JP6213731B2 - 分散染料インク組成物、印捺方法、及び印捺物 - Google Patents
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Description
〔1〕
ポリエステル布帛又はポリエステルとポリウレタンとの混紡布帛に付着させて印捺するのに用いられる分散染料インク組成物であって、
分散染料と、
酸価75〜260mgKOH/gのスチレンとスチレン以外のビニルモノマーとの共重合体(但し、分子鎖末端にアクリロイル基を有し、且つカルボン酸基を解離基として有する水溶性ウレタン化合物と疎水性アクリルモノマーとを共重合してなる水溶性ウレタンポリマーを除く)と、
アルキレングリコールモノアルキルエーテルと、
有機アミンと、を含み、
前記アルキレングルコールモノアルキルエーテルの含有量が、前記分散染料インク組成物の総量に対して、1.0〜5.0質量%である、
分散染料インク組成物。
〔2〕
前記アルキレングリコールモノアルキルエーテルが、トリエチレングリコールモノアルキルエーテルを含む、前項〔1〕に記載の分散染料インク組成物。
〔3〕
リグニンスルホン酸をさらに含む、前項〔1〕又は〔2〕に記載の分散染料インク組成物。
〔4〕
pHが、7.8〜9.0である、前項〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の分散染料インク組成物。
〔5〕
前記アルキレングリコールモノアルキルエーテルが、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルから選択される1種である、前項〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の分散染料インク組成物。
〔6〕
ポリエステル布帛又はポリエステルとポリウレタンとの混紡布帛に対し、インクジェットノズルから前項〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の分散染料インク組成物を、解像度が360dpi〜1440dpiであり、Iwが3〜45ngであり、インク打ち込み量の最大値が35g/m 2 となるように吐出し、付着させる付着工程を有する、印捺方法。
〔7〕
前記ポリエステル布帛又は前記ポリエステルとポリウレタンとの混紡布帛を前処理する工程を含まない、前項〔6〕に記載の印捺方法。
〔8〕
ポリエステル布帛又はポリエステルとポリウレタンとの混紡布帛上に、前項〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の分散染料インク組成物が印捺された、印捺物。
本実施形態の分散染料インク組成物(以下、単に「インク組成物」ともいう。)は、ポリエステル布帛又はポリエステルとポリウレタンとの混紡布帛に付着させて印捺するのに用いられる分散染料インクであって、分散染料と、酸価75〜260mgKOH/gのスチレンとスチレン以外のビニルモノマーとの共重合体と、アルキレングリコールモノアルキルエーテルと、有機アミンと、を含む。
用い得る分散染料としては、特に限定されず、以下に列記するものが例示される。
スチレンとスチレン以外のビニルモノマー(以下、スチレン以外のビニルモノマーを単に「ビニルモノマー」という。)との共重合体は、分散染料の分散剤として働き得る。スチレンとビニルモノマーとの共重合体を用いることにより、その他の分散剤を用いる場合と比較して、布帛に対するインク組成物の付着量を増大させたとしても滲みが生じにくく、分散染料インク組成物の保存安定性及び吐出安定性がより向上する。また、得られた印捺物から未固着の分散染料を熱石鹸液などで洗い落とす処理を行った場合に、非印捺領域にまで染料が色移りする白場汚染を抑制すことができる。白場汚染が抑制される理由としては、分散染料に吸着しやすいスチレンとビニルモノマーとの共重合体が分散染料を被覆するため、余分な分散染料が布帛に付着しにくいからと考えられるが、この限りではない。
分散染料インク組成物は、リグニンスルホン酸をさらに含むことが好ましい。リグニンスルホン酸は、分散染料の分散剤として働き得る。分散染料インク組成物がリグニンスルホン酸を含むことにより、分散染料の保存安定性、分散染料インク組成物の長期にわたる吐出安定性がより向上する傾向にある。この理由は明らかではないが、分散剤の染料被覆率が向上すると考えられるが、特に限定されない。
アルキレングリコールモノアルキルエーテルは水溶性有機溶剤として働く。インク組成物が、アルキレングリコールモノアルキルエーテルを含むことにより、分散染料インク組成物の被記録媒体への濡れ性を高め、分散染料インク組成物の浸透性をより向上し、吐出安定性及び目詰まり回復性もより向上することができる。その上、アルキレングリコールモノアルキルエーテルを、スチレンとビニルモノマーとの共重合体と併用することにより、滲みをより抑制することができる。
R−O−(CnH2nO)m−OH ・・・ (1)
(式(1)中、Rは、炭素数1〜10の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基を示し、nは、互いに独立に、2〜5の整数を示し、mは1〜30の整数を示す。)
有機アミンは、スチレンとビニルモノマーとの共重合体が有し得るカルボキシル基のような酸性基を、部分的又は完全に中和する中和剤として働き得る。
分散染料インク組成物のpHは、好ましくは7.8〜9.0であり、より好ましくは8.0〜8.5である。分散染料インク組成物のpHが7.8以上であることにより、分散染料インク組成物中の異物発生がより抑制される傾向にある。また、分散染料インク組成物のpHが9.0以下であることにより、スチレンとビニルモノマーとの共重合体などの分散剤の親水性が低下し、分散染料の吸着がより良好に進行する傾向にある。また、分散染料インク組成物のpHが9.0以下であることにより、スチレンとビニルモノマーとの共重合体が吸着した分散染料の分散安定性がより向上する傾向にある。pHは実施例に記載の方法により測定することができる。
分散染料インク組成物は、水を含んでもよい。水としては、特に限定されないが、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌処理した水は、長期間に亘ってカビやバクテリアの発生がより防止される傾向にある。
分散染料インク組成物は、界面活性剤を含むことが好ましい。当該界面活性剤としては、特に限定されないが、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
分散染料インク組成物は、さらに必要に応じて、上述以外の、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、酸素吸収剤、pH調整剤(例えば、アジピン酸、水酸化カリウム)、又は溶解助剤、その他、通常のインクにおいて用いることができる各種添加剤を含んでもよい。なお、各種添加剤は、一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
本実施形態で用いる布帛としては、ポリエステル布帛又はポリエステルとポリウレタンとの混紡布帛を使用する。ポリエステル布帛又はポリエステルとポリウレタンとの混紡布帛は、特に白場汚染が生じやすい傾向にあるため、本発明のインク組成物を用いることが有利である。
本実施形態の印捺方法は、ポリエステル布帛又はポリエステルとポリウレタンとの混紡布帛に対し、インクジェットノズルから上記分散染料インク組成物を、解像度が360dpi〜1440dpiであり、Iw(1ドットあたりのインクの重量)が3〜45ngであり、インク打ち込み量の最大値が35g/m2となるように吐出し、付着させる付着工程を有する。
本実施形態の付着工程は、ポリエステル布帛又はポリエステルとポリウレタンの混紡布帛に対し、インクジェットノズルから上記分散染料インク組成物を、吐出し、付着させる工程である。
印捺物は、ポリエステル布帛又はポリエステルとポリウレタンの混紡布帛上に、上記分散染料インク組成物が印捺されたものである。この印捺物は、例えば、上記の印捺方法により得られるものである。当該印捺物は、滲みが生じにくく、摩擦堅牢性にも優れるものとなる。
下記の実施例及び比較例において使用したインク組成物用の主な原材料は、以下の通りである。
〔色材〕
分散染料:C.I.ディスパースレッド74(C.I.ディスパースレッド74社製)
顔料:C.I.ピグメントレッド122(Clariant社製、製品名Inkjet Magenta E02 VP2621)
〔分散剤〕
(スチレンとビニルモノマーとの共重合体)
共重合体1:BASF社製、製品名ジョンクリル611、酸価53、Mw8100
共重合体2:BASF社製、製品名ジョンクリル690、酸価102、Mw16500
共重合体3:BASF社製、製品名ジョンクリル62、酸価200、Mw8500
共重合体4:BASF社製、製品名HPD−96、酸価240、Mw7000
共重合体5:星光PMC社製、製品名RS−1191、酸価280、Mw7500
(リグニンスルホン酸)
日本製紙社製、製品名パールレックスNP
(界面活性剤)
β−ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王社製、製品名デモールRN
〔レベリング剤〕
アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(花王社製、製品名ペレックスSSH)
〔樹脂〕
日本ルーブリゾール社製 商品名サンキュアー2710
〔水溶性有機溶剤〕
MDG:ジエチレングリコールモノメチルエーテル
MTG:トリエチレングリコールモノメチルエーテル
BDG:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
BTG:トリエチレングリコールモノブチルエーテル
1,2−ブタンジオール
1,2−ヘキサンジオール
1,2−ノナンジオール
グリセリン
トリエチレングリコール
〔塩基〕
有機アミン:トリエタノールアミン
無機アミン:水酸化ナトリウム(NaOH)
〔布帛〕
ポリエステルエラストマー混紡布 Bilight Woven(Boselli社製)
ポリエステル Raso Tivano」(Boselli社製)
各原材料を下記の表1〜3に示す組成で純水と共に混合し、十分に撹拌し、各インク組成物を得た。なお、下記の表1〜3中、含有量の数値の単位は質量%であり、純水を加えた合計は100.0質量%である。
ガラス電極pHメーター(YOKOGAWA社製、製品名MODEL PH82)で測定した。
酸価はJIS K0070に準じて、測定した。
インクジェットプリンターPX−G930(セイコーエプソン社製)を改造したプリンターを用いて、後述する各評価方法の記録条件でインクジェット法により吐出し、A4サイズの布帛に吐出し、付着させた。
式:Duty(%)=実記録ドット数/(縦解像度×横解像度)×100
上記式において、「実記録ドット数」は単位面積当たりで実際に記録されたドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの画像解像度である。
温度:170℃
湿度:100%R.H.
処理時間:8分間
温度条件:25℃から85℃まで2℃/分の昇温速度で加熱し、85℃で10分間保持し、85℃から25℃まで3℃/分の高温速度で冷却した。
撹拌:回転速度800rpm(右回転:55秒、左回転:55秒、32〜33サイクル)
洗浄液:水150g、ラッコールSTA0.3g(明成化学工業社製)、ハイドロサルファイト0.15g(和光純薬社製)、水酸化ナトリウム0.3g(和光純薬社製)
解像度720×720dpi、IW25ngとし、布帛としてポリエステルを用いて印捺サンプルを得た。得られた印捺サンプルの印捺部と非印捺部の境界において、印捺部から非印捺部へのインクの染み出しの有無を確認し、下記評価基準に基づいて滲みについて評価した。
1. 目視(印捺部と目の距離が約10cm)で滲みが確認されず、ルーペを用いて10倍で観察しても滲みが確認されなかった。
2. 目視(印捺部と目の距離が約10cm)で滲みが確認されず、ルーペを用いて10倍で観察した場合に滲みが確認された。
3. 目視(印捺部と目の距離が約30cm)では滲みは確認できないが、目視(印捺部と目の距離が約10cm)では滲みが確認された。
4. 目視(印捺部と目の距離が約30cm)で滲みが確認された。
上記のようにして得られた印捺物の印捺部に対して、荷重:500g、摩擦子:金巾、摩擦回数:100往復の条件で、学振試験AB-301(テスター産業社製)を用いて学振試験を行ない、下記評価基準に基づいて摩擦堅牢性を評価した。
1. 印捺部において、塗膜剥がれはなく、かつ色材が金巾に付着しなかった。
2. 印捺部において、塗膜剥がれはなかったが、僅かに色材が金巾に付着した。
3. 印捺部において、1%以上25%未満の面積で塗膜が剥がれた。
4. 印捺部において、25%以上の面積で塗膜が剥がれた。
解像度1440×720dpi、IW22ngとし、布帛としてポリエステルを用い、Duty10〜100%の10%刻みのグラデーションパターンを記録して印捺サンプルを得た。得られた印捺サンプルの印捺部のOD値を、測色機Spectrolino(グレタグマクベス社製)を用いて測定し、下記評価基準に基づいて発色性について評価した。なお、C*=(a*2+b*2)0.5です。
1.C*が70以上であった。
2.C*が70未満であった。
A4サイズのポリエステルエラストマーBilight Woven(Boselli社製)に19cm×25cmのベタパターンを記録して、印捺サンプルを得た。捺染サンプルの無地の部分について、測色機Spectrolino(グレタグマクベス社製)を用いて洗浄工程前後で測色し、Lab表示系における色差ΔEを下記式(式は省略)に基づき算出した。ΔEより下記評価基準に基づいて白場汚染について評価した。
1:ΔEが0以上5未満であった。
2:ΔEが5以上10未満であった。
3:ΔEが10以上20未満であった。
4:ΔEが20以上であった。
上記のようにして調製した分散染料インク組成物をアルミパックに注入し、60℃で10日間保存した。保存前後のインク組成物を純水で2000倍希釈し、希釈液の顔料及び分散染料の粒度分布をMicrotrac UPA(日機装社製)で測定した。得られた平均粒子径D50の差を算出し、下記評価基準に基づいて保存安定性(粒度分布)について評価した。
1. ΔD50が0nm以上10nm未満であった。
2. ΔD50が10nm以上30nm未満であった。
3. ΔD50が30nm以上50nm未満であった。
4. ΔD50が50nm以上であった。
上記のようにして調製した分散染料インク組成物をアルミパックに注入し、60℃で10日間放置した。放置後の一定量の分散染料インク組成物を格子長10μmの金属メッシュに通し、金属メッシュ上に残った固形物を異物として、その個数を確認した。下記評価基準に基づいて保存性(異物)を評価した。
1. 異物は0個であった。
2. 異物は1個以上50未満であった。
3. 異物は50個以上100未満であった。
4. 異物は100個以上であった。
Claims (8)
- ポリエステル布帛又はポリエステルとポリウレタンとの混紡布帛に付着させて印捺するのに用いられる分散染料インク組成物であって、
分散染料と、
酸価75〜260mgKOH/gのスチレンとスチレン以外のビニルモノマーとの共重合体(但し、分子鎖末端にアクリロイル基を有し、且つカルボン酸基を解離基として有する水溶性ウレタン化合物と疎水性アクリルモノマーとを共重合してなる水溶性ウレタンポリマーを除く)と、
アルキレングリコールモノアルキルエーテルと、
有機アミンと、を含み、
前記アルキレングルコールモノアルキルエーテルの含有量が、前記分散染料インク組成物の総量に対して、1.0〜5.0質量%である、
分散染料インク組成物。 - 前記アルキレングリコールモノアルキルエーテルが、トリエチレングリコールモノアルキルエーテルを含む、請求項1に記載の分散染料インク組成物。
- リグニンスルホン酸をさらに含む、請求項1又は2に記載の分散染料インク組成物。
- pHが、7.8〜9.0である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の分散染料インク組成物。
- 前記アルキレングリコールモノアルキルエーテルが、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルから選択される1種である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の分散染料インク組成物。
- ポリエステル布帛又はポリエステルとポリウレタンとの混紡布帛に対し、インクジェットノズルから請求項1〜5のいずれか1項に記載の分散染料インク組成物を、解像度が360dpi〜1440dpiであり、Iwが3〜45ngであり、インク打ち込み量の最大値が35g/m2となるように吐出し、付着させる付着工程を有する、印捺方法。
- 前記ポリエステル布帛又は前記ポリエステルとポリウレタンとの混紡布帛を前処理する工程を含まない、請求項6に記載の印捺方法。
- ポリエステル布帛又はポリエステルとポリウレタンとの混紡布帛上に、請求項1〜5のいずれか1項に記載の分散染料インク組成物が印捺された、印捺物。
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