JP6295876B2 - 銅粉末の製造方法 - Google Patents
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Description
また、スルーホールやビア埋め用のペーストとしても、低価格でメッキ付きの良いペーストとして銅ペーストが利用され(特許文献1参照)、さらには太陽電池やタッチパネル向けの配線用として銅ペーストが用いられている(特許文献2参照)。
また特許文献6では、銅微粒子を単結晶とし耐酸化を付与する方法が試みられているが、この方法では耐酸化効果が得られても生産性が低い。
また、得られた銅粉末は、25℃で2000時間放置しても酸化が進まないことから、MLCCやチップ抵抗器の外部電極、電磁波シールド、スルーホールやビア埋め用のプリント基板、太陽電池・タッチパネルなどの配線材料の電子素子の原料として有用である。
本発明により銅粉末を製造するには、特定量の銅化合物をポリオール中に懸濁させ、160〜320℃に加熱して銅粉末を得る工程(A)において、銅化合物とポリオールを特定量比で供給し、次に、得られた銅粉末を純水で洗浄後、アルコールを供給して脱水洗浄する洗浄工程(B)で、純水と洗浄用アルコールの量を特定することで、酸化し難い銅粉末が得られるようにしている。
本発明では、まず下記の銅化合物(a)をポリオール(b)と混合し、160〜320℃に加熱して銅化合物を還元し銅粉末を得る。
本発明において、銅粉末の原料として銅化合物を使用する。銅化合物としては、加熱されたポリオール中で、銅化合物は還元され、最終的に銅粉末として堆積されるものであれば特に限定されない。
ポリオールは、銅化合物の還元機能を有する多価アルコールである。2〜6個のOH基を有するものが好ましく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ポリエチレングリコール、フェニルジグリコールなどが挙げられる。中でもトリエチレングリコールやテトラエチレングリコールが好ましい。これらは複数種を混合しても構わないし、本発明の目的を損なわなければ、水や他の溶剤を添加しても差し支えない。
好ましい加熱温度は、180℃以上310℃以下であり、より好ましくは、190℃以上300℃以下で、かつポリオールの沸点以下である。加熱温度が160℃未満の場合、還元反応が十分に進まず得られる銅粉末の酸素濃度が大幅に上昇するとともに、生産性も悪化する。一方、320℃を超えるとポリオールの分解揮発による減少が著しくなり、十分に還元できなくなる恐れがある。そのため、加熱温度を選択したポリオールの沸点より高く設定した場合は、上限の加熱温度を沸点よりも低くすることが望ましい。
工程(A)で得られた銅粉末は、次の洗浄工程(B)で、純水洗浄後、アルコールを供給して脱水洗浄する。従来、銅粉末の洗浄は、純水のみ、あるいはアルコールのみを用いて行われていた。しかし、純水洗浄のみの場合、乾燥後の銅粉末の酸素濃度が高く、また、経時変化で酸素濃度がさらに高くなってしまう。また、アルコール洗浄のみの場合、コストが上がり好ましくない。
純水は不純物のイオン量で示されるが、不特定のイオンを化学分析で定量することは実際的でなく導電率で管理する。導電率が1.0μS/cm以下を純水といい、これを洗浄に用いるのが好ましい。また導電率が0.1μS/cm未満である超純水洗浄に用いるのがより好ましい。洗浄温度は特に限定されないが、5〜50℃が好ましく、10〜40℃がより好ましい。純水による洗浄温度が50℃を超えると銅粉末が酸化してしまう恐れがあり、5℃未満では洗浄速度が遅く生産性が低下してしまう恐れがある。本発明の趣旨を逸脱しない範囲内であれば、超純水や水道水や工業用水などを使用しても構わない。
一価アルコールとしては、1個のOH基を有する含酸素有機化合物であり、炭素数や分岐、二重結合の有無などによって制限されるものではない。
一般的には、還元後、作製した銅粉末を沈降させ上澄みを回収した後、残留物に純水を供給し撹拌洗浄する。その後、再び銅粉末を沈降させ上澄みを回収し、残留物に一価アルコールを供給し撹拌脱水洗浄する。または、純水で撹拌洗浄後、銅粉末を沈降させ上澄みを回収してから遠心分離機にて脱水し、その後、遠心分離機で脱水しながら一価アルコールを添加することで銅粉末の水分を早く乾燥させることができる。
純水で撹拌洗浄し、銅粉末を沈降させて上澄み液を回収後に一価アルコールを供給するが、撹拌洗浄する純水の重量と純水洗浄後の一価アルコール供給量の総重量比は、95:5〜20:80の範囲内とする。純水と一価アルコールの供給量は、総重量比で90:10〜30:70が好ましく、85:15〜40:60がより好ましい。供給する一価アルコールの重量比が5未満では、乾燥性を十分に上昇させることができず、乾燥後の銅粉末の酸素濃度が高いまたは経時変化で酸素濃度が高くなってしまう恐れがある。供給する一価アルコールの重量比が80を超えると、製造コストが高くなるのみで実用性がない。
上記により得られる銅粉末は、平均粒径が0.1〜20μmで、微細な略球状の粉末である。平均粒径は、0.1〜15μmが好ましく、0.1〜10μmがより好ましい。また、連結粒子の長径が平均粒径の4倍以下であるために、溶剤や樹脂等からなるビヒクルに対して分散性が高い。
25℃で2000時間、大気放置前後の酸素濃度の差が1質量%以下である銅粉末は、積層セラミックスコンデンサまたはチップ抵抗器、スルーホールやビア埋め用のプリント基板、電磁波シールド、太陽電池、タッチパネルなどの電子素子の原料粉末として有用である。
本発明により得られる銅粉末は、溶剤や樹脂等からなるビヒクルと混合、混練させて銅ペーストとする。銅粉末以外に銅ペーストに混合される成分としては、用途に応じて、エポキシ化合物やセルロース、アクリル化合物などの有機樹脂、分散剤、硬化剤や硬化促進剤などの添加剤、有機溶剤、Ag、Au、AlやNiなどの金属粉、シリカ、アルミナなど金属酸化物粉などを適宜選択することができる。
・酸化銅A:酸化第二銅(含水率5質量%、住友金属鉱山株式会社製)
・酸化銅B:酸化第二銅(含水率25質量%、住友金属鉱山株式会社製)
・水酸化銅A:水酸化銅(和光純薬工業株式会社製)
・炭酸銅A:炭酸銅(和光純薬工業株式会社製)
・シュウ酸銅A:シュウ酸銅(和光純薬工業株式会社製)
・ポリオールA:トリエチレングリコール(関東化学株式会社製、沸点:287℃)
・ポリオールB:テトラエチレングリコール(関東化学株式会社製、沸点:327℃)
・純水:(導電率1.0μS/cm)
・アルコールA:エタノール(関東化学株式会社)
・アルコールB:1−オクタノール(関東化学株式会社)
・硫酸A:3質量%硫酸水溶液(関東化学株式会社製を純水で希釈)
得られた銅粉末は大きさと形状を走査型電子顕微鏡(以下、SEM)で観察し、平均粒径は画像解析した粒径測定値の平均値を示す。
得られた銅粉末の酸素濃度(質量%)を作製直後と、25℃で2000時間大気雰囲気下で放置した後に不活性ガスインパルス加熱融解赤外吸収法(型式:TC−436AR,LECO社製)でそれぞれ測定した。酸素濃度上昇は、後者から前者の酸素濃度を差し引いた値である。
得られた銅粉末をSEMで10000倍の視野で撮影し画像解析した結果、連結粒子の長径が平均粒径の4倍を超えるものがある場合を不可(×)とし、すべてが4倍未満である場合を良(○)とした。なお表には連結粒子の長径/平均粒径の最大値を記載している。
所定量の銅粉末を得るまでに要する時間を測定し、従来と比べ同等である場合を不可(×)、時間が短縮された場合を可(△)とし、時間が著しく短縮された場合を良(○)とした。
所定量の銅粉末を得るまでに要するコストを試算し、従来法のアルコール洗浄の場合と比べ、同等であれば可(△)、著しく高くなる場合を不可(×)とし、低下した場合を良(○)とした。
上記の5項目において、平均粒径が0.1〜20μm、酸素濃度上昇が1%以下、連結粒子の長径が平均粒径の4倍以下、生産性、コストメリットの各条件を全て満たすか可が一つあるものを良(○)とし、1つでも満たさないものがある場合は不可(×)とした。
酸化銅A(含水率が5質量%の酸化第二銅)を原料とし、表1の条件で原料を溶媒中に供給し、所定の設定温度にして加熱し、1時間撹拌した。その後、還元後の銅粉末を沈降させ上澄みを回収した後、残留品に純水を供給し25℃で撹拌洗浄(純水洗浄)し、再び銅粉末を沈降させ上澄みを回収後に、遠心分離機(2300rpm)で遠心脱水しながら、表1の条件で一価アルコールを供給し脱水洗浄(アルコール洗浄)した。
作製した銅粉末は、平均粒径をSEM観察後、画像解析した。形状は略球形であった。酸素濃度を不活性ガスインパルス加熱融解赤外吸収法(型式:TC−436AR,LECO社製)で分析した。これらの結果は表1に併記した。
表1に記載したように酸化銅とポリオールの比を変えた以外は実施例1と同様にして銅粉末を作製した。作製した銅粉末の平均粒径をSEMの観察後、画像解析した。形状は略球形であった。酸素濃度を不活性ガスインパルス加熱融解赤外吸収法(型式:TC−436AR,LECO社製)で分析した。これらの結果は表1に併記した。
表1に記載したように原料の銅化合物の種類を変えるか、ポリオールの種類を変えた以外は実施例1と同様にして銅粉末を作製した。作製した銅粉末の平均粒径をSEMの観察後、画像解析した。形状は略球形であった。酸素濃度を不活性ガスインパルス加熱融解赤外吸収法(型式:TC−436AR,LECO社製)で分析した。これらの結果は表1に併記した。
表1に記載したように反応温度を変えた以外は実施例1と同様にして銅粉末を作製した。作製した銅粉末の平均粒径をSEMの観察後、画像解析した。形状は略球形であった。酸素濃度を不活性ガスインパルス加熱融解赤外吸収法(型式:TC−436AR,LECO社製)で分析した。これらの結果は表1に併記した。
表1に記載したように洗浄用の純水とアルコールの比を変えるか、アルコールの種類を変えた以外は実施例1と同様にして銅粉末を作製した。作製した銅粉末の平均粒径をSEMの観察後、画像解析した。形状は略球形であった。酸素濃度を不活性ガスインパルス加熱融解赤外吸収法(型式:TC−436AR,LECO社製)で分析した。これらの結果は表1に併記した。
表2に記載したように酸化銅Aとポリオールの比を変えた以外は実施例1と同様にして銅粉末を作製した。作製した銅粉末の平均粒径をSEMの観察後、画像解析した。形状は略球形であったが、比較例2の銅粉末は連結粒子の長径が大きかった。酸素濃度を不活性ガスインパルス加熱融解赤外吸収法(型式:TC−436AR,LECO社製)で分析した。これらの結果は表2に併記した。
表2に記載したように反応温度を変えた以外は実施例1と同様にして銅粉末を作製した。作製した銅粉末の平均粒径をSEMの観察後、画像解析した。形状は略球形であったが、平均粒径は10μmを超えていた。酸素濃度を不活性ガスインパルス加熱融解赤外吸収法(型式:TC−436AR,LECO社製)で分析した。これらの結果は表2に併記した。
表2に記載したように洗浄時に純水とアルコールの比を変えた以外は実施例1と同様にして銅粉末を作製した。作製した銅粉末の平均粒径をSEMの観察後、画像解析し、酸素濃度を不活性ガスインパルス加熱融解赤外吸収法(型式:TC−436AR,LECO社製)で分析した。これらの結果は表2に併記した。
表2に記載したようにアルコール洗浄を行わず、還元後の銅粉末を沈降させ上澄みを回収後に純水を供給して撹拌洗浄を行った以外は実施例1と同様にして銅粉末を作製した。作製した銅粉末の平均粒径をSEMの観察後、画像解析し、酸素濃度を不活性ガスインパルス加熱融解赤外吸収法(型式:TC−436AR,LECO社製)で分析した。これらの結果は表2に併記した。
表2に記載したように純水洗浄を行わず、還元後の銅粉末を沈降させ上澄みを回収した後、遠心分離機にて脱水(脱溶媒)しながら、アルコールAを供給して脱水(脱溶媒)洗浄した以外は実施例1と同様にして銅粉末を作製した。作製した銅粉末の平均粒径をSEMの観察後、画像解析し、酸素濃度を不活性ガスインパルス加熱融解赤外吸収法(型式:TC−436AR,LECO社製)で分析した。これらの結果は表2に併記した。
表2に記載したように還元後の銅粉末を沈降させ上澄みを回収した後、残留品に純水を供給して撹拌洗浄を行った後に再度銅粉末を沈降させ上澄みを回収した後、遠心分離機にて脱水しながら、5質量%の硫酸水溶液を供給して脱水洗浄した以外は実施例1と同様にして銅粉末を作製した。作製した銅粉末の平均粒径をSEMの観察後、画像解析し、酸素濃度を不活性ガスインパルス加熱融解赤外吸収法(型式:TC−436AR,LECO社製)で分析した。これらの結果は表2に併記した。
参考例1は三井金属工業株式会社製の電解銅粉(品名:ECY)を使用し、参考例2は三井金属工業株式会社製の湿式銅粉(品名:1100Y)を用い、参考例3は三井金属工業株式会社製のアトマイズ銅粉(品名:MA−C025K)で、それらの平均粒径をSEMの観察後、画像解析し、酸素濃度を不活性ガスインパルス加熱融解赤外吸収法(型式:TC−436AR,LECO社製)で分析した。これらは前記原料、ポリオールを用いず、洗浄もおこなっていない。結果は表2に併記した。
表1から明らかなように、実施例1〜13の銅粉末は、銅化合物とポリオールの比および反応温度を所定の範囲とし、適切な洗浄を行っているので、作製した銅粉末の粒径、酸素濃度上昇、生産性、コストメリットが優れていることがわかる。なお、実施例3、10は酸素濃度上昇がやや高く、実施例13はコストメリットがやや小さいが、いずれも実用上問題のないレベルである。
比較例6は、アルコール洗浄を行っていないため、酸素濃度上昇が高くなり不可となった。比較例7は、純水洗浄を行わず全てアルコール洗浄としたため、工業的に不利になりコストメリットがなく不可となった。比較例8は、硫酸洗浄としたため酸素濃度上昇が高くなり不可となった。
また、参考例1〜3は、原材料として、銅化合物とポリオールを用いず、他の製法による銅粉末を用いており、いずれも25℃で2000時間大気保存後の酸素濃度上昇が高くなり不可となった。
Claims (9)
- 銅化合物をポリオール中に懸濁させ、160〜320℃に加熱して銅化合物を還元し銅粉末を得る工程(A)と、得られた銅粉末を純水で洗浄した後、一価アルコールを供給して脱水洗浄する工程(B)を備えた銅粉末の製造方法であって、
工程(A)では、銅化合物とポリオールを5:95〜60:40の重量比で混合し、工程(B)では、純水と一価アルコールを総重量比で95:5〜20:80となるように用いて、銅粉末を洗浄して、25℃で2000時間大気雰囲気下にて保存したとき、その酸素濃度の増加量が、保存前に対して1質量%以下の銅粉末を得ることを特徴とする銅粉末の製造方法。 - 前記一価アルコールは、炭素数が1〜5の含酸素炭化水素化合物であることを特徴とする請求項1に記載の銅粉末の製造方法。
- 前記工程(B)において、純水で撹拌洗浄後、銅粉末を沈降させ上澄み液を回収し、沈降した銅粉末に一価アルコールを供給することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の銅粉末の製造方法。
- 銅粉末を沈降させ上澄み液を回収する際、遠心分離機で脱水しながら一価アルコールを供給することを特徴とする請求項3に記載の銅粉末の製造方法。
- 前記銅化合物は、含水率が25質量%以下の含水物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の銅粉末の製造方法。
- 前記ポリオールは、2〜6個のOH基を有する多価アルコールであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の銅粉末の製造方法。
- 銅粉末は、25℃で2000時間大気雰囲気下にて保存したとき、その酸素濃度の増加量が、保存前に対して0.5質量%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の銅粉末の製造方法。
- 銅粉末は、平均粒径が0.1〜20μmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の銅粉末の製造方法。
- 銅粉末は、連結粒子の長径が平均粒径の4倍以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の銅粉末の製造方法。
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