JP6102972B2 - エマルションの製造方法、及び水性被覆材の製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、水性塗料を代表する水性エマルション塗料に用いられるエマルション樹脂は、固有の最低造膜温度(以下、「MFT」という。)を持っており、塗膜を形成するためにMFT以下の温度で造膜を行う場合、造膜助剤としてのVOCの添加が必要であった。
そこで、耐ブロッキング性、耐凍害性、耐水性を有し、且つ、耐マッドクラック性及び耐候性の良好な塗膜を形成する水性被覆材の検討が行われている。
しかし、樹脂中へのポリエチレングリコール鎖又はポリプロピレングリコール鎖の導入は、特に外装用途に用いた場合、塗膜の耐水性及び耐候性が低下するという問題があった。また、特許文献1に記載の樹脂組成物を含有する水性被覆材は、耐マッドクラック性に問題があった。
しかし、特許文献2に記載の方法は使用するアニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤の量が多いため、得られる水性被覆材は、必ずしも耐マッドクラック性を満足するものではなかった。
さらに、前記アニオン性界面活性剤(I)及びノニオン性界面活性剤(II)の総量が、前記乳化重合に使用するエチレン性不飽和単量体(a)とエチレン性不飽和単量体(b)との合計質量100質量部に対し、0.5〜1.5質量部であることが好ましい。
また、本発明のエマルションの製造方法によれば、耐ブロッキング性、耐凍害性、耐水性、耐マッドクラック性及び耐候性に優れた塗膜を形成できる水性被覆材に含まれるエマルションを得ることができる。
[エマルションの製造方法]
本発明のエマルションの製造方法は、アニオン性界面活性剤(I)及びノニオン性界面活性剤(II)の存在下で、エチレン性不飽和単量体(a)を1段以上で乳化重合して重合体(A)を形成し、その後に、エチレン性不飽和単量体(b)を加え、乳化重合して重合体(B)を形成する方法であり、これにより、異層構造のエマルションが得られる。
前記乳化重合に使用するアニオン性界面活性剤(I)とノニオン性界面活性剤(II)は、その質量比が、(I):(II)=4:1〜1:4である。質量比が上記範囲内であれば、得られるエマルションを含む水性被覆材を塗装して乾燥する際に、塗膜表面の体積収縮を効果的に抑制することができ、マッドクラックの発生を防止することができる。
質量比は、(I):(II)=3:1〜1:4が好ましく、2:1〜1:4がより好ましい。
また、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩については、Newcol 707SF(商品名、日本乳化剤(株)製)として入手できる。さらに、反応性のアニオン性界面活性剤については、アデカリアソープSR−1025、アデカリアソープSR−10(商品名、(株)ADEKA製)として入手できる。これらは、必要に応じて1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。
重合体(A)は、上述したアニオン性界面活性剤(I)及びノニオン性界面活性剤(II)の存在下で、エチレン性不飽和単量体(a)(以下、「単量体(a)」という。)を1段以上で乳化重合することにより得られる。単量体(a)は1種類の単量体でもよいし、複数種の単量体の混合物でもよい。
単量体(a)は、溶解性パラメーター(SP値)が20〜30(J/cm3)1/2のエチレン性不飽和単量体(単量体(a)中に含まれるものを特にエチレン性不飽和単量体(c)とし、以下、「単量体(c)」とする。)を75〜100質量%含有することが好ましい。
ここで、「SP値」とは、[数1]で表されるFedorsの式(R.F.Fedors,Polym.Eng.Sci.,14,(2),1974)により求めた値をいう。
なお、「Tg」とは、下記式(1)に示したFoxの式により求められる値である。
1/(273+Tg)=Σ(Wi/(273+Tgi))・・・(1)
ここで、Wiは単量体iの質量分率、Tgiは単量体iの単独重合体のTg(℃)を示す。
乳化重合は、例えば界面活性剤の存在下、単量体(a)を重合系内に供給し、ラジカル重合開始剤により重合する公知の方法が使用できる。
過硫酸塩類としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
油溶性アゾ化合物類としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等が挙げられる。
水溶性アゾ化合物類としては、例えば2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシエチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]及びその塩類、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]及びその塩類、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]及びその塩類、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}及びその塩類、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)及びその塩類、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピンアミジン)及びその塩類、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]及びその塩類等が挙げられる。
有機過酸化物類としては、例えば、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等が挙げられる。
これらは単独で、又は2種類以上の混合物として使用できる。また、重合速度の促進、及び70℃以下での低温の重合が望まれるときには、例えば重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄、アスコルビン酸塩等の還元剤をラジカル重合開始剤と組み合わせて用いるのがよい。
重合体(B)は、単量体(a)を乳化重合して重合体(A)を形成した後に、単量体(a)とは組成の異なるエチレン性不飽和単量体(b)(以下、「単量体(b)」とする。
)を加え、乳化重合することにより得られる。単量体(b)は1種類の単量体でもよいし、複数種の単量体の混合物でもよい。
単量体(b)は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和単量体であれば特に限定されないが、SP値が20(J/cm3)1/2未満のエチレン性不飽和単量体を含有するのが好ましい(SP値が20(J/cm3)1/2未満のもので、単量体(b)中に含まれるものを特にエチレン性不飽和単量体(d)とし、以下、単量体(d)とする。)。単量体(b)中に含有される単量体(d)の質量割合は、40〜100質量%であるのが好ましく、45〜100質量%であるのがより好ましい。単量体(d)の割合が40質量%以上であれば、耐吸水性が向上するため、塗膜の耐水性、耐候性及び耐凍害性が向上する。また、塗膜の耐マッドクラック性の点から、SP値が19.5以下の単量体(d)を使用するのがより好ましい。
中でも、ビニル重合の反応性並びに塗膜の耐汚染性、耐候性及び耐水性の観点から、(メタ)アクリロイルオキシアルキルシラン類であるのが好ましく、γ−メタクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルメチルジクロロシラン、γ−メタクリロイルオキシエチルトリクロロシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジクロロシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリクロロシランであればさらに好ましい。また、これらは必要に応じて2種以上を選択して使用することもできる。
自己架橋性官能基含有エチレン性不飽和単量体としては、単量体(a)の場合に挙げたものが使用でき、必要に応じてそれらの2種以上を選択して使用してもよい。
光安定化作用を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
紫外線吸収性成分を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば2−[2−ヒドロキシ−5−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−t−アミル−5−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
これら耐紫外線エチレン性不飽和単量体は必要に応じて2種以上を選択して使用してもよい。
有機酸残基が(メタ)アクリル酸残基であるときは、2個の不飽和基を有する金属含有エチレン性不飽和単量体であり、例えば、ジ(メタ)アクリル酸マグネシウム、アクリル酸メタクリル酸マグネシウム、ジ(メタ)アクリル酸カルシウム、アクリル酸メタクリル酸カルシウム、ジ(メタ)アクリル酸鉄、アクリル酸メタクリル酸鉄、ジ(メタ)アクリル酸銅、アクリル酸メタクリル酸銅、ジ(メタ)アクリル酸亜鉛、アクリル酸メタクリル酸亜鉛、ジ(メタ)アクリル酸ジルコニウム、アクリル酸メタクリル酸ジルコニウムが挙げられる。
塗膜の耐汚染性を向上させる上では、ヒダントイン骨格を有するヒドラジン化合物が好ましく、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントインがより好ましい。
原料の価格と得られる樹脂の熱安定性等の性能を考慮すると、重合体ブロック(III)の原料として最も好適なのは、ジメチルシロキサン環状オリゴマーである。
これらの中で、VOCを含まないことが望まれる内装用途等の場合は、無機系塩基化合物を用いることが好ましい。更に、僅かな臭気が問題となる場合には、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の非揮発性塩基化合物を用いることが好ましい。
エマルションは粒子の形状で得られるが、その粒子径としては、粒子の安定性及び塗膜性能のバランスから、50〜300nmであるのが好ましい。50nm以上の粒子径のエマルション粒子を形成する重合条件であれば、重合中に凝集物が生じにくく、界面活性化剤の使用量が少なくてよいため、塗膜の耐水性を維持できる。また、300nm以下のエマルション粒子であれば、造膜欠陥が生じにくい。
本発明の水性被覆材は、本発明のエマルションの製造方法により得られる、異層構造のエマルションを含有する。
本発明の水性被覆材は、主成分であるエマルション及び前記界面活性剤、添加剤等で固形分を形成し、通常、固形分20〜80質量%の状態で使用される。
尚、下記実施例3及び実施例5は参考例である。
ポリオルガノシロキサン重合体(X)の水性分散液の調製、評価用水性被覆材(白エナメル塗料、クリヤー塗料)の作製、エマルション分散液の物性の測定、及び評価用水性被覆材より得られる塗膜の評価は、下記方法に従って実施した。なお、以下の記載において、「部」及び「%」は全て質量基準である。
環状ジメチルシロキサンオリゴマー3〜7量体混合物98部と、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン2部、水310部およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部からなる組成物をホモミキサーで予備混合した後、圧力式ホモジナイザーによる200kg/cm2の圧力で強制乳化してシリコン原料プレエマルションを得た。
次いで、水90部およびドデシルベンゼンスルホン酸9部を攪拌機、還流冷却管、温度制御装置および滴下ポンプを備えたフラスコに仕込み、攪拌下に、フラスコの内温を85℃に保ちながら4時間かけて上記のシリコン原料プレエマルションを滴下した。滴下終了後、さらに1時間重合を進行させた後、冷却してドデシルベンゼンスルホン酸と当モル量の水酸化ナトリウムを加えてポリオルガノシロキサン重合体(X)の水性分散液(SiEm)を調製した。固形分は18%であった。
タイペークCR−97(石原産業(株)製、塩素法酸化チタン)707g、アデカコール−193(旭電化工業(株)製、顔料分散剤)12g、サーフィノールDF−58(エア・プロダクツ(株)製、消泡剤)25g、脱イオン水256gを十分に混合し、ガラスビーズを加えて高速分散機で30分間顔料分散を行い、次いでガラスビーズ等を100メッシュナイロン紗で濾別し、評価用ミルベースを得た(固形分71%)。
次に、エマルションのMFTが10℃を超えるものは、造膜助剤としてCS−12(チッソ(株)製、造膜助剤)を添加しMFTを10℃以下にした。
次いで、エマルションの分散液141g(固形分42.5%基準)に対し、上記の評価用ミルベースを56.3g、RHEOLATE350(RHEOX(株)製、増粘剤)を0.5g、順に加え、十分に攪拌し、粘度がフォードカップ♯4で30秒程度になるように脱イオン水を加えて調整した。その後、再度100メッシュナイロン紗を用いて濾過を行い、PWC=40%の評価用の白エナメル塗料を得た。なお、「PWC」とは、塗料(固形分)100%中の顔料(固形分)の質量割合のことである。
エマルションのMFTが10℃を超えるものは、造膜助剤としてCS−12(チッソ(株)製、造膜助剤)を添加しMFTを10℃以下にした。
次いで、エマルションの分散液100gに対し、RHEOLATE350(RHEOX(株)製、増粘剤)を0.5g、サーフィノールDF−58(エア・プロダクツ(株)製、消泡剤)0.5gを加え、十分に攪拌し、粘度がフォードカップ♯4で30秒程度になるように脱イオン水を加えて調整した。その後、100メッシュナイロン紗を用いて濾過を行い、評価用のクリヤー塗料を得た。
(1)加熱残分の測定
JIS K6828 5.1に準拠して測定を実施した。
JIS K6828 5.4に準拠して測定を実施した。
JIS K6828 5.3に準拠して測定を実施した。
JIS K6828 5.11に準拠して測定を実施した。
(5)耐ブロッキング性(高温乾燥)の評価
評価用の白エナメル塗料をガラス板に6ミルアプリケータにて塗装(縦80mm×横80mm)し、130℃で5分間強制乾燥させた。次いで、50℃まで冷却した後、50℃雰囲気下で塗膜表面にガーゼを載せ、更にその上に事前に50℃まで加温した分銅を置き、1.4Kg/cm2の荷重をかけ30分間維持した。次いで、常温まで冷却した後、ガラス板を逆さまにしてゆっくりガーゼを剥がし、その時の剥がし難さ及びガーゼの痕跡を目視にて観察し、下記の基準に従って評価した。
◎:ガーゼが自然に落下し、塗膜上にガーゼの痕跡がほとんど残っていない。
○:ガーゼが自然に落下することはないが、塗膜上にガーゼの痕跡はほとんど残っていない。
△:ガーゼが自然に落下することはないが、少しの力で剥離することができ、ガーゼの痕跡が多少残っている。
×:ガーゼを剥離時に塗膜の一部も剥離し、ガーゼの痕跡がくっきり残っている。
評価用の白エナメル塗料をガラス板に塗装した後の5分間強制乾燥の温度を50℃とする以外は前記(5)耐ブロッキング(高温乾燥)の評価と同様の評価を実施し、同様の評価基準で評価した。
評価用の白エナメル塗料をガラス板に8ミルアプリケータにて塗装し(縦100mm×横15mm)、130℃で2分間強制乾燥させた後、塗膜の「マッドクラック(割れ)」の有無を目視にて観察し、下記の基準に従って評価した。
◎:マッドクラックが殆ど見られず、連続した塗膜ができている。
○:塗装面の端部にマッドクラックが多少見られる。
△:マッドクラックが見られるが、塗装面の縦方向に対して50%未満である。
×:塗装面の縦方向に対して50%以上のマッドクラックが見られる。
シーラーとしてダイヤナールLX−1010(三菱レイヨン(株)製)を使用した白エナメル塗料(PWC=40%)を用意した。
石膏スラグパーライト板(厚12mm×縦150mm×横70mm)の上に、上記シーラーを塗着量が90〜100g/m2(湿潤質量)となるように室温にてスプレー塗装し、130℃で5分間乾燥した。次いで、シーラー層の上に、評価用の白エナメル塗料を塗着量が90〜100g/m2(湿潤質量)となるように室温にてスプレー塗装し、130℃で5分間乾燥させ、試験板を作製した。この試験板を1日室温で放置した後、溶剤系の2液硬化型アクリル樹脂を用いて試験板の側面及び背面を、防水機能を有するようにシールした。1日経過後に、凍結融解試験機にて耐凍害性試験を行った。凍結融解試験条件は、−20℃/2時間(空気中)及び20℃/2時間(水中)のサイクル試験とした。
30倍ルーペを用いて試験板にクラックが入るまでのサイクル数を測定し、下記の基準に従って評価した。
◎:300サイクルでクラックなし。
○:200サイクル以上、300サイクル未満でクラックあり。
△:100サイクル以上、200サイクル未満でクラックあり。
×:100サイクル未満でクラックあり。
評価用のクリヤー塗料をガラス板に4ミルアプリケータにて塗装し(縦80mm×横80mm)、130℃で5分間強制乾燥した。次いで、室温まで放冷した。その後、50℃の温水にガラス板ごと24時間浸漬し、その後ガラス板を引き上げて更に、室温にて24時間放置して、乾燥した。得られた塗膜外観を目視にて観察し、下記の基準に従って評価した。
◎:塗膜の白化は少なく、引き上げ直後は完全に元の透明な塗膜となった。
○:多少塗膜の白化は認められるが、引き上げ後は2〜3時間程度でほぼ元の透明な塗膜となった。
△:多少塗装面の白化が認められ、乾燥24時間後でも少し濁っており、48時間後では辛うじて、元の透明な塗膜となった。
×:かなり塗装面が白化しており、乾燥24時間後もかなり白化したままで、最後まで元の透明な塗膜にならなかった。
耐凍害性評価に使用したものと同様に、側面及び背面をシールした試験板を用い、シール1日経過後に、ダイプラ・メタルウェザーKU−R4−W型(ダイプラ・ウィンテス(株)製)にて耐候性試験を行った。このとき、試験サイクルは、照射4時間(噴霧5秒/15分)/結露4時間、UV強度:85mW/cm2、ブラックパネル温度:照射時63℃/結露時30℃、湿度:照射時50%RH/結露時96%RH、の条件で、600時間経過後の60°グロスの保持率を耐候性の指標とし、下記の基準に従って評価した。
◎:90%以上。
○:80%以上、90%未満。
△:60%以上、80%未満。
×:60%未満、又は塗膜の剥離・クラックが生じたもの。
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、滴下ポンプを備えたフラスコに、脱イオン水103部、アデカリアソープSR−1025((株)ADEKA製、固形分25%)2.12部、エマルゲンE−1150−60S(花王(株)製、固形分60%)0.45部、表1の「単量体(a)」に示す共重合体の構成成分であるラジカル重合性単量体の混合物を仕込んだ。フラスコの内温を50℃に昇温した後、過硫酸アンモニウム0.15部と脱イオン水1部からなる水溶液を添加し、その直後に亜硫酸水素ナトリウム0.05部と脱イオン水1部からなる水溶液を添加した。発熱ピークを確認した後、内温が80℃になったところで、表1の「単量体(b)」に示す共重合体の構成成分であるラジカル重合性単量体の混合物、脱イオン水25部、アデカリアソープSR−1025(固形分25%)1.88部、エマルゲンE−1150−60S(固形分60%)0.38部を予め乳化分散させたプレエマルション液を内温80℃で1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、内温80℃で1.5時間保持した後、室温まで冷却し、28%アンモニア水0.84部を添加してエマルションの分散液を得た。
得られたエマルションの分散液を用い、エマルション100部に対し造膜助剤CS−12を5部添加し、評価用水性被覆材(白エナメル塗料及びクリヤー塗料)を作製し、各評価を行った。結果を表2に示す。
最初にフラスコに仕込むアデカリアソープSR−1025の仕込み量を3.2部、エマルゲンE−1150−60Sの仕込み量を0.33部、「単量体(b)」のプレエマルション液作製時のアデカリアソープSR−1025の仕込み量を1.6部、エマルゲンE−1150−60Sの仕込み量を0.17部とした以外は、実施例1と同様にしてエマルションの分散液を得た。
得られたエマルションの分散液を用い、エマルション100部に対し造膜助剤CS−12を5部添加し、評価用水性被覆材(白エナメル塗料及びクリヤー塗料)を作製し、各評価を行った。結果を表2に示す。
「単量体(b)」のプレエマルション液作製時のアデカリアソープSR−1025の仕込み量を3.48部、エマルゲンE−1150−60Sの仕込み量を0.75部とした以外は、実施例1と同様にしてエマルションの分散液を得た。
得られたエマルションの分散液を用い、エマルション100部に対し造膜助剤CS−12を5部添加し、評価用水性被覆材(白エナメル塗料及びクリヤー塗料)を作製し、各評価を行った。結果を表2に示す。
表1に記載の組成の「単量体(a)」を使用する以外は、実施例1と同様にしてエマルションの分散液を得た。
得られたエマルションの分散液を用い、エマルション100部に対し造膜助剤CS−12を5部添加し、評価用水性被覆材(白エナメル塗料及びクリヤー塗料)を作製し、各評価を行った。結果を表2に示す。
表1に記載の組成の「単量体(b)」を使用し、28%アンモニア水の添加量を1.68部にした以外は、実施例1と同様にしてエマルションの分散液を得た。
得られたエマルションの分散液を用い、エマルション100部に対し造膜助剤CS−12を5部添加し、評価用水性被覆材(白エナメル塗料及びクリヤー塗料)を作製し、各評価を行った。結果を表2に示す。
最初に仕込むフラスコに、ポリオルガノシロキサン重合体(X)の水性分散液(SiEm)11.1部(固形分:2部)を追加した以外は、実施例1と同様にしてエマルションの分散液を得た。
得られたエマルションの分散液を用い、エマルション100部に対し造膜助剤CS−12を5部添加し、評価用水性被覆材(白エナメル塗料及びクリヤー塗料)を作製し、各評価を行った。結果を表2に示す。
表1に記載の組成の「単量体(a)」及び「単量体(b)」を使用し、28%アンモニア水添加後に、アジピン酸ジヒドラジド0.7部と脱イオン水1.5部からなる水溶液を添加した以外は、実施例1と同様にしてエマルションの分散液を得た。
得られたエマルションの分散液を用い、エマルション100部に対し造膜助剤CS−12を5部添加し、評価用水性被覆材(白エナメル塗料及びクリヤー塗料)を作製し、各評価を行った。結果を表2に示す。
「単量体(b)」のプレエマルション液作製時のアデカリアソープSR−1025の仕込み量を4.88部、エマルゲンE−1150−60Sの仕込み量を0.15部とした以外は、実施例1と同様にしてエマルションの分散液を得た。
得られたエマルションの分散液を用い、エマルション100部に対し造膜助剤CS−12を5部添加し、評価用水性被覆材(白エナメル塗料及びクリヤー塗料)を作製し、各評価を行った。結果を表3に示す。
「単量体(b)」のプレエマルション液作製時のアデカリアソープSR−1025の仕込み量を5.88部、エマルゲンE−1150−60Sの仕込み量を1.22部とした以外は、実施例1と同様にしてエマルションの分散液を得た。
得られたエマルションの分散液を用い、エマルション100部に対し造膜助剤CS−12を5部添加し、評価用水性被覆材(白エナメル塗料及びクリヤー塗料)を作製し、各評価を行った。結果を表3に示す。
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、滴下ポンプを備えたフラスコに、脱イオン水93部、表3の「単量体(a)」に示す共重合体の構成成分であるラジカル重合性単量体の混合物、脱イオン水35部、アデカリアソープSR−1025(固形分25%)5.6部、エマルゲンE−1150−60S(固形分60%)1.2部を予め乳化分散させたプレエマルション液の40%を仕込んだ。フラスコの内温を50℃に昇温した後、過硫酸アンモニウム0.15部と脱イオン水1部からなる水溶液を添加し、その直後に亜硫酸水素ナトリウム0.05部と脱イオン水1部からなる水溶液を添加した。発熱ピークを確認した後、内温が80℃になったところで、残りのプレエマルション液を内温80℃で1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、内温80℃で1.5時間保持した後、室温まで冷却し、28%アンモニア水0.84部を添加してエマルションの分散液を得た。
得られたエマルションの分散液を用い、エマルション100部に対し造膜助剤CS−12を10部添加し、評価用水性被覆材(白エナメル塗料及びクリヤー塗料)を作製し、各評価を行った。結果を表3に示す。
MMA:メチルメタクリレート[Tg:105℃、SP値:20.15(J/cm3)1/2]、
2−HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート[Tg:55℃、SP値:24.98(J/cm3)1/2]、
GMA:グリシジルメタクリレート[Tg:46℃、SP値:20.77(J/cm3)1/2]、
TAC:トリアリルシアヌレート[Tg:不明、SP値:20〜30(J/cm3)1/2]、
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート[Tg:83℃、SP値:19.78(J/cm3)1/2]、
n−BMA:n−ブチルメタクリレート[Tg:20℃、SP値:19.12(J/cm3)1/2]、
2−EHA:2−エチルヘキシルアクリレート[Tg:−55℃、SP値:18.83(J/cm3)1/2]、
KBM−502:γ―メタクリロイルオキシプロピルジメトキシシラン(信越化学工業(株)製)[Tg:不明、SP値:20(J/cm3)1/2未満]、
AA:アクリル酸[Tg:106℃、SP値:25.70(J/cm3)1/2]、
DAAM:ジアセトンアクリルアミド[Tg:65℃、SP値:20〜30(J/cm3)1/2]、
アデカリアソープSR−1025:反応性アニオン性界面活性剤(固形分25%)(商品名、(株)ADEKA製))、
エマルゲンE−1150−60S:ノニオン性界面活性剤(固形分60%)(商品名、花王(株)製))、
ADH:アジピン酸ジヒドラジド。
これに対して、表3の結果から明らかなように、アニオン性界面活性剤(I)とノニオン性界面活性剤(II)の質量比が1.75:0.36である比較例1で得られたエマルションを含む塗料より形成される塗膜は、耐マッドクラック性に劣っていた。
アニオン性界面活性剤(I)及びノニオン性界面活性剤(II)の総量が、エチレン性不飽和単量体(a)とエチレン性不飽和単量体(b)との合計質量100質量部に対し、3質量部である比較例2で得られたエマルションを含む塗料より形成される塗膜は、耐マッドクラック性に著しく劣っていた。また、耐水性や耐候性にも劣っていた。
重合体(A)を形成した後に、重合体(B)を形成しなかった比較例3で得られたエマルションを含む塗料より形成される塗膜は、耐ブロッキング性(特に、低温乾燥の場合)、耐マッドクラック性、及び耐凍害性に劣っていた。
以上のように、各比較例で得られたエマルションを含む塗料より形成される塗膜は、耐ブロッキング性、耐マッドクラック性、耐凍害性、耐水性、耐候性の物性バランスに劣っていた。
Claims (3)
- アニオン性界面活性剤(I)及びノニオン性界面活性剤(II)の存在下で、エチレン性不飽和単量体(a)を1段以上で乳化重合して重合体(A)を形成し、その後に、エチレン性不飽和単量体(a)とは組成の異なるエチレン性不飽和単量体(b)を加え、乳化重合して重合体(B)を形成するエマルションの製造方法であって、
前記アニオン性界面活性剤(I)と前記ノニオン性界面活性剤(II)の質量比が、(I):(II)=3:1〜1:4であり、且つアニオン性界面活性剤(I)及びノニオン性界面活性剤(II)の総量が、前記乳化重合に使用するエチレン性不飽和単量体(a)とエチレン性不飽和単量体(b)との合計質量100質量部に対し、0.5〜1.5質量部であり、
前記エチレン性不飽和単量体(a)は、溶解性パラメータ(SP値)が20〜30(J/cm3)1/2のエチレン性不飽和単量体(c)を75〜100質量%含み、
前記エチレン性不飽和単量体(b)は、前記エチレン性不飽和単量体(a)とエチレン性不飽和単量体(b)の合計を100質量%としたときに、エチレン性不飽和カルボン酸を0.1〜1.5質量%含有し、
前記重合体(A)のガラス転移温度(Tg)が70〜110℃であり、
前記重合体(B)のガラス転移温度(Tg)と前記エマルションの最低造膜温度(MFT)の関係が、(エマルションのMFT)≦(重合体(B)のTg+20℃)であるエマルションの製造方法。 - 前記エチレン性不飽和単量体(c)は少なくともメチルメタクリレートを含み、該メチルメタクリレートの含有量が、前記乳化重合に使用するエチレン性不飽和単量体(a)とエチレン性不飽和単量体(b)との合計質量を基準として、30質量%以上である請求項1に記載のエマルションの製造方法。
- 請求項1又は2に記載のエマルションの製造方法の工程を有する、水性被覆材の製造方法。
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