図1〜図10を参照して、本発明の一実施形態による移動式クレーン2について説明する。なお、以下、移動式クレーン2を単にクレーン2と称する。
本実施形態によるクレーン2は、図1に示すように、自走可能に構成されるとともにクレーン作業を行うクレーン本体3と、クレーン本体3の安定性を高めて吊能力を向上するためのカウンタウェイト台車4と、クレーン本体3とカウンタウェイト台車4とを相互に連結する連結ビーム5とを備える。以下、カウンタウェイト台車4を単に台車4と称する。
クレーン本体3は、下部走行体6と、上部旋回体7と、旋回体駆動装置8(図9参照)と、走行操作装置9と、旋回操作装置10と、旋回角度検出部25と、を備える。
下部走行体6(図1参照)は、クローラ式であり、当該下部走行体6の前後方向A(図4〜図6参照)に自走可能に構成されている。下部走行体6は、その車幅方向の両側部(左右両側部)に分かれて配置された一対のクローラ装置11を備えている。この一対のクローラ装置11の駆動により、下部走行体6が自走するようになっている。なお、下部走行体6の前後方向Aは、各クローラ装置11の長手方向に一致する方向である。
走行操作装置9(図9参照)は、クレーン本体3の走行(前進又は後進)及び走行停止を指示するために用いられるものであり、上部旋回体7が有する図略の運転室内に設けられている。走行操作装置9は、下部走行体6の前方と後方とのうちの一方への走行を指示するために操作される走行操作レバー9aを備える。走行操作レバー9aは、本発明における走行操作部の一例である。以下、走行操作レバー9aのことを単にレバー9aと称する。
レバー9aは、下部走行体6の走行の停止を指示する中立位置と、中立位置から一方側の位置であって下部走行体6の前方への走行を指示する前進位置と、中立位置から前記一方側と反対側の位置であって下部走行体6の後方への走行を指示する後進位置との間で傾倒操作可能となっている。レバー9aの中立位置から前進位置への操作に応じてクローラ装置11が下部走行体6を前方へ駆動し、レバー9aの中立位置から後進位置への操作に応じてクローラ装置11が下部走行体6を後方へ駆動するようになっている。
上部旋回体7(図1参照)は、縦軸C1回りに旋回可能となるように下部走行体6上に搭載されている。上部旋回体7は、図1に示すように、下部走行体6上に旋回可能となるように取り付けられた上部旋回体本体14と、その上部旋回体本体14に取り付けられたブーム16及びマスト18と、吊荷を吊るための吊具20と、を備える。
ブーム16は、起伏自在となるように上部旋回体本体14の前端部に取り付けられている。このブーム16の先端部から吊具20が吊り下げられる。
マスト18は、ブーム16の後側の位置でその基端部(下端部)を支点として水平軸回りに回動可能となるように上部旋回体本体14に取り付けられている。マスト18の先端部(上端部)は、ブームガイライン22を介してブーム16の先端部と接続されている。これにより、マスト18は、起立状態のブーム16を後方からブームガイライン22を介して支える。また、マスト18の先端部は、台車ガイライン24を介して台車4に接続されている。
なお、上部旋回体7、台車4及び連結ビーム5に関する「前側」は、上部旋回体7のブーム16が設けられた側を意味し、上部旋回体7、台車4及び連結ビーム5に関する「後側」は、ブーム16が設けられた側に対して反対側を意味する。図4〜図6に両矢印Bで示される方向が、上部旋回体7、台車4及び連結ビーム5に関する前後方向に相当する。
旋回体駆動装置8(図9参照)は、旋回操作装置10の旋回操作レバー10a(後述)の操作に応じて上部旋回体7(上部旋回体本体14)を縦軸C1回りに旋回駆動する装置である。旋回体駆動装置8は、油圧モータである旋回モータと、旋回モータが出力する動力を下部走行体6と上部旋回体本体14との間で伝達して下部走行体6に対して上部旋回体本体14を旋回させる伝達機構とを有する。
旋回操作装置10(図9参照)は、上部旋回体7の旋回及び旋回停止を指示するために用いられるものであり、上部旋回体7が有する図略の運転室内に設けられている。旋回操作装置10は、上部旋回体7の右旋回と左旋回とのうちの一方の旋回を指示するために操作される旋回操作レバー10aを備える。以下、旋回操作レバー10aのことを単にレバー10aと称する。
レバー10aは、上部旋回体7の旋回の停止を指示する中立位置と、中立位置から一方側の位置であって上部旋回体7の右旋回を指示する右旋回位置と、中立位置から前記一方側と反対側の位置であって上部旋回体7の左旋回を指示する左旋回位置との間で傾倒操作可能となっている。レバー10aの中立位置から右旋回位置への操作に応じて旋回体駆動装置8が上部旋回体7を右旋回させ、レバー10aの中立位置から左旋回位置への操作に応じて旋回体駆動装置8が上部旋回体7を左旋回させるようになっている。
旋回角度検出部25(図9参照)は、下部走行体6に対する上部旋回体7の縦軸C1回りの旋回角度を検出するものである。この旋回角度検出部25は、上部旋回体7の旋回角度を逐次検出し、その検出した旋回角度のデータを本体側制御部82(後述)へ逐次送信するようになっている。旋回角度検出部25により検出される上部旋回体7の旋回角度は、次のように規定される(図4〜図6参照)。
上部旋回体7の前後方向Bが下部走行体6の前後方向Aと一致する状態(図4参照)、すなわち上部旋回体7の前方が下部走行体6の前方と一致し且つ上部旋回体7の後方が下部走行体6の後方と一致する状態での上部旋回体7の旋回角度を、0°とする。その旋回角度が0°の状態から上部旋回体7が左回りに旋回するにつれて旋回角度が上昇するものとし、上部旋回体7が旋回角度0°の姿勢から1周回って旋回角度0°の姿勢と同じ姿勢をとった状態を旋回角度360°とする。従って、図5の状態では上部旋回体7の旋回角度は45°であり、図6の状態では上部旋回体7の旋回角度は315°である。また、上部旋回体7が旋回角度0°の姿勢にある状態に対して正反対の方向を向いた状態、すなわち上部旋回体7の前方が下部走行体6の後方に一致し且つ上部旋回体7の後方が下部走行体6の前方に一致する状態での上部旋回体7の旋回角度は、180°である。
連結ビーム5は、上部旋回体7(上部旋回体本体14)からその上部旋回体7の後方へ延びている。連結ビーム5は、上部旋回体本体14の後端部に結合されており、その後端部から突出して後方へ上部旋回体本体14の前後方向Bに沿って延びている。
台車4(図1参照)は、上部旋回体7からその上部旋回体7の後方へ離れた位置に配置されている。台車4は、クレーン本体3の動き(クレーン本体3の走行や上部旋回体7の旋回)に応じて移動可能(自走可能)となっている。台車4は、その上にカウンタウェイト27を積載し、上記のように台車ガイライン24を介してマスト18の先端部と連結されるとともに連結ビーム5を介して上部旋回体本体14の後部と連結されることにより、吊作業時に上部旋回体7の前部にかかる吊荷重やブーム16の荷重等とのバランスを取ってクレーン2の安定性を高め、それによってクレーン2の吊能力を向上するものである。
具体的に、台車4は、図2に示すように、台車フレーム28と、一対の車輪ユニット30と、一対の操向装置32(図2及び図3参照)と、複数のジャッキ装置33(図1及び図2参照)と、操向角度検出部40(図9参照)とを有する。
台車フレーム28は、上から見て上部旋回体本体14の左右幅方向に長い略矩形状に形成されている。台車フレーム28は、その左右幅方向の中心が上部旋回体本体14の左右幅方向の中心と一致するように配置されている。すなわち、台車フレーム28は、その左右幅方向の中心が連結ビーム5の左右幅方向の中心と一致するように配置されている。その状態で、台車フレーム28は、連結ビーム5に結合されている。この台車フレーム28上にカウンタウェイト27(図1参照)が積載される。
一対の車輪ユニット30は、台車フレーム28に取り付けられている。一対の車輪ユニット30は、台車フレーム28の下側に配置されるとともに、台車フレーム28の連結ビーム5に対する取付箇所28a(図2参照)の左右両側に分かれて配置されている。各車輪ユニット30は、ユニットフレーム34と、複数の車輪36とを有する。
各ユニットフレーム34は、それぞれ対応する縦軸C2回りに旋回可能となるように台車フレーム28に取り付けられている。この各ユニットフレーム34の旋回中心となる縦軸C2は、各車輪ユニット30の旋回軸に相当する。
各車輪ユニット30の複数の車輪36は、縦軸C2とほぼ直交する水平軸回りに双方向に回転可能となるように対応するユニットフレーム34によって支持されている。複数の車輪36は、同軸となるように並列に配置されている。本実施形態では、各車輪ユニット30は、4つの車輪36を有しており、その4つの車輪36のうち2つずつが組になっている。
一対の車輪ユニット30のうちの一方の車輪ユニット30は、その車輪ユニット30の車輪36をそれらの軸回りに回転駆動する車輪駆動装置38を有する。車輪駆動装置38は、車輪36を一方の回転方向に回転駆動する第1駆動状態と車輪36を一方の回転方向と反対の回転方向に回転駆動する第2駆動状態とに切り換わるように構成されている。車輪駆動装置38は、図10に示すように、油圧ポンプ42と、油圧モータ44と、油圧回路46とを備える。
油圧ポンプ42は、油圧モータ44へ供給する作動油を吐出するものである。
油圧モータ44は、油圧ポンプ42から作動油が供給されることによって作動して、車輪36を回転させる動力を発する。図10では、1つの油圧モータ44を示しているが、車輪駆動装置38は、複数の油圧モータ44(図2参照)を備えてもよく、この場合、複数の油圧モータ44のそれぞれについての作動油の給排にかかる構成は同様であるため、以下、それらのうち1つの油圧モータ44に関する構成について代表して説明する。
油圧モータ44の出力軸は、対応する車輪36の車輪軸に接続されており、油圧モータ44が作動してその出力軸が回転することにより、対応する車輪36が回転するようになっている。油圧モータ44は、図10に示すように、第1給排口44a及び第2給排口44bを有する。油圧モータ44は、第1給排口44aに作動油が供給されることにより車輪36を一方の回転方向へ回転駆動し、第2給排口44bに作動油が供給されることにより車輪36を前記一方の回転方向と反対の回転方向へ回転駆動する。
油圧回路46(図10参照)は、制御弁50と、供給配管52と、戻し配管54と、第1管路56と、第2管路57と、第1切換弁61と、第2切換弁62とを備える。
制御弁50は、油圧モータ44への作動油の供給状態の制御を行うための切換弁である。制御弁50は、供給配管52を介して油圧ポンプ42と接続されるとともに、戻し配管54を介してタンク48と接続されている。なお、油圧ポンプ42とタンク48は、台車4とクレーン本体3のいずれに設けられていてもよい。また、制御弁50は、第1管路56を介して油圧モータ44の第1給排口44aに接続されるとともに、第2管路57を介して油圧モータ44の第2給排口44bに接続されている。
制御弁50は、供給配管52を第1管路56に接続するとともに戻し配管54を第2管路57に接続する第1供給位置50aと、供給配管52を第2管路57に接続するとともに戻し配管54を第1管路56に接続する第2供給位置50bと、供給配管52及び戻し配管54を第1管路56及び第2管路57と接続しない供給停止位置50cとをとり得るように構成されている。
制御弁50は、第1パイロットポート51a及び第2パイロットポート51bを有する。制御弁50は、第1パイロットポート51aにパイロット圧が供給されることによって第1供給位置50aになり、第2パイロットポート51bにパイロット圧が供給されることによって第2供給位置50bになり、第1及び第2パイロットポート51a,51bのいずれにもパイロット圧が供給されない場合に供給停止位置50cになるように構成されている。
制御弁50は、第1供給位置50aでは、油圧ポンプ42から供給配管52に吐出された作動油を第1管路56へ導き、それによって、第1管路56から油圧モータ44の第1給排口44aへ作動油が供給される。その結果、油圧モータ44が車輪36を前記一方の回転方向に回転駆動するように作動し、その油圧モータ44の第2給排口44bから作動油が排出される。従って、この状態が車輪駆動装置38の前記第1駆動状態に相当する。また、制御弁50は、第1供給位置50aでは、油圧モータ44の第2給排口44bから第2管路57に排出された作動油をその第2管路57から戻し配管54へ導き、それによって、作動油が戻し配管54を通じてタンク48へ戻る。
また、制御弁50は、第2供給位置50bでは、油圧ポンプ42から供給配管52に吐出された作動油を第2管路57へ導き、それによって、第2管路57から油圧モータ44の第2給排口44bへ作動油が供給される。その結果、油圧モータ44が車輪36を前記一方の回転方向と反対の回転方向に回転駆動するように作動し、その油圧モータ44の第1給排口44aから作動油が排出される。従って、この状態が車輪駆動装置38の前記第2駆動状態に相当する。また、制御弁50は、第2供給位置50bでは、油圧モータ44の第1給排口44aから第1管路56に排出された作動油をその第1管路56から戻し配管54へ導き、それによって、作動油が戻し配管54を通じてタンク48へ戻る。
また、制御弁50は、供給停止位置50cでは、供給配管52及び戻し配管54と第1管路56及び第2管路57との接続を遮断し、それによって、油圧ポンプ42から油圧モータ44の第1給排口44a及び第2給排口44bのいずれへも作動油が供給されなくなる。その結果、油圧モータ44の作動が停止し、車輪36に回転駆動力が付与されなくなる。
第1切換弁61は、制御弁50の第1パイロットポート51aと図略のパイロット油圧源との間のパイロット圧の供給経路に設けられ、第1パイロットポート51aへのパイロット圧の供給と非供給とを切り換えるソレノイドバルブである。また、第2切換弁62は、制御弁50の第2パイロットポート51bと図略のパイロット油圧源との間のパイロット圧の供給経路に設けられ、第2パイロットポート51bへのパイロット圧の供給と非供給とを切り換えるソレノイドバルブである。
第1切換弁61と第2切換弁62は、それぞれ開状態と閉状態とに切換可能に構成されている。第1切換弁61が開状態では第1パイロットポート51aへパイロット圧が供給される一方、第1切換弁61が閉状態では、第1パイロットポート51aへパイロット圧が供給されないようになっている。また、第2切換弁62が開状態では第2パイロットポート51bへパイロット圧が供給される一方、第2切換弁62が閉状態では第2パイロットポート51bへパイロット圧が供給されないようになっている。
操向装置32(図2参照)は、一対の車輪ユニット30のそれぞれに付設されている。各操向装置32は、対応する車輪ユニット30を台車フレーム28に対して縦軸C2回りに旋回させて当該車輪ユニット30の複数の車輪36を一体的に操向するものである。この操向装置32は、操向用モータ64(図3参照)と、操向用ギア装置65(図2参照)と、操向制御油圧回路66(図9参照)と、を有する。
操向用モータ64は、車輪ユニット30を操向するための動力を発生する油圧モータであり、台車フレーム28に設けられている。
操向用ギア装置65は、操向用モータ64の出力軸と車輪ユニット30のユニットフレーム34との間に介在し、操向用モータ64の出力軸の回転をユニットフレーム34に伝達してユニットフレーム34を縦軸C2回りに旋回させるものである。
操向制御油圧回路66は、操向用モータ64への作動油の供給を制御して操向用モータ64の動作を制御するように構成されている。この操向制御油圧回路66は、車輪駆動装置38の油圧回路46と同様の構成を備えている。すなわち、操向制御油圧回路66は、油圧回路46の制御弁50及び切換弁61,62と同様の制御弁及び切換弁を備えており、油圧回路46の場合と同様に切換弁によって制御弁を操向用モータ64への作動油の供給を許容する供給位置と操向用モータ64への作動油の供給を停止する供給停止位置との間で切り換えることにより、操向用モータ64の作動を制御する。
複数のジャッキ装置33(図1及び図2参照)は、台車フレーム28に設けられており、台車フレーム28及び一対の車輪ユニット30を一体としてジャッキアップするための装置である。各車輪ユニット30の操向は、ジャッキ装置33によって台車フレーム28及び車輪ユニット30をジャッキアップして車輪36を地面から浮かせた状態で行われる。各ジャッキ装置33は、上下方向に伸縮可能な油圧シリンダを備えており、この油圧シリンダに図略の作動油供給装置から作動油が供給されることにより当該油圧シリンダが伸長し、それによってジャッキ装置33のジャッキアップ動作が行われるようになっている。
操向角度検出部40(図9参照)は、各車輪ユニット30ごとに設けられており、対応する車輪ユニット30の車輪36の縦軸C2回りの操向角度を検出するものである。操向角度検出部40は、対応する車輪ユニット30の車輪36の操向角度を逐次検出し、その検出した操向角度のデータを台車側制御部84(後述)を介して本体側制御部82(後述)へ逐次送信するようになっている。操向角度検出部40により検出される車輪36(車輪ユニット30)の操向角度は、次のように規定される(図8参照)。
車輪36の向きが上部旋回体7の前後方向Bに一致し且つ車輪36が油圧モータ44により前記一方の回転方向へ回転駆動された場合のその車輪36の進行方向が上部旋回体7の前方に一致する状態での車輪36(車輪ユニット30)の操向角度を、0°とする。なお、車輪36の向きは、車輪36の回転中心となる水平軸及び車輪ユニット30の旋回中心となる縦軸C2の両方に垂直な方向に相当する。また、操向角度が0°の状態から車輪ユニット30を縦軸C2回りに操向するにつれて操向角度が上昇するものとし、車輪ユニット30が操向角度0°の姿勢から1周回って操向角度0°の姿勢と同じ姿勢をとった状態を操向角度360°とする。従って、車輪36の向きが上部旋回体7の前後方向Bに一致し且つ車輪36が前記一方の回転方向へ回転駆動された場合のその車輪36の進行方向が上部旋回体7の後方に一致する状態での車輪36(車輪ユニット30)の操向角度は、180°である。すなわち、車輪36が油圧モータ44により前記反対の回転方向へ回転駆動された場合のその車輪36の進行方向が上部旋回体7の後方に一致する状態での車輪36(車輪ユニット30)の操向角度が180°である。
また、本実施形態によるクレーン2は、姿勢選択装置68と、制御部72とを備えている(図9参照)。
姿勢選択装置68は、オペレータが台車4の各車輪ユニット30の縦軸C2回りの姿勢を選択するために用いるものであり、クレーン本体3に設けられている。姿勢選択装置68により選択可能な車輪ユニット30の姿勢として、例えば、走行姿勢(図4〜図6参照)と、旋回姿勢(図7参照)とがある。
走行姿勢(図4〜図6参照)は、クレーン本体3の走行時に設定される車輪ユニット30の縦軸C2回りの特定の姿勢であり、その車輪ユニット30の各車輪36の向きが下部走行体6の前後方向Aに一致する姿勢である。この車輪ユニット30の走行姿勢は、上部旋回体7の旋回状態に応じて異なる。例えば、図4に示すように、上部旋回体7が下部走行体6の前後方向Aに対して当該上部旋回体7の前後方向Bが一致するような旋回状態にある場合の車輪ユニット30の走行姿勢は、その車輪ユニット30の各車輪36の向きが下部走行体6の前後方向A及び上部旋回体7の前後方向Bに一致する姿勢である。また、クレーン2は、図5又は図6に示されるように、上部旋回体7が下部走行体6の前後方向Aに対して当該上部旋回体7の前後方向Bが斜めになる旋回状態になっている状態で走行する場合があり、この場合の車輪ユニット30の走行姿勢は、その車輪ユニット30の各車輪36の向きが下部走行体6の前後方向Aに一致する一方、上部旋回体7の前後方向Bに対して斜めになる姿勢である。
旋回姿勢(図7参照)は、上部旋回体7が下部走行体6に対して縦軸C1回りに旋回するときに設定される車輪ユニット30の姿勢である。上部旋回体7の旋回時には、台車4が上部旋回体7と一体的に縦軸C1回りに旋回するため、旋回姿勢では、車輪ユニット30の各車輪36の向きが台車4の旋回方向に沿う向きに配置される。
姿勢選択装置68(図9参照)は、選択部74と、送信部76とを有する。
選択部74は、車輪ユニット30の姿勢を選択するために操作する選択ボタン等からなる。選択部74は、本発明における姿勢指示部の一例である。すなわち、選択部74の操作により、車輪ユニット30(車輪36)に走行姿勢をとらせることが指示される。また、選択部74の操作により、車輪ユニット30(車輪36)に旋回姿勢をとらせることが指示される。
送信部76は、選択部74の操作により選択された姿勢を示す信号を制御部72へ送信するものである。
制御部72は、クレーン本体3及び台車4の動作を制御するものである。制御部72は、選択部74の操作により走行姿勢が選択されてその走行姿勢が選択されたことを示す信号を送信部76から受信したことに応じて、各操向装置32に対応する車輪ユニット30が走行姿勢をとるようにその車輪ユニット30を操向させる。この場合、制御部72は、選択部74の操作により車輪ユニット30に走行姿勢をとらせることが指示されたときの上部旋回体7の旋回状態に応じて車輪ユニット30の車輪36の向きが下部走行体6の前後方向Aに一致する姿勢を、車輪ユニット30が走行姿勢としてとるように操向装置32に車輪ユニット30を操向させる。より具体的には、制御部72は、車輪ユニット30を縦軸C2回りに一方側へ旋回させてその車輪ユニット30の各車輪36の向きを下部走行体6の前後方向Aに一致させる操向動作と車輪ユニット30を縦軸C2回りに前記一方側と反対側へ旋回させてその車輪ユニット30の各車輪36の向きを下部走行体6の前後方向Aに一致させる操向動作とのうち車輪ユニット30の操向量が少なくなる方の操向動作で操向装置32に車輪ユニット30を操向させる。
また、制御部72は、選択部74の操作により旋回姿勢が選択されてその旋回姿勢が選択されたことを示す信号を送信部76から受信したことに応じて、各操向装置32に対応する車輪ユニット30が旋回姿勢をとるようにその車輪ユニット30を操向させる。
また、制御部72は、レバー9aの操作に応じて下部走行体6の各クローラ装置11の制御及び台車4の車輪駆動装置38の制御を行う。具体的には、制御部72は、レバー9aが中立位置から前進位置へ操作されたことに応じて、下部走行体6がその前方へ走行するように各クローラ装置11を作動させ、レバー9aが中立位置から後進位置へ操作されたことに応じて、下部走行体6がその後方へ走行するように各クローラ装置11を作動させる。
また、制御部72は、レバー9aの操作に応じて、車輪駆動装置38が前記第1駆動状態と前記第2駆動状態とのうち当該車輪駆動装置38により回転駆動される車輪36の進行方向が下部走行体6の走行方向である下部走行体6の前方に一致する方の駆動状態になるように車輪駆動装置38の駆動状態の切換制御を行う。
また、制御部72は、レバー10aの操作に応じて旋回体駆動装置8の制御を行う。具体的には、制御部72は、レバー10aが中立位置から右旋回位置へ操作されたことに応じて旋回体駆動装置8に上部旋回体7を右旋回させる一方、レバー10aが中立位置から左旋回位置へ操作されたことに応じて旋回体駆動装置8に上部旋回体7を左旋回させる。
制御部72は、具体的には、クレーン本体3に設けられた本体側制御部82と、台車4に設けられた台車側制御部84とを有しており、この本体側制御部82と台車側制御部84とが連携して制御部72が行う各制御を実現するようになっている。
具体的には、本体側制御部82は、レバー9aの操作に応じて下部走行体6を走行させるクローラ装置11の動作の制御、及び、レバー10aの操作に応じて上部旋回体7を旋回させる旋回体駆動装置8の動作の制御を行う。また、本体側制御部82は、レバー9aの操作に応じた台車4の走行を指示する指令信号を台車側制御部84へ出力し、レバー10aの操作に応じた上部旋回体7の旋回方向への台車4の移動を指示する指令信号を台車側制御部84へ出力する。
また、本体側制御部82は、姿勢選択装置68の選択部74によって選択された車輪ユニット30の姿勢を台車4の車輪ユニット30にとらせることを指示する指令信号を台車側制御部84へ出力する。本体側制御部82は、選択部74によって走行姿勢が選択された場合には、車輪ユニット30の縦軸C2回りの一方側への操向動作と他方側への操向動作とのうち操向量が少なくなる方の操向動作を選択し、その選択した操向動作で車輪ユニット30に走行姿勢をとらせる指示を台車側制御部84へ出力する指令信号に含める。
また、本体側制御部82は、操向装置32により車輪ユニット30が操向されて車輪36の向きが下部走行体6の前後方向に一致する走行姿勢に車輪ユニット30が配置された状態で、旋回角度検出部25により検出される旋回角度と操向角度検出部40により検出される操向角度とに基づいて、台車4の車輪36の進行方向がレバー9aの操作により指示される下部走行体6の走行方向に一致する車輪36の回転方向を特定する。そして、本体側制御部82は、特定した回転方向への車輪36の回転を指示する指令信号を台車側制御部84へ出力する。
台車側制御部84は、台車4の走行を指示する本体側制御部82からの指令信号を受けて、その指令信号により指示される台車4の走行が行われるように車輪駆動装置38に車輪36を回転駆動させる。また、台車側制御部84は、旋回方向への台車4の移動を指示する本体側制御部82からの指令信号を受けて、その指令信号により指示される台車4の移動が行われるように車輪駆動装置38に車輪36を回転駆動させる。また、台車側制御部84は、車輪ユニット30の姿勢を指示する本体側制御部82からの指令信号を受けて、当該指令信号により指示される姿勢を車輪ユニット30がとるように操向装置32に当該指令信号により指示される操向動作で車輪ユニット30を操向させる。また、台車側制御部84は、車輪ユニット30が走行姿勢をとった状態の台車4を走行させるために車輪36を回転駆動するときには、車輪駆動装置38に本体側制御部82からの指令信号により指示される回転方向へ車輪36を回転駆動させる。
本体側制御部82と台車側制御部84とがそれぞれ行う制御の具体的な内容は、以下のプロセスの説明において詳述する。
図11及び図12のフローチャートを参照して、台車4の車輪ユニット30の姿勢として走行姿勢が選択された場合の車輪ユニット30の姿勢の変更プロセスについて説明する。
まず、オペレータが姿勢選択装置68の選択部74を操作することによって、車輪ユニット30の姿勢として走行姿勢を選択する(図11のステップS1)。この走行姿勢の選択に応じて、送信部76から本体側制御部82へ、走行姿勢が選択されたことを指示する信号が送信される。
次に、本体側制御部82は、台車4が姿勢変更可能な状態であるか否かを判断する(ステップS2)。具体的には、本体側制御部82は、台車4の姿勢が変更不能になるような台車4の故障の有無を判別し、そのような故障が台車4に無い場合には台車4は姿勢変更可能であると判断し、そのような故障が台車4に有る場合には台車4は姿勢変更可能ではないと判断する。本体側制御部82は、台車側制御部84から台車4の故障の有無についての情報を得ており、その情報に基づいてこの判断を行う。
本体側制御部82が台車4は姿勢変更可能な状態であると判断した場合には、台車4の姿勢変更が許可される(ステップS3)。一方、本体側制御部82が台車4は姿勢変更可能ではないと判断した場合には、台車4の姿勢変更が許可されない(ステップS4)。
台車4の姿勢変更が許可された場合には、次に、本体側制御部82は、台車4の現時点の状態とクレーン本体3の現時点の状態とを把握する(ステップS5)。
具体的には、本体側制御部82は、台車4の現時点の状態として、各車輪ユニット30の現状の操向角度と各ジャッキ装置33の油圧シリンダの伸縮状態とを把握する。各車輪ユニット30の現状の操向角度は操向角度検出部40によって検出され、本体側制御部82は、その検出された操向角度のデータを操向角度検出部40から台車側制御部84を介して受信することによって各車輪ユニット30(車輪36)の操向角度を把握する。また、各ジャッキ装置33の油圧シリンダの伸縮状態のデータは、台車側制御部84によって取得され、その取得された伸縮状態のデータが台車側制御部84から本体側制御部82へ送られることによって、本体側制御部82は、各ジャッキ装置33の油圧シリンダの伸縮状態を把握する。
また、本体側制御部82は、クレーン本体3の現時点の状態として、上部旋回体7の旋回角度を把握する。上部旋回体7の旋回角度は、旋回角度検出部25によって検出され、本体側制御部82は、その検出された旋回角度のデータを旋回角度検出部25から受信することによって上部旋回体7の旋回角度を把握する。
次に、本体側制御部82は、各車輪ユニット30を上部旋回体7の旋回状態(旋回角度)に応じた走行姿勢にするための各車輪ユニット30の目標操向角度の導出と各車輪ユニット30の操向方向の決定とを行う(ステップS6)。この目標操向角度の導出と操向方向の決定の具体的なプロセスが、図12〜図14のフローチャートに示されている。
このプロセスでは、本体側制御部82は、まず、前記ステップS5で把握した上部旋回体7の旋回角度Xが0°以上180°未満であるか否かを判断する(図12のステップS21)。
本体側制御部82は、旋回角度Xが0°以上180°未満であると判断した場合には、次に、仮の目標操向角度としての第1目標操向角度Y1及び第2目標操向角度Y2を次式(1)、(2)によって算出する(ステップS22)。
Y1=180°−X ・・・(1)
Y2=360°−X ・・・(2)
一方、本体側制御部82は、ステップS21において、旋回角度Xが0°以上180°未満ではないと判断した場合には、次に、仮の目標操向角度としての第1目標操向角度Y1及び第2目標操向角度Y2を次式(3)、(4)によって算出する(ステップS23)。
Y1=360°−X ・・・(3)
Y2=540°−X ・・・(4)
前記ステップS22又はS23の後、本体側制御部82は、前記ステップS5で把握した車輪ユニット30の現状の操向角度Y(以下、単に現状操向角度Yと称する)に90°を加算した値が360°以上であるか否かを判別する(ステップS24)。
ここで、本体側制御部82は、現状操向角度Yに90°を加算した値が360°以上であると判断した場合には、次に、先に算出した第1目標操向角度Y1が、現状操向角度Yから90°を減算した値以上で且つ360°未満であるか、又は、0°以上で且つ現状操向角度Yから270°を減算した値以下であるかを判断する(ステップS25)。本体側制御部82は、当該判断がYESである場合には、先に算出した第1目標操向角度Y1を最終的に目標操向角度として決定し(ステップS26)、車輪ユニット30(車輪36)の操向方向を左回りに決定する(ステップS27)。
一方、前記ステップS25の判断がNOである場合には、本体側制御部82は、先に算出した第2目標操向角度Y2を最終的に目標操向角度として決定し(ステップS28)、その後、その第2目標操向角度Y2が現状操向角度Y以上であるか否かを判断する(ステップS29)。ここで、本体側制御部82は、第2目標操向角度Y2が現状操向角度Y以上であると判断した場合には車輪ユニット30の操向方向を左回りに決定し(ステップS30)、第2目標操向角度Y2が現状操向角度Y以上ではないと判断した場合には車輪ユニット30の操向方向を右回りに決定する(ステップS31)。
また、本体側制御部82は、前記ステップS24において、現状操向角度Yに90°を加算した値が360°以上ではないと判断した場合には、次に、現状操向角度Yが90°以上270°未満であるか否かを判断する(図13のステップS32)。ここで、本体側制御部82は、現状操向角度Yが90°以上270°未満であると判断した場合には、次に、先に算出した第1目標操向角度Y1が現状操向角度Yから90°を減算した値以上で且つ現状操向角度Yに90°を加算した値未満であるか否かを判断する(ステップS33)。そして、本体側制御部82は、第1目標操向角度Y1が現状操向角度Yから90°を減算した値以上で且つ現状操向角度Yに90°を加算した値未満であると判断した場合には、第1目標操向角度Y1を最終的に目標操向角度として決定し(ステップS34)、その後、その第1目標操向角度Y1が現状操向角度Yよりも大きいか否かを判断する(ステップS35)。そして、本体側制御部82は、第1目標操向角度Y1が現状操向角度Yよりも大きいと判断した場合には車輪ユニット30の操向方向を左回りに決定し(ステップS36)、第1目標操向角度Y1が現状操向角度Yよりも大きくないと判断した場合には車輪ユニット30の操向方向を右回りに決定する(ステップS37)。
また、本体側制御部82は、前記ステップS33において第1目標操向角度Y1が現状操向角度Yから90°を減算した値以上で且つ現状操向角度Yに90°を加算した値未満ではないと判断した場合には、第2目標操向角度Y2を最終的に目標操向角度として決定し(ステップS38)、その後、その第2目標操向角度Y2が現状操向角度Yよりも大きいか否かを判断する(ステップS39)。そして、本体側制御部82は、第2目標操向角度Y2が現状操向角度Yよりも大きいと判断した場合には車輪ユニット30の操向方向を左回りに決定し(ステップS40)、第2目標操向角度Y2が現状操向角度Yよりも大きくないと判断した場合には車輪ユニット30の操向方向を右回りに決定する(ステップS41)。
また、本体側制御部82は、前記ステップS32において現状操向角度Yが90°以上270°未満ではないと判断した場合には、次に、先に算出した第1目標操向角度Y1が、現状操向角度Yに270°を加算した値以上で且つ360°未満であるか、又は、0°以上で且つ現状操向角度Yに90°を加算した値以下であるかを判断する(図14のステップS42)。当該判断がYESである場合には、本体側制御部82は、第1目標操向角度Y1を最終的に目標操向角度として決定し(ステップS43)、その後、その第1目標操向角度Y1が現状操向角度Yよりも大きいか否かを判断する(ステップS44)。そして、本体側制御部82は、第1目標操向角度Y1が現状操向角度Yよりも大きいと判断した場合には車輪ユニット30の操向方向を左回りに決定し(ステップS45)、第1目標操向角度Y1が現状操向角度Yよりも大きくないと判断した場合には車輪ユニット30の操向方向を右回りに決定する(ステップS46)。
一方、前記ステップS42の判断がNOである場合には、本体側制御部82は、先に算出した第2目標操向角度Y2を最終的に目標操向角度として決定し(ステップS47)、車輪ユニット30の操向方向を右回りに決定する(ステップS48)。
以上のようにして、各車輪ユニット30を上部旋回体7の旋回状態(旋回角度)に応じた走行姿勢にするための各車輪ユニット30の目標操向角度の導出と各車輪ユニット30の操向方向の決定とが行われる。
本体側制御部82は、次に、各車輪ユニット30の姿勢の変更が必要か否かを判断する(図11のステップS7)。具体的には、本体側制御部82は、ステップS5で把握した各車輪ユニット30の現状の操向角度が前記のように算出した目標操向角度と異なる場合には車輪ユニット30の姿勢の変更が必要であると判断し、現状の操向角度が目標操向角度と等しい場合には車輪ユニット30の姿勢の変更が不要であると判断する。
本体側制御部82が各車輪ユニット30の姿勢の変更が必要であると判断した場合には、次に、本体側制御部82は、各ジャッキ装置33の油圧シリンダの伸長が必要であるか否かを判断する(ステップS8)。
具体的には、車輪ユニット30の姿勢変更は台車4をジャッキアップして行うため、本体側制御部82は、ステップS5で把握した各ジャッキ装置33の油圧シリンダの伸縮状態が既に台車4をジャッキアップしている伸長状態である場合には、各ジャッキ装置33の油圧シリンダの伸長は不要であると判断する一方、ステップS5で把握した各ジャッキ装置33の油圧シリンダの伸縮状態が台車4をジャッキアップしていない縮小状態である場合には、各ジャッキ装置33の油圧シリンダの伸長が必要であると判断する。
本体側制御部82は、各ジャッキ装置33の油圧シリンダの伸長が必要であると判断した場合には、次に、台車側制御部84へ油圧シリンダの伸長を指示する指令信号を出力して台車側制御部84に作動油供給装置から油圧シリンダへ作動油を供給させる制御を行わせ、それによって各ジャッキ装置33の油圧シリンダを伸長させる(ステップS9)。これにより、台車4がジャッキアップされる。
次に、本体側制御部82は、台車側制御部84へ車輪ユニット30の操向を指示する指令信号を出力して台車側制御部84に操向装置32による車輪ユニット30の操向を行わせる(ステップS10)。このとき、車輪ユニット30を前記のように決定した操向方向に操向してその車輪ユニット30の操向角度が目標操向角度Y2に至るように、操向装置32に車輪ユニット30を操向させる。
前記ステップS8において、本体側制御部82が各ジャッキ装置33の油圧シリンダの伸長は不要であると判断した場合には、前記ステップS9を経ずにステップS10の車輪ユニット30の操向が行われる。
次に、本体側制御部82は、台車側制御部84に各ジャッキ装置33の油圧シリンダを縮小させる(ステップS11)。これにより、台車4が降下して各車輪36が接地する。
一方、前記ステップS7において本体側制御部82が各車輪ユニット30の姿勢の変更は不要であると判断した場合には、次に、本体側制御部82は、各ジャッキ装置33の油圧シリンダの縮小が必要であるか否かを判断する(ステップS12)。この場合、本体側制御部82は、ステップS5で把握した各ジャッキ装置33の油圧シリンダの伸縮状態が既に縮小状態である場合には、各ジャッキ装置33の油圧シリンダの縮小は不要であると判断する一方、ステップS5で把握した各ジャッキ装置33の油圧シリンダの伸縮状態が伸長状態である場合には、各ジャッキ装置33の油圧シリンダの縮小が必要であると判断する。
本体側制御部82は、各ジャッキ装置33の油圧シリンダの縮小が必要であると判断した場合には、各ジャッキ装置33の油圧シリンダを縮小させる前記ステップS11の処理を行って各車輪36が接地するように台車4を降下させる。一方、本体側制御部82は、各ジャッキ装置33の油圧シリンダの縮小は不要であると判断した場合には、各車輪ユニット30の姿勢変更のプロセスは終了する。
以上のようにして、台車4の各車輪ユニット30の走行姿勢への操向が行われ、各車輪ユニット30の車輪36の向きが下部走行体6の前後方向Aに一致する。
各車輪ユニット30の走行姿勢への操向が行われた後、クレーン2の走行が行われる。このとき、レバー9aの操作により指示される下部走行体6の走行方向に各車輪ユニット30の車輪36の進行方向が一致するように車輪36の回転方向が制御される。この制御プロセスが図15のフローチャートに示されている。以下、この制御プロセスについて説明する。
まず、レバー9aが中立位置から前進側又は後進側に操作される(ステップS51)。
その後、本体側制御部82は、上部旋回体7の旋回角度と各車輪ユニット30の操向角度とを読み込む(ステップS52)。この旋回角度は、旋回角度検出部25によって検出されるものである。また、操向角度は、操向角度検出部40によって検出されるものであり、前記目標操向角度Y2に等しい角度になっている。
そして、本体側制御部82は、読み込んだ上部旋回体7の旋回角度と各車輪ユニット30の操向角度との組合せを判別する(ステップS53)。具体的には、本体側制御部82は、読み込んだ旋回角度と操向角度との組合せが、以下の組合せ1〜4のいずれに該当するかを判別する。
組合せ1は、旋回角度が0°以上180°未満で且つ操向角度が0°よりも大きく180°以下の場合である。組合せ2は、旋回角度が180°以上360°未満で且つ操向角度が180°よりも大きく360°以下の場合である。組合せ3は、旋回角度が0°以上180°未満で且つ操向角度が180°よりも大きく360°以下の場合である。組合せ4は、旋回角度が180°以上360°未満で且つ操向角度が0°よりも大きく180°以下の場合である。
組合せ1及び組合せ2の場合は、油圧モータ44により車輪36が前記一方の回転方向へ回転駆動された場合の車輪36の進行方向が下部走行体6の後方に一致し且つ油圧モータ44により車輪36が前記反対の回転方向へ回転駆動された場合の車輪36の進行方向が下部走行体6の前方に一致するような姿勢に車輪ユニット30が配置されている場合に相当する。また、組合せ3及び組合せ4の場合は、油圧モータ44により車輪36が前記一方の回転方向へ回転駆動された場合の車輪36の進行方向が下部走行体6の前方に一致し且つ油圧モータ44により車輪36が前記反対の回転方向へ回転駆動された場合の車輪36の進行方向が下部走行体6の後方に一致するような姿勢に車輪ユニット30が配置されている場合に相当する。
本体側制御部82は、読み込んだ旋回角度と操向角度との組合せが前記組合せ1又は前記組合せ2に該当すると判断した場合には、次に、前記ステップS51で行われたレバー9aの操作が前進位置と後進位置のうちのどちら側への操作であるか判断する(ステップS54)。
本体側制御部82は、レバー9aの操作が前進位置への操作であると判断した場合には台車側制御部84に第2切換弁62を開状態にさせる(ステップS56)。第2切換弁62が開状態にされることにより、制御弁50が第2供給位置50bになり、車輪駆動装置38は、油圧モータ44が車輪36を前記反対の回転方向へ回転駆動する第2駆動状態になる。この時点で車輪36の前記反対の回転方向への回転によるその車輪36の進行方向は下部走行体6の前方に設定されているので、車輪36は下部走行体6の前方へ進行する。よって、この場合には、レバー9aの前進位置への操作に応じてクローラ装置11により前方へ駆動される下部走行体6の走行方向と台車4の進行方向とが一致する。
一方、本体側制御部82は、レバー9aの操作が後進位置への操作であると判断した場合には台車側制御部84に第1切換弁61を開状態にさせる(ステップS57)。第1切換弁61が開状態にされることにより、制御弁50が第1供給位置50aになり、車輪駆動装置38は、油圧モータ44が車輪36を前記一方の回転方向へ回転駆動する第1駆動状態になる。この時点で車輪36の前記一方の回転方向への回転によるその車輪36の進行方向は下部走行体6の後方に設定されているので、車輪36は下部走行体6の後方へ進行する。よって、この場合には、レバー9aの後進位置への操作に応じてクローラ装置11により後方へ駆動される下部走行体6の走行方向と台車4の進行方向とが一致する。
また、前記ステップS53において、本体側制御部82は、読み込んだ旋回角度と操向角度との組合せが前記組合せ3又は4に該当すると判断した場合には、次に、前記ステップS51で行われたレバー9aの操作が前進位置と後進位置とのうちのどちら側への操作であるか判断する(ステップS55)。
本体側制御部82は、レバー9aの操作が前進位置への操作であると判断した場合には台車側制御部84に第1切換弁61を開状態にさせる(ステップS57)。第1切換弁61が開状態にされることにより、制御弁50が第1供給位置50aになり、車輪駆動装置38は、油圧モータ44が車輪36を前記一方の回転方向へ回転駆動する第1駆動状態になる。この時点で車輪36の前記一方の回転方向への回転によるその車輪36の進行方向は下部走行体6の前方に設定されているので、車輪36は下部走行体6の前方へ進行する。よって、この場合には、レバー9aの前進位置への操作に応じてクローラ装置11により前方へ駆動される下部走行体6の走行方向と台車4の進行方向とが一致する。
一方、本体側制御部82は、レバー9aの操作が後進位置への操作であると判断した場合には台車側制御部84に第2切換弁62を開状態にさせる(ステップS56)。第2切換弁62が開状態にされることにより、制御弁50が第2供給位置50bになり、車輪駆動装置38は、油圧モータ44が車輪36を前記反対の回転方向へ回転駆動する第2駆動状態になる。この時点で車輪36の前記反対の回転方向への回転によるその車輪36の進行方向は下部走行体6の後方に設定されているので、車輪36は下部走行体6の後方へ進行する。よって、この場合には、レバー9aの後進位置への操作に応じてクローラ装置11により後方へ駆動される下部走行体6の走行方向と台車4の進行方向とが一致する。
以上のようにして、レバー9aの操作により指示される下部走行体6の走行方向に各車輪ユニット30の車輪36の回転による台車4の進行方向が一致するように車輪36の回転方向を制御するプロセスが行われる。
本実施形態では、操向装置32が、台車4の車輪ユニット30を縦軸C2回りに一方側へ旋回させてその車輪ユニット30の各車輪36の向きを下部走行体6の前後方向Aに一致させる操向動作と、車輪ユニット30を縦軸C2回りに前記一方側と反対側へ旋回させてその車輪ユニット30の各車輪36の向きを下部走行体6の前後方向Aに一致させる操向動作とのうち車輪ユニット30(車輪36)の操向量が少なくなる方の操向動作で車輪ユニット30を操向するため、車輪ユニット30(車輪36)の操向量を低減できる。このため、台車4の車輪ユニット30を操向して車輪36の向きを下部走行体6の前後方向Aに一致させる調整作業にかかる時間を短縮することができる。
また、本実施形態では、操向装置32により車輪ユニット30の操向量が少なくなる方の操向動作で車輪36の向きが下部走行体6の前後方向Aに一致するように車輪ユニット30が操向された後、レバー9aの操作に応じて、車輪36の水平軸回りの双方向の回転方向のうち車輪36の進行方向がレバー9aの操作により指示される下部走行体6の走行方向(前方又は後方)に一致する方の回転方向が選択されてその回転方向に車輪36が回転駆動される。このため、下部走行体6の走行方向に対して車輪36の回転による台車4の進行方向(車輪36の進行方向)が逆向きになって連結ビーム5に軸方向の引張りの負荷や軸方向の圧縮の負荷がかかるのを防ぐことができる。
また、上部旋回体7の旋回角度を検出する旋回角度検出部25は、上部旋回体が旋回可能なクレーンにおいて一般的に設けられるものであり、車輪ユニット30(車輪36)の操向角度を検出する操向角度検出部40は、車輪ユニットが操向可能なカウンタウェイト台車において一般的に設けられるものである。本実施形態では、このような旋回角度検出部25と操向角度検出部40を利用して、操向装置32により操向された後の車輪ユニット30の車輪36の進行方向を下部走行体6の走行方向に一致させるその車輪36の回転方向を特定する。このため、クレーン2の構成の複雑化を防ぎつつ、操向装置32により操向された後の車輪36の進行方向を下部走行体6の走行方向に一致させる車輪36の回転方向を特定することができる。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、また、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含む。
下部走行体に対して上部旋回体がどのような旋回状態にあるのかを検出する手段として、前記旋回角度検出部25以外のものを用いてもよい。
例えば、上部旋回体の前端部と後端部とにそれぞれ設置したGPS(Global Positioning System)の受信機で上部旋回体の前端部と後端部の各々の位置情報を取得することによって上部旋回体の旋回状態を検出してもよい。
また、上部旋回体の前方が下部走行体の前方と一致し且つ上部旋回体の後方が下部走行体の後方と一致する旋回状態を上部旋回体がとったことを検出するリミットスイッチと、上部旋回体の前方が下部走行体の後方と一致し且つ上部旋回体の後方が下部走行体の前方と一致する旋回状態をとったことを検出するリミットスイッチとを有する検出装置を用いて、上部旋回体の旋回状態を検出してもよい。
また、画像認識により上部旋回体が下部走行体に対してどの向きを向いてるかを判別するシステムを用いて、上部旋回体の旋回状態を検出してもよい。
また、ロータリーエンコーダで上部旋回体の旋回距離を計測し、その計測結果から演算することにより上部旋回体の旋回状態を導出するシステムを用いてもよい。
また、カウンタウェイト台車の車輪がどのような操向角度にあるのかを検出する手段として、前記操向角度検出部40以外のものを用いてもよい。例えば、前記のようなGPSの受信機を有する検出システム、リミットスイッチを有する検出システム、画像認識による検出システム、又は、ロータリーエンコーダを利用した検出システム等と同様のものをカウンタウェイト台車の車輪の操向角度の検出に適用してもよい。
また、前記実施形態では、本体側制御部が台車の車輪の回転方向を決定して、その回転方向への車輪の回転を指示する指令信号を台車側制御部へ送信し、その指令信号を受けた台車側制御部が車輪駆動装置に当該指令信号により指示される回転方向へ車輪を回転駆動させるようにしたが、これに限らず、台車側制御部が台車の車輪の回転方向を決定して、その決定した回転方向に車輪を回転させるように車輪駆動装置に車輪を回転駆動させてもよい。この場合、前記実施形態で本体側制御部が車輪の回転方向の決定に用いた情報は台車側制御部へ送信され、台車側制御部は、その本体側制御部から受信した情報と操向角度検出部から取得した情報とに基づいて台車の車輪の回転方向を決定すればよい。