している。そのため、コレステリック液晶ポリマーは、この螺旋のピッチに応じて、特定の波長の光のみを選択的に反射することができる。
通常のコレステリック液晶ポリマーは、温度により螺旋のピッチが変わり、反射する光の波長が変わるという特徴がある。重合性官能基を有する液晶化合物と、重合性官能基を有するキラル剤とを含有する混合物を、液晶状態で均一にさせた後、液晶状態を保持したまま紫外線等の活性エネルギー線を照射すると、液晶化合物の配向状態を半永久的に固定化したコレステリック液晶ポリマーを含有する層を作製することが可能となる。
このようにして得られたコレステリック液晶ポリマー層は、温度によって反射する光の波長が変わることがなく半永久的に反射波長を固定化することが可能となる。また、このコレステリック液晶ポリマー層は、コレステリック液晶旋光性を有することから、円偏光の回転方向と波長が、液晶分子の回転方向と螺旋ピッチと等しい場合、その光を透過せずに反射する。通常、太陽光は、右螺旋と左螺旋の円偏光から合成されている。そのため、旋光性の向きが右螺旋のキラル剤を用いて特定の螺旋ピッチとしたコレステリック液晶ポリマー層と、旋光性の向きが左螺旋のキラル剤を用いて特定の螺旋ピッチとしたコレステリック液晶ポリマー層とを積層させることにより、選択反射波長での反射率をより高くすることができる。
上記コレステリック液晶ポリマー層の厚みは、入射光を最大反射させる波長(最大反射率波長)の1.5倍以上4.0倍以下が好ましく、最大反射率波長の1.7倍以上3.0倍以下がより好ましい。コレステリック液晶ポリマー層の厚みが最大反射率波長の1.5倍を下回ると、コレステリック液晶ポリマー層の配向性を維持することが困難になり、光反射率が低下することがある。また、コレステリック液晶ポリマー層の厚みが最大反射率波長の4.0倍を超えると、コレステリック液晶ポリマー層の配向性と光反射率は良好に維持できるが、厚みが厚くなり過ぎることがある。コレステリック液晶ポリマー層の厚みは、例えば、0.5μm以上20μm以下、好ましくは1μm以上10μm以下である。
また、上記コレステリック液晶ポリマー層は、単層構造に限らず、複数層構造であってもよい。複数層構造の場合、それぞれの層が、異なる選択反射波長を有すれば、光を反射する波長領域を広げることができ、好ましい。
以下、上記コレステリック液晶ポリマー層の形成材料について詳細に説明する。
[重合性官能基を有する液晶化合物]
上記コレステリック液晶ポリマー層の形成には、重合性官能基を有する液晶化合物を用いる。上記液晶化合物としては、例えば、「液晶の基礎と応用」(松本正一、角田市良 共著;工業調査会)第8章に記載されているような公知の化合物を用いることができる。
上記液晶化合物の具体例としては、例えば、特開2012−6997号公報、特開2012−168514号公報、特開2008−217001号公報、国際公開WO95/22586号パンフレット、特開2000−281629号公報、特開2001−233837号公報、特表2001−519317号公報、特表2002−533742号公報、特開2002−308832号公報、特開2002−265421号公報、特開2005−309255号公報、特開2005−263789号公報、特開2008−291218号公報、特開2008−242349号公報等に記載の化合物を挙げることができる。
上記コレステリック液晶ポリマー層の形成に用いられる液晶化合物は、一種類を単独で用いてもよいし、単独で用いた場合に、コレステリック液晶ポリマー層の配向が乱れやすいのであれば、高融点液晶化合物と低融点液晶化合物とを併用してもいい。この場合、高融点液晶化合物の融点と低融点液晶化合物の融点との差が、15℃以上30℃以下であることが好ましく、20℃以上30℃以下がより好ましい。
上記液晶化合物について、高融点液晶化合物と低融点液晶化合物とを併用する場合、高融点液晶化合物の融点は、透明基材のガラス転移温度以上であることが好ましい。上記液晶化合物の融点が低い場合、キラル剤や溶剤との相溶性や溶解性に優れるが、融点が低すぎると作製した透明遮熱断熱部材の耐熱性に劣る。そのため、少なくとも高融点液晶化合物の融点を透明基材のガラス転移温度以上とするのがよい。
上記高融点液晶化合物と上記低融点液晶化合物との組合せとしては、市販品を用いることができ、例えば、ADEKA社製の“PLC7700”(商品名、融点90℃)と“PLC8100”(商品名、融点65℃)との組合せ、上記“PLC7700”(融点90℃)と“PLC7500”(商品名、融点65℃)との組合せ、DIC社製の“UCL−017A”(商品名、融点96℃)と“UCL−017”(商品名、融点70℃)との組合せ等が挙げられる。
上記重合性官能基を有する液晶化合物を三種類以上用いる場合は、それらの中で、最大の融点を有するものを高融点液晶化合物とし、最小の融点を有するものを低融点液晶化合物とする。
上記重合性官能基を有する液晶化合物を二種以上併用する場合は、上記高融点液晶化合物を全体の質量割合で90質量%以下の範囲で含むことが好ましい。上記高融点液晶化合物の割合が90質量%を超えると、上記液晶化合物の相溶性が低下する傾向があり、その結果、コレステリック液晶ポリマー層の配向性が一部乱れることにより、ヘーズの上昇が生じる場合がある。
[重合性官能基を有するキラル剤]
上記コレステリック液晶ポリマー層の形成に用いられる重合性官能基を有するキラル剤としては、上記液晶化合物との相溶性が良好で、かつ、溶剤に溶解可能なものであれば、特に構造についての制限はなく、従来の重合性官能基を有するキラル剤を用いることができる。
上記キラル剤の具体例としては、例えば、国際公開WO98/00428号パンフレット、特表平9−506088号公報、特表平10−509726号公報、特開2000−44451号公報、特表2000−506873号公報、特開2003−66214号公報、特開2003−313187号公報、米国特許第6468444号明細書等に記載の化合物を挙げることができる。また、このようなキラル剤としては、市販品を用いることができ、例えば、メルク社製の“S101”、“R811”、“CB15”(商品名);BASF社製の“PALIOCOLOR LC756”(商品名);ADEKA社製の“CNL715”、“CNL716”(商品名)等が挙げられる。
上記コレステリック液晶ポリマー層の選択反射波長は、螺旋ピッチを調整することにより制御することができる。この螺旋ピッチは、上記液晶化合物及び上記キラル剤の配合量を調整することにより、制御することができる。例えば、上記キラル剤の濃度が高い場合、螺旋の捻じり力が増加するため、螺旋のピッチは小さくなり、コレステリック液晶ポリマー層の選択反射波長λは短波長側へシフトする。また、上記キラル剤の濃度が低い場合、螺旋の捻じり力が低下するため、螺旋のピッチは大きくなり、コレステリック液晶ポリマー層の選択反射波長λは長波長側へシフトする。よって、上記キラル剤の配合量としては、上記液晶化合物と上記キラル剤との合計100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、0.2質量部以上7.0質量部以下がより好ましい。上記キラル剤の配合量が0.1質量部以上10質量部以下であれば、得られるコレステリック液晶ポリマー層の選択反射波長を近赤外線領域に制御することができる。
上記のようにキラル剤の配合量を調整することにより、コレステリック液晶ポリマー層の選択反射波長を制御することができる。この選択反射波長を近赤外線領域に制御すれば、可視光領域に実質的に吸収がなく、即ち、可視光領域で透明で、かつ近赤外線領域の光を選択的に反射可能な透明遮熱断熱部材を得ることができる。例えば、上記透明遮熱断熱部材の最大反射率波長を800nm以上とすることができる。
[多官能アクリレート化合物]
上記コレステリック液晶ポリマー層の形成に用いられる上記多官能アクリレート化合物としては、上記液晶化合物及び上記キラル剤との相溶性が良好で、コレステリック液晶ポリマー層の配向性を乱さないものであれば、適宜使用可能である。
上記多官能アクリレート化合物は、上記重合性官能基を有する液晶化合物と上記重合性官能基を有するキラル剤との硬化性を向上させるために用いられるが、コレステリック液晶ポリマー層の配向性が乱れない量で添加される。具体的には、多官能アクリレート化合物の含有量は、上記液晶化合物と上記キラル剤との合計100質量部に対して、0.5質量部以上5質量部以下であればよいが、好ましくは1質量部以上3質量部以下である。
<粘着剤層>
本発明の透明遮熱断熱部材は、上記保護層の反対側に粘着剤層を配置することが好ましい。これにより、本発明の透明遮熱断熱部材をガラス基板等(図示せず。)に容易に貼り付けることができる。上記粘着剤層の材料としては、例えば、アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ゴム系、シリコーン系等の樹脂を使用できる。また、上記粘着剤の厚さは、10〜100μmとすればよい。
<透明遮熱断熱部材>
本発明の透明遮熱断熱部材は、上記赤外線反射層と上記保護層との間に上記プライマー層を配置しているので、上記赤外線反射層と上記保護層との接着性を向上できる。具体的には、本発明の透明遮熱断熱部材に対してJIS A5759に準拠する1000時間の耐候性試験を行っても、上記保護層が、JIS D0202−1998に準拠する碁盤目密着性試験において剥離が認められない。
また、本発明の透明遮熱断熱部材は、上記透明基材側に配置した粘着剤層をガラス基板に貼り合わせた場合において、上記ガラス基板とは反対側から光を照射して測定した際の波長5.5〜25.2μmの光の平均反射率を70%以上とできる。また、本発明の透明遮熱断熱部材は、ヘーズ値を2%以下とすることができる。
また、本発明の透明遮熱断熱部材は、上記赤外線反射層により断熱機能及び遮熱機能を発揮でき、また、上記保護層により耐擦傷性を向上できる。更に、本発明の透明遮熱断熱部材は、上記コレステリック液晶ポリマー層を配置することで、遮熱機能より向上できる。
本発明の透明遮熱断熱部材は、フィルム状又はシート状の形態でガラス基板等に貼り合わせて用いることができるが、他の形態で用いてもよい。
次に、本発明の透明遮熱断熱部材の製造方法の一例を図1を参照しながら説明する。
先ず、透明基材11の一方の面に赤外線反射層12を形成する。赤外線反射層12は、例えば、導電性材料をスパッタリング等の方法で形成できるが、他の方法によって形成してもよい。赤外線反射層12は、高屈折率導電層と、低屈折率導電層と、高屈折率導電層との三層構造とするのが、断熱機能の点で好ましい。
次に、上記赤外線反射層12の上に、プライマー層形成用塗布液を塗布してプラマー層13を形成する。
次に、上記プライマー層13の上に、保護層形成用塗布液を塗布して硬化させることにより保護層14を形成する。これにより、赤外線反射層12を室内側に配置しても、窓拭き等により赤外線反射層12が損傷することが防止できる。
上記保護層形成工程は、プライマー層13の上に、重量平均分子量が10,000〜100,000の電離放射線硬化型樹脂オリゴマーを含む保護層形成用塗布液を塗布した後に、電離放射線を照射して保護層を形成することが好ましい。これにより、前述のとおり、上記保護層形成用塗布液の塗工性を向上することができ、形成した保護層の耐擦傷性を向上できる。
最後に、上記透明基材11の他方の面に粘着剤層15を形成する。上記粘着剤層15を形成する方法も特に制限されず、上記透明基材11の外面に、粘着剤を直接塗布してもよいし、別途用意した粘着剤シートを貼り合わせてもよい。
以上の工程により、本発明の透明遮熱断熱部材の一例が得られ、その後に必要に応じてガラス基板等に貼り合わせて用いられる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、特に指摘がない場合、下記において、「部」は「質量部」を意味する。
(実施例1)
<赤外線反射層付き透明基材の作製>
先ず、透明基材として、片面を易接着処理した東洋紡社製のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム“A4100”(商品名、厚み:50μm)を用意した。次に、上記PETフィルムの易接着処理面側に、厚さ30nmのITO(酸化インジウムスズ)層、厚さ10nmの銀層、厚さ30nmのITO層からなる三層構造の導電性積層膜(赤外線反射層)をスパッタリングにより形成し、赤外線反射層付き透明基材を作製した。
<プライマー層の形成>
東洋紡社製の変性ポリオレフィン樹脂溶液“ハードレンNS−2002”(商品名、酸変性タイプ、固形分濃度20質量%)10部と、希釈溶剤としてメチルシクロヘキサン80部及びメチルイソブチルケトン20部とをディスパーにて配合し、プライマー層形成用塗布液Aを調製した。次に、上記プライマー層形成用塗布液Aを、マイクログラビアコータを用いて上記赤外線反射層の上に膜厚0.1μmになるよう塗工し、乾燥することにより、上記赤外線反射層の上にプライマー層を形成した。
<保護層の形成>
共栄社化学社製の電離放射線硬化型樹脂オリゴマー“BPZA−66”(商品名、固形分濃度80質量%、重量平均分子量20,000)125部と、BASF社製の光重合開始剤“イルガキュア819”(商品名)3部と、メチルイソブチルケトン375部とをディスパーにて配合し、保護層形成用塗布液Aを調製した。次に、上記保護層形成用塗布液Aを、マイクログラビアコータを用いて上記プライマー層の上に膜厚1μmになるよう塗工し、高圧水銀灯にて300mJ/cm2の光量の紫外線を照射して硬化させることにより、上記プライマー層の上に保護層を形成した。
以上のようにして、保護層付き赤外線反射フィルム(透明遮熱断熱部材)を作製した。
<粘着剤層の形成>
先ず、片面がシリコーン処理された中本パックス社製のPETフィルム“NS−38+A”(商品名、厚さ:38μm)を用意した。また、綜研化学社製のアクリル系粘着剤“SKダイン2094”(商品名、固形分:25質量%)100部に対して、和光純薬社製の紫外線吸収剤(ベンゾフェノン)1.25部及び綜研化学社製の架橋剤“E−AX”(商品名、固形分:5%)0.27部を添加し、ディスパーにて配合して粘着剤層形成用塗布液を調製した。
次に、上記PETフィルムのシリコーン処理された側の面上に、乾燥後の厚さが25μmとなるように上記粘着剤層形成用塗布液を塗布し、乾燥させた後に粘着剤層を形成した。更に、この粘着剤層の上面に、上記保護層付き赤外線反射フィルムの赤外線反射層が形成されていない側を貼り合わせて、粘着層付き赤外線反射フィルムを作製した。
<ガラス基板との貼り合わせ>
先ず、ガラス基板として、厚さ3mmのフロートガラス(日本板硝子社製)を用意した。次に、上記粘着層付き赤外線反射フィルムからPETフィルムを剥離して、上記粘着層付き赤外線反射フィルムの粘着剤層側を上記フロートガラスに貼り合せた。
(実施例2)
実施例1の保護層の厚みを2μmにした以外は、実施例1と同様にして保護層付き赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合せた。
(実施例3)
実施例1の保護層の厚みを0.5μmにした以外は、実施例1と同様にして保護層付赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合わせた。
(実施例4)
三井化学社製の変性ポリオレフィン樹脂溶液“ユニストールP902”(商品名、酸変性タイプ、固形分濃度22質量%)10部と、希釈溶剤としてメチルシクロヘキサン80部及びメチルイソブチルケトン20部とをディスパーにて配合し、プライマー層形成用塗布液Bを調製した。上記プライマー層形成用塗布液Bを用いた以外は、実施例1と同様にして保護層付き赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合せた。
(実施例5)
大成ファインケミカル社製の電離放射線硬化型樹脂オリゴマー“アクリット8BR−930”(商品名、固形分濃度50質量%、重量平均分子量16,000、)200部と、光重合開始剤“イルガキュア819”3部と、メチルイソブチルケトン300部とをディスパーにて配合し、保護層形成用塗布液Bを調製した。上記保護層形成用塗布液Bを用いた以外は、実施例1と同様にして保護層付き赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合せた。
(実施例6)
実施例1の保護層形成後に透明基材の保護層とは反対面側(PETフィルムの易接着未処理面側)に下記のとおりコレステリック液晶ポリマー層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして保護層付き赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合わせた。
<コレステリック液晶ポリマー層の形成>
下記材料を攪拌して混合し、コレステリック液晶ポリマー層形成用塗布液を調製した。
(1)重合性官能基を有する液晶化合物I(ADEKA社製、高融点液晶化合物、商品名“PLC−7700”、融点:90℃):86.4部
(2)重合性官能基を有する液晶化合物II(ADEKA社製、低融点液晶化合物、商品名“PLC−8100”、融点:65℃):9.6部
(3)キラル剤(ADEKA社製、右旋光性キラル剤、商品名“CNL−715”):4.0部
(4)多官能アクリレート化合物(共栄社化学社製、商品名“ライトアクリレートPE−3A”):1.5部
(5)光重合開始剤(BASF社製、商品名“イルガキュア819”):3.0部
(6)溶剤(シクロヘキサノン):464部
上記コレステリック液晶ポリマー層形成用塗布液を、マイクログラビアコータを用いて、実施例1で作製したPETフィルムの赤外線反射層が形成されていない面上に塗布し、100℃で乾燥させて塗膜を形成した。その塗膜に紫外線(波長:最大波長365nm、光源:高圧水銀ランプ、光量:500mJ/cm2)を30秒間照射して塗膜を硬化させ、右旋性コレステリック液晶ポリマー層(厚さ:3μm)を形成した。この右旋性コレステリック液晶ポリマー層の中心反射波長は890nmであった。
(実施例7)
日本化薬社製の電離放射線硬化型樹脂モノマー“KAYARAD DPHA”(商品名、分子量578)100部と、光重合開始剤“イルガキュア819”3部と、メチルイソブチルケトン400部とをディスパーにて配合し、保護層形成用塗布液Cを調製した。上記保護層形成用塗布液Cを用いた以外は、実施例1と同様にして保護層付き赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合せた。
(実施例8)
実施例1の保護層の厚みを3μmにした以外は、実施例1と同様にして保護層付き赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合せた。
(実施例9)
大成ファインケミカル社製の電離放射線硬化型樹脂オリゴマー“アクリット8BR−500”(商品名、固形分濃度37質量%、重量平均分子量250,000、)250部と、光重合開始剤“イルガキュア819”3部と、メチルイソブチルケトン250部とをディスパーにて配合し、保護層形成用塗布液Dを調製した。上記保護層形成用塗布液Dを用いた以外は、実施例1と同様にして保護層付き赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合せた。
(実施例10)
熱硬化型樹脂であるモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製のアルコキシシラン系ハードコート剤“SHC−900”(商品名、固形分濃度30質量%)を保護層形成用塗布液Eとして準備した。次に、上記保護層形成用塗布液Eを、マイクログラビアコータを用いて上記プライマー層の上に膜厚1μmになるよう塗工し、120℃で3分乾燥させることにより、上記プライマー層の上に保護層を形成した以外は、実施例1と同様にして保護層付き赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合わせた。
(実施例11)
実施例1のプライマー層の厚みを0.05μmにした以外は、実施例1と同様にして保護層付き赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合せた。
(実施例12)
実施例1のプライマー層の厚みを10μmにした以外は、実施例1と同様にして保護層付き赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合せた。
(実施例13)
実施例1のプライマー層の厚みを0.04μmにした以外は、実施例1と同様にして保護層付き赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合せた。
(実施例14)
実施例1のプライマー層の厚みを11μmにした以外は、実施例1と同様にして保護層付き赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合せた。
(実施例15)
三井化学社製の変性ポリオレフィン樹脂溶液“ユニストールP901”(商品名、水酸基変性タイプ、固形分濃度22質量%)10部と、希釈溶剤としてメチルシクロヘキサン80部及びメチルイソブチルケトン20部とをディスパーにて配合し、プライマー層形成用塗布液Cを調製した。上記プライマー層形成用塗布液Cを用いた以外は、実施例1と同様にして保護層付き赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合せた。
(実施例16)
実施例1の保護層の厚みを2.5μmにした以外は、実施例1と同様にして保護層付き赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合せた。
(比較例1)
プライマー層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして保護層付き赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合わせた。
(比較例2)
プライマー層を設けず、電離放射線硬化型樹脂オリゴマー“BPZA−66”125部と、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリレート化合物である日本化薬社製のジ−2−メタクリロキシエチルフォスフェート“KAYAMAER PM−2”(商品名)5部と、光重合開始剤“イルガキュア819”3部と、メチルイソブチルケトン375部とをディスパーにて配合し、保護層形成用塗布液Fを調製した。次に、上記保護層形成用塗布液Fを、マイクログラビアコータを用いて上記赤外線反射層の上に膜厚1μmになるよう塗工し、高圧水銀灯にて300mJ/cm2の光量の紫外線を照射し硬化させることにより、上記赤外線反射層の上に保護層を形成した以外は、実施例1と同様にして保護層付き赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合わせた。
(比較例3)
保護層及びプライマー層を設けなかった以外は、実施例1と同様にして赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合わせた。
(比較例4)
日本ゼオン社製のシクロポリオレフィン樹脂“ZEONOR”(商品名、未変性タイプ)2部と、溶剤としてシクロオクタン100部とをディスパーにて配合し、プライマー層形成用塗布液Dを調製した。上記プライマー層形成用塗布液Dを用いた以外は、実施例1と同様にして保護層付き赤外線反射フィルムを作製してガラス基板に貼り合わせた。
<透明遮熱断熱部材の評価>
上記実施例1〜16及び上記比較例1〜に関して、ガラス基板に貼り付けた状態での保護層付き赤外線反射フィルムの可視光線透過率、ヘーズ、垂直放射率、遮蔽係数、熱貫流率を以下のように測定し、また、保護層の初期密着性、耐候性試験後の密着性及び耐擦傷性を評価し、更に保護層付き赤外線反射フィルムの外観を観察した。
[可視光線透過率]
ガラス基板側を入射光側として、380〜780nmの範囲において日本分光社製の紫外可視近赤外分光光度計“Ubest V−570型”(商品名)を用いて分光透過率を測定し、JIS A5759に基づき、ガラス基板に貼り付けた状態での可視光線透過率を算出した。
[ヘーズ]
ガラス基板側を入射光側として、日本電色社製のヘーズメーター“NDH−2000”(商品名)を用いて、JIS K7136に基づきヘーズ値を測定した。
[垂直放射率]
島津製作所製の赤外分光光度計“IR Prestige21”(商品名)に正反射測定用アタッチメントを取り付け、保護層付き赤外線反射フィルムの保護層側について分光反射率を5〜25.2μmの範囲において測定し、これに基づきJIS R3106に準拠して垂直放射率を求めた。
[遮蔽係数]
ガラス基板側を入射光側として、300〜2500nmの範囲において上記紫外可視近赤外分光光度計“Ubest V−570型”を用いて分光透過率及び分光反射率を測定し、これに基づきJIS A5759に準拠して日射透過率及び日射反射率を求め、JIS R3106に準拠して垂直放射率を求め、その日射透過率、日射反射率及び垂直放射率の値からガラス基板に貼り付けた状態での保護層付き赤外線反射フィルムの遮蔽係数を求めた。
[熱貫流率]
上記赤外分光光度計“IR Prestige21”に正反射測定用アタッチメントを取り付け、保護層付き赤外線反射フィルムの保護層側及びガラス基板側の分光反射率を5〜25.2μmの範囲において測定し、これに基づきJIS R3106に準拠して保護層付き赤外線反射フィルムの保護層側及びガラス基板側の垂直放射率を求め、これに基づきJIS A5759に準拠して保護層付き赤外線反射フィルムの熱貫流率を求めた。
[保護層の初期密着性]
保護層付き赤外線反射フィルムの保護層側についてJIS D0202−1988に準拠して碁盤目テープ剥離試験を行った。具体的にはニチバン社製のセロハンテープ“CT24”(商品名)を用い、指の腹で上記保護層に密着させた後に剥離して密着性を評価した。その評価は100個のマスの内、剥離しないマス目の数で表し、保護層が全く剥離しない場合を100/100、保護層が完全に剥離する場合を0/100として表した。
[保護層の耐候性試験後の密着性]
保護層付き赤外線反射フィルムについて、JIS A5759に準拠して1000時間サンシャインカーボンアーク灯を照射する耐候性試験を行った後、上記初期密着性と同様にして密着性を評価した。
[保護層の耐擦傷性]
保護層付き赤外線反射フィルムの保護層上にボンスター社製のスチールウール(#0000)を配置し、250g/cm2の荷重をかけた状態で、スチールウールを10往復させた後、保護層の表面の状態を目視にて観察して、以下の3段階で評価した。
A:傷が全くつかなかった場合
B:傷が数本(5本以下)確認された場合
C:傷が多数確認された場合
[外観]
保護層付き赤外線反射フィルムの外観について目視にて観察し、以下の3段階で評価した。
A:保護層の全面において、ハジキ等がなく、均一に塗工されている場合
B:保護層の一部において、ハジキ等の外観不良が確認された場合
C:保護層の全面において、ハジキ等の外観不良が確認された場合
以上の結果を、保護層形成用塗布液及びプライマー層形成用塗布液の種類、保護層の厚み、プライマー層の厚み及びガラス基板に貼り合わせた透明遮熱断熱部材の層構成と共に表1から表3に示す。
Figure 0006386278
Figure 0006386278
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表1〜表3に示すように、実施例1〜6、11、12及び16の透明遮熱断熱部材は、垂直放射率が0.3以下であり、遮蔽係数及び熱貫流率も低く夏場の遮熱性、冬場の断熱性とが共に優れ、かつ保護層の密着性及び耐擦傷性にも優れていることが分かる。また、実施例1〜6、11、12及び16の透明遮熱断熱部材は、保護層の形成に用いた電離放射線硬化型樹脂オリゴマーの重量平均分子量が10,000〜100,000の範囲にあり比較的大きいため、変性ポリオレフィン樹脂からなるプライマー層の上への製膜性にも優れており、外観上特に問題は見られなかった。更に、コレステリック液晶ポリマーを設けた実施例6では、遮蔽係数及び可視光線透過率がコレステリック液晶ポリマーを設けていない実施例1よりも優れていた。
また、実施例7では、保護層の形成に分子量の小さい電離放射線硬化型樹脂モノマーを使用したため、変性ポリオレフィン樹脂からなるプライマー層への濡れ性が悪く、保護層の一部にハジキが見られ製膜性がやや劣っていた。また、実施例8では、保護層の厚みが3μmと厚いため、垂直放射率及び熱貫流率がやや高めとなっていた。また、実施例9では、保護層の形成に重量平均分子量が100,000を超えた高分子量の電離放射線硬化型樹脂オリゴマーを使用したため、保護層の架橋密度が低下し、耐擦傷性がやや劣っていた。また、実施例10では、保護層の形成に熱硬化型樹脂を用いたため、耐擦傷性がやや劣っていた。
また、プライマー層の厚みを0.04μmと薄くした実施例13では、実施例1及び実施例11よりも保護層の密着性がやや劣っていた。逆にプライマー層の厚みを11μmと厚くした実施例14では、実施例1及び実施例12よりも垂直放射率がやや増大し、0.3を超える値となり、熱貫流率も4.5とやや増大する傾向が見られた。また、実施例15では、プライマー層に水酸基変性タイプの変性ポリオレフィン樹脂を使用したため、赤外線反射層との相互作用効果が酸変性タイプの変性ポリオレフィン樹脂に比べると若干弱く、保護層の密着性及び耐擦傷性がやや劣っていた。
一方、比較例1では、保護層と赤外線反射層との間にプライマー層を設けなかったため、保護層の密着性が発現しなかった。また、比較例2では、保護層の形成材料中にリン酸エステル基を有する材料を添加したため、初期の状態では赤外線反射層に使用されている金属酸化物層との相互作用により、保護層の密着性が発現していたが、耐候性試験後の密着性を確認したところ、部分的に保護層の剥離が見られた。これは、耐候性試験で長時間にわたって光に曝されたことにより、保護層の硬化収縮が進んで密着性が低下したものと考えられる。これは透明遮熱断熱部材の長期間の実使用時において問題となり得る。また、比較例3では、保護層及びプライマー層を設けなかったため、耐擦傷性が全くなく、透明遮熱断熱部材を窓ガラス等に施工して用いる際に、清掃等による摩擦により傷が入りやすく問題となる懸念がある。また、比較例4では、プライマー層に官能基を有さないシクロポリオレフィン樹脂を使用したため、保護層の密着性、耐擦傷性が全く発現しなかった。
本発明は、保護層の耐擦傷性及び密着性に優れ、遮熱機能及び断熱機能に優れた透明遮熱断熱部材を提供できる。このため、本発明の透明遮熱断熱部材を窓ガラス等に適用した場合に、夏場での遮熱性及び冬場での断熱性に優れ、耐擦傷性や密着性も高いので、実用耐久性に優れる。
10 透明遮熱断熱部材
11 透明基材
12 赤外線反射層
13 プライマー層
14 保護層
15 粘着剤層
16 コレステリック液晶ポリマー層
17 機能層

Claims (7)

  1. 透明基材と、前記透明基材の上に形成された機能層とを含む透明遮熱断熱部材であって、
    前記機能層は、前記透明基材側から赤外線反射層前記赤外線反射層に接するプライマー層と、前記プライマー層に接する保護層と、をこの順に積層して含み、
    前記赤外線反射層は、導電性積層膜からなり、
    前記プライマー層は、酸基又は水酸基を有する変性ポリオレフィン樹脂からなり、
    前記保護層は、電離放射線硬化型樹脂又は熱硬化型樹脂からなることを特徴とする透明遮熱断熱部材。
  2. 前記保護層の厚みが、0.1μm〜2.5μmであり、前記保護層側のJIS R3106に基づく垂直放射率が、0.3以下である請求項1に記載の透明遮熱断熱部材。
  3. 前記プライマー層の厚みが、0.05μm〜10μmである請求項1又は2に記載の透明遮熱断熱部材。
  4. 前記導電性積層膜は、金属酸化物層と、金属層と、金属酸化物層とをこの順に含む請求項1〜のいずれか1項に記載の透明遮熱断熱部材。
  5. JIS A5759に準拠する1000時間の耐候性試験の後において、前記保護層が、JIS D0202−1998に準拠する碁盤目密着性試験において剥離がない請求項1〜のいずれか1項に記載の透明遮熱断熱部材。
  6. 前記透明基材の前記赤外線反射層側とは反対側にコレステリック液晶ポリマー層を更に形成した請求項1〜のいずれか1項に記載の透明遮熱断熱部材。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の透明遮熱断熱部材の製造方法であって、
    透明基材の上に赤外線反射層を形成する工程と、
    前記赤外線反射層の上に、プライマー層形成用塗布液を塗布してプライマー層を形成する工程と、
    前記プライマー層の上に、重量平均分子量が10,000〜100,000の電離放射線硬化型樹脂オリゴマーを含む保護層形成用塗布液を塗布した後に、電離放射線を照射して保護層を形成する工程とを含むことを特徴とする透明遮熱断熱部材の製造方法。
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