JP6254458B2 - 繊維強化複合材の端面加工装置 - Google Patents
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Description
従来、繊維強化複合材の余肉除去をする場合、一般的にエンドミル等の工具を用いて切削する方法が知られている。
しかし、上記のエンドミル等の工具で繊維強化複合材を切削した場合、繊維強化複合材の表面層に層間剥離やバリ等の欠陥が発生しやすい。そのため、強度低下や疲労破壊の原因となっている。
現在までに、これらの欠陥を防止する技術が種々提案されており、従来技術として知られている。
例えば、特許文献1では、繊維強化複合材をトリミング治具によって上下から挟んだ後にルーターで切削する事で、層間剥離やバリの発生を防ぐ切削方法が知られている。また、一定位置を基準点として刃のねじれ角を異にして形成した工具を用いて切削することで、切断面での欠陥の発生を防ぐ切削方法も知られている。
一方、特許文献2では、繊維強化複合材の表面層の繊維方向に対して工具のすくい面と90〜180度の角度をなすようにしながら上記繊維強化複合材の端面を切削する事で、表面層の繊維に対して工具の刃がせん断方向に作用され、切削抵抗が小さくなり、層間剥離やバリ等の欠陥の発生を防ぐ切削方法が知られている。また、成形時に繊維強化複合材の両表面にガラス繊維織物を貼付して加熱硬化した後に切削加工することで、上記欠陥の発生を防ぐ切削方法も知られている。
また、上記特許文献2では、材料を選定する際、常に表面層の繊維方向に対して工具のすくい面と90〜180度の角度をなすような繊維強化複合材に限定され、汎用性に乏しい。このために、市販されている一般的な繊維強化複合材の切削には採用されにくい問題がある。また、繊維強化複合材の両表面にガラス繊維織物を貼付する工程が余分に必要となり、加工コストが増大する問題もある。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、加工コストを抑えつつ、加工点付近を均一な力で押さえる事で、層間剥離やバリ等の欠陥の発生を抑制しつつ、自在に移動可能な繊維強化複合材の端面加工装置を提供することを目的とする。
具体的には、第1の発明は、繊維強化複合材を掴持する掴持機構と、繊維強化複合材の上方に間隔をおいて主軸を覆うように取り付けられている第1の押し出し機構と、繊維強化複合材を下から押圧する第2の押し出し機構とを備え、この第1の押し出し機構の下面に備えられた自己潤滑性部材と、第1の押し出し機構の下面に形成され、主軸に取り付けられた工具が突出可能な第1の開口部とを備え、第2の押し出し機構は、第2の押し出し機構の上面に備えられた自己潤滑性部材と、第2の押し出し機構の上面に形成され、主軸に取り付けられた工具が挿入可能な第2の開口部とを備えていることを特徴とする繊維強化複合材の端面加工装置である。
上記構成によれば、第1の押し出し機構に備えられた自己潤滑性部材と、第2の押し出し機構に備えられた自己潤滑性部材を繊維強化複合材に当てたまま、主軸をXY方向へ自在に移動させる事ができる。このように、摩擦係数の小さい自己潤滑性部材を使用する事で、繊維強化複合材の両表面を傷付けることなく滑らせる事が可能となる。すなわち、常に加工点に近い箇所を上下から押さえた状態でXY方向へ自在に移動させる事ができ、繊維強化複合材の端面加工時の表面層の層間剥離やバリの発生等の欠陥の発生を抑制しながら端面加工ができる。
また、専用治具を製作する必要がないため、加工コストを抑えることができる。
また、特許文献1にあるように、特殊な刃の形をした工具を用いる必要がないため、汎用的な工具を用いても層間剥離やバリの発生の抑制に一定の効果が得られる。
また、特許文献2にあるように、繊維方向と工具のすくい面との角度を限定する必要がないため、汎用的な材料を用いても層間剥離やバリの発生の抑制に一定の効果が得られ、ガラス繊維織物を表面に貼る必要も無いため、余分に工数や材料費がかかることもない。また、ガラス繊維織物を付加することによる繊維強化複合材の物性の変化の心配もなくなる。
また、繊維強化複合材は加工点付近で常に上下から挟まれた状態にあるため、薄板等の剛性が低い材料を切削する際も加工による振動が起きにくく、加工面が荒れる等の品質劣化がなくなる。
上記構成によれば、自己潤滑性部材として熱伝導率の高い黒鉛を用いることで、加工により繊維強化複合材に発生した加工熱を、黒鉛を通して外部に拡散するため、熱による加工面の劣化を防ぐことが可能である。また、黒鉛は熱膨張率が低いため、加工熱によって黒鉛の寸法が大きく変化する心配もなくなる。
上記構成によれば、加工点に近い箇所を均一な力で挟むことができるため、大きいサイズの繊維強化複合材でも押さえ方が不十分になることがなく、層間剥離やバリが発生するという心配がなくなる。また、繊維強化複合材を過大な力で押さえて傷つけるという心配もなくなる。
上記構成によれば、第1の押し出し機構と集塵手段とを連結することで、繊維強化複合材を加工することによって発生する切屑を第1の開口部から回収することが可能となる。つまり、工具と切屑とが擦れることによる工具摩耗が低減し、工具の寿命を延ばすことが可能である。また、端面加工装置内への切屑の散乱を防ぐことも可能である。つまり、端面加工装置の摺動部に切屑が入り込む事が原因による装置の故障がなくすことが可能となる。また、作業者が切屑を吸い込むことが原因による健康面での悪影響も緩和される。
上記構成によれば、第2の押し出し機構とコンプレッサーとが連結していることで、第2の開口部から圧縮空気を噴出することが可能である。つまり、繊維強化複合材と工具との間の切屑排出及び集塵をさらに促す効果が可能となる。また、噴出した圧縮空気によって工具を冷却できるため、加工熱による工具表面の変質や劣化を防ぎ、工具の寿命を延ばすことが可能である。また、第2の押し出し機構内への切屑の侵入を防ぐことも可能である。
また、摩擦係数の小さい自己潤滑性部材を使用する事で、繊維強化複合材の両表面を傷付けることなく滑らせる事が可能となる。
また、上下から押さえることで、同時に層間剥離やバリ等の欠陥の発生を抑制することができる。
また、加工時に発生する加工熱を、黒鉛を介して外部に分散させることで、熱による加工面の劣化を防ぐことができる。
また、加工時に発生した切屑を回収することで、工具と切屑が擦れることによる工具摩耗が低減し、工具の寿命を延ばすことができる。
図1は、本実施形態の端面加工装置を好適に適用可能な繊維強化複合材1を示した斜視図である。図1に示すように、繊維強化複合材1は、繊維で強化した樹脂からなる繊維強化樹脂シート2を複数枚積層した積層体である。なお、積層体を構成する繊維強化樹脂シート2には、シートの一端からもう一端まで連続して繋がった繊維で強化された樹脂シートや、不連続な繊維で強化された樹脂シートがある。なお、前記繊維として本実施形態では炭素繊維を使用しているが、これに限らず任意の繊維を選択すればよく、例えば、ガラス繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)繊維、ピッチ系繊維、セルロース系繊維、レーヨン、及びその他のポリマー繊維等が挙げられる。また、繊維に含浸させる樹脂として本実施例ではエポキシ樹脂を使用しているが、これに限らず任意の樹脂を選択すればよく、例えば、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、及びその他の熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂が挙げられる。この場合、物性改良のために複数の樹脂を混合して用いたものでもよい。
なお、以下の説明では、繊維強化複合材1に対して主軸4側を「上側」、反対側を「下側」とし、上下に沿った鉛直方向を「Z軸方向」、Z軸に垂直な水平方向を「XY軸方向」と定義する。
シリンダー28は、外部から送られた信号によって推力、停止位置、速度等を任意に設定可能な電動シリンダーであり、主軸4のXY方向への動きと同期して動くことが可能な駆動部(図示せず)を介して、端面加工装置3に固定されている。また、シリンダー28の昇降部(図示せず)と下ノズル27とがボルト(図示せず)によって連結されている。
図4(a)が緩衝機構19に圧縮空気が供給されている状態の模式図、図4(b)が第2の押し出し機構12を繊維強化複合材1に押し当てている状態の模式図、図4(c)が第1の押し出し機構11を繊維強化複合材1に押し当てている状態の模式図、図4(d)が工具10によって繊維強化複合材1の端面加工をしている状態の模式図である。なお、各図の構成要素の説明については、前述した符号を付すことで省略する。
繊維強化複合材1の端面加工は、例えば、図4(a)から、図4(b)、さらに図4(c)、図4(d)といった流れで行われる。
これにより繊維強化複合材1は、加工点付近で上下のノズルに備えられた自己潤滑性部材に挟まれた状態となっている。その後、さらに主軸4が矢印Bの方向へ移動すると、圧力室23内蓄えられた圧縮空気によって、自己潤滑性部材25は繊維強化複合材1に押さえつけられた状態となっている。
この際、工具10は、第2の押し出し機構12に備えられた第2の開口部29を貫通した状態となっている。また、繊維強化複合材1の板厚、形状、材質等の違いによって圧力室23内へ送る圧縮空気の圧力を任意の値に設定し、繊維強化複合材1の変形や傷付きを防ぐことも可能となっている。
なお、前記第1工程、第2工程の順番は入れ替わっても、同時でも良く、また、繊維強化複合材1の上側、下側の片側しか層間剥離やバリ等の欠陥が発生しないことが事前に確認できている場合は、第1工程、または第2工程のみでも構わない。
なお、本実施形態では主軸4と第2の押し出し機構12をXY軸方向へ動かすことで切削を行っているが、繊維強化複合材1をXY軸方向へ動かすことで切削を行っても構わない。
これにより、本実施形態の端面加工装置を用いた加工手順が終了する。
このように、摩擦係数の小さい自己潤滑性部材を使用する事で、繊維強化複合材の両表面を傷付けることなく滑らせる事が可能となる。
すなわち、常に加工点に近い箇所を上下から押さえた状態でXY方向へ自在に移動させる事が可能となり、繊維強化複合材の端面加工時の表面層の層間剥離やバリの発生等の欠陥の発生を抑制しながら端面加工が可能となる。さらに、薄板等の剛性が低い材料を切削する際も振動が起きにくいため、加工面が荒れる等の品質劣化がなくなる。
以上のように、実施形態を説明したが、本発明は、その目的の範囲を逸脱しない限りにおいて、適宜、変更をしてもよく、この実施形態に限定されるものではない。
例えば、掴持機構5の構成は、繊維強化複合材1の下側端面を吸引して固定する事が可能な構成であっても良いし、また、レバーの力によって繊維強化複合材を抑え込む事が可能な構成でも良いし、特に制限するものでもない。
また、ジャケット16の主軸4への固定する構成は、例えば、シリンダーの推力によってジャケット16の上側端面を主軸4の下側端面に押さえつけて固定する構成でも良いし、主軸4の下側端面に備えた凹型の溝にはめ込んで固定する構成でも良いし、主軸4の下側端面もしくはジャケット16の上側端面に磁石を取り付け磁力で固定する構成等、特に制限するものでもない。
また、ジャケット16に備えたシール溝21aと、上ノズル17に備えたシール溝22aの構成は、例えば、ジャケット16のみに2ヶ所のシール溝を備えても良いし、上ノズル17のみに2ヶ所のシール溝を備えても良い。
また、自己潤滑性部材25、26の固定構造は、例えば、上ノズル17、下ノズル27夫々の端面にネジ穴を設け、ボルトで自己潤滑性部材を固定しても良いし、また、部材の種類についても、黒鉛、ポリアセタール、及びその他の自己潤滑性を持つ材料等、特に制限するものでもない。
また、緩衝機構19の緩衝構成についても、例えば、圧力室23にスプリングを組み込む構成であっても良いし、また、ゴムなどの弾性体であっても良い。
また、シール材21、22は、Oリングを使用しているが、例えば、Xリング、及びその他の樹脂性シール材または金属製シール材でも良い。
また、シリンダー28は、電動シリンダーを使用しているが、例えば、エアーシリンダー、油圧シリンダー、及びその他の昇降機構でも良い。
また、集塵口31は主軸4に備えられているが、例えば、第1の押し出し機構11に集塵口を備えても良い。
2 繊維強化樹脂シート
3 端面加工装置
4 主軸
5 掴持機構
6、8、26 配管
7 集塵手段
9 コンプレッサー
10 工具
11 第1の押し出し機構
12 第2の押し出し機構
13 ベース部材
14 押さえ部材
15、20 ボルト
16 ジャケット
17 上ノズル
18 押さえ板
19 緩衝機構
21、22 シール材
21a、22a シール溝
23 圧力室
24 第1の開口部
25、30 自己潤滑性部材
27 下ノズル
28 シリンダー
29 第2の開口部
31 集塵口
Claims (5)
- 繊維で強化された繊維強化樹脂シートを積層した繊維強化複合材の端面を主軸に取り付けられた工具を用いて切削する加工装置において、
前記繊維強化複合材を掴持する掴持機構と、前記繊維強化複合材の上方に間隔をおいて主軸を覆うように取り付けられている第1の押し出し機構と、前記繊維強化複合材を下から押圧する第2の押し出し機構とを備え、
前記第1の押し出し機構は、該第1の押し出し機構の下面に備えられた自己潤滑性部材と、該第1の押し出し機構の下面に形成され、前記主軸に取り付けられた前記工具が突出可能な第1の開口部とを備え、
前記第2の押し出し機構は、該第2の押し出し機構の上面に備えられた自己潤滑性部材と、該第2の押し出し機構の上面に形成され、前記主軸に取り付けられた前記工具が挿入可能な第2の開口部とを備えていることを特徴とする繊維強化複合材の端面加工装置。 - 請求項1に記載の端面加工装置において、前記自己潤滑性部材が黒鉛であることを特徴とする繊維強化複合材の端面加工装置。
- 請求項1または2に記載の端面加工装置において、前記第1の押し出し機構が緩衝機構を備えていることを特徴とする繊維強化複合材の端面加工装置。
- 請求項1から3のいずれか1項に記載の端面加工装置において、前記第1の押し出し機構と連結可能な集塵手段を備えていることを特徴とする繊維強化複合材の端面加工装置。
- 請求項1から4のいずれか1項に記載の端面加工装置において、前記第2の押し出し機構と連結可能なコンプレッサーを備えていることを特徴とする繊維強化複合材の端面加工装置。
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