(第1実施例)
以下、本願の一実施例について図面を参照して説明する。図1に示す本願に係る画像形成装置の第1実施例であるプリンタ10は、電子写真方式によりシート(用紙やOHPシート等)にカラー画像を形成するカラーレーザプリンタである。図1では、紙面右側を装置の前側と規定し、装置を前側から見た場合に左手に来る側(紙面手前側)を左側と規定して、前後、左右及び上下の各方向を定義する。
まず、プリンタ10の概略構成について説明する。図1に示すように、プリンタ10は、略箱状のハウジング11と、ハウジング11の内部に設けられたフレーム部材(図示略)とを備えている。このフレーム部材には、給紙部13、画像形成部15、搬送ユニット17及び定着器19等が組み付けられている。また、ハウジング11内には、画像形成部15及び搬送ユニット17等に対して左側に、メインモータ65(図2参照)が設けられている。メインモータ65は、伝達ギヤ(図示略)を介して駆動力を給紙部13や搬送ユニット17等に伝達する。また、ハウジング11の下方には、給紙カセット25が設けられている。給紙カセット25は、上方が開放されて、その内部にシートを収容する略箱状体である。給紙カセット25は、プリンタ10の前面側から後方向に向かってスライドさせてハウジング11内に挿入して装着可能、及び前方に向かってハウジング11内から引き出して取り外し可能な構成となっている。
ハウジング11の上面には、画像が形成されたシートが排出される排出トレイ27が設けられている。プリンタ10は、ハウジング11内において、下方の給紙部13から搬送ユニット17、画像形成部15及び定着器19等を介して上方の排出トレイ27に到る略「S」字状の搬送経路Rでシートを搬送する。ハウジング11の前面には、下端部を揺動中心軸として開閉可能なフロントカバー29が設けられている。
次に、プリンタ10の各構成要素の詳細について説明する。給紙部13は、給紙カセット25に収容されたシートを給紙ローラ31及び分離パッド33により1枚ずつ搬送経路Rに送り出す。搬送ローラ35及びレジストローラ39は、搬送経路Rの略U字状に後方へ転向する部位に配設されており、給紙カセット25から搬送経路Rに送り出されたシートを画像形成部15に向けて搬送する。搬送ユニット17は、給紙カセット25と画像形成部15との上下方向の間に配設されており、搬送ベルト17A及び4つの転写ローラ18等を有する。搬送ベルト17Aは、画像形成部15の後端側下方に位置する駆動ローラ17B及び前端側下方に位置する従動ローラ17Cに巻き付けられている。搬送ベルト17Aは、駆動ローラ17Bが給紙部13と同期して回転することにより、駆動ローラ17Bと従動ローラ17Cとの間を循環する。搬送ベルト17Aの上側の面は、画像形成部15の直下において略水平に延在しており、シートの裏面と当接して当該シートを搬送するシート搬送面17Dとされている。
転写ローラ18の各々は、シート搬送面17Dの裏面側から搬送ベルト17Aに当接する状態で設置されている。搬送ベルト17Aは、例えば、導電性ゴムからなり、各転写ローラ18に転写電圧が印加されることにより負帯電し、その静電気力でシートをシート搬送面17Dに吸着させつつ、搬送経路Rに沿って搬送する。
画像形成部15は、スキャナ部43及び4つのプロセスカートリッジ44等を有する。プロセスカートリッジ44の各々は、ブラック、イエロー、マゼンダ、シアンの4色に対応している。以下の説明において、色ごとに区別する必要がある場合は各部の符号にK(ブラック),C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー)の添え字を付し、区別する必要がない場合は添え字を省略する。各プロセスカートリッジ44は、シート搬送面17Dを上下方向の間に挟んで転写ローラ18と対向する感光体ドラム47と、感光体ドラム47の斜め上方に位置する現像ユニット49とを有している。
スキャナ部43は、ハウジング11内の最上方に位置しており、レーザ光源、ポリゴンミラー、fθレンズ及び反射鏡等を有する。ポリゴンミラーは、例えば、複数のミラー面を有し、ポリゴンモータ66(図2参照)によって高速で回転駆動される。ポリゴンミラーは、高速回転されることで、レーザ光源から照射されるレーザ光を周期的に偏向し、fθレンズ及び反射鏡を介して感光体ドラム47上に走査ラインを順次形成する。各感光体ドラム47は、表面上にレーザ光が照射され、ブラック、イエロー、マゼンダ、シアンの4色に対応する静電潜像が形成される。
プロセスカートリッジ44の各々は、上下方向におけるスキャナ部43とシート搬送面17Dとの間において、前後方向に沿って配設されている。換言すれば、各プロセスカートリッジ44は、シートの搬送方向に沿って並んでいる。従って、プリンタ10は、シートの搬送経路R上の所定範囲内において、搬送方向に沿って各プロセスカートリッジ44が配設された、所謂ダイレクトタンデム方式の画像形成装置である。
各色の感光体ドラム47は、樹脂製円筒体の最表層に正帯電性の感光層が形成されたものである。各感光体ドラム47の近傍には、感光体ドラム47の感光層に対向するように、帯電器51が配設されている。各現像ユニット49は、後側下方が開口されたボックス形状に形成され、内部上方に設けられトナーが収容されるトナー収容室45A、トナー収容室45Aの下方に設けられた供給ローラ45B、及びトナー収容室45Aの開口から露出して感光体ドラム47と対面する現像ローラ45C等を有する。トナー収容室45A内のトナーは、供給ローラ45Bの回転によって現像ローラ45Cに供給される。現像ローラ45Cに供給されたトナーは、現像ローラ45Cの表面に担持され、層厚規制ブレードにより所定の厚みに調整された後で感光体ドラム47の表面に供給される。
また、ブラックのプロセスカートリッジ44Kは、他の色(イエロー、マゼンダ、シアン)のプロセスカートリッジ44Y,44M,44Cとは異なる駆動源で動作する。プロセスカートリッジ44Kは、感光体ドラム47等が第1モータ77(図2参照)によって回転駆動される。また、プロセスカートリッジ44Y,44M,44Cは、感光体ドラム47等が共有する第2モータ78(図2参照)によって回転駆動される。
なお、各プロセスカートリッジ44は、保守や消耗品の交換を容易にするため、各感光体ドラム47が枠状のドロワ53に保持されているとともに、各現像ユニット49がドロワ53に対して着脱可能に保持されている。ドロワ53は、フロントカバー29を開放し、前方向に向かってハウジング11内から引き出し可能、及び後方に向かってハウジング11内に挿入可能な構成となっている。また、駆動ローラ17Bの下方には、搬送ベルト17Aの表面に形成したパッチマークに赤外光を照射して画像濃度や位置ずれを検出するための検出部61が設けられている。検出部61は、検出部61から搬送ベルト17Aに向けて照射した光が、シャッター部材63によって通過あるいは遮断されるようになっている。
定着器19は、シートの搬送経路Rにおいて、画像形成部15よりも搬送方向の下流側に位置しており、加熱ローラ19A及び加圧ローラ19Bを有する。加熱ローラ19Aは、搬送ベルト17A等と同期して回転し、シートに転写されたトナーを加熱しつつ、シートに搬送力を付与する。一方、加圧ローラ19Bは、シートを加熱ローラ19A側に押圧しながら従動回転する。これにより、定着器19は、シートに転写されたトナーを加熱溶融させてシートに定着させるとともに、シートを搬送経路Rの下流側に搬送する。なお、搬送経路Rは、定着器19より下流側で、上方に略U字形状に湾曲している。そして、搬送経路Rの搬送方向の最も下流側には、排出ローラ55と排出トレイ27とが位置している。
また、ハウジング11内には、図2に示す制御部71が設けられている。図2は、プリンタ10の構成の一部を示すブロック図である。制御部71は、上記した各構成要素(第1モータ77、第2モータ78、メインモータ65、ポリゴンモータ66等)を制御して画像形成動作を行う。制御部71は、メインモータ65を駆動して給紙部13、搬送ユニット17等を稼動させる。制御部71は、給紙カセット25内のシートが画像形成部15に搬送されるのにともなって、ポリゴンモータ66を駆動してスキャナ部43を制御し、第1及び第2モータ77,78を駆動して感光体ドラム47やプロセスカートリッジ44等を制御し、上述した動作を実行させる。感光体ドラム47の各々は、回転しながら表面が帯電器51によって一様に正帯電された後、スキャナ部43から照射されるレーザビームにより露光されて、表面に画像形成用データに対応する静電潜像が形成される。
一方、現像ローラ45C上に担持され、かつ、正帯電されたトナーは、現像ローラ45Cが感光体ドラム47に対向して接触しつつ回転することにより、感光体ドラム47の表面上に形成された静電潜像に供給される。これにより、感光体ドラム47の各々は、静電潜像が可視像化され、表面に反転現像によるトナー像が担持される。各感光体ドラム47の表面上に担持されたトナー像は、各転写ローラ18に印加される転写電圧によってシートに転写される。そして、複数色のトナー像が順次重なるように転写されたシートは、定着器19に搬送されると、加熱ローラ19A及び加圧ローラ19Bにより加熱加圧されてトナー像が定着する。最後に、画像が形成されたシートが排出トレイ27に排出されて、画像形成動作が終了する。
なお、制御部71は、例えば、CPU上で動作するプログラムにより上記した画像形成動作を制御する。あるいは、制御部71を、例えば、ASICなどの専用のハードウェアで構成して、画像形成動作を制御させてもよい。また、制御部71は、例えばソフトウェアによる処理と、ハードウェアによる処理とを併用して画像形成動作を制御する構成でもよい。
また、制御部71は、上記した第1モータ77などの他に、速度検出回路68、表示部73、操作部75及び電源回路81を制御する。速度検出回路68は、各種モータ(第1モータ77、第2モータ78、メインモータ65、ポリゴンモータ66など)の回転速度を検出し、制御部71に出力する。速度検出回路68は、例えば、レゾルバ、エンコーダ、ホール素子等のパルス出力信号を用いて各種モータの回転速度を算出することができる。表示部73は、各種ランプや液晶パネルなどを備え、制御部71によって各ランプの点灯や液晶パネルの表示内容が変更される。操作部75は、入力パネルや入力スイッチなどを備え、ユーザの入力パネル等に対する操作に応じた操作信号を制御部71に出力する。また、図2は、プリンタ10の本願に係る部分を例示しており、プリンタ10には上記した構成以外にも、例えば、外部機器と接続するための図示しないネットワークインタフェースなどが設けられている。
次に、本実施例の制御部71による複数のモータの制御について説明する。第1実施例では、複数のモータの一例として第1モータ77及び第2モータ78について説明する。図3は、第1モータ77及び第2モータ78を制御する回路図の一例を示している。第1モータ77は、例えば3相交流によって駆動回転するブラシレスモータであり、U相、V相、W相の各相の巻線L1が巻回されたステータと、界磁用の永久磁石が設けられたロータとを有する。同様に、第2モータ78は、例えば、3相交流によって駆動回転するブラシレスモータであり、第1モータ77とは独立に回転駆動する。
プリンタ10は、第1モータ77に電力を供給するための第1インバータ83と、第2モータ78に電力を供給するための第2インバータ85とを備える。電源回路81は、第1インバータ83及び第2インバータ85に定格電圧VCCの電力を供給することで、第1インバータ83及び第2インバータ85を介して、第1モータ77及び第2モータ78に電力を供給する。以下の説明では、第2インバータ85が第1インバータ83と同様の構成となっているため、代表して第1インバータ83について説明し、第2インバータ85の詳細な説明を適宜省略する。
第1インバータ83は、6個のスイッチング素子SW1を有する。スイッチング素子SW1は、例えば、MOSFETである。なお、スイッチング素子SW1は、バイポーラトランジスタやIGBT等の他のスイッチング素子でもよい。スイッチング素子SW1の各々は、電源回路81の正側端子と負側(グランドGND側)端子との間に接続された一対のスイッチング素子SW1が、合計で三対設けられている。各対のスイッチング素子SW1の接続点は、第1モータ77の各相の巻線L1に接続されている。従って、第1インバータ83は、スイッチング素子SW1のオン期間及びオフ期間の割合を変更することで、各相の巻線L1に励磁される回転磁界の態様を変更することができる。電源回路81は、定格電圧VCCをスイッチング素子SW1のオン期間及びオフ期間の割合に応じた間欠的なパルス電圧として第1モータ77に供給する。
制御部71の第1制御部87は、第1インバータ83のスイッチング素子SW1に接続されており、第1インバータ83のスイッチング素子SW1に対するPWM制御信号(図中のUH,VH・・・WLの信号)を出力する。なお、PWM制御信号UHは、U相に対応する一対のスイッチング素子SW1のうち、正側端子に接続されたスイッチング素子SW1をオンオフするPWM制御信号であることを示している。また、PWM制御信号ULは、U相に対応する負側端子に接続されたスイッチング素子SW1をオンオフするPWM制御信号であることを示している。また、以下の説明において、相ごとに区別する必要がある場合はPWM制御信号にUHなどの符号を付し、総称する場合は符号を省略する。
図4は、第1制御部87が第1インバータ83のスイッチング素子SW1に供給するPWM制御信号の位相を例示している。図4に示すように、各相に対応するPWM制御信号は、互いに120度ずつ位相がずれたパルス信号として各相のスイッチング素子SW1に供給される。第1制御部87は、PWM制御信号の1つの通電期間(図中の「PW」で示すパルス信号)内において、スイッチング素子SW1を複数回オンオフするPWM制御信号(図5のPWM制御信号x1H参照)を供給し、第1インバータ83から第1モータ77の巻線L1に供給される通電の入り切りを制御(PWM制御)する。これにより、第1制御部87は、第1インバータ83を介して第1モータ77の回転速度S1を制御することができる。
また、図3に示すように、第1インバータ83は、各スイッチング素子SW1やスイッチング素子SW1に接続された配線等に流れる電流のピーク値を監視するための第1コンパレータ91が接続されている。第1コンパレータ91の非反転入力端子には、スイッチング素子SW1の負端子側とグランドGNDとの間に接続された検出用の抵抗R1の両端に印加される電圧が入力される。また、第1コンパレータ91の反転入力端子には、基準電圧Vref1が入力される。第1コンパレータ91は、抵抗R1の電圧と、基準電圧Vref1とを比較し、比較結果を検出信号SI1として第1制御部87に出力する。
第1コンパレータ91は、スイッチング素子SW1に流れる電流のピーク値が所定値を超え、抵抗R1の電圧が基準電圧Vref1以上になると検出信号SI1の信号レベルをローレベルからハイレベルに反転する。従って、第1制御部87は、検出信号SI1の信号レベルを判定することで、第1インバータ83の各スイッチング素子SW1に流れる電流のピーク値を監視することができる。第1制御部87は、スイッチング素子SW1の電流のピーク値が所定値を超えた場合に、第1インバータ83へのPWM制御信号の供給を停止し、全てのスイッチング素子SW1をオフする。これにより、第1制御部87は、第1インバータ83のスイッチング素子SW1やスイッチング素子SW1を接続する配線等に過電流が流れるのを防止して、回路を保護することが可能となる。
同様に、制御部71の第2制御部89は、第2インバータ85のスイッチング素子SW2のオン期間及びオフ期間の割合を変更することで、第2モータ78の各相の巻線L2に励磁される回転磁界の態様を変更することができる。第2制御部89は、各相に対応するPWM制御信号の通電期間PW(図4参照)内において、スイッチング素子SW2を複数回オンオフし、第2インバータ85から第2モータ78の巻線L2に供給される通電の入り切りを制御する。これにより、第2制御部89は、第2インバータ85を介して第2モータ78の回転速度S2を制御することができる。
また、第2インバータ85が備える第2コンパレータ93の非反転入力端子には、スイッチング素子SW2の負端子側とグランドGNDとの間に接続された検出用の抵抗R2の両端に印加される電圧が入力される。また、第2コンパレータ93の反転入力端子には、基準電圧Vref2が入力される。第2コンパレータ93は、抵抗R2の電圧と、基準電圧Vref2とを比較し、比較結果を検出信号SI2として第2制御部89に出力する。第2制御部89は、第2コンパレータ93の検出信号SI2に基づいて、スイッチング素子SW2に流れる電流のピーク値が所定値を超えた場合に、第2インバータ85へのPWM制御信号の供給を停止する。上記したとおり、制御部71は、第1制御部87によってスイッチング制御される第1インバータ83のスイッチング素子SW1とは独立に、第2制御部89が第2インバータ85のスイッチング素子SW2をスイッチング制御することができるため、各モータ77,78の各々を独立に駆動制御することができる。
ここで、制御部71は、第1及び第2モータ77,78が起動を開始してから、第1及び第2インバータ83,85に対して仮に同時にPWM制御信号を供給したときの第1モータ77に供給される電流の電流値I1と第2モータ78に供給される電流の電流値I2との電流和Isが電源回路81の定格電流I3を超えなくなるまでの起動状態において、同時に発生する通電期間PW内で第1及び第2インバータ83,85の一方のみにPWM制御信号が供給されるように制御する。また、本実施例では、制御部71は、第1インバータ83(第1モータ77)を優先して動作させる。なお、ここでいう、第1及び第2モータ77,78の「起動の開始」とは、第1及び第2制御部87,89から第1及び第2インバータ83,85に対してPWM制御信号の供給を開始した時点をいう。
図3に示すように、第1制御部87は、第2制御部89に許可信号EN1を伝達する第1伝達回路95を備える。許可信号EN1は、第2制御部89が第2インバータ85にPWM制御信号を供給してもよいか否かを示す信号である。第2制御部89は、例えば、ローレベルの許可信号EN1が入力されると、第2インバータ85へのPWM制御信号の供給を停止する。この状態で、第1制御部87は、第1モータ77の起動を開始してから第1コンパレータ91からハイレベルの検出信号SI1が入力されると、第1インバータ83へのPWM制御信号の供給を停止する。また、第1伝達回路95は、第1インバータ83へのPWM制御信号の供給が停止するのに合わせて、許可信号EN1の信号レベルをローレベルからハイレベルに変更する。第2制御部89は、許可信号EN1の信号レベルが反転したことを検出すると、第2モータ78の起動を開始、即ち第2インバータ85へのPWM制御信号の供給を開始する。第1及び第2制御部87,89は、このような排他的なPWM制御を起動状態において実施することで、起動時に第1及び第2インバータ83,85等に流れる突入電流の発生時期をずらし重畳的に増加することを抑制するとともに、起動時間の短縮を図ることが可能となる。なお、制御部71が起動状態を判定する処理については後述する。
次に、第1及び第2インバータ83,85の起動時の動作について説明する。図4に示すPWM制御信号は、1つの通電期間PW内において、PWM制御信号のハイレベル及びローレベルの期間、即ち、スイッチング素子SW1,SW2のオン期間及びオフ期間のデューティ比が変更される。第1及び第2制御部87,89は、パルス幅変調によって通電期間PW内のオン期間及びオフ期間を変更する。そして、第1及び第2制御部87,89は、通電期間PW内に第1及び第2インバータ83,85をPWM制御しつつ、PWM制御信号のデューティ比、換言すれば、オン期間とオフ期間との比率を変更することにより各モータ77,78の回転速度S1,S2を目標速度St1,St2(図6参照)に近づける。
図5は、第1モータ77のクロック信号CLK1と、3相のPWM制御信号のうち、U,V,Wいずれかの相の正端子側のスイッチング素子SW1のPWM制御信号x1H(UH,VH,WHのいずれか)とを対応させたタイミングチャート、及び、第2モータ78のクロック信号CLK2と、3相のPWM制御信号のうち、U,V,Wいずれかの相の正端子側のスイッチング素子SW2のPWM制御信号x2H(UH,VH,WHのいずれか)とを対応させたタイミングチャートを示している。また、本実施例の第1及び第2モータ77,78は、PWM制御の動作クロックであるクロック信号CLK1,CLK2が同一周期であるものとする。クロック信号CLK1,CLK2の周期が異なる例については後述する。また、図5はPWM制御信号x1H,x2Hを模式的に示している。
なお、本実施例では、第1及び第2インバータ83,85の各々は、第1及び第2制御部87,89によって互いに独立してスイッチング制御される。このため、第1及び第2インバータ83,85に供給されるPWM制御信号x1H,x2Hは、クロック信号CLK1,CLK2の同一周期において互いに同相、あるいは異相(U,V,Wいずれかの相)のPWM制御信号となる。例えば、PWM制御信号x1H,x2Hは、同一周期においてPWM制御信号UH同士となり互いに同相の場合もあれば、PWM制御信号UHとPWM制御信号VHとなり互いに異相の場合もある。
まず、第1及び第2制御部87,89は、第1及び第2モータ77,78を起動させるために、正端子側の通電期間PW(図4参照)に同期してPWM制御信号x1H,x2Hを第1及び第2インバータ83,85に供給する処理を開始する。優先度が高い第1モータ77に対応する第1制御部87は、時間T0において、クロック信号CLK1の立ち上がりに同期してPWM制御信号x1Hをスイッチング素子SW1に供給する。一方で、第2制御部89は、時間T0においては、第1伝達回路95からの許可信号EN1がローレベルであるため、クロック信号CLK2の立ち上がりに同期したPWM制御信号x2Hの供給が制限される。
ここで、第1及び第2モータ77,78の巻線L1,L2には、起動にともなって電圧が印加される。巻線L1,L2は、第1及び第2モータ77,78の停止している状態や各モータ77,78の回転速度S1,S2が低い状態での電圧印加時には低抵抗値を示し、ピーク値が高い突入電流が生じる。また、巻線L1,L2は、第1及び第2モータ77,78の回転速度S1,S2が増加するのにともなって流れる電流が減少する。このため、第1及び第2制御部87,89は、起動を開始してから一定期間において、第1及び第2コンパレータ91,93の検出信号SI1,SI2に基づいて、第1及び第2インバータ83,85へのPWM制御信号x1H,x2Hの供給を停止することにより、第1及び第2モータ77,78に供給される電流の電流値I1,I2それぞれが電源回路81の定格電流I3を超えないように制限する。
例えば、時間T1において、第1インバータ83の抵抗R1に所定以上の電圧が生じると、第1コンパレータ91は、検出信号SI1の信号レベルを反転させる。第1制御部87は、検出信号SI1に基づいて、第1インバータ83へのPWM制御信号x1Hの供給を停止し、電流値I1が電源回路81の定格電流I3を超えないように制限する。この場合、第1インバータ83のPWM制御信号x1Hにおける時間T0から時間T1までの期間が、スイッチング素子SW1をオンするオン期間ONT1となる。また、第1インバータ83のPWM制御信号x1Hは、時間T4において、クロック信号CLK1の次の立ち上がりに同期して供給が開始される。従って、第1インバータ83のPWM制御信号x1Hにおける時間T1から時間T4までの期間が、スイッチング素子SW1をオフするオフ期間OFT1となる。
第1制御部87は、仮に、突入電流により電流値I1が定格電流I3を超える可能性がなければ、より短時間で第1モータ77の回転速度S1を目標速度St1まで上げるために、例えば、時間T3までPWM制御信号x1Hを供給する(図5の破線で示す波形)。この時間T0から時間T3までの期間は、例えば、第1制御部87が第1モータ77の回転速度S1やトルクに応じて必要な時間を決定する。しかしながら、実際は、突入電流により電流値I1が定格電流I3を超える可能性があるので、第1インバータ83等の回路を保護するために、PWM制御信号x1Hの実際のオン期間ONT1は短くなる。そこで、本実施例のプリンタ10では、この突入電流によって制限された時間を利用して、第1及び第2モータ77,78に電力を供給するタイミングをずらすことで突入電流の抑制及び起動時間の短縮を図る。
つまり、時間T1において、第1伝達回路95は、許可信号EN1をローレベルからハイレベルに変更する。そして、第2制御部89は、許可信号EN1の信号レベルの変化を検出し、第2インバータ85にPWM制御信号x2Hの供給を開始する。また、次の時間T2において、第2制御部89は、第1制御部87と同様に、第2インバータ85へのPWM制御信号x2Hの供給を停止し、電流値I2が電源回路81の定格電流I3を超えないように制限する。この場合、第2インバータ85のPWM制御信号x2Hにおける時間T1から時間T2までの期間が、スイッチング素子SW2をオンするオン期間ONT2となる。また、第2インバータ85のPWM制御信号x2Hにおける時間T0から時間T4までの1周期のうち、オン期間ONT2を除く期間が、スイッチング素子SW2をオフするオフ期間OFT2となる。
そして、第1及び第2制御部87,89は、第1及び第2インバータ83,85に対して仮に同時にPWM制御信号を供給したときの電流値I1と電流値I2との電流和Isが電源回路81の定格電流I3を超える起動状態が終了する時間T21まで、上記した排他的なPWM制御を継続する。時間T21の後、第1及び第2制御部87,89は、上記した排他的なPWM制御を終了する。やがて、第1及び第2モータ77,78の回転速度S1,S2が、それぞれの目標速度St1,St2に収束し、安定する。第1及び第2モータ77,78の回転速度S1,S2が安定すると、プリンタ10は、所望の印刷画質を保証する印刷処理を開始できる。ここでいう「回転速度S1,S2が安定する」とは、例えば、目標速度St1,St2を基準にして±数%の範囲に回転速度S1,S2が収まっている時間が所定時間継続する状態をいう。
なお、第2制御部89は、第1制御部87のPWM制御信号x1Hの供給タイミングとずらして遅れてPWM制御信号x2Hの供給を開始するが、仮に、電流制限が生じない場合であっても次のクロック信号CLK1,CLK2が立ち上がるまでにPWM制御信号x2Hの供給を停止する。本実施例の第2制御部89では、電流制限が生じない場合に、第2モータ78の回転速度S2及びトルクに応じて定められた所望のオン期間の終了時点でPWM制御信号x2Hの供給を停止する。具体的には、図5の時間T6において、第2制御部89は、許可信号EN1に基づいて、第2インバータ85にPWM制御信号x2Hの供給を開始する。その一方で、第2制御部89は、所望のオン期間が終了する時間T7において、電流制限の有無に拘わらず、PWM制御信号x2Hの供給を停止する。これにより、第1制御部87がPWM制御信号x1Hの供給を開始する際には、第2制御部89は、PWM制御信号x2Hの供給を停止する。
次に、制御部71が、第1及び第2モータ77,78の起動状態から電流和Isが電源回路81の定格電流I3を超えなくなる状態への移行を判定する処理について説明する。
図3に示すように、制御部71には、電源回路81から第1インバータ83及び第1モータ77に供給される電流の電流値I1と、電源回路81から第2インバータ85及び第2モータ78に供給される電流の電流値I2とが入力される。
図6は、第1及び第2モータ77,78の起動にともなって変化する電流値I1,I2及び回転速度S1,S2を示している。図6中の波形Wi1は第1モータ77に対応する電流値I1の経時変化を示している。また、波形Wi2は第2モータ78に対応する電流値I2の経時変化を示している。波形Wisは波形Wi1及び波形Wi2を合成した波形、即ち、電流和Isの経時変化を示している。
また、波形Ws1は、第1モータ77の回転速度S1の経時変化を示している。波形Ws2は、第2モータ78の回転速度S2の経時変化を示している。図6に示すように、本実施例において、第1モータ77を制御する第1制御部87が目標とする目標速度St1は、第2モータ78を制御する第2制御部89が目標とする目標速度St2に比べて速い。
まず、制御部71は、第1及び第2モータ77,78の起動時に増減する電流値I1,I2の電流和Isを電源回路81の定格電流I3と比較することによって、第1及び第2モータ77,78の起動状態が終了したかどうかを判定する。なお、本実施例の第1及び第2インバータ83,85では、排他的なPWM制御が実施されるため、時間T21までのある時点のタイミングに着目すると、両インバータ83,85のうちいずれか一方にしか電流が供給されていない。このため、ここでいう電流和Isは、同時に生じる電流の電流値I1,I2の和を意味せず、例えば、クロック信号CLK1,CLK2の同一周期中の間において供給される電流値I1,I2の和と定義することができる。また、時間T21を過ぎると、同時に電流が供給されるので、電流和Isは、電流値I1,I2を合成した値となる。
詳述すると、巻線L1,L2には、第1及び第2モータ77,78の起動時に突入電流が生じる。突入電流のピーク値は、第1及び第2モータ77,78の回転速度S1,S2(図中の波形Ws1,Ws2)が増加するに従って減少する。このため、図6に示すように、波形Wi1,Wi2は、起動時から一定時間だけ増加し最大値となった後に、減少する。
例えば、電流和Isの波形Wisは、起動時から増加し、定格電流I3を一度超えてさらに増加して最大値となる。また、波形Wisは、最大値となった後に減少を開始し、時間T21において再び定格電流I3となる。波形Wisが最大値から定格電流I3まで減少した状態では、第1及び第2インバータ83,85における突入電流のピーク値が小さくなっており、検出信号SI1,SI2に基づいた電流制限が実行されなくなる、あるいは実行される回数が少なくなっている。その結果、時間T21の経過以降、第1及び第2インバータ83,85に同時に通電されたとしても、電流値I1,I2の和が電源回路81の定格電流I3を超える可能性が極めて低くなっている。従って、制御部71は、この波形Wisが最大値をとった後に再度定格電流I3となるタイミングを、第1及び第2モータ77,78の起動状態の終了として検出する。制御部71は、例えば、電源回路81から入力される電流値I1,I2に基づいて電流和Isを演算する。制御部71は、電流和Isが最大値をとった後に定格電流I3まで減少したことを検出すると、第1及び第2モータ77,78の起動状態が終了したと判定する。
制御部71は、図5及び図6に示す時間T21において、電流和Isが定格電流I3未満となったことを検出すると、第1制御部87の第1伝達回路95からの許可信号EN1に基づいた第2制御部89による排他的なPWM制御を終了させる。これにより、第2制御部89は、第1伝達回路95から伝達される許可信号EN1の信号レベル(第1制御部87による第1モータ77への電流の供給状態)に拘わらず、換言すれば、第1制御部87が第1インバータ83のスイッチング素子SW1をオンするか否かに拘わらず、クロック信号CLK2に基づいたPWM制御を実施する。第2制御部89は、クロック信号CLK2の立ち上がるタイミングに遅れることなく、同期してPWM制御信号x2Hの供給を行う。
なお、第1及び第2モータ77,78の起動状態が終了したかを判定する構成は、上記した電流和Isを用いる構成に限らない。制御部71は、第1及び第2モータ77,78の起動を開始してからの経過時間に基づいて起動状態か否かを判定してもよい。例えば、予めシミュレーション等によって電流和Isが定格電流I3となる時間T21の平均時間を測定し、その平均時間を制御部71に設定しておく。これにより、制御部71は、起動を開始してから設定された平均時間だけ時間が経過した時点を、起動状態から安定状態への移行として判定することが可能となる。
あるいは、制御部71は、第1及び第2モータ77,78の各々の回転速度S1,S2に基づいて起動状態か否かを判定してもよい。例えば、電流和Isが定格電流I3未満となる際の第2モータ78の回転速度N1(図6参照)及び第1モータ77の回転速度N2を予め取得し制御部71に設定しておく。これにより、制御部71は、例えば、起動を開始してから第1及び第2モータ77,78の各々の回転速度S1,S2が、回転速度N1,N2に到達した時点を起動状態の終了として判定することが可能となる。あるいは、制御部71は、第1及び第2モータ77,78の各々の回転速度S1,S2のうち、いずれか一方の回転速度S1,S2が回転速度N1,N2に到達した時点を起動状態の終了として判定してもよい。
また、排他的なPWM制御を終了するタイミングの判定は、電流値I1,I2の電流和Isが定格電流I3まで減少したタイミングに限らない。例えば、制御部71は、第1及び第2コンパレータ91,93の検出信号SI1,SI2の各々の信号レベルが、所定時間だけ反転しなくなったタイミング、換言すれば、スイッチング素子SW1,SW2に流れる突入電流のピーク値が所定時間だけ制限値を超えなくなったタイミングを、排他的処理を終了するタイミングとしてもよい。
因みに、第1制御部87及び第1インバータ83は、第1駆動回路の一例である。第1伝達回路95は、伝達回路の一例である。許可信号EN1は、供給状態の一例である。オン期間ONT1は、第1オン期間の一例である。オフ期間OFT1は、第1オフ期間の一例である。クロック信号CLK1の周期は、第1周期の一例である。第2制御部89及び第2インバータ85は、第2駆動回路の一例である。オン期間ONT2は、第2オン期間の一例である。オフ期間OFT2は、第2オフ期間の一例である。クロック信号CLK2の周期は、第2周期の一例である。電流和Isに基づいた起動状態の判定を実施する場合の制御部71は、電流検出回路の一例である。電源回路81は、電流源の一例である。経過時間に基づいて起動状態の判定を実施する場合の制御部71は、計時回路の一例である。
以上、上記した第1実施例によれば、以下の効果を奏する。
<効果1>第1制御部87は、第1インバータ83のスイッチング素子SW1をオンオフし、第1モータ77への電力(電流)供給をオンするオン期間ONT1を変更することによって、第1モータ77の回転速度S1を制御する。同様に、第2制御部89は、第2インバータ85のスイッチング素子SW2をオンオフし、第2モータ78への電力供給をオンするオン期間ONT2を変更することによって、第2モータ78の回転速度S2を制御する。第1制御部87は、第1モータ77に電力を供給しているか否かを示す許可信号EN1を、第2制御部89に伝達するための第1伝達回路95を備える。そして、第2制御部89は、第1及び第2モータ77,78の起動にともなって第1伝達回路95から伝達される許可信号EN1に基づいて、第1モータ77のオフ期間OFT1中に第2モータ78への電力供給をオンする。第1及び第2制御部87,89は、このような排他的なPWM制御を起動状態において実施することで、第1及び第2モータ77,78の巻線L1,L2に流れる突入電流の発生時期をずらし重畳的に増加することを抑制することが可能となる。これにより、当該プリンタ10によれば、電源回路81の故障や電源回路81と第1及び第2インバータ83,85とを接続する配線の切断などの不具合が生じるのを防止することが可能となる。
また、本実施例の第1モータ77は、第2モータ78に比べて優先度が高く設定されており、第2モータ78に先行して電力が供給されることとなる。従って、第1モータ77は、目標速度St1に安定するまでの時間の短縮を図ることが可能となる。ここで、画像形成部15は、第1及び第2モータ77,78の両方が安定状態とならなければ全ての色のプロセスカートリッジ44を駆動して所望の印刷処理を開始することができない。このため、画像形成部15全体としての起動時間の短縮を図るためには、第1及び第2モータ77,78は、起動時間がより長い方のモータの起動時間を短縮する必要がある。例えば、本実施例の第1モータ77は、第2モータ78に比べて目標速度St2に安定するまでの起動時間が長いものとする。この場合、本実施例のプリンタ10では、起動時間がより長い第1モータ77の優先度を高くすることによって、仮に第2モータ78の起動時間が若干遅延したとしても、画像形成部15の起動時間、ひいてはプリンタ10の印刷処理が開始可能となるまでに要する時間を短縮することが可能となる。以上のように、本実施例のプリンタ10によれば、起動時の突入電流を抑え、且つ、起動時間の短縮を図ることが可能となる。
<効果2>第1制御部87は、第1コンパレータ91の検出信号SI1の信号レベルを判定することで、第1インバータ83の各スイッチング素子SW1に流れる電流のピーク値を監視している。第1制御部87は、スイッチング素子SW1の電流のピーク値が上限値を超えた場合に、第1インバータ83へのPWM制御信号の供給を停止し、全てのスイッチング素子SW1をオフする。つまり、第1制御部87は、電流制限に応じてオン期間ONT1を短縮させる。これにより、第1制御部87は、第1インバータ83のスイッチング素子SW1やスイッチング素子SW1を接続する配線等に過電流が流れるのを防止して、回路を保護することが可能となる。一方で、第1モータ77のオフ期間OFT1が電流制限によって相対的に長くなるため、第2制御部89は第2モータ78への電力供給が容易となる。
<効果3>第1制御部87は、電流制限によって第1モータ77への電力供給を停止した後に、次のクロック信号CLK1の立ち上がりに同期して第1モータ77への電力供給を開始している(図5の時間T4参照)。つまり、第1制御部87は、第2モータ78の供給状態に拘わらず、クロック信号CLK1に応じたPWM制御を実施している。このような構成では、第1制御部87は、第2制御部89の供給状態を監視する必要がない。
<効果4>第1制御部87がPWM制御に用いるクロック信号CLK1の周期は、第2制御部89のクロック信号CLK2の周期と同一周期となっている。これにより、第1及び第2制御部87,89は、同期して処理することが可能となり、排他的なPWM制御を実施する処理内容の簡易化を図ることが可能となる。
<効果5>本実施例の第1モータ77の目標速度St1は、第2モータ78の目標速度St2に比べて速い。目標速度St1,St2が速いモータは、一般的には、起動時間が長くなる。従って、本実施例のプリンタ10では、起動時間がより長い第1モータ77の優先度を高くすることによって、印刷処理が開始可能となるまでに要する時間を短縮することが可能となる。
<効果6>制御部71は、時間T21(図5及び図6参照)において、電流和Isが定格電流I3となったことを検出すると、第2制御部89に対して許可信号EN1に基づいた排他的なPWM制御を終了させる。第2制御部89は、第1伝達回路95から伝達される許可信号EN1の信号レベル(供給状態)に拘わらず、クロック信号CLK2に基づいたPWM制御を実施する。電流和Isが定格電流I3まで減少した状態では、第1及び第2インバータ83,85は、電流制限が生じる状況が少なくなっており、同時に通電されたとしても電源回路81の定格電流I3を超える可能性が極めて低くなる。このため、当該プリンタ10によれば、第1及び第2インバータ83,85へ同時に通電を開始するタイミングを適切に判断して供給することができ、電源回路81への負荷を低減できる。
<効果7>制御部71は、例えば、電源回路81から入力される電流値I1,I2に基づいて電流和Isを演算する。制御部71は、電流和Isが最大値をとった後に定格電流I3まで減少したことを検出すると、起動状態から安定状態への移行であると判定する。これにより、制御部71は、第1及び第2インバータ83,85へ同時に通電を開始するタイミングを適切に判断することが可能となる。
(第2実施例)
次に、第2実施例について図7を参照して説明する。上記第1実施例では、第1及び第2モータ77,78のクロック信号CLK1,CLK2を同一周期とした場合を例に説明したが、第2実施例ではクロック信号CLK1,CLK2の周期が互いに異なる場合について説明する。一例として、第2実施例では、周期が長いクロック信号CLK1で駆動するモータとしてメインモータ65が、周期が短いクロック信号CLK2で駆動するモータとしてポリゴンモータ66が適用された場合について説明する。なお、以下の説明では、図7のタイミングチャートを用いて説明する。メインモータ65及びポリゴンモータ66を駆動する回路については、図3に示した回路と同様の回路により実現が可能であるため、同一の符号を用いて説明する。
図7に示すように、まず、メインモータ65及びポリゴンモータ66の起動にともなって、第1及び第2制御部87,89(図3参照)は、PWM制御信号x1H,x2Hを第1及び第2インバータ83,85に供給する処理を開始する。優先度が高いメインモータ65は、時間T0において、クロック信号CLK1の立ち上がりに同期して電力が供給される(図中のオン期間ONT1参照)。一方で、ポリゴンモータ66は、メインモータ65の供給状態に応じて、電力の供給が制限される。メインモータ65は、ポリゴンモータ66に遅れて時間T1から電力の供給が開始される。
さらに、ポリゴンモータ66は、クロック信号CLK2の周期がメインモータ65のクロック信号CLK1に比べて短いため、メインモータ65のオフ期間OFT1中の時間T3において、クロック信号CLK2の立ち上がりが再度発生する。ポリゴンモータ66を駆動する第2制御部89は、第1伝達回路95の許可信号EN1に基づいて、第1インバータ83がメインモータ65に電力を供給していないことを検出すると、第2インバータ85を動作させてポリゴンモータ66へ電力を供給する(図中のオン期間ONT2参照)。第2制御部89は、クロック信号CLK2の立ち上がりに同期して、ポリゴンモータ66へ電力を供給する。つまり、本実施例では、優先度が低いモータを、クロック信号CLK2の周期が短いモータ(本実施例ではポリゴンモータ66)に設定することで、優先度が高いモータ(本実施例ではメインモータ65)のオフ期間OFT1中に電力供給を実施する機会が増加することとなる。
また、本実施例では、メインモータ65へのPWM制御を優先する。このため、図7に示すように、第2制御部89は、時間T5から開始したオン期間ONT2中に第1制御部87のクロック信号CLK1が立ち上がると、第1伝達回路95の許可信号EN1に基づいて、ポリゴンモータ66への電力供給を停止する。第2制御部89は、例えば、時間T5から時間T7まで電力供給を実施する予定であっても、第1制御部87の駆動にともなう制限によってクロック信号CLK1が立ち上がった時間T6で供給を停止することとなる。
因みに、メインモータ65は、第1モータの一例である。クロック信号CLK1の周期は、第1周期の一例である。ポリゴンモータ66は、第2モータの一例である。クロック信号CLK2の周期は、第2周期の一例である。
以上、上記した第2実施例によれば、以下の効果を奏する。
<効果1>ポリゴンモータ66のクロック信号CLK2は、メインモータ65のクロック信号CLK1に比べて周期が短い。このような構成では、周期が長いメインモータ65を優先させた制御を実施することで、周期が短いポリゴンモータ66に電力を供給する機会を、メインモータ65への供給状態を考慮しながらも増加させることができ起動時間の短縮が可能となる。
<効果2>第2制御部89は、クロック信号CLK2が立ち上がるタイミングにおいて、第1インバータ83がメインモータ65に電力供給していないことを検出すると、クロック信号CLK2の立ち上がりに同期してポリゴンモータ66へ電力を供給する。これにより、ポリゴンモータ66は、メインモータ65がオフ期間OFT1中にクロック信号CLK2が立ち上がると、直ちに電力が供給されることとなる。
<効果3>本実施例のプリンタ10によれば、例えば、ポリゴンモータ66の目標速度(第1実施例における目標速度St2)が、メインモータ65の目標速度(第1実施例における目標速度St1)に比べて速い場合には、起動時間がより長いポリゴンモータ66に電力を供給する機会を増加させることによって、印刷処理が開始可能となるまでに要する時間を短縮することが可能となる。
<効果4>一般的には、ポリゴンモータ66の制御に用いられるクロック信号CLK2は、メインモータ65のクロック信号CKL1に比べて周期が短い。従って、メインモータ65及びポリゴンモータ66に対して、上記した周期に応じた排他的なPWM制御を実施することは極めて有効である。
(第3実施例)
次に、第3実施例について図8及び図9を参照して説明する。上記第1実施例では第1制御部87のみが第1伝達回路95を備える場合を例に説明したが、第3実施例では第2制御部89も第2伝達回路97を備える場合について説明する。また、一例として、第3実施例では、周期が長いクロック信号CLK1で駆動するメインモータ65と、周期が短いクロック信号CLK2で駆動するポリゴンモータ66の場合について説明する。なお、以下の説明では、第1及び第2実施例と同様の構成については、同一符号を付し、その説明を適宜省略する。
図8に示すように、ポリゴンモータ66を駆動する第2伝達回路97は、許可信号EN2を第1制御部87に伝達する第2伝達回路97を備える。第2伝達回路97は、電流制限によって第2インバータ85へのPWM制御信号の供給が停止するのに合わせて、許可信号EN2の信号レベルを変更する。第1制御部87は、許可信号EN2に基づいて、第1インバータ83へのPWM制御信号の供給を開始する。つまり、第3実施例の第1及び第2制御部87,89では、互いの供給状態を監視する構成となっている。
このため、図9に示すように、第2制御部89は、時間T5から開始したオン期間ONT2中に第1制御部87のクロック信号CLK1が立ち上がったとしも電力供給を予定していた時間T7までポリゴンモータ66への電力供給を継続する。一方で、第1制御部87は、時間T6においてクロック信号CLK1が立ち上っても、第2伝達回路97の許可信号EN2に基づいて、メインモータ65への電力供給を時間T7まで停止する。従って、本実施例の第1及び第2制御部87,89では、どちらか一方の制御部がPWM制御信号を供給している場合には、他方の制御部は、一方のPWM制御信号の供給が終了するまで待機することとなる。
因みに、第2伝達回路97は、伝達回路の一例である。メインモータ65は、第1モータの一例である。クロック信号CLK1の周期は、第1周期の一例である。ポリゴンモータ66は、第2モータの一例である。クロック信号CLK2の周期は、第2周期の一例である。
以上、上記した第3実施例によれば、以下の効果を奏する。
<効果1>制御部71は、第1制御部87に加え、第2伝達回路97にも供給状態を伝達する第2伝達回路97が設けられている。第1制御部87は、第2伝達回路97の許可信号EN2に基づいて、第1インバータ83へのPWM制御信号の供給を開始する。このような構成では、第1及び第2制御部87,89が、互いの供給状態を監視するため、排他的な制御をより確実に実施することが可能となる。
なお、本発明は、上記各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。
例えば、上記各実施例では、本願の画像形成装置としてカラー印刷が可能なプリンタ10を例に説明したが、これに限定されない。例えば、画像形成装置は、単色のモノクロプリンタや画像形成機能の他にFAX機能などを備えた複合機でもよい。
あるいは、本願に開示される技術は、複数のモータを制御するモータ制御装置、例えば、画像読み取り装置のモータ制御装置にも適用できる。このモータ制御装置では、例えば、画像読み取り装置が備えるモータとして、シートを取り込む自動原稿給紙(オートドキュメントフィーダ:ADF)装置のモータや、画像を読取るキャリッジを移動させる移動読取(フラットベッド:FB)装置のモータを制御するのに用いることができる。この場合、モータ制御装置は、画像形成部15を備える必要はない。
また、第1及び第2制御部87,89は、第1及び第2コンパレータ91,93の検出信号SI1,SI2とは異なる方法によって、起動状態における電流制御を実施してもよい。例えば、第1及び第2制御部87,89は、電力供給の時間を制限して起動時の電流制限を実施してもよい。この場合、第1及び第2インバータ83,85は、第1及び第2コンパレータ91,93を省略した回路構成に変更することができる。
また、制御部71は、3以上のモータに対して排他的なPWM制御を実施してもよい。
また、第1実施例では、例えば、図5の時間T1に示すように、第2制御部89を、第1モータ77への電力供給が停止後、直ちに、第2モータ78への電力供給を開始する設定としたが、時間T1から一定時間を空けて供給を開始する設定でもよい。
また、第1実施例において、第2インバータ85は、第2コンパレータ93を備えなくともよい。
また、上記実施例では、電流値I1と電流値I2との電流和Isが電源回路81の定格電流I3を超える状態が終了する時間T21において排他的なPWM制御を停止したが、時間T21以降も継続して排他的なPWM制御を実施してもよい。