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JP6235384B2 - 自動車の車体構造 - Google Patents

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Description

本発明は、閉断面を有する鋼板製の車体フレームの内部にCFRP製のバルクヘッドを配置し、前記バルクヘッドの全周を前記車体フレームの内面に発泡性樹脂接着剤で接着した自動車の車体構造に関する。
多数の貫通孔を有するスチフナをアウターパネルおよびインナーパネル間に挟んで自動車のフロントピラーを構成し、インナーパネルおよびスチフナ間の第1閉断面内にCFRP製のバルクヘッドを配置し、第1閉断面内で発泡させた発泡硬化樹脂充填材をスチフナの貫通孔を通してアウターパネルおよびスチフナ間の第2閉断面内にはみ出させることで、インナーパネル、スチフナ、発泡硬化樹脂充填材およびバルクヘッドの結合強度を高めるものが、下記特許文献1により公知である。
特許第4729027号公報
しかしながら、上記従来のものは、バルクヘッドの外形形状がインナーパネルおよびスチフナ間の第1閉断面の形状を考慮していないため、バルクヘッドの外周部と第1閉断面の内面との間に大きな隙間が形成されてしまい、バルクヘッドによるフロントピラーの補強効果が充分に発揮されない可能性があった、
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、閉断面を有する鋼板製の車体フレームをCFRP製のバルクヘッドで効率的に補強することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、閉断面を有する鋼板製の車体フレームの内部にCFRP製のバルクヘッドを配置し、前記バルクヘッドの全周を前記車体フレームの内面に発泡性樹脂接着剤で接着した自動車の車体構造であって、前記バルクヘッドは、衝突荷重の入力による前記車体フレームの断面の変形方向に配向された連続カーボン繊維を備え、前記連続カーボン繊維は、衝突荷重の入力により前記車体フレームの断面が縮小する方向に配向された第1連続カーボン繊維と、前記車体フレームの断面が拡大する方向に配向された第2連続カーボン繊維とからなり、前記第1、第2連続カーボン繊維の量は、それが配向される方向の変形量に比例することを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
また請求項に記載された発明によれば、請求項の構成に加えて、前記バルクヘッドは、前記車体フレームに入力する主たる荷重の方向に延びるビードを備えることを特徴とする自動車の車体構造が提案される。
尚、実施の形態のDピラー12は本発明の車体フレームに対応し、実施の形態の第1連続カーボン繊維18Aおよび第2連続カーボン繊維18Bは本発明の連続カーボン繊維に対応する。
請求項1の構成によれば、閉断面を有する鋼板製の車体フレームの内部にCFRP製のバルクヘッドを配置し、バルクヘッドの全周を車体フレームの内面に発泡性樹脂接着剤で接着したので、バルクヘッドで車体フレームの断面の変形を抑制して曲げ剛性を高めることができるだけでなく、バルクヘッドおよび車体フレーム間の隙間を発泡性樹脂接着剤で塞いで騒音の伝達を抑制することができ、しかもバルクヘッドをCFRP製としたことで重量の増加を最小限に抑えることができる。
またバルクヘッドは、衝突荷重の入力による車体フレームの断面の変形方向に配向された連続カーボン繊維を備えるので、バルクヘッドによる車体フレームの断面の変形抑制効果を高めることができ、しかも連続カーボン繊維は、衝突荷重の入力により車体フレームの断面が縮小する方向に配向された第1連続カーボン繊維と、車体フレームの断面が拡大する方向に配向された第2連続カーボン繊維とからなるので、車体フレームに入力する曲げ荷重を第1、第2連続カーボン繊維の引張および圧縮で効率的に支持することができるだけでなく、第1、第2連続カーボン繊維の量は、それが配向される方向の変形量に比例するので、高価な連続カーボン繊維の使用量を最小限に抑えながら必要な強度を確保することができる。
また請求項の構成によれば、バルクヘッドは、車体フレームに入力する主たる荷重の方向に延びるビードを備えるので、衝突荷重の入力により車体フレームの断面が縮小する方向の変形をビードにより抑制し、第1連続カーボン繊維の本数を削減することができる。
5ドア車両の車体後部の斜視図。 図1の2−2線拡大断面図。 図2の3−3線断面図。 図3の4部拡大図。
以下、図1〜図4に基づいて本発明の実施の形態を説明する。尚、本明細書において前後方向、左右方向(車幅方向)および上下方向とは、運転席に着座した乗員を基準として定義される。
図1および図2に示すように、5ドア車両の車体後部に図示せぬテールゲートで開閉される開口部11が形成されており、開口部11の車幅方向外端に上下方向に延びるDピラー12が配置される。Dピラー12の上端は車体上部のルーフサイドレールの後端に接続され、Dピラー12の下端は車体下部のリヤサイドフレームの後端に接続される。開口部11の周囲は、サイドアウターパネル13の後端に接続するリヤアウタパネルで覆われるが、図1はリヤアウタパネルを取り外した状態を示しており、Dピラー12の一部が露出している。
Dピラー12は鋼板製のアウターパネル14および鋼板製インナーパネル15を、アウターパネル14の接合フランジ14a,14aとインナーパネル15の接合フランジ15a,15aとを重ね合わせて溶接Wすることで、前後方向に長く、車幅方向に短い閉断面に構成される。Dピラー12の下部には,CFRP製の板状部材よりなるバルクヘッド16が略水平姿勢で配置される。バルクヘッド16の外周部の形状は、それが固定されるDピラー12の断面形状に沿っており、バルクヘッド16の外周部とDピラー12の内面との間には略一定幅の隙間が形成される。
図2〜図4に示すように、バルクヘッド16は略車幅方向に沿って平行に延びる複数のビード16a…を備える波板状の部材であり、例えば5枚のCFRPシート17…を積層して構成される。各CFRPシート17は一方向に引き揃えた多数の連続カーボン繊維18A…,18B…をマトリクス樹脂で固めたものであり、5枚のCFRPシート17…のうちの4枚(a)、(b)、(d)、(e)は第1連続カーボン繊維18A…の配向方向が略車幅方向に沿い、残りの1枚(c)は第2連続カーボン繊維18B…の配向方向が略前後方向に沿うように配置される(図4参照)。言い換えると、4枚のCFRPシート17…は第1連続カーボン繊維18A…の配向方向がビード16a…の方向と平行であり、1枚のCFRPシート17は第2連続カーボン繊維18B…の配向方向がビード16a…の方向と直交する。
バルクヘッド16の一辺には2個の合成樹脂製のクリップ19,19が固定されており、これらのクリップ19,19の脚部19a,19aを例えばアウターパネル14のクリップ孔14b,14b(図3(A)参照)に圧入することで、バルクヘッド16をDピラー12の内部の所定位置に所定姿勢で仮止めすることができる。またバルクヘッド16の外周部には、その外側に向かってV字状に拡開する上下一対の合成樹脂製の発泡方向規制部材20,20が接着等により固定される。従って、アウターパネル14あるいはインナーパネル15の内面と、発泡方向規制部材20,20との間には、バルクヘッド16の外周部を取り囲む断面三角形の空間が区画される。
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
先ず、前処理工程で、バルクヘッド16に予めクリップ19,19および発泡方向規制部材20,20を固定するとともに、上下の発泡方向規制部材20,20間に未発泡の発泡性樹脂接着剤21を添付しておく。次に、このバルクヘッド16をDピラー12の内部に挿入してクリップ19,19の脚部19a,19aをアウターパネル14のクリップ孔14b,14bに圧入することで、バルクヘッド16を所定位置に仮止めする。
この状態で、例えば塗装の乾燥工程で車体を加熱すると、発泡性樹脂接着剤21が発泡膨張して硬化することで、バルクヘッド16の外周部をDピラー12のアウターパネル14およびインナーパネル15の内面に接着する。このとき、Dピラー12の内面に向けて拡開する発泡方向規制部材20,20で発泡膨張する発泡性樹脂接着剤21をバルクヘッド16およびDピラー12の内面の接着部に集中させることで、前記接着部を効率的かつ強固に接着することができる。しかも硬化した発泡性樹脂接着剤21が接着部を肉盛りする形になることで、接着強度が更に高められる。
さて、車両が側面衝突されてDピラー12の下部に車幅方向内向きの衝突荷重が入力したとき、Dピラー12の下部にバルクヘッド16を配置したので、Dピラー12の内部にスチフナを配置して補強することなく側面衝突の衝突荷重に対するDピラー12の曲げ剛性を高めることができ、Dピラー12の重力削減に寄与することができる。このとき、バルクヘッド16は、Dピラー12に入力する側面衝突の衝突荷重の主たる入力方向である車幅方向に延びるビード16a…を備えるので、衝突荷重の入力によりDピラー12の断面が縮小する方向の変形をビード16a…により抑制し、第1連続カーボン繊維18A…の本数を削減することができる。
側面衝突の衝突荷重によりDピラー12は略車幅方向に圧縮変形して略前後方向に引張変形するが、バルクヘッド16は、それを構成する5枚のCFRPシート17…の第1、第2連続カーボン繊維18A…,18B…の配向方向が略車幅方向および略前後方向に沿っているので、第1、第2連続カーボン繊維18A…,18B…でDピラー12の圧縮変形および引張変形を効果的に抑制することができる。
このとき、Dピラー12の略車幅方向の圧縮変形量と、略前後方向の引張変形との比は例えば4:1になるが、積層されてバルクヘッド16を構成する5枚のCFRPシート17…のうちの4枚(a)、(b)、(d)、(e)は第1連続カーボン繊維18A…の配向方向が略車幅方向に沿い、残りの1枚(c)は第2連続カーボン繊維18B…の配向方向が略前後方向に沿うように配置されるため(図4参照)、バルクヘッド16の強度を変形量に応じて配分することで、高価な炭素繊維の使用量を最小限に抑えながらバルクヘッド16の強度を最大限に高めることができる。
またCFRP製のバルクヘッド16の全周をDピラー12内面に発泡性樹脂接着剤21で接着したので、バルクヘッド16でDピラー12の断面の変形を抑制して曲げ剛性を高めることができるだけでなく、バルクヘッド16およびDピラー12間の隙間を発泡性樹脂接着剤21で塞いで騒音の伝達を抑制することができ、しかもバルクヘッド16をCFRP製としたことで重量の増加を最小限に抑えることができる。更に、バルクヘッド16の外周部にDピラー12の内面に向かって拡開する発泡方向規制部材20,20を設けたので、バルクヘッド16の外周部とDピラー12の内面との接着部に発泡性樹脂接着剤21を効率的に集中させて接着強度を高めることができる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、本発明の車体フレームは実施の形態のDピラー12に限定されるものではなく、車体外側のアウターパネル14および車体内側のインナーパネル15を接合して閉断面に構成した車体フレームであれば良い。
またバルクヘッド16を仮止めするクリップ19,19の数は2個に限定されず、1個あるいは3個以上であっても良い。
またバルクヘッド16を構成するCFRPシート17の積層数は実施の形態の5層に限定されるものではない。
また略車幅方向に配向される第1連続カーボン繊維18A…と略前後方向に配置される第2連続カーボン繊維18B…との比率は実施の形態に4:1に限定されず、第1、第2連続カーボン繊維18A…,18B…が配向される方向の変形量に応じた比率にすれば良い。
12 Dピラー(車体フレーム)
16 バルクヘッド
16a ビード
18A 第1連続カーボン繊維(連続カーボン繊維)
18B 第2連続カーボン繊維(連続カーボン繊維
21 発泡性樹脂接着剤

Claims (2)

  1. 閉断面を有する鋼板製の車体フレーム(12)の内部にCFRP製のバルクヘッド(16)を配置し、前記バルクヘッド(16)の全周を前記車体フレーム(12)の内面に発泡性樹脂接着剤(21)で接着した自動車の車体構造であって、
    前記バルクヘッド(16)は、衝突荷重の入力による前記車体フレーム(12)の断面の変形方向に配向された連続カーボン繊維(18A,18B)を備え、前記連続カーボン繊維(18A,18B)は、衝突荷重の入力により前記車体フレーム(12)の断面が縮小する方向に配向された第1連続カーボン繊維(18A)と、前記車体フレーム(12)の断面が拡大する方向に配向された第2連続カーボン繊維(18B)とからなり、前記第1、第2連続カーボン繊維(18A,18B)の量は、それが配向される方向の変形量に比例することを特徴とする自動車の車体構造
  2. 記バルクヘッド(16)は、前記車体フレーム(12)に入力する主たる荷重の方向に延びるビード(16a)を備えることを特徴とする、請求項に記載の自動車の車体構造。
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