JP6351229B2 - ボルトの製造方法 - Google Patents
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Description
まず、所定の長さのアルミニウム合金製の線材片を用意する。次に、この線材片に鍛造加工を施し、頭部や軸部を成形する。
次に、上記軸部に転造加工を施して雄ネジ部を成形する。これにより、上記線材片からボルトが成形されることになる。
そして、上記ボルトを水冷した後、最後に、時効処理を施す。この時効処理は、例えば、電気炉の中で、上記成形されたボルトを120℃で24時間加熱した後放冷するものである。
まず、図16(a)に示すように、線材片201の結晶組織は、鍛造される前の素材の状態では、O材(焼きなまし処理が施された金属材料)化され、再結晶組織となっており、無数の球状の結晶粒203が形成されている。
次に、上記線材片201に鍛造加工を施すと、図16(b)に示すように、上記結晶粒203の形状が棒状に変化する。
ここで、溶体化処理を行うと、上記ボルト207は、再結晶温度以上の高温に加熱されるため、図16(d)に示すように、上記変形した結晶粒203による結晶組織が再結晶化され、球状に近い結晶粒203による結晶組織に戻る。これにより、上記雄ネジ部205に複数の粒状の塊からなる網目状の結晶粒界が生じることになる。
その後、時効処理を施すことにより、図16(e)に示すように、結晶粒内及び結晶粒界上へ化合物が析出するが、結晶粒界上への上記化合物の析出が多くなるので、上記ボルト207が腐食した際、その腐食が結晶粒界の隙間に沿って内部へと進行し、その結果、例えば、応力集中等によって上記ボルト207が破断してしまうことになる。
又、請求項2によるボルトの製造方法は、請求項1記載のボルトの製造方法において、上記転造加工後に時効処理を施すようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項3によるボルトの製造方法は、請求項2記載のボルトの製造方法において、上記時効処理の加熱温度は105℃〜135℃であることを特徴とするものである。
又、請求項4によるボルトの製造方法は、請求項2又は請求項3記載のボルトの製造方法において、上記時効処理の加熱時間は8時間〜36時間であることを特徴とするものである。
又、請求項5によるボルトの製造方法は、請求項2〜請求項4の何れかに記載のボルトの製造方法において、上記時効処理後に復元処理を施し、上記復元処理後に再時効処理を施すことを特徴とするものである。
又、請求項6によるボルトの製造方法は、請求項5記載のボルトの製造方法において、上記再時効処理の加熱温度は105℃〜135℃であることを特徴とするものである。
又、請求項7によるボルトの製造方法は、請求項5又は請求項6記載のボルトの製造方法において、上記再時効処理の加熱時間は8時間〜36時間であることを特徴とするものである。
又、請求項8によるボルトの製造方法は、請求項5〜請求項7の何れかに記載のボルトの製造方法において、上記復元処理の加熱温度は、200℃〜250℃であることを特徴とするものである。
又、請求項9によるボルトの製造方法は、請求項5〜請求項8の何れかに記載のボルトの製造方法において、上記復元処理の加熱時間は0.5分〜30分であることを特徴とするものである。
又、請求項10によるボルトの製造方法は、請求項1〜請求項9の何れかに記載のボルトの製造方法において、上記アルミニウム合金は、Al−Zn−Mg−Cu系高力アルミニウム合金であることを特徴とするものである。
又、請求項2記載のボルトの製造方法によると、請求項1記載のボルトの製造方法において、上記溶体化処理の加熱温度は450℃〜480℃であるので、所望の溶体化処理を行って、上記効果をより確実なものとすることができる。
又、請求項3によるボルトの製造方法は、請求項1又は請求項2記載のボルトの製造方法において、上記溶体化処理の加熱時間は3時間〜10時間であるので、上記効果をより高めることができる。
又、請求項4記載のボルトの製造方法によると、請求項1〜請求項3の何れかに記載のボルトの製造方法において、上記転造加工後に時効処理を施すようにしたので、結晶組織中に化合物が析出し、腐食された際にこの化合物が優先的に腐食されることで内部への腐食の進行を防ぐことができるボルトを製造することができる。
又、請求項5記載のボルトの製造方法によると、請求項4記載のボルトの製造方法において、上記時効処理の加熱温度は105℃〜135℃であるので、所望の時効処理を行って、上記効果をより確実なものとすることができる。
又、請求項6記載のボルトの製造方法によると、請求項4又は請求項5記載のボルトの製造方法において、上記時効処理の加熱時間は8時間〜36時間であるので、上記効果をより高めることができる。
又、請求項7記載のボルトの製造方法によると、請求項4〜請求項6の何れかに記載のボルトの製造方法において、上記時効処理後に復元処理を施し、上記復元処理後に再時効処理を施すようにしたので、結晶粒界に析出する化合物を少なくすることができ、さらに内部への腐食の進行を防止できるボルトを製造することができる。
又、請求項8記載のボルトの製造方法によると、請求項7記載のボルトの製造方法において、上記再時効処理の加熱温度は105℃〜135℃であるので、所望の再時効処理を行って、上記効果をさらに高めることができる。
又、請求項9記載のボルトの製造方法によると、請求項7又は請求項8記載のボルトの製造方法において、上記再時効処理の加熱時間は8時間〜36時間であるので、上記効果をさらに高めることができる。
又、請求項10記載のボルトの製造方法によると、請求項7〜請求項9の何れかに記載のボルトの製造方法において、上記復元処理の加熱温度は、200℃〜250℃であるため、所望の復元処理を行って、上記効果をさらに高めることができる。
又、請求項11によるボルトの製造方法によると、請求項7〜請求項10の何れかに記載のボルトの製造方法において、上記復元処理の加熱時間は0.5分〜30分であるので、上記効果をより高めることができる。
又、請求項12によるボルトの製造方法によると、請求項1〜請求項11の何れかに記載のボルトの製造方法において、上記アルミニウム合金は、Al−Zn−Mg−Cu系高力アルミニウム合金であるので、上記効果をより顕著にえることができる。
又、請求項13記載のボルトは、請求項1〜請求項12の何れかに記載されたボルトの製造方法により製造されるため、上記ボルトの雄ネジ部の谷に複数の粒状の塊からなる網目状の結晶粒界ではなく、層状の結晶粒界が生じるようにすることができ、ボルトが腐食した際、その腐食がボルトの内部まで進行してしまうことを防止でき、例えば、応力集中に起因したボルトの破断を防止することができる。
まず、本実施の形態によるボルト1の構成を図1を参照しながら説明する。
本実施の形態によるボルト1は、図1に示すように、頭部3と軸部5から構成されている。上記頭部3は、図1に示すように、略円筒形状を成しており、反軸部5側の端面(図1(a)中紙面垂直方向手前側の面)には治具用凹部7が形成されている。また、上記頭部3の反軸部5側(図1(b)中上側)の外縁部には面取り部9が形成されている。また、上記頭部3の軸部5側(図1(b)中下側)の外縁部にはテーパ部11が形成されている。
なお、上記軸部5の、上記頭部3と上記小径部13との間は、大径部17となっている。
また、上記軸部5の大径部17と小径部13との間にはテーパ部19が設けられている。
また、上記ボルト1は、例えば、Al−Zn−Mg−Cu系高力アルミニウム合金製であり、具体的には、図2に示すような組成となっている。まず、ケイ素(Si)が0.02(mass%)、鉄(Fe)が0.06(mass%)、銅(Cu)が2.3(mass%)、マグネシウム(Mg)が2.2(mass%)、亜鉛(Zn)が6.4(mass%)、ジルコニウム(Zr)が0.1(mass%)、残部がアルミニウム(Al)である。
また、上記構成のボルト1を使用して、各種アルミフレームの締結を行うものである。
次に、時効処理が施される。この時効処理は、例えば、105℃〜135℃で8時間〜36時間加熱し、その後、放冷する処理である。これらの工程を経て上記ボルト1が完成される。
また、上記時効処理の後に復元処理が施され、この復元処理後に、再時効処理が施される場合もある。上記復元処理は、例えば、200℃〜250℃で0.5分〜30分加熱し、その後、水冷する処理である。また、上記再時効処理は、上記時効処理と同様に、例えば、105℃〜135℃で8時間〜36時間加熱し、その後、放冷する処理である。
以上が、本実施の形態によるボルト1の製造方法の概要である。
まず、鍛造加工について、図4及び図5を参照しながら説明する。
まず、図4(a)、図5(a)に示すように、図示しないリールに巻き取られているAl−Zn−Mg−Cu系高力アルミニウム合金製の線材21の先端を固定刃20aと可動刃20bとによって所定の長さ分せん断して、線材片21aを得る。
上記ダイ31には、図5(b)中下側が縮径された貫通孔37が形成されている。この貫通孔37に、図5(b)中下側から上記押し出しピン33を挿入する。上記押し出しピン33の径は、上記貫通孔37の縮径された側の径と同じに設定されている。
これにより、上記線材片21aは、図4(b)に示すような、頭部3と軸部5が成形された形状に塑性変形される。
頭部3と軸部5が成形された上記線材片21aは、上記押し出しピン33によって図5(b)中上側へと押し出され、上記貫通孔37の外に排出される。
上記ダイ47には、図5(c)に示すような形状の貫通孔53が形成されている。この貫通孔53に、図5(c)中下側から上記押し出しピン49を挿入する。上記押し出しピン49の径は、上記貫通孔53の図5(c)中下側の径と同じに設定されている。
これにより、上記線材片21aは、図4(c)に示すような形状に塑性変形される。
成形された上記線材片21aは、上記押し出しピン49によって図5(c)中上側へと押し出され、上記貫通孔53の外に排出される。
これにより、上記線材片21aの鍛造加工が終了する。
また、上記炉本体63内の上面(図6中上側の面)にはファン69が設置されており、上記炉本体63の外部の図6中上側には、上記ファン69を回転させるモータ71が設置されている。
上記線材片21aの転造加工は、次のようにして行われる。図7に示すように、外周面に螺旋状の凹凸が形成された転造ダイス81、83があり、これら転造ダイス81、83は、それぞれ、互いに逆方向に回転される。上記転造ダイス81、83の間に上記線材片21aの軸部5を挿入すると、上記線材片21aの軸部5は上記転造ダイス81、83の外周面の凹凸形状によって塑性変形される。これによって、上記軸部5には、雄ネジ部15が形成され、上記線材片21aはボルト1となる。
このようにして、上記ボルト1が完成される。
また、必要に応じて、その後、上記ボルト1に陽極酸化処理が行われる場合もある。この場合、上記ボルト1の表面に陽極酸化被膜が形成される。
上記線材片21aに鍛造加工を施すと、図8(b)に示すように、上記結晶粒91の形状が棒状に変化する。
ここで、転造加工を施し上記線材片21aをボルト1とすると、図8(d)に示すように、上記結晶粒91は棒状の形状に変化する。これにより、上記ボルト1の雄ネジ部15には、層状の結晶組織が形成される。このような層状の結晶組織により、上記ボルト1の雄ネジ部15では、表面側に腐食が発生しても、上記ボルト1の内部へは上記腐食が進行し難い状態となる。
なお、既に述べたように、仮に、転造加工後に溶体化処理を施すと、上記転造加工によって成形された雄ネジ部に複数の粒状の塊からなる網目状の結晶粒界が生じてしまうことになるが、本実施の形態では、溶体化処理後に転造加工を施すことにより、溶体化処理により生じた球状に近い形状の結晶粒91を層状の結晶組織に変化させるものである。
まず、前述したように、溶体化処理を施した後に、上記ボルト1の雄ネジ部15を成形するための転造加工を行うため、上記雄ネジ部15の結晶組織を層状にすることができる。上記ボルト1が腐食環境に置かれた場合、結晶粒界に沿って腐食が進行する為、このような層状の結晶組織により、上記ボルト1の雄ネジ部15の表面で発生した腐食が内部に進行してしまうことを防止できる。
また、上記ボルト1の内部への腐食の進行を防止することで、例えば、応力手中に起因したボルト1の破断を防止することができる。
また、上記時効処理の後、復元処理を施し、その後、再時効処理を施すことにより、上記結晶粒界に析出する化合物の量を少なくすることができ、これによって内部への腐食の進行をさらに防止できる。
なお、容体化処理、時効処理、復元処理、再時効処理について、既に説明した各温度範囲内、各時間内で行った場合は、上記効果を確実に得ることができた。
この実施例1では、図9の表の「実施例1」の行に示すような工程で、ボルト1aを製造した。すなわち、鍛造工程が行われ、溶体化処理が行われ、その後、転造工程が行われ、続いて、時効処理が行われる。溶体化処理では450℃で3時間加熱した後水冷した。時効処理では120℃で24時間加熱した後放冷した。
上記図12に示すように、引張用治具101に上記ボルト1aを貫通させるとともにその頭部3を係合させ、固定用治具103に上記ボルト1aの軸部5の雄ネジ部15を螺合・固定させる。
そして、上記引張用治具101を図12中上側に所定の力で引張り、上記引張用治具101を引っ張る力を、上記ボルト1aが破断するまで徐々に増加させていく。
実施例1の場合、上記ボルト1aの「試験前」の引張強度は23.2kN、「1000H試験後」の引張強度は23.0kNであり、引張強度の低下はみられなかった。
この実施例2では、図9の表の「実施例2」の行に示すような工程で、ボルト1bが製造された。すなわち、鍛造工程が行われ、溶体化処理が行われ、その後、転造工程が行われ、続いて、時効処理、復元処理、再時効処理が順次行われた。溶体化処理では450℃で3時間加熱し、その後水冷した。時効処理では120℃で24時間加熱し、その後放冷した。復元処理では220℃で15分加熱し、その後、水冷した。再時効処理では、120℃で24時間加熱し、その後放冷した。
実施例2の引張試験も、前述した実施例1の引張試験と同様である。
実施例2の場合、上記ボルト1bの「試験前」の引張り強度は24.2kN、「1000H試験後」の引張強度は24.6kNであり、引張強度の腐食による低下はなく、また、復元処理と再時効処理により引張強度が向上している。
この従来例では、図9の表の「従来例」の行に示すような工程で、前述したボルト207が製造された。すなわち、鍛造工程が行われ、次に、転造工程が行われ、その後、溶体化処理が行われ、続いて、時効処理が行われた。上記溶体化処理と時効処理の条件は、実施例1と同様である。
従来例の場合、上記ボルト1bの「試験前」の引張強度は22.1kN、「1000H試験後」の引張強度は21.7kNであった。
まず、時効処理、復元処理、再時効処理を施すか否かは任意である。
また、溶体化処理、時効処理、復元処理、再時効処理における温度や時間には様々な場合が想定される。
また、ボルト1の形状も様々な場合が考えられる。
また、前記一実施の形態の場合には、Al−Zn−Mg−Cu系高力アルミニウム合金を例に挙げて説明したが、その他のアルミニウム合金にも適用可能である。
1a ボルト
1b ボルト
15 雄ネジ部
21 線材
21a 線材片
Claims (10)
- 焼きなましにより球状の結晶粒が形成されたアルミニウム合金製の線材片に鍛造加工を施して上記球状の結晶粒を棒状の結晶粒に変化させ、
上記鍛造加工が施された線材片にそのままの状態で溶体化処理を施して上記棒状の結晶粒を球状の結晶粒に戻し、
上記溶体化処理が施された線材片にそのままの状態で転造加工を施して雄ネジ部を成形するようにして上記球状の結晶粒を層状の結晶組織とし、
上記溶体化処理の加熱温度は450℃〜480℃で、加熱時間は3時間〜10時間であることを特徴とするボルトの製造方法。 - 請求項1記載のボルトの製造方法において、
上記転造加工後に時効処理を施すようにしたことを特徴とするボルトの製造方法。 - 請求項2記載のボルトの製造方法において、
上記時効処理の加熱温度は105℃〜135℃であることを特徴とするボルトの製造方法。 - 請求項2又は請求項3記載のボルトの製造方法において、
上記時効処理の加熱時間は8時間〜36時間であることを特徴とするボルトの製造方法。 - 請求項2〜請求項4の何れかに記載のボルトの製造方法において、
上記時効処理後に復元処理を施し、
上記復元処理後に再時効処理を施すことを特徴とするボルトの製造方法。 - 請求項5記載のボルトの製造方法において、
上記再時効処理の加熱温度は105℃〜135℃であることを特徴とするボルトの製造方法。 - 請求項5又は請求項6記載のボルトの製造方法において、
上記再時効処理の加熱時間は8時間〜36時間であることを特徴とするボルトの製造方法。 - 請求項5〜請求項7の何れかに記載のボルトの製造方法において、
上記復元処理の加熱温度は、200℃〜250℃であることを特徴とするボルトの製造方法。 - 請求項5〜請求項8の何れかに記載のボルトの製造方法において、
上記復元処理の加熱時間は0.5分〜30分であることを特徴とするボルトの製造方法。 - 請求項1〜請求項9の何れかに記載のボルトの製造方法において、
上記アルミニウム合金は、Al−Zn−Mg−Cu系高力アルミニウム合金であることを特徴とするボルトの製造方法。
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