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JP6274494B2 - 微生物によるポリヒドロキシアルカン酸の生産方法 - Google Patents

微生物によるポリヒドロキシアルカン酸の生産方法 Download PDF

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Description

本発明は、微生物によるリグニン関連物質からのポリヒドロキシアルカン酸(以下、「PHA」とも称する)の生産方法に関する。
PHAは、生分解性ポリエステル型ポリマーであり、微生物によるその生産方法が多数報告されている。例えば、ラウリン酸含量の高い油脂からPHAをカプリアビダス(Cupriavidus)属細菌により生産する方法が、特許文献1に記載されている。また、グルコース資化能が付与されたカプリアビダス(Cupriavidus)属細菌によりPHAを生産する方法が、特許文献2に記載されている。さらに別の例として、酢酸を炭素源としてシュードモナス属細菌によりPHAを生産する方法が、特許文献3に記載されている。
地球温暖化の要因物質のひとつである二酸化炭素の発生を抑制するために、植物由来の糖や油を原料としたバイオプラスチック、バイオエタノールなどの生産が試みられている。一方、芳香族化合物であるリグニンは植物から大量に得られるが、物理的、化学的に安定な化合物であるため、ほとんど利用されていない。自然界においてリグニンは白色腐朽菌によりリグニン誘導体に分解され、その分解物は微生物細胞内で芳香族カルボン酸を経て、ピルビン酸とオキサロ酢酸またはコハク酸に変換される。ピルビン酸から誘導されるアセチル-コエンザイムA (補酵素A)は、天然の微生物の一部が栄養制限下で細胞内にエネルギー貯蔵物質として蓄積するPHAの前駆体の一つである。PHAは包装材料や医療分野への応用が期待されている熱可塑性、生分解性、生体適合性を有する高分子材料である。未利用原料であるリグニン関連物質を利用したPHAの微生物生産は、未利用なバイオマス資源の活用という点で重要であるが、これまで報告がない。
一方、芳香族環を含む化合物を含む培地中で微生物を培養することによりPHAを生産する方法として、特許文献4〜8に記載の方法が知られている。
特開2013-009627号公報 特開2009-225662号公報 特開2001-178484号公報 特開2002-327050号公報 特開2002-327048号公報 特開2002-256064号公報 特開2002-241476号公報 特開2002-173521号公報
PHAを生産する多数の微生物が知られているが、リグニン関連物質からのPHAの生産については知られていない。
それゆえ、本発明は、リグニン誘導体や、その代謝産物である芳香族カルボン酸などのリグニン関連物質を炭素源として用いて、微生物によりPHAを生産することを目的とする。
リグニン関連物質から有用なPHAを生産する技術が確立されるならば、製紙パルプ産業で廃棄される未利用資源の有効な活用になるはずである。
本発明は、このような観点から鋭意研究を行い、完成されたものである。
本発明は、要約すると、以下に示す特徴を含む。
(1) リグニン誘導体及び/又はそのポリヒドロキシアルカン酸生合成中間代謝物に資化性を有する、カプリアビダス(Cupriavidus)属、ラルストニア(Ralstonia)属又はアルカリゲネス(Alcaligenes)属に属する微生物を、リグニン誘導体及びそのポリヒドロキシアルカン酸生合成中間代謝物からなる群から選択される少なくとも1つの物質を炭素源として含有する培地にて培養し、該微生物菌体からポリヒドロキシアルカン酸を回収することを含む、微生物によるポリヒドロキシアルカン酸の生産方法。
(2) 前記リグニン誘導体が、p-クマル酸、カフェ酸、フェルラ酸、シナピン酸又はその塩である、(1)に記載の方法。
(3) 前記ポリヒドロキシアルカン酸生合成中間代謝物が、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、バニリン酸、シリング酸、又はその塩である、(1)又は(2)に記載の方法。
(4) 前記微生物が、単離微生物、寄託微生物、変異微生物又は組換え微生物である、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5) 前記カプリアビダス属微生物が、カプリアビダス・ネカトール(Cupriavidus necator)である、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6) 前記ポリヒドロキシアルカン酸が、20万〜200万の分子量を有する、(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7) 前記ポリヒドロキシアルカン酸が、3-ヒドロキシ酪酸モノマー単位を含む、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8) 前記ポリヒドロキシアルカン酸が、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)である、(7)に記載の方法。
本発明により、微生物的方法によって、未利用資源であるリグニン関連物質から、有用なPHAを生産することが可能になった。
この図は、表示した種々の菌株の増殖に及ぼす炭素源の影響を示す。図中、control(対照)は、NR又はMB培地での増殖を示す。HBAは、ヒドロキシ安息香酸を表し、DHBAは、ジヒドロキシ安息香酸を表し、THBAは、トリヒドロキシ安息香酸を表す。試験した炭素源は、p-クマル酸(p-coumaric acid)、カフェ酸(caffeic acid)、フェルラ酸(ferulic acid)、バニリン酸(vanillic acid)、シナピン酸(sinapinic acid)、シリング酸(syringic acid)、サリチル酸(salicylic acid)、3-HBA、4-HBA、2,3-DHBA、2,4-DHBA、2,5-DHBA、2,6-DHBA、3,4-DHBA、3,5-DHBA、2,3,4-THBA、2,4,6-THBA、3,4,5-THBA、グルコン酸(gluconic acid)、オクタン酸(octanoic acid)、テレフタル酸(terephthalic acid)である。また、試験した菌株は、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha) H16、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha) PHB-4、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha) PHB-4phaCAc 、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha) PHB-4E11/S12、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha) 11599、デルフチア・アシドボランス(Delftia acidovorans) (DS-17)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida) 13063、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida) GPo1、 シュードモナス・アエルギノサ(Pseudomonas aeruginosa) (JCM 14847)、スフィンゴモナス・パウシモビリス (Sphingomonas paucimobilis) (JCM 7516)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium) (JCM 2506)、及びビブリオ エスピー(Vibrio sp.) KN01である。 この図は、Ralstonia eutropha H16菌体内のPHA蓄積を示す共焦点レーザー走査型顕微鏡(CLSM)画像を示す。(a)は、PHAを示す赤色蛍光である。(b)は、微分干渉顕微鏡写真である。(c)は、2つの画像(a)及び(b)を重ねた図である。菌株を0.5μg/mLのNile redと、炭素源として2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)(12)、3,4-DHBA(14)、3,5-DHBA(15)、グルコン酸(19)、テレフタル酸(21)を含む無機塩培地で72時間増殖した。対照実験を(0)に示し、Nile redを含有する富栄養培地で増殖された株からなる。細菌菌体中のNile redで染色されたPHAからの蛍光は、励起波長555nmで画像化された。 この図は、微生物により合成されたPHAの1H-NMRスペクトルを示す。上のスペクトル(A)は、炭素源として2,5-DHBAが使用されたときのものであり、中のスペクトル(B)は、3,4-DHBAが使用されたときのものであり、下のスペクトル(C)は、グルコン酸が使用されたときのものである。グルコン酸からのPHAは、ポリ(ヒドロキシ酪酸)であることが知られているが、他の2つもほぼ同一のスペクトルグラムを提供していることから、これらの結果はPHAがポリ(ヒドロキシ酪酸)であることを示す。 この図は、リグニン誘導体の微生物内代謝経路を示す。
本発明をさらに詳細に説明する。
本発明は、微生物によるポリヒドロキシアルカン酸の生産方法に関するものであり、以下の特徴を有する。
(1)上記微生物が、リグニン誘導体及び/又はそのポリヒドロキシアルカン酸生合成中間代謝物に資化性を有する、カプリアビダス(Cupriavidus)属、ラルストニア(Ralstonia)属又はアルカリゲネス(Alcaligenes)属に属し、かつ、リグニン誘導体又はそのポリヒドロキシアルカン酸生合成中間代謝物からPHAを生産する能力を有する微生物である。
(2)培地中の炭素源として、図4に記載されるような、リグニン誘導体及びそのポリヒドロキシアルカン酸生合成中間代謝物からなる群から選択される少なくとも1つの物質を含有する。
明細書の「リグニン誘導体及び/又はそのポリヒドロキシアルカン酸生合成中間代謝物に資化性を有する」という用語は、微生物がリグニン誘導体及び/又はそのポリヒドロキシアルカン酸生合成中間代謝物を炭素源として増殖する性質を有していることを意味している。
<微生物>
上記微生物は、上記(1)に示した性質をすべて満たすものであれば、本発明の方法で使用できる。微生物は、カプリアビダス(Cupriavidus)属、ラルストニア(Ralstonia)属又はアルカリゲネス(Alcaligenes)属に属する細菌であり、リグニン誘導体及び/又はそのポリヒドロキシアルカン酸生合成中間代謝物を炭素源として含有する培地にて増殖性を示し、また、PHAを生成することを確認できる。好ましい微生物は、カプリアビダス・ネカトール(Cupriavidus necator)、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)又はアルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)であり、後者の2つの菌種は、前者の菌種の旧分類の菌種名であるので、これらの3つの菌種は実質的に同一である。従って、本明細書においてカプリアビダス・ネカトールに言及する場合は、これらの旧分類の菌種も包含される。さらに具体的には、微生物は、例えば、Cupriavidus necator (ATCC 17699 / H16 / DSM 428 / Stanier 337)、Cupriavidus necator (ATCC 43291 / DSM 13513 / N-1)、Cupriavidus necator (NBRC 102504)などである。
上記微生物は、単離微生物、寄託微生物、変異微生物又は組換え微生物のいずれであってもよい。
単離微生物は、種々の源(ソース)から分離された微生物である。そのような源(ソース)として土壌、河川、海洋、深海および植物を例示できる。上記のとおり、リグニン誘導体又はそのポリヒドロキシアルカン酸生合成中間代謝物を炭素源として含有する培地にて増殖性を示し、また、PHAを生成する微生物をスクリーニングすることができる。培養は、例えば、試験微生物を上記の物質を含有するMS培地等の培地に植菌し、30℃で、24〜72時間行ったのち、増殖性コロニーを分離し、NR寒天培地等の培地にて培養し単一コロニーを得る。さらに、単離されたコロニーが、カプリアビダス(Cupriavidus)属、ラルストニア(Ralstonia)属又はアルカリゲネス(Alcaligenes)属に属する細菌であることを、16S rDNA配列又は菌学的性質についてタイプストレインと比較するなどの方法により同定・確認する。その後、PHAの生成について、細菌の破砕物からクロロホルムなどの有機溶媒で抽出し、濾過後、濾液(必要により濃縮後)にヘキサン等の有機溶媒を加えてPHAを析出し、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、NMR、IRなどの分析手法を用いて同定する。
寄託微生物は、カプリアビダス(Cupriavidus)属、ラルストニア(Ralstonia)属又はアルカリゲネス(Alcaligenes)属に属する細菌の寄託物について、単離微生物について記載したのと同様の手法を用いて、上記(1)の性質を有する微生物を選抜することによって得ることができる。
変異微生物は、単離微生物、寄託微生物などの上記(1)の性質を有する微生物に対し、突然変異処理を施すことによって作製されうる上記(1)と同等の性質を有する微生物である。突然変異処理には、例えば化学変異原、例えばN- エチル-N-ニトロソウレア、N−メチル−N−ニトロソウレア、メタンスルホン酸メチル、ニトロソグアニジンなど、放射線、例えば紫外線、X線、γ線などによる処理が含まれる。微生物を化学変異原を添加した培地で培養するか、或いは、放射線の照射下で微生物を培養し、変異型微生物のコロニーを分離し、単離微生物について記載したのと同様の手法を用いて、上記(1)の性質について確認する。
組換え微生物は、例えばPHA合成酵素遺伝子が改変された微生物であり、例えば特開2013-9627号公報に記載されるような微生物である。その他、異種のPHA合成酵素遺伝子が導入された微生物、PHA合成に関連する酵素群を導入した組換え微生物なども挙げることができる。
<炭素源を含む培地>
上記(2)の性質は、培地中の炭素源が、リグニン誘導体及びそのポリヒドロキシアルカン酸生合成中間代謝物からなる群から選択される少なくとも1つの物質を含有することである。
リグニン誘導体は、パルプの製造工程から廃棄されるリグニンを、リグニンペルオキシダーゼ、マンガンペルオキシダーゼ、ラッカーゼなどの酵素により分解して得ることができる。リグニン誘導体は、一般に、p-クマル酸、カフェ酸、フェルラ酸、シナピン酸、又はその塩である。
リグニン誘導体のポリヒドロキシアルカン酸生合成中間代謝物は、例えば、白色腐朽菌などの菌類においてリグニンが分解されてリグニン誘導体が生じ、各リグニン誘導体が代謝されて中間代謝物が生じ、さらに中間代謝物がピルビン酸・オキサロ酢酸・コハク酸に変換される経路における中間代謝物であり、リグニン誘導体及びピルビン酸・オキサロ酢酸・コハク酸は含まない。該中間代謝物は、上記リグニン誘導体に類似したベンゼン環を有する構造をもつことが好ましい。具体的には、図4のリグニン誘導体からピルビン酸・オキサロ酢酸・コハク酸に至る経路に示される化合物のうち、リグニン誘導体より下流、かつ、ピルビン酸・オキサロ酢酸・コハク酸より上流の化合物、例えば、2,5-ジヒドロキシ安息香酸(2,5-DHBA)、3,4-ジヒドロキシ安息香酸(3,4-DHBA)、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸(3,4,5-THBA)、4-ヒドロキシ安息香酸(4-HBA)、バニリン酸、シリング酸、又はその塩である。
リグニン誘導体やポリヒドロキシアルカン酸生合成中間代謝物(特に、芳香族カルボン酸)は、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムのエタノール溶液に溶解し、中和する。エタノールでなくとも芳香族カルボン酸と水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムが溶解する溶媒でも代用できる。溶媒を除去した後、凍結乾燥によりエタノール成分を除き、固形物として芳香族カルボン酸塩を得ることができる。
培地は、貧栄養培地が望ましい。培地には、上記の炭素源のほかに、窒素源として無機窒素源、例えば硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素などを含むことができる。このほかに、培地には、無機塩類や微量金属塩、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、鉄、カルシウム、コバルト、銅、亜鉛などの塩が含まれる。必要であれば、有機窒素源を含有させることもできる。貧栄養培地の例は、MS培地である。
<PHAの微生物生産>
上記の微生物を、上記炭素源を含む上記培地にて培養する。培養は、好気的条件で行い、通気撹拌可能な発酵槽を使用することができる。培養規模に応じて発酵槽のサイズを、1KL〜5KL又はそれ以上とすることができる。連続的に又は間欠的に炭素源や他の栄養源を供給しながら培養を行うこともできる。培地中の炭素源濃度は、非限定的に、約0.5g/L〜約2.0g/Lの範囲に維持することが好ましい。温度、pH、炭素源濃度、通気量、撹拌速度などの条件を制御しながら、培養を行う。
温度は、約25℃〜約40℃であるが、微生物が増殖し、PHAを生産することができる限り、この範囲に限定されないものとする。
pHは、通常、6〜8、好ましくは6.5〜7に維持される。
培地中の炭素源濃度は、約0.5g/L〜約2.0g/Lの範囲に維持することが好ましい。
通気量は、例えば、1 L/分〜3L/分、好ましくは1.5 L/分〜2.5L/分である。
撹拌速度は、例えば300rpm〜700rpmである。
培養日数は、1日〜7日であるが、この範囲に限定されない。
<PHAの回収>
微生物菌体に蓄積されたPHAは、公知の方法によって回収することができる(特開2013-9627号公報)。例えば、培養液から遠心分離機等の分離手段を用いて菌体を分離し、その菌体を蒸留水、メタノール等により洗浄し、乾燥させる。この乾燥菌体から、クロロホルム等の有機溶剤を用いてPHAを抽出する。このPHAを含んだ有機溶剤溶液から、濾過等によって菌体成分を除去し、そのろ液にメタノール、ヘキサン等の貧溶媒を加えてPHAを沈殿させる。さらに、濾過や遠心分離によって上澄み液を除去し、乾燥させてPHAを回収することができる。
上記の手法により回収されたPHAでは、分子量が、約20万〜約200万又はそれ以上、例えば約30万〜約100万を有する。
このPHAを構成するモノマー単位は3-ヒドロキシアルカン酸であって、具体的には3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ吉草酸、3-ヒドロキシヘキサン酸、それらの混合、などである。これら3-ヒドロキシアルカン酸が単重合もしくは共重合することにより、ポリマー分子が形成される。3-ヒドロキシ酪酸のホモポリマーが、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)(「P(3HB)」とも称する。)である。
後述の実施例で使用した微生物からは、3-ヒドロキシ酪酸モノマー単位を含むPHAが生産されうる。
以下の実施例で、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、それらの実施例に限定されないものとする。
[実施例1]
<微生物の選択>
PHA蓄積性微生物、すなわちRalstonia eutropha H16 (現命名、Cupriavidus necator, JCM 20644, ATCC 17699)、Delftia acidovorans DS-17 (JCM 10181)、Pseudomonas putida (JCM 13063T)、Pseudomonas aeruginosa (JCM 14847T)、Sphingomonas paucimobilis (JCM 7516T)、Bacillus megaterium (JCM 2506T)、Ralstonia eutropha PHB-4(DSM 541;H16のPHA陰性変異株)、Ralstonia eutropha PHB-4phaCAc(PHB-4の形質転換体;J-A Chuah et al., Polymer Degradation and Stability 98(1): 331-338 (2013))、Ralstonia eutropha PHB-4E11/S12、Ralstonia eutropha 11599(Techno Suruga Labotaroty Co., Ltd. (静岡、日本)から恵与された。) 、Pseudomonas putida GPo1(旧命名:Pseudomonas oleovorans GPo1)(ATCC 29347)及びVibrio sp. KN01(Hizushi Beach(沖縄、日本)の海水から単離された。)を、単一炭素源として10gのリグニン誘導体(p-クマル酸、カフェ酸、フェルラ酸及びシナピン酸)及びポリヒドロキシアルカン酸生合成中間代謝物(バニリン酸、シナピン酸、シリング酸、4-HBA、2,5-DHBA、3,4-DHBA及び3,4,5-THBA)、それらの類似化合物(サリチル酸、3-HBA、2,3-DHBA、2,4-DHBA、2,6-DHBA、3,5-DHBA、2,3,4-THBA及び2,4,6-THBA)、その他の炭素源(グルコン酸、オクタン酸、テレフタル酸)(それぞれ、1g / 100 mL)、PHAの蓄積を判別する0.5mgの染色試薬ナイルレッド (200 mg / L)、9gのNa2HPO4・12H2O、1.5gのKH2PO4、0.5gのNH4Cl、0.2gのMgSO4・7H2O、1mLの微量元素養液(9.7gのFeCl3、7.8gのCaCl2、0.218gのCoCl2・6H2O、0.156gのCuSO4・5H2O、0.118gのNiCl3・6H2O及び0.105gのCrCl3・6H2Oを1Lの0.1M HClに溶解した溶液)、及び1.5gのアガーを1Lの蒸留水中に含むMineral-salt (MS) 寒天培地に植菌した。72時間後、コロニーのサイズ(直径)を測定することにより微生物の増殖を評価した。その結果、Ralstonia eutropha H16株(ATCC 17699)とPseudomonas putida 13063株(JCM 13063)が増殖性を示した(図1)。
[実施例2]
<PHAの生産>
プレートアッセイで良好な増殖を示したRalstonia eutropha H16株(ATCC 17699)とPseudomonas putida 13063株(JCM 13063)について、100 mLスケールで培養した。微生物の増殖は乾燥菌体重量にて評価し、PHAの蓄積量はクロロホルムとメタノールを用いて抽出したPHAの質量により評価した。PHAの分子量と構造はゲルサイズ排除クロマトグラフィー (SEC)(RI-2031, PU-2086, AS-2055, CO-2056; JASCO,日本)、核磁気共鳴法 (1H-NMR)(JNM-Excalibur 270; JEOL, Ltd.,日本) を用いて解析した。分子量は、ポリスチレン分子量標準(1.32x103, 3.25x103, 1.01x104, 2.85x104, 6.60x104, 1.56x105, 4.60x105, 1.07x106, 3.15x106)と比較して推定した。
リグニン誘導体、ポリヒドロキシアルカン酸生合成中間代謝物、等を単一炭素源とした寒天培地を用いてPHA蓄積微生物を培養した結果、P. putida 13063、P. putida GPo1及びP. aeruginosaはR. eutropha H16、Delftia acidovorans、Bacillus megateriumなどと比較して幅広い炭素源を資化することが明らかとなった(図1)。
また、R. eutropha H16は2,5-dihydroxybenzoic acid (2,5-DHBA)と3,4-DHBAを単一炭素源とした場合、PHAの蓄積の可能性を示す赤色のコロニーを形成した(図2)。そこで、幅広い炭素源に資化性を示したP. putida 13063及び赤色コロニーを形成したR. eutropha H16に着目し、100mLスケールで培養し、PHAの蓄積について詳細に解析した。
100mLスケールで培養した結果、P. putida 13063とR.eutropha H16は、リグニン誘導体 (p-クマル酸、カフェ酸、フェルラ酸、シナピン酸)を単一炭素源とするとほとんど増殖しなかった。一方、バニリン酸、4-ヒドロキシ安息香酸(4-HBA)、3,4-ジヒドロキシ安息香酸(3,4-DHBA)を炭素源としてP. putida 13063を培養した結果、乾燥菌体重量はそれぞれ2.8、3.3、3.0 g/Lであったが、PHAの蓄積は検出できなかった。R.eutropha H16を芳香族カルボン酸である2,5-DHBAを炭素源として培養したところ、ポジティブコントロールの炭素源であるグルコン酸と同程度の乾燥菌体重量 (5.2 g / L)、PHA含有量 (26 %) を示した (表1)。また、3,4-DHBAを炭素源とした場合もP(3HB)を蓄積し(図3)、乾燥菌体重量とPHA含有率は3.8 g / L、13 %であった。芳香族カルボン酸から得られたP(3HB)の数平均分子量 (72万、PDI3.4(2,5-DHBAの場合)、36万、PDI4.4(3,4-DHBAの場合)) はグルコン酸から合成されるP(3HB)の分子量 (120万)と比較して低分子量であった。
Figure 0006274494
本発明は、微生物によるリグニン関連物質からのポリヒドロキシアルカン酸(PHA)の生産方法を提供するため、未利用資源の有効利用と、有用物質であるPHAの生産との両面から見ても、産業上の利用性を有する。

Claims (6)

  1. リグニン誘導体及び/又はそのポリヒドロキシアルカン酸生合成中間代謝物に資化性を有する、カプリアビダス(Cupriavidus)属、ラルストニア(Ralstonia)属又はアルカリゲネス(Alcaligenes)属に属する微生物を、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つの物質を炭素源として含有する培地にて培養し、該微生物菌体からポリヒドロキシアルカン酸を回収することを含む、微生物によるポリヒドロキシアルカン酸の生産方法。
  2. 前記微生物が、単離微生物、寄託微生物、変異微生物又は組換え微生物である、請求項に記載の方法。
  3. 前記カプリアビダス属微生物が、カプリアビダス・ネカトール(Cupriavidus necator)である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記ポリヒドロキシアルカン酸が、20万〜200万の分子量を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記ポリヒドロキシアルカン酸が、3-ヒドロキシ酪酸モノマー単位を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記ポリヒドロキシアルカン酸が、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)である、請求項に記載の方法。
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