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JP6380121B2 - 樹脂成形体の製造方法、及び樹脂積層体の製造方法 - Google Patents

樹脂成形体の製造方法、及び樹脂積層体の製造方法 Download PDF

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JP6380121B2 JP2015009283A JP2015009283A JP6380121B2 JP 6380121 B2 JP6380121 B2 JP 6380121B2 JP 2015009283 A JP2015009283 A JP 2015009283A JP 2015009283 A JP2015009283 A JP 2015009283A JP 6380121 B2 JP6380121 B2 JP 6380121B2
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Description

本発明は、樹脂成形体の製造方法、及び樹脂積層体の製造方法に関する。
従来、繊維と合成樹脂を含む樹脂成形体として、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。下記特許文献1には、積層された複数枚の繊維強化シートを上型及び下型で挟むことで製品形状に成形し、その後、上型及び下型間に樹脂を注入することで樹脂成形体を製造する方法が記載されている。
特開2008−68553号公報
上記特許文献1においては、成形時に繊維強化シートに含まれる繊維が変形し、繊維がよれてしまう結果、意匠性が低下する事態が懸念される。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、繊維を含む樹脂成形体及び樹脂成形体によって構成された樹脂積層体において、意匠性をより高くすることを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、繊維と熱可塑性樹脂とを含む板状の基材から樹脂成形体を製造する樹脂成形体の製造方法であって、成形型に配置された前記基材の一部を加熱することで前記一部に含まれる前記熱可塑性樹脂を軟化させる第1加熱工程と、前記第1加熱工程の後に行われ、軟化した前記一部を前記成形型の成形面に倣う製品形状に成形する第1成形工程と、前記第1成形工程の後に行われ、前記基材の他部を加熱することで前記他部に含まれる前記熱可塑性樹脂を軟化させる第2加熱工程と、前記第2加熱工程の後に行われ、軟化した前記他部を前記成形型の前記成形面に倣う製品形状に成形する第2成形工程と、を備えることに特徴を有する。
本発明によれば、基材の一部を加熱した後、製品形状に成形し、続いて、基材の他部を加熱した後、製品形状に成形している。このようにすれば、基材の一部を成形する際には、当該一部に含まれる熱可塑性樹脂のみが軟化した状態となり、それ以外の部分の繊維は熱可塑性樹脂によって拘束された状態とすることができる。これにより、基材全体を加熱して製品形状に成形する方法と比べて、繊維が変形する事態を抑制できる。この結果、成形時に、基材に含まれる繊維がよれる事態を抑制でき、意匠性をより高くすることができる。
また、前記一部及び前記他部は、それぞれ線状をなし、前記第1成形工程では、前記一部を基点として前記基材を折り曲げ、前記第2成形工程では、前記他部を基点として前記基材を折り曲げるものとすることができる。
仮に、線状をなす一部及び他部を同時に加熱して折り曲げると、基材において一部と他部の間の部分に高い応力が作用し、その部分の繊維が変形し易くなる。本発明では、基材の一部と他部を順番に折り曲げるため、基材に作用する応力を低減することができ、繊維がよれる事態をより確実に抑制できる。
次に、上記課題を解決するために、本発明の樹脂積層体の製造方法は、上記樹脂成形体の製造方法を備え、前記樹脂成形体の製造方法によって製造された複数の前記樹脂成形体を、一対の型の間に形成された成形空間に積層した状態で配置する配置工程と、前記配置工程の後に行われ、前記成形空間に合成樹脂を充填することで、前記複数の前記樹脂成形体を樹脂積層体として一体的に成形する積層体成形工程を備えることに特徴を有する。
本発明においては、複数の樹脂成形体は、各第1成形工程及び各第2成形工程において、予め製品形状に成形されている。このため、積層体成形工程においては、各樹脂成形体を製品形状に成形する必要がなく、各樹脂成形体に作用する応力を低減することができ、繊維がよれる事態をより確実に抑制できる。
本発明によれば、繊維を含む樹脂成形体及び樹脂成形体によって構成された樹脂積層体において、意匠性をより高くすることができる。
本発明の一実施形態に係るバックボードを示す斜視図 塗布工程を概略的に示す図 樹脂成形体の構成を概略的に示す図 第1加熱工程を示す断面図 第1成形工程及び第2加熱工程を示す断面図 第2成形工程を示す断面図 樹脂成形体12を示す斜視図 樹脂成形体22Rに係る成形工程を示す断面図 配置工程を示す断面図 積層体成形工程を示す断面図
本発明の一実施形態を図1ないし図10によって説明する。本実施形態では、樹脂積層体として、図1に示すバックボード10を例示する。図1はバックボード10を車両後側から視た斜視図である。バックボード10は、車両上下方向に長い長手状をなし、車両用シートの背面を主に構成するものとされる。バックボード10は、図1に示すように、パックボード10における車両後側の面を構成する主壁部11と、主壁部11における車幅方向の側端部の各々から車両前方に向かって立ち上がる一対の側壁部21R,21L(立壁部)と、を備えており(側壁部21Rは図10参照)、車両後方に凹んだ湾曲形状をなしている。
主壁部11は、図10に示すように、同じ形状の複数枚(本実施形態では3枚)の樹脂成形体12(主壁部構成部材)を積層してなる。また、側壁部21Rは、図10に示すように、同じ形状の複数枚(本実施形態では3枚)の樹脂成形体22R(側壁部構成部材)が積層されてなる。側壁部21Lは、図10に示すように、同じ形状の複数枚(本実施形態では3枚)の樹脂成形体22L(側壁部構成部材)が積層されてなる。
樹脂成形体12及び樹脂成形体22R,22Lは、繊維に熱可塑性樹脂を含浸させることで構成された板状の基材を、製品形状に倣う形状に成形(賦形)することで製造される。樹脂成形体12及び樹脂成形体22R,22Lを構成する繊維(強化繊維)としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などを挙げることができる。また、樹脂成形体12及び樹脂成形体22R,22Lを構成する熱可塑性樹脂(バインダ樹脂)としては、例えば、熱可塑性エマルジョンを例示することができる。熱可塑性エマルジョンとしては、例えば、セポルジョン(登録商標)PA150(商品名、住友精化(株)製、共重合ナイロン樹脂エマルジョン)などを用いることができる。なお、基材を構成する繊維及び熱可塑性樹脂の材質は、上述したものに限定されず適宜変更可能である。
樹脂成形体12は、図7に示すように、バックボード10の背面形状に倣う形状をなす本体部13と、本体部13における両側の側部にそれぞれ設けられた一対の側壁部14R,14Lと、を備えている。また、本体部13と側壁部14Rの境界部分は、車両上下方向に延びる角部16Rとされ、本体部13と側壁部14Lの境界部分は、車両上下方向に延びる角部16Lとされる。
側壁部14Rにおける本体部13と反対側の端部には、樹脂成形体22Rと接合される接合部15Rが形成されている。また、側壁部14Lにおける本体部13と反対側の端部には、樹脂成形体22Lと接合される接合部15Lが形成されている。なお、樹脂成形体12は、図1に示すように、複数の曲面や平面を有する複雑な立体形状をなしており、角部16R,16L以外に複数の角部を有している。図1には、このような角部の一部に、符号16A,16Bを付して例示してある。
樹脂成形体22Rは、図10に示すように、バックボード10の側壁部21Rの形状に倣う本体部23Rと、本体部23Rの側端部に設けられ、樹脂成形体12と接合される接合部24Rと、を備えている。樹脂成形体22Lは、バックボード10の側壁部21Lの形状に倣う本体部23Lと、本体部23Lの側端部に設けられ、樹脂成形体12と接合される接合部24Lと、を備えている。なお、一対の側壁部21R,21Lは、車幅方向において対称な形状をなしており、形状以外の構成は同じものとされる。バックボード10においては、樹脂成形体12の接合部15Rと、樹脂成形体22Rの接合部24Rが互いに接合され、樹脂成形体12の接合部15Lと、樹脂成形体22Lの接合部24Lが互いに接合されている。
次に、基材17(成形前の樹脂成形体12)から樹脂成形体12を製造するための成形型40について説明する。成形型40は、図4に示すように、上方に突出した突部41を有しており、成形型40の上面(突部41の表面を含む)が、樹脂成形体12の製品形状に倣う成形面42とされる。成形型40の成形面42には、複数の吸引孔41A,41Bが形成されており、基材17を成形面42側に吸引可能な構成となっている。以下の説明では、突部41の突出面に形成された吸引孔に符号41Aを付すものとし、突部41以外の成形面42に形成された吸引孔に符号41Bを付すものとする。
次に、樹脂成形体22Rを製造する成形型50について説明する。成形型50は、樹脂成形体22Rの製造形状に倣う成形面51を有している。成形面51には、複数の吸引孔51A,51Bが形成されており、成形前の樹脂成形体22Rの基材を成形面42に吸引可能な構成となっている。なお、樹脂成形体22Lを製造する成形型は、成形型50と対称な形状をなすこと以外は、成形型50と同じ構成であり、図示を省略する。
次に、複数枚の樹脂成形体12及び樹脂成形体22R,22Lからバックボード10を製造する成形装置60について説明する。成形装置60は、図10に示すように、上型61及び下型71(一対の型)を備えている。上型61は、バックボード10の裏面(車両前側の面)形状に倣う成形面61Aを有する突形状をなしている。下型71は、バックボード10の表面(車両後側の面)形状に倣う成形面71Aを有する凹形状をなしている。
上型61及び下型71は互いに接近又は離間可能な構成となっており、上型61及び下型71を型閉じした状態では、成形面61Aと成形面71Aの間にバックボード10の製品形状に倣う成形空間S1が形成される。また、上型61には、吸引孔62及び樹脂注入口63が形成されている。本実施形態では吸引孔62を介して成形空間S1内に配された成形品を成形面61A側に吸引し、保持することが可能な構成となっている。樹脂注入口63には、図示しない樹脂注入装置が接続されており、樹脂注入装置から供給された合成樹脂は、樹脂注入口63を介して成形空間S1に供給される構成となっている。
次に、バックボード10の製造方法について説明する。本実施形態では、繊維に熱可塑性樹脂を含浸させた基材から樹脂成形体12,22R,22Lをそれぞれ複数枚ずつ製造し、その後、各樹脂成形体12,22R,22Lを一体的に成形することで、バックボード10を製造する。まず、樹脂成形体12,22R,22Lを製造するために用いる基材の製造方法(塗布工程及び乾燥工程)について、樹脂成形体12を製造するための基材17を例示して説明する。
(塗布工程及び乾燥工程)
塗布工程では、図2及び図3に示すように、所定方向に揃えられた繊維18の束に対して、スプレー31などで熱可塑性樹脂19を塗布する。塗布する熱可塑性樹脂19は、予め水を混ぜて希釈しておく。例えば、熱可塑性樹脂19として、ナイロンエマルジョンを用いる場合には、熱可塑性樹脂19と水の割合が1対1となるように希釈する。その後、乾燥工程では、熱可塑性樹脂19を塗布された繊維18の束を例えば、常温で数時間(例えば約3時間)乾燥させる。なお、熱可塑性樹脂19と水の割合、乾燥温度、及び乾燥時間はこれに限定されず、適宜変更可能である。
これにより、熱可塑性樹脂19に混合された水が蒸発し、熱可塑性樹脂19が凝縮することで各繊維18が熱可塑性樹脂19によって結合された状態となる(図3参照)。これにより、板状(シート状)をなす基材17の製造が完了する。なお、図3に示すように、熱可塑性樹脂19の塗布量は、各繊維18を結合させつつも、各繊維18間にある程度の隙間が空く程度の量とすることが好ましく、例えば乾燥後の熱可塑性樹脂19の量(目付量)が5〜25g/m2となるように塗布すると好適である。各繊維18間にある程度の隙間を確保しておくことで、後述する積層体成形工程において、合成樹脂を繊維18の間に充填させることができる。なお、熱可塑性樹脂19の目付量はこれに限定されず、適宜変更可能である。
次に、樹脂成形体12の製造方法について説明する。樹脂成形体12の製造方法は、基材17の一部を加熱する加熱工程と、加熱した部分を製品形状に成形する成形工程と、を備え、加熱工程及び成形工程を繰り返し行うことで、樹脂成形体12が製造される。まず、図4に示すように、基材17を成形型40の成形面42上に載置し、吸引孔41Aを介して基材17を吸引することで、基材17を保持する。
(第1加熱工程)
次に、ドライヤーなどの加熱装置を用いて、基材17の一部17A(図4参照、例えば、製品において角部16Lとなる部分及びその付近の部分)に熱風(図4の矢印H1で示す)を吹き付け、加熱する。これにより、基材17の一部17Aが加熱され、基材17に含まれる熱可塑性樹脂が軟化する。角部16Rは、車両上下方向に延びる形状をなしているため、一部17Aは、線状をなすものとされる。なお、この時の熱風の温度は、例えば、約100℃で設定され、加熱時間は1〜10秒で設定されるが、熱風の温度及び加熱時間は、これに限定されず、適宜変更可能である。
(第1成形工程)
次に、図5に示すように、第1加熱工程において加熱した部分に対応する吸引孔41Bを介して基材17を吸引する。これにより、基材17の一部17A(より詳しくは成形型40の角部43L,45Lに対応する箇所)を基点として、基材17が折り曲げられ、成形面42の形状に倣う形状に成形される。この結果、樹脂成形体12における側壁部14L及び接合部15Lが成形される。その後、吸引孔41A,41Bによる吸引を続けながら、例えば、常温(約20℃〜30℃)で基材17を数秒間(例えば5秒間)保持し、加熱した部分の温度を低下させる。
(第2加熱工程)
次に、ドライヤーなどの加熱装置を用いて、基材17の他部17B(一部17Aとは別の部分、例えば製品において角部16Lとなる部分及びその付近の部分)に熱風(図5の矢印H2で示す)を吹き付け、加熱する。これにより、基材17の他部17Bが加熱され、基材17に含まれる熱可塑性樹脂が軟化する。なお、角部16Lは、車両上下方向に延びているため、他部17Bは、線状をなすものとされる。
(第2成形工程)
次に、図6に示すように、第2加熱工程において加熱した部分に対応する吸引孔41Bを介して基材17を吸引する。これにより、基材17の他部17B(より詳しくは成形型40の角部43R,45Rに対応する箇所)を基点として、基材17が折り曲げられ、成形面42の形状に倣う形状に成形される。この結果、樹脂成形体12における側壁部14R及び接合部15Rが成形される。その後、吸引孔41A,41Bによる吸引を続けながら、例えば、常温(約20℃〜30℃)で基材17を数秒間(例えば5秒)保持し、加熱した部分の温度を低下させる。
次に、上記加熱工程及び成形工程の同様の手順で、上記基材17の一部17A及び他部17B以外の部分(例えば、図1に示す角部16A,16Bに対応する部分)について順次加熱及び成形を行うことで、樹脂成形体12が完成する。このように、本実施形態では、基材17を一回の成形で樹脂成形体12とするのではなく、加熱工程と成形工程を基材17の部分毎に行い、これを繰り返すことで樹脂成形体12を製造している。なお、上記各成形工程においては、吸引孔による吸引作用に加え、押圧用の道具など用いて基材17を押圧し、外力を付与させることで、基材17を製品形状に成形してもよい。なお、吸引孔41A,41Bの直径は例えば1〜5mmで設定され、隣り合う吸引孔41A,41B間の間隔は例えば10〜50mmで設定されている。また、吸引孔41A,41Bの吸引時の風速は例えば0.5〜5.0(m/s)で設定される。なお、吸引孔41A,41Bに係る上記各設定値は適宜変更可能である。また、基材17を押圧して成形する際には、基材17の内側から外側に向かうように押圧すると皺が生じ難く好適である。
また、樹脂成形体22R,22Lについても、上記加熱工程及び成形工程の同様の手順で製造する。樹脂成形体22Rについて例示すると、図8に示すように、樹脂成形体22Rを成形する前の状態の基材を吸引孔51Aによって吸引し、保持した状態で、角部25Rとなる箇所を加熱することで軟化させ、吸引孔51Bによって吸引することで、本体部23Rを成形する。このような成形工程を繰り返し行うことで、樹脂成形体22Rが完成する。
(配置工程)
次に樹脂成形体12及び樹脂成形体22R,22Lからバックボード10を製造する製造方法について説明する。図9に示すように、下型71の成形面71A上に樹脂成形体12及び樹脂成形体22R,22Lを各3枚ずつ積層した状態で配置する。具体的には、一枚の樹脂成形体12を配置した上から、一対の樹脂成形体22R,22Lを重ね、その上から、次の樹脂成形体12を重ねるようにする。この時、接合部15Lと接合部24Lとが互いに重なるように配置し、接合部15Rと接合部24Rとが互いに重なるように配置する。次に、上型61及び下型71を型閉じする。これにより、各樹脂成形体12及び各樹脂成形体22R,22Lが成形空間S1に配置された状態となる。なお、樹脂成形体12及び樹脂成形体22R,22Lは、成形時と上下反転した状態で成形空間S1に配置される。
(積層体成形工程)
次に、樹脂注入口63を通じて成形空間S1に合成樹脂を供給する。成形空間S1に供給される合成樹脂としては、例えばエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を用いることができる。一般的に熱硬化性樹脂は、熱可塑性樹脂に比べて流動性が高く好適である。これにより、樹脂成形体12及び樹脂成形体22R,22Lを構成する繊維間、及び隣り合う樹脂成形体の間に合成樹脂27が充填される。その後、例えば、上型61を加熱するなどして、充填された合成樹脂27を加熱させ、硬化させる。これにより、積層された樹脂成形体12及び樹脂成形体22R,22Lが一体的に成形され、バックボード10の製造が完了する。なお、バックボード10においては、樹脂成形体12の接合部15Rと樹脂成形体22Rの接合部24Rが合成樹脂27によって互いに接合され、樹脂成形体12の接合部15Lと樹脂成形体22Lの接合部24Lが合成樹脂27によって互いに接合されている。
次に本実施形態の効果について説明する。本実施形態によれば、基材17の一部17Aを加熱した後、製品形状に成形し、続いて、基材17の他部17Bを加熱した後、製品形状に成形することとしている。このようにすれば、基材17の一部17Aを成形する際には、当該一部17Aに含まれる熱可塑性樹脂のみが軟化した状態となり、それ以外の部分の繊維は熱可塑性樹脂によって拘束された状態とすることができる。これにより、基材17全体を加熱して、製品形状に成形する方法と比べて、繊維が変形する事態を抑制できる。この結果、成形時に、基材17に含まれる繊維がよれる事態を抑制でき、意匠性をより高くすることができる。
また、基材17の一部17A及び他部17Bは、それぞれ線状をなし、第1成形工程では、基材17の一部17Aを基点として基材17を折り曲げ、第2成形工程では、基材17の他部17Bを基点として基材17を折り曲げるものとされる。
仮に、線状をなす一部17A及び他部17Bを同時に加熱して折り曲げると、基材17において一部17Aと他部17Bの間の部分が拘束され易く、高い応力が作用する結果、その部分の繊維が変形し易くなる。本実施形態では、基材17の一部17Aと他部17Bを順番に折り曲げるため、基材17に作用する応力を低減することができ、繊維がよれる事態をより確実に抑制できる。なお、本実施形態の樹脂成形体の製造方法は、製品形状が複雑な立体形状をなすものに適用すると特に好適である。
また、本実施形態のバックボード10の製造方法は、上記樹脂成形体12の製造方法を備え、複数の樹脂成形体12を、上型61及び下型71の間に形成された成形空間S1に、積層した状態で配置する配置工程と、配置工程の後に行われ、成形空間S1に合成樹脂を充填することで、複数の樹脂成形体12をバックボード10として一体的に成形する積層体成形工程を備える。
本実施形態においては、複数の樹脂成形体12は、予め製品形状に成形されている。このため、積層体成形工程においては、各樹脂成形体12を製品形状に成形する必要がなく、各樹脂成形体12に作用する応力を低減することができ、繊維がよれる事態をより確実に抑制できる。
また、本実施形態においては、バックボード10が樹脂成形体12及び樹脂成形体22R,22Lから分割構成されている。これにより、より複雑な立体形状を実現することができる。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、樹脂積層体としてバックボード10を例示し、樹脂成形体としてバックボード10を構成する部材を例示したが、これに限定されない。樹脂積層体及び樹脂成形体の用途及び形状は、上記実施形態で例示したものに限定されず、適宜変更可能である。
(2)上記実施形態においては、ドライヤーなどの加熱装置を用いて、基材17を加熱する方法を例示したが、これに限定されない。例えば、赤外線ヒーターなどの加熱装置で基材17を加熱してもよい。
(3)上記実施形態では、積層体成形工程において熱硬化性樹脂を成形空間S1に注入する方法を例示したが、これに限定されない。熱可塑性樹脂を成形空間S1に注入してもよい。
(4)上記実施形態では、繊維18に水で希釈した熱可塑性樹脂19を塗布し、乾燥させることで基材17とする方法を例示したが、これに限定されない。例えば、加熱することで軟化した熱可塑性樹脂を繊維18に含浸させることで、基材17を製造してもよい。
10…バックボード(樹脂積層体)、12…樹脂成形体、17…基材、17A…基材の一部、17B…基材の他部、18…繊維、19…熱可塑性樹脂、27…合成樹脂、40…成形型、42…成形型の成形面、61…上型(一対の型を構成)、71…下型(一対の型を構成)、S1…成形空間

Claims (3)

  1. 繊維と熱可塑性樹脂とを含む板状の基材から、線状に連なる角部を複数含む樹脂成形体を製造する樹脂成形体の製造方法であって、
    成形型に配置された前記基材の一部であって第1の前記角部となる部分に熱風を吹き付け加熱することで前記一部に含まれる前記熱可塑性樹脂を軟化させる第1加熱工程と、
    前記第1加熱工程の後に行われ、前記成形型に設けられた吸引孔を介して前記一部を吸引することで、軟化した前記一部を前記成形型の成形面に倣う製品形状に成形する第1成形工程と、
    前記第1成形工程の後に行われ、前記基材の他部であって第2の前記角部となる部分に熱風を吹き付け加熱することで前記他部に含まれる前記熱可塑性樹脂を軟化させる第2加熱工程と、
    前記第2加熱工程の後に行われ、前記成形型に設けられた吸引孔を介して前記他部を吸引することで、軟化した前記他部を前記成形型の前記成形面に倣う製品形状に成形する第2成形工程と、を備える樹脂成形体の製造方法。
  2. 前記第1成形工程では、前記一部を基点として前記基材を折り曲げ、
    前記第2成形工程では、前記他部を基点として前記基材を折り曲げる請求項1に記載の樹脂成形体の製造方法。
  3. 複数の主壁側樹脂成形体を積層してなる主壁部と、前記主壁部における側端部の各々から立ち上がり複数の側壁側樹脂成形体を積層してなる一対の側壁部と、を備える樹脂積層体の製造方法であって、
    前記主壁側樹脂成形体と前記側壁側樹脂成形体は、請求項1又は請求項2に記載された樹脂成形体の製造方法により製造されるものであり、
    製造された前記主壁側樹脂成形体を、一対の型の間に形成された成形空間に配置し、その側端部の上から製造された前記側壁側樹脂成形体を一対重ね、その上から製造された別の前記主壁側樹脂成形体を重ねる配置工程と、
    前記配置工程の後に行われ、前記成形空間に合成樹脂を充填することで、前記複数の前記樹脂成形体を樹脂積層体として一体的に成形する積層体成形工程と、を備える樹脂積層体の製造方法。
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