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JP6259143B2 - ハイドロキシアパタイト粒子 - Google Patents

ハイドロキシアパタイト粒子 Download PDF

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Description

本発明は、ハイドロキシアパタイト粒子に関する。
ハイドロキシアパタイト(ヒドロキシアパタイト、HAp)は人間の骨や歯の主要構成物質であり、その生体親和性の高さから、人工骨や人工歯根をはじめとするインプラント素材として幅広く用いられている。また、近年の研究により、薄膜状のハイドロキシアパタイトを歯に貼り付けることにより、う蝕(むし歯)、知覚過敏症等の治療に効果を示すことが認められ、ハイドロキシアパタイトの歯科応用への期待も高まっている。
ハイドロキシアパタイトを粒子として取り扱う場合、各種の用途に適した粒子形状及び粒子サイズを有することが要求される。特にハイドロキシアパタイト粒子を対象物に強固に結合させる必要がある場合には、接触面積が大きく、充填率にも優れる鱗片形状とすることが好ましい。このような鱗片状ハイドロキシアパタイト粒子の製造方法として、特許文献1に記載の製造方法が知られている。
特開平9−40408号公報
しかしながら、上記の製造方法では、板状の大型粒子であるCaHPO ・2H O粉末、及び、平均粒径を厳密に規定したCaCO 微粉末を準備する必要があり、準備工程が簡易なものとはいえなかった。また、製造されるハイドロキシアパタイト粒子は、原料となるこれらの粉末の形状に由来したものとなり、ハイドロキシアパタイト粒子の形状を任意に調整できるものではなかった。さらに、上記の粉末を水に懸濁させ、少なくとも数時間、所定の温度で保持して穏やかに反応させる必要があるため、製造に時間を要していた。
それ故、本発明の課題は、簡易な製造工程によってアスペクト比を任意に調整できるハイドロキシアパタイト粒子を提供することにある。
なお、本明細書における「アスペクト比」とは、偏平片の粒子にあっては、平均長径/平均厚みにより得られる値とする。ここで、偏平片の長径とは、偏平片の略平面視における端から端の長さのうちの最も長い長さをいい、偏平片の平均長径とは、ある集合における偏平片の長径の平均値をいうものとする。また、偏平片の厚みとは、偏平片の略側面視における厚みをいい、偏平片の平均厚みとは、ある集合における複数の偏平片の厚みの平均値をいうものとする。
本発明にかかるハイドロキシアパタイト粒子は、
膜厚が均一でアスペクト比20〜400の剥離膜からなる結晶性ハイドロキシアパタイト粒子であることを特徴とする。
このような構成によれば、ハイドロキシアパタイト粒子は高アスペクト比を有する鱗片形状となり、対象物に対して十分な接触面積を有するため結合性が良好であり、また充填率にも優れたものとすることができる。
また、上記の構成にあっては、
ハイドロキシアパタイト以外の異種材料が結合されたものであってもよい。
このような構成によれば、異種材料が結合したハイドロキシアパタイト粒子を製造することができる。
また、上記の構成にあっては、
前記異種材料は熱水中で溶解しない材料で構成されたものであってもよい。
このような構成によれば、ハイドロキシアパタイト粒子の製造方法における結晶化工程において水熱処理を用いることができる。
また、上記の構成にあっては、
前記異種材料は450℃以上の耐熱性材料で構成されたものであってもよい。
このような構成によれば、ハイドロキシアパタイト粒子の製造方法における結晶化工程において電気炉による加熱を用いることができる。
また、上記の構成にあっては、
前記異種材料は複数の異種材料が層をなして形成されたものであってもよい。
このような構成によれば、高アスペクト比を有する鱗片形状の場合において、異種材料の複数層を形成することができる。
また、上記の構成にあっては、
前記異種材料はチタンであってもよい。
このような構成によれば、ハイドロキシアパタイト粒子の製造方法における結晶化工程において水熱処理、および電気炉による加熱を用いることができると共に、ハイドロキシアパタイトとの結合性を良好にすることができる。
以上説明したように、本発明にかかるハイドロキシアパタイト粒子によれば、ハイドロキシアパタイト粒子は高アスペクト比を有する鱗片形状となり、対象物に対して十分な接触面積を有するため結合性が良好であり、また充填率にも優れたものとすることができる。
第1の実施形態にかかるハイドロキシアパタイト粒子の製造方法を模式的に示した図である。 第1の実施形態にかかるハイドロキシアパタイト粒子の製造方法を模式的に示した図である。 実験例1において製造されたハイドロキシアパタイト粒子のX線回折測定結果である。 実験例2において製造されたハイドロキシアパタイト粒子のX線回折測定結果である。 実験例1において製造されたハイドロキシアパタイト粒子のマイクロスコープ写真である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳述する。但し、これらの実施形態はいずれも例示であり、本発明についての限定的解釈を与えるものではない。なお、図面において、同一の又は対応する部分については同一の符号を付すものとする。
図1及び2は、本実施形態にかかるハイドロキシアパタイト粒子の製造方法を模式的に示す図である。以下、その工程を順に説明する。
(1)基材準備工程
まず、図1(a)に示すように、基材11を準備する。基材11としては、その上にハイドロキシアパタイト膜を形成でき、かつ純水20に浸漬させることでハイドロキシアパタイト膜を剥離できるものであれば、特に限定されない。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルム等の高分子樹脂フィルムを用いることができ、汎用的で安価である点でPETフィルムが好適である。
(2)ハイドロキシアパタイト膜形成工程
次に、図1(b)に示すように、基材11上にスパッタリング法によってハイドロキシアパタイト膜12を形成する。スパッタリング法とは、真空中で不活性ガス(主にAr)を導入し、ターゲットと呼ばれる原料にマイナスの電圧を印加してグロー放電を発生させ、不活性ガス原子をイオン化し、高速でターゲットの表面にガスイオンを衝突させ、ターゲットを構成する原料の粒子(原子・分子)を弾き出すことにより、基材表面に薄膜を形成する技術である。スパッタリング法を用いることにより、膜の均一性に優れたハイドロキシアパタイト膜12を、任意の膜厚で基材11上に形成することができる。
ハイドロキシアパタイト膜12は基材11上の未処理面に形成されることが好ましい。このようにすることで、ハイドロキシアパタイト膜12を純水20に浸漬させた場合の剥離性が良好となる。
スパッタリング法により形成されるハイドロキシアパタイト膜12の膜厚は200nm以上が好ましい。これ以下の膜厚では基材11からの剥離が困難になる。また、膜厚の上限はなく、厚ければ厚いほど基材11から剥離しやすくなる。
また、スパッタリング時のガス圧力(スパッタ圧)は0.1Pa以上とすることが好ましい。このようにすることで、基材11との密着性が悪いハイドロキシアパタイト膜12を形成でき、これらを純水に浸漬させた場合のハイドロキシアパタイト12の剥離性が良好となる。
なお、スパッタリング法により形成されたハイドロキシアパタイト膜12は、この状態では結晶化されておらず、アモルファス(非晶質)状態である。
(3)剥離工程
次に、図1(c)に示すように、基材11上に形成されたハイドロキシアパタイト膜12を純水20に浸漬する。ハイドロキシアパタイト膜12は、純水20に浸漬することで、特別な装置等を必要とせずに、基材11から容易に剥離する。このようにして、図2(d)に示すように、剥離されたハイドロキシアパタイト膜12を得ることができる。
なお、ハイドロキシアパタイト膜12を剥離するための液体は純水20に限られるものではなく、浸漬することでハイドロキシアパタイト膜12を剥離でき、浸漬状態において超音波粉砕が可能であって、かつ、結晶化後のハイドロキシアパタイト粒子13bの品質に悪影響を及ぼさないものであれば、純水20以外の液体を用いてもよい。
(4)粉砕工程
次に、図2(e)に示すように、剥離されたハイドロキシアパタイト膜12を超音波により粉砕する。超音波粉砕法を用いることで、剥離されたハイドロキシアパタイト膜12を純水20に浸漬させた状態のままで粉砕することができ、製造工程を簡素化できる。
なお、ハイドロキシアパタイト膜12が基材11から完全に剥離していない場合であっても、その状態で超音波粉砕を行うことにより、ハイドロキシアパタイト膜12を剥離しながら粉砕することもできる。
(5)結晶化工程
次に、図2(f)に示すように、粉砕されたハイドロキシアパタイト粒子13aを結晶化させる。結晶化の方法としては、水熱処理や、電気炉による加熱等が挙げられる。この結晶化工程より、それまでアモルファス(非晶質)状態であったハイドロキシアパタイト粒子13aが結晶化され、結晶化されたハイドロキシアパタイト粒子13bを得ることができる。
なお、(4)粉砕工程と(5)結晶化工程の順番は上記に説明したものに限られず、結晶化工程の後に粉砕工程を行ってもよい。
このようにして製造されたハイドロキシアパタイト粒子13bは、そのアスペクト比が20〜400であることが好ましい。このようなハイドロキシアパタイト粒子13bは高アスペクト比を有する鱗片形状となり、対象物に対して十分な接触面積を有するため結合性が良好であり、また充填率にも優れる。
本実施形態にかかるハイドロキシアパタイト粒子によれば、ハイドロキシアパタイト粒子13bは高アスペクト比を有する鱗片形状となり、対象物に対して十分な接触面積を有するため結合性が良好であり、また充填率にも優れたものとすることができる。また、異種材料が結合したハイドロキシアパタイト粒子13bを製造することができる。また、ハイドロキシアパタイト粒子13bの製造方法における結晶化工程において水熱処理を用いることができる。また、ハイドロキシアパタイト粒子の製造方法における結晶化工程において電気炉による加熱を用いることができる。また、高アスペクト比を有する鱗片形状の場合において、異種材料の複数層を形成することができる。また、ハイドロキシアパタイト粒子13bの製造方法における結晶化工程において水熱処理、および電気炉による加熱を用いることができると共に、ハイドロキシアパタイトとの結合性を良好にすることができる。
また、上記の製造方法により製造されたハイドロキシアパタイト粒子13bは、表面密着性が良いという特徴を有する。特に鱗片状の粒子である場合には、そもそも薄膜であったハイドロキシアパタイトを粉砕し結晶化するという工程により製造されたものであるため、結晶化された鱗片状ハイドロキシアパタイト粒子13bは、表面密着性に優れ、対象物との結合性が良好である。
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、異種材料が結合したハイドロキシアパタイト粒子の製造方法にかかるものである。第2の実施形態にかかるハイドロキシアパタイト粒子の製造方法は、上述の第1の実施形態にかかる製造方法における「(2)ハイドロキシアパタイト膜形成工程」の後に、さらに次の工程を備えるものである。
(6)異種材料膜形成工程
基材上に形成されたハイドロキシアパタイト膜の上に、ハイドロキシアパタイトとは異なる異種材料膜を形成する。異種材料としては、結晶化工程において水熱処理を用いる場合には熱水中で溶解しない材料を、結晶化工程において電気炉による加熱を用いる場合には450℃以上の耐熱性材料を用いることができる。このような条件を満たす異種材料として、ハイドロキシアパタイトとの結合性が良好なことで知られるチタンを含むものなどを用いることができる。
上記の異種材料膜形成工程の後に続く剥離工程、粉砕工程、結晶化工程は、第1の実施形態と同様である。このようにして、異種材料が結合したハイドロキシアパタイト粒子を製造することができる。
このようにして製造された異種材料が結合したハイドロキシアパタイト粒子は、特に高アスペクト比を有する鱗片形状の場合においては、それぞれが層をなして結合されており、従来の溶液法(湿式法)等を用いた製造方法においては製造することが不可能であるか、あるいは極めて困難であった。
その点、本実施形態にかかる異種材料が結合したハイドロキシアパタイト粒子の製造方法によれば、第1の実施形態にかかる製造方法に1工程を追加するだけでよく、簡易な製造方法により製造できる。
なお、「(6)異種材料膜形成工程」において形成される異種材料膜は1層に限られず、複数の層を形成してもよい。このようにすれば、複数の異種材料が結合したハイドロキシアパタイト粒子を製造することができる。
(実験例1)
本実験例では、第1の実施形態にかかるハイドロキシアパタイト粒子の製造方法を用いて、鱗片状ハイドロキシアパタイト粒子を製造した結果を説明する。
RFスパッタリング法(スパッタ圧力0.1Pa、スパッタ電力300W、成膜レート6.7nm/min)により、基材であるPETフィルム上に膜厚200nmのハイドロキシアパタイト膜を形成した。PETフィルム付ハイドロキシアパタイト膜を純水に浸漬させ、ハイドロキシアパタイト膜をPETフィルムから剥離した後、超音波粉砕装置(AS ONE社製、USK−2)を用い、38kHzにおける5分間の超音波粉砕を行った。粉砕されたハイドロキシアパタイト粒子を180℃、2.5時間の水熱処理を行い、ハイドロキシアパタイト粒子を結晶化させた。
図3は、本実験例により製造されたハイドロキシアパタイト粒子のX線回折測定結果に示す。ハイドロキシアパタイト結晶に帰属する回折ピークが現れており、結晶化されたハイドロキシアパタイト粒子を製造できたことを確認できた。
(実験例2)
本実験例は、第1の実施形態にかかるハイドロキシアパタイト粒子の製造方法を用いて、実験例1とは異なる方法によって鱗片状ハイドロキシアパタイト粒子を製造した。実験例1では結晶化工程において水熱処理を用いたが、本実験例では電気炉による加熱(450℃、10時間)を用いた。
図4は、本実験例により製造されたハイドロキシアパタイト粒子のX線回折測定結果を示す。ハイドロキシアパタイト結晶に帰属する回折ピークが現れており、結晶化されたハイドロキシアパタイト粒子を製造できたことを確認できた。
図5は、実験例1で製造された鱗片状ハイドロキシアパタイト粒子のマイクロスコープ写真である。ハイドロキシアパタイト粒子の厚みは約200nm、粒径は4〜35μmであり、アスペクト比は20〜150であった。
11 基材
12 ハイドロキシアパタイト膜
13a アモルファス状態のハイドロキシアパタイト粒子
13b 結晶化されたハイドロキシアパタイト粒子
20 純水

Claims (6)

  1. 膜厚が均一でアスペクト比20〜400の剥離膜からなる結晶性ハイドロキシアパタイト粒子。
  2. ハイドロキシアパタイト以外の異種材料が結合された請求項1記載のハイドロキシアパタイト粒子。
  3. 前記異種材料は熱水中で溶解しない材料で構成される請求項2記載のハイドロキシアパタイト粒子。
  4. 前記異種材料は450℃以上の耐熱性材料で構成される請求項2記載のハイドロキシアパタイト粒子。
  5. 前記異種材料は複数の異種材料が層をなして形成されている請求項2記載のハイドロキシアパタイト粒子。
  6. 前記異種材料はチタンである請求項2記載のハイドロキシアパタイト粒子。
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