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JP6103776B2 - ヘマトクリット値の測定方法 - Google Patents

ヘマトクリット値の測定方法 Download PDF

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JP6103776B2 JP2014508111A JP2014508111A JP6103776B2 JP 6103776 B2 JP6103776 B2 JP 6103776B2 JP 2014508111 A JP2014508111 A JP 2014508111A JP 2014508111 A JP2014508111 A JP 2014508111A JP 6103776 B2 JP6103776 B2 JP 6103776B2
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Description

本発明は、イムノクロマトグラフィーを利用して、血液検体を希釈したサンプル中の測定対象物を測定する方法に関する。特に、サンプルを吸収させた部材の反射光強度を測定することによりヘマトクリット値を算出し、前記測定対象物の測定値をヘマトクリット補正する工程を含む、前記測定方法に関する。
近年、診療所や小病院において、「患者を診察している間に種々の検査を実施したい」というニーズが大きくなってきており、従来の外注検査から、Point of Care Testing(POCT)による検査が行われるようになってきている。このようなPOCTに用いられる試薬の代表例としては、ラテラルフロー式のイムノクロマトグラフィー用テストストリップなどが挙げられる。一般的なイムノクロマトグラフィー用テストストリップには、測定対象物を測定するテストラインと、反応が成立したことを示すコントロールラインとがある。測定対象物と、測定対象物に対する抗体が固定化された標識体との複合体は、不溶性メンブレンのテストライン上に固定化された抗体に捕捉されテストラインを形成し、テストラインで捕捉されなかった残りの標識体がコントロールラインの抗免疫グロブリン抗体によって捕捉され、コントロールラインを形成する。
イムノクロマトグラフィーを利用した測定方法には、テストラインの発色を目視などで判定する定性的な方法と、テストラインの発色強度を専用機器などで測定する定量的な方法とがあり、それぞれの方法に対応するイムノクロマトグラフィー用テストストリップやテストデバイスが使用されている。
イムノクロマトグラフィー用テストストリップのテストライン等の発色強度を専用機器で測定する定量的な方法においては、検体の種類、検体の使用量、測定原理等に応じて、様々な前処理が行なわれる場合がある。検体をテストストリップまたはテストデバイスに供給するに際しても、検体をそのまま滴下する場合、検体を専用希釈液で希釈してから滴下する場合、および少量の検体を滴下後に専用希釈液を滴下する場合などがある。乳幼児や小児の検体など、検体を大量に採取することが難しい場合や、検体中の測定対象物が高濃度であるときに測定対象物の濃度を測定に適した濃度に調整する場合等は、専用希釈液により検体が希釈されることが多い。
通常、血中成分の濃度は、全血から分離した血清または血漿をサンプルとして測定されているが、全血から血清または血漿を得るためには遠心分離機のような装置が必要で時間もかかる。そのため、POCTの領域では、全血を用いた測定が望まれている。全血を希釈して溶血させたサンプルを測定する場合、血清や血漿を測定した場合と異なり、血球容積分の希釈を受けた測定結果となる。そのため、測定結果をヘマトクリット値(血液中に占める血球の容積の割合)で補正する必要がある。なお、以下、ヘマトクリット値を用いて血液検体中の測定対象物の測定値を補正することを、単に、「ヘマトクリット補正」ということがある。
上記の課題に対して、従来は、健常人における平均ヘマトクリット値より得られる補正係数を測定結果に一律に乗じる補正が行われていた。しかし、ヘマトクリット値は、個々人によって異なっており、その基準値は、男性で39〜52%、女性では35〜48%と幅がある。それ故、一律の係数を乗じる従来の補正では正確な測定対象物の濃度は得られない。測定対象物の正確な濃度を測定するためには、測定対象物濃度を測定した検体と同じ検体のヘマトクリット値で補正する必要がある。
ヘマトクリット値は、従来、遠心法によるミクロヘマトクリット法か、または、自動血球計数装置を用い、赤血球数と平均赤血球容積から計算によって求められていた。
また、別法として、全血を検体として得られた測定結果から、血清又は血漿を測定した場合の測定値へ変換する測定において、全血中のヘモグロビン濃度(g/dl)を測定し、得られたヘモグロビン濃度を約3倍した数値をヘマトクリット値(%)として採用し、そのヘマトクリット値を用いて、全血の測定結果から血清又は血漿を測定した場合の測定値へ変換する方法が報告されている(特許文献1)。
しかしながら、これらの方法でも、イムノクロマトグラフィー法による測定対象物の濃度測定とは別の方法により、ヘモグロビン濃度およびヘマトクリット値を求めなくてはならず、煩雑で、時間とコストもかかり、POCT領域における検査ニーズを満足できるものではない。
また、特許文献2には、イムノクロマトグラフィー用テストストリップを利用した測定方法において、テストストリップのコントロールラインにおいてヘマトクリット値を測定する方法が示されている。しかしながら、該方法は、免疫反応を利用しているため、測定対象物測定用の抗体とは別に、ヘマトクリット値を求めるための抗体をさらに必要であるという課題がある。
特開2001−272403号公報 国際公開2011/125877号パンフレット
本発明の目的は、イムノクロマトグラフィーを利用して、血液検体を希釈して得られるサンプル中の測定対象物を測定する方法において、ヘマトクリット値を再現性良く算出する工程を備えた測定方法を提供することにある。
さらに、前記測定方法を具現化するテストデバイスを提供することを目的とする。
本発明者らは、イムノクロマトグラフィーを利用して、血液検体を希釈して得られるサンプル中の測定対象物を測定する方法において、サンプル中のヘモグロビン成分を保持(濾過もしくは吸着)させた部材の反射光強度を用いて血液検体中のヘモグロビン(Hb濃度を測定することが可能であることを見出し、そのHb濃度からヘマトクリット値を算出し、測定対象物の測定値のヘマトクリット補正ができることを確認し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の構成を有する。
〔1〕血液検体を溶血させたサンプル中の測定対象物を、イムノクロマトグラフィー用テストストリップを用いて測定する測定方法であって、
上記イムノクロマトグラフィー用テストストリップは、下記1)〜3)を有し、
1)サンプルを吸収し、サンプル中のヘモグロビン成分が保持されるサンプルパッド
2)サンプルパッドの下流側に位置し、測定対象物に対する第一の抗体が標識体に固定化されたコンジュゲートを含有するコンジュゲートパッド
3)コンジュゲートパッドの下流側に位置し、測定対象物に対する第二の抗体が固定化されたテストラインを有する不溶性メンブレン
かつ、下記A)及びB)の工程を有する前記測定方法。
A)サンプルをサンプルパッドに供給し、サンプルパッドに保持されたヘモグロビンを光学的に検出して、血液検体のヘマトクリット値を求める工程
B)不溶性メンブレン上のテストラインにおいて測定対象物を測定する工程
〔2〕さらに下記工程C)を含む前記〔1〕に記載の測定方法。
C)工程A)で求めたヘマトクリット値により、工程B)の測定対象物の測定値をヘマトクリット補正する工程
〔3〕血液検体を溶血させたサンプル中の測定対象物を測定するための、イムノクロマトグラフィー用テストストリップをハウジングに格納したテストデバイスであって、
イムノクロマトグラフィー用テストストリップは、下記1)〜3)を有し、
1)サンプルを吸収し、サンプル中のヘモグロビン成分が保持されるサンプルパッド
2)サンプルパッドの下流側に位置し、測定対象物に対する第一の抗体が標識体に固定化されたコンジュゲートを含有するコンジュゲートパッド
3)コンジュゲートパッドの下流側に位置し、測定対象物に対する第二の抗体が固定化されたテストラインを有する不溶性メンブレン
かつ、ハウジングは、下記4)及び5)を有するテストデバイス。
4)サンプルパッドに保持されたヘモグロビン成分を光学的に検出するための、サンプル検出窓部
5)テストラインを光学的に検出するための、テストライン検出窓部
本発明の測定方法を用いることにより、血液検体を希釈して得られるサンプル中の測定対象物をイムノクロマトグラフィーを利用して測定する方法において、新たな測定系の構築や、煩雑な測定操作を実施することなく、ヘマトクリット値が求められる。
また、本発明の測定方法では、同一サンプル中の測定対象物とヘモグロビンの測定を、同一のイムノクロマトグラフィーにより行うため、サンプルの測定対象物濃度を同一サンプルのヘマトクリット値にもとづき補正することができ、測定対象物濃度をより正確に測定することができる。
さらにまた、本発明の測定方法は、サンプル中のヘモグロビン濃度を反射光強度により測定するため、ヘモグロビン濃度を測定するための抗体を用意する必要がなく、コストが削減される。また、非特異物質存在下におけるヘモグロビン測定値の乖離の恐れを回避することが可能となり、測定対象物のより正確なヘマトクリット補正が可能となる。
また、本発明のテストデバイスは、上記の測定方法に好適に用いられる。
本発明で用いられるイムノクロマトグラフィー用テストストリップの構造を示す模式図である。
本発明の測定方法について詳述する。
本発明の測定方法は、血液検体を溶血させたサンプル中の測定対象物を、イムノクロマトグラフィー用テストストリップを用いて測定する方法であって、上記イムノクロマトグラフィー用テストストリップは、下記1)〜3)を有し、かつ、下記A)及びB)の工程を含む方法である。
1)サンプルを吸収し、サンプル中のヘモグロビン成分が保持されるサンプルパッド
2)サンプルパッドの下流側に位置し、測定対象物に対する第一の抗体が標識体に固定化されたコンジュゲートを含有するコンジュゲートパッド
3)コンジュゲートパッドの下流側に位置し、測定対象物に対する第二の抗体が固定化されたテストラインを有する不溶性メンブレン
A)サンプルをサンプルパッドに供給し、サンプルパッドに保持されたヘモグロビンを光学的に検出して、血液検体のヘマトクリット値を求める工程
B)不溶性メンブレン上のテストラインにおいて測定対象物を測定する工程
前記イムノクロマトグラフィー用テストストリップのサンプルパッド上へのサンプルの滴下は、通常臨床検査領域で行われているように、一定量のサンプルを滴下できる方法であればいずれの方法によってもよい。例えば、定量ピペットや一定量の液滴を滴下できるスポイトを用いる方法が挙げられる。また、マニュアルで滴下しても良く、オート操作できる装置を用いてもよい。
ヘモグロビン濃度を光学的に測定する方法としては、SLS−Hb法等の公知の方法に従って行えばよく、例えば、吸光度あるいは反射光強度を測定すればよい。
この反射光強度の変化量を、既知濃度のサンプルのキャリブレーションカーブ(検量線)に外挿することにより、ヘモグロビンの濃度(Hb値)が算出される。
キャリブレーションカーブのHb値を一般的な相関係式(1)を用いてヘマトクリット値に換算し、ヘマトクリット値のキャリブレーションカーブを作成することができる。

ヘマトクリット値(%) = Hb値(g/dL) × 2.9 (1)
次に、上記ヘマトクリット値による補正を、CRP測定方法に適用する場合を例に挙げて、本発明の測定方法について説明する。
本発明のCRP測定方法は、血液検体を溶血させたサンプル中のCRP濃度を、イムノクロマトグラフィー用テストストリップを用いて測定する方法であって、イムノクロマトグラフィー用テストストリップは、下記1)〜3)を有し、かつ、下記A)〜C)の工程を有する測定方法である。
1)サンプルを吸収し、サンプル中のヘモグロビン成分が保持されるサンプルパッド
2)サンプルパッドの下流側に位置し、CRPに対する第一の抗体が標識体に固定化されたコンジュゲートを含有するコンジュゲートパッド
3)コンジュゲートパッドの下流側に位置し、CRPに対する第二の抗体が固定化されたテストラインを有する不溶性メンブレン(ここで、CRPに対する第一の抗体のエピトープが一価の場合は第二の抗体のエピトープは第一の抗体と異なるが、第一の抗体のエトープが多価の場合は第二の抗体のエピトープは第一の抗体と同じ、若しくは第一の抗体と第二の抗体が同じ場合を含む。)
A)サンプルをサンプルパッドに供給し、サンプルパッドに保持されたヘモグロビンを光学的に検出して、血液検体のヘマトクリット値を求める工程
B)不溶性メンブレン上のテストラインにおいてCRPを測定する工程
C)工程A)で求めたヘマトクリット値により、工程B)のCRPの測定値をヘマトクリット補正する工程
CRP濃度の測定は、テストラインにおけるシグナル変化量をそのまま測定値として求めるものであってもよいし、そのシグナル変化量から算出されるものであってもよい。
また、標識体に由来するシグナルを測定する方法としては、公知の方法に従って行えばよく、例えば標識体が金コロイド粒子の場合は、吸光度あるいは反射光強度を測定すればよい。この吸光度もしくは反射光強度の変化量を既知濃度のサンプルのキャリブレーションカーブに外挿して、CRPの濃度が算出される。
標識体のシグナルを測定する方法をヘモグロビンのシグナルを測定する方法と同一とすれば、1つの測定機器で測定することができるため、測定システムが簡略化できて望ましい。
C)の工程においては、具体的には、テストストリップのテストラインで測定されたCRP濃度を、テストストリップのサンプルパッドで測定されたヘモグロビンの値から算出されたヘマトクリット値で補正する。CRP濃度をヘマトクリット補正する方法は、従来のヘマトクリット補正する場合と同様、下記のように算出される。
Figure 0006103776
(測定対象物)
本発明における測定対象物は、血液中に存在する物質であり、ヘマトクリット補正を必要とするものである。例えば、C反応性蛋白(CRP)、IgA、IgG、IgMなどの炎症関係マーカー、フィブリン分解産物(例えばDダイマー)、可溶性フィブリン、トロンビン−アンチトロンビン複合体(TAT)、プラスミン−プラスミンインヒビター複合体(PIC)などの凝固・線溶マーカー、酸化LDL、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)などの循環関連マーカー、アディポネクチンなどの代謝関連マーカー、癌胎児性抗原(CEA)、α-フェトプロテイン(AFP)、CA19−9、CA125、前立腺特異抗原(PSA)などの腫瘍マーカー、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、アレルゲン特異的免疫グロブリンE(IgE)、ホルモン、薬物などが例示される。
(検体およびサンプル)
本発明における検体は血液であり、これらの血液検体が検体希釈液で希釈され、溶血されたものをサンプルという。血液検体の希釈について、測定対象物がC反応性タンパク質(CRP)である場合を例に詳述する。血液検体の希釈は、測定対象物の測定に適した濃度を考慮して行われるが、一般的には希釈倍率は2〜10000倍である。また、50倍〜200倍に希釈し溶血したサンプルを用いることが望ましく、例えば希釈率を100倍とし、CRPの測定範囲を0.2〜20mg/mLとすれば好適である。
CRPの測定方法の場合、イムノクロマトグラフィー用テストストリップは、乳幼児や小児を測定対象者と定め、検体量は1〜10μLとして設計されている。そこで、イムノクロマトグラフィーによる測定に必要なサンプル量を確保するために、血液検体は検体希釈液にて10〜200倍に希釈される。また、Hb濃度を反射光強度で測定する場合、着色の変化を捉えるためという点からも、10〜100倍に希釈される。
次に、本発明の測定方法に用いられるイムノクロマトグラフィー用テストストリップ及びテストデバイスについて詳述する。
(測定対象物に対する抗体)
後述する標識体及びイムノクロマトグラフィー用テストストリップのテストラインには、測定対象物に対する抗体が固定化される。
測定対象物に対する抗体は、測定対象物に対して特異的に反応する抗体であればよく、それらを作製する方法によって何ら限定されるものではなく、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。例えば、測定対象物がヒトCRPの場合には、抗ヒトCRP抗体は、ヒトCRPに対して特異的に反応する抗体であればよく、それらを作製する方法によって何ら限定されるものではなく、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。一般的に当該抗体を産生するハイブリドーマは、KohlerとMilsteinの方法(Nature、第256巻495頁(1975年)参照)に準じ、ヒトCRPで免疫した動物の脾臓細胞と同種のミエローマ細胞(骨髄腫細胞)とを細胞融合して作製することができる。
ここで、本発明に用いられる抗体がモノクローナル抗体の場合、標識体に固定化される抗体(第一の抗体)と、不溶性メンブレンに固定化される抗体(第二の抗体)の関係は、第一の抗体のエピトープが一価の場合は第二の抗体のエピトープは第一の抗体と異なるものが用いられ、第一の抗体のエピトープが多価の場合は第二の抗体のエピトープは第一の抗体と同じ抗体であってもよいし、第一の抗体と第二の抗体が同じ抗体であってもよい。
例えば、血液検体を10〜200倍程度に希釈したサンプルを用いるCRPの測定方法の場合は、CRP濃度が100倍希釈程度で0.2〜20mg/dLの測定が可能な抗体の組合せが望ましい。
(サンプルパッド)
本発明において、サンプルパッドとは、サンプルを受け入れる部位である。サンプルパッドは、パッドに成型された状態でサンプルを吸収し、サンプルの液体成分と測定対象とが通り抜けるパッドであれば、どんな物質及び形態であってもよい。
また、サンプルパッドは、サンプル中のヘモグロビンの少なくとも一部を、濾過又は吸着により、通過させずに保持する。
本発明において、サンプルパッドは、サンプルを受け入れる部位であるのと同時に、一部通過せずに保持されたサンプル中のヘモグロビン濃度を反射光強度により測定するヘモグロビン測定部位としての役割を担っている。
サンプルパッドに適した材料としては、ガラス繊維(グラスファイバー)、アクリル繊維、親水性ポリエチレン材、乾燥紙、紙パルプ、織物等が挙げられるが、これらに限定されない。より好適には、グラスファイバー製パッドが用いられる。サンプルパッドには、後述するコンジュゲートパッドの機能を併せ持たせてもよい。また、サンプルパッドには、不溶性メンブレン等における非特異的反応(吸着)を防止・抑制する目的で、通常使用されるブロッキング試薬を含ませてもよい。
該ブロッキング試薬としては、例えば商品名「NEO PROTEIN SAVER」(TOYOBO製)、セリシン、商品名「イムノブロック」(大日本製薬製)、商品名「ApplieBlock」(生化学バイオビジネス製)、商品名「SEA BLOCKTM/EIA/WB」(PIERC製)、商品名「Blocking One」(ナカライテスク製)、BSA、商品名「Blocking Peptide Fragment」(TOYOBO製)、商品名「StartingBlock」(PBS)、商品名「Blocking Buffer」(PIERCE製)、商品名「SmartBlock」(CANDOR bioscience GmbH製)、商品名「HeteroBlock」(Omega Biologicals社製)等から、特異的反応そのものに悪影響を与えないものを適宜選択可能である。
(コンジュゲート)
本発明で用いられるコンジュゲートは、上記で述べた測定対象物に対する抗体が、標識体に固定化されたものである。
標識体としては、イムノクロマトグラフィー法において、抗体の固定化担体として従来から用いられているものが挙げられる。例えば、金コロイド粒子、や白金コロイド粒子などの金属コロイド粒子、カラーラテックス粒子、磁性粒子等が好ましく、特に金コロイド粒子が好ましい。
金コロイド粒子の粒径は、測定の感度に大きく影響することが知られているが、本発明においては、金コロイド粒子の粒径は20〜60nmが好ましく、特に30〜40nmが好ましい。尚、粒径は、ダイナミック光散乱法(Particles sizing systems社製、 NICOMP)で測定された値である。
金コロイド粒子は一般に知られている方法、例えば、加熱したテトラクロロ金(III)酸水溶液にクエン酸三ナトリウム水溶液を滴下攪拌することによって製造される。
以下、金コロイド粒子を用いた場合について詳述する。
(標識体への抗体の感作)
測定対象物に対する抗体を、標識体に感作することで、コンジュゲートが得られる。
測定対象物に対する抗体の標識体への固定化、例えばCRPに対する抗体の金コロイド粒子への固定化は、通常、物理吸着によって行う。この際、抗体濃度は0.5μg/mL〜5μg/mLに調製されるのが好ましく、緩衝液及びそのpHは、0.1〜10mmol/Lリン酸緩衝液(pH6〜7)が好ましく、より好ましくは2mmol/Lリン酸緩衝液(pH6〜7)であり、さらに好ましくは2mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.0)である。また、金コロイド粒子上の抗体が結合していない領域は、BSAなどを結合させブロッキング処理するのが好適である。
このようにして作製されたコンジュゲートは、変性を阻止するための成分(変性阻止剤)を含む保存試薬中に分散され保存される。この変性阻止剤としては、BSAなどのタンパク質、グリセリン、糖などが用いられる。
(検出試薬)
本発明において、検出試薬とは、具体的には少なくともコンジュゲートを含有する溶液である。
検出試薬は、コンジュゲートを安定な状態に保ち、サンプルと混合されたときにコンジュゲートに固定化された抗体が測定対象物(例えばCRP)と特異的に反応するのを促進する、あるいはコンジュゲートを迅速かつ効果的に溶解、流動化する目的で、例えば1種類以上の安定化剤、溶解補助剤等を含有していてもよい。安定化剤、溶解補助剤等としては、例えばウシ血清アルブミン(BSA)、スクロース、カゼイン、アミノ酸類などをあげることができる。
なお、本明細書において、「検出」又は「測定」という用語は、測定対象物の存在そのものの証明、定性、定量等のいずれも含む意味であって、限定的に解釈されるものではない。
(コンジュゲートパッド)
本発明において、コンジュゲートパッドとは、測定対象物と特異的に反応するコンジュゲートを含有する検出試薬を、後述のコンジュゲートパッドに適した材料に含浸させて乾燥させたものである。コンジュゲートパッドは、サンプルが該コンジュゲートパッドを通過する際、コンジュゲートと測定対象物とが複合体を形成する機能を有する。
コンジュゲートパッドは、単独で不溶性メンブレンに接するように配置されていてもよい。あるいは、前記サンプルパッドと接触して配置され、毛細管流によってサンプルパッドを通過したサンプルを受入れ、引き続き該サンプルを毛細管流によって前記サンプルパッドとの接触面とは異なる面でコンジュゲートパッドと接触する別のパッド(以後、「3rdパッド」と記す。)に移送するように配置されてもよい。なお、サンプルパッド、コンジュゲートパッド等を不溶性メンブレンにどのように配置するかは、適宜に変更可能である。
コンジュゲートパッドに適した材料としては、紙、セルロース混合物、ニトロセルロース、ポリエステル、アクリロニトリルコポリマー、グラスファイバー(ガラス繊維)またはレーヨンのような不織繊維等が挙げられるが、これらに限定されない。好適には、グラスファイバー製パッドが用いられる。
また、コンジュゲートパッドは、コンジュゲートを安定な状態に保ち、コンジュゲートがサンプルと接触した際に、サンプル中の測定対象物(例えばCRP)と特異的に反応するのを促進、あるいは迅速かつ効果的に溶解、流動化する目的で、例えば1種類以上の安定化剤、溶解補助剤等を含有していてもよい。安定化剤、溶解補助剤等としては、例えばウシ血清アルブミン(BSA)、スクロース、カゼイン、アミノ酸類などが挙げられる。特に、抗CRP抗体は、Ca2+イオン存在下と非存在下とでは反応性が大きく異なる場合があり、反応性を制御する目的で、コンジュゲートパッドに適宜Ca2+イオンのキレート剤であるEDTAやEGTAなどを含有させても良い。反対にCa2+イオンを添加する目的で、CaCl2などのカルシウム塩類を添加しても良い。
(3rdパッド)
本発明においては、サンプルパッドと不溶性メンブレンの間に、3rdパッドを位置させることが好ましい。3rdパッドは、サンプルパッドとコンジュゲートパッドとの間、又はコンジュゲートパッドと不溶性メンブレンとの間のいずれに位置してもよいが、コンジュゲートパッドと不溶性メンブレンとの間が好ましい。
3rdパッドは、サンプル中に含まれ得る、測定対象物の測定に不要な成分を除去し、測定に必要な成分が不溶性メンブレンをスムーズに展開できるようにすることを目的として配置される。例えば、サンプル中の血球や不溶性の血球破砕物などは、CRPなどの測定対象物の測定に不要な成分であるので、3rdパッドで除去されることが望ましい。
また、この3rdパッドには、抗原抗体反応により生成する凝集体のうち、不溶性メンブレンをスムーズに展開できないほど大きくなった凝集体をあらかじめ除去するという付加的な機能を併せ持たせることも可能である。
3rdパッドは、サンプルの液体成分と測定対象物とが通り抜けるものであれば、どのような物質及び形態のものであってもよい。3rdパッドを構成する物質として、具体的には、ガラス繊維(グラスファイバー)、アクリル繊維、親水性ポリエチレン材、乾燥紙、紙パルプ、織物等が挙げられるが、これらに限定されない。好適には血球分離膜やそれに類する膜が用いられる。
(不溶性メンブレン)
本発明において、不溶性メンブレン(以下、単に「メンブレン」と記載することがある)としては、任意の材質のものが使用できる。例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン類、ガラス、セルロースやセルロース誘導体などの多糖類あるいはセラミックス等が挙げられるが、これらに限定されない。具体的には、ミリポア社、東洋濾紙社、ワットマン社などより販売されているガラス繊維ろ紙やセルロースろ紙などが挙げられる。また、この不溶性メンブレンの孔径と構造を適宜選択することにより、コンジュゲートと測定対象物との免疫複合体がメンブレン中を流れる速度を制御することが可能である。メンブレン中を流れる速度の制御により、メンブレンのテストラインに固定化された抗体に結合する免疫複合体の量を調節することができるため、メンブレンの孔径と構造は、イムノクロマトグラフィー用テストストリップの他の部位の構成材料との組み合わせを考慮して最適化することが望ましい。
(不溶性メンブレンへの抗体の固定化)
不溶性メンブレン上には、測定対象物を測定するためのテストラインが形成されており、テストラインには、測定対象物に対する抗体が固定化されている。
測定対象物に対する抗体の不溶性メンブレンへの固定化は、公知の方法で実施することができる。例えば、イムノクロマトグラフィー用テストストリップがラテラルフロー式の場合には、抗体を所定の濃度に調製し、その液をノズルから一定の速度で吐出しながら水平方向に移動させることのできる機構を有する装置などを用いて、ライン状に不溶性メンブレンに塗布することにより行われる。
この際、抗体の濃度は0.1mg/mL〜5mg/mLが好ましく、0.5mg/mL〜2mg/mLがさらに好適である。また、抗体の不溶性メンブレンの固定化量は、ラテラルフロー式の場合には上記の装置のノズルからの吐出速度を調節することによって最適化できる。ラテラルフロー式の場合、0.5μL/cm〜2μL/cmが好適である。なお、本発明において、ラテラルフロー式とは、サンプル液等が不溶性メンブレンに対して並行方向に移動するように展開する方式であり、フロースルー式とは、サンプル液等が不溶性メンブレンに対して垂直に通過するように展開する方式である。
また、本発明において、テストラインの位置、すなわち、測定対象物に対する抗体の不溶性メンブレンへの塗付位置は特には限定されず、ラテラルフロー式の場合であれば、コンジュゲートパッドから、測定対象物とコンジュゲートとの免疫複合体が毛細管現象によって展開し、テストラインを通過するように配置されれば良い。
また、不溶性メンブレンには、測定の終了を確認するためのコントロールラインが形成されているのが好ましい。コントロールラインには、展開してきたコンジュゲートを捕捉する抗体が固定化されている。このような抗体としては、例えば、抗マウスIgG抗体が挙げられる。
好ましくは、測定対象物に対する抗体の塗付されたテストラインが上流にあり、抗マウスIgG抗体の塗付されたコントロールラインはその下流に位置するように配置するのが好ましい。この際、それぞれのライン間の距離は標識体のシグナル検出が可能であるように十分の距離をとることが望ましい。フロースルー式の場合にも、測定対象物に対する抗体の塗付位置は標識体のシグナル検出が可能であるように配置されていれば良い。
不溶性メンブレンへ塗付する抗体液は、通常、所定の緩衝液を用いて調製することができる。その緩衝液の種類としては、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、グッド緩衝液など通常使用される緩衝液を挙げることができる。緩衝液のpHは6.0〜9.5の範囲が好ましく、6.5〜8.5がより好ましく、7.0〜8.0がさらに好ましい。緩衝液には、さらに塩化ナトリウムなどの塩類、スクロースなどの安定剤や、プロクリンなどの防腐剤等が含まれていてもよい。塩類は、塩化ナトリウムなどのようにイオン強度の調整のために含ませるもののほか、水酸化ナトリウムなど緩衝液のpHを調整する工程で添加するものも含まれる。
不溶性メンブレンに抗体を固定化した後、さらに、通常使用されるブロッキング剤を溶液あるいはミスト状にして抗体固定化部位以外を被覆し、ブロッキングを行うこともできる。本明細書では、上記のように抗体が固定化された不溶性メンブレンを「抗体固定化メンブレン」ということがある。
本発明において、サンプルパッド、コンジュゲートパッド、不溶性メンブレンは、サンプルが展開される上流から下流に向かって、この順番で配置されればよく、同一のパッドであるか、個別のパッドであるかは問わない。すなわち、サンプルパッドとコンジュゲートパッドが同一パッドであり、このパッドの上流部分がサンプルパッド、下流部分がコンジュゲートパッドであってもよい。また、コンジュゲートパッドと不溶性メンブレンが同一パッドであり、このパッドの上流部分がコンジュゲートパッド、下流部分が不溶性メンブレンであってもよい。またさらに、サンプルパッド、コンジュゲートパッド、不溶性メンブレンが同一のパッドであり、このパッドの上流部分がサンプルパッド、中流部分がコンジュゲートパッド、下流部分が不溶性メンブレンであってもよい。一般的には、それぞれが別体のパッドであることが多い。
(吸収パッド)
イムノクロマトグラフィー用テストストリップには、吸収パッドが形成されていることが好ましい。
本発明において、吸収パッドとは、不溶性メンブレンを移動・通過したサンプルを吸収することにより、サンプルの展開を制御する液体吸収性を有する部位である。ラテラルフロー式においては、テストストリップの最下流に設ければよく、フロースルー式においては、例えば抗体固定化メンブレンの下部に設ければよい。
吸収パッドとしては、例えば、ろ紙を用いることができるが、これに限定されない。好適には、Whatman社の740−E等が用いられる。
(イムノクロマトグラフィー用テストストリップ)
本発明において、イムノクロマトグラフィー用テストストリップとは、少なくともサンプルパッド、コンジュゲートパッド、測定対象物に対する抗体を固定化した不溶性メンブレンを含むものであればよく、さらに必要に応じて試薬成分や他のメンブレン等を含むものをいう。他のメンブレンとしては、3rdパッド、吸収パッド等が挙げられる。
イムノクロマトグラフィー用テストストリップは、通常、プラスチックス製粘着シートのような固相支持体上に配列させる。固相支持体を、サンプルの毛管流を妨げない物質で構成することはもとより、接着剤の成分をサンプルの毛管流を妨げない物質とするのが好ましい。なお、抗体固定化メンブレンの機械的強度を上げ且つアッセイ中の水分の蒸発(乾燥)を防ぐ目的で、ポリエステルフィルムなどをラミネート加工することも可能である。
(テストデバイス)
本発明のテストデバイスは、上記イムノクロマトグラフィー用テストストリップが、少なくともサンプルパッドに保持されたヘモグロビン成分を光学的に検出するためのサンプル検出窓部、及びテストラインを光学的に検出するためのテストライン検出窓部を有するハウジングに格納されたものである。
ハウジングとしては、テストストリップの大きさ、サンプルの添加方法・位置、抗体固定化メンブレンにおける抗体の固定化位置、シグナルの検出方法などを考慮した適当な容器(ハウジング)が用いられる。
ハウジングには、サンプル添加窓部、サンプル検出窓部及びテストライン検出窓部が設けられているが、サンプル添加窓部とサンプル検出窓部はそれぞれの役割を果たすことができるものであれば、同一の窓部であっても異なる窓部であってもかまわない。
サンプル添加窓部は、イムノクロマトグラフィー用テストストリップにサンプルを供給するために形成されており、役割を果たす限りは、形状、形成部位等は限定されない。
サンプル検出窓部は、サンプルパッドに保持されたヘモグロビン成分を光学的に検出するために形成されており、役割を果たす限りは、形状、形成部位等は限定されない。
テストライン検出窓部は、テストラインにおいて測定対象物を測定するために形成されており、役割を果たす限りは、形状、形成部位等は限定されない。
(検体希釈液)
本発明で用いられる検体希釈液は、測定対象物と、それに対する抗体との抗原抗体反応を著しく阻害したり、または反対に著しく反応を促進し標識体が過凝集し毛細管現象による展開不良を起こしたりせず、測定対象物濃度に応じた抗原抗体反応のシグナル検出が可能であれば、いずれの組成の希釈液を用いても良い。このような希釈液としては、例えば、精製水や、pH6.0〜10.0の低濃度緩衝液が挙げられる。低濃度緩衝液としては、例えば、10mmol/L〜20mmol/Lリン酸緩衝液、10mmol/L〜20mmol/Lトリス塩酸緩衝液、10mmol/L〜20mmol/Lグリシン塩酸緩衝液等が挙げられる。
また、サンプル液のテストストリップでの展開速度を制御する目的で、これらの希釈液に界面活性剤を添加してもよい。特に希釈液にTween20(キシダ化学社製)を含有させることによって、測定範囲を調節することができる。好ましい濃度反応曲線が得られるので、Tween20を0.01〜0.1重量%添加するのが好ましい。この希釈液を用いる場合、望ましい希釈倍率は10倍から50倍である。その他、希釈液にCa2+イオンのキレート剤であるEDTAやEGTAなどを含有させてもよい。
次に測定対象物がCRPである場合の実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
〔試験例1〕本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップの1作製例
1)金コロイド標識抗CRP抗体(コンジュゲート)の作製
抗CRPモノクローナル抗体(Clone:08207)を2mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.0)で抗体濃度20μg/mLの抗体液に調製し、1 OD/mLの金コロイド粒子(粒径30nm)溶液20mLに対し、1mLの抗体液を添加し、室温で10分間撹拌した。金コロイド粒子−抗体混合液に対し、5重量%ウシ血清アルブミン(BSA)水溶液を2mL添加し、さらに5分間撹拌後、10℃にて、10,000rpmで45分間遠心し、沈渣(コンジュゲート)を得た。得られたコンジュゲートに対し、Conjugate Dilution Buffer(Scripps社製)を1.2mL添加し、コンジュゲートを懸させた。
各コンジュゲートの最大吸収波長における吸光度を測定した。
尚、抗体は、便宜上、それぞれを産生するハイブリドーマのクローン名で表している(以下同じ)。
2)コンジュゲートパッドの作製
上記1)で調製したコンジュゲートを、15 OD/mL、3重量%BSA、4重量%スクロースを含む20mmol/Lトリス塩酸緩衝液(pH7.2)で希釈し、コンジュゲート溶液を作製した。これを、一定体積のグラスファイバー製パッド(日本ポール社、No.8964)に、該パッド体積の1.2倍容量滲みこませた。ドライオーブン内で70℃、30分間加温することにより乾燥させ、コンジュゲートパッドとした。また、必要に応じ、増感剤などの添加剤を添加する場合には、前記コンジュゲート溶液に必要量を添加した後、同様の操作を行えばよい。
3)抗CRP抗体固定化メンブレンの作製
抗CRPモノクローナル抗体(Clone:08210)を1mg/mLになるように、2.5重量%スクロースを含む10mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.2)として調製し、ニトロセルロースメンブレン(ミリポア社、HF240またはHF180)の短辺の一端の内側の位置に抗CRPモノクローナル抗体(テストライン)を、約5mmの間隔をあけて抗免疫グロブリン抗体(コントロールライン)を、イムノクロマト用ディスペンサー「XYZ3050」(BIO DOT社)を用いて、0.75μL/cmとなるようにライン状に塗布した。ドライオーブン内で70℃、45分乾燥し、抗体固定化メンブレンとした。
4)サンプルパッドの作製
24mmol/L塩化ナトリウム、0.5重量%スクロース及び30mmol/Lエチレンジアミンテトラ酢酸を含む20mmol/Lトリス塩酸緩衝液(pH7.2)を、一定体積に切断したグラスファイバー製パッド(Lydall社)に、該パッド体積の1.15倍容量滲みこませた。ドライオーブン内で70℃、45分乾燥し、サンプルパッドとした。
5)テストストリップの作製
プラスチックス製粘着シート(a)に上記抗体固定化メンブレン(b)を貼り、展開上流部側に抗CRPモノクローナル抗体(テストライン)(c)、次いで抗免疫グロブリン抗体(コントロールライン)(d1)の順に塗布部を配置し、さらにグラスファイバー製パッドからなる3rdパッド(i)を装着した。次いで、上記2)で作製したコンジュゲートパッド(e)を配置装着し、さらにこのコンジュゲートパッドに重なるように上記4)で作製したサンプルパッド(f)を配置装着し、反対側の端には吸収パッド(g)を配置装着した。また、最後に抗体固定化メンブレンおよび吸収パッドを被覆するように、上面にポリエステルフィルム(h)を配置装着し、ラミネート加工した。このように各構成要素を重ね合わせた構造物に切断してテストストリップを作製した。該テストストリップは、アッセイの際、プラスチックス製の専用のハウジング(サンプル添加窓部、サンプル検出窓部及びテストライン検出窓部を有する、図1中図示せず)に格納・搭載し、テストデバイスの形態にした。図1にテストストリップの模式構成図を示した。
6)検体希釈液の作製
Tween20を終濃度で0.01重量%含む10mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.2)に防腐剤を添加し、0.45μmフィルターで濾過した液体を本試薬の検体希釈液とした。
〔試験例2〕従来例のイムノクロマトグラフィー用テストストリップの1作製例
1)抗体感作コンジュゲート(抗CRPモノクローナル抗体が金コロイド粒子に固定化されたコンジュゲート)及び抗ヘモグロビン抗体感作コンジュゲート(抗ヘモグロビンモノクローナル抗体が金コロイド粒子に固定化されたコンジュゲート)の作製
抗CRPモノクローナル抗体(Clone:08207)と抗ヘモグロビンモノクローナル抗体(Clone:69202)とを、それぞれ以下のような、緩衝液条件と抗体濃度に調製し、1 OD/mLの金コロイド粒子(粒径30nm)溶液20mLに対し、各1mL添加し、室温で10分間撹拌した。該金コロイド粒子−各抗体混合液に対し、5重量%ウシ血清アルブミン(BSA)水溶液を2mL添加し、さらに5分間撹拌後、10℃にて、10,000rpmで45分間遠心し、沈渣(抗CRP抗体感作コンジュゲート、抗ヘモグロビン抗体感作コンジュゲート)を得た。得られた各コンジュゲートに対し、Conjugate Dilution Buffer(Scripps社製)を1.2mL添加しコンジュゲートを懸濁させた。各コンジュゲートの最大吸収波長における吸光度を測定した。
i)Clone:08202(80μg/mL)、2mmol/Lホウ酸緩衝液 pH9.0
ii)Clone:69202(140μg/mL)、2mmol/Lホウ酸緩衝液 pH9.0
2)コンジュゲートパッドの作製
上記1)で作製した抗CRP抗体感作コンジュゲートを15 OD/mL、抗ヘモグロビン抗体感作コンジュゲートを5 OD/mLとなるように、3重量%BSA、4重量%スクロース溶液を含む20mmol/Lトリス塩酸緩衝液(pH7.2)と混合し、コンジュゲート溶液を作製した。これを、一定体積のグラスファイバー製パッド(日本ポール社、No.8964)に該パッド体積の1.2倍容量滲みこませた。ドライオーブン内で70℃、30分間加温することにより乾燥させ、コンジュゲートパッドとした。また、必要に応じ、増感剤などの添加剤を添加する場合には、前記コンジュゲート溶液に必要量を添加した後、同様の操作を行えばよい。
3)抗CRP抗体及び抗ヘモグロビン抗体が固定化された不溶性メンブレン担体(抗体固定化メンブレン)の作製
抗CRPモノクローナル抗体(Clone:08210)及び抗ヘモグロビンモノクローナル抗体(Clone:69213)を1mg/mLになるように、2.5%スクロースを含む10mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.2)として調製し、ニトロセルロースメンブレン(ミリポア社SHF180)の短辺の一端の内側の位置(CRP測定ライン)に抗CRPモノクローナル抗体を、約5mmの間隔をあけて外側(Hb測定ライン)に抗ヘモグロビンモノクローナル抗体を、イムノクロマトグラフィー用ディスペンサー「XYZ3050」(BIO DOT社)を用いて0.75μL/cmとなるよう設定し、ライン状に塗布した。ドライオーブン内で70℃、45分乾燥し、抗体固定化メンブレンとした。
4)サンプルパッドの作製
試験例1に同じ。
5)テストストリップの作製
プラスチックス製粘着シート(a)に、展開上流部側に抗CRP抗体(c)の塗布部(CRP測定ライン)、次いで抗ヘモグロビン抗体(d2)の塗布部(Hb測定ライン)となるように配置して、上記3)で作製した抗体固定化メンブレン(b)を貼り、さらにグラスファイバー製パッドからなる3rd Pad(i)を装着した。次いで、上記2)で作製したコンジュゲートパッド(e)を配置装着し、さらにこのコンジュゲートパッドに重なるように上記4)で作製したサンプルパッド(f)を配置装着し、反対側の端には吸収パッド(g)を配置装着した。また、最後に抗体固定化メンブレンおよび吸収パッドを被覆するように上面にポリエステルフィルム(h)を配置装着しラミネート加工した。このように各構成要素を重ね合わせた構造物に切断してイムノクロマトグラフィー用テストストリップを作製した。該テストストリップは、アッセイの際、プラスチックス製の専用のハウジング(サンプルパッド上部に形成されたサンプル供給窓部及びテストライン上部に形成されたテストライン検出窓部を有する、図1中図示せず)に格納・搭載し、テストデバイスの形態にした。図1にテストストリップの模式構成図を示した。
[実施例1〕本発明によるヘマトクリット値の測定方法
(1)検体
採血に同意の得られた健常者3名(ヘマトクリット低値、中値、高値)からEDTA-2K真空採血管を用いて5mLの血液を採血した。
(2)サンプルの調製
前記検体の一部を試験例1の検体希釈液にて30倍に希釈したものをサンプルとして使用した。
(3)試験方法
サンプル各々120μLを試験例1のテストデバイスのサンプル添加窓部(サンプル添加窓部を兼ねている)に添加し、イムノクロマトリーダーICA−1000(浜松ホトニクス社)を用いて、5分後のサンプルパッドの反射光強度をサンプル検出窓部から測定した。
(4)キャリブレーション
総ヘモグロビン測定用認証実用標準物質JCCRM622(一般社団法人 検査医学標準物質機構)を用いて作製したキャリブレーターを120μLテストストリップのサンプル供給窓部に添加し、イムノクロマトリーダーICA−1000で5分後のサンプルパッドの反射光強度を測定し、Hbのキャリブレーションカーブを作製した。キャリブレーションカーブのHb値を一般的な相関係式(1)を用いてヘマトクリット値に換算し、ヘマトクリット値のキャリブレーションカーブを作成した。

ヘマトクリット値(%) = Hb値(g/dL) × 2.9 (1)

(5)結果
3検体(ヘマトクリット低値、中値、高値)のヘモグロビン濃度をそれぞれN=5で測定した際のヘマトクリット値への換算結果を表1に示す。本発明のヘマトクリット値測定方法によれば、3検体ともに、発明者らがこれまで採用してきた抗原抗体反応によるHb測定方法(従来法)により求めたヘマトクリット値(表2)より、再現性の良い測定結果(CV:2.4〜9.4%)を得ることが出来た。
Figure 0006103776
〔比較例〕抗原抗体反応によるHb測定方法(従来例)
1.試験方法
試験例2で作製したテストデバイスを用いて、実施例1と同一のサンプルそれぞれ120μLをサンプル添加窓部に滴下し、イムノクロマトリーダーICA−1000(浜松ホトニクス社)を用いて、5分後にテストライン検出窓部からHb測定ラインの反射光強度を測定した。あらかじめ求めたキャリブレーションカーブにより、ヘマトクリット値を求めた。
2.試験結果
結果を下記表2に示す。
Figure 0006103776
〔実施例2〕本発明のテストデバイスを用いたCRPの測定
CRP濃度を測定し、サンプルパッドにおけるヘモグロビンの反射光強度によるヘマトクリット補正を行った。
1.試験方法
試験例1で作製したテストデバイスを用い、血液検体のCRP濃度とヘモグロビン濃度を測定した。すなわち、各血液検体10μLを、0.01重量% Tween20を含む10mmol/Lリン酸緩衝液(pH7.2)で150倍に希釈して溶血し、その120μLをテストデバイスのサンプル供給窓部(サンプル添加窓部を兼ねている)に滴下し、イムノクロマトリーダーICA-1000(浜松ホトニクス社)を用いて、5分後にテストデバイスのテストライン検出窓部からテストラインの反射光強度を測定した。得られた反射光強度を、あらかじめ求めたキャリブレーションカーブに外挿してCRP濃度を求めた。
また、実施例1の方法により各血液検体のヘマトクリット値を求めた。
2.本発明によるヘマトクリット補正
各血液検体のCRP濃度を、次式にしたがい、ヘマトクリット補正した。
Figure 0006103776
3.結果
本発明のヘマトクリット補正により各検体のCRP濃度を正確に求めることができた。
(a)プラスチックス製粘着シート
(b)抗体固定化メンブレン
(c)抗CRP抗体
(d1)抗免疫グロブリン抗体
(d2)抗ヘモグロビン抗体
(e)コンジュゲートパッド
(f)サンプルパッド
(g)吸収パッド
(h)ポリエステルフィルム
(i)3rdパッド
本発明によれば、血液検体を希釈して得られるサンプル中の測定対象物をイムノクロマトグラフィーを利用して測定する方法において、同一サンプル中の測定対象物とヘモグロビンを測定するため、サンプルの測定対象物濃度を同一サンプルのヘマトクリット値にもとづき補正することができ、測定対象物濃度をより正確に測定することができる。
さらにまた、本発明の測定方法は、サンプル中のヘモグロビン濃度を反射光強度により測定することにより、新たな測定系の構築や、煩雑な測定操作を実施することなく、ヘマトクリット補正をすることができる。

Claims (2)

  1. 血液検体を溶血させたサンプル中の測定対象物を、イムノクロマトグラフィー用テストストリップを用いて測定する測定方法であって、
    上記イムノクロマトグラフィー用テストストリップは、下記1)〜3)を有し、
    1)サンプルを吸収し、サンプル中のヘモグロビン成分が保持されるサンプルパッドであって、ヘモグロビンに対する抗体が固定化されていないサンプルパッド
    2)サンプルパッドの下流側に位置し、測定対象物に対する第一の抗体が標識に固定化されたコンジュゲートを含有するコンジュゲートパッド
    3)コンジュゲートパッドの下流側に位置し、測定対象物に対する第二の抗体が固定化されたテストラインを有する不溶性メンブレン
    かつ、下記A)及びB)の工程を有する前記測定方法。
    A)サンプルをサンプルパッドに供給し、サンプルパッドに保持されたヘモグロビンを光学的に検出して、血液検体のヘマトクリット値を求める工程
    B)不溶性メンブレン上のテストラインにおいて測定対象物を測定する工程
  2. さらに下記工程C)を含む請求項1に記載の測定方法。
    C)工程A)で求めたヘマトクリット値により、工程B)の測定対象物の測定値をヘマトクリット補正する工程
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