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JP6285637B2 - 反射偏光フィルム積層体、それからなる液晶ディスプレイ用光学部材および液晶ディスプレイ - Google Patents

反射偏光フィルム積層体、それからなる液晶ディスプレイ用光学部材および液晶ディスプレイ Download PDF

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Description

本発明は、液晶ディスプレイの輝度向上効果を有する反射偏光フィルム積層体、それからなる液晶ディスプレイ用光学部材および液晶ディスプレイに関する。
テレビ、パソコン、携帯電話等に用いられる液晶表示装置(LCD)は、液晶セルの両面に偏光板を配置した液晶パネルによって光源から射出される光の透過量を調整することにより、その表示を可能としている。液晶セルに貼り合わされる偏光板として一般的に光吸収タイプの2色性直線偏光板と呼ばれる吸収型偏光板が用いられており、ヨウ素を含むPVAをトリアセチルセルロース(TAC)で保護した偏光板が広く用いられている。
このような吸収型の偏光板は、透過軸方向の偏光光を透過し、透過軸と直交方向の偏光の殆どを吸収するため、光源装置から出射された無偏光光の約50%がこの吸収型偏光板で吸収され、光の利用効率が低下することが指摘されている。そこで、透過軸と直交方向の偏光を有効利用するために、輝度向上フィルムと呼ばれる反射型の偏光子を光源と液晶パネルの間に用いる構成が検討されており、かかる反射型の偏光子の一例として光学干渉を用いたポリマータイプのフィルムが検討されている(特許文献1など)。
一方、液晶セルに貼りあわされる偏光板についても、外光を利用した反射表示やバックライトを利用した透過表示など、表示装置に利用する光の種類や目的などに応じて、吸収型偏光板と反射型偏光板とを組み合わせた種々の積層構成が検討されるようになっており、反射型偏光板の一例として複屈折性の誘電体多層膜を用いることが検討されている。
しかしながら、従来検討されているような複屈折性の多層構造を用いた反射偏光性ポリマーフィルム(例えば特許文献2〜4)は、P偏光を反射してS偏光を透過する機能を有するものの、その偏光度は2色性直線偏光板と同等のレベルには至っていない。かかる従来の反射偏光性ポリマーフィルムの一例として、例えば、特許文献3などに記載されている反射偏光性ポリマーフィルムは、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(以下、2,6−PENと称することがある)を高屈折率層に用い、熱可塑性エラストマーやテレフタル酸を30mol%共重合したPENを低屈折率層に用い、延伸により延伸方向(X方向)の層間の屈折率差を大きくしてP偏光の反射率を高め、一方フィルム面内方向におけるX方向と直交する方向(Y方向)の層間の屈折率差を小さくしてS偏光の透過率を高めることで、一定レベルの偏光性能を発現させている。
出願人は、液晶セルに隣接する偏光板として使用でき、吸収型偏光板を代替可能な、多層構造のポリマーフィルムからなる反射型偏光板を検討し、特許文献5において、ある特定のポリマーを高屈折率層として多層積層させて1軸配向させることにより、従来の多層構造の反射型偏光板よりも偏光性能が高い反射偏光フィルムが得られることを提案している。
また、液晶ディスプレイ内において、導光板、拡散フィルム、プリズムシートなど各種の光学部材を積層させて輝度斑や視野角などの機能改善が行われているが、種々の光学部材を積層させるため、1つの光学部材を多機能化させ、使用する部材数を減らす試みがなされている。
その一例として、例えば特許文献6において、拡散性を有するボイド含有光学フィルムを反射偏光子層に隣接させることにより、表示画像の明るさやコントラストなどを改善したり、システムの耐久性を改善したり、使用される部材数を減らせることが提案されている。
一方で液晶ディスプレイに対し、さらに高輝度化、大型画面での輝度均一性、使用部材数の低減、使用される光学部材に対するより一層の薄肉化が求められているのが現状である。
特表平9−507308号公報 特開平4−268505号公報 特表平9−506837号公報 国際公開第01/47711号パンフレット 特開2012−13919号公報 特表2012−524303号公報
本発明の目的は、液晶ディスプレイに用いられる光学部材を多機能化させることにより、液晶表示装置に用いられる各種の光学フィルムを削減でき、しかも高輝度化および輝度の均一性も高めることができる反射偏光フィルム積層体、それからなる液晶ディスプレイ用光学部材および液晶ディスプレイを提供することにある。
本発明者等は、従来の吸収型偏光板に匹敵しうる高偏光度を有する多層構成の反射偏光フィルムの片面に、高い拡散性能と輝度向上性能を両立できる特定構造の微多孔膜を配置することにより、液晶表示装置に用いられる各種の光学フィルムを削減でき、しかも高輝度化および輝度の均一性も高めることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の目的は、第1層と第2層とが交互に積層された1軸延伸多層積層フィルムからなる反射偏光フィルムの片面に微多孔膜が配置された反射偏光フィルム積層体であって、
該1軸延伸多層積層フィルムからなる反射偏光フィルムは下記式(1)で表される偏光度(P)が99.0%以上であり、
偏光度(P)={(Ts−Tp)/(Tp+Ts)}×100 ・・・(1)
(式(1)中、Tpは400〜800nmの波長範囲におけるP偏光の平均透過率、Tsは400〜800nmの波長範囲におけるS偏光の平均透過率をそれぞれ表す)
該微多孔膜の空孔率が50%以上90%以下および膜厚みが1μm以上15μm以下であり、該微多孔膜を形成するボイドの平均孔径が0.1μm以上0.5μm以下かつ下記式(2)で表される孔形状因子fが1.5以上10.0以下である
孔形状因子f=L /L ・・・(2)
(式(2)中、L は孔の長径、L は孔の短径であり、孔形状因子fは、微多孔膜の機械軸方向に平行な断面での孔形状因子と機械軸方向に垂直な断面での孔形状因子との小さい方である)
反射偏光フィルム積層体によって達成される。
本発明によれば、高偏光度の反射偏光フィルムを用いることにより、従来の輝度向上部材と液晶セルに隣接される偏光板との機能を一体化させることができ、さらに反射偏光フィルムの片面に高い拡散性能と輝度向上性能を両立できる特定構造の微多孔膜を配置することにより、従来用いられていた拡散フィルムおよびプリズムシートの機能を一体化させることができ、液晶表示装置に用いられる各種の光学部材を削減しつつ高輝度化および輝度の均一性も高めることができる。
2,6−PENの1軸延伸後の延伸方向(X方向)、延伸方向と直交する方向(Y方向)、厚み方向(Z方向)の屈折率(それぞれn、n、nと示す)を図1に示す。 本発明における第1層用芳香族ポリエステル(I)の1軸延伸後の延伸方向(X方向)、延伸方向と直交する方向(Y方向)、厚み方向(Z方向)の屈折率(それぞれn、n、nと示す)を図2に示す。 本発明の1軸延伸多層積層フィルムのフィルム面を反射面とし、延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分(P偏光成分)、および延伸方向(X方向)を含む入射面に対して垂直な偏光成分(S偏光成分)の波長に対する反射率のグラフの一例である。 本発明の好ましい実施形態による液晶表示装置の概略断面図である。光源はバックライトである。 本発明の好ましい実施形態による液晶表示装置の概略断面図である。光源はエッジライトである。 従来の液晶表示装置の概略断面図である。光源はバックライトである。 従来の液晶表示装置の概略断面図である。光源はエッジライトである。
本発明の反射偏光フィルム積層体は第1層と第2層とが交互に積層された1軸延伸多層積層フィルムからなる反射偏光フィルムの片面に微多孔膜が配置され、該1軸延伸多層積層フィルムからなる反射偏光フィルムは下記式(1)で表される偏光度(P)が99.0%以上であり、
偏光度(P)={(Ts−Tp)/(Tp+Ts)}×100 ・・・(1)
(式(1)中、Tpは400〜800nmの波長範囲におけるP偏光の平均透過率、Tsは400〜800nmの波長範囲におけるS偏光の平均透過率をそれぞれ表す)
該微多孔膜の空孔率が50%以上90%以下および膜厚みが1μm以上15μm以下であり、該微多孔膜を形成するボイドの平均孔径が0.1μm以上0.5μm以下かつ孔形状因子fが1.5以上10.0以下であることを特徴としており、以下にそれぞれの構成について説明する。
[微多孔膜]
本発明の反射偏光フィルム積層体を構成する微多孔膜は、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となった膜をいう。
本発明における微多孔膜は、空孔率が50%以上90%以下であり、かつ膜厚みが1μm以上15μm以下であることを要する。
微多孔膜の空孔率の下限は55%以上であることが好ましく、さらに好ましくは60%以上、特に好ましくは70%である。微多孔膜の空孔率がかかる範囲にあることにより、光を効率的に拡散させることができる。微多孔膜の空孔率が下限に満たないと拡散性能が十分でなく、光の出射において斑が生じる。一方、微多孔膜の空孔率が上限より大きいと機械的な特性が著しく低下するため、微多孔膜の製造が難しくなる。
また微多孔膜の膜厚みの下限は2μmが好ましく、さらに好ましくは3μmである。膜厚みが下限に満たないと機械的な特性が著しく低下するため、微多孔膜の製造が難しくなる。一方、微多孔膜の膜厚みの上限は13μmが好ましく、さらに10μmが好ましい。微多孔膜の膜厚みが上限を超えると、微多孔膜中での光の多重散乱による損失により、反射偏光フィルムによる光リサイクルの効果が低下する。
また、本発明の微多孔膜を形成するボイドの平均孔径は0.1μm以上0.5μm以下であり、かつ孔形状因子fは1.5以上10.0以下であることを要する。
該微多孔膜を形成するボイドの平均粒径が下限に満たないと拡散性能が不十分となり、光の出射において斑が生じる。一方、該微多孔膜の平均粒径が上限より大きいと十分な拡散性能が得られない。該微多孔膜の平均粒径は0.1μm以上0.4μm以下の範囲が好ましく、さらに0.1μm以上0.3μm以下の範囲がより好ましい。
また、本発明の微多孔膜を形成するボイドの孔形状因子fは1.5〜5.0であることが好ましい。該微多孔膜を形成するボイドの孔形状因子fがかかる範囲であることにより、該微多孔膜内に扁平状のボイドが存在し、斜めより入射してきた光を選択的に散乱することができ、反射偏光板の光リサイクルによって正面輝度の向上に寄与でき、輝度斑を解消し、輝度の均一性を高めることができる。一方で、ボイドの孔形状因子fが上限を超えると機械的な特性が著しく低下するため、微多孔膜の製造が難しくなる。
本発明における孔形状因子fは、フィルムの断面方向から観察したときの孔部の形状の平均的な偏平度合いを表すもので、これはフィルム断面の走査型電子顕微鏡像を画像処理することによって得られ、測定方法欄で説明する方法により孔の長径と短径を計測し、その単純平均値L1、L2を求め、これらの比L1/L2で表される。かかる測定をフィルムの機械軸方向に平行な断面及び機械軸方向に垂直な断面の両方について行い、孔形状因子の小さい方を採用する。
本発明における微多孔膜を形成するポリマーとして、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステルなどが例示される。ポリオレフィンとして、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン及びその共重合体が挙げられ、中でもポリエチレンが好ましく、より好ましくは高密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンと超高分子量ポリエチレンの混合物が、強度、耐熱性等の観点から好ましい。またポリエステルとしてポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸などが挙げられる。これらのポリマー成分は微多孔膜を構成する材の重量を基準として90重量%以上であることが好ましい。
これらのポリマー成分の中でも特にボイドの形成しやすさや形状の制御をしやすい点より、ポリオレフィンが好ましい。
また、本発明における微多孔膜は二軸延伸微多孔膜であることが好ましい。微多孔膜を二軸延伸することにより、上述のボイドの孔形状因子を効率的に形成させることができる。
また本発明における微多孔膜は使用環境での寸法安定性に優れることが好ましく、105℃における熱収縮率は機械軸方向および機械軸方向に垂直な方向とも5〜40%以下であることが好ましい。微多孔膜の熱収縮率がこの範囲にあることにより、反射偏光フィルムと積層した場合にカールの発生を抑制することができる。
[微多孔膜の製造法]
本発明における微多孔膜の製造法は特に制限は無いが、一例としてポリオレフィン微多孔膜を例に挙げて、微多孔膜の製造方法例を説明する。他のポリマーの場合はポリマーを溶解できる溶剤を選択し、溶液濃度、製膜条件を変更する以外はポリオレフィンと同様の方法で製造することができる。
ポリオレフィン微多孔膜の製造例として、下記(1)〜(6)の工程を経て製造する方法が挙げられる。微多孔膜の空孔率、微多孔膜を形成するボイドの平均粒径、および微多孔膜を形成するボイドの孔形状因子fは、主に微多孔膜製造の際の溶液濃度および微多孔膜の延伸倍率を調整することにより達成される。
(1)ポリオレフィン溶液の調整
ポリオレフィンを溶剤に溶解させた溶液を調整する。この時、溶剤を混合して溶液を作成しても構わない。溶剤としては、例えばパラフィン、流動パラフィン、パラフィン油、鉱油、ひまし油、テトラリン、エチレングリコール、グリセリン、デカリン、トルエン、キシレン、ジエチルトリアミン、エチルジアミン、ジメチルスルホキシド、ヘキサン等が挙げられる。ポリオレフィン溶液の濃度は1〜35重量%が好ましく、より好ましくは10〜30重量%である。ポリオレフィン溶液の濃度が1重量%未満では、冷却ゲル化して得られるゲル状成形物が溶媒で高度に膨潤されるため変形し易く、取扱いに支障をきたす場合がある。一方、35重量%を超えると押出の際の圧力が高くなるため吐出量が低くなり生産性が上げられない場合があり、また押出工程での配向が進み、延伸性や均一性が確保できなくなる場合がある。
(2)ポリオレフィン溶液の押出
調整した溶液を一軸押出機、もしくは二軸押出機で混練し、融点以上かつ融点+60℃以下の温度でTダイもしくはIダイで押し出す。好ましくは二軸押出機を用いる。そして、押し出した溶液をチルロールまたは冷却浴に通過させて、ゲル状組成物を形成する。この際、ゲル化温度以下に急冷しゲル化することが好ましい。
(3)脱溶媒処理
次いで、ゲル状組成物から溶媒を除去する。揮発性溶剤を使用する場合、予熱工程も兼ねて加熱等により蒸発させゲル状組成物から溶媒を除くこともできる。また不揮発性溶媒の場合は圧力をかけて絞り出すなどして溶媒を除くことができる。なお溶媒は完全に除く必要はない。
(4)ゲル状組成物の延伸
脱溶媒処理に次いで、ゲル状組成物を延伸する。ここで、延伸処理の前に弛緩処理を行っても良い。延伸処理は、ゲル状成形物を加熱し、通常のテンター法、ロール法、圧延法もしくはこれらの方法の組合せによって所定の倍率で2軸延伸する。2軸延伸は、同時または逐次のどちらであってもよい。また縦多段延伸や3、4段延伸とすることもできる。
延伸温度は、90℃〜ポリオレフィンの融点未満であることが好ましく、さらに好ましくは100〜120℃である。加熱温度が融点を越える場合は、ゲル状成形物が溶解するために延伸できない。又、加熱温度が90℃未満の場合は、ゲル状成形物の軟化が不十分で延伸において破膜し易く高倍率の延伸が困難となる場合がある。
また、延伸倍率は、原反の厚さによって異なるが、1軸方向で少なくとも2倍以上、好ましくは4〜20倍で行うことが好ましい。特に延伸倍率が機械軸方向に4〜10倍、また機械軸に垂直な方向に6〜15倍であることが好ましい。
延伸後、必要に応じて熱固定を行い、熱寸法安定性を持たせることができる。
(5)溶剤の抽出・除去
延伸後のゲル状組成物を抽出溶剤に浸漬して、溶媒を抽出する。抽出溶剤としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、デカリン、テトラリンなどの炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素、メチレンクロライドなどの塩素化炭化水素、三フッ化エタンなどのフッ化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類など易揮発性のものを用いることができる。これらの溶剤はポリオレフィン組成物の溶解に用いた溶媒に応じて適宜選択し、単独もしくは混合して用いることができる。溶媒の抽出は、微多孔膜中の溶媒を1重量%未満に迄除去する。
(6)微多孔膜のアニール
微多孔膜をアニールにより熱セットする。アニールは80〜150℃で実施することが好ましい。本発明においては、所定の熱収縮率を有するという観点から、アニール温度が115〜135℃であることが好ましい。
[1軸延伸多層積層フィルム]
(偏光度)
本発明の反射編酷フィルム積層体を構成する反射偏光フィルムは第1層と第2層とが交互に積層された1軸延伸多層積層フィルムからなる。該1軸延伸多層積層フィルムは下記式(1)で表される偏光度(P)が99.0%以上であり、好ましくは99.5%以上、さらに好ましくは99.7%以上、最も好ましくは99.9%以上である。
偏光度(P)={(Ts−Tp)/(Tp+Ts)}×100 ・・・(1)
(式(1)中、Tpは400〜800nmの波長範囲におけるP偏光の平均透過率、Tsは400〜800nmの波長範囲におけるS偏光の平均透過率をそれぞれ表す)
本発明におけるP偏光とは、1軸延伸多層積層フィルムからなる反射偏光フィルムにおいて、フィルム面を反射面とし、1軸延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分と定義される。また本発明におけるS偏光とは、1軸延伸多層積層フィルムからなる反射偏光フィルムにおいて、フィルム面を反射面とし、1軸延伸方向(X方向)を含む入射面に対して垂直な偏光成分と定義される。
また本発明における偏光度の測定は偏光度測定装置を用いて測定することができる。
上式(1)で特定される偏光度が高いほど、反射偏光成分の透過を抑制し、その直交方向の透過偏光成分の透過率が高いことを意味しており、偏光度が高いほど反射偏光成分のわずかな光漏れも低減できる。本発明の反射偏光フィルムの偏光度がかかる範囲であることにより、従来は吸収型偏光板でなければ適用が難しかったコントラストの高い液晶ディスプレイの偏光板として、反射偏光板単独で適用することができる。
多層構造の反射偏光フィルムでありながらかかる偏光度特性を達成するためには、1軸延伸多層積層フィルムを構成する高屈折率層(本発明において第1層と称し、第1層は第2層より屈折率の高い層を表す)および低屈折率層(本発明において第2層と称し、第2層は第1層より屈折率の低い層を表す)として後述する特定の熱可塑性樹脂をそれぞれ用いることが挙げられる。
(S偏光平均透過率)
本発明の反射偏光フィルムの400〜800nmの波長範囲におけるS偏光の平均透過率Tsは50%以上であることが好ましく、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、特に好ましくは80%以上である。
本発明におけるS偏光平均透過率は、1軸延伸多層積層フィルムからなる反射偏光フィルムにおいて、フィルム面を反射面とし、1軸延伸方向(X方向)を含む入射面に対して垂直な偏光成分について、入射角0度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均透過率を表している。
該S偏光平均透過率が下限に満たない場合は、反射型偏光板の特徴である、反射偏光を偏光板で吸収せずに光源側に反射させ、再度、光を有効活用する光リサイクル機能を考慮しても、吸収型偏光板と較べて輝度向上効果の優位性に乏しくなることがある。
本発明のS偏光成分の透過率特性を得るためには、本発明の1軸延伸多層積層フィルムのY方向における第1層および第2層の屈折率差が0.05以下であることが挙げられる。
[1軸延伸多層積層フィルム]
本発明における1軸延伸多層積層フィルムは、第1層と第2層とが交互に積層された多層構造を有する。以下、第1層、第2層の構成について説明する。
なお本発明の屈折率特性に関し、延伸方向(X方向)の屈折率はnX、延伸方向と直交する方向(Y方向)の屈折率はnY、フィルム厚み方向(Z方向)の屈折率はnZと記載することがある。
[第1層]
本発明の1軸延伸多層積層フィルムの第1層を構成するポリマーとして、特定構造の共重合成分をジカルボン酸成分に有するジカルボン酸成分とジオール成分とから得られるポリエステル(以下、芳香族ポリエステル(I)と称することがある)が挙げられる。かかるポリエステルは、以下に詳述するジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合によって得られる。
(ジカルボン酸成分)
本発明における芳香族ポリエステル(I)を構成するジカルボン酸成分(i)として、下記式(A)で表される成分、および下記式(B)で表される成分、の少なくとも2種の芳香族ジカルボン酸成分が用いられることが好ましい。また、下記式(A)で表される成分は5モル%以上50モル%以下の範囲、下記式(B)で表される成分は50モル%以上95モル%以下の範囲で用いられることが好ましい。ここで、各芳香族ジカルボン酸成分の含有量は、ジカルボン酸成分の全モル数を基準とする含有量である。
(式(A)中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基を表わす)
(式(B)中、Rはフェニレン基またはナフタレンジイル基を表わす)
式(A)で表される成分について、式中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基である。かかるアルキレン基として、エチレン基、トリメチレン基、イソプロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等が挙げられ、特にエチレン基が好ましい。
式(A)で表される成分の含有量の下限値は、より好ましくは7モル%、さらに好ましくは10モル%、特に好ましくは15モル%である。また、式(A)で表される成分の含有量の上限値は、より好ましくは45モル%、さらに好ましくは40モル%、特に好ましくは35モル%、最も好ましくは30モル%である。
従って、式(A)で表される成分の含有量は、好ましくは5モル%以上45モル%以下、より好ましくは7モル%以上40モル%以下、さらに好ましくは10モル%以上35モル%以下、特に好ましくは15モル%以上30モル%以下である。
式(A)で表される酸成分は、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸、6,6’−(トリメチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸および6,6’−(ブチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸から誘導される成分が好ましい。これらの中でも式(A)におけるRの炭素数が偶数のものが好ましく、特に6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸から誘導される成分が好ましい。
かかる芳香族ポリエステル(I)は、ジカルボン酸成分として式(A)で表される成分を特定量含有することを特徴としている。式(A)で示される成分の割合が下限値に満たない場合は、1軸延伸によるY方向の屈折率の低下が生じにくく、延伸フィルムにおけるY方向の屈折率nとZ方向の屈折率nの差異が大きくなりやすいため、偏光性能が低下し、また斜め方向の入射角で入射した偏光について色相ずれが生じやすい。また、式(A)で示される成分の割合が上限値を超える場合は、非晶性の特性が大きくなり、延伸フィルムにおけるX方向の屈折率nとY方向の屈折率nとの差異が小さくなるため、X方向における第1層と第2層との層間の屈折率差を大きくできず、P偏光成分について十分な反射性能が得られないことがある。
このように、式(A)で表される成分を含有するポリエステルを用いることで、反射偏光フィルムとしての偏光性能が従来より高い1軸延伸多層積層フィルムを製造することができ、さらに斜め方向の入射角による偏光の色相ずれを抑制することができる。
また、式(B)で表される成分について、式中、Rはフェニレン基またはナフタレンジイル基である。
式(B)で表される成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、またはこれらの組み合わせから誘導される成分、もしくはそれらの誘導体成分が挙げられ、特に2,6−ナフタレンジカルボン酸もしくはその誘導体成分が好ましく例示される。
式(B)で表される成分の含有量の下限値は、より好ましくは55モル%、さらに好ましくは60モル%、特に好ましくは65モル%、最も好ましくは70モル%である。また、式(B)で表される成分の含有量の上限値は、より好ましくは93モル%、さらに好ましくは90モル%、特に好ましくは85モル%である。
従って、式(B)で表される成分の含有量は、好ましくは55モル%以上95モル%以下、より好ましくは60モル%以上93モル%以下、さらに好ましくは65モル%以上90モル%以下、特に好ましくは70モル%以上85モル%以下である。
式(B)で示される成分の割合が下限値に満たない場合は、非晶性の特性が大きくなり、延伸フィルムにおけるX方向の屈折率nとY方向の屈折率nとの差異が小さくなるため、X方向における第1層と第2層との層間の屈折率差を大きくできず、P偏光成分について十分な反射性能が得られないことがある。また、式(B)で示される成分の割合が上限値を超える場合は、式(A)で示される成分の割合が相対的に少なくなるため、延伸フィルムにおけるY方向の屈折率nとZ方向の屈折率nの差異が大きくなり、偏光性能が低下し、また斜め方向の入射角で入射した偏光について色相ずれが生じやすくなる。
このように、式(B)で表される成分を含有するポリエステルを用いることで、X方向に高屈折率を示すと同時に1軸配向性の高い複屈折率特性を得ることができる。
(ジオール成分)
本発明の芳香族ポリエステル(I)を構成するジオール成分(ii)として、90モル%以上100モル%以下の下記式(C)で表されるジオール成分が用いられることが好ましい。ここで、ジオール成分の含有量は、ジオール成分の全モル数を基準とする含有量である。
(式(C)中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基を表わす)
式(C)で表されるジオール成分の含有量は、より好ましくは95モル%以上100モル%以下、さらに好ましくは98モル%以上100モル%以下である。
式(C)中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基であり、かかるアルキレン基として、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等が挙げられる。これらの中でも式(C)で表されるジオール成分として、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等が好ましく挙げられ、特に好ましくはエチレングリコールである。式(C)で示されるジオール成分の割合が下限値に満たない場合は、前述の1軸配向性が十分に発現しないことがある。
(芳香族ポリエステル(I))
芳香族ポリエステル(I)において、式(A)で表される酸成分と式(C)で表されるジオール成分で構成されるエステル単位(−(A)−(C)−)の含有量は、全繰り返し単位の5モル%以上50モル%以下であることが好ましく、より好ましくは5モル%以上45モル%以下、さらに好ましくは10モル%以上40モル%以下である。
芳香族ポリエステル(I)を構成する他のエステル単位として、エチレンテレフタレート、トリメチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレートなどのアルキレンテレフタレート単位、エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、トリメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ブチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどのアルキレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位が挙げられる。これらの中でも高屈折率性などの点からエチレンテレフタレート単位やエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位が好ましく、特にエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位が好ましい。
延伸によるX方向の高屈折率化には、芳香族環を有する式(A)で表される成分と式(B)で表される成分が主として影響する。また延伸によるY方向の屈折率低下については、式(A)で表される成分が主として影響し、2つの芳香環がアルキレン鎖を介してエーテル結合でつながっている分子構造であるため、1軸延伸したときにこれら芳香環が面方向でない方向に回転しやすくなり、第1層のY方向の屈折率低下に寄与する。
芳香族ポリエステル(I)として、特に、式(A)で表されるジカルボン酸成分が6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸から誘導される成分であり、式(B)で表されるジカルボン酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸から誘導される成分であり、ジオール成分がエチレングリコールであるポリエステルが好ましい。
芳香族ポリエステル(I)は、P−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比40/60)の混合溶媒を用いて35℃で測定した固有粘度が0.4〜3dl/gであることが好ましく、さらに好ましくは0.4〜1.5dl/g、特に好ましくは0.5〜1.2dl/gである。
芳香族ポリエステル(I)の融点は、好ましくは200〜260℃の範囲、より好ましくは205〜255℃の範囲、さらに好ましくは210〜250℃の範囲である。融点はDSCで測定して求めることができる。
該ポリエステルの融点が上限値を越えると、溶融押出して成形する際に流動性が劣り、吐出などが不均一化しやすくなることがある。一方、融点が下限値に満たないと、製膜性は優れるものの、ポリエステルの持つ機械的特性などが損なわれやすくなり、また本発明の偏光度に寄与する屈折率が発現し難い。
一般的に共重合体は単独重合体に比べて融点が低く、機械的強度が低下する傾向にある。しかし、本発明のポリエステルは、式(A)の成分および式(B)の成分を含有する共重合体であり、式(A)の成分のみを有する単独重合体に比べて融点が低いものの機械的強度は同程度であるという優れた特性を有する。
芳香族ポリエステル(I)のガラス転移温度(以下、Tgと称することがある。)は、好ましくは60〜120℃、より好ましくは80〜118℃、さらに好ましくは85〜118℃の範囲にある。Tgがこの範囲にあると、耐熱性および寸法安定性に優れたフィルムが得られる。かかる融点やガラス転移温度は、共重合成分の種類と共重合量、そして副生物であるジアルキレングリコールの制御などによって調整できる。
かかる芳香族ポリエステル(I)の製造方法は、例えば国際公開第2008/153188号パンフレットの第9頁に記載されている方法に準じて製造することができる。
(第1層用ポリエステルの屈折率特性)
本発明における第1層用のポリエステルは、平均屈折率が1.60以上1.70以下であることが好ましい。かかる屈折率特性を有するポリエステルを第1層に用い、さらに後述する第2層のポリエステルと組み合わせて多層積層フィルムにすることにより、これまでのポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(以下、PENと称することがある)を高屈折率層とする多層積層フィルムでは困難であった、従来の吸収型偏光板に匹敵する高い偏光性能が発現し、液晶セルに隣接する偏光板として好適に用いることができる。
本発明において、第1層についての平均屈折率とは、第1層を構成するポリエステルを単独で溶融させ、ダイより押出して未延伸フィルムを作成し、得られたフィルムのX方向、Y方向、Z方向それぞれの方向における屈折率について、メトリコン製プリズムカプラを用いて波長633nmで測定し、それらの平均値を平均屈折率として規定したものである。
また、延伸による各方向の屈折率変化については、次の方法により求めることができる。すなわち、第1層を構成するポリエステルを単独で溶融させてダイより押出し、未延伸フィルムを作成する。得られたフィルムのX方向、Y方向、Z方向それぞれの方向について、メトリコン製プリズムカプラを用いて波長633nmにおける屈折率を測定し、3方向の屈折率の平均値より平均屈折率を求め、延伸前の屈折率とする。
延伸後の屈折率については、第1層を構成するポリエステルを単独で溶融させてダイより押出し、1軸方向に120℃で5倍の延伸を施して1軸延伸フィルムを作成し、得られたフィルムのX方向、Y方向、Z方向それぞれの方向について、メトリコン製プリズムカプラを用いて波長633nmにおける屈折率を測定し、延伸後の各方向の屈折率とする。
かかる方法で得られた延伸前の屈折率と延伸後の各方向の屈折率とを比較し、延伸による屈折率変化の増減を確認することができる。
第1層に用いられるポリエステルの平均屈折率の下限値は、より好ましくは1.61、さらに好ましくは1.62である。また該ポリエステルの平均屈折率の上限値は、より好ましくは1.69、さらに好ましくは1.68である。第1層に用いられるポリエステルの平均屈折率がかかる範囲内にあることにより、延伸後の第2層との層間の各方向の屈折率差を所望の範囲にすることができる。一方、該ポリエステルの平均屈折率が下限値に満たない場合、第2層との屈折率差が近くなり、延伸後のX方向の屈折率差を十分に大きくすることができないことがある。また該ポリエステルの平均屈折率が上限値を超えると延伸後の第2層との屈折率差が大きくなり、延伸後のY方向、Z方向における層間の屈折率差を小さくし難いことがある。
第1層を構成するポリエステルのX方向における屈折率nXは、延伸により0.20以上増大することが好ましく、より好ましくは0.25以上、さらに好ましくは0.27以上である。該屈折率の変化がより大きい方がより偏光性能を高めることができるが、延伸倍率が高すぎるとフィルム破断が生じる関係で、上限値は0.35に制限され、さらには0.30である。
第1層を構成するポリエステルのY方向における屈折率nYは、延伸により0.05以上0.20以下の範囲で低下することが好ましく、より好ましくは0.06以上0.15以下、さらに好ましくは0.07以上0.10以下である。該屈折率の低下量が下限値に満たない場合は、Y方向の層間屈折率が一致するように両層の樹脂を選択すると、X方向の層間の屈折率差を大きくするに伴いZ方向の層間の屈折率のずれが大きくなり、偏光性能が向上するに伴い、斜め方向の入射光に対する透過偏光の色相ずれが生じやすくなる。一方、該屈折率の低下量が上限値を超える場合は、配向性が高すぎて、機械的な強度が十分でないことがある。
第1層のポリエステルのZ方向における屈折率nZは、延伸により0.05以上0.20以下の範囲で低下することが好ましく、より好ましくは0.06以上0.15以下、さらに好ましくは0.07以上0.10以下である。該屈折率の低下量を下限値に満たない範囲にするためにはX方向を低配向にせざるを得ず、X方向の層間の屈折率差を十分に大きくすることができないことがある。一方、該屈折率の低下量が上限値を超える場合は配向性が高すぎて、機械的な強度が十分でないことがある。
第1層の延伸後のY方向屈折率nYと延伸後のZ方向屈折率nZの屈折率差は、0.05以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.03以下、特に好ましくは0.01以下である。これら2方向の屈折率差が非常に小さいことにより、偏光が斜め方向の入射角で入射しても色相ずれが生じない効果を奏する。かかる偏光は特に、フィルム面を反射面とし、1軸延伸フィルムの延伸方向(X方向)を含む入射面に対して垂直な偏光成分(S偏光)についての色相ずれの解消に効果的である。
芳香族ポリエステル(I)を1軸延伸した場合の各方向の屈折率の変化例を図2に示す。図2に示すように、X方向の屈折率nは延伸により増加する方向にあり、Y方向の屈折率nとZ方向の屈折率nはともに延伸に伴い低下する方向にあり、しかも延伸倍率によらずnとnの屈折率差が非常に小さいことを特徴としている。
また第1層は、かかる特定の共重合成分を含む芳香族ポリエステル(I)を用いて1軸延伸を施す場合、X方向の屈折率nが1.70〜1.90の高屈折率特性を有することが好ましい。第1層におけるX方向の屈折率がかかる範囲にあることにより、X方向における第1層と第2層との屈折率差が大きくなり、高い反射偏光性能が得られやすくなる。
また、Y方向の1軸延伸後の屈折率nとZ方向の1軸延伸後の屈折率nとの差は0.05以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.03以下、特に好ましくは0.01以下である。これら2方向の屈折率差が非常に小さいことにより、偏光が斜め方向の入射角で入射しても色相ずれが生じない効果を奏する。
第1層を構成するポリエステルがポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの場合、図1に示すように、1軸方向の延伸倍率によらず、Y方向の屈折率nは一定で低下がみられないのに対し、Z方向の屈折率nは1軸延伸倍率の増加に伴い屈折率が低下する。そのためY方向の屈折率nとZ方向の屈折率nの差が大きくなり、偏光が斜め方向の入射角で入射した際に色相ずれが生じやすくなる。
[第2層]
本発明において、1軸延伸多層積層フィルムの第2層は、共重合ポリエチレンテレフタレート、共重合ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート、またはこれら共重合ポリエステルとその他のポリエステルとのブレンドが好ましく、中でも共重合ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
かかる共重合ポリエチレンテレフタレートの中でも、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸および脂環族ジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を共重合成分として含む共重合ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
本発明において1軸延伸多層積層フィルムの第2層を構成する共重合ポリエチレンテレフタレートは、平均屈折率が1.50以上1.60以下で、光学等方性の性質を有することが好ましい。
ここで本発明における第2層の平均屈折率は、第2層を構成する共重合ポリエチレンテレフタレートを単独で溶融させ、ダイより押出して未延伸フィルムを作成し、1軸方向に120℃で5倍延伸を行って1軸延伸フィルムを作成し、得られたフィルムのX方向、Y方向、Z方向それぞれの方向について、メトリコン製プリズムカプラを用いて波長633nmにおける屈折率を測定し、それらの平均値を平均屈折率として規定される。
また、本発明における光学等方性とは、これらX方向、Y方向、Z方向の屈折率の2方向間の屈折率差がいずれも0.05以下、好ましくは0.03以下であることをいう。
第2層を構成する共重合ポリエチレンテレフタレートの平均屈折率は、好ましくは1.53以上1.60以下、さらに好ましくは1.55以上1.60以下、さらに好ましくは1.58以上1.60以下である。第2層がかかる平均屈折率を有し、しかも延伸によって各方向の屈折率差の小さい光学等方性材料であることにより、第1層と第2層の層間における延伸後のX方向の屈折率差が大きく、その結果、高い偏光性能を得ることができる。同時に、層間のY方向の屈折率差およびZ方向の屈折率差が共に極めて小さい屈折率特性を得ることができ、その結果、偏光性能を高度に高めつつ、斜め方向の入射角よる色相ずれも抑制することができる。
第2層を構成する共重合ポリエチレンテレフタレートの共重合成分のうち、イソフタル酸成分はテレフタル酸成分と同程度の屈折率を示すため、第2層に求められる屈折率特性の観点では共重合量は制約されないものの、さらにフィルムの耐熱寸法安定性を高める観点から、共重合成分がイソフタル酸1種の場合は5〜50モル%の共重合量の範囲で用いられることが好ましく、さらに好ましくは10〜40モル%である。
ここで、本発明において第2層を構成する共重合ポリエステルの共重合量について、共重合ポリエチレンテレフタレートを例に説明すると、第2層を構成するポリエステルの繰り返し単位を100モル%とした場合の従たる共重合成分の割合で表される。また従たる成分とは、ジオール成分におけるエチレングリコール成分と、ジカルボン酸成分におけるテレフタル酸成分とを除く成分の合計量で表される。
第2層を構成する共重合ポリエチレンテレフタレートの共重合成分として2,6−ナフタレンジカルボン酸を用いる場合、テレフタル酸成分にくらべて屈折率が高いため、上述の屈折率特性を満たす観点で該共重合成分1種の場合は5〜25モル%の範囲で用いられることが好ましい。かかる共重合量の2,6−ナフタレンジカルボン酸を用いることにより、上述の屈折率特性とともに、フィルムの耐熱寸法安定性を高めることができる。
また、第2層を構成する共重合ポリエチレンテレフタレートの共重合成分として脂環族ジオールを用いることも好ましい。かかる脂環族ジオールとして、スピログリコール、トリシクロデカンジメタノールおよびシクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。テレフタル酸に由来する芳香族基量を減らすことなく、エチレングリコールの一部を脂環族ジオールに置換することにより、ガラス転移温度を高めつつ、本発明の屈折率特性も備えることができ、本発明の反射偏光フィルムの耐熱寸法安定性を高めることができる。かかる共重合成分の共重合量は、上述の屈折率特性を満たす範囲内であれば、所望の耐熱寸法安定性に応じてその共重合量を調整することができ、5〜85モル%の範囲で用いられることが好ましく、さらに好ましくは10〜70モル%である。
なお、上述の屈折率特性を満たす範囲内であれば、上述した共重合成分の中から複数の共重合成分を用いてもよく、その場合には単独で用いる場合に比べてそれぞれの共重合量を増減してもよい。
これらの第2層に用いられる共重合ポリエステルは、モノマーの共重合成分同士をエステル交換反応またはエステル化反応後、重縮合させる方法で得られたものであってもよく、また複数のポリエステルをブレンドして得られるポリエステルであってもよい。
[中間層]
本発明における1軸延伸多層積層フィルムは、かかる第1層、第2層以外に、層厚みが2μm以上30μm以下の厚さの中間層を第1層と第2層の交互積層構成の内部に有していることが好ましい。かかる厚みの中間層を第1層と第2層の交互積層構成の一部に有することにより、偏光性能に影響を及ぼすことなく、第1層および第2層を構成する各層厚みを均一に調整しやすくなる。
該中間層は本発明において内部厚膜層などと称することがあるが、本発明において交互積層構成の内部に存在する厚膜の層を指す。また、本発明において、多層積層フィルムの製造の初期段階で300層以下の交互積層体の両側に厚膜の層(厚み調整層、バッファ層と称することがある)を形成し、その後ダブリングにより積層数を増やす方法が好ましく用いられるが、その場合はバッファ層同士が2層積層されて中間層が形成される。
中間層に用いられる熱可塑性樹脂は、本発明の1軸延伸多層積層フィルムの製造方法を用いて多層構造中に存在させることができれば、第1層あるいは第2層と異なる樹脂を用いてもよいが、層間接着性の観点より、第1層、第2層のいずれかと同じ組成であることが好ましく、またはこれらの組成を部分的に含む組成であってもよい。
該中間層の形成方法は、特に限定されないが、例えば1軸延伸多層積層フィルムの製造方法欄において説明するダブリングを行う前の300層以下の範囲の交互積層体の両側に厚膜の層(バッファ層)を設け、それをレイヤーダブリングブロックと呼ばれる分岐ブロックを用いて2分割し、それらを再積層することで内部厚膜層(中間層)を1層設けることができる。同様の手法で3分岐、4分岐することにより中間層を複数設けることもできる。
[1軸延伸多層積層フィルムの積層構成]
(積層数)
本発明における1軸延伸多層積層フィルムは、上述の第1層および第2層が交互に合計251層以上積層されていることが好ましい。積層数が251層未満であると、延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分の平均反射率特性について、波長400〜800nmにわたり一定の平均反射率が得られないことがある。
積層数の上限値は、生産性およびフィルムのハンドリング性など観点から2001層以下が好ましいが、目的とする平均反射率特性が得られれば生産性やハンドリング性の観点からさらに積層数を減らしてもよく、例えば1001層、501層、301層であってもよい。
(各層厚み)
第1層および第2層の各層の厚みは0.01μm以上0.5μm以下であることが好ましい。また第1層の各層の厚みは、より好ましくは0.01μm以上0.1μm以下、第2層の各層の厚みは、より好ましくは0.01μm以上0.3μm以下である。各層の厚みは透過型電子顕微鏡を用いて撮影した写真をもとに求めることができる。
本発明における1軸延伸多層積層フィルムを液晶ディスプレイの反射型偏光板として用いるためには、その反射波長帯は可視光域から近赤外線領域であることが好ましく、第1層および第2層の各層の厚みをかかる範囲とすることにより、かかる波長域の光を層間の光干渉によって選択的に反射することができる。一方、層厚みが0.5μmを超えると反射帯域が赤外線領域になる。他方、層厚みが0.01μm未満であると、ポリエステル成分が光を吸収し反射性能が得られなくなる。
(最大層厚みと最小層厚みの比率)
本発明における1軸延伸多層積層フィルムは、第1層および第2層におけるそれぞれの最大層厚みと最小層厚みの比率がいずれも2.0以上5.0以下であることが好ましく、より好ましくは2.0以上4.0以下、さらに好ましくは2.0以上3.5以下、特に好ましくは2.0以上3.0以下である。かかる層厚みの比率は、具体的には最小層厚みに対する最大層厚みの比率で表わされる。第1層、第2層におけるそれぞれの最大層厚みと最小層厚みは、透過型電子顕微鏡を用いて撮影した写真をもとに求めることができる。
多層積層フィルムは、層間の屈折率差、層数、層の厚みによって反射する波長が決まるが、積層された第1層および第2層のそれぞれが一定の厚みでは、特定の波長のみしか反射することができず、延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分の平均反射率特性について、波長400〜800nmの幅広い波長帯にわたって均一に平均反射率を高めることができないため、厚みの異なる層を用いることが好ましい。
一方、最大層厚みと最小層厚みの比率が上限値を超える場合は、反射帯域が400〜800nmよりも広がり、延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分の反射率の低下を伴うことがある。
第1層および第2層の層厚みは、段階的に変化してもよく、連続的に変化してもよい。このように積層された第1層および第2層のそれぞれが変化することで、より広い波長域の光を反射することができる。
本発明における1軸延伸多層積層フィルムにおける多層構造を積層する方法は特に限定されないが、例えば、第1層用ポリエステルを137層、第2層用熱可塑性樹脂を138層に分岐させた第1層と第2層が交互に積層され、その流路が連続的に2.0〜5.0倍までに変化する多層フィードブロック装置を使用する方法が挙げられる。
(第1層と第2層の平均層厚み比)
本発明における1軸延伸多層積層フィルムは、第1層の平均層厚みに対する第2層の平均層厚みの比が0.5倍以上2.0倍以下の範囲であることが好ましい。第1層の平均層厚みに対する第2層の平均層厚みの比の下限値は、より好ましくは0.8である。また、第1層の平均層厚みに対する第2層の平均層厚みの比の上限値は、より好ましくは1.5である。最も好適な範囲は、1.1以上1.3以下である。
第1層の平均層厚みに対する第2層の平均層厚みの比を最適な厚み比にすることにより、多重反射による光漏れをより改良できる。ここでいう最適な厚み比とは、(第1層の延伸方向の屈折率)×(第1層の平均層厚み)で表される値と、(第2層の延伸方向の屈折率)×(第2層の平均層厚み)で表される値(光学厚さ)とが均等になる厚みであり、本発明の各層の屈折率特性から換算すると、第1層の平均層厚みに対する第2層の平均層厚みの比の好ましい範囲は1.1〜1.3程度である。
(平均反射率)
本発明における反射偏光フィルムは、フィルム面を反射面とし、1軸延伸フィルムの延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分について、入射角0度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率が98%以上100%以下であることが好ましい。P偏光成分に対する平均反射率がこのように高いことにより、P偏光の透過量を従来よりも抑え、S偏光を選択的に透過させる高い偏光性能が発現し、99.0%以上の高偏光度が得られる。
また本発明における反射偏光フィルムは、フィルム面を反射面とし、1軸延伸フィルムの延伸方向(X方向)を含む入射面に対して平行な偏光成分について、入射角50度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率が96%以上99%以下であることが好ましい。入射角50度でのP偏光についても平均反射率がこのように高いことにより、高い偏光性能が得られるとともに、斜め方向に入射した光の透過が高度の抑制されるため、かかる光による色相ずれが抑制される。
本発明における反射偏光フィルムは、フィルム面を反射面とし、1軸延伸フィルムの延伸方向(X方向)を含む入射面に対して垂直な偏光成分について、入射角0度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率が5%以上12%以下であることが好ましく、さらに好ましくは8%以上12%以下である。
また本発明における反射偏光フィルムは、フィルム面を反射面とし、1軸延伸フィルムの延伸方向(X方向)を含む入射面に対して垂直な偏光成分について、入射角50度での該入射偏光に対する波長400〜800nmの平均反射率が5%以上10%以下であることが好ましく、さらに好ましくは8%以上10%以下である。
垂直方向および斜め方向に入射するS偏光成分に対する波長400〜800nmの平均反射率がかかる範囲内に制限されることにより、光源と反対側に透過されるS偏光量が増大する。一方、S偏光成分に関する平均反射率が上限値を越える場合、反射偏光フィルムとしての偏光透過率が低下し、本発明の偏光度が得られ難い。一方、かかる範囲内でよりS偏光成分の反射率が低い方がS偏光成分の透過率が高くなるものの、下限値より低くすることは組成や延伸との関係で難しいことがある。
P偏光成分における該平均反射率特性は、第1層および第2層の交互積層で構成される1軸延伸多層積層フィルムにおいて、各層を構成するポリマーとして上述したポリエステルをそれぞれ用い、延伸方向(X方向)に一定の延伸倍率で延伸して第1層のフィルム面内方向を複屈折率化させることで得られる。また、波長400〜800nmの波長域においてかかる平均反射率を得るために、第1層、第2層の各層厚みを調整する方法が挙げられる。
また、S偏光成分における該平均反射率特性は、第1層および第2層の交互積層で構成される1軸延伸多層積層フィルムにおいて、各層を構成するポリマーとして上述したポリエステルをそれぞれ用い、かつ該延伸方向と直交する方向(Y方向)に延伸しないか、低延伸倍率での延伸にとどめることで得られる。また、波長400〜800nmの波長域においてかかる平均反射率を得るために、第1層、第2層の各層厚みを調整する方法が挙げられる。
[1軸延伸フィルム]
本発明における1軸延伸多層積層フィルムは、目的とする反射偏光フィルムとしての光学特性を得るために、少なくとも1軸方向に延伸されている。本発明における1軸延伸には、1軸方向にのみ延伸したフィルムの他、2軸方向に延伸されたフィルムであって、一方向により延伸されたフィルムも含まれる。1軸延伸方向(X方向)は、フィルム長手方向、幅方向のいずれの方向であってもよい。また、2軸方向に延伸されたフィルムであって、一方向により延伸されたフィルムの場合は、より延伸される方向(X方向)はフィルム長手方向、幅方向のいずれの方向であってもよく、延伸倍率の低い方向は、1.05〜1.20倍程度の延伸倍率にとどめることが偏光性能を高める点で好ましい。2軸方向に延伸され、一方向により延伸されたフィルムの場合、偏光や屈折率との関係での「延伸方向」とは、より延伸された方向を指す。
延伸方法としては、棒状ヒータによる加熱延伸、ロール加熱延伸、テンター延伸など公知の延伸方法を用いることができるが、ロールとの接触によるキズの低減や延伸速度などの観点から、テンター延伸が好ましい。
[第1層と第2層の層間の屈折率特性]
第1層と第2層のX方向の屈折率差は0.10〜0.45であることが好ましく、さらに好ましくは0.20〜0.40、特に好ましくは0.25〜0.30である。X方向の屈折率差がかかる範囲にあることにより、反射特性を効率よく高めることができ、より少ない積層数で高い反射率を得ることができる。
また、第1層と第2層のY方向の屈折率差および第1層と第2層のZ方向の屈折率差は、それぞれ0.05以下であることが好ましい。Y方向およびZ方向それぞれの層間の屈折率差がともに上述の範囲にあることにより、偏光が斜め方向の入射角で入射した際に色相ずれを抑制することができる。
[フィルム厚み]
本発明の1軸延伸多層積層フィルムのフィルム厚みは15μm以上200μm以下であることが好ましく、さらに50μm以上180μm以下であることが好ましい。
[1軸延伸多層積層フィルムの製造方法]
つぎに、本発明における1軸延伸多層積層フィルムの製造方法について詳述する。
本発明における1軸延伸多層積層フィルムは、第1層を構成するポリエステルと第2層を構成するポリエステルとを溶融状態で交互に重ね合わせて合計で300層以下の交互積層体を作成し、その両面に膜厚の層(バッファ層)を設け、レイヤーダブリングと呼ばれる装置を用いて該バッファ層を有する交互積層体を例えば2〜4分割し、該バッファ層を有する交互積層体を1ブロックとしてブロックの積層数(ダブリング数)が2〜4倍になるように再度積層する方法で積層数を増やすことができる。かかる方法により、多層構造の内部にバッファ層同士が2層積層された中間層を有する1軸延伸多層積層フィルムを得ることができる。
かかる交互積層体は、各層の厚みが段階的または連続的に2.0〜5.0倍の範囲で変化するように積層される。
上述した方法で所望の積層数に積層化された多層未延伸フィルムは、製膜方向、またはそれに直交する幅方向の少なくとも1軸方向(フィルム面に沿った方向)に延伸される。延伸温度は、第1層の熱可塑性樹脂のガラス転移点の温度(Tg)〜(Tg+50)℃の範囲が好ましく、またフィルムの配向特性を高度に制御するためにはさらに(Tg)〜(Tg+30)℃の範囲が好ましい。
このときの延伸倍率は2〜10倍であることが好ましく、さらに好ましくは2.5〜7倍、さらいに好ましくは3〜6倍、特に好ましくは4.5〜5.5倍である。延伸倍率が大きいほど、第1層および第2層における個々の層の面方向のバラツキが延伸による薄層化により小さくなり、多層延伸フィルムの光干渉が面方向に均一化され、また第1層と第2層の延伸方向の屈折率差が大きくなるので好ましい。このときの延伸方法は、棒状ヒータによる加熱延伸、ロール加熱延伸、テンター延伸など公知の延伸方法を用いることができるが、ロールとの接触によるキズの低減や延伸速度などの観点から、テンター延伸が好ましい。
また、かかる延伸方向と直交する方向(Y方向)にも延伸処理を施し、2軸延伸を行う場合は、1.05〜1.20倍程度の延伸倍率にとどめることが好ましい。Y方向の延伸倍率をこれ以上高くすると、偏光性能が低下することがある。また、延伸後にさらに熱固定処理を施すことが好ましく、(Tg)〜(Tg+30)℃の温度で行いながら、5〜15%の範囲で延伸方向にトーアウト(再延伸)させることにより、得られた1軸延伸多層積層フィルムの配向特性を高度に制御することができる。
[反射偏光フィルム積層体]
本発明の反射偏光フィルム積層体は、該反射偏光フィルムの片面に上述した微多孔膜を配置することにより形成される。反射偏光フィルムと微多孔膜との積層方向は特に限定されず、透明性の高い接着剤、粘着剤などで貼りあわせることが好ましい。
本発明の反射偏光フィルム積層体は、多層構造の反射偏光フィルムでありながら、99.0%以上の高偏光度と、透過されない偏光を反射させて再利用できる輝度向上フィルムとしての機能とを備えているため、液晶ディスプレイ偏光板用の反射偏光フィルム積層体として用いることができ、本発明の反射偏光フィルム積層体からなる液晶ディスプレイ用偏光板を提供することができる。
特に、吸収型偏光板を併用することなく、単独で液晶セルに隣接して用いられる液晶ディスプレイ偏光板用の反射偏光フィルム積層体として好適に用いることができる。
また、本発明の反射偏光フィルム積層体は、高偏光度の反射偏光フィルムの片面に高い拡散性能と輝度向上性能を両立できる特定構造の微多孔膜を配置することにより、液晶表示装置に用いられる各種の光学フィルムを削減でき、しかも高輝度化および輝度の均一性も高めることができる。
[液晶ディスプレイ用光学部材]
本発明には、本発明の液晶ディスプレイ用偏光板からなる第1の偏光板、液晶セル、および第2の偏光板がこの順で積層された液晶ディスプレイ用光学部材も発明の一態様として含まれる。かかる光学部材は液晶パネルとも称される。かかる光学部材は図4または図5における5に相当し、第1の偏光板は3、液晶セルは2、第2の偏光板は1に相当する。
従来は液晶セルの両側の偏光板として、吸収型偏光板を少なくとも有することにより高い偏光性能が得られていたところ、本発明の反射偏光フィルム積層体を用いた偏光板であれば、従来の多層積層フィルムでは到達できなかった高偏光性能が得られるため、従来の吸収型偏光板に代えて液晶セルと隣接して用いられる偏光板として用いることができるものである。
すなわち、本発明の特徴は、第1の偏光板として本発明の反射偏光フィルム積層体からなる偏光板を液晶セルの一方において単独で用いることにあり、好ましくは第1の偏光板が吸収型偏光板と積層された構成は除かれる。
液晶セルの種類は特に限定されず、VAモード、IPSモード、TNモード、STNモードやベンド配向(π型)など、任意のタイプのものを用いることができる。
また、第2の偏光板の種類は特に限定されず、吸収型偏光板、反射型偏光板のいずれも用いることができる。第2の偏光板として反射型偏光板を用いる場合、本発明の液晶ディスプレイ用偏光板を用いることが好ましい。
本発明の液晶ディスプレイ用光学部材は、第1の偏光板、液晶セル、および第2の偏光板がこの順で積層されることが好ましく、これらの各部材同士は直接積層されてもよく、また粘着層や接着層と称される層間の接着性を高める層(以下、粘着層と称することがある)、保護層などを介して積層されてもよい。
[液晶ディスプレイ用光学部材の形成]
液晶セルに偏光板を配置する方法としては、両者を粘着層によって積層することが好ましい。粘着層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系等のポリマーをベースポリマーとするものを適宜選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤のように透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を有し、耐候性や耐熱性等に優れるものが好ましい。また、粘着層は異なる組成又は種類の層を複数設けてもよい。
液晶セルと偏光板とを積層する際の作業性の観点において、粘着層は、予め偏光板、あるいは液晶セルの一方または両方に付設しておくことが好ましい。粘着層の厚みは、使用目的や接着力等に応じて適宜決定でき、一般には1〜500μmであり、5〜200μmが好ましく、特に10〜100μmが好ましい。
(離型フィルム)
また、粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的として離型フィルム(セパレータ)が仮着されてカバーされることが好ましい。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。離型フィルムとしては、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体などを、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデンなどの剥離剤でコート処理したものを用いうる。
[液晶ディスプレイ]
本発明には、光源と本発明の液晶ディスプレイ用光学部材とを備え、第1の偏光板が光源側に配置されてなる液晶ディスプレイ(以下、液晶表示装置と称することがある)も発明の一態様として含まれる。
図4および図5に本発明の実施形態の1つである液晶ディスプレイの概略断面図を示す。液晶ディスプレイは光源6および液晶パネル5を有し、さらに必要に応じて反射フィルム、駆動回路等を組込んだものである。液晶パネル5は、液晶セル2の光源6側に第1の偏光板3を備える。また、液晶セル2の光源側と反対側、すなわち、視認側に第2の偏光板1を備えている。液晶セル2としては、例えばVAモード、IPSモード、TNモード、STNモードやベンド配向(π型)などの任意なタイプのものを用いうる。
本発明の液晶ディスプレイは、液晶セル2の光源側に、高偏光性能を有する本発明の液晶ディスプレイ用反射板からなる第1の偏光板3を配置することによって、従来の吸収型偏光板に代えて単独で液晶セルと貼り合せて用いることができ、しかも99.0%以上の非常に高い偏光性能を備えるため、液晶ディスプレイの明輝度/暗輝度より求められるコントラストに関し、実用的に使用可能なレベルの高いコントラストを得ることができる。
本発明の液晶ディスプレイ用反射板からなる第1の偏光板は、従来の吸収型偏光板に匹敵する99.0%以上の高い偏光性能と、透過されない偏光を反射させて再利用できる輝度向上フィルムとしての機能とを備えるため、光源6と第1の偏光板3との間にさらに輝度向上フィルムとよばれる反射型偏光板を用いる必要がなく、輝度向上フィルムと液晶セルに隣接して用いられる偏光板の機能を一体化させることができるため、部材数を減らすことができる。
さらに本発明の液晶ディスプレイ用反射板からなる第1の偏光板は、反射偏光フィルムの片面に高い拡散性能と輝度向上性能を両立できる特定構造の微多孔膜が配置されていることにより、従来用いられていた拡散フィルムおよびプリズムシートの機能を一体化させることができ、従来液晶ディスプレイの部材として使用されていたこれらの光学部材を削減しつつ高輝度化および輝度の均一性も高めることができる。
さらに本発明の液晶ディスプレイは、第1の偏光板として本発明の液晶ディスプレイ用反射板を用いることにより、斜め方向に入射した光についても、斜め方向に入射したP偏光成分をほとんど透過させず、同時に斜め方向に入射したS偏光成分については反射を抑えて透過させるため、斜め方向に入射した光に対する透過光の色相ずれが抑制される特徴を有する。そのため、液晶ディスプレイとして投射した映像のカラーがそのまま再現される。
また、通常は図4〜7に示すように、液晶セル2の視認側に第2の偏光板1が配置される。本発明における第2の偏光板1は特に制限されず、吸収型偏光板など公知のものを用いることができる。外光の影響が非常に少ない場合には、第2の偏光板として第1の偏光板と同じ種類の反射型偏光板を用いてもかまわない。また、液晶セル2の視認側には、第2の偏光板以外にも、例えば光学補償フィルム等の各種の光学層を設けることができる。
[液晶ディスプレイの形成]
液晶ディスプレイ用光学部材(液晶パネル)と光源とを組合せ、さらに必要に応じて駆動回路等を組込むことによって本発明の液晶ディスプレイが得られる。また、これら以外にも液晶ディスプレイの形成に必要な各種部材を組合せることができるが、本発明の液晶ディスプレイは光源から射出される光を第1の偏光板に入射させるものであることが好ましい。
一般に液晶ディスプレイの光源は、直下方式とサイドライト方式に大別されるが、本発明の液晶ディスプレイにおいては、図4および図5に示す通り、方式の限定なく使用可能である。
このようにして得られた液晶ディスプレイは、例えば、パソコンモニター,ノートパソコン,コピー機等のOA機器、携帯電話,時計,デジタルカメラ,携帯情報端末(PDA),携帯ゲーム機等の携帯機器、ビデオカメラ,テレビ,電子レンジ等の家庭用電気機器、バックモニター,カーナビゲーションシステム用モニター,カーオーディオ等の車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニター等の展示機器、監視用モニター等の警備機器、介護用モニター,医療用モニター等の介護・医療機器等、種々の用途に用いることができる。
以下に、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明は以下に示した実施例に制限されるものではない。なお、実施例中の物性や特性は、下記の方法にて測定または評価した。
(1)P偏光およびS偏光の平均透過率、偏光度
得られた反射偏光フィルムを偏光度測定装置(日本分光株式会社製「VAP7070S」)を用いてP偏光の透過率、S偏光の透過率、および偏光度を測定した。
偏光フィルタの透過軸をフィルムの延伸方向(X方向)と合わせるように配置した場合の測定値をP偏光とし、偏光フィルタの透過軸をフィルムの延伸方向と直交するように配置した場合の測定値をS偏光としたときの偏光度(P,単位%)は以下の式(1)で表される。
偏光度(P)={(Ts−Tp)/(Tp+Ts)}×100 ・・・(1)
(式(1)中、Tpは400〜800nmの波長範囲におけるP偏光の平均透過率、Tsは400〜800nmの波長範囲におけるS偏光の平均透過率をそれぞれ表す)
なお、測定光の入射角は0度に設定して測定を行った。
(2)微多孔膜の目付
微多孔膜サンプルを10cm×10cmに切り出し重量を測定する。この重量を面積で割ることで1m当たりの重量である目付を求めた。
(3)微多孔膜の空孔率
微多孔膜サンプルの空孔率は下記式から求めた。
ε={1−Ws/(ds・t)}×100
ここで、ε:空孔率(%)、Ws:目付(g/m)、ds:真密度(g/cm)、t:膜厚(μm)である。
(4)平均孔径
微多孔膜サンプルの平均孔径は、ASTM E1294−89(1999年)(ハーフドライ法)に準じ、自動細孔径分布測定器(POROUS MATERIALS製 PERM−POROMETER)を用いて測定した。
(5)孔形状因子
孔形状因子fは微多孔膜の断面方向から観察したときの孔部の形状の平均的な偏平度合いを表すもので、これはフィルム断面の走査型電子顕微鏡像を画像処理することによって得られる。
本発明における該微多孔膜を構成するボイドは網目状に交絡した連続相として存在しており、これら網目構造は具体的にはビーズ状の形状である。本発明における孔形状因子は、ビーズ状の部分を1つの独立したボイド(孔部)と見做し、求めることができる。
孔部の形状を変えてしまうことなく多孔性フィルムの孔形状因子を算出するために、エタノールに浸漬し、凍結ミクロトームで孔を固定しながら面出しを行い、このような前処理を施した試料を走査型電子顕微鏡で観察し、5000倍の像を画像処理装置に取り込み、それぞれの孔の長径と短径を計測し、その単純平均値L、Lを求める。得られたL、Lをもとに、以下式(2)より孔形状因子f算出した。これを微多孔膜の機械軸方向に平行な断面及び機械軸方向に垂直な断面の両方について行い、孔形状因子の小さい方を採用した。
(孔形状因子)f=L/L ・・・(2)
(6)反射率、反射波長
得られた反射偏光フィルムについて、分光光度計(島津製作所製、MPC−3100)を用い、光源側に偏光フィルタを装着し、各波長でのアルミ蒸着したミラーとの相対鏡面反射率を波長400nmから800nmの範囲で測定する。このとき、偏光フィルタの透過軸をフィルムの延伸方向(X方向)と合わせるように配置した場合の測定値をp偏光とし、偏光フィルタの透過軸をフィルムの延伸方向と直交するように配置した場合の測定値をs偏光とした。それぞれの偏光成分について、400−800nmの範囲での反射率の平均値を平均反射率とした。なお、測定光の入射角は0度に設定して測定を行った。
(7)各方向の延伸前、延伸後の屈折率および平均屈折率
各層を構成する個々のポリエステルについて、それぞれ溶融させてダイより押出し、キャスティングドラム上にキャストしたフィルムをそれぞれ用意した。また、得られたフィルムを120℃にて一軸方向に5倍延伸した延伸フィルムを用意した。得られたキャストフィルムと延伸フィルムについて、それぞれ延伸方向(X方向)とその直交方向(Y方向)、厚み方向(Z方向)のそれぞれの屈折率(それぞれnX、nY、nZとする)を、メトリコン製プリズムカプラを用いて波長633nmにおける屈折率を測定して求め、延伸前、延伸後の屈折率とした。
第1層を構成するポリエステルの平均屈折率については、延伸前のそれぞれの方向の屈折率の平均値を平均屈折率とした。また第2層を構成するポリエステルの平均屈折率については、延伸後のそれぞれの方向の屈折率の平均値を平均屈折率とした。
(8)ポリエステルの融点(Tm)およびガラス転移点(Tg)
各層試料を10mgサンプリングし、DSC(TAインスツルメンツ社製、商品名:DSC2920)を用い、20℃/min.の昇温速度で、融点およびガラス転移点を測定する。
(9)ポリエステルの特定ならびに共重合成分および各成分量の特定
フィルムの各層について、H−NMR測定よりポリエステル成分ならびに共重合成分および各成分量を特定した。
(10)反射偏光フィルム厚み、各層の厚み
反射偏光フィルムをフィルム長手方向2mm、幅方向2cmに切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂(リファインテック(株)製エポマウント)にて包埋した。包埋されたサンプルをミクロトーム(LEICA製ULTRACUT UCT)で幅方向に垂直に切断し、5nm厚の薄膜切片にした。透過型電子顕微鏡(日立S−4300)を用いて加速電圧100kVにて観察撮影し、写真から反射偏光フィルム厚みおよび各層の厚みを測定した。
1μm以上の厚さの層について、多層構造の内部に存在しているものを中間層、最表層に存在しているものを最外層とし、それぞれの厚みを測定した。また中間層が複数存在する場合は、それらの平均値より中間層厚みを求めた。
また、得られた各層の厚みをもとに、第1層における最小層厚みに対する最大層厚みの比率、第2層における最小層厚みに対する最大層厚みの比率をそれぞれ求めた。
また得られた各層の厚みをもとに、第1層の平均層厚み、第2層の平均層厚みをそれぞれ求め、第1層の平均層厚みに対する第2層の平均層厚みを算出した。
なお、第1層と第2層の厚みを求めるに際し、中間層および最外層は第1層と第2層から除外した。
(11)微多孔膜厚み
反射偏光フィルム積層体をスピンドル検出器(安立電気(株)製K107C)にはさみ、デジタル差動電子マイクロメーター(安立電気(株)製K351)にて、異なる位置で厚みを10点測定し、平均値を求め、反射偏光フィルム積層体厚みとした。かかる積層体厚みから測定方法(10)の方法で得られた反射偏光フィルム厚みを引いて微多孔膜厚みを求めた。
(12)輝度向上効果(輝度向上率)
パソコンの表示ディスプレイとして得られた液晶ディスプレイ装置を用い、パソコンにより白色表示したときの液晶ディスプレイ装置の画面の正面輝度をオプトデザイン社製FPD視野角測定評価装置(ErgoScope88)で測定し、比較例1に対する輝度の上昇率を算出し、輝度向上効果を下記の基準で評価した。
◎:輝度向上効果が160%以上
○:輝度向上効果が150%以上、160%未満
△:輝度向上効果が140%以上、150%未満
×:輝度向上効果が140%未満
(13)コントラスト評価
パソコンの表示ディスプレイとして得られた液晶ディスプレイ装置を用い、パソコンにより白色および黒画面を表示したときの液晶ディスプレイ装置の画面の正面輝度をオプトデザイン社製FPD視野角測定評価装置(ErgoScope88)で測定し、白画面より明輝度を、また黒画面より暗輝度をそれぞれ求め、明輝度/暗輝度より求められるコントラストを以下の基準で評価した。
◎:コントラスト(明輝度/暗輝度) 500以上
○:コントラスト(明輝度/暗輝度) 200以上500未満
×:コントラスト(明輝度/暗輝度) 200未満
(14)輝度斑評価
パソコンの表示ディスプレイとして得られた液晶ディスプレイ装置を用い、パソコンにより白色画面を表示したときの液晶ディスプレイ装置の画面全面の輝度をコニカミノルタオプティクス株式会社製2次元輝度測定装置(CA−2000)で測定し、以下の基準で評価した。
◎:画面全体における輝度の最大/最小値の変化が10%未満
○:画面全体における輝度の最大/最小値の変化が10%以上20%未満
×:画面全体における輝度の最大/最小値の変化が20%以上
[比較例1]
(偏光子の作成)
ポリビニルアルコールを主成分とする高分子フィルム[クラレ製 商品名「9P75R(厚み:75μm、平均重合度:2,400、ケン化度99.9モル%)」]を周速の異なるロール間で染色しながら延伸搬送した。まず、30℃の水浴中に1分間浸漬させてポリビニルアルコールフィルムを膨潤させつつ搬送方向に1.2倍に延伸した後、30℃のヨウ化カリウム濃度0.03重量%、ヨウ素濃度0.3重量%の水溶液中で1分間浸漬することで、染色しながら搬送方向に、全く延伸していないフィルム(原長)を基準として3倍に延伸した。次に60℃のホウ酸濃度4重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%の水溶液中に30秒間浸漬しながら、搬送方向に原長基準で6倍に延伸した。次に、得られた延伸フィルムを70℃で2分間乾燥することで偏光子を得た。なお、偏光子の厚みは30μm、水分率は14.3重量%であった。
(接着剤の作成)
アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール系樹脂(平均重合度1200、ケン化度98.5%モル%、アセトアセチル化度5モル%)100重量部に対して、メチロールメラミン50重量部を30℃の温度条件下で純水に溶解し、固形分濃度3.7重量%の水溶液を調製した。この水溶液100重量部に対して、正電荷を有するアルミナコロイド(平均粒子径15nm)を固形分濃度10重量%で含有する水溶液18重量部を加えて接着剤水溶液を調製した。接着剤溶液の粘度は9.6mPa・sであり、pHは4〜4.5の範囲であり、アルミナコロイドの配合量は、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して74重量部であった。
(吸収型偏光板の作成)
厚み80μm、正面レターデーション0.1nm、厚み方向レターデーション1.0nmの光学等方性素子(富士フィルム製商品名「フジタック ZRF80S」の片面に、上記のアルミナコロイド含有接着剤を、乾燥後の厚みが80nmとなるように塗布し、これを上記の偏光子の片面に両者の搬送方向が平行となるようにロール・トゥー・ロールで積層した。続いて、偏光子の反対側の面にも同様にして光学等方性素子(富士フィルム製商品名「フジタック ZRF80S」)の片面に上記のアルミナコロイド含有接着剤を乾燥後の厚みが80nmとなるように塗布したものを、これらの搬送方向が平行となるようにロール・トゥー・ロールで積層した。その後55℃で6分間乾燥させて偏光板を得た。この偏光板を「偏光板X」とする。
(液晶パネルの作成)
VAモードの液晶セルを備え、直下型のバックライトを採用した液晶テレビ(シャープ製AQUOS LC−20E90 2011年製)から液晶パネルを取り出し、液晶セルの上下に配置されていた偏光板および光学補償フィルムを取り除いて、該液晶セルのガラス面(表裏)を洗浄した。続いて、上記液晶セルの光源側の表面に、上記の偏光板Xを元の液晶パネルに配置されていた光源側偏光板の吸収軸方向と同様の方向となるように、アクリル系粘着剤を介して偏光板Xを液晶セルに配置した。
次いで、液晶セルの視認側の表面に、元の液晶パネルに配置されていた視認側偏光板の吸収軸方向と同様の方向となるように、アクリル系粘着剤を介して上記の偏光板Xを液晶セルに配置した。このようにして、液晶セルの一方主面に偏光板X、他方主面に偏光板Xが配置された液晶パネルを得た。
評価に用いた上記液晶テレビにおける他の光学フィルムは、拡散フィルム、プリズムフィルム、拡散フィルム、導光板、白色反射フィルムの構成であった。
(液晶ディスプレイの作成)
上記の液晶パネルを元の液晶テレビに組込み、液晶テレビの光源を点灯させ、パソコンにて白画面および黒画面を表示して、液晶ディスプレイの輝度を評価した。
[比較例2]
比較例1において、液晶テレビより、拡散フィルム、プリズムフィルム、拡散フィルムを除いた以外は比較例1と同様にして液晶パネルを得た。
(液晶ディスプレイの作成)
上記の液晶パネルを元の液晶テレビに組込み、液晶テレビの光源を点灯させ、パソコンにて白画面および黒画面を表示して、液晶ディスプレイの輝度を評価した。
[実施例1]
(反射偏光フィルムの作成)
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸、そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.62dl/gで、酸成分の65モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分(表中、PENと記載)、酸成分の35モル%が6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分(表中、ENAと記載)、グリコール成分がエチレングリコールである芳香族ポリエステルを第1層用ポリエステルとし、第2層用ポリエステルとして固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.62dl/gのイソフタル酸20mol%共重合ポリエチレンテレフタレート(IA20PET)を準備した。
準備した第1層用ポリエステルおよび第2層用ポリエステルを、それぞれ170℃で5時間乾燥後、第1、第2の押出機に供給し、300℃まで加熱して溶融状態とし、第1層用ポリエステルを138層、第2層用ポリエステルを137層に分岐させた後、第1層と第2層が交互に積層され、かつ第1層と第2層におけるそれぞれの最大層厚みと最小層厚みが最大/最小で2.2倍まで連続的に変化するような多層フィードブロック装置を使用して、第1層と第2層が交互に積層された総数275層の積層状態の溶融体とし、その積層状態を保持したまま、その両側に第3の押出機から第2層用ポリエステルと同じポリエステル樹脂を3層フィードブロックへと導き、総数275層の積層状態の溶融体の積層方向の両側にバッファ層を積層した。両側のバッファ層の合計が全体の30%となるよう第3の押出機の供給量を調整した。その積層状態を更にレイヤーダブリングブロックにて、3分岐して1:1:1に比率で積層し、内部に2つの中間層、最表層に2つの最外層を含む、全層数829層の積層状態を保持したままダイへと導き、キャスティングドラム上にキャストして、第1層と第2層の平均層厚み比が1.0:1.2になるように調整し、全層数829層の未延伸多層積層フィルムを作成した。
この多層未延伸フィルムを120℃の温度で幅方向に5.2倍に延伸し、さらに120℃で同方向に15%延伸しながら120℃で3秒間熱固定処理を行った。得られた反射偏光フィルムの厚みは105μmであった。
(微多孔膜の作成)
ポリエチレンパウダーとしてTicona社製GURX2126(重量平均分子量415万、融点141℃)とGURX143(重量平均分子量56万、融点135℃)を用いた。GURX2126とGURX143を2:8(重量比)となる様にして、ポリエチレン濃度が30重量%となるように流動パラフィン(松村石油研究所社製スモイルP−350:沸点480℃)とデカリン(和光純薬社製、沸点193℃)の混合溶媒中に溶解させ、ポリエチレン溶液を作製した。該ポリエチレン溶液の組成はポリエチレン:流動パラフィン:デカリン=30:67.5:2.5(重量比)である。
このポリエチレン溶液を148℃でダイから押し出し、水浴中で冷却してゲル状テープ(ベーステープ)を作製した。該ベーステープを60℃で8分、95℃で15分乾燥し、該ベーステープを縦延伸(機械軸方向)、横延伸(機械軸の垂直方向)を逐次行う2軸延伸にて延伸した。ここで、縦延伸6倍、延伸温度は90℃、横延伸は延伸倍率9倍、延伸温度は105℃とした。横延伸の後に130℃で熱固定を行った。次にこれを塩化メチレン浴に浸漬し、流動パラフィンとデカリンを抽出した。その後、50℃で乾燥し、120℃でアニール処理することでポリオレフィン微多孔膜を得た。得られたポリオレフィン微多孔膜はフィブリル状ポリオレフィンが網目状に交絡し、細孔を構成する構造を有するものであった。
得られたポリオレフィン微多孔膜の特性の測定結果を表3に示す。
(反射偏光フィルム積層体の形成)
得られた反射偏光フィルムとポリオレフィン微多孔膜をアクリル系粘着剤で貼り合わせ、反射偏光フィルム積層体を形成した。
(液晶パネルの形成)
前記比較例1において、光源側の第1の偏光板として偏光板Xに代えて、得られた反射偏光フィルム積層体をポリオレフィン微多孔膜が光源側となるように用い、さらにバックライト側の光学フィルムのうち白色反射フィルム以外の光学フィルム(拡散フィルム、プリズムフィルム、拡散フィルム)を全て除去した以外は比較例1と同様にして、液晶セルの光源側主面に得られた反射偏光フィルム積層体(第1の偏光板)、視認側主面に偏光板X(第2の偏光板)が配置された液晶パネルを得た。
(液晶ディスプレイの作成)
上記の液晶パネルを元の液晶ディスプレイに組込み、液晶ディスプレイの光源を点灯させ、パソコンにて白画面および黒画面の輝度を評価した。
このようにして得られた反射偏光フィルムの各層の樹脂構成、各層の特徴を表1に、また反射偏光フィルムおよびその積層体の物性および液晶ディスプレイの物性を表2に示す。
[実施例2〜6]
反射偏光フィルムの製造方法について表1に示すとおり、各層の樹脂組成または層厚みを変更し、微多孔膜の製造方法について表3に示すとおり変更した以外は実施例1と同様にして、反射偏光フィルム積層体を得た。
なお、実施例2で第2層用ポリエステルとして用いたNDC20PETとは、実施例1の第2層用ポリエステルとして用いたイソフタル酸20mol%共重合ポリエチレンテレフタレート(IA20PET)の共重合成分を2,6−ナフタレンジカルボン酸に変更した共重合ポリエステルである。
また、実施例4で第2層用ポリエステルとして用いたENA21PEN/PCTブレンドとは、実施例4の第1層用ポリエステルであるENA21PEN(酸成分の79モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の21モル%が6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分がエチレングリコールである芳香族ポリエステル)と、イーストマンケミカル製PCTA AN004(ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体)を、重量比率で2:1になるように混合したものである。
得られた反射偏光フィルム積層体を用い、実施例1に準じて液晶パネルを作成し、液晶セルの光源側主面に得られた反射偏光フィルム積層体(第1の偏光板)、視認側主面に偏光板X(第2の偏光板)が配置された液晶パネルを得た。また、液晶ディスプレイの形成についても実施例1に準じて行い、上記の液晶パネルを元の液晶ディスプレイに組込み、液晶ディスプレイの光源を点灯させ、パソコンにて白画面および黒画面の輝度を評価した。
このようにして得られた反射偏光フィルムの各層の樹脂構成、各層の特徴を表1に、また反射偏光フィルムおよびその積層体の物性および液晶ディスプレイの物性を表2に示す。
[比較例3]
微多孔膜を含まない以外は実施例1と同様の操作を行い、得られた反射偏光フィルムを第1の偏光板として液晶パネルを形成し、液晶ディスプレイを作成した。
[比較例4〜6]
表3に示すとおり、微多孔膜の空孔率、平均孔径、形状因子、膜厚みを変更した微多孔膜を作成した以外は実施例1と同様にして、反射偏光フィルム積層体を得、かかるフィルム積層体を第1の偏光板として液晶パネルを形成し、液晶ディスプレイを作成した。
用いた微多孔膜の種類は、比較例4は微多孔膜D、比較例5は微多孔膜E、比較例6は微多孔膜Fである。
本発明によれば、高偏光度の反射偏光フィルムを用いることにより、従来の輝度向上部材と液晶セルに隣接される偏光板との機能を一体化させることができ、さらに反射偏光フィルムの片面に高い拡散性能と輝度向上性能を両立できる特定構造の微多孔膜を配置することにより、従来用いられていた拡散フィルムおよびプリズムシートの機能を一体化させることができ、液晶表示装置に用いられる各種の光学部材を削減しつつ高輝度化および輝度の均一性も高めることができる。
1 第2の偏光板
2 液晶セル
3 第1の偏光板
4 反射フィルム
5 液晶パネル
6 光源
7 拡散フィルム
8 プリズムフィルム
9 拡散板
10 導光板

Claims (13)

  1. 第1層と第2層とが交互に積層された1軸延伸多層積層フィルムからなる反射偏光フィルムの片面に微多孔膜が配置された反射偏光フィルム積層体であって、該1軸延伸多層積層フィルムからなる反射偏光フィルムは下記式(1)で表される偏光度(P)が99.0%以上であり、
    偏光度(P)={(Ts−Tp)/(Tp+Ts)}×100 ・・・(1)
    (式(1)中、Tpは400〜800nmの波長範囲におけるP偏光の平均透過率、Tsは400〜800nmの波長範囲におけるS偏光の平均透過率をそれぞれ表す)
    該微多孔膜の空孔率が50%以上90%以下および膜厚みが1μm以上15μm以下であり、該微多孔膜を形成するボイドの平均孔径が0.1μm以上0.5μm以下かつ下記式(2)で表される孔形状因子fが1.5以上10.0以下である
    孔形状因子f=L /L ・・・(2)
    (式(2)中、L は孔の長径、L は孔の短径であり、孔形状因子fは、微多孔膜の機械軸方向に平行な断面での孔形状因子と機械軸方向に垂直な断面での孔形状因子との小さい方である)
    ことを特徴とする反射偏光フィルム積層体。
  2. 該微多孔膜がポリオレフィンにより形成されてなる請求項1に記載の反射偏光フィルム積層体。
  3. 該微多孔膜が二軸延伸微多孔膜である請求項1または2に記載の反射偏光フィルム積層体。
  4. 該1軸延伸多層積層フィルムが第1層と第2層とが交互に積層された多層構造を有しており、
    1)該第1層は、ジカルボン酸成分とジオール成分とのポリエステルからなる層であり、
    (i)該ジカルボン酸成分は5モル%以上50モル%以下の下記式(A)で表される成分および50モル%以上95モル%以下の下記式(B)で表される成分を含有し、
    (式(A)中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基を表わす)
    (式(B)中、Rはフェニレン基またはナフタレンジイル基を表わす)
    (ii)該ジオール成分は90モル%以上100モル%以下の下記式(C)で表される成分を含有する、
    (式(C)中、Rは炭素数2〜10のアルキレン基を表わす)
    請求項1〜3のいずれかに記載の反射偏光フィルム積層体。
  5. 第2層はイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸および脂環族ジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を共重合成分として含む共重合ポリエチレンテレフタレートからなる層である請求項1〜4のいずれかに記載の反射偏光フィルム積層体。
  6. 該1軸延伸多層積層フィルムの積層数が251層以上である請求項1〜5のいずれかに記載の反射偏光フィルム積層体。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の反射偏光フィルム積層体からなる液晶ディスプレイ偏光板用反射偏光フィルム積層体。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の反射偏光フィルム積層体からなる液晶ディスプレイ用偏光板。
  9. 請求項8に記載の液晶ディスプレイ用偏光板からなる第1の偏光板、液晶セル、および第2の偏光板がこの順で積層されてなる液晶ディスプレイ用光学部材。
  10. 第2の偏光板が吸収型偏光板である請求項9に記載の液晶ディスプレイ用光学部材。
  11. 第1の偏光板、液晶セルおよび第2の偏光板が積層されてなり、第1の偏光板および第2の偏光板が請求項8に記載の液晶ディスプレイ用偏光板からなる、液晶ディスプレイ用光学部材。
  12. 光源と請求項9〜11のいずれかに記載の液晶ディスプレイ用光学部材とを備え、第1の偏光板が光源側に配置されてなる液晶ディスプレイ。
  13. 光源と第1の偏光板との間にさらに反射型偏光板を有していない請求項12に記載の液晶ディスプレイ。
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