<インバータ装置(第1実施例)>
図1は、インバータ装置の第1構成例を示すブロック図である。本構成例のインバータ装置1は、直流電源2から入力される直流電力を交流電力に変換して負荷3に供給するインバータ主回路4と、負荷3に供給される負荷供給電圧Voを検出する電圧検出器5と、負荷供給電圧Voを基にして出力同期信号Vsを作成するゼロクロス検出回路6と、インバータ主回路4の交流出力(以下、インバータ出力という)の出力電流Ioを検出する電流検出器7と、出力電流IoをA/D変換するA/D変換器8と、出力電流Ioと出力同期信号Vsを基にしてインバータ主回路4をPWM[pulse width modulation]制御するDSP[digital signal processor]9と、負荷3に供給される負荷供給電圧Voの電圧異常を検出する電圧異常検出回路10と、DSP9が出力するPWMデータを基にしてゲートパルス信号Gpを作成するタイマ・カウンタ回路11と、ゲートパルス信号Gpを基にしてインバータ主回路4のスイッチング素子(図示省略)をスイッチング制御するゲート駆動回路12とを備えている。インバータ主回路4と負荷3との間には、リアクトル13とコンデンサ14からなり、インバータ出力の高周波成分を除去するフィルタ15が設けられている。
負荷3には、インバータ装置1とは別に、商用電力系統16から遮断器17および柱上トランス18を介して交流電力が供給されており、インバータ装置1は、商用電力系統16と連系して運転されている。
DSP9は、電流基準波形データWbが格納された電流基準波形メモリ19と、電流基準波形メモリ19から電流基準波形データWbを順次読み出して、出力指令信号Vcと乗算して電流基準信号Icを作成する乗算部20と、出力電流Ioと電流基準信号Icとの誤差を算出して電流誤差信号eを作成する誤差信号作成部21と、出力同期信号Vsの周期を1区間とする電流誤差信号eの波形パターンの積分を行う誤差波形パターン積分回路22と、誤差波形パターン積分回路22から出力される積分データe’をパルス幅変調してPWMデータDpを作成するPWM処理回路23と、PWMデータDpを格納するPWMメモリ24と、負荷供給電圧Voの周波数の算出、負荷供給電圧Voの周波数異常を示す周波数異常信号Feの出力、さらには無積分区間指定信号Bの出力を行うゼロクロス周期検出処理回路25とを備えている。
次に、インバータ装置1の動作を順を追って説明する。電流検出器7で検出されたインバータ出力の出力電流Ioは、A/D変換器8によってA/D変換されたのち、誤差信号作成部21に入力される。
一方、電圧検出器5で検出された負荷供給電圧Voは、ゼロクロス検出回路6に入力される。ゼロクロス検出回路6では入力された負荷供給電圧Voを基にして出力同期信号Vsを作成して、電流基準波形メモリ19に出力する。電流基準波形メモリ19では、格納している電流基準波形データWbを、入力された出力同期信号Vsに同期して読み出して乗算部20に出力する。乗算部20では、入力された電流基準波形データWbと出力指令信号Vcとを乗算して電流基準信号Icを作成して誤差信号作成部21に出力する。
出力電流Ioと電流基準信号Icとが入力された誤差信号作成部21では、出力電流Ioと電流基準信号Icとの誤差である電流誤差信号eを作成して、誤差波形パターン積分回路22に出力する。誤差波形パターン積分回路22には、出力同期信号Vsがゼロクロス検出回路6から入力されており、誤差波形パターン積分回路22では、出力同期信号Vsの周期を1区間として電流誤差信号eの波形パターンを積分する。このようにして作成された積分データe’は、次回のサンプリング時の積分演算に使用するために誤差波形パターン積分回路22内に記憶されるとともに、PWM処理回路23に出力される。
PWM処理回路23では、入力された積分データe’をパルス幅変調してPWMデータDpを作成して、PWMメモリ24に格納する。PWMメモリ24では、ゼロクロス検出回路6から入力される出力同期信号Vsと同期を取りつつ、各サンプリング毎にPWMデータDpをタイマ・カウンタ回路11に出力する。
タイマ・カウンタ回路11では、DSP9において上述した手順で作成されたPWMデータDpを基にしてゲートパルス信号Gpを作成して、ゲート駆動回路12に出力する。ゲート駆動回路12では、入力されるゲートパルス信号Gpを基にしてインバータ主回路4のスイッチング素子(図示省略)をスイッチング制御して、インバータ主回路4を駆動させる。
インバータ装置1では、交流電圧系統16の停電等により、単独運転状態になると、次のようにして、単独運転状態を検知して、インバータ出力を停止している。すなわち、インバータ装置1が供給している無効電力と負荷3が要求している無効電力とが一致していない状態でインバータ装置1が単独運転状態になると、負荷供給電圧Vo(単独運転状態ではインバータ出力と等しくなる)の周波数は、定格周波数(50/60Hz)から変動し、これに伴って負荷供給電圧Voの電圧値も変動する。そこで、電圧異常検出回路10によって、負荷供給電圧Voに異常があるか否かを検出し、負荷供給電圧Voに過電圧異常ないし不足電圧異常が生じると、電圧異常信号Veをゲート駆動回路12に出力する。また、ゼロクロス周期検出回路25において、負荷供給電圧Voの周波数を検出し、さらに検出した負荷供給電圧Voの周波数と定格周波数f0を比較して両者の偏差を算出し、算出した偏差が予め決めておいた閾値を超過する場合には、周波数異常信号Feをゲート駆動回路12に出力する。
ゲート駆動回路12では、電圧異常信号Veないしは周波数異常信号Feが入力されると、インバータ装置1が単独運転状態になったとして、インバータ主回路4のスイッチング制御を停止し、これによってインバータ主回路4はインバータ出力を停止する。
次に、インバータ装置1の特徴となる動作を説明する。インバータ装置1が供給している無効電力と負荷3が要求している無効電力とがほぼ一致する(負荷インピーダンスの力率が1に近い)状態で、インバータ装置1が単独運転状態になると、負荷供給電圧Voの周波数はほとんど変動しなくなる。したがって、電圧異常検出回路10やゼロクロス周期検出処理回路25において、負荷供給電圧Voの異常が検出できなくなる。そこで、インバータ装置1では、誤差波形パターンeの積分データe’に対して、以下に示す歪みを付与することで、負荷インピーダンスの力率に関係なく、単独運転状態の負荷供給電圧Voの周波数に変動を発生させて、インバータ装置1の単独運転状態を確実に検知している。以下、この歪みの付与について詳細に説明する。
ゼロクロス周期検出処理回路25は、誤差波形パターン積分回路22に対して、無積分区間指定信号Bを与えている。無積分区間指定信号Bは、次のような指定を行う信号である。すなわち、無積分区間指定信号Bは、積分データe’においてその波形パターンの所定区間αを指定するとともに、その所定区間αの出力をゼロにする指令信号である。ここで、所定区間αとは、ゼロクロスポイントを期間終点として、波形パターン半周期内に設けられた区間である。
無積分区間指定信号Bを受けた誤差波形パターン積分回路22の動作を図2及び図3を参照して説明する。図2は、積分データe’の見かけ上の波形パターンの一例であり、図3は、図2の積分データe’を基にして作成したインバータ出力の波形パターンの一例である。また、図2及び図3は、半周期分のデータであって、図2では定格周波数時のデータ点数を例えば300個としている。
インバータ出力が定格周波数f0を維持しているのであれば、誤差波形パターン積分回路22で記憶している前回周期の積分データe’の波形パターンは、例えば図2(a)に示すように、周期T0の正弦波波形となる。また、この正弦波波形の積分データe’を基にして作成したインバータ出力の周期波形も、図3(a)に示すように、周期T0の正弦波波形となる。
ここで、ゼロクロス周期検出処理回路25から無積分区間指定信号Bが入力された誤差波形パターン積分回路22は、周期T0の積分データe’のうち、無積分区間指定信号Bによって指定された所定区間αの間の積分データをゼロにした図2(b)に示す積分データe’を出力する。この積分データe’における見かけ上の周期は定格周波数f0の周期より短くなっているので、この積分データe’を基にしてインバータ主回路4がインバータ出力を作成すると、そのゼロクロスポイントの検出タイミングが期間αだけ早くなる結果、その周期は図3(b)に示すようにT0より若干短いT1となり、インバータ出力の周波数は若干上昇する。
さらに、周期T1に対応した周波数を有するインバータ出力が出力されると、誤差波形パターン積分回路22では、周期T1の積分データのうち、無積分区間指定信号Bによって指定された所定区間αの間の積分データをゼロにした図2(c)に示す積分データe’を出力する。この積分データe’における見かけ上の周期はさらに周期T1より短くなっているので、この積分データe’を基にしてインバータ出力を作成すると、そのゼロクロスポイントの検出タイミングが期間αだけさらに早くなる結果、その周期は、図3(c)に示すように、T1よりさらに若干短いT2となり、インバータ出力の周波数はさらに若干上昇する。このようにして、インバータ出力の周波数は徐々に上昇していく。
このような周波数の変動は、たとえ負荷インピーダンスの力率がほぼ1であったとしても発生するので、このような周波数変動ないし周波数変動に伴う電圧変化をゼロクロス周期検出処理回路25ないし電圧異常検出回路10によって検出することで、インバータ装置1の単独運転状態は確実に検知される。なお、所定区間αの長さは、負荷供給電圧Voのゼロクロス周期によって調整される。
また、このような周波数の変動は、インバータ装置1が単独運転をしているときにのみ発生し、インバータ装置1が商用電力系統16と連系している場合には、負荷供給電圧Voの周波数が商用電力系統16側で維持されるため生じることはない。
ところで、ゼロクロス周期検出処理回路25では、上記した積分データe’をゼロにする所定区間αの長さを次のように変動させている。すなわち、図4に示すように、単独運転時の負荷供給電圧Voの周波数が定格周波数f0付近にある場合においては、所定区間αの長さを短くする一方、インバータ出力の周波数が定格周波数f0から乖離するにつれて所定区間αを大きくしている。これにより、商用電力系統16との連系が維持されている期間においては、負荷供給電圧Voに生じる歪みを小さくする一方、系統を離脱して単独運転状態になった場合のインバータ出力の周波数の変化を加速させて、単独運転状態の検知をより確実にしている。
また、ゼロクロス周期検出処理回路25では、同じく図4に示すように、単独運転時の負荷供給電圧Voの周波数が上限値f1になると、上記所定区間αをゼロに戻している。これにより、インバータ装置1の単独運転時、インバータ出力の周波数がf1になると、所定区間αがゼロになって周波数がf1より上昇しなくなるので、これによって周波数発散が抑止される。
さらには、ゼロクロス周期検出処理回路25では、負荷供給電圧Voの周波数が商用電力系統16の定格周波数f0から乖離したとき、積分データe’の値を所定の割合で減少させて、インバータ出力を低下させることにより、インバータ装置1の単独運転時において、インバータ出力の周波数変動を促進して単独運転の検知を早めるとと共に、インバータ装置1を安全に停止させている。
図5は、インバータ装置の第2構成例を示すブロック図である。第2構成例のインバータ装置30は、基本的に、先に説明した第1構成例のインバータ装置1と同様の構成を備えており、同一ないし同様の部分に同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
第2構成例のインバータ装置30は、インバータ出力に歪みを与えるゼロクロス周期検出処理回路31の構成に特徴がある。すなわち、ゼロクロス周期検出処理回路31は、PWMメモリ24に対して読み出しアドレス指定信号Cを出力している。第1構成例のゼロクロス周期検出処理回路25は、誤差波形パターン積分回路22に対して無積分区間指定信号Bを出力しており、この点で、両者は異なっている。
次に、インバータ装置30の特徴となる動作を説明する。インバータ装置30が供給している無効電力と負荷3が要求している無効電力とがほぼ一致する(負荷インピーダンスの力率が1に近い)状態で、インバータ装置30が単独運転状態になると、負荷供給電圧Voの周波数はほとんど変動しなくなる。従って、電圧異常検出回路10やゼロクロス周期検出処理回路31において、負荷供給電圧Voの異常が検出できなくなる。そこで、インバータ装置30では、PWMメモリ24が出力するPWMデータDp’に対して、以下に示す歪みを付与することにより、負荷インピーダンスの力率に関係なく、単独運転状態の負荷供給電圧Voの周波数に変動を発生させて、インバータ装置30の単独運転状態を確実に検知している。以下、歪みの付与に付いて詳細に説明する。
ゼロクロス周期検出処理回路31がPWMメモリ24に対して与える読み出しアドレス指定信号Cは、次のような指定を行う信号である。すなわち、図6に示すように、読み出しアドレス指定信号Cは、PWMメモリ24に対して、PWMデータDpの読み出しに際して、読み出し用のカウンタ(g-count)の増加率(g-rate)をゼロクロス周期毎に変更することで、PWMデータDpに歪みを与えている。
すなわち、読み出しアドレス指定信号Cは、PWMデータDpの読み出しアドレスをmとし、PWMデータメモリ24から取り出されるPWMデータDpの時間変化をY(n)とすると、
m=int(g-rate×g-count) …(1)
g-count=n mod N …(2)
Y(n)=Dpm …(3)
となるアドレス指定信号である。
このように設定された読み出しアドレス指定信号Cに基づいてPWMメモリ24から読み出されたPWMデータDp’は、タイマ・カウンタ回路11に入力される。そして、このPWMデータDp’に基づいてタイマ・カウンタ回路11でゲートパルス信号Gp’を作成して、ゲート駆動回路12に出力する。ゲート駆動回路12では、入力されたゲートパルス信号Gp’によってインバータ主回路4をスイッチング制御する。
ここで、g-rate>1とした場合には、インバータ出力波形には、図7に示すように、ゼロクロスポイントを期間終点する所定期間βが出力ゼロとなる歪みが付与されて、PWMデータDp’での見かけ上の周期T3が定格周波数f0の周期T0より短くなり、このPWMデータDp’を基にしてインバータ出力を作成すると、そのゼロクロスポイントの検出タイミングが期間βだけに早くなる結果、インバータ出力の周波数は定格周波数f0より上昇する。
一方、g-rate<1とした場合には、インバータ出力波形には、図8に示すように、波高ピークからゼロクロスポイントに至る下降波形経路側に任意のオフセットを出力する歪みが付与されて、PWMデータDp’での見かけ上の周期T4が定格周波数f0の周期T0より長くなり、このPWMデータDp’を基にしてインバータ出力を作成すると、見かけ上の周期T4が長くなる分、そのゼロクロスポイントの検出タイミングが遅くなる結果、インバータ出力の周波数は定格周波数f0より下降する。
このような周波数の変動は、たとえ負荷インピーダンスの力率がほぼ1であったとしても発生するので、このような周波数変動ないし周波数変動に伴う電圧変化をゼロクロス周期検出処理回路31ないし電圧異常検出回路10によって検出することで、インバータ装置30の単独運転状態は確実に検知される。
インバータ装置30によるインバータ出力波形の歪ませ方は、図7や図8に示した他、図9に示すように、ゼロクロスポイントを含んだその両側の所定期間γが出力レベルゼロとなる歪みをインバータ出力波形に付与してもよい。そうすれば、PWMデータDp’での見かけ上の周期TTは、定格周波数f0の周期T0より短くなる結果、インバータ出力(負荷供給電圧Vo)の周波数は、定格周波数f0から変動する。
さらには、図10に示すように、ゼロクロスポイントが両波高ピーク側に任意のオフセットを出力する歪みをインバータ出力波形に付与してもよい。そうすれば、PWMデータDp’での見かけ上の周期T6は、定格周波数f0の周期T0より長くなる結果、インバータ出力の周波数は、定格周波数f0から変動する。
図9や図10に示したような歪ませ方をインバータ出力波形に付与するためには、読み出しアドレス指定信号Cにおける読み出しアドレスを指定する関数を変更すればよい。なお、図7〜図10において、実線はPWMデータDp’での見かけ上の出力波形を示し、点線は定格周波数f0の出力波形を示している。
ところで、インバータ装置30が単独運転している時のインバータ出力の周波数は、インバータ装置30が接続される負荷3の種類によっても影響を受け、負荷3が誘導性負荷である場合には単独運転時のインバータ出力周波数は上昇し、負荷3が容量性負荷である場合には単独運転時のインバータ出力周波数は下降する。そのため、インバータ出力波形に歪みを付与することによる周波数変動と負荷3による周波数変動量とが互いに周波数変動量の絶対値が同等で、かつ、その変動方向が逆である場合などでは、歪みの付与による周波数変動と、負荷3による周波数変動とが互いに相殺し合って、周波数変動が発生しにくい場合がある。
これに対して、インバータ装置30では、先にも述べたように、読み出し用のカウンタ(g-count)の増加率(g-rate)をどのように設定するかによってインバータ出力周波数を定格周波数f0に対して上昇させることも下降させることもできる。そこで、インバータ装置30では、図11に示すように、インバータ出力周波数が所定の変動幅Δfだけ上昇する第1の歪み(図7参照)を付与する期間M1と、インバータ出力周波数が所定の変動幅Δfだけ下降する第2の歪み(図8参照)を付与する期間M2とを交互に繰り返し設定している。そのため、インバータ出力周波数は上昇と下降とを交互に繰り返し、ある期間M1(M2)において、歪みの付与による周波数変動作用と、負荷3による周波数変動作用とが相殺し合ったとしても、次の期間M2(M1)では、相殺しなくなるので、インバータ出力周波数は確実に変動することになる。したがって、負荷3との電力バランスに関わりなく、確実に、インバータ装置30の単独運転状態が検出されることになる。
また、インバータ装置30では、第1の歪みを付与する期間M1と第2の歪みを付与する期間M2との間に、定格周波数f0を維持する歪み無付与期間M3を設けている。これにより、インバータ装置30の通常の運転状態、すなわち、商用電力系統16と連系して定格周波数f0で運転している状態では、負荷供給電圧Voには歪みが発生しにくくなっている。
なお、第1、第2の歪みを付与する期間M1、M2としては、例えば、インバータ出力周波数の7周期が適当であり、歪み無付与期間M3としては、インバータ出力周波数の3周期が適当であり、変動幅Δfとしては、例えば、±0.2Hzが適当である。しかしながら、これらの値は一例に過ぎず、各期間M1、M2、M3の変動幅Δfは、他の値であってもよいのは言うまでもない。また、歪み無付与期間M3は、前述した第1構成例のインバータ装置1において設置しても、同様の効果を発揮するのも言うまでもない。
さらには、インバータ装置30では、図12に示す正帰還ループでインバータ出力を制御している。なお、図12において、横軸はゼロクロス周期検出処理回路31で検出する負荷供給電圧Voの出力周波数(インバータ装置30の単独運転時ではインバータ出力の周波数に相当する)Finを示しており、縦軸はPWMデータDp’での見かけ上の周波数Foutを示している。この図から分かるように、インバータ装置30(具体的にはゼロクロス周期検出処理回路31)は、負荷供給電圧Voを、定格周波数f0を挟んた所定周波数期間(例えば、±0.2Hzの期間が適当であるが、この期間に限定されるものでもない)である不感帯Kと、不感帯Kより高い周波数領域である+側異常周波数領域L+と、不感帯Kより低い周波数領域である−側異常周波数領域L−とに区分している。
そして、不感帯Kでは、図11に示したように、インバータ出力周波数が上昇する第1の歪み(図7参照)を付与する期間M1と、歪み無付与期間M3と、インバータ出力周波数が下降する第2の歪み(図8参照)を付与する期間M2とが順次交互に設定されるようにしている。また、異常周波数領域L+では、負荷供給電圧Voの周波数Finよりも、この周波数Finを基にして形成されるPWMデータDp’での見かけ上の周波数Foutの方が高くなるような正帰還ループで、PWMデータDp’を作成してインバータ制御を行っている。さらには、異常周波数領域L−では、負荷供給電圧Voの周波数Finよりも、この周波数Finを基にして形成されるPWMデータDp’での見かけ上の周波数Foutの方が低くなるような正帰還ループで、PWMデータDp’を作成してインバータ制御を行っている。このような制御は、負荷供給電圧Voを基にした帰還制御により、読み出しアドレス指定信号Cにより読み出しアドレスを指定する関数を変更すればよい。
上述した制御を行うことにより、負荷供給電圧Voの周波数は、インバータ装置30の単独運転時において、急速に周波数変動が起きることになる。すなわち、インバータ装置30は単独運転時において、負荷インピーダンスの力率がほぼ1であり、従来では負荷供給電圧Voが不感帯Kから離脱しない場合であっても、インバータ出力に、まず、第1の歪みと第2の歪みとが付与されることで、負荷供給電圧Voが不感帯Kから離脱して、異常周波数領域L+、L−に移行する。負荷供給電圧Voが異常周波数領域L+、L−に移行すれば、正帰還ループで周波数制御されることにより、周波数変動が加速されることになる。そのため、インバータ装置30が単独運転を始めれば、速やかに、ゼロクロス周期検出処理回路31や電圧異常検出回路10によって検知されることになる。
さらに、インバータ装置30では、同じく図12に示すように、負荷供給電圧Voの周波数が、異常周波数領域L+、L−に停留すれば、周波数Finに対する周波数Foutの変化量が大きくなるように、正帰還ループの傾きを変更している。すなわち、ゼロクロス周期検出処理回路31において、周波数Finが異常周波数領域L+、L−にいる期間を測定し、周波数Finが予め設定された期間(例えば、Finの5周期の期間が適当であるが、この期間に限定されるものではない)を超過しない場合には、比較的傾きの小さい正帰還ループP1に基づいて制御を行う一方、周波数Finが予め設定された期間を超過した場合には、比較的傾きの大きい正帰還ループP2に基づいて制御を行う。これにより、異常周波数領域L+、L−に移行した周波数Finの周波数変動をさらに加速することができ、インバータ装置30が単独運転を始めれば、より速やかに、ゼロクロス周期検出処理回路31や電圧異常検出回路10によって検知されることになる。
また、前述したように、負荷3が誘導性負荷であるか、容量性負荷であるか等により、負荷3側の作用で負荷供給電圧Voの周波数が変動し、負荷3による周波数変動と歪み付与による周波数変動とが相殺することが考えられる。このようになれば、負荷供給電圧Voの周波数の変動速度が遅くなって都合が悪い。しかしながら、図12に示すように、二つの正帰還ループP1、P2を切り替えるようにしているので、比較的傾きの小さい正帰還ループP1の制御において、負荷3による周波数変動と歪み付与による周波数変動とが相殺して周波数の変動速度が遅くなったとしても、比較的傾きの大きい正帰還ループP2に切り替わることで、この相殺関係が解消して、周波数は大きく変動するようになる。
ところで、インバータ装置30では、PWMメモり24から読み出されるPWMデータDp’に歪みを付与していたが、この他、電流基準波形メモリ19から読み出される電流基準波形データWbに歪みを与えるようにしてもよい。この場合、ゼロクロス周期検出処理回路31から電流基準波形メモり19に対して、上述した読み出しアドレス指定信号Cに相当する読み出しアドレス指定信号を出力すればよい。この読み出しアドレス指定信号は、電流基準波形データWbの読み出しに際して、読み出し用のカウンタ(g-count)の増加率(g-rate)をゼロクロス周期毎に変更することで、電流基準波形データWbに歪みを与えるものであればよい。
図13には、インバータ定格出力(3kw)に対して負荷電力が平衡もしくは多少の範囲(±300w、±300Varの範囲)で平衡状態が崩れるように設定した上で、商用電力系統16の停電時に、インバータ装置1ないし30がどの程度の時間で単独運転を検知できるかを測定した結果である。この図では、上記した平衡状態をインバータ出力と負荷電力との差によって示しており、縦軸は、有効電力の平衡状態を示している。ここで、軸数値はインバータ出力から負荷電力を差し引いた値を示しており、この軸数値がゼロである場合には有効電力が平衡しており、その他の値の場合には、平衡状態がその数値分だけ崩れていることを示している。一方、横軸は無効電力の平衡状態を示している。測定は図中の(1)から(17)までの各点でそれぞれ行い、インバータ装置1ないし30が単独運転を検知して停止するまでの時間を、各点の横に記載している。
この図から明らかなように、インバータ装置1ないし30は、負荷平衡状態(負荷インバータの力率が1)、あるいは、平衡状態の近傍(力率が1付近)においても、単独運転を確実に検知できることが分かる。
<能動的単独運転検出方式(第2実施例)>
これまで説明した分散型電源の単独運転検出方式は、定常的に無効電力を注入するための能動信号となる周波数バイアスを与えて単独運転時に動作周波数の乖離を促し、周波数シフト動作により単独運転検出する方法であるが、複数台の分散型電源が設置された環境においては互いの分散型電源による能動信号同士が干渉して相殺される技術的欠点があった。この欠点を解消するため、集中連系対応可能な単独運転検出方法である能動的単独運転検出方式が最近知られているが、概要は次のとおりである。特徴的な機能として、系統周波数の偏差から注入する無効電力を演算して周波数シフトを促す機能(周波数フィードバック機能)と、分散型電源の出力電力と系統負荷の消費電力が平衡した状態において意図的に周波数変化を発生させる機能(無効電力ステップ注入機能)を備えており、単独運転の高速検出が可能、不要動作がない、他方式との相互干渉がない、能動信号による系統への影響が小さいなどの特長を持つ。このような単独運転検出方式を「能動的単独運転検出方式(ステップ注入付き周波数フィードバック方式)」と呼び、その内容を詳細に説明する。
図14は、上記の能動的単独運転方式を採用したパワーコンディショナ(以下、PCS[power conditioning system]と呼ぶ)の全体ブロック図である。本構成例のPCS100は、系統周波数計測部110と、周波数フィードバック部(無効電力注入部)120と、無効電力ステップ注入部130と、単独運転検出部140と、電流制御処理部150と、インバータ部160と、を有する。
系統周波数計測部110は、周波数偏差の演算に用いる系統周波数を計測する制御部であり、周波数検出回路111と、周波数計測処理部112と、位相差計測同期処理部113と、を含む。図15は、系統周波数(周期)計測のアルゴリズムを示す図である。
周波数検出回路111は、系統電圧に同期した方形波信号を生成して周波数計測処理部112に出力する(図15の上段を参照)。周波数検出回路111は、ハードウェア部として実装される。
周波数計測処理部112は、周波数検出回路111から入力される方形波信号を監視して系統電圧の周期データ(周波数データ)を計測する(図15の中段を参照)。より具体的に述べると、周波数計測処理部112は、方形波信号の立下りエッジから立上りエッジまでをカウントしたときの中間値と、次の立下りエッジから立上りエッジまでをカウントしたときの中間値との差分を周期データ(周波数データ)として取得する。周波数計測処理部112は、系統周波数の計測に十分な分解能(例えば2.5MHz以上(400ns以下)を備えている。周波数計測処理部112は、ソフトウェア部として実装される。
位相差計測同期処理部113は、周波数計測処理部112で計測された周期データ(周波数データ)を方形波信号の立上りエッジで同期化する(図15の下段を参照)。位相差計測同期処理部113は、ソフトウェア部として実装される。
周波数フィードバック部120は、移動平均処理により算出された系統周波数の周波数偏差(周期偏差)から注入する無効電力を演算して周波数シフトを促す制御部であり、第1移動平均算出部121と、第2移動平均算出部122と、周波数偏差算出部123と、無効電力注入量算出部124と、加算部125と、を含む。
第1移動平均算出部121は、系統周波数(系統周期)の第1移動平均値(最近周期に相当)を算出する。第1移動平均算出部121は、ソフトウェア部として実装される。
第2移動平均算出部122は、系統周波数(系統周期)の第2移動平均値(過去周期に相当)を算出する。第2移動平均算出部122は、ソフトウェア部として実装される。
周波数偏差算出部123は、第1移動平均値と第2移動平均値との差分から系統周波数の周波数偏差(周期偏差)を算出する。周波数偏差算出部123は、ソフトウェア部として実装される。
図16は、周波数偏差演算のイメージ図であり、図17は、移動平均値の更新イメージ図である。周波数偏差の演算に用いられる周期データは、系統電圧の1周期毎に更新される。周波数偏差の演算に用いられる移動平均値は、時間t1毎(例えばt1=5ms)に更新され、周波数偏差の演算自体も時間t1毎に行われる。なお、時間t1は、商用電力系統の周波数(50Hz/60Hz)に依ることなく一律とされている。第1移動平均値(最近周期)としては、最新周期の取得タイミングを終点として時間t2(例えばt2=40ms)分の移動平均値が用いられる。一方、第2移動平均値(過去周期)としては、最新周期の取得タイミングから時間t3(例えばt2=200ms)だけ過去に遡ったタイミングを終点として時間t4(例えばt4=80ms)分の移動平均値が用いられる。
無効電力注入量算出部124は、周波数偏差算出部123で算出された周波数偏差(周期偏差)に応じて注入する無効電力を算出する。無効電力注入量算出部124は、ソフトウェア部として実装される。
図18は、周波数偏差−無効電力特性を示す図である。本図で示したように、無効電力注入量算出部124は、周波数偏差が±f[Hz](例えばf=0.01Hz(±4.0μs@50Hz、±2.8μs@60Hz)を境にして無効電力演算のゲインを変える。なお、注入する無効電力の上下限値は±A[p.u.](例えばA=0.25p.u.)に設定されている。ここで、p.u.[per unit]は、単位法で基準値(定格容量)に対する比を表す際に用いられる記号である。例えば、基準値(定格容量)が4kWである場合、±0.25p.u.=±1kW(無効電力であれば±1Var)となる。
加算部125は、無効電力注入量算出部124で算出された無効電力の注入量と、後出のステップ注入量算出部136で算出された無効電力のステップ注入量を足し合わせて、電流制御処理部150に伝達する。加算部125は、ソフトウェア部として実装される。
無効電力ステップ注入部130は、分散型電源の単独運転時にPCS100の出力電力と負荷装置の消費電力が平衡して系統周波数の偏差が微小となる条件下において、周波数シフトを促すために無効電力をステップ注入する制御部であり、基本波電圧計測回路131と、高調波電圧計測回路132と、基本波電圧算出部133と、高調波電圧算出部134と、ステップ注入発生条件判定部135と、ステップ注入量算出部136と、を含む。
基本波電圧計測回路131は、PCS100の出力電流に含まれる基本波成分を基本波電圧として計測する。基本波電圧計測回路131は、ハードウェア部として実装される。
高調波電圧計測回路132は、PCS100の出力電流に含まれる高調波成分を高調波電圧として計測する。高調波電圧計測回路132は、ハードウェア部として実装される。
基本波電圧算出部133は、基本波電圧の変化量を算出する。基本波電圧算出部133は、ソフトウェア部として実装される。
高調波電圧算出部134は、高調波電圧の変化量を算出する。高調波電圧の演算には、二次〜七次以上の高調波が用いられる。また、高調波電圧の演算には、下記の離散フーリエ解析を用いてもよい。高調波電圧算出部134は、ソフトウェア部として実装される。
なお、上式中の変数について、nはサンプリング点(N個)(n=0,1,2,…,N−1)、f1は基本周波数(f1=1/(NT)=fs/N)、fsはサンプリング周波数、Tはサンプリング間隔(T=1/fs)、kは高調波の時数(k=0,1,2,…,N/2)、A[k]はk次余弦の振幅、B[k]はk次正弦の振幅、Harm[k]はk次高調波電圧(ピーク電圧)をそれぞれ示している。
ステップ注入発生条件判定部135は、基本波電圧算出部133及び高調波電圧算出134部の出力に応じてステップ注入発生条件が満足されたか否かを判定する。より具体的に述べると、ステップ注入発生条件判定部135は、周波数偏差が所定の微小範囲内(例えば±0.01Hz以内)であり、かつ、基本波電圧または高調波電圧の変化量が所定の条件を満たしたときに、ステップ注入の必要が生じたと判定する。なお、基本波電圧及び高調波電圧は、単独運転発生時に生じる系統周波数以外の変化要素の一つである。ステップ注入発生条件判定部133は、ソフトウェア部として実装される。
ここで、周波数偏差が所定の微小範囲であるとは、フィードバック部がこの微小範囲内の周波数偏差に基づき周波数シフトを促した場合に、規定された時間内(例えば200ms)に単独運転であると判定される条件の周波数の変化量に達しないような場合の周波数偏差のことを指す。
図19はステップ注入発生の第1条件(基本波電圧変動)を説明するための図である。本図中において、Miはiサイクル前の基本波電圧を示しており、Mavrは3サイクル前から5サイクル前までの3個の平均値を示している。基本波電圧算出部133では、基本波電圧の変化量(Mk−Mavr)(ただしk=0〜5)が算出され、ステップ注入発生条件判定部135では、各々の変化量がいずれも所定の条件式を満足したときに、基本波電圧の変動が生じたと判定される。
図20はステップ注入発生の第2条件(高調波電圧変動)を説明するための図である。本図中において、Niはiサイクル前の二次〜七次の全高調波電圧実効値THD[total harmonic distortion]を示しており、Navrは3サイクル前から5サイクル前までの3個の平均値を示している。高調波電圧算出部134では、高調波電圧の変化量(Nk−Navr)(ただしk=0〜5)が算出され、ステップ注入発生条件判定部135では、各々の変化量がいずれも所定の条件式を満足したときに、高調波電圧の変動が生じたと判定される。
ステップ注入量算出部136は、ステップ注入発生条件判定部135の判定結果に応じて無効電力のステップ注入量を算出する。注入時間は、所定のサイクル数以下(例えば3サイクル以下)とされている。注入量には所定の上限値(例えば0.1p.u.)が定められている。無効電力は、PCS100から見て電流位相を遅らせる方向(周波数を低下させる方向)に注入される。無効電力のステップ注入は、先述の条件が満たされてから系統周波数(周期)の半サイクル以内に行われる。ステップ注入量算出部136は、ソフトウェア部として実装される。
単独運転検出部140は、系統周波数の変化によって単独運転発生の有無を判定する制御部であり、能動的単独運転検出部141と、受動的単独運転検出部142と、を含む。
電流制御処理部150は、系統周波数計測部110の出力に基づいて同期処理を行いつつ、適切な無効電力を注入するようにインバータ部160の電流制御を行う。なお、具体的な無効電力の注入手法については、例えば、先出の図1〜図13を参照して説明したようなインバータ部160の電流制御を行えばよい。
インバータ部160は、直流電源(例えばPVパネル)から供給される直流電力を交流電力に変換して商用電力系統PWに系統連系させる電力変換部である。
なお、図14では、上記の構成要素をハードウェア部(CPU以外)とソフトウェア部(CPU)に分割した例を示しているが、分割の境界はこれに限定されるものではない。
このような能動的単独運転検出方式を採用したPCS100であれば、単独運転状態に陥ったPCS100を遅滞なく(例えば単独運転発生から0.2s以内に)高速に停止することが可能となる。
また、PCS100であれば、過去の系統周波数(系統周期)を基準にCPU割り込み時間(目標波形の間隔)を変化させることができるので、系統周波数(周期)が変化しても、歪み量を相対的に低減させることが可能となる。
上記の能動的単独運転検出方式により、多数の太陽光発電システムが共通の商用電力系統に連系される場合であっても、各PCSの単独運転検出機能が相互に干渉せず、保安上の要件を満たすことができる環境を構築することができるので、住宅などへの太陽光発電システム導入の円滑な普及促進を図ることが可能となる。
<適用例(第3実施例)>
図21は、上記の能動的単独運転検出方式をPCS(インバータ装置)に適用した例を示すブロック図である。本適用例において、需要家Hには、太陽光発電システムXと負荷装置Yが設置されている。太陽光発電システムXは、分散型電源の一例であり、PCSX1とPVパネルX2を有する。
PCSX1は、インバータ装置の一例であり、系統連系インバータ部X11を含むほかに、能動的単独運転検出方式を実装するための手段として、単独運転防止機能部X12と単独運転防止助長部X13を含む。
系統連系インバータ部X11は、PVパネルX2から供給される直流電力を交流電力に変換して交流電力系統PWに系統連系させる。
単独運転防止機能部X12は、系統周波数や系統電圧の変化から単独運転を検出して系統連系インバータX11を停止させる機能ブロックであり、例えば、図14の単独運転検出部140がこれに相当する。
周波数シフト助長部X13は、単独運転防止機能を助長するように系統連系インバータ部X11を制御する機能ブロックである。より具体的に述べると、周波数シフト助長部X13は、系統周波数を検出してその周波数変化を助長する方向へ系統連系インバータ部X11の動作周波数をフィードバック制御する機能ブロックであり、例えば、図14の系統周波数計測部110、周波数フィードバック部(無効電力注入部)120、無効電力ステップ注入部130、及び、電流制御処理部150がこれに相当する。
このように、本適用例のPCSX1であれば、単独運転状態に陥ったPCSX1を遅滞なく高速に停止することが可能となる。
図22は、能動的単独運転検出方式を負荷装置に適用した例を示すブロック図である。本適用例においても、需要家Hには、太陽光発電システムXと負荷装置Yが設置されている。ただし、図21と異なり、PCSX1は、系統連系インバータ部X11と単独運転防止機能部X12を含んでいれば足り、周波数シフト助長部X13は必須の構成要素とされていない。
一方、負荷装置Yは、AC/DCコンバータ部Y11と負荷Y12を含むほかに、能動的単独運転検出方式を実装するための手段として、周波数シフト助長部Y13を含んでいる。
AC/DCコンバータ部Y11は、交流電力を直流電力に変換して負荷Y12に出力する電力変換部である。なお、負荷装置Yは、負荷Y12を内蔵する構成としてもよいし、負荷Y12が外付けされる構成(負荷装置YがいわゆるACアダプタとして提供される構成)としてもよい。
周波数シフト助長部Y13は、交流電力系統PWに系統連系された太陽光発電システムXの単独運転防止機能を助長するように、AC/DCコンバータ部Y11を制御する機能ブロックである。より具体的に述べると、周波数シフト助長部Y13は、系統周波数を検出してその周波数シフトを助長する方向へAC/DCコンバータ部Y11の動作周波数をフィードバック制御する機能ブロックであり、基本的には、図14の系統周波数計測部110、周波数フィードバック部(無効電力注入部)120、無効電力ステップ注入部130、及び、電流制御処理部150がこれに相当する。
なお、これまでは、電力供給側における周波数シフト助長機能の説明を行ってきたが、本適用例では、当該周波数シフト助長機能が負荷装置Yに搭載されている。電力供給側で無効電力を注入することと、負荷側で自身の力率を変化させることは、ほぼ同義であると言えるが、見る方向が異なることにより適切な表現が変わってくる。従って、負荷装置Yの周波数シフト助長部Y13について詳細な説明を行う際には、先の説明で用いた文言を一部読み替えることが望ましい。以下、具体的に説明する。
先にも述べたように、周波数シフト助長部Y13は、基本的には、図14の系統周波数計測部110、周波数フィードバック部120、無効電力ステップ注入部130、及び、電流制御処理部150を含む。ただし、これらの構成要素のうち、周波数フィードバック部120については、系統周波数または系統周波数の偏差から「無効電力の注入量」を演算して周波数シフトを促す回路ブロックではなく、系統周波数または系統周波数の偏差から「変化させる力率の量」を演算して周波数シフトを促す回路ブロックであると読み替えて理解すればよい。また、無効電力ステップ注入部130についても、系統周波数の偏差が微小であるときに周波数シフトを促すために「無効電力をステップ注入」するのではなく「力率をステップ状に変化」させる「力率ステップ変化部」として理解すればよい。
また、周波数フィードバック部120に含まれる無効電力注入量算出部124や、無効電力ステップ注入部130に含まれるステップ注入発生条件判定部135及びステップ注入量算出部136についても、基本的に上記と同様の読み替えを行うことができる。
より具体的に述べると、無効電力注入量算出部124については、周波数偏差に応じて「無効電力の注入量」を算出するのではなく「変化させる力率の量」を算出する「力率変化量算出部」として読み替えればよい。また、ステップ注入発生条件判定部135については、基本波電圧算出部133及び高調波電圧算出部134の出力に応じて「ステップ注入発生条件」が満足されたか否かを判定するのではなく「力率を変化させる条件」が満足されたか否かを判定する「力率ステップ変化条件判定部」として理解すればよい。また、ステップ注入量算出部136については、上記の条件判定出力に応じて「無効電力のステップ注入量」を算出するのではなく「変化させる力率の量」を算出する「ステップ変化量算出部」として理解すればよい。
このように、単独運転防止機能部X12を備えた太陽光発電システムXと、周波数シフト助長部Y13を備えた負荷装置Yとを組み合わせることにより、需要家Hにおけるシステム全体として、先述の能動的単独運転検出方式が適用された単独運転防止助長システムを構築することが可能となる。
特に、AC/DC変換部Y11が力率改善機能や高調波対応機能を具備している場合には、負荷装置Yが能動的な定電力負荷として働き、太陽光発電システムXの単独運転防止機能を阻害するおそれがある。このような事情を鑑みると、太陽光発電システムXの単独運転を確実かつ高速に防止するためには、負荷装置Y側にも周波数シフト助長部Y13を設けておくことが望ましいと言える。
図23は、能動的単独運転検出方式を蓄電対応PCS(双方向インバータ装置)に適用した例を示すブロック図である。本適用例において、需要家H1には、太陽光発電システムXと負荷装置Y1が設置されている。ただし、図21と異なり、PCSX1は、系統連系インバータ部X11と単独運転防止機能部X12を含んでいれば足り、周波数シフト助長部X13は必須の構成要素とされていない。
一方、需要家H2には、蓄電機能を備えた太陽光発電システムZと、負荷装置Y2が設置されている。太陽光発電システムZは、蓄電対応PCSZ1と、PVパネルZ2と、蓄電池Z3とを有する。なお、太陽光発電システムZは、交流電力系統PWへの売電時(PVパネルZ2の発電時)には、交流電力系統PWに系統連系された分散型電源の一つとして機能するが、交流電力系統PWからの買電時(蓄電池Z3の充電時)には、交流電力の供給を受けて動作する負荷装置として振る舞う。
蓄電対応PCSZ1は、双方向インバータ装置の一例であり、双方向インバータ部Z11を含むほかに、能動的単独運転検出方式を実装するための手段として、単独運転防止機能部Z12と周波数シフト助長部Z13を含む。
双方向インバータ部Z11は、交流電力系統PWからの買電時には、交流電力を直流電力に変換して蓄電池Z3に出力する一方、交流電力系統PWへの売電時には、PVパネルZ2または蓄電池Z3から入力される直流電力を交流電力に変換して系統連系させる。
単独運転防止機能部Z12は、系統周波数や系統電圧の変化から単独運転を検出して双方向インバータZ11を停止させる機能ブロックであり、例えば、図14の単独運転検出部140がこれに相当する。
周波数シフト助長部Z13は、PCSX1ないし蓄電対応PCSZ1の単独運転防止機能を助長するように双方向インバータ部Z11を制御する機能ブロックである。より具体的に述べると、周波数シフト助長部Z13は、系統周波数を検出してその周波数シフトを助長する方向へ双方向インバータ部Z11の動作周波数をフィードバック制御する機能ブロックであり、例えば、図14の系統周波数計測部110、周波数フィードバック部(無効電力注入部)120、無効電力ステップ注入部130、及び、電流制御処理部150がこれに相当する。なお、周波数シフト助長部Z13の構成や動作を理解する上では、先と同様、図14の説明における「無効電力の注入」を「力率の変化」に読み替えるとよい。
このように、本適用例の蓄電対応PCSZ1であれば、これが搭載される太陽光発電システムZの単独運転防止だけでなく、共通の交流電力系統PWに系統連系された他の太陽光発電システムXの単独運転防止についても、これを確実ならしめることが可能となる。
特に、蓄電対応PCSZ1の買電動作(蓄電池Z3の充電動作)は、負荷としての容量が大きいことを鑑みると、蓄電機能を備えた太陽光発電システムZには、単独運転防止助長部Z13を設けておくことが望ましいと言える。
なお、図21〜図23では、それぞれ、周波数シフト助長機能を備えたPCS、負荷装置、及び、双方向インバータ装置を例に挙げて説明を行ったが、上記の周波数シフト助長機能は、その他の電力変換器(ノートPCに用いられるACアダプタや、蓄電池を充電するパワーコンディショナなど)にも適用することが可能である。
<その他の変形例>
なお、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。