(実施形態1)
本実施形態の電磁継電器1は、図1に示すように、接点装置2と、主電磁石装置3と、補助電磁石装置4とを備えている。接点装置2は、固定接点21および可動接点22を有する。
主電磁石装置3は、励磁コイル31および主可動子32を有している。主電磁石装置3は、励磁コイル31への通電時に励磁コイル31で生じる磁束によって主可動子32を吸引し、主可動子32の吸引に伴って固定接点21から離れた開位置より固定接点21に接触する閉位置へ可動接点22を移動させる。
補助電磁石装置4は、接点装置2と直列に接続された補助コイル41、および主可動子32と連結された補助可動子42を有している。補助電磁石装置4は、可動接点22が閉位置にあるときに接点装置2を通して流れる負荷電流により補助コイル41で生じる磁束によって補助可動子42を吸引する。補助電磁石装置4は、補助可動子42の吸引により、主可動子32に対して励磁コイル31の生じる磁束による吸引力と同じ向きの力を作用させる。
また、本実施形態では、主可動子32および補助可動子42は、第1の直線L1上に配置され、当該第1の直線L1に沿って直進往復移動するように構成されており、励磁コイル31および補助コイル41は、第1の直線L1周りに巻かれている。
以下、本実施形態の電磁継電器1について詳しく説明する。ただし、以下に説明する電磁継電器1は、本発明の一例に過ぎず、本発明は、下記実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
本実施形態においては、電磁継電器1が、電気自動車(EV)に搭載され、図2に示すように走行用のバッテリ101から負荷(たとえばインバータ)102への直流電力の供給路上に接点装置2を挿入するように接続されて用いられる場合を例とする。この電磁継電器1の励磁コイル31は、電気自動車のECU(電子制御ユニット)103からの制御信号に応じてオンとオフとが切り替わるスイッチング素子104を介して、励磁用電源105に接続されている。これにより、電磁継電器1は、ECUからの制御信号に応じて接点装置2が開閉し、走行用のバッテリ101から負荷102への直流電力の供給状態を切り替えることができる。
本実施形態では、接点装置2は、図1に示すように、一対の固定接点21と、一対の可動接点22と、各固定接点21を支持する一対の接点台11,12と、両可動接点22を支持する可動接触子13とを有している。接点装置2の構成について詳しくは後述するが、接点装置2は、固定接点21および可動接点22を一対ずつ備えることにより、接点装置2が閉じた状態で一対の接点台11,12間が可動接触子13を介して短絡する。したがって、接点装置2は、走行用のバッテリ101(図2参照)からの直流電力が、一対の接点台11,12および可動接触子13を通して負荷102(図2参照)へ供給されるように、バッテリ101と負荷102との間に挿入される。なお、接点装置2は、バッテリ101の出力端間において負荷102と直列に接続されていればよく、バッテリ101の負極(マイナス極)と負荷102との間に挿入されていてもよい。
本実施形態に係る電磁継電器1は、図1に示すように、上述した接点装置2、主電磁石装置3、補助電磁石装置4に加えて、ホルダ14と、接圧ばね15と、シャフト16と、一対のヨーク17,18とを備えている。さらに、電磁継電器1は、走行用のバッテリ101(図2参照)から負荷102(図2参照)への直流電力の供給路上に挿入される一対の出力端子T1,T2と、励磁用電源105に接続される一対の入力端子T3,T4(図2参照)とを備えている。
主電磁石装置3は、励磁コイル31および主可動子32の他に、主固定子33と、継鉄34と、復帰ばね35とを有している。なお、主電磁石装置3は、合成樹脂製であって励磁コイル31が巻き付けられるコイルボビン(図示せず)を有していてもよい。
継鉄34は、主固定子33および主可動子32と共に、励磁コイル31の通電時に生じる磁束が通る磁気回路を形成する。そのため、継鉄34と主固定子33と主可動子32とは磁性材料から形成されている。
本実施形態においては、継鉄34は、励磁コイル31の中心軸方向の両側に設けられて互いに対向する第1継鉄341および第2継鉄342を具備している。以下では、励磁コイル31の中心軸方向を上下方向とし、励磁コイル31から見て第1継鉄341側を上方、第2継鉄342側を下方として説明するが、電磁継電器1の使用形態を限定する趣旨ではない。
継鉄34は、第1継鉄341と第2継鉄342との周縁部同士を連結する第3継鉄343と、第2継鉄342の上面の中央部から上方に突出する形の円筒状に形成された第4継鉄344とをさらに具備している。ここでは、第1継鉄341および第2継鉄342はそれぞれ矩形板状に形成されている。第3継鉄343は、第1継鉄341の下面において互いに対向する一対の辺と、第2継鉄342の上面における互いに対向する一対の辺とを連結するように、一対設けられている。第4継鉄344は、その下端部が第2継鉄342の中央部に形成された保持孔(図示せず)に嵌合している。
励磁コイル31は、これら第1継鉄341と第2継鉄342と第3継鉄343とで囲まれた空間に配置されており、その内側に第4継鉄344と主固定子33と主可動子32とが配置されている。励磁コイル31は、その両端が一対の入力端子T3,T4(図2参照)に接続されている。
主固定子33は、第1継鉄341の下面の中央部から下方に突出する形の円筒状に形成された固定鉄芯であって、その上端部が継鉄(第1継鉄341)34に固定されている。主固定子33の外径は、第4継鉄344の内径よりも小さく形成されている。さらに、主固定子33の下端面と第4継鉄344の上端面との間には、上下方向においてギャップ(隙間)が確保されている。
主可動子32は、円柱状に形成された可動鉄芯であって、主固定子33の下方において、その上端面を主固定子33の下端面に対向させるように配置されている。主可動子32の外径は第4継鉄344の内径よりも小さく形成され、主可動子32は第4継鉄344の内側を第4継鉄344の内周面に沿って上下方向に移動する。言い換えれば、主可動子32は、その上端面が主固定子33の下端面に接触した第1の位置と、その上端面が主固定子33の下端面から離れた第2の位置との間で移動可能に構成されている。
また、主電磁石装置3は、非磁性材料からなり主固定子33および主可動子32を収納する筒体(図示せず)を有していてもよい。筒体は、上面が開口した有底円筒状に形成され、上端部(開口周部)が第1継鉄341に固定され、下部が第4継鉄344の内側に嵌合する。これにより、筒体は、主可動子32の移動方向を上下方向に制限し、且つ主可動子32の第2の位置を規定する。
なお、主電磁石装置3は、励磁コイル31と第4継鉄344と主固定子33と主可動子32とが全て上下方向に沿った同一直線(第1の直線L1)上に中心軸を有するように構成されている。
復帰ばね35は、主固定子33の内側に配置されており、主可動子32を下方(第2の位置)へ付勢するコイルばねである。
上述した構成により、主可動子32は、励磁コイル31に通電されていないとき(非通電時)には、主固定子33との間に磁気吸引力が生じないため、復帰ばね35のばね力によって主固定子33から離れた第2の位置に位置することになる。一方、励磁コイル31に通電されると、主可動子32は、主固定子33との間に磁気吸引力が生じるため、復帰ばね35のばね力に抗して上方に引き寄せられ主固定子33に接触する第1の位置に移動する。
言い換えれば、主電磁石装置3は、励磁コイル31の通電時には、継鉄34と主固定子33と主可動子32とで形成される磁気回路に励磁コイル31が磁束を生じるので、この磁気回路の磁気抵抗が小さくなるように主可動子32を移動させる。具体的には、主電磁石装置3は、励磁コイル31の通電時、磁気回路のうち主固定子33の下端面と第4継鉄344の上端面との間のギャップを主可動子32で埋めるように、主可動子32を第2の位置から第1の位置へ移動させる。
要するに、主電磁石装置3は、励磁コイル31への通電時に励磁コイル31で生じる磁束によって主可動子32を吸引し上方へ移動させ、励磁コイル31への通電が停止すると復帰ばね35のばね力によって主可動子32を下方へ移動させる。このように、主電磁石装置3は、励磁コイル31の通電状態の切り替えにより主可動子32に作用する吸引力を制御し、主可動子32を上下方向に移動させることにより、接点装置2の開状態と閉状態とを切り替えるための駆動力を発生する。
接点装置2における一対の接点台11,12は、主電磁石装置3の上方において上下方向に直交する平面内の一方向に並ぶように配置されており、各々、当該平面内での断面形状が円形状となる円柱状に形成されている。これら一対の接点台11,12は、主電磁石装置3の継鉄34や主固定子33との位置関係が固定されている。具体的には、電磁継電器1は、下面が開口した箱状に形成され第1継鉄341との間に固定接点21および可動接点22を収納するケース(図示せず)を備えている。一対の接点台11,12は、このケースの底板(上壁)に形成された丸孔に挿通された形でケースに接合されている。ケースは、たとえばセラミックなどの耐熱性材料より形成されており、その開口周部が第1継鉄341の上面の周縁部に対して、連結体(図示せず)を介して接合されている。
なお、ケースと連結体と第1継鉄341と上述した筒体とは、内部に気密空間を形成する気密容器を形成することが望ましく、この場合、気密容器内には水素を主体とする消弧ガスが封入されていることが望ましい。これにより、気密容器内に収納されている固定接点21および可動接点22において開極する際にアークが発生したとしても、アークは消弧ガスによって急速に冷却され迅速に消弧可能になる。ただし、固定接点21および可動接点22は気密容器に収納される構造に限らない。
一対の接点台11,12は、導電性材料から形成されており、各々の下端部には固定接点21が設けられている。一対の接点台11,12の各々は、その外径が各接点台11,12における上端部以外の部位に比べて上端部で大きく形成されている。一対の接点台11,12のうち第1の接点台11は、その上端部に第1の出力端子T1が接続されている。一方、一対の接点台11,12のうち第2の接点台12は、その上端部に第2の出力端子T2が補助コイル41を介して接続されている。つまり、補助電磁石装置4の補助コイル41は、第2の接点台12と第2の出力端子T2との間に挿入されている。言い換えれば、補助コイル41は、図2に示すように一対の出力端子T1,T2間において接点装置2と直列に接続されている。
可動接触子13は、導電性材料から矩形板状に形成されており、その長手方向の両端部を一対の接点台11,12の下端部に対向させるように一対の接点台11,12の下方に配置されている。可動接触子13のうち、各接点台11,12に設けられている固定接点21に対向する各部位には、可動接点22がそれぞれ設けられている。
可動接触子13は、主電磁石装置3によって上下方向に駆動される。これにより、可動接触子13に設けられている各可動接点22は、それぞれ対応する固定接点21に接触する閉位置と、固定接点21から離れた開位置との間で移動することになる。可動接点22が閉位置にあるとき、つまり接点装置2が閉じた状態では、第1の接点台11と第2の接点台12とは可動接触子13を介して短絡する。したがって、接点装置2が閉じた状態では、第1の出力端子T1と第2の出力端子T2との間は補助コイル41を介して導通し、走行用のバッテリ101から負荷102へ補助コイル41を介して直流電力が供給されることになる。
シャフト16は、非磁性材料にて上下方向に延びた丸棒状に形成されており、主電磁石装置3で発生した駆動力を、主電磁石装置3の上方に設けられている接点装置2へ伝達する。シャフト16は、第1継鉄341の中央部に形成された透孔345に挿通されており、主固定子33および復帰ばね35の内側を通って、その下端部が主可動子32に固定されている。シャフト16の上端部は、可動接触子13を保持するホルダ14に固定されている。
ホルダ14は、可動接触子13の上下方向の両側に設けられて互いに対向する上板141および下板142と、上板141と下板142との周縁部同士を連結する側板143とを具備している。ここでは、上板141および下板142はそれぞれ矩形板状に形成されている。側板143は、上板141の下面において互いに対向する一対の辺と、下板142の上面における互いに対向する一対の辺とを連結するように、一対設けられている。下板142の中央部にはシャフト16の上端部が固定されている。これにより、主電磁石装置3で発生した駆動力はシャフト16にてホルダ14へと伝達され、主可動子32が上下方向に移動するのに伴いホルダ14が上下方向に移動する。
一対のヨーク17,18は、磁性材料からなり、ホルダ14に囲まれた空間において可動接触子13の上下方向の両側に設けられている。一対のヨーク17,18のうち、可動接触子13の上側に設けられた第1のヨーク17は、上板141の下面に固着され、ホルダ14と一体化されている。一対のヨーク17,18のうち、可動接触子13の下側に設けられた第2のヨーク18は、可動接触子13に固着され、可動接触子13と一体化されている。ここでは、第2のヨーク18は、図3Bに示すように、その上面に凹部181が形成されており、凹部181内に可動接触子13が嵌り込むような形で可動接触子13と一体化されている。一対のヨーク17,18の機能については後述する。
接圧ばね15は、ホルダ14の下板142と第2のヨーク18との間に配置されており、可動接触子(第2のヨーク18)13を上方へ付勢するコイルばねである。
次に、上述した構成の電磁継電器1の基本的な動作について図3A,図3B,図4A,図4Bを参照して簡単に説明する。なお、図3Aおよび図4Aは接点装置2を含む電磁継電器1の要部を示す断面図、図3Bは図3AのX−X断面図、図4Bは図4AのX−X断面図である。
図3A,図3Bは励磁コイル31の非通電時における電磁継電器1の状態を示している。この状態では、主電磁石装置3の主可動子32が第2の位置に位置するため、ホルダ14は、主電磁石装置3によってシャフト16を介して下方に引き下げられている。このとき、ホルダ14は、その上板141にて第1のヨーク17を介して可動接触子13を下方に押し下げることになる。そのため、可動接触子13は、第1のヨーク17によって上方への移動が規制され、一対の可動接点22を一対の固定接点21から離れた開位置に位置させる。
このとき、第2のヨーク18は、接圧ばね15によって可動接触子13ごと上方へ付勢されているので、第1のヨーク17に下方から接触し第1のヨーク17と共に可動接触子13を包囲する。この状態(図3A,図3Bの状態)では、接点装置2は開いた状態にあるので、一対の接点台11,12間は非導通であり、一対の出力端子T1,T2間が非導通となる。
一方、図4A,図4Bは励磁コイル31の通電時における電磁継電器1の状態を示している。この状態では、主電磁石装置3の主可動子32が第1の位置に位置するため、ホルダ14は、シャフト16を介して上方に押し上げられている。このとき、ホルダ14は、その上板141に固定されている第1のヨーク17を上方へ移動させることになる。そのため、可動接触子13は、第1のヨーク17による上方への移動規制が解除され、ホルダ14の下板142にて接圧ばね15および第2のヨーク18を介して上方に押し上げられ、一対の可動接点22を一対の固定接点21に接触する閉位置に位置させる。
このとき、ホルダ14は、第1のヨーク17が可動接触子13から離れる位置まで押し上げられており、第1のヨーク17と第2のヨーク18との間にはギャップが形成される。第2のヨーク18は、接圧ばね15によって可動接触子13ごと上方へ付勢されているので、一対の可動接点22と一対の固定接点21との間の接圧(接触圧)を確保することができる。この状態(図4A,図4Bの状態)では、接点装置2は閉じた状態にあるので、一対の接点台11,12間は導通し、一対の出力端子T1,T2間が導通する。
次に、一対のヨーク17,18の機能について説明する。
まず、一対のヨーク17,18がないと仮定した場合について説明する。この場合、励磁コイル31の通電時において、可動接触子13(並びにそれと一体化されている構成要素)には図5に示すような力が作用する。すなわち、可動接触子13には、図5に示すように、接圧ばね15からの第1の力F1が上向きに作用し、電磁反発力である第2の力F2と、垂直抗力である第3の力F3とが下向きに作用する。
第1の力F1は、接圧ばね15から可動接触子13に対して常時作用する。第2の力F2は、一対の接点台11,12の一方から他方に向けて可動接触子13を通して流れる電流に起因して発生する。つまり、一対の接点台11,12の一方から他方へ可動接触子13を通して電流I1(図7A参照)が流れると、この電流I1によって可動接触子13の周辺に磁束φ1(図7A参照)が生じる。この磁束φ1と可動接触子13を流れる電流I1とによって、可動接触子13には、可動接点22を固定接点21から離す向き(下向き)のローレンツ力(電磁反発力)が、第2の力F2として作用することになる。第3の力F3は、可動接触子13に作用する上向きの力と下向きの力とがつり合うように、固定接点21から可動接触子13に作用する垂直抗力である。
また、一対のヨーク17,18がないと仮定した場合、励磁コイル31の通電時において、ホルダ14および主可動子32(並びにそれらと一体化されている構成要素)には図6に示すような力が作用する。すなわち、ホルダ14および主可動子32には、図6に示すように、磁気吸引力である第4の力F4が上向きに作用し、接圧ばね15からの第5の力F5と、復帰ばね35からの第6の力F6と、垂直抗力である第7の力F7とが下向きに作用する。
第4の力F4は、励磁コイル31の通電時に励磁コイル31で生じる磁束によって主固定子33から主可動子32に作用する吸引力である。第5の力F5は、接圧ばね15からホルダ14の下板142に対して常時作用する。第6の力F6は、復帰ばね35から主可動子32に対して常時作用する。第7の力F7は、ホルダ14および主可動子32に作用する上向きの力と下向きの力とがつり合うように、主固定子33から主可動子32に作用する垂直抗力である。
ここで、一対の接点台11,12の一方から他方へ可動接触子13を通して流れる電流I1が、短絡電流などの大電流であると、上述したように可動接触子13に作用する電磁反発力(第2の力F2)が大きくなる。この電磁反発力は、可動接点22と固定接点21との間の接圧を低減させるように作用するので、可動接触子13への電磁反発力の影響は極力小さく抑えることが望ましい。
そこで、本実施形態の電磁継電器1は、一対のヨーク17,18を備えることにより、このような電磁反発力の可動接触子13への影響を極力小さく抑えている。具体的には、一対のヨーク17,18は、電磁反発力の原因となる磁界(磁場)の可動接触子13への影響の抑制と、一対のヨーク17,18間の磁気吸引力との2つの作用によって、可動接触子13への電磁反発力の影響を抑制する。
すなわち、第1のヨーク17がない場合、可動接触子13の周辺には図7Aに示すような磁束φ1が生じるが、可動接触子13の上方に第1のヨーク17が設けられることにより、可動接触子13の周辺の磁束φ1は図7Bに示すように変化する。なお、図7A,図7Bは、可動接触子13および第1のヨーク17について図4AのX−X断面に相当する断面を模式的に表している。
つまり、第1のヨーク17が設けられた図7Bの状態では、可動接触子13の周辺の磁束φ1のうち、電磁反発力の原因となる向き(図7Bでは左向き)の磁界を生じる磁束は、主に第1のヨーク17内を通過する。上記磁界とは反対向きの(図7Bでは右向き)の磁界を生じる磁束は、主に可動接触子13を通過する。
そのため、可動接触子13を流れる電流I1に対して作用する磁界は、電磁反発力の原因となる磁界とは反対向きの磁界が支配的になり、可動接触子13には、可動接点22を固定接点21に接触させる向き(上向き)のローレンツ力F10が作用することになる。言い換えれば、第1のヨーク17は、電磁反発力の原因となる磁界の可動接触子13への影響を抑制する機能を持つ。
また、一対のヨーク17,18は、可動接触子13を囲むように設けられているので、可動接触子13に電流I1が流れると、この電流I1によって可動接触子13の周囲に発生する磁束が、一対のヨーク17,18を通ることになる。これにより、第1のヨーク17と第2のヨーク18との間には磁気吸引力が生じ、第2のヨーク18には図5に示すように第8の力F8が上向きに作用し、第1のヨーク17には図6に示すように第9の力F9が下向きに作用する。
ここで、第1のヨーク17はホルダ14の上板141に固定されているので、第2のヨーク18は、第1のヨーク17との間の磁気吸引力(図5に示す第8の力F8)によって可動接触子13ごと上方に引き上げられる。つまり、一対のヨーク17,18間の磁気吸引力は、可動接触子13に対して可動接点22を固定接点21へ接触させる向き(上向き)に作用し、可動接触子13への電磁反発力の影響を抑制する。
ところで、一対のヨーク17,18を用いた構成では、励磁コイル31の通電時に、第1のヨーク17に対して作用する磁気吸引力(図6に示す第9の力F9)は、主固定子33から主可動子32に作用する磁気吸引力(図6に示す第4の力F4)と逆向きに働く。第4の力F4は、電磁継電器1に外部から振動や衝撃が加わっても主可動子32が動かないように主可動子32を主固定子33側(第1の位置)に固定する力である。そのため、短絡時などで可動接触子13を流れる電流I1が増大し、第9の力F9に対して第4の力F4が不足しているような場合、主可動子32を位置固定する力が不足して、電磁継電器1の振動や衝撃に対する耐性が低下する可能性がある。
さらにまた、短絡時などで可動接触子13を流れる電流I1が増大して第9の力F9が第4の力F4に対して過大となる場合、第1のヨーク17がホルダ14ごと第2のヨーク18側(下方)に引き寄せられることがある。この場合、主可動子32と主固定子33との間に乖離が生じて、可動接点22と固定接点21との間の接圧が低減する可能性がある。
また、主電磁石装置3において主固定子33と主可動子32との間に作用する磁気吸引力を大きくすれば、第9の力F9に対し第4の力F4が不足することに起因した、振動や衝撃に対する耐性の低下や接点装置2の接圧の低減は、ある程度抑制できる。しかし、主電磁石装置3の磁気吸引力を大きくすると、主電磁石装置3の大型化につながり、主電磁石装置3での消費電力の増大やコスト増につながる。
本実施形態に係る電磁継電器1は、主電磁石装置3とは別に補助電磁石装置4を備えることにより、これらの課題を解決する。
補助電磁石装置4は、図1に示すように、主可動子32と機械的に連結された補助可動子42を吸引することにより、主可動子32に対して、励磁コイル31の生じる磁束による上記吸引力(第4の力F4)と同じ向き(上向き)の力を作用させる。すなわち、補助電磁石装置4は、励磁コイル31とは別に設けられた補助コイル41への通電時に補助コイル41で生じる磁束によって補助可動子42を吸引し、これにより、励磁コイル31の通電時に主固定子33から主可動子32に作用する吸引力を補助する。
本実施形態では、補助電磁石装置4は、基本的な構成については主電磁石装置3と共通である。つまり、補助電磁石装置4は、励磁コイル31に対応する補助コイル41、および主可動子32に対応する補助可動子42の他に、主固定子33に対応する補助固定子43と、継鉄34に対応する補助継鉄44とを有している。
補助継鉄44は、補助固定子43および補助可動子42と共に、補助コイル41の通電時に生じる磁束が通る磁気回路を形成する。そのため、補助継鉄44と補助固定子43と補助可動子42とは磁性材料から形成されている。
本実施形態においては、補助継鉄44は、補助コイル41の上下方向の両側に設けられて互いに対向する第1補助継鉄441および第2補助継鉄442を具備している。補助継鉄44は、第1補助継鉄441と第2補助継鉄442との周縁部同士を連結する第3補助継鉄443と、第2補助継鉄442の上面の中央部から上方に突出する形の円筒状に形成された第4補助継鉄444とをさらに具備している。ここでは、第1補助継鉄441および第2補助継鉄442はそれぞれ矩形板状に形成されている。第3補助継鉄443は、第1補助継鉄441の下面において互いに対向する一対の辺と、第2補助継鉄442の上面における互いに対向する一対の辺とを連結するように、一対設けられている。第4補助継鉄444は、その下端部が第2補助継鉄442の中央部に形成された保持孔(図示せず)に嵌合している。
補助コイル41は、これら第1補助継鉄441と第2補助継鉄442と第3補助継鉄443とで囲まれた空間に配置されており、その内側に第4補助継鉄444と補助固定子43と補助可動子42とが配置されている。
補助固定子43は、第1補助継鉄441の下面の中央部から下方に突出する形の円筒状に形成された固定鉄芯であって、その上端部が補助継鉄(第1補助継鉄441)44に固定されている。補助固定子43の外径は、第4補助継鉄444の内径よりも小さく形成されている。さらに、補助固定子43の下端面と第4補助継鉄444の上端面との間には、上下方向においてギャップ(隙間)が確保されている。
補助可動子42は、円柱状に形成された可動鉄芯であって、補助固定子43の下方において、その上端面を補助固定子43の下端面に対向させるように配置されている。補助可動子42の外径は第4補助継鉄444の内径よりも小さく形成され、補助可動子42は第4補助継鉄444の内側を第4補助継鉄444の内周面に沿って上下方向に移動する。
ここで、補助電磁石装置4は、補助コイル41と第4補助継鉄444と補助固定子43と補助可動子42とが全て上下方向に沿った同一直線(第1の直線L1)上に中心軸を有するように構成されている。
なお、補助電磁石装置4には復帰ばね35に対応する構成はないが、補助可動子42は主可動子32に連結されているので、復帰ばね35のばね力は主可動子32と同じように補助可動子42にも作用する。
上記構成の補助電磁石装置4は、主電磁石装置3の下方に設けられており、その補助可動子42がシャフト16と同一直線(第1の直線L1)上に位置する連結軸19によって、主電磁石装置3の主可動子32に連結されている。連結軸19は、非磁性材料にて上下方向に延びた丸棒状に形成されており、主可動子32と補助可動子42とを連結し一体化する。連結軸19は、第1補助継鉄441の中央部に形成された透孔445に挿通されており、補助固定子43の内側を通って、その下端部が補助可動子42に固定されている。連結軸19の上端部は、主可動子32に固定されている。このようにして、主可動子32および補助可動子42は、第1の直線L1上に配置され、当該第1の直線L1に沿って(上下方向に)直進往復移動するように構成されている。
なお、上述したように主電磁石装置3が主固定子33および主可動子32を収納する筒体(図示せず)を有する場合には、補助固定子43、補助可動子42、連結軸19も筒体内に収納される構成とすることが望ましい。
ここにおいて、補助コイル41は、上述したように一対の出力端子T1,T2間において接点装置2と直列に接続されている。本実施形態では、補助コイル41は、第2の接点台12と第2の出力端子T2との間に接続されている。これにより、補助コイル41は、接点装置2が閉じた状態で、走行用のバッテリ101から負荷102へ供給される負荷電流(電流I1)の経路の一部を形成し、この負荷電流によって励磁される。
補助電磁石装置4は、このとき補助コイル41の生じる磁束によって、補助可動子42と補助固定子43との間に磁気吸引力が生じるため、補助可動子42に対して補助固定子43から上向きの吸引力が作用する。ここで、補助電磁石装置4は、補助可動子42に作用する吸引力が、主電磁石装置3において励磁コイル31の生じる磁束により主可動子32に作用する吸引力と同じ向き(上向き)になるように構成されている。したがって、可動接点22が閉位置にある状態で、補助可動子42に作用する吸引力が連結軸19を介して主可動子32に伝達され、主可動子32には、主電磁石装置3で生じる吸引力に補助電磁石装置4で生じる吸引力を加えた力が作用することになる。
さらに詳しく説明すると、本実施形態の電磁継電器1は、図1に示すように、主可動子32が主固定子33に接触する第1の位置にある状態で、補助可動子42が補助固定子43に接触しないように連結軸19の長さが設定されている。そのため、主可動子32が第1の位置にある状態から補助可動子42と共に上方に移動する際、補助可動子42が補助固定子43に接触するより先に主可動子32が主固定子33に接触する。
補助可動子42は、主可動子32が主固定子33に接触することにより、それ以上の上方への移動が規制されるので、補助固定子43と接触する位置まで移動することはなく、その上端面と補助固定子43の下端面との間には常に隙間が生じる。したがって、主可動子32が主固定子33に接触する励磁コイル31の通電時において、補助コイル41に負荷電流が流れることで補助可動子42に作用する吸引力は、主可動子32をさらに主固定子33側に押し付ける力として主可動子32に作用する。
ここで、補助コイル41には、走行用のバッテリ101から負荷102へ供給される負荷電流が流れるので、補助コイル41での損失(銅損)を小さく抑えるように、コイル線(銅線)の線径を大きく且つ線長を短くすることが望ましい。補助コイル41の起磁力は、補助コイル41を流れる電流の大きさと、補助コイル41の巻き数(ターン数)との積で表される。補助コイル41で生じる磁束が必要になるのは、基本的には、短絡電流などの過大な電流I1が可動接触子13を流れる場合である。たとえば数千アンペア(A)の短絡電流を想定すれば、補助コイル41は、3〜10回程度の巻き数で十分な起磁力を生じることができるので、補助コイル41の巻き数を3〜10回程度に抑えてコイル線を短くすることが望ましい。
また、本実施形態においては、励磁コイル31および補助コイル41は、主可動子32および補助可動子42の中心軸と同一直線(第1の直線L1)の周りに巻かれている。つまり、励磁コイル31および補助コイル41は、同軸(第1の直線L1)周りに巻かれている。
以上説明した本実施形態の電磁継電器1によれば、可動接点22が閉位置にあるときに接点装置2を通して流れる負荷電流により補助コイル41で生じる磁束によって補助可動子42を吸引する補助電磁石装置4が、主電磁石装置3に加えて備わっている。この補助電磁石装置4は、補助可動子42が主電磁石装置3の主可動子32に連結されており、補助可動子42の吸引により、主可動子32に対して励磁コイル31の生じる磁束による吸引力と同じ向きの力を作用させるように構成されている。
したがって、主可動子32に作用する吸引力(図6に示す第4の力F4)は、主電磁石装置3で生じる吸引力に、接点装置2を流れる負荷電流の大きさに応じて補助電磁石装置4で生じる補助可動子42の吸引力を加えた大きさになる。そのため、一対の出力端子T1,T2間を流れる電流が大きくなるほど、主可動子32に作用する吸引力が増大する。よって、本実施形態の電磁継電器1によれば、第1のヨーク17に作用する磁気吸引力(図6に示す第9の力F9)に対して第4の力F4が不足することに起因した、振動や衝撃に対する耐性の低下や、接点装置2の接圧の低減が生じにくくなる。
また、この電磁継電器1は、基本的には、主電磁石装置3の励磁コイル31が生じる磁束によって接点装置2が開状態から閉状態に切り替えられ、且つ接点装置2が閉状態に維持されるのであって、接点装置2の動作状態は接点装置2に流れる電流には依存しない。したがって、一対の出力端子T1,T2間を流れる電流(負荷電流)が小さくなっても、接点装置2の動作状態(閉状態)は主電磁石装置3によって十分に維持され、接点の接触安定性が低下する可能性は低くなる。
さらに、補助コイル41は、主電磁石装置3とは別の補助電磁石装置4に設けられており、励磁コイル31とは別の磁気回路上に磁束を生じるので、補助コイル41の漏れ磁束と励磁コイル31の漏れ磁束とが互いに相殺する可能性も低い。したがって、補助コイル41が励磁された状態で、補助コイル41と励磁コイル31とで磁束が相殺されることより、接点装置2の動作状態(閉状態)を維持するための磁束が減少することに起因して接点の接触安定性が低下する可能性は低くなる。
結果的に、本実施形態の構成によれば、接点の接触安定性が向上した電磁継電器1を提供することができる。
さらに、本実施形態の電磁継電器1は、補助可動子42に作用する吸引力によって主可動子32に作用する吸引力を増大させているので、補助コイル41で生じる磁束の向きに関係なく、主可動子32に作用する吸引力を増大させることができる。そのため、一対の出力端子T1,T2に対する電源(バッテリ101)の極性にかかわらず、一対の出力端子T1,T2間に負荷電流が流れた際には、この負荷電流を利用して、主可動子32に作用する吸引力を増大させることができる。
また、この電磁継電器1は、主電磁石装置3とは別に補助電磁石装置4を設け、補助電磁石装置4で生じた吸引力を主電磁石装置3の主可動子32に伝達するように構成されているので、主電磁石装置3の構造に大幅な変更を加える必要がない。したがって、電磁継電器1は、補助電磁石装置4を付加することに伴う、補助電磁石装置4以外の構造の変更を最小限に抑えることができる。
しかも、主電磁石装置3の磁気吸引力は、接点装置2に電流(負荷電流)が流れていない状態において、接点装置2を開状態から閉状態に切り替え、且つ接点装置2を閉状態に維持するのに必要十分な大きさであればよい。そのため、短絡電流などの過大な電流I1が可動接触子13に流れた際には、補助電磁石装置4により主可動子32に作用する吸引力を増大しながらも、主電磁石装置3の大型化を避けることができ、主電磁石装置3での消費電力の増大やコスト増を回避できる。言い換えれば、短絡電流などの過大な電流I1が可動接触子13に流れた際の主可動子32に作用する吸引力を同一とするならば、補助電磁石装置4がない場合に比べて、主電磁石装置3を小型化することができ、消費電力の低下やコスト減が期待できる。
また、本実施形態では、主可動子32および補助可動子42は、第1の直線L1上に配置され、当該第1の直線L1に沿って直進往復移動するように構成されており、励磁コイル31および補助コイル41は、第1の直線L1周りに巻かれている。そのため、電磁継電器1は、励磁コイル31で生じる磁束と補助コイル41で生じる磁束とを、主可動子32に対し、第1の直線L1に沿った向きの吸引力として効率的に作用させることができる。
なお、本実施形態においては、電磁継電器1が、一対のヨーク17,18を備える構成を前提として、補助コイル41を備える場合について説明したが、この構成に限らず、一対のヨーク17,18は省略されていてもよい。
(実施形態2)
本実施形態の電磁継電器1は、図8に示すように、補助電磁石装置4が、補助コイル41として直列に接続された第1の補助コイル411と第2の補助コイル412とを有する点で、実施形態1の電磁継電器1と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
第1の補助コイル411と第2の補助コイル412とは、図8に示すように、主可動子32および補助可動子42の中心軸と同一直線(第1の直線L1)の周りに、互いに重なるように二重巻きにされている。具体的には、第1の補助コイル411と第2の補助コイル412とは、いずれも第1補助継鉄441と第2補助継鉄442と第3補助継鉄443とで囲まれた空間に配置され、その内側に第4補助継鉄444と補助固定子43と補助可動子42とが配置されている。
第1の補助コイル411は、第1の接点台11と第1の出力端子T1との間に挿入され、第2の補助コイル412は、第2の接点台12と第2の出力端子T2との間に挿入されている。言い換えれば、一対の出力端子T1,T2間において、第1の補助コイル411と接点装置2と第2の補助コイル412とは直列に接続されている。
第1の補助コイル411と第2の補助コイル412とは、第1の出力端子T1から第2の出力端子T2へ流れる負荷電流によって磁気回路(補助継鉄44と補助固定子43と補助可動子42)上に同じ向きの磁束を生じるように、巻き付け方向が設定されている。言い換えれば、補助電磁石装置4は、負荷電流により第1の補助コイル411と第2の補助コイル412との各々で生じる磁束によって補助可動子42に同じ向きの吸引力が作用するように構成されている。
以上説明した本実施形態の電磁継電器1によれば、第1の補助コイル411と第2の補助コイル412との各々が、接点装置2を通して流れる負荷電流によって励磁され、補助可動子42に作用する吸引力を生じる。したがって、主可動子32に作用する吸引力は、主電磁石装置3で生じる吸引力に、第1の補助コイル411で生じる補助可動子42の吸引力と、第2の補助コイル412で生じる補助可動子42の吸引力とを加えた大きさになる。その結果、電磁継電器1は、第1の補助コイル411と第2の補助コイル412とのいずれか一方のみが設けられた構成に比べて、主可動子32に作用する吸引力が一層増大し、接点の接触安定性がより向上する。
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
(実施形態3)
本実施形態の電磁継電器1は、図9に示すように、励磁コイル31が第1の直線L1周りに巻かれており、補助コイル41が第1の直線L1とは別の第2の直線L2周りに巻かれている点で、実施形態1の電磁継電器1と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
ここでいう第1の直線L1は、主可動子32および補助可動子42の中心軸上の直線である。すなわち、主可動子32および補助可動子42は、第1の直線L1上に配置され、第1の直線L1に沿って直進往復移動するように構成されている。
励磁コイル31は、主可動子32および補助可動子42の中心軸と同一直線(第1の直線L1)の周りに巻かれている。これに対して、補助コイル41は、励磁コイル31と同軸周りではなく、第1の直線L1とは異なる第2の直線L2の周りに巻かれている。
具体的には、補助コイル41は、補助継鉄44と補助固定子43と補助可動子42とで形成される補助電磁石装置4の磁気回路のうち、一対の第3補助継鉄443の一方(図9では右側)の第3補助継鉄443の周囲に巻かれている。本実施形態においても、補助電磁石装置4は、補助コイル41に負荷電流が流れると、補助可動子42の吸引により、主可動子32に対して励磁コイル31の生じる磁束による吸引力と同じ向きの力を作用させるように構成されている。
以上説明した本実施形態の電磁継電器1によれば、補助コイル41が励磁コイル31と同軸周りに巻かれる必要がないので、補助コイル41の配置の自由度が高くなる。すなわち、補助コイル41は、補助電磁石装置4における磁気回路の一部の周囲に巻かれ、接点装置2を流れる負荷電流によって、補助可動子42に吸引力を作用させる構成であればよい。したがって、電磁継電器1は、たとえば補助可動子42が直進往復移動するプランジャ型の補助電磁石装置4に限らず、ヒンジ型の電磁石装置を補助電磁石装置4として採用することも可能である。
ところで、図9の例では補助コイル41は1つのコイルからなるが、この構成に限らず、補助コイル41は直列に接続された複数のコイルを有していてもよい。
たとえば、図10の例では、実施形態2と同様に、補助電磁石装置4は、補助コイル41として直列に接続された第1の補助コイル411と第2の補助コイル412とを有している。第1の補助コイル411は、第1の接点台11と第1の出力端子T1との間に挿入され、補助電磁石装置4の磁気回路のうち、一対の第3補助継鉄443の一方(図10では左側)の第3補助継鉄443の周囲に巻かれている。第2の補助コイル412は、第2の接点台12と第2の出力端子T2との間に挿入され、補助電磁石装置4の磁気回路のうち、一対の第3補助継鉄443の他方(図10では右側)の第3補助継鉄443の周囲に巻かれている。
ここで、第1の補助コイル411と第2の補助コイル412とは、第1の出力端子T1から第2の出力端子T2へ流れる負荷電流によって磁気回路(少なくとも補助可動子42)上に同じ向きの磁束を生じるように、巻き付け方向が設定されている。言い換えれば、補助電磁石装置4は、負荷電流により第1の補助コイル411と第2の補助コイル412との各々で生じる磁束によって補助可動子42に同じ向きの吸引力が作用するように構成されている。
この構成によれば、実施形態2の電磁継電器1と同様に、電磁継電器1は、第1の補助コイル411と第2の補助コイル412とのいずれか一方のみが設けられた構成に比べて、主可動子32に作用する吸引力が一層増大し、接点の接触安定性がより向上する。
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。