(1)構成
図1は、本実施形態に係る自動変速機1の骨子図である。この自動変速機1は、所定の停止条件成立時にエンジン(図示せず)を自動停止させ、エンジン自動停止状態で所定の再始動条件成立時にエンジンを再始動させるアイドルストップ制御が行われる車両(アイドルストップ車両)に搭載されている。
上記停止条件としては、例えば、基本的条件として、車速が略ゼロの状態でブレーキペダルが踏み込まれていること等が挙げられ、さらに付加的条件として、バッテリの残容量が所定量以上あることや、エアコンの設定温度と車室内の温度との差が所定値以下であること等が挙げられる。上記再始動条件としては、例えば、Dレンジ(前進走行レンジ)においては、ブレーキペダルの踏み込みがなくなったこと等が挙げられ、Nレンジ(ニュートラルレンジ)やPレンジ(パーキングレンジ)等の非走行レンジにおいては、N→Dセレクト操作やP→Dセレクト操作が行われたこと又はN→Rセレクト操作やP→Rセレクト操作が行われたこと等が挙げられる。
自動変速機1は、エンジンの出力トルクが図外のトルクコンバータを介して入力される入力軸2を有する。入力軸2上に、エンジン側(図の右側)から、第1、第2、第3プラネタリギヤセット(以下「プラネタリギヤセット」を単に「ギヤセット」という)10,20,30が配置されている。これらのギヤセット10,20,30で形成される動力伝達経路を切り換えるための摩擦要素として、ロークラッチ(本発明の「第1摩擦要素」に相当する)40、ハイクラッチ50、ローリバースブレーキ(LRブレーキ)(本発明の「第3摩擦要素」に相当する)60、2速・6速ブレーキ(26ブレーキ)70、及び後退速・3速・5速ブレーキ(R35ブレーキ)(本発明の「第2摩擦要素」に相当する)80が備えられている。これらの摩擦要素40,50,60,70,80は油圧式である。ロークラッチ40及びハイクラッチ50は、上記入力軸2からの動力をギヤセット10,20,30へ選択的に伝達する。LRブレーキ60、26ブレーキ70、及びR35ブレーキ80は、ギヤセット10,20,30の所定の回転要素を変速機ケース3に固定する。
ギヤセット10,20,30は、いずれも、サンギヤ11,21,31と、サンギヤ11,21,31と噛み合うピニオン12,22,32と、ピニオン12,22,32を支持するキャリヤ13,23,33と、ピニオン12,22,32と噛み合うリングギヤ14,24,34とで構成される。
第1ギヤセット10のサンギヤ11と第2ギヤセット20のサンギヤ21とが結合されてロークラッチ40の出力部材41に連結されている。第2ギヤセット20のキャリヤ23がハイクラッチ50の出力部材51に連結されている。第3ギヤセット30のサンギヤ31が入力軸2に連結されている。第1ギヤセット10のキャリヤ13に出力ギヤ4が連結されている。出力ギヤ4は、自動変速機1の出力トルクを図外の駆動輪側へ出力する。
第1ギヤセット10のリングギヤ14と第2ギヤセット20のキャリヤ23とが結合され、これらと変速機ケース3との間にLRブレーキ60が介設されている。第2ギヤセット20のリングギヤ24と第3ギヤセット30のキャリヤ33とが結合され、これらと変速機ケース3との間に26ブレーキ70が介設されている。第3ギヤセット30のリングギヤ34と変速機ケース3との間にR35ブレーキ80が介設されている。
以上の構成により、この自動変速機1は、5つの摩擦要素40,50,60,70,80の締結状態の組み合わせにより、図2に示すように、Dレンジでの前進1〜6速と、Rレンジ(後退走行レンジ)での後退速とが達成される。図2から明らかなように、本実施形態では、前進1速(前進発進段)でロークラッチ40とLRブレーキ60とが締結され、後退速(後退発進段)でLRブレーキ60とR35ブレーキ80とが締結される。すなわち、ロークラッチ40は、Dレンジの発進段で締結されRレンジの発進段で解放される。R35ブレーキ80は、Dレンジの発進段で解放されRレンジの発進段で締結される。LRブレーキ60は、Dレンジの発進段及びRレンジの発進段の双方で締結される。
図3〜図5に示すように、上記LRブレーキ60は、制御性向上のため、クリアランス調整機能を備えた複動式の摩擦要素である。LRブレーキ60は、クリアランス調整用ピストン(Bピストン)62と押圧用ピストン(Aピストン)63とを有する。Bピストン62は、組付性向上のため、第1ピストン部材62aと第2ピストン部材62bとに分割され、組付後に、皿バネ60a、スナップリング60b、及び環状固定プレート60cにより一体化されている。
Bピストン62は、変速機ケース3に形成されたシリンダ3a内に軸方向にストローク可能に嵌合されている。Bピストン62と変速機ケース3との間にBピストン62の油圧室(B室)64が形成されている。B室64には、変速機ケース3に形成されたB室ライン118(図6参照)を介して油圧(B室圧)が供給される。
Aピストン63は、Bピストン62の内側に軸方向に相対移動可能に嵌合されている。Aピストン63とBピストン62との間にAピストン63の油圧室(A室)65が形成されている。A室65には、変速機ケース3に形成されたA室ライン119(図6参照)及び第2ピストン部材62bに形成された連通孔62cを介して油圧(A室圧)が供給される。
B室64に所定の第1油圧(例えば数100kPa)を供給し、A室65に所定の第2油圧(例えば数100kPa)を供給すると、図3(図中の着色部分は油圧が供給されていることを示す。図4において同じ)に示すように、Bピストン62が第1油圧によりリターンスプリング66の付勢力に抗してストッパ67に当接するまで図の左側にストロークすると共に、Aピストン63も図の左側にストロークしかつ第2油圧により押圧力が付与されて、変速機ケース3と被制動部材(すなわち第1ギヤセット10のリングギヤ14と第2ギヤセット20のキャリヤ23とが結合した部材)とに交互に係合された複数の摩擦板68を押圧する。これにより、LRブレーキ60が締結状態となる。
この状態からA室65の油圧(A室圧)を排出すると、図4に示すように、Aピストン63が摩擦板68に接したままAピストン63の押圧力が解除される。これにより、LRブレーキ60が解放状態となる。このとき、摩擦板68のクリアランスはゼロであり、Aピストン63はゼロクリアランス位置で待機する。
さらにこの状態からB室64の油圧(B室圧)を排出すると、図5に示すように、Bピストン62がリターンスプリング66の付勢力により図の右側にストロークする。このとき、Aピストン63に装着されたシール部材の摩擦力等により、Aピストン63はBピストン62との位置関係を保持したまま、Bピストン62と共に図の右側にストロークする。
次回、LRブレーキ60を締結するときは、まずB室64に油圧を供給する。これにより、Aピストン63及びBピストン62が上記位置関係を保持したまま、図の左側にストロークする(図4参照)。このとき、Aピストン63が摩擦板68に接して摩擦板68のクリアランスがゼロとなる。すなわち、Aピストン63はゼロクリアランス位置で待機状態となる。この状態からA室65に油圧を供給すると、Aピストン63が油圧の供給と略同時に摩擦板68を押圧してLRブレーキ60が応答性よく締結される(図3参照)。
要すれば、LRブレーキ60の締結時は、B室64→A室65の順に油圧が供給され、解放時は、A室65→B室64の順に油圧が排出される。
図3〜図5から明らかなように、LRブレーキ60は、Bピストン62を解放側に付勢するリターンスプリング66を備えているが、Aピストン63を解放側に付勢するリターンスプリングを備えていない。また、前進1速でこのLRブレーキ60と共に締結されるロークラッチ40及び後退速でこのLRブレーキ60と共に締結されるR35ブレーキ80は、図示しないが、いずれも、単一のピストン及び単一の油圧室を有し、かつ、ピストンを解放側に付勢するリターンスプリングを備えている。
図6は、この自動変速機1に備えられた油圧回路100の要部を示す図である。すなわち、この自動変速機1は、上記摩擦要素40,50,60,70,80に油圧を選択的に供給して図2に示す各変速段を達成するための油圧回路100を備えている。上述したように、本実施形態に係る車両は、アイドルストップ車両であるから、エンジンに駆動されて油圧を生成する機械式オイルポンプ102の他に、アイドルストップ制御によるエンジン自動停止中にモータ101aに駆動されて油圧を生成する電動オイルポンプ101を備えている。
油圧回路100には、上記機械式オイルポンプ102及び電動オイルポンプ101の双方から油圧が導入可能である。油圧回路100には、導入された油圧を前進1速で締結されるロークラッチ40(より詳しくはその油圧室)、後退速で締結されるR35ブレーキ80(より詳しくはその油圧室)、及び前進1速と後退速とで締結されるLRブレーキ60(より詳しくは上記B室64及びA室65)に供給するためのバルブとして、ポンプ切換バルブ103、マニュアルバルブ104、第1リニアソレノイドバルブ(第1LSV)105、第2リニアソレノイドバルブ(第2LSV)106、ローリバースシフトバルブ(LRシフトバルブ)107、オンオフソレノイドバルブ(オンオフSV)108、及び第3リニアソレノイドバルブ(第3LSV)109が備えられている。
ポンプ切換バルブ103は、2つのポンプ101,102のいずれの油圧を2つの摩擦要素40,60に供給するかを切り換える。マニュアルバルブ104は、運転者のレンジ選択操作に連動する。第1LSV105は、ロークラッチ40の油圧室に供給される油圧(ロークラッチ圧)を制御する。第2LSV106は、LRブレーキ60のA室65に供給される油圧(A室圧)を制御する。LRシフトバルブ107及びオンオフSV108は、LRブレーキ60のB室64及びA室65に対する油圧の給排の順序を、上述したように、LRブレーキ60を締結するときは、B室64→A室65の順に油圧が供給され、解放するときは、A室65→B室64の順に油圧が排出されるように規制する。第3LSV109は、R35ブレーキ80の油圧室に供給される油圧(R35ブレーキ圧)を制御する。
ポンプ切換バルブ103は、軸方向の両端にスプール103aの位置を切り換えるためのポートa,bを有する。電動オイルポンプ101の駆動時は、電動オイルポンプ101の油圧が図の左側のポートaに導入され、図示のように、スプール103aが右側にシフトする。機械式オイルポンプ102の駆動時は、機械式オイルポンプ102の油圧が図の右側のポートbに導入され、スプール103aが左側にシフトする。
ポンプ切換バルブ103は、さらに、ロークラッチ40用の入力ポートc,d及び出力ポートeと、LRブレーキ60用の入力ポートf,g及び出力ポートhとを有する。スプール103aが右側にシフトしているときは、図示のように、ロークラッチ40用のポートcとポートeとが連通し、LRブレーキ60用のポートfとポートhとが連通する。スプール103aが左側にシフトしているときは、ロークラッチ40用のポートdとポートeとが連通し、LRブレーキ60用のポートgとポートhとが連通する。
ロークラッチ40用の入力ポートc及びLRブレーキ60用の入力ポートfに電動オイルポンプ101から導かれた油路111,112がそれぞれ接続されている。ロークラッチ40用の入力ポートd及びLRブレーキ60用の入力ポートgに機械式オイルポンプ102から導かれた油路113,114がそれぞれ接続されている。ただし、油路113は、マニュアルバルブ104を介して機械式オイルポンプ102から導かれている。マニュアルバルブ104は、Dレンジ及びRレンジが選択されているときは、機械式オイルポンプ102と油路113とを連通させ、Nレンジ及びPレンジが選択されているときは、油路113をドレンさせる。
ロークラッチ40用の出力ポートeにロークラッチ40の油圧室から導かれたロークラッチライン115が第1LSV105を介して接続されている。ロークラッチライン115の第1LSV105よりもポンプ切換バルブ103側にR35ブレーキ80の油圧室から導かれたR35ブレーキライン120が第3LSV109を介して接続されている。LRブレーキ60用の出力ポートhにLRシフトバルブ107から導かれたLRブレーキライン116が接続されている。LRシフトバルブ107にLRブレーキ60のB室64から導かれたB室ライン118が接続されている。B室ライン118にLRブレーキ60のA室65から導かれたA室ライン119が第2LSV106を介して接続されている。
第1LSV105、第2LSV106、及び第3LSV109は、いずれも、入力ポートiと出力ポートjとドレンポートkとを有し、開時に入力ポートiと出力ポートjとを連通させ、閉時に出力ポートjとドレンポートkとを連通させる。
機械式オイルポンプ102から導かれた油路117がオンオフSV108を介してLRシフトバルブ107の軸方向の一端に接続されている。オンオフSV108は、開時に機械式オイルポンプ102の油圧をLRシフトバルブ107の一端に導入して、LRシフトバルブ107のスプール(図示せず)を右側にシフトさせ、B室ライン118及びA室ライン119をドレンさせる。一方、閉時に上記スプールを左側にシフトさせ、LRブレーキライン116とB室ライン118及びA室ライン119とを連通させる。
上述したように、LRブレーキ60は、使用頻度及び使用時間が比較的少ない前進1速及び後退速のみで締結される。そのため、オンオフSV108は、B室ライン118及びA室ライン119をドレンさせる開状態の時間が、LRブレーキライン116とB室ライン118及びA室ライン119とを連通させる閉状態の時間よりも長くなる。そこで、本実施形態では、非通電時(OFF時)は開状態となるノーマルオープンタイプのオンオフSV108を採用している。これにより、オンオフSV108の電力消費量が少なくて済み、ひいては燃費性能が向上する。
図7は、この自動変速機1を備えたアイドルストップ車両の制御システム図である。制御装置200は、CPU、ROM、RAM等から構成されるマイクロプロセッサであり、本発明の「アイドルストップ手段」及び「油圧制御手段」に相当する。
制御装置200に、運転者により選択された自動変速機1のレンジを検出するレンジセンサ201からの信号、当該車両の車速を検出する車速センサ202からの信号、運転者のアクセルペダルの操作量を検出するアクセル操作量センサ203からの信号、運転者のブレーキペダルの踏み込みを検出するブレーキスイッチ204からの信号、エンジンの回転数を検出するエンジン回転数センサ205からの信号、及び電動オイルポンプ101の回転数を検出する電動オイルポンプ回転数センサ206からの信号が入力される。
制御装置200は、これらの信号に基き、アイドルストップ制御を行うために、エンジンの燃料供給装置211、点火装置212、及び始動装置213に制御信号を出力する。また、アイドルストップ制御中における自動変速機1のロークラッチ40、LRブレーキ60、及びR35ブレーキ80の油圧制御を行うために、電動オイルポンプ用モータ101aに制御信号を出力すると共に、自動変速機1の油圧回路100の第1LSV105、第2LSV106、第3LSV109、及びオンオフSV108に制御信号を出力する。
図8は、制御装置200が行う制御動作の一例を示すタイムチャートである。このタイムチャートは、当該車両の停車前から発進後までの各種信号や状態量の変化を示している。制御装置200は、車両の停車中、アイドルストップ制御と、ロークラッチ40及びLRブレーキ60の油圧制御とを行う。図8の例は、アイドルストップ制御中、自動変速機1のレンジがDレンジからNレンジに切り換えられ、次にN→Dセレクト操作が行われたことによりエンジンが再始動される場合(N→Dセレクト再始動)である。
図8において、時刻t1は、アイドルストップ状態フラグが0から1に変化する時刻、時刻t2は、1から2に変化する時刻、時刻t3は、2から3に変化する時刻、時刻t4は、A室圧が第2油圧に到達し、ロークラッチ圧の増圧が開始する時刻、時刻t5は、車両が発進する時刻である。
時刻t1までは、車両はDレンジで前進走行している。自動変速機1の変速段は、前進1速が達成されている。すなわち、ロークラッチ40の油圧室にロークラッチ40を締結状態とする油圧(締結油圧)が供給され、LRブレーキ60のB室64に上述の第1油圧が供給され、A室65に上述の第2油圧が供給されて、ロークラッチ40及びLRブレーキ60の双方が締結されている。後退速で締結されるR35ブレーキ80には、第3LSV109が閉状態のため、油圧が供給されていない。
機械式オイルポンプ(OP)102がエンジンに駆動されて油圧を生成し、電動オイルポンプ(OP)101がモータ101aのOFFにより油圧を生成していないので、ポンプ切換バルブ103のスプール103aが図6の左側(図8において「機械式OP側」と記す)にシフトし、機械式ポンプ102で生成された油圧が油路113,114とロークラッチライン115及びLRブレーキライン116とを介してロークラッチ40及びLRブレーキ60に供給されている。
なお、図示しないが、オンオフSV108はON(通電)とされている。これにより、ノーマルオープンタイプのオンオフSV108は閉状態となり、図6においてLRシフトバルブ107のスプールが左側にシフトし、LRブレーキライン116とB室ライン118及びA室ライン119とが連通している。なお、オンオフSV108はLRブレーキ60が締結される前進1速及び後退速以外の変速段ではOFF(非通電)とされる。
このような状態で、アクセル操作量の減少に伴い、車速、エンジン回転数、及び図示しないタービン回転数(トルクコンバータの出力回転数。自動変速機1の入力軸2の回転数に同じ)が低下し、ブレーキペダルが踏み込まれて、例えば交差点の信号待ち等で車両が停車すると(車速及びタービン回転数=0)、アイドルストップ状態フラグが0から1に変化する(時刻t1)。この時点で、アイドルストップ制御の停止条件のうち、車速が略ゼロの状態でブレーキペダルが踏み込まれていること、という基本的条件が成立する。
基本的条件が成立すると、制御装置200は、モータ101aをONとして電動オイルポンプ101の駆動を開始する。これにより、電動オイルポンプ101がモータ101aに駆動されて油圧を生成する。生成した油圧がポンプ切換バルブ103に導かれ、スプール103aが図6の右側(図8において「電動OP側」と記す)にシフトし、電動オイルポンプ101で生成された油圧が油路111,112とロークラッチライン115及びLRブレーキライン116とを介してロークラッチ40及びLRブレーキ60に供給される。この時点で、ロークラッチ40及びLRブレーキ60には、それまで機械式オイルポンプ102の油圧が供給されていたのが電動オイルポンプ101の油圧が供給されるようになる。
次いで、制御装置200は、アイドルストップ制御の停止条件のうち、バッテリの残容量が所定量以上あることや、エアコンの設定温度と車室内の温度との差が所定値以下であること、という付加的条件が成立するか否か、言い換えると、エンジンを停止しても差し支えがないか否かを判定する。その結果、付加的条件が成立すると、アイドルストップ状態フラグが1から2に変化する(時刻t2)。これをもって、制御装置200は、エンジンを自動停止させる。エンジン停止に伴い、機械式オイルポンプ102が油圧の生成を停止するが、上述したように、この時点ではすでにロークラッチ40及びLRブレーキ60には電動オイルポンプ101の油圧が供給されているので問題はない。
制御装置200は、エンジン自動停止と共に、第1LSV105を制御して、ロークラッチ圧を締結油圧からDレンジのときの待機油圧Pdに低下させる。本実施形態では、待機油圧Pdは締結油圧よりも所定量だけ低い油圧であるが、締結油圧と同じ油圧でも構わない。
また、制御装置200は、エンジン自動停止と共に、第2LSV106を制御して、LRブレーキ60のA室圧を第2油圧から第3油圧に低下させる。第3油圧は第2油圧よりも低い油圧(例えば数10kPa)である。そのため、Aピストン63が摩擦板68の押圧を止めて、LRブレーキ60が解放状態となる。これにより、前進1速が達成されなくなり、自動変速機1の動力伝達経路が遮断される。図8において、符号「α」は、自動変速機1の動力伝達経路が遮断されている期間(前進1速の非達成期間)を示す。A室圧を低圧状態とすることにより、電動オイルポンプ101の電力消費量が少なくて済み、ひいては燃費性能が向上する。
要すれば、制御装置200は、エンジン自動停止中は、ロークラッチ40の油圧室に締結油圧以下の待機油圧Pdを供給し、LRブレーキ60のB室64に第1油圧を供給し、LRブレーキ60のA室65に第2油圧よりも低い第3油圧を供給する。第3油圧は、LRブレーキ60を解放状態とする油圧であるが、解放状態のLRブレーキ60におけるAピストン63のゼロクリアランス位置を保持できる油圧である。このような第3油圧の値は、予め実験的に求められる。
次いで、制御装置200は、自動変速機1のレンジがDレンジからNレンジに切り換えられたか否かを判定する。その結果、D→Nセレクト操作が行われたときは、第1LSV105を制御して、ロークラッチ圧をDレンジのときの待機油圧PdからNレンジのときの待機油圧Pnに低下させる。Nレンジのときの待機油圧PnはDレンジのときの待機油圧Pdよりも所定量だけ低い油圧である。
次いで、制御装置200は、アイドルストップ制御の再始動条件のうち、N→Dセレクト操作が行われたこと、というNレンジにおける再始動条件が成立するか否か、言い換えると、運転者が発進の意思を示したか否かを判定する。その結果、再始動条件が成立すると、アイドルストップ状態フラグが2から3に変化する(時刻t3)。これをもって、制御装置200は、エンジンを再始動させる(N→Dセレクト再始動)。
エンジン再始動に伴い、機械式オイルポンプ102がエンジンに駆動されて油圧の生成を再開する。制御装置200は、エンジン再始動と共に、言い換えると、機械式オイルポンプ102の油圧生成の再開と同時に、モータ101aをOFFとして電動オイルポンプ101の駆動を停止する。これにより、再び、ポンプ切換バルブ103のスプール103aが機械式OP側にシフトし、機械式オイルポンプ102の油圧がロークラッチ40及びLRブレーキ60に供給されるようになる。
制御装置200は、エンジン再始動と共に、第2LSV106を制御して、図8に符号アで示すように、LRブレーキ60のA室圧を第3油圧から第2油圧に向けて増圧する。これにより、Aピストン63が油圧の供給と略同時に摩擦板68を押圧して、LRブレーキ60が応答性よく締結状態となる。このとき、エンジン再始動直後であるから、エンジンに駆動される機械式オイルポンプ102が生成する油圧はまだ低目である。しかし、LRブレーキ60には、上述したように、Aピストン63を解放側に付勢するリターンスプリングが備えられていないので、機械式オイルポンプ102の生成油圧が低くても、Aピストン63は十分良好に摩擦板68を押圧して、LRブレーキ60が速やかに締結状態となる。また、電動オイルポンプ101の駆動を早期に停止できるから(駆動時間が短くて済むから)、モータ101aの電力消費量が少なくて済み、ひいては燃費性能が向上する。
制御装置200は、LRブレーキ60のA室圧が第2油圧に到達したら、第1LSV105を制御して、図8に符号イで示すように、ロークラッチ圧をNレンジのときの待機油圧Pnから締結油圧に向けて増圧する(時刻t4)。これにより、ロークラッチ40が締結状態となる。そのため、先にLRブレーキ60が締結されているから、前進1速が達成されて、符号αで示すように、遮断されていた自動変速機1の動力伝達経路が再び形成される。このとき、エンジン再始動からある程度時間が経過しているから、機械式オイルポンプ102の生成油圧は十分高くなっている。そのため、上述したように、ロークラッチ40にピストンを解放側に付勢するリターンスプリングが備えられていても、ロークラッチ40のピストンは十分良好に締結側にストロークして、ロークラッチ40が速やかに締結状態となる。
この時点ではまだブレーキペダルが踏み込まれているので、動力伝達経路が再形成されても、車速は立ち上らない。運転者がブレーキペダルの踏み込みを止め、アクセルペダルを踏み込んだ車両の発進と同時に車速が上昇する(時刻t5)。
図9は、制御装置200が行う制御動作の他の例を示すタイムチャートである。制御装置200は、車両の停車中、アイドルストップ制御と、ロークラッチ40、LRブレーキ60、及びR35ブレーキ80の油圧制御とを行う。図9の例は、アイドルストップ制御中、自動変速機1のレンジがDレンジからNレンジに切り換えられ、次にN→Rセレクト操作が行われたことによりエンジンが再始動される場合(N→Rセレクト再始動)である。
図9において、時刻t1’は、アイドルストップ状態フラグが0から1に変化する時刻、時刻t2’は、1から2に変化する時刻、時刻t3’は、2から3に変化する時刻、時刻t4’は、A室圧が第2油圧に到達し、R35ブレーキ圧の増圧が開始する時刻、時刻t5’は、車両が発進する時刻である。図8と比べて、時刻t3’以降が異なるので、時刻t3’以降のみ説明を加える。
すなわち、制御装置200は、エンジン自動停止中にD→Nセレクト操作が行われたことによりロークラッチ圧をNレンジのときの待機油圧Pnに低下させた後、アイドルストップ制御の再始動条件のうち、N→Rセレクト操作が行われたこと、というNレンジにおける再始動条件が成立するか否か、言い換えると、運転者が発進(後退発進)の意思を示したか否かを判定する。その結果、再始動条件が成立すると、アイドルストップ状態フラグが2から3に変化する(時刻t3’)。これをもって、制御装置200は、エンジンを再始動させる(N→Rセレクト再始動)。
エンジン再始動に伴い、機械式オイルポンプ102がエンジンに駆動されて油圧の生成を再開する。制御装置200は、エンジン再始動と共に、言い換えると、機械式オイルポンプ102の油圧生成の再開と同時に、モータ101aをOFFとして電動オイルポンプ101の駆動を停止する。これにより、再び、ポンプ切換バルブ103のスプール103aが機械式OP側にシフトし、機械式オイルポンプ102の油圧がロークラッチ40及びLRブレーキ60に供給されるようになる。
制御装置200は、エンジン再始動と共に、第1LSV105を制御して、ロークラッチ圧、つまりNレンジのときの待機油圧Pnを排出する。これにより、ロークラッチ40が解放状態となる。また、制御装置200は、このロークラッチ圧の排出と同時に、第2LSV106を制御して、図9に符号カで示すように、LRブレーキ60のA室圧を第3油圧から第2油圧に向けて増圧する。これにより、Aピストン63が油圧の供給と略同時に摩擦板68を押圧して、LRブレーキ60が応答性よく締結状態となる。このとき、エンジン再始動直後であるから、エンジンに駆動される機械式オイルポンプ102が生成する油圧はまだ低目である。しかし、LRブレーキ60には、上述したように、Aピストン63を解放側に付勢するリターンスプリングが備えられていないので、機械式オイルポンプ102の生成油圧が低くても、Aピストン63は十分良好に摩擦板68を押圧して、LRブレーキ60が速やかに締結状態となる。また、電動オイルポンプ101の駆動を早期に停止できるから(駆動時間が短くて済むから)、モータ101aの電力消費量が少なくて済み、ひいては燃費性能が向上する。
制御装置200は、LRブレーキ60のA室圧が第2油圧に到達したら、第3LSV109を制御して、図9に符号キで示すように、R35ブレーキ80の油圧室にR35ブレーキ80を締結状態とする油圧(締結油圧)を供給する(時刻t4’)。言い換えると、R35ブレーキ圧を締結油圧に向けて増圧する。これにより、R35ブレーキ80が締結状態となる。そのため、先にLRブレーキ60が締結されているから、後退速が達成されて、符号αで示すように、遮断されていた自動変速機1の動力伝達経路が再び形成される。このとき、エンジン再始動からある程度時間が経過しているから、機械式オイルポンプ102の生成油圧は十分高くなっている。そのため、上述したように、R35ブレーキ80にピストンを解放側に付勢するリターンスプリングが備えられていても、R35ブレーキ80のピストンは十分良好に締結側にストロークして、R35ブレーキ80が速やかに締結状態となる。
この時点ではまだブレーキペダルが踏み込まれているので、動力伝達経路が再形成されても、車速は立ち上らない。運転者がブレーキペダルの踏み込みを止め、アクセルペダルを踏み込んだ車両の発進(後退発進)と同時に車速が上昇する(時刻t5’)。
図10は、制御装置200が行う図8及び図9の制御動作をフローチャートで表したものである。ただし、主たる特徴的な処理だけを抜粋して示している。
制御装置200は、ステップS1で、アイドルストップ状態フラグが1から2に変化したか否かを判定し、YESのときは(図8、図9の時刻t2,t2’)、ステップS2で、エンジンを自動停止させ、その後、エンジン回転数が所定の閾値以下になった時点で、ロークラッチ圧を締結油圧からDレンジのときの待機油圧(図10において「D油圧」と記す)Pdに低下させ、LRブレーキ60のA室圧を第2油圧から第3油圧に低下させる。
次いで、制御装置200は、ステップS3で、自動変速機1のレンジがDレンジからNレンジに切り換えられたか否かを判定し、YESのときは、ステップS4で、ロークラッチ圧をDレンジのときの待機油圧PdからNレンジのときの待機油圧(図10において「N油圧」と記す)Pnに低下させる。
次いで、制御装置200は、ステップS5で、アイドルストップ状態フラグが2から3に変化したか否かを判定し、YESのときは(図8、図9の時刻t3,t3’)、ステップS6で、エンジンを再始動させる。
次いで、制御装置200は、ステップS7で、上記アイドルストップ状態フラグの2から3への変化がレンジのN→Dセレクト操作が行われたことによるものか、N→Rセレクト操作が行われたことによるものかを判定し、N→Dセレクト操作によるときは(図8の場合)、ステップS8に進み、N→Rセレクト操作によるときは(図9の場合)、ステップS10に進む。
制御装置200は、ステップS8で、LRブレーキ60のA室圧を第2油圧に向けて増圧する(図8の符号ア)。
次いで、制御装置200は、ステップS9で、LRブレーキ60のA室圧が第2油圧に増圧後、ロークラッチ圧をNレンジのときの待機油圧Pnから締結油圧に向けて増圧する(図8の符号イ)。
一方、制御装置200は、ステップS10で、ロークラッチ圧(Nレンジのときの待機油圧Pn)を排出すると同時に、LRブレーキ60のA室圧を第2油圧に向けて増圧する(図9の符号カ)。
次いで、制御装置200は、ステップS11で、LRブレーキ60のA室圧が第2油圧に増圧後、R35ブレーキ圧を締結油圧に向けて増圧する(図9の符号キ)。
(2)作用等
以上、図面を参照して詳しく説明したように、本実施形態に係る自動変速機1の制御装置は、所定の停止条件成立時にエンジンを自動停止させ、エンジン自動停止状態で所定の再始動条件成立時にエンジンを再始動させるアイドルストップ制御を行う制御装置200を有する車両(アイドルストップ車両)に搭載される。自動変速機1は、前進1速で締結され、後退速で解放されるロークラッチ40と、前進1速で解放され、後退速で締結されるR35ブレーキ80とを有し、上記制御装置200は、上記ロークラッチ40及びR35ブレーキ80を締結するための油圧の制御を行う(図6、図7)。
上記制御装置200は、上記アイドルストップ制御によるエンジン自動停止中は、上記ロークラッチ40に当該ロークラッチ40を締結状態とする締結油圧以下の待機油圧Pd,Pnを供給し、NレンジからDレンジへのセレクト操作に基くエンジン再始動時は、上記ロークラッチ40に供給する油圧をNレンジのときの待機油圧Pnから上記締結油圧まで増圧し(図8の符号イ)、NレンジからRレンジへのセレクト操作に基くエンジン再始動時は、上記ロークラッチ40から上記待機油圧Pnを排出し、上記R35ブレーキ80に当該R35ブレーキ80を締結状態とする締結油圧を供給する(図9の符号キ)ものである。
その上で、上記待機油圧Pd,Pnは、上記自動変速機1のレンジがNレンジであるとき(Pn)はDレンジであるとき(Pd)に比べて低い値に設定されている(Nレンジのときの待機油圧Pn<Dレンジのときの待機油圧Pd)。
この構成によれば、Nレンジでエンジン自動停止中にレンジがDレンジにセレクト操作されたときは(図8の時刻t3)、エンジンが再始動されると共に、ロークラッチ40に供給される油圧が待機油圧Pnから締結油圧まで増圧されて、ロークラッチ40が締結状態となる。このとき、エンジン自動停止中は、ロークラッチ40にNレンジのときの待機油圧Pnが供給されているので、ロークラッチ40にそのような油圧が供給されていない場合と比べて、ロークラッチ40に供給される油圧が短時間のうちに締結油圧まで増圧される。そのため、ロークラッチ40が速やかに締結状態となり、エンジン再始動時のロークラッチ40の締結遅れや締結ショック等が抑制される。
一方、Nレンジでエンジン自動停止中にレンジがRレンジにセレクト操作されたときは(図9の時刻t3’)、エンジンが再始動されると共に、ロークラッチ40から待機油圧Pnが排出され、R35ブレーキ80に締結油圧が供給されて、R35ブレーキ80が締結状態となる。このとき、エンジン自動停止中にロークラッチ40に供給される待機油圧Pnは、Dレンジのときに供給される待機油圧Pdよりも低い(Pn<Pd)ので、ロークラッチ40から待機油圧Pnが比較的短時間のうちに排出される。そのため、R35ブレーキ80への締結油圧の供給が比較的早期に開始されて、R35ブレーキ80が速やかに締結状態となり、後退速への切り換え応答性が確保される。
これに対し、図9に鎖線(符号X)で示すように、仮に、エンジン自動停止中にロークラッチ40に供給される待機油圧がDレンジのときに供給される待機油圧Pdと同じであると、ロークラッチ40からの待機油圧Pdの排出に時間がかかり、R35ブレーキ80への締結油圧の供給が遅れて、R35ブレーキ80の締結が遅くなり、後退速への切り換え応答性が低下するのである。
本実施形態においては、自動変速機1は、前進1速及び後退速の双方で締結されるLRブレーキ60をさらに有する。上記LRブレーキ60は、摩擦板68と、摩擦板68を押圧する押圧用ピストン63と、押圧用ピストン63を相対移動可能に支持するクリアランス調整用ピストン62とを備え、次のように構成されている(図3〜図5)。上記クリアランス調整用ピストン62に第1油圧が供給されたときに上記クリアランス調整用ピストン62がストロークする。これにより上記押圧用ピストン63が摩擦板68に接して摩擦板68のクリアランスがゼロとなる。この状態から上記押圧用ピストン63に第2油圧が供給されたときに上記押圧用ピストン63が上記摩擦板68を押圧する。これにより上記LRブレーキ60が締結状態となる。
上記制御装置200は、上記LRブレーキ60を締結するための油圧の制御も行う(図6、図7)。上記制御装置200は、上記アイドルストップ制御によるエンジン自動停止中は、上記ロークラッチ40への上記待機油圧Pd,Pnの供給に加えて、上記クリアランス調整用ピストン62に上記第1油圧を供給し、NレンジからDレンジへのセレクト操作に基くエンジン再始動時は、上記ロークラッチ40に供給する油圧の上記締結油圧までの増圧に加えて、上記押圧用ピストン63に上記第2油圧を供給し(図8の符号ア)、NレンジからRレンジへのセレクト操作に基くエンジン再始動時は、上記ロークラッチ40からの上記待機油圧Pnの排出及び上記R35ブレーキ80への上記締結油圧の供給に加えて、上記押圧用ピストン63に上記第2油圧を供給する(図9の符号カ)。
この構成によれば、Nレンジでエンジン自動停止中にレンジがDレンジにセレクト操作されたときは(図8の時刻t3)、さらに、LRブレーキ60の押圧用ピストン63に第2油圧が供給される。このとき、エンジン自動停止中は、LRブレーキ60のクリアランス調整用ピストン62に第1油圧が供給されているので、押圧用ピストン63は摩擦板68のクリアランスがゼロの位置(ゼロクリアランス位置)から短時間のうちに摩擦板68を押圧する。そのため、LRブレーキ60が速やかに締結状態となり、エンジン再始動時のLRブレーキ60の締結遅れや締結ショック等が抑制される。
一方、Nレンジでエンジン自動停止中にレンジがRレンジにセレクト操作されたときも(図9の時刻t3’)、同様に、LRブレーキ60の押圧用ピストン63に第2油圧が供給され、押圧用ピストン63がゼロクリアランス位置から短時間のうちに摩擦板68を押圧する。そのため、LRブレーキ60が速やかに締結状態となり、後退速への切り換え応答性が確保される。
本実施形態においては、上記制御装置200は、NレンジからRレンジへのセレクト操作に基くエンジン再始動時は、上記ロークラッチ40からの上記待機油圧Pnの排出と、上記押圧用ピストン63への上記第2油圧の供給とを同時に行う(図9の時刻t3’、図10のステップS10)。
この構成によれば、上記ロークラッチ40からの上記待機油圧Pnの排出と、上記押圧用ピストン63への上記第2油圧の供給とを順に行う場合と比べて、後退速への切り換えがより一層速やかに行われる。
本実施形態においては、上記ロークラッチ40及びR35ブレーキ80は、当該ロークラッチ40及びR35ブレーキ80のピストンを解放側に付勢するリターンスプリングを備えている。上記制御装置200は、NレンジからDレンジへのセレクト操作に基くエンジン再始動時は、上記押圧用ピストン63に上記第2油圧を供給した後(図8の符号ア、図10のステップS8)、上記ロークラッチ40に対する油圧を上記締結油圧まで増圧し(図8の符号イ、図10のステップS9)、NレンジからRレンジへのセレクト操作に基くエンジン再始動時は、上記押圧用ピストン63に上記第2油圧を供給した後(図9の符号カ、図10のステップS10)、上記R35ブレーキ80に上記締結油圧を供給する(図9の符号キ、図10のステップS11)。
この構成によれば、ロークラッチ40及びR35ブレーキ80にリターンスプリングが備えられていても、NレンジからDレンジへのセレクト操作時におけるロークラッチ40の締結遅れや締結ショック等が抑制され、NレンジからRレンジへのセレクト操作時における後退速への切り換え応答性が確保される。すなわち、リターンスプリングの付勢力に抗してロークラッチ40及びR35ブレーキ80のピストンを締結側にストロークさせるには比較的高い油圧が必要である。一方、エンジン再始動直後はエンジンに駆動される機械式オイルポンプ102が生成する油圧はまだ低目である。そこで、この構成は、エンジン再始動時は、先に押圧用ピストン63に第2油圧を供給し、その後、機械式オイルポンプ102の生成油圧が高くなってからロークラッチ40又はR35ブレーキ80に締結油圧を供給することにより、リターンスプリングが備えられていても、ロークラッチ40又はR35ブレーキ80を速やかに締結状態とするものである。
なお、以上の実施形態は、前進1速をロークラッチ40とLRブレーキ60との締結で達成する場合であったが、これに代えて、前進1速をロークラッチ40の締結とワンウェイクラッチの係合とで達成する場合にも、本発明は適用可能である。その場合、制御装置200は、図8において、ロークラッチ40の油圧制御のみ行う。具体的に、制御装置200は、エンジン再始動と共に、ロークラッチ圧をNレンジのときの待機油圧Pnから締結油圧に向けて増圧すればよい。
また、Pレンジは、自動変速機1の出力ギヤ4が機械的にロックされる以外は、油圧回路100がNレンジと同じ状況なので、図8及び図9において、Nレンジに代えてPレンジとしてもよい。すなわち、本発明は、上記N→Dセレクト再始動、N→Rセレクト再始動の他、P→Dセレクト再始動、P→Rセレクト再始動等にも適用可能である。