以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態のうち、第2〜第5実施形態が特許請求の範囲に記載した発明の実施形態であり、第1実施形態は本発明の前提となる形態であり、第6実施形態は参考としての形態である。
(第1実施形態)
図1〜図5により、本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態では、本発明に係る空調装置を走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る電気自動車の車両用空調装置1に適用している。
本実施形態の車両用空調装置1は、空調対象空間である車室内へ送風される送風空気を加熱あるいは冷却する蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置10、熱媒体である温水(具体的には、エチレングリコール水溶液からなる不凍液)を循環させる熱媒体循環回路25、および温度調整された送風空気を車室内へ吹き出す室内空調ユニット30を備えている。
そして、この車両用空調装置1では、送風空気を加熱して車室内の暖房を行う際に、冷凍サイクル装置10によって熱媒体循環回路25を循環する温水を加熱し、加熱された温水を熱源として送風空気を加熱している。
さらに、本実施形態の冷凍サイクル装置10は、送風空気を冷却して車室内の冷房を行う冷房モードの冷媒回路、送風空気を加熱して車室内の暖房を行う暖房モードの冷媒回路、冷却されて除湿された送風空気を再加熱することによって車室内を除湿しながら暖房を行う除湿暖房モードの冷媒回路に切り替え可能に構成されている。
なお、図1では、冷房モードの冷媒回路における冷媒の流れを白抜き矢印で示し、暖房モードの冷媒回路における冷媒の流れを黒塗り矢印で示し、除湿暖房モードの冷媒回路における冷媒の流れを斜線ハッチング付き矢印で示している。
また、冷凍サイクル装置10では、冷媒としてHFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、サイクルの高圧側冷媒圧力Pdが冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。もちろん、HFO系冷媒(例えば、R1234yf)等を採用してもよい。さらに、冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
冷凍サイクル装置10の構成機器のうち、圧縮機11は、車両のボンネット内に配置され、冷凍サイクル装置10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。この圧縮機11は、その外殻を形成するハウジングの内部に、低段側圧縮機構と高段側圧縮機構との2つの圧縮機構、および、双方の圧縮機構を回転駆動する電動モータを収容して構成された二段昇圧式の電動圧縮機である。
圧縮機11のハウジングには、ハウジングの外部から低段側圧縮機構へ低圧冷媒を吸入させる低圧吸入口11a、ハウジングの外部からハウジングの内部へ中間圧冷媒を流入させて低圧から高圧への圧縮過程の冷媒に合流させる中間圧吸入口11b、および高段側圧縮機構から吐出された高圧冷媒をハウジングの外部へ吐出させる吐出口11cが設けられている。
より具体的には、中間圧吸入口11bは、低段側圧縮機構の冷媒吐出口側(すなわち、高段側圧縮機構の冷媒吸入口側)に接続されている。また、低段側圧縮機構および高段側圧縮機は、それぞれスクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構、ローリングピストン型圧縮機構等の各種形式のものを採用することができる。
電動モータは、後述する空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動(回転数)が制御されるもので、交流モータ、直流モータのいずれの形式を採用してもよい。そして、この回転数制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。
なお、本実施形態では、2つの圧縮機構を1つのハウジング内に収容した圧縮機11を採用しているが、圧縮機の形式はこれに限定されない。つまり、中間圧吸入口11bから中間圧冷媒を流入させて低圧から高圧への圧縮過程の冷媒に合流させることが可能であれば、ハウジングの内部に、1つの固定容量型の圧縮機構およびこの圧縮機構を回転駆動する電動モータを収容して構成された電動圧縮機であってもよい。
さらに、2つの圧縮機を直列に接続して、低段側に配置される低段側圧縮機の吸入口を低圧吸入口11aとし、高段側に配置される高段側圧縮機の吐出口を吐出口11cとし、低段側圧縮機の吐出口と高段側圧縮機との吸入口とを接続する接続部に中間圧吸入口11bを設け、低段側圧縮機と高段側圧縮機との双方によって、1つの二段昇圧式の圧縮機11を構成してもよい。
圧縮機11の吐出口11c側には、水−冷媒熱交換器12の冷媒通路の冷媒入口側が接続されている。水−冷媒熱交換器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と熱媒体循環回路25を循環する温水とを熱交換させて、温水を加熱する熱媒体−冷媒熱交換器である。
このような水−冷媒熱交換器12としては、高圧冷媒通路として高圧冷媒を流通させる複数本のチューブを設け、隣り合うチューブ間に温水を流通させる水通路を形成し、これらの水通路内に冷媒と温水との間の熱交換を促進するインナーフィンを配置することによって構成された熱交換器等を採用することができる。
水−冷媒熱交換器12の冷媒通路の出口側には、暖房用膨張弁13aの入口側が接続されている。暖房用膨張弁13aは、少なくとも暖房モード時に、水−冷媒熱交換器12から流出した高圧冷媒を減圧させる減圧手段であり、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体を変位させて絞り開度を変化させるステッピングモータからなる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の可変絞り機構である。
さらに、本実施形態の暖房用膨張弁13aは、絞り開度を全開にすることで冷媒減圧作用を殆ど発揮することなく単なる冷媒通路として機能する全開機能付きの可変絞り機構で構成されている。暖房用膨張弁13aは、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
暖房用膨張弁13aの出口側には、暖房用膨張弁13aから流出した冷媒の気液を分離する気液分離手段である気液分離器14の冷媒流入口が接続されている。本実施形態では、気液分離器14として、円筒状の本体部の内部空間へ流入した冷媒を旋回させることで生じる遠心力の作用によって冷媒の気液を分離する遠心分離方式のものを採用している。
さらに、本実施形態の気液分離器14の内容積は、サイクルに負荷変動が生じてサイクルを循環する冷媒循環流量が変動しても、実質的に余剰冷媒を溜めることができない程度の容積になっている。
気液分離器14の気相冷媒流出口には、圧縮機11の中間圧吸入口11bが接続されている。さらに、気液分離器14の気相冷媒流出口と圧縮機11の中間圧吸入口11bとを接続する冷媒通路には、この冷媒通路を開閉する気相冷媒通路開閉弁15aが配置されている。気相冷媒通路開閉弁15aは、空調制御装置40から出力される制御電圧によって、その開閉作動が制御される電磁弁である。
そして、空調制御装置40が、気相冷媒通路開閉弁15aを開いた際には、気液分離器14の気相冷媒流出口から流出した気相冷媒が圧縮機11の中間圧吸入口11b側へ導かれる冷媒回路に切り替えられる。また、空調制御装置40が、気相冷媒通路開閉弁15aを閉じた際には、気液分離器14の気相冷媒流出口から冷媒が流出しない冷媒回路に切り替えられる。
従って、本実施形態の気相冷媒通路開閉弁15aは、サイクルを循環する冷媒の冷媒回路を切り替える冷媒回路切替手段を構成している。
一方、気液分離器14の液相冷媒流出口には、気液分離器14にて分離された液相冷媒を減圧させる減圧手段としての中間圧固定絞り16の入口側が接続されている。この中間圧固定絞り16としては、絞り開度が固定されたノズル、オリフィス、キャピラリチューブ等を採用することができる。中間圧固定絞り16の出口側には、室外熱交換器17の冷媒入口側が接続されている。
さらに、気液分離器14の液相冷媒流出口には、気液分離器14にて分離された液相冷媒を中間圧固定絞り16を迂回させて室外熱交換器17の冷媒入口側へ導く固定絞り迂回通路16aが接続されている。この固定絞り迂回通路16aには、固定絞り迂回通路16aを開閉する迂回通路開閉弁15bが配置されている。迂回通路開閉弁15bの基本的構成は、気相冷媒通路開閉弁15aと同等である。
また、冷媒が迂回通路開閉弁15bを通過する際に生じる圧力損失は、冷媒が中間圧固定絞り16を通過する際に生じる圧力損失に対して極めて小さい。従って、空調制御装置40が迂回通路開閉弁15bを開いた際には、気液分離器14から流出した液相冷媒が固定絞り迂回通路16aを介して室外熱交換器17へ流入する。
一方、空調制御装置40が迂回通路開閉弁15bを閉じた際には、気液分離器14から流出した全流量の液相冷媒が中間圧固定絞り16にて減圧された後に室外熱交換器17へ流入する。
なお、中間圧固定絞り16、固定絞り迂回通路16a、および迂回通路開閉弁15bに代えて、気液分離器14の液相冷媒流出口から室外熱交換器17の冷媒入口側へ至る冷媒配管に暖房用膨張弁13aと同様の全開機能付きの可変絞り機構を配置してもよい。
室外熱交換器17は、ボンネット内に配置されて、内部を流通する冷媒と図示しない送風ファンから送風された外気とを熱交換させる熱交換器である。より詳細には、本実施形態の室外熱交換器17は、少なくとも冷房モード時には、高圧冷媒を放熱させる放熱器として機能し、少なくとも暖房モード時には、中間圧固定絞り16にて減圧された低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる蒸発器として機能する。
図示しない送風ファンは、空調制御装置40から出力される制御電圧によって稼働率、すなわち回転数(送風能力)が制御される電動送風機である。
室外熱交換器17の冷媒出口側には、室外熱交換器17から流出した冷媒の流れを分岐する分岐部18aの冷媒流入口が接続されている。分岐部18aは、三方継手で構成されており、3つの流入出口のうち1つを冷媒流入口とし、残りの2つを冷媒流出口としたものである。このような三方継手は、管径の異なる配管を接合して形成してもよいし、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けることによって形成してもよい。
分岐部18aの一方の冷媒流出口には、逆止弁19を介して、冷房用膨張弁13bの入口側が接続され、他方の冷媒流出口には、分岐部18aから流出した冷媒を冷房用膨張弁13b等を迂回させて後述するアキュムレータ22の上流側へ導くアキュムレータ側通路21の入口側が接続されている。
逆止弁19は、分岐部18aの一方の冷媒流出口から流出した冷媒が、分岐部18aから冷房用膨張弁13b側へ流れることのみを許容するものである。
冷房用膨張弁13bの基本的構成は、暖房用膨張弁13aと同様である。さらに、本実施形態の冷房用膨張弁13bは、絞り開度を全開した際に室外熱交換器17の冷媒出口側から室内蒸発器20の冷媒入口側へ至る冷媒通路を全開する全開機能のみならず、絞り開度を全閉した際に当該冷媒通路を閉塞する全閉機能付きの可変絞り機構で構成されている。
本実施形態の冷凍サイクル装置10では、冷房用膨張弁13bが冷媒通路を閉塞することによって、冷媒を循環させる冷媒回路を切り替えることができる。従って、本実施形態の冷房用膨張弁13bは、気相冷媒通路開閉弁15aとともに、冷媒回路切替手段を構成している。
冷房用膨張弁13bの出口側には、室内蒸発器20の冷媒入口側が接続されている。室内蒸発器20は、後述する室内空調ユニット30のケーシング31内に配置されて、少なくとも冷房モードおよび除湿暖房モード時に、その内部を流通する冷媒を、送風空気と熱交換させて蒸発させることによって送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。
室内蒸発器20の冷媒出口側には、合流部18bを介して、アキュムレータ22の入口側が接続されている。アキュムレータ22は、その内部に流入した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰冷媒を蓄える気液分離器である。合流部18bは、分岐部18aと同様の三方継手で構成されており、3つの流入出口のうち2つを冷媒流入口とし、残りの1つを冷媒流出口としたものである。
さらに、本実施形態の合流部18bの他方の冷媒流入口には、アキュムレータ側通路21の出口側が接続されている。また、アキュムレータ側通路21には、アキュムレータ側通路21を開閉する暖房用開閉弁15cが配置されている。暖房用開閉弁15cの基本的構成は気相冷媒通路開閉弁15aと同様であり、暖房用開閉弁15cは、気相冷媒通路開閉弁15aおよび冷房用膨張弁13bとともに冷媒回路切替手段を構成している。
アキュムレータ22の気相冷媒出口には、圧縮機11の低圧吸入口11a側が接続されている。従って、このアキュムレータ22は、圧縮機11に液相冷媒が吸入されてしまうことを抑制して、圧縮機11の液圧縮を防止する機能を果たす。
次に、熱媒体循環回路25について説明する。熱媒体循環回路25は、水−冷媒熱交換器12とヒータコア26との間で温水を循環させる熱媒体循環回路である。
ヒータコア26は、室内空調ユニット30のケーシング31内に配置されて、水−冷媒熱交換器12にて加熱された温水と室内蒸発器20通過後の送風空気とを熱交換させて、送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。本実施形態では、このヒータコア26として、いわゆる全パスタイプのタンクアンドチューブ型の熱交換器を採用している。
より具体的には、本実施形態のヒータコア26は、温水が連通する複数本の温水チューブと、温水の分配および集合を行うヘッダタンクとを備えている。そして、複数本の温水チューブをヘッダタンクの長手方向に積層配置することによって温水と送風空気とを熱交換させる熱交換部(熱交換コア部)を形成し、各温水チューブを流通する温水の流れ方向が同一方向となるように構成したものである。
また、熱媒体循環回路25には、水−冷媒熱交換器12から流出した温水をヒータコア26に向けて圧送する水ポンプ27が配置されている。この水ポンプ27は、空調制御装置40から出力される制御電圧によって、その回転数(水圧送能力)が制御される電動式のポンプである。
そして、空調制御装置40が水ポンプ27を作動させると、熱媒体循環回路25では、主に、図1の実線矢印で示すように、水ポンプ27→水−冷媒熱交換器12の水通路→ヒータコア26→水ポンプ27の順で温水が循環する。これにより、暖房モード時等に、水−冷媒熱交換器12にて加熱された温水をヒータコア26へ流入させて、送風空気を加熱することができる。
さらに、空調制御装置40が、水ポンプ27の回転数(水圧送能力)を制御することによって、水−冷媒熱交換器12へ流入する温水の流量を調整することができる。従って、本実施形態の水ポンプ27は、熱媒体流量調整手段を構成している。
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、温度調整された送風空気を車室内へ吹き出すためのもので、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されている。さらに、室内空調ユニット30は、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、室内蒸発器20、ヒータコア26等を収容して構成されている。
ケーシング31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成するもので、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。このケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、ケーシング31内へ内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替手段としての内外気切替装置33が配置されている。
内外気切替装置33は、ケーシング31内へ内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を連続的に変化させるものである。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータによって駆動され、この電動アクチュエータは、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
内外気切替装置33の送風空気流れ下流側には、内外気切替装置33を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風手段としての送風機(ブロワ)32が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置40から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
送風機32の送風空気流れ下流側には、室内蒸発器20、およびヒータコア26が、送風空気の流れに対して、この順に配置されている。また、ケーシング31内には、室内蒸発器20を通過した送風空気を、ヒータコア26を迂回させて下流側へ流す空気バイパス通路35が形成されている。
室内蒸発器20の送風空気流れ下流側であって、かつ、ヒータコア26の送風空気流れ上流側には、室内蒸発器20通過後の送風空気のうち、ヒータコア26を通過させる風量割合を調整するエアミックスドア34が配置されている。
また、ヒータコア26の送風空気流れ下流側には、ヒータコア26にて加熱された送風空気と空気バイパス通路35を通過してヒータコア26にて加熱されていない送風空気とを混合させる混合空間が設けられている。さらに、ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、混合空間にて混合された送風空気(空調風)を、空調対象空間である車室内へ吹き出す開口穴が配置されている。
具体的には、この開口穴としては、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス開口穴、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット開口穴、および車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ開口穴(いずれも図示せず)が設けられている。これらのフェイス開口穴、フット開口穴およびデフロスタ開口穴の送風空気流れ下流側は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。
従って、エアミックスドア34が、ヒータコア26を通過させる風量と空気バイパス通路35を通過させる風量との風量割合(風量比)を調整することによって、混合空間にて混合される空調風の温度が調整されて、各吹出口から車室内へ吹き出される送風空気(空調風)の温度が調整されることになる。
つまり、エアミックスドア34は、加熱用熱交換器であるヒータコア26へ流入する送風空気の風量を調整する送風量調整手段を構成しており、車室内へ送風される空調風の温度を調整する機能を果たす。なお、エアミックスドア34は、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータによって駆動され、この電動アクチュエータは、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
また、フェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴の送風空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス開口穴の開口面積を調整するフェイスドア、フット開口穴の開口面積を調整するフットドア、デフロスタ開口穴の開口面積を調整するデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、開口穴モードを切り替える開口穴モード切替手段を構成するものであって、リンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されて連動して回転操作される。なお、この電動アクチュエータも、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
吹出口モード切替手段によって切り替えられる吹出口モードとしては、具体的に、フェイス吹出口を全開してフェイス吹出口から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出すフェイスモード、フェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出すバイレベルモード、フット吹出口を全開するとともにデフロスタ吹出口を小開度だけ開口して、フット吹出口から主に空気を吹き出すフットモード、およびフット吹出口およびデフロスタ吹出口を同程度開口して、フット吹出口およびデフロスタ吹出口の双方から空気を吹き出すフットデフロスタモードがある。
さらに、乗員が操作パネルに設けられた吹出モード切替スイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口を全開してデフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
次に、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置40は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種空調制御機器(圧縮機11、暖房用膨張弁13a、冷房用膨張弁13b、各開閉弁15a〜15c、水ポンプ27、送風機32等)の作動を制御する。
また、空調制御装置40の入力側には、車室内温度(内気温)Trを検出する内気温検出手段としての内気センサ、車室外温度(外気温)Tamを検出する外気温検出手段としての外気センサ、車室内へ照射される日射量Asを検出する日射量検出手段としての日射センサ、圧縮機11吐出冷媒の吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度センサ、圧縮機11吐出冷媒の吐出冷媒圧力(高圧側冷媒圧力)Pdを検出する吐出圧力センサ、室内蒸発器20における冷媒蒸発温度(蒸発器温度)Tefinを検出する蒸発器温度センサ、混合空間から車室内へ送風される送風空気温度TAVを検出する送風空気温度センサ、室外熱交換器17の室外器温度Tsを検出する室外熱交換器温度センサ、ヒータコア26へ流入する温水の温度Twを検出する熱媒体温度検出手段としての温水温度センサ等が空調制御用のセンサ群が接続され、これらのセンサ群の検出信号が入力される。
なお、本実施形態の蒸発器温度センサは、室内蒸発器20の熱交換フィン温度を検出しているが、蒸発器温度センサとして、室内蒸発器20のその他の部位の温度を検出する温度検出手段を採用してもよいし、室内蒸発器20を流通する冷媒の温度を検出する温度検出手段を採用してもよい。
また、本実施形態の室外熱交換器温度センサは、室外熱交換器17の冷媒流出口における冷媒の温度を検出しているが、室外熱交換器温度センサとして、室外熱交換器17のその他の部位の温度を検出する温度検出手段を採用してもよいし、室外熱交換器17を流通する冷媒の温度を検出する温度検出手段を採用してもよい。
また、本実施形態では、送風空気温度TAVを検出する送風空気温度センサを設けているが、この送風空気温度TAVとして、蒸発器温度Tefin、吐出冷媒温度Td等に基づいて算出された値を採用してもよい。
さらに、空調制御装置40の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された図示しない操作パネルが接続され、この操作パネルに設けられた各種操作スイッチからの操作信号が入力される。
操作パネルに設けられた各種操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の自動制御運転を設定あるいは解除するオートスイッチ、車室内の冷房を行うか否かを設定する冷媒スイッチ(A/Cスイッチ)、送風機32の風量をマニュアル設定する風量設定スイッチ、車室内設定温度Tsetを設定する目標温度設定手段としての温度設定スイッチ、吹出モードをマニュアル設定する吹出モード切替スイッチ等がある。
なお、本実施形態の空調制御装置40は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御手段を構成している。
例えば、空調制御装置40のうち、熱媒体流量調整手段(本実施形態では、水ポンプ27)の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が熱媒体流量制御手段40aを構成し、送風量調整手段(本実施形態では、エアミックスドア34)の作動を制御する構成が送風量制御手段40bを構成している。もちろん、熱媒体流量制御手段40a、送風量制御手段40b等を空調制御装置40に対して別体の制御装置として構成してもよい。
次に、図2〜図5を用いて、上記構成における本実施形態の車両用空調装置1の作動について説明する。本実施形態の車両用空調装置1は、前述の如く、冷房モード、除湿暖房モード、さらに、暖房モードでの運転を行うことができる。これらの各運転モードの切り替えは、空調制御装置40が予め記憶している空調制御プログラムを実行することによって切り替えられる。
図2は、空調制御プログラムのメインルーチンとしての制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、操作パネルに設けられた車両用空調装置1のオートスイッチが投入(ON)されるとスタートする。なお、図2、図3のフローチャートにおける各制御ステップは、空調制御装置40が有する各種の機能実現手段を構成している。
まず、ステップS1では、フラグ、メモリ、タイマ等の初期化、および、各種空調制御機器の初期位置合わせ等のイニシャライズ(初期化処理)が行われてステップS2へ進む。このステップS1の初期化処理では、フラグやメモリのうち、前回の車両用空調装置1の作動終了時に記憶された値が維持されるものもある。
ステップS2では、操作パネルの操作信号を読み込み、続くステップS3では、空調制御用のセンサ群の検出信号を読み込んでステップS4へ進む。ステップS4では、ステップS2にて読み込まれた操作信号およびステップS3にて読み込まれた検出信号に基づいて、車室内へ吹き出される送風空気の目標吹出温度TAOを算出する。つまり、制御ステップS4は、目標温度決定手段を構成している。
具体的には、ステップS4では、以下数式F1を用いて目標吹出温度TAOを算出する。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×As+C…(F1)
なお、Tsetは温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサによって検出された車室内温度(内気温)、Tamは外気センサによって検出された外気温、Asは日射センサによって検出された日射量である。また、Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
続くステップS5では、送風機32の回転数(送風能力)、すなわち送風機32の電動モータに印加するブロワモータ電圧を決定してステップS6へ進む。具体的には、ステップS5では、ステップS4にて決定された目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して、ブロワモータ電圧を決定する。
より具体的には、本実施形態では、目標吹出温度TAOの極低温域および極高温域でブロワモータ電圧を最大値付近の高電圧にして、送風機32の風量を最大風量付近に制御する。また、目標吹出温度TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、目標吹出温度TAOの上昇に応じてブロワモータ電圧を減少させて、送風機32の風量を減少させる。
さらに、目標吹出温度TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、目標吹出温度TAOの低下に応じてブロワモータ電圧を減少させて、送風機32の風量を減少させる。また、目標吹出温度TAOが所定の中間温度域内に入ると、ブロワモータ電圧を最小値にして送風機32の風量を最小値にする。
ステップS6では、ステップS2にて読み込まれた操作信号および目標吹出温度TAOに基づいて、運転モードを決定する。具体的には、ステップS6では、A/Cスイッチが投入(ON)されており、かつ、目標吹出温度TAOが予め定めた冷房基準温度αよりも低くなっている場合には、運転モードを冷房モードに決定して、ステップS7へ進む。
また、ステップS6では、A/Cスイッチが投入(ON)されており、かつ、目標吹出温度TAOが冷房基準温度α以上となっている場合には、運転モードを除湿暖房モードに決定して、ステップS8へ進む。
また、ステップS6では、A/Cスイッチが非投入(OFF)となっている場合には、運転モードを暖房モードに決定して、ステップS9へ進む。ステップS7〜S9では、各運転モードに応じた制御処理が実行されて、ステップS10へ進む。これらのステップS7〜S9の制御処理の詳細内容については後述する。
続くステップS10では、吸込口モード、すなわち内外気切替ドア用の電動アクチュエータに出力される制御信号を決定してステップS11へ進む。具体的には、ステップS10では、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して吸込口モードを決定する。本実施形態では、基本的に外気を導入する外気モードが優先されるが、目標吹出温度TAOが極低温域となって高い冷房性能を得たい場合等には内気モードが選択される。
ステップS11では、吹出口モード、すなわち吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに出力される制御信号を決定してステップS12へ進む。具体的には、ステップS11では、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して吹出口モードを決定する。本実施形態では、目標吹出温度TAOが高温域から低温域へと下降するに伴って、吹出口モードをフットモード→バイレベルモード→フェイスモードへと順次切り替える。
ステップS12では、上述のステップS6〜S11にて決定された制御状態が得られるように、空調制御装置40から出力側に接続された各種制御対象機器に対して、制御信号および制御電圧が出力される。続くステップS13では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2に戻るようになっている。
以上の如く、図2に示すメインルーチンでは、検出信号および操作信号の読み込み→各制御対象機器の制御状態の決定→各制御対象機器に対する制御信号および制御電圧の出力を繰り返し、このメインルーチンは、車両用空調装置1の作動停止が要求されるまで実行される。次に、ステップS7〜S9にて実行される各運転モードの詳細について説明する。
(a)冷房モード
まず、ステップS7にて実行される冷房モードについて説明する。冷房モードでは、空調制御装置40が、暖房用膨張弁13aを全開状態とし、冷房用膨張弁13bを減圧作用を発揮する絞り状態とし、気相冷媒通路開閉弁15aを閉じ、迂回通路開閉弁15bを開き、暖房用開閉弁15cを閉じる。
これにより、冷房モードの冷凍サイクル装置10では、図1の白抜き矢印に示すように、圧縮機11→(水−冷媒熱交換器12→暖房用膨張弁13a→気液分離器14→固定絞り迂回通路16a→)室外熱交換器17→(分岐部18a→逆止弁19)→冷房用膨張弁13b→室内蒸発器20→(合流部18b→)アキュムレータ22→圧縮機11の順に冷媒を循環させる冷凍サイクルが構成される。
さらに、この冷媒回路の構成で、空調制御装置40が、制御ステップS4で算出された目標吹出温度TAO、およびセンサ群の検出信号等に基づいて、その他の各種制御対象機器の冷房モードにおける制御状態(各種制御対象機器へ出力する制御信号)を決定する。
例えば、圧縮機11の回転数Nc(冷媒吐出能力)、すなわち圧縮機11の電動モータに出力される制御信号については、次のように決定される。まず、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して、室内蒸発器20の目標蒸発器吹出温度TEOを決定する。
具体的には、この制御マップでは、送風空気温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくように、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、目標蒸発器吹出温度TEOが上昇するように決定される。さらに、目標蒸発器吹出温度TEOは、室内蒸発器20の着霜(フロスト)を防止するため、着霜温度(0℃)よりも高い所定温度(本実施形態では、1℃)以上となるように決定される。
そして、この目標蒸発器吹出温度TEOと蒸発器温度センサによって検出された蒸発器温度Tefinとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法を用いて蒸発器温度Tefinが目標蒸発器吹出温度TEOに近づくように、圧縮機11の回転数Ncが決定される。なお、圧縮機11の回転数Ncは、圧縮機11の耐久性能から決定される最高回転数Ncmax以下となるように決定される。
また、冷房用膨張弁13bへ出力される制御信号については、冷房用膨張弁13bへ流入する冷媒の過冷却度が、サイクルの成績係数(COP)が略最大となるように定められた目標過冷却度に近づくように決定される。
また、水ポンプ27に出力される制御信号については、水ポンプ27が予め定めた基準水圧送能力を発揮するように決定される。また、エアミックスドア34用の電動アクチュエータへ出力される制御信号については、エアミックスドア34がヒータコア26側の空気通路を閉塞し、室内蒸発器20通過後の送風空気の全風量が空気バイパス通路35を通過するように決定される。
従って、制御ステップS6にて冷房モードが選択されている際には、冷凍サイクル装置10では、圧縮機11の吐出口11cから吐出された高圧冷媒が、水−冷媒熱交換器12の冷媒通路へ流入する。この際、水−冷媒熱交換器12の水通路へ流入する温水の温度が、水−冷媒熱交換器12へ流入した高圧冷媒の温度よりも低い場合には、高圧冷媒の有する熱が温水へ放熱されて、熱媒体循環回路25を循環する温水が加熱される。
ここで、冷房モードでは、エアミックスドア34がヒータコア26側の空気通路を閉塞しているので、熱媒体循環回路25を循環する温水は、ヒータコア26へ流入しても、殆ど送風空気と熱交換することなく、ヒータコア26から流出する。従って、熱媒体循環回路25を循環する温水の温度は、冷房モードの開始後、高圧冷媒の温度と同等となるまで上昇する。
そして、熱媒体循環回路25を循環する温水の温度が、高圧冷媒の温度と同等となるまで上昇した際には、高圧冷媒は水−冷媒熱交換器12へ流入しても、殆ど温水と熱交換することなく、水−冷媒熱交換器12から流出する。水−冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒は、暖房用膨張弁13aが全開状態となっているので、暖房用膨張弁13aにて減圧されることなく気液分離器14へ流入する。
この際、水−冷媒熱交換器12にて、冷媒と温水は殆ど熱交換しないので、気液分離器14へ流入する冷媒は気相冷媒となる。従って、気液分離器14では冷媒の気液が分離されることなく、気相冷媒が液相冷媒流出口から流出していく。さらに、気相冷媒通路開閉弁15aが閉じているので、気液分離器14の気相冷媒流出口から気相冷媒が流出することはない。
気液分離器14の液相冷媒流出口から流出した気相冷媒は、迂回通路開閉弁15bが開いているので、固定絞り迂回通路16aを介して、室外熱交換器17へ流入する。室外熱交換器17へ流入した冷媒は、室外熱交換器17にて、送風ファンから送風された外気と熱交換して放熱する。
室外熱交換器17から流出した冷媒は、暖房用開閉弁15cが閉じているので、分岐部18aを介して、冷房用膨張弁13bへ流入して低圧冷媒となるまで減圧される。冷房用膨張弁13bにて減圧された冷媒は、室内蒸発器20へ流入し、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、送風空気が冷却される。
室内蒸発器20から流出した冷媒は、合流部18bを介してアキュムレータ22へ流入して気液分離される。アキュムレータ22にて分離された気相冷媒は、圧縮機11の低圧吸入口11aへ吸入されて再び圧縮される。
以上の如く、冷房モードでは、室内蒸発器20にて冷却された送風空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の冷房を行うことができる。
(b)除湿暖房モード
次に、ステップS8にて実行される除湿暖房モードについて説明する。除湿暖房モードでは、空調制御装置40が、暖房用膨張弁13aおよび冷房用膨張弁13bを全開状態あるいは絞り状態とし、気相冷媒通路開閉弁15aを閉じ、迂回通路開閉弁15bを開き、暖房用開閉弁15cを閉じる。
これにより、除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、図1の斜線ハッチング付き矢印に示すように、圧縮機11→水−冷媒熱交換器12→暖房用膨張弁13a→(気液分離器14→固定絞り迂回通路16a→)室外熱交換器17→(分岐部18a→逆止弁19)→冷房用膨張弁13b→室内蒸発器20→(合流部18b→)アキュムレータ22→圧縮機11の順に冷媒を循環させる冷凍サイクルが構成される。つまり、除湿暖房モードでは、実質的に冷房モードと同様の順で冷媒が循環する冷凍サイクルが構成される。
さらに、この冷媒回路の構成で、空調制御装置40が、目標吹出温度TAO、およびセンサ群の検出信号等に基づいて、その他の各種制御対象機器の除湿暖房モードにおける制御状態を決定する。例えば、圧縮機11の電動モータに出力される制御信号については、冷房モードと同様に決定される。
また、水ポンプ27に出力される制御信号については、水ポンプ27が予め定めた基準水圧送能力を発揮するように決定される。また、エアミックスドア34用の電動アクチュエータへ出力される制御信号については、エアミックスドア34が空気バイパス通路35を閉塞し、室内蒸発器20通過後の送風空気の全風量がヒータコア26側の空気通路を通過するように決定される。
また、暖房用膨張弁13aおよび冷房用膨張弁13bについては、目標吹出温度TAOに応じて変更している。具体的には、空調制御装置40は、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、暖房用膨張弁13aの絞り開度を減少させるとともに、冷房用膨張弁13bの絞り開度を増加させる。
従って、制御ステップS6にて除湿暖房モードが選択されている際には、冷凍サイクル装置10では、目標吹出温度TAOに応じて、以下に説明する第1モードから第4モードの4段階の運転モードが実行されることになる。
(b−1)第1モード
第1モードは、除湿暖房モード時に、目標吹出温度TAOが冷房基準温度α以上、かつ、予め定めた第1基準温度α1以下となっている場合に実行される。
第1モードでは、空調制御装置40が、暖房用膨張弁13aの絞り開度を全開とし、冷房用膨張弁13bを絞り状態とする。従って、第1モードでは、冷凍サイクル装置10のサイクル構成が冷房運転モードと全く同様となるものの、エアミックスドア34がヒータコア26側の空気通路を全開としているので、室内蒸発器20にて冷却された送風空気をヒータコア26にて再加熱することができる。
従って、第1モード時には、室内蒸発器20にて冷却されて除湿された送風空気を、ヒータコア26にて再加熱して車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の除湿暖房を行うことができる。
(b−2)第2モード
第2モードは、除湿暖房モード時に、目標吹出温度TAOが第1基準温度α1より高く、かつ、予め定めた第2基準温度α2以下となった場合に実行される。
第2モードでは、空調制御装置40が、暖房用膨張弁13aを絞り状態とし、冷房用膨張弁13bの絞り開度を第1モード時よりも増加させる。この際、暖房用膨張弁13aの絞り開度は、暖房用膨張弁13aから流出した冷媒の飽和温度(凝縮温度)が外気温Tamより高くなるように決定される。
従って、第2モード時には、第1モードと同様に、室内蒸発器20にて冷却されて除湿された送風空気を、ヒータコア26にて加熱して車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の除湿暖房を行うことができる。
さらに、第2モードでは、空調制御装置40が、暖房用膨張弁13aを絞り状態としているので、第1モードに対して、室外熱交換器17へ流入する冷媒の温度を低下させることができる。従って、室外熱交換器17における冷媒の温度と外気温との温度差を縮小して、室外熱交換器17における冷媒の放熱量を低減できる。
その結果、第1モードに対して、サイクルを循環する冷媒循環流量を増加させることなく、水−冷媒熱交換器12における冷媒圧力を上昇させて水−冷媒熱交換器12にて加熱された温水の温度を上昇させることができるので、第1モードよりもヒータコア26から吹き出される温度を上昇させることができる。
(b−3)第3モード
第3モードは、除湿暖房モード時に、目標吹出温度TAOが第2基準温度α2より高く、かつ、予め定めた第3基準温度α3以下となった場合に実行される。
第3モードでは、空調制御装置40が、暖房用膨張弁13aの絞り開度を第2モード時よりも減少させ、冷房用膨張弁13bの絞り開度を第2モード時よりも増加させる。この際、暖房用膨張弁13aの絞り開度は、暖房用膨張弁13aから流出した冷媒の飽和温度(蒸発温度)が外気温Tamより低くなるように決定される。
従って、第3モード時には、第1、第2モードと同様に、室内蒸発器20にて冷却されて除湿された送風空気を、ヒータコア26にて加熱して車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の除湿暖房を行うことができる。
さらに、第3モードでは、空調制御装置40が、暖房用膨張弁13aの絞り開度を減少させることによって、室外熱交換器17を蒸発器として機能させるので、冷媒が室外熱交換器17にて吸熱した熱をヒータコア26にて送風空気へ放熱させることができる。従って、第2モードよりもヒータコア26から吹き出される温度を上昇させることができる。
その結果、第2モードに対して、サイクルを循環する冷媒循環流量を増加させることなく、水−冷媒熱交換器12における冷媒圧力を上昇させて水−冷媒熱交換器12にて加熱された温水の温度を上昇させることができるので、第2モードよりもヒータコア26から吹き出される温度を上昇させることができる。
(b−4)第4モード
第4モードは、除湿暖房モード時に、目標吹出温度TAOが第3基準温度α3より高くなった場合に実行される。第4モードでは、空調制御装置40が、暖房用膨張弁13aの絞り開度を第3モード時よりも減少させ、冷房用膨張弁13bを全開とする。
従って、第4モード時には、第1〜第3モードと同様に、室内蒸発器20にて冷却されて除湿された送風空気を、ヒータコア26にて加熱して車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の除湿暖房を行うことができる。
さらに、第4モードでは、第3モードと同様に、室外熱交換器17を蒸発器として機能させるとともに、第3モードよりも暖房用膨張弁13aの絞り開度を縮小させているので、室外熱交換器17における冷媒蒸発温度を低下させることができる。従って、第3モードよりも室外熱交換器17における冷媒の温度と外気温との温度差を拡大させて、室外熱交換器17における冷媒の吸熱量を増加させることができる。
その結果、第3モードに対して、サイクルを循環する冷媒循環流量を増加させることなく、水−冷媒熱交換器12における冷媒圧力を上昇させて水−冷媒熱交換器12にて加熱された温水の温度を上昇させることができるので、第3モードよりもヒータコア26から吹き出される温度を上昇させることができる。
以上の如く、除湿暖房モードでは、目標吹出温度TAOに応じて第1〜第4モードへ切り替えることで、室内蒸発器20にて冷却されて除湿された送風空気を、ヒータコア26にて適切な温度となるまで再加熱して、車室内の適切な除湿暖房を行うことができる。
(c)暖房モード
次に、図3、図4を用いて、ステップS9にて実行される暖房モードについて説明する。なお、図3は、図2で説明したメインルーチンのサブルーチンとして実行される制御処理を示すフローチャートである。
まず、図3のステップS91では、その他の各種制御対象機器の暖房モードにおける制御状態が決定される。具体的には、暖房用膨張弁13aを絞り状態とし、冷房用膨張弁13bを全閉とし、気相冷媒通路開閉弁15aを開き、迂回通路開閉弁15bを閉じ、暖房用開閉弁15cを開く。
これにより、暖房モードの冷凍サイクル装置10では、図1の黒塗り矢印に示すように、圧縮機11→水−冷媒熱交換器12→暖房用膨張弁13a→気液分離器14→中間圧固定絞り16→室外熱交換器17(→アキュムレータ側通路21)→アキュムレータ22→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、気液分離器14の気相冷媒流出口から圧縮機11の中間圧吸入口11bへ中間圧の気相冷媒を流入させる、ガスインジェクションサイクルが構成される。
さらに、圧縮機11の回転数Nc、すなわち圧縮機11の電動モータに出力される制御信号については、次のように決定される。まず、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して、水−冷媒熱交換器12における目標冷媒圧力TPdを決定する。
具体的には、この制御マップでは、送風空気温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくように、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、目標冷媒圧力TPdが上昇するように決定する。従って、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、圧縮機11の回転数Ncも増加することになる。
そして、この目標冷媒圧力TPdと吐出圧力センサによって検出された吐出冷媒圧力Pdとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法を用いて吐出冷媒圧力Pdが目標冷媒圧力TPdに近づくように、圧縮機11の回転数Ncが決定される。なお、圧縮機11の回転数Ncは、冷房モード等と同様に、圧縮機11の耐久性能から決定される最高回転数Ncmax以下となるように決定される。
また、暖房用膨張弁13aへ出力される制御信号については、暖房用膨張弁13aへ流入する冷媒の過冷却度が、COPが略最大となるように定められた目標過冷却度に近づくように決定される。
また、水ポンプ27に出力される制御信号については、水ポンプ27が予め定めた基準水圧送能力を発揮するように決定される。また、エアミックスドア34用の電動アクチュエータへ出力される制御信号については、エアミックスドア34が空気バイパス通路35を閉塞し、室内蒸発器20通過後の送風空気の全風量がヒータコア26側の空気通路を通過するように決定される。
次に、図3のステップS92では、現在の圧縮機11の回転数Ncが最高回転数Ncmaxとなっているか否か、すなわち、Nc=Ncmaxとなっているか否かが判定される。ステップS92にて、Nc=Ncmaxとなっていない場合には、ステップS93へ進み、通常暖房制御が実行される。一方、ステップS92にて、Nc=Ncmaxとなっている場合には、ステップS94へ進み、強暖房制御が実行される。
ステップS93の通常暖房制御では、ステップS91にて決定された各種制御対象機器の制御状態が変更されることなくステップS10へ戻る。つまり、ステップS93の通常暖房制御は、圧縮機11の回転数Ncを調整することによって送風空気温度TAVを目標吹出温度TAOに近づけることができる場合に、暖房用膨張弁13aの弁開度を調整してサイクルのCOPを略最大に近づけるように実行される制御である。
ステップS94の強暖房制御では、ステップS91にて決定された水ポンプ27の水圧送能力(回転数)を予め定めた所定量減少させてステップS10へ戻る。つまり、ステップS94の強暖房制御は、外気温が極低温となった場合のように、圧縮機11の回転数Ncを調整することによって送風空気温度TAVを目標吹出温度TAOに近づけることができない場合に実行される制御である。
換言すると、強暖房制御は、送風空気温度TAVが目標吹出温度TAOより低くなっている際に、圧縮機11の回転数Ncを調整することなく、送風空気温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくように、水−冷媒熱交換器12へ流入する温水の流量を低下させる制御である。
暖房モードでは、以上の制御処理が実行されるので、冷凍サイクル装置10では、図4のモリエル線図に示すように冷媒の状態が変化する。なお、図4では、通常暖房制御時の冷媒の状態の変化を太実線で示し、通常暖房制御から強暖房制御へ移行した際の冷媒の状態の変化を太破線で示している。
まず、暖房モードの通常暖房制御が実行されると、冷凍サイクル装置10では、図4のモリエル線図の実線で示すように冷媒の状態が変化する。具体的には、圧縮機11の吐出口11cから吐出された高温高圧冷媒(図4のa点)が、水−冷媒熱交換器12へ流入し、熱媒体循環回路25を循環する温水と熱交換して放熱する(図4のa点→b点)。これにより、温水が加熱される。
さらに、暖房モードでは、エアミックスドア34がヒータコア26側の空気通路を全開としているので、加熱された温水がヒータコア26へ流入することにより、室内蒸発器20通過後の送風空気が加熱される。
水−冷媒熱交換器12から流出した冷媒は、暖房用膨張弁13aへ流入して中間圧冷媒となるまで減圧される。(図4のb点→c1点)。暖房用膨張弁13aにて減圧された中間圧冷媒は、気液分離器14へ流入して気液分離される(図4のc1点→c2点、c1点→c3点)。
気液分離器14にて分離された気相冷媒(図4のc2点)は、気相冷媒通路開閉弁15aが開いているので、圧縮機11の中間圧吸入口11bから吸入されて、低段側圧縮機構から吐出された中間圧冷媒(図4のa1点)と合流して(図4のc2点→a2点、a1点→a2点)、高段側圧縮機構へ吸入される。
一方、気液分離器14にて分離された液相冷媒は、迂回通路開閉弁15bが閉じているので、気液分離器14の液相冷媒流出口から中間圧固定絞り16側へ流入し、中間圧固定絞り16にて低圧冷媒となるまで減圧される(図4のc3点→c4点)。中間圧固定絞り16から流出した冷媒は、室外熱交換器17へ流入して、送風ファンから送風された外気から吸熱して蒸発する(図4のc4点→d点)。
室外熱交換器17から流出した冷媒は、暖房用開閉弁15cが開いているので、分岐部18aおよびアキュムレータ側通路21を介して、アキュムレータ22へ流入して気液分離される。アキュムレータ22にて分離された気相冷媒は、冷房モードと同様に、圧縮機11の低圧吸入口11a(図4のe点)へ吸入されて再び圧縮される。
なお、図4においてd点とe点が異なっている理由は、アキュムレータ22から圧縮機11の低圧吸入口11aへ至る冷媒配管を流通する気相冷媒には圧力損失が生じるからである。従って、理想的なサイクルでは、d点とe点が一致していることが望ましい。
従って、通常暖房制御では、水−冷媒熱交換器12にて加熱された温水をヒータコア26へ供給することで、ヒータコア26にて送風空気を加熱することができる。そして、加熱された送風空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。さらに、通常暖房制御では、暖房用膨張弁13aの弁開度を制御することによって、COPを略最大に近づけることができる。
次に、強暖房制御について説明する。なお、図4では、強暖房制御時の冷媒の状態の符号として、通常暖房制御時の同様の状態の冷媒の符号に「’」をつけて示している。前述の如く、強暖房制御が実行されると、水ポンプ27の水圧送能力(回転数)を予め定めた所定量分減少させる。
これにより、通常暖房制御時に対して、水−冷媒熱交換器12へ流入する温水の流量が減少し、水−冷媒熱交換器12にて温水が冷媒から吸熱する吸熱量、すなわち、水−冷媒熱交換器12にて冷媒が温水に放熱する放熱量が減少する。このため、冷凍サイクル装置10のサイクルバランスが、水−冷媒熱交換器12における冷媒圧力が上昇するようにバランスする(図4のa’点、b’点)。
従って、強暖房制御では、通常暖房制御時に対して、サイクルを循環する冷媒循環流量を増加させることなく、水−冷媒熱交換器12における冷媒圧力を上昇させて水−冷媒熱交換器12にて加熱された温水の温度を上昇させることができる。これにより、通常暖房制御時よりもヒータコア26へ流入する温水の温度を上昇させて、ヒータコア26にて加熱される送風空気の温度を上昇させることができる。
本発明者らの検討によれば、本実施形態の車両用空調装置1では、図5のグラフに示すように、強暖房制御時に、水−冷媒熱交換器12へ流入させる温水の流量(温水流量)を通常暖房制御時の5%〜15%程度に減少させることで、ヒータコア26における送風空気の加熱能力が上昇することが判っている。
以上の如く、暖房モードでは、圧縮機11の回転数Ncに応じて、通常暖房制御および強暖房制御を切り替えることで、ヒータコア26にて送風空気を適切な温度となるまで加熱して、車室内の適切な暖房を行うことができる。
本実施形態の車両用空調装置1によれば、以上説明したように、冷凍サイクル装置10の冷媒回路を切り替えることによって、車室内の冷房、除湿暖房、および暖房を行うことができ、車室内の快適な空調を実現することができる。
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、暖房モード時に冷凍サイクル装置10がガスインジェクションサイクルを構成している。これにより、中間圧冷媒を圧縮機11にて昇圧過程の冷媒に合流させない通常の蒸気圧縮式の冷凍サイクルよりも、水−冷媒熱交換器12へ流入する冷媒の圧力を比較的高圧となるまで上昇させて、水−冷媒熱交換器12へ流入した温水を比較的高温となるまで加熱することができる。
従って、圧縮機11の回転数Nc(冷媒吐出能力)等を調整することによって、水−冷媒熱交換器12にて加熱される熱媒体の温度を容易に調整することができ、ヒータコア26にて温水と熱交換して加熱される送風空気の温度についても容易に調整することができる。
つまり、本実施形態の車両用空調装置1によれば、冷凍サイクル装置10によって加熱された温水(熱媒体)を熱源として車室内へ送風される送風空気を所望の温度となるまで適切に加熱することができる。
また、本実施形態の車両用空調装置1では、室内空調ユニット30として、前述した車両走行用の駆動力をエンジンから得る通常の車両に適用される車両用空調装置用の室内空調ユニットと同様の構成のものを採用することができるので、車両用空調装置1の製造コストの低減を図ることができる。
また、本実施形態の車両用空調装置1では、熱媒体循環回路25に熱媒体流量調整手段としての水ポンプ27が設けられているので、暖房モードの強暖房制御で説明したように、水−冷媒熱交換器12へ流入する温水の流量を調整することによって、ヒータコア26における送風空気の加熱能力を向上させることができる。その結果、送風空気をより一層適切に加熱することができる。
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図6の全体構成図に示すように、熱媒体循環回路25の構成を変更した例を説明する。なお、図6では、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。このことは、以下の図面でも同様である。具体的には、本実施形態の熱媒体循環回路25には、第1実施形態に対して、熱媒体バイパス通路28および三方式の流量調整弁29が追加されている。
熱媒体バイパス通路28は、水ポンプ27から圧送された温水を、水−冷媒熱交換器12を迂回させてヒータコア26の上流側へ導く熱媒体配管で構成されている。
流量調整弁29は、水ポンプ27から圧送された温水のうち、水−冷媒熱交換器12へ流入させる温水の流量と熱媒体バイパス通路28へ流入させる温水の流量との流量比を調整する流量比調整手段(熱媒体流量調整手段)である。さらに、流量調整弁29は、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される電動式の流量調整弁である。その他の構成は第1実施形態と同様である。
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。本実施形態の車両用空調装置1では、水ポンプ27に出力される制御信号については、いずれの運転モードにおいても、水ポンプ27が予め定めた基準水圧送能力を発揮するように決定される。
さらに、冷房モード、除湿暖房モード、および暖房モードの通常暖房制御時には、空調制御装置40が、水ポンプ27から圧送された温水の全流量を水−冷媒熱交換器12へ流入させるように流量調整弁29の作動を制御する。
これにより、冷房モード、除湿暖房モード、および暖房モードの通常暖房制御時の熱媒体循環回路25では、図6の太実線矢印に示すように、水ポンプ27(→流量調整弁29)→水−冷媒熱交換器12→ヒータコア26→水ポンプ27の順に温水が循環する。
また、暖房モードの強暖房制御時には、空調制御装置40が、水ポンプ27から圧送された温水のうち、予め定めた基準流量の温水を水−冷媒熱交換器12へ流入させるとともに、残余の温水を熱媒体バイパス通路28へ流入させるように流量調整弁29の作動を制御する。
これにより、暖房モードの強暖房制御時の熱媒体循環回路25では、図6の太破線矢印に示すように、水ポンプ27(→流量調整弁29)→水−冷媒熱交換器12→ヒータコア26→水ポンプ27の順に温水が循環するとともに、水ポンプ27(→流量調整弁29→熱媒体バイパス通路28)→ヒータコア26→水ポンプ27の順に温水が循環する。
つまり、本実施形態では、暖房モードの強暖房制御時に、流量調整弁29が流量比を調整することによって、水ポンプ27の水圧送能力を低下させることなく、水−冷媒熱交換器12へ流入する温水の流量を低下させることができる。その他の作動は第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の車両用空調装置1においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
ここで、第1実施形態の暖房モードの強暖房制御では、水ポンプ27の水圧送能力を低下させることによって、水−冷媒熱交換器12へ流入させる温水の流量を低下させている。従って、第1実施形態の強暖房制御では、ヒータコア26へ流入する温水の流量も低下する。
さらに、ヒータコア26のような全パスタイプのタンクアンドチューブ型の熱交換器では、内部へ流入する温水の流量が低下してしまうと、分配用のタンクから各チューブへ分配される温水量が不均一となり、ヒータコア26から吹き出される送風空気の温度分布が拡大してしまうおそれがある。
これに対して、本実施形態の車両用空調装置1では、通常暖房制御から強暖房制御へ切り替えても、水ポンプ27の水圧送能力が低下せず、ヒータコア26へ流入する温水の流量が低下してしまうことがない。
従って、本実施形態の車両用空調装置1によれば、図7のグラフに示すように、水−冷媒熱交換器12へ流入する温水の流量とヒータコア26へ流入する温水の流量が一致する車両用空調装置(以下、比較用車両用空調装置という。)に対して、温度分布が拡大してしまうことを抑制できる。なお、図7の縦軸に示す最大温度差は、強暖房制御時にヒータコア26から吹き出された直後の送風空気の最高温度から最低温度を減算した温度差である。
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、比較用車両用空調装置に対して、ヒータコア26へ流入する温水の流量が増加するので、水−冷媒熱交換器12へ流入させる温水の流量を適切に調整することで、比較用車両用空調装置よりもヒータコア26における送風空気の加熱能力を上昇させることができる。
本発明者らの検討によれば、本実施形態の車両用空調装置1では、図8のグラフに示すように、強暖房制御時に、水−冷媒熱交換器12へ流入させる温水の流量(温水流量)を通常暖房制御時の13%〜17%程度に減少させることによって、ヒータコア26における送風空気の加熱能力が比較用車両用空調装置よりも上昇することが判っている。
(第3実施形態)
本実施形態では、第2実施形態に対して、図9の全体構成図に示すように、三方式の流量調整弁29を廃止して、熱媒体バイパス通路28に熱媒体用開閉弁29aおよび熱媒体用絞り機構29bを配置した例を説明する。具体的には、熱媒体用開閉弁29aは、熱媒体バイパス通路28を開閉する電磁弁であって、空調制御装置40から出力される制御電圧によって、その開閉作動が制御される。
熱媒体用絞り機構29bは、熱媒体バイパス通路28を流通する熱媒体に所定の通路抵抗を生じさせるもので、オリフィス等を採用することができる。さらに、本実施形態では、熱媒体用絞り機構29bとして、熱媒体用開閉弁29aが熱媒体バイパス通路28を開いた際に、水−冷媒熱交換器12へ流入する温水の流量が第2実施形態と同等の基準流量となるように設定されたものを採用している。
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、冷房モード、除湿暖房モード、および暖房モードの通常暖房制御時には、空調制御装置40が熱媒体用開閉弁29aを閉じる。これにより、冷房モード、除湿暖房モード、および暖房モードの通常暖房制御時の熱媒体循環回路25では、図9の太実線矢印に示すように、第2実施形態の冷房モード、除湿暖房モード、および暖房モードの通常暖房制御時と同様に熱媒体が循環する。
また、暖房モードの強暖房制御時には、空調制御装置40が熱媒体用開閉弁29aを開く。これにより、暖房モードの強暖房制御時の熱媒体循環回路25では、図9の太破線矢印に示すように、第2実施形態の暖房モードの強暖房制御時と同様に熱媒体が循環する。
これにより、強暖房制御時には、通常暖房制御時よりも水−冷媒熱交換器12へ流入する温水流量が低下する。従って、本実施形態では、熱媒体用開閉弁29aが、流量比調整手段(熱媒体流量調整手段)を構成している。
その他の構成および作動は第2実施形態と同様である。従って、本実施形態の車両用空調装置1においても、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、第2実施形態のように三方式の流量調整弁29を採用する場合に対して、簡素な構成でヒータコア26から吹き出される送風空気の温度分布が拡大してしまうことを抑制できる。
なお、本実施形態では、熱媒体バイパス通路28に熱媒体用絞り機構29bを配置した例を説明したが、熱媒体用開閉弁29aが熱媒体バイパス通路28を開いた際に、第2実施形態と同様に水−冷媒熱交換器12へ流入する温水の流量を低下させることができれば、熱媒体用絞り機構29bを廃止してもよい。
例えば、熱媒体用絞り機構29bを廃止し、さらに、熱媒体用開閉弁29aとして、熱媒体バイパス通路28を開いた際に、熱媒体用絞り機構29bと同等の通路抵抗を生じさせるものを採用してもよい。また、熱媒体用絞り機構29bを廃止し、さらに、熱媒体バイパス通路28を形成する熱媒体配管の管径を調整することによって、熱媒体用絞り機構29bと同等の通路抵抗を生じさせるようにしてもよい。
(第4実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図10の全体構成図に示すように、熱媒体循環回路25の構成を変更した例を説明する。具体的には、本実施形態の熱媒体循環回路25には、第1実施形態に対して、熱媒体バイパス通路28、第2実施形態と同様の三方式の流量調整弁29、第3実施形態と同様の熱媒体用開閉弁29aおよび補助ヒータコア26aが追加されている。
本実施形態の熱媒体バイパス通路28は、水ポンプ27から圧送された温水を、水−冷媒熱交換器12を迂回させて流量調整弁29の入口側へ導く熱媒体配管で構成されている。また、本実施形態の流量調整弁29は、水ポンプ27の吐出口側とヒータコア26の温水入口側とを接続し、さらに、水−冷媒熱交換器12の温水出口側とヒータコア26の温水入口側とを接続するように配置されている。
また、本実施形態の水−冷媒熱交換器12の温水流れ下流側には、熱媒体用開閉弁29aを介して、補助ヒータコア26aの温水入口側も接続されている。補助ヒータコア26aは、室内空調ユニット30のケーシング31内のうちヒータコア26の送風空気流れ下流側に配置されて、内部を流通する温水とヒータコア26を通過した送風空気とを熱交換させて送風空気を加熱する補助加熱用熱交換器である。
さらに、この補助ヒータコア26aは、ヒータコア26と同様の全パスタイプのタンクアンドチューブ型の熱交換器で構成されている。さらに、ヒータコア26の温水出口側と補助ヒータコア26aの温水出口側は、いずれも水ポンプ27の吸入側に接続されている。その他の構成は第1実施形態と同様である。
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。本実施形態の車両用空調装置1では、水ポンプ27に出力される制御信号については、いずれの運転モードにおいても、水ポンプ27が予め定めた基準水圧送能力を発揮するように決定される。
さらに、冷房モード、除湿暖房モード、および暖房モードの通常暖房制御時には、空調制御装置40が、水−冷媒熱交換器12の温水出口側とヒータコア26の温水入口側とを接続するように流量調整弁29の作動を制御するとともに、熱媒体用開閉弁29aを閉じる。
これにより、冷房モード、除湿暖房モード、および暖房モードの通常暖房制御時の熱媒体循環回路25では、図11の太実線矢印で示すように、水ポンプ27→水−冷媒熱交換器12(→流量調整弁29)→ヒータコア26→水ポンプ27の順に温水が循環する。この際、水ポンプ27から圧送される温水流量をGW1とすると、水−冷媒熱交換器12を流通を流通する温水流量およびヒータコア26を流通する温水流量はGW1となる。
また、暖房モードの強暖房制御時には、空調制御装置40が、水ポンプ27の温水吐出口側とヒータコア26の温水入口側とを接続するように流量調整弁29の作動を制御するとともに、熱媒体用開閉弁29aを開く。
これにより、暖房モードの強暖房制御時の熱媒体循環回路25では、図12の太破線矢印で示すように、水ポンプ27→水−冷媒熱交換器12(→熱媒体用開閉弁29a)→補助ヒータコア26a→水ポンプ27の順に温水が循環するするとともに、水ポンプ27(→熱媒体バイパス通路28→流量調整弁29)→ヒータコア26→水ポンプ27の順に温水が循環する。
この際、水ポンプ27から圧送される温水流量をGW1とすると、熱媒体バイパス通路28を流通する温水流量およびヒータコア26を流通する温水流量はGW2となり、水−冷媒熱交換器12を流通する温水流量および補助ヒータコア26aを流通する温水流量はGW3となる。なお、図12から明らかなように、GW2とGW3との合算値はGW1となる。
つまり、本実施形態の強暖房制御時には、流量調整弁29が流量比を調整することで、水ポンプ27の水圧送能力を低下させることなく、水−冷媒熱交換器12へ流入する温水の流量を低下させることができる。その他の作動は第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の車両用空調装置1においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
より詳細には、本実施形態の除湿暖房モードおよび暖房モードの通常暖房制御では、ヒータコア26にて、第1実施形態と同様に送風空気を加熱することができる。また、暖房モードの強暖房制御では、第1実施形態と同様にヒータコア26へ流入する温水の温度を上昇させて、ヒータコア26にて加熱される送風空気の温度を上昇させることができる。
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、強暖房制御時に、補助ヒータコア26aにて、熱媒体バイパス通路28を通過した温水とヒータコア26通過後の送風空気とを熱交換させて送風空気を加熱している。従って、熱媒体バイパス通路28を通過した熱媒体の有する熱を、送風空気を加熱するために有効に活用することができる。
(第5実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図13の全体構成図に示すように、熱媒体循環回路25の構成を変更した例を説明する。具体的には、本実施形態の熱媒体循環回路25には、第1実施形態に対して、第4実施形態と同様の熱媒体バイパス通路28、第2実施形態と同様の三方式の流量調整弁29、および第4実施形態と同様の補助ヒータコア26aが追加されている。
本実施形態の熱媒体バイパス通路28は、水ポンプ27から圧送された温水を、水−冷媒熱交換器12を迂回させて流量調整弁29の入口側へ導く熱媒体配管で構成されている。また、本実施形態の流量調整弁29は、水ポンプ27の吐出口側と補助ヒータコア26aの温水入口側とを接続し、さらに、ヒータコア26の温水出口側と補助ヒータコア26aの温水入口側とを接続するように配置されている。
また、本実施形態の水−冷媒熱交換器12の温水流れ下流側には、ヒータコア26の温水入口側が接続されている。その他の構成は第1実施形態と同様である。
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。本実施形態の車両用空調装置1では、水ポンプ27に出力される制御信号については、いずれの運転モードにおいても、水ポンプ27が予め定めた基準水圧送能力を発揮するように決定される。
さらに、冷房モード、除湿暖房モード、および暖房モードの通常暖房制御時には、空調制御装置40が、水ポンプ27から圧送された温水の全流量を水−冷媒熱交換器12へ流入させるように流量調整弁29の作動を制御する。
これにより、冷房モード、除湿暖房モード、および暖房モードの通常暖房制御時の熱媒体循環回路25では、図14の太実線矢印で示すように、水ポンプ27→水−冷媒熱交換器12→ヒータコア26(→流量調整弁29)→補助ヒータコア26a→水ポンプ27の順に温水が循環する。
この際、水ポンプ27から圧送される温水流量をGW1とすると、水−冷媒熱交換器12を流通する温水流量、ヒータコア26を流通する温水流量、および補助ヒータコア26aを流通する温水流量はGW1となる。
また、暖房モードの強暖房制御時には、空調制御装置40が、水ポンプ27から圧送された温水のうち、予め定めた基準流量の温水を水−冷媒熱交換器12へ流入させるとともに、残余の温水を熱媒体バイパス通路28へ流入させるように流量調整弁29の作動を制御する。
これにより、暖房モードの強暖房制御時の熱媒体循環回路25では、図15の模式的な説明図に太破線矢印で示すように、水ポンプ27→水−冷媒熱交換器12→ヒータコア26(→流量調整弁29)→補助ヒータコア26a→水ポンプ27の順に温水が循環するするとともに、水ポンプ27(→熱媒体バイパス通路28→流量調整弁29)→補助ヒータコア26a→水ポンプ27の順に温水が循環する。
この際、水ポンプ27から圧送される温水流量をGW1とすると、熱媒体バイパス通路28を流通する温水流量はGW2となり、水−冷媒熱交換器12を流通する温水流量およびヒータコア26を流通する温水流量はGW2となり、補助ヒータコア26aを流通する温水流量はGW1となる。なお、図15から明らかなように、GW2とGW3との合算値はGW1となる。
つまり、本実施形態の強暖房制御時には、流量調整弁29が流量比を調整することで、水ポンプ27の水圧送能力を低下させることなく、水−冷媒熱交換器12へ流入する温水の流量を低下させることができる。その他の作動は第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の車両用空調装置1においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
より詳細には、本実施形態の除湿暖房モードおよび暖房モードの通常暖房制御では、ヒータコア26および補助ヒータコア26aにて、送風空気を加熱することができる。また、暖房モードの強暖房制御では、第1実施形態と同様にヒータコア26へ流入する温水の温度を上昇させて、ヒータコア26にて加熱される送風空気の温度を上昇させることができる。
さらに、本実施形態の車両用空調装置1では、強暖房制御時に、補助ヒータコア26aにて、流量調整弁29から流出した温水とヒータコア26通過後の送風空気とを熱交換させて送風空気を加熱している。従って、熱媒体バイパス通路28を通過した熱媒体の有する熱を、送風空気を加熱するために有効に活用することができる。
また、本実施形態の車両用空調装置1では、強暖房制御時に、ヒータコア26に対して送風空気流れ下流側に配置された補助ヒータコア26aへ流入する温水の流量が通常暖房制御時よりも低下してしまうことがない。従って、第2実施形態と同様に、補助ヒータコア26aから吹き出される送風空気の温度分布が拡大してしまうことを抑制できる。
(第6実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、暖房モードの制御態様を変更した例を説明する。具体的には、本実施形態の暖房モードの通常暖房制御は、第1実施形態と同様である。従って、空調制御装置40は、空気バイパス通路35を閉塞するとともにヒータコア26側の空気通路を全開とするように送風量制御手段であるエアミックスドア34の作動を制御する。
これにより、図16の模式的な説明図に示すように、通常暖房制御時には、送風機32から送風される送風空気の風量をVa1とすると、ヒータコア26を通過する送風空気の風量もVa1となる。
また、暖房モードの強暖房制御では、空調制御装置40が、空気バイパス通路35を予め定めた所定量開くようにエアミックスドア34の作動を制御する。
これにより、図17の模式的な説明図に示すように、送風機32から送風される送風空気の風量をVa1とすると、ヒータコア26を通過する送風空気の風量がVa2となり、空気バイパス通路35通過する送風空気の風量がVa3となる。なお、図17から明らかなように、Va2とVa3との合算値はVa1となる。
つまり、本実施形態の強暖房制御時には、エアミックスドア34が風量割合を調整してヒータコア26へ流入する送風空気の風量を低下させている。その他の車両用空調装置1の構成および作動は第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の車両用空調装置1においても、第1実施形態と同様に、車室内の快適な空調を実現することができる。
より詳細には、本実施形態の暖房モードの強暖房制御では、エアミックスドア34がヒータコア26へ流入する送風空気の風量を低下させるので、ヒータコア26における温水の放熱量が減少し、ヒータコア26から流出して再び水−冷媒熱交換器12へ流入する温水の温度が上昇する。
これにより、水−冷媒熱交換器12における温水と高圧冷媒との温度差が減少し、高圧冷媒の放熱量も減少する。このため、冷凍サイクル装置10のサイクルバランスが、水−冷媒熱交換器12における冷媒圧力が上昇するようにバランスし、通常暖房制御時よりも水−冷媒熱交換器12にて加熱された温水の温度を上昇させることができる。
従って、強暖房制御では、通常暖房制御時よりもヒータコア26へ流入する温水の温度を上昇させて、ヒータコア26にて加熱される送風空気の温度を上昇させることができる。
つまり、本実施形態の強暖房制御では、外気温が極低温となった場合のように、圧縮機11の回転数Ncを調整することによって送風空気温度TAVを目標吹出温度TAOに近づけることができない場合に、送風空気温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくようにエアミックスドア34がヒータコア26へ流入する送風空気の風量を低下させている。
なお、本実施形態では、暖房モードの強暖房制御時に、エアミックスドア34が風量割合を調整することによって、ヒータコア26へ流入する送風空気の風量を低下させた例を説明したが、もちろん、送風機32の送風能力(回転数)を低下させることによって、ヒータコア26へ流入する送風空気の風量を低下させてもよい。この場合は、送風機32が送風量制御手段となる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。また、上記各実施形態に開示された手段は、実施可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。
(1)上述の実施形態では、本発明に係る空調装置を電気自動車用の車両用空調装置1に適用した例を説明したが、本発明に係る空調装置の適用はこれに限定されない。例えば、車両走行用の駆動力をエンジンおよび走行用電動モータから得るハイブリッド車両のように、エンジン廃熱が暖房用熱源として不充分となり得る車両の車両用空調装置に適用して有効である。もちろん、車両走行用の駆動力をエンジンから得る通常の車両の車両用空調装置に適用してもよい。
(2)上述の実施形態の熱媒体循環回路25では、水ポンプ27の吐出口側に水−冷媒熱交換器12の温水入口側を接続した例を説明したが、熱媒体循環回路25における水ポンプ27、水−冷媒熱交換器12、ヒータコア26等の接続態様をこれに限定されない。
例えば、第1実施形態の熱媒体循環回路25に対して、図18に示すように、水−冷媒熱交換器12の温水入口側に水ポンプ27の吸入口側を接続してもよいし、第2実施形態の熱媒体循環回路25に対して、図19に示すように、熱媒体バイパス通路28の温水流れ下流側に水ポンプ27の吸入口側を接続してもよい。第3〜第5実施形態の熱媒体循環回路25についても同様である。
(3)上述の第2実施形態等では、暖房モードの強暖房制御時にヒータコア26へ流入させる温水の流量を低下させないことによって、ヒータコア26にて加熱された送風空気の温度分布が拡大してしまうことを抑制した例を説明したが、送風空気の温度分布の拡大抑制はこれに限定されない。
例えば、第1実施形態のヒータコア26として、温度分布が生じにくい構成のものを採用してもよい。具体的には、ヒータコア26として温水とヒータコアとを熱交換させる熱交換部を複数有するものを採用し、一つの熱交換部を通過した送風空気を別の熱交換器へ流入させる構成のものや、いわゆる直行対向流タイプのものを採用してもよい。
(4)上述の実施形態では、圧縮機11の回転数Ncが最高回転数Ncmaxとなっており、圧縮機11の回転数Ncを調整することによって送風空気温度TAVを目標吹出温度TAOに近づけることができない場合に通常暖房制御から強暖房制御へ移行させる例を説明したが、通常暖房制御から強暖房制御への移行はこれに限定されない。
つまり、通常暖房制御では、送風空気温度TAVが目標吹出温度TAOより低くなってしまう際に、送風空気温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくように強暖房制御へ移行させればよい。例えば、外気温Tam(あるいは、内外気切替装置33からケーシング31内へ吸い込まれた空気の温度)が予め定めた基準外気温KTam以下となった際に、通常暖房制御から強暖房制御へ移行させるようにすればよい。
より詳細には、第1実施形態で説明した制御では、外気温Tamが予め定めた基準外気温KTam以下となった際に、送風空気温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくように、水−冷媒熱交換器12へ流入する温水の流量を低下させてもよい。また、第6実施形態で説明した制御では、外気温Tamが予め定めた基準外気温KTam以下となった際に、送風空気温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくように、ヒータコア26へ流入する送風空気の風量を低下させてもよい。
(5)上述の第2実施家形態等では、熱媒体流量調整手段として三方式の流量調整弁を採用した例を説明したが、熱媒体流量調整手段の構成はこれに限定されない。例えば、水ポンプ27の吐出口側から水−冷媒熱交換器12の温水入口側との間に、冷房用膨張弁13b等と同様の構成の第1流量調整弁を配置するとともに、熱媒体バイパス通路28にも同様の構成の第2流量調整弁を配置して、双方の流量調整弁によって熱媒体流量調整手段を構成してもよい。
(6)上述の第4、第5実施形態では、ヒータコア26の送風空気流れ下流側(風下側)に、補助ヒータコア26aを配置した例を説明したが、補助ヒータコア26aをヒータコア26の送風空気流れ上流側(風上側)に配置してもよい。つまり、ヒータコア26および補助ヒータコア26aの配置については、ヒータコア26における温水と送風空気との温度差および補助ヒータコア26aにおける温水と送風空気との温度差等を考慮し、熱交換効率が高くなる配置を採用すればよい。
(7)上述の第1実施形態等では、暖房モードの強暖房制御時に水−冷媒熱交換器12へ流入する温水の流量を低下させ、第6実施形態では、強暖房制御時にヒータコア26へ流入する送風空気の風量を低下させた例を説明したが、もちろん、強暖房制御時に水−冷媒熱交換器12へ流入する温水の流量を低下させるとともに、ヒータコア26へ流入する送風空気の風量を低下させてもよい。
この場合は、水−冷媒熱交換器12へ流入する温水の流量を低下させた際にヒータコア26から吹き出される送風空気の温度が上昇する速さ(温度上昇感度)と、ヒータコア26へ流入する送風空気の風量を低下させた際にヒータコア26から吹き出される送風空気の温度が上昇する速さ(温度上昇感度)との相違に応じて、双方の制御の優先順位を決定すればよい。
例えば、水−冷媒熱交換器12へ流入する温水の流量を優先的に低下させた後に、ヒータコア26へ流入する送風空気の風量を低下させるようにしてもよい。
(8)上述の実施形態では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用した例を説明したが、冷媒の種類はこれに限定されない。例えば、炭化水素系冷媒、二酸化炭素等を採用してもよい。さらに、上述した冷凍サイクル装置10を高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超える超臨界冷凍サイクルとして構成してもよい。