JP6343770B2 - 界面制御機構及び界面制御方法 - Google Patents
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(装置構成について)
図1に示す第一液体として、0.5モル/リットルのテトラペンチルアミニウム・クロリド(TPA・Cl;東京化成工業株式会社製)及び0.002モル/リットルのフェリシアン化カリウム(和光純薬工業株式会社製)を混合した水溶液を調製した。ガラス容器の底部に作用電極として円形状のグラッシィカーボン材(ビー・エー・エス株式会社製)を配置し、ガラス容器内に水溶液を2〜3ミリリットル投入し、20分間放置して脱気した。対極となる電極として白金コイルを水溶液中にセットし、参照電極として飽和塩化カリウム水溶液銀・塩化銀の電極(E0=0.2V vs NHE 25℃)を用いた。図1に示す第二液体として、0.5モル/リットルのTPA・Clを溶解した2−ニトロフェニルオクチルエーテル(NPOE)(株式会社同仁化学研究所製)を準備し、10マイクロリットルのマイクロピペッタを用いて3マイクロリットルの第二液体を作用電極表面に配置した。配置したNPOEである第二液体は、図1に示すように、ドーム状に形成されて明確な界面が生じた。
ポテンシオスタット(Ivium CompactStat;IVIUM社(オランダ)製)を用いて、電極電位を30mV/秒の掃引速度で0.05Vから正の方向に掃引を開始し、0.5Vで反転して−0.4Vまで負の方向に掃引した後、−0.4Vで再び折り返し、正の方向に0.05Vまで掃引して、その間に流れる電流を記録した。界面の変化は、ビデオマイクロスコープ(PICOSCOPEMAN;ショットモリテックス株式会社製)でNPOEの界面を撮影し、撮影された画像データに基づいて界面のサイズ及び面積を算出した。
フェリシアニド[Fe(CN)6]3-の電極面に対する吸着を確認するため次のような実験を行った。まず、図1(a)に示す三相界面が形成された状態において、第二液体Oの容量を大きくしていくと、作用電極Eの電極面全体が第二液体Oにより覆われる状態に設定することができる。この状態では、作用電極Eと第一液体Wが接触することがなくなり、界面N1及びN4が存在せず、界面N2及びN3のみ存在するようになる。こうした界面構成を設定するため、上述した装置構成と同様のものを用い、第一液体として、0.1モル/リットルの塩化ナトリウム(ナカライテスク株式会社製)、0.1モル/リットルの過塩素酸ナトリウム(ナカライテスク株式会社製)及び0.004モル/リットルのフェリシアン化カリウム(和光純薬工業株式会社製)を混合した水溶液を調製し、ガラス容器内に水溶液を5ミリリットル投入した。第二液体として、0.25モル/リットルのテトラヘプチルアンモニウム・クロリド(シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製)を含むニトロベンゼン(和光純薬工業株式会社製)を準備し、10マイクロリットルのマイクロピペッタを用いて20マイクロリットルの第二液体を作用電極表面に配置した。酸化還元される反応物質フェリシアニド[Fe(CN)6]3-を含まない油相である第二液体は、作用電極の電極面全体に拡がり、第一液体と作用電極とが接触していない状態に設定された。
次に、最初に調製した混合水溶液及びNPOEをガラス容器内に配置して作用電極上にドーム状の界面を形成した状態に設定し、図6に示す交流波形の電圧を印加した。基準となる電圧V0を、図3に示す酸化還元波形における−0.1V付近のピーク時の電圧値に近い値(−0.1V)に設定し、最大振幅0.5V及び周期4秒とした。このように設定することで、基準電圧V0を超えるとフェリシアニド[Fe(CN)6]3-の酸化反応が生じ、基準電圧V0より下がると還元反応が生じるため、酸化還元反応が可逆的に繰り返し生じるようになる。
次に、複数の作用電極を用いて各作用電極に配置された第二液体の界面形状の制御に関する実験を行った。
第一液体として、実施例1と同様に、0.5モル/リットルのTPA・Cl及び0.002モル/リットルのフェリシアン化カリウムを混合した水溶液を調製した。ガラス容器の底部に作用電極として、ガラス基板にITOを形成した電極体(株式会社倉元製作所製)を配置した。電極体は、中心位置に沿って幅0.3mmでエッチングして絶縁処理し、両側を一対の作用電極とした。ガラス容器内に水溶液を2〜3ミリリットル投入し、20分間放置して脱気した。第二液体として、0.5モル/リットルのTPA・Clを溶解したニトロベンゼン(和光純薬工業株式会社製)を準備し、10マイクロリットルのマイクロピペッタを用いて1〜3マイクロリットルの第二液体を一対の作用電極のそれぞれの電極表面に複数個配置した。ニトロベンゼンには、水溶液との間にドーム状の界面が明確に形成された。対極となる電極として白金コイルを水溶液中にセットし、一対の作用電極に対する共通電極とした。
電源として市販のニッケル水素電池(起電力;約1.34V)を用いて、作用電極に独立して電圧を印加するように各電極を接続した。そして、それぞれの作用電極に、0.67V及び−0.67Vを交互に印加して、電極表面に配置したニトロベンゼンと水溶液との間の界面形状を観察した。この場合、実施例1で述べたように、電極表面には、フェリシアニド[Fe(CN)6]3-が吸着しており、0.67Vでは酸化反応が生じ、−0.67Vでは還元反応が生じるようになる。
図8Aから図8Dは、作用電極となる電極体の液体とは反対側から撮影した写真である。撮影には、デジタル一眼カメラ(NEX-5N;ソニー株式会社製)にマウント用レンズ(安原製作所株式会社製)を取り付けて用いた。写真の中央において左右方向に所定幅で薄く表示された直線部分が絶縁した箇所であり、その上側及び下側がそれぞれ作用電極となっている。上下の作用電極に0.67Vを印加した場合(図8A)には、上下の作用電極とも、同じように電極表面の界面形状が拡がるように変化したことが観察された(写真では、界面を示すラインが薄くなっている)。上側の作用電極に−0.67Vを印加し、下側の作用電極に0.67Vを印加した場合(図8B)には、上側の作用電極の電極表面の界面形状は略円形に小さくまとまるように変化し、下側の作用電極の電極表面の界面形状は拡がるように変化したことが観察された(写真では、界面形状がまとまることで円形のラインが明確になっている)。上側の作用電極に0.67Vを印加し、下側の作用電極に−0.67Vを印加した場合(図8C)には、上側の作用電極の電極表面の界面形状は拡がるように変化し、下側の作用電極の電極表面の界面形状は小さくまとまるように変化したことが観察された。上下の作用電極に−0.67Vを印加した場合(図8D)には、上下の作用電極とも、同じように電極表面の界面形状が円形に小さくまとまるように変化したことが観察された。
次に、複数の作用電極に重なるように第二液体を配置した場合の界面形状の変化に関する実験を行った。
図1に示す第一液体として、実施例1と同様に、0.5モル/リットルのTPA・Cl及び0.002モル/リットルのフェリシアン化カリウムを混合した水溶液を調製した。ガラス容器の底部に作用電極として白金によるリング・ディスク電極体(NIKKO KEISOKU社製)を配置した。電極体は、周方向の中央位置に沿って幅0.1mmでエッチングして絶縁処理し、外周側電極及び内周側電極を形成して一対の作用電極とした。
実施例2と同様に、電源として市販のニッケル水素電池(起電力;約1.34V)を用いて、外周側電極及び内周側電極にそれぞれ独立して電圧を印加するように各電極を接続した。そして、外周側電極及び内周側電極に、それぞれ0.67V及び−0.67Vを交互印加して、電極表面に配置したNPOEと水溶液との間の界面形状を観察した。この場合、実施例1で述べたように、電極表面には、フェリシアニド[Fe(CN)6]3-が吸着しており、0.67Vでは酸化反応が生じ、−0.67Vでは還元反応が生じるようになる。
図9A及び図9Bは、リング・ディスク電極体の表面と直交する方向から撮影した写真である。撮影には、実施例2と同様の撮影装置を用いた。写真において周方向の中央に沿って黒く表示された曲線部分が絶縁した箇所であり、その上側が外周側電極であり、下側が内周側電極となっている。外周側電極に酸化電位(0.67V)を印加するとともに内周側電極に還元電位(−0.67V)を印加した場合(図9A)、第二液体は、外周側電極に向かって矢印で示すように移動する様子が観察された。また、外周側電極に還元電位(−0.67V)を印加するとともに内周側電極に酸化電位(0.67V)を印加した場合(図9B)、第二液体は、内周側電極に向かって矢印で示すように移動する様子が観察された。
Claims (9)
- 作用電極が配置されるとともに当該作用電極の電極面に接するように水系の第一液体及び当該第一液体と不混和性を有する油系の第二液体が配置された液体収容部を備え、前記第一液体及び前記第二液体の間に形成される界面の形状を制御する界面制御機構であって、前記第一液体には、前記第二液体に対して難溶性で電極反応によりイオン化して前記第二液体内に浸透してエマルションとなるとともに電極反応により前記作用電極の電極面に対して吸着して酸化還元される反応物質及び当該反応物質の支持電解質として機能するイオン性の界面活性剤が溶解しており、前記第二液体には、前記界面活性剤が溶解しており、前記反応物質の酸化還元反応が可逆的に生じるように前記作用電極に電圧を印加する電圧印加部を備えており、電圧印加により前記第二液体が接する前記作用電極の電極面に吸着した前記反応物質の可逆的な酸化還元反応に基づいて前記第二液体内の前記界面活性剤が電極面に吸着又は脱離することで前記界面の形状を変化させる界面制御機構。
- 前記電圧印加部は、前記反応物質の酸化還元電位に基づいて設定された電圧範囲において印加電圧を変動させることで、前記反応物質の酸化還元反応を可逆的に生じさせる請求項1に記載の界面制御機構。
- 前記界面活性剤は、4級アンモニウム塩を含む請求項1又は2に記載の界面制御機構。
- 前記作用電極は複数設けられており、それぞれの前記作用電極の電極面に独立して第二液体が配置されている請求項1から3のいずれかに記載の界面制御機構。
- 前記作用電極は複数設けられており、少なくとも2つの前記作用電極の電極面と重なるように前記第二液体が配置されている請求項1から3のいずれかに記載の界面制御機構。
- 請求項1から5のいずれかに記載の界面制御機構を備えている表示装置であって、前記界面の形状の変化に基づいて表示を行う表示装置。
- 請求項1から5のいずれかに記載の界面制御機構を備えている光学装置であって、前記界面の形状の変化に基づいて光学特性を変化させる光学装置。
- 請求項1から5のいずれかに記載の界面制御機構を備えている濃度検知装置であって、前記界面の形状の変化に基づいて前記第二液体中に含まれる前記界面活性剤の濃度変化を検知する濃度検知装置。
- 作用電極の電極面に接するように配置された水系の第一液体及び当該第一液体と不混和性を有する油系の第二液体の間に形成された界面の形状を制御する界面制御方法であって、前記第二液体に対して難溶性で電極反応によりイオン化して前記第二液体内に浸透してエマルションとなるとともに電極反応により前記作用電極の電極面に対して吸着して酸化還元される反応物質及び当該反応物質の支持電解質として機能するイオン性の界面活性剤が前記第一液体に溶解した状態に設定し、前記界面活性剤が前記第二液体に溶解した状態に設定し、前記反応物質の酸化還元反応が可逆的に生じるように前記作用電極に電圧を印加し、電圧印加により前記第二液体が接する前記作用電極の電極面に前記反応物質を吸着させて前記反応物質の可逆的な酸化還元反応に基づいて前記第二液体内の前記界面活性剤が電極面に吸着又は脱離することで前記界面の形状を変化させる界面制御方法。
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