本発明者らは、撮像素子用途に使用される部材について種々検討したところ、フタロシアニン系色素及び樹脂成分を少なくとも含む硬化性樹脂組成物とすると、耐熱性及び耐光性に優れるものとなることに着目した。そして、フタロシアニン系色素として所定の構造を有する化合物を使用すると、優れた光選択透過性を発揮でき、撮像素子用途に極めて有用な硬化性樹脂組成物となることを見いだした。このような硬化性樹脂組成物を撮像素子に用いれば、撮像素子で課題となるフレアやゴーストの発生を充分に抑制できるうえ、反射膜と組み合わせた場合に課題となりうる入射角依存性も充分に低減できる。また、ガラスや水晶等の透明無機材料層上に、このような硬化性樹脂組成物から形成される樹脂層を有する積層体は、クラックやチッピング、反りの発生を抑制でき、かつ高温蒸着やリフロー工程にも充分に対応できるほどに耐熱性に優れることを見いだした。更に、このような積層体を、例えば反射膜や干渉膜と併用することで、人間の目の感度に近い光選択透過性を発揮することができることも見いだした。そして、このような撮像素子用積層体を含む光選択透過フィルター及び撮像素子は、光学分野やオプトデバイス分野に極めて有用であることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、色素及び樹脂成分を含み、撮像素子に用いられる硬化性樹脂組成物であって、該色素は、下記一般式(I):
(式中、Mは、金属原子、金属酸化物又は金属ハロゲン化物を表す。X1〜X4及びY1〜Y4は、同一又は異なって、水素原子(H)、フッ素原子(F)又は置換基を有していてもよいORi基を表す。ORi基は、アルコキシ基、フェノキシ基又はナフトキシ基を表す。但し、X1及びY1のうち少なくとも1個、X2及びY2のうち少なくとも1個、X3及びY3のうち少なくとも1個、並びに、X4及びY4のうち少なくとも1個は、置換基を有していてもよいORi基を表す。)で表されるフタロシアニン系色素を含む撮像素子用硬化性樹脂組成物である。
本発明はまた、透明無機材料層上に、上記撮像素子用硬化性樹脂組成物からなる樹脂層を形成して得られる積層体でもある。
本発明は更に、上記積層体を含む光選択透過フィルターでもある。
本発明はそして、上記積層体を含む撮像素子でもある。
以下に本発明を詳述する。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本明細書中、「吸収極大」とは、波長と吸光度の関係をX軸とY軸との2次元グラフ(但し、X軸を波長とし、Y軸を吸光度とする)で表した場合に、吸光度が増加から減少に転じる頂点を意味し、この頂点の波長を「吸収極大波長」という。また、吸収極大波長(吸収ピーク波長とも称す)の中で、吸光度が最大のものを、最大吸収波長(「最大吸収ピーク波長」とも称す)と称す。
「吸収幅(吸収帯幅とも称す)」とは、任意の透過強度における波長幅である。吸収幅が広い(大きい)と、光選択透過性により優れ、また、反射膜の設計条件が広がるために光選択透過フィルター(赤外線カットフィルター等)の製造が容易になる。
〔撮像素子用硬化性樹脂組成物〕
本発明の撮像素子用硬化性樹脂組成物(硬化性樹脂組成物又は樹脂組成物とも称す)は、色素及び樹脂成分を含む。このような硬化性樹脂組成物は、撮像素子用途に特に有用なものである。
なお、上記色素及び樹脂成分は、それぞれ1種又は2種以上用いてもよく、また、上記硬化性樹脂組成物は、必要に応じて更に他の成分を1種又は2種以上含んでもよい。
−色素−
上記色素は、少なくとも上記一般式(I)で表されるフタロシアニン系色素を含む。これにより、優れた光選択透過性とともに、高い耐熱性及び耐光性を発揮することができる。
上記一般式(I)において、ORi基を構成するRiは、アルキル基、フェニル基又はナフチル基であり、置換基を有していてもよい。アルキル基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、更に好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、特に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。Riの中でも好ましくは、フェニル基又は置換基を有するフェニル基である。本発明では、上記一般式(I)におけるX1〜X4及びY1〜Y4のうち少なくとも1個は、置換基を有していてもよいフェノキシ基を表すことが好適である。これにより、上記フタロシアニン系色素の会合性がより高くなることに起因して、遮断したい波長域をシャープに遮断でき、かつ透過させたい波長域では高い透過率を示すという光選択透過性(遮断透過特性)をより一層発揮できるとともに、反射膜による入射角依存性をより大幅に低減することが可能になる。このように上記一般式(I)におけるX1〜X4及びY1〜Y4のうち少なくとも1個が、置換基を有していてもよいフェノキシ基を表す形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
上記ORi基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルコキシカルボニル基(−COOR)、ハロゲン基(ハロゲン原子)、シアノ基(−CN)、ニトロ基(−NO2)等の電子求引性基;アルキル基(−R)、アルコキシ基(―OR)等の電子供与性基;等が挙げられ、これらの1又は2以上を含んでいてもよい。これらの中でも、会合分子構造をとりやすくなることに起因して光選択透過性がより優れたものとなる観点から、電子求引性基が好ましい。電子求引性基として好ましくは、アルコキシカルボニル基、クロル基(塩素原子)又はシアノ基であり、より好ましくは、メトキシカルボニル基、メトキシエトキシカルボニル基、クロル基又はシアノ基である。
なお、アルコキシカルボニル基(−COOR)を構成するRは、炭素数1〜8のアルキル基又はアルコキシ基であることが好適であり、アルキル基(−R)を構成するRは、炭素数1〜8のアルキル基であることが好適である。アルコキシカルボニル基として好ましくは、メトキシカルボニル基又はメトキシエトキシカルボニル基であり、アルキル基として好ましくは、メチル基又はジメチル基である。
上記ORi基が置換基を有する場合、その置換基の数は特に限定されないが、例えば、1〜4個であることが好ましい。より好ましくは1又は2個である。
なお、1個のORi基が2個以上の置換基を有する場合、当該置換基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、ORi基における置換基の位置は特に限定されるものではない。
上記X1及びY1のうち少なくとも1個、X2及びY2のうち少なくとも1個、X3及びY3のうち少なくとも1個、並びに、X4及びY4のうち少なくとも1個は、置換基を有していてもよいORi基を表す。好ましくは、置換基を有していてもよいフェノキシ基(すなわち、フェノキシ基又は置換基を有するフェノキシ基)である。より好ましくは、X1〜X4及びY1〜Y4の全てが、置換基を有していてもよいフェノキシ基を表すことである。中でも、置換基を有するフェノキシ基が好ましく、置換基としては、上述したように電子吸引性基が好ましい。
上記一般式(I)において、Mは、金属原子、金属酸化物又は金属ハロゲン化物を表す。金属原子、及び、金属酸化物又は金属ハロゲン化物を構成する金属原子としては特に限定されず、例えば、銅、亜鉛、インジウム、コバルト、バナジウム、鉄、ニッケル、錫、銀、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、鉛等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。中でも、樹脂成分への溶解又は分散性、可視光透過性、耐光性がより優れることから、銅、バナジウム及び亜鉛のいずれか1以上を中心金属とするものが好ましい。より好ましくは銅又は亜鉛である。銅を中心金属とするフタロシアニン系色素は、どのような樹脂成分(バインダー樹脂)に分散させても光による劣化がなく、非常に優れた耐光性を有する。亜鉛を中心金属とするフタロシアニン錯体(フタロシアニン系色素)は、樹脂成分に対する溶解性に優れ、光選択透過性がより高い積層体が得られ易いため、好適である。
上記金属ハロゲン化物を構成するハロゲン原子は特に限定されず、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
上記一般式(I)で表される化合物は、例えば、特公平6−31239号公報等に記載の通常の方法を用いて合成することができる。具体的には、金属、金属酸化物、金属カルボニル、金属ハロゲン化物及び有機酸金属からなる群から選ばれる一種(これらを総称して「金属化合物」ともいう)と、下記一般式(II):
(式中、Xa及びYaは、同一又は異なって、水素原子(H)、フッ素原子(F)又は置換基を有していてもよいORi基を表し、ORi基は、アルコキシ基、フェノキシ基又はナフトキシ基を表す。)で表されるフタロニトリル誘導体とを、無溶媒又は有機溶媒の存在下で、加熱して反応させることにより得ることが好適であり、中でも、有機溶媒中で反応させることが好ましい。フタロニトリル誘導体の環化反応は、特に制限されるものではなく、特公平6−31239号公報、特許第3721298号公報、特許第3226504号公報、特開2010−77408号公報等に記載された従来公知の方法を、単独で又は適宜修飾して、適用することができる。置換基及びORi基の具体的な形態は、上記一般式(I)に関して上述したとおりである。
上記一般式(II)において、Xa及びYaとして好ましくは、これらの少なくとも1個が、置換基を有していてもよいORi基を表すことである。より好ましくは、Xa及びYaのいずれもが、同一又は異なって、置換基を有していてもよいORi基を表すことである。
上記反応では、上記一般式(II)で表されるフタロニトリル誘導体として、Xa及びYaのうち少なくとも1個が置換基を有していてもよいORi基を表す形態の化合物を少なくとも使用することが好適である。なお、上記Xa及びYaのいずれもが、置換基を有していてもよいORi基以外の基(原子)を表す形態の化合物と、Xa及びYaのうち少なくとも1個が置換基を有していてもよいORi基を表す形態の化合物とを併用してもよい。
上記金属化合物としては、上記フタロニトリル誘導体と反応して上記一般式(I)で表される化合物を与えるものであれば、特に制限されるものではない。例えば、鉄、銅、亜鉛、バナジウム、チタン、インジウム及びスズ等の金属;当該金属の、塩化物、臭化物、ヨウ化物等の金属ハロゲン化合物;当該金属の、酸化バナジウム、酸化チタニル及び酸化銅等の金属酸化物;当該金属の、酢酸塩等の有機酸金属;当該金属の、アセチルアセトナート等の錯体化合物及びカルボニル鉄等の金属カルボニル;等が挙げられる。
具体的には、鉄、銅、亜鉛、バナジウム、チタン、インジウム、マグネシウム及びスズ等の金属;当該金属の、塩化物、臭化物、ヨウ化物等の金属ハロゲン化合物(例えば、塩化バナジウム、塩化チタン、塩化銅、塩化亜鉛、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化鉄、塩化インジウム、塩化アルミニウム、塩化錫、塩化ガリウム、塩化ゲルマニウム、塩化マグネシウム、ヨウ化銅、ヨウ化亜鉛、ヨウ化コバルト、ヨウ化インジウム、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化ガリウム、臭化銅、臭化亜鉛、臭化コバルト、臭化インジウム、臭化アルミニウム、臭化ガリウム、フッ化銅、フッ化亜鉛、フッ化インジウム等);一酸化バナジウム、三酸化バナジウム、四酸化バナジウム、五酸化バナジウム、二酸化チタン、一酸化鉄、三二酸化鉄、四三酸化鉄、酸化マンガン、一酸化ニッケル、一酸化コバルト、三二酸化コバルト、二酸化コバルト、酸化第一銅、酸化第二銅、三二酸化銅、酸化バラジウム、酸化亜鉛、一酸化ゲルマニウム、二酸化ゲルマニウム等の金属酸化物;酢酸銅、酢酸亜鉛、酢酸コバルト、安息香酸銅、安息香酸亜鉛、ステアリン酸銅、ステアリン酸亜鉛等の有機酸金属;アセチルアセトナート等の錯体化合物及びコバルトカルボニル、鉄カルボニル、ニッケルカルボニル等の金属カルボニル;等が挙げられる。
上記金属化合物の中でも、より好ましくは金属ハロゲン化物であり、更に好ましくは、ヨウ化バナジウム、塩化バナジウム、塩化銅、ヨウ化銅及びヨウ化亜鉛であり、特に好ましくは塩化銅、塩化バナジウム及びヨウ化亜鉛である。ヨウ化亜鉛を用いる場合、上記一般式(I)における中心金属は、亜鉛ということになる。
上記金属化合物と、上記一般式(II)で表されるフタロニトリル誘導体との反応を有機溶媒中で行う場合、有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1−クロロナフタレン、1−メチルナフタレン、エチレングリコール、ベンゾニトリル等の不活性溶媒;ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトフェノン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒;等の1種又は2種以上を使用することができる。中でも、1−クロロナフタレン、N−メチル−2−ピロリドン、1−メチルナフタレン、トリメチルベンゼン、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、エチレングリコールを使用することが好ましい。より好ましくはトリメチルベンゼン、ベンゾニトリルである。
上記反応で溶媒を使用する場合、有機溶媒の使用量は、上記一般式(II)で示されるフタロニトリル化合物の濃度が1〜50質量%となるような量とすることが好適である。より好ましくは、10〜40質量%となるような量である。
上記反応に関し、反応温度は、原料の種類、溶媒の種類、その他の条件により必ずしも一定しないが、通常、100〜300℃とすることが好適である。より好ましくは120℃以上であり、更に好ましくは130℃以上である。また、より好ましくは260℃以下、更に好ましくは240℃以下、特に好ましくは200℃以下である。また、発熱反応を制御するために段階的に温度を上げてもよい。反応時間も特に制限はないが、通常、2〜24時間とすることが好ましく、より好ましくは5〜20時間である。
上記反応はまた、大気雰囲気中で行ってもよいが、金属化合物の種類により、不活性ガス又は、酸素含有ガス雰囲気(例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、又は、酸素/窒素混合ガス等の流通下)で行われることが好ましい。
上記環化反応後は、従来公知の方法に従って、晶析、濾過、洗浄、及び/又は、乾燥を行ってもよい。
上記フタロシアニン系色素は、該フタロシアニン系色素と測定樹脂とからなる硬化物の吸収スペクトルを測定した際に、650〜680nmの波長域に吸収極大を示すものが好適である。これにより、本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となる。
上記フタロシアニン系色素はまた、該フタロシアニン系色素と測定樹脂とからなる硬化物の吸収スペクトルを測定した際に、400〜680nmの波長域に吸収極大を1つのみ示すものが好適である。これにより、光選択透過性がより高められ、本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となる。より好ましくは、400〜750nmの波長域に吸収極大を1つのみ示すものである。
上記フタロシアニン系色素はまた、該フタロシアニン系色素と測定樹脂とからなる硬化物の吸収スペクトルを測定した際に、波長550nmの透過率が80%以上であることが好ましい。より好ましくは83%以上、更に好ましくは85%以上、特に好ましくは87%以上、最も好ましくは89%以上である。
上記フタロシアニン系色素は更に、該フタロシアニン系色素と測定樹脂とからなる硬化物の吸収スペクトルを測定した際に、650〜680nmの波長域に存在する吸収極大波長での透過率が、60%以下であることが好適である。より好ましくは50%以下、更に好ましくは40%以下、更に好ましくは30%以下である。
上述した色素の吸収特性・透過特性は、色素と測定樹脂とからなる硬化物の吸収スペクトル(又は透過率スペクトル)により求められる特性である。具体的には、樹脂膜評価法により求めることが好適である。
樹脂膜評価法とは、色素を測定樹脂に分散又は溶解含有させた膜の状態で吸光度特性を評価する方法である。
「色素を測定樹脂に分散又は溶解含有させた膜」とは、測定対象たる色素と測定樹脂とからなる膜であって、吸収極大波長での吸光度が評価できる条件(吸収極大波長における吸光度が分光光度計の測定限界を超えずに、吸光度を測定できる条件)を満足するよう、色素の含有割合及び膜の厚みが選択された膜であればよい。
上記樹脂膜評価法において、評価用の膜は、測定対象の色素の含有割合が0.01〜15質量%の範囲、膜の厚みが0.1〜10μmの範囲から選択されることが好ましく、膜における特定色素の含有割合が10質量%、膜の厚みが1μmであることがより好ましい。
評価用の膜は、色素と測定樹脂とを含み(必要に応じて溶媒を含んでもよい)、透明な基材(ガラス、透明樹脂フィルム)に成膜(塗布、必要に応じて乾燥)することにより得ることができる。このようにして得られた膜付き基材の吸光度を測定することにより、当該色素の吸光度を求めることができる。
上記評価用の測定樹脂としては特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素化芳香族ポリマー、ポリ(アミド)イミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂からなる群から選択される1種であることが好ましい。中でも、エポキシ樹脂やアクリル樹脂がより好ましく、更に好ましくはエポキシ樹脂である。
吸光度は、例えば、分光光度計(島津製作所社製、UV−3100)を用いて測定することができる。
本発明においては、必要に応じて、更に、他の色素を含んでいてもよい。他の色素としては特に限定されないが、600〜800nmの波長域に吸収極大を有するものが好適である。より好ましくは、680〜750nmの波長域に吸収極大を有するものである。このように上記色素が、更に、680〜750nmの波長域に吸収極大を有する色素を含む形態は、本発明の好適な形態の1つである。これにより、充分な吸収帯幅を確保できるため、光選択透過性をより高めることが可能になるうえ、フレアやゴーストの発生や、反射膜と組み合わせた場合の入射角依存性をより低減することができる。
なお、上記色素の吸収特性は、上述した樹脂膜評価法により吸光度特性を評価したときに示される特性であることが好適である。
上記他の色素として680〜750nmの波長域に吸収極大を有する色素(色素αとも称す)を更に用いる場合、該色素αは、400nm以上、600nm未満の波長域には実質的に吸収極大を持たないものであることが好ましい。また、可視光領域の透過性を向上させる観点で、400〜450nmの領域において高い透過性を持つ材料が好ましい。具体的には、430nmにおいて87%以上の透過率を示すことが好ましく、88%以上であることがより好ましい。
なお、色素αは、1種又は2種以上を使用することができる。
上記色素αはまた、600〜650nmの波長域にも吸収極大を有することが好適である。すなわち、600〜650nmの波長域及び680〜750nmの波長域にそれぞれ吸収極大を示すものであることが好適である(このような色素αを、色素α’と称す)。これにより、より一層充分な吸収帯幅を確保できるため、光選択透過性がより向上される。また、このような色素を用いた本発明の積層体を反射膜と組み合わせた際に、反射膜による入射角依存性をより大幅に軽減することが可能になる。
なお、680〜750nmの波長域に吸収極大を有する色素と、600〜650nmの波長域に吸収極大を有する色素とを併用することも好適である。
上記色素α’が有する680〜750nmの波長域における最大吸収波長は、680〜730nmであることが好適である。また、600〜650nmの波長域における最大吸収波長は、600〜630nmであることが好ましい。
ここで、本発明の積層体が必須とするフタロシアニン系色素の中でも、650〜680nmの波長域に吸収極大を有し、かつ400〜680nmの波長域に吸収極大を1つのみ示す色素(色素βと称す)を用い、更に、上記色素α’を併用する場合、色素α’の吸収極大のうち、680〜750nmの波長域における最大吸収波長での吸光度(Aα1)、600〜650nmの波長域における最大吸収波長での吸光度(Aα2)、及び、色素βの650〜680nmの波長域における最大吸収波長での吸光度(Aβ)は、下記関係式;
Aα2<Aβ<Aα1
を満たすことが好適である。これにより、各色素が有する吸収極大ピークが重なって、本発明の積層体が、全体としてブロードな吸収ピークを示す吸収特性を有する、すなわちより充分な吸収帯幅を確保できるため、本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となる。
上記他の色素はまた、樹脂膜評価法による吸光度特性を評価したときに、波長550nmの透過率が80%以上であることが好ましい。より好ましくは83%以上、更に好ましくは85%以上、特に好ましくは87%以上、最も好ましくは89%以上である。
上記他の色素として具体的には、例えば、上記一般式(I)で表されるフタロシアニン系色素以外のフタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、クロリン系色素、コリン系色素、シアニン系色素、クアテリレン系色素、スクアリリウム系色素、ナフタロシアニン系色素、ニッケル錯体系色素、銅イオン系色素等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。これらの中でも、耐光性、耐熱性の観点からフタロシアニン系色素が好適である。
上記硬化性樹脂組成物において、色素の総量(全ての色素の合計濃度)は、例えば、樹脂成分の総量100質量%に対し、0.0001質量%以上、15質量%以下であることが好ましい。これにより、可視光透過率が高く、かつ近赤外線領域の遮断特性により優れる積層体を得ることができる。より好ましくは0.001質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、特に好ましくは1質量%以上であり、また、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
ここで、一般に色素の骨格によって吸光係数が異なり、様々な骨格の色素に対して質量比を規定することは不可能なため、本発明で必須とするフタロシアニン系色素と他の色素とを併用する場合のこれらの質量比を規定することは困難である。しかしながら、例えば、上記一般式(I)で表されるフタロシアニン系色素を用い、上記他の色素として、色素αを用い、かつ該色素αが低会合のフタロシアニン系色素である場合、上記一般式(I)で表されるフタロシアニン系色素と、色素αとの含有量の質量比(フタロシアニン系色素/色素α)は、例えば、20/80〜60/40であることが好適である。これにより、より充分な吸収帯幅を有し、かつシャープな透過吸収特性を示し、しかも反射膜と組み合わせた場合に入射角依存性を充分に低減できるという本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となる。質量比としてより好ましくは、30/70〜50/50である。
なお、本発明では、色素の総量100質量%に占める、上記一般式(I)で表されるフタロシアニン系色素の含有量は、10〜100%であることが好適である。より好ましくは15〜100質量%である。
本発明の色素は、上述した一般式(I)で表されるフタロシアニン系色素及び色素αのいずれにも該当しない色素を含んでもよいが、このような色素の含有量は、本発明による効果を充分に発揮させるため、色素の総量100質量%に対し、50質量%以下であることが好適である。より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、特に好ましくは、上述した一般式(I)で表されるフタロシアニン系色素及び色素αのいずれにも該当しない色素を実質的に含まないことである。
上記硬化性樹脂組成物はまた、350〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物を含んでもよい。これにより、350〜400nm波長域の光(ほぼ紫光)に起因する積層体の劣化を充分に抑制することができる。
上記350〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物としては、例えば、TINUVIN P、TINUVIN 234、TINUVIN 329、TINUVIN 213、TINUVIN 571、TINUVIN 326(BASF社製)等の紫外線吸収化合物の1種又は2種以上を使用することができる。
なお、本発明でいう色素には、350〜400nmの波長域に吸収能を有する化合物に代表される、400nm未満の波長域に吸収能を有する化合物は含まないものとする。
−樹脂成分−
本発明の硬化性樹脂組成物において、樹脂成分は、色素を充分に溶解又は分散できるものが好ましい。すなわち上記色素は、色素と樹脂成分とを含む硬化性樹脂組成物中で均一に分散又は溶解されてなることが好ましい。また、樹脂成分を適切に選択することにより、透過させたい波長域(例えば、可視領域)における高透過率と、遮断したい波長域(例えば、赤外領域)における高吸収性とをより両立することが可能となる。
上記樹脂成分としては、例えば、溶剤可溶性樹脂、溶剤可溶性樹脂原料及び液状樹脂原料からなる群より選択される少なくとも1種が好適である。このような樹脂成分は、色素の分散性が高いため、光選択吸収性により優れた光吸収膜を形成することができるとともに、色素を高濃度で分散できるため、樹脂層の薄膜化も可能である。また、上記樹脂成分を用いると、後述するコーティング法によって樹脂層を形成(成膜)することができるため、樹脂層中に色素を高濃度で均一に分散できるとともに、比較的低温で樹脂層を形成することができる。
ここで、「溶剤可溶性樹脂」とは、有機溶剤に可溶な樹脂を意味し、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、アセトン又はメチルイソブチルケトン100質量部に対し、1質量部以上溶解する樹脂であることが好適である。また、「溶剤可溶性樹脂原料」とは、溶剤可溶性の樹脂原料、すなわち樹脂原料であって溶剤可溶性であるものを意味し、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、アセトン又はメチルイソブチルケトン100質量部に対し、1質量部以上溶解するものが好適である。また、「液状樹脂原料」とは、液状の樹脂原料、すなわち樹脂原料であって液状であるものを意味する。物が「液状である」とは、その物自体の粘度が、常温(25℃)において100Pa・s以下であることを意味する。粘度は、B型粘度計により測定することができる。
なお、「樹脂原料」には、樹脂の前駆体や該前駆体の原料、更に、樹脂を形成するための単量体(硬化性モノマー等)が含まれるものとする。
上記溶剤可溶性樹脂としては、硬化性の官能基を有する有機化合物(硬化性化合物とも称す)が好適である。硬化性の官能基とは、熱又は光によって硬化反応する官能基(樹脂組成物を硬化反応させる基)をいい、例えば、オキシラン基(オキシラン環)、エポキシ基、オキセタン基(オキセタン環)、エチレンスルフィド基、ジオキソラン基、トリオキソラン基、ビニルエーテル基、スチリル基等のカチオン硬化性基;アクリル基、メタクリル基、ビニル基等のラジカル硬化性基;等が好適である。したがって、上記樹脂成分は、カチオン硬化性基を有する化合物(カチオン硬化性樹脂又はカチオン硬化性化合物とも称す)、及び/又は、ラジカル硬化性基を有する化合物(ラジカル硬化性樹脂又はラジカル硬化性化合物とも称す)を含むことが好ましい。これにより、硬化までの時間が短時間となって生産性がより高まり、得られる硬化膜(樹脂層)も、耐熱性(耐熱分解性及び耐熱着色性)により優れたものとなる。中でも、硬化収縮率がより低い観点から、カチオン硬化性化合物を少なくとも含むことがより好適である。
上記樹脂成分において、カチオン硬化性化合物の含有量は、樹脂成分の総量100質量%に対して10〜100質量%であることが好適である。より好ましくは、50〜100質量%である。
上記カチオン硬化性化合物は、1分子内に1個のカチオン重合性基を有する化合物(単官能カチオン硬化性化合物と称す)であってもよいし、1分子内に2個以上のカチオン重合性基を有する化合物(多官能カチオン硬化性化合物と称す)であってもよいが、多官能カチオン硬化性化合物を少なくとも用いることが好適である。これにより、硬化性がより高められる。
上記多官能カチオン硬化性化合物としては、同一のカチオン重合性基を2個以上有する化合物であってもよいし、異なるカチオン重合性基をそれぞれ1個以上有する化合物であってもよい。多官能カチオン硬化性化合物としては特に、多官能脂環式エポキシ化合物、及び/又は、多官能水添エポキシ化合物が好ましい。これらを用いることで、更に短時間で硬化物を得ることが可能になる。
上記カチオン硬化性化合物の中でも、1分子内に1以上のオキシラン環を有する化合物(オキシラン化合物とも称す)が好適である。これにより、本発明の積層体及び硬化性樹脂組成物は、耐薬品性に優れたものとなる。このように上記樹脂成分が、分子内に1以上のオキシラン環を有する化合物を含む形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
本明細書中、3員環のエーテルであるオキシラン環を含む基を「エポキシ基」と称す。「エポキシ基」には、狭義のエポキシ基の他、グリシジル基のようにオキシラン環が炭素に結合している基や、グリシジルエーテル基及びグリシジルエステル基のようにエーテル又はエステル結合を含む基、エポキシシクロヘキサン環等が含まれるものとする。
上記オキシラン化合物は、水酸基及び/又はエステル基を有する化合物(水酸基及び/又はエステル基を有するオキシラン化合物と称す)が好適である。このような形態のオキシラン化合物を用いることにより、本発明の積層体及び硬化性樹脂組成物は、接着性により優れたものとなる。なお、水酸基及び/又はエステル基を有するオキシラン化合物とともに、水酸基やエステル基を含まない他のオキシラン化合物を併用してもよい。
上記水酸基及び/又はエステル基を有するオキシラン化合物として具体的には、水酸基及び/又はエステル基を有するエポキシ化合物が好適である。また、エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、又は、脂肪族エポキシ化合物等が好ましい。
上記エポキシ化合物に関し、脂環式エポキシ化合物とは、脂環式エポキシ基を有する化合物である。脂環式エポキシ基としては、例えば、エポキシシクロヘキサン基(エポキシシクロヘキサン骨格)、環状脂肪族炭化水素に直接又は炭化水素を介して付加したエポキシ基(特に好ましくはオキシラン環)等が挙げられる。脂環式エポキシ化合物としては、特に、エポキシシクロヘキサン基を有する化合物であることが好適である。また、硬化速度をより高めることができる点で、分子中に脂環式エポキシ基を2個以上有する多官能脂環式エポキシ化合物が好適である。また、分子中に脂環式エポキシ基を1個有し、かつビニル基等の不飽和二重結合基を有する化合物も、脂環式エポキシ化合物として好ましく用いられる。
上記エポキシシクロヘキサン基を有するエポキシ化合物としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、イプシロン−カプロラクトン変性−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート等が好適である。また、上記エポキシシクロヘキサン基を有するエポキシ化合物以外の脂環式エポキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物、トリグリシジルイソシアヌレート等のヘテロ環含有のエポキシ樹脂等の脂環式エポキシド等が挙げられる。
上記水添エポキシ化合物としては、飽和脂肪族環状炭化水素骨格に直接的又は間接的に結合したグリシジルエーテル基を有する化合物であることが好ましく、多官能グリシジルエーテル化合物が好適である。このような水添エポキシ化合物は、芳香族エポキシ化合物の完全又は部分水添物であることが好ましく、より好ましくは、芳香族グリシジルエーテル化合物の水添物であり、更に好ましくは、芳香族多官能グリシジルエーテル化合物の水添物である。具体的には、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールS型エポキシ化合物、水添ビスフェノールF型エポキシ化合物等が好ましい。より好ましくは、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールF型エポキシ化合物である。
上記芳香族エポキシ化合物とは、分子中に芳香環及びエポキシ基を有する化合物である。芳香族エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノール骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香環共役系を有するエポキシ化合物等が好適に挙げられる。中でも、より低吸水率、高屈折率を実現させるため、ビスフェノール骨格及び/又はフルオレン骨格を有する化合物であることが好適である。より好ましくは、フルオレン骨格を有する化合物であり、これによって、更に著しく屈折率を高めることができ、また離型性を更に高めることも可能となる。また、芳香族エポキシ化合物においてエポキシ基がグリシジル基である化合物が好ましいが、中でもグリシジルエーテル基である化合物(芳香族グリシジルエーテル化合物)がより好ましい。また、芳香族エポキシ化合物の臭素化化合物を用いることによっても、より高屈折率を達成できるため好適であるが、アッベ数が若干上がるため、用途に応じて適宜使用することが好ましい。
上記芳香族エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フルオレン系エポキシ化合物、ブロモ置換基を有する芳香族エポキシ化合物等が好適に挙げられる。中でも、ビスフェノールA型エポキシ化合物及びフルオレン系エポキシ化合物が好ましい。
上記芳香族グリシジルエーテル化合物としては、例えば、エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等のビスフェノール類と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られるものが好適に挙げられる。
上記高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、上記エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を、上記ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等のビスフェノール類と、更に付加反応させることにより得られるものが好適に挙げられる。
上記芳香族グリシジルエーテル化合物の好ましい具体例としては、828EL、1003、1007(以上、ジャパンエポキシレジン社製)等のビスフェノールA型化合物;オンコートEX−1020、オンコートEX−1010、オグソールEG−210、オグソールPG(以上、大阪ガスケミカル社製)等のフルオレン系化合物等が挙げられ、中でもオグソールEG−210が好ましい。
上記脂肪族エポキシ化合物とは、脂肪族エポキシ基を有する化合物である。中でも、脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好適である。
上記脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ポリヒドロキシ化合物(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG600)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPG)、グリセロール、ジグリセロール、テトラグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン及びその多量体、ペンタエリスリトール及びその多量体、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース等の単/多糖類等)とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるもの等が好適に挙げられる。中でも、中心骨格にプロピレングリコール骨格、アルキレン骨格、オキシアルキレン骨格を有する脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂等がより好適である。
上記オキシラン化合物の中でも、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物又は芳香族エポキシ化合物が特に好適である。これらは、硬化時にエポキシ化合物(オキシラン化合物)自体の着色が起こり難く、光による着色や劣化が発生しにくい、すなわち透明性や低着色性、耐光性にも優れる。そのため、これらを含む硬化性樹脂組成物とすれば、着色がなく耐光性により優れる樹脂層及び積層体を高生産性で得ることができる。このように上記オキシラン化合物が、脂環式エポキシ化合物、水添エポキシ化合物及び芳香族エポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む形態は、本発明の好適な形態の1つである。より好ましくは、上記オキシラン化合物が、脂環式エポキシ化合物及び水添エポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む形態である。
上記オキシラン化合物が脂環式エポキシ化合物及び水添エポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む形態において、脂環式エポキシ化合物及び/又は水添エポキシ化合物の含有量としては、これらの合計量が、オキシラン化合物の総量100質量%に対して50質量%以上であることが好適である。これにより、脂環式エポキシ化合物や水添エポキシ化合物による作用効果をより発揮することが可能になる。より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。
なお、本発明においては、樹脂成分に、従来の触媒では硬化し難かった芳香族エポキシ化合物を含む場合でも、充分に硬化した硬化物(樹脂層)を得ることができる。そのため、芳香族エポキシ化合物の種類や組成物中の含有量を適宜選択することにより屈折率等がより制御された積層体を得ることができる。オキシラン化合物として芳香族エポキシ化合物を100質量%とする形態、及び、芳香族エポキシ化合物と他のオキシラン化合物とを併用する形態、のいずれも、本発明の好ましい形態である。後者においては、芳香族エポキシ化合物と、他のオキシラン化合物として脂環式エポキシ化合物及び水添エポキシ化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含むことがより好適である。
上記オキシラン化合物としてはまた、水酸基及び/又はエステル基を有するオキシラン化合物以外のものとして、ノボラック・アラルキルタイプのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等を用いることもできる。
上記硬化性樹脂組成物において、オキシラン化合物の含有量は、接着性をより向上する観点から、硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の総量100質量%に対し、5質量%以上であることが好ましい。より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは50質量%以上、一層好ましくは80質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
また水酸基及び/又はエステル基を有するオキシラン化合物の含有量は、硬化性樹脂組成物中の樹脂成分に含まれるオキシラン化合物の総量100質量%に対し、50質量%以上であることが好適である。これにより、接着性(例えば、基材又は他の層との接着性、他の部材・材料との接着性等)をより高めることが可能になる。より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。
上記オキシラン化合物はまた、重量平均分子量が2000以上のオキシラン化合物を含むことが好ましい。重量平均分子量が2000以上のオキシラン化合物の含有量は、硬化性樹脂組成物中の樹脂成分に含まれるオキシラン化合物の総量100質量%に対し、10〜100質量%であることが好ましい。これにより、上記硬化性樹脂組成物は、基材(好ましくは透明無機材料層)上に樹脂層を形成する際の成膜性により優れたものとなる。より好ましくは30〜100質量%、更に好ましくは50〜100質量%、特に好ましくは70〜100質量%である。
上記重量平均分子量が2000以上のオキシラン化合物において、重量平均分子量は、2200以上であることが好ましい。より好ましくは2500以上である。また、成膜性の観点や、硬化物(樹脂層)のガラス転移温度を高く保つという観点から、100万以下であることが好ましい。より好ましくは10万以下、更に好ましくは1万以下である。
本明細書中、重量平均分子量は、以下の条件でGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
測定機器:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
分子量カラム:TSK−GEL GMHXL−Lと、TSK−GELG5000HXL(いずれも東ソー社製)とを直列に接続して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
検量線用標準物質:ポリスチレン(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるようにTHFに溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定する。
上記樹脂成分はまた、分子内に1個以上のオキセタン基(オキセタン環)を有する化合物(オキセタン化合物と称す)を含むものであってもよい。上記樹脂成分がオキセタン化合物を含む場合、硬化速度の観点から、脂環式エポキシ化合物及び/又は水添エポキシ化合物と併用することが好ましい。
上記オキセタン化合物としては、耐光性向上の観点では、アリール基又は芳香環を有しないオキセタン化合物を用いることが好適である。また、硬化物の強度向上の観点では、多官能のオキセタン化合物、すなわち1分子中に2個以上のオキセタン環を有する化合物を用いることが好適である。
上記アリール基又は芳香環を有しないオキセタン化合物のうち、単官能のオキセタン化合物としては、例えば、3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が好ましい。
上記アリール基又は芳香環を有しないオキセタン化合物のうち、多官能のオキセタン化合物としては、例えば、ジ〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、1,2−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕エタン、1,3−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が好ましい。
上記オキセタン化合物として具体的には、例えば、ETERNACOLL(R)EHO、ETERNACOLL(R)OXBP、ETERNACOLL(R)OXMA、ETERNACOLL(R)HBOX、ETERNACOLL(R)OXIPA(以上、宇部興産社製);OXT−101、OXT−121、OXT−211、OXT−221、OXT−212、OXT−610(以上、東亜合成社製)等が好適である。
−硬化剤−
上記硬化性樹脂組成物は、更に硬化剤を含むことが好適である。硬化剤は、1種又は2種類以上併せて用いることができる。
上記硬化剤は、硬化反応や硬化性樹脂の種類等に応じて適宜選択すればよい。例えば、熱硬化を行う場合は、熱潜在性カチオン硬化触媒の他、熱潜在性ラジカル硬化触媒、酸無水物系、フェノール系又はアミン系等の通常使用される硬化剤を用いることができる。中でも、熱潜在性カチオン硬化触媒、熱潜在性ラジカル硬化触媒を用いることが好適であり、硬化物の収縮量を低減する目的で、特に熱潜在性カチオン硬化触媒を用いることが好ましい。また、活性エネルギー線照射による硬化を行う場合は、硬化剤として光重合開始剤を用いることができる。中でも光潜在性カチオン硬化触媒、光潜在性ラジカル硬化触媒を用いることが好適であり、硬化物の収縮量を低減する目的で、特に光潜在性カチオン硬化触媒を用いることが好ましい。このように上記硬化剤として特に好ましくは、カチオン硬化触媒である。
なお、本明細書では、熱潜在性カチオン硬化触媒や光潜在性カチオン硬化触媒等の、カチオン硬化反応を促進する触媒を「カチオン硬化触媒」とも称す。カチオン硬化触媒は、例えば酸無水物硬化反応における硬化促進剤とは異なる働きをするものである。
上記硬化剤のうち熱潜在性カチオン硬化触媒は、硬化剤として一般に使用されている酸無水物類、アミン類、フェノール樹脂類等とは異なり、樹脂組成物に含まれていても、樹脂組成物の常温での経時的な粘度上昇やゲル化を引き起こすことなく、また熱潜在性カチオン硬化触媒の作用として、硬化反応を充分に促進して優れた効果を発揮することができ、ハンドリング性により優れた一液性樹脂組成物(一液化材料)を提供することができる。
また熱潜在性カチオン硬化触媒を用いることによって、得られる樹脂組成物から形成される硬化物の耐湿性が劇的に改善され、過酷な使用環境においても樹脂組成物が有する優れた光学特性を保持し、種々の用途により好適に用いることができるものとなる。通常、屈折率が低い水分が樹脂組成物やその硬化物に含まれると濁りの原因になるが、熱潜在性カチオン硬化触媒を用いると、優れた耐湿性が発揮できることから、このような濁りが抑制されることになる。耐湿性が向上することで、樹脂組成物中への吸湿が抑制され、紫外線照射又は熱線暴露の相乗効果による酸素ラジカル発生も抑えられるため、樹脂組成物の黄変や強度低下を引き起こすことなく長時間にわたり優れた耐熱性を発揮できる。
上記熱潜在性カチオン硬化触媒としては、例えば、下記一般式(1):
(R1 aR2 bR3 cR4 dZ)+m(AXn)−m (1)
(式中、Zは、S、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、N及びハロゲン元素からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を表す。R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、有機基を表す。a、b、c及びdは、0又は正数であり、a、b、c及びdの合計はZの価数に等しい。カチオン(R1 aR2 bR3 cR4 dZ)+mはオニウム塩を表す。Aは、ハロゲン化物錯体の中心原子である金属元素又は半金属元素(metalloid)を表し、B、P、As、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Coからなる群より選ばれる少なくとも一つである。Xは、ハロゲン元素を表す。mは、ハロゲン化物錯体イオンの正味の電荷である。nは、ハロゲン化物錯体イオン中のハロゲン元素の数である。)で表される化合物が好適である。
上記一般式(1)の陰イオン(AXn)−mの具体例としては、テトラフルオロボレート(BF4−)、ヘキサフルオロホスフェート(PF6−)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6−)、ヘキサフルオロアルセネート(AsF6−)、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl6−)等が挙げられる。
更に一般式AXn(OH)−で表される陰イオンも用いることができる。また、その他の陰イオンとしては、過塩素酸イオン(ClO4 −)、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CF3SO3 −)、フルオロスルホン酸イオン(FSO3 −)、トルエンスルホン酸イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸イオン等が挙げられる。
上記熱潜在性カチオン硬化触媒の具体的な商品としては、例えば、AMERICUREシリーズ(アメリカン・キャン社製)、ULTRASETシリーズ(アデカ社製)、WPAGシリーズ(和光純薬工業社製)等のジアゾニウム塩タイプ;UVEシリーズ(ゼネラル・エレクトリック社製)、FCシリーズ(3M社製)、UV9310C(GE東芝シリコーン社製)、Photoinitiator 2074(ローヌプーラン(現ロ−ディア)社製)、WPIシリーズ(和光純薬工業社製)等のヨードニウム塩タイプ;CYRACUREシリーズ(ユニオンカーバイド社製)、UVIシリーズ(ゼネラル・エレクトリック社製)、FCシリーズ(3M社製)、CDシリーズ(サートマー社製)、オプトマーSPシリーズ・オプトマーCPシリーズ(アデカ社製)、サンエイドSIシリーズ(三新化学工業社製)、CIシリーズ(日本曹達社製)、WPAGシリーズ(和光純薬工業社製)、CPIシリーズ(サンアプロ社製)等のスルホニウム塩タイプ等が挙げられる。
上記熱潜在性ラジカル硬化触媒としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ化合物等が示される。
上記光重合開始剤としては、上述したように光潜在性カチオン硬化触媒や光潜在性ラジカル硬化触媒を用いることが好適である。光潜在性カチオン硬化触媒は、光カチオン重合開始剤とも呼ばれ、光照射により、硬化剤としての実質的な機能を発揮するものである。光潜在性カチオン硬化触媒を用いることにより、光によりカチオン種を含む化合物が励起されて光分解反応が起こり、光硬化が進むこととなる。
上記光潜在性カチオン硬化触媒としては、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムホスフェート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロフォスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe−ヘキサフルオロホスフェート、ジアリルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等が好適である。これらは市場より容易に入手することができ、例えば、SP−150、SP−170(旭電化社製);イルガキュア261(チバ・ガイギー社製);UVR−6974、UVR−6990(ユニオンカーバイド社製);CD−1012(サートマー社製)等が好適である。これらの中でも、オニウム塩を使用することが好ましい。また、オニウム塩としては、トリアリールスルホニウム塩及びジアリールヨードニウム塩のうち少なくとも1種を使用することが好ましい。
上記光潜在性ラジカル硬化触媒としては、例えば、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシルカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等のチオキサントン類;キサントン類;2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オンや2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1;アシルホスフィンオキサイド類等が示される。これらの中でも、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アシルフォスフィンオキサイド類が好適に用いられ、特に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オンが好適に用いられる。
上記硬化剤としてカチオン硬化触媒又はラジカル硬化触媒を使用する場合、その配合量は、溶媒等を含まない有効成分量(固形分換算量を意味する。後述する一般式(2)で表されるルイス酸とルイス塩基とからなるカチオン硬化触媒を使用する場合は、該ルイス酸とルイス塩基との合計量である。)として、それぞれカチオン硬化性化合物の総量又はラジカル硬化性化合物の総量100質量部に対し、0.01〜10質量部とすることが好適である。これにより、硬化速度がより高められ、生産性をより向上できるとともに、硬化時や加熱時、使用時等に着色するおそれをより抑制することができる。また、例えば、上記硬化性樹脂組成物を用いて得られる積層体をリフロー実装する場合には200℃以上の耐熱性が必要であるため、無色・透明性の観点からも、10質量部以下とすることが好適である。より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上であり、また、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、特に好ましくは2質量部以下である。
上記酸無水物系、フェノール系又はアミン系等の通常使用される硬化剤において、酸無水物系硬化剤としては、例えば、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル、酸無水物、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、ヘット酸無水物、ハイミック酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸−無水マレイン酸付加物、クロレンド酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸等の脂環式カルボン酸無水物;ドデセニル無水コハク酸、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物、ポリドデカン二酸無水物等の脂肪族カルボン酸の無水物;フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコール無水トリメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の芳香族カルボン酸無水物等が挙げられる。
上記フェノール系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールA、ビスフェノールF,ビスフェノールS、4,4’−ビフェニルフェノール、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリレン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、ピロガロール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類;1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類;フェノール化ポリブタジエン等のポリフェノール化合物、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂:キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂が挙げられる。
上記酸無水物系、フェノール系又はアミン系等の通常使用される硬化剤のうち、好ましくは酸無水物系硬化剤であり、より好ましくはメチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、へキサヒドロ無水フタル酸である。更に好ましくはメチルヘキサヒドロ無水フタル酸、へキサヒドロ無水フタル酸である。
上記酸無水物系、フェノール系又はアミン系等の通常使用される硬化剤を用いる場合、硬化剤の含有量としては、硬化性樹脂組成物100質量%に対し、25〜70質量%であることが好適である。より好ましくは35〜60質量%である。また、樹脂成分とこれらの硬化剤との混合割合は、樹脂成分の1化学当量に対し、硬化剤を0.5〜1.6当量の割合で混合することが好ましい。より好ましくは0.7〜1.4当量、更に好ましくは0.9〜1.2当量の割合で混合することである。
上記硬化剤として好ましくは、上述したように、熱潜在性カチオン硬化触媒や光潜在性カチオン硬化触媒等のカチオン硬化触媒を用いることである。これにより、短時間で硬化反応を好適に進めることができ、硬化物を速やかに形成することができるため、製造効率がより向上されることになる。また、耐熱性及び離型性がより高い硬化物を得られるうえ、上記樹脂組成物がハンドリング性に優れた1液型組成物(1液性状)として安定的に存在することができる。このように、上記硬化剤がカチオン硬化触媒を含む形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。中でも、熱潜在性カチオン硬化触媒を少なくとも用いることが好適である。
上記カチオン硬化触媒としてより好ましくは、ホウ素化合物であり、芳香族フッ素化合物が更に好ましい。
上記カチオン硬化触媒として特に好ましくは、下記一般式(2):
(式中、Rは、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭化水素基を表す。xは1〜5の整数であり、同一又は異なって、芳香環に結合しているフッ素原子の数を表す。aは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、a+b=3を満たす。)で表されるルイス酸(有機ボラン)と、ルイス塩基とからなる形態である。このように上記硬化性樹脂組成物が、一般式(2)で表されるルイス酸とルイス塩基とからなるカチオン硬化触媒を含む形態は、本発明の好適な形態の1つである。
このように上記硬化性樹脂組成物が上記カチオン硬化触媒を含むことにより、硬化方法としてカチオン硬化を採用することができるため、例えば酸無水物硬化のような付加型硬化を採用する場合と比較して、得られる硬化物が耐熱性、化学的安定性、耐湿性等の光学用途で求められる特性により優れたものとなる。また、アンチモン系スルホニウム塩等の従来のカチオン硬化触媒を用いた場合と比較して、熱(硬化時、成膜時、使用環境)による着色が低減され、耐湿熱性や耐温度衝撃性等の耐久性により優れた硬化物が得られる。
なお、用いる触媒に基づく硬化物の着色の有無・程度は、通常、400nmにおける透過率の変化からも確認することができる。つまり、硬化物の400nmの透過率を測定することによって、硬化物の着色の有無・程度を評価することができる。
上記一般式(2)におけるRは、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭化水素基を表す。上記炭化水素基は特に限定されないが、炭素原子数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。炭素原子数1〜20の炭化水素基は、全体として炭素原子数が1〜20であれば限定されないが、アルキル基、アリール基、アルケニル基であることが好ましい。当該アルキル基、アリール基、アルケニル基は、無置換の基であっても、水素原子の1又は2以上が他の有機基又はハロゲン原子によって置換された基であってもよい。この場合の他の有機基としては、アルキル基(Rで表される炭化水素基がアルキル基である場合には、置換後の炭化水素基は全体として無置換のアルキル基に該当する。)、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、水酸基等が挙げられる。
上記一般式(2)におけるxは1〜5の整数であり、同一又は異なって、芳香環に結合しているフッ素原子の数を表す。芳香環におけるフッ素原子の結合位置は特に限定されない。xとして好ましくは2〜5であり、より好ましくは3〜5であり、最も好ましくは5である。
またaは1以上の整数であり、bは0以上の整数であり、a+b=3を満たす。すなわち、上記ルイス酸は、フッ素原子が結合した芳香環が少なくとも1つ、ホウ素原子に結合したものである。aとしてより好ましくは2以上であり、特に好ましくは3、すなわち、フッ素原子が結合した芳香環がホウ素原子に3つ結合している形態である。
上記ルイス酸として具体的には、例えば、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(TPB)、ビス(ペンタフルオロフェニル)フェニルボラン、ペンタフルオロフェニル−ジフェニルボラン、トリス(4−フルオロフェニル)ボラン等が好ましい。これらの中でも、硬化物の耐熱性、耐湿熱性、耐温度衝撃性等を向上できる点で、TPBがより好ましい。なお、カチオン硬化触媒のうち、ルイス酸としてTPBを含むものを、TPB系触媒とも称する。
上記ルイス塩基は、上記ルイス酸に配位することができるもの、すなわち、上記ルイス酸が有するホウ素原子と配位結合を形成できるものであれば限定されず、ルイス塩基として通常用いられるものを用いることができるが、非共有電子対を有する原子を有する化合物が好適である。具体的には、窒素原子、リン原子又は硫黄原子を有する化合物であることが好適である。この場合、ルイス塩基は、窒素原子、リン原子、硫黄原子が有する非共有電子対を上記ルイス酸のホウ素原子に供与することにより、配位結合を形成することとなる。また、窒素原子又はリン原子を有する化合物がより好ましい。
上記窒素原子を有する化合物として好ましくは、アミン類(モノアミン、ポリアミン)、アンモニア等が挙げられる。より好ましくは、ヒンダードアミン構造を有するアミン、低沸点のアミン、アンモニアであり、更に好ましくは、ヒンダードアミン構造を有するポリアミン、アンモニアである。上記ルイス塩基としてヒンダードアミン構造を有するポリアミンを用いると、ラジカル捕捉効果により硬化物の酸化防止が可能となり、得られる硬化物がより耐熱性(耐湿熱性)に優れたものとなる。一方、上記ルイス塩基としてアンモニア又は低沸点のアミンを用いると、得られる硬化物が低吸水性、耐UV照射性に優れたものとなる。硬化工程でアンモニア又は低沸点のアミンが揮発することにより、最終の成形体(硬化物)中の、アンモニア又は低沸点のアミンに由来する塩構造が少なくなるため、硬化物の吸水率を低減することができると推測される。特にアンモニアは上述の効果に優れるため好ましい。
上記ヒンダードアミン構造を有するアミンとしては、樹脂組成物の保存安定性と成形時の硬化性の観点より、ホウ素原子と配位結合を形成する窒素原子が第2級又は第3級アミンを構成するものであることが好ましく、ジアミン以上のポリアミンであることがより好ましい。ヒンダードアミン構造を有するアミンとしては、具体的には、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン;TINUVIN770、TINUVIN765、TINUVIN144、TINUVIN123、TINUVIN744、CHIMASSORB2020FDL(以上、BASF社製);アデカスタブLA52、アデカスタブLA57(以上、ADEKA社製)等が挙げられる。中でも、1分子に2個以上のヒンダードアミン構造をもつTINUVIN770、TINUVIN765、アデカスタブLA52、アデカスタブLA57が好適である。
上記低沸点のアミンとしては、沸点が120℃以下のアミンを用いることが好ましく、より好ましくは80℃以下であり、更に好ましくは50℃以下であり、一層好ましくは30℃以下であり、特に好ましくは5℃以下である。具体的には、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、モノペンチルアミン、エチレンジアミン等の第1級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、ピペリジン等の第2級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン等が挙げられる。
上記リン原子を有する化合物として好ましくは、ホスフィン類である。具体的には、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリトルイルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、ジフェニルホスフィン等が挙げられる。
上記硫黄原子を有する化合物として好ましくは、チオール類及びスルフィド類である。チオール類としては、具体的には、メチルチオール、エチルチオール、プロピルチオール、ヘキシルチオール、デカンチオール、フェニルチオール等が挙げられる。スルフィド類の具体例としては、ジフェニルスルフィド、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、メチルフェニルスルフィド、メトキシメチルフェニルスルフィド等が挙げられる。
上記一般式(2)で表されるルイス酸とルイス塩基とからなるカチオン硬化触媒において、ルイス酸とルイス塩基との混合比は、必ずしも量論比でなくてもよい。すなわち、ルイス酸及びルイス塩基(塩基点量に換算)のいずれか一方が理論量(当量)より過剰に含まれていてもよい。具体的には、当該カチオン硬化触媒におけるルイス酸とルイス塩基との混合比が、ルイス酸点であるホウ素の原子数n(a)に対する、ルイス塩基点となる原子の原子数n(b)の比(n(b)/n(a))で表して、1(量論比)でなくても、カチオン硬化触媒として作用する。ここで、カチオン硬化触媒における比n(b)/n(a)は、樹脂組成物の保存安定性、カチオン硬化特性(硬化速度、硬化物の硬化度等)に影響する。
なお、ルイス塩基が、ジアミン類等の如く、ルイス塩基点を分子内に2個有する場合は、カチオン硬化触媒を構成するルイス酸に対するルイス塩基の混合モル比が0.5の場合に、比n(b)/n(a)=1(量論比)となる。このようにして、比n(b)/n(a)が算定される。
上記カチオン硬化触媒において、これを含む樹脂組成物の保存安定性の観点からは、ルイス酸がルイス塩基に対して余りに過剰に存在すると、保存安定性が充分ではなくなる場合があるので、保存安定性により優れる樹脂組成物とするためには、比n(b)/n(a)が0.5以上であることが好ましい。同様の理由から、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは0.9以上、特に好ましくは0.95以上、最も好ましくは0.99以上である。
一方、カチオン硬化特性の観点から、ルイス塩基が余りに過剰となると、硬化物の低温硬化性が充分ではなくなる場合があるので、カチオン硬化特性により優れる組成物とするためには、n(b)/n(a)が100以下であることが好ましい。同様の理由から、より好ましくは20以下、更に好ましくは10以下、特に好ましくは5以下である。
上記比n(b)/n(a)としてはまた、ルイス塩基が、窒素原子、硫黄原子又はリン原子を有する化合物からなり、2以上炭素置換された構造(2以上炭素置換された構造とは、これらの原子に炭素原子を介して有機基が2個以上結合した構造を意味する)である場合には、カチオン硬化特性の観点から、酸解離定数が高く、立体障害が大きいことから、比n(b)/n(a)は、2以下であることが好ましい。より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.2以下である。例えばヒンダードアミンのような構造では、当該範囲が好ましい。
またルイス塩基が、アンモニアや立体障害の小さい低沸点アミンである場合、特にアンモニアである場合には、比n(b)/n(a)は、1より大きいことが好ましい。より好ましくは1.001以上、更に好ましくは1.01以上、特に好ましくは1.1以上、最も好ましくは1.5以上である。
上記カチオン硬化触媒を構成するルイス酸及びルイス塩基の存在形態は特に限定されないが、該ルイス酸に対してルイス塩基が電子的な相互作用を有した状態で存在してなることが好ましい。より好ましくは、該ルイス酸にルイス塩基の少なくとも一部が配位してなることであり、更に好ましくは、少なくとも、存在するルイス酸に対して当量に相当するルイス塩基がルイス酸に配位した形態である。ルイス酸に対するルイス塩基の存在比が当量又は当量未満である場合、すなわち、比n(b)/n(a)が1以下である場合は、存在するルイス塩基のほぼ全量がルイス酸に配位してなる形態が好ましい。一方、ルイス塩基が過剰に(当量より多く)含まれる形態においては、ルイス塩基がルイス酸と当量配位し、過剰のルイス塩基は錯体の近傍に存在していることが好ましい。
上記一般式(2)で表されるルイス酸とルイス塩基とからなるカチオン硬化触媒として具体的には、例えば、TPB/モノアルキルアミン錯体、TPB/ジアルキルアミン錯体、TPB/トリアルキルアミン錯体等のTPBアルキルアミン錯体、TPB/ヒンダードアミン錯体等の有機ボラン/アミン錯体;TPB/NH3錯体等の有機ボラン/アンモニア錯体;TPB/トリアリールホスフィン錯体、TPB/ジアリールホスフィン錯体、TPB/モノアリールホスフィン錯体等の有機ボラン/ホスフィン錯体;TPB/アルキルチオール錯体等の有機ボラン/チオール錯体;TPB/ジアリールスルフィド錯体、TPB/ジアルキルスルフィド錯体等の有機ボラン/スルフィド錯体等が挙げられる。中でも、TPB/アルキルアミン錯体、TPB/ヒンダードアミン錯体、TPB/NH3錯体、TPB/ホスフィン錯体が好適である。
−溶媒−
上記硬化性樹脂組成物はまた、溶媒を含むことが好適である。これによって、流動性の高い樹脂組成物とすることができ、コーティング用の樹脂組成物として特に好適なものとなる。
上記溶媒としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ等のエステル系溶媒;等が挙げられる。これらの溶媒は、1種又は2種以上を使用することができる。
上記溶媒を含む場合、その含有量としては、樹脂成分と色素との総量100質量%に対して、10質量%以上であることが好ましい。これにより、上記硬化性樹脂組成物は、基板(好ましくは透明無機材料層)上に層を形成する材料としてより優れた流動性を発揮することができる。より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは100質量%以上、特に好ましくは200質量%以上である。一方、溶媒の含有量は、好ましくは10000質量%以下、より好ましくは5000質量%以下、更に好ましくは1000質量%以下である。
−光増感剤−
上記硬化性樹脂組成物はまた、必要に応じて光増感剤を1種又は2種以上更に含んでいてもよい。特に、上述した活性エネルギー線照射による硬化を行う場合には、上記光重合開始剤に加え、更に、光増感剤を併用することが好ましい。
上記光増感剤としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル等のアミン類等が好適である。
上記光増感剤を含む場合、その含有量としては、樹脂成分の総量100質量部に対し、0.1〜20質量部とすることが好ましい。より好ましくは0.5〜10質量部である。
−硬化促進剤−
上記硬化性樹脂組成物はまた、必要に応じて硬化促進剤を1種又は2種以上更に含んでいてもよい。特に、上述した酸無水物系、フェノール系又はアミン系等の通常使用される硬化剤を用いる場合には、硬化促進剤を併用することが好適である。
上記硬化促進剤としては、有機塩基の酸塩又は3級窒素を有する芳香族化合物等が挙げられ、有機塩基の酸塩としては、有機ホスフォニウム塩や有機アンモニウム塩等の有機オニウム塩や3級窒素を有する有機塩基の酸塩が挙げられる。有機ホスフォニウム塩としては、例えば、テトラフェニルホスフォニウムブロミド、トリフェニルホスフィン・トルエンブロミド等のフェニル環を四つ有するホスフォニウムブロミドが挙げられ、有機アンモニウム塩としては、例えばテトラオクチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド等のテトラ(C1〜C8)アルキルアンモニウムブロミドが挙げられ、3級窒素を有する有機塩基の酸塩としては、例えば環内に3級窒素を有する脂環式塩基の有機酸塩や各種イミダゾール類の有機酸塩が挙げられる。
上記環内に3級窒素を有する脂環式塩基の有機酸塩としては、例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7のフェノール塩、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7のオクチル酸塩等のジアザ化合物と、フェノール類、下記多価カルボン酸類又はフォスフィン酸類との塩類が挙げられる。
上記各種イミダゾール類の有機酸塩としては、例えばイミダゾール類と多価カルボン酸等の有機酸との塩類が挙げられる。イミダゾール類としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール等が挙げられる。好ましいイミダゾール類としては、例えば後述する3級窒素を有する芳香族化合物におけるフェニル基置換イミダゾール類と同じイミダゾール類が挙げられる。
上記多価カルボン酸類としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸、マレイン酸、蓚酸等の脂肪族多価カルボン酸が挙げられ、好ましい多価カルボン酸としては、例えばテレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸が挙げられる。好ましいイミダゾール類と多価カルボン酸等の有機酸との塩類としては、例えば1位に置換基を有しているイミダゾール類の多価カルボン酸塩が挙げられる。より好ましくは、例えば1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールのトリメリット酸塩である。
上記3級窒素を有する芳香族化合物としては、例えばフェニル基置換イミダゾール類や3級アミノ基置換フェノール類が挙げられる。フェニル基置換イミダゾール類としては、例えば2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾール等が挙げられる。好ましくは、例えば1位に芳香族置換基を有しているイミダゾール類であり、より好ましくは、例えば1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールである。3級アミノ基置換フェノール類としては、例えば2,4,6−トリ(ジメチルアミノメチル)−フェノール等のジ(C1〜C4)アルキルアミノ(C1〜C4)アルキル基を1〜3個有するフェノール類が挙げられる。
上記硬化促進剤の中でも特に好ましい硬化促進剤としては、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7のフェノール塩、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7のオクチル酸塩、2,4,6−トリ(ジメチルアミノメチル)−フェノール、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールのトリメリット酸塩、テトラフェニルホスフォニウムブロミド、トリフェニルホスフィン・トルエンブロミドである。
上記硬化促進剤を含む場合、その含有量としては、樹脂成分の総量100質量部に対し、0.01〜5質量部とすることが好ましい。より好ましくは0.03〜3質量部である。
−可撓性成分−
上記硬化性樹脂組成物はまた、可撓性を有する成分(可撓性成分)を含むことが好適である。これによって、一体感のある、すなわち靱性の高い樹脂組成物とすることが可能となる。また、可撓性成分を含むことによって樹脂層の硬度がより向上される。
なお、可撓性成分としては、上記樹脂成分とは異なる化合物であってもよいし、上記樹脂成分の少なくとも1種が可撓性成分であってもよい。
上記可撓性成分としては、例えば、(1)−〔−(CH2)n−O−〕m−で表されるオキシアルキレン骨格を有する化合物(nは2以上、mは1以上の整数である。好ましくは、nは2〜12、mは1〜1000の整数であり、より好ましくは、nは3〜6、mは1〜20の整数である。)が好適であり、例えば、オキシブチレン基を含むエポキシ化合物(ジャパンエポキシレジン社製、YL−7217、エポキシ当量437、液状エポキシ化合物(10℃以上))が好適である。また、その他の好適な可撓性成分としては、(2)高分子エポキシ化合物(例えば、水添ビスフェノール(ジャパンエポキシレジン社製、YX−8040、エポキシ当量1000、固形水添エポキシ化合物));(3)脂環式固形エポキシ化合物(ダイセル化学工業社製 EHPE−3150);(4)脂環式液状エポキシ化合物(ダイセル化学工業社製、セロキサイド2081);(5)液状ニトリルゴム等の液状ゴム、ポリブタジエン等の高分子ゴム、粒径100nm以下の微粒子ゴム;等が好ましい。
これらの中でもより好ましくは、末端や側鎖や主鎖骨格等にカチオン硬化性基を含むカチオン硬化性化合物である。
このように上記可撓性成分としては、カチオン硬化性化合物を好適に用いることができるが、該化合物としては、エポキシ基を含む化合物であることが好ましく、より好ましくは、オキシブチレン基(−〔−(CH2)4−O−〕m−(mは、同上。))を有する化合物である。
上記可撓性成分を含む場合、その含有量としては、樹脂成分と可撓性成分との合計量100質量%に対し、40質量%以下であることが好適である。より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。また、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上である。
−他の成分−
上記硬化性樹脂組成物は更に、上述した必須成分や好適な含有成分の他に、本発明の作用効果を損なわない限りにおいて、硬化促進剤、反応性希釈剤、不飽和結合を有さない飽和化合物、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、IRカット剤、光安定剤、可塑剤、非反応性化合物、連鎖移動剤、嫌気重合開始剤、重合禁止剤、無機充填剤、有機充填剤、カップリング剤等の密着向上剤、熱安定剤、防菌・防カビ剤、難燃剤、艶消し剤、消泡剤、レベリング剤、湿潤・分散剤、沈降防止剤、増粘剤・タレ防止剤、色分かれ防止剤、乳化剤、スリップ・スリキズ防止剤、皮張り防止剤、乾燥剤、防汚剤、帯電防止剤、導電剤(静電助剤)等を含有してもよい。
上記硬化性樹脂組成物が無機充填剤を含有することで、線膨張率を低減させることが可能であり、半田リフロー工程、無機酸化物の蒸着工程等において、熱による膨張を抑制することが可能である。無機充填剤としては、透明性を損なわないという観点で、ナノ粒子を配合するものが好ましく、粒径40nm以下のシリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニアを含むものが好ましい。例えば、日産化学工業社製MEK−ST等が好適に用いられる。
上記硬化性樹脂組成物がシランカップリング剤を含有することで、接着性を向上させることが可能であり、半田リフロー工程、湿熱環境における使用において、剥がれ等を抑制することが可能である。このように上記硬化性樹脂組成物がシランカップリング剤を含有することも好適である。シランカップリング剤としては、オキシラン環を有する化合物が好適であり、東レダウコーニング社製Z−6040、Z−6043等が好適に用いられる。
上記硬化性樹脂組成物においては、樹脂組成物1cm3あたりに含まれる粒子径10μm以上の異物が1000個以下であることが好ましく、より好ましくは100個以下であり、更に好ましくは10個以下である。
なお、上記硬化性樹脂組成物に含まれる異物は、樹脂組成物を調製する際にろ過を行うことにより除去することができる。
−調製方法−
上記硬化性樹脂組成物の調製方法は特に限定されず、含有成分を通常の方法で混合することにより得ることができる。含有成分を混合する際には、必要に応じて、各成分又は混合物を加熱して、均一組成になるように混合することもできる。加熱温度としては、硬化性樹脂の分解温度以下、又は、反応温度以下であれば特に限定されないが、硬化剤(触媒)の添加前であれば、好ましくは140〜20℃、より好ましくは120〜40℃である。
−粘度−
上記硬化性樹脂組成物は、粘度が10000mPa・s以下であることが好ましい。これによって、加工特性により優れるものとなる。より好ましくは100mPa・s以下、更に好ましくは50mPa・s以下である。また、0.01mPa・s以上であることが好ましく、より好ましくは0.1mPa・s以上である。
粘度の測定は、樹脂組成物について、E型粘度計(東機産業社製)を用いて、25℃の条件下で行うことが可能である。
−硬化方法−
上記硬化性樹脂組成物の硬化方法としては特に限定されず、例えば、熱硬化や光硬化(活性エネルギー線照射による硬化)等の種々の方法を好適に用いることができる。熱硬化としては30〜400℃程度で硬化することが好ましく、光硬化としては10〜10000mJ/cm2で硬化することが好ましい。硬化は1段階で行ってもよく、また、1次硬化(予備硬化)、2次硬化(本硬化)のように2段階で行ってもよい。
以下に、2段階硬化を行う場合について、詳述する。
2段階硬化法としては、1次硬化に相当する第1工程として、樹脂組成物を10〜100000mJ/cm2で光硬化させるか、又は、80〜200℃で熱硬化させる工程と、該第1工程で得た硬化物を200℃を超え500℃以下で熱硬化させる、2次硬化に相当する第2工程とを含む方法を採用することが好ましい。
上記第1工程において、熱硬化の場合には、硬化温度を80〜200℃とすることが好ましい。より好ましくは100℃以上、160℃以下である。また、硬化温度は、80〜200℃の範囲内で、段階的に変化させてもよい。
上記熱硬化工程における硬化時間は、例えば、10分以内であることが好ましく、より好ましくは5分以内、更に好ましくは3分以内である。また、好ましくは10秒以上、より好ましくは30秒以上である。
上記熱硬化工程はまた、空気中、又は、窒素等の不活性ガス雰囲気下、減圧下又は加圧下のいずれの雰囲気下でも行うことができる。また、光硬化(活性エネルギー線照射による硬化)を組み合わせてもよい。
上記硬化方法において、第2工程では、上記第1工程で得た硬化物を、150℃を超え、500℃以下で熱硬化させることが好ましい。硬化温度の下限は、より好ましくは200℃以上、更に好ましくは230℃以上である。上限は、より好ましくは400℃以下である。また、硬化温度は、150℃を超え、500℃以下の温度範囲内で、段階的に変化させてもよい。
上記第2工程における硬化時間は、得られる硬化物の硬化率が充分となる時間とすればよく特に限定されないが、製造効率を考慮すると、例えば、10分間〜30時間とすることが好適である。より好ましくは30分間〜10時間である。
上記第2工程はまた、空気中、又は、窒素等の不活性ガス雰囲気のいずれの雰囲気下でも行うことができる。中でも特に、酸素濃度が低い雰囲気下で上記第2工程を行うことが好ましい。例えば、酸素濃度が10体積%以下である不活性ガス雰囲気下で行うことが好適である。より好ましくは3体積%以下、更に好ましくは1体積%以下、特に好ましくは0.5体積%以下、最も好ましくは0.3体積%以下である。
上記第1工程を実施することによって、塗工基材に対して塗液の凝集・ハジキ等を抑制可能となる。また、上記第2工程を実施することで、リフロー工程、蒸着工程に対する耐熱性を向上させることが可能となる。
上記硬化方法は、上記第1工程及び上記第2工程を含むことが好適であるが、その前後、中間に硬化処理を含んでいてもよい。例えば、上記第1工程を光硬化で実施した後、熱硬化を窒素下で150℃×60分間行い、上記第2工程を熱硬化で実施する。このような処理を行うことで、より成膜性、耐熱性を向上させることが可能となる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、耐熱性や耐光性等に優れた硬化物を与えることができる。そのため、基材上に、本発明の硬化性樹脂組成物からなる樹脂層が形成した場合、該樹脂層は、耐熱性が高く、可視光透過率の低減や着色が充分に抑制されたものとなり、したがって、このような積層体は、撮像素子用途に特に有用なものとなる。中でも、基材として透明無機材料層を用いた場合には、クラックやチッピング、反りの発生を抑制でき、耐熱性にも優れる積層体が得られるため好適である。このように透明無機材料層上に、上記硬化性樹脂組成物からなる樹脂層を形成して得られる積層体もまた、本発明の1つである。
〔積層体〕
本発明の積層体は、透明無機材料層上に樹脂層を有する。樹脂層は、透明無機材料層の片面のみに有していてもよいし、両面に有していてもよい。また、透明無機材料層及び樹脂層は、それぞれ単層構造又は多層構造のいずれであってもよい。
上記積層体は、透明無機材料層上に樹脂層を形成することにより得られるが、その形成方法としては、硬化性樹脂組成物を透明無機材料層上に塗布して硬化することにより形成する方法が好適である。すなわち、透明無機材料層上に塗膜を形成する方法が好ましい。また、本発明の撮像素子用積層体に用いられる硬化性樹脂組成物は、コーティング用であることが好適である。
ここで、「透明無機材料層上に樹脂層を有する」とは、透明無機材料層に直接樹脂層が接している形態だけでなく、透明無機材料層上に存在する他の構成部材を介して樹脂層を有する形態も含むこととする。「透明無機材料層上に樹脂層を形成する」についても同様であり、透明無機材料層上に樹脂層を直接形成する場合だけでなく、透明無機材料層上に存在する他の構成部材を介して樹脂層を形成する場合も含むこととする。「硬化性樹脂組成物を透明無機材料層上に塗布する」についても同様であり、硬化性樹脂組成物を透明無機材料層上に直接塗布する場合だけでなく、透明無機材料層上に存在する他の構成部材を介して硬化性樹脂組成物を塗布する場合も含むこととする。
上記他の構成部材を介して硬化性樹脂組成物を塗布する形態では、接着性を向上させる観点から、例えば、シランカップリング剤等の金属酸化物前駆体を含む液状物によって当該構成部材の表面処理を施した上に、硬化性樹脂組成物を塗布することが好適である。シランカップリング剤としては、オキシラン環を有する化合物が好適であり、東レダウコーニング社製Z−6040、Z−6043等が好適に用いられる。
上記透明無機材料層(又は他の構成部材)上に硬化性樹脂組成物からなる塗膜を形成する方法としては、溶液塗布法が好適である。具体的には、後述するとおりである。
上記積層体は、650〜680nmの波長域に吸収極大を有し、かつ400〜680nmの波長域に吸収極大を1つのみ有するという吸収特性を示すことが好適である。これにより、例えば、無機反射膜や無機干渉膜との組み合わせによって、上記積層体は人間の目の感度に近い光選択透過性をより発揮することができるため、撮像素子用途に極めて有用な積層体となる。より好ましくは、650〜680nmの波長域に吸収極大を有し、かつ400〜750nmの波長域に吸収極大を1つのみ有するものである。
ここで、「400〜680nmの波長域に吸収極大を1つのみ有する」とは、400〜680nmの波長域に、吸光度が増加から減少に転じる頂点(吸収極大)が1つしか認められないことを意味し、この吸収極大を頂点とするピークは、シャープなものであってもよいし、ブロードなものであってもよい。後者の場合、シャープな吸収ピークが2以上重なることによって全体としてブロードな吸収ピークが形成され、吸光度が増加から減少に転じる頂点(吸収極大)が1つのみとなった形態であってもよい。
上記積層体はまた、650〜680nmの波長域に存在する吸収極大波長での吸光度が、0.2以上であることが好適である。より好ましくは0.3以上である。
上記積層体は更に、吸光度が、600〜680nmの波長域において長波長側ほど高いことが好適である。言い換えると、透過率が、600〜680nmの波長域において長波長側ほど低いことが好適であり、例えば、600〜680nmの波長域において、1nmごとに吸光度を測定した場合に、ある波長での吸光度が、それよりも長波長での吸光度を上回らないことが好ましい。これにより、吸光度スペクトルがより滑らかな曲線となるため、より優れた光選択透過性を発現することができる。
本明細書中、積層体、樹脂層及び透明無機材料層の吸収特性及び透過率は、例えば、吸光度計(分光光度計とも称される。島津製作所社製、分光光度計UV−3100)を用いて吸収スペクトル又は透過率スペクトルを測定することで求めることができる。
なお、樹脂層も、上述した積層体の吸収特性及び透過特性と同様の特性を有することが好適である。中でも特に、上記樹脂層は、吸光度が、600〜680nmの波長域において長波長側ほど高い形態であることが好ましく、このような形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
上記積層体の厚みは、例えば、1mm以下であることが好ましい。これにより、撮像素子の小型化への要請に充分に応えることができる。より好ましくは500μm以下、更に好ましくは300μm以下である。また、30μm以上であることが好ましい。より好ましくは50μm以上である。
<透明無機材料層>
上記積層体において、透明無機材料層とは、透明無機材料からなる層を意味する。
上記透明無機材料は、例えば、ガラス、水晶等が挙げられる。
上記透明無機材料はまた、ガラスや水晶等を形成する材料中に遷移金属イオンを含有させて得られるものであってもよい。遷移金属イオンとしては、光吸収能を有するものとして通常使用されるものを1種又は2種以上用いればよく、例えば、Ag+、Fe+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+等が挙げられる。
上記透明無機材料層の厚みは特に限定されないが、例えば、30〜1000μmであることが好ましい。より好ましくは50μm以上である。
上記透明無機材料層において、「透明」であるとは、波長550nmでの透過率が80%以上であることが好ましい。より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上である。
<樹脂層>
上記透明無機材料層(又は他の構成部材)上に硬化性樹脂組成物からなる塗膜を形成する方法としては、溶液塗布法が好適である。具体的には、スピンコート法、キャスト法、ロールコート法、スプレーコート法、バーコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット法等の通常使用される方法が挙げられる。これらの中では、スピンコート法が、基板上のコート層の偏差を小さくする観点で好ましい。スピンコート法により塗膜を形成する場合、室温(25℃)付近で、透明無機材料層(又は他の構成部材)を500〜4000rpmで10〜60秒間程度回転させながら、溶媒を乾燥させることが好ましい。また、インクジェット法で行うことも、スピンコートでは得にくい丸型以外のサンプルを得つつ、偏差を小さくするという観点では好ましい。また、スピンコート後やインクジェット後、必要に応じて光硬化及び/又は熱硬化を行うことが好ましい。
上記透明無機材料層又は他の構成部材の表面に硬化性樹脂組成物を塗布した後の乾燥(硬化)方法、すなわち上記硬化性樹脂組成物の硬化方法については、上述したとおりである。
上記樹脂層の厚みは特に限定されないが、リフロー時の耐熱性や透明性の観点、熱膨張による界面での剥離や割れを防止する観点から、50μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは10μm以下であり、特に好ましくは5μm以下であり、最も好ましくは2μm以下である。また、一般的な異物サイズよりも膜厚を充分に厚くすることにより欠点を防ぐ観点、樹脂組成物へ溶解させる色素濃度を低減し、色素の会合や析出を抑制する観点から、0.1μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.5μm以上である。
〔積層体の用途〕
本発明の積層体は、撮像素子用途に特に好適である。本発明の積層体に用いられる硬化性樹脂組成物もまた、撮像素子用途に特に好適である。中でも、上記積層体を、光選択透過フィルターの構成材料として使用することが好ましい。この場合、上記硬化性樹脂組成物により形成される樹脂層は、光選択透過フィルターのうち(近)赤外線吸収層(単に吸収層ともいう)として使用されることがより好適である。このような上記積層体を含む光選択透過フィルターもまた、本発明の1つであり、上記積層体を含む撮像素子もまた、本発明に含まれる。なお、撮像素子は、上記積層体を含む光選択透過フィルターを備えることが特に好適である。
以下に、光選択透過フィルター及び撮像素子について説明する。
<光選択透過フィルター>
本発明の光選択透過フィルターは、上記積層体を1又は2以上含むが、必要に応じて、更に他の層を1又は2以上有するものであってもよい。光選択透過フィルターにおいては、上記積層体のうち透明無機材料層を基材として、硬化性樹脂組成物から形成される樹脂層を吸収層として、それぞれ使用することが好適である。
上記光選択透過フィルターは、所望の光の透過率を選択的に低減させるという機能以外の種々の他の機能を有していてもよい。例えば、光選択透過フィルターとして好ましい形態の1つである赤外線カットフィルターの場合、紫外線を遮蔽する機能等の赤外線カット以外の各種機能を有する形態や、強靱性、強度等の赤外線カットフィルターの物性を向上させる機能を有する形態を挙げることができる。
このように上記光選択透過フィルターが他の機能を有する形態においては、本発明の積層体の一方の表面に反射膜を形成し、他方の表面に他の機能を付与するための機能性材料層を形成することが好ましい。機能性材料層は、例えば、CVD法、スパッタリング法、真空蒸着法により、直接、上記積層体上に形成したり、離型処理された仮の基材上に形成された機能性材料層を上記積層体に接着剤で張り合わせたりすることにより得ることができる。また、原料物質を含有する液状組成物を上記積層体に塗布、乾燥して、製膜することによっても得ることができる。
上記光選択透過フィルターは、光の透過率を選択的に低減するものである。低減させる光としては、10nm〜1000nmの間のものであればよく、用いる用途により選択することができる。低減させる光の波長に応じて赤外線カットフィルター、紫外線カットフィルター、赤外・紫外線カットフィルター等とすることができるが、中でも、750nm〜1000nmの赤外光(より好ましくは650nm〜1000nmの赤外光)と200〜350nmの紫外光とを低減し、それ以外の光を透過するものであることが好ましい。すなわち、本発明の光選択透過フィルターは、赤外・紫外線カットフィルターであることが好ましい。
赤外線カットフィルターは、赤外線領域である650nm〜10000nmの波長を有する光のうち、いずれかの波長(範囲)の光を選択的に低減する機能を有するフィルターであればよい。選択的に低減する波長の範囲としては、650nm〜2500nm、650nm〜1000nm又は800nm〜1000nmであることが好適である。これらの範囲の波長の少なくとも一つを選択的に低減するフィルターもまた、上記赤外線カットフィルターに含まれる。選択的に低減する波長の範囲としては、近赤外線領域である650nm〜1000nmであることがより好ましい。
紫外線カットフィルターは、紫外線を遮断する機能を有するフィルターである。選択的に低減する波長の範囲としては、200〜350nmであることが好ましい。
赤外・紫外線カットフィルターは、紫外線及び赤外線の両方を遮断する機能を有するフィルターである。選択的に低減する波長の範囲は、上述と同様であることが好ましい。
本発明の光選択透過フィルターが赤外線カットフィルターである形態においては、750〜1000nmの赤外線の透過率を選択的に5%以下に低減するものが好ましい。例えば、上記赤外線カットフィルターをカメラモジュールとして用いる場合には、赤外光の透過率が5%以下であり、可視光における450〜600nmの透過率が70%以上であることが好適である。より好ましくは80%以上である。また、可視光の中でも480〜550nmの波長域の光の透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好適である。なお、上記赤外線カットフィルターにおいては、その他(赤外線領域以外)の波長の透過率としては、より好ましくは85%以上であり、更に好ましくは90%以上である。すなわち、上記光選択透過フィルターは、波長が480〜550nmにおける光の透過率が85%以上であり、かつ750〜1000nmにおける透過率が5%以下の赤外線カットフィルターであることが好ましい。
透過率は、分光光度計(Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)を用いて測定することができる。
本発明の光選択透過フィルターが紫外線カットフィルターである形態においては、200〜350nmの紫外線の透過率を選択的に5%以下に低減するものが好ましい。
本発明の光選択透過フィルターが赤外・紫外線カットフィルターである形態においては、650nm〜1μmの赤外光と200〜350nmの紫外光とを選択的に5%以下に低減するものが好ましい。
上記光選択透過フィルターとして好ましくは、上記積層体の少なくとも一方の表面に、反射膜(好ましくは、(近)赤外線反射膜)が形成されてなる形態である。すなわち上記積層体及び反射膜を含む光選択透過フィルターであることが好適である。このような構成によって、光遮断特性の入射角依存性をより充分に低減することができる。この場合、光選択透過フィルターにおける反射膜の配置形態(構成)は特に限定されない。
上記反射膜としては、耐熱性に優れる観点から、各波長の屈折率を制御できる無機多層膜が好適である。無機多層膜としては、基材や吸収層、他の構成部材の表面に、真空蒸着法やスパッタリング法等により、低屈折率材料及び高屈折率材料を交互に積層させた屈折率制御多層膜であることが好ましい。上記反射膜はまた、透明導電膜も好適である。透明導電膜としては、インジウム−スズ系酸化物(ITO)等の赤外線を反射する膜としての透明導電膜が好ましい。中でも、無機多層膜が好適である。
上記無機多層膜として好ましくは、誘電体層Aと、誘電体層Aが有する屈折率よりも高い屈折率を有する誘電体層Bとを交互に積層した誘電体多層膜である。
上記誘電体層Aを構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を通常用いることができる。好ましくは、屈折率の範囲が1.2〜1.6の材料である。
上記材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウム等が好適である。
上記誘電体層Bを構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができる。好ましくは、屈折率の範囲が1.7〜2.5である。
上記材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化インジウムを主成分とし酸化チタン、酸化錫、酸化セリウム等を少量含有させたもの等が好適である。
上記誘電体層A及び誘電体層Bの各層の厚みは、通常、遮断しようとする光の波長をλ(nm)とすると、0.1λ〜0.5λの厚みであることが好ましい。厚みが上記範囲外になると、屈折率(n)と膜厚(d)との積(n×d)がλ/4で算出される光学的膜厚と大きく異なって反射・屈折の光学的特性の関係が崩れてしまい、特定波長の遮断・透過をするコントロールができなくなるおそれがある。
上記誘電体層Aと誘電体層Bとを積層する方法については、これら材料層を積層した誘電体多層膜が形成される限り特に制限はないが、例えば、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法等により、誘電体層Aと誘電体層Bとを交互に積層することにより誘電体多層膜を形成することができる。
上記反射膜はまた、上述したように多層膜であることが好ましいが、その積層数は、撮像素子が有する反射膜の積層数の合計として、10〜80層の範囲が好ましい。より好ましくは25〜50層の範囲である。
上記反射膜の厚みは、0.5〜10μmであることが好ましい。より好ましくは2〜8μmである。なお、光選択透過フィルターや撮像素子が有する反射膜の合計の厚みとして、上記範囲にあることが好適である。
上記反射膜と吸収層の好ましい形態として、赤外領域(650〜750nm)における吸収層の吸収極大波長に対して、光学フィルターとしてスムーズな透過率スペクトルを得るという観点では、吸収層より透過率が小さくなる反射膜の波長が+30nm以下に存在することが好ましく、より好ましくは+20nm以下、更に好ましくは+10nm以下、特に好ましくは0nm以下に存在することである。一方、光学フィルターとしての角度依存性を小さくするという観点では、−10nm以上であることが好ましく、0nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることが更に好ましく、20nm以上であることが特に好ましい。
ここで、本発明の積層体の一部である樹脂層を反射型光選択透過フィルターの吸収層として使用し、上記積層体の少なくとも一方の面に反射膜を形成する場合には、反射膜として10層以上の多層膜を形成することが好ましい。また、反射膜を形成した後に、上記硬化性樹脂組成物から形成される樹脂層を形成することも好適である。
上記反射膜は、積層体を構成する基材(好ましくは透明無機材料層)又は樹脂層に、直接又は他の構成部材を介して存在することが好ましい。例えば、これらの表面に、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法等を用いて反射膜を形成することが好適である。中でも、真空蒸着法を用いることが好ましい。より好ましくは、離型処理したガラス等の仮の基材に蒸着層を形成し、基材又は樹脂層等に該蒸着層を転写することで、反射膜を形成する方法である。これにより、蒸着によって光選択透過フィルターが変形しカールしたり、割れが生じたりする可能性を小さくすることができる。なお、この場合、蒸着層を転写しようとする基材又は樹脂層等には、接着層を形成しておくことが好ましい。
このように反射膜(好ましくは無機多層膜)の形成には、蒸着法を用いることが好適であるが、蒸着温度は、100℃以上とすることが好適である。より好ましくは120℃以上、更に好ましくは150℃以上である。このような高温で蒸着すると、無機膜(無機多層膜を構成する無機膜)が緻密で硬くなり、種々の耐性が向上し、歩留りが向上する等の利点がある。そのため、このような蒸着温度に耐える透明無機材料層、樹脂成分及び色素を用いることは、非常に意味がある。本発明の積層体を用いれば、高温で蒸着できるだけでなく、低温で蒸着したとしても、無機膜との線膨張係数の差が小さいため、例えば、リフロー工程等の製造工程での加熱環境や過酷な使用環境においても、線膨張係数の差による無機層クラックが生じない。
ところで、一般に、基材の片面又は両面に反射膜を有する反射型フィルターは、光の遮断性能には優れるものの、光の入射角によって反射特性が変化する入射角依存性(視野角依存性ともいう)を有する、すなわち入射角により分光透過率曲線が異なるため、その改善が課題とされている。しかし、本発明の積層体と反射膜とを併用した場合には、入射角依存性を抑制することができ、なおかつ耐熱性や耐光性等の各種物性にも優れるため、非常に有用である。
光遮断特性の入射角依存性は、例えば、分光光度計(Shimadzu UV−3100、島津製作所社製)を用いて、入射角を変えた透過率(例えば0°、20°、25°、30°等。入射角0°における透過率とは、光選択透過フィルターの厚み方向から光が入射するようにして測定される透過率であり、入射角20°における透過率とは、光選択透過フィルターの厚み方向に対して20°傾いた方向から光が入射するようにして測定される透過率である。)を測定し、そのスペクトル変化量により評価できる。
なお、光遮断特性の入射角依存性は、吸収層の吸収により充分に低減されている必要があり、入射角の変化に対して透過率スペクトルが変化しないこと、又は、その変化の程度が小さいことが好ましい。具体的には、入射角0°を20°に変えても(より好ましくは25°に変えても)、透過率80%以上の領域において、透過率のスペクトルが変化しないことが好ましく、より好ましくは、透過率70%以上の領域において透過率のスペクトルが変化しないことであり、更に好ましくは、透過率60%以上の領域において透過率のスペクトルが変化しないことである。最も好ましくは、いずれの透過率領域においてもスペクトルが変化しないことである。
上述したように、本発明の光選択透過フィルターは、耐光性、耐熱性及び光選択透過性に特に優れ、光遮断特性の入射角依存性を充分に低減することができるため、例えば、自動車や建物等のガラス等に装着される熱線カットフィルター等として有用であるのみならず、カメラモジュール(固体撮像素子ともいう)用途における光ノイズを遮断し視感度補正するためのフィルターとしても有用である。中でも、本発明の光選択透過フィルターは、デジタルスチルカメラや携帯電話用カメラ等のカメラモジュールに用いられるフィルターとして有用である。すなわち、上記光選択透過フィルターは、撮像素子用光選択透過フィルターであることが好適である。このように上記光選択透過フィルターを備える撮像素子もまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
<撮像素子>
本発明の撮像素子は、上記積層体を1又は2以上含むが、必要に応じて、更に他の部材を1又は2以上有するものであってもよい。通常、撮像素子は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の検出素子(センサー)及びレンズを有するが、更に、光学フィルターや、部材を固定させるための接着剤等が挙げられる。
上記撮像素子として好ましくは、上記積層体の少なくとも一方の表面に、反射膜が形成されてなる形態である。すなわち上記積層体及び反射膜を含む撮像素子であることが好適である。このような構成によって、光遮断特性の入射角依存性をより充分に低減することができる。この場合、撮像素子における反射膜の配置形態(構成)は特に限定されない。例えば、レンズに反射膜が直接形成されることで、当該レンズと反射膜とが一体化した形態(形態(a)とも称す);撮像素子が、反射膜を含む光学フィルターを備えることで、レンズとは独立した構成部材として反射膜を有する形態(形態(b)とも称す);等が挙げられる。
なお、反射膜については、上述したとおりである。
上記形態(a)において、撮像素子が2枚以上のレンズを有する場合、反射膜が形成されるレンズの枚数は特に限定されない。
上記形態(b)において、反射膜を含む光学フィルターは、(近)赤外線を反射する機能のみを備えたものであってもよいし、更に(近)赤外線を吸収する機能を備えたものであってもよい。
上記反射膜を含む光学フィルターは、本発明の積層体と反射膜とを備える光選択透過フィルターであってもよいし、該光選択透過フィルター以外の光学フィルターであってもよい。また、反射膜を含む光学フィルターを1又は2以上有していてもよいし、配置形態も特に限定されない。例えば、撮像素子が2枚以上のレンズを有する場合には、当該反射膜を有するフィルターは、レンズ間に配置されていてもよい。
なお、上記反射膜は、レンズの一方の面若しくは両面、及び/又は、基材の一方の面若しくは両面に、形成されることが好適である。