本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。まず、水素含有水を生成するために用いる電極について説明する。
<水素含有水生成用電極>
図1は、本実施形態に係る水素含有水生成用電極を示す斜視図である。水素含有水生成用電極10は、水の電気分解作用を利用して、水道水等の原水から、水素を含有する水である水素含有水を生成する。水素含有水は、アルカリ性を示す水である。図1に示すように、水素含有水生成用電極10は、陽極11と、陰極12と、絶縁体13とを有する。陽極11及び陰極12は、いずれも筒状の導電体である。本実施形態において、陽極11及び陰極12の形状は、いずれも円筒形状であるが、これに限定されるものではないが筒状であることが好ましい。絶縁体13は、陽極11の外周部に設けられて、陽極11と接している。陰極12は、絶縁体13の外周部に設けられて絶縁体13と接している。すなわち、絶縁体13は、陽極11と、陽極11の外側に設けられた陰極12との間に配置されて、陽極11及び陰極12と接している。陽極11、陰極12及び絶縁体13は、いずれも網状の部材である。本実施形態において、絶縁体13は、陽極11及び陰極12と接触しているが、必ずしも接触していなくてもよい。
陽極11は、棒状の導体である陽極用給電部材14が電気的に接続されている。陰極12は、棒状の導体である陰極用給電部材15が電気的に接続されている。陽極用給電部材14は、電源(直流電源)20の陽極と電気的に接続されている。陰極用給電部材15は、電源20の陰極と電気的に接続されている。このような構造により、陽極11は、電源20の陽極と陽極用給電部材14を介して電気的に接続され、陰極12は、電源20の陰極と陰極用給電部材15を介して電気的に接続される。
本実施形態において、水素含有水生成用電極10には、陽極用給電部材14が取り付けられている側とは反対側に、陽極用給電部材14と同じ形状の陽極用支持部材を備えるようにしてもよい。水素含有水生成用電極10には、陰極用給電部材15が取り付けられている側とは反対側に、陰極用給電部材15と同じ形状の陰極用支持部材を備えるようにしてもよい。陽極用支持部材、陰極用支持部材は、陽極用給電部材14及び陰極用給電部材15と同一の材料であるが、このようなものに限定されない。
図1に示すように、水素含有水生成用電極10、より具体的には陽極11及び陰極12は、両方の端部にそれぞれ開口部としての端部側開口部10HA、10HBを有している。水素含有水生成用電極10は、端部側開口部10HA、10HBを有していなくてもよいし、少なくとも一方の端部に端部側開口部10HA又は端部側開口部10HBを有していてもよい。
陽極11は、長手方向、すなわち筒状の部材である陽極11が延びる方向に向かうスリット11SLを有している。陰極12は、長手方向、すなわち筒状の部材である陰極12が延びる方向に向かうスリット12SLを有している。図1に示すように、水素含有水生成用電極10は、陰極用給電部材15と陰極用支持部材19との間、かつ陰極12の外側部に拘束部材40が設けられている。拘束部材40は、陽極11のスリット11SL及び陰極12のスリット12SLを閉じて、陰極12と絶縁体13と陽極11とを陰極12及び陽極11の周方向から拘束する。次に、水素含有水生成用電極10の使用態様を説明する。
図2は、本実施形態に係る水素含有水生成装置を示す断面図である。図3は、本実施形態に係る水素含有水生成用電極の使用態様を示す図である。図2に示すように、水素含有水生成装置1は、上述した水素含有水生成用電極10を固定する下側基台51及び上側基台52と、水素含有水生成用電極10を囲む筒状の電解槽53と、を備えている。下側基台51は、陽極用給電部材14及び陰極用給電部材15が水密状態で貫通されることで、陽極用給電部材14及び陰極用給電部材15を介して水素含有水生成用電極10を固定する。これにより、水素含有水生成装置1は、電解槽53の外部から陽極用給電部材14及び陰極用給電部材15を介して水素含有水生成用電極10へ給電することが可能となる。
本実施形態において、上側基台52は、筒状の支持部材54を備え、筒状の支持部材54を介して、水素含有水生成用電極10を固定している。なお、上側基台52は、下側基台51と同様に直接、水素含有水生成用電極10を固定してもよい。
電解槽53は、原水が流入する流入孔HH1を備える流入管55と、水素含有水生成用電極10を通過した処理水が吐出する吐出孔HH2を備える流出管56とを備える。図2に示すように、流入孔HH1は、水素含有水生成用電極10と重なり合わない位置に配置されている。同様に、吐出孔HH2は、水素含有水生成用電極10と重なり合わない位置に配置されている。この構造により、流入孔HH1から流入する原水は、水素含有水生成用電極10へ局所的な分布を有して衝突しにくくなり、均一な電気分解が可能となる。同様に、吐出孔HH2から排出する処理水は、水素含有水生成用電極10へ局所的な分布を有して乱流を生じにくくなり、均一な電気分解が可能となる。このため、水素含有水生成用電極10へのスケールの付着状況が均一化され、水素含有水生成用電極10の寿命が延びるようになる。
図2に示すように、水素含有水生成装置1は、脱気弁112及び脱気孔111をさらに備えることがより好ましい。脱気弁112は、陽極11の円筒内部の上にある酸素が通過する孔を有する支持部材57で電解槽53に固定されている。陽極11、絶縁体13及び陰極12は、筒状であり、水素含有水生成装置1は、電気分解時に陽極11で囲まれる筒内部で発生する酸素ガス(O2)を選択的に脱気弁112から除くことができる。また、水素含有水生成装置1は、絶縁体13が陽極11において電離した水素イオンH+を通過して陰極12側に移動可能とし、陰極13の外周側に水素ガス(H2)の気泡が生成される。
本実施形態における水素含有水生成装置1は、水素含有水生成用電極10の陽極11と陰極12との間に電源20から所定の電圧(直流電圧)が印加されると、陽極11において、下記式(1)の反応が生じる。
2H2O→O2+4H++4e− ・・・(1)
また、本実施形態における水素含有水生成装置1は、水素含有水生成用電極10の陽極11と陰極12との間に電源20から所定の電圧(直流電圧)が印加されると、陰極12において、下記式(2)の反応が生じる。
4H++4e−→ 2H2・・・(2)
本実施形態における水素含有水生成装置1は、水素含有水生成用電極10の陽極11と陰極12との間に電源20から所定の電圧(直流電圧)が印加されると、陽極11及び陰極13の全体において、下記式(3)の反応が生じる。
2H2O→O2+2H2・・・(3)
以上のように、本実施形態における水素含有水生成装置1は、酸性排水の発生が抑制され、吐出孔HH2から流出する水素含有水は、例えばpH7以上7.5以下程度の中性になる。このように、陽極11で発生する電離した水素イオンH+は絶縁体13を通過して陰極12側に集まり、陰極12には水素ガス(H2)の気泡が生成される。この気泡は、直径がナノメートルオーダーの微小な気泡である。。酸素ガス(O2)は、筒状の陽極11の内側に気泡となって集まり、陽極11の内側に沿って移動して、脱気弁112及び脱気孔111を介して陽極11から電解槽53の外部に放出される。
原水Wは、例えば、浴槽に溜められた温水、飲料水タンクに溜められた飲料水又は洗浄水タンクに溜められた洗浄水等である。原水Wが浴槽に溜められた温水を例に、図3を用いて詳細に説明する。図3に示すように、入浴設備120は、水素含有水生成装置1を備え、浴槽101に貯められた原水Wを循環経路102を介して、循環させ、原水Wが浴槽101に溜められた温水に処理水を混合させる。
循環経路102は、浴槽101に貯められた原水Wの引き込み孔105と、流路106と、ポンプ108と、流量センサ109と、流路107とを備える。原水Wは、ポンプ108の吐出により、引き込み孔105、流路106、ポンプ108、水素含有水生成装置1、流路107、浴槽101の順に循環される。水素含有水生成装置1には、制御部104により制御された上述した電源20が接続されている。ポンプ108の駆動により、流量センサ109が所定流量の液体を検出すると、制御部104は、水素含有水生成用電極10の陽極11と陰極12との間に電源20から所定の電圧(直流電圧)が印加する。これにより、流路107から浴槽101に流入する処理水は、水素(H2)が含有された水素含有水を含むことになる。
図4は、本実施形態に係る水素含有水生成用電極を示す側面図である。図4は、水素含有水生成用電極10の陰極12及び絶縁体13の一部を除いた状態を示している。図5は、本実施形態に係る水素含有水生成用電極を、その中心軸を含む平面で切った断面を示す図である。図6は、図4のA−A断面図である。図7は、図6の一部を拡大して示す図である。筒状、本実施形態では円筒形状の陽極11及び陰極12が延びる方向(適宜長手方向という)Eと平行な方向が、これらの中心軸Ztである。中心軸Ztは、中心軸Ztと直交する陽極11及び陰極12の断面内の中心(重心)を通る軸である。
図4に示すように、陽極11は、側部に複数の開口11Hを有しており、陰極12は、側部に複数の開口12Hを有している。陽極11が有する複数の開口11Hは、陽極11の側部を陽極11の厚み方向に貫通している。陰極12が有する複数の開口12Hは、陰極12の側部を陰極12の厚み方向に貫通している。本実施形態において、陽極11及び陰極12は導電体で製造されており、本実施形態においては、チタン(Ti)に白金(Pt)をめっきしたものである。めっきは、例えば、白金(Pt)−イリジウム(Ir)めっきであってもよい。本実施形態において、チタンは純チタンである。陽極11及び陰極12は、チタンに白金をめっきしたものに限定されるものではないが、原水Wに溶け出さない材料(例えば、バナジウム(V))であることが好ましい。本実施形態においては、陽極11及び陰極12の両方がめっきされているが、陽極11のみをめっきし、陰極12はめっきしなくてもよい。このようにすることで、水素含有水生成用電極10の製造コストを低減することができる。
図5に示すように、陽極11と、陽極11の外側の側部(外側部)11Soと、陰極12の内側の側部(内側部)12Siとの間に介在する絶縁体13は、陽極11の外側部11Soと陰極12の内側部12Siとに接している。絶縁体13は、複数の開口13Hを有している。開口13Hは、絶縁体13をその厚み方向に貫通している。絶縁体13は、例えば、絶縁性を有する材料(例えば樹脂)の繊維で編まれた網を用いることができる。本実施形態において、絶縁体13は、電気的に中性である網状の部材である。このため、イオン交換膜と比較して低い電圧で水素含有水を生成することができ、消費電力を抑制できる。
絶縁性を有する繊維で編まれた網を絶縁体13に用いる場合、絶縁体13の厚みは、0.1mmから1mm程度とする。図6に示すように、本実施形態において、陽極11の外側部(外周部に相当)11Soと陽極12の内側部(内周部に相当)12Siとの間に設けられた絶縁体13は、陰極12のスリット12SLから陰極12の外側部(外周部に相当)12So側に端部が取り出されている。絶縁体13の端部は、陽極11のスリット11SLから陽極11の内側部(内周部に相当)11Si側に取り出されてもよい。次に、図7に示す、陽極11と陰極12との間に形成される隙間(適宜電極間隙間という)の大きさtの影響を説明する。電極間隙間の大きさtは、陽極11の外側部(外周部)11Soと陰極12の内側部(内周部)12Siとの間の距離である。
本実施形態において、電極間隙間の大きさtは、0.1mm以上1mm以下とすることが好ましい。電極間隙間の大きさtを前述した範囲とすることで、水素含有水生成用電極10が水素含有水を生成する際に、陽極11と陰極12とに印加する電圧の電位差が比較的小さくても、水素含有水生成用電極10は、十分な量の水素を発生させることができる。電極間隙間の大きさtが前述した範囲であれば、水素含有水生成用電極10に印加される電圧が比較的低電圧でも、水素含有水生成用電極10は、十分な量の水素を原水に溶存させて多くの水素を溶存した水素含有水を生成することができる。また、水素含有水に溶存する水素の量が同一であれば、水素含有水生成用電極10は、消費電力を抑制することができる。
電極間隙間の大きさtが大きい場合、十分な量の水素を原水に溶存させるためには、水素含有水生成用電極10に印加される電圧を大きくする。電極間隙間の大きさtを1mm以下、好ましくは0.6mm以下とすることで、水素含有水生成用電極10に印加される電圧が、例えば、48V程度であっても、十分な量の水素を原水に溶存させることができる。電極間隙間の大きさtを0.1mm以上、好ましくは0.2mm以上とすることで、陽極11と陰極12との間に介在する絶縁体13による陽極11と陰極12との間の絶縁を十分に確保できる。その結果として、水素含有水生成用電極10は、安定して性能を発揮することができる。また、前述したように、絶縁体13として樹脂を用いる場合、電極間隙間の大きさtを0.1mm以上、好ましくは0.2mm以上とすることで、絶縁体13の耐久性低下を抑制することもできる。本実施形態において、陽極11と陰極12との間に介在する絶縁体13は、両者に接触する。このため、電極間隙間の大きさtは、絶縁体13の厚みによって決定される。
また、絶縁体13を陽極11と陰極12との間に介在させ、両者に接触させると、絶縁体13によって、水素含有水生成用電極10の全体にわたって陽極11と陰極12との間隔を一定にしやすくなる。その結果、水素含有水生成用電極10は、陽極11と陰極12との間の電気抵抗のばらつきが抑制され、電流密度のばらつきが抑制されるので、全体から一様に水素の気泡を発生することができる。電極間隙間の大きさtを、絶縁体13の厚みと同等とすることで、絶縁体13を陽極11と陰極12との両方に接触させやすくなるので好ましい。次に、陽極用給電部材14及び陰極用給電部材15について説明する。
図4に示すように、陽極用給電部材14は、陽極11の第1の端部(一方の端部)11T1から第2の端部(他方の端部)11T2に向かって延びる棒状の導体である。図5、図6に示すように、陽極用給電部材14は、陽極11が延びる方向(長手方向)Eにおける陽極11の寸法Lの半分L/2よりも短い部分が、陽極11の内側部11Siに取り付けられる。陰極用給電部材15は、陰極12の第1の端部12T1から第2の端部12T2に向かって延びる棒状の導体である。図5、図6に示すように、陰極用給電部材15は、陰極12が延びる方向(長手方向)Eにおける陰極12の寸法Lの半分L/2よりも短い部分が、陰極12の外側部12Soに取り付けられる。陽極用給電部材14の陽極11に取り付けられる部分の長さ及び陰極用給電部材15の陰極12に取り付けられる部分の長さは、いずれもLSである。本実施形態において、LS<L/2である。
本実施形態において、陽極用給電部材14及び陰極用給電部材15は、陽極11及び陰極12と同様に、チタンに白金をめっきした部材である。陽極用給電部材14及び陰極用給電部材15は、陽極11及び陰極12と同様に、チタンに白金をめっきしたものに限定されるものではないが、原水Wに溶け出さない材料であることが好ましい。陽極用給電部材14と陰極用給電部材15とは、例えば、溶接等の接合手段によって、それぞれ、陽極11と陰極12とに接合されて、電気的に接続される。陽極用給電部材14と陰極用給電部材15とは、例えば、溶接等の接合手段によって、それぞれ、陽極11と陰極12とに接合されて、取り付けられる。
陽極用給電部材14及び陰極用給電部材15に施されるめっきは、例えば、白金(Pt)−イリジウム(Ir)めっきであってもよい。本実施形態において、陰極12はめっきを施さなくてもよいが、この場合、陰極用給電部材15もめっきを施さなくてもよい。
本実施形態においては、図5に示すように、陽極用給電部材14と陰極用給電部材15とは、それぞれ、スポット溶接によって複数箇所の接合部CPで陽極11と陰極12とに電気的に接合されている。陽極用給電部材14及び陰極用給電部材15の接合は、スポット溶接に限定されるものではない。
複数の接合部CPは、陽極用給電部材14及び陰極用給電部材15の長手方向において、一部分に偏らないように設けられている。このようにすることで、陽極用給電部材14と陰極用給電部材15とは、自身の長手方向Eの全体から電力を供給することができる。陰極用給電部材15及び陰極用支持部材19は、それぞれ別部材として、陰極12が延びる方向(長手方向)Eにおける陰極12の寸法Lの半分L/2よりも短い部分が、陰極12の外側部12Soに取り付けられる。このため、陰極12の外側部12Soにおいて、陰極用給電部材15と陰極用支持部材19との間には、これらが存在しない部分(隙間)が生じる。水素含有水生成用電極10は、陰極12の外側部12Soの陰極用給電部材15及び陰極用支持部材19が存在しない部分に拘束部材40を取り付けることができる。拘束部材40は、陰極用給電部材15及び陰極用支持部材19とは干渉しないので、陰極12、絶縁体13及び陽極11を、陰極12の外周部全体にわたって均等な力で拘束することができる。
図4、図5に示すように、陽極用給電部材14は、陽極11の第1の端部11T1から突出しており、陰極用給電部材15は、陰極12の第1の端部12T1から突出している。このようにすることで、陽極用給電部材14及び陰極用給電部材15は、図4に示すように、第1の端部11T1、12T1から突出した部分を取付対象の下側基台51に取り付けることができる。その結果、陽極11及び陰極12は、陽極用給電部材14及び陰極用給電部材15を介して下側基台51に取り付けられる。
本実施形態において、陽極用給電部材14及び陰極用給電部材15は、図4に示すように、第1の端部11T1、12T1から突出した部分に雄ねじ14S、15Sが設けられている。陽極用給電部材14と陰極用給電部材15とは、この雄ねじ14S、15Sにそれぞれねじ込まれたボルト32、32によって、下側基台51に取り付けられ、固定される。
陽極11は、第1の端部11T1が下側基台51と接し、かつ陽極用給電部材14を介してボルト32によって下側基台51に固定されている。同様に、陰極12は、第1の端部12T1が下側基台51と接し、かつ陰極用給電部材15を介してボルト32によって下側基台51に固定されている。このため、陽極11及び陰極12は、それぞれの広い範囲が下側基台51と接触するので、下側基台51に対して安定して取り付けられる。
また、それぞれのボルト32、32と、雄ねじ14S、15Sにそれぞれねじ込まれたボルト33、33とで、陽極用給電部材14と配線とを電気的に接続する端子及び陰極用給電部材15と配線とを電気的に接続する端子を固定する。このような構造により、端子、34及び陽極用給電部材14、陰極用給電部材15を介して、陽極11、陰極12に電力が印加される。
図8は、水素含有水生成用電極の変形例を示す側面図である。図8に示す水素含有水生成用電極10bにおいて、陽極用給電部材14の陽極11に取り付けられる部分の長さ及び陰極用給電部材15の陰極12に取り付けられる部分の長さは、いずれもLSである。本実施形態の変形例において、LS>L/2である。水素含有水生成用電極の変形例においても、同様の作用効果を奏する。次に、陽極11、陰極12及び絶縁体13が有する開口11H、12H、13Hについて説明する。
図9は、陽極及び陰極の一部を拡大して示す図である。図10は、陽極及び陰極が有する開口の拡大図である。図11は、図9のB−B断面図である。図12は、絶縁体の一部を拡大して示す図である。陽極11及び陰極12は、複数の線状の部分(線状部分)16が交差した、網状の部材である。複数の線状部分16で囲まれる部分が、陽極11及び陰極12の開口11H、12Hとなる。本実施形態において、陽極11及び陰極12が有する開口11H、12Hは、菱形形状である。開口11H、12Hは、一方の対角線(第1対角線)TLlが他方の対角線(第2対角線)TLsよりも長くなっている。開口11H、12Hは、第1対角線TLl上の頂部Pa、Pbでの角度が、第2対角線TLs上の頂部Pc、Pdでの角度よりも小さくなっている。
陽極11及び陰極12は、複数の開口11H、12Hを有するので、開口11H、12Hを通して電気力線を内側と外側とに回すことができる。このため、陽極11及び陰極12は、両面を電気分解に利用することができるので、水素を効率的に発生させることができる。また、陰極12は、線状部分16で囲まれた開口12Hにより、自身が生成する水素の気泡のぬれ角を小さくすることができるので、水素の気泡を小さい状態で離脱させることができる。すなわち、生成される水素と陰極12の表面との間に生じる吸着力が、点接触に近い状態になって表面張力が抑制されるので、結果として、陰極12は、水素の気泡を小さい状態で離脱させて、多くの水素の気泡を溶存した水素含有水を生成することができる。
本実施形態において、陽極11及び陰極12の線状部分16は、図11に示すように、断面が長方形(図11の例では正方形)となっている。陰極12は、線状部分16が有する角部16Tによって、水素の気泡のぬれ角をさらに小さくして表面張力を抑制することができるので、水素の気泡をより小さい状態で離脱させることができる。このため、陰極12は、より小さい水素の気泡を溶存させた水素水を生成することができる。また、陰極12は、断面が長方形の線状部分16を有するので、水素の発生に利用することができる表面積を大きくすることができる。これらの作用により、陰極12は、水素を原水Wに溶存させる効率が向上する。
本実施形態において、開口11H、12Hは、図10に示すように、第1対角線TLlが、陽極11及び陰極12が延びる方向、すなわち長手方向Eに向かっている。第2対角線TLsは、円筒形状の陽極11及び陰極12の周方向Cに向かっている。陽極11及び陰極12は、図1に示すように、長手方向Eの両側に端部側開口部10HA、10HBを有している。陽極11の内側に発生した酸素の気泡は、端部側開口部10HA側から10HB側へ、図2に示す水素含有水生成用電極10の内部10Hを上昇し、脱気弁112へ集約される。脱気弁112の酸素は、脱気孔111から外部に放出される。このとき、酸素の気泡が移動する方向に、陽極11の開口11Hの長手方向が揃っているので、酸素の気泡は端部側開口部10HA、10HBに移動しやすくなる。その結果、水素含有水生成用電極10は、酸素の気泡を効率的に外部へ放出することができる。また、陽極11の開口11Hは、第1対角線TLl上の頂部Pa、Pbの角度が鋭角になるので、酸素の気泡と線状部分16との接触面積を小さくすることができる。その結果、酸素の気泡は、線状部分16から離脱しやすくなるので、水素含有水生成用電極10は、酸素の気泡を効率的に外部へ放出することができる。また、陽極11は、線状部分16が角部16Tを有するので、この角部16Tによって、酸素の気泡のぬれ角をさらに小さくして表面張力を抑制することができる。その結果、陽極11は、酸素の気泡を線状部分16から速やかに離脱させて端部側開口部10HA、10HBに移動させることができる。このため、水素含有水生成用電極10は、酸素の気泡を効率的に外部へ放出することができる。さらに、酸素の気泡が陽極11の内側に沿って移動する過程で、陽極11側で新たに生成された酸素の気泡を取り込んで酸素の気泡が成長する。このため、酸素の気泡と原水Wとが接触する面積を小さくして、原水Wへの酸素の溶存を抑制することができる。
図12に示すように、絶縁体13は、複数の線状部材17を交差させ、線状部材17で囲まれる部分が開口13Hとなる網状の部材である。開口13Hは、長方形形状(本実施形態では正方形形状)となっている。開口13Hは、一辺の長さがLaであり、この辺に隣接する辺の長さがLbである。本実施形態において、開口13Hは正方形形状なので、La=Lbである。長さがLaの辺は、陽極11及び陰極12の長手方向Eと平行であり、長さがLbの辺は、円筒形状の陽極11及び陰極12の周方向Cと平行である。
本実施形態において、陽極11の開口11H及び陰極12の開口12Hは、絶縁体13の開口13Hよりも大きい。開口11H、12Hの面積は、第1対角線TLlの長さをLl、第2対角線TLsの長さをLsとすると、Ll×Ls/2である。開口13Hの面積(開口面積)は、La×Lbである。このため、Ll×Ls/2>La×Lbとなる。本実施形態において、例えば、第1対角線TLlの長さLlは6mm、第2対角線TLsの長さLsは3mmであるので、開口11H、12Hの面積は、9mm2となる。開口13Hは、例えば、La=Lb=1.06mmである。例えば、絶縁体13は、25.4mm角あたり200個の開口13Hが配列されている。開口13Hの面積(開口面積)は、0.02mm2となる。このように、本実施形態において、陽極11及び陰極12の開口11H、12Hの面積は、開口13Hの面積の450倍程度である。
一般的に、イオン交換膜は開口面積は小さいが、膜が陰イオンに帯電されており陽イオン選択性があり、水素の発生量および溶存量が多いものの水素含有水のpHは中性にならない。
これに対して、本実施形態における水素含有水生成装置1は、水素含有水生成用電極10が25.4mm角あたり30個以上300個以下の開口13Hが配列されている中性膜の絶縁体13を備えている。これにより、本実施形態における水素含有水生成装置1は、水素の発生量および溶存量を向上させた、中性の水素含有水を生成できる。
本実施形態における水素含有水生成装置1は、25.4mm角あたり30個以上の開口13Hが配列されている中性膜の絶縁体13を備えていることにより、水素の発生量および溶存量が大きくすることができる。本実施形態における水素含有水生成装置1は、25.4mm角あたり300個以下の開口13Hが配列されている中性膜の絶縁体13を備えていることにより、繊維の強度を確保し、中性膜の厚みを抑制することができる。例えば、25.4mm角あたり500個以上の開口13Hが配列されている中性膜の絶縁体13
は、繊維が細くなるため、強度強化のため複数の繊維を束ねて組にして織り込む必要がある。このため、25.4mm角あたり500個以上の開口13Hが配列されている中性膜の絶縁体13は、厚みが増え、陽極11と陰極12との間に電源20から所定の電圧(直流電圧)が印加されても電流が流れ難くなるためである。
本実施形態における水素含有水生成装置1は、水素含有水生成用電極10が25.4mm角あたり100個以上300個以下の開口13Hが配列されている中性膜の絶縁体13を備えている。これにより、本実施形態における水素含有水生成装置1は、イオン交換膜と同等の水素の発生量および溶存量を有する中性の水素含有水を生成できる。
陽極11及び陰極12の開口11H、12Hよりも絶縁体13の開口13Hが大きい場合、絶縁体13の開口13Hを通して陽極11と陰極12とが接触する可能性が高くなる。水素含有水生成用電極10は、陽極11及び陰極12の開口11H、12Hよりも絶縁体13の開口13Hを小さくすることにより、絶縁体13の開口13Hを通して陽極11と陰極12とが互いに接触することを回避できる。このように、水素含有水生成用電極10は、陽極11と陰極12との距離を小さくしても、陽極11と陰極12との短絡を回避して、両者の絶縁を確保できる。このため、隔膜に中性膜の絶縁体13を用いた水素含有水生成用電極10は、陽極11と陰極12とに印加する電圧を低く抑えることできる。
本実施形態において、絶縁体13は、複数の線状部材17を交差させた網状の部材である。このような網状の部材を用いると、絶縁体13は、厚み方向にある程度の変形が許容されるので、水素含有水生成用電極10が振動又は衝撃を受けたとき、これを絶縁体13が吸収することができる。絶縁体13に、複数の線状部材17を交差させた網状の部材を用いると、移動及び持ち運びが可能な可搬型の水素含有水生成用電極10に好適である。
水素含有水生成用電極10は、絶縁体13の開口13Hが陽極11の開口11H及び陰極12の開口12Hよりも小さいので、陽極11側で発生した酸素の気泡を絶縁体13の線状部材17で捕捉し、大きな気泡とすることができる。酸素の気泡が大きくなることで、原水Wへの酸素の溶存が抑制されるので、水素含有水生成用電極10は、水素の気泡の溶存率が高い水素含有水を生成することができる。また、酸素の気泡が大きくなることで浮力が大きくなる結果、酸素の気泡が陽極11の内側を移動しやすくなり、また開口13Hを通過しやすくなるので、水素含有水生成用電極10は、酸素の気泡を内部から放出しやすくなる。
また、線状部材17によって捕捉されなかった酸素の気泡は、絶縁体13の開口13Hを通過して、陰極12の線状部分16に付着している水素の気泡を引き連れて線状部分16から離脱させる。このため、水素含有水生成用電極10は、陰極12で発生した水素の気泡を陰極12から速やかに離脱させて原水W中に溶存させることができる。次に、水素含有水生成用電極10の製造方法を説明する。
<水素含有水生成用電極の製造方法>
図13は、本実施形態に係る水素含有水生成用電極の製造方法の一工程を示す図である。図13に示すように、陰極12の外側に、拘束部材40を取り付けて陰極12と絶縁体13と陽極11とを拘束する。陰極用給電部材15と陰極用支持部材19との間に複数の拘束部材40が取り付けられる。拘束部材40は、例えば、樹脂製の結束バンドを用いたり、耐食性が高く、かつ原水Wに溶け出さない金属の線材等を用いたりすることができる。陰極12と絶縁体13と陽極11とが拘束部材40によって拘束されて、水素含有水生成用電極10が完成する。余分な絶縁体13Tは、閉じられたスリット12SLから陰極12の外部に取り出されていてもよい。または、絶縁体13は、筒状としておき陽極11の外周を覆うようにして、熱収縮により陽極11の外周に固定するようにしてもよい。
拘束部材40によって、円筒形状の部材である陰極12及び陽極11には、これらの周方向に向かう力が与えられる。このため、陽極11及び陰極12のスリット11SL、12SLが閉じられる。陽極11は、導電体であるとともに弾性体であり、スリット11SLを閉じる程度の変形は、陽極11の材料の弾性変形の範囲内における変形である。このため、陽極11のスリット11SLが閉じられると、陽極11には、閉じられたスリット11SLを開く力が発生する。
陽極11は、陰極12を介して拘束部材40によって拘束されているため、陽極11に発生する前述した力は、陽極11及び絶縁体13を陰極12に押し付けるように作用する。その結果、絶縁体13が陽極11と陰極12とに確実に接触するので、絶縁体13の厚みによって陽極11と陰極12との間に形成される隙間が精度よく規定される。また、陽極11に発生する前述した力によって、陽極11と、絶縁体13と、陰極12との間のずれが抑制される。このようにして、本実施形態に係る水素含有水生成用電極の製造方法は、水素含有水生成用電極10を製造することができる。
本実施形態に係る水素含有水生成用電極の製造方法は、陽極11及び陰極材料12に給電部材を取り付ける以外は、溶接等の接合を用いていない。このため、拘束部材40を取り外すことによって、水素含有水生成用電極10は、陽極11と、陰極12と、絶縁体13とに容易に分解することができるので、保守、点検、補修及び部品交換が容易である。
<評価例>
実施例1として、陽極11と、陰極12との間にある隔膜の絶縁体13として中性膜で水素含有水生成用電極10を9個製造した。実施例1の中性膜は、25.4mm角の一辺の線の中心から中心においての網目の数が30個のものを使用した。
実施例2として、陽極11と、陰極12との間にある隔膜の絶縁体13として中性膜で水素含有水生成用電極10を9個製造した。実施例2の中性膜は、25.4mm角の一辺の線の中心から中心においての網目の数が200個のものを使用した。
比較例1として、陽極11と、陰極12との間にある隔膜の絶縁体13として陽イオンのイオン交換膜で水素含有水生成用電極10を9個製造した。
比較例2として、陽極11と、陰極12との間にある隔膜の絶縁体13のない、水素含有水生成用電極10を9個製造した。
比較例3として、陽極11と、陰極12との間にある隔膜の絶縁体13として中性膜で水素含有水生成用電極10を9個製造した。比較例3の中性膜は、25.4mm角の一辺の線の中心から中心においての網目の数が500個のものを使用した。
比較例4として、陽極11と、陰極12との間にある隔膜の絶縁体13として中性膜で水素含有水生成用電極10を9個製造した。比較例4の中性膜は、25.4mm角の一辺の線の中心から中心においての網目の数が1000個のものを使用した。
実施例1、実施例2、比較例1、比較例2、比較例3及び比較例4の水素含有水生成用電極10をそれぞれ電解水量120Lの容器で水温41℃における溶存水素量(ppm)を水素含有水生成用電極10の陽極11と陰極12との間に電源20から所定の電圧(直流電圧)が印加される電解時間毎に同一条件で計測した。実施例1、実施例2、比較例1、比較例2、比較例3及び比較例4のそれぞれの溶存水素量は、各水素含有水生成用電極10の9個の平均値である。
下記表1は、評価結果を示したものである。図14は、水素含有水生成用電極の陽極及び陰極の間の隔膜の種類別の評価結果を示す図である。
表1及び図14に示した評価結果によれば、絶縁体は、中性膜であって、絶縁体の開口は、25.4mm角あたり、30以上200以下である場合、溶存水素量が隔膜がない場合に比較して、増やすことができる。また、絶縁体の開口は、25.4mm角あたり、200である場合、イオン交換膜と同程度まで溶存水素量を得ることができる。
次に、実施例3として、陽極11と、陰極12との間にある隔膜の絶縁体13として中性膜で水素含有水生成用電極10を9個製造した。実施例3の中性膜は、25.4mm角の一辺の線の中心から中心においての網目の数が100個のものを使用した。
比較例5として、陽極11と、陰極12との間にある隔膜の絶縁体13として中性膜で水素含有水生成用電極10を9個製造した。比較例5の中性膜は、25.4mm角の一辺の線の中心から中心においての網目の数が2000個のものを使用した。
実施例1、実施例2、実施例3、比較例1、比較例2、比較例3、比較例4及び比較例5の水素含有水生成用電極10をそれぞれ電解水量120Lの容器で水温41℃における溶存水素量(ppm)を電解時間30分の場合に同一条件で計測した。実施例1、実施例2、実施例3、比較例1、比較例2、比較例3、比較例4及び比較例5のそれぞれの溶存水素量は、各水素含有水生成用電極10の9個の平均値である。
下記表2は、評価結果を示したものである。図15は、水素含有水生成用電極の陽極及び陰極の間の隔膜の種類別の評価結果を示す図である。なお、「中性膜のメッシュ番号」とは、25.4mm角の一辺の線の中心から中心においての網目の数を示す。
表2及び図15に示した評価結果によれば、絶縁体13は、中性膜であって、絶縁体の開口は、25.4mm角あたり、30個以上300個以下である場合、溶存水素量を増やすことができる。絶縁体13は、中性膜であって、絶縁体の開口は、25.4mm角あたり、100個以上300個以下である場合、0.7ppm(Part Per Million)以上の溶存水素量とすることができる。また、絶縁体の開口は、25.4mm角あたり、200個である場合、溶存水素量の向上を見込むことができる。
以上、本実施形態を説明したが、前述した内容により本実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。