以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、すべての図面において、同様の構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。なお、以下の説明において上下方向を規定する場合があるが、これは臓器固定装置の構成要素の相対関係を便宜的に説明するものであって、臓器固定装置の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
<第一実施形態>
図1から図22を用いて本発明の第一実施形態の臓器固定装置10を説明する。はじめに本実施形態の概要について説明する。
図1から図4に示すように、臓器固定装置10は、収容部(穿刺針130の内腔)、送出機構(押し棒230が装着されたプランジャ200)、送出規制部(ステム220の膨出部228)、規制解除部(押しボタン302)および解除抑止部(ステム220の突起部222)を備える。本実施形態の臓器固定装置10は、図19から図22に示すように、複数の固定具400(401、402)の係止部410(410a、410b)を被験者の臓器の内部に順次送出する、いわゆる連発式である。
図12に示すように、収容部(穿刺針130の内腔)は、臓器を固定する第1の係止部410aおよび第2の係止部410bを収容する。
送出機構(押し棒230を備えるプランジャ200)は、第1の係止部410a、第2の係止部410bの順に収容部(穿刺針130)から係止部410を順次送出する。以下、押し棒230を備えるプランジャ200を単にプランジャ200という場合がある。
送出規制部(ステム220の膨出部228)は、送出機構(プランジャ200)が第2の係止部410bを送出することを規制しておく手段である(図16(b)参照)。規制解除部(押しボタン302)は、送出規制部(膨出部228)による規制を解除操作する手段である(図17参照)。
解除抑止部(ステム220の突起部222)は、送出機構(プランジャ200)が第1の係止部410aを送出した状態となるまで、規制解除部(押しボタン302)による解除操作を抑止しておく手段である(図15参照)。すなわち、送出機構(プランジャ200)が第2の係止部410bを送出することを送出規制部(膨出部228)が規制し、解除抑止部(突起部222)は、当該規制を解除しようとする操作を抑止する。
本実施形態の臓器固定装置10によれば、図18および図20に示すようにプランジャ200の下端に装着された押し棒230が第1の係止部410aを穿刺針130から送出した状態で、ステム220の膨出部228が押しボタン302の狭幅部324の上面に係止する(図16(b)参照)。このため、プランジャ200の押し下げ動作は解除可能に一旦規制される。かかる規制は、図17に示すように押しボタン302(規制解除部)を操作して狭幅部324と膨出部228との係止を解消することによって解除される。このとき、押しボタン302による解除操作は、第1の係止部410aが送出される前の初期状態では、ステム220の突起部222(解除抑止部)によって抑止されている。これにより、第1の係止部410aが送出される前に過って押しボタン302(規制解除部)を解除操作してしまうことがなく、すなわちプランジャ200を押し下げる一連の動作によって第1の係止部410aに続けて第2の係止部410bが一度に送出されることがない。よって、臓器固定装置10によれば、プランジャ200を十分に押し下げ(場合により半押し状態を経てから十分に押し下げて)、第1の係止部410aを確実に送出することができるとともに、第2の係止部410bが過って連続的に送出されることがない。これにより、本実施形態の臓器固定装置10は連発式を実現しつつも、図21に示すように体腔壁610と胃壁620とを固定する所定の患部あたり1個の固定具400を確実に留置することができる。
次に、臓器固定装置10について詳細に説明する。
図1(a)から図1(d)は臓器固定装置10を示す図である。図1(a)は左側面図、図1(b)は正面図、図1(c)は右側面図、図1(d)は背面図である。図1各図には、臓器固定装置10の長手方向に沿って延在する4つの側面A、B、C、Dを示す。
臓器固定装置10は、プランジャ200、このプランジャ200を収容する筐体100、および押しボタン301、302を備えている。また、筐体100の図中下端には穿刺針130が保持されている。穿刺針130の下端には開口132が形成されている。穿刺針130には、開口132にて終端するスリット134が形成されている。スリット134は穿刺針130に沿って延在し、その下端が開口132に接続されている。スリット134の機能については、図12を参照して後述する。
臓器固定装置10は、係止部410の収容部(内腔)が内部に形成された穿刺針130を備えている。送出機構は、穿刺針130に摺動可能に挿入された押し棒230と、この押し棒230の基端側に設けられて押し棒230を穿刺針130に対して前進(下降)させるプランジャ200と、を含む。言い換えると、プランジャ200は、係止部410を穿刺針130から送出するための送出機構を押し棒230とともに構成する。
プランジャ200は、上端の押し込み部210およびステム220を有する。ステム220は、図中下端側が筐体100の内部に入り込んでいる。押し込み部210は、ステム220の図中上端に結合され、平坦な押圧面212を有する。押圧面212は、ステム220の長手方向に対して略直交しており、ステム220を筐体100の内部に向かって押す場合の押圧力を受ける。
押しボタン301、302は、送出機構(プランジャ200)の作動を解除可能に規制する手段である。押しボタン301を操作することで送出機構(プランジャ200)の初期動作が可能になり、第1の係止部410aの送出が可能になる。押しボタン302を操作することで送出機構(プランジャ200)の更なる動作が可能になり、第2の係止部410bの送出が可能になる。
すなわち、本実施形態の規制解除部(押しボタン302)は、筐体100に対して押し込み可能に取付けられた押しボタンである。
押しボタン301、302は、筐体100に図中水平に形成されたボタンホール110に収容されている。臓器固定装置10の初期状態(出荷状態)において、押しボタン301、302は、筐体100のひとつの側面C(右側面)から図中水平に突出している。
なお、以降の説明においては、便宜上、図1における上下方向を臓器固定装置10における上下方向と記載する。また、図1における上下方向の寸法を高さと記載する。また、図1における水平方向を臓器固定装置10における水平方向と記載する。
図2(a)から図2(g)は筐体100の形状を示す図である。図2(a)は左側面図、図2(b)は正面図、図2(c)は右側面図、図2(d)は背面図である。図2(e)は平面図であり上端面Tが視認される。図2(f)は底面図であり下端面Sが視認される。図2(g)は図2(b)のP−P線断面図である。なお、図2各図にいう正面、左右側面および背面の方向は、図1各図におけるそれぞれの方向に対応している。
筐体100は、概ね矩形の水平断面形状を有する。臓器固定装置10および筐体100の水平断面を横断面といい、これらの垂直断面を縦断面という場合がある。筐体100の外面には、4つの側面A、B、C、Dが形成されている。筐体100は、長手方向に貫通する挿通穴180を内部に有する。筐体100は、全体として矩形筒状をなす。
挿通穴180は、少なくとも筐体100の上端面Tにおいて、一部(左側面側)がDカットされた略円形の形状を有する。また、挿通穴180は、図2(g)に示すように、筐体100の高さ方向中程においても、Dカットされた略円形の形状を有する。一方、筐体100の下端面側において、挿通穴180は径を減じて、保持穴170を形成している。保持穴170には、穿刺針130が挿入および保持されている。
筐体100は、側面Aから側面Cに向かって図中水平に貫通する一対のボタンホール110を有する。ボタンホール110には、押しボタン301、302が収容され、押し込み操作された押しボタン301、302を水平に案内する。
また、ボタンホール110は、図2(c)に示すように右側面側の内面に段差112を有する。これにより、ボタンホール110の開口面積は、側面Cにおいて、側面Aよりも広い。このようなボタンホール110の形状と、後述する押しボタン301、302の形状とにより、押しボタン301、302は、押し込み操作されても側面Cから反対側の側面Aの方向に抜け落ちることはない。
また、筐体100は、側面Aおよび側面Cの下部に、筐体100の表面から突出した水平な複数のリブ120を有する。リブ120は、臓器固定装置10を使用する場合に、滑り止めとして機能する。なお、図中の側面Bおよび側面Dに現れるように、リブ120が配された部分は、筐体100の幅が狭くなっている。これにより、ユーザが筐体100を保持しやすくなっている。
更に、筐体100は、側面Bの下部を貫通する糸道140を有する。糸道140は、筐体100の長手方向に配された長穴をなす。筐体100は、側面Dに、複数の係止穴161、162、163を有する。係止穴161、162、163は、筐体100の長手方向の一直線上に配置される。
図3は、筐体100を右側面からみた縦断面図である。図3において、筐体100の図中下端には穿刺針130が取り付けられている。
筐体100において、糸道140は、筐体100の内外を連通する。これにより、図14に示すように、縫合糸422を筐体100の内側から、糸道140を通じて外側に取り出すことができる。
係止穴161、162、163は、筐体100の内部まで貫通している。係止穴161、162、163の各々は、筐体100の内面においても、筐体の表面と略同じ形状を有している。
穿刺針130は、筐体100の保持穴170に上端を圧入して、筐体100から保持される。保持穴170は、筐体100の挿通穴180に連通する。穿刺針130は、下端の開口132が上端まで連通する内腔を有している。よって、筐体100と穿刺針130との組立体も、上端から下端まで連続した貫通穴を有する筒状になる。
図4(a)から図4(f)はプランジャ200の形状を示す図である。図4(a)は右側面図、図4(b)は背面図、図4(c)は左側面図、図4(d)は正面図、図4(e)は平面図、図4(f)は底面図である。図4各図にいう正面、左右側面、背面、平面および底面の方向は、図2各図におけるそれぞれの方向に対応している。図4各図においては、プランジャ200の側面a、b、c、dに加えて、上面tおよび下面sを示す。プランジャ200の側面a、b、c、dの向きは、筐体100の側面A、B、C、Dに対応する。
図4(e)に示すように、プランジャ200の押し込み部210において、押圧面212(上面t)は長方形をなす。よって、長方形の長辺と交差する方向、すなわち短辺に沿って指を当てて押すことにより、押し込み部210の実効的な幅が広くなり、指が滑り落ちることを抑制できる。
また、短辺方向については、筐体100の幅と略同じであるため、多数の臓器固定装置10を梱包あるいは保管する場合に、占有空間の増加を抑制できる。更に、図4(f)に示すように、ステム220は、保持穴226を下面sに有する。
ステム220の中間部には、図4(a)および図4(c)に示すように細幅の細径部225が形成されている。細径部225の下方には、側面視にて細径部225よりも太幅の下端突部229が形成されている。細径部225の上方には、側面視にて細径部225よりも太幅の膨出部228が細径部225と連続して形成されている。
ステム220は、側面dに、突起部222およびラッチ224を有する。突起部222は、ステム220の細径部225において側方に突出して形成されている。突起部222は、ステム220に対して固定されており、外部から負荷がかかった場合もステム220に対して変位しない。
ラッチ224も、ステム220の側方に突出している。ただし、ラッチ224は、板ばね状の部分を介してステム220に結合されており、側方から押された場合は、ステム220の中心に向かって変位する。
また、ラッチ224の上面は略水平に形成され、下面は傾斜している。よって、ラッチ224は、上方から負荷がかかるように当接する部位に対しては係合するが、下方から負荷がかかるように当接した部位に対しては係合せず、ラッチ224がステム220の中心に向かって退避することで当該部位を通過させる。
ラッチ224は、図4(f)に示すように、Dカットされたステム220の孤状部分の中心に配置されている。ステム220の側面aは、Dカットされた平坦面である。次に、図5を参照して、ステム220の水平断面形状について説明する。
図5(a)はプランジャ200の左側面図であり、図4(c)に対応している。図5(b)から図5(g)はステム220の水平断面形状を示す横断面図である。図5(b)は図5(a)のI−I線断面図、図5(c)は図5(a)のII−II線断面図、図5(d)は図5(a)のIII−III線断面図、図5(e)は図5(a)のIV−IV線断面図、図5(f)は図5(a)のV−V線断面図、図5(g)は図5(a)のVI−VI線断面図である。
図5(b)に示すように、ステム220の上部の膨出部228は、筐体100の挿通穴180の形状と略同じ、Dカットされた略円形で広い幅WWを有する形状をなす。その直下の細径部225では、図5(c)に示すように、図中水平方向に狭い幅WNを有する略矩形状になる。突起部222は、図5(d)に示すように、細径部225から側方に突出して形成されている。
更に、ステム220は、図5(e)に示すように、突起部222よりも更に少し下がった位置から、再び広い幅WWを有する太幅の略円形になる。下端突部229の断面形状も図5(e)で示される。ステム220の更に下方では、図5(f)に示すように、ラッチ224を設けられて一部が切り欠かれ、かつ全体として太幅の略円形の形状を維持する。更に、ステム220の下端227は、図5(g)に示すように、再び、狭い幅WNを有する略矩形状になる。なお、ステム220の下端227には、図7を参照して説明する押し棒230を保持する保持穴226が、ステム220の長手方向に穿設されている。
図6は、プランジャ200を背面上方からみた斜視図である。
プランジャ200の下端面には、保持穴226の下端が開口している。保持穴226は、ステム220の下端面に対して偏った位置に配される。上述のように、Dカットされた水平断面形状を有するステム220が押し込み部210に対してオフセットして配されているので、保持穴226は、押し込み部210の中心と重なる位置にある。
図7は、押し棒230が装着されたプランジャ200の先端の部分断面図である。プランジャ200の下端に設けられた保持穴226には、穿刺針130の内径と略等しい外径を有する押し棒230の上端が圧入により保持されている。保持穴226は、予め定められた深さで行き止まりに形成されているので、下方から突き上げられた場合も、押し棒230がプランジャ200に対して変位することはない。
図8は、押しボタン301(302)の形状を示す図である。図8(a)は正面図、図8(b)は左側面図、図8(c)は平面図、図8(d)は右側面図、図8(e)は図8(c)のE−E線断面図である。図8各図にいう正面、左右側面および平面の方向は、図2および図4各図におけるそれぞれの方向に対応している。図9は、押しボタン301(302)の斜視図である。押しボタン301、302は、単独の状態では互いに同じ形状を有する。よって、押しボタン301に関する下記の説明は、押しボタン302にも共通する。
押しボタン301は、全体として直方体の形状を有し、長手方向の一部に段差312を有する。この段差312により、押しボタン301の長手方向の一端(図9の右端)に対して、他端(同、左端)は薄くなる。ここで、図中右側に位置する、押しボタン301において厚い方の端面(右側面側の端面)が、臓器固定装置10において筐体100から突出する押し込み面310となる(図14参照)。
段差312は、筐体100のボタンホール110において段差112(図2(c)参照)に当接する高さを有する。これにより、筐体100のボタンホール110に挿入された押しボタン301、302の押し込み面310を押して押しボタン301、302を筐体100内に向かって押し込んだ場合、押しボタン301、302の段差312がボタンホール110の段差112に当接する。これにより、押しボタン301、302の変位は規制され、押しボタン301、302が筐体100の側面Aの側に抜け落ちることが防止される。
押しボタン301は、更に、厚さ方向に貫通する挿通穴320を有する。挿通穴320は、押し込み面310に近い側から順に、円形部322、狭幅部324および方形部326を含む。円形部322は、プランジャ200のステム220において最も広い幅WWを有する膨出部228の略円形の水平断面と相補的な形状の開口を有する。よって、臓器固定装置10を組み立てる場合は、ステム220を円形部322に挿通することができる。
狭幅部324は、円形部322よりも幅が狭く、図5(c)に示したステム220の細径部225の幅WNを通過させ、それよりも幅広の膨出部228や突起部222は通過させない。方形部326は、突起部222の突出量に相当する分、細径部225の幅WNよりも両端で広い幅WLを有する(図8(c)参照)。
なお、方形部326における拡幅部分は、挿通穴320の両側方に伸びている。これにより、押しボタン301は、長手方向に延在する中心軸に対して対象な形状を有し、裏返しても同じ形状と機能を有する。よって、臓器固定装置10を製造する場合に、押しボタン301の表裏を気にしなくてもよい。
図10は、臓器固定装置10を右側面からみた部分断面図である。
臓器固定装置10は、筐体100のボタンホール110に、それぞれ押しボタン301、302を挿入した後、筐体100の上方からプランジャ200を挿入して組み立てられる。完成した臓器固定装置10は、押しボタン301、302の押し込み面310側が、側面Cから突出した状態になる。
また、臓器固定装置10においては、筐体100に穿刺針130が、プランジャ200には押し棒230がそれぞれ保持されており、押し棒230の下端は、上端側から穿刺針130の内部に挿入される。
なお、穿刺針130の内部には、臓器固定装置10の組み立てに先立って、固定具400の係止部410(第1の係止部410a、第2の係止部410b)が挿入されている。よって、穿刺針130に挿入された押し棒230の下端は、係止部410の上端に当接する。
上記のような初期状態(出荷状態)の臓器固定装置10において、プランジャ200のラッチ224は、最も上方に位置する係止穴161に入り込んで、プランジャ200が上方に変位することを防止している。よって、いったん筐体100に挿入されたプランジャ200は、筐体100から抜け出ないように規制されている。
初期状態(出荷状態)の臓器固定装置10において、下側の押しボタン301は、プランジャ200における、ステム220の幅狭の下端(図5(g)参照)と同じ高さに位置する。また、上側の押しボタン302は、プランジャ200の突起部222(図5(d)参照)と同じ高さに位置する。
本実施形態の臓器固定装置10により送出される係止部410は棒状をなし、いわゆるTバーと呼称される固定具400の一部である。ただし、本発明はこれに限られない。係止部は、臓器の一部または全部を固定するものであるかぎり種々のものを用いることができる。例えば、Oリングのように臓器を結紮して固定する係止部を臓器固定装置10により送出してもよい。
図11は、臓器固定装置10に装填される固定具400の形状を単体で示す図である。固定具400は、係止部410および縫合糸420を有する。係止部410は、ステンレス等、曲げ剛性の高い材料により形成される。これに対して、縫合糸420は、ナイロン等の柔軟な材料により形成される。
縫合糸420の先端は、係止部410に固定されている。具体的には、縫合糸420の先端は係止部410の内部に挿入され、係止部410の一部に形成されたかしめ部412において、係止部410に対して連結されている。よって、臓器固定装置10が係止部410を送り出した場合、係止部410に連結された縫合糸420の一端(下端)は、係止部410に引かれて、係止部410と共に被験者の体内に引き込まれる。そして、係止部410を被験者の臓器に送り込んだ状態で縫合糸420の他端(上端)を引きあげることで、係止部410は、縫合糸420から脱落することなく、被験者の臓器を引き上げる。
図12は、穿刺針130における固定具401、402の装填状態を模式的に示す断面図である。説明のため、第1の係止部410aおよび第2の係止部410bの断面にはハッチングを付していない。穿刺針130は、臓器固定装置10において、固定具401、402の収容部をなしている。第1の係止部410aおよび第2の係止部410bは穿刺針130の内腔に収容され、下方の第1の係止部410aに連結された縫合糸421はスリット134を通じて穿刺針130から引き出されている。スリット134は、縫合糸421を挟んで保持することにより、穿刺針130の内径よりも細い第1の係止部410aが穿刺針130から抜け落ちることを防止する。上方の第2の係止部410bに連結された縫合糸422は、穿刺針130の内腔を通じて上方に引き出されている。具体的には、縫合糸422は押し棒230や第2の係止部410bと穿刺針130との間隙を通じて上方に引き出されている。これにより、縫合糸422と穿刺針130との摩擦力が第2の係止部410bに作用するので、下側に位置する第1の係止部410aが送出された後も、第2の係止部410bが穿刺針130から抜け落ちることが抑制される。
臓器固定装置10においては、穿刺針130に、少なくとも2本の係止部410(第1の係止部410aおよび第2の係止部410b)が収容されている。更に、その上方に押し棒230の下端が位置する。第1の係止部410aおよび第2の係止部410bのそれぞれは、図11に示した係止部410と同じ構造と形状を有する。穿刺針130に収容された第1の係止部410aおよび第2の係止部410bは、押し棒230が下降することにより、開口132からこの順番に送りだされる。
図13は、臓器固定装置10の先端部を右側面からみた部分断面図であり、縫合糸421、422の上端部の引き回し状態を示す模式図である。
臓器固定装置10において、穿刺針130のスリット134から取り出された縫合糸421は、穿刺針130および筐体100の外側面に沿って上方に導かれ、筐体100を側面から締めつける熱収縮チューブ500により、筐体100に沿って保持される。一方、穿刺針130の内部を通じて取り出された縫合糸422は、筐体100の内部から、糸道140を通じて筐体100の外に取り出され、筐体100の側面に沿って上方に導かれて、縫合糸421と共通の熱収縮チューブ500により筐体100に沿って保持される。
このように、2本の固定具401、402からそれぞれ取り出された2本の縫合糸421、422は、互いに異なる経路を通じて筐体100の外側に取り出される。また、縫合糸421、422の端部は、熱収縮チューブ500により、筐体100の外面に沿って保持される。よって、第1の係止部410aおよび第2の係止部410bを1本ずつ穿刺針130から送出した場合に、縫合糸421、422が互いに絡まり合うことが防止される。
図14は臓器固定装置10の初期状態における正面図であり、筐体100の外部における縫合糸421、422の引き回し状態を示す模式図である。
図15は、臓器固定装置10の横断面図であり、初期状態の臓器固定装置10における上側の押しボタン302の状態を示す図である。同図を用いて臓器固定装置10における押しボタン302の機能を説明する。同図は、図10に示す初期状態(出荷状態)の臓器固定装置10において、矢印Qにより示す平面に位置する押しボタン302を上から見た様子を示す。
初期状態の臓器固定装置10において、図示の押しボタン302は、プランジャ200の突起部222と同じ高さに位置する。また、押しボタン302は、筐体100の側面Cから突出した状態にある。突起部222は、押しボタン302の挿通穴320における方形部326と係合している。これにより、押しボタン302が、筐体100の内側に向かって押し込まれることが規制される。このように、初期状態においては、上側の押しボタン302は、押し込みを規制されている。
なお、プランジャ200のステム220において、突起部222よりも上方には、狭い幅WNを有する細径部225が続く。よって、図示の押しボタン302は、プランジャ200が筐体100内を下方に変位することは妨げない。
図16(a)、(b)は、臓器固定装置10における押しボタン301、302の機能を説明する模式的断面図である。図16(a)は、図10に示した初期状態(出荷状態)の臓器固定装置10における第一規制解除部である押しボタン301の説明図であり、図10の矢印Rにより示す平面に位置する押しボタン301を上から見た様子を示す。図16(b)は、送出機構(プランジャ200)が第1の係止部410aを送出した状態の臓器固定装置10における規制解除部(押しボタン302)の説明図であり、図10の矢印Qにより示す平面に位置する押しボタン302を上から見た様子を示す。
臓器固定装置10の初期状態においては、押しボタン301の挿通穴320の内部にステム220の幅狭のWWを有する下端227(図6参照)が位置している。そして、押しボタン301の上面に、ステム220の下端突部229(図6参照)が当接している。押しボタン301は、筐体100の側面Cから突出した状態にある。このため、押しボタン301の挿通穴320における狭幅部324は、プランジャ200において広い幅WWを有する下端突部229と重なる位置にある。図16(a)では、説明のため、狭幅部324の上部に位置する下端突部229を破線で図示してある。
よって、プランジャ200が下方に付勢された場合、ステム220の下端突部229が押しボタン301の上面に当接して、プランジャ200の下方移動を規制する。これにより、第1の係止部410aの送出が規制される。このように、押し込まれていない押しボタン301およびステム220の下端突部229は、初期状態の臓器固定装置10においてプランジャ200の押し込みを規制する規制部材として機能する。そして、押しボタン301を外部から押し込み操作することにより、かかる規制が解除される。
すなわち、本実施形態の臓器固定装置10は、第一送出規制部(ステム220の下端突部229)と、第一規制解除部(押しボタン301)と、を更に備える。
第一送出規制部であるステム220の下端突部229は、送出機構(プランジャ200)が第1の係止部410aを送出することを規制しておく手段である。第一規制解除部(押しボタン301)は、第一送出規制部(ステム220の下端突部229)による送出機構(プランジャ200)の規制を解除操作する手段である。
上述した送出規制部(ステム220の膨出部228)は、送出機構(プランジャ200)が第2の係止部410bを送出することを規制しておく手段であり、以下「第二送出規制部」という場合がある。また、規制解除部(押しボタン302)は、第二送出規制部(膨出部228)による送出機構(プランジャ200)の規制を解除操作する手段であり、以下「第二規制解除部」という場合がある。図16(b)では、説明のため、狭幅部324の上部に位置する膨出部228(送出規制部)を破線で図示してある。膨出部228は、規制解除部(押しボタン302)の未操作状態で、押しボタン302の狭幅部324と係止することによりプランジャ200(送出機構)の押し下げを規制している。言い換えると、上側の押しボタン302の狭幅部324は、ステム220の膨出部228と相俟って、プランジャ200が第2の係止部410bを送出することを規制しておく第二送出規制部を構成する。
本実施形態の臓器固定装置10によれば、初期状態においてプランジャ200のステム220を押し下げる操作が第一送出規制部により規制される。このため、穿刺針130に係止部410を収容して被験者の体腔壁610および胃壁620に穿刺針130を穿刺する工程において、過ってプランジャ200を操作して係止部410を送出してしまうことがない。
図17(a)は第一規制解除部である押しボタン301を解除操作した状態を示す説明図であり、図16(a)と同じ視点から、押しボタン301が押し込まれた状態を示す図である。図示のように、図中の白抜き矢印の方向に押し込まれた押しボタン301は、図中左方に変位する。
これにより、押しボタン301の押し込み面310は、筐体100の側面Cと同一平面またはそれよりも筐体100の内部に移動する。
図2および図15から図17に示すように、筐体100のボタンホール110の内面には、筐体100の長手方向に延在する突条182が押しボタン301、302に向かって突出形成されている。押しボタン301、302には、突条182と相補的な形状をなす2条の凹溝328、329が形成されている。図15および図16(a)に示す初期状態において、突条182は押しボタン301、302の凹溝328と係合している。これにより、押しボタン301、302の押し込みがある程度抑制されており、不測の押し込み操作が防止されている。
図17(a)に示すように押しボタン301の押し込み面310を押し込むと、突条182は凹溝328から離脱し、右側の凹溝329と係合する。これによりユーザの手指にクリック感が与えられて押しボタン301が正常に押し込まれたことが知覚されるとともに、押し込まれた押しボタン301が図16(a)のように元に戻ることが防止される。
図17(a)のように押しボタン301が押し込まれると、挿通穴320における円形部322が、ステム220の広い幅WWを有する下端突部229と重なる位置に移動し、押しボタン301によるプランジャ200の変位の規制が解除される。これにより、プランジャ200を押し下げて、ステム220の下端突部229、ラッチ224、細径部225および膨出部228を押しボタン301に対して通過させることが可能になる。
初期状態の臓器固定装置10においては、図15に示すように挿通穴320の方形部326にステム220の突起部222(解除抑止部)が収容されている。
すなわち、解除抑止部(突起部222)は送出機構(プランジャ200のステム220)に設けられている。これにより部品点数の削減が図られるとともに、送出機構(プランジャ200)の作動に連動して確実に解除抑止部(突起部222)による抑止を解除することができる。
解除抑止部(ステム220の突起部222)は、プランジャ200に設けられているとともに、初期状態(図10参照)で規制解除部(押しボタン302)に係止している。
突起部222の基端側には図4から図6に示すように細径部225が連接されており、この細径部225は初期状態の挿通穴320を通過可能である。このため、上側の押しボタン302は、初期状態におけるプランジャ200の押し込みを妨げない。よって、下側の押しボタン301(第一規制解除部)が押し込まれると、送出機構(プランジャ200)を筐体100の内部に向かって押し込むことにより第1の係止部410aを送出することが可能な状態になる。すなわち、下側の押しボタン301の狭幅部324は、ステム220の下端突部229と相俟って、プランジャ200が第1の係止部410aを送出することを規制しておく第一送出規制部を構成する。
ただし、押しボタン301を押し込み操作しても、ステム220の突起部222(解除抑止部)が押しボタン302の方形部326の内部に位置している間は、図15に示すように押しボタン302の押し込み操作は規制されている。そして、押しボタン301を操作してプランジャ200を押し下げ可能とし、更にプランジャ200を実際に押し下げて突起部222が押しボタン302よりも下方に移動すると、押しボタン302を解除操作することが可能になる。
解除抑止部(突起部222)は、送出機構(プランジャ200)が第1の係止部410aを送出した状態となることにより、規制解除部(押しボタン302)の抑止を解除する。これにより、規制解除部(押しボタン302)による送出規制部(ステム220の膨出部228)の解除操作が可能となる。
図18は、送出機構(プランジャ200)が第1の係止部410a(図13参照)を送出した状態を示す臓器固定装置10の縦断面図である。図18は、図10に示した初期状態から、下側の押しボタン301(第一規制解除部)を押し込んで送出機構(プランジャ200)の規制を解除した後、プランジャ200の押し込み部210を押して、プランジャ200を筐体100に押し込んだ状態を示す。
すなわち、第1の係止部410aが送出される前の初期状態(図10参照)で、送出機構(プランジャ200におけるステム220の突起部222)は規制解除部(押しボタン302)に係止している。これにより、規制解除部(押しボタン302)による解除操作が抑止されている。そして、送出機構(プランジャ200)が第1の係止部410aを送出した状態(図18参照)になることにより、送出機構(プランジャ200)の係止が解除されて規制解除部(押しボタン302)による解除操作が可能になる。
言い換えると、本実施形態の解除抑止部(突起部222)は、第一規制解除部(押しボタン301)が第一送出規制部(ステム220の下端突部229)による規制を解除操作してから送出機構(プランジャ200)が第1の係止部410aを送出する状態に至るまでの少なくとも一部に亘って、第二規制解除部(押しボタン302)による解除操作を抑止する。
本実施形態の臓器固定装置10によれば、第一規制解除部(押しボタン301)を操作する前に、または第一規制解除部(押しボタン301)と同時に、第二規制解除部(押しボタン302)を過って操作してしまうことが防止されている。
図17(a)に示したように押しボタン301が押し込まれたことにより、プランジャ200の下端突部229に対する規制が解除される。よって、図18のようにプランジャ200の押し込み部210を押し下げてプランジャ200を筐体100の中に押し込むことができる。
押し込まれたプランジャ200におけるステム220の下端は、下側の押しボタン301を貫通して下方に変位するので、プランジャ200の下端に固定された押し棒230は、穿刺針130の内部を下降する。これにより、穿刺針130に収容されていた係止部410のうち、開口132側に位置する第1の係止部410aが穿刺針130から送り出される(図20参照)。このように、下側の押しボタン301は、第1の係止部410aをプランジャ200により送出させる第一規制解除部として機能する。
なお、押し込みによるプランジャ200の下降に伴い、ステム220において狭い幅WNを有する細径部225が押しボタン302の挿通穴320の狭幅部324を通過する。このとき、上側の押しボタン302はまだ押し込まれていないので、矢印Qで示される横断面における押しボタン302とステム220との位置関係は、図16(b)に示した状態となる。
ステム220を更に押し下げて、細径部225の基端側に連接されて広い幅WWを有する膨出部228の下端が、上側の押しボタン302の上面と同じ高さに到達すると、プランジャ200の下降は、上側の押しボタン302により規制されて停止する。プランジャ200の下降量と固定具401の第1の係止部410aの長さとを合わせておくことにより、上記のプランジャ200の押し込み操作により、下側の第1の係止部410aが送出される。そして、上側の第2の係止部410bは穿刺針130に収容されたまま送出されず穿刺針130の下端にて停止する。このように、ステム220の膨出部228は、プランジャ200が第2の係止部410bを送出することを規制しておく第二送出規制部として機能する。そして、上側の押しボタン302は、第二送出規制部(膨出部228)による規制を解除操作する第二規制解除部として機能する。
また、押し込みによるプランジャ200の下降に伴い、ステム220の突起部222は、上側の押しボタン302の方形部326から下方に抜け出る。これにより、押しボタン302とステム220と位置関係が図16(b)に示した状態になり、押しボタン302の押し込みに対する突起部222による規制が解除される。このように、プランジャ200が押し込まれて移動したことにより、上側の押しボタン302が押し込める状態になる。
図17(b)は、押しボタン302(第二規制解除部)を押し込んで、ステム220の膨出部228(第二送出規制部)を解除操作した状態を示す臓器固定装置10の横断面図である。
第二規制解除部(押しボタン302)は、筐体100に対して、第二送出規制部(膨出部228)による第2の係止部410bの送出の規制を維持する規制位置(図16(b)参照)から、規制を解除する解除位置(図17(b)参照)まで移動可能に取付けられている。
そして、プランジャ200が筐体100に対して前進(下降)することにより、解除抑止部(突起部222)と第二規制解除部(押しボタン302)との係止が解除される。これにより、第二規制解除部(押しボタン302)が規制位置から解除位置に移動可能となる(図15および図16(b)参照)。
すなわち、本実施形態のプランジャ200は、解除抑止部を構成する太径部(ステム220の突起部222)と、この太径部(突起部222)の基端側に隣接して形成されて太径部(突起部222)よりも細幅の細径部225と、を有している。
初期状態の太径部(突起部222)は、規制位置(図15参照)にある第二規制解除部(押しボタン302)と係止している。
そして、プランジャ200が筐体100に対して前進(下降)することにより、太径部(突起部222)が第二規制解除部(押しボタン302)から離間するとともに、細径部225が第二規制解除部(押しボタン302)と係合する(図16(b)参照)。これにより、第二規制解除部(押しボタン302)は規制位置から解除位置(図17(b)参照)に移動可能となる。
更に、プランジャ200が筐体100に対して下降したことにより、ステム220のラッチ224が、筐体100の長手方向について中間に位置する係止穴162に入り込む。これにより、プランジャ200が上方に引き戻されることが防止される。このように、いったん押し込まれたプランジャ200を初期位置に引き戻すことは規制される。
図19は、体腔壁610および胃壁620に穿刺針130を穿刺した初期状態を示す臓器固定装置10の縦断面図であり、臓器固定装置10の使用方法を説明する図である。臓器固定装置10は、例えば、胃壁620を体腔壁610に引きつけて固定する場合に使用されるが、他の臓器を体腔壁610に固定したり、または臓器同士を固定したりする手技に用いてもよい。
まず、図10等に示したように、プランジャ200を全く押し込んでおらず、且つ、押しボタン301、302を押し込んでいない初期状態で、臓器固定装置10の穿刺針130を被験者に穿刺する。第一規制解除部(押しボタン301)が操作されていない初期状態は、第一送出規制部(ステム220の下端突部229)と第一規制解除部(押しボタン301)とが係止することによりプランジャ200を筐体100内に押し込むことができない状態である。穿刺針130は、体腔壁610および胃壁620を順次穿刺して、開口132を胃内に到達させる。
図20は、第1の係止部410aを送出した状態を示す臓器固定装置10の縦断面図である。穿刺針130の先端を胃壁620内に開口させた状態で、第一規制解除部(下側の押しボタン301)を押し込んでプランジャ200を押し込むことができる状態にする。ついで、プランジャ200を押し込んで、穿刺針130の開口132から、ひとつ目の第1の係止部410aを胃壁620の下方(胃内)に送出する。第1の係止部410aに連結された縫合糸421はスリット134から外れ、穿刺孔を通じて体外に引き出されている。
図21は、固定具401の留置状態を示す模式図である。固定具401が胃内に送り出されると、穿刺針130は、被験者から引き抜かれる。このとき、第1の係止部410aは胃壁620の内面に沿い、縫合糸421は上方に伸びて、第1の係止部410aと縫合糸421とがT字型をなす。
一方、縫合糸421の上端側は、筐体100と共に体腔壁610の外側に残留している。体腔壁610の外側で縫合糸421を引き上げることにより、胃壁620を体腔壁610に向かって引き寄せることができる。体腔壁610の内面まで引き寄せられた胃壁620は、体腔壁610の内側において固定される。縫合糸421は、図示しない係止具により体腔壁610の外表面で固定されるか、または他の縫合糸と互いに結びつけられて固定される。
こうして、被験者の胃壁620が、体腔壁610に対して引きつけられた上で固定されるので、例えば、胃瘻を安全且つ確実に造成できる。また、臓器の固定にあたって、被験者への侵襲が軽微で被験者の負担も軽い。更に、臓器固定装置10の操作が容易且つ確実なので、ユーザの作業負荷も小さい。
なお、胃壁620は、少なくとも2箇所以上で体腔壁610に固定される。よって、少なくとも2本の固定具400が胃壁620内に送出される。次に説明するように、臓器固定装置10は、複数の固定具401、402を送出できるので、器具を持ち替えることなく、臓器の固定を完遂できる。
図22は、第2の係止部410bを送出した状態を示す臓器固定装置10の縦断面図である。図22は、図18に示した使用状態から、上側の押しボタン302(第二規制解除部)を押し込んで膨出部228(第二送出規制部)によるプランジャ200の筐体100に対する下降の規制を解除した後、プランジャ200の押し込み部210を更に押して、プランジャ200を筐体100に完全に押し込んだ状態を示す。
即ち、図18に示したように第1の係止部410aを送出した状態において、上側の押しボタン302を筐体100の内側に向かって押し込むことにより、押しボタン302とプランジャ200との位置関係は、図17(b)に示した解除位置となる。これにより、押しボタン302および膨出部228によるプランジャ200の下降規制が解除される。
下側の押しボタン301によるプランジャ200への規制は既に解除されているので、ステム220のうち広い幅WWを有する膨出部228が筐体100内を下降することを妨げるものはなく、プランジャ200を十分に押し込むことができる。こうしてプランジャ200を下降させることにより、押し棒230も穿刺針130の内部を更に下降する。
これにより、穿刺針130に残っていた第2の係止部410bが送出される。このように、下側の押しボタン302は、残った第2の係止部410bをプランジャ200により送出させるための第二規制解除部として機能する。
図18に示すように、プランジャ200が筐体100に対して下降し切った場合、ステム220のラッチ224は、筐体100の長手方向について最下部に位置する係止穴163に入り込んで、プランジャ200が上方に戻ることを防止する。これにより、いったん押し込まれたプランジャ200が、前段階または初期状態に引き戻されることが防止される。
このように、臓器固定装置10は、まず下側の押しボタン301を押し込むことにより、プランジャ200を押し込むことができる状態になる。換言すれば、臓器固定装置10は、押しボタン301を押し込まない限り、係止部410を送出することが規制される。よって、押しボタン301を押し込まない状態で穿刺針130を被験者に穿刺することにより、係止部410を誤って押し出すことが防止される。
また、押しボタン301を押し込んだ場合は、ひとつの係止部410(第1の係止部410a)を送り出すに足る下降量までプランジャ200を押し込むことができる。よって、2本目の第2の係止部410bは臓器固定装置10に保持される。
第二の固定具402の第2の係止部410bは、上側の押しボタン302を押し込むことにより、臓器固定装置10を持ち替えることなく送出できる状態になる。ただし、上側の押しボタン302は、下側の押しボタン301が押し込まれ、更に、プランジャ200が押し込まれた後に、はじめて押し込むことができる状態になる。このように、臓器固定装置10は、収容された複数の係止部410を確実にひとつずつ送出することができる。
なお、上記の例では、2本の固定具400の係止部410を送出する連発式の臓器固定装置10について説明した。しかしながら、予め収容して送り出す固定具400の数が2本に限られないことはもちろんである。
<第二実施形態>
図23(a)から図23(d)は本発明の第二実施形態の臓器固定装置11を示す図である。図23(a)は左側面図、図23(b)は正面図、図23(c)は右側面図、図23(d)は背面図である。図23各図には、臓器固定装置11の長手方向に沿って延在する4つの側面A、B、C、Dを示す。なお、臓器固定装置11において、臓器固定装置10と共通の要素には同じ参照番号を付すとともに、第一実施形態と重複する説明は適宜省略する。
臓器固定装置11は、筐体100、プランジャ201および押しボタン303、304を備える点で第一実施形態の臓器固定装置10と共通する。
押しボタン303、304は、筐体100に図中水平に形成されたボタンホール110に収容される。臓器固定装置11の初期状態(出荷状態)において、押しボタン303、304は、筐体100のひとつの側面A(左側面)から図中水平に突出している。ボタンホール110は、押された押しボタン303、304を水平に案内する。
ボタンホール110は、内面に段差112を有する。これにより、ボタンホール110の開口面積は、側面C(右側面)において、側面A(左側面)よりも広い。このようなボタンホール110の形状と、後述する押しボタン303、304の形状とにより、押しボタン303、304は、側面Cから側面Aの方向へ抜け落ちることがない。
筐体100は、側面Bの下部に、糸道140を有する。糸道140は、筐体100の長手方向に配された長穴をなす。筐体100は、側面Dに、複数の係止穴161、162、163を有する。係止穴161、162、163は、筐体100の長手方向の一直線上に配置される。なお、本実施形態の筐体100における係止穴161、162、163は、第一実施形態の臓器固定装置10における筐体100の係止穴161、162、163よりも、相対的にやや上方に配されてもよい。
図24(a)から図24(f)は第二実施形態のプランジャ201の形状を示す図である。図24(a)は右側面図、図24(b)は背面図、図24(c)は左側面図、図24(d)は正面図、図24(e)は平面図、図24(f)は底面図である。図24各図においては、プランジャ201の側面a、b、c、dに加えて、上面tおよび下面sを併せて示す。プランジャ201の側面a、b、c、dの向きは、筐体100の側面A、B、C、Dに対応する。
図25(a)はプランジャ201の左側面図であり、図24(c)に対応している。図25(b)は図25(a)のI−I線断面図、図25(c)は図25(a)のII−II線断面図、図25(d)は図25(a)のIII−III線断面図、図25(e)は図25(a)のIV−IV線断面図、図25(f)は図25(a)のV−V線断面図である。
図25(b)に示すように、ステム220の上部の膨出部228は、筐体100の挿通穴180の形状と略同じ、Dカットされた略円形で広い幅WWを有する形状をなす。その直下の細径部225では、図25(c)に示すように、図中水平方向に狭い幅WNを有する略矩形状になる。ステム220の下端227の断面形状も図25(c)で示される。突起部222は、図5(d)に示すように、細径部225から側方に突出して形成されている。
更に、ステム220は、図25(e)に示すように、突起部222よりも更に少し下がった位置から、再び広い幅WWを有する太幅の略円形の中間突部229aになる。下端突部229の断面形状も図25(e)で示される。ステム220の更に下方では、図25(f)に示すように、ラッチ224を設けられて一部が切り欠かれ、かつ全体として太幅の略円形の形状を維持する。なお、突起部222の下端と中間突部229aとの間隔Eの領域も細径部225であり水平断面は図25(c)で示される。かかる間隔Eは、押しボタン303、304の高さ方向の寸法よりも大きい。
このように、プランジャ201における個々の水平断面形状は、第一実施形態の臓器固定装置10のプランジャ200と大部分において共通している。しかしながら、本実施形態のプランジャ201は、ステム220の長手方向について、狭い幅WNを有する部分と広い幅WWを有する部分との配分が、プランジャ200と異なっている。
図26は、本実施形態のプランジャ201を背面上方からみた斜視図である。プランジャ201の下端に設けられた保持穴226には、穿刺針130の内径と略等しい外径を有する押し棒230の上端が圧入により保持される。
図27は本実施形態の押しボタン303、304の形状を示す図である。図27(a)は正面図、図27(b)は左側面図、図27(c)は平面図、図27(d)は右側面図、図27(e)は図27(c)のE−E線断面図である。図27各図にいう正面、左右側面および平面の方向は、図23および図24各図におけるそれぞれの方向に対応している。図28は、押しボタン303(304)の斜視図である。押しボタン303、304は、単独の状態では互いに同じ形状を有する。よって、押しボタン303に関する下記の説明は、押しボタン304にも共通する。
押しボタン303は、全体として直方体の形状を有し、長手方向の一部に段差312を有する。この段差312により、押しボタン303の長手方向の一端に対して、他端は薄くなる。ここで、押しボタン303において薄い方の端面(左側面側の端面)が、臓器固定装置11において筐体100から突出する押し込み面310となる(図30参照)。
また、段差312は、筐体100のボタンホール110において段差112(図2(c)参照)に当接する高さを有する。これにより、ボタンホール110に対して側面Cから、押しボタン303、304のいずれかとして挿入された押しボタン303は、側面Aの側に抜け落ちることが防止される。
押しボタン303は、厚さ方向に貫通する挿通穴320を有する。挿通穴320の形状は第一実施形態の押しボタン301、302と共通する。
狭幅部324は、円形部322よりも幅が狭く、図25(c)に示したステム220の細径部225の幅WNを通過させ、それよりも幅広の膨出部228や突起部222は通過させない。
図29は、本実施形態の臓器固定装置11を右側面からみた部分断面図である。同図は初期状態の臓器固定装置11を示す。初期状態の臓器固定装置11において、プランジャ201の突起部222は、上側の押しボタン303の直上に位置している。また、押しボタン303の挿通穴320の内部には、プランジャ201のステム220の細径部225が収容されている。これに対して、下側の押しボタン304の挿通穴320の内部には、ステム220の下端突部229が収容されている。
図30は本実施形態の臓器固定装置11の初期状態における正面図であり、筐体100の外部における縫合糸421、422の引き回し状態を示す模式図である。
図31は、臓器固定装置11の横断面図であり、初期状態の臓器固定装置11における上側の押しボタン303の状態を示す図である。同図を用いて臓器固定装置11における押しボタン303の機能を説明する。同図は、図29に示す初期状態(出荷状態)の臓器固定装置11において、矢印Qにより示す平面に位置する押しボタン303を上から見た様子を示す。
初期状態の臓器固定装置11において、押しボタン303は、挿通穴320における円形部322が、プランジャ201のステム220と一致する位置にある。このため、押しボタン303の直上に位置する突起部222(説明のため図31に突起部222を破線で図示する)は、円形部322の外側に突出しており、ステム220が下方に変位することを規制する。よって、プランジャ201の押し込み部210を押しても、プランジャ201を筐体100の内部に押し込むことはできない。
しかしながら、図29に示した初期状態において、押しボタン303の挿通穴320の内部には、プランジャ201のステム220において狭い幅WNを有する細径部225が位置している。また、押しボタン303の押し込み面310は、筐体100の側面A(左側面)から外部に向かって突出している。よって、臓器固定装置11のユーザは、押しボタン303を筐体100の内部に向かって水平に押し込む操作ができる。
図32は、本実施形態の押しボタン303、304の動作を示す模式的断面図である。図32は、図31と同じ視点から、押しボタン303が押し込まれ、更にプランジャ201が押し下げられて突起部222が挿通穴320に収容された状態を示す図である。図示のように、図中の白抜き矢印の方向に押し込まれた押しボタン303は、図中右方に変位して、ステム220の左側側面に、方形部326を当接させる。これにより、ステム220の突起部222が方形部326と一致するので、ステム220を紙面に垂直な方向に変位させることができる。よって、プランジャ201の押し込み部210を押し込むことにより、図32に示すようにプランジャ201を筐体100の内部に向かって押し込むことができる状態になる。
このように、本実施形態の臓器固定装置11は、第一送出規制部(突起部222)と、第一規制解除部(押しボタン303)と、を備える。第一送出規制部である突起部222は、送出機構(プランジャ201)が第1の係止部410aを送出することを規制しておく手段である。第一規制解除部(押しボタン303)は、第一送出規制部(突起部222)による送出機構(プランジャ201)の規制を解除操作する手段である。
また、筐体100に向かって押し込まれた押しボタン303の押し込み面310は、筐体100の側面A(左側面)と略面一になる。よって、押しボタン303が既に押し込まれた状態にあることが視覚的に判ると共に、一旦押された押しボタン303を繰り返し押すことを規制できる。押された押しボタン303の押し込み面310を、筐体100の側面よりも更に沈むようにしてもよい。
本実施形態の筐体100も突条182を有し、押しボタン303の凹溝328、329と係合する。これにより、初期状態(図31)および押しボタン303を押し込んだ状態(図32)において、押しボタン303の位置がそれぞれ安定する。
図33は、図29に示した状態の臓器固定装置11における下側の押しボタン304の状態を説明する模式的断面図である。図33は、図29に矢印Rにより示す平面における押しボタン304の水平断面を上から見た様子を示す。
初期状態の臓器固定装置11において、押しボタン304の挿通穴320には、ステム220の下部に位置する下端突部229が挿通されている。このため、ステム220が挿通穴320における狭幅部324を通過できないので、押しボタン304の押し込み面310を押しても押しボタン304を押し込むことはできない。このように、ステム220において太い水平断面形状を有する下端突部229は、押しボタン304(第二規制解除部)の押し込みを抑止する解除抑止部として機能する。
すなわち、本実施形態の解除抑止部(下端突部229)は送出機構(プランジャ201のステム220)に設けられている。そして、解除抑止部(下端突部229)は、プランジャ201に設けられているとともに、初期状態(図29参照)で第二規制解除部(押しボタン304)に係止している。
図34は、送出機構(プランジャ201)が第1の係止部410aを送出した状態を示す臓器固定装置11の縦断面図である。図34は、図29に示した初期状態から、上側の押しボタン303を押し込んで突起部222による規制を解除した後、プランジャ201の押し込み部210を押して、プランジャ201を筐体100に押し込んだ状態を示す。
図示のように、上側の押しボタン303(第一規制解除部)が押し込まれたことによりプランジャ201の突起部222が挿通穴320を通過するので、プランジャ201は、下方に向かって筐体100に押し込まれる。プランジャ201が下降すると、やがて、突起部222が下側の押しボタン304に当接する。図33には、説明のため、狭幅部324の上方に位置する突起部222を破線で図示してある。
図示の状態では下側の押しボタン304はまだ押し込まれていないので、突起部222と押しボタン304の位置関係は、図31に示した突起部222および押しボタン304と同じ位置関係になる。よって、プランジャ201は、押しボタン304により下降を規制されて停止する。
上記のようなプランジャ201の下降に伴い、プランジャ201の下端に固定された押し棒230は、穿刺針130の内部を下降する。これにより、穿刺針130に収容されていた係止部410のうち、開口132側に位置する第1の係止部410a(図13参照)が穿刺針130から送り出される。
なお、プランジャ201の下降量と第1の係止部410aの長さとを合わせておくとよい。これにより、上記のプランジャ201の押し込み操作により、下側の第1の係止部410aが送出され、上側の第2の係止部410bは、穿刺針130に収容されたまま送出されない。このように、上側の押しボタン303は、一方の固定具401をプランジャ201により送出させる第1の操作部として機能する。
また、プランジャ201が上記のように筐体100に対して下降した場合、ラッチ224は、筐体100の長手方向について中間に位置する係止穴162に入り込んで、プランジャ201が上方に戻ることを防止する。これにより、いったん押し込まれたプランジャ201を初期位置に引き戻すことは規制される。
臓器固定装置11は、プランジャ201を全く押し込んでおらず、且つ、押しボタン303、304を押し込んでいない状態、即ち、プランジャ201を筐体100内に押し込むことができない初期状態で、穿刺針130を被験者に穿刺して使用する。穿刺針130は、図19に示すように、体腔壁610および胃壁620を順次穿刺して、開口132を胃内に到達させる。
次に、上側の押しボタン303(第一規制解除部)を押し込んで第一送出規制部(突起部222)による送出機構(プランジャ201)の規制を解除する。ついで、プランジャ201を押し込んで、穿刺針130の開口132から、ひとつの第1の係止部410aを胃内に送出する。
図35は、第2の係止部410b(図13参照)を送出した状態を示す臓器固定装置11の縦断面図である。図35は、図34に示した使用状態から、下側の押しボタン304(第二規制解除部)を押し込んで突起部222(第二送出規制部)による規制を解除した後、プランジャ201の押し込み部210を更に押して、プランジャ201を筐体100に更に押し込んだ状態を示す。
即ち、図34に示したように、突起部222が下側の押しボタン304に当接するまでプランジャ201を押し込んだ場合、突起部222と押しボタン304の位置関係は、図31に示した、突起部222および押しボタン303の位置関係と同じ状態になる。このため、プランジャ201の下降を規制する押しボタン304の挿通穴320には、突起部222の直下に形成された細径部225が位置しており、押しボタン304を筐体100の内部に向かって水平に押し込むことができる状態になる。
よって、押しボタン304の押し込み面310を押し込んで、プランジャ201の下降に対する押しボタン304の規制を解除した後に、プランジャ201の押し込み部210を押し込むことにより、プランジャ201を筐体100の内部に更に押し込むことができる。こうしてプランジャ201を下降させることにより、押し棒230も穿刺針130の内部を更に下降する。
これにより、穿刺針130に残っていた第2の係止部410bが穿刺針130から送り出される。このように、ステム220の突起部222は、プランジャ201が第2の係止部410bを送出することを規制しておく第二送出規制部として機能する。そして、下側の押しボタン304は、第二送出規制部(突起部222)による規制を解除操作する第二規制解除部として機能する。すなわち、本実施形態の突起部222は、第1の係止部410aの送出を規制する第一送出規制部と、第2の係止部410bの送出を規制する第二送出規制部と、を兼用する。
解除抑止部(下端突部229)は、送出機構(プランジャ201)が第1の係止部410aを送出した状態となることにより、第二規制解除部(押しボタン304)の抑止を解除する。これにより、第二規制解除部(押しボタン304)による第二送出規制部(突起部222)の解除操作が可能となる。
第1の係止部410aが送出される前の初期状態(図29参照)で、送出機構(ステム220の下端突部229)は第二規制解除部(押しボタン304)に係止している。これにより、第二規制解除部(押しボタン304)による解除操作が抑止されている。そして、送出機構(プランジャ201)が第1の係止部410aを送出した状態(図34参照)になることにより、送出機構(ステム220の下端突部229)の係止が解除されて第二規制解除部(押しボタン304)による解除操作が可能になる。
そして、本実施形態の解除抑止部(下端突部229)は、第一規制解除部(押しボタン303)が第一送出規制部(突起部222)による規制を解除操作してから送出機構(プランジャ201)が第1の係止部410aを送出する状態に至るまでの少なくとも一部に亘って、第二規制解除部(押しボタン304)による解除操作を抑止する。
第二規制解除部(押しボタン304)は、筐体100に対して、第二送出規制部(突起部222)による第2の係止部410bの送出の規制を維持する規制位置(図33参照)から、規制を解除する解除位置(図32参照)まで移動可能に取付けられている。
そして、プランジャ201が筐体100に対して前進(下降)することにより、解除抑止部(下端突部229)と第二規制解除部(押しボタン304)との係止が解除される。これにより、第二規制解除部(押しボタン304)が規制位置から解除位置に移動可能となる。
すなわち、本実施形態のプランジャ201は、解除抑止部を構成する太径部(下端突部229)と、この太径部(下端突部229)の基端側に隣接して形成された細径部225と、を有している。
初期状態の太径部(下端突部229)は、規制位置(図33参照)にある第二規制解除部(押しボタン304)と係止している。
そして、プランジャ201が筐体100に対して前進(下降)することにより、太径部(下端突部229)が第二規制解除部(押しボタン304)から離間するとともに、細径部225が第二規制解除部(押しボタン304)と係合する(図31参照)。これにより、第二規制解除部(押しボタン304)は規制位置から解除位置(図32参照)に移動可能となる。
なお、プランジャ201が上記のように筐体100に対して下降し切った場合、ラッチ224は、筐体100の長手方向について最下部に位置する係止穴163に入り込んで、プランジャ201が上方に戻ることを防止する。これにより、いったん押し込まれたプランジャ201が、前段階または初期位置に引き戻されることが規制される。
このように、臓器固定装置11は、上側の押しボタン303を押し込むことにより、プランジャ201を押し込むことができる状態になる。換言すれば、臓器固定装置11は、押しボタン303を押し込まない限り、係止部410のいずれをも送出することが規制される。
また、押しボタン303を押し込んだ場合は、ひとつの第1の係止部410aを送り出すに足る下降量までプランジャ200を押し込むことができる。よって、2本目の第2の係止部410bは臓器固定装置11に保持される。
第二の固定具402の第2の係止部410bは、下側の押しボタン304を押し込むことにより、臓器固定装置11を持ち替えることなく送出できる状態になる。ただし、下側の押しボタン304は、上側の押しボタン303が押し込まれ、更に、プランジャ201が押し込まれた後に、はじめて押し込むことができる状態になる。このように、臓器固定装置11は、収容された複数の係止部410を、確実にひとつずつ送出することができる。
また、第二実施形態の臓器固定装置11は、筐体100の上方に設けられた押しボタン303が第一規制解除部であり、下方に設けられた押しボタン304が第二規制解除部である。したがって、プランジャ201を上方から下方に押し込んでいく際に、上方の押しボタンから時間に押し込み操作していけばよいため、直感的な操作が可能である。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
本発明の臓器固定装置に関する各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)臓器を固定する複数の係止部を収容する収容部と、第1の前記係止部、第2の前記係止部の順に前記収容部から前記係止部を順次送出する送出機構と、前記送出機構が第2の前記係止部を送出することを規制しておく送出規制部と、前記送出規制部による前記規制を解除操作する規制解除部と、前記送出機構が第1の前記係止部を送出した状態となるまで前記規制解除部による前記解除操作を抑止しておく解除抑止部と、を備える連発式の臓器固定装置。
(2)前記解除抑止部は、前記送出機構が第1の前記係止部を送出した状態となることにより前記抑止を解除して前記規制解除部による前記解除操作を可能とする上記(1)に記載の連発式の臓器固定装置。
(3)前記送出機構が第1の前記係止部を送出することを規制しておく第一送出規制部と、前記第一送出規制部による前記規制を解除操作する第一規制解除部と、を更に備え、前記解除抑止部は、前記第一規制解除部が前記第一送出規制部による前記規制を解除操作してから前記送出機構が第1の前記係止部を送出する状態に至るまでの少なくとも一部に亘って前記規制解除部による前記解除操作を抑止する上記(1)または(2)に記載の連発式の臓器固定装置。
(4)第1の前記係止部が送出される前の初期状態で前記送出機構が前記規制解除部に係止することにより前記解除操作が抑止されており、前記送出機構が第1の前記係止部を送出した状態になることにより前記係止が解除されて前記規制解除部による前記解除操作が可能になる上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の連発式の臓器固定装置。
(5)前記解除抑止部が前記送出機構に設けられている上記(4)に記載の連発式の臓器固定装置。
(6)前記収容部が内部に形成された穿刺針を備え、前記送出機構は、前記穿刺針に摺動可能に挿入された押し棒と、前記押し棒の基端側に設けられて前記押し棒を前記穿刺針に対して前進させるプランジャと、を含み、前記解除抑止部が、前記プランジャに設けられているとともに前記初期状態で前記規制解除部に係止している上記(5)に記載の連発式の臓器固定装置。
(7)前記プランジャを収容する筐体を更に備え、前記規制解除部は、前記筐体に対して、前記送出規制部による前記規制を維持する規制位置から、前記規制を解除する解除位置まで移動可能に取付けられており、前記プランジャが前記筐体に対して前進することにより、前記解除抑止部と前記規制解除部との前記係止が解除されて前記規制解除部が前記規制位置から前記解除位置に移動可能となる上記(6)に記載の連発式の臓器固定装置。
(8)前記プランジャが、前記解除抑止部を構成する太径部と、前記太径部の基端側に隣接して形成され前記太径部よりも細幅の細径部と、を有し、前記初期状態の前記太径部は、前記規制位置にある前記規制解除部と係止しており、前記プランジャが前記筐体に対して前進することにより、前記太径部が前記規制解除部から離間するとともに前記細径部が前記規制解除部と係合して前記規制解除部が前記規制位置から前記解除位置に移動可能となる上記(7)に記載の連発式の臓器固定装置。
(9)前記規制解除部が、前記筐体に対して押し込み可能に取付けられた押しボタンである上記(7)または(8)に記載の連発式の臓器固定装置。