以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1を参照して、本実施の形態の半導体装置は、たとえばBiC−DMOS(Bipolar Complementary Double-diffused Metal Oxide Semiconductor)に適用可能である。このBiC−DMOSの半導体チップSCCは、たとえば低耐圧のCMOS(Complementary MOS)トランジスタを集積したようなロジック部と、高耐圧素子を用いた出力ドライバ部とを有している。上記の出力ドライバ部では素子の1つ1つの形成領域である素子形成領域DFRがDTI構造をなす溝DTRによって平面視において取り囲まれている。また複数の素子形成領域DFRが、平面視においてゲッタリングサイトGTによって取り囲まれている。
図2を参照して、たとえば出力ドライバ部では、1つ1つの高耐圧素子の素子形成領域DFRがDTI構造をなす溝DTRにより平面的に取り囲まれている。この溝DTRは半導体基板SUBの表面に形成されている。
図3を参照して、半導体基板SUBは、支持基板SSと、埋め込み絶縁膜BOXと、半導体層SLとがこの順で(図3の下側から上側へ)積層された構成を有するSOI(Silicon On Insulator)基板である。支持基板SSはたとえばp型のシリコン基板よりなっており、埋め込み絶縁膜BOXはたとえばシリコン酸化膜よりなっており、半導体層SLはたとえばn-シリコン層よりなっている。半導体層SLの主表面(図3における上側の表面)に、CMOSトランジスタ、高耐圧MOSトランジスタなどの素子が形成されている。これらの素子は、たとえばn+領域NR、p+領域PR、ゲート電極層GEなどの導電部分を有している。
CMOSトランジスタ、高耐圧MOSトランジスタなどのそれぞれの素子形成領域DFRを平面視において取り囲むように、半導体層SLの主表面から半導体層SLを貫通するように、DTI構造をなす溝DTRが形成されている。つまり溝DTRは、半導体層SLの上側の主表面から埋め込み絶縁膜BOXに達するように、図3の上下方向に延在している。溝DTRは、それぞれの素子形成領域DFRを取り囲むことにより、それぞれの素子形成領域DFR間を電気的に分離している。
CMOSトランジスタは、図3の左側のnMOSトランジスタと、右側のpMOSトランジスタとが組み合わせられた構成となっている。nMOSトランジスタはp型ウェル領域PWRと、ソース領域またはドレイン領域としてのn+領域NRと、ゲート絶縁膜GI、ゲート電極層GEとを主に有している。pMOSトランジスタはn型ウェル領域NWRと、ソース領域またはドレイン領域としてのp+領域PRと、ゲート絶縁膜GIと、ゲート電極層GEとを主に有している。
高耐圧MOSトランジスタは、中央部分に溝DTRが存在することにより、溝DTRの左側と右側との2つの素子に分かれて配置されている。左側の高耐圧MOSトランジスタは、n型ウェル領域NWRと、n型領域NDRと、p型領域PBRと、ソース領域またはドレイン領域としてのn+領域NRと、p+コンタクト領域PRと、ゲート絶縁膜GIと、ゲート電極層GEとを主に有している。右側の高耐圧MOSトランジスタは、p型オフセット領域PORと、n型ウェル領域NWRと、ソース領域またはドレイン領域としてのp+領域PRと、ゲート絶縁膜GIと、ゲート電極層GEとを主に有している。
本実施の形態においては、n+領域NRやp+領域PRのそれぞれの表面上にシリサイド層SCが形成されていることが好ましいが、シリサイド層SCは省略されてもよい。
また右側の高耐圧MOSトランジスタのp型オフセット領域POR上にはマスク絶縁層MIが形成されている。また隣接する素子間の電気的な分離などのために半導体層SLの主表面には適宜、フィールド酸化膜FOがたとえば400nmの厚みで形成されている。
上記のCMOSトランジスタ、高耐圧MOSトランジスタ上を覆うように、下敷き酸化膜NSG(第2の絶縁膜)および層間絶縁膜II(第1の絶縁膜)が形成されている。下敷き酸化膜NSGは、半導体層SLの主表面上(つまり半導体基板SUBの主表面上)にたとえば300nmの厚みで形成されている。下敷き酸化膜NSGはたとえば不純物がドープされていないノンドープのシリコン酸化膜である。
層間絶縁膜IIは、下敷き酸化膜NSG上を覆うように、かつ溝DTRの内部に中空SPを形成するように、下敷き酸化膜NSG上および溝DTRの内部に形成されている。層間絶縁膜IIは、下敷き酸化膜NSGと同様に、半導体チップSCCを覆うように形成されている。
つまり溝DTR内に形成される絶縁膜IIは、高耐圧MOSトランジスタ上に形成される層間絶縁膜IIである。また溝DTR内は、絶縁膜IIで完全に埋め込まれてはおらず、溝DTRの内部には中空(空隙)SPが形成されている。
この中空SPは溝の深さとほぼ同じ高さを有していてもよい。溝DTRのアスペクト比(深さ/幅)は1以上であることが好ましい。また溝DTRの幅は80Vのブレークダウン電圧を基準にして0.3μm以上であることが好ましい。
層間絶縁膜IIは、たとえばBP−TEOS(Boro-Phospho-Tetra-Ethyl-Ortho-Silicate)と、その上にプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成されたシリコン酸化膜との積層構造よりなっている。なお層間絶縁膜IIに含まれるBP−TEOSは、P−TEOS(PSG:Phosphorus Silicon Glass)、B−TEOS(BSG:Boro Silicata Glass)のようなIII族元素およびV族元素の少なくともいずれかの不純物を含んだ絶縁膜であればよい。
下敷き酸化膜NSGおよび層間絶縁膜IIにはコンタクトホールCHが形成されており、コンタクトホールCH内にはプラグ導電層PLが形成されている。層間絶縁膜II上には配線層ICLが形成されている。配線層ICLはコンタクトホールCH内のプラグ導電層PLを介して素子の導電部分(たとえばソース領域、ドレイン領域としてのn+領域NR、p+領域PR、ゲート電極層GEなど)に電気的に接続されている。言い換えれば、コンタクトホールCHは下敷き酸化膜NSGおよび層間絶縁膜IIに形成された孔であり、当該孔は素子の導電部分に達するように延在している。なお、n+領域NR、p+領域PR上にシリサイド層SCが形成されている場合には、コンタクトホールCHはシリサイド層SCに達するように形成されている。またシリサイド層が形成されていない場合には、コンタクトホールCHはn+領域NR、p+領域PRに達するように形成されている。
次に、本実施の形態の半導体装置として、図3に示すCMOSトランジスタ、高耐圧MOSトランジスタを有する半導体チップSCCの製造方法について図4〜図12を用いて説明する。
図4を参照して、まず支持基板SSと、埋め込み絶縁膜BOXと、半導体層SLとがこの順に積層された構成を有するSOI基板として半導体基板SUBが準備される。半導体層SLには、n型領域NDR、フィールド酸化膜FOなどが形成される。このフィールド酸化膜FOは、半導体層SLの主表面上に酸化膜OXIと窒化膜NIとをこの順で積層し、窒化膜NIを選択的に除去した後に、その窒化膜NIから露出した部分を熱酸化することにより形成される。この後、窒化膜NIおよび酸化膜OXIが除去され、フィールド酸化膜FOが形成されていない半導体層SLの主表面が露出する。
図5を参照して、n型ウェル領域NWR、p型ウェル領域PWR、n型領域NDR、p型領域PDR、p型オフセット領域POR、ゲート絶縁膜GI、ゲート電極層GE、酸化絶縁膜OI、n+領域NR、p+領域PR、側壁絶縁膜SWなどが形成される。
これにより、半導体層SLの主表面(半導体基板SUBの表面)に、各素子(高耐圧MOSトランジスタ、CMOSトランジスタなど)が完成する。つまり各素子の完成とは以下のように形成されることである。
高耐圧MOSトランジスタとして図5中左側のトランジスタは、n型ウェル領域NWRと、n型領域NDRと、p型領域PBRと、ソースまたはドレインとしてのn+領域NRと、コンタクト領域としてのp+領域PRと、ゲート絶縁膜GIと、ゲート電極層GEとを有するように形成される。
高耐圧MOSトランジスタとして図5中右側のトランジスタは、n型ウェル領域NWRと、p型オフセット領域PORと、ソースまたはドレインとしてのp+領域PRと、コンタクト領域としてのn+領域NRと、ゲート絶縁膜GIと、ゲート電極層GEとを有するように形成される。
CMOSトランジスタは、pMOSトランジスタとnMOSトランジスタとが完成するように形成される。pMOSトランジスタは、n型ウェル領域NWRと、1対のソース/ドレイン領域としてのp+領域PRと、ゲート絶縁膜GIと、ゲート電極層GEとを有するように形成される。nMOSトランジスタは、p型ウェル領域PWRと、1対のソース/ドレイン領域としてのn+領域NRと、ゲート絶縁膜GIと、ゲート電極層GEとを有するように形成される。
図6を参照して、n+領域NRおよびp+領域PRの各々の表面上にシリサイド層SCが形成される。シリサイド層SCは、半導体層SLの表面全面を覆うように高融点金属層を形成した後に熱処理を加えて高融点金属とシリコンとを反応させることにより形成される。この際、半導体層SLの主表面上にマスク絶縁層MIを形成しておくことにより、マスク絶縁層MIが形成された箇所においては、半導体層SLの主表面と高融点金属層とが接触することはないため、シリサイド層SCは形成されない。なお、シリサイド層SC形成後、未反応の高融点金属層は除去される。
図7を参照して、各素子上を覆うように、下敷き酸化膜NSGが形成される。下敷き酸化膜NSGはたとえば600nmの厚みのノンドープのシリコン酸化膜からなる。
図8を参照して、下敷き酸化膜NSG上を覆うように、フォトレジストPHRが塗布される。
このフォトレジストPHRは通常の写真製版技術によりパターニングされる。このパターニングされたフォトレジストPHRをマスクとして、下敷き酸化膜NSGおよびフィールド酸化膜FOとが順に異方性エッチングされる。これにより下敷き酸化膜NSGとフィールド酸化膜FOとを貫通する溝DTRAが形成される。この後、フォトレジストPHRがアッシングなどによって除去される。
図9を参照して、下敷き酸化膜NSGをマスクとして半導体層SLに異方性エッチングが施される。これにより、溝DTRAの直下の半導体基板SUB(半導体層SL)が選択的に除去される。これにより、半導体基板SUB(半導体層SL)の主表面から埋め込み絶縁膜BOXに達するように溝DTRが形成される。
このエッチング時に下敷き酸化膜NSGも所定膜厚だけエッチング除去され、当初の厚み600nmのおよそ半分の厚み、たとえば300nmの厚みとなる。
なお、形成される素子の特性上、III族元素やV族元素などの不純物が半導体層SLの内部に固相拡散されることを防ぐことが好ましい場合には、固相拡散を抑制したい側壁上に保護用の絶縁膜(ライナー膜)を形成することが好ましい。ライナー膜はたとえば熱酸化法や窒化処理、プラズマCVD法を用いて形成される、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜であることが好ましい。
図10を参照して、各素子上を覆うように、かつ溝DTR内に中空SPを形成するように各素子上および溝DTR内に絶縁膜IIA(第1の絶縁膜)が形成される。この絶縁膜IIAは、たとえば1320nmの厚みのBP−TEOSにより形成される。この絶縁膜IIAの上面がたとえばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法により研磨除去される。
図11を参照して、上記のCMP法により、絶縁膜IIは上面を平坦化されて層間絶縁膜IIとなる。CMP法を用いてたとえば640nm研削することにより、層間絶縁膜IIの厚みは、たとえば680nmとされる。
図12を参照して、通常の写真製版技術およびエッチング技術により、層間絶縁膜IIおよび下敷き酸化膜NSGを貫通して半導体基板SUBの表面(シリサイド層SCの表面)に達するコンタクトホールCH(孔)が形成される。このコンタクトホールCHからは、たとえばソース領域やドレイン領域などの表面に形成されたシリサイド層SCの表面が露出する。
図3を参照して、コンタクトホールCH内にプラグ導電層PLが形成される。この後、プラグ導電層PLを介して各素子の導電部分と電気的に接続するように層間絶縁膜II上に配線層ICLが形成される。
プラグ導電層PLおよび配線層ICLは、たとえばアルミニウムからなる金属薄膜であることが好ましく、チタンとタングステンとの金属薄膜を積層したものであってもよい。あるいは窒化チタン(TiN)の薄膜をバリアメタルとして形成し、その上にアルミニウムの金属薄膜を積層した構成であってもよい。
以上により、図3に示す本実施の形態の半導体装置が製造される。
次に、DTI構造における溝DTR内に中空がある場合とない場合との特性の違いについて調べた結果を説明する。
本実施の形態の半導体装置の特性を調べるために、評価用ウェハを準備した。そのウェハの表面に配置される半導体チップのサンプルに対して耐圧の評価を行なった。
各半導体チップには、図13に示す評価TEGが形成されている。図13を参照して、この評価TEGは、平面視において領域Aと、その領域AとはDTI構造によって分けられた領域Bとを有している。領域AおよびBの各々は、半導体層SLの主表面に形成されたn型ウェル領域NWRと、そのn型ウェル領域NWR内の表面に形成されたn+領域NRとを有している。
溝DTRの幅が0.6μmから1.0μmへと大きくなるにしたがって、リーク電流が急激に大きくなり始める電圧の値が約400Vから約600Vへと大きくなっている。つまり溝DTRの幅が大きくなる方がリーク電流を抑え、溝DTRの耐圧が高くなることがわかった。溝DTRの幅(DTI幅)と、各TEGの耐圧との関係をグラフにしたものを図14に示す。
図14を参照して、溝DTRの幅が0.6μmから1.0μmへと大きくなるにしたがって溝DTRの耐圧が約400Vから約600Vへと大きくなっている。溝DTRの幅を0.1μm大きくすると、平均して溝DTRの耐圧が60V高くなっていることがわかる。図14から溝DTRの幅が大きくなる方が溝DTRの耐圧が高くなることがわかった。
次に、溝DTRの近傍における半導体層SL表面の応力について調べた結果について説明する。
この応力の測定は、溝DTRの近傍における半導体層SLの表面に不純物領域よりなる抵抗を形成し、その抵抗値を測定することにより行なった。具体的には、図15および図16に示すように、平面視において溝DTRに平行に配置したシート抵抗SHRと、図17および図18に示すように平面視において溝DTRに直交に配置したシート抵抗SHRとの各抵抗値が、応力の影響により異なる特性を示すことを利用して応力の測定を行なった。
図15の平行配置TEGおよび図17の直交配置TEGのいずれとも溝DTRの深さは約5μm、幅は約0.8μmであり、その溝DTRによって取り囲まれる半導体層SLの平面形状は約100μm×約100μmである。また図15の平行配置TEGおよび図17の直交配置TEGのいずれにおいても、シート抵抗SHRの平行形状は約20μm×約2μmであり、シート抵抗SHRの深さ(拡散深さ)は約0.6μmである。
図15の平行配置TEGおよび図17の直交配置TEGのいずれにおいてもシート抵抗SHRの平面形状の長手方向に電流が流される。つまり、図15の平行配置TEGにおいてはシート抵抗SHRの電流方向に対して垂直方向に応力がかかっていることになり、また図17の直交配置TEGにおいてはシート抵抗SHRの電流方向に対して平行方向に応力がかかっていることになる。
シート抵抗SHRの抵抗値は、このシート抵抗SHRに電圧を印加したときにシート抵抗SHRに流れる電流値を測定することにより行なった。また、この測定は図15および図16に示す平行配置TEGにおいてはシート抵抗SHRと溝DTRとの距離を1〜20μmの範囲で変化させて行ない、図17および図18に示す直交配置TEGにおいてはシート抵抗SHRと溝DTRとの距離を2〜20μmの範囲で変化させて行なった。
溝DTRの内部に中空SPが存在しない場合には、シート抵抗SHRと溝DTRとの距離が短くなるにつれ、その抵抗値の変化が顕著となった。特に図15や図16に示す「DTRと平行」の場合は、溝DTRからの距離が1μmの場合にシート抵抗SHRの抵抗値の変化割合が15%近くになっている。
これに対して、溝DTRの内部に中空SPが存在する場合には、シート抵抗SHRと溝DTRとの距離が変化しても、シート抵抗SHRの抵抗値はほとんど変化しない結果となった。このことは、溝DTRの内部に中空SPを設けた場合には、溝DTRの内部における応力が小さくなることを意味する。よって、溝DTRの内部に中空SPが生じるように、その溝DTR内に絶縁膜を形成することで半導体層SL表面に応力が生じることを抑制できることがわかった。
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態によれば、図4〜図9に示すように高耐圧MOSトランジスタなどの素子が完成した後にDTI構造の溝DTRが形成されるため、その溝DTRを層間絶縁膜IIで埋め込むことが可能となる。これにより、溝DTRを埋め込む絶縁膜を層間絶縁膜とは別途に形成する必要がなくなるため、製造方法における工程数を大幅に削減することができる。
また高耐圧MOSトランジスタなどの素子が完成した後にDTI構造の溝DTRが形成される。素子完成後の製造フローでは素子完成前の製造フローよりも溝DTR内を埋め込む絶縁膜表面がウエットエッチングにさらされる回数が少ない。このため、その溝DTR内に中空SPが存在していても、その中空SPが表面に露出することは抑制される。これにより、表面に露出した中空SP内にレジストなどの異物が入り込むことがないため、製造途中でその中空SP内の異物が噴出すことによるパターンの欠陥が生じることも防止できる。
また溝DTR内に積極的に中空SPを形成することで、図14を用いて説明したように、DTI構造により分離された素子のリーク電流を抑制することができ、耐圧を高めることができる。
また溝DTR内に積極的に中空SPを形成することで、溝DTR近傍における半導体層SLの応力を低減することができる。これは、溝DTR内部のシリコン酸化膜と、シリコンとの熱膨張係数の差により発生する応力を、空隙である中空SPが緩和することができるためである。溝DTR近傍における半導体層SLの応力を低減することにより、半導体層SL内における結晶欠陥の発生を抑制することができる。
また、高耐圧MOSトランジスタなどの素子が完成した後にDTI構造の溝DTRが形成されるため、素子の形成中に素子形成領域DFR(図1参照)における半導体層SLなどの内部に形成される異物(金属不純物など)CNTを、ゲッタリングサイトGT(図1参照)に集めることができる。このことについて以下に、図19〜図21を参照しながら説明する。
図19を参照して、半導体基板SUBのうち最終的に素子が形成される予定の素子形成領域DFRを取り囲むようにゲッタリングサイトGTが形成される。この後、図20に示すようにフィールド酸化膜FOが形成され、さらに図21に示すようにフィールド酸化膜FOおよび半導体層SLを貫通するように溝DTRが形成される。
たとえば図20に示すように、溝DTRが形成される前の時点で半導体層SLの内部に異物CNTが入った場合、半導体基板SUBに対するプロセス中の熱処理により、異物CNTは半導体層SLの内部を移動してゲッタリングサイトGTに吸収される。しかし図21に示すように溝DTRが形成された後に、溝DTRに取り囲まれた素子形成領域DFRにおける半導体層SLの内部に異物CNTが入れば、後工程における熱処理時においても異物CNTがゲッタリングサイトGTの方へ移動することができなくなる。つまり異物CNTは溝DTRに取り囲まれた領域(素子形成領域DFR)の内部に取り残される。異物CNTが半導体層SLの内部に貯留すれば、半導体基板SUBの表面に形成される素子の特性が劣化する可能性があるため、高効率にゲッタリングがなされることが好ましい。
素子形成領域DFRに素子が形成され終わった後に溝DTRが形成される本実施の形態の製造方法は、異物CNTのゲッタリングができる時間が長くなる。したがって、より確実に半導体層SLの内部の異物CNTをゲッタリングすることができる。
さらに本実施の形態においては支持基板SS上に埋め込み絶縁膜BOX(シリコン酸化膜)が配置された半導体基板SUBを用いている。このため、溝DTRの壁面に沿って拡散領域を形成することで、溝DTRの側面に形成されるダメージ層を通るリーク電流を抑制することができる。このことについて以下に、図22〜図23を参照しながら説明する。
まず図22を用いて半導体基板がSOI基板ではなくバルクのシリコン基板よりなる場合について説明する。
図22(A)を参照して、半導体基板SUBに溝DTRを形成する際、溝DTRの壁部にエッチングのダメージ(結晶欠陥)が生じる。このため、溝DTRの壁部にn型半導体領域NSRとp型半導体領域PSRとのpn接合があると、上記エッチングダメージを介してそのpn接合部にリーク電流が発生する。
このリーク電流の発生を防止するために、溝DTRのエッチングダメージが生じた壁部に図22(B)に示すようなn型またはp型の拡散領域SDRを形成することも考えられる。つまり拡散領域SDRを形成することで、溝DTRに接する部分にpn接合が形成されなくなり、pn接合でのリーク電流の発生を防止することができる。
しかし、半導体基板SUBにバルクのシリコン基板を用いた場合にこのような拡散領域SDRを形成すると、拡散領域SDRによってp型半導体領域PSR同士が電気的に接続される恐れがあり、溝DTRによる電気的分離の意味がなくなる。このため、半導体基板SUBにバルクのシリコン基板を用いた場合には、上記エッチングダメージによる結晶欠陥をなくするために、結晶性回復のための熱処理が必要となり、製造工程が複雑となる。
次に図23を用いて半導体基板SUBがSOI基板よりなる場合について説明する。
図23(A)を参照して、半導体基板SUBがSOI基板よりなる場合にも、溝DTRの壁部に接する部分にn型半導体領域NSRとp型半導体領域PSRとのpn接合部があると、溝DTRの壁部のエッチングダメージを介して、そのpn接合部にリーク電流が生じる。しかし、図23(B)に示すように、溝DTRの壁部に沿って拡散領域SDRを形成することによって、溝DTRの壁部に接する部分にpn接合が位置することはなくなる。このため、そのpn接合部において上記エッチングダメージを介したリーク電流の発生を防止することができる。
また、本実施の形態では半導体基板SUBがSOI基板であり溝DTRが埋め込み絶縁膜BOXに達するように形成されているため、溝DTRの両側に形成された拡散領域SDR同士は、埋め込み絶縁膜BOXによって互いに電気的に分離されている。このため、拡散領域SDRによって、溝DTRの両側のp型半導体領域PSR同士が互いに電気的に接続されることもない。
さらに、この拡散領域SDRを層間絶縁膜IIに含まれる不純物(ボロン、リンなどのIII族元素やV族元素)の固相拡散により形成することができる。この場合、拡散領域SDRを形成するための別途の不純物のイオン注入などの工程も不要となり、製造工程を簡略化することもできる。また結晶性回復のための熱処理も不要となってさらに製造工程を簡略化することができる。
溝DTRの側面から半導体層SLの内部へのIII族元素などの不純物の固相拡散は極めて均一に行なわれる。つまり固相拡散領域SDRの内部における電位は領域内でほぼ一定となる。このため固相拡散領域SDRの内部を、特に複数並んだエッチングダメージ間を縫うようにリーク電流が流れることを抑制することができる。
また本実施の形態のようにSOI基板よりなる半導体基板SUBを用いれば、溝DTRの内部の電界に基づく溝DTRの真の耐圧を調べることができる。たとえば埋め込み絶縁膜BOXを有さないバルクの半導体基板SUBに溝DTRが形成された半導体装置においても、溝DTRの内部に中空SPが存在すれば溝DTRの内部の電界が小さくなり、溝DTRの耐圧が向上する。しかしここでの耐圧とは図22に示すp型半導体領域PSRとn型半導体領域NSRとがなすpn接合の耐圧であり、溝DTRの真の耐圧との間には誤差が存在する。しかし埋め込み絶縁膜BOXを備える半導体基板SUBにおいては、溝DTRの内部の真の耐圧を高精度に調べることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態は、実施の形態1と比較して、溝DTRおよび下敷き酸化膜NSGの構成および製造方法において異なっている。以下、本実施の形態の構成について説明する。
図24に示すように、実施の形態1では半導体層SLにおける溝DTRの幅W1は下敷き酸化膜NSGにおける溝DTRの幅W2とほぼ同じである。これに対し実施の形態2の溝DTRでは、図25および図26を参照して、溝DTRの底部(溝DTRの最下部)の幅W1が、下敷き酸化膜NSG(第2の絶縁膜)における溝DTRの幅W2(下敷き酸化膜NSGを貫通する貫通孔の幅)よりも大きくなっている。
図25および図26に示す下敷き酸化膜NSGの貫通孔(下敷き酸化膜NSGにおける溝DTR)の幅W2は、図24に示す実施の形態1の下敷き酸化膜NSGの貫通孔の幅W2と同じであるとする。ここで図25のように半導体層SLの溝DTRの幅W2中その溝DTRの深さ方向全体にわたってほぼ均一な幅で、かつ下敷き酸化膜NSGの溝DTRの幅W2よりも大きくなっていてもよい。あるいは図26のように半導体層SLの溝DTRの幅W1は、溝DTRの底部に近づくにつれて(埋め込み絶縁膜BOXに近づくにつれて)広くなっていてもよい。
図24〜図26においては溝DTRの形状のみを示しており、溝DTRの内部の層間絶縁膜IIやフィールド酸化膜FOについては、説明の便宜上、図示が省略されている。図25の形状を有する溝DTRが形成された半導体装置は図27のような態様となり、溝DTR部の近辺の拡大図は図28のようになる。図26の形状を有する溝DTRが形成された半導体装置は図29のような態様となり、溝DTR部の近辺の拡大図は図30のようになる。図27および図29は、実施の形態1における図3に相当する図である。図28および図30に示す下敷き酸化膜NSGの貫通孔PRCHの幅は、実施の形態1の下敷き酸化膜NSGの貫通孔の幅とほぼ同じである。
なお、本実施の形態の構成は、上記以外は実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、図27〜図30において実施の形態1と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
次に、本実施の形態の製造方法について説明する。
本実施の形態の製造方法は、図4〜図8に示す実施の形態1と同様の工程を経る。この図8の溝DTRA付近の構成を簡略化しかつ拡大して図31に示す。この後、フォトレジストPHRが除去されて、下敷き酸化膜NSGをマスクとして半導体層SLにエッチングを施すことにより、埋め込み絶縁膜BOXに達する溝DTRが形成される。この溝DTR形成のエッチング方法または条件を実施の形態1の条件から変更することにより、図25または図26に示す形状の溝DTRが形成される。
具体的に図25に示す幅広の溝DTRの形成においては、実施の形態1と同様の条件で溝DTRを形成した後に、溝DTRの幅を広げるためにウェットエッチングが行なわれる。このウェットエッチングによってシリコンよりなる半導体層SLが、シリコン酸化膜よりなる下敷き酸化膜NSGおよびフィールド酸化膜FOに対して優先的に除去されて、溝DTRの半導体層SL部の幅が広がる。
また図26に示すテーパ形状の溝DTRの形成においては、図31に示す状態からフォトレジストPHRが除去された後の半導体層SLのエッチング条件が実施の形態1とは異なる。実施の形態1の溝DTRを形成する際のエッチングにおいては、一例として4Paの圧力下でAr(アルゴン)ガスとSF6(六フッ化硫黄)ガスとO2(酸素)ガスとがそれぞれ50sccm、60sccm、25sccmの条件で供給され、40Wの高周波電力を供給した状態が120秒間保持される。これに対して、図26に示す本実施の形態のテーパ形状の溝DTRを形成する際のエッチングにおいては、一例として3Paの圧力下でArガスとSF6ガスとO2ガスとがそれぞれ250sccm、50sccm、30sccmの条件で供給され、50Wの高周波電力を供給した状態が160秒間保持される。
シリコンからなる半導体層SLがエッチングされる際には、図32に示すように、シリコンSiとSF6ガス中のフッ素(F)のイオンIONとが反応してSiFxが生成される。SiFxが形成されることにより半導体層SLのSiは削り取られる。
またシリコンSiとO2ガスとが反応することにより、溝の側面には側壁保護膜PFMが形成される。側壁保護膜PFMは、図32における左右方向に深くエッチングがなされることを抑制するものである。つまり側壁保護膜PFMが形成されることにより、エッチングは図32の横方向にはあまり進行せず、図32の上下方向に(深く掘られるように)進行する。またアルゴンガスは上記の反応を中和するために添加される。
このようにして図33に示すように、下敷き酸化膜NSGなどに溝が掘られた領域の直下の半導体層SLが選択的にエッチングされ、溝DTRが形成される。このようなエッチングメカニズムにおいて本実施の形態における上記エッチング条件を採用することにより図26に示すテーパ形状の溝DTRが形成可能である。
この後、図10〜図12に示す実施の形態1と同様の工程を経ることにより、本実施の形態2の半導体装置が製造される。
次に本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態においては、溝DTRの底部の幅W1が大きいため耐圧を大きく確保できるとともに、溝DTRの開口幅W2が小さいため、後工程のエッチングにより溝DTR内の中空SPが外部に露出してしまうことを防止できる。以下、そのことを説明する。
実施の形態1において溝DTRの幅を大きくすれば、溝DTRによる耐圧を向上させることができる。
しかし、図34〜図37に示すようにウェハ中心部の溝DTRの幅がCADの設計時の寸法において0.8〜1.0μmと大きくなるにつれて、溝DTR内の中空SPの頂点(中空頂点SPT)はCMP法による研磨後の界面に近づき、溝DTRの幅が1.1μmでは中空SPが十分にキャッピングされないことがわかる。また、図38〜図41に示すようにウェハ周辺部の溝DTRの幅がCADの設計時の寸法において0.8〜1.1μmと大きくなった場合も上記と同様に、中空SPの頂点がCMP法による研磨後界面に近づくことがわかる。このため、実施の形態1の構成においては、溝DTRの幅を広くすると中空頂点SPTから層間絶縁膜IIの上側の表面までの距離が短くなり、場合によっては中空頂点SPTが層間絶縁膜IIの上側の表面を突き抜ける可能性がある。これは溝DTRの幅が大きいほど、中空頂点SPTが半導体層SLの上側の表面に比べて高い位置に存在するようになるためである。一例として図36に示すように、溝DTRの幅が1.0μmである素子形成領域DFRの、中空頂点SPTから下敷き酸化膜NSGの頂点までの距離は1680Å(168nm)である。
図42の概略断面図においては、溝DTRの幅(DTI幅)をWで示し、半導体層SLの上部の表面から中空頂点SPTまでの上下方向の距離をHで示している。Wを変化させたときのHの変化を、素子形成領域DFRおよび素子形成領域DFRの周辺領域のそれぞれに形成された溝DTRに対して調べた結果が図43である。
図43のグラフの横軸は図42のWの値を示しており、縦軸は図42のHの値を示している。そしてプロットされた印のうちひし形の「中心」は半導体チップSCCの中心領域に形成された素子形成領域DFRに形成された溝DTRを示し、正方形の「周辺」は半導体チップSCCの周辺領域に形成された素子形成領域DFRに形成された溝DTRを示す。
図43のグラフから、「中心」「周辺」ともに溝DTRの幅が広くなるほど半導体層SLの最上面からSP頂点(SPT)までの距離が大きくなることがわかる。言い換えれば、層間絶縁膜IIの最上面から中空頂点SPTまでの距離が小さくなることがわかる。
中空頂点SPTが高い位置に存在する結果、中空頂点SPTから層間絶縁膜IIの上側の表面までの距離が短くなれば、層間絶縁膜IIを形成した後に配線層ICLやプラグ導電層PLを形成する後工程(図3参照)を行なう際の熱処理により、中空頂点SPTが変形を起こすことがある。
具体的には、図44の写真に示す中空SPのように、層間絶縁膜IIの最上部から中空頂点SPTまでの距離が十分に高く、中空頂点SPTが尖った断面形状をしているのが好ましい状態である。このとき、中空頂点SPTの上に十分な厚みの層間絶縁膜IIが配置されていることになるため、中空頂点SPTが層間絶縁膜IIの上側の表面を突き抜ける可能性は低い。
しかし、中空頂点SPTから層間絶縁膜IIまでの距離が短い(中空頂点SPTの上の層間絶縁膜IIが薄い)場合には、後工程においてたとえばTiN薄膜形成後の熱処理などにより、中空頂点SPTが膨張するように変形する。これは熱処理により中空SPを構成するガスが膨張するためである。図45および図46は層間絶縁膜II上にTiNをスパッタリングにより形成し、880℃で熱処理した後の状態を示している。
配線層ICLやプラグ導電層PLの形成時のエッチング時に、中空頂点SPT上の薄い層間絶縁膜IIも同時にエッチングされる。これにより、中空頂点SPTが層間絶縁膜IIを突き抜ける可能性がある。
図47を参照して、たとえばスパッタリングによりアルミニウム薄膜ICLA(まだエッチングされていない)が中空SP上の層間絶縁膜II上に形成された時点では、中空SP上のアルミニウム薄膜ICLAも中空SP以外の領域上のアルミニウム薄膜ICLAも、ほぼ同じ膜厚を有している。
しかしアルミニウム薄膜ICLAのパターニングにより溝DTR上(中空SP上)のアルミニウム薄膜ICLAが除去されると、そのエッチングで層間絶縁膜IIもある程度除去されるため、図48のように中空SPが層間絶縁膜IIを突き破ることがある。これはアルミニウムの下部の薄い層間絶縁膜IIが同時にエッチングされ、かつ中空SPの上部が膨張するためである。中空SPの上部の膨張が大きいほど、層間絶縁膜IIを突き破る可能性が高くなる。
以上より、溝DTRの幅が広くなれば、中空頂点SPTが高くなり中空頂点SPT上の層間絶縁膜IIが薄くなる。すると後工程における熱処理時に中空SPの上部が膨張する変形を起こし、中空SP上の薄い層間絶縁膜IIを突き破る不具合が起こることがあるといえる。中空SP上の層間絶縁膜IIが突き破られれば、その後の成膜工程などで溝DTR内が完全に埋め込まれるおそれがあり、その場合に当該溝DTRにおいて素子を電気的に分離する機能が低下する。このことを考慮すれば、溝DTRの幅を狭くすることが好ましい。
そこで実施の形態2のように、少なくとも溝DTRと連続するように形成された下敷き酸化膜NSGの貫通孔PRCHの幅を、半導体層SLの溝DTRの幅よりも小さくなるように形成する。逆に言えば上記のように、下敷き酸化膜NSGの貫通孔PRCHの幅は実施の形態1の溝DTRと同じとし、半導体層SLの溝DTRの幅を貫通孔PRCHの幅よりも大きくなるようにする。
このようにすれば、溝DTRの大きい幅により溝DTRの耐圧を高めることができるとともに、溝DTRよりも貫通孔PRCHの幅が小さいことにより、中空SPの上部が変形して層間絶縁膜IIを突き抜ける不具合の発生を抑制することができる。
以上に述べた実施の形態2の溝DTRは、実施の形態1の溝DTRと同様の効果を奏する。ただし実施の形態2の溝DTRは、埋め込み絶縁膜BOXの存在しない半導体基板SUBに対して形成されてもよい。その場合の態様を図49〜図54に示す。
なお上記の図45および図46にて説明したTiNのスパッタリングによる形成後の熱処理の温度を800℃以下にすることにより、中空SPの上部が膨張するなどの変形を起こすことを抑制することができる。
本発明の実施の形態2は、以上に述べた各点についてのみ、本発明の実施の形態1と異なる。すなわち、本発明の実施の形態2について、上述しなかった構成や条件、手順や効果などは、全て本発明の実施の形態1に順ずる。
(実施の形態3)
本実施の形態は、実施の形態1と比較して、溝DTRおよび下敷き酸化膜NSGの構成および製造方法において異なっている。以下、本実施の形態の構成について説明する。
実施の形態3の溝DTRは、図55および図56を参照して、下敷き酸化膜NSG(第2の絶縁膜)における溝DTRの幅(下敷き酸化膜NSGを貫通する貫通孔の幅)が、溝DTRの開口端の幅(半導体層SLに形成される溝DTRの、下敷き酸化膜NSGに最も近い最上部における幅)よりも大きくなっている。この点において、実施の形態3の溝DTRは、図24に示す実施の形態1の溝DTRや図25に示す実施の形態2の溝DTRと異なる。
図55および図56に示す溝DTRの開口端の幅(半導体層SLに形成される溝DTRの、下敷き酸化膜NSGに最も近い最上部における幅)は、図24に示す実施の形態1の溝DTRの幅と同じであるとする。ここで図55のように単純に下敷き酸化膜NSGにおける溝DTRの幅が、半導体層SLの溝DTRの開口端の幅より大きくなっていてもよい。あるいは図56のように、半導体層SLの断面における角部が切り取られた形状(テーパ形状)を形成していてもよい。
図55および図56においては溝DTRの形状のみを示しており、溝DTRやフィールド酸化膜FOについては、説明の便宜上、図示が省略されている。また図55および図56は埋め込み絶縁膜BOXを備える半導体基板SUBを用いて実施の形態3の溝DTRを形成した例を示している。しかし実施の形態3においても実施の形態2と同様に、埋め込み絶縁膜BOXの存在しないバルクのシリコンよりなる半導体基板SUBに対して溝DTRが形成されてもよい。その場合、図55は図57のようになり、図56は図58のようになる。
図55の形状を有する溝DTRが形成された半導体装置は図59のような態様となり、溝DTR部の近辺の拡大図は図60のようになる。図56の形状を有する溝DTRが形成された半導体装置は図61のような態様となり、溝DTR部の近辺の拡大図は図62のようになる。図57の形状を有する溝DTRが形成された半導体装置は図63のような態様となり、溝DTR部の近辺の拡大図は図64のようになる。図58の形状を有する溝DTRが形成された半導体装置は図65のような態様となり、溝DTR部の近辺の拡大図は図66のようになる。
図59、61、63、65は、実施の形態1における図3に相当する図である。図60、62、64、66に示す半導体層SLの溝DTRの幅は、実施の形態1の半導体層SLの溝DTRの幅とほぼ同じである。
なお、本実施の形態の構成は、上記以外は実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、図55〜図66において実施の形態1と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
実施の形態3においては、下敷き酸化膜NSGの溝DTR(貫通孔PRCH)の幅を半導体層SLの溝DTRの幅よりも大きくするために、通常の埋め込み絶縁膜に達するように溝DTRを形成する工程(たとえば実施の形態1の図9に対応)を行なった後、特に下敷き酸化膜NSGの溝DTR(貫通孔PRCH)の幅を大きくするために更にエッチングを行なうことが好ましい。このときの下敷き酸化膜NSGへのエッチングガスとしてアルゴンガスと六フッ化硫黄(SF6)ガスと酸素ガスとが混合されたガスを用いることが好ましい。
実施の形態3においては実施の形態2と逆に、下敷き酸化膜NSGの貫通孔PRCHの幅が半導体層SLの溝DTRの幅よりも大きくなるように加工を行なう。このため一見、実施の形態2と逆の効果、すなわち貫通孔PRCHの幅が大きいために中空頂点SPTが高い位置に存在し、その上の層間絶縁膜IIが薄くなるように思われる。しかし実際には貫通孔PRCHを半導体層SLの溝DTRの幅よりも大きくすれば、後工程にて形成される層間絶縁膜IIが溝DTRの内部によりスムーズに埋め込まれるようになる。これは溝DTRの内部への層間絶縁膜IIの入口である、下敷き酸化膜NSGの貫通孔PRCHの幅が大きいためである。
溝DTRの内部に層間絶縁膜IIがスムーズに埋め込まれると、溝DTRの内部での層間絶縁膜IIの充填率が高くなる。このため、溝DTRの内部に形成される中空SPの容積が小さくなる分だけ、中空頂点SPTが低い位置に形成される。すると中空頂点SPTの上により厚い層間絶縁膜IIを形成することができる。したがって中空SPの上部が膨張などの変形を起こす可能性を低減し、溝DTRの品質を向上することができる。
なお上述したように溝DTRの内部に層間絶縁膜IIをスムーズに埋め込ませるためには、下敷き酸化膜NSGが100nm以上の厚みを有することが好ましい。また、層間絶縁膜IIを構成するBP−TEOS中に含まれるIII族元素とV族元素との含有割合を最適化することによっても、上記と同様に溝DTRの内部への層間絶縁膜IIの埋め込みがスムーズにすることができる。
本発明の実施の形態3は、以上に述べた各点についてのみ、本発明の実施の形態1と異なる。すなわち、本発明の実施の形態3について、上述しなかった構成や条件、手順や効果などは、全て本発明の実施の形態1に順ずる。
(実施の形態4)
上述したように、溝DTRの中空頂点SPT上の層間絶縁膜IIが薄いと、後工程において中空SPが層間絶縁膜IIを突き抜ける可能性がある。この現象を抑制するために、たとえば図67に示す中空頂点SPT上の層間絶縁膜IIの厚みH1がより厚くなるように、つまり層間絶縁膜II全体がより厚くなるように形成することが好ましい。このような構成はたとえば以下の方法で製造することができる。
たとえば実施の形態1の図10において形成する絶縁膜IIAよりも厚い絶縁膜を形成した後、実施の形態1の図11と同じ厚み分だけCMPにより研磨除去する方法がある。このようにすれば中空SP上には、実施の形態1の図11に示す層間絶縁膜IIよりも(図67にH1で示す)厚みが大きい層間絶縁膜IIが形成される。
または、たとえば図67に示す、中空SP上における厚みがH1である層間絶縁膜IIを形成した後に、図68に示すように、層間絶縁膜IIと同様の材質からなる層間絶縁膜IILを追加するように積層する方法もある。このようにすれば、中空SP上における層間絶縁膜IIの厚みは図68に示すようにH1+H2となる。つまり中空SP上には、たとえば実施の形態1の図11に示す層間絶縁膜IIよりも厚みが大きい層間絶縁膜IIが形成される。
あるいは実施の形態1の図10において形成する絶縁膜IIAとほぼ同じ厚みの絶縁膜を形成した後、実施の形態1の図11よりも少ない厚み分をCMPにより研磨除去する方法もある。このようにした場合も、実施の形態1の図11に示す層間絶縁膜IIよりも(図67にH1で示す)厚みが大きい層間絶縁膜IIが形成される。
図67および図68においては、本実施の形態1と同様に下敷き酸化膜NSGの幅と、半導体層SLにおける溝DTRの幅とがほぼ等しくなるように図示している。しかし実施の形態4において下敷き酸化膜NSGの幅と、半導体層SLにおける溝DTRの幅との大小関係は、たとえば実施の形態2または3に示す関係を満たすものであってもよい。また実施の形態4においても実施の形態2または3と同様に、半導体基板SUBにおける埋め込み絶縁膜BOXの有無は問わない。
具体的には、図67および図68のいずれの態様となる場合においても、中空SPの真上に配置される層間絶縁膜II、または層間絶縁膜IIと層間絶縁膜IILとの厚み(図67のH1または図68のH1+H2)は500nm以上であることが好ましい。
図68の形状を有する溝DTRが形成された半導体装置は図69のような態様となり、溝DTR部の近辺の拡大図は図70のようになる。
本発明の実施の形態4は、以上に述べた各点についてのみ、本発明の実施の形態1と異なる。すなわち、本発明の実施の形態4について、上述しなかった構成や条件、手順や効果などは、全て本発明の実施の形態1に順ずる。
(実施の形態5)
上述した実施の形態1〜4のいずれにおいても、たとえば図24などの溝の形状のみを示す部分的な概略断面図においてはフィールド酸化膜FOの図示が省略されている。しかし実際に素子が組み合わさった半導体装置においては、たとえば図3などの溝DTRの近傍に配置されたようなフィールド酸化膜FOが存在する。フィールド酸化膜FOは、素子間を電気的に分離するためのLOCOS(素子分離用絶縁膜)として形成される。
逆に言えば、たとえばフィールド酸化膜FOなどのLOCOSが配置された領域に溝DTRが形成されることが好ましい。図71を参照して、半導体基板SUBの半導体層SLの最上面から一定の深さ分の領域の一部に、LOCOSとしてのフィールド酸化膜FOが形成される。このフィールド酸化膜FOを覆うように、半導体基板SUB(半導体層SL)上に下敷き酸化膜NSGが形成される。図71の状態は、実施の形態1の図7に示す下敷き酸化膜NSGの形成後の状態に対応する。
その後、図72を参照して、フィールド酸化膜FOおよび、フィールド酸化膜FOの上の下敷き酸化膜NSGやフィールド酸化膜FOの下の半導体層SLを貫通して埋め込み絶縁膜BOXに達するように溝DTRが形成される。図72の状態は、実施の形態1の図9に示す溝DTRの形成後の状態に対応する。その後、図73を参照して、層間絶縁膜IIが形成され、溝DTR内にも層間絶縁膜IIが形成される。
図74のグラフの横軸は、同じ図74の下側の素子の横方向の各位置(座標)に対応する。図74のグラフの縦軸はラマン変位と呼ばれる、素子の内部の各座標の領域の内部における応力の向きや大きさを示す指標に対応する。縦軸において中央の520cm-1より上の領域は圧縮応力が加わっていることを示す領域であり、520cm-1より下の領域は引張応力が加わっていることを示す領域である。
また図74ではグラフの横軸と、横軸の各座標が示す素子の横方向の位置とが一致するように図示されている。このようにして、グラフの横軸の座標の具体的な位置が容易に把握できるようになっている。また図74のグラフの実線と点線とは、異なる温度(それぞれ温度A、温度B)で熱処理を行なうことにより形成された素子のデータを示す。
図74のグラフより、熱処理を行なう温度にかかわらず、LOCOS(フィールド酸化膜FO)が存在する領域において引張応力が大きくなることがわかる。この引張応力は、LOCOSがシリコン酸化膜からなるフィールド酸化膜FOであり、フィールド酸化膜FOがシリコンからなる半導体層SL上に形成されることから、シリコンとシリコン酸化膜との熱膨張係数の差に起因して発生する応力であると考えられる。
一方、溝DTRの形成された領域においては圧縮応力が大きくなる。このため溝DTRがフィールド酸化膜FOを貫通するように形成されることにより、溝DTRの圧縮応力とフィールド酸化膜FOの引張応力とが相殺されるため、溝DTRの近傍における内部応力を小さくすることができる。
以上のように溝DTRの近傍における応力を小さくすることにより、当該溝DTRの近傍や溝DTRの側面、下敷き酸化膜NSGの開口部(図28の貫通孔PRCH)における応力集中を抑制することができる。したがって溝DTRの近傍や貫通孔PRCHなどにおける結晶欠陥の発生をさらに確実に抑制することができる。また結晶欠陥の発生を抑制する結果、溝DTRの側面近傍のエッチングダメージ(図22、23参照)に起因するリーク電流の発生を抑制することもできる。
LOCOSとしてのフィールド酸化膜FOが形成された半導体装置の全体図は図75に示すとおりである。これは図3に示す半導体装置の全体図と同様である。
なお実施の形態5のようにLOCOSを有する半導体装置についても、埋め込み絶縁膜BOXを有さない(支持基板SS上に半導体層SLが形成された)バルクの半導体基板SUBを用いて形成されてもよい。
(実施の形態6)
本実施の形態は、実施の形態1と比較して、溝DTRを形成する際のマスクにおいて異なっている。以下、本実施の形態の構成について説明する。
本実施の形態においては図76に示すように、溝DTRを形成する前に素子上を覆うように形成する絶縁膜が、下敷き酸化膜NSG(第2の絶縁膜)のみならず、その上の下敷き窒化膜NTF(第3の絶縁膜)およびさらにその上の下敷き酸化膜NSG(第4の絶縁膜)からなる。
つまり、本実施の形態の製造方法は、溝DTRを形成する工程に先立ち、下側の下敷き酸化膜NSG(第2の絶縁膜)を形成する工程と、下敷き酸化膜NSG上に下敷き窒化膜NTF(第3の絶縁膜)を形成する工程と、下敷き窒化膜NTF上に上側の下敷き酸化膜NSG(第4の絶縁膜)を形成する工程とをさらに備えている。
下敷き窒化膜NTFはたとえばシリコン窒化膜である。上下の下敷き酸化膜NSGの各々は上述したようにたとえばノンドープのシリコン酸化膜である。このため第3の絶縁膜は第2の絶縁膜とは異なる材質よりなり、第4の絶縁膜は第3の絶縁膜とは異なる材質よりなる。図76の状態は、実施の形態1の図7に示す下敷き酸化膜NSGの形成後の状態に対応する。
このように半導体層SLの上に複数の絶縁膜を形成した上で、図77に示すように溝DTRが形成される。図77の状態は、実施の形態1の図9に示す溝DTRの形成後の状態に対応する。
その後、上側の下敷き酸化膜NSG上に通常の写真製版技術によりフォトレジストパターン(図示せず)が形成され、このフォトレジストパターンをマスクとしてエッチングを施すことにより、上側の下敷き酸化膜NSG、下敷き窒化膜NTFおよび下側の下敷き酸化膜NSGが順にパターニングされる。この後、レジストパターンはたとえばアッシングにより除去される。次に、パターニングされた上側の下敷き酸化膜NSGをマスクとして半導体層SLにエッチングが施される。これにより、半導体層SLの主表面から埋め込み絶縁膜BOXに達する溝DTRが形成される。この溝DTR形成後に、上側の下敷き酸化膜NSGおよび下敷き窒化膜NTFが除去されて図9に示す状態が得られる。この後、実施の形態1と同様の工程を経ることにより、図3と同様の構成を有する本実施の形態の半導体装置が製造される。
図9に示す実施の形態1のように溝DTRを形成する際のエッチングマスクとして下敷き酸化膜NSG単層を用いた場合、溝DTR形成のためのエッチングにより下敷き酸化膜NSGの一部に膜厚や膜質のばらつきが発生することがある。
これに対して本実施の形態では、上側の下敷き酸化膜NSGをマスクとして溝DTRが形成される。この際、下側の下敷き酸化膜NSGの上面は下敷き窒化膜NTFおよび上側の下敷き酸化膜NSGにより保護されている。このため、溝DTR形成時のエッチングによって下側の下敷き酸化膜NSGの上面がエッチングされることはない。よって、下側の下敷き酸化膜NSGの膜厚などがばらつくことを抑制できる。
実施の形態6に示す製造方法を採用した結果形成される半導体装置は、図3および図75と同様の態様を有するものである。また実施の形態6についても、実施の形態2、3、4、5に示す溝DTRの特徴や製造条件を適宜組み合わせてもよい。
本発明の実施の形態6は、以上に述べた各点についてのみ、本発明の実施の形態1と異なる。すなわち、本発明の実施の形態6について、上述しなかった構成や条件、手順や効果などは、全て本発明の実施の形態1に順ずる。
(実施の形態7)
本実施の形態は、実施の形態6と比較して、溝DTRの側面上に側壁絶縁膜SWを形成する点において異なっている。以下、本実施の形態の構成について説明する。
図77を参照して、本実施の形態では、実施の形態6と同様、半導体層SLの主表面上に、下側の下敷き酸化膜NSG、下敷き窒化膜NTFおよび上側の下敷き酸化膜NSGが順に形成された後に、上側の下敷き酸化膜NSGをマスクとして半導体層SLにエッチングが施される。これにより溝DTRが半導体層SLに形成される。
図78を参照して、この溝DTRの内壁上および上側の下敷き酸化膜NSGの上面上に、たとえばシリコン酸化膜よりなる絶縁膜が形成される。この後に、この絶縁膜に、上側の下敷き酸化膜NSGの上面が露出するまでエッチバックが施される。これにより溝DTRの側壁を覆うように側壁絶縁膜SWがたとえばシリコン酸化膜から形成される。この後、上側の下敷き酸化膜NSGと下敷き窒化膜NTFが除去される。
図79を参照して、露出した下側の下敷き酸化膜NSGの表面上を覆うように、かつ溝DTR内に中空SPを形成するように、下側の下敷き酸化膜NSG上および溝DTR内に層間絶縁膜IIが形成される。この後、実施の形態1と同様の工程を経ることにより、図80に示す本実施の形態の半導体装置が製造される。
溝DTRに側壁絶縁膜SWが形成された半導体装置は図80のような態様となり、溝DTR部の近辺の拡大図は図81のようになる。
なお、本実施の形態の構成は、上記の側壁絶縁膜SWが形成されている点以外は実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、図78〜図81において実施の形態1と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
図77を参照して、下敷き窒化膜NTFを除去する際には一般にリン酸の薬液が用いられる。リン酸の薬液がたとえばシリコンからなる半導体層SLの表面に付着すると、リン酸が付着した領域において半導体層SLの表面が荒らされる。すると半導体層SLの表面のラフネスに起因するリーク電流が増加する可能性がある。
そこで本実施の形態のように、半導体層SLの表面(側面)を保護するための側壁絶縁膜SWが形成されることにより、半導体層SLの表面が直接リン酸に曝されることを抑制することができる。したがって半導体層SLの表面のラフネスの増加を抑制し、リーク電流の増加を抑制することができる。
また側壁絶縁膜SWが形成されることにより、溝DTRの内部において層間絶縁膜IIが形成される領域が実質的に狭くなる。このため層間絶縁膜IIの形成時に溝DTRの内部に形成される中空SPの頂点SPTがより低い位置となる。これは中空SPの形成されうる領域が狭くなることに伴い、中空SPのサイズが小さくなるためである。したがって実施の形態2、3と同様に、中空頂点SPT上の層間絶縁膜IIを厚くし、中空SPが変形したり、層間絶縁膜IIを突き破ったりする不具合を抑制することができる。
なおたとえば、形成される素子の特性上、III族元素やV族元素の素子内部への固相拡散を防ぐことが好ましい場合は、側壁絶縁膜SWをノンドープとすることが好ましい。
また実施の形態7についても、実施の形態2、3、4、5に示す溝DTRの特徴や製造条件を適宜組み合わせてもよい。あるいは上記においては実施の形態6のように下敷き窒化膜NTFを用いた製造方法を一例として挙げているが、たとえば実施の形態1のように下敷き窒化膜NTFを用いずに、溝DTRの内部に側壁絶縁膜SWが形成される製造方法を用いてもよい。
本発明の実施の形態7は、以上に述べた各点についてのみ、本発明の実施の形態6と異なる。すなわち、本発明の実施の形態7について、上述しなかった構成や条件、手順や効果などは、全て本発明の実施の形態6に順ずる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。