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JP6371926B1 - 光学測定装置および光学測定方法 - Google Patents

光学測定装置および光学測定方法 Download PDF

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JP6371926B1 JP2018012204A JP2018012204A JP6371926B1 JP 6371926 B1 JP6371926 B1 JP 6371926B1 JP 2018012204 A JP2018012204 A JP 2018012204A JP 2018012204 A JP2018012204 A JP 2018012204A JP 6371926 B1 JP6371926 B1 JP 6371926B1
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Abstract

【課題】様々なサンプルの膜厚の面内分布をより高速かつ高精度に測定可能な光学測定装置および光学測定方法を提供する。
【解決手段】光学測定装置は、測定対象に対して所定の波長範囲を有する測定光を直線状に照射する照射光学系と、測定光の照射により測定対象から生じる透過光または反射光である直線状の測定干渉光を受光する測定光学系と、処理装置とを含む。測定光学系は、測定干渉光を当該測定干渉光の長手方向とは直交する方向に波長展開する回折格子と、回折格子により波長展開された測定干渉光を受光して2次元画像を出力する撮像部とを含む。処理装置は、測定光が照射される測定対象の各測定点に対応する2次元画像上の領域に関連付けて、各測定点から測定光学系への入射角に応じた補正要素を算出する第1の算出手段と、2次元画像に含まれる各ピクセル値に対して対応する補正要素を適用した上で、測定対象の光学特性を算出する第2の算出手段とを含む。
【選択図】図12

Description

本発明は、膜厚および屈折率などの光学特性を測定できる光学測定装置および光学測定方法に関する。
機能性樹脂フィルムや半導体基板などのサンプルの膜厚を測定する技術が知られている。例えば、特開2009−092454号公報(特許文献1)は、波長依存性を有する多層膜試料の膜厚をより高い精度を測定することが可能な多層膜解析装置および多層膜解析方法を開示する。特開2013−079921号公報(特許文献2)は、屈折率が未知の誘電体薄膜の膜厚を正確に測定することができる膜厚測定装置および膜厚測定方法を開示する。
一般的に、測定対象となるサンプルはある面積を有しており、測定対象面における膜厚分布(膜厚の面内分布)を高速に測定したいというニーズがある。このようなニーズに対して、特開2004−279296号公報(特許文献3)は、液晶表示装置等の製造工程において、平板上に薄膜を成膜する際に、成膜した薄膜の膜厚の分布を簡単な装置構成で高速に得るための手法を開示する。より具体的には、特許文献3は、光源からの照射光を測定対象である基板上に設けた被膜に入射させ、被膜からの干渉を起こした反射光を、被膜の主面に対する照射光の入射角をステップ的に変化させながら受光装置により測定し、測定した反射光の受光強度の変動における極大値と極小値をとる照射光の入射角から被膜の膜厚を取得する方法を開示する。
特開2009−092454号公報 特開2013−079921号公報 特開2004−279296号公報
サンプルの大型化などに伴って、より広いサンプルについての膜厚の面内分布をより高速かつ高精度に測定したいというニーズがある。上述の特許文献1および特許文献2に開示される構成は、基本的には、サンプルのある一点に光を照射して測定を行うものであり、膜厚の面内分布を高速に測定するというニーズを十分に満たすことはできない。
また、特許文献3は、干渉波形の極大値および極小値が生じる位置を利用して膜厚を算出する、いわゆるピーク・バレイ法を採用する。ピーク・バレイ法は、光学系などに起因するノイズの影響を受けて膜厚を正確に測定できない場合がある。また、ピーク・バレイ法は、複数の層が積層されたサンプルの各層の膜厚を測定できない。そのため、特許文献3は、液晶表示装置等の製造工程などには適用し得るが、様々なサンプルの膜厚の面内分布を汎用的に測定することはできない。
本発明のある目的は、様々なサンプルの膜厚の面内分布をより高速かつ高精度に測定可能な光学測定装置および光学測定方法を提供することである。また、本発明の別の目的は、専用の測定装置などを用いることなく、屈折率などのサンプルの光学特性を測定可能な光学測定装置および光学測定方法を提供することである。
本発明のある局面に従う光学測定装置は、測定対象に対して所定の波長範囲を有する測定光を直線状に照射する照射光学系と、測定光の照射により測定対象から生じる透過光または反射光である直線状の測定干渉光を受光する測定光学系と、処理装置とを含む。測定光学系は、測定干渉光を当該測定干渉光の長手方向とは直交する方向に波長展開する回折格子と、回折格子により波長展開された測定干渉光を受光して2次元画像を出力する撮像部とを含む。処理装置は、測定光が照射される測定対象の各測定点に対応する2次元画像上の領域に関連付けて、各測定点から測定光学系への入射角に応じた補正要素を算出する第1の算出手段と、2次元画像に含まれる各ピクセル値に対して対応する補正要素を適用した上で、測定対象の光学特性を算出する第2の算出手段とを含む。
好ましくは、補正要素は、測定光の波長および測定対象の屈折率を含む媒介変数である波数を含む。波数は、2次元画像のピクセル位置毎に、対応する入射角の大きさを考慮して算出される。
好ましくは、第2の算出手段は、注目する測定点に対応する2次元画像のピクセル値を位相因子に対して線形化するための関係式に従って変換した値の列を、対応する波数の列についてフーリエ変換する手段と、フーリエ変換により得られるパワースペクトルに現れるピーク位置に基づいて注目する測定点における膜厚を決定する手段と、複数の測定点について決定された膜厚を集合して膜厚分布として出力する手段とを含む。
好ましくは、波数は、測定対象の屈折率の波長依存性を考慮して算出される。
好ましくは、補正要素は、各測定点に対応する入射角の大きさを示す値を含む。第2の算出手段は、各測定点の膜厚を変動パラメータとするとともに、測定対象の屈折率と、各測定点に対応する入射角の大きさを示す値と、各測定点と2次元画像のピクセル位置との対応関係とに基づいて、2次元画像に対応する各ピクセルの理論値を算出する手段と、算出される各ピクセルの理論値と2次元画像の各ピクセル値との類似度が高くなるように、変動パラメータを調整することで、各測定点の膜厚を決定する手段とを含む。
本発明の別の局面に従う光学測定方法は、測定対象に対して所定の波長範囲を有する測定光を直線状に照射するとともに、測定光の照射により測定対象から生じる透過光または反射光である直線状の測定干渉光を受光するステップと、測定干渉光を当該測定干渉光の長手方向とは直交する方向に波長展開するとともに、当該波長展開された測定干渉光を受光して2次元画像を出力するステップと、測定光が照射される測定対象の各測定点に対応する2次元画像上の領域に関連付けて、各測定点からの入射角に応じた補正要素を算出するステップと、2次元画像に含まれる各ピクセル値に対して対応する補正要素を適用した上で、測定対象の光学特性を算出するステップとを含む。
好ましくは、補正要素は、測定光の波長および測定対象の屈折率を含む媒介変数である波数を含む。波数は、2次元画像のピクセル位置毎に、対応する入射角の大きさを考慮して算出される。
好ましくは、光学特性を算出するステップは、注目する測定点に対応する2次元画像のピクセル値を位相因子に対して線形化するための関係式に従って変換した値の列を、対応する波数の列についてフーリエ変換するステップと、フーリエ変換により得られるパワースペクトルに現れるピーク位置に基づいて注目する測定点における膜厚を決定するステップと、複数の測定点について決定された膜厚を集合して膜厚分布として出力するステップとを含む。
好ましくは、波数は、測定対象の屈折率の波長依存性を考慮して算出される。
好ましくは、補正要素は、各測定点に対応する入射角の大きさを示す値を含む。光学特性を算出するステップは、各測定点の膜厚を変動パラメータとするとともに、測定対象の屈折率と、各測定点に対応する入射角の大きさを示す値と、各測定点と2次元画像のピクセル位置との対応関係とに基づいて、2次元画像に対応する各ピクセルの理論値を算出するステップと、算出される各ピクセルの理論値と2次元画像の各ピクセル値との類似度が高くなるように、変動パラメータを調整することで、各測定点の膜厚を決定するステップとを含む。
本発明のさらに別の局面に従えば、測定対象に対して所定の波長範囲を有する測定光を直線状に照射する照射光学系と、測定光の照射により測定対象から生じる透過光または反射光である直線状の測定干渉光を当該測定干渉光の長手方向とは直交する方向に波長展開して2次元画像を出力する測定光学系とを備える光学測定装置を用いた光学測定方法が提供される。光学測定方法は、同一の測定基準を測定光が照射される測定対象の測定点に順次配置するとともに、当該測定点における実測値を順次取得することで、2次元画像に対応する実測値分布を取得するステップと、測定光が照射される測定対象の各測定点に対応する2次元画像上の領域に関連付けて、各測定点から測定光学系への入射角に応じた補正要素を算出するステップと、実測値分布のいずれか一方向に沿った1または複数の列についてのピクセル値群と、対応する補正要素とに基づいて、測定基準の屈折率を含む光学特性を算出するステップとを含む。
本発明のある実施の形態によれば、様々なサンプルの膜厚の面内分布をより高速かつ高精度に測定できる。本発明の別の実施の形態によれば、専用の測定装置などを用いることなく、屈折率などのサンプルの光学特性を測定できる。
本実施の形態に従う透過系の光学測定装置の概略構成を示す模式図である。 本実施の形態に従う反射系の光学測定装置の概略構成を示す模式図である。 本実施の形態に従う光学測定装置に採用される測定光学系の概略構成を示す模式図である。 本実施の形態に従う光学測定装置に採用される位置調整機構の概略構成を示す模式図である。 本実施の形態に従う処理装置の概略構成を示す模式図である。 本実施の形態に従う光学測定装置の測定光学系への測定干渉光の入射を説明するための図である。 本実施の形態に従う膜厚測定方法の原理を説明するための図である。 本実施の形態に従う光学測定装置において取り扱われる2次元画像の一例を示す図である。 本実施の形態に従う膜厚測定方法に用いる入射角を算出する際のビニング処理を説明するための図である。 本実施の形態に従う膜厚測定方法に用いる入射角の算出方法を説明するための図である。 本実施の形態に従う膜厚測定方法の処理手順(その1)を示すフローチャートである。 図11に示す膜厚測定方法の処理手順(その1)における処理内容を説明するための図である。 ポリエチレン薄膜の屈折率の波長分布の一例を示す図である。 本実施の形態に従う膜厚測定方法により得られた膜厚トレンドの一例を示す図である。 本実施の形態に従う理論式に従う透過率スペクトルを示す2次元画像の一例を示す図である。 図15に示す2次元画像(理論値)における位置方向ピクセル番号jに対応する透過率スペクトルT(λ)を示すグラフである。 図16に示す透過率スペクトルT(λ)から算出した波数変換透過率T’(K)を示すグラフである。 図17に示す波数変換透過率T’(K)から算出された膜厚トレンドの一例を示す図である。 本実施の形態に従う膜厚測定方法の処理手順(その2)における処理内容を説明するための模式図である。 本実施の形態に従う膜厚測定方法の処理手順(その2)を示すフローチャートである。 本実施の形態に従う屈折率測定方法の概要を説明するための模式図である。 本実施の形態に従う屈折率測定方法の概要を説明するための模式図である。 本実施の形態に従う波長方向の情報に基づく屈折率測定方法(その1)に従って算出された膜厚トレンドの一例を示すグラフである。 本実施の形態に従う波長方向の情報に基づく屈折率測定方法(その1)の処理手順を示すフローチャートである。 本実施の形態に従う波長方向の情報に基づく屈折率測定方法(その2)における屈折率の決定方法を説明するための図である。 本実施の形態に従う波長方向の情報に基づく屈折率測定方法(その3)における屈折率の決定方法を説明するための図である。 本実施の形態に従う位置方向の情報に基づく屈折率測定方法(その2)における膜厚のより確からしい値を決定する方法を説明するための図である。
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
<A.光学測定装置の装置構成>
まず、本実施の形態に従う光学測定装置の装置構成について説明する。本実施の形態に従う光学測定装置は、イメージング分光器を用いた測定装置であり、測定対象(以下、「サンプル」とも称す。)に対してライン状の測定光を照射するとともに、そのライン状の測定光がサンプルを透過して生じる光、または、そのライン状の測定光がサンプルで反射して生じる反射光を分光することで、測定光が照射された測定ライン上の各測定点における波長情報を取得する。サンプルから生じる透過光または反射光は、サンプル内で干渉を生じた結果を示すので、以下、「測定干渉光」とも称す。
以下、本実施の形態に従う光学測定装置の典型的な装置構成を示す。
(a1:透過系システム)
図1は、本実施の形態に従う透過系の光学測定装置1の概略構成を示す模式図である。図1を参照して、光学測定装置1は、測定光学系10と、測定光を発生する光源20と、光源20が発生した測定光をサンプルSに照射するラインライトガイド22と、処理装置100とを含む。
光源20およびラインライトガイド22は、サンプルSに対して、所定の波長範囲を有する光を直線状に照射する線状光源ユニット(照射光学系)に相当する。測定光が有する波長範囲は、サンプルSから取得すべき波長情報の範囲などに応じて決定される。光源20は、例えば、ハロゲンランプが用いられる。
ラインライトガイド22は、典型的には、サンプルSが搬送される面の直下に配置され、光源20からの測定光をライン状の開口部からサンプルSに向けて照射する。ラインライトガイド22の照射面には、光量ムラを抑制するための拡散部材などが配置される。ラインライトガイド22からの測定光は、サンプルSに入射して、測定光が照射される測定ライン24が生じる。
測定光学系10は、測定光の照射によりサンプルSから生じる透過光または反射光である直線状の測定干渉光を受光する。より具体的には、測定光学系10は、サンプルSを透過した測定干渉光、または、サンプルSで反射された測定干渉光に基づいて、各測定点における透過率または反射率の波長分布特性を取得する。測定光学系10は、サンプルSを挟んで、ラインライトガイド22と対向する位置に配置される。ラインライトガイド22から照射された測定光のうち、サンプルSを透過した光(測定干渉光)が測定光学系10に入射する。測定光学系10は、ベース部材4および支持部材6により固定される。
測定光学系10は、対物レンズ12と、イメージング分光器14と、撮像部16とを含む。サンプルSからの透過光は、対物レンズ12により収束されて、イメージング分光器14に導かれる。
イメージング分光器14は、サンプルSのライン上の各測定点での分光情報を一括測定する。より具体的には、イメージング分光器14は、入射したライン状の透過光を波長展開して、撮像部16へ出力する。撮像部16は、2次元の受光面を有する撮像素子で構成される。このような撮像素子は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセ
ンサあるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサか
らなる。撮像部16は、イメージング分光器14からの透過光を撮像素子で受光することで、2次元画像を出力する。出力される2次元画像は、波長情報および位置情報を含む。測定光学系10の詳細については、後述する。
処理装置100は、測定光学系10(撮像部16)から出力される2次元画像に対して、後述するような処理を実行することで、測定ライン24上の各測定点における膜厚などのサンプルSの特性値を算出する。処理装置100による測定処理の詳細については、後述する。
(a2:反射系システム)
図2は、本実施の形態に従う反射系の光学測定装置2の概略構成を示す模式図である。図2を参照して、光学測定装置2は、光学測定装置1と比較して、測定光学系10およびラインライトガイド22の位置関係が異なっている。具体的には、ラインライトガイド22は、サンプルSに対する測定光が測定ライン24および垂直方向28を含む面に対して入射角Θ(>0)をもつように、配置される。測定光学系10は、サンプルSに入射した測定光が反射して生じる光(測定干渉光)を受光できる位置に配置される。測定光学系10は、その光軸が測定ライン24および垂直方向28を含む面に対して同じ入射角Θを有するにように配置される。
光学測定装置2のその他の構成は、光学測定装置1と実質的に同一であるので、詳細な説明は繰返さない。
なお、説明の便宜上、基本的には、透過系システムを採用する光学測定装置1を例に詳細を説明する。
(a3:測定光学系)
次に、本実施の形態に従う光学測定装置に採用される測定光学系10について説明する。
図3は、本実施の形態に従う光学測定装置に採用される測定光学系10の概略構成を示す模式図である。図3を参照して、測定光学系10において、サンプルSからの測定干渉光は、対物レンズ12で結像した後にイメージング分光器14に入射する。
イメージング分光器14は、サンプルSに近い順に、スリット142と、第1レンズ144と、回折格子146と、第2レンズ148とを含む。
スリット142は、対物レンズ12を介して入射した測定干渉光のビーム断面を所定形状に整形する。スリット142の長手方向の長さは、サンプルS上に生じる測定ライン24に応じたものに設定され、スリット142の短手方向の幅は回折格子146の分解能などに応じて設定される。
第1レンズ144は、典型的には、コリメートレンズからなり、スリット142を通過した測定干渉光を平行光に変換した上で、回折格子146へ導く。
回折格子146は、測定干渉光を当該測定干渉光の長手方向とは直交する方向に波長展開する。より具体的には、回折格子146は、対物レンズ12およびスリット142を通過してきたライン状の測定干渉光を、ライン方向とは直交する方向に波長展開する。回折格子146による波長展開によって、測定ライン24の長手方向とその長手方向と直交する方向とに対応する2次元画像150が撮像部16の撮像素子160の受光面に生じる。撮像部16は、回折格子146により波長展開された測定干渉光を受光して2次元画像を出力する。図3には、回折格子146として透過型回折格子を採用した例を示すが、反射型回折格子を採用してもよい。
以下の説明においては、サンプルS上の測定ライン24の長手方向に対応する2次元画像150の方向を「位置方向」と称し、位置方向と直交する、波長展開された方向を「波長方向」と称する。位置方向の各点が測定ライン24上の各測定点に対応し、波長方向の各点が対応する測定点における各波長に対応する。
図3に示すように、測定光学系10は、サンプルSからの測定干渉光を、対物レンズ12およびスリット142を通じて直線状に取り込む。直線状の測定干渉光は、第1レンズ144にて平行光に変換され、第1レンズ144の後段に配置された透過型または反射型の回折格子146によって、直線状の測定干渉光を位置方向と直交する方向(波長方向)に波長展開(分光)される。後段に配置された第2レンズ148は、波長展開された測定干渉光を、波長情報および位置情報を反映した2次元的な光学スペクトルとして結像する。2次元的な撮像素子160は結像された像を受光する。
以下の説明においては、撮像素子160の受光面は、波長方向の分解能としてCチャネルを有し、位置方向の分解能としてCチャネルを有しているとする。
上述したように、2次元画像150は、波長情報および位置情報を反映する。このような2次元画像150を用いることで、サンプルSに設定される複数の測定点における波長情報を一括して取得できる。
(a4:測定光学系の位置調整機構)
次に、本実施の形態に従う光学測定装置に実装され得る測定光学系10の位置調整機構について説明する。サンプルSを透過した測定干渉光またはサンプルSで反射した測定干
渉光を測定光学系10へ適切に導くためには、サンプルSに対する測定光学系10の位置を適切に調整する必要がある。以下、このような測定光学系10の位置調整機構およびその位置調整機構を用いた位置調整方法のいくつかについて説明する。
図4は、本実施の形態に従う光学測定装置に採用される位置調整機構170の概略構成を示す模式図である。図4に示す位置調整機構170は、スリット142と第1レンズ144との間に配置されている。位置調整機構170は、シャッター172と、観察光を発生する光源174とを含む。観察光は、サンプルSに対する測定光学系10の焦点位置の調整、および、サンプルSに対する測定光学系10の観察位置の調整を行うための光である。
シャッター172は、スリット142および第1レンズ144の光軸と、光源174の光軸との交点に配置される。シャッター172は、開状態および閉状態に相互に遷移が可能である。シャッター172は、開状態において、スリット142からの光を第1レンズ144へ向けて通過させる。一方、シャッター172は、閉状態において、スリット142から第1レンズ144に向かう光路が遮断されるともに、シャッター172の裏面に取り付けられたミラーが光源174からの観察光をスリット142へ向けて反射する。すなわち、シャッター172が閉状態においては、光源174からの観察光はサンプルS上に照射される。
ユーザは、サンプルS上に現れる観察光が状態を見ながら、測定光学系10の位置を調整することで、サンプルSから測定光学系10までの距離(焦点位置)を適切に調整できるとともに、測定光学系10が観察するサンプルS上の位置(測定部位の位置)を適切に調整できる。すなわち、光源174を点灯させるとともに、シャッター172を閉状態にした上で、サンプルS上に現れる観察光のコントラストが最大となるように、測定光学系10の位置や対物レンズ12のフォーカスなどを調整することで、測定光学系10の測定箇所を確認できるとともに、測定光学系10の焦点合わせを実現できる。
測定光学系10の位置を調整するための別の方法として、サンプルSに代えてテストチャートを配置するとともに、そのテストチャートを撮像部16にて撮像することで得られる2次元画像150を評価することで、測定光学系10の位置を調整してもよい。テストチャートとしては、例えば、ロンキー・ルーリングや等間隔に描写された白黒の縞模様などのパターンを用いることができる。このようなパターンを用いた場合には、実際に撮像された2次元画像150に表示する明暗のコントラスト比が最大となるように、サンプルSから測定光学系10までの距離(焦点位置)を調整してもよい。
<B.処理装置の装置構成>
次に、本実施の形態に従う光学測定装置に含まれる処理装置100の装置構成について説明する。本実施の形態に従う処理装置100は、典型的には、汎用コンピュータを用いて実現される。
図5は、本実施の形態に従う処理装置100の概略構成を示す模式図である。図5を参照して、処理装置100は、プロセッサ102と、主メモリ104と、入力部106と、表示部108と、ストレージ110と、通信インターフェイス120と、ネットワークインターフェイス122と、メディアドライブ124とを含む。
プロセッサ102は、典型的には、CPU(Central Processing Unit)およびGPU
(Graphics Processing Unit)などの演算処理部であり、ストレージ110に格納されている1または複数のプログラムを主メモリ104に読み出して実行する。
主メモリ104は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)またはSRAM(Static Random Access Memory)といった揮発性メモリであり、プロセッサ102がプログラ
ムを実行するためのワーキングメモリとして機能する。
入力部106は、キーボードやマウスなどを含み、ユーザからの操作を受付ける。表示部108は、プロセッサ102によるプログラムの実行結果などをユーザへ出力する。
ストレージ110は、ハードディスクやフラッシュメモリなどの不揮発性メモリからなり、各種プログラムやデータを格納する。より具体的には、ストレージ110は、オペレーティングシステム112(OS:Operating System)と、測定プログラム114と、2次元画像データ116と、測定結果118とを保持する。
オペレーティングシステム112は、プロセッサ102がプログラムを実行する環境を提供する。測定プログラム114は、後述するような、本実施の形態に従う膜厚測定方法や屈折率測定方法などを実現する。2次元画像データ116は、測定光学系10の撮像部16にて取得されたデータである。測定結果118は、測定プログラム114の実行によって得られる結果を含む。
通信インターフェイス120は、処理装置100と測定光学系10との間でのデータ伝送を仲介し、測定光学系10から2次元画像データを取得し、あるいは、測定光学系10に対して各種指示を与える。ネットワークインターフェイス122は、処理装置100と外部のサーバ装置との間でのデータ伝送を仲介し、サーバ装置に対して測定結果などを送信し、あるいは、サーバ装置などからプログラムを受信する。
メディアドライブ124は、プロセッサ102で実行されるプログラムなどを格納した記録媒体126(例えば、光学ディスクなど)から必要なデータを読出して、ストレージ110に格納する。なお、処理装置100において実行される測定プログラム114などは、記録媒体126などを介してインストールされてもよいし、ネットワークインターフェイス122などを介してサーバ装置からダウンロードされてもよい。
測定プログラム114は、オペレーティングシステム112の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。そのような場合、当該モジュールを含まない測定プログラム114についても本発明の技術的範囲に含まれる。測定プログラム114は、他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。
なお、処理装置100のプロセッサ102が測定プログラム114を実行することで提供される機能の全部または一部を専用のハードウェアによって実現してもよい。
<C.光学特性測定方法の概要>
次に、図1または図2に示すイメージング分光器を含む光学測定装置に用いた光学特性測定方法の概要について説明する。本実施の形態に従う光学測定装置は、波長情報および位置情報を含む2次元画像150を用いてサンプルSの膜厚の面内分布といった光学特性を測定する。
イメージング分光器を用いてサンプルSの膜厚の面内分布を測定する場合には、複数の測定点がライン状に配置されるため、測定光学系10に対する位置関係が測定点間で異なる。
図6は、本実施の形態に従う光学測定装置の測定光学系10への測定干渉光の入射を説
明するための図である。図6を参照して、サンプルS上に生じる測定ライン24の中心部からの測定干渉光Lcは、測定光学系10の光軸とほぼ同様の光路を伝搬する。一方、測定ライン24の端部からの測定干渉光Leは、ある入射角θをもって測定光学系10に入射することになる。このような入射角θの存在によって、測定ライン24上の測定点の間では、2次元画像150に現れる情報が異なったものとなる。
したがって、本実施の形態に従う光学特性測定方法においては、サンプルSからの測定干渉光が測定光学系10に入射する際の入射角θを考慮する。すなわち、サンプルSの膜厚の面内分布を測定する場合には、実質的に、測定光学系10から出力される2次元画像150の位置方向の情報に対して補正を行う。より具体的には、後述するように、処理装置100は、測定光が照射される測定対象の各測定点に対応する2次元画像150上の領域に関連付けて、各測定点から測定光学系10への入射角に応じた補正要素を算出する。そして、処理装置100は、2次元画像150に含まれる各ピクセル値に対して対応する補正要素を適用した上で、サンプルSの光学特性を算出する。
さらに、サンプルSによっては、サンプルSの屈折率が波長特性を有することになる。この場合には、このような波長特性を考慮する。すなわち、サンプルSの膜厚の面内分布を測定する場合には、実質的に、測定光学系10から出力される2次元画像150の波長方向の情報に対して補正を行うようにしてもよい。
説明の便宜上、(1)測定干渉光の入射角の影響、および、(2)サンプルSの屈折率の波長特性、の両方を考慮した光学特性測定方法について詳述するが、(2)サンプルSの屈折率の波長特性については、考慮しなくてもよい場合もある。
以下、本実施の形態に従う光学特性測定方法の典型例として、サンプルSの膜厚(あるいは、膜厚の面内分布)を測定する膜厚測定方法、および、サンプルSの屈折率を測定する屈折率測定方法について説明する。しかしながら、本実施の形態に従う光学特性測定方法は、膜厚および/または屈折率を測定する応用だけではなく、任意の光学特性の測定に応用が可能である。
<D.膜厚測定方法の理論的説明>
次に、本実施の形態に従う膜厚測定方法の理論的説明を行う。
図7は、本実施の形態に従う膜厚測定方法の原理を説明するための図である。図7(A)を参照して、空気(媒質0)中に薄膜のサンプル(膜厚d)が配置されている場合を考える。サンプルS(媒質1)内に生じる多重反射を考慮した場合の、強度透過率T(1−R)および強度反射率Rは、それぞれ以下の(1)式および(2)式のようになる。
但し、nはサンプルS(媒質1)の屈折率を示し、nは空気(媒質0)の屈折率を示し、λは波長を示す。また、上式において、振幅反射率r01は、媒質0→媒質1→媒質0の光路における振幅反射率を示す。図7(A)に示すサンプルSを光が伝搬すること
で生じる位相差因子βは、以下の(3)式のように示すことができる。
ここで、図7(B)に示すように、サンプルSに対する光の入射角がθである場合を考慮すると、サンプルSに生じる光の屈折角はθとなる。ここで、入射角θと屈折角θとの間には、n・sinθ=n・sinθの関係(スネルの法則)が成立する。ここで、入射角θと屈折角θとの関係を利用して、以下の(4)式に示すような波数Kを導入する。波数Kは、膜厚を測定するためのフーリエ変換を容易化するための媒介変数に相当する。波数Kを用いることで、サンプルS内の位相角βは以下の(5)式に示すように規定できる。
上述の(4)式に示す波数Kは入射角θを含んでおり、このような波数Kを用いることで、各測定点に対応する入射角θの相違を考慮した膜厚を算出できる。
さらに、位相角βについてのフーリエ変換を考えると、位相因子(Phase Factor)であるcos2βは強度反射率Rに対して非線形となり、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)などをそのまま適用することができない。そこで、独自の変数を導入することで、位相因子cos2βについて線形性を有する関数へ変換した上で、フーリエ変換を実施する。一例として、位相因子cos2βについての一次式となる、波数変換透過率T’(≡1/T)、あるいは、波数変換反射率R’(≡R/(1−R))を導入する。具体的には、上述の(1)式および(2)式から波数変換透過率T’および波数変換反射率R’は、以下の(6)式および(7)式のように導出される。
さらに、(6)式に示される波数変換透過率T’、または、上述の(7)式に示される波数変換反射率R’をフーリエ変換することで得られるパワースペクトルP(K)には、サンプルSの膜厚dに対応する位置にピークが現れることになる。すなわち、パワースペクトルP(K)に現れるピークの位置を算出することで、サンプルSの膜厚dを決定する。
波数変換透過率T’および波数変換反射率R’の詳細については、特開2009−092454号公報(特許文献1)などを参照のこと。
このように、各測定点から測定光学系への入射角に応じた補正要素としては、測定光の波長λおよびサンプルSの屈折率nを含む媒介変数である波数Kを含む。なお、波数Kは、サンプルSの屈折率の波長依存性を考慮して算出されてもよい。そして、注目する測定点に対応する2次元画像のピクセル値を位相因子に対して線形化するための関係式(例えば、R/(1−R)、1/Tなど)に従って変換した値の列(波数変換透過率分布T’(i,j)または波数変換反射率分布R’(i,j))を、対応する波数K(i,j)の列についてフーリエ変換することで、膜厚dが決定される。
以上のように、サンプルSへの測定干渉光の入射角θがゼロとみなすことができない場合において、入射角θを含む波数Kを導入することで、入射角θの影響を考慮したサンプルSの膜厚を算出することができる。
次に、入射角θの算出方法について説明する。上述したように、本実施の形態に従う膜厚測定方法においては、各測定点に対応する入射角θを算出する必要がある。各測定点は、測定光学系10から出力される2次元画像150のピクセル単位または隣接する複数のピクセルをまとめたピクセル集合単位で設定できる。
図8は、本実施の形態に従う光学測定装置において取り扱われる2次元画像150の一例を示す図である。撮像素子160の受光面と2次元画像150とは一対一に対応するので、撮像素子160の受光面上の任意の位置を示す座標は、2次元画像150の対応する位置を示すことになる。
本来は、撮像素子160の各チャネルに対応するについて、入射角θを算出する必要がある。測定光学系10の画角φに対して撮像素子160のチャネル数が十分に大きい場合には、隣接する複数のチャネルをまとめた集合を2次元画像150の1つのピクセルとみなして、ピクセル毎に入射角θを算出するようにしてもよい。このような隣接する複数のチャネルをまとめることを、以下では「ビニング」とも称す。
図9は、本実施の形態に従う膜厚測定方法に用いる入射角θを算出する際のビニング処理を説明するための図である。図9に示すように、撮像素子160を構成する複数のチャネルのうち、位置方向に配置された所定数の隣接するチャネルをまとめて処理する。撮像素子160は、Cチャネル×Cチャネルの分解能を有しており、このチャネル数に相当する2次元画像150を出力できる。但し、隣接するチャネルをまとめることで、処理の高速化を実現する。
位置方向においてまとめられるチャネル数を「ビニング数B」とも称す。ビニング数Bは、チャネル数Cの公約数であることが好ましい。ビニング数Bを「1」に設定することで、撮像素子160のチャネル数に応じた入射角θが算出されることになる。
なお、図9には、位置方向において複数のチャネルを1つのピクセルに設定している例を示すが、波長方向についても複数のチャネルを1つのピクセルに設定してもよい。すなわち、波長方向についてのビニング数Bを導入してもよい。
以下の説明においては、2次元画像150に規定される複数のピクセルのうち、任意のピクセルの位置を、波長方向ピクセル番号(以下、「変数i」で代表する)と位置方向ピクセル番号(以下、「変数j」または「変数j’」で代表する)との組み合わせで規定する。ここで、位置方向ピクセル番号jは、1≦j≦C/Bを満たす整数となる。
図8(A)には、紙面左下を原点座標(1,1)とした場合の座標系を示す。この場合には、紙面右上の座標が(C/B,C/B)となる。図8(B)には、位置方向の中心を原点座標(1,0)とした場合の座標系を示す。図8(B)に示す座標系において、位置方向の中心、すなわち座標(1,0)と座標(C/B,0)とを結ぶ直線上にあるピクセルに対応する入射角θはゼロとなる。ここで、位置方向ピクセル番号j’と位置方向ピクセル番号jとの間には、j’=j−C/2Bとの関係が成立する。
図8(A)に示す座標系は、2次元画像150に含まれる波長情報および位置情報に対する処理を簡素化できる利点があり、図8(B)に示す座標系は、各測定点に対応する入射角θを算出する際には処理を簡素化できる利点がある。
以下、2次元画像150の位置方向ピクセル番号j(あるいは、位置方向ピクセル番号j’)に対応する測定点の入射角θについて検討する。
図10は、本実施の形態に従う膜厚測定方法に用いる入射角θの算出方法を説明するための図である。図10には、一例として、図1に示す透過系の光学測定装置1において、測定ラインを円弧(測定ライン24’)とみなした場合と、直線(測定ライン24)とみなした場合とを示す。いずれかの場合を採用して、入射角θが算出される。
図10において、bは撮像素子160の位置方向の長さを示し、fは対物レンズ12の焦点距離を示し、hは対物レンズ12の高さhを示す。なお、長さb、焦点距離fおよび高さhは同じ単位(例えば、mm)であるとする。また、φは測定光学系10の画角φ(=Atan(b/2f))を示す。
測定ラインを円弧(測定ライン24’)とみなした場合には、位置方向ピクセル番号j’に対応する入射角θは、以下の(8−1)式のように導出される。(8−1)式は、画角φおよび位置方向の中心をゼロと設定した場合の位置方向ピクセル番号j’を用いて入射角θを規定したものである。ここで、画角φについての関係式(φ=Atan(b/2f))、および、位置方向ピクセル番号についての関係式(j’=j−C/2B)を用いて、(8−1)式を変形すると、(8−2)式を導出できる。
また、測定ラインを直線(測定ライン24)とみなした場合には、位置方向ピクセル番号j’に対応する入射角θは、以下の(9−1)式のように導出される。(9−1)式は、画角φおよび位置方向の中心をゼロと設定した場合の位置方向ピクセル番号j’を用いて入射角θを規定したものである。ここで、画角φについての関係式(φ=Atan(b/2f))、および、位置方向ピクセル番号についての関係式(j’=j−C/2B)を用いて、(9−1)式を変形すると、(9−2)式を導出できる。
なお、上述の(8−1)式,(8−2)式,(9−1)式,(9−2)式においては、撮像素子160の各チャネルの大きさは無視して点として扱っている。観測される透過光または反射光は、厳密には1チャネルの大きさに相当する角度変化を積分した値で表現されるべきであるが、1チャネルの大きさは撮像範囲の長さに比べれば十分小さく、角度変化は無視できるため、1点からの透過光または反射光の値で代表させることができる。
上述の(式4)において、n=1(空気の屈折率)とし、二次元画像の波長方向ピクセル番号iおよび位置方向ピクセル番号jを用いて波数Kを規定すると、以下の(10)式を導出できる。
(10)式において、2次元画像150のピクセル位置と波長との関係を示す波長変換式λ(i,j)は、測定光学系10を波長校正することにより事前に決定することができる。ここで、波長校正は、位置方向ピクセル番号jの各々について、波長方向ピクセル番号iの各々に対して対応する波長λの値を割り当てる作業を含む。
サンプルSの屈折率n(i,j)(すなわち、屈折率n(λ))は、光学定数解析が可能な測定装置(例えば、顕微分光膜厚計など)で事前に取得できる。また、(10)式において、各測定点に対応する入射角θ(j)は、上述の(8−2)式または(9−2)式に従って規定される。これらの値を(10)式に代入することで、ピクセル位置(i,j)における波数K(i,j)を決定できる。このように、波数Kは、2次元画像のピクセル位置(i,j)毎に、対応する入射角θ(j)の大きさを考慮して算出される。
ピクセル位置(i,j)における波数K(i,j)と実測値との関係に基づいて、(1)測定干渉光の入射角の影響、および、(2)サンプルSの屈折率の波長特性、の両方を考慮した膜厚を決定できる。
より具体的な算出手順としては、本実施の形態に従う光学測定装置を用いて、サンプルSの透過率分布T(i,j)または反射率分布R(i,j)を取得する。続いて、位置方向ピクセル番号j毎に、横軸を波数K(i,j)とし、縦軸を波数変換透過率分布T’(i,j)または波数変換反射率分布R’(i,j)とした波数分布特性を生成する。生成した波数分布特性をフーリエ変換することでパワースペクトルP(K)を算出し、その算出したパワースペクトルP(K)に現れるピークなどに基づいて、入射角および屈折率の波長依存性を考慮に入れたサンプルSの膜厚分布(膜厚の面内分布)を決定できる
上述したように、波数Kは、測定ライン上の各測定点における入射角θ(j)、波長分散を考慮した屈折率n(λ)、波長λに基づいて、上述したような式に従って、2次元の受光面を有する撮像素子のピクセル位置(i,j)毎に算出される。そして、実測により得られるサンプルSの透過率分布T(i,j)または反射率分布R(i,j)から、位相因子cos2βに対して線形化するための関係式(例えば、R/(1−R)、1/Tなど)を用いて、波数変換透過率分布T’(i,j)または波数変換反射率分布R’(i,j)を生成する。このような生成された波数変換透過率分布T’または波数変換反射率分布T’に波数K(i,j)を適用することで、フーリエ変換されたパワースペクトルP(m,j)(但し、パラメータmはパワースペクトルの横軸に相当する離散値)を取得できる。パワースペクトルP(m,j)に現れるピークに基づいてサンプルSの状各測点における膜厚値を算出する。
なお、波数分布特性から振幅の大きな波数成分(ピーク)を特定する方法としては、典型的には、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)などの離散的なフーリエ変換を用いる方法、および、最大エントロピー法(Maximum Entropy Method;以下、「MEM」とも称す。)などの最適化法のいずれかを採用できる。なお、離散的なフーリエ変換を用いる場合には、その周波数領域の離散値としては、512,1024,2048,4096,・・・といった2のべき乗が用いられる。
<E.膜厚測定方法の具体例>
次に、上述の膜厚測定方法の理論的説明に基づく膜厚の測定方法について説明する。以下の説明においては、波数変換透過率T’または波数変換反射率R’をフーリエ変換することで得られるパワースペクトルP(K)に現れるピークに基づいて、サンプルSの膜厚を決定する方法(いわゆるFFT法)と、取得された波長分布特性(透過率スペクトルまたは反射率スペクトルの実測値)と、入射角、屈折率、波長、膜厚をパラメータとして含むモデル式(理論式)によって算出される波長分布特性との間の形状比較(フィッティング)を行うことにより、サンプルSの膜厚を決定する方法(いわゆる最適化法)とについて説明する。
これらの膜厚測定方法は、いずれか一方のみを実装してもよいが、サンプルSの膜厚や材質などによって、適宜選択可能になっていることが好ましい。
(e1:膜厚測定方法の処理手順(その1))
まず、本実施の形態に従う膜厚測定方法の処理手順(その1)について説明する。膜厚測定方法の処理手順(その1)は、波数KについてのパワースペクトルP(K)に現れるピークに基づいて、サンプルSの膜厚を決定する方法である。
図11は、本実施の形態に従う膜厚測定方法の処理手順(その1)を示すフローチャートである。図12は、図11に示す膜厚測定方法の処理手順(その1)における処理内容を説明するための図である。
図11を参照して、まず、処理装置100は、測定光学系10に入射する測定干渉光について、各測定点に対応する入射角θを算出する(ステップS100)。
具体的には、処理装置100は、測定ライン上に設定される各測定点(撮像素子160のチャネル数およびビニング数に依存して決定される2次元画像150の位置方向の各ピクセルに相当)に対応する入射角θを位置方向ピクセル番号j毎に算出する。すなわち、処理装置100は、上述の(10)式中のθ(j)をすべての位置方向ピクセル番号
jについて算出する。なお、θ(j)は、ラジアン値であってもよいし、三角関数の値(例えば、sinθ(j)またはcosθ(j))であってもよい。すなわち、入射角の大きさを示す値であれば、その後の演算処理に応じたどのような値が採用されてもよい。
ステップS100の結果得られる各測定点に対応する入射角θの値は、光学測定装置の設定または構成が同一である限り再計算する必要はない。そのため、各測定点に対応する入射角θが予め算出されている場合には、ステップS100の処理をスキップしてもよい。
処理装置100は、光学定数解析が可能な測定装置(例えば、顕微分光膜厚計など)でサンプルSの測定結果などから、サンプルSの波長分散を考慮した屈折率n(λ)を取得する(ステップS102)。
なお、ステップS102において取得されたサンプルSの屈折率n(λ)は、サンプルSの材質が同一である限り再取得する必要はない。そのため、先に取得された屈折率n(λ)に対応するサンプルSの同一性が維持される限りにおいて、ステップS102の処理をスキップしてもよい。また、波長によらず屈折率を一定とみなすことができる場合には、屈折率n(λ)として一定値を設定してもよい。
処理装置100は、測定光学系10に対する波長校正の結果などから、2次元画像150のピクセル位置と波長λとの関係を示す波長変換式λ(i,j)を算出する(ステップS104)。ステップS104において、波長λは、2次元画像150のピクセル位置(i,j)と対応付けられる。すなわち、波長λは、2次元画像150のピクセル位置(i,j)をパラメータとしてマトリックス状に表現できる(すなわち、波長λ=λ(i,j))。
なお、ステップS104において算出される波長変換式λ(i,j)は、基本的には、測定光学系10の設定または構成が同一である限り再算出する必要はない。そのため、先に算出された波長変換式λ(i,j)が有効に利用できる限りにおいて、ステップS104の処理をスキップしてもよい。
また、ステップS100,S102,S104の処理の実行順序は特に限定されることはない。また、ステップS100,S102,S104の処理の実行タイミングは別々であってもよい。
続いて、処理装置100は、上述の(4)式に示す波数Kを2次元画像150のピクセル位置(i,j)について展開する。すなわち、処理装置100は、2次元画像150のピクセル位置(i,j)の各々についての波数K(i,j)を算出する(ステップS106)。
上述の(4)式に示すように、本実施の形態に従う膜厚測定方法においては、波長λ、屈折率n、入射角θを変数とする波数Kを導入する。
波数Kに含まれる変数のうち、屈折率nは波長λの関数である。波長λは波長変換式λ(i,j)により規定できるので、屈折率nは、2次元画像150のピクセル位置(i,j)をパラメータとして規定できる(すなわち、屈折率n=n(λ)=n(i,j)および波長λ=λ(i,j))。また、入射角θは、ステップS100において算出された、各測定点に対応する入射角θを用いることができる。入射角θは、位置方向ピクセル番号jのみで規定されることになる(すなわち、入射角θ=θ(j)
)。
以上のように、波長λ、屈折率n、入射角θは、いずれも2次元画像150の各ピクセルに対応する測定点(i,j)を用いて規定できるので、ピクセル位置(i,j)を指定することで、それぞれの値は一意に決定される。ピクセル位置(i,j)毎に決定される波長λ、屈折率n、入射角θの値を適用して、処理装置100は、ピクセル位置(i,j)毎の波数Kの値を示す、波数K(i,j)を生成する。図12に示すように、生成された波数K(i,j)は、2次元画像150の各ピクセルに対応する。
以上のステップS100〜S106の処理は、準備工程に相当する。
処理装置100は、光学測定装置1にサンプルSをセットするとともに、サンプルSに測定干渉光を照射した状態で撮像された、2次元画像150を取得する(ステップS110)。すなわち、処理装置100は、サンプルSの測定ライン24上の複数の測定点についての、透過率分布T(i,j)(または、反射率分布R(i,j))の実測値を取得する。図12に示すように、波長方向および位置方向を有する2次元画像150が取得される。ここで、特定の位置方向ピクセル番号jについて、波長方向が波長λに対応する。
続いて、処理装置100は、位置方向ピクセル番号j=1に設定する(ステップS112)。位置方向ピクセル番号jを設定することは、図12に示すように、2次元画像150の特定の位置方向ピクセル番号jに対応するピクセル列を対象にすることを意味する。
処理装置100は、ステップS106において算出した波数K(i,j)を参照して、取得した透過率分布T(i,j)(または、反射率分布R(i,j))から、横軸を波数K(i,j)とし、縦軸を波数変換透過率分布T’(i,j)(または、波数変換反射率分布R’(i,j))とした波数分布特性を生成する(ステップS114)。
より具体的には、図12に示すように、処理装置100は、波数K(i,j)から現在の位置方向ピクセル番号jに対応する列の値を抽出し、2次元画像150から抽出したピクセル列の値に適用する。
このように、処理装置100は、取得された波長分布特性(各波長と当該波長における透過率または反射率の値との対応関係)を、波数分布特性に従って算出される透過率または反射率の変換値との対応関係に変換する。波数分布特性とは、入射角、屈折率、波長をパラメータとして含む関数により決定される波数と、当該波数における透過率または反射率の値との対応関係を含む。あるいは、波数分布特性とは、波数と位相因子cos2βに対して線形化するための関係式(例えば、R/(1−R)、1/Tなど)に従って算出される透過率または反射率の変換値との対応関係を含む。
続いて、処理装置100は、ステップS114において生成した、横軸を波数K(i,j)とする波数分布特性を、波数K(i,j)についてフーリエ変換することで、パワースペクトルP(K)を生成する(ステップS116)。すなわち、処理装置100は、注目する測定点に対応する2次元画像150のピクセル値を位相因子に対して線形化するための関係式に従って変換した値の列を、対応する波数の列についてフーリエ変換する。
処理装置100は、ステップS116において生成したパワースペクトルP(K)に現れるピーク位置を算出することで、現在の位置方向ピクセル番号jに対応する測定点についての膜厚d(j)を算出する(ステップS118)。すなわち、処理装置100は、フーリエ変換により得られるパワースペクトルP(K)に現れるピーク位置に基づいて注目する測定点における膜厚を決定する。なお、フーリエ変換に代えて、最適化法を用
いて、振幅の大きな波数成分(すなわち、膜厚d(j))を決定してもよい。
処理装置100は、現在の位置方向ピクセル番号jが最終値であるか否かを判断する(ステップS120)。現在の位置方向ピクセル番号jが最終値でなければ(ステップS120においてNO)、処理装置100は、現在の位置方向ピクセル番号jを1だけインクリメントして(ステップS122)、ステップS114以下の処理を繰返す。
現在の位置方向ピクセル番号jが最終値であれば(ステップS120においてYES)、処理装置100は、位置方向ピクセル番号jが1から最終値までの各々において算出された膜厚d(j)を集合させて、サンプルSの測定ライン24上の膜厚分布を生成する(ステップS124)。すなわち、処理装置100は、複数の測定点について決定された膜厚を集合して膜厚分布として出力する。
処理装置100は、サンプルSに対する膜厚測定の終了条件が満たされているか否かを判断する(ステップS126)。サンプルSに対する膜厚測定の終了条件が満たされていなければ(ステップS126においてNO)、処理装置100は、ステップS110以下の処理を繰返す。
これに対して、サンプルSに対する膜厚測定の終了条件が満たされていれば(ステップS126においてYES)、処理装置100は、ステップS124において順次算出された膜厚分布を統合して、サンプルSの測定面における膜厚分布(膜厚の面内分布)として出力する(ステップS128)。そして、処理は終了する。
上述の膜厚測定方法の処理手順(その1)においては、測定点から測定光学系10への入射角θに応じた補正要素として、波数Kに着目して説明したが、補正要素は、これに限られるものではない。例えば、補正要素は、上述した波数変換透過率T’(≡1/T)、あるいは、波数変換反射率R’(≡R/(1−R))を含み得る概念である。
(e2.測定例)
次に、本実施の形態に従う膜厚測定方法(その1)により得られた測定例を示す。
図14は、本実施の形態に従う膜厚測定方法により得られた膜厚トレンドの一例を示す図である。サンプルSとして、1mm角(外寸:1mm×1mm)のポリエチレン薄膜を用いた。
入射角θの補正あり(本実施の形態)および補正なしの2パターンについて、サンプルSの測定点(すなわち、入射角θ)を順次変化させて、それぞれのパターンでの膜厚を測定した。なお、対物レンズ12としては、焦点距離f=16mmのレンズを使用した。
屈折率nは、顕微分光膜厚計により実測したポリエチレン薄膜の屈折率の波長分布を採用した。図13は、ポリエチレン薄膜の屈折率n(λ)の波長分布の一例を示す図である。図13に示す屈折率n(λ)は、一例として、以下の(11)式に示すようなCauchyの分散式が用いられている。
なお、図13に示す例においては、係数C=1.533731,C=429.0333,C=2.09247×10となっている。
図14には、入射角θの変化に伴う測定された膜厚の変化が示されている。図14に示されるように、入射角θを考慮することで、膜厚トレンドがよりフラットになっていることが分かる。すなわち、サンプルSの膜厚分布(膜厚の面内分布)をより正確に測定できることが示されている。
(e3.シミュレーション例)
例えば、上述の(1)式,(5)式,(8−2)式,(10)式により、各測定点についての透過率スペクトルT(λ)の理論値を算出できる。図15は、本実施の形態に従う理論式に従う透過率スペクトルを示す2次元画像(1200ピクセル×1920ピクセル)の一例を示す図である。図15に示す透過率スペクトルを示す2次元画像は、膜厚d=10[μm](一律)とし、振幅反射率|r01|=0.2とした場合に得られたものである。
屈折率nは、上述の図13に示すような顕微分光膜厚計により実測したポリエチレン薄膜の屈折率の波長分布を採用した。図13に示す屈折率n(λ)は、一例として、上述の(11)式に示すようなCauchyの分散式が用いられている。
なお、図13に示す例においては、係数C=1.533731,C=429.0333,C=2.09247×10となっている。
図16は、図15に示す2次元画像(理論値)における位置方向ピクセル番号jに対応する透過率スペクトルT(λ)を示すグラフである。図16には、位置方向ピクセル番号j=1,100,200,・・・,1200の各ラインにおける透過率スペクトルT(λ)が示されている。図16において、透過率スペクトルT(λ)が一致していないのは、各測定点に対応する入射角θが異なることが理由である。
図17は、図16に示す透過率スペクトルT(λ)から算出した波数変換透過率T’(K)を示すグラフである。図17(A)には、すべての位置方向ピクセル番号jについて、入射角θをゼロと仮定した波数Kを用いて算出された波数変換透過率T’(K)を示す。図17(B)には、すべての位置方向ピクセル番号jに応じた入射角θを考慮した波数Kを用いて算出された波数変換透過率T’(K)を示す。
図16に示す透過率スペクトルT(λ)においては、位置方向ピクセル番号j(すなわち、入射角θ)の相違によって、干渉波形の周期が異なっている。そのため、入射角θの相違を考慮していない波数Kを用いた場合には、図17(A)に示すように、波数変換透過率T’(K)も不揃いであることが分かる。
一方、位置方向ピクセル番号jに応じた入射角θを考慮した波数Kを用いることで、図17(B)に示すように、すべての位置方向ピクセル番号jについて、波数変換透過率T’(K)が揃っていることが分かる。位置方向ピクセル番号jにかかわらず、波数変換透過率T’(K)が実質的に同一であるので、いずれの波数変換透過率T’(K)からも正しい膜厚を算出できる。
図18は、図17に示す波数変換透過率T’(K)から算出された膜厚トレンドの一例を示す図である。図18を参照して、図17(A)に示す入射角補正を行わない場合には、入射角がゼロとなる位置方向ピクセル番号j=600において膜厚が最大となり、両端に向かうにしたがって入射角θが大きくなるので、膜厚は減少している。
これに対して、図17(B)に示す入射角補正が行われる場合には、すべての位置方向ピクセル番号jにおいて、本来の膜厚である10[μm]が正しく算出されていることが分かる。
以上のように、本実施の形態に従う理論式を採用することで、測定点に対応する入射角θを考慮した物理特性を正確に再現できる。すなわち、上述したような数式を用いることで、正確なフィッティングを実現できる。
(e4:膜厚測定方法の処理手順(その2))
上述の膜厚測定方法の処理手順(その1)においては、波数Kを導入した上で、測定された2次元画像150から算出される波数分布特性をフーリエ変換することで、膜厚を算出する方法について例示した。このような方法に代えて、理論的に生成される2次元画像と測定された2次元画像150との間でフィッティングを行うことで、膜厚を算出する方法について説明する。
図19は、本実施の形態に従う膜厚測定方法の処理手順(その2)における処理内容を説明するための模式図である。図19に示す各エレメントは、典型的には、処理装置100のプロセッサ102が測定プログラム114を実行することで実現される。
図19を参照して、処理装置100は、バッファ152,156と、モデル化モジュール154と、フィッティングモジュール158とを含む。図19に示す構成においては、モデル化モジュール154が透過率スペクトルT(λ)(または、反射率スペクトルR(λ))の理論値を算出するととともに、取得された透過率スペクトルT(λ)(または、反射率スペクトルR(λ))の実測値との間で相関関係が高くなるように、理論値を規定する膜厚dが調整される。最終的に、透過率スペクトルT(λ)(または、反射率スペクトルR(λ))の実測値との間で最も相関関係が高い透過率スペクトルT(λ)(または、反射率スペクトルR(λ))を生じる膜厚が測定結果として出力される。
説明の便宜上、透過率スペクトルまたは反射率スペクトルの実測値については、添え字「meas」を付加し、透過率スペクトルまたは反射率スペクトルの理論値については、添え字「theo」を付加する。
より具体的には、バッファ152には、測定光学系10にて撮像される2次元画像150(実測値)が格納される。一方、バッファ156には、モデル化モジュール154にて生成される2次元画像(理論値)が格納される。フィッティングモジュール158は、バッファ152に格納されている2次元画像150(実測値)と、バッファ156に格納されている2次元画像(理論値)との間で形状比較(フィッティング)を行って類似度を算出するとともに、算出された類似度が最大となるように、パラメータ更新指令をモデル化モジュール154へ出力する。類似度としては、相関値または相関行列を用いる場合について例示する。
フィッティングモジュール158は、算出される類似度が予め定められたしきい値以上になると、そのときの膜厚d(j)を測定結果として出力する。
モデル化モジュール154には、膜厚d(j)の初期値と、サンプルSの波長分散を考慮した光学定数(屈折率n(λ)と消衰係数k(λ))と、測定光学系10の波長校正によって決定される波長変換式λ(i,j)と、測定ライン24上の各測定点についての入射角θ(j)が入力される。モデル化モジュール154は、入力された情報に基づいて、ピクセル位置(i,j)および膜厚d(j)について、透過率分布Ttheo
(i,j,d(j))または反射率分布Rtheo(i,j,d(j))を算出する。また、モデル化モジュール154は、フィッティングモジュール158からのパラメータ更新指令に従って、膜厚d(j)を適宜更新する。透過率分布Ttheoおよび反射率分布Rtheoの詳細については、後述の(20)式なども参照されたい。
屈折率nは、上述の図13に示すような顕微分光膜厚計により実測したポリエチレン薄膜の屈折率の波長分布を採用した。図13に示す屈折率n(λ)は、一例として、上述の(11)式に示すようなCauchyの分散式が用いられている。
なお、図13に示す例においては、係数C=1.533731,C=429.0333,C=2.09247×10となっている。
図20は、本実施の形態に従う膜厚測定方法の処理手順(その2)を示すフローチャートである。図20を参照して、まず、処理装置100は、測定光学系10に入射する測定干渉光について、各測定点に対応する入射角θを算出する(ステップS100)。すなわち、各測定点から測定光学系への入射角に応じた補正要素としては、各測定点に対応する入射角の大きさを示す値が用いられる。
次に、処理装置100は、光学定数解析が可能な測定装置(例えば、顕微分光膜厚計など)でサンプルSの測定結果などから、サンプルSの波長分散を考慮した屈折率n(λ)を取得する(ステップS102)。続いて、処理装置100は、測定光学系10に対する波長校正の結果などから、2次元画像150のピクセル位置と波長λとの関係を示す波長変換式λ(i,j)を算出する(ステップS104)。
このステップS100〜S104の処理は、図11に示す膜厚測定方法の処理手順(その1)のフローチャートにおけるステップS100〜S104と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。以上のステップS100〜S104の処理は、準備工程に相当する。
処理装置100は、光学測定装置1にサンプルSをセットするとともに、サンプルSに測定光を照射した状態で撮像された、2次元画像150を取得する(ステップS130)。すなわち、処理装置100は、透過率分布Tmeas(i,j)(または、反射率分布Rmeas(i,j))を取得する。
処理装置100は、ステップS100〜S104において算出された情報および膜厚d(j)の初期値に基づいて、透過率分布Ttheo(i,j,d(j))(または、反射率分布Rtheo(i,j,d(j)))を算出する(ステップS132)。すなわち、処理装置100は、各測定点の膜厚d(j)を変動パラメータとするとともに、サンプルSの屈折率nと、各測定点に対応する入射角の大きさに応じた値と、各測定点と2次元画像のピクセル位置(i,j)との対応関係とに基づいて、2次元画像150に対応する各ピクセルの理論値を算出する。
続いて、処理装置100は、ステップS130において取得した透過率分布Tmeas(i,j)(または、反射率分布Rmeas(i,j))と、ステップS132において算出した透過率分布Ttheo(i,j,d(j))(または、反射率分布Rtheo(i,j,d(j)))との間で形状比較を行うことで、両者の類似度を算出する(ステップS134)。
より具体的には、処理装置100は、透過率分布Tmeas(i,j)(または、反射率分布Rmeas(i,j))と、透過率分布Ttheo(i,j,d(j))(または、反射率分布Rtheo(i,j,d(j)))との間で相関行列または相関係数を
算出する。相関行列を用いることで、位置方向ピクセル番号j毎の類似度を算出できる。但し、位置方向の膜厚d(j)のばらつきが十分に小さいと推定される場合には、d(j)=dとみなして、スペクトル全体をまとめた1次元の値(すなわち、相関値)を算出してもよい。
処理装置100は、ステップS134において算出した類似度が予め定められたしきい値以上であるか否かを判断する(ステップS136)。算出した類似度が予め定められたしきい値未満であれば(ステップS136においてNO)、処理装置100は、膜厚d(j)を更新した上で(ステップS138)、ステップS132以下の処理を繰返す。膜厚d(j)に対する更新は、位置方向ピクセル番号j毎に、対応する類似度の大きさに応じて行ってもよいし、一律に所定量を加算または減算するようにしてもよい。
算出した類似度が予め定められたしきい値以上であれば(ステップS136においてYES)、処理装置100は、現在の膜厚d(j)を集合させて、サンプルSの測定ライン24上の膜厚分布として出力する(ステップS140)。
このように、処理装置100は、算出される各ピクセルの理論値と2次元画像150の各ピクセル値との類似度が高くなるように、変動パラメータを調整することで、各測定点の膜厚を決定する。すなわち、算出される理論波形と実際に測定された実測波形との間で、相似関係に近い相関性が見出されるように、変動パラメータを調整する。
続いて、処理装置100は、サンプルSに対する膜厚測定の終了条件が満たされているか否かを判断する(ステップS142)。サンプルSに対する膜厚測定の終了条件が満たされていなければ(ステップS142においてNO)、処理装置100は、ステップS130以下の処理を繰返す。
これに対して、サンプルSに対する膜厚測定の終了条件が満たされていれば(ステップS142においてYES)、処理装置100は、ステップS140において順次算出された膜厚分布を統合して、サンプルSの測定面における膜厚分布(膜厚の面内分布)として出力する(ステップS144)。そして、処理は終了する。
以上のように、膜厚測定方法の処理手順(その2)においては、サンプルSから取得された波長分布特性である、透過率スペクトルまたは反射率スペクトルの実測値と、入射角θ、屈折率n(λ)、波長λ、膜厚d(j)とをパラメータにもつモデル式(理論式)に従って決定される透過率スペクトルまたは反射率スペクトルの理論値との間の形状比較(フィッティング)により、サンプルSの膜厚(あるいは、膜厚分布)を決定する。
より具体的には、透過率スペクトルTtheo(i,j,d(j))(または、反射率分布Rtheo(i,j,d(j)))において、膜厚d(j)を変化させつつ、透過率分布Tmeas(i,j)(または、反射率分布Rmeas(i,j))との間の相関行列(または、相関値)を算出するとともに、最も相関が高い(すなわち、相関係数が最も1に近い)膜厚d(j)を最終結果として出力する。
以上のような処理によって、サンプルSの膜厚分布(膜厚の面内分布)を測定できる。
上述の膜厚測定方法の処理手順(その2)においては、測定点から測定光学系10への入射角θに応じた補正要素として、入射角θを考慮して算出される、透過率分布Ttheo(i,j,d(j))、あるいは、反射率分布Rtheo(i,j,d(j))に着目して説明したが、補正要素は、これに限られるものではない。例えば、補正要素は、上述した波数Kを含み得る概念である。
なお、上述のステップS136およびS138において、透過率分布Ttheo(i,j,d(j))(または、反射率分布Rtheo(i,j,d(j)))について、変動させる膜厚パラメータd(j)の範囲およびピッチを設定して、当該設定された変動範囲内での膜厚値d(j)に対する透過率分布Ttheo(i,j,d(j))(または、反射率分布Rtheo(i,j,d(j)))を予め算出しておく。その上で、予め算出した透過率分布Ttheo(i,j,d(j))(または、反射率分布Rtheo(i,j,d(j)))と実測された透過率分布Tmeas(i,j)(または、反射率分布Rmeas(i,j))との間で相関行列または相関係数を総当たりで算出し、算出された結果のうちから類似度(相関係数)が最も高くなるような膜厚値d(j)を、各測定点での膜厚と決定してもよい。
(e5:多層膜試料)
説明の便宜上、1つの層の膜厚を測定する処理について主として説明したが、これに限らず、多層膜試料の各層の膜厚を測定することができる。また、多層膜試料の各層の屈折率についても測定することができる。
上述の膜厚測定方法の処理手順(その1)において、多層膜試料の各層の膜厚を測定する場合には、波数変換透過率T’または波数変換反射率R’をフーリエ変換することで得られるパワースペクトルP(K)には、各層の膜厚に応じた複数のピークが現れることになる。パワースペクトルP(K)に現れる複数のピークを解析することによって、対象のサンプルを構成する各層の膜厚をそれぞれ算出できる。
また、膜厚測定方法の処理手順(その2)において、多層膜試料の各層の膜厚を測定する場合には、波長分散を考慮した各層の光学定数(屈折率と消衰係数)、および、各層の膜厚を含むモデル式を用いて、各層についてフィッティングを行うことによって、対象のサンプルを構成する各層の膜厚をそれぞれ算出できる。
(e6:インライン測定/オフライン測定)
上述の説明においては、主として、サンプルSの2次元画像の撮像に引き続いて膜厚測定が実施される処理例を示したが、このようなインライン測定あるいはリアルタイム測定に限定されることなく、例えば、サンプルSの2次元画像を順次撮像しておき、事後的に、膜厚トレンド(膜厚の面内分布)を出力するようにしてもよい。
<F.屈折率測定方法>
上述の膜厚測定方法においては、サンプルSの屈折率n(λ)は、顕微分光膜厚計などを用いて事前に測定するものとしたが、本実施の形態に従う光学測定装置を用いることで、サンプルSの屈折率n(λ)を測定することもできる。
(f1:概要)
まず、同一のサンプルSの小片(例えば、1mm角)を測定ライン上の各測定点に配置して当該測定点における実測値(透過率分布Tmeas(i,j)または反射率分布Rmeas(i,j))を順次取得する。すなわち、同一のサンプルSについて、位置方向ピクセル番号j(すなわち、入射角θ)を異ならせた場合の波長方向の透過率スペクトルまたは反射率スペクトルを測定する。
同一のサンプルSから測定された透過率分布Tmeas(i,j)(または、反射率分布Rmeas(i,j))に対して、同一の膜厚dとの事前情報を適用することで、未知の屈折率n(λ)を決定する。
図21および図22は、本実施の形態に従う屈折率測定方法の概要を説明するための模
式図である。図21には、特定の位置方向ピクセル番号jにおける強度分布を用いて、サンプルSの屈折率n(λ)を測定する例を示す。図22には、特定の波長方向ピクセル番号iにおける強度分布を用いて、サンプルSの屈折率n(λ)を測定する例を示す。
図21を参照して、位置方向ピクセル番号jに着目した場合には、サンプルSの屈折率n(λ)を暫定値に設定した上で、特定の位置方向ピクセル番号jにおける透過率分布Tmeas(i,j)(または、反射率分布Rmeas(i,j))から膜厚d(j)(j=j,j,j,・・・)をそれぞれ算出する。ここで、膜厚dは同一であるので、それぞれ算出される膜厚d(j)が一致するように、サンプルSの屈折率n(λ)を決定する。
図22を参照して、特定の波長方向ピクセル番号iに着目した場合には、理論値と実測値との差分に対して、同一の膜厚dとの事前情報を適用することで、未知の屈折率n(λ)を決定する。
より具体的には、まず、透過率分布Ttheo(i,j,d,n(i))(または、反射率分布Rtheo(i,j,d,n(i)))と、対応する位置方向ピクセル番号jにおける透過率分布Tmeas(i,j)(または、反射率分布Rmeas(i,j))とを比較する。
透過率分布Ttheo(または、反射率分布Rtheo)は、ピクセル位置(i,j)、膜厚d、屈折率n(λ)に依存した値となる。ピクセル位置(i,j)は既知であり、膜厚dは波長方向ピクセル番号iによらず同一である。したがって、複数の波長方向ピクセル番号i(i=i,i,i,・・・)についての理論値と実測値との比較結果に対して、膜厚dが同一であるという事前情報を適用することで、屈折率n(λ)を決定することができる。
また、図22を参照して、位置方向ピクセル番号jに着目した場合と同様に、特定の波長方向ピクセル番号iに着目した場合においても、サンプルSの屈折率n(λ)を暫定値に設定した上で、特定の波長方向ピクセル番号iにおける透過率分布Tmeas(i,j)(または、反射率分布Rmeas(i,j))から膜厚d(i)(i=i,i,i,・・・)をそれぞれ算出する。ここで、膜厚dは同一であるので、それぞれ算出される膜厚d(i)が一致するように、サンプルSの屈折率n(λ)を決定する。
本実施の形態に従う屈折率測定方法の概要を説明すると以下のようになる。すなわち、本実施の形態に従う屈折率測定方法によれば、顕微分光膜厚計などの専用の測定装置を用いることなく、本実施の形態に従う光学測定装置を用いて、サンプルSの屈折率nを測定できる。
例えば、上述したような入射角θの補正機能を有する演算処理に従って、任意の屈折率nを任意の初期値(例えば、すべての波長について1)に設定した上で、サンプルSの小片の配置位置を変化させることで、膜厚トレンドを取得する。屈折率nの設定値がサンプルSの実際の屈折率とは異なっている場合には、膜厚トレンドはフラットにならない。最小二乗法などを用いて、屈折率nを適宜変化させることで、膜厚トレンドが最もフラットになるような、すなわち膜厚分散が最小となるような屈折率nを決定できる。
なお、屈折率nは、全波長平均の定数として求めてもよいし、より厳密に求めたい場合は波長分散を考慮し、例えば、Cauchyの分散式n(λ)=E+(F/λ)+(G/λ)を仮定し、各項の係数を最小二乗法などにより求めてもよい。
あるいは、入射角が比較的大きな特定のラインに注目し、膜厚の残差二乗値が最小となるような方法で屈折率を算出してもよい。
本実施の形態においては、同一の測定基準を測定光が照射されるサンプルSの測定点に順次配置するとともに、当該測定点における実測値を順次取得することで、2次元画像150に対応する実測値分布(透過率分布Tmeas(i,j)、または、反射率分布Rmeas(i,j))を取得する。また、測定光が照射されるサンプルSの各測定点に対応する2次元画像150上の領域に関連付けて、各測定点から測定光学系10への入射角に応じた補正要素(各測定点に対応する入射角の大きさを示す値)を算出する。実測値分布のいずれか一方向に沿った1または複数の列についてのピクセル値群と、対応する補正要素とに基づいて、測定基準の屈折率を含む光学特性を算出する。このとき、実測値分布において、膜厚dは同一であるとの事前情報が利用される。
以下、それぞれの場合についてより詳細に説明する。
(f2:波長方向の情報に基づく屈折率測定方法(その1))
まず、波長方向の情報に基づく屈折率測定方法(その1)について説明する。まず、サンプルSの屈折率の波長依存性は考慮せずに、n(λ)=n(一定値)である場合を先に説明する。
波長方向の情報に基づく屈折率測定方法(その1)においては、サンプルSの屈折率nを何らかの初期値に設定するとともに、その屈折率nに基づいて、複数の波長方向ピクセル番号iの透過率スペクトル(または、反射率スペクトル)について、それぞれ膜厚dを算出する。そして、算出された複数の膜厚dについての膜厚トレンドを評価する。膜厚トレンドがフラットになるように、屈折率nをフィッティングする。すなわち、サンプルSの実際の屈折率nが設定した屈折率nとは異なっていると、膜厚トレンドがフラットを維持できない。これは、上述したような、測定干渉光の入射角θの影響を考慮した計算方法を採用することで、サンプルSの定点の膜厚は、いずれの入射角θで測定しても一定値になるべきであるという前提に基づいている。
このような前提に従って、膜厚トレンドのフラット度合いをコスト関数として採用し、このコスト関数の値が最小となる屈折率nを決定する。サンプルSの定点を位置方向ピクセル番号jにおいて測定したとき膜厚をd(j)とする。位置方向ピクセル番号jを変化させたときの膜厚トレンド曲線d(j)を定数関数f(j)=μ(μは一定値)と近似する。このとき、残差二乗和Sは、以下の(12)式のように規定できる。(12)式中の一定値μの値を最小二乗法により決定する。より具体的には、残差二乗和Sが最小となる条件、すなわち∂S/∂μ=0が成立するときの一定値μを求めると、以下の(13)式のようになる。
なお、(12)式に従って算出される一定値μは、膜厚d(j)の平均値に相当する。そして、残差二乗和Sは、膜厚d(j)の平均値に対する残差二乗和になるので、膜厚d(j)の分散(以下、「膜厚分散」とも称す。)に相当する。
次に、膜厚トレンド、膜厚平均値、および膜厚分散(膜厚の残差二乗和)は、いずれも屈折率nに依存するので、コスト関数として、膜厚d(j)の膜厚分散D(n)を以下の(14)式のように規定できる。
上述の(14)式について、屈折率nの値を順次変化させて、膜厚分散D(n)が最小となる条件、すなわち∂D/∂n=0が成立するときの屈折率nを求めることができる。
図23は、本実施の形態に従う波長方向の情報に基づく屈折率測定方法(その1)に従って算出された膜厚トレンドの一例を示すグラフである。図23(A)のグラフは、ポリエチレン薄膜の屈折率n(一定値)毎の膜厚トレンドを示す。膜厚トレンド変化の比較を容易化するように、図23(B)のグラフは、位置方向ピクセル番号j=600において膜厚d=10[μm]となるように規格化した結果を示す。図23の膜厚トレンドを算出するにあたって、上述の図15に示す2次元画像を生成する際に用いた、透過率スペクトルT(λ)の理論値を利用した。
サンプルSの屈折率nを1.51から0.01ずつ大きくしていくと、1.56から1.57への増加を境目に、膜厚トレンドが下に凸から上に凸に変化していることが分かる。また、屈折率n=1.56のときに、膜厚分散D(n)が最小となり、膜厚トレンドも最もフラットになっていることが分かる。図23に示す膜厚トレンドに係る値を以下の表に示す。
以上のような算出結果から、屈折率nを1/100の精度で求めると、屈折率n=1.56と決定できる。
なお、上述の(12)式,(13)式,(14)式においては、膜厚分散D(n)を算出する際に、位置方向ピクセル番号jのすべてを用いるように記載されているが、必ずしもすべてを用いる必要はなく、要求される精度に応じて、所定数のピクセル列を用いれ
ばよい。この場合、サンプルSを配置する測定点についても、膜厚測定方法における分解能に比較して粗い間隔で配置すればよい。
図24は、本実施の形態に従う波長方向の情報に基づく屈折率測定方法(その1)の処理手順を示すフローチャートである。図24を参照して、まず、ユーザは、測定ライン上の各測定点にサンプルSの小片の配置、および、光学測定装置1を操作して当該配置されたサンプルSからの実測値の取得を繰返す(ステップS200)。これにより、処理装置100は、同一のサンプルSから測定された透過率分布Tmeas(i,j)(または、反射率分布Rmeas(i,j))を取得する。
続いて、処理装置100は、測定光学系10に入射する測定干渉光について、各測定点に対応する入射角θを算出する(ステップS202)。次に、処理装置100は、測定光学系10に対する波長校正の結果などから、2次元画像150のピクセル位置と波長λとの関係を示す波長変換式λ(i,j)を算出する(ステップS204)。
このステップS202およびS204の処理は、図11に示す屈折率測定方法の処理手順(その1)のフローチャートにおけるステップS100およびS104と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
続いて、処理装置100は、屈折率nを任意の初期値に設定し(ステップS206)。そして、処理装置100は、複数の位置方向ピクセル番号jについて、透過率分布Tmeas(i,j)(または、反射率分布Rmeas(i,j))から膜厚d(j)をそれぞれ算出する(ステップS208)。
処理装置100は、算出したそれぞれの膜厚d(j)から膜厚の平均値を算出する(ステップS210)とともに、ステップS210において算出された膜厚の平均値を用いて、膜厚分散D(n)を算出する(ステップS212)。そして、処理装置100は、屈折率nの予め定められた範囲内の変化が完了したか否かを判断する(ステップS214)。屈折率nの予め定められた範囲内の変化が完了していなければ(ステップS214においてNO)、処理装置100は、屈折率nを更新し(ステップS216)、ステップS206以下の処理を繰返す。
屈折率nの予め定められた範囲内の変化が完了すれば(ステップS214においてYES)、処理装置100は、ステップS212において算出された膜厚分散D(n)のうち最小となるものを決定し(ステップS218)、決定した膜厚分散D(n)に対応する屈折率nをサンプルSの屈折率として決定する(ステップS220)。そして、処理は終了する。
以上のように、波長方向の情報に基づいて、サンプルSの屈折率nを決定できる。
(f3:波長方向の情報に基づく屈折率測定方法(その2))
上述の波長方向の情報に基づく屈折率測定方法(その1)においては、サンプルSの屈折率nを解析的に決定する方法を例示したが、予め定めた多項式を用いたフィッティングにより、屈折率nを決定してもよい。
図25は、本実施の形態に従う波長方向の情報に基づく屈折率測定方法(その2)における屈折率nの決定方法を説明するための図である。図25には、屈折率nを変化させたときに算出された膜厚分散D(n)をプロットしたグラフを示す。図25に示すような、屈折率nと膜厚分散D(n)との関係に対して、例えば、以下の(15)式に示すような3次多項式をフィッティングさせることができる。
すなわち、図25に示すそれぞれの膜厚分散D(n)を通るように、(15)式の各係数A,A,A,Aをフィッティングする。図25に示すようなフィッティングされた3次多項式が極小値(最小値)をとる点に対応して屈折率nを決定できる。すなわち、屈折率nは、以下の(16)式に従って、係数A,A,A,Aに基づいて算出できる。
図25に示すフィッティングにより得られた結果を以下の表に示す。
以上のような算出結果から、屈折率nを1/10000の精度で求めると、屈折率n=1.5634と決定できる。フィッティングに多項式を用いることで、屈折率nの変動幅(この例では、0.01刻み(すなわち、1/100の精度))より高い精度で屈折率を決定できる。
波長方向の情報に基づく屈折率測定方法(その2)の処理手順は、図24に示すフローチャートのステップS218およびS220に代えて、図25に示すような多項式を用いたフィッティングが実行される。それ以外の点については、上述の波長方向の情報に基づく屈折率測定方法(その1)と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
(f4:波長方向の情報に基づく屈折率測定方法(その3))
上述したような波長方向の情報のうち、入射角θの影響をより大きく受けるものに注目することで、サンプルSの屈折率nをより効率的に決定できる。より具体的には、まず、任意の位置方向ピクセル番号jにおける膜厚d(j)の平均値に対する偏差である残差二乗値y(n,j)を、以下の(17)式に示すように規定する。
図26は、本実施の形態に従う波長方向の情報に基づく屈折率測定方法(その3)における屈折率nの決定方法を説明するための図である。図26には、屈折率nを変化させたときに算出された残差二乗値yをプロットしたグラフを示す。図26に示すような、屈折率nと残差二乗値yとの関係に対して、例えば、上述の(15)式に示すような3次多項式をフィッティングさせることができる。
すなわち、図26に示すそれぞれの残差二乗値yを通るように、(15)式の各係数A
,A,A,Aをフィッティングする。図26に示すようなフィッティングされた3次多項式が極小値(最小値)をとる点に対応して屈折率nを決定できる。すなわち、屈折率nは、上述の(16)式に従って、係数A,A,A,Aに基づいて算出できる。
すなわち、図26に示すそれぞれの残差二乗値yを通るように、(15)式の各係数A,A,A,Aをフィッティングする。図26に示すようなフィッティングされた3次多項式が極小値(最小値)をとる点に対応して屈折率nを決定できる。図26に示すフィッティングにより得られた結果を以下の表に示す。
上表においては、入射角θが比較的大きいと考えられる4つの位置方向ピクセル番号(j=50,100,1100,1150)について、屈折率nを算出した。
本実施の形態に従う波長方向の情報に基づく屈折率測定方法(その3)においては、少なくとも2点の測定点にサンプルSを配置してスペクトルを測定すればよいので、測定の手間を低減できて、簡便に屈折率nを算出できる。このとき、サンプルSを配置する測定点は、入射角の角度差が大きくなるような位置を選択することが好ましい。
さらに、可能な限り大きな入射角を有する特定の位置方向ピクセル番号jに着目し、残差二乗値yが極小値(最小値)をとる点から屈折率nを算出することもできる。例えば、上述の表において、位置方向ピクセル番号j=50について、1/10000の精度で屈折率nを求めると、屈折率n=1.5587と決定できる。フィッティングに多項式を用いることで、屈折率nの変動幅(この例では、0.01刻み(すなわち、1/100の精度))より高い精度で屈折率を決定できる。
波長方向の情報に基づく屈折率測定方法(その3)の処理手順は、上述の波長方向の情報に基づく屈折率測定方法(その2)の処理手順と比較して、膜厚分散D(n)ではなく残差二乗値yを用いる点のみが異なっている。それ以外の点については、上述の波長方向の情報に基づく屈折率測定方法(その1)と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
(f5:波長方向の情報に基づく屈折率測定方法(その4))
上述の波長方向の情報に基づく屈折率測定方法(その1)の説明においては、屈折率n(λ)=n(一定値)であるとした。しかしながら、実際には、屈折率n(λ)は波長依存性を有している。この場合には、多項式を用いて屈折率n(λ)を規定し、多項式の各係数をフィッティング対象とすることで、波長依存性を考慮した屈折率n(λ)を決定できる。
一例として、以下の(18)式に示すようなCauchyの分散式を用いてもよい。(18)式の各項の係数(E,F,G)を変化させるとともに、評価対象の値(上述した波長方向の情報に基づく屈折率測定方法(その2)においては、膜厚分散D(n))が極小値(最小値)をとる係数の組を、最小二乗法などにより決定すればよい。
すなわち、膜厚分散Dを係数(E,F,G)に依存させた、以下の(19)式において、∂D/∂E=∂D/∂F=∂D/∂G=0を満たす係数(E,F,G)の組を求めることにより、(18)式から波長依存性を考慮した屈折率n(λ)を求めることができる。
また、上述の波長方向の情報に基づく屈折率測定方法(その3)においては、残差二乗値yが極小値(最小値)をとる点から屈折率nが算出されるが、この方法においても、波長依存性を考慮した屈折率n(λ)を求めることができる。上述の(19)式と同様のy(D,E,F)を導出するとともに、∂y/∂E=∂y/∂F=∂y/∂G=0を満たす係数(E,F,G)の組を求めることにより、(18)式から波長依存性を考慮した屈折率n(λ)を求めることができる。
以上のような手順により、波長依存性を考慮した屈折率n(λ)を求めることができる。
(f6:位置方向の情報に基づく屈折率測定方法(その1))
次に、位置方向の情報に基づく屈折率測定方法について説明する。上述の図22を参照して説明したように、位置方向の情報に基づいてサンプルSの屈折率nを測定する場合には、同一のサンプルSの小片から測定された透過率分布Tmeas(i,j)(または、反射率分布Rmeas(i,j))と、屈折率nを含む関数に従って算出される透過率分布Ttheo(i,j,n(i))(または、反射率分布Rtheo(i,j,n(i)))について、1または複数の波長方向ピクセル番号iについて、位置方向ピクセル番号jに沿ったトレンドを比較することによって、屈折率n(i)を決定する。
まず、上述の図7に示すような、空気(媒質0)中に薄膜のサンプルS(膜厚d)について、サンプルS内での多重反射を考慮した場合の透過率分布Ttheoは、以下の(20)式のようになる。なお、空気の屈折率n=1としている。
上述の(20)式において、振幅反射率r01は、s偏光およびp偏光のそれぞれについて、以下の(21−1)式のように表わされる。さらに、入射角θと屈折角θとの間には、n・sinθ=n・sinθの関係(スネルの法則)が成立するので、(21−1)式は(21−2)式のように変形できる。なお、空気の屈折率n=1としている。すなわち、振幅反射率r01は、サンプルSの屈折率nおよび入射角θのみで規定できる。
ここで、偏光が生じない場合の強度反射率R01=|r01は、s偏光およびp偏光の両方の成分が含まれているので、以下の(22)式のように規定できる。
上述の(20)式に(21−2)式および(22)式を代入して振幅反射率r01を消去することで、透過率分布Ttheoは、サンプルSの屈折率n(i)、入射角θ(j)、サンプルSの膜厚d、波長λ(i)で規定できる。
上述したように、透過率分布Tmeas(i,j)(または、反射率分布Rmeas(i,j))は、同一のサンプルSの小片を測定ライン上の各測定点に配置して測定した値であり、膜厚dは、波長方向ピクセル番号iおよび位置方向ピクセル番号jに依存しない一定値である。
特定の波長方向ピクセル番号iに着目すると、透過率分布Tmeas(i,j)(または、反射率分布Rmeas(i,j))と透過率分布Tmeas(i,j)(または、反射率分布Rmeas(i,j))との誤差を示す残差二乗和Qを、以下の(23)式のように規定できる。
上述の(23)式に規定された残差二乗和Qが最小となる条件、すなわち∂Q/∂d=∂Q/∂n(i)=0を解くことで、注目した波長方向ピクセル番号iについての屈折率n(i)および対応する膜厚dを決定できる。
上述したように、膜厚dは、波長方向ピクセル番号iおよび位置方向ピクセル番号jに依存しない一定値であるので、屈折率nの波長依存性を考慮しない場合(すなわち、屈折率nが一定値である場合)には、1つの波長方向ピクセル番号iについて算出した屈折率n(i)および対応する膜厚dを最終的な値として出力してもよい。
より測定精度を高めるためには、波長方向ピクセル番号iのすべてについて屈折率nおよび膜厚dの組を決定してもよい。この場合、屈折率nおよび膜厚dの組の値を平均化などの統計処理を行った結果を最終出力してもよい。
なお、後述の位置方向の情報に基づく屈折率測定方法(その3)において説明するように、屈折率nの波長依存性を考慮する場合には、複数の波長方向ピクセル番号iを対象にする必要がある。
なお、上述の(23)式においては、残差二乗和Qを算出する際に、位置方向ピクセル番号jのすべてを用いるように記載されているが、必ずしもすべてを用いる必要はなく、要求される精度に応じて、所定数のピクセル列を用いればよい。この場合、サンプルSを配置する測定点についても、膜厚測定方法における分解能に比較して粗い間隔で配置すればよい。
位置方向の情報に基づく屈折率測定方法(その1)の処理手順は、残差二乗和の関数を除いて、図24に示す波長方向の情報に基づく屈折率測定方法(その1)の処理手順と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
(f7:位置方向の情報に基づく屈折率測定方法(その2))
上述の位置方向の情報に基づく屈折率測定方法(その1)においては、実測値と理論値とを比較することで、波長方向ピクセル番号i毎に屈折率nおよび膜厚dを決定する。
位置方向の情報に基づく屈折率測定方法(その2)においては、同一の膜厚dとの事前情報を適用することで、より高精度に屈折率nを決定する。より具体的には、膜厚トレンドのフラット度合いをコスト関数として採用し、このコスト関数の値が最小となる屈折率nを決定してもよい。波長方向ピクセル番号iを変化させたときの膜厚トレンド曲線d(i)を定数関数f(j)=μ(μは一定値)と近似する。このとき、残差二乗和Sは、以下の(24)式のように規定できる。(24)式中の一定値μの値を最小二乗法により決定する。より具体的には、残差二乗和Sが最小となる条件、すなわち∂S/∂μ=0が成立するときの一定値μを求めると、以下の(25)式のようになる。
なお、(25)式に従って算出される一定値μは、膜厚d(i)の平均値に相当する。そして、残差二乗和Sは、膜厚d(i)の平均値に対する残差二乗和になるので、膜厚d(i)の分散(以下、「膜厚分散」とも称す。)に相当する。
図27は、本実施の形態に従う位置方向の情報に基づく屈折率測定方法(その2)における膜厚dのより確からしい値を決定する方法を説明するための図である。膜厚dは、波長方向ピクセル番号iの数だけ算出できるが、それぞれの波長方向ピクセル番号iについて算出された膜厚dはいずれも同じ値になるはずである。そこで、図27に示すように、波長方向ピクセル番号iを変化させたときの膜厚トレンド曲線d(i)を定数関数f(i)=μ(μは一定値)と近似する。そして、d(i)とf(i)との残差二乗和Sが極小値(最小値)をとるように定数μを決定する。そのように決定された定数μは、より確からしい膜厚dとなる。
次に、(25)式中の透過率の理論値を示す項に、より確からしい膜厚d=μを与えるとともに、透過率の理論値と透過率の実測値との間の残差二乗和Qを、以下の(26)式のように規定する。
上述の(26)式に規定された残差二乗和Qが最小となる条件、すなわち∂Q/∂n(i)=0を解くことで、注目した波長方向ピクセル番号iについての屈折率n(i)および対応する膜厚dを決定できる。
上述したように、膜厚dは、波長方向ピクセル番号iおよび位置方向ピクセル番号jに依存しない一定値であるので、屈折率nの波長依存性を考慮しない場合(すなわち、屈折率nが一定値である場合)には、1つの波長方向ピクセル番号iについて算出した屈折率n(i)および対応する膜厚dを最終的な値として出力してもよい。
より測定精度を高めるためには、波長方向ピクセル番号iのすべてについて屈折率nおよび膜厚dの組を決定してもよい。この場合、屈折率nおよび膜厚dの組の値を平均化などの統計処理を行った結果を最終出力してもよい。
なお、後述の位置方向の情報に基づく屈折率測定方法(その3)において説明するように、屈折率nの波長依存性を考慮する場合には、複数の波長方向ピクセル番号iを対象にする必要がある。
なお、上述の(26)式においては、残差二乗和Qを算出する際に、位置方向ピクセル番号jのすべてを用いるように記載されているが、必ずしもすべてを用いる必要はなく、
要求される精度に応じて、所定数のピクセル列を用いればよい。この場合、サンプルSを配置する測定点についても、膜厚測定方法における分解能に比較して粗い間隔で配置すればよい。
位置方向の情報に基づく屈折率測定方法(その1)の処理手順は、図24に示す波長方向の情報に基づく屈折率測定方法(その1)の処理手順と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
(f8:位置方向の情報に基づく屈折率測定方法(その3))
上述の位置方向の情報に基づく屈折率測定方法(その1)および(その2)の説明においては、屈折率n(λ)=n(一定値)の場合を想定している。しかしながら、実際には、屈折率n(λ)は波長依存性を有している。この場合には、多項式を用いて屈折率n(λ)を規定し、多項式の各係数をフィッティング対象とすることで、波長依存性を考慮した屈折率n(λ)を決定できる。
一例として、上述の(18)式に示すようなCauchyの分散式を用いてもよい。この場合いは、少なくとも波長方向ピクセル番号iの3点について、屈折率n(i)を算出することで、(18)式の各項の係数(E,F,G)を決定できる。
また、Cauchy分散式を用いた場合、波長方向ピクセル番号iの各々での位置方向のデータ列を複数まとめて取り扱うこともできる。すなわち、異なる複数の波長方向ピクセル番号iについて、膜厚dおよび係数(E,F,G)を、波長方向ピクセル番号iに依存しない共通のパラメータとして取り扱い、これら4つのパラメータを変化させたときに、位置方向ピクセル番号jに加えて、複数の波長方向ピクセル番号iに関する和も含めた残差二乗和Qが最小になるように係数(E,F,G)を決定できる。
より具体的には、∂Q/∂d=∂Q/∂E=∂Q/∂F=∂Q/∂G=0を満たす、膜厚dおよび係数(E,F,G)の組を求めてもよい。この際のアルゴリズムとしては、Gauss−Newton法、最急降下法、Levenberg−Marquardt法などを使用できる。
さらに別の方法として、上述の(26)式に最小二乗法を適用して、波長方向ピクセル番号iの各々について屈折率n(i)を算出した後、算出された波長方向ピクセル番号iの各々についての屈折率n(i)(i=1,2,3,・・・,C/B)を集合させることで、屈折率の波長依存性n(λ)を決定することもできる。この方法では、屈折率の波長依存性の関数形(モデル式)を特に指定する必要がない。
以上のような手順により、波長依存性を考慮した屈折率n(λ)を求めることができる。
<G.アプリケーション例>
次に、本実施の形態に従う光学測定装置のアプリケーション例について説明する。
例えば、本実施の形態に従う光学測定装置は、フィルム製造ラインなどに配置されることで、インラインでの膜厚測定を行うことができる。本実施の形態に従う光学測定装置は、サンプル膜厚の面内分布(すなわち、膜厚の2次元分布)を出力できる。例えば、サンプルの搬送方向、すなわちMD方向(Machine Direction)の膜厚トレンドの変化から、
フィルム製造ラインに生じ得る欠陥部分を特定することなども可能となる。
より具体的には、例えば、フィルム製造ラインは、複数の搬送ローラを有しており、い
ずれかの搬送ローラが、フィルムへの凸部の形成やローラ表面への異物混入などの欠陥部分を有していたとする。この場合、搬送ローラのローラ半径(あるいは、円周長さ)やその搬送ローラにおけるフィルム巻長に依存した周期で膜厚に変化が生じると考えられる。このようなMD方向の膜厚トレンドに生じる変化(膜厚の大きさ変動、スジやムラの発生、局所的なムラの発生など)の周期性から、フィルム製造ライン上の欠陥部分を特定することができる。
このように、本実施の形態に従う光学測定装置が出力する膜厚トレンドの周期性を利用することで、欠陥検査などを行うことができる。
本実施の形態に従う光学測定装置は、上述したようなアプリケーションに限らず、任意の用途に用いることができる。
例えば、インラインでの膜厚測定の対象としては、半導体、機能性フィルム、プラスチック、各種フィルタなどが挙げられる。
<H.その他の実施の形態>
(h1:実測膜厚値からの画角および中心位置の決定)
上述の説明においては、測定光学系10の画角φ(=Atan(b/2f))は、カタログスペック上の撮像素子160の長さbおよび対物レンズ12の焦点距離fから理論的に決定することを前提とした。
しかしながら、実際に使用する対物レンズ12の種類によっては、レンズ歪みやフォーカス度合いの変化によって、実効的な焦点距離f’が焦点距離fのカタログ値から微妙ずれる可能性がある。また、光学調整の際、ピクセルの中心位置(j=C/2B)と撮像部16の撮像中心を一致させることが少々難しい場合も想定される。
このような場合、膜厚の実測値から画角の実効値および中心位置を決定するようにしてもよい。例えば、同一のサンプルSについて、位置方向ピクセル番号j(すなわち、入射角θ)を異ならせた場合の波長方向の透過率スペクトルまたは反射率スペクトルを測定する。そして、測定した透過率スペクトルまたは反射率スペクトルに対して、入射角θの補正を行うことなく、上述の膜厚測定方法の処理手順(その1)に従って膜厚をそれぞれ算出する。このような手順によって、それぞれの測定点に対応する膜厚の変化を示す膜厚トレンドを得ることができる。
そして、取得された膜厚トレンドに対して、ピクセルの中心位置での膜厚値を1に規格化した上で、y=cosA(x−x0)などの関数によりフィッティングすることで、膜厚の実測値に基づいて、実効的な画角φ’(=Atan(b/2f’))および中心位置xを算出できる。
(h2:複数の光学測定装置の並列配置)
本実施の形態に従う光学測定装置をフィルム製造ラインなどに配置する場合には、フィルムのライン幅に応じて、本実施の形態に従う光学測定装置が並列に複数台配置されることが想定される。このような場合、測定光学系10の測定範囲の端部付近には、隣接配置された他の測定光学系10の測定範囲と重複する部分が生じ得る。すなわち、サンプルSの同一ポイントが複数の測定光学系10の測定範囲に含まれることが想定される。このような場合、それぞれの光学測定装置から出力される、サンプルSの同一ポイントについての測定結果が互いに異なる可能性がある。このような不整合は、ライン管理上好ましくないので、以下のような補正方法を採用して、測定結果を整合させてもよい。
本実施の形態に従う光学測定装置においては、測定干渉光の入射角の影響を排除できるので、サンプルの同一ポイントについて算出されるそれぞれの膜厚は、入射角によらず一定になる。例えば、それぞれの光学測定装置にて、同一のサンプルSの小片(例えば、1mm角)についての膜厚を測定し、測定されたそれぞれの膜厚(例えば、入射角がゼロとなる測定点での測定値)の間で整合性がとれるように、それぞれの光学測定装置に、オフセット補正および/または係数などを設定すればよい。
<I.利点>
上述したように、本実施の形態によれば、様々なサンプルの膜厚の面内分布をより高速かつ高精度に測定できる。また、本実施の形態によれば、専用の測定装置などを用いることなく、屈折率などのサンプルの光学特性を測定できる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1,2 光学測定装置、4 ベース部材、6 支持部材、10 測定光学系、12 対物レンズ、14 イメージング分光器、16 撮像部、20,174 光源、22 ラインライトガイド、24 測定ライン、28 垂直方向、100 処理装置、102 プロセッサ、104 主メモリ、106 入力部、108 表示部、110 ストレージ、112 オペレーティングシステム、114 測定プログラム、116 2次元画像データ、118 測定結果、120 通信インターフェイス、122 ネットワークインターフェイス、124 メディアドライブ、126 記録媒体、142 スリット、144 第1レンズ、146 回折格子、148 第2レンズ、150 2次元画像、152,156 バッファ、154 モデル化モジュール、158 フィッティングモジュール、160 撮像素子、170 位置調整機構、172 シャッター。

Claims (11)

  1. 測定対象に対して所定の波長範囲を有する測定光を直線状に照射する照射光学系と、前記測定光の照射により前記測定対象から生じる透過光または反射光である直線状の測定干渉光を当該測定干渉光の長手方向とは直交する方向に波長展開して2次元画像を出力する測定光学系とを備える光学測定装置を用いた光学測定方法であって、
    同一のサンプルについて入射角を異ならせた場合の実測値分布を取得するステップと、
    前記測定光が照射される前記測定対象の各測定点に対応する前記2次元画像上の領域に関連付けて、各測定点から前記測定光学系への入射角に応じた補正要素を算出するステップと、
    前記実測値分布のいずれか一方向に沿った1または複数の列についてのピクセル値群と、対応する補正要素とに基づいて、前記サンプルの屈折率を含む光学特性を算出するステップとを備える、光学測定方法。
  2. 前記光学特性を算出するステップは、
    前記実測値分布の複数の位置について、設定されている屈折率と、各位置に対応する補正要素と、各位置における波長方向のピクセル値群とに基づいて、それぞれの膜厚を算出するステップと、
    前記算出されたそれぞれの膜厚についての分散である膜厚分散を算出するステップと、
    前記サンプルの屈折率を異なる複数の値にそれぞれ設定して、前記膜厚を算出するステップおよび前記膜厚分散を算出するステップを繰返すステップと、
    前記算出された膜厚分散に基づいて、前記サンプルの屈折率を決定するステップとを含む、請求項1に記載の光学測定方法。
  3. 前記サンプルの屈折率を決定するステップは、前記算出された膜厚分散が小さくなる屈折率を、前記サンプルの屈折率として決定するステップを含む、請求項2に記載の光学測定方法。
  4. 前記サンプルの屈折率を決定するステップは、
    屈折率と膜厚分散との関係に対して、予め定められた膜厚分散を示す多項式をフィッティングするステップと、
    フィッティングにより決定された多項式により表される膜厚分散が極値をとる点に基づいて、前記サンプルの屈折率を決定するステップとを含む、請求項2に記載の光学測定方法。
  5. 前記サンプルの屈折率を決定するステップは、
    屈折率と前記算出されたそれぞれの膜厚についての残差二乗値との関係に対して、予め定められた残差二乗値を示す多項式をフィッティングするステップと、
    フィッティングにより決定された多項式により表される残差二乗値が極値をとる点に基づいて、前記サンプルの屈折率を決定するステップとを含む、請求項2に記載の光学測定方法。
  6. 前記サンプルの屈折率は、所定の波長分散式に従って算出され、
    前記サンプルの屈折率を決定するステップは、
    前記波長分散式を規定する各係数と膜厚分散との関係、および、前記波長分散式を規定する各係数と残差二乗値との関係、のいずれかに対して、最小二乗法を適用するステップと、
    前記膜厚分散または前記残差二乗値が極値をとるときの係数の組に基づいて、前記サンプルの屈折率を決定するステップとを含む、請求項2に記載の光学測定方法。
  7. 前記光学特性を算出するステップは、
    前記実測値分布の任意の波長についての位置方向のピクセル値群が示す実測値分布を算出するステップと、
    予め設定された前記サンプルの膜厚および屈折率と各位置に対応する補正要素とに基づいて、前記任意の波長についての理論値分布を算出するステップと、
    前記理論値分布と前記実測値分布との誤差を小さくするように、前記サンプルの膜厚および屈折率を決定するステップとを含む、請求項1に記載の光学測定方法。
  8. 前記光学特性を算出するステップは、前記実測値分布の複数の波長の各々について、前記サンプルの屈折率を決定するステップを含む、請求項7に記載の光学測定方法。
  9. 前記光学特性を算出するステップは、
    前記理論値分布と前記実測値分布との誤差に基づいて、前記実測値分布の複数の波長について前記サンプルの膜厚をそれぞれ算出するステップと、
    前記算出されたそれぞれの膜厚に基づいてより確からしい膜厚を決定するステップとを含む、請求項7または8に記載の光学測定方法。
  10. 前記理論値分布の算出に用いられる前記サンプルの屈折率は所定の波長分散式に従って算出され、
    前記実測値分布の複数の波長についての前記理論値分布と前記実測値分布とのそれぞれの誤差を小さくするように、前記所定の波長分散式を規定する各係数および膜厚をフィッティングするステップとを含む、請求項7に記載の光学測定方法。
  11. 測定対象に対して所定の波長範囲を有する測定光を直線状に照射する照射光学系と、
    前記測定光の照射により前記測定対象から生じる透過光または反射光である直線状の測定干渉光を当該測定干渉光の長手方向とは直交する方向に波長展開して2次元画像を出力する測定光学系と、
    処理装置とを備え、前記処理装置は、
    同一のサンプルについて入射角を異ならせた場合の実測値分布を取得する取得手段と、
    前記測定光が照射される前記測定対象の各測定点に対応する前記2次元画像上の領域に関連付けて、各測定点から前記測定光学系への入射角に応じた補正要素を算出する第1の算出手段と、
    前記実測値分布のいずれか一方向に沿った1または複数の列についてのピクセル値群と、対応する補正要素とに基づいて、前記サンプルの屈折率を含む光学特性を算出する第2の算出手段とを備える、光学測定装置。
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