以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面においては、同一要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略される。
実施の形態1
まず、実施の形態1にかかるパラレル機構100について説明する。図1は、実施の形態1にかかるパラレル機構100の概略構成を模式的に示す斜視図である。パラレル機構100は、直線駆動機構1、2及び3、ベースプレート4、移動ステージ5、2自由度ジョイントJ11〜J13、J21〜J23、レーザトラッカ411、リフレクタ511を有する。本実施の形態では、パラレル機構100が形状測定機に適用される場合について説明する。パラレル機構100は、制御部7により制御される。制御部7は、パラレル機構100を含む形状測定機及びパラレル機構100に搭載された測定部(レーザトラッカ411)の駆動、さらには形状測定機としての測定動作を制御する。移動ステージ5の下面には、プローブ6が設けられる。プローブ6のスタイラス6aは、鉛直方向(図1のZ軸に沿う方向)に延在している。スタイラス6aの下端には、先端球6bが設けられる。形状測定機においては、先端球6bがステージ72上に載置された被測定物71と接触し、先端球6bの変位量を検出することにより、被測定物71の形状を測定することができる。なお、図1では、図面の簡略化のため、直線駆動機構1〜3、2自由度ジョイントJ11〜J13及びJ21〜J23を簡略化して表示している。
図1では、ベースプレート4がポール8により支持されている例を表示している。ベースプレート4の下面には、2自由度ジョイントJ11〜J13が、半径R1の円C1の円周上に、それぞれ120°ずつ離隔して配置される。ベースプレート4及び移動ステージ5は、後述する直線駆動機構1、2及び3が連結される3つの連結辺と、これらの連結辺との間を結ぶ直線部とからなる六角形状とされている。
直線駆動機構1、2及び3は、ベースプレート4と移動ステージ5との間に設けられ、ベースプレート4と移動ステージ5と間で伸縮可能(長手方向又は軸方向に伸縮可能)な構成を有する。直線駆動機構1、2及び3の一端は、それぞれ2自由度ジョイントJ11〜J13を介してベースプレート4と連結される。これにより、直線駆動機構1、2及び3は、それぞれ2自由度ジョイントJ11〜J13を支持端(回転中心)とする3次元極座標系において、ベースプレート4に対して互いに直交する2つの偏角方向の運動を行うことが可能となる。
移動ステージ5の上面には、2自由度ジョイントJ21〜J23が、半径R2の円C2の円周上に、それぞれ120°ずつ離隔して配置される。直線駆動機構1、2及び3の他端は、それぞれ2自由度ジョイントJ21〜J23を介して移動ステージ5と連結される。なお、図面の簡略化のため、図1では円C2の表示を省略し、後述する図6にて円C2を表示している。
制御部7は、直線駆動機構1、2及び3の伸縮を制御する。直線駆動機構1、2及び3のそれぞれが伸縮することにより、ベースプレート4に対する移動ステージ5の相対位置が変化する。つまり、直線駆動機構1、2及び3が適宜伸縮することで、移動ステージ5が、ベースプレート4と平行なままで、ベースプレート4の主面に対して水平な方向(図1のX方向及びY方向)及び垂直な方向(図1のZ方向)に移動することができる。
図2は、パラレル機構100の構造をより詳細に示す斜視図である。直線駆動機構1、2及び3は、同様の構成を有する。以下では、代表として、直線駆動機構1について説明する。図3は、直線駆動機構1を図2のA方向から観察した場合の構成図である。直線駆動機構1は、伸縮ロッド10、直動ロッド11及び12を有する。直動ロッド11及び12は、伸縮ロッド10が伸縮運動を行うときのガイドとして機能する。
伸縮ロッド10の一端は、2自由度ジョイントJ11を構成する球面ジョイント101に接合されている。伸縮ロッド10の他端は、2自由度ジョイントJ21を構成する球面ジョイント15を介して、移動ステージ5と連結される。球面ジョイント15は、移動ステージ5により図3の紙面水平方向から挟まれて支持される。
直動ロッド11の一端は、直動ベアリング13により、2自由度ジョイントJ11と連結される。直動ベアリング13は、2自由度ジョイントJ11を構成する球面ジョイント131に挿通されている。これにより、直動ロッド11は、2自由度ジョイントJ11を支持端として、動径方向に伸縮することが可能である。また、直動ロッド11は、2自由度ジョイントJ11に対して互いに直交する2つの偏角方向の運動を行うことができる。
移動ステージ5の連結辺の両端には、連結辺の側面との間に球面ジョイント16及び17のそれぞれを挟んで支持する固定具18及び19が設けられている。直動ロッド11の他端は、2自由度ジョイントJ12を構成する球面ジョイント16を介して、移動ステージ5の連結辺と連結される。これにより、直動ロッド11は、2自由度ジョイントJ21に対して互いに直交する2つの偏角方向の運動を行うことができる。
直動ロッド12の一端は、直動ベアリング14により、2自由度ジョイントJ11と連結される。直動ベアリング14は、2自由度ジョイントJ11を構成する球面ジョイント141に挿通されている。これにより、直動ロッド12は、2自由度ジョイントJ12を支持端として、動径方向に伸縮することが可能である。また、直動ロッド12は、2自由度ジョイントJ11に対して互いに直交する2つの偏角方向の運動を行うことができる。
直動ロッド12の他端は、2自由度ジョイントJ12を構成する球面ジョイント17を介して、移動ステージ5の連結辺と連結される。これにより、直動ロッド12は、2自由度ジョイントJ21に対して互いに直交する2つの偏角方向の運動を行うことができる。
以上より、直線駆動機構1の伸縮ロッド10、直動ロッド11及び12は、2自由度ジョイントJ11と2自由度ジョイントJ21との間で、紙面水平方向を軸とする回転運動と、紙面に対して垂直方向を軸とする回転運動が可能である。
直線駆動機構2は、直線駆動機構1と同様の構成を有する。また、2自由度ジョイントJ12及び2自由度ジョイントJ22は、それぞれ2自由度ジョイントJ11及び2自由度ジョイントJ21と同様の構成を有する。よって、2自由度ジョイントJ12は、2自由度ジョイントJ11と同様の態様で伸縮ロッド10、直動ロッド11及び12と連結される。2自由度ジョイントJ22は、2自由度ジョイントJ21と同様の態様で伸縮ロッド10、直動ロッド11及び12と連結される。
直線駆動機構3は、直線駆動機構1と同様の構成を有する。また、2自由度ジョイントJ13及び2自由度ジョイントJ23は、それぞれ2自由度ジョイントJ11及び2自由度ジョイントJ21と同様の構成を有する。よって、2自由度ジョイントJ13は、2自由度ジョイントJ11と同様の態様で伸縮ロッド10、直動ロッド11及び12と連結される。2自由度ジョイントJ23は、2自由度ジョイントJ21と同様の態様で伸縮ロッド10、直動ロッド11及び12と連結される。
よって、移動ステージ5は、ベースプレート4に対して、並進運動が可能である。すなわち、パラレル機構100は、並進3自由度パラレル機構を構成することが理解できる。
続いて、レーザトラッカ411及びリフレクタ511について説明する。レーザトラッカ411は、ベースプレート4の上面に設けられる。図4は、図2のB方向から見た場合のパラレル機構100のベースプレート4の俯瞰図である。この際、レーザトラッカ411は、ベースプレート4のレーザトラッカ411設置面の中心(ベースプレート4のレーザトラッカ設置面の図心であり、すなわち幾何学的な重心である)に、レーザ光出射口が位置することが望ましい。図2に示すように、レーザトラッカ411は、ベースプレート4に設けられた開口部611を通して、移動ステージ5上のリフレクタ511へ向けてレーザ光(コヒーレント光)を出射することができる。
ここで、レーザトラッカ411の構成について説明する。図5は、レーザトラッカ411の構成を模式的に示す図である。レーザトラッカ411は、ベースブロック4100、基準球4101、各軸に図示しない回転角度検出器(例えばロータリーエンコーダ)を内蔵する2軸回転駆動機構4102、レーザ干渉測長計4103、基台4106を有する。以下、レーザトラッカは、単に測定部とも称する。また、リフレクタは、単に反射部とも称する。
ベースブロック4100は直方体の外形を有し、ベースプレート4上に載置される。基準球4101は、ベースブロック4100からベースプレート4上のベースブロック4100載置面と平行に伸びる丸棒軸により支持される。これにより、ベースプレート4に対する基準球4101の中心の相対的位置が固定される。基準球4101の中心は丸棒軸上に位置している。ベースブロック4100には丸棒軸と同軸に円筒状の基台4106が設けられている。基台4106上には、基準球4101を内包した2軸回転駆動機構4102が設けられている。したがって、基準球4101の中心は基台4106の軸上に位置している。2軸回転駆動機構4102は、基準球4101の中心を通り、且つ、基台4106の軸と基台4106の軸に直交しベースプレート4のレーザトラッカ411設置面に平行な軸を中心として回動可能とされている。
なお、上述では、ベースプレート4のレーザトラッカ411設置面の図心(レーザトラッカ411設置面の幾何学的な重心)に、レーザ光出射口が位置することが望ましいと述べた。これは、基準球4101の中心がベースプレート4のレーザトラッカ411設置面の中心(ベースプレート4のレーザトラッカ設置面の図心であり、すなわち幾何学的な重心である)に配置されることを意味する。これにより、レーザトラッカ411の設置位置に起因する測定の位置依存性を最小化し、平均化ができる。ただし、レーザトラッカ411の設置位置はこの例に限られず、ベースプレート4上の他の位置に設置することも可能である。
これにより、2軸回転駆動機構4102は、基準球4101の中心を原点として、方位角φの方向及び仰俯角θの方向に駆動可能である。なお、方位角φ及び仰俯角θは、例えばロータリーエンコーダ(不図示)により検出することが可能である。
レーザ干渉測長計4103は、出射したレーザ光(コヒーレント光)と反射光とを干渉させることにより、反射光を発した対象物の移動距離を測定する。レーザ干渉測長計4103は、例えばマイケルソン型のレーザ干渉計を用いて構成できる。レーザ干渉測長計4103は、レーザ光源(コヒーレント光源)、及び受光部を有する。レーザ光源は、例えば波長が安定化された長さ標準にトレーサブルなHe−Neレーザが用いられる。
レーザ干渉測長計4103は、レーザ光源からレーザ光4104を出射する。2軸回転駆動機構4102は基準球4101を基準として回転するので、レーザ光は基準球4101とリフレクタ511とを結ぶ線に光軸が一致するように出射される。これにより、レーザ干渉測長計4103とリフレクタ511との位置関係が変化しても、2軸回転駆動機構4102でレーザ干渉測長計4103を駆動して、レーザ光をリフレクタ511に照射することができる。
レーザ光4104は、リフレクタ511で反射される。図5では、反射光を反射光4105と表示している。レーザ干渉測長計4103は、内部でレーザ光4104と反射光4105とを干渉させることにより、レーザ干渉測長計4103とリフレクタ511との間の距離の変動を測定することができる。また、レーザ干渉測長計4103と基準球4101との間の距離は既知である。レーザトラッカ411は、レーザ干渉測長計4103とリフレクタ511との間の距離とレーザ干渉測長計4103と基準球4101との間の距離とを加算した値を、測長結果として制御部7に出力する。
なお、レーザトラッカ411は、制御部7による制御を受けて、リフレクタ511の移動に追随してレーザ光の出射方向を自動的に変化させることが可能である。例えば、レーザ干渉測長計4103の受光部は、反射光のビームスポットの重心を検出することができる2次元受光素子が用いられる。そして、反射光のビームスポットの重心位置の移動を検知することにより、反射光のビームスポットの重心が一定の範囲内に収まるよう、制御部7は2軸回転駆動機構4102の方位角φの方向及び仰俯角θの方向の駆動を制御する(追尾制御と称する)。
次いで、リフレクタ511について説明する。図6は、図2のC向から見た場合のパラレル機構100の移動ステージ5の俯瞰図である。リフレクタ511は、移動ステージ5の上面に設けられる。この際、リフレクタ511は、移動ステージ5の上面の中心(移動ステージ5のリフレクタ設置面の図心であり、すなわち幾何学的な重心である)に設けられることが望ましい。これにより、リフレクタ511の設置位置に起因する測定の位置依存性を最小化、平均化できる。ただし、リフレクタ511の設置位置はこの例に限られず、移動ステージ5上の他の位置に設置することも可能である。
リフレクタ511は、レーザトラッカ411から出射されたレーザ光がどの方向から入射した場合でも、忠実に入射方向と反対方向にレーザ光を反射させる機能を有している。このようなリフレクタとして、キューブコーナを用いることができる。また、レーザ光が入射できる角度範囲を広げるためには、屈折率が2の光学材料を真球に加工して得られる、いわゆるキャッツアイを用いることもできる。
図7は、キャッツアイにおける入射光及び反射光の経路を模式的に示す図である。例えば、台座5101に固定されたキャッツアイ5102に光が入射するものとする。入射光はキャッツアイ5102に入射すると屈折し、入射面と反対側の界面に到達する。入射光は到達した界面で入射角と等しい反射角で反射され、反射光となる。反射光は、キャッツアイ5102の入射側の界面に到達すると屈折し、その結果、反射光の光軸は、入射光の光軸と同一となる。
制御部7は、レーザ光4104が常時リフレクタ511に入射するように、移動ステージ5の動きに合わせてレーザトラッカ411の2軸回転駆動機構4102を制御する上述の追尾制御を行う。
制御部7は、レーザトラッカ411から出力される測定結果をモニタすることにより、移動ステージ5の移動距離を高精度に算出することが可能である。本実施の形態では、制御部7は、レーザトラッカ411のレーザ光出射方向の変動(方位角φ及び仰俯角θの変動)、及び測長結果から得られる動径方向の長さ情報を用いてリフレクタ511の空間座標を決定する(いわゆる極座標方式)。
レーザトラッカとリフレクタとを用いて精密な座標測定を行うには、パラレル機構の外部にレーザトラッカを設け、移動ステージにリフレクタを設けることも考え得る。しかし、移動ステージが移動する際に、外部から入射するレーザトラッカからのレーザ光を直線駆動機構が遮ってしまう場合がある。ましてや、移動ステージが各軸周りに回転可能な6自由度パラレル機構では移動ステージ自身がリフレクタを遮ってしまう場合がある。そのため、パラレル機構の外部にレーザトラッカを設けると、追跡可能な移動ステージの可動範囲に制限が生じ、駆動中のパラレル機構の座標位置を正確に追跡することができない。
これに対し、パラレル機構100は、レーザトラッカ411をベースプレート4上に設け、リフレクタ511を移動ステージ5のベースプレート4側の面上に設けている。そのため、レーザトラッカ411は開口部611を通じて常に移動ステージ5を俯瞰することができる。よって、レーザトラッカ411は、移動ステージ5の駆動状態にかかわらず、常にリフレクタ511にレーザ光を照射できる。その結果、パラレル機構100は、駆動中のパラレル機構の座標位置を正確に追跡することができる。
実施の形態2
次に、実施の形態2にかかるパラレル機構200について説明する。図8は、実施の形態2にかかるパラレル機構200の構成を模式的に示す斜視図である。パラレル機構200は、パラレル機構100の変形例である。パラレル機構200は、パラレル機構100のレーザトラッカ411及びリフレクタ511の代わりに、レーザトラッカ421及び422、リフレクタ521及び522を有する。レーザトラッカ421及び422は、レーザトラッカ411と同様の構成を有する。リフレクタ521及び522は、リフレクタ511と同様の構成を有する。パラレル機構200のその他の構成は、パラレル機構100と同様であるので、説明を省略する。
図9は、図8のB方向から見た場合のパラレル機構200のベースプレート4の俯瞰図である。レーザトラッカ421は、ベースプレート4の上面に設けられる。この際、レーザトラッカ421は、ベースプレート4のレーザトラッカ421設置面において、2自由度ジョイントJ11と2自由度ジョイントJ13との間の辺部近傍に設けられることが望ましい。また、この際、レーザトラッカ421の基準球4101の中心は、ベースプレート4の上面の図心から2自由度ジョイントJ11と2自由度ジョイントJ13との間の辺部に下した垂線上に位置することが望ましい。
レーザトラッカ422は、ベースプレート4の上面に設けられる。この際、レーザトラッカ422は、ベースプレート4のレーザトラッカ422設置面において、2自由度ジョイントJ12の近傍に設けられることが望ましい。また、この際、レーザトラッカ422の基準球4101の中心は、ベースプレート4の上面の図心に対してレーザトラッカ421の基準球4101の中心と対称な位置に配置されることが望ましい。
図10は、図8のC方向から見た場合のパラレル機構200の移動ステージ5の俯瞰図である。リフレクタ521は、移動ステージ5の上面に設けられる。また、この際、リフレクタ521の中心は、移動ステージ5の上面の図心から2自由度ジョイントJ21と2自由度ジョイントJ23との間の辺部に下した垂線上に位置することが望ましい。
リフレクタ522は、移動ステージ5の上面に設けられる。この際、リフレクタ522は、移動ステージ5のリフレクタ522設置面において、移動ステージ5の上面の図心に対してリフレクタ521と対称な位置に配置されることが望ましい。
レーザトラッカ421は、ベースプレート4に設けられた開口部621を通して、リフレクタ521へ向けてレーザ光を出射することができる。リフレクタ521は、レーザトラッカ421から出射されたレーザ光がどの方向から入射した場合でも、忠実に入射方向と反対方向にレーザ光を反射させる機能を有している。
レーザトラッカ422は、ベースプレート4に設けられた開口部622を通して、リフレクタ522へ向けてレーザ光を出射することができる。リフレクタ522は、レーザトラッカ422から出射されたレーザ光がどの方向から入射した場合でも、忠実に入射方向と反対方向にレーザ光を反射させる機能を有している。
これにより、移動ステージ5上でのリフレクタ521及びリフレクタ522の座標を特定することが可能となる。また、リフレクタ521とリフレクタ522と結ぶ線と直交する方向の移動ステージ5の回転(図10の方向Dを軸とする回転)を検出することも可能となる。
ただし、レーザトラッカ421及び422の設置位置はこの例に限られず、ベースプレート4上の他の位置に設置することも可能である。リフレクタ521及び522の設置位置はこの例に限られず、移動ステージ5上の他の位置に設置することも可能である。
制御部7は、レーザトラッカ421からのレーザ光が常時リフレクタ521に入射するように、移動ステージ5の動きに合わせてレーザトラッカ421の2軸回転駆動機構4102を制御する追尾制御を行う。また、制御部7は、レーザトラッカ422からレーザ光が常時リフレクタ522に入射するように、移動ステージ5の動きに合わせてレーザトラッカ422の2軸回転駆動機構4102を制御する追尾制御を行う。
これにより、制御部7は、レーザトラッカ421及び422から出力される測定結果をモニタすることにより、移動ステージ5の移動方向および移動距離を高精度に算出することが可能である。
本実施の形態では、制御部7は、レーザトラッカ421及び422のベースプレート4上の事前に測定された正確な位置情報とそれぞれのレーザトラッカ421及び422が観測する方位角φ1、φ2と仰俯角θ1、θ2及び測長結果から得られる動径方向の長さ情報L1、L2を用いて、それぞれのレーザトラッカ421及び422が、移動ステージ5上の異なる位置(事前に測定が可能)に配置された2個の反射体(リフレクタ521及び522)の空間座標を決定する(いわゆる三角測量方式)。
一般に、極座標方式の場合には、方位角φ、仰俯角θ及び動径方向の距離を用いて座標を決定することができる。この場合、動径方向の距離が長いほど、移動距離算出時の方位角φ及び仰俯角θの誤差に起因する移動距離の誤差が大きくなる。
本構成によれば、実施の形態1にかかるパラレル機構100よりも2倍多い、4つの角度情報と2つの長さ情報によって、より高精度に移動ステージ5の移動距離と位置とを算出することができる。
実施の形態3
次に、実施の形態3にかかるパラレル機構300について説明する。図11は、実施の形態3にかかるパラレル機構300の構成を模式的に示す斜視図である。パラレル機構300は、パラレル機構100の変形例である。パラレル機構300は、パラレル機構100のレーザトラッカ411及びリフレクタ511の代わりに、レーザトラッカ431、432及び433、リフレクタ531、532及び533を有する。レーザトラッカ431、432及び433は、レーザトラッカ411と同様の構成を有する。リフレクタ531、532及び533は、リフレクタ511と同様の構成を有する。パラレル機構300のその他の構成は、パラレル機構100と同様であるので、説明を省略する。
図12は、図11のB方向から見た場合のパラレル機構300のベースプレート4の俯瞰図である。ベースプレート4の上面には、レーザトラッカ431〜433が、半径R3の円C3の円周上に、それぞれ120°ずつ離隔して配置される。つまり、レーザトラッカ431〜433は、レーザトラッカ431〜433の基準球4101の中心が、円C3の円周上に配置される。すなわち、レーザトラッカ431〜433は、ベースプレート4のレーザトラッカ設置面の図心(ベースプレート4のレーザトラッカ設置面の幾何学的な重心)を基準として、等間隔に配置される。
図13は、図11のC方向から見た場合のパラレル機構300の移動ステージ5の俯瞰図である。移動ステージ5の上面には、リフレクタ531〜533が、半径R4の円C4の円周上に、それぞれ120°ずつ離隔して配置される。すなわち、リフレクタ531〜533は、移動ステージ5のリフレクタ設置面の図心(移動ステージ5のリフレクタ設置面の幾何学的な重心)を基準として等間隔に配置される。
レーザトラッカ431は、ベースプレート4に設けられた開口部631を通して、リフレクタ531へ向けてレーザ光を出射することができる。リフレクタ531は、レーザトラッカ431から出射されたレーザ光がどの方向から入射した場合でも、忠実に入射方向と反対方向にレーザ光を反射させる機能を有している。
レーザトラッカ432は、ベースプレート4に設けられた開口部632を通して、リフレクタ532へ向けてレーザ光を出射することができる。リフレクタ532は、レーザトラッカ432から出射されたレーザ光がどの方向から入射した場合でも、忠実に入射方向と反対方向にレーザ光を反射させる機能を有している。
レーザトラッカ433は、ベースプレート4に設けられた開口部633を通して、リフレクタ533へ向けてレーザ光を出射することができる。リフレクタ533は、レーザトラッカ433から出射されたレーザ光がどの方向から入射した場合でも、忠実に入射方向と反対方向にレーザ光を反射させる機能を有している。
以上により、レーザトラッカ431とリフレクタ531との間の距離、レーザトラッカ432とリフレクタ532との間の距離、及び、レーザトラッカ433とリフレクタ533との間の距離を高精度に測定することができ、リフレクタ531〜533の中心座標を容易に特定できる。また、移動ステージ5の回転(図13の方向D及びEを軸とする回転)を検出することも可能となる。したがって、測定結果を制御部7にフィードバックすることによって、より高精度に移動ステージ5の位置および姿勢の制御を行うことが可能となる。
ただし、レーザトラッカ431〜433の設置位置はこの例に限られず、ベースプレート4の他の位置に設置することも可能である。リフレクタ531〜533の設置位置はこの例に限られず、移動ステージ5上の他の位置に設置することも可能である。
制御部7は、レーザトラッカ431からのレーザ光が常時リフレクタ531に入射するように、移動ステージ5の動きに合わせてレーザトラッカ431の2軸回転駆動機構4102を制御する追尾制御を行う。また、制御部7は、レーザトラッカ432から出射されるレーザ光が常時リフレクタ532に入射するように、移動ステージ5の動きに合わせてレーザトラッカ432の2軸回転駆動機構4102を制御する追尾制御を行う。更に、制御部7は、レーザトラッカ433から出射されるレーザ光が常時リフレクタ533に入射するように、移動ステージ5の動きに合わせてレーザトラッカ433の2軸回転駆動機構4102を制御する追尾制御を行う。
これにより、制御部7は、レーザトラッカ431〜433から出力される測定結果をモニタすることにより、移動ステージ5の移動距離を高精度に算出することが可能である。
本実施の形態では、制御部7は、レーザトラッカ431〜433から得られる3つの動径方向の長さ情報を用いて、リフレクタ531〜533の空間座標を決定する(いわゆる三辺測量方式)。レーザトラッカ431〜433は、レーザ光の干渉を用いているので、動径方向の距離を高い分解能で得ることができる。三辺測量方式では、空間座標を決定するにあたって、角度情報を使わずに3方向からのアッベの原理に適った長さ情報を用いる。そのため、前述の極座標方式や三角測量方式に比べ、座標決定精度が高い。そのため、パラレル機構300(三辺測量方式)は、パラレル機構100(極座標方式)及び200(三角測量方式)よりも高精度に移動ステージ5の移動距離を算出できる。
言い換えると、2軸回転駆動機構4102に内蔵される2次元受光素子と回転角度検出器によって測定される方位角φ及び仰俯角θの角度情報は追尾制御にのみ用いられ、移動ステージ5の移動距離の算出にはレーザトラッカ431〜433から得られる3つの動径方向の長さ情報のみが用いられる。そのため、パラレル機構100及び200と異なり、動径方向の距離の増大に伴う誤差の増大は発生せず、移動ステージ5の位置にかかわらず、高精度に移動ステージ5の移動距離を算出できる。
上述した実施の形態1乃至3においては、レーザトラッカ411、421、422、431〜433が基準球を備えるため、ベースプレート4に対して固定された点と移動ステージ5に設けられたリフレクタとの距離を正確に測定することができる。以下、その理由を説明する。
図14を参照して、基準球4101の中心Oは、ベースプレート4に対して固定された点である。2軸回転駆動機構4102の二つの回転軸は、中心Oで直交する。したがって、2軸回転駆動機構4102がレーザ干渉測長計4103を回転させても、レーザ干渉測長計4103の光軸は常に基準球4101の中心Oを通る。レーザ干渉測長計4103は、レーザダイオードのような光源41と、コリメータレンズ42と、偏光ビームスプリッタ43と、偏光板44と、光検出器45と、1/4波長板(λ/4板)46及び47と、無偏光ビームスプリッタ48と、位置検出器(PSD:Position Sensitive Detector)49と、集光レンズ50とを備える。尚、位置検出器49のかわりに4分割フォトダイオード(QPD:Quadrant Photodiode)を用いてもよい。
光源41から出射された光線は、コリメータレンズ42を通過した後、偏光ビームスプリッタ43により2つに分けられる。一方(S偏光)は参照光として、偏光板44に向かって直進する。他方(P偏光)は測定光として、偏光ビームスプリッタ43で反射され、λ/4板46及び集光レンズ50を介して基準球4101の中心O又は表面に向けて出射される。ここで、測定光は、λ/4板46によりP偏光から円偏光に変換される。基準球12の表面で反射された測定光は、集光レンズ50、λ/4板46、偏光ビームスプリッタ43、λ/4板47、及び無変更ビームスプリッタ48を経て、リフレクタ511に照射される。ここで、測定光は、λ/4板46により円偏光からS偏光に変換され、λ/4板47によりS偏光から円偏光に変換される。測定光は、基準球4101の中心Oとリフレクタ511を結ぶ直線を光軸として出射される。
リフレクタ511で反射した測定光は、レーザ干渉測長計4103に入射する。レーザ干渉測長計4103に入射した測定光は、無偏光ビームスプリッタ48により2つに分けられる。一方は、無偏光ビームスプリッタ48で反射され、位置検出器49に入射する。他方は、λ/4板47、偏光ビームスプリッタ43、及び偏光板44を経て、上述の参照光と干渉して干渉光を生成する。ここで、測定光は、λ/4板47により円偏光からP偏光に変換される。干渉光は、光検出器45に入射する。光検出器45の出力は干渉光の干渉縞に応じて変化するので、光検出器45の出力に基づいて基準球4101の中心Oを基準としたリフレクタ511の変位を測定することができる。
基準球4101の表面と中心Oとの距離が高い精度で一定であるので、レーザ干渉測長計4103がリフレクタ511を追尾して2軸回転駆動機構4102の回転軸を中心として回転した場合でも、光検出器45の出力に基づいて基準球4101の中心Oを基準としたリフレクタ511の変位を高精度に測定することができる。
一方、リフレクタ511に対する追尾は、次のようにして行なわれる。リフレクタ511によって反射された測定光は、位置検出器49に入射する。制御部7は、位置検出器49の出力信号に基づいて、位置検出器49上の所定の位置に測定光が入射するように2軸回転駆動機構4102の駆動を制御する。これにより、レーザ干渉測長計4103の光軸が常にリフレクタ511を通る。
図15は、レーザトラッカ411の他の構成を示す。レーザトラッカ411は、2軸回転駆動機構4102によって駆動されるキャリッジ4108を備える。レーザ干渉測長計4103は、キャリッジ4108に取り付けられている。直線L411は、レーザ干渉測長計4103の光軸に一致している。2軸回転駆動機構4102がキャリッジ4108を回転させても、直線L411は常に基準球4101の中心Oを通る。キャリッジ4108に変位計52及び53が設けられている。変位計52及び53は直線L411上に配置され、変位計52及び53の間に基準球4101が配置される。変位計52及び53は、基準球4101までの距離に応じた信号を出力する。
変位計52及び53として、例えば、静電容量式変位計や渦電流式変位計を使用することができる。基準球4101としては、金属製、セラミックス製、半導体製、又はガラス製の球を使用することができる。但し、変位計52及び53として渦電流式変位計を使用する場合は、金属製の球又は表面が金属でコーティングされた球を使用する必要がある。
図16を参照して、図15に示したレーザ干渉測長計4103は、光源41と、コリメータレンズ42と、偏光ビームスプリッタ43と、偏光板44と、光検出器45と、λ/4板46及び47と、無偏光ビームスプリッタ48と、位置検出器49と、キューブコーナ51とを備える。キューブコーナ51は、コーナキューブプリズムと称される場合がある。
光源41から出射された光線は、コリメータレンズ42を通過した後、偏光ビームスプリッタ43により2つに分けられる。一方(P偏光)は参照光として、偏光板44に向かって直進する。他方(S偏光)は測定光として、偏光ビームスプリッタ43で反射され、λ/4板47、及び無変更ビームスプリッタ48を経て、リフレクタ511に照射される。ここで、測定光は、λ/4板47によりS偏光から円偏光に変換される。測定光は、基準球4101の中心Oとリフレクタ511を結ぶ直線L411を光軸として出射される。
リフレクタ511で反射した測定光は、レーザ干渉測長計4103に入射する。レーザ干渉測長計4103に入射した測定光は、無偏光ビームスプリッタ48により2つに分けられる。一方は、無偏光ビームスプリッタ48で反射され、位置検出器49に入射する。他方は、λ/4板47、偏光ビームスプリッタ43、及びλ/4板46を経て、キューブコーナ51に入射する。ここで、測定光は、λ/4板47により円偏光からP偏光に変換され、λ/4板46によりP偏光から円偏光に変換される。キューブコーナ51で反射された測定光は、λ/4板46、偏光ビームスプリッタ43、及び偏光板44を経て、上述の参照光と干渉して干渉光を生成する。ここで測定光は、λ/4板46により円偏光からS偏光に変換される。干渉光は、光検出器45に入射する。光検出器45の出力は干渉光の干渉縞に応じて変化するので、光検出器45の出力に基づいて基準球4101の中心Oを基準としたリフレクタ511の変位を測定することができる。
基準球4101の表面と中心Oとの距離が高い精度で一定であるので、レーザ干渉測長計4103がリフレクタ511を追尾して2軸回転駆動機構4102の回転軸を中心として回転した場合でも、光検出器45、変位計52、及び変位計53の出力に基づいて基準球4101の中心Oを基準としたリフレクタ511の変位を高精度に測定することができる。尚、変位計52及び53の両方を用いることが好ましいが、変位計52及び53の片方だけを用いてもよい。リフレクタ511に対する追尾は、図14に示すレーザ干渉測長計4103の場合と同様である。
実施の形態4
次に、実施の形態4にかかるパラレル機構400について説明する。実施の形態4にかかるパラレル機構400によれば、以下の問題が解決される。すなわち、パラレル機構100の制御部7は、直線駆動機構1〜3を制御して移動ステージ5を移動させるだけでなく、レーザトラッカ411がリフレクタ511を追尾するように2軸回転駆動機構4102を制御する必要がある。パラレル機構100によれば移動ステージ5の位置を高精度に観測することができるが、パラレル機構100のシステム構成が複雑かつ高コストになっている。同様に、パラレル機構200及び300のシステム構成も複雑且つ高コストになっている。
図17は、実施の形態4にかかるパラレル機構400の構成を模式的に示す斜視図である。パラレル機構400は、パラレル機構300の変形例である。パラレル機構400は、パラレル機構300のレーザトラッカ431〜433のかわりにユニバーサルレーザ干渉測長ユニット441〜443を有する。制御部7は、駆動制御部701と、演算制御部702とを備える。パラレル機構400のその他の構成は、パラレル機構300と同様であるので、説明を省略する。
ユニバーサルレーザ干渉測長ユニット441〜443は、それぞれ、従動ジョイント機構81〜83を備える。従動ジョイント機構81は、伸縮可能なテレスコピック構造を有するテレスコピック鏡筒811と、ユニバーサルジョイント812とを備える。テレスコピック鏡筒811は、伸縮可能な光路を形成する。テレスコピック鏡筒811は、第1部分8101と、第1部分8101に対して直線往復運動する第2部分8102とを備える。第1部分8101及び第2部分8102は、伸縮軸まわりに相対的に回転可能であってもよい。例えば、第1部分8101はストロークベアリング(不図示)を介して第2部分8102に接続される。第1部分8101及び第2部分8102がそれぞれ内筒及び外筒である場合が図17に示されているが、第1部分8101及び第2部分8102はそれぞれ外筒及び内筒でもよい。
駆動制御部701は、直線駆動機構1〜3の伸縮を制御する。駆動制御部701は、直線駆動機構1〜3のリニアエンコーダが出力する帰還信号に基づいて直線駆動機構1〜3の伸縮を制御してもよい。駆動制御部701は、ユニバーサルレーザ干渉測長ユニット441〜443の電源投入及び初期設定を行ってもよい。演算処理部702は、ユニバーサルレーザ干渉測長ユニット441〜443の出力に基づいて、移動ステージ5の位置及び姿勢を算出する。
図18を参照して、ユニバーサルレーザ干渉測長ユニット441は、ユニバーサル干渉計部451を備える。ユニバーサル干渉計部451は、基本的にレーザトラッカ411と同様に構成される。ただし、ユニバーサル干渉計部451の2軸回転駆動機構4102は、キャリッジ4108及びレーザ干渉測長計4103を駆動する機能と、方位角φ及び仰俯角θを検出する機能とを持たない。以下、駆動機能を持たない2軸回転駆動機構4102を2軸回転機構4102と称する。2軸回転機構4102は、ベースプレート4に設けられ、ベースプレート4に対して固定された点で直交する2本の回転軸まわりに回転可能なようにレーザ干渉測長計4103を支持する。基準球4101の中心Oは2本の回転軸の交点に一致する。テレスコピック鏡筒811の第1部分8101は、レーザ干渉測長計4103のレーザ光出射口4107に同軸に固定される。
ユニバーサル干渉計部451のレーザ干渉測長計4103は、リフレクタ531の光軸からのずれを検出する機能を持たない。例えば、ユニバーサル干渉計部451のレーザ干渉測長計4103は、図14に示す構成から無偏光ビームスプリッタ48及び位置検出器49を取り除いたものである。尚、ユニバーサル干渉計部451のレーザ干渉測長計4103は、図16に示す構成から無偏光ビームスプリッタ48及び位置検出器49を取り除いたものであってもよい。この場合、変位計52及び53の少なくとも一方がキャリッジ4108に設けられる。
図19及び図20を参照して、ユニバーサルジョイント812は、移動ステージ5に設けられ、移動ステージ5に対して固定された点で直交する2本の回転軸まわりに回転可能なように第2部分8102を支持する回転機構である。ユニバーサルジョイント812の2本の回転軸は、移動ステージ5に平行である。ユニバーサルジョイント812の2本の回転軸の交点は、リフレクタ531の中心に一致する。
上述した機構により、直線駆動機構1〜3により移動ステージ5が移動されると、レーザ干渉測長計4103は移動ステージ5の動きに追従して旋回する。換言すると、ユニバーサルレーザ干渉測長ユニット441は、常に、2軸回転機構4102の2本の回転軸の交点とユニバーサルジョイント812の2本の回転軸の交点とを結ぶ直線を光軸として測定光を出射することができる。レーザ干渉測長計4103のレーザ光出射口4107から出射された測定光(レーザ光4104)は、テレスコピック鏡筒811内の光路を通ってリフレクタ531に入射する。リフレクタ531で反射した測定光(反射光4105)は、テレスコピック鏡筒811内の光路を戻ってレーザ光出射口4107に入射する。
したがって、ユニバーサルレーザ干渉測長ユニット441は、基準球4101の中心とリフレクタ531の中心との距離を連続して測定することができる。ユニバーサルレーザ干渉測長ユニット442及び443は、ユニバーサルレーザ干渉測長ユニット441と同様の構成を有する。制御部7の演算処理部702は、ユニバーサルレーザ干渉測長ユニット441〜443の出力に基づいて、移動ステージ5の位置及び姿勢を算出することができる。
本実施の形態によれば、制御部7による追尾制御を実行しなくても、ユニバーサルレーザ干渉測長ユニット441〜443はリフレクタ531〜533をそれぞれ追尾することができる。本実施の形態にかかるパラレル機構400は、パラレル機構300よりも簡素且つ低コストのシステム構成でパラレル機構300と同等の性能を実現することができる。
実施の形態5
次に実施の形態5にかかるパラレル機構500について説明する。図21は、パラレル機構500の直線駆動機構1の近傍を示す。パラレル機構500は、パラレル機構400の変形例である。パラレル機構500においては、ユニバーサルレーザ干渉測長ユニット441及びリフレクタ531の機能が直線駆動機構1に組み込まれる。直線駆動機構2及び3は、直線駆動機構1と同様に構成される。
実施の形態5にかかる直線駆動機構1の伸縮ロッド10は、内部に光路が形成されたシャフト型リニアモータを備える直動アクチュエータである。伸縮ロッド10は、干渉計支持部1001と、伸縮可能なテレスコピック構造を有するテレスコピック鏡筒1002とを備える。干渉計支持部1001にレーザ干渉測長計4103が配置される。干渉計支持部1001の一端は、球面ジョイント101を介してベースプレート4に連結される。光ファイバ4111が球面ジョイント101に取り付けられ、光ファイバ4112が干渉計支持部1001取り付けられている。尚、光ファイバ4111が干渉計支持部1001に取り付けられていてもよい。光ファイバ4111及び4112は、レーザ干渉測長計4103に光学的に接続される。
球面ジョイント101の中心は、ベースプレート4に対して固定されている。したがって、球面ジョイント101が形成する回転機構は、ベースプレート4に設けられ、ベースプレート4に対して固定された点で直交する2本の回転軸まわりに回転可能なようにレーザ干渉測長計4103を支持する。
テレスコピック鏡筒1002は、伸縮可能な光路を形成する。テレスコピック鏡筒1002は、第1部分1003と、第1部分1003に対して直線往復運動する第2部分1004とを備える。以下、第1部分1003及び第2部分1004をそれぞれ外筒1003及び内筒1004と称する。外筒1003の一端は、干渉計支持部1001の他端に固定されている。詳細には、外筒1003の一端は、レーザ干渉測長計4103のレーザ射出口4107に同軸に固定されている。外筒1003の他端には、外筒1003と内筒1004の間をシールするシール部1005が形成されている。また、外筒1003の他端に電磁石1006が固定されている。外筒1003にガス導入口1007が設けられている。電磁石1006の上側(球面ジョイント101側)及び下側(球面ジョイント15側)に、摺動ガイド1011がそれぞれ設けられている。摺動ガイド1011は、例えば、摩擦係数の小さなフッ素系樹脂材料で形成され、外筒1003及び内筒1004の同軸度を確保しつつ同軸上での相対運動を可能にする。
内筒1004の一端にピストン1008が固定されている。ピストン1008は、中空円板形状に形成されている。ピストン1008は、外筒1003内に配置される。内筒1004の内側に、永久磁石1009が固定されている。この永久磁石1009は、中空円板形状の永久磁石が積み重ねられて形成されている。したがって、伸縮ロッド10の内部に伸縮可能な光路が形成される。内筒1004の他端は、球面ジョイント15を介して移動ステージ5に連結される。球面ジョイント15の中心にリフレクタ541が配置される。リフレクタ541は、例えばキューブコーナである。
球面ジョイント15の中心は、移動ステージ5に対して固定されている。したがって、球面ジョイント15が形成する回転機構は、移動ステージ5に設けられ、移動ステージ5に対して固定された点で直交する2本の回転軸まわりに回転可能なように内筒1004を支持する。
電磁石1006及び永久磁石1009は、伸縮ロッド10を伸縮させるための駆動力を発生するリニアモータを形成する。また、外筒1003の内側面、内筒1004の外側面、ピストン1008、及びシール部1005で囲まれた空間1010にガス導入口1007から、被駆動部重量とバランスするように圧力を設定した圧縮ガスを供給することで、リニアモータの負荷を低減することができる。
レーザ干渉測長計4103は、光ファイバ4111を介して入力光を入力し、入力光から測定光及び参照光を生成する。レーザ干渉測長計4103のレーザ光出射口4107は、球面ジョイント101の中心と球面ジョイント15の中心とを結ぶ直線を光軸として測定光を出射する。測定光は、テレスコピック鏡筒1002の内部を通って、リフレクタ541に照射される。リフレクタ541で反射した測定光は、レーザ干渉測長計4103のレーザ光出射口4107に入射する。レーザ干渉測長計4103は、リフレクタ541で反射した測定光と参照光を干渉させて干渉光を生成し、光ファイバ4112を介して干渉光を出力する。干渉光に基づいて、球面ジョイント101の中心と球面ジョイント15の中心との距離を測定することができる。
本実施の形態によれば、テレスコピック鏡筒1002が伸縮ロッド10の一部となっている。そのため、パラレル機構500の製造コストが低減され、直線駆動機構1〜3によって駆動される被駆動部が軽量化される。被駆動部が軽量化されるので、移動ステージ5の高速移動が可能である。尚、伸縮ロッド10は、内部に光路が形成されたボールねじを備える直動アクチュエータであってもよい。
更に、球面ジョイント101及び干渉計支持部1001をスーパインバー(FN−315)やインバー(FN−36)のような低熱膨張材料で形成することが好ましい。パラレル機構500の周囲の温度が変化する場合においても、球面ジョイント101の中心と球面ジョイント15の中心との距離を正確に測定することができる。
図22を参照して、本実施の形態にかかるレーザ干渉測長計4103の構成を詳細に説明する。レーザ干渉測長計4103は、コリメータレンズ42と、偏光ビームスプリッタ43と、偏光板44と、λ/4板46及び47と、キューブコーナ51とを備える。レーザ干渉測長計4103は、光ファイバ4111を介して、レーザ干渉測長計4103の外部に設けられた光源41から入力光を入力する。
入力光は、コリメータレンズ42を通過した後、偏光ビームスプリッタ43により2つに分けられる。一方(S偏光)は参照光として、偏光ビームスプリッタ43で反射され、偏光板44に向かう。他方(P偏光)は測定光として直進し、λ/4板47を経て、リフレクタ541に照射される。ここで、測定光は、λ/4板47によりP偏光から円偏光に変換される。
リフレクタ541で反射した測定光は、レーザ干渉測長計4103に入射する。レーザ干渉測長計4103に入射した測定光は、λ/4板47、偏光ビームスプリッタ43、及びλ/4板46を経て、キューブコーナ51に入射する。ここで、測定光は、λ/4板47により円偏光からS偏光に変換され、λ/4板46によりS偏光から円偏光に変換される。キューブコーナ51で反射された測定光は、λ/4板46、偏光ビームスプリッタ43、及び偏光板44を経て、上述の参照光と干渉して干渉光を生成する。ここで測定光は、λ/4板46により円偏光からP偏光に変換される。レーザ干渉測長計4103は、光ファイバ4112を介して、レーザ干渉測長計4103の外部に設けられた光検出器45に干渉光を出力する。
本実施の形態によれば、光ファイバ4111及び4112を用いることで、光源41及び光検出器45をレーザ干渉測長計4103の外部に設けることができる。そのため、レーザ干渉測長計4103が小型化され、レーザ干渉測長計4103を伸縮ロッド10に組み込むことが容易になる。尚、レーザトラッカ411、421、422、431〜433やユニバーサルレーザ干渉測長ユニット441〜443に対しても光ファイバ4111及び4112を適用してもよい。
その他の実施の形態
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。実施の形態1乃至3では、1又は2以上のレーザトラッカがベースプレートの移動ステージ側とは反対側の面上に設けられ、レーザトラッカはベースプレートの開口部を通して移動ステージのベースプレート側に設けられたリフレクタにレーザ光を照射する例について説明した。しかし、レーザトラッカは、ベースプレートの移動ステージ側の面に設けられていてもよい。この場合には、ベースプレートの開口部を省略することができる。但し、レーザトラッカと直線駆動機構との干渉の恐れを考慮すると、上述の実施の形態のように、レーザトラッカはベースプレートの移動ステージ側とは反対側の面上に設けられることが望ましい。
実施の形態4では、パラレル機構300のレーザトラッカ431〜433のかわりにユニバーサルレーザ干渉測長ユニット441〜443を用いる場合を説明した。しかし、パラレル機構100のレーザトラッカ411のかわりにユニバーサルレーザ干渉測長ユニット441を用いることが可能であり、パラレル機構200のレーザトラッカ421及び422のかわりにユニバーサルレーザ干渉測長ユニット441及び442を用いることが可能である。この場合、レーザトラッカ421及び422は、2軸回転機構4102の方位角φ及び仰俯角θを制御部7に出力する。
また、上述の実施の形態では、3本の直線駆動機構を有する3自由度のパラレル機構について説明したが、他の方式のパラレル機構にレーザトラッカ及びリフレクタを適用できることはいうまでもない。
他の方式のパラレル機構にユニバーサルレーザ干渉測長ユニット及びリフレクタを適用してもよく、他の方式のパラレル機構の直線駆動機構にレーザ干渉測長計及びリフレクタを組み込んでもよい。リフレクタとしてレトロリフレクタを用いることができる。
例えば、6本の直線駆動機構を有し、互いに直交するXYZの3方向、X軸周りの回転方向、Y軸周りの回転方向、Z軸周りの回転方向に駆動可能な、6自由度のパラレル機構を用いることも可能である。この構成では、6本の直線駆動機構とベースプレート、及び6本の直線駆動機構と移動ステージとは、球面ジョイント(合計12個)により連結される。この場合、ベースプレートに対する移動ステージの平行度がずれている場合でも、移動ステージが回転方向にも駆動可能であるので、レーザトラッカ等での測定結果に応じて平行度を微調整できる。
また、上述の実施の形態では、いわゆるスチュワートプラットフォーム(Stewart Platform)型のパラレル機構について説明したが、これは例示に過ぎない。例えば、ヘキサ(Hexa)型又は直動固定型などの他の方式のパラレル機構を用いることも可能である。さらに、ベースプレートと移動ステージとを連結する駆動機構も直動駆動機構に限られず、回転駆動機構部を有する多段の屈曲駆動機構やスライド機構などの他の駆動機構を用いることもできる。
上述のレーザトラッカは、レーザ光を含む任意のコヒーレント光を出射させ、コヒーレント光と反射光とを干渉させて移動ステージの移動距離を算出できる任意の測定部に置換することが可能である。また、リフレクタは、キャッツアイに限らず、入射光を逆方向に反射する任意の反射部に置換することが可能である。
上述の実施の形態では、パラレル機構が形状測定機に組み込まれる例について説明したが、これは例示に過ぎない。すなわち、上述の実施の形態にかかるパラレル機構は、その他の測定機、工作機械、運転シミュレーション装置などの、駆動機構を有する装置に組み込むことが可能である。
上述の実施形態にかかるパラレル機構が三次元測定機(CMM)のような形状測定機に組み込まれる場合、レーザトラッカの出力、ユニバーサルレーザ干渉測長ユニットの出力、又は直線駆動機構に組み込まれたレーザ干渉測長計の出力は、パラレル機構の駆動機構にフィードバックされてもされなくてもよい。上記出力に基づいて移動ステージの位置を高精度に観測することができるので、静止ポイント測定の場合は上記出力のフィードバックを行わなくても被測定物の座標を正確に求めることができる。これに対し、倣い測定の場合は、移動ステージの駆動を高精度に行う必要があるため、上記出力がパラレル機構の駆動機構にフィードバックされることが好ましい。上述の実施形態にかかるパラレル機構が工作機械又は運転シミュレーション装置に組み込まれる場合も同様である。