以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符合を付して詳細な説明は適宜省略する。
本実施形態においては、ドップラーセンサーを用いた自動給水装置のうち、図1に示すように、トイレブース(化粧室)内にドップラーセンサーを用いて人体検出や尿流検出を行う小便器洗浄装置1(自動給水装置)を複数隣接させて配置した小便器洗浄装置システム4に関して説明する。
図2は、本発明の実施形態に係るドップラーセンサー200を取り付けた小便器洗浄装置1を表す概略側面図である。図1に示す小便器洗浄装置1は、小便器10に設けられ、人体及び尿流を検出するドップラーセンサー200と、小便器洗浄を制御する判定部300と、を備える。ドップラーセンサー200及び判定部300が、本発明に係る検知装置の実施形態に相当するものである。
小便器10は、ボール部11を有する。ボール部11の上部には、洗浄水をボール部11へ吐水する給水部30が設けられ、ボール部11の下部には、洗浄水を一時的に貯留するトラップ部50が設けられている。トラップ部50に貯留された水は、排水路側からボール部11側に悪臭が侵入することを防止している。そして、トラップ部50に貯留された水は、給水部30から吐水された洗浄水の水量に応じて、排水口60から排水路へ適宜排出される。
ドップラーセンサー200は、小便器10の上部背面側に配置されている。ドップラーセンサー200は、マイクロ波あるいはミリ波などの高周波の電波を送信し、送信した電波の被検知体からの反射波を受信して、被検知体の動きを検知し、その検知信号を出力するセンサーである。ドップラーセンサー200は、その検知領域201がボール部11を含む斜め下前方に向くように、小便器10の上部背面側から電波を放射する。放射された電波は、小便器10の前方に立った使用者(人体)2や使用者2からの尿流3に反射され、この反射された電波(反射波)をドップラーセンサー200が受信するように構成される。これにより、使用者の存在及び使用者の使用状況の検知、すなわち、小便器10に人体が近づいてきたことや小便器10から人体が遠ざかったことの他、小便器10のボール部11に尿が流れたこと(尿流3)を検知することができる。
なお、本実施形態では、小便器10にドップラーセンサー200を設置した例を示すが、小便器10に設置するだけではなく、例えば、手洗器や大便器に設置しても良い。例えば、ドップラーセンサー200を手洗器に設置する場合には、使用者が手洗器を使用する際の立ち位置を含む領域に、伝搬波としてのマイクロ波を送信する。また、例えば、ドップラーセンサー200を大便器に設置する場合には、使用者が大便器を立位使用する際の立ち位置及び着座使用する際の着座位置を含む領域に、伝搬波としてのマイクロ波を送信する。
判定部300は、ドップラーセンサー200から出力された検知信号(ドップラー信号)に基づいて、給水路の途上に設けられた給水バルブ20を駆動させる。給水部30と給水バルブ20とは、給水路によって連結されている。給水バルブ20が開放されている場合には、水は給水路の内部を通り、給水部30から吐水される。一方、給水バルブ20が閉止されている場合には、水が給水部30から吐水されることはない。
続いて、図3を参照しながら、図2に示したドップラーセンサー200及び判定部300について更に説明する。図3は、ドップラーセンサー200及び判定部300の機能的な構成を示すブロック構成図である。
図3に示すように、ドップラーセンサー200は、送信部210と、受信部220と、差分検出部230と、を有する。送信部210からは、高周波、マイクロ波あるいはミリ波などの電波が放射される。使用者2や尿流3からの反射波は、受信部220に入力される。
なお、ドップラーセンサー200を構成する伝播波を送信する送信部210と、伝播波を受信する受信部220とは、一体とした構成であっても良いし、別体としてドップラーセンサー200を構成しても良い。
送信波の一部と受信波は、差分検出部230にそれぞれ入力されて合成され、ドップラー効果が反映された出力信号が出力される。つまり、差分検出部230は、送信波の一部と受信波との周波数の差分をとり、ドップラー信号を出力する。差分検出部230から出力されたドップラー信号は、判定部300に出力される。
差分検出部230から出力されたドップラー信号には、ドップラー効果に関する情報が含まれる。すなわち、使用者2や尿流3などの被検知体が移動すると、ドップラー効果によって反射波の波長がシフトする。ドップラー周波数ΔF(Hz)は、下記の式(1)により表すことができる。
ドップラーセンサー200に対して被検知体が相対的に移動すると、式(1)で表されるように、その速度vに比例したドップラー周波数ΔFを含む出力信号を得ることができる。つまり、ドップラー周波数ΔFと移動体の速度vとの間には相関関係があり、このドップラー周波数ΔFを用いて、使用者2や尿流3などの検出が行われる。
図3に示す判定部300は、信号受信手段310と、人体検出手段320と、尿流検出手段330と周波数選定処理部340とを有する。周波数選定処理部340の詳細については後述するが、まず信号受信手段310と、人体検出手段320と、尿流検出手段330について、詳細を説明する。
人体検出手段320は、人体周波数フィルタ321と、人体判定手段322を有し、尿流検出手段330は、尿流周波数フィルタ331と、尿流判定手段332とを有する。差分検出部230から出力されたドップラー信号は、信号受信手段310により受信された後、人体周波数フィルタ321、尿流周波数フィルタ331に出力される。そして、このドップラー信号から人体接近に対応する周波数成分、尿流に対応する周波数成分以外を、人体周波数フィルタ321、尿流周波数フィルタ331によりそれぞれ削除し、人体接近に対応する人体検出周波数信号と尿流に対応する尿流検出周波数信号がそれぞれ抽出される。この際のフィルタリング周波数は、適宜変更することができる。
人体周波数フィルタ321において、人体検出に不必要な周波数成分が取り除かれ、人体接近に対応する人体検出周波数が抽出されたドップラー信号は、人体判定手段322に出力される。そして、人体判定手段322は、ドップラー信号の振幅と予め所定値に設定された閾値(基準値)とを比較することにより、使用者の存在及び使用状況の少なくとも一方の判定を行い、その判定結果に基づいて給水バルブ20を開閉する。
また、尿流周波数フィルタ331において尿流検出に不必要な周波数成分が取り除かれ、尿流に対応する尿流検出周波数が抽出されたドップラー信号は、尿流判定手段332に出力される。尿流判定手段332は、ドップラー信号の振幅と予め所定値に設定された閾値とを比較することにより、使用者の存在及び使用状況の少なくとも一方の判定を行い、その判定結果に基づいて給水バルブ20を開閉する。
ところで、小便器洗浄装置1を複数隣接した小便器洗浄装置システム4においては、図4に示すように、隣接するドップラーセンサー200同士が送信する電波の周波数が互いに一致した場合、もしくは電波の周波数が極めて近い場合に、隣接するドップラーセンサー200同士が互いに影響しあい、電波干渉が発生し、人体や尿流の誤検出を発生する恐れがある。そこで、本実施形態では、隣接するドップラーセンサー200同士が送信する電波の周波数が一定量離れている状態で使用すれば電波干渉が発生しないことに着目し、送信部210から送信する電波の周波数を干渉が発生しない周波数へ設定することとしている。引き続いて、その具体的な手法について説明する。
図3に示すように、本実施形態における判定部300には、周波数選定処理部340を備えている。周波数選定処理部340では、検知対象物である人体や尿流が検知領域内に存在しない状態であると判断した状態において、信号受信手段310からの信号に基づき電波干渉が発生したかどうかを判定し、ドップラーセンサー200を構成する送信部210から送信される電波の周波数を、電波干渉が発生しない周波数へ設定する、周波数選定処理を実施するものである。
続いて、図5を参照しながら、図3に示した周波数選定処理部340について更に説明する。図5は、周波数選定処理部340の機能的な構成を示すブロック構成図である。
図5に示すように、周波数選定処理部340は、不在判定手段350と、干渉判定手段360と、周波数設定手段370と、を有する。まず、不在判定手段350に信号受信手段310からドップラー信号が入力され、ドップラー信号の振幅を検知対象物である人体や尿流が検知領域内に存在しない状態である暗ノイズ状態の振幅と比較し、検知対象物が検知領域内に存在しない状態であるかどうかを判定する。検知対象物が存在しないと判断された場合は、周波数選定処理を開始してよいと判断され、その結果を干渉判定手段360へ出力し、周波数選定処理を開始する。検知対象物が存在すると判断された場合は、周波数選定処理は開始しない。周波数選定処理が開始すると、干渉判定手段360は、信号受信手段310から入力された信号の振幅値を、暗ノイズ状態の振幅と比較し、電波干渉が発生しているかどうかを判定する。電波干渉が発生していない周波数であると干渉判定手段360が判定する場合は、周波数設定手段370は、その周波数を送信部210から送信される電波の周波数として引き続き使用するものとし、周波数選定処理を終了する。もし電波干渉が発生している周波数であると干渉判定手段360が判定する場合は、周波数設定手段370は、送信部210から送信される電波の周波数を別の周波数へ変更し、電波干渉が発生しない周波数が見つかるまで、周波数選定処理を継続する。詳細は、図6、図7、図8のフローチャートを参照しながら後述する。
以上のように構成された、検知装置において、周波数選定処理の動作を、フローチャートを用いて具体的に説明する。図6は、検知対象物の不在を判定し、送信部210から送信される電波の周波数を電波干渉が発生しない周波数へ設定するまでの一連の流れ(周波数設定処理)を表すフローチャートである。図7は、図6に示した不在判定処理のフローチャートであり、図8は、図6に示した周波数選定処理のフローチャートである。
図6に示すように、周波数設定処理は、全体としてステップS1〜S2からなる処理が行われる。
まず、ステップS1では、検知対象物である人体や尿流が検知領域内に存在しない状態であるかどうかを判定する不在判定処理が行われる。この不在判定処理は、後述する図7におけるステップS11〜S13からなる処理である。不在判定処理が終了すると、ステップS2へ進む。
続いて、ステップS2では、送信部210から送信される電波の周波数を電波干渉が発生しない周波数へ設定する周波数選定処理が行われる。この周波数選定処理は、後述する図8におけるステップS21〜S25からなる処理である。周波数選定処理が終了すると、周波数設定処理が終了する。
続いて、図7を参照しながら、図6で示した不在判定処理について更に説明する。図7は、不在判定処理の一連の流れを示したフローチャートである。
まず、ステップS11では、信号受信手段310から入力された信号の振幅値Sが、検知対象物である人体や尿流が検知領域内に存在しない状態である暗ノイズ状態の振幅値よりも大きいか否かを判定し、Sが暗ノイズ状態の振幅値よりも大きいという条件を満たさない場合はステップS12へ、Sが暗ノイズ状態の振幅値よりも大きいという条件を満たす場合はステップS13へ進む。
ステップS12では、検知対象物が存在しない状態であると判断し、不在判定処理を終了する。
ステップS13では、検知対象物が存在する状態であると判断し、ステップS11へ戻り、以降の処理を繰り返す。
続いて、図8を参照しながら、図6で示した周波数選定処理について更に説明する。図8は、周波数選定処理の一連の流れを示したフローチャートである。
まず、ステップS21では、周波数設定手段370により、送信部210から送信される電波の周波数を所定の周波数faへ設定し、ステップS22へ進む。
ステップS22では、信号受信手段310から入力された信号の振幅値Saが、検知対象物である人体や尿流が検知領域内に存在しない状態である暗ノイズ状態の振幅値よりも大きいか否かを判定し、Saが暗ノイズ状態の振幅値よりも大きいという条件を満たさない場合はステップS23へ、Saが暗ノイズ状態の振幅値よりも大きいという条件を満たす場合はステップS24へ進む。
ステップS23では、現在設定している周波数faでは電波干渉が発生していないと判断し、周波数選定処理を終了する。
ステップS24では、現在設定している周波数faでは電波干渉が発生していると判断し、ステップS25へ進む。
ステップS25では、周波数faの既存値に、所定値αを加算して使用する周波数faを更新し、ステップS21へ戻り、以降の処理を繰り返す。
このように、不在判定処理、周波数選定処理を実施することにより、送信部210から送信される電波の周波数を、隣接するドップラーセンサー200との電波干渉が発生しない周波数へ設定することができる。電波干渉の原因となる送信波の周波数を電波干渉が発生しない周波数へ設定するため、同一化粧室内に同時に配置される台数や、確率によらず、電波干渉を回避することができる。また、周波数選定処理が実施されるのは、検知対象物である人体や尿流が検知領域内に存在しない状態であると不在判定処理で判断されたときであるため、検知対象物の影響により、周波数選定処理の精度が落ちるのを、防止することができる。
また、検知対象物が存在しない状態であると不在判定処理で判断したときに周波数選定処理を実施するため、電波干渉が発生していなければ、検知信号は暗ノイズ状態となる。したがって、暗ノイズ状態よりも大きな振幅値の検知信号が発生した場合には、隣接するドップラーセンサー200との電波干渉が発生したと判断することができる。干渉判定手段350は検知信号に基づき電波干渉が発生したかどうかを判定できるため、他の複雑な構成を用いることなく、簡単な構成で判断することができる。
また、電波干渉が発生しない周波数が見つかった時点で、周波数選定処理を終了しているため、周波数選定処理に要する時間を短くすることができる。これにより、ドップラーセンサー200と判定部300を、人体や尿流を検出することができる通常動作へ、早く復帰させることができる。
なお、ステップS25では、周波数faの既存値に、所定値αを加算して使用する周波数faを更新しているが、所定値αを減算、乗算、除算などにより、周波数faを更新してもよく、周波数faを既存値から変更する手法であればよい。
続いて、変形例における周波数選定処理について説明する。周波数選定処理は、周波数を所定の範囲内で変化させ、送信波の周波数を電波干渉が発生したと判断した周波数以外から選定して設定するのも好ましい様態である。この様態のドップラーセンサー200を取り付けた小便器洗浄装置の具体例について説明する。図9は、本実施形態に係る周波数選定処理の動作を示す、フローチャートである。
図9に示すように、周波数選定処理は、全体としてステップS31〜S42からなる処理が行われる。
まず、ステップS31では、周波数設定手段370により、送信部210から送信される電波の周波数を所定の周波数faへ設定し、ステップS32へ進む。
続いて、ステップS32では、信号受信手段310から入力された信号の振幅値Saが、検知対象物である人体や尿流が検知領域内に存在しない状態である暗ノイズ状態の振幅値よりも大きいか否かを判定し、Saが暗ノイズ状態の振幅値よりも大きいという条件を満たさない場合はステップS33へ、Saが暗ノイズ状態の振幅値よりも大きいという条件を満たす場合はステップS35へ進む。
ステップS33では、現在設定している周波数faでは電波干渉が発生していないと判断し、ステップS34へ進む。
ステップS34では、現在設定している周波数faを、送信部210から送信される電波の周波数として設定する候補として、選定候補リストへ登録し、ステップS36へ進む。
ステップS35では、現在設定している周波数faでは電波干渉が発生していると判断し、ステップS36へ進む。
続いて、ステップS36では、周波数設定手段370により、送信部210から送信される電波の周波数を所定の周波数fbへ設定し、ステップS37へ進む。
ステップS37では、信号受信手段310から入力された信号の振幅値Sbが、検知対象物である人体や尿流が検知領域内に存在しない状態である暗ノイズ状態の振幅値よりも大きいか否かを判定し、Sbが暗ノイズ状態の振幅値よりも大きいという条件を満たさない場合はステップS38へ、Sbが暗ノイズ状態の振幅値よりも大きいという条件を満たす場合はステップS40へ進む。
ステップS38では、現在設定している周波数fbでは電波干渉が発生していないと判断し、ステップS39へ進む。
ステップS39では、現在設定している周波数fbを、送信部210から送信される電波の周波数として設定する候補として、選定候補リストへ登録し、ステップS41へ進む。
ステップS40では、現在設定している周波数fbでは電波干渉が発生していると判断し、ステップS41へ進む。
ステップS41では、選定候補リストの中から1つの周波数を任意に選択し、送信部210から送信される電波の周波数として設定し、ステップS42へ進む。
ステップS42では、今回の周波数選定処理の結果が次回の周波数選定処理に影響するのを防ぐため、選定候補リストに登録してある周波数をすべて消去し、周波数選定処理を終了する。
このように、周波数選定処理を実施することにより、送信部210から送信される電波の周波数を、隣接するドップラーセンサー200との電波干渉が発生しない周波数へ設定することができ、さらに、最終的に設定する周波数のみではなく、複数の周波数に対して電波干渉が発生するかどうかを把握することができる。今回の具体例では、2つの周波数fa、fbに対して周波数選定処理を実施したが、3つ以上の周波数に対して実施してもよく、変化させる周波数の数が多いほど、たくさんの情報を得ることができる。なお、以降の説明においては、図8に示したように、電波干渉が発生しないと判断した周波数が見つかるとその周波数を未干渉周波数と判断し、送信波の周波数に未干渉周波数を用いる形式の周波数選定処理の実施形態を実施形態1、図9に示したように、周波数を所定の範囲内で変化させ、送信波の周波数を電波干渉が発生したと判断した周波数以外から選定して設定する形式の周波数選定処理の実施形態を実施形態2、と呼ぶ。
また、実施形態2においては、周波数の変化量(今回の具体例では、faとfbの差)が少量となるように変化させ、なおかつ変化させる周波数の数を多くすれば、電波干渉が発生している周波数帯の情報を詳細に把握することができ、より確実な周波数選定が可能になる。さらに、今回の具体例のステップS41では、選定候補リストの中から1つの周波数を任意に選択して、送信部210から送信される電波の周波数として設定したが、電波干渉が発生している周波数から一定量のマージンを持って離れた周波数を選定するようにしてもよい。これにより、周囲温度や湿度などの環境変化により、送信波の周波数に変動が生じた場合でも、隣接するドップラーセンサー200の送信部210が送信する電波の周波数と、自身の送信部210から送信される電波の周波数とが近づきすぎることはなく、電波干渉が発生するのを避けることができる。このように、電波干渉が発生している周波数から一定量のマージンを持って離れた周波数を選定する具体例を、図10を参照しながら説明する。図10は、本実施形態に係る周波数選定処理の動作を示す、概略図である。
図10に示すように、本実施形態においては、周波数選定処理中に送信部210から送信する周波数をfa〜fgの7段階に変化させている。また、隣接する周波数(faとfbなど)の変化量(差)は、2つのドップラーセンサーの間で電波干渉が発生するために必要な周波数の差よりも小さくなるように設定しているため、「設定した周波数の隙間となる周波数(faとfbの中間など)のみで電波干渉が発生するが、設定した周波数(fa、fbなど)では電波干渉が発生しない」、といったことが生じることはない。周波数選定処理の動作は図9と同様であるため、ここでは省略する。
周波数fa〜fg中で、電波干渉が発生している周波数には暗ノイズよりも大きい検知信号が発生し、この例ではfa、fe、ff、fgの4種類に電波干渉が現れている。したがって、選定候補リストには、電波干渉が発生していない、fb、fc、fdの3つが登録される。この中から、送信部210から送信される電波の周波数として、最終設定することになるが、fb、fdには、ともに隣接する周波数に電波干渉が生じていることがわかっている。したがって、電波干渉が発生する周波数帯と離れている、周波数fcに設定する。
このように、電波干渉が発生している周波数から一定量のマージンを持って離れた周波数を選定すれば、周囲温度や湿度などの環境変化により、送信波の周波数に変動が生じた場合でも電波干渉の影響を受けることがない周波数へ設定することができる。
また、周波数選定処理は、所定期間ごとに実施するのも、好ましい様態である。
送信部210から送信される電波は、周囲温度や湿度などの環境変化により周波数が変化する。したがって、環境変化が生じた場合には、電波干渉を回避するために送信部210から送信される電波の周波数を、最適な周波数へ再設定するのが望ましく、所定期間ごとに周波数選定処理を実施すればそれを実現することができる。たとえば半日に1回ずつ周波数選定処理を実施するようにすれば、日中の環境変化や、季節ごとの環境変化に追従することができ、周囲環境により周波数が大きく変化してしまう場合でも、電波干渉を回避した状態を継続することができる。
また、ドップラーセンサー200の検知対象物である人体や尿流が検知領域内に存在しない状態とは異なる状態が所定時間継続したら、強制的に周波数選定処理を実施するのも、好ましい様態である。
マイクロ波などの高周波の電波を送信するドップラーセンサーは幅広く使用されており、洗面器や大便器など、化粧室内においても小便器洗浄装置以外にも様々な機器に設置される。本発明では、周波数を変更することにより電波干渉対策を実施しているが、周波数変更機能を持たず、固定周波数の電波を送信するドップラーセンサーが、同じ化粧室内に後付で設置されることも考えられ、それらのドップラーセンサーとの間においても、送信する電波の周波数が一致、もしくは極めて近い状態になれば、電波干渉が発生する恐れがある。一旦電波干渉が生じると、大きな検知信号が発生し、人体や尿流が検知領域内にあると誤って判定し、誤動作に至ってしまう。周波数選定処理を実施すれば、固定周波数の機器に対しても電波干渉が発生しない周波数へ変更して対応できるが、これまで述べた具体例では、人体や尿流が検知領域内に存在しない状態であるときに周波数選定処理を実施するものであったため、誤動作から抜け出せない状態となってしまう。
そこで、ドップラーセンサー200の検知対象物である人体や尿流が検知領域内に存在しない状態の信号である暗ノイズと異なる状態の信号が所定時間継続したら、電波干渉が発生していると判断し、強制的に周波数選定処理を実施するようにすれば、このような状況にも対応できる。たとえば、暗ノイズとは異なる状態が5分間継続した場合に、電波干渉が発生していると判断し、強制的に周波数選定処理を実施ようにすれば、ドップラーセンサーを備えた機器が新たに近傍に設置されて電波干渉が一時的に発生してしまった場合でも、5分後には強制的に周波数選定処理を実施し、電波干渉が生じない周波数へ変更することができる。
また、判定部300には、検知対象物の動きまたは有無を検知判定するのに必要な時間である判定時間が設定されており、周波数選定処理部は、周波数選定処理において一つの周波数を送信する時間を、判定時間よりも短い時間に設定するのも好ましい様態である。
周波数選定処理中においては、周波数を複数に変更する可能性があり、一時的に電波干渉が発生する周波数の電波を送信する可能性もある。二つのドップラーセンサーの間で電波干渉が発生すると、その両方のセンサーに、振幅が大きな検知信号が現れることになる。周波数選定処理を実施しているセンサーは、その周波数を電波干渉が発生する周波数として認識するだけであるが、もう一方のセンサーでは、突然大きな検知信号が発生することになり、人体や尿流が検知領域内に存在すると誤って判定してしまう。
そこで、人体検出手段320と尿流検出手段330に、検知判定するのに必要な時間である判定時間を設定し、周波数選定処理における、一つの周波数を送信する時間は、判定時間よりも短い時間に設定する。例えば、判定時間を1秒、周波数選定処理における一つの周波数を送信する時間を0.8秒に設定すれば、周波数選定処理中に一時的に電波干渉が生じても、その時間は0.8秒間のみであり、検知判定に必要な1秒を超えることはないため、周波数選定処理を実施していないセンサーが人体や尿流を誤って判定してしまうことはない。
また、周波数選定処理部340は乱数を発生させる乱数発生手段380を備えており、周波数選定処理で使用する送信波の周波数は、乱数に基づいて設定するのも好ましい様態である。この様態のドップラーセンサー200を取り付けた小便器洗浄装置の具体例について説明する。図11は、本実施形態に係る周波数選定処理部340の構成を示すブロック図である。
周波数選定処理では電波干渉が発生しない周波数を探索することになるが、複数のドップラーセンサー200が全く同じタイミングで周波数選定処理を実施した場合、同じルールに基づいて周波数変更しても、すべての周波数で電波干渉が発生してしまうことになり、電波干渉が発生しない周波数を見つけることができない。
このような状況を回避するために、本実施形態に係る周波数選定処理部340では、図11に示すように、乱数発生手段380を備えている。乱数発生手段380以外は、図5に示した周波数選定処理部340と同じである。乱数発生手段380は乱数を発生させることができ、周波数設定手段370は、乱数発生手段380が発生した乱数に基づいて、周波数選定処理で使用する周波数を決定する。
図12は、本実施形態に係る周波数選定処理の周波数変化例を示した図である。なお図12における周波数選定処理では、実施形態2に基づく形式を例にしている。ドップラーセンサーAとドップラーセンサーBは、全く同じタイミングに周波数選定処理を開始しているが、使用する周波数帯を乱数に基づいて設定するため、お互いに使用する周波数帯は異なっている。したがって、ドップラーセンサーAとドップラーセンサーBの間で電波干渉が発生することがなく、周波数選定処理を正常に行うことができる。
このように、周波数選定処理で使用する周波数を、乱数に基づいて設定することで、複数のドップラーセンサー200が同時に周波数選定処理を行っても、電波干渉が発生する影響を一定の確率で軽減することができる。また、図12における周波数選定処理では、段階的に周波数を増加させているが、使用するすべての周波数を乱数に基づいて変化させてもよい。また、図12における周波数選定処理では、実施形態2に基づく形式を例にしているが、実施形態1に基づく形式であってもよい。また、乱数に基づき周波数を設定するため、周波数選定処理を実施しても電波干渉が生じない周波数を探すことができない可能性もあるが、もし電波干渉が生じない周波数を探すことができなかった場合は、再度乱数により周波数を設定し、周波数選定処理を繰り返してもよい。これにより、複数のドップラーセンサー200が同時に周波数選定処理を行った際に生じる、電波干渉が発生する影響を、問題ないレベルまで軽減することができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、これは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。すなわち、これらの実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各実施形態が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。また、前述した各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。