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JP6354157B2 - 電荷輸送性材料、該材料を用いたインク組成物、有機エレクトロニクス素子、有機エレクトロルミネセンス素子、表示素子、表示装置及び照明装置 - Google Patents

電荷輸送性材料、該材料を用いたインク組成物、有機エレクトロニクス素子、有機エレクトロルミネセンス素子、表示素子、表示装置及び照明装置 Download PDF

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重昭 舟生
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直紀 浅野
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Description

本発明の実施形態は、電荷輸送性材料、該材料を用いたインク組成物に関する。また、本発明の他の実施形態は、上記電荷輸送性材料、又は該材料を含むインク組成物を用いた、有機エレクトロニクス素子、有機エレクトロルミネセンス素子(以下、「有機EL素子」ともいう)、表示素子、照明装置、及び表示装置に関する。
有機エレクトロニクス素子は、有機物を用いて電気的な動作を行う素子であり、省エネルギー、低価格、及び柔軟性といった特長を発揮できると期待され、従来のシリコンを主体とした無機半導体に替わる技術として注目されている。
有機エレクトロニクス素子の一例として、有機EL素子、有機光電変換素子、有機トランジスタなどが挙げられる。
有機エレクトロニクス素子の中でも有機EL素子は、例えば、白熱ランプ、ガス充填ランプの代替えとして、大面積ソリッドステート光源用途として注目されている。また、フラットパネルディスプレイ(FPD)分野における液晶ディスプレイ(LCD)に置き換わる最有力の自発光ディスプレイとしても注目されており、製品化が進んでいる。
有機EL素子は、使用される有機材料から、低分子型有機EL素子及び高分子型有機EL素子の2つに大別される。高分子型有機EL素子では、有機材料として高分子材料が用いられ、低分子型有機EL素子では、低分子材料が用いられる。高分子型有機EL素子は、主に真空系で成膜が行われる低分子型有機EL素子と比較して、印刷やインクジェットなどの湿式プロセスによる簡易成膜が可能であることから、今後の大画面有機ELディスプレイには不可欠な素子として期待されている。
そのため、近年、湿式プロセスに適した高分子材料の開発が進められており、例えば、特許文献1に記載されているような検討が行われている。
特開2006−279007号公報
一般に、高分子材料を使用して有機EL素子を構成した場合、低コスト化、及び大面積化が容易であるという特長を有している。そのため、近年、高分子材料を用いて作製した有機層を多層化し、各々の層の機能を分離することによって、有機EL素子の各種特性の向上を図るための様々な方法が検討されている。しかし、従来の高分子材料を用いて作製した有機層を含む有機EL素子は、駆動電圧、発光効率、及び発光寿命といった特性において、さらなる改善が望まれている。
本発明の実施形態は、上記に鑑み、有機エレクトロニクス素子に好適に使用できる高分子材料を含む電荷輸送性材料、及び該材料を含むインク組成物を提供することを目的とする。また、本発明の他の実施形態は、上記電荷輸送性材料又は上記電荷輸送性材料を用いて、発光効率及び発光寿命に優れる有機エレクトロニクス素子、有機EL素子、並びにそれらを用いた表示素子、照明装置、及び表示装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の構成単位を有する高分子化合物が、電荷輸送性材料として好適であることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下に記載の事項に関する。
(1)3方向以上に分岐した分岐構造を有し、かつ電荷輸送性を有する高分子化合物を含む電荷輸送性材料であって、上記高分子化合物が、縮合多環芳香族炭化水素から誘導され、かつ3以上の分岐部を有する第1の構造単位、及び上記第1の構造単位の上記分岐部に結合した電荷輸送性を有する第2の構造単位を少なくとも3つ有する、電荷輸送性材料。
(2)上記第1の構造単位が、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、フェナントレン、クリセン、トリフェニレン、テトラフェン、ピレン、ピセン、ペンタフェン、ペリレン、ヘリセン、コロネンアントラセン、及びテトラセンからなる群から選択される少なくとも1種の縮合多環芳香族炭化水素から誘導される構造を含む、上記(1)に記載の電荷輸送性材料。
(3)上記第2の構造単位が、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、チオフェン構造、ビチオフェン構造、p−フェニレン構造、m−フェニレン構造、及びフルオレン構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を含む、上記(1)又は(2)に記載の電荷輸送性材料。
(4)正孔輸送性材料として使用される、上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の電荷輸送性材料。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の電荷輸送性材料と、溶媒とを含む、インク組成物。
(6)上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の電荷輸送性材料を含む有機層を有する、有機エレクトロニクス素子。
(7)上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の電荷輸送性材料を含む有機層を有する、有機エレクトロルミネセンス素子。
(8)フレキシブル基板をさらに有する、上記(7)に記載の有機エレクトロルミネセンス素子。
(9)上記フレキシブル基板が樹脂フィルムを含む、上記(8)に記載の有機エレクトロルミネセンス素子。
(10)上記(7)〜(9)のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネセンス素子を備えた表示素子。
(11)上記(7)〜(9)のいずれか1つに記載の有機エレクトロルミネセンス素子を備えた照明装置。
(12)上記(11)に記載の照明装置と、表示手段として液晶素子とを備えた表示装置。
本発明の実施形態によれば、有機エレクトロニクス素子に好適に使用できる高分子材料を含む電荷輸送性材料、及び該材料を含むインク組成物を提供することができる。また、上記インク組成物を使用して、駆動電圧が低く、発光効率及び発光寿命に優れる有機エレクトロニクス素子及び有機EL素子、並びに、それを用いた表示素子、照明装置、及び表示装置を提供することができる。
本発明の有機EL素子の一実施形態を示す模式的断面図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
<電荷輸送性材料>
本発明の一態様は、電荷輸送性材料に関する。上記電荷輸送性材料は、3方向以上に分岐した分岐構造を有し、かつ電荷輸送性を有する高分子化合物を含む。上記高分子化合物は、縮合多環芳香族炭化水素から誘導され、かつ3以上の分岐部を有する第1の構造単位と、上記第1の構造単位の上記分岐部に結合した電荷輸送性を有する第2の構造単位を少なくとも3つ有する。このような特定の高分子化合物を電荷輸送性材料として使用することによって、有機EL素子の耐久性を向上することができ、さらに発光効率及び発光寿命を向上させることができる。
以下、高分子化合物について、詳細に説明する。
(高分子化合物)
上記電荷輸送性材料に含まれる高分子化合物において、「3方向以上に分岐した分岐構造」とは、上記高分子化合物1分子中の種々の鎖の中で、最も重合度の大きくなる鎖を主鎖とした時に、主鎖に対して重合度が同じか、それよりは重合度の小さい、3以上の側鎖が存在することを意味する。本発明において上記重合度とは、高分子化合物を合成する際に用いられるモノマー単位が、高分子化合物1分子当たりにいくつ含まれるかを表す。本発明において側鎖は、高分子化合物の主鎖とは異なる鎖であり、少なくとも、1以上の重合単位を有しているものをいい、それ以外は側鎖ではなく置換基とみなす。すなわち、本発明において、上記「3方向以上に分岐した分岐構造」は、縮合多環芳香族炭化水素から誘導され、かつ3以上の結合手を有する第1の構造単位に対し、上記結合手を介して、少なくとも3つの電荷輸送性を有する第2の構造単位が結合することによって形成される構造を含むことを意図する。
上記第1の構造単位を誘導する縮合多環芳香族炭化水素は、複数の芳香環が縮合した化合物であり、優れた電荷輸送性を得ることが容易であることから、分子内に3以上の芳香環が存在することが好ましい。電荷輸送材料の溶解性を考慮すると、分子内に存在する芳香環の数は、3〜6個の範囲が好ましい。上記縮合多環芳香族炭化水素は、複数の芳香環が直線状に連結したものであっても、非直接状に連結したものであってもよい。
好ましい一実施形態において、上記第1の構造単位を誘導する縮合多環芳香族炭化水素は、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、フェナントレン、クリセン、トリフェニレン、テトラフェン、ピレン、ピセン、ペンタフェン、ペリレン、ヘリセン、及びコロネンからなる群から選択される少なくとも1種の構造を含む。特に限定するものではないが、上記第1の構造単位がピレンに由来する構造単位を含む場合、優れた電荷輸送性及び耐久性を得ることが容易となるため、より好ましい。
好ましい一実施形態において、上記第2の構造単位は、優れた電荷輸送性を得ることが容易であることから、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、チオフェン構造、ビチオフェン構造、p−フェニレン構造、m−フェニレン構造、及びフルオレン構造からなる群から選ばれる、少なくとも1種の構造を含む。なかでも、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、チオフェン構造、及びビチオフェン構造からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
上記高分子化合物は、当業者に周知の方法で合成することができる。特に限定するものではないが、上記高分子化合物は、例えば、1分子中に重合可能な部位を3ヶ所以上有する縮合多環芳香族炭化水素のモノマーを含む各種モノマーを重合することによって製造することができる。別法として、直線状の高分子化合物を形成した後に、それらを互いに重合させることによって製造することもできる。上記高分子化合物が共重合体である場合、共重合体は、ランダム、ブロックまたはグラフト共重合体であってもよいし、それらの中間的な構造を有する共重合体、例えばブロック性を帯びたランダム共重合体であってもよい。
一実施形態において、上記高分子化合物は、上記第1の構造単位を含む第1のモノマー化合物と、上記第2の構造単位を含む第2のモノマー化合物との反応によって得られるオリゴマー又はポリマーである。上記反応には、当技術分野で周知の方法を適用することができる。例えば、Pd(0)またはPd(II)化合物を触媒として用い、ボロン酸と、臭素等のハロゲンとの間で結合を生成する、鈴木カップリング反応を適用することができる。鈴木カップリング反応を用いた高分子化合物の具体的な調製方法については、例えば、WO2010/140553公報の記載を参照することができる。
鈴木カップリング反応を用いて高分子化合物を調製する場合、好適に使用できる各モノマー化合物の具体例を以下に示す。
式中、Rは、それぞれ独立した基を表し、各モノマー化合物において、分子内において少なくとも3つのRは、ボロン酸又はボロン酸エステルの残基、トリフラート基、及びハロゲン基から選ばれる反応性置換基を有する。本発明では、このような反応性置換基が分岐部となり、電荷輸送性を有する構造単位と結合することによって、3方向以上に分岐した分岐構造を有する高分子化合物が形成されることを意図している。上記モノマー化合物において、上記反応性置換基以外のRは、水素原子、及び炭素数1〜22個の直鎖、環状又は分岐の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びアルコキシ基、並びに炭素数2〜30個の、アリール基及びヘテロアリール基、からなる群から選択される少なくとも1種である。
特に限定するものではないが、上記第1のモノマー化合物の中でも、以下に示すピレン構造を有する化合物が好ましい。上記高分子化合物がピレンに由来する構造単位を含む場合には、優れた電荷輸送性及び耐久性を得ることが容易となる。
上記高分子化合物において、上記第1の構造単位の割合は、1モル%以上が好ましく、3モル%以上がより好ましく、5モル%以上が最も好ましい。一方、上記第1の構造単位の割合は、95モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましく、85モル%以下が最も好ましい。上記割合が、上記範囲内であれば、優れた耐久性と優れた電荷輸送性とを得ることが容易となる。また、上記割合は、電荷輸送性材料として、適度な分子量を有する高分子化合物が得られる点でも好ましい。上記割合は、上記高分子化合物の調製時に、原料として使用する各種モノマー化合物の仕込み量の合計に対する、上記第1のモノマーの比(モル比)として調整することができる。
式中、Rは、それぞれ独立した置換基を表し、各モノマー化合物において、少なくとも1つのR、好ましくは2つのRは、ボロン酸又はボロン酸エステルの残基、トリフラート基、及びハロゲン基から選ばれる反応性置換基を有する。上記モノマー化合物において、上記反応性置換基以外のRは、水素原子、及び炭素数1〜22個の直鎖、環状又は分岐の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びアルコキシ基、並びに炭素数2〜30個のアリール基及びヘテロアリール基、からなる群から選択される少なくとも1種である。また、式中、Xは、エーテル基、又はメチレン基のいずれかを表す。
特に限定するものではないが、上記第2のモノマー化合物の中でも、以下に示す構造を有する化合物が好ましい。特に、トリフェニルアミン構造を有する構造単位を含む化合物を使用した場合には、上記高分子化合物を上記電荷輸送性材料として使用した時に優れた正孔輸送性を得ることが容易となる。
上記高分子化合物において、上記電荷輸送性を有する第2の構造単位の割合は、十分な電荷輸送性を得る観点から、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30%モル以上が最も好ましい。一方、上記第2の構造単位の割合は、95モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましく、85モル%以下が最も好ましい。上記割合が、上記範囲内であれば、優れた耐久性と優れた電荷輸送性とを得ることが容易となる。なお、上記構造単位の割合は、上記高分子化合物の調製時に、原料として使用する各モノマー化合物の仕込み量の合計に対する、上記第2のモノマー化合物の比(モル比)として調整することができる。
特に限定されるものではないが、上述の第1及び第2のモノマー化合物間の鈴木カップリング反応によって得られる、本発明による高分子化合物は、例えば、構造単位(X)を有する。
式中、A,B,Cは、原料として使用したモノマー化合物に由来する構造単位を意味する。
上記構造単位(X)を有する高分子化合物の一例を以下に示す。
他の実施形態において、上記高分子化合物は、溶解度を変化させるために、分子内に1以上の重合可能な置換基を有することが好ましい。ここで、「重合可能な置換基」(以下「重合性置換基」と称す)とは、高分子化合物の重合反応時に、2分子以上の分子間で結合を形成することが可能な置換基を意味する。
重合性置換基の具体例として、炭素−炭素多重結合を有する基、小員環を有する基、ラクトン基、ラクタム基、及びシロキサン誘導体を含有する基が挙げられる。上記炭素−炭素多重結合を有する基の具体例は、ビニル基、アセチレン基(エチニル基)、ブテニル基、アクリル基(アクリロイル基)、アクリレート基(アクリロイルオキシ基)、アクリルアミド基(アクリロイルアミノ基)、メタクリル基(メタクリロイル基)、メタクリレート基(メタクリロイルオキシ基)、メタクリルアミド基(メタクリロイルアミノ基)、アリール基、アリル基、ビニルエーテル基(ビニルオキシ基)、ビニルアミノ基、フラン−イル基、ピロール−イル基、チオフェン−イル基、及びシロール−イル基を含む。また、上記小員環を有する基の具体例は、シクロプロピル基、シクロブチル基、エポキシ基(オキシラニル基)、オキセタン基(オキセタニル基)、ジケテン基、及びエピスルフィド基を含む。
上記重合性置換基の別の例として、エステル結合やアミド結合を形成することが可能な置換基の組合せも挙げられる。例えば、エステル基とアミノ基との組合せ、又はエステル基とヒドロキシル基との組合せなどである。
一実施形態において、反応性の観点から、上記高分子化合物は、上記重合性置換基として、特に、オキセタン基、エポキシ基、ビニル基、ビニルエーテル基、アクリレート基、及びメタクリレート基からなる群から選択される少なくとも1つの基を含むことが好ましい。上記高分子化合物は、オキセタン基及びビニル基の少なくとも一方を含むことが最も好ましい。
上記重合性置換基の自由度を上げ、上記高分子化合物の硬化反応を進行しやすくするために、上記重合性置換基は、上記高分子化合物における構成単位に対して、炭素数1〜8のアルキル鎖を介して結合していることが好ましい。また、上記高分子化合物を有機EL素子の膜材料として使用する場合、ITOなどの親水性電極と膜との親和性を向上させる観点から、上記重合性置換基は親水性基と結合していることが好ましい。上記親水性基としては、例えば、エチレングリコール鎖やジエチレングリコール鎖などの、炭素数2〜8のアルキレンオキシ鎖が挙げられる。さらに、上記重合性置換基を有する高分子化合物の調製を容易にする観点から、上記アルキル鎖又はアルキレンオキシ鎖の末端部、すなわち、重合性置換基との連結部、及び正孔輸送性を有する第2の構造単位との連結部は、エーテル結合を有していてもよい。重合性置換基の具体例として、特開2012−253067号公報等に例示された置換基を参照することができる。
特に限定するものではないが、上記重合性置換基を有する高分子化合物は、例えば、上記第1及び第2のモノマーに加えて、以下に例示する第3のモノマーを使用して、鈴木カップリング反応を実施することによって、調製することができる。
式中、Xは、ボロン酸又はボロン酸エステルの残基、トリフラート基、及びハロゲン基からなる群から選ばれる反応性置換基である。また、Rは、それぞれ独立した置換基を表すが、少なくとも1つのRは、上記重合性置換基である。上記モノマー化合物は、上記重合可性置換基以外の置換基Rとして、水素原子、炭素数1〜22個の直鎖、環状又は分岐の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びアルコキシ基、並びに炭素数2〜30個のアリール基及びヘテロアリール基、からなる群から選択される基を有する。
上記重合性置換基の具体的な構造例として、以下が挙げられる。
高分子化合物が重合性置換基を有する場合、上記置換基は、分子鎖の主鎖に連結していても、分子鎖の末端に連結していてもよい。上記置換基の導入が容易であることから、上記置換基は、分子鎖の末端に位置していることが好ましい。
特に限定されるものではないが、第3のモノマーとして好適に使用できる化合物の一例として以下が挙げられる。
高分子化合物が重合性置換基を有する場合、分子内に含まれる重合性置換基の数は特に限定されない。しかし、溶解度を変化させることが容易となることから、上記高分子化合物は、分子内に、上記置換基を2つ以上含むことが好ましく、3つ以上含むことがさらに好ましい。
上記高分子化合物1分子あたりの重合性置換基の数は、重合性置換基を有する構造単位を誘導する第3のモノマーの割合によって調整することができる、例えば、上記高分子化合物に2つ以上の重合性置換基を導入する観点から、高分子化合物の調製時に使用する全モノマーの合計量に対する、上記第3のモノマーの割合は、0.1モル%以上が好ましく、1モル%以上がより好ましく、3モル%以上が最も好ましい。上記第3のモノマーの割合を上記範囲にした場合、上記高分子化合物の溶解度を容易に変化させることができる点でも好ましい。また、高分子化合物において良好な正孔輸送性を得る観点から、上記第3のモノマーの割合は、70モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。上記第3のモノマーの割合を上記範囲にした場合、上記高分子化合物において十分な分子量を得ることが容易である点でも好ましい。
特に限定するものではないが、上記高分子化合物の一実施形態として、以下のモノマー間の反応によって得られる化合物が挙げられる。
上記高分子化合物の別の実施形態として、以下のモノマー間の反応によって得られる化合物が挙げられる。
上記高分子化合物の数平均分子量は、溶剤への溶解性、成膜性を考慮して適宜、調整することができる。正孔輸送性に優れるという観点から、数平均分子量は、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、2,000以上であることがさらに好ましい。また、溶媒への良好な溶解性を保ち、塗布溶液や塗布インクの調製を容易にするという観点から、数平均分子量は、1,000,000以下であることが好ましく、100,000以下であることがより好ましく、50,000以下であることがさらに好ましい。数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による標準ポリスチレン換算の数平均分子量をいう。
また、上記高分子化合物の重量平均分子量は、溶剤への溶解性、成膜性を考慮して適宜、調整することができる。重量平均分子量は、正孔輸送性に優れるという観点から、1,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることがさらに好ましい。また、溶媒への良好な溶解性を保ち、塗布溶液や塗布インクの調製を容易にするという観点から、重量平均分子量は、1,000,000以下であることが好ましく、700,000以下であることがより好ましく、400,000以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量をいう。
本明細書において、電荷輸送性材料は、本質的に上記高分子化合物から構成されることを意図している。しかし、一実施形態において、本発明の電荷輸送性材料は、上記高分子化合物に加えて、当技術分野において電荷輸送性材料として周知の各種添加剤を含んでもよい。例えば、上記電荷輸送性材料は、電荷の輸送性を調整するために、上記高分子化合物に対して、電子受容体として作用し得る電子受容性化合物をさらに含んでもよい。上記電荷輸送性材料が、電子受容性化合物を含む場合、優れた正孔輸送性を得ることがさらに容易となる点で好ましい。
以下、電子受容性化合物について説明する。
(電子受容性化合物)
上記電子受容性化合物としては、具体的には、無機物及び有機物のいずれも用いることができる。例えば、特許文献(特開2003−031365号公報、特開2006−233162号公報)に記載された電子受容性化合物、特許第3957635号公報、特開2012−72310号公報に記載されたスーパーブレンステッド酸化合物および誘導体を使用することができる。そのほか、例えば、以下のカチオンから選択される1種と、以下のアニオンから選択される1種を含むオニウム塩を用いることもができる。
(カチオン)
カチオンとしては、例えば、H、カルベニウムイオン、アンモニウムイオン、アニリニウムイオン、ピリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、キノリニウムイオン、イモニウムイオン、アミニウムイオン、オキソニウムイオン、ピリリウムイオン、クロメニリウム、キサンチリウムイオン、ヨードニウムイオン、スルホニウムイオン、ホスホニウムイオン、トロピリウムイオン、遷移金属を有するカチオンなどが挙げられ、カルベニウムイオン、アンモニムイオン、アニリニウムイオン、アミニウムイオン、ヨードニウムイオン、スルホニウムイオン、トロピリウムイオンが好ましい。組成物の溶解度の変化特性及び保存安定性との両立の観点から、アンモニウムイオン、アニリニウムイオン、ヨードニウムイオン、スルホニウムイオンがより好ましい。
(アニオン)
アニオンとしては、例えば、F、Cl、Br、Iなどのハロゲンイオン;OH;ClO ;FSO 、ClSO 、CHSO 、CSO 、CFSO などのスルホン酸イオン類;HSO 、SO 2−などの硫酸イオン類;HCO 、CO 2−などの炭酸イオン類;HPO 、HPO 2−、PO 3−などのリン酸イオン類;PF 、PFOHなどのフルオロリン酸イオン類;[(CFCFPF、[(CFCFCFPF、[((CFCF)PF、[((CFCF)PF、[((CFCFCFPF、[((CFCFCFPFなどのフッ素化アルキルフルオロリン酸イオン類;(CFSO、(CFSOなどのフルオロアルカンスルホニルメチド、イミドイオン類;BF 、B(C 、B(CCF などのホウ酸イオン類;SbF 、SbFOHなどのフルオロアンチモン酸イオン類;AsF 、AsFOHなどのフルオロヒ素酸イオン類;AlCl 、BiF 等が挙げられる。なかでも、PF 、PFOHなどのフルオロリン酸イオン類、[(CFCFPF、[(CFCFCFPF、[((CFCF)PF、[((CFCF)PF、[((CFCFCFPFおよび[((CFCFCFPFなどのフッ素化アルキルフルオロリン酸イオン類;(CFSO、(CFSOなどのフルオロアルカンスルホニルメチド,イミドイオン類、BF 、B(C 、B(CCF などのホウ酸イオン類、SbF 、SbFOHなどのフルオロアンチモン酸イオン類を含む化合物が好ましい。
一実施形態において、上記電子受容性化合物として、アニオンを有するオニウム塩を使用することが好ましい。具体的な化合物として、以下に示すイオン性化合物(I)が挙げられる。
電子受容性化合物を用いる場合、その割合は、電荷輸送性材料の電荷輸送性を向上させる観点から、電荷輸送性材料の全質量に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。また、成膜性を良好に保つ観点から、電荷輸送性材料の全質量に対して、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
<インク組成物>
本発明の一態様は、上記電荷輸送性材料と、溶媒とを含むインク組成物に関する。上記溶媒としては、上記電荷輸送性材料を用いて塗布層を形成することが可能な溶媒を用いることができる。好ましくは、上記電荷輸送性材料を溶解し得る溶媒を用いることができる。上記インク組成物は、上記電荷輸送性材料中の高分子化合物が特定の分岐構造を有することによって、優れた耐久性及び電荷輸送性を有する。そのため、有機エレクトロ二クス素子等の有機層を構成する薄膜の材料として好適に使用することができる。また、上記インク組成物は、塗布法といった簡便な方法によって上記有機層を容易に形成することができる。
上記溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ペンタン、ヘキサン、オクタン等のアルカン;シクロヘキサン等の環状アルカン;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジフェニルメタン等の芳香族炭化水素;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトン、クロロホルム、塩化メチレンなどが挙げられる。上記溶媒は、好ましくは、芳香族炭化水素、脂肪族エステル、芳香族エステル、脂肪族エーテル、及び芳香族エーテル、からなる群から選択される1種以上を含む。
上記インク組成物における溶媒の含有量は、種々の塗布方法へ適用することを考慮して定めることができる。例えば、溶媒の含有量は、溶媒に対し、上記電荷輸送性材料中の高分子化合物の割合が、0.1質量%以上となる量が好ましく、0.2質量%以上となる量がより好ましく、0.5質量%以上となる量がさらに好ましい。また、溶媒の含有量は、溶媒に対し、電荷輸送性材料中の高分子化合物の割合が、10質量%以下となる量が好ましく、5質量%以下となる量がより好ましく、3質量%以下となる量がさらに好ましい。
上記インク組成物を塗布する方法としては、例えば、インクジェット法、キャスト法、浸漬法、凸版印刷、凹版印刷、オフセット印刷、平版印刷、凸版反転オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷等の印刷法、及びスピンコーティング法などの公知の方法が挙げられる。また、塗布法によって有機層を形成する場合、インキ組成物の塗布後、得られた塗布層を、ホットプレート又はオーブンによって乾燥させ、溶媒を除去してもよい。
上記電荷輸送性材料中の上記高分子化合物が重合可能な置換基を有する場合、重合によって塗膜を硬化させることができるため、さらに塗布法によって有機層を追加して多層化を図ることが容易となる。上記高分子化合物の重合を開始させる契機としては、光照射、加熱等の方法を用いることが一般的である。特に制限はないが、プロセスが簡便である観点から、加熱による方法が好ましい。加熱は、ホットプレート上で、又はオーブン内で実施することができる。
加熱温度及び加熱時間は、重合反応を十分に進行させられる範囲で、調整することができる。特に制限はないが、上記加熱温度は、好ましくは300℃以下、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。上記温度の範囲にすることによって、種々の基板を適用することができる。また、塗布層の重合速度を早める観点から、上記加熱温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上である。上記加熱時間は、生産性を上げる観点から、好ましくは2時間以下、より好ましくは1時間以下、さらに好ましくは30分以下である。また、重合を完全に進行させる観点から、上記加熱時間は、好ましくは1分以上、より好ましくは3分以上、さらに好ましくは5分以上である。
光照射による方法を用いる場合、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、蛍光灯、発光ダイオード、及び太陽光等の光源を用いることができる。
上記インク組成物は、上記電荷輸送性材料及び溶媒に加えて、各種添加剤を含んでもよい。各種添加剤の具体例として、重合禁止剤、安定剤、増粘剤、ゲル化剤、難燃剤、酸化防止剤、還元防止剤、酸化剤、還元剤、表面改質剤、乳化剤、消泡剤、分散剤、及び界面活性剤が挙げられる。
<有機エレクトロニクス素子>
本発明の一態様は、上記電荷輸送性材料を含む有機層を有する、有機エレクトロニクス素子に関する。上記有機エレクトロニクス素子は、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子、有機薄膜太陽電池、及び有機発光トランジスタ等の、少なくとも一対の電極の間に上記有機層が配置される構造を有する、素子を意味する。すなわち、本発明に関する有機エレクトロニクス素子は、特定の分岐構造を有し、かつ電荷輸送性を有する特定の高分子化合物を含む有機層を有することを特徴とする。したがって、上記電荷輸送性材料を使用することによって、特定の素子に限定されることなく、上記有機層を有する各種素子において、優れた耐久性及び電荷輸送性が得られると考えられる。一実施形態として、上記有機エレクトロニクス素子は、上記電荷輸送性材料を含むインク組成物の塗布によって得られる有機層を有する。上記電荷輸送性材料中の高分子化合物が重合可能な置換基を有する場合、塗布法によって、有機層の多層化を容易に実施することができる。以下、一例として、有機EL素子の具体的な実施形態について説明する。
<有機EL素子>
本発明の一実施形態である有機EL素子は、上記電荷輸送性材料を含む有機層を有することを特徴とする。有機EL素子は、通常、基板と、少なくとも一対の陽極及び陰極と、発光層とを有し、必要に応じて、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層、及び電子輸送層といった他の機能層を有してもよい。有機EL素子の一実施形態では、上記有機層を使用して発光層及びその他の機能層の少なくとも一方を構成することができる。一実施形態では、上記有機層を使用して、正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方を含む機能層を構成することが好ましい。
図1は、本発明に関する有機EL素子の一実施形態を示す模式的断面図である。図1では、参照符号1で示される発光層と、それ以外の複数の機能層とから構成される多層有機層を有する有機EL素子の構造を例示している。図中、参照符号、2は陽極、3は正孔注入層、4は陰極、5は電子注入層を示している。また、参照符号6は正孔輸送層、7は電子輸送層を示しており、8は基板である。以下、各層について詳細に説明する
(発光層)
電荷輸送機能以外の機能を備えた化合物として、公知の発光層に用いる材料を使用することが可能である。発光層に用いる材料としては、低分子化合物であっても、ポリマーまたはオリゴマーであってもよく、デンドリマー等も使用可能である。蛍光発光を利用する低分子化合物としては、ペリレン、クマリン、ルブレン、キナクリドン、色素レーザー用色素(例えば、ローダミン、DCM1等)、アルミニウム錯体(例えば、Tris(8-hydroxyquinolinato)aluminum(III)(Alq))、スチルベン、これらの誘導体が挙げられる。蛍光発光を利用するポリマーまたはオリゴマーとしては、ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン(PPV)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、フルオレンーベンゾチアジアゾール共重合体、フルオレン−トリフェニルアミン共重合体、及びこれらの誘導体や混合物が好適に利用できる。
一方、近年、有機EL素子の高効率化のため、燐光有機EL素子の開発も活発に行われている。燐光有機EL素子では、一重項状態のエネルギーのみならず三重項状態のエネルギーも利用することが可能であり、内部量子収率を原理的には100%まで上げることが可能となる。燐光有機EL素子では、燐光を発するドーパントとして、白金やイリジウムなどの重金属を含む金属錯体系燐光材料を、ホスト材料にドーピングすることで燐光発光を取り出す(M. A. Baldo et al., Nature, vol. 395, p. 151 (1998)、M. A. Baldo et al., Applied Physics Letters, vol. 75, p. 4 (1999)、M. A. Baldo et al., Nature, vol. 403, p. 750 (2000)参照。)。
本発明の有機EL素子においても、高効率化の観点から、発光層に燐光材料を用いることが好ましい。燐光材料としては、IrやPtなどの中心金属を含む金属錯体などが好適に使用できる。具体的には、Ir錯体としては、例えば、青色発光を行うFIr(pic)〔イリジウム(III)ビス[(4,6−ジフルオロフェニル)−ピリジネート−N,C]ピコリネート〕、緑色発光を行うIr(ppy)〔ファク トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム〕(前記M. A. Baldo et al., Nature, vol. 403, p. 750 (2000)参照)、又は赤色発光を行う(btp)Ir(acac){ビス〔2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナート−N,C〕イリジウム(アセチル−アセトネート)}(Adachi et al., Appl. Phys. Lett., 78 no. 11, 2001, 1622参照)、Ir(piq)〔トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム〕等が挙げられる。
Pt錯体としては、例えば、赤色発光を行う2、3、7、8、12、13、17、18−オクタエチル−21H、23H−フォルフィンプラチナ(PtOEP)等が挙げられる。燐光材料は、低分子又はデンドライト種、例えば、イリジウム核デンドリマーが使用され得る。またこれらの誘導体も好適に使用できる。
また、発光層に燐光材料が含まれる場合、燐光材料の他に、ホスト材料を含むことが好ましい。ホスト材料としては、低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよく、デンドリマーなども使用できる。
低分子化合物としては、例えば、α−NPD(N,N'-Di(1-naphthyl)-N,N'-diphenylbenzidine)、CBP(4,4'-Bis(carbazol-9-yl)-biphenyl)、mCP(1,3-Bis(9-carbazolyl)benzene)、CDBP(4,4'-Bis(carbazol-9-yl)-2,2'-dimethylbiphenyl)などが、高分子化合物としては、例えば、ポリビニルカルバゾール、ポリフェニレン、ポリフルオレンなどが使用でき、これらの誘導体も使用できる。
発光層は、蒸着法により形成してもよく、塗布法により形成してもよい。
塗布法により形成する場合、有機EL素子を安価に製造することができ、より好ましい。発光層を塗布法によって形成するには、燐光材料と、必要に応じてホスト材料を含む溶液を、例えば、インクジェット法、キャスト法、浸漬法、凸版印刷、凹版印刷、オフセット印刷、平版印刷、凸版反転オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷等の印刷法、スピンコーティング法などの公知の方法で所望の基体上に塗布することで行うことができる。
(陰極)
陰極材料としては、例えば、Li、Ca、Mg、Al、In、Cs、Ba、Mg/Ag、LiF、CsF等の金属又は金属合金であることが好ましい。陰極の形成は、特に限定されるものではなく、公知の方法を適用して実施することができる。
(陽極)
陽極としては、金属(例えば、Au)又は金属導電率を有する他の材料、例えば、酸化物(例えば、ITO:酸化インジウム/酸化錫)、導電性高分子(例えば、ポリチオフェン−ポリスチレンスルホン酸混合物(PEDOT:PSS))を使用することもできる。陽極の形成は、特に限定されるものではなく、公知の方法を適用して実施することができる。
(その他の機能層)
本発明の有機EL素子は、上記発光層に加えて、機能層として、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層、及び電子輸送層からなる群から選択される少なくとも1つの層を有することが好ましい。一実施形態では、正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方を含むことが好ましい。以下、代表的な機能層について説明する。
(正孔注入層、正孔輸送層)
本発明において、正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方は、本発明の電荷輸送性材料を含む有機層として構成されることが好ましい。一実施形態において、有機EL素子は、上記機能層として少なくとも正孔輸送層を有し、上記正孔輸送層は上記電荷輸送性材料を含む有機層として構成されることが好ましい。この実施形態において、上記正孔輸送層は、上記電荷輸送性材料を含むインク組成物の塗布によって、容易に形成することができる。このような実施形態において、正孔注入層を併用する場合、正孔注入層は、特に限定されることなく、当技術分野で周知の材料を使用して形成することができる。一実施形態において、正孔注入層は、例えば、トリアリールアミン構造を有する電荷輸送性材料を含むインク組成物の塗布によって、容易に形成することができる。本発明の一実施形態では、上記正孔注入層の形成において塗膜を硬化させ、その塗膜上に、引き続き、本発明の上記電荷輸送性材料を含むインク組成物を塗布することによって、電荷注入層/電荷輸送層の積層を容易に実施することができる。
(電子輸送層、電子注入層)
上記電子輸送層及び上記電子注入層の形成は、当技術分野で周知の方法に従って実施することができる。上記電子輸送層及び/又は上記電子注入層を形成するために使用可能な材料として、例えば、フェナントロリン誘導体(例えば、2,9-Dimethyl-4,7-diphenyl-1,10-phenanthroline(BCP))、ビピリジン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレンなどの複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体(2-(4-Biphenylyl)-5-(4-tert-butylphenyl-1,3,4-oxadiazole)(PBD))、アルミニウム錯体(例えば、Tris(8-hydroxyquinolinato)aluminum(III)(Alq))などが挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体を用いることもできる。
(基板)
有機EL素子に用いることができる基板の種類は、特に限定されず、ガラス、及び樹脂フィルム等の基板であってよい。一実施形態として、当技術分野においてフレキシブル基板として周知のフレキシブル性を有する基板を使用することが好ましい。上記フレキシブル基板の一例として、薄膜ガラス、アルミフォイル、及び樹脂フィルムからなる群から選択される少なくとも1種を含む基板が挙げられる。また、上記基板は透明であることが好ましい。このような観点からは、例えば、ガラス基板、石英基板、又は光透過性の樹脂フィルムを含む基板が好ましい。中でも、基板として光透過性の樹脂フィルムを用いた場合、透明性に優れるだけでなく、有機EL素子にフレキシブル性を付与することも容易であるため、特に好ましい。
上記樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルムが挙げられる。
上記樹脂フィルムを用いる場合、水蒸気や酸素等の透過を抑制するために、樹脂フィルムへ酸化珪素や窒化珪素等の無機物をコーティングして用いてもよい。また、上記樹脂フィルムは単独で使用しても、複数を組み合わせて多層化して使用してもよい。
(封止)
有機EL素子は、外気の影響を低減させて長寿命化させるため、封止されていてもよい。封止に用いる材料としては、ガラス、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、PET、及びPEN等のプラスチックフィルム、並びに酸化珪素及び窒化珪素等の無機物等を用いることができる。
封止の方法としては、特に限定されないが、たとえば、真空蒸着、スパッタ、塗布法等により有機EL素子上に直接形成する方法、ガラス又はプラスチックフィルムを接着剤により有機EL素子に貼り合わせる方法等が使用可能である。
(発光色)
有機EL素子における発光色は特に限定されるものではないが、白色発光素子は家庭用照明、車内照明、時計や液晶のバックライト等の各種照明器具に用いることができるため好ましい。
白色発光素子を形成する方法としては、現在のところ、単一の材料で白色発光を示すことが困難である。そのため、複数の発光材料を用いて複数の発光色を同時に発光させて混色させることによって、白色発光が得る。複数の発光色の組み合わせとしては、特に限定されるものではないが、青色、緑色、赤色の3つの発光極大波長を含有するもの、青色と黄色、黄緑色と橙色等の補色の関係を利用した2つの発光極大波長を含有するものが挙げられる。また、発光色の制御は、燐光材料の種類と量を調整することによって行うことができる。
<表示素子、照明装置、表示装置>
本発明の一態様は、上記有機EL素子を有する表示素子に関する。例えば、赤・緑・青(RGB)の各画素に対応する素子として、上記有機EL素子を用いることで、カラーの表示素子が得られる。画像の形成には、マトリックス状に配置した電極でパネルに配列された個々の有機EL素子を直接駆動する単純マトリックス型と、各素子に薄膜トランジスタを配置して駆動するアクティブマトリックス型とがある。前者は、構造は単純ではあるが垂直画素数に限界があるため文字などの表示に用いる。後者は、駆動電圧は低く電流が少なくてすみ、明るい高精細画像が得られるので、高品位のディスプレイ用として用いられる。
また、本発明の一態様は、上記有機EL素子を有する照明装置に関する。さらに、本発明の一態様は、上記照明装置と、表示手段として液晶素子とを有する表示装置に関する。例えば、バックライト(白色発光光源)として上記照明装置を用い、表示手段として液晶素子を用いた表示装置、すなわち、液晶表示装置として構成してもよい。このような構成は、公知の液晶表示装置において、バックライトのみを上述の照明装置に置き換えた構成であり、液晶素子部分は公知技術を転用することができる。
(実施例)
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<1>高分子化合物の調製
(Pd触媒の調製)
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、室温下、サンプル管にトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(73.2mg、80μmol)を秤取り、アニソール(15ml)を加え、30分間撹拌した。同様に、サンプル管にトリス(t−ブチル)ホスフィン(129.6mg、640μmol)を秤取り、アニソール(5mL)を加え、5分間撹拌した。これらの溶液を混合し室温で30分間撹拌し、触媒の溶液を得た。なお、触媒の調製において、すべての溶媒は、30分以上窒素バブルにより脱気した後に使用した。
(調製例1−高分子化合物1)
以下のようにして、電荷輸送性の高分子化合物1を調製した。高分子化合物1は、縮合多環芳香族炭化水素から誘導される構造単位を含まない化合物である。
三口丸底フラスコに、下記モノマー1(4.0mmol)、下記モノマー2(5.0mmol)、下記モノマー3(2.0mmol)、及びアニソール(20mL)を加え、さらに、別途調製したPd触媒の溶液(7.5mL)を加え、攪拌した。30分撹拌した後、上記フラスコ内に、10%テトラエチルアンモニウム水酸化物水溶液(20mL)を追加した。この混合物を2時間にわたって、加熱・還流した。なお、ここまでの全ての操作は、窒素気流下で行った。また、すべての溶媒は、30分以上窒素バブルにより脱気した後に使用した。
反応終了後、有機層を水洗した。次いで、有機層をメタノール−水(9:1)に注いだ。生じた沈殿を吸引ろ過し、メタノール−水(9:1)で洗浄した。洗浄後の沈殿をトルエンに溶解し、メタノールから再沈殿した。得られた沈殿を吸引ろ過した後、トルエンに溶解し、Triphenylphosphine,polymer-bound on styrene-divinylbenzene copolymer(Strem Chemicals社、ポリマー100mgに対して200mg、以下「金属吸着剤」という。)を加えて、一晩撹拌した。
撹拌終了後、金属吸着剤と不溶物をろ過によって取り除き、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。濃縮液をトルエンに溶解した後、メタノール−アセトン(8:3)から再沈殿した。生じた沈殿を吸引ろ過し、メタノール−アセトン(8:3)で洗浄した。得られた沈殿を真空乾燥し、高分子化合物1を調製した。得られた高分子化合物1の数平均分子量は7,800であり、重量平均分子量は31,000であった。分子量は、溶離液にTHFを用いたGPC(ポリスチレン換算)により測定した。
数平均分子量及び重量平均分子量の測定条件は以下のとおりである。
送液ポンプ :L-6050 (株)日立ハイテクノロジーズ
UV-Vis検出器 :L-3000 (株)日立ハイテクノロジーズ
カラム :Gelpack (R) GL-A160S/GL-A150S 日立化成(株)
溶離液 :THF(和光純薬製, HPLC用, 安定剤不含)
流速 :1 mL/min
カラム温度 :室温
分子量標準物質:標準ポリスチレン
(調製例2−高分子化合物2)
以下のようにして、電荷輸送性の高分子化合物2を調製した。高分子化合物2は、縮合多環芳香族炭化水素から誘導される構造単位を含まない化合物である。
三口丸底フラスコに、調製例1に記載のモノマー2(5.0mmol)及びモノマー3(2.0mmol)と、下記モノマー4(4.0mmol)と、アニソール(20ml)とを加え、さらに別途調製したPd触媒の溶液(7.5ml)を加え、攪拌した。以降は、調製例1に記載の方法と同様にして、高分子化合物2を調製した。得られた高分子化合物2の数平均分子量は22,900であり、重量平均分子量は169,000であった。
(調製例3−高分子化合物3)
以下のようにして、電荷輸送性の高分子化合物3を調製した。高分子化合物3は、3以上の分岐部を有し、かつ縮合多環芳香族炭化水素から誘導される構造単位含む化合物である。
三口丸底フラスコに、調製例1に記載のモノマー2(5.0mmol)及び調製例2に記載のモノマー4(3.5mmol)と、下記モノマー5(1.5mmol)と、アニソール(20ml)とを加え、さらに別途調製したPd触媒の溶液(7.5ml)を加え、攪拌した。以降は、調製例1に記載の方法と同様にして、高分子化合物3を調製した。得られた高分子化合物3の数平均分子量は3,300であり、重量平均分子量は30,600であった。高分子化合物3において、各モノマーに由来する各構造単位の割合は、モノマー5:15モル%、モノマー2:50モル%、モノマー4:35モル%であった。
(調製例4−高分子化合物4)
以下のようにして、電荷輸送性の高分子化合物4を調製した。高分子化合物4は、縮合多環芳香族炭化水素から誘導される構造単位を含むが、3方向以上に分岐する分岐構造を持たない化合物である。
三口丸底フラスコに、調製例1に記載のモノマー2(5.0mmol)と、下記モノマー6(4.0mmol)と、調製例2に記載のモノマー4(2.0mmol)と、アニソール(20ml)とを加え、さらに別途調製したPd触媒の溶液(7.5ml)を加え、攪拌した。以降は、調製例1に記載の手順と同様にして、高分子化合物4を調製した。得られた高分子化合物4の数平均分子量は2,500であり、重量平均分子量は10,400であった。
(調製例5−高分子化合物5)
以下のようにして、電荷輸送性の高分子化合物5を調製した。高分子化合物5は、3以上の分岐部を有し、かつ縮合多環芳香族炭化水素から誘導される構造単位を含み、さらに重合可能な置換基を有する化合物である。
三口丸底フラスコに、調製例1に記載のモノマー2(5.0mmol)、モノマー1(1.0mmol)と、調製例3に記載のモノマー5(2.0mmol)と、調製例2に記載のモノマー4(3.0mmol)と、アニソール(20ml)とを加え、さらに別途調製したPd触媒の溶液(7.5ml)を加え、攪拌した。以降は、調製例1に記載の手順と同様にして、高分子化合物5を調製した。得られた高分子化合物5の数平均分子量は40,100であり、重量平均分子量は232,000であった。
(調製例6−高分子化合物6)
以下のようにして、電荷輸送性の高分子化合物6を調製した。高分子化合物6は、縮合多環芳香族炭化水素から誘導される構造単位を含むが、3方向以上に分岐する分岐構造を持たない化合物である。
三口丸底フラスコに、調製例1に記載のモノマー2(5.0mmol)と、調製例4に記載のモノマー6(4.0mmol)と、調製例1に記載のモノマー1(2.0mmol)と、アニソール(20ml)とを加え、さらに別途調製したPd触媒の溶液(7.5ml)を加え、攪拌した。以降は、調製例1に記載の手順と同様にして、高分子化合物4を調製した。得られた高分子化合物6の数平均分子量は5,200であり、重量平均分子量は8,000であった。
<2−1>有機EL素子の作製
(実施例1)
調製例1で得た高分子化合物1(10.0mg)と、下記イオン性化合物(I)(0.5mg)と、トルエン(2.3mL)とからなるインク組成物1を調製した。次いで、窒素雰囲気下で、ITOを1.6mm幅にパターニングしたガラス基板(膜厚0.7mm)上に、上記インク組成物1を、3000min−1でスピンコートし、引き続き、ホットプレート上で220℃、10分間加熱して硬化させ、正孔注入層(30nm)を形成した。
次に、調製例3で得た高分子化合物3(20mg)と、イオン性化合物(I)(1.0mg)と、トルエン(2.3mL)とからなるインク組成物3を調製し、先に形成した正孔注入層の上に、3000min−1でスピンコートした。引き続き、ホットプレート上で180℃、10分間加熱して乾燥させ、正孔輸送層(40nm)を形成した。ここで、上記正孔輸送層の形成は、正孔注入層を溶解させることなく、良好に実施することができた。
上述のようにして得た、ガラス基板/正孔注入層/正孔輸送層の積層体を真空蒸着機中に移し、上記正孔輸送層上に、CBP:Ir(ppy)(94:6、30nm)、BAlq(10nm)、Alq(30nm)、LiF(0.8nm)、Al(100nm)の順に蒸着法による成膜を実施することによって、発光層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層、及び陰極を順に積層した。Alの蒸着によって陰極を形成した後、大気開放することなく、上記積層体を乾燥窒素環境中に移動し、0.7mmの無アルカリガラスに0.4mmのザグリを入れた封止ガラスと上記積層体のITOガラス基板とを、光硬化性エポキシ樹脂を用いて貼り合わせることにより封止を行い、有機EL素子を作製した。
(比較例1)
上記調製例2で得た高分子化合物2(20mg)と、上記実施例1に記載の上記イオン性化合物(I)(1.0mg)と、トルエン(2.3mL)とからなるインク組成物2を調製した。実施例1において、有機EL素子の正孔輸送層を形成するために用いたインク組成物3のかわりに、上記インク組成物2を用いたことを除き、全て実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。
(比較例2)
上記調製例4で得た高分子化合物4(20mg)と、実施例1に記載の上記イオン性化合物(I)(1.0mg)と、トルエン(2.3mL)とからなるインク組成物4を調製した。実施例1において、有機EL素子の正孔輸送層を形成するために用いたインク組成物3のかわりに、上記インク組成物4を用いたことを除き、全て実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。
<2−2>有機EL素子の評価
実施例1および比較例1,2で得た有機EL素子に電圧を印加したところ、いずれも緑色の発光が確認された。それぞれの素子について、発光輝度1000cd/m時の駆動電圧と発光効率、及び初期輝度3000cd/mにおける発光寿命(輝度半減時間)を測定した。測定結果を表1に示す。
表1から分かるように、実施例1の有機EL素子は、比較例1及び2よりも、駆動電圧が低く、また発光効率に優れ、長い発光寿命を示した。すなわち、正孔輸送層の構成材料の観点からからすれば、電荷輸送性材料として、分子内に多環芳香族炭化水素化合物に由来する特定の分岐構造を有する高分子化合物を使用することによって、発光効率及び発光寿命の向上といった格別の効果が得られることが分かる。
<3−1>白色有機EL素子(照明装置)の作製
(実施例2)
実施例1と同様に、高分子化合物1(10.0mg)と、イオン性化合物(I)(0.5mg)と、トルエン(2.3mL)とからなるインク組成物1を調製した。次いで、窒素雰囲気下で、ITOを1.6mm幅にパターニングしたガラス基板(膜厚0.7mm)上に、上記インク組成物1を、3000min−1でスピンコートし、引き続き、ホットプレート上で220℃、10分間加熱して硬化させ、正孔注入層(30nm)を形成した。
次に、実施例1と同様にして、高分子化合物5(20mg)と、イオン性化合物(I)(1.0mg)と、トルエン(2.3mL)とからなるインク組成物5を調製し、先に形成した正孔注入層の上に、3000min−1でスピンコートした。引き続き、ホットプレート上で200℃、10分間加熱して乾燥させ、正孔輸送層(40nm)を形成した。ここで、上記正孔輸送層の形成は、正孔注入層を溶解させることなく、良好に実施することができた。
次に、上述のようにして得た、ガラス基板/正孔注入層/正孔輸送層の積層体の上に、窒素中、CDBP(15mg)、FIr(pic)(0.9mg)、Ir(ppy)(0.9mg)、(btp)Ir(acac)(1.2mg)、及びジクロロベンゼン(0.5mL)の混合物を、3000min−1にてスピンコートし、次いで、80℃で5分間乾燥させて、発光層(40nm)を形成した。ここで、発光層の形成は、正孔輸送層を溶解させることなく、良好に実施することができた。
さらに、BAlq(10nm)、Alq(30nm)、LiF(0.5nm)、Al(100nm)の順に蒸着法による成膜を実施することにより、上記発光層の上に正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層、及び陰極を順に積層した。上述のようにAlの蒸着によって陰極を積層した後、大気開放することなく、上記積層体を乾燥窒素環境中に移動し、0.7mmの無アルカリガラスに0.4mmのザグリを入れた封止ガラスと上記積層体のITOガラス基板とを、光硬化性エポキシ樹脂を用いて貼り合わせることにより封止を行い、白色有機EL素子を作製した。得られた白色有機EL素子は、照明装置として使用することができた。
(比較例3)
調製例6で得た高分子化合物6(20mg)と、実施例1に記載のイオン性化合物(I)(1.0mg)と、トルエン(2.3mL)とからなるインク組成物6を調製した。実施例2において、白色有機EL素子の正孔輸送層を形成するために用いたインク組成物5のかわりに、上記インク組成物6を用いたことを除き、全て実施例2と同様にして、白色有機EL素子を得た。
<3−2>白色有機EL素子(照明装置)の評価
実施例2および比較例3で得た、それぞれの白色有機EL素子に電圧を印加して、初期輝度1000cd/mでの発光寿命を測定した。実施例2の駆動電圧、発光効率、発光寿命をそれぞれ1とした時、比較例3では、駆動電圧が1.2、発光効率が0.8、及び発光寿命が0.3であった。
すなわち、実施例2の白色有機EL素子は、比較例3の白色有機EL素子との比較において、駆動電圧が低く、優れた発光効率及び発光寿命を有する。このような結果から、実施例1と同様に、正孔輸送層を構成する電荷輸送性材料として、分子内に縮合多環芳香族炭化水素化合物に由来する特定の分岐構造を有する高分子化合物を使用することによって、発光効率及び発光寿命の向上といった格別の効果が得られることが分かる。
1 発光層
2 陽極
3 正孔注入層
4 陰極
5 電子注入層
6 正孔輸送層
7 電子輸送層
8 基板

Claims (24)

  1. 3方向以上に分岐した分岐構造を有し、かつ電荷輸送性を有する高分子化合物を含む電荷輸送性材料であって、
    前記高分子化合物が、分子内に3以上の互いに共役した芳香環を持つ縮合多環芳香族炭化水素から誘導され、かつ3以上の分岐部を有する第1の構造単位、及び前記第1の構造単位の前記分岐部に結合した電荷輸送性を有する第2の構造単位を少なくとも3つ有し、前記第2の構造単位が、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、及びチオフェン構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を含み、前記高分子化合物の数平均分子量が500以上である、電荷輸送性材料。
  2. 前記第1の構造単位が、分子内に3〜6個の芳香環を持つ縮合多環芳香族炭化水素から誘導される構造を含む、請求項1に記載の電荷輸送性材料。
  3. 前記第1の構造単位が、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、フェナントレン、クリセン、トリフェニレン、テトラフェン、ピレン、ピセン、ペンタフェン、ペリレン、ヘリセン、コロネンアントラセン、及びテトラセンからなる群から選択される少なくとも1種の縮合多環芳香族炭化水素から誘導される構造を含む、請求項1又は2に記載の電荷輸送性材料。
  4. 前記第1の構造単位がピレンから誘導される構造を含む、請求項3に記載の電荷輸送性材料。
  5. 前記第2の構造単位がトリフェニルアミン構造を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の電荷輸送性材料。
  6. 前記第1の構造単位がピレンから誘導される構造を含み、かつ前記第2の構造単位がトリフェニルアミンから誘導される構造を含む、請求項1に記載の電荷輸送性材料。
  7. 前記高分子化合物が、分子内に1以上の重合性置換基を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電荷輸送性材料。
  8. 前記高分子化合物が、前記第1及び第2の構造単位に加えて、重合性置換基を有する第3の構造単位を含む、請求項7に記載の電荷輸送性材料。
  9. 前記第3の構造単位がベンゼン環構造を持つ、請求項8に記載の電荷輸送性材料。
  10. 前記重合性置換基が、炭素−炭素多重結合を有する基、小員環を有する基、ラクトン基、ラクタム基、シロキサン誘導体を含有する基、オキセタン基、エポキシ基、ビニル基、ビニルエーテル基、アクリレート基、及びメタクリレート基からなる群から選択される少なくとも1つの基、もしくは、エステル基とアミノ基の組み合わせ、又はエステル基とヒドロキシル基との組み合わせを含む、請求項7〜9のいずれか1項に記載の電荷輸送性材料。
  11. 前記重合性置換基が、オキセタン基を含む、請求項10に記載の電荷輸送性材料。
  12. 前記重合性置換基が、炭素数1〜8のアルキル鎖を介して前記ベンゼン環構造に結合している、請求項9〜11のいずれか1項に記載の電荷輸送性材料。
  13. 前記重合性置換基が親水性基と結合している、請求項7〜11のいずれか1項に記載の電荷輸送性材料。
  14. 前記高分子化合物が、下記モノマー2と、下記モノマー4と、下記モノマー5とを反応させて得られる高分子化合物(A)、又は下記モノマー1と、下記モノマー2と、下記モノマー4と、下記モノマー5とを反応させて得られる高分子化合物(B)である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の電荷輸送性材料。
  15. 前記高分子化合物(A)が、モノマー2:モノマー4:モノマー5=5.0:3.5:1.5のモル比での反応によって得られる化合物であり、前記高分子化合物(B)が、モノマー1:モノマー2:モノマー4:モノマー5=1.0:5.0:3.0:2.0のモル比での反応によって得られる化合物である、請求項14に記載の電荷輸送性材料。
  16. 正孔輸送性材料として使用される、請求項1〜15のいずれか1項に記載の電荷輸送性材料。
  17. 請求項1〜15のいずれか1項に記載の電荷輸送性材料と、溶媒とを含む、インク組成物。
  18. 請求項1〜15のいずれか1項に記載の電荷輸送性材料を含む有機層を有する、有機エレクトロニクス素子。
  19. 請求項1〜15のいずれか1項に記載の電荷輸送性材料を含む有機層を有する、有機エレクトロルミネセンス素子。
  20. フレキシブル基板を更に有する、請求項19に記載の有機エレクトロルミネセンス素子。
  21. 前記フレキシブル基板が樹脂フィルムを含む、請求項20に記載の有機エレクトロルミネセンス素子。
  22. 請求項19〜21のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネセンス素子を備えた表示素子。
  23. 請求項19〜21のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネセンス素子を備えた照明装置。
  24. 請求項23に記載の照明装置と、表示手段として液晶素子とを備えた表示装置。
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