以下、本発明のエアバッグ装置のケース体の第1の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1及び図2において、10はエアバッグ装置で、このエアバッグ装置10は、自動車の被設置部であるインストルメントパネル部13に備えられる助手席乗員用のエアバッグ装置10を構成するものである。そして、インストルメントパネル部13は、車室の前部に車幅方向の略全長に亘り設けられ、このインストルメントパネル部13の上方には、フロントウィンドウガラス(ウインドシールド)が位置している。そして、このインストルメントパネル部13の内部には、助手席の乗員に対向して、エアバッグ装置10が設置されている。このエアバッグ装置10は、ケース体14と、このケース体14に保持されたインフレータ15と、ケース体14に折り畳んで収納された袋状のエアバッグ16とを備えた、いわばシェルパッキングエアバッグモジュールとも呼ぶべきもので、図示しないブラケットなどを介して車体側に固定されている。本実施の形態において、インフレータ15は、例えば扁平な円盤状あるいは円柱状などの形状に形成されており、下端部である底部に、ハーネスと呼ばれる電線17が接続される図示しないコネクタ部が設けられ、このコネクタ部を介して、インフレータ15が制御装置と電気的に接続されている。また、エアバッグ16は、単数、あるいは複数の基布などにより袋状に形成されており、中央部にインフレータ15が挿入される挿入孔16aが開口され、この挿入孔16aの周囲に、エアバッグ16をケース体14に固定するための複数の通孔16bが開口されている。
そして、このエアバッグ装置10を備えた自動車が衝突などすると、制御装置により作動されたインフレータ15から供給されるガスによりエアバッグ16が膨出し、この膨出する圧力により、ケース体14の一部を破断して膨出口を形成し、膨出側である所定方向としての上方に向かってエアバッグ16が突出し、エアバッグ16が乗員の前方に膨張展開する。なお、以下、エアバッグ16の膨出側すなわち乗員側である所定方向を上方(図2などに示す矢印A方向)、正面側あるいは表面側とし、膨出側の反対側を下方、背面側あるいは裏面側として説明する。また、このエアバッグ装置10を自動車に取り付けた状態における前後方向及び両側方向を、前後方向及び両側方向として説明するが、エアバッグ装置10の取付状態は、この構成に限られず、例えば、膨出側が後側上方あるいは後方に向かう状態で取り付けることもできる。
そして、ケース体14は、表皮となるアウタ部21と、このアウタ部21に対して振動溶着機を用いた振動溶着などにより固着されたインナ部22とを備え、自動車用の内装パネルであるインストルメントパネル部13に一体的に構成される。
アウタ部21は、表皮パネル、アウタパネル部、パネル体、リッドアウターなどとも呼ばれるもので、例えばポリプロピレン(PP)などの所定の合成樹脂により成形された樹脂成形品(パネル体)であり、インストルメントパネル部13の表面側を一体的に覆って外部に露出し、車室の前部に車幅方向の略全長に亘り略板状に設けられている。
そして、このアウタ部21の裏面側には、破断予定部としての弱部であるテアライン24が形成され、非展開部であるアウタ外郭部25と、このアウタ外郭部25に囲まれた前後一対の平面長方形状のアウタ扉予定部26,26とが区画形成されている。そして、これらアウタ扉予定部26,26が、通常時に折り畳んで収納されたエアバッグ16の膨出側を覆っている。さらに、このアウタ部21の裏面側には、外縁部近傍の位置に、クリップ座などの取付部27が形成されており、この取付部27に取り付けられた取付部材であるクリップ28がインストルメントパネル部13の取付開口部29に圧入されることで、ケース体14がインストルメントパネル部13に固定されるようになっている。
テアライン24は、テア、テア溝、破断予定部、開裂予定溝、扉予定線部あるいは破断部などとも呼び得るもので、隣接する部分より脆弱な断面V字状で、破断可能及び変形容易な弱部であり、本実施の形態では、中央部を両側に延びエアバッグ16の展開圧力を受ける第1テアライン24aと、外郭を構成する第2テアライン24bとを有した略「日」の字状で、いわば閉ループ状である四角形枠状のテアラインを組み合わせた構成になっている。このテアライン24は、アウタ部21の成形時に形成してもよいし、アウタ部21の成形後に例えば回転刃などで彫刻して形成してもよい。
一方、インナ部22は、アウタ部21を構成する材料よりも軟質の材料、例えば熱可塑性エラストマ(TPE)などの所定の合成樹脂により一体成形された樹脂成形品であり、収納部31と前後一対の蓋部32,32とを備えている。
収納部31は、インフレータ15及びエアバッグ16を収納する四角形箱状すなわち有底状(有底角筒状)の収納部本体33と、この収納部本体33の上縁部から外方に突設された展開支持部としてのフランジ部34とを一体に備えている。そして、この収納部31は、全体として左右方向及び前後方向に略対称に形成されている。
収納部本体33は、容器部とも呼ぶべきもので、互いに左右に対向する一対の対向側面部としての長辺側面部である左側面部35及び右側面部36と、互いに前後に対向する一対の側面部としての短辺側面部である前側面部37及び後側面部38と、これら側面部35,36,37,38の下端部に連続する長方形状の底面部39とを有している。そして、これら側面部35,36,37,38の上端部が、アウタ部21のアウタ扉予定部26,26と対向し折り畳まれた状態でこの収納部本体33の内部に収納されたエアバッグ16が膨張展開時に突出する長方形状の開口部40となっている。
側面部35,36には、上端部すなわち開口部40の近傍の位置に、インナ部22とアウタ部21との振動溶着の際に用いる治具J1(図3)が収納部31(収納部本体33)の外部から内部へと挿入される角孔状の治具挿入孔42がそれぞれ前後に離間されて開口されている。さらに、これら側面部35,36の上端部は、側面部37,38の上端部に対して、例えば蓋部32の厚み分、上方に突出している。
側面部37,38には、上端部すなわち開口部40の近傍の位置に、インナ部22とアウタ部21との振動溶着の際に用いる治具J2(図3)が収納部31(収納部本体33)の外部から内部へと挿入される角孔状の治具挿入孔43が開口されている。
ここで、図3に示されるように、各治具J1は、金属などの部材により治具J2よりも太い直線棒状に形成されており、各側面部35,36の各治具挿入孔42から、収納部本体33(収納部31)の内方へと、それぞれ左右方向の中央部に向けて挿入されるようになっている。これら治具J1の先端部には、治具J2に係止するための突起部J1aがそれぞれ突設されている。また、治具J2は、金属などの部材により直線棒状に形成されており、各側面部37,38の治具挿入孔43を貫通して前後方向に沿って挿入されるようになっている。この治具J2には、各治具J1の突起部J1aが挿入係止される係止開口J2aが形成されており、これら係止開口J2aに突起部J1aが挿入係止されることで治具J1が治具J2の長手方向にずれ止めされて位置決めされる。そして、これら治具J1,J2は、突起部J1aを係止開口J2aに挿入係止して格子状に組み合わせられることで、開口部40の位置で蓋部32の下部に面状に配置され、振動溶着時の上方からの加圧に対して蓋部32を下方から支持するようになっている。
また、図1及び図2に示されるように、底面部39には、中央部に、インフレータ15を圧入保持する有底円筒状の保持部45が下方に凹設されている。また、この底面部39には、保持部45の周囲に、エアバッグ16を保持する図示しないリテーナのリテーナボルトがエアバッグ16の通孔16bとともに挿入される円孔状の通孔46が複数開口されている。そして、保持部45の底部には、インフレータ15のコネクタ部が露出する露出開口47が開口されている。
フランジ部34は、側面部35,36の上端部に連続する左右一対の(一の)フランジとしての長辺フランジである左側フランジ51及び右側フランジ52と、側面部37,38の上端部に連続する前後一対の(他の)フランジとしての支持受部(短辺フランジ)である前側フランジ53及び後側フランジ54とを有している。そして、これらフランジ51,52,53,54は、開口部40の外方の位置で互いに一体に連続し、開口部40の周囲を囲む四角形枠状に形成されている。
フランジ51,52は、それぞれエアバッグ16の展開方向に対して直交する方向に沿って平面状に延びる略板状となっている。そして、これらフランジ51,52には、側面部35,36と連続する開口部40の縁部の位置に、蓋部32を仮係止するための係止孔56がそれぞれ開口されている。さらに、これらフランジ51,52のアウタ部21に対向する上面には、アウタ部21の溶着前(インナ部22の成形時)において、振動溶着用の溶着リブ57が格子状に形成されている。
フランジ53,54は、それぞれエアバッグ16の展開方向に対して直交する方向に沿って平面状に延びる略板状となっている。そして、これらフランジ53,54には、左右方向の中央部に、蓋部32を仮係止するための係止孔58がそれぞれ開口されている。さらに、これらフランジ53,54には、係止孔58の両側の位置に、蓋部32側に挿通される凸部59がそれぞれ突設されている。
各凸部59は、例えばフランジ53,54の長手方向である左右方向と直交する前後方向に沿って長手方向を有する長方形状に形成されており、治具挿入孔43よりも左右両側方に位置している。また、これら凸部59は、側面部37,38に対する突出分に対応して上方に突出している。すなわち、これら凸部59は、上面部がフランジ51,52と略面一な位置となっており、この上面部に、アウタ部21の溶着前(インナ部22の成形時)において、振動用着用の溶着リブ60が格子状に形成されている。そして、フランジ53,54のうち、これら凸部59の間及び両側が、四角形状のいわば凹部61となっている。
各蓋部32は、補強フラップなどとも呼び得るもので、支持部65と、インナ扉予定部66と、これら支持部65とインナ扉予定部66とを変形可能に連結するヒンジ部67と、支持部65と収納部31のフランジ53,54の上端部とを変形可能に連結する屈曲ヒンジ部68とを一体に備えている。そして、この蓋部32は、インナ部22の成形時には収納部31に対して外方に延びているとともに、ケース体14の組立て時には屈曲ヒンジ部68にて収納部31側に屈曲されて反転される(折り返される)ようになっている。
支持部65は、サブフランジ部などとも呼び得るもので、エアバッグ16の膨張圧力により展開しない部分であり、アウタ部21のアウタ外郭部25の背面に対向する。この支持部65は、エアバッグ16の展開方向に対して直交する方向に沿って平面状に延びる板状となっている。そして、この支持部65には、中央部に、係止孔58に挿入されて仮係止される係止突部であるフック部71が突設されている。また、この支持部65には、フランジ53,54の各凸部59が挿入嵌合される四角形状の挿入開口72がフック部71の両側に屈曲ヒンジ部68に亘って開口されている。したがって、この支持部65は、フランジ53,54に対して各凹部61の位置で連続するように左右方向に分割されている。さらに、この支持部65には、アウタ部21の溶着前(インナ部22の成形時)において、振動溶着用の溶着リブ73が格子状に形成されている。そして、この支持部65は、蓋部32を屈曲ヒンジ部68の位置で収納部31(開口部40)側に反転屈曲した状態で、フランジ53,54に直接重ねられるように構成されている。そして、この支持部65は、フランジ53,54に重ねられてフランジ51,52とともにインナ外郭部74を構成するとともに、このインナ外郭部74がアウタ外郭部25の背面側に固着されることで、テアライン24の外方を囲みエアバッグ16の膨張圧力により展開しない外郭部75を形成する。
フック部71は、先端部に爪部71aを有している。このフック部71は、例えばインナ部22の成形型(金型)に配置された駒76が支持部65を貫通して突き当てられることにより爪部71aが成形される(図4(a)及び図4(b))。なお、支持部65のこの駒76が貫通した位置は、爪部71aの下方に対向する開口77となっている。そして、このフック部71と係止孔58とにより、蓋部32を収納部31の開口部40側へと反転屈曲した状態で蓋部32を収納部31に仮固定する(第1の)仮固定部78が構成されている。
溶着リブ73は、インナ部22の成形時の支持部65の背面側、すなわち反アウタ部21(反アウタ外郭部25)側に形成され、蓋部32を屈曲ヒンジ部68の位置で収納部31の開口部40側へと反転屈曲した状態ではフランジ51,52の溶着リブ57及び凸部59の溶着リブ60と略面一となって、アウタ部21のアウタ外郭部25の背面側に固着されるようになっている。
インナ扉予定部66は、蓋部32を屈曲ヒンジ部68の位置で収納部31の開口部40側へと反転屈曲した状態で、開口部40及び収納部31に収納されたエアバッグ16を覆うようになっている。各インナ扉予定部66は、エアバッグ16の展開方向に対して直交する方向に沿って平面状に延びる板状となっており、本実施の形態では、開口部40の前後方向の半分ずつを覆う面積にそれぞれ形成されている。そして、このインナ扉予定部66は、アウタ扉予定部26の背面側に固着されることで扉予定部81を形成する。また、このインナ扉予定部66の反ヒンジ部67側(反収納部31側)の左右両側部には、フランジ51,52の係止孔56,56に挿入係止される係止突部82がそれぞれ厚み方向に突設されている。これら係止突部82は、インナ扉予定部66の両側からそれぞれ側方に突出する突出片部66aにそれぞれ設けられており、外側方に向けて爪部82aが突出している。そして、これら係止突部82と係止孔56とにより、蓋部32を収納部31の開口部40側へと反転屈曲した状態で蓋部32を収納部31に仮固定する仮固定部83が構成されている。さらに、このインナ扉予定部66には、アウタ部21の溶着前(インナ部22の成形時)において、振動溶着用の溶着リブ84が格子状に形成されている。この溶着リブ84は、インナ部22の成形時のインナ扉予定部66の背面側、すなわち反アウタ部21(反アウタ扉予定部26)側に形成され、蓋部32を屈曲ヒンジ部68の位置で収納部31の開口部40側へと反転屈曲した状態ではフランジ51,52の溶着リブ57、凸部59の溶着リブ60及び支持部65の溶着リブ73と略面一となって、アウタ部21のアウタ扉予定部26の背面側に固着されるようになっている。
ヒンジ部67は、U字状に湾曲して支持部65とインナ扉予定部66とを可撓的に連結しており、インナ部22の成形時には上方に膨出し、蓋部32を屈曲ヒンジ部68の位置で収納部31(開口部40)側に反転屈曲した状態では、開口部40に挿入されて収納部31(収納部本体33)内にて側面部37,38の上端部近傍に位置し、前後に位置する第2テアライン24bの一部(長辺)に沿って、下方すなわち収納されたエアバッグ16側に膨出するように湾曲してテアライン24を前後に跨いでいる。また、このヒンジ部67の長手方向(左右方向)の中央部には、切欠開口86が形成されている。この切欠開口86は、治具挿入孔43に対応する(治具挿入孔43と略等しい)長手寸法に設定されており、蓋部32を屈曲ヒンジ部68の位置で収納部31(開口部40)側に折り返した状態で治具挿入孔43に対向してこの治具挿入孔43と連通し、治具J2が挿通されるようになっている。
屈曲ヒンジ部68は、成形された蓋部32をアウタ部21との溶着の前に収納部31側へと折り返すためのもので、各蓋部32(支持部65)とフランジ53,54とを可撓的に連結しており、例えば成形時の下面側が溝状に窪んで形成されることで、蓋部32の他の部分よりも薄肉に形成されている。したがって、この屈曲ヒンジ部68は、成形時には蓋部32(支持部65)及びフランジ53,54に対して上面が略面一となっている。また、この屈曲ヒンジ部68は、各支持部65とフランジ53,54との間に沿って、本実施の形態では支持部65の挿入開口72を除く位置に左右方向に直線状に形成されている。
そして、ケース体14を組み立てる際には、まず、予め成形したインナ部22に対して、開口部40からインフレータ15を保持部45に圧入して保持するとともに、リテーナが挿入された状態で所定形状に折り畳んだエアバッグ16を、リテーナのリテーナボルトを通孔46にそれぞれ挿入してナットなどにより締め付けることで底面部39に固定して、これらインフレータ15及びエアバッグ16を収納部31(収納部本体33)に収納する。
次いで、このインナ部22の治具挿入孔43,43に対して、治具J2を収納部31(収納部本体33)の外部から挿通し、さらに各治具挿入孔42に対して、それぞれ治具J1を収納部31(収納部本体33)の外部から挿入して、これら治具J1の先端の突起部J1aを治具J2の係止開口J2aにそれぞれ挿入係止して、治具J1,J2を格子状に組む。
さらに、このインナ部22の各蓋部32を、各屈曲ヒンジ部68によって収納部31の開口部40側へとそれぞれ反転屈曲させるように折り返し、各フック部71の爪部71aを各係止孔58に挿入係止するとともに各係止突部82の爪部82aをフランジ51,52の各係止孔56に挿入係止することで、各蓋部32を仮固定部78,83により収納部31側に仮固定する。この状態で、各凹部61に支持部65が嵌合してフランジ53,54上に重ねられるとともに各挿入開口72に各凸部59が嵌合して、フランジ51,52及び各凸部59の上面(溶着リブ57,60の上面)と、反転屈曲された各支持部65及び各インナ扉予定部66の上面(溶着リブ73,84の上面)とが略面一となってアウタ部21と溶着される溶着面を全体として構成するとともに、ヒンジ部67,67が収納部31(収納部本体33)内にて開口部40の前後の縁部に位置し、インナ扉予定部66,66が開口部40の上方を覆う。
この後、このインナ部22に対して、予め別途成形したアウタ部21を重ねた状態で、振動溶着機を用いてアウタ部21に対してインナ部22を相対的に振動させる振動溶着により、溶着リブ57,60,73,84を突出方向すなわち上下方向に沿った寸法で溶融すると、インナ外郭部74がアウタ外郭部25に溶着して接合されて外郭部75を形成するとともに、インナ扉予定部66,66がアウタ扉予定部26,26に溶着して扉予定部81を形成する。このようにして、インフレータ15とエアバッグ16とを収納部31に収納保持して扉予定部81により覆ったエアバッグ装置10が完成する。
このエアバッグ装置10は、インフレータ15のコネクタ部に電線17を接続し、ケース体14を図示しないブラケットなどにより車体側に固定するとともに、アウタ部21の取付部27に取り付けたクリップ28を取付開口部29に挿入固定して、インストルメントパネル部13の内部に一体的に取り付ける。
そして、エアバッグ装置10が作動し、エアバッグ16にガスが流入して膨出すなわち膨張展開すると、エアバッグ16がケース体14内で膨張する膨張力により、インナ部22の前後のインナ扉予定部66,66を介して扉予定部81,81を押し上げる。そして、この力により、アウタ部21の第1テアライン24a及び第2テアライン24bが破断し、すなわちアウタ部21の弱部であるテアライン24が全長にわたり破断してアウタ扉予定部26,26がアウタ部21の他の部分から切り離されて扉部が形成され、ヒンジ部67が引き延ばされながら扉予定部81,81が扉部として回動すなわち展開し、エアバッグ16の膨出口を形成する。
なお、エアバッグ16の展開時には、第1テアライン24aは全長に亘り破断するが、第2テアライン24bは、全長に亘って破断する場合のほか、両側の短手側のみが破断し、ヒンジ部67に沿った部分の一部あるいは全部は、破断せずに容易に屈曲するヒンジとして機能する仕様とすることもできる。
このように、本実施の形態によれば、折り畳まれたエアバッグ16及びインフレータ15を内部に保持する収納部31の開口部40の前後の縁部から外方に蓋部32,32を延設したインナ部22を構成し、蓋部32,32を開口部40側へと反転屈曲して、その少なくとも一部が収納部31に収納されたエアバッグ16を覆う位置で蓋部32,32を収納部31に固定するとともに、少なくとも蓋部32,32の位置を覆ってアウタ部21を固着することにより、収納部と蓋部とを別個に設けて別途の工程を用いて一体化したり、別途の部材などを用いてエアバッグやインフレータを固定したりすることなく、インフレータ15及び折り畳まれたエアバッグ16を収納部31に収納し、かつ、蓋部32によって覆うケース体14を、軽量で安価に製造できる。
具体的に、収納部31の開口部40の前後の縁部に連続するフランジ53,54に対して、屈曲ヒンジ部68,68を介して支持部65,65を変形可能に連結し、この支持部65,65に対して、ヒンジ部67,67を介してインナ扉予定部66,66を変形可能に連結して、屈曲ヒンジ部68,68での収納部31の開口部40側への蓋部32,32の反転屈曲により支持部65,65がフランジ53,54に重ねられ、ヒンジ部67,67が収納部31内に位置するとともにインナ扉予定部66,66が開口部40を覆うことで、インフレータ15及び折り畳まれたエアバッグ16を収納部31に収納して蓋部32,32により覆うケース体14を容易に構成でき、より安価に製造できる。
したがって、シェルパッキングエアバッグモジュールであるエアバッグ装置10を、より安価でかつ容易に実現できる。
また、ヒンジ部67は、インナ部22の成形時には収納部31に対して側方に延出した位置に形成されるので、その形状がインナ部22を成形するための成形型構成上の制約を受けず、必要なヒンジ性能を容易に設定できる。
さらに、フランジ53,54に設けた各凸部59が、屈曲ヒンジ部68での収納部31の開口部40側への蓋部32の反転屈曲により、支持部65の各挿入開口72に挿入されてこの支持部65と略面一となるので、反転屈曲したフランジ53,54と支持部65とを容易に位置合わせできるとともに、アウタ部21を固着する面(アウタ部21の溶着面)を容易に形成できる。
また、インナ部22に設けた治具挿入孔42,43に治具J1,J2を挿入してアウタ部21を振動溶着する際にインナ扉予定部66,66を治具J1,J2によって支持することにより、アウタ部21とインナ部22とをより確実に密着させて容易かつ確実に固着できる。
しかも、治具J1,J2を交差状(格子状)に組むことで、振動溶着時にアウタ部21側(上方)から加えられる圧力を効果的に分散して治具J1,J2の曲がり(撓み)をより確実に抑制できるとともに、蓋部32をより確実に支持できる。
さらに、相対的に距離が小さいために曲げモーメントが相対的に小さくなる前後方向には、相対的に細い治具J2を用い、相対的に距離が大きいために曲げモーメントが相対的に大きくなる左右方向には、相対的に太く強度が大きい治具J1を用いることで、治具J1,J2の曲げに対する強度を確保できるとともに、ヒンジ部67の切欠開口86に挿通される治具J2が相対的に細いものとなるため、この切欠開口86の開口面積を抑制でき、ヒンジ部67の強度を確保できる。
そして、蓋部32を収納部31の開口部40側へと反転屈曲した状態で仮固定部78,83によって蓋部32を収納部31に仮固定することで、アウタ部21をインナ部22に固着(振動溶着)する際に蓋部32を押さえておく必要がなく、作業性が良好で、製造性をより向上できる。
次に、第2の実施の形態を図5ないし図7を参照して説明する。なお、上記の第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態は、インナ部22の収納部31の前側面部37が蓋部32(扉予定部81)、アウタ部21及び底面部39に対して鋭角状に傾斜しており、インナ部22が収納部31の側面部35,36及び底面部39のそれぞれの前側の位置で、前側面部37を含む側(一の部分)である前側部87と、前側面部37を含まない側(他の部分)である後側部88とに分割され、かつ、これら前側部87と後側部88とが、回動ヒンジ部89により回動可能に一体に連結されているものである。
前側面部37は、蓋部32(扉予定部81)及びアウタ部21に対して、回動ヒンジ部89による回動の一方向である前方に向けて下側に鋭角状に傾斜しており、底面部39の前端部に対して、回動ヒンジ部89による回動の他方向である後方に向けて上側に鋭角状に傾斜している。
また、前側部87と後側部88とは、保持部45よりも前方すなわち前側面部37寄りの位置で、蓋部32に対して直角以下の角度θに沿う仮想的な平面Pにより分割されている。したがって、前側部87は、前側面部37、側面部35,36の平面Pの一側である前側部分、底面部39の前側部分、前側の蓋部32及びフランジ51,52の前側部分を含んでおり、後側部88は、後側面部38、側面部35,36の平面Pの他側である後側部分、底面部39の保持部45を含む後側部分、後側の蓋部32及びフランジ51,52の後側部分を含んでいる。
さらに、前側部87及び後側部88には、互いに連結される連結固定部91,92がそれぞれ設けられている。前側部87に設けられた連結固定部91は、例えばこの前側部87における側面部35,36の前端部、すなわち側面部35,36の後側部88に対向する位置(平面Pにより分割された位置)に形成されており、後側部88に設けられた連結固定部92は、例えばこの後側部87における側面部35,36の後端部、すなわち側面部35,36の前側部87に対向する位置(平面Pにより分割された位置)に形成されている。これら連結固定部91,92は、回動ヒンジ部89による回動方向である前後方向に沿って一方が他方に圧入されて互いに固定されるようになっている。
なお、インナ部22のその他の構造は、上記の第1の実施の形態と同様である。
そして、インナ部22の成形の際には、蓋部32の厚み方向である上下方向を型開方向、すなわち抜き方向(矢印B方向)として成形される。このとき、上記のように、インナ部22を、前側面部37を含む前側部87と、前側面部37を含まない後側部88とを回動ヒンジ部89によって前後方向に回動可能に連結する形状とすることにより、前側部87を後側部88に対して予め回動ヒンジ部89により回動させて前側面部37の角度がインナ部22の抜き方向(矢印B方向)に対してアンダカットとならないように成形型D1,D2を設計でき(図7)、例えばアンダカットに対応した可動駒などの構成を有する高価な成形型を用いる必要がなく、インナ部22及びケース体14をより安価に製造できる。そして、この成形型D1,D2を用いて成形したインナ部22は、回動ヒンジ部89により前側部87を後側部88側へと回動させて連結固定部91,92にて互いに固定することで、上記の第1の実施の形態と同様のインナ部22となる。
特に、このように前側面部37が蓋部32(扉予定部81)及びアウタ部21に対して前方下側に向けて鋭角状に傾斜したエアバッグ装置10は、インストルメントパネル部13の上部のフロントウィンドウガラスに対向する位置に搭載される、いわゆるトップマウントタイプのエアバッグ装置として好適に用いることができる。
なお、上記の各実施の形態において、蓋部32は、エアバッグ装置10を搭載する車両の形状などに応じて、インナ扉予定部66を、開口部40を覆う面積(開口部40と略等しい面積)に形成して、蓋部32を収納部31に対して蓋部32を1つのみ設けるようにしてもよい。
次に、第3の実施の形態を図8ないし図10を参照して説明する。なお、上記の各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態のエアバッグ装置10は、インフレータ15が略円柱状に形成されているとともに、ケース体14の扉予定部81が1つのみの、いわばシングルフラップとなっているものである。
アウタ部21は、テアライン24が、第1テアライン24aと、この第1テアライン24aの両端部から前方に向けて直線状に前端部まで延びる第2テアライン24b,24bとによりコ字状に形成されており、このテアライン24によって囲まれた部分が1つのアウタ扉予定部26となり、このテアライン24の外方がアウタ外郭部25となっている。
また、インナ部22は、収納部31のフランジ部34が、左側フランジ51、右側フランジ52及び後側フランジ54によりコ字状に形成され、1つの蓋部32が、収納部本体33の前側面部37の上端部の位置に、ヒンジ部67を介して一体に連結されている。
フランジ51,52,54は、互いに一体に連続しており、アウタ部21に対向する上面が互いに略面一となっている。そして、これらフランジ51,52,54の上面には、アウタ部21の溶着前(インナ部22の成形時)において、振動溶着用の溶着リブ95が格子状に形成されている。さらに、後側フランジ54の左右方向の中央部には、開口部40の後縁部、すなわち後側面部38の上端部の位置に、蓋部32を仮固定するための係止孔96が開口されている。
また、収納部31は、収納部本体33の側面部35,36の上端部すなわち開口部40の近傍の位置に、インナ部22とアウタ部21との振動溶着の際に用いる治具J3(図10)が収納部31(収納部本体33)の外部から内部へと挿入される角孔状の治具挿入孔97が開口され、後側面部38の上端部すなわち開口部40の近傍の位置に、インナ部22とアウタ部21との振動溶着の際に用いる治具J4(図10)が収納部31(収納部本体33)の外部から内部へと挿入される角孔状の治具挿入孔98が開口されている。
ここで、図10に示されるように、治具J3は、金属などの部材により直線棒状に形成されており、側面部35,36の治具挿入孔97,97を貫通して左右に挿入されるようになっている。この治具J3には、係止開口J3aが形成されている。また、各治具J4は、金属などの部材により治具J3よりも太い直線棒状に形成されており、後側面部38の治具挿入孔98,98から、収納部本体33(収納部31)の内方へと、それぞれ前後方向の中央部に向けて挿入されるようになっている。これら治具J4の先端部には、係止開口J3aに挿入係止される突起部J4aが突設されている。そして、これら治具J3,J4は、突起部J4aを係止開口J3aに挿入係止して格子状に組み合わせられることで、開口部40の位置で蓋部32の下部に面状に配置され、振動溶着時の上方からの加圧に対して蓋部32を下方から支持するようになっている。
また、収納部31の収納部本体33の底面部39には、インフレータ15を保持する保持部101が下方に凹設されている。この保持部101は、インフレータ15の外周面に沿う半円筒状に形成され、左右方向に沿って長手状となっている。また、この保持部101には、インフレータ15のコネクタ部が露出する露出開口102が開口されている。さらに、この保持部101の左右両端部は、側面部35,36を貫通する円形状の挿通開口103,103と連通している。そして、これら挿通開口103の一方から他方に亘ってインフレータ15が保持部101に挿入されるようになっている。したがって、側面部35,36の挿通開口103,103の上縁部が、インフレータ15を上方から押さえて抜け止めする押さえ部104,104となっている。
また、蓋部32は、インナ扉予定部66及びヒンジ部67により形成されている。
インナ扉予定部66は、蓋部32をヒンジ部67の位置で収納部31の開口部40側へと反転屈曲した状態で、開口部40及び収納部31に収納されたエアバッグ16を覆うようになっている。このインナ扉予定部66は、エアバッグ16の展開方向に対して直交する方向に沿って平面状に延びる板状となっており、開口部40を覆う(開口部40と略等しい)面積に形成され、アウタ扉予定部26の背面側に固着されることで扉予定部81を形成する。また、このインナ扉予定部66の反ヒンジ部67側(反収納部31側)の左右中央部には、係止孔96に挿入係止される係止突部106が厚み方向に突設されている。この係止突部106は、前方に向けて爪部106aが突出している。そして、この係止突部106と係止孔96とにより、蓋部32を収納部31の開口部40側へとこの開口部40の前縁部の位置で反転屈曲した状態で蓋部32を収納部31に仮固定する仮固定部107が構成されている。さらに、このインナ扉予定部66には、アウタ部21の溶着前(インナ部22の成形時)において、振動溶着用の溶着リブ109が格子状に形成されている。この溶着リブ109は、インナ部22の成形時のインナ扉予定部66の背面側、すなわち反アウタ部21(反アウタ扉予定部26)側に形成され、蓋部32を開口部40の前縁部の位置で収納部31の開口部40側へと反転屈曲した状態ではフランジ51,52,54の溶着リブ95と略面一となって、アウタ部21のアウタ扉予定部26の背面側に固着されるようになっている。
ヒンジ部67は、U字状に湾曲して開口部40の前縁部、すなわち前側面部37の上端部(収納部31(収納部本体33))とインナ扉予定部66とを可撓的に連結している。また、このヒンジ部67は、インナ部22の成形時には上方に膨出し、開口部40の前縁部の位置(収納部31側の後縁部67a)で蓋部32(インナ扉予定部66)を収納部31(開口部40)側に反転屈曲した状態では、開口部40に挿入されて収納部31(収納部本体33)内にて側面部37,38の上端部近傍に位置し、下方すなわち収納されたエアバッグ16側に膨出するように湾曲する。さらに、このヒンジ部67は、開口部40の前縁部、すなわち前側面部37の上端部に沿って、インナ扉予定部66の両側間に亘って連続している。
そして、ケース体14を組み立てる際には、まず、予め成形したインナ部22に対して、挿通開口103,103間に亘ってインフレータ15を保持部101に挿入して押さえ部104,104により両端部を上方から押さえるとともに、所定形状に折り畳んだエアバッグ16を底面部39に固定して、これらインフレータ15及びエアバッグ16を収納部31(収納部本体33)に収納する。
次いで、このインナ部22の治具挿入孔97,97に対して、治具J3を収納部31(収納部本体33)の外部から挿通し、さらに各治具挿入孔98に対して、それぞれ治具J4を収納部31(収納部本体33)の外部から挿入して、これら治具J4の先端の突起部J4aを治具J3の係止開口J3aにそれぞれ挿入係止して、治具J3,J4を「Π」字状に組む。
さらに、このインナ部22の蓋部32を、ヒンジ部67の後縁部67aの位置で収納部31の開口部40側へと反転屈曲させるように折り返し、係止突部106の爪部106aを係止孔96に挿入係止することで、蓋部32を仮固定部107により収納部31側に仮固定する。この状態で、フランジ51,52,54の上面(溶着リブ95の上面)と、反転屈曲されたインナ扉予定部66の上面(溶着リブ109の上面)とが略面一となってアウタ部21と溶着される溶着面を全体として構成するとともに、ヒンジ部67が収納部31(収納部本体33)内にて開口部40の前縁部に位置し、インナ扉予定部66が開口部40の上方を覆う。
この後、このインナ部22に対して、予め別途成形したアウタ部21を重ねた状態で、振動溶着機を用いてアウタ部21に対してインナ部22を相対的に振動させる振動溶着により、溶着リブ95,109を突出方向すなわち上下方向に沿った寸法で溶融すると、インナ外郭部74がアウタ外郭部25に溶着して接合されて外郭部75を形成するとともに、インナ扉予定部66がアウタ扉予定部26に溶着して扉予定部81を形成する。このようにして、インフレータ15とエアバッグ16とを収納部31に収納保持して扉予定部81により覆ったエアバッグ装置10が完成する。
そして、上記の各実施の形態と同様にインストルメントパネル部13に取り付けたエアバッグ装置10が作動し、エアバッグ16にガスが流入して膨出すなわち膨張展開すると、エアバッグ16がケース体14内で膨張する膨張力により、インナ部22の前後のインナ扉予定部66を介して扉予定部81を押し上げる。そして、この力により、アウタ部21の第1テアライン24a及び第2テアライン24bが破断し、すなわちアウタ部21の弱部であるテアライン24が全長にわたり破断してアウタ扉予定部26がアウタ部21の他の部分から切り離されて扉部が形成され、ヒンジ部67が引き延ばされながら扉予定部81が扉部として回動すなわち展開し、エアバッグ16の膨出口を形成する。
このように、収納部31の開口部40の前縁部に連続するヒンジ部67を介してインナ扉予定部66を収納部31と変形可能に連結し、開口部40の前縁部の位置(ヒンジ部67の後縁部67a)での収納部31の開口部40側への反転屈曲によりヒンジ部67が収納部31内に位置するとともにインナ扉予定部66が開口部40を覆うことで、インフレータ15及び折り畳まれたエアバッグ16を収納部31に収納して蓋部32により覆うケース体14を、より簡素化して構成でき、より安価に製造できる。したがって、シェルパッキングエアバッグモジュールであるエアバッグ装置10を、より安価でかつ容易に実現できる。
特に、蓋部32を収納部31の開口部40の1つの縁部(前縁部)にのみ設けることで、いわゆるシングルフラップタイプのエアバッグ装置として好適に用いることができる。
また、インナ部22に設けた治具挿入孔97,98に治具J3,J4を挿入してアウタ部21を振動溶着する際にインナ扉予定部66を治具J3,J4によって支持することにより、アウタ部21とインナ部22とをより確実に密着させて容易かつ確実に固着できる。
しかも、治具J3,J4を交差状に組むことで、振動溶着時にアウタ部21側(上方)から加えられる圧力を効果的に分散して治具J3,J4の曲がり(撓み)をより確実に抑制できるとともに、蓋部32をより確実に支持できる。
さらに、治具J3に対して、反蓋部32側である後側からのみ治具J4を組むので、ヒンジ部67に治具を挿通するための切欠開口を設ける必要がなく、ヒンジ部67を所望の強度により容易に設定できる。
そして、蓋部32を収納部31の開口部40側へと反転屈曲した状態で仮固定部107によって蓋部32を収納部31に仮固定することで、アウタ部21をインナ部22に固着(振動溶着)する際に蓋部32を押さえておく必要がなく、作業性が良好で、製造性をより向上できる。
なお、上記の第3の実施の形態において、蓋部32は、収納部31に対して前後一対設けてもよい。
また、上記の各実施の形態において、ケース体14は、アウタ部21の表面側にさらに表皮体を備えていてもよい。
さらに、エアバッグ装置10は、助手席用だけでなく、例えば運転席用など、任意のエアバッグ装置として用いることができる。