以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は、本実施形態の定在波レーダーによる水分検出装置のブロック図である。定在波検知部2は、定在波レーダーモジュールとして構成され、この定在波レーダーモジュールには、24GHz高周波送受信部4が設けられている。この24GHz高周波送受信部4は、24GHz帯VCO(電圧制御発振器)と平面アンテナ3とが一体化されたモジュールである。そして、この送受信部4は、VCOにより平面アンテナ3から電波1を発信し、測定対象としての被反射体からの反射波がアンテナ3に検出される。送受信部4には2個の検波器5a、5bが内蔵されており、検波器5a、5bは送信波及び受信波を検波する。
アンテナ3から電波1を送信すると、反射物体がある場合は、アンテナ3に反射波が戻ってきて、周波数が同じで進行方向が異なる波が重なり、合成波である定在波が発生する。VCOとアンテナ3とを接続する線路上及びアンテナ給電部には、送信信号(進行波)と受信信号(反射波)が混在し、それらの合成で定在波が発生する。この場合に、VCOに供給するスイープ電圧を、少なくとも発信電波が被反射体に反射して戻ってくるまでの時間は一定に保持する必要があるため、前記スイープ電圧は、ステップ状に変化させる必要がある。そして、VCOを制御して周波数を順次切り替えることにより、複数の周波数に対する混合波の信号レベルが検波器5a、5bにより検出される。検波器5a、5bでは、送信波の電力と、反射波の電力と、定在波によって生じた成分とが検出される。得られた検波信号は、オペアンプ6a、6bで400kHz以下の必要な帯域が増幅されて、信号処理部8に入力される。
レーダー制御モジュール基板として構成された信号処理部8は、変調信号生成部10にてFM変調された周波数制御電圧を生成する。この周波数制御電圧はDA変換部9にてアナログ信号に変換され、更に、この周波数制御信号がオペアンプ7を介して増幅された後、24GHz高周波モジュール4のVCOの制御入力に入力される。この周波数制御信号により、VCOは発信電波の周波数をスイープさせる。
信号処理部8においては、オペアンプ6a、6bで増幅された検波信号がAD変換部11に入力された後、距離スペクトル演算部12に入力される。この距離スペクトル演算部12は、定在波検知部2が検知した合成波の周波数の強度分布から、その直流成分を除去し、フーリエ変換して、距離スペクトルを求める。この距離スペクトルは、差分検出部13に入力される。差分検出部13は、前記距離スペクトルから、基準時の距離スペクトルを減算して、距離スペクトルの差分を演算し、この差分距離スペクトルを経時的に求める。この差分距離スペクトルは、距離演算部14に入力される。そして、距離演算部14は、前記差分距離スペクトルの距離成分により測定対象までの距離を求める。そして、判定部15は、差分距離スペクトルの振幅が、測定対象の誘電率の変化に基づいて変化する経緯を監視し、その振幅の変化に基づいて、測定対象の植物の幹を流れる水分の変化を求め、植物の活動状況を判定する。
信号処理部8においては、検波信号が、AD変換部11によりデジタル信号に変換された後、距離スペクトル演算部12に入力される。距離スペクトル演算部12においては、入力される信号は周期関数で、その周期は被反射体からの距離に逆比例しているので、これをフーリエ変換することにより、周期の逆数である周波数を求めることによって、この周波数から被反射体までの距離を求めることができる。また、得られた波形の位相を基に、被反射体の微小変位情報を検出することができる。例えば、24GHzの場合は、微小変位は光速を4πfで除算した値となり、約±3.125mmの範囲の変位を検出することができる。このように、検波器5a、5bから検出された信号を信号処理することにより、被反射体からの距離、被反射体の速度及び変位を演算し、その経時変化を計測することにより、被反射体の状態を検出することができる。
判定部15では、測定対象の植物の幹を流れる水分の変化から植物の活動状況を検知し、その判定結果は、有線又は無線で、外部の警報装置に出力して警報信号を発し、又は外部の表示装置に出力して、この表示装置に表示させる。
次に、信号処理部8の構成について更に詳細に説明する。定在波は、図3に示すように,信号源であるVCOから生成した送信波VTと、各ターゲットからの反射波VR1,VR2,VR3、・・・VRnとの干渉によって生じる。定在波レーダーは、この定在波を利用することによって、測定対象の植物の幹を流れる水分の量の変化を検知し、植物の活動状況を判定すると共に、各測定対象までの距離d1,d2,d3・・・dnを測定する。
送信波(進行波)は、信号源の振幅をA、周波数をf(t)、光速をc(3×108m/s)とすると、下記数式1で表される。但し、周波数f(t)は、図4に示すように、f0とfdで表される。
k番目のターゲットの距離をdk、x軸上の任意の点における送信波に対する反射波の大きさの比をγk(反射係数の大きさ)、位相差をφk(反射係数の位相)とすれば、そのターゲットからの反射波は下記数式2にて表すことができる。
アンテナから検出される検波出力は、合成波になるので、振幅Vcは下記数式3で表され、パワーは振幅の2乗であるので、合成波のパワーは、下記数式4で表される。
送信波の大きさは、反射波の大きさより桁違いに大きいので、γkは1より極めて小さい。そこで、数式4に数式1及び数式2を代入して近似値をとると、下記数式5が得られる。
この数式5において、{}内の第1項は、送信波のパワーを示し、第2項は、反射波のパワーを示し、第3項は、定在波によるパワーの変化分を示す。従来のレーダーは、第2項の反射波を受信して、信号処理を行うが、本発明においては、第3項の信号を信号処理する。このため、第1項目と第2項目を削除するため、合成波パワーp(fd、xs)をfdで微分して、この第1項目及び第2項目を除去する。
ここで、ターゲット(被反射体)の数が1であるとすると、n=1を数式5に代入して、下記数式6が得られる。この数式6をグラフ化すると、図5のようになる。即ち、合成波のパワーは、固定値1+γ2と、周期関数との和となる。この図5において、周期関数の周波数(周期の逆数)はc/2dとなり、距離dの成分が入る。このため、周期から周波数を求めれば、距離dが求まることになる。数式6から、直流成分1+γ2を除去して、フーリエ変換すると、図6に示すように、距離スペクトルP(x)が求まる。
先ず、下記数式7に示すフーリエ変換公式に対し、変数の置き換えをし、更に、観測位置を原点として、フーリエ変換すると、下記数式8に示す距離スペクトルが得られる。但し、Sa(z)=sin(z)/zとする。なお、数式8では、直流分がカットされていない。周期のある関数をフーリエ展開すると、その関数に含まれる直流成分と、振動成分(sin、cos)に分解されてしまう。距離スペクトルは、その公式上、下記数式8のように表示される。
なお、数式8のA2fw(1+Σγk 2)Sa(2πfw/c)x)は、直流成分であるが、この直流成分は、実際の回路において、コンデンサにより除去される。
この数式8の最後の式で表される距離スペクトルP(x)をグラフ図でみると、図7に示すようになる。そして、数式8の{}内の第1項目の直流分を除去し、第3項目をcos成分を複素正弦波(解析信号)に変換して除去し、定在波成分である第2項目の成分を抽出することができる。しかし、図7に破線にて示すように、数式8の{}内の第2項目の成分には、虚数側の信号が漏れ込んでしまう。つまり、この部分の定在波成分には、虚数側の信号が漏れ込んだ値になってしまう。
このような問題点を解消するためには、例えば、図8に示すように、送信波とその反射波を合成した信号を検出する際に、送信波の波長をλとして、λ/8だけ離隔した2点にて、信号レベルを検出するように構成することができる。つまり、レーダーの進行方向をx軸にとった場合に、被反射体であるn個(nは自然数、図示は2個のみ)のターゲットからの反射波をアンテナが受信し、これを送信波と共に、x軸方向にλ/8だけ離隔した2個のパワーディテクタで検出し、これを信号処理する。このとき、この2個のディテクタが検出したパワーレベルをp(fd,x1)、p(fd,x2)とすると、x1=0の位置に置かれたディテクタの出力は、検出パワーを示す数式5に、x1=xs=0を代入して、下記数式9に示すp(fd、0)として求まり、x1=−λ/8の位置に置かれたディテクタの出力は、検出パワーを示す数式5に、x2=xs=−λ/8を代入して、下記数式9に示すp(fd、−λ/8)として求まる。この数式9に示すように、λ/8だけ離隔した2点で定在波を検出することにより、各位置(0,−λ/8)に置かれたディテクタの出力の定在波成分に、cosとsinの直交成分が得られ、これにより、虚像信号を消去することができ、虚像側から漏れ込む信号の影響を解消することができる。即ち、cosとsinの直交成分(X軸成分とY軸成分)から合成されるベクトルが求める解析信号である。通常、虚軸側の信号は測定できないのであるが、−λ/8の位置に、虚軸側の信号が計測できることになり、ベクトル合成信号を形成できる。このベクトルの回転速度が周波数になるので、本実施形態では、この周波数と位相を解析することになる。
この数式9におけるxs=0の位置のディテクタの出力のうちの定在波成分をa、xs=−λ/8の位置のディテクタの出力のうちの定在波成分をbとすると、a、bは下記数式10にて表される。そして、数式8の3項からなる最後の式を下記数式11に基づいて置き換えをすると、下記数式12及び数式13が得られる。即ち、数式10が求めるX軸、Y軸(実信号、虚軸信号)を実信号に変換された形に置き換えることが可能になる。数式13は、まさに、時間方向の信号と、回転軸での信号を表現しているが、結局、この数式13により、回転する解析信号を計算できることがわかる。
数式12の右辺のPDCは直流成分であり、m(fd)cos(θ(fd)−4π(f0+fd)/c・xs)は周期的に変化する定在波成分である。この定在波成分は、前述のごとく、xs=0の位置の成分aと、xs=−λ/8の位置の成分bとの合成成分a+jbは、sinとcosとの直交成分となり、aとbとから解析信号を合成することにより、不要の信号(図7に示す虚数側から漏れ込んだ信号)による影響が除去される。よって、この値(数式13の信号)を解析することにより、図9に示す目的の成分pa(fd,0)が得られる。
而して、数式13の解析信号において、反射係数γkの大きさに依存して、検出される信号強度が変化する。換言すれば、解析信号の信号強度の時間的推移を測定すれば、強度の変化が生じた場合に、その要因の一つとして、反射係数γkの変化があったことを挙げることができる。即ち、周波数分布の各周波数のγk(反射係数の大きさ)が変化することで生じる信号強度の変化が、測定対象の状態の変化を示している。
誘電率が異なる2物質の境界面での反射係数γは、その誘電率を、ε1、ε2とすると、下記数式14にて表される。
このように、境界面での反射強度は、境界面を形成している各媒体が有する固有の比誘電率の差によって決定され、反射波形の極性も比誘電率の大小関係により決まる。よって、電波の反射強度は、反射係数γの大きさにより異なり、反射係数γは、誘電率により異なるため、反射面の物質の変化により、反射強度が変化する。例えば、水は誘電率が高く、電波の反射強度が大であるため、皮膚からの反射との識別が可能であり、また反射強度の変化により水膜の形成状況が分かるため、薄く濡れた状態と厚い水膜が形成された状態の区別が可能である。
誘電率(比誘電率)は、例えば、水が4.2、絹が1.3〜2、空気が1.00、塩が3.0〜15.0、水が80、木綿が3〜7.5、雪が3.3、ガラスが3.7〜10.0である。水は誘電率が高く、電波の反射強度が大であるため、水分を含むアスファルト又はコンクリートと、乾燥状態のアスファルト又はコンクリートとの判別が可能であり、また反射強度の変化により水膜の形成状況が判別できるため、薄く濡れた状態と厚い水膜が形成された状態の区別が可能である。従って、道路上の雨の観測の場合には、その反射強度の変化を監視することにより、路面状態について、「乾燥」、「湿潤」、「冠水」のいずれであるかを判定することが可能である。そして、計測箇所が濡れ始めた状態(浸水前、雨の降り始め)で、リセットして、その後監視記録することが可能であり、しかも濡れはじめの状態で零点調整(オフセット調整)を自動的に行えば、定期的な調整の必要がなくなる。
なお、電波センサは微弱電波を使用しているため、無線局の申請は不要である。また、定在波レーダーの場合は、衣服及び布団を通して、衣服に包まれた人体にて直接反射するので、人体の表面の湿潤の状況を、布団がかけられていても、人体の湿潤の状況を検知することができる。
上述のごとく、距離スペクトル演算部12が求めた距離スペクトルの振幅の強度の変化により、測定対象の湿潤の状況の変化を検知することができるが、この距離スペクトルには、水分変化がない物体からの反射波に起因する定在波の距離スペクトルが含まれている。そこで、差分検出部13は、測定された距離スペクトルから、基準時の距離スペクトルを削除して、差分距離スペクトルを演算する。図10(a)は、距離スペクトル演算部12が求めた距離スペクトルP(x)を示す。この測定結果には、水分を含む測定対象は存在せず、環境からの反射波に起因するものが求められている。そこで、特定の基準時に得られた距離スペクトルをP0(x)として、以後の各サンプリング時点に得られた距離スペクトルP(x)から、基準時の距離スペクトルP0(x)を減算する。即ち、各サンプリング時点で得られた距離スペクトルP(x)に対し、図10(b)に示す−P0(x)を加算する。このため、差分検出部13からは、水分を含む測定対象がない場合は、図10(c)に示すように、0信号が得られる。そこで、あるサンプリング時点で、測定対象に水分が含まれた場合には、図10(d)に示すように、その水分の距離スペクトルの振幅が現れる。このサンプリング時点の距離スペクトルに対しても、図10(b)の基準スペクトル−P0(x)を加算すると、図10(e)に示すように、P(x)−P0(x)の距離スペクトルが得られ、この距離スペクトルには、水分に起因するピーク強度の振幅のみが現れる。このようにして、差分検出部13にて、距離スペクトルの差分をとることにより、測定対象の環境からの反射の影響を低減して、水分の変化に起因する距離スペクトルの振幅の強度を求めることができる。
なお、測定対象が2個の場合の距離スペクトルは、図11に示すように、xs=0のパワーp(fd、0)とxs=−λ/8のパワーp(fd,−λ/8)との合成波から直流分を除去して、フーリエ変換することにより、距離に対応する周波数が得られ、距離d1,d2が求まる。
図12は合成波の真数のスペクトルと、虚数のスペクトルを示す図である。電波の速度cは、約30万km/秒である。発信波の周波数のスイープを、75MHz幅(fw)で行った場合、この75MHzの波長は、c/fw=4mである。しかし、波形を標本化するためのスイープは、往復で4mのため、行きはその半分の2mとなる。この2mを1周期と呼ぶ。そこで、スイープ幅75MHzで20mを計測した場合、10周期を計測することになる。スイープ時間が256μsであるとすると、観測する波形の周波数は、10/256μs=39kHzとなる。同様に、200mを計測した場合、100周期であるので、100/256μs=390kHzとなる。そして、図12に示す検出されたスペクトルの周波数のレベルは反射の強さを示し、周波数は距離に置き換えられる。よって、図11に示すように、フーリエ変換して39kHzのところにピークが現れると、それは、距離d1=10mの位置からの反射波であることがわかり、390kHzのところにピークが現れると、それは、距離d2=100mの位置からの反射波であることがわかる。このようにして、ディテクタの合成波の検出パワーpa(fd)を微分して直流成分を除去し、フーリエ変換すると、測定対象までの距離を求めることができる。
スイープ幅が200MHzの場合、1周期が0.75mになるので、10mの計測は10/0.75=13.3周期を観測することになり、スイープ時間が256μsである場合は、13.3/256=51.9kHzとなる。つまり、スイープ幅が200MHzの場合は、51.9kHzにピークが現れた場合に、被反射体までの距離が10mと観測される。従って、スイープ幅を調整し、スイープ時間を調整することにより、検波出力の周波数を調整することができ、電波法の規制により帯域幅が制限されているので、一般的には、スイープ時間を可変とすることにより、被反射体までの距離を測定する。
次に、微小変位計測について説明する。数式8において、位相に着目すると、k番目のターゲットに対する位相Ψkは、下記数式15の第1式のsinの角度として求まり、φkは初期位相であるから変化分では消えるので、距離dkの変化分をΔdk、位相の変化分をΔΨkとすると、数式14の第2式が得られ、これを変形して、下記数式16が得られる。
この数式16から、距離dの微小変位が求まる。周波数が24GHzの場合は、±3.125mmの変位を検知することが可能となる。
以上のように、被反射体からの反射波を送信波に合成した定在波の分析により、被反射体の距離及び微小変位を計測することができる。この計測結果を経時的に把握すれば、被反射体の距離、速度及び変位を計測することができ、結局、被反射体の動きを計測できる。従来のレーダーであると、1〜2m以下は距離の測定が困難であったのに対し、本発明により、0mに近い至近距離から、200mの遠距離迄、距離の測定が可能である。また、本発明の場合は、微小変位の検知が可能であり、相対変位分解能は0.01mmにも及ぶ。しかも、定在波レーダーの場合は、衣服及びカーテン等を通して、測定対象の水分を検知することができ、測定対象との間の距離の微小な変動を検知することができる。
なお、前述の如く、本発明は、数式13で示す距離スペクトルのピーク強度が、反射係数γkの大きさに依存して変化し、測定対象にて水分が増大すると、水分の誘電率εが高いため、数式14で示す反射係数γkが上昇し、距離スペクトルのピーク強度が上昇することにより、水分を検知することを測定原理とする。このように、ピーク強度を見ているので、測定対象が複数ある場合でも、水分の検知は容易である。しかし、この測定対象が多数となり、しかも、各測定対象の相互間の間隔が短いと、例えば,図11に示す複数個(図示例は2個)の距離スペクトルが相互に重なりあい、各距離スペクトルを分離できなくなる可能性がある。この場合、各測定対象について、上述の微小変位の測定に必要な位相差を求めることができなくなる。このような場合は、2個の距離スペクトルに対し、帯域通過フィルタをかけて、分離することができる。
図2は、この場合の実施形態を示すブロック図である。差分検出部13から出力された差分距離スペクトルは、この帯域通過フィルタ16に入力される。この帯域通過フィルタ16は、差分検出部13の差分距離スペクトルからその複数のピーク位置に対応する中心周波数の中間の周波数にて最小ゲインとなる信号を出力するノッチ型の帯域通過フィルタである。この帯域通過フィルタ16から出力された差分距離スペクトルは、ピーク位置間で分離された複数個の差分距離スペクトルとなる。これら各差分距離スペクトルは、距離演算部14に入力され、位相差から、微小変位を求めることが可能となる。
上述の如く構成されたセンサは、LED照明器具内に内蔵することができる。図13は、定在波レーダー内蔵型のLED照明器具の外観図及び内部分解図である。LED照明器具のケースは、既存のソケットに装着可能な口金21と、ABS等の樹脂素材又はアルミニウム材等で形成され、放熱機能をもつケース本体22と、透明若しくは半透明のABS若しくはポリカーボネート等の透光性樹脂素材又はガラス等からなる透光性カバー23とから構成されている。透光性カバー23は、光を拡散させ、又は光ビームを絞り込むレンズ形状を有する。LED照明器具としては、多数のものが存在するが、本発明は、いずれのLED照明器具にも適用することができる。LED照明器具は、口金21と、ケース本体22と、カバー23とから構成されたケースの内部に、表面実装型LED26と、定在波レーダーモジュール28(定在波検知部2)と、LED制御ユニット30とが格納されている。口金21の下半部はソケットにねじ込まれる部分であり、導電性の材料で形成されており、この口金21の上半部は、絶縁性の支持体となっている。そして、口金21の絶縁性支持体の上端部には、その内周縁部に周方向に沿って延びるねじ部21aが設けられており、ケース本体22の下端部にも、その外周縁部に周方向に沿って延びるねじ部22aが設けられていて、ねじ部21aをねじ部22aに螺合させることにより、口金21とケース本体22とが連結されるようになっている。また、ケース本体22の上端部にねじ部22bが形成され、カバー23の下端部にねじ部23aが形成されていて、ねじ部23aをねじ部22bに螺合させることにより、カバー23とケース本体22とが連結されるようになっている。
ケース本体22内には、絶縁性の基板固定用ガイドフレーム32が設置されており、このガイドフレーム32に、LED制御ユニット30の基板31が固定されている。この基板31はその面を上下方向にして、即ち、その面を照明器具の中心軸に平行にして、ガイドフレーム32に固定されている。LED制御ユニット30は、この基板31上に搭載されており、ケース本体22及び口金21に囲まれた空間内に配置されている。この基板31には、口金21内で、外部から給電された100Vの交流電源が供給され、この電源は、基板21上に搭載された変換器でAC−DC変換された後、LED制御ユニット30に供給される。
ケース本体22の上端部には、放熱性が優れたアルミニウム基板25がその面を水平にして配置されている。このアルミニウム基板25はケース本体22の上端部の縁部に支持されているが、基板31はこのアルミニウム基板25を挿通して、カバー23内に進出している。そして、この基板31の上端部に、レーダー制御モジュール基板27がその面を水平にして支持されており、このレーダー制御モジュール基板27の上に定在波レーダーモジュール28が搭載されている。アルミニウム基板25には、複数個(図示例は7個)のLED26が、照明器具の中心軸の周りに等配の位置に、即ち、円周上の等間隔の位置に、配置されている。アルミニウム基板25の電源線には、基板31の配線が接続されていて、基板31上の配線を介して、LED制御ユニット30からアルミニウム基板25上に搭載されたLED26に給電され、LED26が発光するようになっている。また、レーダー制御モジュール基板27上に搭載された定在波レーダーモジュール28には、基板31上の配線を介して、給電され、定在波レーダーモジュール28はマイクロ波等の電波を送受信し、レーダー制御モジュール基板27は、検出信号を、無線で外部の中継機器に送信する。この定在波レーダーモジュール28の上面には、アンテナ3が設置されており、電波はこのアンテナ8aを介して送受信される。なお、この定在波レーダーモジュール28はレーダー制御モジュール基板27に対して、傾斜可能になっており、この定在波レーダーモジュール28を傾斜させることにより、アンテナ3の指向方向を調節できるようになっている。
次に、本発明の実施形態に係る定在波レーダーによる状態検知装置の動作について、利用例と共に説明する。先ず、本発明の定在波レーダーによる状態検知装置を組み込んだセンサを、測定対象に向けて設置する。そうすると、定在波検知部2により、送信波と受信波との合成波である定在波が検知される。この定在波の検出信号は、AD変換部11を介して、距離スペクトル演算部12に入力され、距離スペクトルが演算される。そして、この距離スペクトルから、差分検出部13にて、差分距離スペクトルが求められる。距離演算部14は、この差分距離スペクトルから、前述の如くして、センサと測定対象との間の距離を演算する。その結果、この差分距離スペクトルのピーク位置は、図10(d)に示すように、センサと、測定対象との間の距離(例えば、2.5m)であることがわかる。そして、判定部15は、この2.5mの位置にピーク位置をもつ差分距離スペクトルについて、そのピーク強度の経時変化を監視する。そうすると、判定部15は、このピーク強度が上昇した場合は、測定対象の水分量変化により、誘電率が変化し、反射強度が増大したことに起因するものであることを検知することができ、このピーク強度が増大した時点を、水分量が増大した時点であると判定することができる。なお、レーダーによる反射波と送信波との定在波により、水分を検出するので、レーダーは衣服を透過するため、衣服に包まれた身体上の水分及び身体内の異物も検知することができる。
また、測定対象が距離d1及び距離d2にある場合、これらの測定対象に対し、センサからレーダー波が照射され、センサにて、測定対象(d1,d2)からの反射波が検出される。そして、差分検出部13は、距離d1の距離スペクトルに対し、ある特定の時点の距離スペクトルを基準時の距離スペクトルとし、一定のサンプリング時点毎に、得られた距離スペクトル(図10(a))から、基準時の距離スペクトル(図10(b))を減算し、差分距離スペクトル(図10(c))を演算する。その結果、基準時の距離スペクトルP0(x)からの変化がなければ、各サンプリング時点毎に得られた差分距離スペクトルは、図10(c)に示すように、0となる。そして、図10(d)に示すように、測定対象に水分が存在する場合は、その水分に起因するスペクトルを含む距離スペクトルP(x)が得られる。その結果、図10(e)に示すように、差分距離スペクトルP(x)−P0(x)には、水分に起因する距離スペクトルのみが出現する。従って、判定部15は、この差分距離スペクトルを監視し、差分距離スペクトルが0になった時点を乾燥完了時点と判断することができる。このようにして、測定対象の水分の状態を、個別に検知することができる。
誘電率は、衣類の繊維を構成するポリエチレンが2.3、木綿が3.0、水が80と、衣類は水との誘電率差が大きいので、距離スペクトルのピーク強度が各衣類の湿潤状態で異なるため、測定対象の水分状態を検知することができる。そして、本実施形態においては、定在波により距離計測が可能であるため、距離が異なる複数の測定対象の水分状態を夫々個別に計測することが可能である。
次に、本発明を適用して誘電率を検知する例について説明する。先ず、参考例として、定在波レーダーによる状態検知装置を食品素材の鮮度を維持するために使用した例について説明する。本実施形態においては、測定対象としての食品素材の凍結状態(温度を含む)を制御する制御部が、センサ内に設けられている。そして、本実施形態の判定部は、前記食品素材の水分の割合の減少に基づいて凍結の直前の状態を検知する。図14は、本実施形態において、食品素材を冷却したときの食品素材の誘電率及び温度の経時変化を示す模式図である。食品素材を冷却すると、次第に、その食品素材中の水分の凍結が生じ、やがて、水分が全て凍結してしまう。前述の如く、水分量と誘電率との間には相関関係が存在し、水の誘電率は約80、氷の誘電率は約4.2であるから、食品素材を冷却し続けると凍結が進行し、図14に1点鎖線にて示すように、凍結が生じている期間は、誘電率が低下し、凍結前は誘電率が高値に安定し、凍結後は誘電率が低値に安定する。そこで、本発明においては、図14に実線にて示すように、本発明の定在波レーダーによる状態検知装置により、誘電率の低下が開始したことが検知された時(時刻t0)に、水分の凍結がそれ以上進まず、例えば、食品素材の温度が一定になるように、食品素材の温度を制御する。これにより、食品素材の誘電率の低下が阻止され、食品素材中の水分量が高値に維持される。
このようにして、食品素材中の水分の凍結を防止し、食品素材が水分を十分に保持するようにしてこれを保存することにより、食品素材の鮮度を高く保持することができる。この場合に、食品素材を過冷却の状態に保持することにより、又は過冷却の後に急速凍結させることにより、更に、食品素材中の水分量を確保することができる。
食品の品質変化の要因としては、(イ)微生物による腐敗・発酵作用、(ロ)食品中の酵素による分解作用、(ハ)酸化などの化学作用、(ニ)乾燥などの物理作用、(ホ)果実・野菜に関する呼吸・蒸散などの食品自体の生理活性作用がある。そして、時間とともに、エネルギー及び水分が消耗されていくため、栄養価は低下して外観もしなびてくる。一般に、微生物は温度が下がるほど増殖しにくくなり、比較的低温に強い細菌であっても、−10℃以下では、ほとんど増殖しなくなる。食品中の水分が凍結されて氷となった場合も、微生物が利用できる水分が減るので、微生物の活動はより低下する。一方、酵素は低温に強く、一部の酵素は−30℃でも作用するため、完全に酵素の作用を停止させるには、−35〜−40℃にする必要がある。食品の品質低下をもたらす酸化などによる化学作用、及び乾燥などの物理作用も温度が高いほど進行が早く、温度が低いほど遅くなり、呼吸又は蒸散など食品自体の生理活性作用も温度が低くなるほど低下し、細胞が凍ってしまえば活動を停止する。そこで、従来は、生命活動がすべて停止する−20℃程度の低温に食品素材を保持して、長期保存を行っている。
しかし、食品素材を冷凍で保存する場合には、凍結によって生じる氷が食品素材に悪影響を及ぼしてしまう。食肉・魚介では、その7〜8割、青果ではその8〜9割を水分が占める。そして、食品素材を冷却していくと、この水分が固体である氷に変化し、水が氷に変態すると、体積が膨張する。食品の細胞中に大きな氷の結晶が生成すると、細胞が破壊され、その状態のまま凍結されてしまう。そして、凍結食品素材を解凍すると、壊れた細胞から出た水分が流れ出し、水分とともに味覚成分及び栄養も食品素材から失われ、食品自体の歯ざわりも悪くなる。
但し、氷の結晶が小さければ、この細胞破壊に起因する食品素材の品質劣化は小さくなる。この細胞を壊さないで冷却する方法として、過冷却を利用する方法がある。水が氷の結晶に変わる温度は氷結点といわれ、氷結点は純粋な水であれば0℃であるが、溶液のように水中に溶質を含有する場合は、この溶質の濃度が高いほど、氷結点は低くなる。食品素材中の水分には、アミノ酸及びミネラル等が溶け込んでいて、氷結点は低く、食品素材の氷結点は食品ごとに異なるものの、約−1〜−5℃である。そして、食品素材は夫々固有の氷結点で凍り始めるが、0℃から氷結点までの未凍結の温度領域(氷温域)において、生体は自身が凍らないように、不凍物質を生産し、例えば、糖類、グルタミン酸、アミノ酸等の旨み成分が生産される。これらの旨み成分は、食品素材を氷温域に一定時間さらす状態にすることで、食品の旨味を増し、鮮度保持時間を長くできるという利点がある。一方、氷結点から水分の80%が氷になるまでの温度範囲は「最大氷結晶生成帯」といわれ、この最大氷結晶生成帯を長い時間をかけて通過(温度降下)するほど、氷結晶は大きくなる。そして、このような「緩慢凍結」よりも、最大氷結晶生成帯を短時間で通過させて、生成する氷の結晶を小さく留める「急速凍結」のほうが、冷凍した食品としての品質は良好となる。
一方、過冷却とは、物質が液体から固体に変わる温度(凝固点)以下の温度でも液体のままでいる状態をいう。この過冷却の水に衝撃を与えたり氷のかけらを入れたりすると、一瞬にして小さな氷に変わり、細胞膜を破壊せずにすむ。このため、食品素材を過冷却の状態に保持して、食品素材全体を均一な温度状態にし、その後、急速凍結することにより、食品素材の細胞膜を破壊することなく凍結することができ、旨み成分を食品素材に保持した状態で、食品素材を解凍することができる。換言すれば、食品素材をおいしく凍らせるためには、食品素材の全体を均一に凍らせること、及び氷の結晶が成長しないように短時間で凍らせることが重要である。
本参考例においては、状態検知装置により、測定対象の誘電率の変化を検出して、測定対象の水分の変化を検出することにより、水分量の低下の起点t0を氷結点として求め、その後、食品素材に電磁波を照射して、食品素材の細胞中の水分子を振動させることにより、食品素材の水分を過冷却状態に保持する。その後、食品素材を瞬時に凍結させる(急速凍結)させることにより、細胞膜の破壊を防止しつつ、旨み成分を食品素材に閉じ込めたまま、これを凍結する。この電磁波は、本発明においては、定在波検知部が電波を送信する機能を有するものであるから、この電波の送信部を使用して、食品素材に電磁波を照射することができる。これにより、過冷却状態を容易に作り出すことができる。この定在波検知部が送信する電波を食品素材に照射して食品素材を誘導加熱することにより、食品素材の凍結状態を制御するが、このとき、食品素材の温度は、過冷却の温度範囲にある。そして、電磁波加熱は食品素材の微妙な状態の制御に即効性があるが、電子レンジのようにKWオーダーのパワーを与えて水分子を激しく揺するのではなく、mWオーダーのパワーで水分子が凝集しない程度に緩やかに水分子を揺することが好ましい。なお、−3℃程度の氷温及び−20℃程度の凍結温度では、細菌の活動はほぼ停止している。
食品素材の凍結点は、前述の如く、食品素材毎に異なり、含有水分中の溶質(含有物質)濃度によっても異なる。しかし、本発明においては、状態検知装置により、誘電率の変化から測定対象の実際の凍結点を測定対象毎に検知することができる。そして、最大氷結晶生成帯(約−1℃〜約−5℃)を、できる限り速く通過させることによって、微小氷結晶を均質に生成させ、氷結晶の肥大化を防止して、細胞膜の破壊を防止することができる。なお、本実施形態では、定在波検知部の電磁波送信手段を使用して、水分子を振動させることにより、過冷却状態を作り出しているが、これに限らず、氷結点を検知した後、食品素材を加熱して氷結点の直上の温度に維持制御することができる。
従来の冷蔵・冷凍による食品素材の保存方法では、微生物による分解・腐敗を抑制することが主な目標であった。一般に、食品素材である肉が腐敗する段階において、肉のタンパク質が時間と共に分解されてアミノ酸になる。このアミノ酸の中に、うまみ成分といわれるグルタミン酸等が多く含まれている。しかし、腐敗過程では、雑菌又はバクテリアが発生してしまい、全く食べられない状態になってしまうのが常であった。凍結寸前の温度域では、バクテリア又は菌等の活動は著しく低下するが、酵素の活動は続くため、本実施形態のように、レーダーによる誘電率の計測で、殆どの水分が凍っていない凍結寸前の状態に制御することにより、肉は、熟成が進み、柔らかさ及び滑らかさがあり、とろける食感となり、ジューシーさが広がり、きれの良さを味わうことができる良質な熟成肉となる。
次に、上述の誘電率による状態検知装置を食肉の脂身成分の多少の検出に使用した参考例について説明する。皮膚、筋肉、肝臓等の含水率が高い組織では、比誘電率は40〜2000、導電率は0.5〜10(S/m)となり、 含水率が比較的低い脂肪及び骨髄等では、比誘電率は5〜20、導電率は10〜500(mS/m)となっている。誘電率は組織毎に広い範囲で分布するものの、おおむね、水分含有率が高い組織と、水分含有率が低い組織とに分類することができる。水は誘電率が実部及び虚部共に大きいため、これを多く含む筋肉等の組織は誘電率が大きい。一方、水分が少ない骨及び脂肪は、誘電率が小さい。人体は、これらの臓器が複雑に配置されているが、電波による照射と反射レベル強度を計測することにより、筋肉が多い肉か又は脂肪が多い肉かを識別することができる。このように、誘電率の違いを電波で検出することにより、食品を非接触で計測することが可能である。
次に、本発明の参考例として、誘電率の差の検出による状態検知装置を、医療分野に使用したものについて説明する。一般に、超音波診断及びX線の診断では、臓器等の形状は分かるが、塊の物質(異物)の材質又は異常部位の性質が何であるのかはわからないという問題点がある。この塊が血液の塊か、肉の塊か、腫瘍なのか、癌なのかは、開腹して試料を採取してみないとわからないのが現状であった。電波を使用した計測装置は、パルス方式で開発が進められているが、至近距離のため、該当部分の距離は計測できない。乳房は乳腺と脂肪組織から構成され,外側を皮膚組織に覆われた胸壁から突出した臓器である。マイクロ波を乳房に照射すると、多くは皮膚によって反射されるが、一部のマイクロ波は皮膚内部に侵入する。乳腺は脂肪組織より誘電率及び導電率が高いので反射が起こるが、乳腺の形は不規則なため、複雑な反射・散乱が発生する。乳房中の塊は、乳腺及び脂肪より誘電率及び導電率が高いので、乳房に照射した送信波が反射した反射波は、検出可能な受信波として、受信される。例えば、誘電率は、脂肪層が6.9、乳腺組織が49、癌が56、皮膚が37、筋肉が58であり、反射係数の違いを検出することにより、乳房の内部の状態を推察することができる。また、フィルタを使い、例えば、癌の誘電率56を抽出することにより、その電波の照射部分に、癌の病変があるか、又は無いかの識別をすることができる。また、超音波診断等の他の手段により、何らかの塊が体内に認められた場合、本発明の状態検知装置によれば、それが癌の病変であるのか、血の塊であるのか、骨であるのかを、反射係数の相違により判定することができる。
従来、空中にあるアンテナから乳房にマイクロ波を照射しても、皮膚は水分を含んでいるため、ほとんどのエネルギーは皮膚で反射されてしまう。これは空気と乳房組織の電気インピーダンスが大きく異なり、境界面での反射係数が高いためである。このため、アンテナと乳房を乳房組織に類似した誘電率及び導電率を持つ整合溶液(ジアセチンなどの油脂)で満たしたタンクに入れて撮像し、反射を小さくして計測を行っていた。
しかし、皮膚はその構成の殆どが水分であることに注目すると、この部分を凍結寸前の過冷却状態に冷却した場合に、誘電率は水が80であり、氷が3であるので、水から氷に誘電率が激減することにより、電波を透過するようになる。この状態で、ペンシル状にビームを絞った電波を水平方向及び垂直方向にスイープすると、反射データが得られる。これにより、体内の対象物の物性(癌か否か)及びその対象物までの距離を検知することができる。
次に、本発明の状態検知装置の実施形態として、植物の活動状況の検出に使用するものについて説明する。即ち、生物活動は、水分を計測することにより、生育状態及び内部の活動状況を知ることができるので、植物の幹を流れる水分の変化を、本発明の状態検知装置により検知することにより、植物の活動状況を検出することができる。従来、木材は、打撃音によって含水率を推定したり、電気抵抗値又は電気容量を測定して水分に置き換えたり、光の吸収度合いを調べて植物の水分量を推定していた。しかし、打撃音では官能的な検査しかできず、電気抵抗式の測定器は、測定物に電気を流し、その抵抗値を水分値に置き換えて表示する水分計であるため、植物に針を刺す必要があり、植物を痛めてしまう。また、光による方法は、植物の表面部分しか計測できない。
これに対し、本発明の実施形態の状態検知装置を使用すると、植物の生育状態及び内部の活動状況を、非接触で常時検出することができる。図15は、本発明の状態検知装置を樹木100の内部の活動状況の検出に適用した実施形態を示す図である。図15(a)に示すように、樹木100に対して、センサ101を向け、樹木100の内部を上方に向かって流れる水103の量を検出する。センサ101からレーダ送信波を樹木100に向けて送信し、反射波を検出して定在波を検知し、その振幅強度P(x)を求める。前述の如く、誘電率は水が80であり、木の誘電率とは相違するので、水からの反射波を検知でき、図10に示すように、水量を、振幅強度から求めることができる。即ち、水分の量は振幅強度P(x)の大小により検知できる。この場合に、樹木の幹を流れる水分103は、樹木100の葉102にも供給され、この水分が枯渇したときは、葉102が樹木100から落ちるので、従来、葉の落下数から、樹木の活動状況を認識することもあった。しかし、本発明の状態検知装置を使用すれば、常時、樹木の幹の内部を通流する水分量を遠隔地で検出することができる。通常、カエデの幹の水分量は、図15(b)に示すように、昼と夜とで変化しており、昼の方が水分量が多い。そして、これを通年でみると、図15(c)に示すように、1日あたりの水分量の平均値は、春及び夏には多く、夏から秋にかけて減少し、秋及び冬には少なくなる。このとき、サトウカエデは、水分量が減少するときに、糖分が増大し、メープルシロップの原料となる糖分量が高い樹液を出す。そこで、樹木の水分量を遠隔監視し、水分量の減少を検知したときに、樹液の採取を開始すれば、効率的に糖分量が高い樹液を算出することができる。
次に、参考例として、状態検知装置により水分量を検知して人の周囲の空調を制御するものについて説明する。本参考例においては、検知部が、差分距離スペクトルの振幅を監視することにより、測定対象の反射波の強度が汗の量により変化することに基づいて、測定対象としての人の汗の変化を検知する。本参考例においては、測定対象としての人の汗の変化に基づいて、人の周囲の空調状態を制御する制御部が、センサ101内に設けられており、このセンサ101は空調機内に設置されている。図16に示すように、センサ101は人を測定対象としてレーダー波を送信し、人の汗110からの反射波を検出して、定在波を求め、その振幅強度P(x)を演算する。このとき、図16(a)に示すように、汗110の量が少ないときは、反射波の強度が低く、得られた定在波の振幅強度P(x)も低い。そして、図16(b)及び図16(c)に示すように、汗110の量が多くなるにつれて、定在波の振幅強度P(x)が大きくなっていく。このため、定在波の振幅強度P(x)の変化から、汗の量の変化及び汗の有無を検知することができる。
そこで、例えば、室内の温度を、扇風機又はエアコン(エアコンディショナ)が調整しているとすると、これらの空調機(扇風機及びエアコン等を含む)内に、前記制御部を含むセンサ101を設置し、センサ101により汗の量を検知する。そして、空調機をオンにすると、制御部は、先ず、空調機の送風方向及びレーダー照射方向を、部屋全体に振る(スキャンする)。これにより、センサ101は、部屋の中に存在する人の位置及びこの人の水分量(汗の量)を検知する。そして、制御部は、汗の量が多い場合は、送風量を多くしたり、送風温度を低下させたり(エアコンの場合)、又は、送風方向をこの人に向けて集中させて、送風方向のスキャンを停止する。制御部は、これらの1又は複数の方法により、強力に汗をかいている人を冷却し、迅速に汗をひかせるように制御する。一方,人の汗が減少した場合には、送風方向のスキャンを再開したり、送風温度を上昇させたり、送風量を低下させたりして、人に対する冷却の程度を軽減する。人の汗が殆ど解消した場合、又は、空調機がオンになっても、汗をかいている人が室内に存在しない場合は、制御部は、弱めの送風量で送風方向をスキャンさせて、室内の空気の循環のみを行う。
この場合に、状態検知装置は、人の位置を検知するので、室内で人が移動した場合には、送風方向を移動した人に合わせて移動させる。即ち、人を追いかけて、送風方向を決定する。このため、部屋が広く、室内に存在する人の数が少ない場合でも、効率的にこの人の冷却を実施することができる。なお、従来、人感センサにより人を感知し、送風方向をこの人の存在位置に合わせて移動させるエアコンも開発されているが、この場合、送風量及び送風温度は、一定であり、対象の人が汗をかいていないにも拘わらず、汗をかいている人の場合と同様に冷却してしまう。しかし、本発明においては、対象の人の汗の量を検知し、汗の量に応じて、送風量及び送風温度を調整するので、送風方向を人の移動に合わせて移動させても、この人を冷却しすぎてしまうことがない。なお、汗の有無及び量の検出は、顔又は腕のように、人の露出している部分の汗に限らない。本発明においては、定在波レーダーで反射波(定在波)の強度から汗の量を検出するので、このレーダーによる水分検出によれば、レーダーが衣服を透過するため、衣服の内部の下着の水分又は皮膚上の水分からの反射波で水分量(汗の量)を検出することができる。このため、汗の検出は、顔及び腕等に限らず,身体の全体から汗の存在及び量を検知することができる。
なお、室内の空調機制御に本発明を適用する場合に限らず、例えば、車内の空調制御に適用することもできる。また、室内とは、家庭の部屋に限らず、施設の廊下又は広間、電車・バス等の交通機関の車内等、種々の空調機の制御に本発明を適用することができる。