以下、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の実施の形態を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
まず、図1を参照して、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。図1に示す画像形成装置1は、カラーレーザープリンタであり、その装置本体の中央には、4つの作像部4Y,4M,4C,4Kが設けられている。各作像部4Y,4M,4C,4Kは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。
具体的に、各作像部4Y,4M,4C,4Kは、潜像担持体としてのドラム状の感光体5と、感光体5の表面を帯電させる帯電装置6と、感光体5の表面にトナーを供給する現像装置7と、感光体5の表面をクリーニングするクリーニング装置8などを備える。なお、図1では、ブラックの作像部4Kが備える感光体5、帯電装置6、現像装置7、クリーニング装置8のみに符号を付しており、その他の作像部4Y,4M,4Cにおいては符号を省略している。
各作像部4Y,4M,4C,4Kの下方には、感光体5の表面を露光する露光装置9が配設されている。露光装置9は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を有し、画像データに基づいて各感光体5の表面へレーザー光を照射するようになっている。
また、各作像部4Y,4M,4C,4Kの上方には、転写装置3が配設されている。転写装置3は、中間転写体としての中間転写ベルト30と、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ31と、二次転写手段としての二次転写ローラ36と、二次転写バックアップローラ32と、クリーニングバックアップローラ33と、テンションローラ34、ベルトクリーニング装置35を備える。
中間転写ベルト30は、無端状のベルトであり、二次転写バックアップローラ32、クリーニングバックアップローラ33及びテンションローラ34によって張架されている。ここでは、二次転写バックアップローラ32が回転駆動することによって、中間転写ベルト30は図の矢印で示す方向に周回走行(回転)するようになっている。
4つの一次転写ローラ31は、それぞれ、各感光体5との間で中間転写ベルト30を挟み込んで一次転写ニップを形成している。また、各一次転写ローラ31には、図示しない電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が各一次転写ローラ31に印加されるようになっている。
二次転写ローラ36は、二次転写バックアップローラ32との間で中間転写ベルト30を挟み込んで二次転写ニップを形成している。また、上記一次転写ローラ31と同様に、二次転写ローラ36にも図示しない電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ36に印加されるようになっている。
ベルトクリーニング装置35は、中間転写ベルト30に当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードを有する。このベルトクリーニング装置35から伸びた図示しない廃トナー移送ホースは、図示しない廃トナー収容器の入り口部に接続されている。
プリンタ本体の上部には、ボトル収容部2が設けられており、ボトル収容部2には、補給用のトナーを収容する4つのトナーボトル2Y,2M,2C,2Kが着脱可能に装着されている。各トナーボトル2Y,2M,2C,2Kと上記各現像装置7との間には、図示しない補給路が設けてあり、この補給路を介して各トナーボトル2Y,2M,2C,2Kから各現像装置7へトナーが補給されるようになっている。
一方、プリンタ本体の下部には、記録媒体としての用紙Pを収容した給紙トレイ10や、給紙トレイ10から用紙Pを搬出する給紙ローラ11等が設けてある。なお、記録媒体には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート等が含まれる。また、図示しないが、手差し給紙機構が設けてあってもよい。
プリンタ本体内には、用紙Pを給紙トレイ10から二次転写ニップを通過させて装置外へ排出するための搬送路Rが配設されている。搬送路Rにおいて、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向上流側には、搬送タイミングを計って用紙Pを二次転写ニップへ搬送するタイミングローラとしての一対のレジストローラ12が配設されている。
また、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向下流側には、用紙Pに転写された未定着画像を定着するための定着装置20が配設されている。さらに、定着装置20よりも搬送路Rの用紙搬送方向下流側には、用紙を装置外へ排出するための一対の排紙ローラ13が設けられている。また、プリンタ本体の上面部には、装置外に排出された用紙をストックするための排紙トレイ14が設けてある。
続いて、図1を参照して、本実施形態に係るプリンタの基本的動作について説明する。作像動作が開始されると、各作像部4Y,4M,4C,4Kにおける各感光体5が図示しない駆動装置によって図の時計回りに回転駆動され、各感光体5の表面が帯電装置6によって所定の極性に一様に帯電される。帯電された各感光体5の表面には、露光装置9からレーザー光がそれぞれ照射されて、各感光体5の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体5に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように各感光体5上に形成された静電潜像に、各現像装置7によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
また、作像動作が開始されると、二次転写バックアップローラ32が図の反時計回りに回転駆動し、中間転写ベルト30を図の矢印で示す方向に周回走行させる。また、各一次転写ローラ31に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加されることによって、各一次転写ローラ31と各感光体5との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。
その後、各感光体5の回転に伴い、感光体5上の各色のトナー画像が一次転写ニップに達したときに、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、各感光体5上のトナー画像が中間転写ベルト30上に順次重ね合わせて転写される。かくして、中間転写ベルト30の表面にフルカラーのトナー画像が担持される。また、中間転写ベルト30に転写しきれなかった各感光体5上のトナーは、クリーニング装置8によって除去される。そして、各感光体5の表面が図示しない除電装置によって除電され、表面電位が初期化される。
プリンタの下部では、給紙ローラ11が回転駆動を開始し、給紙トレイ10から用紙Pが搬送路Rに送り出される。搬送路Rに送り出された用紙Pは、レジストローラ12によって搬送が一旦停止される。
その後、所定のタイミングでレジストローラ12の回転駆動を開始し、中間転写ベルト30上のトナー画像が二次転写ニップに達するタイミングに合わせて、用紙Pを二次転写ニップへ搬送する。このとき、二次転写ローラ36には、中間転写ベルト30上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。そして、この転写電界によって、中間転写ベルト30上のトナー画像が用紙P上に一括して転写される。また、このとき用紙Pに転写しきれなかった中間転写ベルト30上の残留トナーは、ベルトクリーニング装置35によって除去され、除去されたトナーは図示しない廃トナー収容器へと搬送され回収される。
その後、用紙Pは定着装置20へと搬送され、定着装置20によって用紙P上のトナー画像が当該用紙Pに定着される。そして、用紙Pは、排紙ローラ13によって装置外へ排出され、排紙トレイ14上にストックされる。
以上の説明は、用紙上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つの作像部4Y,4M,4C,4Kのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つの作像部を使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
図2は、本実施形態の定着装置の断面図である。以下、図2に基づき、定着装置20の構成について説明する。図2に示すように、定着装置20は、定着部材としての定着ベルト21と、定着ベルト21の外周面に当接する対向部材としての加圧ローラ22と、定着ベルト21を加熱する加熱源としてのハロゲンヒータ23と、定着ベルト21の内周側から定着ベルト21を介して加圧ローラ22に当接してニップ部Nを形成するニップ形成部材24と、ニップ形成部材24を支持する支持部材としてのステー25と、ハロゲンヒータ23からの熱を定着ベルト21へ反射する反射部材26と、ハロゲンヒータ23からの熱を遮蔽する遮蔽部材27と、定着ベルト21の温度を測定する第1の温度測定手段としての温度センサ28aと、加圧ローラ22の温度を測定する第2の温度測定手段としての温度センサ28bと、遮蔽部材27の回転角を制御する制御部(図示省略)等を備える。
上記定着ベルト21は、薄肉で可撓性を有する無端状のベルト部材(フィルムも含む)で構成されている。詳しくは、定着ベルト21は、ニッケルもしくはSUS等の金属材料又はポリイミド(PI)などの樹脂材料で形成された内周側の基材と、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などで形成された外周側の離型層によって構成されている。また、基材と離型層との間に、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等のゴム材料で形成された弾性層を介在させてもよい。
また、弾性層が無い場合は、熱容量が小さくなり定着性が向上するが、未定着トナーを押しつぶして定着させるときにベルト表面の微小な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部に光沢ムラが生じる可能性がある。これを防止するには、厚さ100μm以上の弾性層を設けることが望ましい。厚さ100μm以上の弾性層を設けることで、弾性層の弾性変形により微小な凹凸を吸収することができるので、光沢ムラの発生を回避することができるようになる。
本実施形態では、定着ベルト21の低熱容量化を図るために、定着ベルト21を薄くかつ小径化している。具体的には、定着ベルト21を構成する基材、弾性層、離型層のそれぞれの厚さを、20〜50μm、100〜300μm、10〜50μmの範囲に設定し、全体としての厚さを1mm以下に設定している。また、定着ベルト21の直径は、20〜40mmに設定している。さらに低熱容量化を図るためには、望ましくは、定着ベルト21全体の厚さを0.2mm以下にするのがよく、さらに望ましくは、0.16mm以下の厚さとするのがよい。また、定着ベルト21の直径は、30mm以下とするのが望ましい。
上記加圧ローラ22は、芯金22aと、芯金22aの表面に設けられた発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等から成る弾性層22bと、弾性層22bの表面に設けられたPFA又はPTFE等から成る離型層22cによって構成されている。加圧ローラ22は、図示しない加圧手段によって定着ベルト21側へ加圧され定着ベルト21を介してニップ形成部材24に当接している。この加圧ローラ22と定着ベルト21とが圧接する箇所では、加圧ローラ22の弾性層22bが押しつぶされることで、所定の幅のニップ部Nが形成されている。なお、定着部材と対向部材は、互いに圧接する場合に限らず、加圧を行わず単に接触させるだけの構成とすることも可能である。
また、加圧ローラ22は、プリンタ本体に設けられた図示しないモータ等の駆動源によって回転駆動するように構成されている。加圧ローラ22が回転駆動すると、その駆動力がニップ部Nで定着ベルト21に伝達され、定着ベルト21が従動回転するようになっている。
本実施形態では、加圧ローラ22を中実のローラとしているが、中空のローラであってもよい。その場合、加圧ローラ22の内部にハロゲンヒータ等の加熱源を配設してもよい。また、弾性層22bはソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ22の内部に加熱源が無い場合は、スポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト21の熱が奪われにくくなるのでより望ましい。
上記ハロゲンヒータ23は、定着ベルト21の内周側で、かつ、ニップ部Nの用紙搬送方向の上流側に配設されている。詳しくは、図2において、ニップ部Nの用紙搬送方向の中央Qと、加圧ローラ22の回転中心Oを通る仮想直線をLとすると、ハロゲンヒータ23はこの仮想直線Lよりも用紙搬送方向の上流側(図2の下側)に配設されている。ハロゲンヒータ23は、プリンタ本体に設けられた電源部により出力制御されて発熱するように構成されており、その出力制御は、上記温度センサ28aによる定着ベルト21の表面温度の検知結果に基づいて行われる。このようなヒータ23の出力制御によって、定着ベルト21の温度(定着温度)を所望の温度に設定できるようになっている。
本実施形態では、ハロゲンヒータ23は2本設けられているが、プリンタで使用する用紙のサイズ等に応じて、ハロゲンヒータ23の本数を1本又は3本以上としてもよい。ただし、ハロゲンヒータ23自体のコストや、定着ベルト21の内周のスペース等を考慮すると、ハロゲンヒータ23は2本以下とすることが望ましい。また、定着ベルト21を加熱する加熱源は輻射熱により加熱を行うものであり、ハロゲンヒータ以外に、抵抗発熱体、又はカーボンヒータ等を用いることも可能である。
上記ニップ形成部材24は、ベースパッド241と、ベースパッド241の定着ベルト21と対向する面に設けられた低摩擦性の摺動シート240とを有する。ベースパッド241は、定着ベルト21の軸方向又は加圧ローラ22の軸方向に渡って長手状に配設されている。ベースパッド241が加圧ローラ22の加圧力を受けることで、ニップ部Nの形状が決まる。本実施形態では、ニップ部Nの形状が平坦状であるが、凹形状やその他の形状としてもよい。摺動シート240は、定着ベルト21が回転する際の摺動摩擦を低減するために設けられている。なお、ベースパッド241自体が低摩擦性の部材で形成されている場合は、摺動シート240を有しない構成としてもよい。
ベースパッド241は、耐熱温度200℃以上の耐熱性部材で構成されており、トナー定着温度域で熱によるニップ形成部材24の変形を防止し、安定したニップ部Nの状態を確保して、出力画質の安定化を図っている。ベースパッド241の材料としては、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの一般的な耐熱性樹脂を用いることが可能である。
また、ベースパッド241は、ステー25によって固定支持されている。これにより、加圧ローラ22による圧力でニップ形成部材24に撓みが生じるのを防止し、加圧ローラ22の軸方向に渡って均一なニップ幅が得られるようにしている。ステー25は、ニップ形成部材24の撓み防止機能を満足するために、ステンレスや鉄等の機械的強度が高い金属材料で形成することが望ましい。また、ベースパッド241も、強度確保のためにある程度硬い材料で構成されていることが望ましい。ベースパッド241の材料としては、液晶ポリマー(LCP)等の樹脂や、金属、あるいはセラミックなどを適用することができる。
上記反射部材26は、ハロゲンヒータ23と対向するようにステー25に固定支持されている。この反射部材26によって、ハロゲンヒータ23から放射された熱(又は光)を定着ベルト21へ反射することで、熱がステー25等に伝達されるのを抑制し、定着ベルト21を効率良く加熱すると共に省エネルギー化を図っている。反射部材26の材料としては、アルミニウムやステンレス等が用いられる。特に、アルミニウム製の基材に輻射率の低い(反射率の高い)銀を蒸着したものを用いた場合、定着ベルト21の加熱効率を向上させることが可能である。反射部材26のハロゲンヒータ23と対向する面は、定着ベルト21の内周面に向かって広がるように形成されている。なお、図2示す反射部材26において、ハロゲンヒータ23の下方に対向する部分(定着ベルト21の周方向に沿って延びている部分)は、ハロゲンヒータ23の両端部における熱を遮蔽するために設けられているものであり、反射部材26の長手方向全体に渡って設けられているものではない。
上記遮蔽部材27は、厚さ0.1mm〜1.0mmの金属板を、定着ベルト21の内周面に沿った断面形状に形成して構成されている。図示例では、遮蔽部材27が周方向に環状ではない有端な断面形状とされ、具体的には部分円弧状の断面形状とされる。また、遮蔽部材27は、ハロゲンヒータ23の周りで回転可能とされ、本実施形態では、定着ベルト21の周方向に沿って回転可能となっている。具体的には、定着ベルト21の周方向領域において、ハロゲンヒータ23が定着ベルト21に直接対向して加熱する直接加熱領域と、ハロゲンヒータ23と定着ベルト21との間に遮蔽部材27以外の他部材(反射部材26、ステー25、ニップ形成部材24等)が介在する非直接加熱領域とがあるが、熱遮蔽する必要がある場合は、図2に示すように、遮蔽部材27を直接加熱領域側の遮蔽位置に配設する。一方、熱遮蔽の必要がない場合は、図3に示すように、遮蔽部材27を非直接加熱領域側の退避位置へ移動させ、遮蔽部材27を反射部材26やステー25の裏側へ退避させることが可能となっている。また、遮蔽部材27は耐熱性を要するため、その素材には、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属材料、又はセラミックを用いることが好ましい。
図4は、本実施形態の定着装置の斜視図である。図4に示すように、定着ベルト21の両端部には、それぞれベルト保持部材としてのフランジ部材40が挿入されており、定着ベルト21はこのフランジ部材40によって回転可能に保持されている。また、各フランジ部材40、ハロゲンヒータ23及びステー25は、定着装置20の図示しない一対の側板に固定支持されている。
図5は、遮蔽部材の支持構造を示す図である。図5に示すように、遮蔽部材27は、フランジ部材40に取り付けられた円弧状のスライド部材41を介して支持されている。具体的には、遮蔽部材27の端部に設けられた突起27aが、スライド部材41に設けられた孔部41aに挿入されることで、遮蔽部材27がスライド部材41に取り付けられている。また、スライド部材41には凸部41bが設けてあり、その凸部41bがフランジ部材40に設けられた円弧状の溝部40aに挿入されることで、スライド部材41は溝部40aに沿ってスライド移動可能となっている。これにより、遮蔽部材27は、スライド部材41と一体的に、フランジ部材40の周方向に回転移動可能となっている。また、本実施形態では、フランジ部材40及びスライド部材41は、樹脂で構成されている。
なお、図5では、片方の端部の支持構造のみ示しているが、他方の端部も同様に、スライド部材41を介して回転移動可能に保持されている。
図6は、遮蔽部材の駆動手段を示す図である。図6に示すように、本実施形態では、遮蔽部材27の駆動手段として、駆動源であるモータ42と、複数の伝達ギア43,44,45から成るギア列とを備える。ギア列のうち、一端側のギア43はモータ42に連結され、他端側のギア45はスライド部材41の周方向に設けられたギア部41cに連結されている。これにより、モータ42が駆動すると、その駆動力がギア列を介してスライド部材41に伝達され、遮蔽部材27が回転移動するようになっている。
図7は、遮蔽部材の形状とハロゲンヒータの発熱部と用紙サイズとの関係を示す図である。まず、図7に基づき、遮蔽部材27の形状について詳しく説明する。尚、以下の説明において、遮蔽部材27の回転軸方向を「軸方向」と言い、遮蔽部材27の回転方向、すなわち定着ベルト21の周方向を「周方向」と言う。
図7に示すように、本実施形態の遮蔽部材27は、ハロゲンヒータ23の軸方向一部を覆う領域に設けられた遮蔽部48と、遮蔽部48の軸方向一方に隣接して設けられた開口部50とを有する。具体的には、遮蔽部材27の軸方向両端に設けられた一対の遮蔽部48と、遮蔽部48同士を軸方向に連結する連結部49とを有する。本実施形態では、遮蔽部材27、すなわち一対の遮蔽部48および連結部49が、一枚の金属板を用いて一体に形成されている。遮蔽部48と軸方向に隣接した領域は、ハロゲンヒータ23からの輻射熱を遮蔽せずに放出する開口部50となる。本実施形態では、両遮蔽部48の軸方向間領域、詳しくは、両遮蔽部48の軸方向内側の縁および連結部49の周方向一方の縁54とで囲まれた領域が、開口部50となる。
遮蔽部48の周方向一方の縁53は、軸方向に沿って延びた直線部を有し、図示例では、周方向一方の縁53全体(後述する傾斜部52を除く領域)が直線部となる。遮蔽部48の周方向一方の縁53は、連結部49の周方向一方の縁54よりも周方向一方側に配されている。すなわち、遮蔽部材27が遮蔽位置へ回転移動する側を遮蔽側Yとすると、遮蔽部48が連結部49よりも遮蔽側Yに延びている。連結部49の周方向一方の縁54と、遮蔽部48の周方向一方の縁53とは、遮蔽部48の軸方向内側の縁(各遮蔽部48の互いに対向する内縁)により連結されている。遮蔽部48の軸方向内側の縁には、遮蔽部材27の回転方向に対して平行なストレート部51と、その回転方向に対して傾斜する傾斜部52とが形成されている。図7において、各傾斜部52はストレート部51の遮蔽側Yに連続して設けられており、互いに遮蔽側Yに向かって離れるように傾斜している。これにより、開口部50は、その遮蔽側Yに向かって、ストレート部51間で同じ幅に形成され、傾斜部52間では幅が広がるように形成されている。遮蔽部材27の周方向他方の縁55、すなわち遮蔽部48及び連結部49の周方向他方の縁は、軸方向に沿って延びる一本の直線状とされる。
次に、ハロゲンヒータの発熱部と用紙サイズとの関係について説明する。図7に示すように、本実施形態では、用紙サイズに応じて加熱領域を変更するため、各ハロゲンヒータ23の発熱部の長さや配設位置を異ならせている。2本のハロゲンヒータ23のうち、一方(図の下側)のハロゲンヒータ23の発熱部23aは長手方向中央部側に配設され、他方(図の上側)のハロゲンヒータ23の発熱部23bは長手方向両端部側にそれぞれ配設されている。この例では、中央部側の発熱部23aは、中サイズの通紙幅W2に対応した範囲に配設されており、両端部側の発熱部23bは、中サイズの通紙幅W2以上で、大サイズ及び特大サイズの通紙幅W3,W4を含む範囲に配設されている。
また、遮蔽部材27の形状と用紙サイズとの関係では、各ストレート部51が、大サイズ用紙P3(通紙幅W3)の通紙領域の端部に対して軸方向内側近傍に配設される。各傾斜部52は、定型サイズの用紙の端部を軸方向に跨ぐ位置に配設される。本実施形態では、各傾斜部52が、大サイズの用紙P3の通紙領域の端部を軸方向に跨ぐ位置に配設される。
なお、本実施形態における用紙サイズの例としては、例えば、中サイズがレターサイズ(通紙幅215.9mm)又はA4サイズ(通紙幅210mm)、大サイズがダブルレターサイズ(通紙幅279.4mm)又はA3サイズ(通紙幅297mm)、特大サイズがA3ノビ(通紙幅329mm)などが挙げられる。ただし、用紙サイズの例はこれに限定されるものではない。また、ここでいう、中サイズ、大サイズ、特大サイズは、各サイズの相対的な関係を示すものであり、小サイズ、中サイズ、大サイズなどであっても構わない。
以下、図2を参照しつつ、本実施形態に係る定着装置の基本動作について説明する。プリンタ本体の電源スイッチが投入されると、ハロゲンヒータ23に電力が供給されると共に、加圧ローラ22が図2中の時計回りに回転駆動を開始する。これにより、定着ベルト21は、加圧ローラ22との摩擦力によって、図2中の反時計回りに従動回転する。
その後、上述の画像形成工程により未定着のトナー画像Tが担持された用紙Pが、不図示のガイド板に案内されながら図2の矢印A1方向に搬送されて、圧接状態にある定着ベルト21及び加圧ローラ22のニップ部Nに送入される。そして、ハロゲンヒータ23によって加熱された定着ベルト21による熱と、定着ベルト21と加圧ローラ22との間の加圧力とによって、用紙Pの表面にトナー画像Tが定着される。
トナー画像Tが定着された用紙Pは、ニップ部Nから図2中の矢印A2方向に搬出される。このとき、用紙Pの先端が図示しない分離部材の先端に接触することにより、用紙Pが定着ベルト21から分離される。その後、分離された用紙Pは、上述のように、排紙ローラによって機外に排出され、排紙トレイにストックされる。
次に、用紙サイズごとのハロゲンヒータの制御と遮蔽部材の制御について説明する。まず、図7に示す中サイズ用紙P2を通紙する場合は、中央部側の発熱部23aのみを発熱させることにより、中サイズの通紙幅W2に対応した範囲のみを加熱する。また、特大サイズ用紙P4を通紙する場合は、中央部側の発熱部23aに加え、両端部側の発熱部23bも発熱させ、特大サイズの通紙幅W4に対応した範囲を加熱する。
ところが、本実施形態では、ハロゲンヒータ23の加熱範囲は中サイズの通紙幅W2と特大サイズの通紙幅W4にしか対応していない。このため、大サイズ用紙P3を通紙する場合、中央部側の発熱部23aのみを発熱させると、必要な範囲が加熱されず、中央部側と両端部側の各発熱部23a,23bを発熱させると、加熱される範囲が大サイズの通紙幅W3を超えてしまう。仮に、中央部側の両端部側の各発熱部23a,23bを発熱させた状態で、そのまま大サイズ用紙P3を通紙すると、大サイズの通紙幅W3よりも外側の非通紙領域において定着ベルト21の温度が過度に上昇するといった問題がある。
そこで、本実施形態では、大サイズ用紙P3を通紙する際、図8に示すように、遮蔽部材27を遮蔽位置へ移動させる。これにより、両端部側の遮蔽部48によって大サイズの通紙幅W3の端部近傍から外側の範囲を覆うことができるので、非通紙領域において定着ベルト21の温度上昇を抑えることができる。
また、本実施形態では、遮蔽部48が周方向で有端な形状であるため、遮蔽部材27を回転させることにより、遮蔽部48によってハロゲンヒータ23から定着ベルト21への輻射熱を遮蔽する範囲(遮蔽範囲)を調整できる。すなわち、遮蔽部材27を遮蔽側Yへ回転させると、遮蔽部48による遮蔽範囲を大きくすることができ、遮蔽部材27を開放側(遮蔽側Yと反対側)に回転させると、遮蔽部48による遮蔽範囲を小さくすることができる。
さらに、本実施形態では、遮蔽部48に傾斜部52を設けているので、遮蔽部材27の回転角を変更することにより、遮蔽範囲、特に遮蔽部48によって発熱部23bと定着ベルト21との最短経路を遮る範囲を無段階に調整することが可能である。本実施形態では、図9に示すように、用紙サイズに応じた複数の回転角が設定される。具体的には、大サイズ用紙の端部を跨ぐ軸方向位置に設けられた傾斜部52が、ハロゲンヒータ23の両端部側の発熱部23b(図9では中心のみを示す)を周方向に跨ぐ角度領域において、遮蔽部材27の回転角が複数の段階に分けて設定される。図示例では、遮蔽部材27の回転角が第1段階P1、第2段階P2、および第3段階P3の3段階に分けて設定される。尚、用紙サイズに応じて設定する回転角は3段階に限らず、2段階、あるいは4段階以上としてもよい。
ところで、例えば図8に一点鎖線で示すように、遮蔽部48の周方向一方の縁53’全体を軸方向に対して傾斜させれば、遮蔽範囲を調整可能な領域を広げることができる。しかし、この場合、傾斜した縁53’から加熱源からの輻射熱が漏れるため、遮蔽部48による輻射熱の遮蔽が不十分となり、定着ベルト21の過昇温を招く恐れがある。従って、遮蔽部48の回転方向一方の縁53には、図8に実線で示すように軸方向に沿って延びた直線部を設けることが好ましい。
また、例えば図8に二点鎖線で示すように、遮蔽部48の傾斜部52’を軸方向内側に延ばすと、開口部50の面積が減じられるため、定着ベルト21の通紙領域の加熱が不十分となる虞がある。従って、遮蔽部48の軸方向一方の縁(開口部50側の縁)にはストレート部51を設け、開口部50の面積を確保することが好ましい。
定着処理を終えた場合、又は、定着ベルト21の非通紙領域の温度が所定の閾値以下になった場合など、熱遮蔽する必要がなくなった場合は、遮蔽部材27を退避位置へ戻す。このように、必要に応じて遮蔽部材27を遮蔽位置に移動させることで、通紙速度を落としたりすることなく良好な定着を行うことができる。尚、遮蔽部材27が遮蔽位置(図2参照)および退避位置(図3参照)の何れの場合でも、遮蔽部材27の連結部49は非直接加熱領域に配される。従って、連結部49がハロゲンヒータ23の輻射熱を直接受けることはない。
図示例では、遮蔽部材27の回転中心が定着ベルト21の周方向断面の中央寄りに配設され、ハロゲンヒータ23の各中心(ハロゲンヒータ23が有するフィラメントの中心)が、遮蔽部材27の回転中心よりも定着ベルト21の内周面側に配設している。これにより、遮蔽位置(図2参照)では遮蔽部材27はハロゲンヒータ23に対して近づき、反対に、退避位置(図3参照)では遮蔽部材27はハロゲンヒータ23に対して遠ざかる。従って、退避位置において遮蔽部材27はハロゲンヒータ23からの熱の影響を受けにくくなるので、遮蔽部材27自身の温度上昇を抑制することが可能となる。
また、上記のように、定着ベルト21内にニップ形成部材24が設けられている構成では、ニップ部N側への遮蔽部材27の退避は困難となる。そのため、上記実施形態では、ハロゲンヒータ23を、ニップ部Nの用紙搬送方向の上流側に配設し、遮蔽部材27をその上流側の遮蔽位置と下流側の退避位置との間で移動可能に構成している。これにより、遮蔽部材27をニップ形成部材24と干渉することがなく退避させることができると共に、遮蔽部材27の移動ストロークも大きく確保することができる。また、このような遮蔽部材27の移動ストロークを大きく確保できる構成は、上記の如く、低熱容量化のために定着ベルト21を小径化した構成においては、特に定着ベルト21の内側スペースが小さくなるので好適である。
なお、定着ベルト21の温度を検知する温度センサ28aは、定着ベルト21の軸方向における温度上昇が顕著な領域に配設することが望ましい。本実施形態の場合は、特に、大サイズの通紙幅W3よりも外側の領域において温度上昇しやすいので、大サイズの通紙幅W3よりも外側に温度センサ28aを配設することが望ましい(図7参照)。また、本実施形態では、2本のハロゲンヒータ23のうち、上記温度上昇に大きく起因するのは、両端部側に発熱部23bを有するハロゲンヒータ23であるので、このハロゲンヒータ23の発熱部23bと対向する位置に温度センサ28aを配設することが望ましい。
次に、遮蔽部材27の回転角の制御の一例について、図10のフロー図を用いて説明する。尚、本実施形態では、遮蔽部材27の初期位置が図3に示す退避位置である場合を示す。
まず、印刷要求を受け付け、用紙サイズ(本実施形態ではA3サイズ)や印刷枚数等の情報が制御部に入力される(ステップS1)。そして、印刷要求を受け付けた直後に、温度センサ28bで測定した加圧ローラ22の表面の温度に基づいて、定着装置の蓄熱状態を判別する(ステップS2)。具体的には、加圧ローラ22の温度が所定温度(例えば80℃)以下であるか否かにより蓄熱状態を判別する。加圧ローラ22の温度が80℃以下である場合は、定着装置の蓄熱が不十分であると判別され、遮蔽部材27は動かされずに初期位置(退避位置)に配された状態で維持される(ステップS3)。一方、加圧ローラ22の温度が80℃を超えている場合は、定着装置が蓄熱されていると判別され、遮蔽部材27が遮蔽位置まで回転される(ステップS4)。このとき、遮蔽部材27は、A3サイズの用紙幅に対応する設定角度群(図9参照)のうち、第1段階P1の回転角に配される。尚、加圧ローラ22の温度測定や蓄熱状態の判別は印刷要求受付の直後に行われるが、蓄熱状態の判別結果に基づく遮蔽部材27の回転は、定着ベルト21の表面の温度が所定の定着温度に達した後、ニップ部Nに通紙され始めるまでの間に行われる。
このように、ニップ通紙前は、定着装置の蓄熱状態(具体的には加圧ローラ22の温度)をトリガーとして遮蔽部材27が回転され、その回転角は、用紙サイズ及び蓄熱状態(加圧ローラ22の温度)に基づいて決定される。
その後、ニップ部Nへの通紙が開始される(ステップS5)。ニップ通紙開始後、印刷が行われている間、常に定着ベルト21の温度が監視される。具体的には、定着ベルト21の温度が第1設定温度(例えば200℃)以上であるか否かが監視される(ステップS6)。そして、定着ベルト21の温度が200℃以上であれば、遮蔽部材27が、A3サイズに対応する複数の回転角のうち、第1段階P1の回転角に配される(ステップS8)。一方、定着ベルト21の温度が200℃未満であれば、遮蔽部材27は回転されない(ステップS9)。尚、上記の蓄熱状態、あるいは後述する印刷時間に基づいて、既に遮蔽部材27が第1段階P1の回転角に配されている場合は、定着ベルト21の温度が200℃以上であっても、遮蔽部材27は回転されずに第1段階P1の回転角で維持される。
本実施形態では、定着ベルト21の温度に加えて、印刷時間(例えば、給紙開始からの時間)も監視される。具体的には、印刷時間が第1設定時間を経過したか否かを監視される(ステップS7)。そして、印刷時間が第1設定時間(例えば10秒)を経過したら、遮蔽部材27が、A3サイズに対応する複数の回転角のうち、第1段階P1の回転角に配される(ステップS8)。一方、印刷時間が10秒を経過していなければ、遮蔽部材27は回転されない(ステップS9)。尚、上記の蓄熱状態、あるいは定着ベルト21の温度に基づいて、既に遮蔽部材27が第1段階P1の回転角に配されている場合は、通紙時間が10秒を経過しても、遮蔽部材27は回転されずに第1段階P1の回転角で維持される。
その後、印刷が継続され、定着ベルト21の温度が第2設定温度(例えば210℃)以上であるか否かが監視される(ステップS10)と共に、印刷時間が第2設定時間(例えば20秒)を経過したか否かが監視される(ステップS11)。定着ベルト21の温度が第2設定温度以上、あるいは、印刷時間が第2設定時間を経過したら、遮蔽部材27が第2段階P2の回転角に配される(ステップS12)。一方、定着ベルト21の温度が第2設定温度未満であり、且つ、印刷時間が20秒経過していなければ、遮蔽部材27は回転されない(ステップS13)。
その後、印刷が継続され、定着ベルト21の温度が第3設定温度(例えば220℃)以上であるか否かが監視される(ステップS14)と共に、印刷時間が第2設定時間(例えば20秒)を経過したか否かが監視される(ステップS15)。定着ベルト21の温度が第2設定温度以上、あるいは、印刷時間が第2設定時間を経過したら、遮蔽部材27が第2段階P2の回転角に配される(ステップS16)。一方、定着ベルト21の温度が第2設定温度未満であり、且つ、印刷時間が20秒経過していなければ、遮蔽部材27は回転されない(ステップS17)。
このように、ニップ通紙開始から印刷終了までの間(すなわち印刷中)は、遮蔽部材27は定着ベルト21の温度をトリガーとして回転され、その回転角は、用紙サイズと定着ベルト21の温度とに基づいて決定される。
以上のステップを経て、印刷が終了する(ステップS18)。尚、入力されたジョブが全て完了したら、上記のステップの途中であっても印刷は終了する。
例えば、用紙サイズのみに基づいて遮蔽部材27の回転角を制御した場合、用紙サイズが制御部に入力されたら、実際の定着ベルト21や加圧ローラ22の温度に関わらず、入力された用紙サイズに応じた回転角に遮蔽部材27が配される。この場合、例えば長時間停止後の印刷開始時のように定着装置がほぼ室温となっているとき、定着ベルト21が十分に温まらない状態で遮蔽部材27が回転してハロゲンヒータ23の輻射熱を遮蔽しまい、ウォームアップ時間が長くなる虞がある。また、一旦、遮蔽部材27が用紙サイズに応じた回転角に配された後は、印刷終了まで遮蔽部材27の回転角は変更されないため、何らかの事情により定着ベルト21の温度が上昇した場合でも、遮蔽部材27を回転させることはできない。
そこで、上記の定着装置では、ニップ通紙前は定着装置の蓄熱状態、すなわち加圧ローラ22の温度をトリガーとして遮蔽部材27を回転させ、印刷中は定着ベルト21の温度をトリガーとして遮蔽部材27を回転させている。これにより、定着ベルト21又は加圧ローラ22の実際の加熱状況に基づいて、遮蔽部材27を適切なタイミングで回転させてハロゲンヒータ23の熱を遮蔽することができる。
また、上記の定着装置では、温度センサ28aは定着ベルト21の軸方向一部に設けられるため、温度センサ28aが設けられていない軸方向領域における温度は監視できない。また、印刷中、定着ベルト21は急激に温度上昇することがあり、このような場合に温度センサ28aで定着ベルト21の温度を検知してから遮蔽部材27を回転させていては遅すぎる場合がある。これらの場合、定着ベルト21の温度のみをトリガーとして遮蔽部材27を回転させると、遮蔽部材27を適切なタイミングで回転させることができず、定着ベルト21の端部の過昇温を招く恐れがある。そこで、上記の定着装置では、定着ベルト21の温度に加えて、印刷時間をトリガーとして遮蔽部材27の回転を行っている。すなわち、予め、過去の印刷データや実験結果から、当該用紙サイズの印刷時間と定着ベルト21の温度との関係を取得し、この関係に基づいて、遮蔽部材27を回転させるべき印刷時間を設定する。このように、定着ベルト21の温度及び印刷時間をトリガーとして遮蔽部材27を回転させることにより、定着ベルト21の温度に基づく監視のみでは不十分な場合であっても、遮蔽部材27を適切なタイミングで回転させてハロゲンヒータ23の熱を遮蔽することができる。
また、上記の定着装置では、遮蔽部材27の回転角を、用紙サイズと加圧ローラ22又は定着ベルト21の温度とに基づいて決定している。これにより、定着ベルト21の温度が適切な範囲となるように、遮蔽部材27による輻射熱の遮蔽範囲を設定できるため、定着ベルト21の過昇温を確実に防止できる。特に、本実施形態では、遮蔽部材27に傾斜部52を設けることで、遮蔽範囲を微調整することができるため、加圧ローラ22又は定着ベルト21の温度に基づいて遮蔽部材27を最適な回転角に配することができる。さらに、用紙サイズごとに設定された複数の回転角の中から、加圧ローラ22又は定着ベルト21の温度に基づいて一の回転角を選択することで、簡素な制御で回転角を決定することができる。
これに加えて、上記の定着装置では、用紙サイズ及び印刷時間に基づいて遮蔽部材27を決定している。これにより、印刷中、定着ベルト21の温度による遮蔽部材27の回転角の決定ができない場合でも、印刷時間から定着ベルト21の加熱状態を推定することで、遮蔽部材27の回転角を適切に決定することができる。
尚、上記の定着装置では、印刷中において、定着ベルト21の温度に基づいて遮蔽部材27の回転角を制御しているが、これに限らず、加圧ローラ22の温度に基づいて遮蔽部材27の回転角を制御してもよい(図10の括弧書き参照)。加圧ローラ22は定着ベルト21と当接しながら回転するため、加圧ローラ22の温度から定着ベルト21の温度を推定することができるからである。これにより、画像形成装置内部のレイアウト上の制約等の理由から、定着ベルト21の温度を測定する温度センサ28aを配置することが困難な場合であっても、温度センサ28bによる加圧ローラ22の測定温度に基づいて、遮蔽部材27を回転させるタイミング及び回転角を制御することができる。この場合、加圧ローラ22の温度を測定する温度センサ28bは、上記の温度センサ28aと同様の軸方向位置、すなわち、大サイズの通紙幅W3よりも外側に配設することが望ましい(図7参照)。
また、上記の実施形態では、用紙サイズ及び印刷時間に基づいて印刷中における遮蔽部材27の回転角を決定している(ステップS7、S11、S15)が、これに加えて、あるいはこれに換えて、用紙サイズ及び印刷枚数に基づいて印刷中における遮蔽部材27の回転角を決定してもよい。すなわち、予め、過去の印刷データや実験結果から、当該用紙サイズの印刷枚数と定着ベルト21の温度との関係を取得し、この関係に基づいて、遮蔽部材27を回転させるべき印刷枚数を設定する。そして、実際の印刷枚数が予め設定された印刷枚数を超えたら、その印刷枚数に応じた回転角に遮蔽部材27を配する。
また、以上では、遮蔽部材27を遮蔽側Yに回転させる場合を説明したが、定着ベルト21又は加圧ローラ22の温度に基づいて、遮蔽部材27を開放側(遮蔽側Yと反対側)に回転させてもよい。具体的には、印刷中において、定着ベルト21又は加圧ローラ22が所定温度以下であった場合に、遮蔽部材27を開放側に回転させることで、ハロゲンヒータ23から定着ベルト21への輻射熱を増大させて、定着ベルト21を早期に所望の温度(例えば定着温度)まで昇温することができる。
図11に、遮蔽部材の他の実施形態を示す。図11に示す遮蔽部材27では、両端部側の遮蔽部48が、それぞれ2つの段差部を有する形状に形成されている。具体的には、各遮蔽部48は、長手方向幅の大きい第1遮蔽部48bと、長手方向幅の小さい第2遮蔽部48aとで構成されている。第1遮蔽部48b同士は、連結部49を介して連結されており、第2遮蔽部48aは、第1遮蔽部48bの軸方向外側に連続して設けられている。第2遮蔽部48aの周方向一方の縁53aは、第1遮蔽部48bの周方向一方の縁53bよりも周方向一方側(遮蔽側Y)に設けられ、第1遮蔽部48bの周方向一方の縁53bは、連結部49の周方向一方の縁54よりも周方向一方側(遮蔽側Y)に設けられる。また、第2遮蔽部48aの互いに対向する内縁、及び第1遮蔽部48bの互いに対向する内縁には、傾斜部52a,52bが形成され、図示例では両内縁が傾斜部52a,52bのみで構成されている。一対の遮蔽部48bの内縁(傾斜部52b)および周方向一方の縁53bと、一対の第2遮蔽部48aの内縁(傾斜部52a)と、連結部49の周方向一方の縁54とで囲まれた領域が開口部50となる。
図11に示す実施形態では、小サイズ用紙P1、中サイズ用紙P2、大サイズ用紙P3及び特大サイズ用紙P4の少なくとも4種類の用紙を用いる。この実施形態における用紙サイズの例としては、例えば、小サイズがはがきサイズ(通紙幅100mm)、中サイズがA4サイズ(通紙幅210mm)、大サイズがA3サイズ(通紙幅297mm)、特大サイズがA3ノビ(通紙幅329mm)などが挙げられる。ただし、用紙サイズの例はこれに限定されるものではない。
ここで、小サイズ用紙P1の通紙幅W1は、中央部側の発熱部23aの長さよりも小さい範囲となっている。また、遮蔽部材27の形状との関係では、第1遮蔽部48bの各傾斜部52bが、小サイズの通紙幅W1の端部を跨ぐ位置に配設され、第2遮蔽部48aの各傾斜部52aは、大サイズの通紙幅W3の端部を跨ぐ位置に配設されている。なお、小サイズ以外の用紙サイズ(中、大、特大)と、各発熱部23a,23bとの位置関係は、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
小サイズ用紙P1を通紙する場合、中央部側の発熱部23aのみを発熱させる。しかし、この場合、中央部側の発熱部23aで加熱される範囲は、小サイズの通紙幅W1を超えてしまうので、図12に示すように、遮蔽部材27を遮蔽位置に移動させる。これにより、両第1遮蔽部48bによって小サイズの通紙幅W1の端部近傍から外側の範囲を覆うことができるので、非通紙領域において定着ベルト21の温度上昇を抑えることができる。
なお、その他のサイズの用紙(中、大、特大)を通紙する際のハロゲンヒータ23と遮蔽部材27の制御は、上記実施形態と同様である。この場合、上記実施形態における遮蔽部48としての機能は、第2遮蔽部48aが果たす。
また、図11に示す実施形態の場合も、上記実施形態の遮蔽部48と同様に、第2遮蔽部48aと第1遮蔽部48bにそれぞれ傾斜部52a,52bを設けているので、遮蔽部材27の回転位置を変更することで、各遮蔽部48a,48bによって各発熱部23a,23bを覆う範囲を調整することが可能である。
本発明は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。上記実施形態では、定着ベルトを用いた定着装置に本発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、定着ベルトの代わりに中空(筒状)又は中実の定着ローラを用いた構成にも本発明を適用することは可能である。また、遮蔽部材の形状は、上述の実施形態に限定されることはない。使用する紙サイズに応じて、遮蔽部材が3つ以上の段差部を有する形状に形成してもよい。
また、上記の実施形態では、遮蔽部材27を退避位置(図3参照)に配したとき、遮蔽部材27の一部が直接加熱領域に配された状態となっているが、これに限らず、遮蔽部材27の形状や回転ストローク、あるいはステー25や反射部材26の形状を工夫することで、遮蔽部材27を退避位置に配したときに遮蔽部材27全体が非直接加熱領域に配されるようにしてもよい。この場合、退避位置では遮蔽部材27が加熱されないため、加熱による変形や劣化をより確実に防止できる。
また、本発明に係る定着装置を搭載する画像形成装置も、図1に示すようなプリンタに限らず、複写機、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等とすることが可能である。