以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
まず、図1を参照しながら、本実施形態に係る付勢機構を内部に備えたシフトレバー1の概略について説明する。図1に示したシフトレバー1は、レバーシャフト100の上端部にシフトノブ200を組み付けることにより構成されている。図1(A)は、レバーシャフト100とシフトノブ200が分離した状態、すなわち、レバーシャフト100の上端部にシフトノブ200を組み付ける前の状態を示している。図1(B)は、レバーシャフト100の上端部にシフトノブ200を組み付けた後の状態を示している。
レバーシャフト100は、略円筒形状の金属からなるシャフトであって、下端が自動車のシフト装置(図示せず)に接続されている。レバーシャフト100は内部に空間が形成されており、当該空間はレバーシャフト100の上端及び下端において開放されている。レバーシャフト100の内部空間には、後に説明する棒状の伝達バー130が配置されている。伝達バー130は、その中心軸がレバーシャフト100の中心軸に沿うように配置されている。図1(A)に示したように、伝達バー130の上端は、レバーシャフト100の上端に形成された開口から更に上方に向けて突出している。
レバーシャフト100の上端近傍はテーパー形状となっており、下方から上端面101に近づくほど縮径するような形状となっている。レバーシャフト100の側面のうち上記テーパー形状となっている部分(テーパー部102)の下方には、溝110、120が形成されている。
溝110及び溝120は、いずれもレバーシャフト100の長手方向とは垂直な方向に沿って形成された溝であって、レバーシャフト100の長手方向において互いに同一の位置(すなわち、同一の高さ)に形成されている。また、図1(A)に示したように、溝110及び溝120は、レバーシャフト100の直径方向において互いに対向する位置に形成されている。後に説明するように、溝110及び溝120は、シフトノブ200の内部に保持されたU字ばね300が係合するために形成された溝である。
溝110の内面は、上方から順に傾斜部111、垂下部112、水平部113を有している。傾斜部111は、その法線方向が下方且つレバーシャフト100の中心軸から遠ざかる方向(図1においては左下方向)を向くように形成されている。すなわち、レバーシャフト100の長手方向に対して傾斜するように形成されている。垂下部112は、傾斜部111の下端から、レバーシャフト100の長手方向に沿って下方に伸びるように形成された面である。すなわち、垂下部112の法線方向はレバーシャフト100の長手方向に対して垂直である。水平部113は、垂下部112の下端から、垂下部112に対して垂直な方向(レバーシャフト100の中心軸から遠ざかる方向)に向かって伸びるように形成された面である。すなわち、水平部113の法線方向はレバーシャフト100の長手方向と平行である。
溝120の内面は、上方から順に傾斜部121、垂下部122、水平部123を有している。傾斜部121は、その法線方向が下方且つレバーシャフト100の中心軸から遠ざかる方向(図1においては右下方向)を向くように形成されている。すなわち、レバーシャフト100の長手方向に対して傾斜するように形成されている。垂下部122は、傾斜部121の下端から、レバーシャフト100の長手方向に沿って下方に伸びるように形成された面である。すなわち、垂下部122の法線方向はレバーシャフト100の長手方向に対して垂直である。水平部123は、垂下部122の下端から、垂下部122に対して垂直な方向(レバーシャフト100の中心軸から遠ざかる方向)に向かって伸びるように形成された面である。すなわち、水平部123の法線方向はレバーシャフト100の長手方向と平行である。
傾斜部111と傾斜部121は、レバーシャフト100の長手方向において互いに同一の位置に形成されている。同様に、垂下部112と垂下部122、及び、水平部113と水平部123も、それぞれレバーシャフト100の長手方向において互いに同一の位置に形成されている。
シフトノブ200は、上述のようにレバーシャフト100の上端部に組み付けられるものであり、自動車の運転者がシフトレバー1を操作する際に把持する部分である。シフトノブ200は、嵌入されたレバーシャフト100を保持するためのシャフト保持機構250(図1においては不図示)を内部に有しており、シャフト保持機構250の周囲を上部カバー201及び下部カバー202が覆う構造となっている。上部カバー201は、運転者の手が直接触れる部分であって、複数に分離して取り外すことが可能となっている。下部カバー202は上部カバー201の下方に配置されるカバーであって、その下端にはレバーシャフト100を挿通させるための開口が形成されている。
シャフト保持機構250の下部(下部カバー202の内側に位置する)には、下方に向けて開口した嵌入孔251が形成されている。嵌入孔251は、レバーシャフト100の上端部を嵌入するための孔である。嵌入孔251は円形の孔であって、その内径はレバーシャフト100の直径(テーパー部102、溝110、及び溝120を除く部分における直径)よりも、僅かに大きくなるように形成されている。
シフトノブ200のうち上部カバー201の側面には、ノブボタンLSが配置されている。ノブボタンLSは、シフトレバー1の操作が制限されたロック状態と、シフトレバー1の操作が許容されたアンロック状態とを切り換えるためのスイッチである。ノブボタンLSになされた操作(押し込み操作)は、レバーシャフト100の内部空間に配置された伝達バー130を介して下方のシフト装置に伝達される。例えば、ノブボタンLSが一度押されると、伝達バー130は下方に向かって移動する。シフト装置においては、当該移動を検知し、シフトレバー1をアンロック状態とする。その後、ノブボタンLSから手が離されると、伝達バー130は上方に向かって移動する。シフト装置においては、当該移動を検知し、シフトレバー1をロック状態に戻す。
押し込み操作がなされた際においてノブボタンLSが動く方向は、伝達バー130の軸方向に対して略垂直な方向である。すなわち、伝達バー130が動く方向に対して略垂直な方向である。このため、シフトノブ200の内部には、このようなノブボタンLSの動きを伝達バー130の動きに変換するための変換機構(図1では不図示)が配置されている。後に説明するように、当該変換機構は、ノブボタンLSに対して付勢力を加えるための付勢機構としても機能するものである。変換機構(付勢機構)は、シャフト保持機構250に対して組み込まれている。以下の説明においては、この変換機構を「付勢機構400」と称することとする。
図2を参照しながら、シャフト保持機構250の具体的な構造について説明する。図2(A)は、シフトノブ200の内部構造を説明するための図であって、シフトノブ200から上部カバー201及び下部カバー202を取り外し、シャフト保持機構250を露出させた状態を示している。図2(B)は、図2(A)に示したシャフト保持機構250からU字ばね保持部材320(後に説明する)を取り外した状態を示している。尚、図2においては、付勢機構400の図示を省略している。付勢機構400の具体的な構成や機能等ついては、後に詳しく説明する。
図2に示したように、シャフト保持機構250は、本体部260とU字ばね保持部材320とを備えている。本体部260は、付勢機構収納部270と、保持部材収納部280と、シャフト収納部290とを有している。
付勢機構収納部270は、付勢機構400を収納するための部分である。付勢機構収納部270には、本体部260の側面に向かって開口した略矩形の空間が形成されている。後に説明するように、当該開口から付勢機構400が収納される。
保持部材収納部280は、付勢機構収納部270の下方に配置されており、U字ばね保持部材320を収納する部分である。保持部材収納部280には、本体部260の側面に向かって開口した略矩形の空間が形成されている。保持部材収納部280と付勢機構収納部270との間には仕切板271が備えられており、仕切板271には切欠き272が形成されている。後に説明するように、保持部材収納部280の内部空間は、(略円筒形状の空間である)嵌入孔251の一部(上部)をなすものである。仕切板271は、レバーシャフト100の上端面101が下方から当接する部分である。切欠き272は、レバーシャフト100の上端面101から更に上方に向かって(付勢機構収納部270に向かって)突出する伝達バー130と仕切板271とが干渉しないように、仕切板271の一部が切欠かれたものである。
シャフト収納部290は、保持部材収納部280の下方に配置されており、内部には下端が開口した略円筒形状の空間が形成されている。当該空間は、嵌入孔251の一部(下部)をなすものであって、その上端は保持部材収納部280内の空間と連通するように開口している。すなわち、嵌入孔251は、保持部材収納部280の下端から仕切板271の下面273にかけて形成される。このため、仕切板271の下面273は、嵌入孔251の天面ともいうことができる。
シフトノブ200をレバーシャフト100の上端部に組み付ける際においては、レバーシャフト100の上端面101が、シャフト収納部290の下端から嵌入孔251に嵌入される。その後、シフトノブ200はレバーシャフト100の長手方向に沿って下方に押し込まれ、最終的には、レバーシャフト100の上端面101が仕切板271の下面273(嵌入孔251の天面)に当接した状態となる。
続いて、保持部材収納部280に収納されるU字ばね保持部材320について、図3等を参照しながら説明する。図3は、U字ばね保持部材320の外観を示す図であって、U字ばね保持部材320を下方から見た場合における外観を示している。
図2(B)及び図3に示したように、U字ばね保持部材320はU字ばね300を保持するための部材であって、下面に形成された第一突起321、第二突起322、及び第三突起323によりU字ばね300を保持している。
U字ばね300は、所定の弾性係数を有する金属により形成されたばねであって、略直線形状の第一ピン301と、第一ピン301と対称配置された略直線形状の第二ピン302と、これらの一端同士を接続する略C字形状の屈曲部303とを有している。U字ばね300はこのような形状であるから、第一ピン301と第二ピン302とを離間させるように変形させた場合、第一ピン301と第二ピン302とを近づける方向の復元力が発生する。
図3に示したように、第一突起321は屈曲部303の外側(略C字形状の外周部分)において屈曲部303と当接している。また、第二突起322は屈曲部303の内側側(略C字形状の内周部分)において屈曲部303と当接している。すなわち、屈曲部303の中央部分は、第一突起321と第二突起322とにより挟まれた状態で保持されている。
第三突起323は、第一ピン301及び第二ピン302の先端部近傍(屈曲部303の位置とは反対側の先端部近傍)において、第一ピン301と第二ピン302との間に挟まれている。このとき、第三突起323の幅、すなわち、第一ピン301及び第二ピン302との間隔は、U字ばね300が外力を受けていない状態(図4に示した状態)における両者の間隔よりも広くなっている。
このため、U字ばね300の復元力によって第三突起323が挟み込まれた状態となっている。換言すれば、U字ばね300は、第一ピン301と第二ピン302との間隔を拡げるようにプリロードが加えられた状態となっている。このとき、第一ピン301の中心軸と第二ピン302の中心軸との間隔は、レバーシャフト100の上端面101の幅よりも大きくなっている。
U字ばね保持部材320の中央には開口324が形成されている。開口324はレバーシャフト100を内部に挿通するために形成されている。このため、U字ばね保持部材320が保持部材収納部280に収納された状態において、開口324の中心位置は、シャフト収納部290の内部空間の中心軸上となる。開口324は、嵌入孔251の一部をなしている。
図3に示したように、互いに略平行に配置された第一ピン301及び第二ピン302の中央に開口324の中心が位置しており、第一ピン301と第二ピン302との間隔は開口324の内径よりも小さくなっている。その結果、開口324の中心軸に沿って見た場合においては、第一ピン301及び第二ピン302はいずれもその一部が開口324と重なる位置に保持されている。
図3及び以上の説明から明らかなように、U字ばね保持部材320に保持されたU字ばね300は、第一ピン301と第二ピン302との間隔が拡がる方向に変形することが許容されている。このため、開口324にレバーシャフト100を下方から挿通させる際においては、レバーシャフト100のテーパー部102に当接した第一ピン301及び第二ピン302は、互いの間隔が拡がるようにそれぞれ変位することとなる。
図3のようにU字ばね300を保持した状態のU字ばね保持部材320は、保持部材収納部280に対し本体部260の側面から収納される。その際、図2(A)に示したように、U字ばね300は、第一ピン301及び第二ピン302の先端部側(屈曲部303の位置とは反対側)から挿入される。
U字ばね保持部材320は、保持部材収納部280の内部空間を区画する壁面に対して当接することで、その位置が規制されるようになっている。すなわち、保持部材収納部280に収納されたU字ばね保持部材320は、保持部材収納部280の内部空間を区画する上側壁面、下側壁面、左側壁面、右側壁面、及び上記挿入方向における奥側の壁面に対して当接した状態となっている。尚、U字ばね保持部材320は、上部カバー201の内面(又は当該内面から突出した部分)に対しても当接した状態となるため、U字ばね保持部材320が保持部材収納部280から引き出される方向の動きも規制される。このような構成により、U字ばね300は本体部260における所定の位置に固定される。
続いて、図5及び図6を参照しながら、レバーシャフト100の上端部にシフトノブ200を組み付ける際における、U字ばね300の状態について説明する。尚、図5及び図6においては、シフトノブ200のうち上部カバー201、下部カバー202、及び、付勢機構収納部270に収納される付勢機構400の図示を省略している。図5及び図6は、嵌入孔251の中心軸を含む面であって、且つ、U字ばね保持部材320の挿入方向に対して垂直な面で切断した場合の断面を示している。
図5は、レバーシャフト100の上端部を嵌入孔251に嵌入し、レバーシャフト100の長手方向に沿ってシフトノブ200を押し下げている途中の状態を示す断面図である。図5は、第一ピン301及び第二ピン302の高さがレバーシャフト100の上端面101の高さと略等しくなり、第一ピン301及び第二ピン302がレバーシャフト100のテーパー部102に接触する直前の状態を示している。
既に述べたように、U字ばね保持部材320に保持されたU字ばね300においては、第一ピン301の中心軸と第二ピン302の中心軸との間隔が、レバーシャフト100の上端面101の幅よりも大きくなっている。このため、図5に示した状態からシフトノブ200を更に押し下げると、第一ピン301及び第二ピン302はいずれもテーパー部102に当接し、第一ピン301と第二ピン302との間にレバーシャフト100の上端がスムーズに挿通される。
尚、第一ピン301と第二ピン302とが略平行でない場合においては、図5に示した断面における第一ピン301の中心軸と第二ピン302の中心軸との間隔が、レバーシャフト100の上端面101の幅よりも大きくなっていればよい。すなわち、嵌入孔251の中心軸を含む面であって、且つ、U字ばね保持部材320の挿入方向に対して垂直な面で切断した場合において、第一ピン301の中心軸と第二ピン302の中心軸との間隔がレバーシャフト100の上端面101の幅よりも大きくなっていればよい。
その後、シフトノブ200が更に押し下げられるに伴って、第一ピン301及び第二ピン302は、テーパー部102から受ける反力によって押し拡げられる。その結果、U字ばね300の復元力(第一ピン301及び第二ピン302がレバーシャフト100の側面を二方向から挟み込むような力)は次第に大きくなっていく。
シフトノブ200が更に押し下げられると、第一ピン301及び第二ピン302はテーパー部102の下端を越えて、それぞれ、溝120の傾斜部121及び溝110の傾斜部111に当接する。その直後、レバーシャフト100の上端面101が仕切板271の下面273(嵌入孔251の天面)に当接し、それ以上シフトノブ200を押し下げることができなくなる。この時点で、レバーシャフト100の上端部に対するシフトノブ200の組み付けが完了する(図6)。尚、図6に示した状態における第一ピン301と第二ピン302との間隔は、図3及び図5に示した状態における両者の間隔よりも広くなっている。
第一ピン301が傾斜部121に当接した時点(第二ピン302が傾斜部111に当接した時点と同時)には、第一ピン301が傾斜部121にぶつかることによって(第二ピン302が傾斜部111にぶつかることによって)音が発せられる。当該音により、作業者はシフトノブ200の組み付けが完了したことを認識することができる。
このとき、図6に示したように、第一ピン301は溝120の傾斜部121に当接しており、垂下部122や水平部123には当接していない。第一ピン301は、U字ばね300の復元力によって傾斜部121に押しつけられ、傾斜部121から反力(第一反力)を受けている。当該第一反力の方向は傾斜部121の法線方向、すなわち、下方且つレバーシャフト100の中心軸から遠ざかる方向(図6においては右下方向)となっている。従って、このような第一反力は、シフトノブ200を下方に押し下げるように働き、嵌入孔251の天面はレバーシャフト100の上端面101に対して押しつけられた状態となる。
同様に、第二ピン302は溝110の傾斜部111に当接しており、垂下部112や水平部113には当接していない。第二ピン302は、U字ばね300の復元力によって傾斜部111に押しつけられ、傾斜部111から反力(第二反力)を受けている。当該第二反力の方向は傾斜部111の法線方向、すなわち、下方且つレバーシャフト100の中心軸から遠ざかる方向(図6においては左下方向)となっている。従って、このような第二反力は、シフトノブ200を下方に押し下げるように働き、嵌入孔251の天面はレバーシャフト100の上端面101に対して押しつけられた状態となる。
以上のように、シフトレバー1においては、シフトノブ200をレバーシャフト100の長手方向に沿って押し込むだけで第一ピン301が溝120に係合し、第二ピン302が溝110に係合する。従って、シフトノブ200を容易に組み付けることが可能となっている。
続いて、付勢機構400の構造について、図7及び図8を参照しながら説明する。図7(A)は、シフトノブ200の内部構造を説明するための図であって、シフトノブ200から上部カバー201及び下部カバー202を取り外し、シャフト保持機構250を露出させた状態を示している。図2(A)とは異なり、図7(A)では付勢機構400の図示を省略せずに描いている。図7(B)は、図7(A)に示したシャフト保持機構250の付勢機構収納部270から、付勢機構400を取り外した状態を示している。図8は、付勢機構400の構造を示す分解組立図である。
尚、以降の説明においては、シフトノブ200をノブボタンLS側から見た場合において右側に向かう方向をx方向(右)とし、ノブボタンLS側から奥側に向かう方向をy方向(前)とする。また、レバーシャフト100の中心軸に沿って下方から上方に向かう方向をz方向(上)とする。x方向の逆方向、y方向の逆方向、z方向の逆方向は夫々−x方向(左)、−y方向(後)、−z方向(下)とする。
図7及び図8に示したように、付勢機構400は、第一保持部材410と、第二保持部材450と、ねじりコイルばね480とを有している。
第一保持部材410は、シャフト保持機構250に対して固定される部分であって、中空且つ略直方形状の挿入部411が形成されている。挿入部411の外形は、付勢機構収納部270の内部空間の形状と略同一である。図7(A)及び図7(B)に示したように、挿入部411がノブボタンLS側から付勢機構収納部270の内部に挿入されることにより、第一保持部材410がシャフト保持機構250に対して固定される。挿入部411の内部は中空となっており、その上下において開口している。このため、嵌入孔251の内部空間と挿入部411の内部空間とは互いに連通している。シフトノブ200がレバーシャフト100の上端部に組み付けられた状態においては、伝達バー130は、レバーシャフト100の内部から切欠き272の内側を貫き、仕切板271よりも更に上方に突出している(図6を参照)。このため、伝達バー130の上端部は挿入部411の内部に配置される。
第二保持部材450は、第一保持部材410よりもノブボタンLS側に配置される部材である。第二保持部材450は、その下端部近傍において第一保持部材410に対して回動可能な状態で連結されている。具体的には、その中心軸がx方向に沿うように配置された円筒形状のシャフト490が、第一保持部材410に形成された孔X1及び孔X2と、第二保持部材450に形成された孔X3を貫いている。第二保持部材450は、このシャフト490を回転軸として回動可能な状態となっている。
第二保持部材450は、孔X3が形成されている部分からz方向に向かって延びる鉛直部451と、鉛直部451の上端からy方向に向かって延びる押下部452とを有している。シャフト490は、第二保持部材450のうち鉛直部451の下端部近傍をx方向に貫いている。
第一保持部材410の挿入部411は、第二保持部材450に対向する面のうち上方部分が切り欠かれており、その内部空間に通じる開口412が形成されている。第二保持部材450の押下部452は、当該開口412をy方向に貫いた状態となっている。押下部452の先端部近傍(y方向側の先端部近傍)は、挿入部411の内部において、伝達バー130の上端面に対して上方から当接している。
鉛直部451は、その−y方向側の面において、ノブボタンLSに対して固定されている。このため、運転者によってノブボタンLSがy方向に押し込まれると、ノブボタンLSは第二保持部材450と共にシャフト490を回転軸として回動する。その結果、押下部452の先端部(y方向側の先端部)は下方(−z方向)に向かって変位し、伝達バー130を下方に押し下げる。
シフト装置側に配置されたバネ(図示なし)により、伝達バー130は常に上方(z方向)に向かって付勢された状態となっている。このため、ノブボタンLSが押された後、ノブボタンLSから指が離されると、伝達バー130はz方向に向かって移動して元の位置に戻る。押下部452の先端部は伝達バー130によって押し上げられて、これにより第二保持部材450はシャフト490を回転軸として回動し、元の位置に戻る。ノブボタンLSも第二保持部材450と共に回動し、元の位置に戻る。
ねじりコイルばね480は、第一保持部材410と第二保持部材450との間に配置されたばねであって、第二保持部材450を第一保持部材410に近づけるように付勢している。すなわち、シャフト490を回転軸として第二保持部材450を回動させ、押下部452の先端部を伝達バー130の上端面に押し付けるような方向に付勢している。このため、ノブボタンLSと共に回動する第二保持部材450は、伝達バー130の上端面に対して常に当接した状態となっている。その結果、ノブボタンLSのガタつきが抑制されている。
ねじりコイルばね480は、二つの直線部481、483を有しており、これらの間にコイル485を有している。直線部481と直線部483とのなす角度を変化させようとすると、当該角度を戻す方向の力がコイル485において生じる。図8に示したように、ねじりコイルばね480は、コイル485の中心軸をシャフト490の中心軸と平行にした状態で、且つ、コイル485を下方に向けた状態で、第一保持部材410と第二保持部材450との間に配置されている。
第一保持部材410は対向壁413を有している。対向壁413は、開口412の下方に形成されており、y方向に対して垂直な壁となっている。また、対向壁413は、第一保持部材410のうち、ねじりコイルばね480を挟んで第二保持部材450に対向する部分である。
対向壁413のうちx方向側の端部には、z方向に沿って側壁414が形成されている。側壁414は、対向壁413から第二保持部材450側(−y方向側)に向かって延びるように形成された板状の部分である。側壁414のうち第二保持部材450側(−y方向側)の端部には、−x方向に向かって延びる保持板420が形成されている。
保持板420は、対向壁413と第二保持部材450との間に介在するように、側壁414から対向壁413に略沿う方向に向かって延びている板ということができる。x方向に沿った保持板420の幅は、対向壁413の幅に比べて短い。このため、第一保持部材410を第二保持部材450側から見た場合においては、対向壁413のうち一部のみが保持板420により覆われた状態となっている。第一保持部材410は、対向壁413と保持板420との間にねじりコイルばね480の直線部481を挟み込むことにより、直線部481を保持している。この「挟み込む」とは、この直線部481を対向壁413と保持板420の間に配置することを意味し、直線部481が対向壁413と保持板420のいずれか一方もしくは両方に接している状況と、逆に直線部481が対向壁413と保持板420の両方から離間している状況とのいずれをも含む。
保持板420の具体的な形状について、図9を参照しながら説明する。図9に示したように、保持板420は、シャフト490側から直線部481の先端側(z方向側)に近づくに従って、そのx方向における幅が徐々に大きくなるように形成されている。換言すれば、保持板420のうち−x方向側(側壁414とは反対側)における端面422は、その縁423が、直線部481の延びる方向(z方向)に対して傾斜している。
また、保持板420のうち第二保持部材450に対向する面421は、シャフト490側から直線部481の先端側(z方向側)に近づくに従って、第二保持部材450から遠ざかるように傾斜している。すなわち、面421は、z方向に行くに従ってy方向に向かって後退するように傾斜している。
換言すれば、保持板420のうち側壁414とは反対側における端面422の縁423が、コイル485側(シャフト490側)においては第二保持部材450に比較的近くなっており、直線部481の先端側(z方向側)においては第二保持部材450から比較的遠くなっている。
また、保持板420のうち側壁414とは反対側における端面422は、その法線方向が、第二保持部材450側(−y方向側)に向かって傾斜している。すなわち、端面422は、対向壁413側の縁424の位置が、第二保持部材450側の縁423の位置よりも−x方向側となるように傾斜している。
図8に戻って説明を続ける。第二保持部材450のうち鉛直部451の上端部近傍には、挿入穴453(図8においては不図示)が形成されている。挿入穴453は、鉛直部451の−x方向側の面に形成された穴である。ねじりコイルばね480の直線部483は、その上端側がx方向に向かうように折り曲げられて、シャフト490と平行な取り付け部484が形成されている。取り付け部484は挿入穴453に挿入されている。このような構成により、第二保持部材450は直線部483を保持している。
以上のようであるから、ねじりコイルばね480の付勢力、すなわち、直線部481と直線部483とのなす角度を狭めようとする力は、シャフト490を回転軸として第二保持部材450を回動させ、第一保持部材410に近づけるような力として働く。換言すれば、ねじりコイルばね480の付勢力は、ノブボタンLSに対するx方向への付勢力として働く。
続いて、付勢機構400を組み立てる方法について説明する。具体的には、ねじりコイルばね480の直線部483を第二保持部材450に保持された状態とした後、ねじりコイルばね480の直線部481を第一保持部材410に保持された状態とするための方法について説明する。
図10乃至12は、付勢機構400を組み立てる方法を説明するための図である。それぞれの図における(A)は、第一保持部材410、ねじりコイルばね480、及び第二保持部材450の状態を斜視図で示したものである。(A)においては、直線部481の状態を明確に示す便宜のため、第一保持部材410の一部を切断したように描いている。
図10乃至12のそれぞれにおける(B)は、第一保持部材410とねじりコイルばね480とをy方向に沿って見た状態を示している。(B)においては、第二保持部材450の図示を省略している。
図10乃至12のそれぞれにおける(C)は、(B)のA−A断面を示している。(C)においては、第一保持部材410及びねじりコイルばね480(直線部481、483)の断面のみを示しており、第二保持部材450の断面については図示を省略している。
ねじりコイルばね480を付勢機構400に取り付ける際においては、まず、図10に示したように、ねじりコイルばね480の直線部483を第二保持部材450に取り付けた状態とする。すなわち、直線部483の上端側に形成された取り付け部484を、鉛直部451に形成された挿入穴453に挿入した状態とする。
このとき、シャフト490を回転軸として第二保持部材450を回動させることにより、第一保持部材410と第二保持部材450とのなす角度を大きく広げた状態としておく。直線部481は、未だ第一保持部材410に保持されていない。特に図10(C)を見れば明らかなように、直線部481は、第一保持部材410から見て保持板420よりも−y方向側(第二保持部材450側)に配置された状態となっている。
図10に示した状態から、シャフト490を回転軸として第二保持部材450を回動させて、第一保持部材410と第二保持部材450とを互いに近づけていく。すなわち、ねじりコイルばね480を挟み込むように、第一保持部材410と第二保持部材450とを近づけていく。ねじりコイルばね480の直線部481は保持板420に対して外側(第二保持部材450側)から当接した状態となり、保持板420に対して押しつけられていく。
図9を参照しながら既に説明したように、保持板420のうち第二保持部材450に対向する面421は、シャフト490側から直線部481の先端側(z方向側)に近づくに従って、第二保持部材450から遠ざかるように傾斜している。このため、第一保持部材410と第二保持部材450とを互いに近づけていく過程においては、ねじりコイルばね480の直線部481が比較的早い時点で保持板420に当接した状態となる。
直線部481は、保持板420に対して外側から(対向壁413に向かう方向に)押しつけられて、保持板420との当接個所から抗力を受ける。直線部481は、保持板420のうち側壁414とは反対側における端面422の縁423において、保持板420に対して当接した状態となる。
上記のように、端面422の縁423はz方向に対して傾斜しており、y方向に沿って見た場合においては、直線部481に対して斜めに交差するような状態で当接している。このため、直線部481が縁423との当接個所から受ける抗力は、直線部481を側壁414から遠ざける方向に働く。すなわち、当該抗力は−x方向の成分を有している。
第一保持部材410と第二保持部材450とを互いに近づけていくと、直線部481は、次第に増加する上記抗力を受けることによって縁423に沿うように変形していく。すなわち、直線部481の上端部が−x方向側に変位するように変形していく。
これに伴い、直線部481と保持板420(縁423)との当接個所が、コイル485側(シャフト490側)から直線部481の上端側へと移動するように、直線部481は縁423に沿ってスライドしていく。図11は、このときにおけるねじりコイルばね480等の状態を示している。図11(C)に示したように、直線部481と保持板420(縁423)とはA−A断面において互いに当接している。
第一保持部材410と第二保持部材450とを更に近づけていくと、直線部481と縁423との当接個所は更にz方向側に移動する。その後、直線部481はその上端が−x方向に移動するように更に傾いて、縁423とは当接しない状態となり、端面422のうち縁(423、424)の内側の部分のみと当接した状態となる。当該当接個所は、端面422に沿ってy方向側且つ−x方向側に向かって移動して行き、縁424に到達する。最終的には、直線部481の先端が保持板420の端面422を乗り越えて、直線部481が保持板420と対向壁413との間に挟み込まれた状態となる。図12は、このときにおけるねじりコイルばね480等の状態を示している。
直線部481が端面422を乗り越えると、−x方向側に変位していた直線部481の上端部はx方向側に戻ろうとする。このため、直線部481が端面422を乗り越えた直後においては、図12(C)に示したように、直線部481の一部が側壁414に対してx方向に押しつけられた状態となっている。このため、付勢機構400に取り付けられた状態のねじりコイルばね480が、付勢機構400の内部でガタついてしまうようなことが防止される。
ところで、直線部481と保持板420との当接個所は、上記のように縁423に沿って上方に移動し、縁423の上端位置に到達するよりも前の時点で縁423を離れた後、端面422に沿って縁424に向かうように移動する。しかし、付勢機構400を組み立てる際において上記当接個所が辿る経路は、そのようなものに限定されるものではない。直線部481と保持板420との当接個所が辿る経路は、保持板420の形状や、ねじりコイルばね480の形状(特に、直線部481の長さ)によって変化し得るものである。
例えば、直線部481と保持板420との当接個所が縁423に沿って上方に移動し、縁423の上端位置にまで到達した後、直線部481が保持板420と対向壁413との間に挟み込まれた状態となることも考えられる。すなわち、直線部481が端面422(縁の内側の部分)には殆ど当接しないまま、保持板420と対向壁413との間に挟み込まれた状態となることも考えられる。このような態様であっても、本発明の効果を奏する。
以上のように、本実施形態に係る付勢機構400では、直線部481が保持される部分の形状、特に保持板420の形状を工夫している。これにより、第一保持部材410と第二保持部材450とを互いに近づけるように力を加えるという簡単な操作のみで、ねじりコイルばね480を容易且つ確実に取り付けることが可能となっている。
また、図9を参照しながら説明したように、保持板420のうち第二保持部材450に対向する面421が、シャフト490側から直線部481の先端側(z方向側)に近づくに従って、第二保持部材450から遠ざかるように傾斜している。
このような構成であるから、ねじりコイルばね480を取り付けるために第一保持部材410と第二保持部材450とを互いに近づけていく過程においては、ねじりコイルばね480の直線部481が早い時点で保持板420に当接した状態となる。その結果、直線部481と保持板420とが当接してから、直線部481が保持板420を乗り越えるまでの間に、第二保持部材450がシャフト490を中心として相対的に回転する角度は、比較的大きくなっている。このため、第一保持部材410と第二保持部材450とを近づけるために必要な力は小さくなっており、作業者の負担が軽減されている。
また、図9を参照しながら説明したように、保持板420のうち側壁414とは反対側における端面422は、その法線方向が、第二保持部材450側(−y方向側)に向かって傾斜している。
その結果、x方向に沿った保持板420の幅は、最も対向壁413側(y方向側)においては広くなっている一方で、第二保持部材450側(−y方向側)においては狭くなっている。このような構成であるから、ねじりコイルばね480の直線部481を(外れないように)保持するために十分な大きさとなるよう、x方向に沿った保持板420の幅を確保しながらも、保持板420と対向壁413との間に直線部481を挟み込んだ状態とすることが容易となっている。
付勢機構400におけるその他の工夫について説明する。ねじりコイルばね480に外力が加えられていない状態においては、直線部481と直線部483とのなす角度は0度よりも大きく、90度よりも小さい。このような形状のねじりコイルばね480を間に挟み込んだ状態で、第一保持部材410と第二保持部材450とを近づけていくと、ねじりコイルばね480が上方に移動してしまい、所定の位置からはみ出てしまうようなことが考えられる。すなわち、第一保持部材410と第二保持部材450とを単に近づけただけでは、ねじりコイルばね480を取り付けることができないことも考えられる。
本実施形態においては、図10(A)等に示したように、ねじりコイルばね480のコイル485は、その中心軸が、第二保持部材450の鉛直部451よりもy方向側となるように配置されている。また、ねじりコイルばね480の直線部483は、その上端側に形成された取り付け部484が挿入穴453に挿入されており、これにより直線部483が第二保持部材450に保持されている。
このような構成とすることにより、シャフト490を中心に第二保持部材450を回動させ、第一保持部材410と第二保持部材450とを近づけていくと、ねじりコイルばね480のコイル485は確実に下方に向けて移動し、直線部481も下方に移動する。このように、本実施形態においては、ねじりコイルばね480が上方に移動してしまい、所定の位置からはみ出てしまうようなことを、コイル485が配置される位置等を工夫することによって防止している。
本実施形態においては、ねじりコイルばね480によってノブボタンLSは押し込まれる方向に付勢されている。本発明の実施形態としてはこのような態様に限られず、押し込まれた状態のノブボタンLSを元の位置に戻す方向に付勢されるような構成としてもよい。
この場合には、第一保持部材410と第二保持部材450とは、互いに遠ざかる方向に付勢されることとなる。従って、付勢機構収納部270に取り付けられる前の付勢機構400においては、押下部452の一部が挿入部411の上端よりも高い位置に突出した状態となってしまう可能性がある。このため、付勢機構400の挿入部411を付勢機構収納部270に挿入する際においては、押下部452に対して押し下げるような力を加えておく必要がある。
これに対し、本実施形態では、第一保持部材410と第二保持部材450とは互いに近づく方向に付勢されている。このため、図7(B)に示したように、付勢機構収納部270に取り付けられる前の付勢機構400においては、押下部452の全体が挿入部411の内部に収納された状態となっている。すなわち、押下部452の上端の位置は、挿入部411の上端の位置よりも低くなっている。従って、付勢機構400の挿入部411を付勢機構収納部270に挿入する際においては、押下部452に押し下げるような力を加えておく必要がない。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。