以降、図を参照していくつかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。
以降に示す幾つかの実施形態のアンテナ装置は、スマートフォンやタブレット端末に代表される通信端末等に設けられ、例えばHF帯、UHF帯またはSHF帯等の周波数帯の異なる複数のシステム(GPS(Global Positioning System),Wi−Fi(登録商標),NFC(Near field communication)等)で兼用することのできるアンテナ装置である。
《第1の実施形態》
図1(A)は第1の実施形態に係るアンテナ装置101の平面図であり、図1(B)は、図1(A)におけるA−A断面図である。なお、図1(B)において、各部の厚みは誇張して図示している。以降の各実施形態における断面図についても同様である。図2はアンテナ装置101の集中定数素子による等価回路図である。図2および図3(B)において、放射素子1をインダクタL1で表し、導体板2(導電性部材)をインダクタL2で表し、給電コイル4をインダクタL4で表している。以降の各実施形態における等価回路図についても同様である。
アンテナ装置101は、放射素子1、導体板2、基板3、第1インピーダンス回路51、キャパシタC1、第1給電回路81、第2給電回路82、リアクタンス素子61,62およびキャパシタC41,C42,C43,C44を備える。
第1インピーダンス回路51、キャパシタC1、第1給電回路81、第2給電回路82、リアクタンス素子61,62およびキャパシタC41〜C44は、基板3に実装される。キャパシタC1,C41〜C44は例えばチップキャパシタ等のキャパシタ部品である。
放射素子1および導体板2は、平面形状が矩形であって、導電性を有する平板である。本実施形態における放射素子1および導体板2は、間隙部8を挟んで、縦方向(図1(A)におけるY方向)に並べて配置され、かつ、同一平面上に配置される(図1(B)参照)。放射素子1は、長手方向が横方向(図1(A)におけるX方向)に一致しており、長手方向の両端に第1端部E1および第2端部E2を有する。
放射素子1および導体板2は、例えばスマートフォンの背面筐体の一部である。本実施形態では、この放射素子1が本発明に係る「第1導電体」に相当する。また、本実施形態では、この導体板2が本発明に係る「導電性部材」に相当し、「第2導電体」に相当する。第1導電体および第2導電体は導電性を有する部材であり、例えば金属やグラファイト等である。
第1インピーダンス回路51は、第1並列共振回路(LC並列共振回路)を有し、放射素子1と導体板2との間に直接接続される。第1インピーダンス回路51は、インダクタL11およびキャパシタC11を有し、放射素子1の長手方向の第1端部E1付近に接続される。接続導体71A,72Aは、基板3の主面に形成されたU字状の導体パターンである。接続導体71Aは、インダクタL11およびキャパシタC11の一端にそれぞれ接続され、接続ピン5を介して放射素子1に接続される。接続導体72Aは、インダクタL11およびキャパシタC11の他端にそれぞれ接続され、接続ピン5を介して導体板2に接続される。つまり、インダクタL11およびキャパシタC11の一端は、接続導体71Aおよび接続ピン5を介して放射素子1に接続される。また、インダクタL11およびキャパシタC11の他端は、接続導体72Aおよび接続ピン5を介して導体板2に接続される。インダクタL11は例えばチップインダクタ等のインダクタ部品であり、接続ピン5は例えば可動型プローブピンである。
この構成により、本実施形態における第1インピーダンス回路51は、インダクタL11およびキャパシタC11で構成されるLC並列共振回路を有する。本実施形態では、このLC並列共振回路が本発明に係る「第1並列共振回路」に相当する。
キャパシタC1は、基板3の主面に形成された接続導体73A,74Aおよび接続ピン5を介して、放射素子1と導体板2との間に接続される。
したがって、図1(A)に示すように、放射素子1、導体板2、第1インピーダンス回路51およびキャパシタC1を含むループ部が構成される。
第1給電回路81は、UHF帯またはSHF帯(第1周波数帯)用ICである。第1給電回路81の入出力部は、基板3の主面に形成された接続導体、接続ピン5およびリアクタンス素子61を介して、放射素子1の長手方向の第2端部E2付近に接続される。リアクタンス素子61は例えばチップキャパシタ等の電子部品であり、第1給電回路81は例えば2.4GHz帯の無線LANの通信システムの給電回路である。
リアクタンス素子62を含めた放射素子1とグランドとの接続は、他の通信システムに対して放射素子1を含むアンテナと第1給電回路81とのマッチング用に設けるスタブであり、リアクタンス素子62が基板3の主面に形成された接続導体および接続ピン5を介して、放射素子1の長手方向の第2端部E2付近に接続される。リアクタンス素子62は例えばチップキャパシタ等の電子部品である。なお、リアクタンス素子62は必要に応じて複数備える構成であってもよい。但し、リアクタンス素子62は必須の構成ではなく、スタブを設けない構成でもよい。
第2給電回路82は、平衡入出力型のHF帯(第2周波数帯)ICである。第2給電回路82の入出力部には、キャパシタC41〜C44を介して給電コイル4が接続されている。給電コイル4は例えばフェライトコアにコイル導体が巻回された積層型のフェライトチップアンテナである。給電コイル4は、平面視して、放射素子1の長手方向(図1におけるX方向)の中央付近で、かつ、そのコイル開口が間隙部8に面した放射素子1の縁端部に沿う位置に配置されている。すなわち、給電コイル4のコイル開口は、導体板2を向くように配置されている。第2給電回路82は、例えば13.56MHzのRFID用のRFIC素子である。
給電コイル4にはキャパシタC41,C42の直列回路が並列に接続されていて、LC共振回路が構成されている。第2給電回路82はキャパシタC43,C44を介してこのLC共振回路にHF帯の通信信号を給電する。給電コイル4は、放射素子1、導体板2、第1インピーダンス回路51およびキャパシタC1を含むループ部と、磁界結合する。
図3(A)はUHF帯またはSHF帯でのアンテナ装置101の等価回路図であり、図3(B)はHF帯でのアンテナ装置101の等価回路図である。図3(A)において、リアクタンス素子61,62をキャパシタC61,C62で表している。
UHF帯またはSHF帯(第1周波数帯)では、キャパシタC62は低インピーダンスであり、等価的にショート状態となる。そのため、図3(A)において接地端SPで示すとおり、放射素子1は所定の位置で接地される。インダクタL11およびキャパシタC11で構成されるLC並列共振回路(第1並列共振回路)は、UHF帯またはSHF帯(第1周波数帯)では高インピーダンスであり、等価的にオープン状態となる。そのため、図3(A)において開放端OPで示すとおり、放射素子1の一端は開放される。
第1給電回路81は放射素子1の接続点を給電点として電圧給電する。UHF帯またはSHF帯(第1周波数帯)では、放射素子1の開放端OPが電流強度ゼロ、接地端SPが電界強度ゼロとなるよう共振する。言い換えると、UHF帯またはSHF帯で共振するように、放射素子1の長さ等が定められている。ただし、この放射素子1は700MHz〜2.4GHzの周波数帯域のうちローバンドでは基本モードで共振し、ハイバンドでは高次モードで共振する。したがって、UHF帯またはSHF帯(第1周波数帯)では、図2において実線の矢印で示す領域に電流がアンテナ装置101に流れる。
このようにして、UHF帯またはSHF帯(第1周波数帯)では、放射素子1が遠方界通信のための電磁波放射に寄与する定在波型の逆F型アンテナとして作用し、共振して電流強度および電界強度の定在波が生じる。なお、ここでは逆F型アンテナを例示しているが、モノポールアンテナ、1波長ループアンテナ、逆L型アンテナ、板状逆Fアンテナ(PIFA)等のパッチアンテナ、スロットアンテナ、ノッチアンテナ等の、放射素子上で共振して電流強度および電界強度の定在波が生じる他の定在波型アンテナでも同様に適用できる。
一方、HF帯(第2周波数帯)では、図3(B)に示すように、放射素子1、第1インピーダンス回路51、導体板2およびキャパシタC1を含むループ部が、LC共振回路を構成する。給電コイル4は、上述のとおり、LC共振回路を構成するループ部と磁界結合する。
上記ループ部はHF帯でLC共振し、放射素子1および導体板2の端辺に共振電流が流れる。言い換えると、HF帯で共振するように、放射素子1の長さ、第1インピーダンス回路51およびキャパシタC1のリアクタンス成分等の回路定数が定められている。したがって、HF帯(第2周波数帯)では、図2において破線の矢印で示す領域に電流がアンテナ装置101に流れる。
このようにして、HF帯(第2周波数帯)では、放射素子1、第1インピーダンス回路51、導体板2およびキャパシタC1を含むループ部が近傍界通信のための磁界放射に寄与する磁界放射型アンテナとして作用する。ここで、HF帯(第2周波数帯)ではループ部の長さ(ループ部に沿って周回した長さ)は波長に対して十分に短く、望ましくは波長の1/10以下であるため、ループ部は磁界結合による通信のための微小ループアンテナとなっている。なお、HF帯(第2周波数帯)では、ループ部の長さが波長に対して十分に短いため、放射抵抗が低く、ループ部はHF帯(第2周波数帯)において電磁波を放射し難い。
なお、リアクタンス素子61,62は、HF帯(第2周波数帯)では高インピーダンスとなって、第1給電回路81が等価的に接続されていない状態となるので、第1給電回路81はHF帯の通信に影響を与えない。また、第1並列共振回路は、UHF帯またはSHF帯(第1周波数帯)では、高インピーダンスとなって、第1インピーダンス回路51(第1並列共振回路)が等価的に接続されていない状態となる。したがって、第1インピーダンス回路51を含むループ部はオープン状態となるため、第2給電回路82にUHF帯またはSHF帯の通信信号が流れることがなく、第2給電回路82はUHF帯またはSHF帯の通信に影響を与えない。
次に、HF帯(第2周波数帯)において、放射素子1および導体板2から発生する磁界について、図を参照して説明する。図4(A)はアンテナ装置101Aの断面図であり、図4(B)は、HF帯における放射素子1および導体板2から発生する磁束密度を表す、アンテナ装置101Aの断面図である。
アンテナ装置101Aは、放射素子1が平板ではなく、断面形状がL字状である点が本実施形態に係るアンテナ装置101と異なり、その他の構成については実質的に同じである。
図4(A)において、各部の寸法は次の通りである。
Y11:10mm
Y12:2mm
Y13:11.5mm
Z1:2mm
図4(A)および図4(B)に示すように、放射素子1の周囲に発生する磁束φ1と導体板2の周囲に発生する磁束φ2は、いずれも間隙部8を通過している。したがって、放射素子1、導体板2、第1インピーダンス回路およびキャパシタを含むループ部がブースターアンテナとして作用していることがわかる。
本実施形態によれば次のような効果を奏する。
(a)アンテナ装置101は、定在波型アンテナとして作用する放射素子1と、磁界放射型アンテナとして作用するループ部とを備えることにより、周波数帯の異なる複数のシステムで兼用できるアンテナ装置を実現できる。
(b)また、第1インピーダンス回路51は第1並列共振回路を有する構成のため、この第1並列共振回路の共振周波数をUHF帯またはSHF帯(第1周波数帯)に定めておくことにより、その周波数で非常に高インピーダンスとなる。したがって、インダクタンスの大きな素子を接続した場合に比べて、ループ部に接続されるインダクタL11のインダクタンスを小さく定めることができる。そのため、磁界放射型アンテナ全体のインダクタンスに対して、通信に寄与しないインダクタンスの割合が小さくなり、磁界放射型アンテナと通信相手側アンテナとの結合係数の低下が抑制される。すなわち、簡素な構成により通信特性の良い小型のアンテナ装置を実現できる。
(c)アンテナ装置101では、HF帯(第2周波数帯)において、給電コイル4がループ部と磁界結合または電磁界結合(電界結合および磁界結合)して、ループ部が給電コイル4に対するブースターアンテナとして機能する。そのため、給電コイル4のみを利用する場合に比べ、アンテナとして機能する実効的なコイル開口が大きくなり、磁束を放射(集磁)する範囲および距離が大きくなることで、通信相手側のアンテナコイルと結合し易くなる。したがって、大型のアンテナコイルを用いることなく、簡素な構成により通信特性の良いアンテナ装置を実現できる。
(d)アンテナ装置101は、放射素子1にHF帯(第2周波数帯)の第2給電回路82を直接接続しないため、給電コイル4および第2給電回路82の実装位置の自由度が高く、基板3の主面に形成する導体パターンも簡素化できる。
(e)アンテナ装置101では、放射素子1および導体板2に筐体の一部を利用するため、磁界放射型アンテナの放射素子を容易に構成できる。したがって、放射素子および導電性部材を別途形成する必要がなく、製造が容易で低コスト化が図れる。
本願において「定在波型アンテナ」とは、放射素子で共振し、電圧・電流の定在波が分布して電磁波を放射するアンテナをいう。また、本願において「磁界放射型アンテナ」とは、ループ部が磁界放射に寄与するアンテナをいう。
なお、本実施形態における「定在波型アンテナ」とは、UHF帯またはSHF帯(第1周波数帯)において、放射素子1の開放端OPが電流強度ゼロ、接地端SPが電界強度ゼロとなるよう共振し、定在波を生じるアンテナとして作用するものをいう。また、本実施形態における「磁界放射型アンテナ」とは、HF帯(第2周波数帯)において、LC共振回路を構成するループ部が共振し、磁界放射に寄与するアンテナとして作用するものをいう。
本願における放射素子1の「第1端部付近」とは、放射素子1の長手方向(X方向)の縁端部の極近傍のみを言うものではない。ループ部が磁界放射に寄与する磁界放射型アンテナとして作用し、通信相手側アンテナとの磁界結合を可能とする開口面積を確保できる範囲をいうものである。例えば、放射素子1の第1端部から横方向(X方向)に向かって、放射素子1の横方向の長さの1/3までの範囲を「第1端部付近」という。
また、本実施形態における放射素子1の「第2端部付近」とは、放射素子1の長手方向(X方向)の縁端部の極近傍のみを言うものではない。ループ部が磁界放射に寄与する磁界放射型アンテナとして作用し、通信相手側アンテナとの磁界結合を可能とする開口面積を確保できる範囲をいうものである。本実施形態では例えば、放射素子1の第2端部から横方向(X方向)に向かって、放射素子1の横方向の長さの1/3までの範囲を「第2端部付近」という。
本実施形態では、放射素子1と導体板2(導電性部材)が同一面上(Z方向の高さが同じ)に配置されるアンテナ装置101の例を示したが、この構成に限定されるものではない。放射素子1および導体板2(導電性部材)のZ方向の高さ関係は、定在波型アンテナとして作用する放射素子1と、磁界放射型アンテナとして作用するループ部とを備えるという作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能である。なお、放射素子1と導電性部材のZ方向の高さ関係を変更することにより、後に詳述するように、アンテナの指向性が変化する。
また、本実施形態では、第1インピーダンス回路51を放射素子1の長手方向の第1端部E1付近で接続し、キャパシタC1を第2端部付近で接続する例を示したが、この構成に限定されるものではない。ループ部を構成でき、放射素子1が定在波型アンテナとして機能できるのであれば、接続箇所(X方向、Y方向)の位置は適宜変更可能である。但し、後に詳述するように、接続箇所は端部付近で接続する方が、HF帯におけるループ部での通信特性が良いアンテナを実現できる。
なお、本実施形態では、第1インピーダンス回路51が放射素子1の長手方向の第1端部付近に接続され、キャパシタC31が放射素子1の長手方向の第2端部付近に接続される例を示したが、この構成に限定されるものではない。第1インピーダンス回路51が放射素子1の長手方向の第2端部付近に接続され、キャパシタC1が放射素子1の長手方向の第1端部付近に接続される構成であってもよい。つまり、ループ部を構成できるのであれば、放射素子1の長手方向の第1端部付近に接続される回路またはリアクタンス素子と、第2端部付近に接続される回路またはリアクタンス素子との配置を入れ替えることも可能である。このことは以降の他の実施形態でも同じとする。但し、放射素子1の長手方向の第1端部付近に接続される回路またはリアクタンス素子と、第2端部付近に接続される回路またはリアクタンス素子との配置を変更した場合には、定在波型アンテナのアンテナ特性は変化する。
また、本実施形態では、放射素子1および導体板2が、例えばスマートフォンの背面筐体の一部である例を示したが、この構成に限定されるものではない。放射素子1および導体板2は、スマートフォン等の筐体内部に設けた導体を利用してもよい。
また、本実施形態では、給電コイル4が給電コイル4から離間したループ部と少なくとも磁界結合することによって、給電コイル4とループ部とが電気的に接続される例を示したが、この構成に限定されるものではない。ループ部の一部を構成する導体(例えばコイル状の導体パターン等)と給電コイルとが一つの絶縁体に形成され、トランス素子として一体の部品として構成されてもいてもよい。また、第2給電回路82とループ部とが少なくとも磁界結合を介して接続されるため、ループ部および第2給電回路82が平衡回路であるか不平衡回路であるかに依存せず、第2給電回路82はループ部に給電することができる。
《第2の実施形態》
図5(A)は第2の実施形態に係るアンテナ装置102Aの集中定数素子による等価回路図であり、図5(B)はアンテナ装置102Bの集中定数素子による等価回路図である。図6(A)は第2の実施形態に係るアンテナ装置102Cの集中定数素子による等価回路図であり、図6(B)はアンテナ装置102Dの集中定数素子による等価回路図である。
第2の実施形態に係るアンテナ装置102Aは、放射素子と導体板との間にキャパシタではなく、インダクタL3が接続されている点がアンテナ装置101と異なる。その他の構成は、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と同じである。インダクタL3は例えばチップインダクタ等のインダクタ部品である。
第2の実施形態に係るアンテナ装置102Bは、放射素子と導体板との間にキャパシタだけではなく、直列に接続されたインダクタL3およびキャパシタC1が、接続されている点がアンテナ装置101と異なる。その他の構成は、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と同じである。
第2の実施形態に係るアンテナ装置102Cは、第1インピーダンス回路51の構成がアンテナ装置101と異なる。その他の構成は、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と同じである。
アンテナ装置102Cの第1インピーダンス回路51は、図6(A)に示すように、インダクタL11およびキャパシタC11,C12を有する。インダクタL11およびキャパシタC12は、直列に接続されている。インダクタL11およびキャパシタC11の一端は放射素子に接続され、キャパシタC11,C12の他端は導体板に接続される。第1インピーダンス回路51は、インダクタL11およびキャパシタC11,C12で構成されるLC並列共振回路を有する。アンテナ装置102Cでは、このLC並列共振回路が本発明に係る「第1並列共振回路」に相当する。
第2の実施形態に係るアンテナ装置102Dは、第1インピーダンス回路51の構成がアンテナ装置101と異なる。その他の構成は、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と同じである。
アンテナ装置102Dの第1インピーダンス回路51は、図6(B)に示すように、インダクタL11,L12およびキャパシタC11,C12を有する。インダクタL11およびキャパシタC11はLC並列回路を形成し、インダクタL12およびキャパシタC12はLC並列回路を形成する。これら2つのLC並列回路は直列に接続されている。
より詳しく説明すると、インダクタL11およびキャパシタC11の一端は放射素子に接続される。インダクタL11およびキャパシタC11の他端はインダクタL12およびキャパシタC12の一端に接続される。インダクタL12およびキャパシタC12の他端は導体板に接続される。上記2つのLC並列回路のうち少なくとも一つは、LC並列共振回路を構成する。
このような構成であっても、アンテナ装置102A,102B,102C,102Dの基本的な構成は第1の実施形態に係るアンテナ装置101と同じであり、アンテナ装置101と同様の作用・効果を奏する。
なお、アンテナ装置102Bに示したように、インダクタL3およびキャパシタC1が直列に接続される場合には、これらがLC直列共振回路を構成し、かつ、そのLC直列共振回路の共振周波数をHF帯(第2周波数帯)に定めておくことが好ましい。この構成により、LC直列共振回路がHF帯(第2周波数帯)で非常に低インピーダンスとなるため、インダクタL3のみを接続した場合に比べて、ループ部に接続されるインダクタL3のインダクタンスを小さく定めることができる。したがって、磁界放射型アンテナ全体のインダクタンスに対して、通信に寄与しないインダクタンスの割合が小さくなり、磁界放射型アンテナと通信相手側アンテナとの結合係数の低下が抑制される。すなわち、通信特性の良いアンテナ装置を実現できる。
また、アンテナ装置102Cで示したように、第1インピーダンス回路51の第1並列共振回路は、インダクタL11およびキャパシタC11からなる構成のみに限定されるものではない。UHF帯またはSHF帯(第1周波数帯)において、LC並列共振回路(反共振回路)を構成できるのであれば、第1並列共振回路の構成に使用するリアクタンス素子については適宜変更可能である。
また、アンテナ装置102Dで示したように、第1インピーダンス回路51は、少なくとも1つがLC並列共振回路(第1並列共振回路)を構成するのであれば、複数のLC並列回路が直列に接続される構成であってもよい。
なお、第1インピーダンス回路51において、直列に接続される複数のLC並列回路がいずれもLC並列共振回路を構成する場合には、LC並列共振回路ごとに共振周波数を定める構成であってもよい。例えば一段目のLC並列共振回路は1.5GHz帯(GPS用)に共振周波数を定め、二段目のLC並列共振回路は2.4GHz帯(無線LAN用)に共振周波数を定め、三段目のLC並列共振回路は5GHz(無線LAN用)に定める。この構成により、UHF帯またはSHF帯(第1周波数帯)の複数の周波数帯において、ループ部が等価的にオープン状態となる。したがって、放射素子は定在波型アンテナとして、UHF帯またはSHF帯等の周波数帯の異なる複数のシステムに対応することができる。
《第3の実施形態》
図7は第3の実施形態に係るアンテナ装置103Aの集中定数素子による等価回路図である。図8はアンテナ装置103Bの集中定数素子による等価回路図である。図9はアンテナ装置103Cの集中定数素子による等価回路図である。図10はアンテナ装置103Dの集中定数素子による等価回路図である。
第3の実施形態に係るアンテナ装置103Aは、放射素子と導体板との間にキャパシタではなく、第2インピーダンス回路52が接続されている点がアンテナ装置101と異なる。その他の構成は、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と同じである。
アンテナ装置103Aの第2インピーダンス回路52は、インダクタL21およびキャパシタC21を有する。インダクタL21およびキャパシタC21の一端は放射素子に接続され、インダクタL21およびキャパシタC21の他端は導体板に接続される。第2インピーダンス回路52は、インダクタL21およびキャパシタC21で構成されるLC並列共振回路を有する。アンテナ装置103Aでは、このLC並列共振回路が本発明に係る「第2並列共振回路」に相当する。
アンテナ装置103Aでは、図7に示すように、放射素子(インダクタL1)、導体板(インダクタL2)、第1インピーダンス回路51および第2インピーダンス回路52を含むループ部が構成される。
第3の実施形態に係るアンテナ装置103Bは、第1インピーダンス回路51の構成がアンテナ装置103Aと異なる。その他の構成は、アンテナ装置103Aと同じである。図6(A)および図8に示すように、アンテナ装置103Bの第1インピーダンス回路51は、アンテナ装置102Cの第1インピーダンス回路51と同じ構成である。
第3の実施形態に係るアンテナ装置103Cは、第2インピーダンス回路52の構成がアンテナ装置103Bと異なる。その他の構成は、アンテナ装置103Bと同じである。
アンテナ装置103Cの第2インピーダンス回路52は、図9に示すように、インダクタL21およびキャパシタC21,C22を有する。インダクタL21およびキャパシタC22は、直列に接続されている。インダクタL21およびキャパシタC21の一端は放射素子1に接続され、キャパシタC21,C22の他端は導体板2に接続される。第2インピーダンス回路52は、インダクタL21およびキャパシタC21,C22で構成されるLC並列共振回路を有する。アンテナ装置103Cでは、このLC並列共振回路が本発明に係る「第2並列共振回路」に相当する。
第3の実施形態に係るアンテナ装置103Dは、第1インピーダンス回路51および第2インピーダンス回路52の構成がアンテナ装置103Cと異なる。その他の構成は、アンテナ装置103Cと同じである。
アンテナ装置103Dの第1インピーダンス回路51は、インダクタL11,L12およびキャパシタC11,C12,C13,C14を有する。インダクタL11およびキャパシタC11,C12はLC並列回路を形成し、インダクタL12およびキャパシタC13,C14はLC並列回路を形成している。アンテナ装置103Dの第1インピーダンス回路51は、上記2つのLC並列回路が直列に接続された構成である。言い換えると、アンテナ装置103Cの第1インピーダンス回路51に対して、インダクタL12およびキャパシタC13,C14で形成されるLC並列回路が直列に接続された構成といえる。
アンテナ装置103Dの第2インピーダンス回路52は、インダクタL21,L22およびキャパシタC21,C22,C23,C24を有する。インダクタL21およびキャパシタC21,C22はLC並列回路を形成し、インダクタL22およびキャパシタC23,C24はLC並列回路を形成している。第2インピーダンス回路52は、上記2つのLC並列回路が直列に接続された構成である。言い換えると、アンテナ装置103Cの第2インピーダンス回路52に対して、インダクタL22およびキャパシタC23,C24で形成されるLC並列回路が直列に接続された構成といえる。
このような構成であっても、アンテナ装置103A,103B,103C,103Dの基本的な構成は第1の実施形態に係るアンテナ装置101と同じであり、アンテナ装置101と同様の作用・効果を奏する。
また、この第1並列共振回路の共振周波数および第2並列共振回路の共振周波数を第1周波数帯(例えばUHF帯またはSHF帯)に定めておくことにより、その周波数で非常に高インピーダンスとなる。したがって、インダクタL1やキャパシタC1を接続した場合に比べて、第1周波数帯(UHF帯またはSHF帯)において、ループ部から放射素子1を確実に切り離すことができる。したがって、放射素子1が第1周波数帯(UHF帯またはSHF帯)で共振し、電界放射に寄与する定在波型アンテナとして作用させるための設計(放射素子の幅や長さ等)が容易になる。
また、アンテナ装置103Cで示したように、第2インピーダンス回路52の第2並列共振回路は、インダクタL21およびキャパシタC21のみで構成されるLC並列共振回路に限定されるものではない。LC並列共振回路を構成できるのであれば、第2並列共振回路の構成に使用するリアクタンス素子の個数等については適宜変更可能である。
また、アンテナ装置103Dで示したように、第2インピーダンス回路52は、少なくとも1つがLC並列共振回路(第2並列共振回路)を構成するのであれば、複数のLC並列回路が直列に接続される構成であってもよい。
なお、第2インピーダンス回路52において、直列に接続される複数のLC並列回路がいずれもLC並列共振回路を構成する場合には、LC並列共振回路ごとに共振周波数を定める構成であってもよい。上述の通り、この構成により、放射素子は定在波型アンテナとして、UHF帯またはSHF帯等の周波数帯の異なる複数のシステムに対応することができる。
《第4の実施形態》
図11(A)は第4の実施形態に係るアンテナ装置104の平面図であり、図11(B)は、図11(A)におけるB−B断面図である。図12はアンテナ装置104の集中定数素子による等価回路図である。
第4の実施形態に係るアンテナ装置104は、導体板2が接地されている点でアンテナ装置101と異なる。その他の構成は、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と同じである。
アンテナ装置104の導体板2は接地されているため、図12に示すように、放射素子1はキャパシタC1を介して接地されているといえる。本実施形態において、このキャパシタC31が本発明に係る「リアクタンス回路」53に相当する。
このような構成であっても、アンテナ装置104の基本的な構成は第1の実施形態に係るアンテナ装置101と同じであり、アンテナ装置101と同様の作用・効果を奏する。
なお、接地方法は例えば可動型プローブピン等を介して基板3のグランドに接続する方法が考えられるが、接地方法はこれに限定されるものではなく、任意に変更可能である。また、接地点の位置および個数等についても任意に変更可能である。
《第5の実施形態》
図13は第5の実施形態に係るアンテナ装置105Aの集中定数素子による等価回路図である。図14はアンテナ装置105Bの集中定数素子による等価回路図である。図15はアンテナ装置105Cの集中定数素子による等価回路図である。
第5の実施形態に係るアンテナ装置105Aは、キャパシタC31をさらに備える点でアンテナ装置104と異なる。その他の構成は、第4の実施形態に係るアンテナ装置104と同じである。
図13に示すように、キャパシタC31は、導体板2とグランドとの間に接続される。すなわち、アンテナ装置105Aの導体板2は、キャパシタC31を介して接地される。アンテナ装置105Aでは、このキャパシタC31が本発明に係る「リアクタンス回路」53に相当する。UHF帯またはSHF帯(第1周波数帯)では、キャパシタC31は低インピーダンスであり、等価的にショート状態となる。そのため、導体板2は所定の位置において、接地される。
第5の実施形態に係るアンテナ装置105Bは、キャパシタC31,C32をさらに備える点でアンテナ装置104と異なる。その他の構成は、アンテナ装置104と同じである。
図14に示すように、キャパシタC31,C32は、いずれも導体板とグランドとの間に接続される。すなわち、アンテナ装置105Bの導体板(インダクタL2)は、キャパシタC31,C32を介して接地される。アンテナ装置105Bでは、このキャパシタC31,C32が本発明に係る「リアクタンス回路」53に相当する。UHF帯またはSHF帯(第1周波数帯)では、キャパシタC31,C32は低インピーダンスであり、等価的にショート状態となる。そのため、導体板は所定の位置において、二箇所接地される。
第5の実施形態に係るアンテナ装置105Cは、キャパシタC31,C32およびインダクタL31,L32をさらに備える点でアンテナ装置104と異なる。その他の構成は、アンテナ装置104と同じである。
図15に示すように、インダクタL31およびキャパシタC31は直列に接続され、導体板2とグランドとの間に接続され、インダクタL32およびキャパシタC32は直列に接続され、導体板とグランドとの間に接続される。すなわち、アンテナ装置105Cの導体板(インダクタL2)は、インダクタL31およびキャパシタC31の直列回路と、インダクタL32およびキャパシタC32の直列回路とを介して接地される。アンテナ装置105Cでは、この2つの直列回路が本発明に係る「リアクタンス回路」53に相当する。
このような構成であっても、アンテナ装置105A,105B,105Cの基本的な構成は第1の実施形態に係るアンテナ装置104と同じであり、アンテナ装置104と同様の作用・効果を奏する。
なお、アンテナ装置105Cで示したように、リアクタンス回路53は、キャパシタC31のみからなる構成のみに限定されるものではない。UHF帯またはSHF帯(第1周波数帯)で低インピーダンスとなり、等価的にショート状態となる構成であれば、構成に使用するリアクタンス素子については適宜変更可能である。
また、インダクタL31,L32は例えばチップインダクタ等のインダクタ部品であり、キャパシタC31,C32は例えばチップキャパシタ等のキャパシタ部品であるが、この構成に限定されるものではない。インダクタおよびキャパシタの構成は、UHF帯またはSHF帯(第1周波数帯)で低インピーダンスとなり、等価的にショート状態となる構成であれば、適宜変更可能である。例えば、グランドとの間に形成される容量をキャパシタとして利用してもよく、インダクタおよびキャパシタをスタブ等で構成してもよい。
さらに、第4の実施形態に係るアンテナ装置104と同様に、接地点の位置および個数等についても適宜変更可能である。
《第6の実施形態》
図16(A)は第6の実施形態に係るアンテナ装置106の平面図であり、図16(B)は、図16(A)におけるC−C断面図である。図17はアンテナ装置106の集中定数素子による等価回路図である。
第6の実施形態に係るアンテナ装置106は、基板3のグランド導体9を導電性部材として利用している点でアンテナ装置101と異なる。その他の構成は、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と同じである。
以下、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と異なる部分について説明する。
アンテナ装置106の基板3はグランド導体9を内部に備える。本実施形態において、このグランド導体9が本発明に係る「導電性部材」に相当し、筐体内に収容される「第2導電体」に相当する。
接続導体71Aは、インダクタL11およびキャパシタC11の一端にそれぞれ接続され、接続ピン5を介して放射素子1に接続される。接続導体72Aは、インダクタL11およびキャパシタC11の他端にそれぞれ接続され、層間接続導体76Aを介してグランド導体9に接続される。つまり、インダクタL11およびキャパシタC11の一端は、接続導体71Aおよび接続ピン5を介して放射素子1に接続される。また、インダクタL11およびキャパシタC11の他端は、接続導体72Aおよび層間接続導体76Aを介してグランド導体9に接続される。層間接続導体76Aは例えばビア導体である。
アンテナ装置106では、図17に示すように、放射素子1、グランド導体9、第1インピーダンス回路51およびキャパシタC1を含むループ部が構成される。
このような構成であっても、アンテナ装置106の基本的な構成は第1の実施形態に係るアンテナ装置101と同じであり、アンテナ装置101と同様の作用・効果を奏する。
また、アンテナ装置106では、通信端末装置の筐体内に収容される基板3等のグランド導体9(第2導電体)をアンテナの一部として利用できるため、導電性部材を容易に構成できる。したがって、導電性部材を別途形成する必要がなく、製造が容易で低コスト化が図れる。
次に、HF帯(第2周波数帯)において、放射素子1およびグランド導体9から発生する磁界について、図を参照して説明する。図18(A)はアンテナ装置106Aの断面図であり、図18(B)は、HF帯における放射素子1およびグランド導体9から発生する磁束密度を表す、アンテナ装置106Aの断面図である。
アンテナ装置106Aは、放射素子1が平板ではなく、断面形状がL字状である点がアンテナ装置106と異なり、その他の構成については実質的に同じである。各部の寸法は、図4(A)に示すアンテナ装置101Aと同じである。
図18(A)および図18(B)に示すように、導体板ではなくグランド導体9を含むループ部が構成されたアンテナ装置106Aでは、図4(B)に示すアンテナ装置101Aに比べて、アンテナの指向性が変化することがわかる。
また、放射素子1の周囲に発生する磁束φ1とグランド導体9の周囲に発生する磁束φ3は、いずれも開口部OZ2(放射素子1の端部とグランド導体9の端部との間隙)を通過する。そのため、導体板2とグランド導体9との間を通過する磁束φ3の向きは、図4(B)に示すアンテナ装置101Aとは逆向き(図18(B)における右方向)になる。このように、グランド導体9を導電性部材に利用することにより、アンテナの指向性を変化させることができるため、アンテナ装置の周囲に搭載される電子部品等の影響を考慮して、適切なアンテナの指向性を得るように設定できる。
《第7の実施形態》
図19(A)は第7の実施形態に係るアンテナ装置107Aの集中定数素子による等価回路図であり、図19(B)はアンテナ装置107Bの集中定数素子による等価回路図である。
第7の実施形態に係るアンテナ装置107Aは、キャパシタC31,C32をさらに備える点でアンテナ装置106と異なる。また、第1インピーダンス回路51および第2インピーダンス回路52の構成がアンテナ装置106と異なる。その他の構成は、アンテナ装置106と同じである。
アンテナ装置107Aの第1インピーダンス回路51は、インダクタL11およびキャパシタC11,C12,C13を有する。インダクタL11およびキャパシタC11,C12はLC並列回路を形成する。第1インピーダンス回路51は、上記LC並列回路およびキャパシタC15が直列に接続された構成である。
アンテナ装置107Aの第2インピーダンス回路52は、インダクタL21およびキャパシタC21,C22,C23を有する。インダクタL21およびキャパシタC21,C22はLC並列回路を形成する。第2インピーダンス回路52は、上記LC並列回路およびキャパシタC23が直列に接続された構成である。
第7の実施形態に係るアンテナ装置107Bは、インダクタL12,L22およびキャパシタC31,C32をさらに備える点でアンテナ装置106と異なる。その他の構成は、アンテナ装置106と同じである。
アンテナ装置107Bの第1インピーダンス回路51は、インダクタL11,L12およびキャパシタC11,C12,C13を有する。インダクタL11およびキャパシタC11,C12はLC並列回路を形成する。第1インピーダンス回路51は、上記LC並列回路に対して、インダクタL13、キャパシタC15の順で直列に接続された構成である。アンテナ装置107Bの第2インピーダンス回路52は、インダクタL21,L22およびキャパシタC21,C22,C23を有する。インダクタL21およびキャパシタC21,C22はLC並列回路を形成する。第2インピーダンス回路52は、上記LC並列回路に対して、インダクタL22、キャパシタC23の順で直列に接続された構成である。
このような構成であっても、アンテナ装置107A,107Bの基本的な構成は第1の実施形態に係るアンテナ装置106と同じであり、アンテナ装置106と同様の作用・効果を奏する。
なお、本実施形態で示したように、第1インピーダンス回路51および第2インピーダンス回路52は、1つのLC並列回路からなる構成や、複数のLC並列回路が直列接続される構成に限定されるものではない。第1インピーダンス回路51および第2インピーダンス回路52は、少なくとも1つの第1並列共振回路および第2並列共振回路を有するのであれば、LC並列回路に他のリアクタンス素子(インダクタまたはキャパシタ)が直列に接続される構成であってもよい。
《第8の実施形態》
図20(A)は第8の実施形態に係るアンテナ装置108の平面図であり、図20(B)は、図20(A)におけるD−D断面図である。
第8の実施形態に係るアンテナ装置108は、基板3上に形成される放射導体6を放射素子として利用している点で第1の実施形態に係るアンテナ装置101と異なる。その他の構成は、アンテナ装置101と実質的に同じである。
以下、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と異なる部分について説明する。
放射導体6は、平面形状がC字状の導体パターンであり、基板3の主面に形成される。本実施形態では、この放射導体6が本発明に係る「放射素子」に相当し、筐体内に収容される「第1導電体」に相当する。
第1インピーダンス回路51は、放射導体6と導体板2との間に直接接続される。インダクタL11およびキャパシタC11の一端は、放射導体に直接接続される。また、インダクタL11およびキャパシタC11の他端は、接続導体72Aおよび接続ピン5を介して導体板2に接続される。
キャパシタC1は、基板3の主面に形成された接続導体75Aおよび接続ピン5を介して、放射導体6と導体板2との間に接続される。
したがって、図20に示すように、放射導体6、導体板2、第1インピーダンス回路51およびキャパシタC1を含むループ部が構成される。
このような構成であっても、アンテナ装置108の基本的な構成は第1の実施形態に係るアンテナ装置101と同じであり、アンテナ装置101と同様の作用・効果を奏する。なお、本実施形態に係るアンテナ装置108において、磁束の形成を妨げないように放射導体6の周囲には金属製の筐体が存在しないことが好ましい。
本実施形態では、放射導体6の平面形状がC字状であるため、HF帯(第2周波数帯)において、磁界放射型のアンテナのループ部の実行的なコイル開口を大きくなる。そのため、磁束を放射(集磁)する範囲および距離が大きくなることで、通信相手側のアンテナコイルと結合し易くなる。さらに、放射導体6は、UHF帯またはSHF帯(第1周波数帯)において、定在波型アンテナとして作用させるため、幅や長さ等の設計を行うことが好ましい。
なお、本実施形態では、放射導体6の平面形状がC字状である例を示したが、この構成に限定されるものではない。放射導体6の平面形状は、矩形状、多角形状、円形状または楕円形状等、上記の機能を有する範囲において適宜変更可能である。
また、本実施形態に係るアンテナ装置108では、基板3の主面に形成される既存の導体パターンをアンテナの一部(放射導体6)として利用することもできる。これにより、放射素子を別途形成する必要がなく、製造が容易で低コスト化が図れる。
なお、本実施形態におけるリアクタンス素子62は、チップキャパシタに限定されるものではない。リアクタンス素子62は、基板3上に形成されるオープンスタブまたはショートスタブで構成してもよい。また、リアクタンス素子62は、複数のオープンスタブまたはショートスタブで構成してもよい。
《第9の実施形態》
図21は第9の実施形態に係るアンテナ装置109Aの集中定数素子による等価回路図である。図22はアンテナ装置109Bの集中定数素子による等価回路図である。
第9の実施形態に係るアンテナ装置109Aは、アンテナ装置101に対して、キャパシタC1を実装する位置が異なる。その他の構成は、アンテナ装置101と同じである。
アンテナ装置109Aに係る第1インピーダンス回路51は、放射素子の長手方向の第1端部(図1におけるE1)付近に接続され、キャパシタC1は放射素子の長手方向の第2端部(図1におけるE2)付近に接続される。
このような構成であっても、アンテナ装置109Aの基本的な構成は第1の実施形態に係るアンテナ装置101と同じであり、アンテナ装置101と同様の作用・効果を奏する。
また、アンテナ装置109Aでは、少なくとも第1インピーダンス回路51が、放射素子の長手方向の第1端部付近に接続される。そのため、放射素子、導電性部材および第1インピーダンス回路を含む磁界放射型アンテナのループ部の実効的なコイル開口が大きくなり、磁束を放射(集磁)する範囲および距離が大きくなることで、通信相手側のアンテナコイルと結合し易くなる。したがって、大型のアンテナコイルを用いることなく、簡素な構成により通信特性の良いアンテナ装置を実現できる。
また、アンテナ装置109Aでは、キャパシタC1が、放射素子の長手方向の第2端部付近に接続されるため、磁界放射型アンテナのループ部の実効的なコイル開口がさらに大きくなり、結果的にさらに通信特性の良いアンテナ装置を実現できる。
なお、アンテナ装置109Aでは、放射素子の長手方向の第2端部(図1におけるE2)付近にキャパシタC1が接続される例について示したが、この構成に限定されるものではない。第2インピーダンス回路を備える場合には、第2インピーダンス回路が放射素子の長手方向の第2端部付近に接続される構成であってもよい。
第9の実施形態に係るアンテナ装置109Bは、複数の第1給電回路を備える点でアンテナ装置101と異なる。その他の構成は、アンテナ装置101と実質的に同じである。
第1給電回路81A,81Bは、いずれもUHF帯またはSHF帯(第1周波数帯)用ICである。第1給電回路81Aの入出力部は、キャパシタC61Aを介して、放射素子1の長手方向の第2端部(図1におけるE2)付近に接続される。第1給電回路81Bの入出力部は、キャパシタC61Bを介して、放射素子1の長手方向の第1端部(図1におけるE1)付近に接続される。第1給電回路81Aは例えば2.4GHz帯の無線LANの通信システムの給電回路であり、第1給電回路81Bは例えば1.5GHz帯のGPS用の通信システムの給電回路である。
キャパシタC62Aは、他の通信システムに対して第1給電回路81Aのマッチング用に設ける素子であり、放射素子1の長手方向の第2端部(図1におけるE2)付近に接続される。キャパシタC62Bは、他の通信システムに対して第1給電回路81Bのマッチング用に設ける素子であり、放射素子1の長手方向の第1端部(図1におけるE1)付近に接続される。
この構成により、UHF帯またはSHF帯(第1周波数帯)の異なる複数のシステムで兼用することのできるアンテナ装置を実現できる。なお、この場合には、アンテナ装置102Dで示したように、第1インピーダンス回路51および第2インピーダンス回路52は、複数のLC並列回路が直列接続される構成であることが好ましい。直列に接続される複数のLC並列回路がいずれもLC並列共振回路を構成し、かつ、LC並列共振回路ごとに共振周波数を定めることにより、周波数帯の異なる複数のシステムに対応することができるアンテナ装置が実現できる。
なお、アンテナ装置109Bでは、2つの第1給電回路を備える例を示したが、この構成に限定されるものではない。第1給電回路の接続位置、個数等は、上記の機能を有する範囲において適宜変更可能である。
《第10の実施形態》
図23(A)は第10の実施形態に係るアンテナ装置110の平面図であり、図23(B)は、図23(A)におけるE−E断面図である。
第10の実施形態に係るアンテナ装置110は、第6の実施形態に係るアンテナ装置106に対して、放射素子1B、第1インピーダンス回路51B、キャパシタC1B、第1給電回路81B、第2給電回路82B、リアクタンス素子61B,62BおよびキャパシタC41B,C42B,C43B,C44Bをさらに備える点で異なる。その他の構成は、第6の実施形態に係るアンテナ装置106と実質的に同じである。言い換えると、基板3の長辺方向(図23(A)におけるY方向)に上下対称にしたアンテナ装置106を、二つ備えた構成であるといえる。
以下、第6の実施形態に係るアンテナ装置106と異なる部分のみ説明する。
第1インピーダンス回路51B、キャパシタC1B、第1給電回路81B、第2給電回路82B、リアクタンス素子61B,62BおよびキャパシタC41B〜C44Bは、基板3に実装される。
放射素子1Bは、平面形状が矩形であって、導電性を有する平板である。本実施形態に係る導体板2は、アンテナ装置106の導体板に比べて、縦方向(図23(A)におけるY方向)の長さが短く、放射素子1Bおよび導体板2は、間隙部8Bを挟んで、縦方向に並べて配置される。放射素子1Bは、長手方向が横方向(図23(A)におけるX方向)に一致しており、長手方向の両端に第1端部E1Bおよび第2端部E2Bを有する。
第1インピーダンス回路51Bは、第1並列共振回路(LC並列共振回路)を有し、放射素子1Bと導体板2との間に直接接続される。第1インピーダンス回路51Bは、インダクタL11BおよびキャパシタC11Bを有し、放射素子1Bの長手方向の第1端部E1B付近に接続される。インダクタL11BおよびキャパシタC11Bの一端は、接続導体71Bおよび接続ピン5を介して放射素子1Bに接続される。また、インダクタL11BおよびキャパシタC11Bの他端は、接続導体72Bおよび層間接続導体76Bを介してグランド導体9に接続される。
第1インピーダンス回路51Bは、インダクタL11BおよびキャパシタC11Bで構成されるLC並列共振回路を有する。
キャパシタC1Bは、基板3の主面に形成された接続導体73B,74Bおよび層間接続導体75Bを介して、放射素子1Bとグランド導体9との間に接続される。
したがって、図23(A)に示すように、放射素子1B、グランド導体9、第1インピーダンス回路51BおよびキャパシタC1Bを含むループ部が構成される。
第1給電回路81Bは、UHF帯またはSHF帯(第1周波数帯)用ICである。第1給電回路81Bの入出力部は、基板3の主面に形成された接続導体、接続ピン5およびリアクタンス素子61Bを介して、放射素子1Bの長手方向の第2端部E2B付近に接続される。リアクタンス素子61Bは例えばチップキャパシタ等の電子部品であり、第1給電回路81Bは例えば1.5GHz帯のGPS用の通信システムの給電回路である。
リアクタンス素子62Bは、他の通信システムに対して第1給電回路81Bのマッチング用に設ける素子であり、基板3の主面に形成された接続導体および接続ピン5を介して、放射素子1Bの長手方向の第2端部E2B付近に接続される。リアクタンス素子62Bは例えばチップキャパシタ等の電子部品である。
第2給電回路82Bは、平衡入出力型のHF帯(第2周波数帯)ICである。第2給電回路82Bの入出力部には、キャパシタC41B〜C44Bを介して給電コイル4Bが接続されている。給電コイル4Bは、平面視して、放射素子1Bの長手方向(図23(A)におけるX方向)の中央付近で、かつ、そのコイル開口が間隙部8Bに面した放射素子1Bの縁端部に沿う位置に配置されている。すなわち、給電コイル4Bのコイル開口は、導体板2を向くように配置されている。第2給電回路82Bは、例えば13.56MHzのRFID用のRFIC素子である。
給電コイル4BにはキャパシタC41B,C42Bの直列回路が並列に接続されていて、LC共振回路が構成されている。第2給電回路82BはキャパシタC43B,C44Bを介してこのLC共振回路にHF帯の通信信号を給電する。給電コイル4Bは、放射素子1B、導体板2、第1インピーダンス回路51BおよびキャパシタC1Bを含むループ部と、磁界結合する。
この構成により、周波数帯の異なる複数のシステムで兼用することのできるアンテナ装置を縦方向(図23(A)におけるY方向)に二つ備えた通信端末装置を実現できる。
なお、本実施形態に係るアンテナ装置110では、図23(B)に示すように、平面視で、放射素子1、導電性部材(グランド導体9)および放射素子1Bが縦方向(Y方向)に並べて配置される例を示したが、この構成に限定されるものではない。放射素子1、導電性部材(グランド導体9)および放射素子1Bの配置については、適宜変更可能である。
また、本実施形態に係るアンテナ装置110では、2つの放射素子1,1Bを備える例について示したが、この構成に限定されるものではない。放射素子の数量等は適宜変更可能である。
《第11の実施形態》
図24(A)は第11の実施形態に係るアンテナ装置111の平面図であり、図24(B)は、図24(A)におけるE−E断面図である。
第11の実施形態に係るアンテナ装置111は、第1の実施形態に係るアンテナ装置101に対して、放射素子1B、第1インピーダンス回路51B、キャパシタC1B、第1給電回路81B、リアクタンス素子61B,62Bをさらに備える点で異なる。その他の構成は、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と実質的に同じである。
以下、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と異なる部分のみ説明する。
第1インピーダンス回路51B、キャパシタC1B、第1給電回路81B、リアクタンス素子61B,62Bは、基板3に実装される。
放射素子1Bは、平面形状が矩形であって、導電性を有する平板である。本実施形態における導体板2は、アンテナ装置101の導体板に比べて、縦方向(図24(A)におけるY方向)の長さが短く、放射素子1Bおよび導体板2は、間隙部8Bを挟んで、縦方向に並べて配置される。放射素子1Bは、長手方向が横方向(図24(A)におけるX方向)に一致しており、長手方向の両端に第1端部E1Bおよび第2端部E2Bを有する。
第1インピーダンス回路51Bは、第1並列共振回路(LC並列共振回路)を有し、放射素子1Bと導体板2との間に直接接続される。第1インピーダンス回路51Bは、インダクタL11BおよびキャパシタC11Bを有し、放射素子1Bの長手方向の第1端部E1B付近に接続される。インダクタL11BおよびキャパシタC11Bの一端は、接続導体71Bおよび接続ピン5を介して放射素子1Bに接続される。また、インダクタL11BおよびキャパシタC11Bの他端は、接続導体72Aおよび接続ピン5を介して導体板2に接続される。
第1インピーダンス回路51Bは、インダクタL11BおよびキャパシタC11Bで構成されるLC並列共振回路を有する。
キャパシタC1Bは、基板3の主面に形成された接続導体73B,74Bおよび接続ピン5を介して、放射素子1Bと導体板2との間に接続される。
したがって、図24(A)に示すように、第1インピーダンス回路51、放射素子1、キャパシタC1、導体板2、キャパシタC1B、放射素子1Bおよび第1インピーダンス回路51Bを含む大きなループ部が構成される。給電コイル4は、第1インピーダンス回路51、放射素子1、キャパシタC1、導体板2、キャパシタC1B、放射素子1Bおよび第1インピーダンス回路51Bを含む大きなループ部と、磁界結合する。
この構成により、アンテナとして機能する実効的なコイル開口がさらに大きくなり、磁束を放射(集磁)する範囲および距離が大きくなることで、通信相手側のアンテナコイルと結合し易くなる。したがって、大型のアンテナコイルを用いることなく、さらに通信特性の良いアンテナ装置を実現できる。
《第12の実施形態》
図25(A)は第12の実施形態に係るアンテナ装置112Aの平面図であり、図25(B)は、アンテナ装置112Bの平面図である。なお、図25(A)および図25(B)において、第1インピーダンス回路、給電コイル4に接続される第2給電回路およびキャパシタ等の図示が省略されている。
第12の実施形態に係るアンテナ装置112A,112Bは、第1の実施形態に係るアンテナ装置101に対して、給電コイル4の実装位置が異なる。その他の構成は、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と実質的に同じである。
アンテナ装置112Aの給電コイル4は、平面視して、放射素子1の長手方向の第2端部E2付近で、かつ、給電コイル4の一部が間隙部8に露出する位置に配置されている。また、給電コイル4のコイル開口は、ループ部の一部を構成する放射素子1を向くように配置されている。
アンテナ装置112Bの給電コイル4Bは、平面視して、放射素子1の長手方向(図25(A)におけるX方向)の中央付近で、かつ、放射素子1の短手方向(図25(A)におけるY方向)の縁端部寄りに配置されている。また、給電コイル4のコイル開口は、放射素子1の短手方向(Y方向)に対して、間隙部8に接する放射素子1の縁端部に対向する縁端部(図25(A)における上側の縁端部)を向くように配置されている。そのため、給電コイル4のコイル開口は、間隙部8に接する縁端部(図25(A)における下側の縁端部)の近傍には配置されていない。
このような構成であっても、給電コイル4はループ部と磁界結合または電磁界結合(電界結合および磁界結合)して、ループ部が給電コイル4に対するブースターアンテナとして機能する。したがって、大型のアンテナコイルを用いることなく、簡素な構成により通信特性の良いアンテナ装置を実現できる。
なお、本実施形態で示した給電コイル4の実装位置は例示であって、この構成に限定されるものではない。給電コイル4の実装位置は、給電コイル4がループ部と結合して、ループ部が給電コイル4に対するブースターアンテナとして機能する範囲において、適宜変更可能である。但し、給電コイル4は、後に詳述するように、導電性部材よりも放射素子1に近いほうが好ましい。
次に、HF帯(第2周波数帯)において、給電コイル4の配置と給電コイル4およびブースターアンテナの結合度との間の関係について、図を参照して説明する。図26は、給電コイル4とブースターアンテナの結合度を求めるためのアンテナ装置112Sの平面図である。
図26において、各部の寸法は次の通りである。
X1(放射素子1および導体板2のX方向の長さ):60mm
Y1(放射素子1のY方向の長さ):10mm
Y2(間隙部8のY方向の長さ):2mm
Y3(導電性部材20のY方向の長さ):111.5mm
R1(給電コイル4の直径):φ2.8mm
L1(給電コイル4の軸方向の長さ):5.7mm
アンテナ装置112Sは、給電コイル4が、平面視で、放射素子1の長手方向(図26におけるX方向)の中央で、かつ、給電コイル4の軸方向の中央が間隙部8のY方向の中央に一致する位置に配置されている。
図27(A)は、HF帯において、給電コイル4の配置に対する給電コイル4と放射素子1および導電性部材20(導体板)の結合度を示す図である。図27(B)は、HF帯において、給電コイル4の配置に対する給電コイル4と放射素子1および導電性部材20(グランド導体)の結合度を示す図である。
図27(A)および図27(B)は、上記の給電コイル4のY方向の配置を基準(「Y Position」=0)として、給電コイル4をY方向に1mm単位で上下移動したときの、給電コイル4と放射素子1および導電性部材20との結合度を示したものである。なお、図27(A)および図27(B)では、給電コイル4をY方向に対して、図26における上方向に移動させる場合が正(+)であり、図26における下方向に移動させる場合が負(−)である。
図27(A)に示すように、放射素子1および導体板を含む構成のループ部と給電コイル4との結合度は、給電コイル4のY方向の配置が「Y Position」=−1mmの場合に0となる。これは、ループ部のコイル開口が給電コイル4のコイル軸と平行である場合には、ループ部に対して給電コイル4から発生した磁束の鎖交数がゼロとなるためである。なお、「Y Position」=−1mmとは、給電コイル4のコイル開口が、平面視で、間隙部8の一方端部(図26における上側の縁端部)と略重なる位置である。
そして、給電コイル4のY方向の配置(「Y Position」)が正負に移動するにつれて、結合度が高くなることがわかる。なお、図27(A)に示すように、「Y Position」=4mmのときに、放射素子1および導電性部材20(導体板)と給電コイル4との結合度が最大となる。すなわち、給電コイル4は、導体板(導電性部材20)よりも放射素子1に近いほうが結合度を高めることができる。これは、ループ部を構成する放射素子1の幅(Y方向の長さ)が、ループ部を構成する導体板2の幅(Y方向の長さ)よりも狭く、放射素子1のインダクタの方が導体板2のインダクタよりも大きいためである。
図27(B)に示すように、放射素子1およびグランド導体を含む構成のループ部と給電コイル4との結合度は、給電コイル4のY方向の配置(「Y Position」)が正に移動するにつれて、高くなることがわかる。すなわち、放射素子1および導体板を含む構成のループ部の場合も、給電コイル4が、平面視で、グランド導体(導電性部材20)よりも放射素子1に近いほうが、結合度を高めることができる。
また、図27(A)および図27(B)に示すように、放射素子1およびグランド導体を含む構成のループ部における結合度の最大値は、放射素子1および導体板を含む構成のループ部の場合に比べて大きくなる。これは、放射素子1およびグランド導体を含む構成のループ部の開口(図18におけるOZ2参照)は、放射素子1および導体板を含む構成のループ部の開口(図4におけるOZ1参照)に比べて、高さ方向(Z方向)の成分を持つためである。つまり、ループ部の開口が給電コイル4のコイル軸と平行ではなく、高さ方向(Z方向)の成分を持つため、基板3の主面に実装される給電コイル4から発生した磁束がループ部と鎖交しやすくなり、結果的に結合度は高くなる。また、ループ部の開口が高さ方向の成分を持つ場合には、ループ部に対して給電コイル4から発生した磁束の鎖交数がゼロとなり難いため、結合度は0にはならない。
このように、給電コイル4は導電性部材20よりも放射素子1に近いほうが好ましい。
《第13の実施形態》
図28(A)は第13の実施形態に係るアンテナ装置113Aの平面図であり、図28(B)はアンテナ装置113Bの平面図である。なお、図28(A)および図28(B)において、給電コイル4に接続される第2給電回路およびキャパシタ等の図示が省略されている。
第13の実施形態に係るアンテナ装置113A,113Bは、第1の実施形態に係るアンテナ装置101に対して、給電コイル4の実装位置が異なる。その他の構成は、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と実質的に同じである。
アンテナ装置113Aの給電コイル4は、平面視で、放射素子1と接続導体73Aとの間を接続する接続ピン5Aの近傍に配置される。接続ピン5Aは、給電コイル4から生じる磁束φ4Aによって、給電コイル4と磁界結合し、給電コイル4のコイル導体に流れる電流によって、給電コイル4と電界結合する。つまり、アンテナ装置113Aに係る給電コイル4は、接続ピン5Aと磁界結合または電磁界結合(電界結合および磁界結合)する。
アンテナ装置113Bの給電コイル4は、平面視で、接続導体73Cと重なり、かつ、給電コイル4の軸方向が接続導体73Cの延伸方向(図28(B)におけるY方向)と直交するように配置される。接続導体73Cは、給電コイル4から生じる磁束φ4Bによって、給電コイル4と磁界結合し、給電コイル4のコイル導体に流れる電流によって、給電コイル4と電界結合する。つまり、アンテナ装置113Bに係る給電コイル4は、接続導体73Cと磁界結合または電磁界結合(電界結合および磁界結合)する。
このような構成であっても、給電コイル4はループ部と磁界結合または電磁界結合(電界結合および磁界結合)して、ループ部が給電コイル4に対するブースターアンテナとして機能する。したがって、大型のアンテナコイルを用いることなく、簡素な構成により通信特性の良いアンテナ装置を実現できる。
本実施形態で示したように、アンテナ装置は、給電コイル4が放射素子1や導電性部材と磁界結合または電磁界結合(電界結合および磁界結合)する構成に限定されるものではない。
なお、本実施形態に係るアンテナ装置113Aでは、給電コイル4が接続ピン5Aと結合する例を示したが、この構成に限定されるものではない。給電コイル4と結合する接続ピンは、適宜変更可能である。
また、本実施形態に係るアンテナ装置113Bでは、給電コイル4が接続導体73Cと結合する例を示したが、この構成に限定されるものではない。給電コイル4と結合する接続導体は、適宜変更可能である。
さらに、上述の実施形態では、給電コイル4が放射素子1、導電性部材、接続ピンまたは接続導体と結合する例を示したが、この構成に限定されるものではない。HF帯(第2周波数帯)において、ブースターアンテナとして機能するループ部の一部であれば、給電コイル4がこれ以外の構成部分と磁界結合または電磁界結合(電界結合および磁界結合)する構成であってもよい。
《第14の実施形態》
図29は第14の実施形態に係るアンテナ装置114Aの集中定数素子による等価回路図であり、図30はアンテナ装置114Bの集中定数素子による等価回路図である。
第14の実施形態に係るアンテナ装置114Aは、第1の実施形態に係るアンテナ装置101に対して、第2給電回路82が直接給電されている点で異なる。そのため、アンテナ装置114Aは給電コイルを備えていない。その他の構成は、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と実質的に同じである。
以下、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と異なる部分のみ説明する。
第14の実施形態に係るアンテナ装置114Aは、第2給電回路82を有する給電回路部54を備える。給電回路部54は、第2給電回路82、インダクタL41,L42およびキャパシタC41,C42,C43,C44,C45,C46を有する。アンテナ装置114Aは、導電性部材を備えておらず、第1インピーダンス回路51の他端およびキャパシタC1の他端にこの給電回路部54が直接接続される。
給電回路部54の第2給電回路82とキャパシタC43,C44との間にはインダクタL41,L42およびキャパシタC45,C46によるローパスフィルタが構成されている。給電回路部54は上記ローパスフィルタおよびキャパシタC43,C44を介してキャパシタC41,C42の両端にHF帯(第2周波数帯)の通信信号を空間的に離間した結合を介さずに直接給電する。このように給電回路を適用することもできる。
放射素子1、キャパシタC1,C41,C41および第1インピーダンス回路51によってLC共振回路が構成される。したがって、放射素子1、キャパシタC1,C41,C41および第1インピーダンス回路51を含むループ部が構成される。
また、第14の実施形態に係るアンテナ装置114Bは、第6の実施形態に係るアンテナ装置106に対して、第2給電回路82が直接給電されている点で異なる。そのため、アンテナ装置114Bは給電コイルを備えていない。その他の構成は、第6の実施形態に係るアンテナ装置106と実質的に同じである。
以下、第6の実施形態に係るアンテナ装置106と異なる部分のみ説明する。
アンテナ装置114Bは、第2給電回路82を有する給電回路部54およびバラン部55を備える。給電回路部54は、アンテナ装置114Aで示した構成と実質的に同じである。バラン部55は、インダクタL5A,L5Bを有し、インダクタL5A,L5Bがバラン部55内で磁界結合し、平衡−不平衡変換を行う。
インダクタL5Aは給電回路部54の両端に接続される。つまり、インダクタL5Aは、インダクタL41,L42およびキャパシタC43,C44を介して第2給電回路82の両端に接続される。インダクタL5BはキャパシタC1の他端とグランド導体9との間に接続される。このバラン部55により、給電回路部54の平衡信号が不平衡信号に変換され、放射素子1、キャパシタC1、グランド導体9および第1インピーダンス回路51を含むループ部に直接給電される。
本実施形態で示したように、アンテナ装置は、第2給電回路が給電コイルを備え、ループ部と磁界結合または電磁界結合(電界結合および磁界結合)する構成に限定されるものではない。第2給電回路は、ループ部に直接給電する構成であってもよい。
このような構成であっても、アンテナ装置114Aの基本的な構成は第1の実施形態に係るアンテナ装置101と同じであり、アンテナ装置114Bの基本的な構成は第6の実施形態に係るアンテナ装置106と同じである。したがって、アンテナ装置101,106と同様の作用・効果を奏する。
《第15の実施形態》
図31は第15の実施形態に係るアンテナ装置115の断面図である。
第15の実施形態に係るアンテナ装置115は、接続ピンを備えていない点で第1の実施形態に係るアンテナ装置101と異なる。その他の構成は、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と実質的に同じである。
以下、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と異なる部分のみ説明する。
アンテナ装置115は、接続ピンの代替として、導電性接続部91,92およびネジ部材93を備える。導電性接続部91,92は放射素子1および導体板2の屈曲部である。導電性接続部91は、ネジ部材93を介して基板3に固定されている。図31に示すように、放射素子1は、導電性接続部91および71Aを介してキャパシタC1の一端に接続される。導電性接続部92は、ネジ部材93を介して基板3に固定されている。図31に示すように、導体板2は、導電性接続部92および72Aを介してキャパシタC1の他端に接続される。
本実施形態で示したように、接続ピンを介して接続される部分を導電性接続部91およびネジ部材93で接続することもできる。なお、本実施形態では、導電性接続部91,92の形状が放射素子1および導体板2の屈曲部である例を示したが、この構成に限定されるものではない。導電性接続部91,92は放射素子1および導体板2とは異なる導電性を有する部材が導電性接着剤を介して放射素子1および導体板2に固定する等、上記作用を奏する範囲において、適宜変更可能である。
また、本実施形態では、ネジ部材93を介して導電性接続部91,92を基板3に固定した例を示したが、この構成に限定されるものではない。ネジ部材93を用いず、導電性の接着材を介して導電性接続部91,92を基板3に固定する構成であってもよい。
さらに、接続導体71A,72Aを用いず、フレキシブルプリント基板を基板3に固定することにより、フレキシブルプリント基板に形成された導体パターンと基板3に形成される接続導体とを接続する構成であってもよい。
《第16の実施形態》
図32(A)は第16の実施形態に係るアンテナ装置116Aの断面図であり、図32(B)はアンテナ装置116Bの断面図である。
第16の実施形態に係るアンテナ装置116A,116Bは、キャパシタC1が基板3に実装されていない点で第1の実施形態に係るアンテナ装置101と異なる。その他の構成は、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と実質的に同じである。
以下、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と異なる部分のみ説明する。
アンテナ装置116Aは、導電性接続部91,92、ネジ部材93および配線基板70をさらに備える。配線基板70の第1主面(図32(A)における上面)には、図示しない導体パターンが形成されている。配線基板70は例えばフレキシブルプリント基板(Flexible printed circuits)である。
キャパシタC1は、配線基板70の第1主面に実装される。導電性接続部91は、放射素子1の屈曲部であり、ネジ部材93を介して配線基板70に固定されている。導電性接続部92は、導体板2の屈曲部であり、ネジ部材93を介して配線基板70に固定されている。放射素子1および導体板2は、配線基板70の第1主面に形成された導体パターンおよび導電性接続部91,92を介してキャパシタC1に接続される。
アンテナ装置116Bは、導電性の接着材94,95、配線基板70をさらに備える。配線基板70には、図示しない導体パターンが形成される。
キャパシタC1は、配線基板70の第2主面(図32(B)における下面)に実装されている。放射素子1は、配線基板70に形成された導体パターンおよび導電性の接着材94等を介してキャパシタC1の一端に接続される。導体板2は、配線基板70に形成された導体パターンおよび導電性の接着材95等を介してキャパシタC1の他端に接続される。
このような構成により、放射素子1と基板3との間を接続する必要がなく、導体板2と基板3との間を接続する必要がなくなる。
また、本実施形態では、キャパシタC1等の部品を配線基板70に実装することができるため、基板3における実装スペースが拡大され、実装部品の配置等の自由度を高めることができる。
さらに、本実施形態に係るアンテナ装置116Aでは、ネジ部材93を介して導電性接続部91,92に配線基板70を固定した例を示したが、この構成に限定されるものではない。アンテナ装置116Bに示したように、ネジ部材93を用いず、導電性の接着材を介して配線基板70を固定する構成であってもよい。
《第17の実施形態》
図33は第17の実施形態に係るアンテナ装置117の平面図である。なお、図33において、第1インピーダンス回路、キャパシタ、第1給電回路、第2給電回路およびリアクタンス素子等の図示が省略されている。
第17の実施形態に係るアンテナ装置117は、開口部96,97をさらに備える点で第1の実施形態に係るアンテナ装置101と異なる。その他の構成は、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と実質的に同じである。
以下、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と異なる部分のみ説明する。
アンテナ装置117に係る放射素子1は開口部96を備え、導体板2は開口部97を備える。開口部96,97は例えばカメラモジュール用の開口部またはボタン用の開口部である。
このような構成であっても、アンテナ装置117の基本的な構成は第1の実施形態に係るアンテナ装置101と同じであり、アンテナ装置101と同様の作用・効果を奏する。
なお、本実施形態で示した開口部96,97の位置、大きさ、個数等は例示であって、この構成に限定されるものではない。開口部96,97の位置、大きさ、個数等は、放射素子1および導体板2がループ部を構成して、ブースターアンテナとして機能する範囲において、適宜変更可能である。
なお、本実施形態では、放射素子1および導体板2がループ部を構成する例を示したが、この構成に限定されるものではない。グランド導体が開口部を備え、放射素子1およびグランド導体がループ部を構成していてもよい。また、グランド導体が備える開口部の位置、大きさ、個数等は、放射素子1およびグランド導体がループ部を構成して、ブースターアンテナとして機能する範囲において、適宜変更可能である。また、開口部96,97には、スピーカーやセンサ等のデバイスやエンブレムをかたどった樹脂等が配置されていてもよい。
《第18の実施形態》
図34は第18の実施形態に係るアンテナ装置118Aにおける、放射素子1Dおよび導体板2Dを示す外観斜視図である。図35は、アンテナ装置118Bにおける、放射素子1Eおよび導体板2Eを示す外観斜視図である。図36は、アンテナ装置118Cにおける、放射素子1Fおよび導体板2Fを示す外観斜視図である。なお、図34、図35および図36において、第1インピーダンス回路、キャパシタ、第1給電回路、第2給電回路およびリアクタンス素子等の図示が省略されている。
アンテナ装置118A,118B,118Cは、第1の実施形態に係るアンテナ装置101に対して、放射素子および導体板の形状が異なり、その他の構成は、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と実質的に同じである。
以下、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と異なる部分のみ説明する。
アンテナ装置118Aに係る放射素子1Dは平板ではなく、横方向(図34におけるX方向)の両端および縦方向(Y方向)の一端(図34における右側)の側面にも形成され、接続されている。アンテナ装置118Aに係る導体板2Dは平板でなく、横方向(X方向)の両端の側面にも形成され、接続されている。図34に示すように、導体板2Dは、Y方向から視て、U字状の導体である。
アンテナ装置118Bに係る放射素子1Eは平板ではなく、横方向(図35におけるX方向)の両端の側面にも形成され、接続されている。図35に示すように、放射素子1Eは、Y方向から視て、U字状の導体である。アンテナ装置118Bに係る導体板2Eは、アンテナ装置118Aに係る導体板2Dと実質的に同じ形状である。
アンテナ装置118Cに係る放射素子1Fは平板ではなく、横方向(図34におけるX方向)の両端および縦方向(Y方向)の一端(図34における右側)の側面に形成され、接続されている。図36に示すように、放射素子1Eは、Z方向から視て、U字状の導体である。アンテナ装置118Cに係る導体板2Fは平板でなく、横方向(X方向)の両端および縦方向(Y方向)の他端(図36における左側)の側面にも形成され、接続されている。
本実施形態に示すように、放射素子1および導電性部材(導体板またはグランド導体)の形状は、ループ部の一部を構成し、ブースターアンテナとして機能する範囲において、立体構造等、適宜変更可能である。
なお、本実施形態で示したように、放射素子1、導電性部材(導体板またはグランド導体)は平板に限定されるものではない。放射素子1および導電性部材の厚み(Z方向の長さ)は、ループ部の一部を構成し、ブースターアンテナとして機能する範囲において適宜変更可能である。
《その他の実施形態》
なお、上述の実施形態では、放射素子1、導電性部材(導体板またはグランド導体)の平面形状が矩形である例を示したが、この構成に限定されるものではない。放射素子1および導電性部材が曲面状あるいは線状等の形状でもよい。放射素子1および導電性部材の形状は、ループ部の一部を構成し、ブースターアンテナとして機能する範囲において適宜変更可能である。
なお、上述の実施形態では、ループ部がHF帯(第2周波数帯)において、近傍界通信のための磁界放射に寄与する磁界放射型アンテナとして作用する例を示したが、この構成に限定されるものではない。ループ部は、少なくとも磁界結合を利用した電磁誘導方式の非接触電力伝送システムや磁界共鳴方式の非接触電力伝送システム等の受電アンテナや送電アンテナとしても使用できる。送電装置において、上述の実施形態に係るアンテナ装置を用いる場合には、ループ部が送電アンテナとなり、第2給電回路は送電アンテナに電力を供給する送電回路となる。受電装置において、上述の実施形態に係るアンテナ装置を用いる場合には、ループ部が受電アンテナとなり、第2給電回路は受電アンテナからの電力を受電装置内の負荷に供給する受電回路となる。