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JP6211679B2 - 心拍数検出装置 - Google Patents

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Description

本発明は、心拍数検出装置に関する。
生体に光を照射して生体を透過した光の受光信号に基づき、生体の脈波信号を取得する脈波センサが知られており(例えば特許文献1参照)、脈波信号から生体の心拍数(ハートレート値)等を求めることができる。
脈波信号から生体の心拍数を算出する方法としてピーク解析方法及びFFT解析方法が存在する。ピーク解析方法では、脈波信号の時系列波形において、ピーク(極大値)の位置を特定し、隣接するピークの時間間隔から心拍数を算出する。FFT解析方法では、FFT(高速フーリエ変換)によって脈波信号の時系列データから脈波信号のパワースペクトルを算出し、パワースペクトル密度が最大となる周波数を同定することにより心拍数を算出する。
また、心拍数を順次算出するシステムにおいて、今回の心拍数を算出する際、前回算出した心拍数を中心とする数値範囲を設定し、当該数値範囲内に限定して今回の心拍数を同定する帯域制限技術も提案されている(非特許文献1参照)。
特開平05-161615号公報
巻口、他3名,「スマートフォンの音声入出力端子をインターフェースとする脈波測定装置の実装と評価」,情報処理学会インタラクション2012,情報処理学会,平成24年3月,p.593−598
生体の心拍数の短時間における変化量は限られており、今回の検出心拍数が前回の検出心拍数と大きくかけ離れているとは考えにくい。上述の帯域制限技術は、この知見を利用したものであり、当該技術により体動等によるノイズの影響を低減することができる(心拍数検出値がノイズに基づく異常値になることが抑制される)。但し、帯域制限の条件が不適切であると正確な心拍数検出が難しくなるため、どのような条件で帯域制限をかけるかが重要となる。心拍数検出技術において、正確な心拍数検出が有益であることは言うまでもない。
正確な心拍数検出の妨げとなるノイズの要因の一つは、生体の動き(すなわち体動)である。体動等によるノイズを低減することができれば、正確な心拍数検出が可能となる。
そこで、本発明は、正確な心拍数検出を可能とする心拍数検出装置を提供することを目的とする。
本明細書中に開示されている心拍数検出装置は、生体の脈波に応じた脈波信号を取得する脈波信号取得部と、前記生体の動きに応じた体動信号を取得する体動信号取得部と、順次取得される前記脈波信号及び前記体動信号に基づき前記生体の心拍数を順次導出する演算部と、を備え、前記演算部は、前回導出した心拍数を内包し且つ所定の大きさを持つ数値範囲内で今回の心拍数を導出する際、前記体動信号に応じて前記数値範囲を可変設定する構成とされている。
また、本明細書中に開示されている心拍数検出装置は、生体の脈波に応じた脈波信号を取得する脈波信号取得部と、前記脈波信号に基づき前記生体の心拍数を導出する演算部とを備え、前記演算部は、前記脈波信号の内、体動ノイズが重畳する周波数帯域の信号成分を減衰させることで補正脈波信号を生成し、前記補正脈波信号に基づいて前記心拍数を導出する構成とされている。
また、本明細書中に開示されている心拍数検出装置は、生体の脈波に応じた脈波信号を取得する脈波信号取得部と、前記脈波信号に基づき前記生体の心拍数を導出する演算部とを備え、前記演算部は、前記脈波信号の周波数解析により得られる脈波パワースペクトルについて、各周波数に対するパワースペクトル密度で重み付けされた周波数平均値を算出することにより、前記心拍数を導出する構成とされている。
また、本明細書中に開示されている心拍数検出方法は、生体の脈波に応じた脈波信号を取得する脈波信号取得ステップと、前記生体の動きに応じた体動信号を取得する体動信号取得ステップと、順次取得される前記脈波信号及び前記体動信号に基づき前記生体の心拍数を順次導出する演算ステップと、を備え、前記演算ステップでは、前回導出した心拍数を内包し且つ所定の大きさを持つ数値範囲内で今回の心拍数を導出する際、前記体動信号に応じて前記数値範囲を可変設定する構成とされている。
また、本明細書中に開示されている心拍数検出方法は、生体の脈波に応じた脈波信号を取得する脈波信号取得ステップと、前記脈波信号に基づき前記生体の心拍数を導出する演算ステップと、を備え、前記演算ステップでは、前記脈波信号の内、体動ノイズが重畳する周波数帯域の信号成分を減衰させることで補正脈波信号を生成し、前記補正脈波信号に基づいて前記心拍数を導出する構成とされている。
また、本明細書中に開示されている心拍数検出方法は、生体の脈波に応じた脈波信号を取得する脈波信号取得ステップと、前記脈波信号に基づき前記生体の心拍数を導出する演算ステップと、を備え、前記演算ステップでは、前記脈波信号の周波数解析により得られる脈波パワースペクトルについて、各周波数に対するパワースペクトル密度で重み付けされた周波数平均値を算出することにより、前記心拍数を導出する構成とされている。
なお、本発明に関連する上記以外の特徴、要素、ステップ、利点、及び、特性については、以下に続く詳細な説明やこれに関する添付の図面によって、さらに明らかとなる。
本発明によれば、正確な心拍数検出を可能とする心拍数検出装置及び心拍数検出方法を提供することが可能である。
手首での脈波測定の原理を説明するための模式図である。 生体内における光の減衰量が時間的に変化する様子を示す波形図である。 本発明の第1実施形態に係る脈波センサのブロック図である。 本発明の第1実施形態に係る光センサ部の回路例と、光センサ部、フィルタ部及び制御部の関係とを示す図である。 本発明の第1実施形態に係る脈波FFT解析の解析条件を示す図である。 本発明の第1実施形態に係る心拍数の導出フローチャートである。 脈波データが補完される様子を示した図である。 図6における脈波FFT解析(A1)の詳細フローチャートである。 図6における脈波FFT解析(A2)の詳細フローチャートである。 本発明の第1実施形態に係る検索対象帯域(帯域制限技術)を示す図である。 図6における脈波FFT解析(A3)の詳細フローチャートである。 本発明の第1実施形態に係り、減衰補正前後の脈波信号のパワースペクトルを示す図である。 本発明の第1実施形態の実験による心拍数測定結果を示す図である。 本発明の第1実施形態の実験による心拍数測定結果を示す図である。 本発明の第2実施形態に係り、生体と、本体ユニット及びベルトと、X、Y及びZ軸との関係を示す図である。 本発明の第2実施形態に係る制御部の内部ブロック図である。 本発明の第2実施形態に係る心拍数の導出フローチャートである。 本発明の第2実施形態に係り、加速度信号に基づく解析動作のフローチャートである。 図17における脈波FFT解析(B3)の詳細フローチャートである。 本発明の第2実施形態に係るパワースペクトルの補正例を示す図である。 本発明の第2実施形態に係る検索対象帯域の設定内容を示す図である。 本発明の第2実施形態の変形技術に係り、帯域制限の一時停止方法を説明するための図である。 本発明の第2実施形態の実験による心拍数測定結果を示す図である。 本発明の第2実施形態の実験による心拍数測定結果を示す図である。 本発明の第3実施形態に係る光センサ部の構成を示す図である。 本発明の第4実施形態に係る解析動作のフローチャートである。 ピーク位置検出に基づく体動ノイズキャンセル動作の一例を示す図である。 ベクトル値Vと振幅変化総和Dの定義式を示す図である。 体動モードの一例を示すテーブルである。 PSD最大周波数に基づくHR導出時の問題点を説明するための図である。 周波数平均値Aaveの算出式を示す図である。 本発明の第4実施形態の実験による心拍数測定結果を示す図である。
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、状態量又は部材等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、状態量又は部材等の名称を省略又は略記することがある。また、後述の任意のフローチャートにおいて、任意の複数のステップにおける複数の処理は、処理内容に矛盾が生じない範囲で、任意に実行順序を変更できる又は並列に実行できる。
<<脈波測定の原理>>
図1は、手首での脈波測定の原理を説明するための模式図であり、図2は、生体内における光の減衰量(吸光度)が時間的に変化する様子を示す波形図である。後述の各実施形態では、以下の原理に基づく脈波測定が行われる。
容積脈波法による脈波測定では、例えば、図1に示すように、測定窓に押し当てられた生体の一部(図1では手首)に向けて発光部(LED(Light Emitting Diode)など)から光が照射され、体内を透過して体外に出てくる光の強度が受光部(フォトダイオードやフォトトランジスタなど)で検出される。ここで、図2に示したように、生体組織や静脈血(脱酸素化ヘモグロビンHb)による光の減衰量(吸光度)は一定であるが、動脈血(酸素化ヘモグロビンHbO2)による光の減衰量(吸光度)は拍動によって時間的に変動する。従って、可視領域から近赤外領域にある「生体の窓」(光が生体を透過しやすい波長領域)を利用し、受光部の受光結果に基づき末梢動脈の吸光度変化を測定することで、非侵襲で容積脈波を測定することができる。
尚、図1では、図示の便宜上、発光部及び受光部を有する脈波センサを手首の背側(外側)に装着した様子が描写されているが、脈波センサの装着位置についてはこれに限定されるものではなく、手首の腹側(内側)であってもよいし、他の部位(指先、指の第3関節、額、眉間、鼻先、頬、眼下、こめかみ、耳たぶ、耳穴など)であってもよい。
また、心臓及び自立神経の支配を受けている脈波は、常に一定の挙動を示すものではなく、被験者の状態によって様々な変化(揺らぎ)を生じるものである。従って、脈波の変化(揺らぎ)を解析することにより、被験者の様々な身体情報を得ることができる。例えば、心拍数からは、被験者の運動能力や緊張度などを知ることができ、心拍変動からは、被験者の疲労度、快眠度、及び、ストレスの大きさなどを知ることができる。また、脈波を時間軸で2回微分することにより得られる加速度脈波からは、被験者の血管年齢や動脈硬化度などを知ることができる。
<<第1実施形態>>
本発明の第1実施形態を説明する。図3には、第1実施形態に係る脈波センサ1のブロック図が、生体2及び外部機器EEと共に示されている。脈波センサ1は、本体ユニット10と、本体ユニット10の両端部に取り付けられて生体2(具体的には手首)に巻き回されるベルト20と、を備えた腕輪構造(腕時計型構造)を有する。ベルト20の素材として、皮革、金属、樹脂などを用いることができる。本明細書において、被験者とは生体2を有する人間を指す。
本体ユニット10には、光センサ部11、フィルタ部12、制御部13、表示部14、通信部15、電源部16及び体動センサ部17が設けられる。
光センサ部11は、本体ユニット10の裏面(即ち、生体2と対向する側の面)に設けられており、発光部11A及び受光部11Bを有する。光センサ部11では、LED等の発光部11Aから生体2に光を照射し、照射した光の内、生体2内を透過した光の強度を受光部11Bで検出することにより、脈波信号を取得する。尚、ここでは、発光部11Aと受光部11Bが生体2に対していずれも同じ側に設けられた反射型構成(図1の実線矢印を参照)が採用されているが、発光部11Aと受光部11Bが生体2を挟んで互いに反対側に設けられる透過型構成(図1の破線矢印を参照)が採用されても良い。反射型構成では、厳密に表現すると、発光部11Aから生体2に光を照射され、照射された光の内、生体2の一部を透過してから生体2内部で反射した光が受光部11Bにて受光される。一方、透過型構成では、発光部11Aから生体2の一面に対して光を照射され、照射された光の内、生体2を貫通するように透過して生体2の反対面(上記一面に対する反対面)から出た光が受光部11Bにて受光される。まとめると、受光部11Bは、発光部11Aからの光に基づき生体2を透過又は反射した光を受光するものであって良い。
フィルタ部12は、光センサ部11の出力信号にフィルタ処理及び増幅処理を施して制御部13に伝達する。制御部13は、脈波センサ1全体の動作を統括的に制御するほか、フィルタ部12の出力信号に各種の信号処理を施すことにより、脈波に関する種々な情報(以下、脈波情報と呼ぶ)を取得する。脈波情報は、例えば、心拍数、脈波の揺らぎ、心拍変動及び加速度脈波を含む。MPU(micro processing unit)等を用いて、制御部13を形成すると良い。表示部14は、本体ユニット10の表面(生体2と対向しない側の面)に設けられた液晶表示パネル等から成り、脈波情報や日付や時間に関する情報等を含む表示情報を表示する。表示部14は、腕時計の文字盤面に相当すると言える。通信部15は、脈波センサ1と異なる外部機器EEとの間で任意の通信を行う。通信部15は、脈波情報を含む脈波センサ1の測定データを、外部機器EEに無線又は有線で送信できる。外部機器EEは、パーソナルコンピュータや携帯電話機などの任意の電子機器であり、ネットワーク網を介して通信部15と接続されていても良い。電源部16は、バッテリとDC/DCコンバータを含み、バッテリからの入力電圧を所望の出力電圧に変換して脈波センサ1の各部に供給する。体動センサ部17は、第1実施形態では利用されないので、後述の他の実施形態で説明する。
図4に、光センサ部11の回路例と共に、光センサ部11、フィルタ部12及び制御部13の関係を示す。制御部13は、A/D変換部31、演算部32及びメモリ33を有する。受光部11Bとしてのフォトトランジスタには、上記透過した光の強度に応じた電流が流れ、当該電流の大きさに応じた電圧信号Paoがフィルタ部12に入力される。フィルタ部12は、電圧信号Paoにフィルタ処理及び増幅処理を施して得られるアナログ電圧信号PaをA/D変換部31に入力する。A/D変換部31(例えば、10ビット、サンプリングレート:8Hz)は、アナログ電圧信号Paをデジタル電圧信号Pdに変換して出力する。信号Pao、Pa及びPdの夫々は、生体2の脈波を示す脈波信号の一種である。演算部32は、脈波信号Pdに対して様々な演算処理を施す(詳細は後述)。メモリ33は、演算部32にて実行される処理を規定するプログラムの保存用のプログラムメモリ、及び、演算部32にて利用又は算出される各種データを一時記憶するデータメモリを有する。
[脈波FFT解析の解析条件]
制御部13は、心拍数の導出に当たり、脈波信号に対して、FFT(高速フーリエ変換)を用いた解析である脈波FFT解析を実行する。図5の(a)欄〜(d)欄を参照して脈波FFT解析の解析条件を示す。脈波FFT解析の解析条件には、サンプリング周波数、解析データ数、実行間隔及び周波数分解能が含まれ、更に、解析帯域を定める解析下限周波数fLL及び解析上限周波数fHHが含まれる(図5の(a)欄〜(d)欄参照)。
説明の明確化のため、時刻を表す記号として整数tを導入する。任意の整数iに関し、“t=i+1”である時刻は“t=i”である時刻よりも単位時間Δtだけ遅い。A/D変換部によるアナログ信号のデジタル信号への変換をサンプリングと呼ぶ。A/D変換部31のサンプリング周波数は“1/Δt”である(図5の(a)欄参照)。時刻t=iのサンプリングにて取得される脈波信号Pdのデジタル値を“Pd[i]”にて表す。即ち、時刻t=iにて、第i番目の脈波信号値である値Pd[i]が得られるものとする。以下では、Pd[i]にて値が表される脈波信号を、脈波データと呼ぶことがある。
図5の(b)欄に示す如く、パラメータPRAは、1回の脈波FFT解析に用いるデータ数(即ち、脈波データの個数)である解析データ数を示す。脈波FFT解析では、その時点で得られている最新のPRA個の脈波データを解析対象データ列として用いてFFTを行う。従って例えば、時刻t=iでは、Pd[i−PRA+1]〜Pd[i]が解析対象データ列を形成する。
図5の(c)欄に示す如く、脈波FFT解析は、PRB個分の脈波データが得られるごとに実行される。従って例えば、Pd[i−PRA+1]〜Pd[i]を解析対象データ列として用いた第j回目の脈波FFT解析が実行された後、Pd[i+1]〜Pd[i+PRB]が取得されると、Pd[i−PRA+1+PRB]〜Pd[i+PRB]を解析対象データ列として用いた第(j+1)回目の脈波FFT解析が実行される。PRBは、脈波FFT解析の実行間隔を表している。例えば、実行間隔を1秒相当に設定する場合、PRBはサンプリング周波数1/Δtと一致する。
脈波FFT解析により、図5の(d)欄に示すような脈波信号のパワースペクトルが得られる。パワースペクトルは、第1〜第m要素帯域の夫々におけるパワースペクトル密度(以下PSD値という)を、情報として含んでいる。mは2以上の所定の整数である。任意の整数iに関し、第i要素帯域の上限周波数は、第(i+1)要素帯域の下限周波数と一致している。第1要素帯域の中心周波数及び第m要素帯域の中心周波数は、脈波FFT解析における解析下限周波数fLL及び解析上限周波数fHHである。第1〜第m要素帯域において要素帯域の帯域幅は共通であり、1つの要素帯域の帯域幅が周波数分解能Rに相当する。
周波数fLL及びfHHは、心拍数がとりうる値を考慮して設定され、それぞれ、例えば、0.6Hz(ヘルツ)、4.0Hzである。周波数fLLを0.6Hz以外にすることもできるし、周波数fHHを4.0Hz以外にすることもできる(但し、勿論、fLL<fHH)。サンプリング周波数は、解析上限周波数fHHの2倍以上の任意の周波数に設定され、例えば、8、16、32、64又は128Hzであって良い。解析データ数PRAは、任意の所定値とされ、例えば、128、256、512、1028又は2048であって良い。実行間隔PRBも任意の所定値とされ、例えば、0.5秒相当、1秒相当、2秒相当とされる。周波数分解能Rも任意の所定値とされる。ここでは、周波数分解能Rは、0.03125Hzであるとする。0.03125Hzは、心拍数の単位で表すと、1.875bpm(beat per minute)に相当する。
サンプリング周波数、解析データ数PRA及び周波数分解能の増大によって、心拍数の検出精度(検出分解能を含む)の向上が期待されるが、一方で演算負荷が重くなる。必要な精度と演算負荷のバランスを考慮して解析条件を決定すると良い。実行間隔PRBも同様である。
[心拍数の導出方法]
図6は、制御部13による、心拍数を導出するためのフローチャートである。まず、ステップS11において、A/D変換部31は、所定のサンプリング周波数にて脈波データの取り込み(即ちサンプリング)を開始する。順次得られる脈波データはメモリ33に保存される。ステップS11に続くステップS12において、制御部13は、これまでに取り込まれた脈波データの個数nを、所定の第1閾値(PRA−Q)、及び、解析データ数と一致する第2閾値PRAと比較する。Qは所定の正の整数(例えば40)である。第1不等式“PRA−Q≦n<PRA”の成立時にはステップS12からステップS13に進み、第2不等式“PRA≦n”の成立時にはステップS12からステップS19に進む。不等式“n<PRA−Q”の成立時には、データ数が少なすぎるため、第1不等式が成立するまで脈波データの取り込みを継続しつつステップS12で待機する。
ステップS13の段階で取得されている脈波データは、Pd[1]〜Pd[n]であり、それらの総個数は解析データ数PRAより少ない。故に、時刻tにて実行されるステップS13において、演算部32は、時刻t=n+1〜時刻t=PRAにおける脈波データPd[n+1]〜Pd[PRA]として、所定の補完用データを補完する。図7に、この補完の様子を示す。補完用データは、脈波信号の中心電位を持つ。例えば、脈波信号が、0V〜3Vの範囲内で1.5Vを中心に変動する脈動信号(想定脈波強度:50mV〜500mV(typ.200mV))である場合、補完用データは1.5Vに相当する固定値を持つ。尚、Pd[1]〜Pd[n]の平均値を補完用データとして用いても良いし、上記中心電位と異なる電位に相当する固定値を補完用データとして用いても構わない。ステップS13により、実測によって得られた脈波データPd[1]〜Pd[n]と、補完された脈波データPd[n+1]〜Pd[PRA]とから成る解析対象データ列が形成される。
ステップS13に続くステップS14において、演算部32は、解析対象データ列が存在する区間だけ0以外の値を持つ窓関数(例えばハニング関数)を脈波データに対して掛け合わせる窓関数処理を実行する。その後、ステップS15において、演算部32は、これから行うべき脈波FFT解析が、何回目の脈波FFT解析であるのかを確認する。そして、これから行うべき脈波FFT解析が、1回目の脈波FFT解析である場合には、ステップS16に進んで脈波FFT解析A1を実行し、2回目以降の脈波FFT解析である場合には、ステップS17に進んで脈波FFT解析A2を実行する。脈波FFT解析A1及びA2は、ステップS14の窓関数処理を経た脈波データ(即ち、脈波データ中の解析対象データ列)に対して実行される。
ステップS16の脈波FFT解析A1又はステップS17の脈波FFT解析A2を終えると、ステップS18へ進む。ステップS18において、A/D変換部31により、新たにPRB個分の脈波データが取り込まれ、ステップS12に戻る。新たに取り込まれた脈波データはメモリ33に保存される。
一方、“PRA≦n”の場合、既に取得されている脈波データの総個数は解析データ数PRA以上であるので、上述のような補完は不要である。ステップS19において、演算部32は、上述の窓関数処理と同様の窓関数処理を実行する。ステップS19における解析対象データ列は、実測によって得られた脈波データPd[n−PRA+1]〜Pd[n]から成る(図5の(b)欄参照)。その後、ステップS20において、ステップS19の窓関数処理を経た脈波データ(即ち、脈波データ中の解析対象データ列)に対し脈波FFT解析A3を実行する。
ステップS20の脈波FFT解析A3を終えると、ステップS21へ進む。ステップS21において、A/D変換部31により、新たにPRB個分の脈波データが取り込まれた後、ステップS19に戻る。新たに取り込まれた脈波データはメモリ33に保存される。この際、メモリ33に保存されている脈波データの内、より古くから保存されているPRB個分の脈波データをメモリ33から削除しても良い。
脈波FFT解析の解析条件は、脈波FFT解析A1、A2及びA3間で共通である。脈波FFT解析A1、A2及びA3において、周波数fLL及びfHHは、夫々、例えば、0.635Hz及び4.0Hzである。
――脈波FFT解析A1(図8)――
図8を参照し、脈波FFT解析A1について説明する。脈波FFT解析A1は、ステップS31〜S33の処理から成る。ステップS31において、演算部32は、窓関数処理を経た脈波データ(即ち、脈波データ中の解析対象データ列)に対してFFTを適用することで、脈波信号のパワースペクトルを算出する。脈波信号のパワースペクトルは、上述したように、脈波信号の第1〜第m要素帯域の夫々におけるPSD値を情報として含んでいる。続くステップS32において、演算部32は、ステップS31で得られた第1〜第m要素帯域におけるm個のPSD値の内、最大のPSD値に対応する要素帯域の周波数を、PSD最大周波数F[cy]として検索及び特定する。要素帯域の周波数は、要素帯域に属する周波数(例えば、中心周波数)を指す。
記号cyは、今回実行する脈波FFT解析の回数、即ち、今回実行する脈波FFT解析が第何回目の脈波FFT解析であるのかを示す。回数cyは、脈波FFT解析A1、A2及びA3の全実行回数である。従って例えば、脈波FFT解析A2及びA3を未だ1回も行っておらず、1回目の脈波FFT解析として脈波FFT解析A1を行う時には、cy=1である。また例えば、脈波FFT解析A1を1回目の脈波FFT解析として行った後、初めて脈波FFT解析A2を行う時には、cy=2である。また例えば、脈波FFT解析A1を1回目の脈波FFT解析として行った後に脈波FFT解析A2を30回繰り返し実行し、その後、初めて脈波FFT解析A3を行う時には、cy=32である。
ステップS32に続くステップS33において、演算部32は、周波数F[cy]を、“HR[y]=F[cy]×60”に従ってハートレート値HR[cy]に変換し、F[cy]及びHR[cy]をメモリ33に保存する。ハートレート値は心拍数の検出値を指し、ハートレート値の単位は、心拍数と同様、“bpm(beat per minute)”である。
――脈波FFT解析A2(図9)――
図9を参照し、脈波FFT解析A2について説明する。脈波FFT解析A2は、ステップS41〜S44の処理から成る。ステップS41において、演算部32は、窓関数処理を経た最新の脈波データ(即ち、脈波データ中の解析対象データ列)に対してFFTを適用することで、脈波信号のパワースペクトルを算出する。
続くステップS42において、演算部32は、前回の脈波FFT解析にて特定された周波数F[cy−1]を元に検索対象帯域を設定する。周波数F[cy]の導出に用いる検索対象帯域は、周波数F[cy−1]を内包し且つ所定の帯域幅を有する。ここでは、図10に示す如く、周波数“F[cy−1]−7R”及び“F[cy−1]+7R”を、夫々、検索対象帯域の下限及び上限に設定するものとする(Rは周波数分解能を表す;図5の(d)欄参照)。そして、演算部32は、最新の脈波データによるパワースペクトルを参照し、周波数F[cy−1]を基準に設定した検索対象帯域内で、PSD値が最大となる要素帯域の周波数をPSD最大周波数F[cy]として検索及び特定する。つまり、周波数F[cy−1]を基準に帯域制限をかけた状態でPSD最大周波数F[cy]を検索する。
ステップS42に続くステップS43において、演算部32は、周波数F[cy]を、“HR[y]=F[cy]×60”に従ってハートレート値HR[cy]に変換し、F[cy]及びHR[cy]をメモリ33に保存する。更にその後、ステップS44において、演算部32は、ハートレート値の移動平均値HRAVE[cy]を求めてメモリ33に保存する。移動平均値HRAVE[cy]は、直近の計AVENUMMAX個のハートレート値HR[cy−AVENUMMAX+1]〜HR[cy]を移動平均することで得られる。移動平均は、単純移動平均でも良いし、加重移動平均でも良い。AVENUMMAXは2以上の任意の整数である。移動平均の対象の個数がAVENUMMAX未満である場合には、ハートレート値HR[1]〜HR[cy]を移動平均することで移動平均値HRAVE[cy]を得ればよい。
――脈波FFT解析A3(図11)――
図11を参照し、脈波FFT解析A3について説明する。脈波FFT解析A3は、ステップS51〜S55の処理から成る。ステップS51において、演算部32は、窓関数処理を経た最新の脈波データ(即ち、脈波データ中の解析対象データ列)に対してFFTを適用することで、脈波信号のパワースペクトルを算出する。
ステップS52において、演算部32は、ステップS51で算出された脈波信号のパワースペクトルに対し減衰補正を施すことで補正パワースペクトル(換言すれば、補正脈波信号のパワースペクトル)を導出する。説明の明確化のため、減衰補正前のパワースペクトルを原パワースペクトルと呼ぶ。この減衰補正では、原パワースペクトルにおいて、所定の周波数FTH未満の各要素帯域のPSD値を所定の減衰率(例えば1/100)にて減衰させる。この減衰補正の様子を図12の(a)欄に示す。パワースペクトル310及び310cは、夫々、原パワースペクトル及び補正パワースペクトルの例である(図12の(a)欄の説明は後にも設けられる)。
続くステップS53において、演算部32は、前回の脈波FFT解析にて特定された周波数F[cy−1]を元に検索対象帯域を設定する。検索対象帯域の設定方法は、上述したものと同様である。そして、演算部32は、最新の脈波データに基づく補正パワースペクトルにおいて、周波数F[cy−1]を基準に設定した検索対象帯域内で、PSD値が最大となる要素帯域の周波数をPSD最大周波数F[cy]として検索及び特定する。
その後、ステップS54において、演算部32は、周波数F[cy]を、“HR[y]=F[cy]×60”に従ってハートレート値HR[cy]に変換し、F[cy]及びHR[cy]をメモリ33に保存する。更にその後、ステップS55において、演算部32は、ハートレート値の移動平均値HRAVE[cy]を求めてメモリ33に保存する。移動平均値HRAVE[cy]の導出方法は上述した通りである。
制御部13は、通信部15を用いて、表示部14及び外部機器EEに脈波情報を出力することができ、順次導出されるハートレート値の移動平均値HRAVE[cy]を出力脈波情報に含めることができる。通常は、最新の移動平均値HRAVE[cy]を、生体2の心拍数の検出値として表示部14及び外部機器EEに出力すれば良い。但し、移動平均前のハートレート値HR[cy]や周波数F[cy]を出力脈波情報に含めることも可能である。HR[cy]もHRAVE[cy]も、脈波センサ1にて導出される心拍数の検出値である。尚、HRAVE[cy]が導出されたとき、過去に算出された一部又は全部の移動平均値をメモリ33から削除するようにしても良い。例えば、HRAVE[cy]が導出されたとき、HRAVE[cy]を含む、直近1分間分のハートレート値の移動平均値をメモリ33に残存させておく一方で、それより過去に導出されたハートレート値の移動平均値をメモリ33から削除しても良い。
[減衰補正の意義]
このように、演算部32は、光センサ部11の測定により取得された原脈波信号(Pao、Pa又はPd)の内、所定周波数FTH未満の信号成分を減衰補正によって減衰させることで補正脈波信号を生成し、補正脈波信号に基づいて心拍数(HR[cy]又はHRAVE[cy])を導出する。原脈波信号は、減衰補正前の脈波信号を指す。当該減衰補正を、時間領域上の原脈波信号に対して実行することも可能ではあるが、上述の動作例では、当該減衰補正を周波数領域上で実行している。即ち、原パワースペクトルに対して当該減衰補正を行うことで、補正脈波信号のパワースペクトルである補正パワースペクトルを導出している(図11のステップS52参照)。
周波数FTHは、生体2の体動の周期の期待値に基づき設定される。ステップS52の減衰補正は、脈波信号に混入している体動の信号成分の低減を目指すものである。一方、生体2の体動(体の動き)の周期は、一般に、短くても60/80秒〜60/100秒程度である。故に、周波数FTHを、例えば80/60Hz〜100/60Hzの間の周波数から選ぶと良く、典型的には1.5Hzとしても良い。1.5Hzの周波数FTHをbpmの単位で表すと90bpmである。減衰補正における減衰率として、例えば、1/10〜1/100の範囲内の数値を選ぶと良い。
既に参照した図12の(a)欄のパワースペクトル310は、被験者が、ジョギング等の活動を行っている状態で観測される原パワースペクトルの例である。原パワースペクトル310及び補正パワースペクトル310cの夫々において、PSD値のピーク(極大値)PKN及びPKBは、夫々、体動による信号成分及び真の脈波の信号成分によるものである。活動中における真の心拍数は値(FTH×60)を超えることが高確度で期待されるため、減衰補正によって、真の心拍数検出にとってノイズとなるピークPKNの値だけが効果的に減衰されることになる。つまり、上述の減衰補正により、生体2が活動していても精度良く心拍数を導出することが可能になる。
一方、図12の(b)欄のパワースペクトル320及び320cは、夫々、被験者が静止している状態における原パワースペクトル及び補正パワースペクトルの例である。被験者が静止しているときも、真の心拍数によるPSD値が原パワースペクトル320においてピークPKBとして現れる。また、被験者が静止しておれば、ピークPKBの周波数が周波数FTH未満となって上記減衰補正によりピークPKBの値が減衰されることもある。しかしながら、被験者静止時には、体動によるピークPKNが存在しないため(つまりノイズが十分に小さいため)、ピークPKBの値が減衰されたとしても、正しく心拍数を検出することができる。
尚、上述の動作例では、減衰補正を脈波FFT解析A3においてのみ実行しているが、当該減衰補正を脈波FFT解析A2においても実行可能である(この場合、図6のステップS17にて脈波FFT解析A3が実行されることになる)。
[検索対象帯域の設定(帯域制限)の意義]
また、演算部32は、光センサ部11の測定で順次取得される原脈波信号の信号値を用いて心拍数の順次導出を行うが、各回の心拍数を、帯域制限を適用した状態で導出する。帯域制限では、今回の心拍数(HR[cy])を、前回導出した心拍数(HR[cy−1])を内包し且つ所定の大きさを持った数値範囲内で検索し導出する。上述の動作例では、当該探索を“Hz”を単位とした周波数領域上で実行しており、図10の検索対象帯域の単位を“bpm”に変換したものが当該数値範囲に相当する(図9のステップS42、図11のステップS53も参照)。
より具体的には、今回の心拍数(HR[cy])を導出するための原脈波信号のパワースペクトル(即ち、HR[cy]の導出に用いる解析対象データ列のパワースペクトル)から補正パワースペクトルを生成した後、当該補正パワースペクトルにおいて上記数値範囲内に対応する検索対象帯域を設定し、検索対象帯域内でPSD値が最大となる周波数をF[cy]として同定することにより今回の心拍数(HR[cy])を導出する。生体2の心拍数の短時間における変化量は限られており、今回の検出心拍数が前回の検出心拍数と大きくかけ離れているとは考えにくい。そこで、上記の如く検索対象帯域内で最大PSD値を探索するようにする。これにより、心拍数検出値(即ちハートレート値)がノイズに基づく異常値になることが抑制される。換言すれば、心拍数検出に対するノイズの影響を低減することができる。
検索対象帯域の大きさは任意である。1秒間における人間の心拍数の変化量の最大値は15bpm程度と考えられるため、脈波FFT解析の実行間隔が1秒相当である場合には、今回の心拍数(HR[cy])を算出する際の検索対象帯域を、例えば、bpmを単位として、“HR[cy−1]−15”以上且つ“HR[cy−1]+15”以下の帯域に設定すると良い。
[実験結果など]
図13及び図14に、被験者を用いた実験結果の例を示す。波形341〜343を含むグラフ340(図13の(a)欄)、波形351〜353を含むグラフ350(図13の(b)欄)、波形361〜363を含むグラフ360(図14の(a)欄)、波形371〜373を含むグラフ370(図14の(b)欄)は、夫々、実験E1A、E1B、E1C、E1Dの結果を表している。各実験では、被験者が静止している2つの区間中に一定区間だけ被験者を歩行又は走行させた。被験者の歩行又は走行速度は、実験E1A、E1B、E1C、E1Dにおいて、夫々、時速6、8、10、12kmである。破線波形341、351、361、371は、市販の胸ベルト装着型心拍計を用いた、真値とみなせる心拍数の測定結果を表す。実線波形342、352、362、372は、脈波センサ1による心拍数の測定結果(HRAVE[cy]の時系列データ)を表す。一点鎖線波形343、353、363、373は、従来のピーク解析方法を用いたときの測定結果である。尚、グラフ340において、破線波形341及び実線波形342を区別して示すべく、それらを実際の波形位置から若干ずらして示している。グラフ350〜370においても同様であり、後述のグラフ440〜470(図23及び図24)においても同様である。
時速6kmの歩行時には、従来のピーク解析方法でも胸ベルト装着型心拍計と相関のある測定結果が得られた。しかし、時速8km以上の走行時において、従来のピーク解析方法による測定結果は、体動ノイズの影響を受けて真値(胸ベルト装着型心拍計の測定結果)から大きくかけ離れている。被験者が安静にしている状態又はそれに近い状態では、体動等によるノイズが十分に小さい脈波信号波形が得られるため、ピーク解析方法でも、正確な心拍数検出が可能である。但し、被験者の活動時など、体動等によるノイズが脈波信号波形に多く含まれるようになると、取得波形が乱れて、図13及び図14に示す如く正確な心拍数検出が難しくなる。これに対し、第1実施形態の脈波センサ1を用いると、様々な活動環境下で、胸ベルト装着型心拍計と相関のある測定結果が得られていることが分かる。
尚、上述の動作例では、脈波FFT解析の実行回数cyが1回目のときにだけ脈波FFT解析A1を実行しているが、脈波FFT解析A1を複数回実行するようにしても良い。例えば、図6において、回数cyが1、2及び3回目である時の夫々においてステップS15からステップS16に進み、回数cyが4回目以降である状態でステップS15に至ったときにステップS17へ進むようにしても良い。
この場合、1〜3回目のPSD最大周波数F[1]〜F[3]は脈波FFT解析A1で求められ、4回目のPSD最大周波数F[4]は脈波FFT解析A2で求められる。この際、周波数F[4]を求めるときの検索対象帯域の中心を、周波数F[1]〜F[3]に基づき定めればよい。例えば、F[1]〜F[3]の平均又は加重平均を、周波数F[4]の導出用の検索対象帯域の中心に設定しても良い。或いは例えば、F[2]とF[3]が互いに一致又は近似している一方で、F[1]とF[2]又はF[3]とが大きく相違している場合には、F[1]の誤差が大きいと判断して、F[2]及びF[3]の平均を、周波数F[4]の導出用の検索対象帯域の中心に設定しても良い。本実施形態では、検索対象帯域の設定による帯域制限を介して各回の心拍数を検出するため、一度、不適切な検索対象帯域を設定してしまうと、心拍数の真値検出が困難な状況が長時間継続する。故に、帯域制限をかけない脈波FFT解析A1を複数回実施し、複数回の脈波FFT解析A1の結果を統計的に処理して検索対象帯域を設定することにより、検索対象帯域の信頼性が高まる。
<<第2実施形態>>
本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態及び後述の第3実施形態は第1実施形態を基礎とする実施形態であり、第2及び第3実施形態において特に述べない事項に関しては、矛盾の無い限り、第1実施形態の記載が第2及び第3実施形態にも適用される。矛盾の無い限り、第1〜第3実施形態の内、任意の複数の実施形態を組み合わせても良い。第2実施形態では、上述の脈波センサ1による他の心拍数導出方法を説明する。第1及び第2実施形態間で脈波センサ1の構成は同じである。
第2実施形態では、体動センサ部17が有益に機能する(図3参照)。体動センサ部17は、生体2の動き(即ち体動)を検出することで、生体2の動きに応じた体動信号を生成及び出力する。ここでは、体動センサ部17が、生体2の加速度を検出する加速度センサ(例えばサンプリングレート:8Hz)から成るものとする。故に、以下では、体動信号を加速度信号と呼ぶ。加速度信号は生体2の加速度を示す。体動センサ部17内の加速度センサは、互いに直交するX、Y及びZ軸方向の生体2の加速度を個別に検出できても良い。この場合、体動センサ部17は、X軸、Y軸、Z軸方向における生体2の加速度の検出結果を示すX軸、Y軸、Z軸方向の加速度信号を生成及び出力する。但し、体動センサ部17によって検出及び出力される、生体2の動きを示す物理量は、加速度以外の物理量(速度、角速度、角加速度など)でもよい。
図15の(a)欄及び(b)欄には、生体2と、本体ユニット10及びベルト20と、X、Y及びZ軸との関係を表している。上述したように、脈波センサ1は、腕輪構造を有し、生体2の手首にベルト20を巻回して固定され、これに伴って、手首における手の甲側の面又は手の平側の面に、本体ユニット10の裏面である装着面が接触固定される。X軸は、生体2の前腕の長手方向(即ち、生体2の前腕が伸びる方向)に平行である。生体2の手首にベルト20が巻回固定されるのであるから、ベルト20と加速度センサとの位置関係から脈波センサ1においてX軸方向を特定できる。上記装着面はX軸及びY軸に平行であって且つZ軸に直交する。
体動センサ部17からは、アナログの加速度信号Maが出力され、図16に示す如く、制御部13内のA/D変換部36にてアナログの加速度信号Maがデジタルの加速度信号Mdに変換される。A/D変換部36は、体動センサ部17内に備えられていても良い。体動センサ部17が、複数の軸方向における複数の加速度信号Maを出力する際、A/D変換部36は、複数の加速度信号Maの夫々を加速度信号Mdに変換する。体動センサ部17の出力信号にフィルタ処理及び増幅処理を施した信号が加速度信号Maであっても良い。
第2実施形態では、後述されるように加速度信号から生体2の動き状態を検出して心拍数の検出精度向上を図る。一方、生体2がジョギング等をするとき、脈波センサ1を装着した前腕の振動の主成分はX軸に平行であるため、X軸方向の加速度信号に体動の主成分が含まれる。このため、体動センサ部17は、少なくともX軸方向の加速度信号を取得することが好ましい。生体2がジョギング等の活動をする際、前腕振動に対応するX軸方向の加速度を検出することで生体2の動き状態を良好に把握できるからである。勿論、体動センサ部17は、X軸、Y軸、Z軸方向の加速度信号の内、2つ以上の加速度信号を取得しても良いし、それら全ての加速度信号を取得しても良い。以下の説明において、加速度信号とは、体動センサ部17がX軸方向の加速度信号のみを取得する場合にあってはX軸方向の加速度信号を指し、体動センサ部17がX、Y軸、Z軸方向の加速度信号の内の2つ以上の加速度信号を取得する場合にあっては当該2つ以上の加速度信号の合成ベクトル信号を指す。
制御部13は、脈波信号だけでなく、加速度信号に対してもFFT解析を行う。加速度信号に対するFFT解析を加速度FFT解析と呼ぶ。加速度FFT解析の解析条件にも、脈波FFT解析と同様に、サンプリング周波数、解析データ数、実行間隔、周波数分解能、解析下限周波数fLL及び解析上限周波数fLLが含まれるが(図5の(a)欄〜(d)欄を参照)、加速度FFT解析の解析条件は脈波FFT解析の解析条件と同じとされる。第1実施形態で述べた脈波FFT解析の解析条件の説明文が加速度FFT解析の解析条件にも適用され、当該適用の際、第1実施形態に記載の脈波FFT解析、A/D変換部31、脈波信号、脈波データ、記号“Pd”が、夫々、加速度FFT解析、A/D変換部36、加速度信号、加速度データ、記号“Md”に読み替えられる。従って例えば、時刻t=iのサンプリングにて取得される加速度信号Mdのデジタル値は“Md[i]”にて表される。つまり、時刻t=iにて、第i番目の加速度信号値、即ちMd[i]が得られる。Pd[i]にて値が表される加速度信号を、加速度データとも呼ぶ。
[心拍数の導出方法]
図17は、制御部13による、心拍数を導出するためのフローチャートである。まず、ステップS111において、A/D変換部31及び36は、所定のサンプリング周波数にて脈波データ及び加速度データの取り込み(即ちサンプリング)を開始する。順次得られる脈波データ及び加速度データはメモリ33に保存される。ステップS111に続くステップS112において、制御部13は、これまでに取り込まれた脈波データの個数nを、所定の第1閾値(PRA−Q)、及び、解析データ数と一致する第2閾値PRAと比較する(図5の(b)欄を参照)。第1不等式“PRA−Q≦n<PRA”の成立時にはステップS112からステップS113に進み、第2不等式“PRA≦n”の成立時にはステップS112からステップS119に進む。不等式“n<PRA−Q”の成立時には、データ数が少なすぎるため、第1不等式が成立するまで脈波データ及び加速度データの取り込みを継続しつつステップS112で待機する。
ステップS113の段階で取得されている脈波データは、Pd[1]〜Pd[n]であり、それらの総個数は解析データ数PRAより少ない。故に、時刻tにて実行されるステップS113において、演算部32は、時刻t=n+1〜時刻t=PRAにおける脈波データPd[n+1]〜Pd[PRA]として、所定の補完用データを補完する。この補完の方法は第1実施形態のそれと同様である。ステップS113では、実測によって得られた脈波データPd[1]〜Pd[n]と、補完された脈波データPd[n+1]〜Pd[PRA]とから成る解析対象データ列が形成される。
ステップS113に続くステップS114において、演算部32は、解析対象データ列が存在する区間だけ0以外の値を持つ窓関数(例えばハニング関数)を脈波データに対して掛け合わせる窓関数処理を実行する。その後、ステップS115において、演算部32は、これから行うべき脈波FFT解析が、何回目の脈波FFT解析であるのかを確認する。そして、これから行うべき脈波FFT解析が、1回目の脈波FFT解析である場合には、ステップS116に進んで脈波FFT解析B1を実行し、2回目以降の脈波FFT解析である場合には、ステップS117に進んで脈波FFT解析B2を実行する。脈波FFT解析B1及びB2は、ステップS114の窓関数処理を経た脈波データ(即ち、脈波データ中の解析対象データ列)に対して実行される。
ステップS116の脈波FFT解析B1又はステップS117の脈波FFT解析B2を終えると、ステップS118へ進む。ステップS118において、A/D変換部31及び36により、新たにPRB個分の脈波データ及びPRB個分の加速度データが取り込まれ、ステップS112に戻る。新たに取り込まれた脈波データ及び加速度データはメモリ33に保存される。
一方、“PRA≦n”の場合、既に取得されている脈波データの総個数は解析データ数PRA以上であるので、上述のような補完は不要である。ステップS119において、演算部32は窓関数処理を実行する。ステップS119の窓関数処理では、解析対象データ列が存在する区間だけ0以外の値を持つ窓関数(例えばハニング関数)を脈波データに対して掛け合わせる処理に加えて、同様の窓関数を加速度データに対しても掛け合わせる。時刻t=nにおいては、脈波信号の解析対象データ列が脈波データPd[n−PRA+1]〜Pd[n]から成り(図5の(b)欄を参照)、このとき、加速度データMd[n−PRA+1]〜Md[n]が存在する区間だけ0以外の値を持つ窓関数が加速度データに掛け合わされる。
その後、ステップS120において、演算部32は、ステップS119の窓関数処理を経た加速度データに対し加速度FFT解析を実行し、その結果を利用して体動モード判定及び補正係数設定を行う(詳細は後述)。そして、ステップS121において、演算部32は、ステップS120の結果を利用しつつ、ステップS119の窓関数処理を経た脈波データ(即ち、脈波データ中の解析対象データ列)に対し脈波FFT解析B3を実行する(詳細は後述)。
ステップS121の脈波FFT解析B3を終えると、ステップS122へ進む。ステップS122において、A/D変換部31及び36により、新たにPRB個分の脈波データ及びPRB個分の加速度データが取り込まれた後、ステップS119に戻る。新たに取り込まれた脈波データ及び加速度データはメモリ33に保存される。この際、メモリ33に保存されている脈波データの内、より古くから保存されているPRB個分の脈波データをメモリ33から削除しても良い。加速度データについても同様である。
脈波FFT解析の解析条件は、脈波FFT解析B1、B2及びB3間で共通である。脈波FFT解析B1、B2及びB3において、周波数fLL及びfHHは、夫々、例えば、0.635Hz及び4.0Hzである。
――脈波FFT解析B1、B2――
脈波FFT解析B1、B2は、夫々、第1実施形態における脈波FFT解析A1、A2と同じものである。尚、第2実施形態においては、“cy”は、脈波FFT解析B1、B2及びB3の全実行回数を表すものと解される。
――加速度FFT解析を介した体動モード判定&補正係数設定――
加速度FFT解析を伴うステップS120の処理を説明する。図18を参照する。ステップS120の処理は、ステップS131〜S134の処理を含む。まずステップS131において、演算部32は、窓関数処理を経た加速度データに対してFFTを適用することで、加速度信号のパワースペクトルを算出する。加速度信号のパワースペクトルは、加速度信号の第1〜第m要素帯域の夫々におけるPSD値を情報として含んでいる。続くステップS132において、演算部32は、ステップS131で求めた複数のPSD値の総和PSDSUMを求める。総和PSDSUMは、加速度信号の第1〜第m要素帯域における計m個のPSD値の総和であっても良いし、加速度信号の特定帯域における複数のPSD値の総和であっても良い。特定帯域は、第1〜第m要素帯域の全帯域の一部である。生体2の動き方にも依存するが、生体2の動きが激しくなるほど総和PSDSUMは増大する。
そしてステップS133において、演算部32は、総和PSDSUMに基づき体動モードmodeを設定する。具体的には、総和PSDSUMが所定の閾値THPSDSUMより小さいとき、演算部32は、生体2が静止している又は生体2の動きが小さいと判断して“mode”に1を設定し、総和PSDSUMが当該閾値THPSDSUM以上であるとき、生体2が活動していると判断して“mode”に2を設定する。
一方、ステップS134において、演算部32は、要素帯域ごとに加速度データのPSD値を所定の閾値THPSDと比較し、要素帯域ごとに、PSD値が閾値THPSD以上なら補正係数に第1補正値を設定する一方でPSD値が閾値THPSD未満なら補正係数に第2補正値を設定する。第1及び第2補正値は共に任意の正の所定値であるが、第1補正値は第2補正値よりも小さい。第2補正値は1より大きくても構わない。例えば、第2補正値が1.0であるとき、第1補正値を、0.1〜0.01の範囲内から選べば良い。ここでは、第1補正値は0.1であり、第2補正値は1.0であるとする。第i要素帯域に対して設定された補正係数を“KCi”にて表す。
尚、補正係数の設定を複数の要素帯域ごとに行うようにしても良い。例えば、2つの要素帯域ごとに補正係数の設定を行う場合、加速度データにおける第i及び第(i+1)要素帯域のPSD値の合計を所定の閾値THPSDと比較し、その合計が閾値THPSD以上なら補正係数KCi及びKCi+1に第1補正値(0.1)を設定し、そうでないなら、補正係数KCi及びKCi+1に第2補正値(1.0)を設定すれば良い。
――脈波FFT解析B3(図19)――
図19を参照し、脈波FFT解析B3について説明する。脈波FFT解析B3は、ステップS141〜S146の処理から成る。ステップS141において、演算部32は、窓関数処理を経た最新の脈波データ(即ち、脈波データ中の解析対象データ列)に対してFFTを適用することで、脈波信号のパワースペクトルを算出する。
次にステップS142において、演算部32は、ステップS134(図18参照)で設定された補正係数KC1〜KCmを用いて、ステップS141で算出したパワースペクトルを補正することで、補正パワースペクトルを算出する。第1実施形態と同様、脈波信号に関する補正前のパワースペクトルを原パワースペクトルと呼ぶ。但し、第2実施形態における補正パワースペクトルは、第1実施形態と異なり、補正係数に基づき算出されたものを指す。補正係数に基づく補正では、要素帯域ごとに、対応する補正係数を原パワースペクトルのPSD値に乗じることで補正パワースペクトルを得る。つまり、任意の整数iに関し、補正パワースペクトルの第i要素帯域のPSD値は、原パワースペクトルの第i要素帯域のPSD値と補正係数KCiとの積である。このような補正により、体動の加速度が大きい帯域、即ち、体動ノイズが多く混入していると予想される帯域において、脈波信号のPSD値が減衰せしめられる。この減衰補正の様子を図20に示す。パワースペクトル410は加速度信号のパワースペクトルの例であり、パワースペクトル420及び420cは、夫々、原パワースペクトル及び補正パワースペクトルの例である(図20を参照した説明は後にも設けられる)。
次にステップS143において、演算部32は、体動モードmodeに基づき検索対象帯域を設定する。検索対象帯域の意義は第1実施形態で述べた通りであり、周波数F[cy]の導出に用いる検索対象帯域は、周波数F[cy−1]を内包し且つ所定の帯域幅を有する。modeが“1”である時と“2”である時とで、検索対象帯域は互いに異なる。具体的には、図21の(a)欄及び(b)欄に示す如く、“mode”が静止モードに対応する“1”であるとき、周波数“F[cy−1]−7R”及び“F[cy−1]+7R”を、夫々、検索対象帯域の下限及び上限に設定する一方、“mode”が活動モードに相当する“2”であるとき、周波数“F[cy−1]−1R”及び“F[cy−1]+13R”を、夫々、検索対象帯域の下限及び上限に設定する。このような数値は、勿論例示であり、様々に変更できる。但し、mode=2であるとき、周波数F[cy]を求めるための検索対象帯域の中心は、周波数F[cy−1]よりも大きい。mode=1であるとき、周波数F[cy]を求めるための検索対象帯域の中心は、周波数F[cy−1]と一致していて良い。
続くステップS144にて、演算部32は、最新の脈波データに基づく補正パワースペクトルにおいて、周波数F[cy−1]を基準に設定した検索対象帯域内で、PSD値が最大となる要素帯域の周波数をPSD最大周波数F[cy]として検索及び特定する。
その後、ステップS145において、演算部32は、周波数F[cy]を、“HR[y]=F[cy]×60”に従ってハートレート値HR[cy]に変換し、F[cy]及びHR[cy]をメモリ33に保存する。更にその後、ステップS146において、演算部32は、ハートレート値の移動平均値HRAVE[cy]を求めてメモリ33に保存する。移動平均値HRAVE[cy]の導出方法は上述した通りである。
[体動モード判定に応じた、検索対象帯域可変設定の意義]
第1実施形態と同様、第2実施形態でも、各回の心拍数を、帯域制限を適用した状態で導出する。つまり、今回の心拍数(HR[cy])を、前回導出した心拍数(HR[cy−1])を内包し且つ所定の大きさを持った数値範囲内で検索し導出する。上述の動作例では、当該探索を“Hz”を単位とした周波数領域上で実行しており、図19の検索対象帯域の単位を“bpm”に変換したものが当該数値範囲に相当する。より具体的には、今回の心拍数(HR[cy])を導出するための脈波信号に基づくパワースペクトルにおいて、上記数値範囲内に対応する検索対象帯域を設定し、検索対象帯域内でPSD値が最大となる周波数をF[cy]として同定することにより今回の心拍数(HR[cy])を導出する。生体2の心拍数の短時間における変化量は限られており、今回の心拍数が前回の心拍数と大きくかけ離れているとは考えにくい。そこで、上記の如く検索対象帯域内で最大PSD値を探索するようにする。これにより、心拍数導出に対するノイズの影響を低減することができる。
但し、第2実施形態では、上記数値範囲(即ち検索対象帯域)を、加速度信号に基づく体動モードmodeの設定を介して、動的に可変設定する。“mode”を1に設定することは、生体2の動き状態が動き状態MSAに属すると分類判定することに相当し、“mode”を2に設定することは、生体2の動き状態が動き状態MSBに属すると分類判定することに相当する。動き状態MSAは、生体2の動きが無い状態を含み、生体2が比較的小さく動いている状態を含みうる。動き状態MSBは、生体2が動いている状態を含み、少なくとも、動き状態MSBにおける生体2の動きの大きさは動き状態MSAにおける生体2の動きの大きさよりも大きい。生体2の動きの大きさは、例えば、上記の総和PSDSUMとして評価される。
そして、今回の心拍数(HR[cy])を導出する際に動き状態が動き状態MSBであると判定されたとき、即ち“mode=2”であるとき、今回の心拍数(HR[cy])を導出するための検索対象帯域の中心を、前回導出した心拍数の周波数(F[cy−1])よりも大きくするオフセット処理を行う(図21の(b)欄を参照)。“mode=2”であるとき、生体2の活動により心拍数が増加傾向にあることが予想されるため、検索対象帯域を高域側にシフトすることにより、より妥当な心拍数検出が見込める(真の心拍数の周波数が検索対象帯域外に存在するような状況の発生が回避される)。尚、上述のオフセット処理は、前回導出した心拍数(HR[cy−1])が所定心拍数以下の場合に限って実施されるものであっても良い。この所定心拍数は例えば120bpmである(勿論、120bpm以外にすることも可能である)。
一方、“mode=1”であるとき、心拍数の変動は少ないことが予想されるため、今回の心拍数(HR[cy])を導出するための検索対象帯域の中心を、前回導出した心拍数の周波数(F[cy−1])と一致させる良い(図21の(a)欄を参照)。
但し、第1時刻において動き状態が動き状態MSBであると判定され、その後の第2時刻において動き状態が動き状態MSBから動き状態MSAに切り替わったとき、演算部32は、第2時刻を起点とし且つ所定の時間長を有する特定期間を設けるようにしても良い。特定期間では、今回の心拍数(HR[cy])を導出するための検索対象帯域の中心が、前回導出した心拍数の周波数(F[cy−1])よりも小さくされる。例えば、特定期間においては、周波数“F[cy−1]−8R”及び“F[cy−1]+4R”を、夫々、検索対象帯域の下限及び上限に設定して良い。特定期間中は、生体2の活動停止に伴って心拍数が減少傾向にあることが予想されるためであり、検索対象帯域を低域側にシフトすることにより、より妥当な心拍数検出が見込める。特定期間は、第2時刻における心拍数HR[cy]が所定値(例えば、110bpm)以上である場合に限って設定されるものであっても良い。心拍数HR[cy]が比較的少ない状態において体動が停止したとしても(即ち例えば、ほんの少し運動してから止まったような状態では)、時間経過に伴う心拍数低下は殆ど生じないことが予想されるからである。
尚、生体2の動き状態が動き状態MSBに属するとき、生体2の動き状態を更に複数の動き状態に細分化しても良い。例えば、演算部32は、“THPSDSUM<PSDSUM≦TH2PSDSUM”の成立時には、生体2の動き状態が動き状態MSB1に属すると判定してmodeに“2”を設定する一方で、“TH2PSDSUM<PSDSUM”の成立時には、生体2の動き状態が動き状態MSB2に属すると判定してmodeに“3”を設定する(但し、所定の閾値TH2PSDSUMは閾値THPSDSUMより大きい)。動き状態MSB1及びMSB2は共に動き状態MSBに属するが、動き状態MSB2の方が動き状態MSB1よりも生体の動きの大きさが大きい。そして、“mode=3”であるとき、今回の心拍数(HR[cy])を導出するための検索対象帯域の中心を、“mode=2”であるときのそれよりも高くすると良い。
[帯域制限の一時停止]
検索対象帯域を用いた帯域制限は心拍数の検出精度向上に寄与するものの、一度、不適切な検索対象帯域を設定してしまうと、心拍数の真値検出が困難な状況が長時間継続するおそれもある。不適切な検索対象帯域の設定は生体2の活動中に起こりやすい。一方、生体2の静止中には、図12の(b)欄に示すような体動ノイズの少ない脈波信号が得られるため、帯域制限を設けなくても、各回の脈波信号に基づき十分に信頼性の高い心拍数検出が可能である。
そこで、第1時刻において動き状態が動き状態MSBであると判定され、その後の第2時刻において動き状態が動き状態MSBから動き状態MSAに切り替わったとき、図22に示す如く、演算部32は、第2時刻を起点とし且つ所定の時間長を有する停止期間を設けるようにしても良い(但し、第1時刻では帯域制限が実行されていたものとする)。停止期間では、上述の帯域制限の実行が停止され、図8の脈波FFT解析A1と同じ脈波FFT解析B1を実行することで、PSD最大周波数F[cy]及びハートレート値HR[cy]を求める(つまり、検索対象帯域に依存せずにF[cy]及びHR[cy]が求められる)。そして、停止期間の終了後は、停止期間中に求めたPSD最大周波数を用いて、検索対象帯域の設定を介した帯域制限を再開する。これにより、生体2の活動停止を契機に検索対象帯域が見直され、不適切な検索対象帯域の設定が長時間継続することが抑制される。
単純には例えば、停止期間の時間長が脈波FFT解析の実行間隔(図5の(c)欄を参照)と同じである場合において、停止期間中にPSD最大周波数F[cy−1]として周波数FSTOP1が求められた場合、停止期間終了直後の検索対象帯域の中心を周波数FSTOP1に設定し、その設定状態で脈波FFT解析B2又はB3の繰り返し実行を再開すれば良い。停止期間の時間長が脈波FFT解析の実行間隔の2倍以上である場合、停止期間中に求めた複数のPSD最大周波数に基づき停止期間終了直後の検索対象帯域の中心を設定し、その設定状態で脈波FFT解析B2又はB3の繰り返し実行を再開すれば良い。例えば、複数のPSD最大周波数の平均を、停止期間終了直後の検索対象帯域の中心に設定して良い。
或いは例えば、以下のような方法を用いても良い。即ち、停止期間直前に求められたPSD最大周波数が周波数FA0である場合において、停止期間中に求められた1回目のPSD最大周波数が周波数FA1であるとき、演算部32は、周波数FA0及びFA1の差DIF01を所定の差分閾値と比較する。そして、その差DIF01が差分閾値未満であるならば、停止期間を直ちに終了して、周波数FA0若しくはFA1又はそれらの平均値を停止期間終了直後の検索対象帯域の中心に設定し、その設定状態で脈波FFT解析B2又はB3の繰り返し実行を再開する。差DIF01が差分閾値以上であるならば、停止期間を終了させずに、停止期間中における2回目のPSD最大周波数を周波数FA2として求めて、周波数FA1及びFA2の差DIF12を所定の差分閾値と比較する。差DIF12が差分閾値未満であるならば、停止期間を直ちに終了して、周波数FA1若しくはFA2又はそれらの平均値を停止期間終了直後の検索対象帯域の中心に設定し、その設定状態で脈波FFT解析B2又はB3の繰り返し実行を再開する。差DIF12が差分閾値以上になることは考えにくいが、仮に、差DIF12が差分閾値以上であったならば、停止期間中に連続して求めた2つのPSD最大周波数の差又は停止期間中に連続して求めた2以上のPSD最大周波数の最大差が差分閾値以下になるまで停止期間を継続し、差分閾値以下の差又は最大差が得られた時点で停止期間を終了すると良い。この場合、停止期間の終了直前に求められた1つのPSD最大周波数、又は、停止期間の終了直前に求められた2以上のPSD最大周波数の平均値を、停止期間終了直後の検索対象帯域の中心に設定し、その設定状態で脈波FFT解析B2又はB3の繰り返し実行を再開すれば良い。
[補正係数によるパワースペクトル補正の意義]
また、第2実施形態では、加速度信号のパワースペクトルにおいて、PSD値が閾値THPSD以上になっている要素帯域に対して第2補正値を持つ補正係数が設定される(図18のステップS134参照)。加速度信号のパワースペクトルにおいて、PSD値が閾値THPSD以上になっている各要素帯域は減衰対象帯域に属すると考えられる。演算部32は、図18のステップS134にて減衰対象帯域を特定した後、脈波信号の原パワースペクトルにおいて減衰対象帯域内のPSD値を減衰させることで補正パワースペクトルを得ている(図19のステップS142参照)。そして、補正パワースペクトルにおいて、上記数値範囲内に対応する検索対象帯域を設定し、検索対象帯域内でPSD値が最大となる周波数をF[cy]として同定することにより今回の心拍数(HR[cy])を導出する。
減衰対象帯域は体動の加速度が大きい帯域、即ち、脈波信号に体動ノイズが多く混入していると予想される帯域である。上記のような補正係数を用いた減衰補正により、図20に示す如く、脈波信号に混入した体動ノイズが減少せしめられて補正パワースペクトル420cが得られる。補正パワースペクトル420cを用いてPSD最大周波数F[cy]を同定するようにすれば、体動ノイズの影響が軽減された精度の高い心拍数検出が可能である。
尚、加速度信号の各要素帯域のPSD値に応じて補正係数を3段階以上に設定しても良い。つまり例えば、図18のステップS134において、演算部32は、要素帯域ごとに、PSD値が所定閾値THPSD以上なら補正係数に所定値VAL1(例えば0.1)を設定し、PSD値が閾値THPSD未満であるが所定閾値TH2PSD以上なら補正係数に所定値VAL2(例えば0.5)を設定し、PSD値が閾値TH2PSD未満なら補正係数に所定値VAL3(例えば1.0)を設定するようにしても良い。ここで、THPSD>TH2PSD、且つ、VAL1<VAL2<VAL3、である。
また、上述の動作例では、加速度データを脈波FFT解析B3においてのみ利用しているが、加速度データを脈波FFT解析B2にも利用するようにしても良い。この場合、図17のステップS113及びS114にて、脈波データと同様の補完処理及び窓関数処理を加速度データに対しても実行し、ステップS117にて、脈波FFT解析B2の代わりにステップS120及びS121の処理を実行すればよい。
[実験結果など]
図23及び図24に、被験者を用いた実験結果の例を示す。波形441〜443を含むグラフ440(図23の(a)欄)、波形451〜453を含むグラフ450(図23の(b)欄)、波形461〜463を含むグラフ460(図24の(a)欄)、波形471〜473を含むグラフ470(図24の(b)欄)は、夫々、実験E2A、E2B、E2C、E2Dの結果を表している。各実験では、被験者が静止している2つの区間中に一定区間だけ被験者を歩行又は走行させた。被験者の歩行又は走行速度は、実験E2A、E2B、E2C、E2Dにおいて、夫々、時速6、8、10、12kmである。破線波形441、451、461、471は、市販の胸ベルト装着型心拍計を用いた、真値とみなせる心拍数の測定結果を表す。実線波形442、452、462、472は、脈波センサ1による心拍数の測定結果(HRAVE[cy]の時系列データ)を表す。一点鎖線波形443、453、463、473は、従来のピーク解析方法を用いたときの測定結果である。
図23及び図24に対応する実験では、歩行時においてすら、従来のピーク解析方法による測定結果が、体動ノイズの影響を受けて真値(胸ベルト装着型心拍計の測定結果)から大きくかけ離れている。これに対し、第2実施形態の脈波センサ1を用いると、様々な活動環境下で、胸ベルト装着型心拍計と相関のある測定結果が得られている。第1実施形態の方法を用いた場合、被験者によっては、脈波センサ1の測定心拍数と胸ベルト装着型心拍計との相関が薄れる可能性があるが、第2実施形態の方法を用いれば被験者に依存せず当該相関をより強固に確保できる。
尚、上述の動作例では、脈波FFT解析の実行回数cyが1回目のときにだけ脈波FFT解析B1を実行しているが、脈波FFT解析B1を複数回実行するようにしても良い。例えば、図17において、回数cyが1、2及び3回目である時の夫々においてステップS115からステップS116に進み、回数cyが4回目以降である状態でステップS115に至ったときにステップS117へ進むようにしても良い。この場合、1〜3回目のPSD最大周波数F[1]〜F[3]は脈波FFT解析B1で求められ、4回目のPSD最大周波数F[4]は脈波FFT解析B2で求められる。この際、周波数F[4]を求めるときの検索対象帯域の中心を、周波数F[1]〜F[3]に基づき定めればよい(当該定め方は第1実施形態で述べたものと同様)。
加速度FFT解析の解析条件は全て脈波FFT解析の解析条件と同じであって良いが、それらの解析条件の内、一部(例えば、サンプリング周波数)は互いに異なっていても良い。但し、それらの間で周波数分解能が異なっていると、要素帯域ごとの補正係数による補正(図19のステップS142)を行い難くなる。故に、加速度FFT解析の解析条件と脈波FFT解析の解析条件との間で、少なくとも周波数分解能は互いに同じにしておくと良い。周知の如く、FFTは、時間領域上の信号(即ち時間軸上のデータ列)を周波数領域上の信号に変換する時間/周波数変換処理の一種である。本発明において、時間/周波数変換処理は、FFTに属するものでなくても構わない。
上述したように、A/D変換部36は加速度センサに内包されるものであって良い。この場合において、加速度センサ内のA/D変換部36のサンプリング周波数が加速度FFT解析の解析条件におけるサンプリング周波数より大きい場合、演算部32は、公知の周波数変換処理(間引き等)を利用して加速度FFT解析用の加速度データを得れば良い。
<<第3実施形態>>
本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態で述べる技術は第1及び第2実施形態に適用される。
発光部11Aは、生体2に対して光を照射する発光素子(LED等)を有し、発光部11Aに含まれる発光素子の個数は1つでも良いし、2以上でも良い。受光部11Bは、発光部11Aが照射した光の内、生体2内を透過した光を受光する受光素子(フォトダイオード又はフォトトランジスタ)を有し、受光部11Bに含まれる受光素子の個数は1つでも良いし、2以上でも良い。
望ましい光センサ部11の形態の1つを、図25に示す。図25の光センサ部11は、生体2と接触する装着面50と、装着面50に固定された1つの発光素子51及び4つの受光素子61〜64と、を有する。発光素子51は、緑色の光を出力するLEDであって発光部11Aを形成する。受光素子61〜64はフォトトランジスタであって受光部11Bを形成する。発光素子51は、受光素子61及び63の中心に位置すると共に、受光素子62及び64の中心に位置する。受光素子61及び63の各中心を結ぶ線と、受光素子62及び64の各中心を結ぶ線は、互いに直交する。発光素子51の中心と受光素子61〜64の中心との間の距離は互いに等しい。受光素子61〜64の夫々は、発光部11Aからの光に基づき生体2を透過又は反射した光を受光するものであって良い。
受光素子61が受光した光の量に応じた電流が受光素子61に流れる。受光素子62〜64についても同様である。このとき、光センサ部11は、受光素子61〜64に流れる電流の合計電流に基づき脈波信号を形成できる。このため、光センサ部11では、発光素子及び受光素子が夫々1つの光センサ部に比べて、信号強度を高めることができる。図25の構成から受光素子62及び64を削除することもできるし、図25の構成に対して更に他の受光素子を追加することもできる。何れにせよ、受光部11Bにおける複数の受光素子の間に、発光素子51を配置することが好ましい。
<<第4実施形態>>
先述の第2実施形態では、加速度信号に基づくパワースペクトル(以下では、加速度パワースペクトルと略称する)を算出し、その算出結果に応じて脈波信号のパワースペクトル(以下では、脈波パワースペクトルと略称する)を補正すると共に、心拍数HRの検索対象帯域(帯域制限範囲)を可変制御することにより、安静時だけでなく活動時においても心拍数HRを精度良く導出することができる旨を提案した。
なお、第2実施形態のアルゴリズムは、歩行時、ジョギング時、或いは、ランニング時など、脈波センサ部11が装着されている腕を比較的大きく振るような活動時(腕振運動時)の心拍数を検出する手法として有効である。
一方、本願の発明者は、さらなる鋭意研究の結果、リストロール時、リストカール時、キータイピンク時、或いは、エルゴメータ使用時など、あまり腕を振らない活動時(非腕振運動時)には、第2実施形態のアルゴリズムによる心拍数検出精度がやや低下するという知見を得た。
そこで、第4実施形態では、あまり腕を振らない活動時においても、心拍数HRを精度良く導出することのできる解析手法について提案する。
[フローチャート]
図26は、本発明の第4実施形態に係る解析動作の概略(全体像)を説明するためのフローチャートである。本実施形態の解析動作においても、先の第2実施形態と同じく、光センサ部11から得られる時系列データ(脈波データ)と体動センサ部17(例えば3軸加速度センサ)から得られる時系列データ(加速度データ)を用いて、安静時及び活動時の心拍数HRを算出するアルゴリズムが採用されている。なお、本フローの動作主体は、基本的に演算部32である。
フローが開始されると、ステップS201において、脈波データ及び加速度データの蓄積が行われる。ここで蓄積された脈波データ及び加速度データは、ステップS202におけるFFT解析に供される。また、加速度データは、ステップS206におけるベクトル値V及び振幅変化総和Dの算出処理にも供される。なお、ステップS202とステップS206は、それぞれ並列に処理が進められる。
ステップS202では、同一の条件で脈波データ及び加速度データのFFT解析が行われて、脈波パワースペクトルと加速度パワースペクトルが各々算出される。FFT解析については、先に説明した通りであるので重複した説明は割愛する。ここで算出された脈波パワースペクトルは、ステップS205における補正脈波パワースペクトルの生成処理に供される。一方、加速度パワースペクトルは、ステップS203におけるピーク位置検出処理に供される。
ステップS203では、加速度パワースペクトルのピーク位置が検出される(詳細は後述)。その後、フローはステップS204に進められる。
ステップS204では、加速度パワースペクトルのピーク位置に応じて体動ノイズ成分を減衰するための補正データが生成される(詳細は後述)。ここで生成された補正データは、ステップS205における補正脈波パワースペクトルの生成処理に供される。
ステップS205では、脈波パワースペクトルに対する補正データの乗算処理が行われて補正脈波パワースペクトルが生成される(詳細は後述)。ここで生成された補正脈波パワースペクトルは、ステップS208における帯域制限処理に供される。
一方、ステップS206では、加速度データのベクトル値Vと振幅変化総和Dが算出される(詳細は後述)。その後、フローはステップS207に進められる。
ステップS207では、加速度データのベクトル値Vと振幅変化総和D(ないしは前回の心拍数HR)に応じて体動モードが判定される(詳細は後述)。ここでの判定結果は、ステップS208における帯域制限処理に供される。
ステップS208では、補正脈波パワースペクトルに対して体動モードに応じた帯域制限が掛けられる(詳細は後述)。その後、フローはステップS209に進められる。
ステップS209では、帯域制限の掛けられた補正脈波パワースペクトルから心拍数HRが導出される(詳細は後述)。
以下では、上記各ステップの動作について個別具体的に説明していく。
[ピーク位置検出に基づく体動ノイズキャンセル動作]
図27は、加速度パワースペクトルのピーク位置検出に基づく体動ノイズキャンセル動作(図26のステップS203〜S205に相当)の一例を示す図である。なお、(a)欄には加速度パワースペクトル、(b)欄には体動ノイズ周波数帯域を設定するための帯域フラグα、(c)欄には脈波パワースペクトルの減衰率を設定するための補正係数β、(d)欄には脈波パワースペクトルに乗算される補正データγ、及び、(e)欄には脈波パワースペクトル(破線)と補正脈波パワースペクトル(実線)が各々描写されている。
(a)欄で示すように、演算部32は、加速度パワースペクトル(体動パワースペクトルに相当)のピーク位置を解析する。ピーク位置の解析手法としては、隣接周波数間で加速度パワースペクトルの差分値を順次算出し、その変極点(差分値が正から負に切り替わる極大点)を探索すればよい。上記の差分演算に先立ち、加速度パワースペクトルの平滑化処理を行うことも可能である。なお、ピーク位置に相当する周波数には「1」、ピーク位置に相当しない周波数には「0」がフラグ付けされる。
本図の例では、加速度パワースペクトルに7つのピーク位置が検出されている。このように、多数のピーク位置が検出された場合、それら全てを脈波パワースペクトルの補正に反映させると、脈波信号を不必要に減衰させてしまい、却って心拍数HRの検出精度を悪化させてしまうおそれがある。
そこで、演算部32は、複数検出されたピーク位置のうちパワースペクトル密度の上位順に所定数のピーク位置(本図の例では、丸印を付した3つのピーク位置)だけを抽出して脈波パワースペクトルの補正に反映させる。このような選定処理を行うことにより、多数のピーク位置が検出された場合でも、脈波パワースペクトルを適切に補正することが可能となる。
ピーク位置の選定後、演算部32は、ピーク位置を中心とした前後の周波数帯域を体動ノイズ周波数帯域として設定する。具体的には、(b)欄で示すように、演算部32は、選定した3つのピーク位置を中心に各々±xR(例えばx=3、5、7、9)の周波数範囲で帯域フラグαを「1」とし、その余の周波数範囲で帯域フラグαを「0」とする。
先述の第2実施形態では、加速度パワースペクトル密度が所定の閾値よりも高い周波数帯域を体動ノイズ周波数帯域として設定し、同帯域内に属する脈波パワースペクトルを一律的に減衰させていた。そのため、加速度パワースペクトルの分布状態(ピーク幅)によって体動ノイズ周波数帯域が広くなったり狭くなったりするので、脈波パワースペクトルを適切に補正することができないおそれがあった。
一方、本実施形態であれば、体動ノイズ周波数帯域を常に一定幅(±xR)に固定することができる。従って、加速度パワースペクトルの分布状態(ピーク幅)に依らず、脈波パワースペクトルを適切に補正することが可能となる。
体動ノイズ周波数帯域の設定後、演算部32は、帯域フラグαと補正係数βを用いて補正データγを生成する。具体的には、(d)欄で示したように、体動ノイズ周波数帯域内(α=1)ではγ=β(=α×β)となり、体動ノイズ周波数帯域外(α=0)ではγ=1(減衰なし)に固定される。
また、本実施形態では、体動ノイズ周波数帯域に属する脈波パワースペクトルを一律的に減衰するのではなく、(c)欄で示したように、脈波パワースペクトルの減衰率を設定するための係数βが周波数に応じた変動値として用意されている。
本図の例では、周波数f1以下の周波数範囲で補正係数βが「β1」に固定されて、周波数f1〜f2の周波数範囲で補正係数βが「β1」から「β2」まで線形的に変化されて、周波数f2以上の周波数範囲で補正係数βが「β2」に固定される(例えば、f1=120bpm相当、f2=180bpm相当、β1=0.01、β2=0.1)。なお、補正係数βの設定例についてはこれに限定されるものではない。
このように、補正係数βを周波数に応じて可変的に設定することにより、体動ノイズが重畳しやすい周波数帯域と、体動ノイズが重畳しにくい周波数帯域のそれぞれにおいて、脈波パワースペクトルの減衰量を最適に調整することが可能となる。
補正データの生成後、演算部32は、脈波パワースペクトルに補正データγを乗算する(体動ノイズ周波数帯域に属する脈波パワースペクトルの各周波数成分に対して各々に対応した補正係数βを乗算する)ことにより、補正脈波パワースペクトルを生成する。
上記一連の体動ノイズキャンセル動作により、(e)欄で示したように、体動ノイズ成分(破線)を取り除いた補正脈波パワースペクトルが得られるので、安静時だけでなく活動時においても心拍数HRを精度良く導出することが可能となる。
[加速度データのベクトル値Vと振幅変化総和Dに基づく体動モード判定動作]
次に、加速度データのベクトル値Vと振幅変化総和Dに基づく体動モード判定動作(図26のステップS206〜S207に相当)について詳述する。
図28は、ベクトル値Vと振幅変化総和Dの定義式を示す図である。時刻tに体動センサ部17で得られる3軸加速度データを各々X(t)、Y(t)、Z(t)とした場合、加速度データのベクトル値V及び振幅変化総和D(=各軸における振幅変化の総和)は、それぞれ、次の(1)式及び(2)式により算出される。
先述の第2実施形態では、加速度パワースペクトルの総和が所定値を超えているか否かに応じて体動モードを2パターンに分類し、体動モードに応じた帯域制限処理を行っていた(図18のステップS133や図19のステップS143を参照)。
一方、本実施形態では、上記(1)式及び(2)式を用いて算出される加速度データのベクトル値V及び振幅変化総和D(ないしは前回の心拍数HR)に応じて体動モードが6パターンに分類されており、体動モードに応じた帯域制限処理がよりきめ細かく実施される。以下、図面を参照しながら詳細に説明する。
図29は、体動モードの一例を示すテーブルであり、左から順に、体動モード、帯域制限(前回心拍数HR±分解能)、想定活動状態、閾値設定(ベクトル値V、振幅変化総和D、及び、前回心拍数HR)、並びに、備考が記載されている。なお、静止中の被験者に対して1Gが掛かっている状態では、V=1000が算出されるものとする。
体動モードとしては、mode0〜mode5の6パターンが用意されている。mode0は、心拍数HRの計測開始直後に設定される体動モードである。mode0では、被験者が連続静止状態であるという想定の下、帯域制限が解除されて全帯域が心拍数HRの検索対象とされる。なお、V<1050、かつ、D<20が満たされているときには、mode0と判定される(前回心拍数HRは不問)。ただし、帯域制限の解除後に心拍数HRが導出された時点で体動モードはmode1に切り替えられる。
mode1では、被験者が軽微な動きを行っているという想定の下、心拍数HRの検出対象として、前回心拍数HR±3Rの帯域制限が掛けられる。mode1での帯域制限については、図21の(a)欄の±7Rを±3Rとして読み替えて参照することにより、容易に理解することができる。なお、V<1050、D<20、かつ、HR<120が満たされているときには、mode1と判定される。
ただし、mode1が所定時間(例えば16秒間)に亘って連続すると、体動モードがmode0に切り替えられる。言い換えると、被験者が安静状態となる度に、体動モードがmode0に戻されて帯域制限が解除される。このような構成とすることにより、何らかの不具合により不適切な帯域制限が掛けられた場合であっても、被験者が安静状態に戻れば、誤った帯域制限も自動的に解除されるので、運動再開時には心拍数HRを正しく検出することが可能となる。
mode2では、被験者が活動を開始したという想定の下、心拍数HRの検出対象として、前回心拍数HR±7R(オフセット+6Rあり)の帯域制限が掛けられる。mode2での帯域制限については、図21の(b)欄をそのまま参照することにより、容易に理解することができる。なお、1150<V、かつ、HR<120が満たされているときには、mode2と判定される(振幅変化総和Dは不問)。ただし、mode2は、心拍数HRの急上昇が想定される活動開始直後の4秒間にのみ有効であり、当該期間の経過後は他の体動モードに移行される。
mode3では、被験者が活動中(腕振運動中)であるという想定の下、心拍数HRの検出対象として、前回心拍数HR±5Rの帯域制限が掛けられる。mode3での帯域制限については、図21の(a)欄の±7Rを±5Rとして読み替えて参照することにより、容易に理解することができる。なお、1050<V、または、120<HRが満たされているときには、mode3と判定される(振幅変化総和Dは不問)。
mode4では、被験者が活動中(手首運動などの非腕振運動中)であるという想定の下、当該体動モードへの突入時における心拍数HR±5Rの帯域制限が掛けられる。すなわち、mode1〜mode3の帯域制限中心周波数は、いずれも前回心拍数HRを基準とした可変値であるのに対して、mode4の帯域制限中心周波数は、mode4突入時の心拍数HRを基準とした固定値とされている。このような体動モードを用意しておくことにより、腕振運動時だけでなく非腕振運動時においても精度良く心拍数HRを導出することが可能となる。なお、V<1050、かつ、80<Dが満たされているときには、mode4と判定される(前回心拍数HRは不問)。
mode5では、被験者が軽微な動き(クールダウン)を行っているという想定の下、心拍数HRの検出対象として、前回心拍数HR±5Rの帯域制限が掛けられる。mode5での帯域制限については、先のmode3と同様、図21の(a)欄の±7Rを±5Rとして読み替えて参照することにより、容易に理解することができる。なお、V<1050、かつ、20<D<80が満たされているときには、mode5と判定される(前回心拍数HRは不問)。mode5の帯域制限中心周波数は、mode1〜mode3と同様、前回心拍数HRを基準とした可変値である。
上記の体動モード切替制御(特にmode4やmode5の創設)は、非腕振運動時にはベクトル値Vがあまり変化せずに振幅変化総和Dが比較的大きく変化する、という本願発明者の新たな知見に基づいて初めて成し得るものである。
なお、本図の例では、加速度データのベクトル値Vと振幅変化総和D(ないしは前回心拍数HR)に応じて、6パターンの体動モードを切り替える説明を行ったが、体動モードのパターン数についてはこれに限定されるものではなく適宜増減することも可能である。また、体動モードの切替に際して加速度データのベクトル方向を併せて参照してもよい。
[周波数平均値に基づく心拍数HRの導出アルゴリズム]
次に、帯域制限の掛けられた補正脈波パワースペクトルから心拍数HRを導出するための新規アルゴリズム(図26のステップS209に相当)について詳述する。
先述の第2実施形態では、補正脈波パワースペクトルのパワースペクトル密度が最大となる周波数(以下ではPSD最大周波数と呼ぶ)を検索し、そのPSD最大周波数を心拍数HRに変換していた。もちろん、上記アルゴリズムは、図26のステップS209にも適用することが可能である。しかしながら、帯域制限範囲内に補正脈波パワースペクトルのピークが複数存在する場合には、上記アルゴリズムによる心拍数HRの導出に不具合を生じるおそれがあった。
図30は、PSD最大周波数に基づくHR導出時の問題点を説明するための図である。帯域制限範囲に補正脈波パワースペクトルのピークが複数存在していた場合であっても、(a)欄で示すように、最大ピークのパワースペクトル密度が突出しているのであれば、PSD最大周波数に基づく心拍数HRの導出に特段の問題は生じない。
しかしながら、(b)欄で示すように、同程度のパワースペクトル密度を持つ複数のピークが互いに離れた周波数に現れている場合には、いずれか一方のピークを選択してPSD最大周波数としても、心拍数HRを正しく導出することができないおそれがある。
また、(c)欄で示すように、帯域制限範囲に突出したピークが現れない場合には、僅かなパワースペクトル密度差に基づいてPSD最大周波数を選択せざるを得ず、心拍数HRの導出精度が悪化してしまう。
そこで、本願発明者は、上記の問題点に鑑み、心拍数HRの導出アルゴリズムを全面的に刷新するという決断を下した。より具体的に述べると、演算部32は、帯域制限の掛けられた補正脈波パワースペクトルから心拍数HRを導出する際、補正脈波パワースペクトルについて、帯域制限範囲内で各周波数に対するパワースペクトル密度で重み付けされた周波数平均値Aaveを算出し、その算出結果から心拍数HRを導出する。
図31は、周波数平均値Aaveの算出式を示す図であり、左から順に、補正脈波パワースペクトルの周波数成分A(k)、パワースペクトル密度B(k)、及び、両者の乗算値C(k)(=A(k)×B(k))が描写されている。なお、k=1、2、…、mであり、mは帯域制限幅±xRに応じて変化する可変値(m=2x+1)である。例えば、x=3のときにはm=7となる。
ここで、周波数平均値Aaveは、次の(3)式により算出される。
この周波数平均値Aaveに基づいて心拍数HRを導出することにより、補正脈波パワースペクトルに複数のピークが存在している場合であっても、心拍数HRを正しく導出することが可能となる。
[実験結果]
図32は、本発明の第4実施形態の実験による心拍数測定結果を示す図である。なお、(a)欄には手首運動(静止→リストロール→静止→指運動→静止→リストカール→静止→歩行→静止)を行っているときの測定結果が示されており、(b)欄にはエルゴメータ運動(静止→エルゴメータ使用→静止)を行っているときの測定結果が示されている。
また、各欄の実線は第4実施形態の測定結果を示しており、一点鎖線は第2実施形態の測定結果を示している。一方、各欄の破線は、胸ベルト装着型心拍計の測定結果を比較参照値(正しい測定結果に相当)として示している。
本図から明らかなように、第2実施形態では手首運動時やエルゴメータ運動時に測定された心拍数HRが比較参照値から乖離してしまっている。一方、第4実施形態ではそのような乖離は生じておらず、手首運動時やエルゴメータ運動時においても心拍数HRを正しく測定することができている。
<<変形等>>
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。上述の任意の式において、矛盾が生じない範囲で、不等号“≧”又は“≦”を夫々不等号“>”又は“<”に置き換えても良いし、その逆も可能である。上述の実施形態に適用可能な注釈事項として、以下に、注釈1〜注釈5を記す。各注釈に記載した内容は、矛盾なき限り、任意に組み合わせることが可能である。
[注釈1]
上述の脈波センサ1は、脈波信号取得部、体動信号取得部及び演算部32を有して、生体2の心拍数を検出及び導出する心拍数検出装置を内包している。心拍数の検出又は導出は、心拍数の検出値であるハートレート値の導出と同義である。脈波信号取得部は光センサ部11を含む。フィルタ部12及びA/D変換部31も脈波信号取得部の構成要素に含まれる、と考えても良い。体動信号取得部は体動センサ部17を含む。A/D変換部36、及び、A/D変換部36と体動センサ部17との間に設けられうるフィルタ部(不図示)も、体動信号取得部の構成要素に含まれる、と考えても良い。
[注釈2]
図4の演算部32及びメモリ33は、脈波センサ1ではなく、外部機器EE(図3参照)に設けられていても良い。つまり、演算部32及びメモリ33における上述の動作を外部機器EE内で実現しても良い。演算部32及びメモリ33における上述の動作の内、一部を脈波センサ1内で実行し、残りを外部機器EE内で実行しても良い。
[注釈3]
発光部11Aにおける発光素子の発光は、常時発光でも良いし、パルス発光でも良い。パルス発光では、発光素子が発光している状態と発光素子が発光していない状態とが交互に訪れる。
[注釈4]
脈波センサ1又は心拍数検出装置である対象装置を、集積回路等のハードウェア、或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって構成することができる。対象装置にて実現される機能の全部又は一部である任意の特定の機能をプログラムとして記述して、該プログラムを対象装置に搭載可能なフラッシュメモリに保存しておいても良い。そして、該プログラムをプログラム実行装置(例えば、対象装置に搭載可能なマイクロコンピュータ)上で実行することによって、その特定の機能を実現するようにしてもよい。上記プログラムは任意の記録媒体に記憶及び固定されうる。上記プログラムを記憶及び固定する記録媒体は対象装置と異なる機器(サーバ機器等)に搭載又は接続されても良い。
[注釈5]
上述の各実施形態では、光センサ部11を用いた光学的方式にて脈波信号を検出及び取得しているが、本発明はこれに限定されない。つまり本発明において、脈波を示す脈波信号は、生体2の血管内の圧力変化を検出する圧電方式で検出及び取得されたものでも良いし、心電図を計測できる心電計により検出及び取得されたものであっても良い(この場合、心電図の波形が脈波信号の波形に相当する)。
1 脈波センサ
2 生体
10 本体ユニット
11 光センサ部
11A 発光部
11B 受光部
12 フィルタ部
13 制御部
17 体動センサ部
20 ベルト
31、36 A/D変換部
32 演算部
33 メモリ
51 発光素子
61〜64 受光素子

Claims (11)

  1. 生体の脈波に応じた脈波信号を取得する脈波信号取得部と、
    前記生体の動きに応じた体動信号を取得する体動信号取得部と、
    順次取得される前記脈波信号及び前記体動信号に基づき前記生体の心拍数を順次導出する演算部と、を備え、
    前記演算部は、
    前回導出した心拍数を内包し且つ所定の大きさを持つ数値範囲内で今回の心拍数を導出する際、前記体動信号に応じて前記数値範囲を可変設定し、
    前記体動信号に基づき、前記生体の動き状態を、前記動きの無い状態を含む第1動き状態又は前記第1動き状態よりも前記動きの大きい第2動き状態に分類判定し、
    今回の心拍数を導出する際において前記動き状態が前記第2動き状態であると判定されたとき、前記数値範囲の中心を、前回導出した心拍数よりも大きくし、
    前記動き状態が前記第2動き状態から前記第1動き状態に切り替わったとき、その切り替わり後の所定の期間において、前記数値範囲に依存せずに前記心拍数を導出する
    ことを特徴とする心拍数検出装置。
  2. 今回の心拍数を導出する際において前記動き状態が前記第1動き状態であると判定されたとき、前記演算部は、前回導出した心拍数を前記数値範囲の中心に設定する、
    ことを特徴とする請求項に記載の心拍数検出装置。
  3. 前記演算部は、前記体動信号のパワースペクトルにおける複数のパワースペクトル密度の総和に基づき、前記生体の動き状態に対する前記分類判定を行う、
    ことを特徴とする請求項1または請求項に記載の心拍数検出装置。
  4. 前記演算部は、前記総和が所定値以上であるとき、前記動き状態が前記第2動き状態に属すると判定する一方、前記総和が前記所定値未満であるとき、前記動き状態が前記第1動き状態に属すると判定する、
    ことを特徴とする請求項に記載の心拍数検出装置。
  5. 前記演算部は、今回の心拍数を導出するための脈波信号に基づくパワースペクトルにおいて、前記数値範囲に対応する帯域内でパワースペクトル密度が最大となる周波数を同定することにより、今回の心拍数を導出する、
    ことを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の心拍数検出装置。
  6. 前記演算部は、今回の心拍数を導出する際、
    前記体動信号のパワースペクトルにおいて、パワースペクトル密度が所定の閾値以上となっている帯域を含む減衰対象帯域を設定し、
    前記脈波信号取得部にて取得された脈波信号のパワースペクトルにおいて、前記減衰対象帯域内のパワースペクトル密度を減衰させることで補正パワースペクトルを導出し、
    前記補正パワースペクトルにおいて、前記数値範囲に対応する帯域内でパワースペクトル密度が最大となる周波数を同定することにより、今回の心拍数を導出する、
    ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の心拍数検出装置。
  7. 前記演算部は、時間領域上の信号として取得された前記脈波信号及び前記体動信号の夫々を周波数領域上の信号に変換する時間/周波数変換処理を介して前記心拍数を導出し、前記時間/周波数変換処理における周波数分解能を、前記脈波信号及び前記体動信号間で同じにする、
    ことを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の心拍数検出装置。
  8. 前記脈波信号取得部は、前記生体に光を照射する発光部及び前記発光部からの光に基づき前記生体を透過又は反射した光を受光する受光部を有し、前記受光部の受光結果に基づき前記脈波信号を取得する
    ことを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の心拍数検出装置。
  9. 前記受光部は、前記生体を透過又は反射した光を各々に受光する複数の受光素子を有し、
    前記発光部は、前記複数の受光素子の間に配置される
    ことを特徴とする請求項に記載の心拍数検出装置。
  10. 前記心拍数の導出対象となる解析周波数帯域は、0.6Hz〜4.0Hzに限定されていることを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の心拍数検出装置。
  11. 前記脈波信号取得部は、前記生体の手首に装着されるものであり、前記体動信号によって示される前記生体の動きは、前記生体の前腕の長手方向の動きを含むことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の心拍数検出装置。
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