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JP6253327B2 - ダイシング用基体フィルム - Google Patents

ダイシング用基体フィルム Download PDF

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JP6253327B2 JP2013202543A JP2013202543A JP6253327B2 JP 6253327 B2 JP6253327 B2 JP 6253327B2 JP 2013202543 A JP2013202543 A JP 2013202543A JP 2013202543 A JP2013202543 A JP 2013202543A JP 6253327 B2 JP6253327 B2 JP 6253327B2
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Description

本発明は、半導体ウェハをチップ状にダイシングする際に、半導体ウェハに貼着して固定し使用される、ダイシング用基体フィルムに関する。
半導体チップを製造する方法として、半導体ウェハを予め大面積で製造し、次いでその半導体ウェハをチップ状にダイシング(切断分離)し、最後にダイシングされたチップをピックアッップする方法がある。ダイシング工程後のピックアップ工程では、先に半導体ウェハの裏面にダイシングフィルムを貼着しておき、次いでそのダイシングフィルムを拡張する工程(エキスパンディング工程)がある。ダイシングフィルムを拡張することにより、半導体チップのピッキングを容易に行うことができる。
ダイシング工程及びピックアップ工程では、半導体チップのピッキングの精度を高め、半導体チップの生産性を向上させることが必要である。そのため、半導体ウェハに貼着されるダイシングフィルムには、ダイシング工程では切削屑の発生を極力抑えることが要求され、ピックアップ工程ではエキスパンディング工程時に裂けや切断の発生を極力抑え、均一に円滑に拡張できることが要求される。
本出願人は、既に、ダイシング工程時の切断屑の発生を抑え、エキスパンディング工程時の破断の発生を抑えることを目的として、ポリメチルペンテン系樹脂シートとポリエチレン系シートを積層した積層シートを基体とし、更に粘着層が設けられているダイシング用粘着シートを提案している(特許文献1)。
特許第4545379号
本発明は、ダイシング工程時の切削屑の発生が抑えられ、エキスパンディング工程時に十分に拡張されると共に、ピックアップ工程時に各層が層間で剥がれない(層間強度が維持された)ダイシング用基体フィルムを提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、ダイシング用基体フィルムにおいて、ポリメチルペンテン系樹脂を含む樹脂組成物からなる層(A層)と、分岐鎖状低密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含む樹脂組成物からなる層(C層)との間に、非晶性ポリオレフィン及びオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含む樹脂組成物からなる層(B層)を設けることにより、ダイシング工程時の切断屑の発生が抑えられ、エキスパンディング工程時に十分に拡張されると共に、ピックアップ工程時に各層が層間で剥がれないことを見出した。かかる知見に基づき、更に研究を重ねて本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は下記のダイシング用基体フィルムを提供する。
項1. A層/B層/C層の順に積層されてなるダイシング用基体フィルムであって、
A層はポリメチルペンテン系樹脂を含む樹脂組成物からなり、
B層は非晶性ポリオレフィン及びオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含む樹脂組成物からなり、
C層は分岐鎖状低密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含む樹脂組成物からなる、
ことを特徴とするダイシング用基体フィルム。
項2. 前記B層の非晶性ポリオレフィンが、エチレン及び炭素数3〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれた二種以上のオレフィンを必須として構成されるオレフィン共重合体であることを特徴とする前記項1に記載のダイシング用基体フィルム。
項3. 前記B層のオレフィン系熱可塑性エラストマーが、
(A)成分:プロピレンの単独重合体、又はプロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜8の他のα−オレフィンとの共重合体成分;並びに
(B)成分:プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜8の他のα−オレフィンとの共重合体成分
から構成されるエラストマーであることを特徴とする前記項1又は2に記載のダイシング用基体フィルム。
項4. 前記A層の樹脂組成物が、帯電防止剤を5〜15重量%含むことを特徴とする前記項1〜3のいずれかに記載のダイシング用基体フィルム。
項5. 前記C層の樹脂組成物が、帯電防止剤を5〜25重量%含むことを特徴とする前記項1〜4のいずれかに記載のダイシング用基体フィルム。
項6. 全体の厚みが、60〜300μmであることを特徴とする前記項1〜5のいずれかに記載のダイシング用基体フィルム。
本発明のダイシング用基体フィルムは、ダイシング工程時の切断屑の発生が抑えられ、エキスパンディング工程時に十分に拡張されると共に、ピックアップ工程時に各層が層間で剥がれない。
具体的には、本発明のダイシング用基体フィルムは、ダイシング時におけるフィルム表面の切削屑の発生を抑制することができる。また、本発明のダイシング用基体フィルムは、エキスパンド時にダイシングフィルムを均一に拡張することができる。また、本発明のダイシング用基体フィルムは、層間の接着強度に優れるため、ピックアップ工程時に各層が層間で剥がれない。
実施例1のダイシング工程後のダイシング用基体フィルム表面の拡大写真である。切屑適性を評価している。 実施例2のダイシング工程後のダイシング用基体フィルム表面の拡大写真である。切屑適性を評価している。 実施例3のダイシング工程後のダイシング用基体フィルム表面の拡大写真である。切屑適性を評価している。 実施例4のダイシング工程後のダイシング用基体フィルム表面の拡大写真である。切屑適性を評価している。
本発明は、ダイシング用基体フィルムに関する。
以下、ダイシング用基体フィルムについて詳細に説明する。
(1)ダイシング用基体フィルム
本発明のダイシング用基体フィルムは、A層/B層/C層の順に積層されてなり、
A層はポリメチルペンテン系樹脂を含む樹脂組成物からなり、
B層は非晶性ポリオレフィン及びオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含む樹脂組成物からなり、
C層は分岐鎖状低密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含む樹脂組成物からなることを特徴とする。
以下、本発明のダイシング用基体フィルムを構成する各層について詳細に説明する。
(1−1)A層
A層はポリメチルペンテン系樹脂を含む樹脂組成物からなる。
ポリメチルペンテン系樹脂は、4−メチルペンテン−1を主成分とする単独ポリマー若しくは他のビニルモノマー(例えばエチレン、スチレン等)との共重合ポリマー又は他のビニル系ポリマ等とのブレンドポリマーを原料とする樹脂である。
ポリメチルペンテン系樹脂は、具体的には、触媒存在下プロピレンを二量化して4-メチルペンテン-1とした後、これを触媒存在下高分子化することにより、調製することができる(三井化学株式会社製「TPX(登録商標)」等)。ポリメチルペンテン系樹脂は、プロピレンの二量化によって得られる4-メチルペンテン-1を重合した高立体規則性の高融点ポリオレフィンである。
ポリメチルペンテン系樹脂の融点は、200℃程度以上が好ましく、220〜250℃程度がより好ましい。
ポリメチルペンテン系樹脂の融点が200℃以上であることにより、例えばダイサーがダイシング用基体フィルムのA層の内部にまで入った場合に、ポリメチルペンテン系樹脂の溶融現象を良好に抑えることが可能となる。そのため、A層の樹脂組成物がダイサー(ダイシングブレード)に融着して切削屑発生を良好に抑えることが可能となる。従って、ポリメチルペンテン系樹脂の融点は、基本的には高融点であることが好ましい。
また、ポリメチルペンテン系樹脂の融点は250℃程度以下が好ましい。ダイサーがウェハをカットし、ダイシング用基体フィルムのA層面に到達した瞬間に、溶融するよりもそれ以前に、微細クラックを良好に抑えることが可能となる。微細クラックを抑えることにより、切削屑発生を良好に抑えることが可能となる。
融点(℃)は、株式会社島津製作所製、示差走査熱量測定器DSC-50型で測定することができる。また、ブレンド樹脂の持つ融点は、各樹脂の融点とブレンド比とを以って計算により求めることができる。
ポリメチルペンテン系樹脂のヤング率は、0.5GPa〜1GPa程度が好ましく、0.55〜0.9GPa程度がより好ましい。ダイシング用基体フィルムのA層は、ダイサーに対する瞬時のカット作用に対して、良好な破断強度を保持することが可能となる。
ポリメチルペンテン系樹脂のヤング率が0.5GPa程度以上であることにより、ダイサーの瞬時カット作用に対する良好な破断強度を保持することが可能となる。
また、ポリメチルペンテン系樹脂のヤング率は、上限として1GPa程度以下が好ましい。ダイシング用基体フィルムのA層自身の硬度が良好に保持され、伸性を良好に保持することが可能となる。ダイシング用基体フィルムは、エキスパンディング工程時に、良好に拡張される。
ヤング率(GPa)は、株式会社島津製作所製、引張試験機ストログラフR-200型により、サンプル幅25mm、標準簡距離250mm、引張速度25mm/分の条件で測定することができる。
ダイシング用基体フィルムの表面(A層)に公知の粘着剤をコートして粘着剤層、必要に応じて離型フィルムを設けることによって、ダイシングフィルムを調製することができる。そのため、粘着剤層と接するダイシング用基体フィルムのA層面(表面)は改質されており、そのぬれ指数は、38mN/m程度以上が好ましく、40mN/m程度以上がより好ましく、43mN/m程度以上が更に好ましい。ぬれ指数が38mN/m程度以上であることにより、ダイシング用基体フィルムのA層面と粘着剤層とがより高い密着力をもって積層することが可能となる。また、その効果が飽和することから、通常、ぬれ指数は60mN/m程度以下が好ましい。
ぬれ指数(mN/m)は、キシダ化学株式会社製、のぬれ指数標準液を用いて、JIS K 6768に準じて測定することができる。
ポリメチルペンテン系樹脂としては、三井化学株式会社製「TPX(登録商標)」を好ましく用いることができる。
A層を形成する樹脂組成物に含まれる樹脂成分では、ポリメチルペンテン系樹脂の含有割合は、50〜100重量%程度が好ましく、70〜100重量%程度がより好ましい。A層のポリメチルペンテン系樹脂の含有割合が、前記範囲内にあることにより、本発明のダイシング用基体フィルムは、ダイシング工程時の切断屑の発生を良好に抑えることが可能となり、エキスパンディング工程時に良好に拡張されることも可能となる。
A層には、必要に応じ、更に帯電防止剤を含んでいてもよい。A層で用いられる帯電防止剤としては、アニオン系,カチオン系、ノニオン系等の公知の界面活性剤を選択できるが、とりわけ持続性、耐久性の点から、ポリエーテルエステルアミド樹脂(以下「PEEA樹脂」と表記する)、親水性ポリオレフィン樹脂(以下「親水性PO樹脂」と表記する)等のノニオン系界面活性剤が好適である。
前記PEEA樹脂は、親水性付与の主たるユニット成分であるポリエーテルエステルと、ポリアミドユニットとから構成されるポリマーであり、市販されているか、或いは公知の方法で容易に製造することができる。PEEA樹脂として、例えば、三洋化成工業(株)のペレスタットNC6321等が例示される。また、特開昭64-45429号公報、特開平6-287547号公報等にその製法が記載されており、これによれば、例えば、主鎖中にエーテル基を有するポリジオ−ル成分にジカルボン酸成分を反応させて末端エステルに変え、これにアミノカルボン酸又はラクタムを反応させて製造できる。PEEA樹脂は、前記いずれの層の樹脂とも相溶性が良く、ブリードアウトするような現象は一切ない。
親水性PO樹脂としては、例えば、親水性ポリエチレン(以下「親水性PE樹脂」と表記する)又は親水性ポリプロピレン(以下「親水性PP樹脂」と表記する)が例示される。
親水性PE樹脂又は親水性PP樹脂は、基本的にはポリエチレン鎖又はポリプロピレン鎖とポリオキシアルキレン鎖とがブロック結合したものであり、高い除電作用が発揮され静電気の蓄積をなくす。この結合は、エステル基、アミド基、エーテル基、ウレタン基等によって行われている。フィルム樹脂との相溶性の点から、この結合はエステル基又はエーテル基であるのが好ましい。親水性PP樹脂として、例えば、三洋化成工業(株)のペレスタット230、ぺレクトロンUC等が例示される。
親水性PE樹脂又は親水性PP樹脂におけるポリエチレン鎖又はポリプロピレン鎖の分子量は、例えば1,200〜6,000程度である。この分子量範囲であると、ポリオキシアルキレン鎖にポリエチレン又はポリプロピレンをブロック結合させる前段階の、ポリエチレン又はポリプロピレンの酸変性化が容易であるためである。
また、親水性PE樹脂又は親水性PP樹脂におけるポリオキシアルキレン鎖の分子量は、耐熱性及び酸変性後のポリエチレン又はポリプロピレンとの反応性の点から、1,000〜15,000程度であるのが良い。なお、上記した分子量は、GPCを用いて測定した値である。
親水性PE樹脂又は親水性PP樹脂は、例えば、前記した分子量を有するポリエチレン又はポリプロピレンを酸変性し、これにポリアルキレングリコールを反応させて製造することができる。より詳細については、例えば、特開2001-278985号公報、特開2003-48990号公報に記載されている。
A層が帯電防止剤を含む場合、帯電防止剤の含有量は、A層の樹脂組成物中、帯電防止剤を5〜15重量%程度が好ましく、7〜12重量%程度がより好ましい。帯電防止剤を前記範囲で配合することにより、エキスパンドリングと接して一様にエキスパンドされる場合のA層の滑り性を損なうことがない。また、有効に半導電性が付与されるため、発生する静電気を素早く除電することが可能となる。例えば、上記した範囲で帯電防止剤を含有させた本発明のダイシング用基体フィルムは、その裏面の表面抵抗率が107〜1012Ω/□程度となるため好ましい。
A層の厚さは、10〜80μm程度が好ましく、20〜70μm程度がより好ましい。30〜60μm程度が更に好ましい。A層の厚さを10μm以上に設定することで、安定した製膜が可能となる。A層とB層との合計の厚さは、ダイシング時の切り込み深さよりも厚くなるように設定されることが好ましい。ダイシング時の切り込みがC層にまで到達されると、切削屑が多くなる傾向にあるからである。
ダイシング時の切り込みがA層中で止まる場合に、伸び特性を維持でき、エキスパンド時にダイシングフィルムを均一により広く円滑に拡張するためにも、A層は上記範囲の厚さを有することが好ましい。また、ダイシング用基体フィルムのA層がある程度の厚さを有することにより、B層との層間の接着強度が保持され、ピックアップ工程時に各層が層間で剥がれないことにも繋がる。
(1−2)B層
B層は非晶性ポリオレフィン及びオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含む樹脂組成物からなる。
ダイシング用基体フィルムがB層を有することにより、A層とC層との接着性を向上させることが可能である。また、B層においてダイシングブレードによる樹脂由来の切削屑(ダイシング屑)の発生を効果的に抑制することも可能である。これにより、本発明のダイシング用基体フィルムは、ダイシング工程時の切断屑の発生が抑えられ、エキスパンディング工程時に十分に拡張されると共に、各層間の接着強度が高められることからピックアップ工程時に各層が層間で剥がれない。
非晶性ポリオレフィンは、エチレン及び炭素数3〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれた二種以上のオレフィンを必須として構成されるオレフィン共重合体である。
炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、直鎖状及び分岐状のα−オレフィンが含まれ、具体的には、直鎖状のα−オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-へプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン等が例示され、分岐状のα−オレフィンとしては、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、2-エチル-1-ヘキセン、2,2,4-トリメチル-1-ペンテン等が例示される。
非晶性ポリオレフィンは、温度135℃におけるテトラリン溶媒による極限粘度[η]が好ましくは0.3〜10であり、より好ましくは0.5〜7であり、更に好ましくは0.7〜5である。極限粘度[η]の測定は、135℃テトラリン中でウベローデ粘度計を用いて行う。サンプルは300mgを100mlテトラリンに溶解し、3mg/mlの溶液を調製する。次いで、当該溶液を、1/2、1/3、1/5に希釈し、135℃(±0.1℃)の恒温油槽中で、極限粘度を測定する。3回繰り返し測定し、得られた値を平均して用いる。
非晶性ポリオレフィンは、示差走査熱量計(DSC)を用い、JIS K 7122に準拠して測定した場合に、結晶の融解に基く1J/g以上のピーク及び結晶化に基づく1J/g以上のピークのいずれをも有しないことが好ましい。示差走査熱量計は、例えば島津製作所製DSC−60を用い、昇温及び降温過程のいずれも10℃/minの速度で測定を行う。
非晶性ポリオレフィンは、樹脂ペレットにした場合、粘着性を示すことがあり、市販されているもののなかには、ポリプロピレン系樹脂等とブレンドすることにより粘着性を抑えたものがある。ここでのポリプロピレン系樹脂は、前述したポリプロピレン系樹脂(PP)と同様のものである場合がある。
非晶性ポリオレフィンとしては、例えば、住友化学株式会社製「タフセレン」、三井化学株式会社製「タフマー」等が例示できる。
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、下記(A)及び(B)成分から構成されるエラストマーが好ましい。
(A)成分:プロピレンの単独重合体、又はプロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜8の他のα−オレフィンとの共重合体成分であるものが好ましい。アイソタクチックインデックスが85%以上であることが好ましい。組成物全体に対して10〜80重量%含まれることが好ましい。
(B)成分:プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜8の他のα−オレフィンとの共重合体成分からなるものが好ましい。プロピレンとエチレンとを必須成分とするものが好ましい。組成物全体に対して90〜20重量%含まれることが好ましい。
オレフィン系熱可塑性エラストマーでは、(A)成分をマトリックス相中に、(B)成分が微分散している海−島構造を有するエラストマーであるものがより好ましい。
(A)成分は、プロピレンの単独重合体がより好ましい。アイソタクチックインデックスは90%以上であることがより好ましい。アイソタクチックインデックスが90%以上のプロピレン単独重合体が好ましく、95%以上であるプロピレン単独重合体であることがより好ましい。アイソタクチックインデックスが85%以上であることにより、オレフィン系熱可塑性エラストマーの良好な耐熱性を保持することが可能となる。
プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜8の他のα−オレフィンとの共重合体成分における他のα−オレフィンとしては、例えば、ブテン-1、3-メチルブテン-1、ペンテン-1、3-メチルペンテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1等が挙げられる。また、プロピレンとエチレンとの共重合体成分でも良い。
(B)成分において、プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜8の他のα−オレフィンとの共重合体成分としては、前記(A)成分におけると同様のものを使用することができる。この(B)成分には、更に、1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1、5-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ブチリデン-2-ノルボルネン、2-イソプロペニル-5-ノルボルネン等の非共役ジエンが、(B)成分中に0.5〜10重量%の量で共重合されていてもよい。
オレフィン系熱可塑性エラストマーを含む樹脂組成物は、前記(A)成分を10〜80重量%含み、前記(B)成分を90〜20重量%含むことが好ましい。前記(A)成分を20〜70重量%含み、前記(B)成分を80〜30重量%含むことがより好ましい。
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、前記(A)成分の重合後に前記(B)成分が重合される逐次重合により製造された樹脂組成物である。この逐次重合に用いられる触媒は、有機アルミニウム化合物と、チタン原子、マグネシウム原子、ハロゲン原子、及び電子供与性化合物を必須とする固体成分とからなる。
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、o-ジクロロベンゼンを溶媒として用いた、温度0〜140℃の間の温度上昇溶離分別における0℃での溶出量が全溶出量に対して60〜80重量%であることが好ましい。0℃での溶出量がこの範囲であると反りを効果的に抑制できるため好ましい。
温度上昇溶離分別(Temperature Rising Elution Fractionation:TREF)は、公知の分析法である。具体的な測定方法としては、例えば、特開2003-7654号公報に開示されている方法等を挙げることが
できる。
オレフィン系熱可塑性エラストマーの製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のいかなる方法であってもよいが、下記に製造方法の一例を示す。
第一段階で、反応容器に、プロピレン、又はプロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜8の他のα−オレフィンを供給する。前記触媒の存在下、温度50〜150℃(好ましくは50〜100℃)、プロピレンの分圧0.5〜4.5MPa(好ましくは1.0〜3.5MPa)の条件で、重合を実施する。プロピレンの単独重合体、又はプロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜8の他のα−オレフィンとの共重合体が生成され(A)成分となる。
第二段階で、反応容器に、プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜8の他のα−オレフィンを供給する。前記触媒の存在下、温度50〜150℃(好ましくは50〜100℃)、プロピレン及びエチレンの分圧各0.3〜4.5MPa(好ましくは0.5〜3.5MPa)の条件で、重合を実施する。プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−炭素数4〜8の他のα−オレフィン共重合体、又はプロピレン−エチレン−炭素数4〜8の他のα−オレフィン共重合体が生成され(B)成分となる。
前記方法により製造されるオレフィン系熱可塑性エラストマーは、JIS K7210に準拠して温度230℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレートは0.1〜5g/10分程度であることが好ましい。また、JIS K7112に準拠して水中置換法にて測定した密度は0.87〜0.88g/cm3程度であることが好ましい。
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、例えば、三菱化学株式会社製「ゼラス(登録商標)」、株式会社プライムポリマー製「プライムTPO(登録商標)」、日本ポリプロ株式会社製「ニューコン」等が例示できる。
B層を形成する樹脂組成物に含まれる樹脂成分では、非晶性ポリオレフィン及びオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分の含有割合は、50〜100重量%程度が好ましく、70〜100重量%程度がより好ましい。B層のオレフィン系熱可塑性エラストマーの含有割合が、前記範囲内にあることにより、本発明のダイシング用基体フィルムは、ダイシング工程時の切断屑の発生を良好に抑えることが可能となり、エキスパンディング工程時に十分に拡張されることも可能となると共に、層間の接着強度に優れるため、ピックアップ工程時に各層が層間で剥がれない。
B層の厚さは、5〜280μm程度が好ましく、10〜250μm程度がより好ましい。20〜60μm程度が更に好ましい。B層の厚さを5μm以上に設定することで、安定した製膜が可能となる。A層とB層との合計の厚さは、ダイシング時の切り込み深さよりも厚くなるように設定されることが好ましい。ダイシング時の切り込みがC層にまで到達されると、切削屑が多くなる傾向にあるからである。そのため、A層とB層との合計の厚さは、ダイシング時の切り込み量よりも厚くなるように設定されることが好ましい。
ダイシング時の切り込みがA又はB層中で止まる場合に、伸び特性を維持でき、エキスパンド時にダイシングフィルムを均一により広く円滑に拡張するためにも、B層は上記範囲の厚さを有することが好ましい。また、ダイシング用基体フィルムのB層がある程度の厚さを有することにより、B層とA層との層間及びB層とC層との層間の接着強度が保持され、ピックアップ工程時に各層が層間で剥がれないことにも繋がる。
(1−3)C層
C層は分岐鎖状低密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分(低密度ポリエチレン)を含む樹脂組成物からなる。ダイシング用基体フィルムのエキスパンド性、即ち、基材の引張物性に優れる。その他、ポリプロピレン系樹脂を配合しても良い。
本発明のダイシング用基体フィルムでは、引落し台を押し当てることによって、フィルムがエキスパンドされる。そのため、引落し台に対するダイシング用基体フィルムの滑り性が高いことが好ましい。引落し台と接するダイシング用基体フィルムの面にC層を設けることにより、前記特性が付与される。
C層は、エチレンを主成分とするエチレン単独ポリマー若しくは他のビニルモノマとの共重合ポリマー又は他のビニル系樹脂等とのブレンドポリマーを併用しても良い。
分岐鎖状低密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分のヤング率は、0.1〜0.25GPaが好ましく、0.13〜0.2GPaがより好ましい。分岐鎖状低密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分のヤング率が、前記範囲を満たすことにより、ダイシング用基体フィルムは、エキスパンディング工程時の破断の発生が良好に抑えられる。よって、従って、安全にして確実に拡張(エキスパンディング)できるので、微細にカットされたウェハ等のピックアップがより迅速に、容易に行えるようになる。つまり、これは0.1GPa程度以上であることにより、エキスパンディング動作を安全にして確実に行うに必要なシート基体として支持性が良好に備わることになる。また、ダイシング用基体フィルムは裂け難く、所望する間隔での拡張が容易となる。
また、分岐鎖状低密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分のヤング率は、0.25GPa程度以下であることにより、容易な力での拡張ができ、裂け難くなり、安全にして確実に所望するエキスパンディングを行なうことが可能となる。
分岐鎖状低密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンは、高圧法で得られる分岐鎖単独ポリエチレン、エチレンにα―オレフィン(例えば1―ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等)を共重合させて積極的に短鎖分岐をもたせて低密度にしたポリエチレンコポリマ、エチレンにアクリル酸系モノマ又は酢酸ビニルを共重合して低密度にしたポリエチレンコポリマ等が挙げられる。
低密度ポリエチレンとしては、例えば、メタロセン触媒により重合された低密度ポリエチレン、ラジカル開始剤を用いて高圧ラジカル重合により製造される高圧法低密度ポリエチレン(HP-LDPE)、遷移金属触媒を用いて配位イオン重合により製造される直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等を用いることができる。
低密度ポリエチレンの190℃におけるメルトフローレート(MFR)は、5g/10min程度以下が好ましく、3g/10min程度以下がより好ましい。上記MFRを5g/10min以下に設定することにより、B層との粘度差を抑制できるため、安定した製膜が可能となる。また、低密度ポリエチレンのMFRは、樹脂の押出しを容易にするため、0.1g/10min程度以上が好ましく、0.3g/10min程度以上がより好ましい。
上記低密度ポリエチレンの密度は、0.9〜0.94g/cm3程度以上が好ましく、0.91〜0.93g/cm3程度以上がより好ましい。
C層には、必要に応じ、更に帯電防止剤を含んでいてもよい。前記A層で使用できる帯電防止剤を、C層においても使用できる。C層で用いられる帯電防止剤としては、アニオン系,カチオン系、ノニオン系等の公知の界面活性剤を選択できるが、とりわけ持続性、耐久性の点から、PEEA樹脂、親水性PO樹脂等のノニオン系界面活性剤が好適である。
C層が帯電防止剤を含む場合、帯電防止剤の含有量は、C層の樹脂組成物中、帯電防止剤を5〜25重量%程度が好ましく、7〜22重量%程度がより好ましい。帯電防止剤を前記範囲で配合することにより、エキスパンドリングと接して一様にエキスパンドされる場合のC層の滑り性を損なうことがない。また、有効に半導電性が付与されるため、発生する静電気を素早く除電することが可能となる。例えば、上記した範囲で帯電防止剤を含有させた本発明のダイシング用基体フィルムは、その裏面の表面抵抗率が107〜1012Ω/□程度となるため好ましい。
C層には、本発明の効果に悪影響を与えない範囲で、更にアンチブロッキング剤等を加えてもよい。アンチブロッキング剤を添加することにより、ダイシング用基体フィルムをロール状に巻き取った場合等のブロッキングが抑えられ好ましい。アンチブロッキング剤としては、無機系又は有機系の微粒子を例示することができる。
C層の厚さは、5〜50μm程度が好ましく、10〜40μm程度がより好ましい。15〜30μm程度が更に好ましい。C層の厚さを5μm以上に設定することにより、安定した製膜が可能となる。また、C層の厚さを50μm以下に設定することにより、フィルムのエキスパンド性、即ち、基材の引張物性が優れる。
ダイシング時の切り込みは、通常C層にまで到達されない。C層は切り込みを受けないことから、伸び特性を維持でき、エキスパンド時にダイシングフィルムを均一により広く円滑に拡張するためにも、C層は上記範囲の厚さを有することが好ましい。また、ダイシング用基体フィルムのC層がある程度の厚さを有することにより、B層との層間の接着強度が保持され、ピックアップ工程時に各層が層間で剥がれないことにも繋がる。
(1−4)A層/B層/C層
ダイシング用基体フィルムの厚さは、ダイシングブレードの切り込み深さよりも厚くし、且つ容易にロ−ル状に巻くことができる程度であれば良く、特に限定されるものではない。本発明のダイシング用基体フィルムの全体の厚さとしては、60〜300μm程度が好ましく、70〜200μm程度がより好ましく、80〜100μm程度が更に好ましい。ダイシング用基体フィルムの全体の厚さを60μm以上に設定することにより、半導体ウェハをダイシングする際に、半導体ウェハを衝撃から保護することが可能となる。
A層及びB層の合計厚さはダイシングブレードの切り込みの最深部の深さよりも厚くし、ダイシングブレードの切込みがC層にまで達しない厚さとすることが必要である。このような厚さのA層及びB層を設けることにより基材フィルムとしての切削屑はほとんど発生しない。
また、ダイシング用基体フイルム全厚さに対し、A層の厚さの割合は10〜80%程度が好ましく、30〜60%程度がより好ましい。B層の厚さの割合は10〜90%程度が好ましく、30〜60%程度がより好ましい。C層の厚さの割合は5〜40%程度が好ましく、5〜30%程度がより好ましい。
ダイシング用基体フイルムの具体例としては、ダイシング用基体フィルムの全厚さが60〜80μm程度の場合、A層の厚さは25〜50μm程度が好ましく、30〜45μm程度がより好ましい。B層の厚さは15〜45μm程度が好ましく、20〜40μm程度がより好ましい。C層の厚さは5〜20μm程度が好ましく、10〜15μm程度がより好ましい。
本発明のダイシング用基体フィルムは、A層とC層との厚さの比率は、A層の厚さを1としたとき、C層の厚さが0.1〜1程度が好ましく、0.2〜0.5程度がより好ましい。また、A層とB層との厚さの比率は、A層を1としたとき、B層の厚さは0.1〜1程度であることが好ましく、0.2〜0.5程度であることがより好ましい。
(2)ダイシング用基体フィルムの製法
本発明のダイシング用基体フィルムは、A層、B層及びC層用樹脂組成物を多層共押出成形して製造することができる。具体的には、前記A層用樹脂組成物、B層用樹脂組成物及びC層用樹脂組成物を、A層/B層/C層の順に共押出成形することにより製造することができる。
A層及びC層を構成する樹脂組成物には、必要に応じて更に帯電防止剤を加えることができる。
上記した各層用樹脂をそれぞれこの順でスクリュー式押出機に供給し、180〜240℃で多層Tダイからフィルム状に押出し、これを30〜70℃の冷却ロ−ルに通しながら冷却して実質的に無延伸で引き取る。或いは、各層用樹脂を一旦ペレットとして取得した後、上記の様に押出成形してもよい。
なお、引き取りの際に実質的に無延伸とするのは、ダイシング後に行うフイルムの拡張を有効に行うためである。この実質的に無延伸とは、無延伸、或いは、ダイシングフィルムの拡張に悪影響を与えない程度の僅少の延伸を含むものである。通常、フィルム引き取りの際に、たるみの生じない程度の引っ張りであればよい。
以下に、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)ダイシング用基体フィルムの原料
実施例及び比較例において下記の原料を用いた。
A層(ポリメチルペンテン系樹脂)
・PmP:三井化学株式会社製「TPX(登録商標)MX002O」、260℃においてMFR:21g/10min、密度:0.834g/cm3である。
B層(非晶性ポリオレフィン、オレフィン系熱可塑性エラストマー)
・非晶性ポリオレフィン:三井化学株式会社製「タフマー(登録商標)P-1080」、230℃において、MFR:8.1g/10min、密度:0.87g/cm3である。
・オレフィン系熱可塑性エラストマー1:三菱化学株式会社製「ゼラス(登録商標)MC638」、230℃においてMFR:3g/10min、密度:0.89g/cm3である。
・オレフィン系熱可塑性エラストマー2:株式会社プライムポリマー製「プライムTPO(登録商標)F-3900」、230℃においてMFR:4.5g/10min、密度:0.90g/cm3である。
C層(低密度ポリエチレン)
・LDPE:分岐鎖状低密度ポリエチレン、宇部丸善ポリエチレン株式会社製「F522N」、190℃においてMFR:5g/10min、密度:0.922g/cm3である。
・LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン、宇部丸善ポリエチレン株式会社製「0520F」、190℃においてMFR:2g/10min、密度:0.904g/cm3である。
帯電防止剤
・三洋化成工業株式会社製「ぺレクトロンUC」、190℃においてMFR:15g/10min、密度:0.90g/cm3である。
その他
・HDPE:高密度ポリエチレン、日本ポリエチレン株式会社製「ノバテックHD HJ360」、230℃においてMFR:5.5g/10min、密度:0.951g/cm3である。
・酸変性ポリオレフィン:三井化学株式会社製「アドマーSE800」、190℃においてMFR:4g/10min、密度:0.9g/cm3である。
(2)ダイシング用基体フィルムの製造
表1に示すA層、B層及びC層の原料を、表1に示す配合割合でドライブレンドし、各層の樹脂組成物とした。各層を構成する樹脂組成物を、バレル温度180〜220℃に調整された各押出機に投入した。次いで、A層/B層/C層の順序になるように、230℃のTダイスにより押出し、積層した。次いで、40℃の冷却水が循環する引き取りロールにて共押出しながら、冷却固化し、無延伸の状態で、フラット状の三層フィルム(ダイシング用基体フィルム)を得た。
実施例及び比較例のダイシング用基体フィルムに対し、下記条件でダイシング処理、及びエキスパンド処理を行いった。
(3)ダイシング時の切削屑の評価
株式会社ディスコ製のダイシング装置(DAD-2H/6)及びブレード(P1A863 SDC220 N75 BR597 刃300μm幅)を用い、下記条件で、ダイシング用基体フィルムのA層から切り込みを入れた。
条件:水量目盛(0.6L/min)・切り込み深さ(40μm)
回転速度30,000回転/min、送り速度100mm/s、10mm角にダイシング
ダイシング処理した後、切り込み部のMD方向(フィルム成形の押出し方向)とTD方向(フィルム成形により成形されたフィルムの幅方向)との溝が交差した部分において、5点の切削屑を観察し、切削屑の平均値を求めた。切削屑は株式会社キーエンス製VHX-1000を用いて300倍で観察し、MD方向500μm、TD方向600μmの面積中の切削屑を数えた。切削屑を以下の基準で評価した。
<評価基準>
◎:100μm以上の長さの切削屑が0個であった。
○:100μm以上の長さの切削屑が1個以上10個未満であった。
△:100μm以上の長さの切削屑が10個以上50個未満であった。
×:100μm以上の長さの切削屑が50個以上であった。
図1〜4は、MD方向とTD方向の溝が交差した部分の拡大写真である。
図1:実施例1
図2:実施例2
図3:実施例3
図4:実施例4
(4)エキスパンド性(拡張性)の評価
デンカアドテックス株式会社製のテープエキスパンダー装置(TAE-800)を用い、上記ダイシング装置で切り込みを入れた後、エキスパンドを行った。先ず、ダイシング基体フィルムに縦幅10mm、及び横幅10mmに3本ずつ格子状にラインを引いた。次いで、ダイシング処理及びエキスパンド処理を行った(10mm角のダイシング)。
エキスパンド処理後、30mm引落し量で、エキスパンド前後の変化を測定した。エキスパンド性を以下の基準で評価した。下記評価は、3本のサンプルを測定し、その平均値をとった。
<評価基準>
○:300μm幅のダイシング溝は400μm以上に拡張した。
×:300μm幅のダイシング溝は400μm未満に拡張した。
(5)剥離強度の評価(A-B層間、B-C層間強度)
ダイシング用基体フィルムのA層とB層の間、又はB層とC層の間で層間剥離の切っ掛けをつくり、剥離した部分を把持し、新東科学株式会社製離着性強度試験機(TRIBOGEAR TYPE:17)を用い、A層−B層間の剥離強度、又はB層−C層間の剥離強度を180度剥離試験により測定した。サンプルの大きさは幅(TD方向)10mm、長さ(MD方向)100mmとした。
層間強度を以下の基準で評価した。下記評価は、3本のサンプルを測定し、その平均値をとった。
<評価基準>
○:ラミネート剥離時の強度が0.2N/mm以上であった。
△:ラミネート剥離時の強度が0.1N/mm以上、0.2N/mm未満であった。
×:ラミネート剥離時の強度が0.1N/mm未満であった。
実施例1〜9のダイシング用基体フィルムは、A層/B層/C層の順に積層されてなり、A層はポリメチルペンテン系樹脂を含む樹脂組成物からなり、B層は非晶性ポリオレフィン及びオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含む樹脂組成物からなり、C層は分岐鎖状低密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含む樹脂組成物からなる。実施例1〜9のダイシング用基体フィルムを用いると、ダイシング工程時の切削屑の発生が抑えられ、エキスパンディング工程時に十分に拡張されると共に、ピックアップ工程時に各層が層間で剥がれなかった。
つまり、本発明のダイシング用基体フィルムは、ダイシング時におけるフィルム表面の切削屑の発生を抑制することができる。また、本発明のダイシング用基体フィルムは、エキスパンド時にダイシングフィルムを均一に拡張することができる。また、本発明のダイシング用基体フィルムは、層間の接着強度に優れるため、ピックアップ工程時に各層が層間で剥がれない。
一方、比較例1〜3は層間強度が弱かった。また、比較例4ではエキスパンド時にダイシングフィルムを十分に拡張することが困難であった。

Claims (6)

  1. A層/B層/C層の順に積層されてなるダイシング用基体フィルムであって、
    A層は4−メチルペンテン−1を主成分とするポリメチルペンテン系樹脂を85〜100重量%含む樹脂組成物からなり、
    B層は非晶性ポリオレフィン及びオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含む樹脂組成物からなり、
    C層は分岐鎖状低密度ポリエチレン及び直鎖状低密度ポリエチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含む樹脂組成物からなる、
    ことを特徴とするダイシング用基体フィルム。
  2. 前記B層の非晶性ポリオレフィンが、エチレン及び炭素数3〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれた二種以上のオレフィンを必須として構成されるオレフィン共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のダイシング用基体フィルム。
  3. 前記B層のオレフィン系熱可塑性エラストマーが、
    (A)成分:プロピレンの単独重合体、又はプロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜8の他のα−オレフィンとの共重合体成分;並びに
    (B)成分:プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜8の他のα−オレフィンとの共重合体成分
    から構成されるエラストマーであることを特徴とする請求項1又は2に記載のダイシング用基体フィルム。
  4. 前記A層の樹脂組成物が、帯電防止剤を5〜15重量%含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のダイシング用基体フィルム。
  5. 前記C層の樹脂組成物が、帯電防止剤を5〜25重量%含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のダイシング用基体フィルム。
  6. 全体の厚みが、60〜300μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のダイシング用基体フィルム。
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