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JP6190635B2 - プリディストータ、プリディストータの制御方法 - Google Patents

プリディストータ、プリディストータの制御方法 Download PDF

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JP6190635B2 JP2013130484A JP2013130484A JP6190635B2 JP 6190635 B2 JP6190635 B2 JP 6190635B2 JP 2013130484 A JP2013130484 A JP 2013130484A JP 2013130484 A JP2013130484 A JP 2013130484A JP 6190635 B2 JP6190635 B2 JP 6190635B2
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Description

本発明は、電力増幅器で発生する歪成分を補償するプリディストータとプリディストータ制御方法に関する。
電力増幅器で発生する非線形歪成分(以下、歪成分ともいう)を補償する方法の1つとして、プリディストータを用いる方法が挙げられる。プリディストータは電力増幅器における非線形特性モデルに従って歪補償信号を発生させ、電力増幅器に入力する信号にその歪補償信号を付加する。例えば、非特許文献1および非特許文献2によるべき級数型プリディストータ(以下、単にプリディストータという)は、べき級数に基づいた非線形特性モデル(以下、べき級数モデルという)を使用し、周波数依存性を持った歪成分を補償可能な歪補償信号を発生させる。非特許文献1および非特許文献2によると、プリディストータの入力信号をxとし、べき級数モデルのモデル次数(ただし、モデル次数は、多項式で表現されたべき級数モデルの次数、つまり、多項式に含まれる各項の次数のうち最も高い次数である)を3とした場合、プリディストータの出力信号yは式(1)のように表すことができる。
Figure 0006190635
ここで、式(1)の右辺第2項が歪補償信号であり、|x|2xはプリディストータの3次歪発生器で発生させた3次歪信号を表し、a1は線形利得を表し、a3は3次歪信号の振幅と位相を調整する3次歪ベクトル調整器に与える複素係数を表し、h3は3次歪ベクトル調整器の出力に周波数特性を与える周波数特性補償器のインパルス応答を表し、記号||は絶対値を表し、記号*(アスタリスク)は畳み込み演算を表している。
このプリディストータは、歪補償信号をディジタル信号処理によって発生させる。このとき、電力増幅器で発生する周波数依存性を持った歪成分が低減するように、a3とh3をそれぞれ適切に調整する。
S. Mizuta, Y. Suzuki, T. Hirota, and Y. Yamao, "Digital predistortion linearizer for compensating frequency-dependent IM distortion," in Proc. 34th European Microwave Conference, pp. 1053 - 1056, Oct. 2004. S. Mizuta, Y. Suzuki, S. Narahashi, and Y. Yamao, "A New Adjustment Method for the Frequency-Dependent IMD Compensator of the Digital Predistortion Linearizer," IEEE Radio and Wireless Symposium 2006, pp. 255 - 258, Jan. 2006.
LTE-Advancedにおいて、複数の周波数帯域(以下、コンポーネントキャリアともいう)を同時に使用するキャリアアグリゲーションと呼ばれる技術がある。キャリアアグリゲーションは大別して、隣接する複数の周波数帯域を使用する場合と、離散的な周波数帯域を使用する場合とがある。
キャリアアグリゲーションを利用する場合、電力増幅器の非線形特性や使用する周波数帯域などによっては、単一周波数帯に適応しているプリディストータでは歪成分を十分に低減できない場合がある。以下に、二つの周波数帯域を用いた場合を例として具体的に説明する。
1つ目の周波数帯域を用いて送信する信号をs1、二つ目の周波数帯域を用いて送信する信号をs2、プリディストータの入力信号をx=s1+s2とすると、プリディストータの出力信号yは式(2)のように表すことができる。ここで、記号*(上付きアスタリスク)は複素共役を表している。
Figure 0006190635
式(2)において、プリディストータの3次歪発生器で発生させた3次歪信号をdC(t)とすると、dC(t)は式(3)にように表すことができる。
Figure 0006190635
ここで、2|s221は、s1とs2の相互変調歪信号である。この歪信号は、|s121と同じ周波数帯域に発生する。また、2|s122も、s1とs2の相互変調歪信号である。この歪信号は、|s222と同じ周波数帯域に発生する。
電力増幅器を高効率動作させた場合、電力増幅器の非線形特性が複雑となることが知られている。このとき、同一周波数帯域に発生する複数の歪成分において歪成分ごとに位相と振幅が異なる場合、単一周波数帯に適応しているプリディストータでは歪信号ごとに位相と振幅をそれぞれ調整できないことから、電力増幅器で発生する歪成分は残留する。
以上から、キャリアアグリゲーションを利用する場合、単一周波数帯に適応しているプリディストータでは、信号s1と信号s2の相互変調歪成分を十分に低減できない。この問題を解決するために、複数の周波数帯に適応するプリディストータとして、次のような構成を持つプリディストータ900が考えられる(参考特許文献:日本国特許出願番号2011-269882)。
図1にプリディストータ900の構成とその周辺装置を示す。この例の周辺装置は、二つの信号発生装置A,Bと、増幅装置950と、帰還信号生成装置960である。また、この例では、信号発生装置Aが発生する信号は、1つ目の周波数帯域を用いて送信する信号s1であり、I相信号とQ相信号(以下、I/Q信号ともいう)から成るディジタル信号とする。信号発生装置Bが発生する信号は、1つ目の周波数帯域とは異なる二つ目の周波数帯域を用いて送信する信号s2であり、I相信号とQ相信号(以下、I/Q信号ともいう)から成るディジタル信号とする。
プリディストータ900は、遅延器を含む線形伝達経路901Aと、遅延器を含む線形伝達経路901Bと、歪補償信号を発生するための歪補償信号発生経路909と、信号発生装置Aからの信号を線形伝達経路901Aと歪補償信号発生経路909とに分配する分配器902Aと、信号発生装置Bからの信号を線形伝達経路901Bと歪補償信号発生経路909とに分配する分配器902Bと、線形伝達経路901Aの出力と歪補償信号発生経路909の出力を合成する信号加算器903Aと、線形伝達経路901Bの出力と歪補償信号発生経路909の出力を合成する信号加算器903Bと、信号加算器903Aの出力(歪補償成分が付加されたディジタルI/Q信号)をアナログI/Q信号に変換するディジタルアナログ変換器(DAC)904Aと、信号加算器903Bの出力(歪補償成分が付加されたディジタルI/Q信号)をアナログI/Q信号に変換するディジタルアナログ変換器(DAC)904Bと、増幅装置950の出力の一部を帰還信号として取り込む帰還信号生成装置960の出力(アナログI/Q信号)をディジタルI/Q信号に変換するアナログディジタル変換器(ADC)905と、ADC905の出力から歪成分を測定する歪観測器906と、歪観測器906の出力に基づき、歪補償信号発生経路909で用いられるベクトル係数(振幅と位相)や周波数特性補償器係数(振幅と位相)などの調整量を決定する制御器907を含む。なお、各線形伝達経路901A,901Bに含まれる遅延器は、歪補償信号発生経路909で生じる遅延時間だけ線形伝達経路への入力信号を遅延させる。
増幅装置950は、DAC904Aの出力であるアナログI/Q信号を直交変調する直交変調器951Aと、DAC904Bの出力であるアナログI/Q信号を直交変調する直交変調器951Bと、直交変調器951Aからの変調出力の周波数をキャリア周波数に変換するアップコンバータ952Aと、直交変調器951Bからの変調出力の周波数を前出のキャリア周波数とは異なるキャリア周波数に変換するアップコンバータ952Bと、アップコンバータ952Aの出力信号とアップコンバータ952Bの出力信号を合成する電力合成器953と、電力合成器953の出力信号を電力増幅する電力増幅器954を含む。電力増幅された高周波信号は出力端子970から、例えば図示していないデュープレクサを介してアンテナに供給される。
帰還信号生成装置960は、増幅装置950の出力の一部を帰還信号として取り出す方向性結合器961と、帰還信号を周波数変換する周波数ダウンコンバータ962と、ダウンコンバートされた帰還信号を直交復調する直交復調器963を含む。
図2に歪補償信号発生経路909の機能ブロック図を示す。
歪補償信号発生経路909は、3次歪信号|s121を発生する3次歪発生器9092A1と3次歪信号|s121のベクトル係数(振幅と位相)の調整を行う3次歪ベクトル調整器9092A2を含む歪信号生成部9092Aと、3次歪信号|s222を発生する3次歪発生器9092B1と3次歪信号|s222のベクトル係数(振幅と位相)の調整を行う3次歪ベクトル調整器9092B2を含む歪信号生成部9092Bと、相互変調歪信号2|s221と2|s122を発生する相互変調歪生成部90950と相互変調歪信号2|s221のベクトル係数(振幅と位相)の調整を行う副3次歪ベクトル調整器90951と相互変調歪信号2|s122のベクトル係数(振幅と位相)の調整を行う副3次歪ベクトル調整器90952を含む副歪信号生成部9095と、分配器902Aからの信号を歪信号生成部9092Aと副歪信号生成部9095にそれぞれ分配する信号分配部9091Aと、分配器902Bからの信号を歪信号生成部9092Bと副歪信号生成部9095にそれぞれ分配する信号分配部9091Bと、歪信号生成部9092Aの出力と副歪信号生成部9095の出力を合成する信号加算部9093Aと、歪信号生成部9092Bの出力と副歪信号生成部9095の出力を合成する信号加算部9093Bとを含む。信号加算部9093Aの出力は信号加算器903Aの入力となり、信号加算部9093Bの出力は信号加算器903Bの入力となる。3次歪ベクトル調整器9092A2、3次歪ベクトル調整器9092B2、副3次歪ベクトル調整器90951および副3次歪ベクトル調整器90952のそれぞれで調整するベクトル係数の値は制御器907の指示に基づく。
図3を参照して歪観測器906と制御器907の動作を説明する。図3は、増幅装置950の出力スペクトルを模式的に表している。信号帯域Abは、信号発生装置Aの出力信号に対応し、信号帯域Bbは、信号発生装置Bの出力信号に対応する。この例は、離散的な周波数帯域を使用するキャリアアグリゲーションの場合を示している。
歪観測器906は、3次歪成分下側帯域Ab1,Bb1、3次歪成分上側帯域Ab2,Bb2における各帯域内の電力を測定する。
制御器907は、歪観測器906によって測定した歪成分の電力を低減するように歪補償信号発生経路909に含まれる3次歪ベクトル調整器9092A2、3次歪ベクトル調整器9092B2、副3次歪ベクトル調整器90951、副3次歪ベクトル調整器90952のそれぞれに与えるベクトル係数の調整量を決定する。このとき、3次歪ベクトル調整器9092A2と副3次歪ベクトル調整器90951に与えるベクトル係数を調整することによって3次歪成分下側帯域Ab1と3次歪成分上側帯域Ab2に生じる歪成分を補償できる。3次歪ベクトル調整器9092B2と副3次歪ベクトル調整器90952に与えるベクトル係数を調整することによって3次歪成分下側帯域Bb1と3次歪成分上側帯域Bb2に生じる歪成分を補償できる。
参考特許文献に基づくプリディストータを用いる場合、電力増幅器で発生する歪成分を補償するまでにある程度の時間を要することが懸念される。以下に、この理由を説明する。
参考特許文献に基づくプリディストータでは、歪成分を補償するために、例えば、3次歪ベクトル調整器9092A2、副3次歪ベクトル調整器90951、3次歪ベクトル調整器9092B2、副3次歪ベクトル調整器90952の順に、それぞれのベクトル係数の調整量を決定する。このとき、各ベクトル調整器に与えるベクトル係数の決定に要する時間(以下、調整時間ともいう)が同じと仮定して調整時間をt1秒とした場合、全てのベクトル調整器のベクトル係数を決定するまでに4t1秒の時間がかかる。キャリアアグリゲーションで用いるコンポーネントキャリアの数が増えた場合、3次歪ベクトル調整器の数と副3次歪ベクトル調整器の数が増加する場合があるため、調整時間がこの例に比べてさらに増加する。つまり、調整時間はベクトル調整器の数に応じて増大する。この調整時間の増大は、歪成分を補償するまでの時間を増大させてしまう。
上述の例では、二つの異なる周波数帯域を同時に使用する信号を一つの信号発生装置によって発生できない場合を想定した。上記の懸念は、このような場合においてのみ予想されるものではない。一つの信号発生装置が複数の異なる周波数帯域を同時に使用する信号を発生する場合であっても、当該信号を分波してから帯域ごとに歪信号の生成と調整の各処理を行うことから、上述の例の場合と同様の懸念が予想される。
本発明は、このような観点から、キャリアアグリゲーションを利用する場合であっても、電力増幅器で発生する歪成分をできるだけ短い時間で補償することができるプリディストータとその制御方法を提供することを目的とする。
本発明のプリディストータは、電力増幅器で発生する歪成分を打ち消すような歪補償信号を、複数のコンポーネントキャリアを含む入力信号に予め付加するプリディストータであって、(1)コンポーネントキャリアの信号を遅延伝達する線形伝達経路と、(2)コンポーネントキャリアごとにコンポーネントキャリアの信号だけを用いて得られる自己歪信号、および、互いに異なる二つ以上のコンポーネントキャリアの信号を用いて得られる相互変調歪信号のうち少なくとも一部(以下、自己歪信号と相互変調歪信号を歪信号と総称する)、のそれぞれを生成する歪信号生成手段と、これら歪信号それぞれに対応して設けられており、対応する歪信号の振幅と位相を調整するベクトル調整器とを含み、歪補償信号を出力する歪補償信号発生経路と、(3)線形伝達経路の出力と歪補償信号発生経路の出力とを合成する信号加算器と、(4)各歪信号の電力をコンポーネントキャリアの信号を用いて測定する電力測定器と、(5)信号加算器の出力に対して電力増幅を行う電力増幅器の出力に含まれる歪成分を観測する歪観測器と、(6)各ベクトル調整器の振幅および/または位相の調整量を設定する制御器とを含んでいる。制御器は、少なくとも電力測定器の測定結果を用いて複数のベクトル調整器のうち一部のベクトル調整器を選択し、選択されたベクトル調整器に与える振幅および/または位相の調整量を歪観測器の観測結果に基づいて決定し、さらに、決定された調整量または当該調整量に基づく調整量を選択されなかったベクトル調整器の振幅および/または位相の調整量として設定する。
あるいは、本発明のプリディストータは、電力増幅器で発生する歪成分を打ち消すような歪補償信号を、複数のコンポーネントキャリアを含む入力信号に予め付加するプリディストータであって、(1)コンポーネントキャリアの信号を遅延伝達する線形伝達経路と、(2)コンポーネントキャリアごとにコンポーネントキャリアの信号だけを用いて得られる自己歪信号、および、互いに異なる二つ以上のコンポーネントキャリアの信号を用いて得られる相互変調歪信号のうち少なくとも一部(以下、自己歪信号と相互変調歪信号を歪信号と総称する)、のそれぞれを生成する歪信号生成手段と、これら歪信号それぞれに対応して設けられており、対応する歪信号の振幅と位相を調整するベクトル調整器とを含み、歪補償信号を出力する歪補償信号発生経路と、(3)線形伝達経路の出力と歪補償信号発生経路の出力とを合成する信号加算器と、(4)信号加算器の出力に対して電力増幅を行う電力増幅器の出力に含まれる歪成分を観測する歪観測器と、(5)各ベクトル調整器の振幅および/または位相の調整量を設定する制御器とを含んでいる。制御器は、電力増幅器の出力に含まれる歪成分のうち予め指定された周波数帯域に発生する歪成分を補償するベクトル調整器を選択して、この選択されたベクトル調整器に与える振幅および/または位相の調整量を歪観測器の観測結果に基づいて決定し、決定された調整量に基づいて選択されなかったベクトル調整器の振幅および/または位相の調整量を推定し、推定された調整量を選択されなかったベクトル調整器の振幅および/または位相の調整量として設定する。
本発明によると、複数のベクトル調整器のうち一部のベクトル調整器を選択し、選択されたベクトル調整器に与える振幅と位相の調整量を決定し、さらに、決定された調整量を選択されなかったベクトル調整器の振幅と位相の調整量として設定することから、全てのベクトル調整器の振幅と位相の調整量を個別に決定する場合と比べて調整時間を短縮できるので、この結果、電力増幅器で発生する歪成分を短い時間で補償することができるようになる。
複数の周波数帯に適応するべき級数型プリディストータの構成例を示すブロック図。 歪補償信号発生経路の構成例を示すブロック図。 増幅装置の出力スペクトルの模式図。 第1実施形態のプリディストータの構成例を示すブロック図。 第1実施形態の処理フロー図。 第1実施形態の変形例2の処理フロー図。 第2実施形態のプリディストータの構成例を示すブロック図。 第2実施形態の処理フロー図。 第3実施形態のプリディストータの構成例を示すブロック図。 第3実施形態のプリディストータに含まれる歪補償信号発生経路の構成例を示すブロック図。 第3実施形態の処理フロー図。 増幅装置の出力スペクトルの模式図。 増幅装置の出力スペクトルの模式図。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、各実施形態において、図1に示すプリディストータ900に含まれる構成要素と同じ機能を有する構成要素にはプリディストータ900における当該構成要素の符号を割り当てて重複説明を省略する。よって、重複説明が省略された構成要素については図1に示すプリディストータ900に関する説明を参照されたい。
<本発明の要諦>
べき級数モデルによると、コンポーネントキャリアの数とべき級数モデルのモデル次数に応じて、種々の歪信号を想定しえる。このような歪信号は、コンポーネントキャリアごとにコンポーネントキャリアの信号だけを用いて得られる自己歪信号(k番目のコンポーネントキャリアの信号をsk、べき級数モデルのモデル次数を超えない次数をmとすると、|skmkと表される)と、互いに異なる二つ以上のコンポーネントキャリアの信号を用いて得られる相互変調歪信号(モデル次数が3のべき級数モデルの例であれば、例えば、|s122やs2 21 *などである)、の二種類に大別される。
飽和電力近傍で動作する電力増幅器で発生する歪成分の補償の観点から、キャリアアグリゲーションに適応するプリディストータは、好ましくは、少なくとも線形伝達経路の出力信号の周波数帯域にオーバーラップする歪信号を発生させる。つまり、キャリアアグリゲーションに適応するプリディストータは、少なくとも、すべての自己歪信号と、相互変調歪信号のうち線形伝達経路の出力の周波数帯域にオーバーラップするものを発生させる。ベクトル調整器は、プリディストータが発生させる複数の歪信号のそれぞれに対応して設けられる。
本発明では、このような複数のベクトル調整器のうち一部のベクトル調整器を選択し、選択されたベクトル調整器に与える振幅と位相の調整量を決定し、さらに、決定された調整量から予め定めた規則に従って、選択されなかったベクトル調整器の振幅と位相の調整量を設定する。
以下に説明する実施形態では、説明の便宜のため、コンポーネントキャリアの数を2としている。しかし、コンポーネントキャリアの数が3以上であっても、上記要諦と下記実施形態を参考にして容易かつ自明に拡張できる。また、以下に説明する実施形態では、説明の便宜のため、モデル次数を3としている。しかし、モデル次数が5以上であっても、上記要諦と下記実施形態を参考にして容易かつ自明に拡張できる。もちろん、コンポーネントキャリアの数が3以上かつモデル次数が5以上の場合であっても、上記要諦と下記実施形態を参考にして容易かつ自明に拡張できる。
<第1実施形態>
図4に第1実施形態のプリディストータ100の構成とその周辺装置を示す。この例における周辺装置は、二つの信号発生装置A,Bと、増幅装置950と、帰還信号生成装置960である。また、この例では、信号発生装置Aが発生する信号は、1つ目の周波数帯域を用いて送信する複素ベースバンド信号s1であり、I相信号とQ相信号(以下、I/Q信号ともいう)から成るディジタル信号とする。信号発生装置Bが発生する信号は、1つ目の周波数帯域とは異なる二つ目の周波数帯域を用いて送信する複素ベースバンド信号s2であり、I相信号とQ相信号(以下、I/Q信号ともいう)から成るディジタル信号とする。
プリディストータ100は、図1に示すプリディストータ900と異なり、電力測定器101を含んでおり、さらに、分配器902Aに替えて、信号発生装置Aからの信号を線形伝達経路901Aと歪補償信号発生経路909と電力測定器101とに分配する分配器102Aを含み、分配器902Bに替えて、信号発生装置Bからの信号を線形伝達経路901Bと歪補償信号発生経路909と電力測定器101とに分配する分配器102Bを含み、制御器907に替えて、歪観測器906の出力に基づき、歪補償信号発生経路909で用いられるベクトル係数(振幅と位相)や周波数特性補償器係数(振幅と位相)などの調整量を決定する制御器107を含んでいる。制御器107は、ベクトル調整器制御部1071と、管理部1072と、選択部1073とを含んでいる。
第1実施形態では、プリディストータ100に入力する信号から歪補償信号を生成する際に、歪補償信号を構成する各成分(具体的には、3次歪信号|s121、3次歪信号|s222、相互変調歪信号2|s221および相互変調歪信号2|s122)の電力を計算する。電力が最も大きくなる成分の振幅と位相を、電力増幅器で発生する歪成分を低減するように調整し、ここで得られた振幅と位相を歪補償信号における残りの各成分の振幅と位相として設定する。これによって一つの成分の振幅と位相を調整するだけで他の各成分の振幅と位相を調整することなく電力増幅器で発生する歪成分を低減できるため調整時間を短縮できる。
以下、プリディストータ100の制御方法を叙述する(図5参照)。
(ステップS1)
管理部1072は、歪補償信号発生経路909に含まれる四つのベクトル調整器(3次歪ベクトル調整器9092A2、3次歪ベクトル調整器9092B2、副3次歪ベクトル調整器90951および副3次歪ベクトル調整器90952)のうち制御するべきベクトル調整器を選択するように選択部1073を制御する。選択部1073は、電力測定器101に電力の測定を指示する。
電力測定器101は、3次歪ベクトル調整器9092A2の3次歪信号(|s121)、3次歪ベクトル調整器9092B2の3次歪信号(|s222)、副3次歪ベクトル調整器90951の相互変調歪信号(2|s221)、副3次歪ベクトル調整器90952の相互変調歪信号(2|s122)の電力をそれぞれディジタル信号s1,s2を用いて計算によって求める。電力測定器101は、求めた各電力を選択部1073に通知する。各ベクトル調整器(3次歪ベクトル調整器9092A2、3次歪ベクトル調整器9092B2、副3次歪ベクトル調整器90951および副3次歪ベクトル調整器90952)に入力する成分を用いて電力を測定しない理由は、各ベクトル調整器に成分が入力されるよりも前に選択部1073によってベクトル調整器を選択するためである。
(ステップS2)
選択部1073は、電力測定器101の測定結果を比較し、最も電力が大きくなる成分が入力されるベクトル調整器を選択するとともに、管理部1072に選択結果を通知する。
(ステップS3)
管理部1072は、選択部1073が選択したベクトル調整器を制御するようにベクトル調整器制御部1071に指示する。ベクトル調整器制御部1071は、摂動法(参考文献1「T. Nojima and T. Konno, “Cuber Predistortion Linearizer for Relay Equipment in 800 MHz Band Land Mobile Telephone System,”IEEE Transactions on vehicular technology, Vol. 34, Issue 4, pp.169-177, 1985.」参照)もしくは2次関数近似を用いる計算法(参考文献2「J. Ohkawara, Y. Suzuki, and S. Narahashi, "Fast Calculation Scheme for Frequency Characteristic Compensator of Digital Predistortion Linearizer," IEEE Vehicular Technology Conference Spring 2009, proceedings, Apr. 2009.」参照)などの既知の方法によって管理部1072から通知されたベクトル調整器に与える振幅と位相を制御し、歪成分を補償するための振幅と位相の調整量を求める。このとき、選択されていないベクトル調整器に与える振幅を0とすることが好ましい。0とすることによって選択されていないベクトル調整器が選択されたベクトル調整器に与える影響を低減できる場合があるからである。ベクトル調整器制御部1071は、求めた調整量を管理部1072に通知する。
以下では、3次歪ベクトル調整器9092A2が選択された場合を例に、摂動法と2次関数近似を用いる計算法を説明する。
(摂動法の場合)
ベクトル調整器制御部1071は、歪観測器906に対して3次歪成分上側帯域Ab2もしくは3次歪成分下側帯域Ab1のいずれか一方の帯域を指定してその電力測定を指示し、この測定結果に基づいて、その帯域内の電力を低減するように3次歪ベクトル調整器9092A2に与える位相と振幅をそれぞれ調整する。最初に任意に設定した位相XPの前後において指定した帯域内の電力PDを測定し、電力PDが減少する方向へ事前に定めたオフセット値ΔXPだけ位相を変更し、電力PDを歪観測器906で測定する。位相の変更と電力PDの測定を繰り返すことで、電力PDが予め定めた閾値TH以下となる位相XPMINを求める。位相の調整により電力PDが予め定めた閾値TH以下とならない場合には、同様の処理によって振幅を調整する。位相と振幅の調整を繰返し行い、電力PDが予め定めた閾値TH以下となる位相XPMINと振幅XAMINをそれぞれ求める。なお、指定した帯域幅は予め定められた帯域幅としてもよい。帯域幅を狭くすることによって歪観測器906の処理を簡易化できる場合がある。
(2次関数近似を用いる計算法の場合)
異なるR点(以下、Rは3以上の整数とする)の位相(XP1、XP2、…、XPR)にてそれぞれ指定した帯域内の電力(PD1、PD2、…、PDR)を測定し、用いた位相(XP1、XP2、…、XPR)と測定した電力(PD1、PD2、…、PDR)から、最小2乗法によって、位相に対する指定した帯域内電力の依存性を示す2次関数(PD=a2XP2+a1XP+a0)の係数(a2、a1、a0)を求める。係数(a2、a1、a0)において電力PDを最小にする位相XPMIN(=-a1/2a2)を3次歪ベクトル調整器9092A2に設定する。ここでは、2次関数を例として説明したが、位相の計算において位相に対する指定した帯域内電力の依存性として三角関数(PD=b2 cos(b1−XP)+b0)の係数(b2、b1、b0)を最小2乗法によって求めてもよい。得られた三角関数において電力PDを最小にする(すなわちb1−XP=πである)位相XPMIN(=b1−π)を3次歪ベクトル調整器9092A2に設定する。2次関数近似を用いた計算方法において、係数a2が0以下となる場合または2次関数の係数が求まらない場合、測定した電力(PD1、PD2、…、PDR)のうち最も電力を低くした位相をXPMINとしてもよい。振幅についても同様の処理によって電力PDを最小にする振幅XAMINを求め、3次歪ベクトル調整器9092A2に設定する。
最小2乗法を用いて2次関数を特定するためにはRを少なくとも3とする必要があるが、Rを大きくすることによってより高精度に近似できることから、計算時間などの要求条件が許す範囲内でRを3より大きな値としてよい。Rは位相値と振幅値の設定で同数にするのが最も簡易であるが、位相値もしくは振幅値のどちらか一方の近似精度を高める必要がある場合は、位相値と振幅値の設定でRを異なる値としてもよい。
上記の二つの例では、位相値の設定後に振幅値の設定を行っているが、電力増幅器で発生する歪成分の感度が位相値に比べて振幅値のほうが高い場合などは、振幅値の設定を先に行ってもよい。
(ステップS4)
管理部1072は、ステップS2の処理で選択されなかった各ベクトル調整器の振幅と位相を設定するようにベクトル調整器制御部1071に指示する。
ベクトル調整器制御部1071は、ステップS3の処理で得られた振幅と位相の調整量を選択されなかった各ベクトル調整器の振幅と位相の調整量として設定する。
このように、第1実施形態では選択された一つのベクトル調整器についてのみ歪信号の振幅と位相の調整量を決定し、この調整量を他の各ベクトル調整器の振幅と位相の調整量に反映させる。これによって、四つのベクトル調整器のベクトル係数を個別に決定する必要がないため、調整時間を短縮できる。
最も電力が大きくなる成分が入力されるベクトル調整器を選択する理由を以下に説明する。
図3に示したスペクトルにおいて送信帯域Abに発生する歪成分には二つの成分(|s121と2|s221)が合成されている。このため、3次歪ベクトル調整器9092A2に入力する歪信号(|s121)と副3次歪ベクトル調整器90951に入力する歪信号(2|s221)を用いて、この二つの歪成分をそれぞれ個別に補償することを考える。このとき、例えば信号s1と信号s2に大きな電力差があるなどの理由で二つの歪成分の電力に差がある場合、電力が小さい方の歪成分を補償するためベクトル調整器に与える振幅と位相を調整しても歪成分の電力がほとんど変化せず歪成分を補償する振幅と位相を精度良く求められない場合がある。このため、求められた振幅と位相の調整量を他のベクトル調整器の振幅と位相の調整量として設定しても歪成分が閾値TH以下とならない可能性がある。第1実施形態では、このような不都合を回避するため、最も電力が大きくなる歪信号が入力されるベクトル調整器を選択する。
ステップS4処理では、ステップS3の処理で得られた振幅の調整量に対して事前に定められた倍率α(0<α<1)を乗算して得られる調整量をステップS2の処理で選択されなかった各ベクトル調整器の振幅の調整量として設定してもよい。ステップS1の処理で得られた電力を用いて最も電力が高いものを基準とした比を求め、その電力比に応じてベクトル調整器ごとに必ずしも同じではない倍率を設定してもよい。このような調整方法が許される理由は、電力増幅器の特性によっては重み付け処理することによって電力増幅器にて発生する歪成分をより低減できる場合があるからである。
或る一つのベクトル調整器を基準とし、基準としたベクトル調整器に与える位相と振幅の調整量と他のベクトル調整器に与える振幅と位相の調整量との差がそれぞれ一定値となる特性を持つ電力増幅器を用いた場合には、振幅に関する差分と位相に関する差分とをそれぞれ予め測定しておき、ステップS3の処理で得られた振幅と位相の調整量に対してこれら差分を調整して得られる振幅と位相の調整量を、ステップS2の処理で選択されなかった各ベクトル調整器の振幅の調整量として設定してもよい。
(第1実施形態の変形例1)
第1実施形態の変形例1では、次のようにしてベクトル調整器のベクトル係数を設定する。
3次歪ベクトル調整器9092A2に入力する歪信号(|s121)の電力が最も高くかつ当該歪信号と副3次歪ベクトル調整器90951に入力する歪信号(2|s221)との電力差が予め定めた範囲内(ただし、十分に小さい範囲内であることが好ましい)となる場合、ステップS3の処理において、3次歪ベクトル調整器9092A2と副3次歪ベクトル調整器90951を一緒に調整してもよい。このとき、3次歪ベクトル調整器9092A2と副3次歪ベクトル調整器90951に与える振幅と位相はそれぞれ同じ値とする。この理由は、異なる値を設定して歪成分の電力が大きくなった場合、二つの振幅(もしくは位相)のうちどちらの影響によって歪成分の電力が増加したのか切り分けることが困難となるためである。3次歪ベクトル調整器9092A2に入力する歪信号と副3次歪ベクトル調整器90951に入力する歪信号との電力差が小さい場合、二つのベクトル調整器についてベクトル係数を一緒に調整することによって、一つのベクトル調整器を選択する場合よりもより高精度に歪成分を補償するための振幅と位相の調整量を求められる場合がある。
副3次歪ベクトル調整器90951に入力する歪信号の電力が最も高くかつ当該歪信号と3次歪ベクトル調整器9092A2に入力する歪信号との電力差が予め定めた範囲内(ただし、十分に小さい範囲内であることが好ましい)となる場合も同様である。
3次歪ベクトル調整器9092B2に入力する歪信号の電力が最も高い場合は当該歪信号と副3次歪ベクトル調整器90952に入力する歪信号との電力差を比較し、予め定めた範囲内(ただし、十分に小さい範囲内であることが好ましい)となる場合は3次歪ベクトル調整器9092B2と副3次歪ベクトル調整器90952を一緒に調整するようにしてもよい。副3次歪ベクトル調整器90952に入力する歪信号の電力が最も高くかつ当該歪信号と3次歪ベクトル調整器9092B2に入力する歪信号との電力差が予め定めた範囲内(ただし、十分に小さい範囲内であることが好ましい)となる場合も同様である。
上述の理由から、3次歪ベクトル調整器9092A2に入力する歪信号と副3次歪ベクトル調整器90951に入力する歪信号の電力和と3次歪ベクトル調整器9092B2に入力する歪信号と副3次歪ベクトル調整器90952に入力する歪信号の電力和を比較し、電力和が高い方の3次歪ベクトル調整器と副3次歪ベクトル調整器を選択してもよい。このとき、ステップS3の処理では、選択された3次歪ベクトル調整器と副3次歪ベクトル調整器に同じ振幅値と位相値を与えて一緒に調整する。
(第1実施形態の変形例2)
第1実施形態の変形例2では、次のようにしてベクトル調整器のベクトル係数を設定する。
電力増幅器の特性によっては各ベクトル調整器に与える振幅と位相をそれぞれ異なる値としなければ歪成分の電力を閾値THよりも小さくできない場合がある。このため、図6に示す手順でプリディストータ100を制御してもよい。
(ステップS5)
上述のステップS1からステップS4までの各処理が実行された後、管理部1072は、3次歪成分下側帯域Ab1,Bb1と3次歪成分上側帯域Ab2,Bb2の各電力を通知するようにベクトル調整器制御部1071に指示する。
ベクトル調整器制御部1071は、歪観測器906に3次歪成分下側帯域Ab1,Bb1と3次歪成分上側帯域Ab2,Bb2の各電力をそれぞれ測定するように指示し、歪観測器906が得た測定結果を管理部1072に通知する。
(ステップS6)
管理部1072は、通知された各帯域の電力が閾値よりも小さいか否かを判定する。管理部1072は、すべての帯域の電力が閾値よりも小さい場合、処理を終了する。電力が閾値以上となる帯域がある場合、管理部1072は、閾値以上となる帯域をベクトル調整器制御部1071に通知する。閾値は帯域ごとに個別に定めてもよい。個別に定めることによって調整時間を短縮できる場合や電力増幅器に要求される性能を緩和できる場合がある。
(ステップS7)
ベクトル調整器制御部1071は、管理部1072から通知された帯域に対応するベクトル調整器に与える振幅と位相の調整量を決定する。ここでは、該当するベクトル調整器について1つずつ順番に振幅と位相の調整量を決定する。電力増幅器の特性によっては各ベクトル調整器に与える振幅と位相の調整量が管理部1072から指示された振幅値と位相値に対して大きな差を持つことなく歪成分の電力を閾値よりも小さくできる場合がある。このため、調整時間は、オフセット値を小さくした摂動法を用いることによって短縮できる場合がある。摂動法を用いてベクトル調整器に与える振幅を調整する場合、振幅を減少させる方向にするようにしてもよい。これによって電力増幅器で発生する歪成分の電力が増加することを回避できる場合がある。なぜなら、振幅を調整するベクトル調整器に入力する成分の電力がステップS2の処理で選択されたベクトル調整器に入力する成分の電力に比べて小さいからである。
送信帯域Abの近傍における歪成分の電力と送信帯域Bbの近傍における歪成分の電力がどちらも閾値以上の場合、3次歪ベクトル調整器9092A2と3次歪ベクトル調整器9092B2を一緒に調整してもよい。このとき、各ベクトル調整器に与える振幅と位相はそれぞれ異なる値でよい。これは、歪成分が発生する帯域が異なるからである。このため、一緒に調整するベクトル調整器の組み合わせを3次歪ベクトル調整器9092A2と副3次歪ベクトル調整器90952としてもよく、副3次歪ベクトル調整器90951と3次歪ベクトル調整器9092B2としてもよい。予め電力増幅器の特性を測定し、その結果から最適な組み合わせを選択することが好ましい。
選択されたベクトル調整器の調整が完了した後、ステップS5の処理に戻る。
(第1実施形態の変形例3)
電力増幅器の特性によってはステップS4の処理にてベクトル調整器の位相のみを設定するように管理部1072がベクトル調整器制御部1071に指示してもよい。この場合、ベクトル調整器の振幅を個別に調整するように管理部1072がベクトル調整器制御部1071に指示する。電力増幅器で発生する歪成分の位相に大きな違いがなく振幅に差がある場合には、この設定方法が有効である。
電力増幅器の特性によってはステップS4の処理にてベクトル調整器の振幅のみを設定するように管理部1072がベクトル調整器制御部1071に指示してもよい。この場合、ベクトル調整器の位相を個別に調整するように管理部1072がベクトル調整器制御部1071に指示する。電力増幅器で発生する歪成分の振幅に大きな違いがなく位相に差がある場合には、この設定方法が有効である。
第1実施形態では、方向性結合器、ダウンコンバータ、直交復調器、ADCがそれぞれ1つであるが、各回路がキャリアアグリゲーションに対応していない場合、コンポーネントキャリア毎に各回路を用意してもよい。このとき、歪観測器はコンポーネントキャリアの数だけ用意してもよく、各ADCの出力を時間的に切り替えるようにしてもよい。
ステップS5の処理において3次歪成分下側帯域Ab1,Bb1と3次歪成分上側帯域Ab2,Bb2のいずれかの帯域のみ閾値を満たさない場合を考慮して、プリディストータ100が周波数特性補償器を備えてもよい。周波数特性補償器は、ベクトル調整器の出力を周波数領域に変換し、予め定めた帯域幅ごとに歪成分が低減するように振幅と位相を調整してから、時間領域に変換する。周波数特性補償器の出力は信号加算部の入力となる。周波数特性補償器を用いることで歪補償信号に周波数特性を与えることができるため、歪成分の電力を閾値よりも小さくできる場合がある。プリディストータ100が複数の周波数特性補償器を含む場合、上述の方法と同様に周波数特性補償器を選択し、選択された周波数特性補償器で決められた振幅と位相を選択されていない周波数特性補償器の振幅と位相として設定してもよい。
同一周波数帯域に発生する複数の歪成分において歪成分ごとに位相と振幅が異なるがその差が大きくならないような特徴をもつ電力増幅器を用いた場合、位相と振幅の差が一定値となるような特徴をもつ電力増幅器を用いた場合、電力増幅器の特徴が予め把握できない場合などに本実施形態に記載のプリディストータを用いると上記参考特許文献(日本国出願番号2011-269882)記載のプリディストータに比べて短い時間で歪成分を低減できる。これは、上記参考特許文献のプリディストータはベクトル調整器を1つずつ順番に制御しかつ各ベクトル調整器に与える振幅と位相の調整を初期値から行うのに対して、本実施形態に記載のプリディストータはある1つのベクトル調整器を選択し、このベクトル調整器に与える振幅と位相を調整したのち、選択されたベクトル調整器に与えた振幅と位相に基づいて他のベクトル調整器に与える振幅と位相を設定するためである。
<第2実施形態>
図7を参照して、第2実施形態のプリディストータ200を説明する。第2実施形態のプリディストータ200は、制御器107の選択部1073が電力測定器101だけでなく歪観測器906の測定結果を用いて調整すべきベクトル調整器を選択する点が第1実施形態と異なる。電力増幅器で発生する歪成分の電力も選択の指標に加えることで、歪成分の電力を測定した後にベクトル調整器を選択することとなるが第1実施形態と比べて歪成分を補償しやすいベクトル調整器を選択できる場合がある。
以下、図8を参照して、プリディストータ200の制御方法を叙述する。
(ステップS21)
第2実施形態におけるステップS21の処理は、第1実施形態におけるステップS1の処理と同じである。
(ステップS21a)
選択部1073は、歪成分の電力を測定するように歪観測器906に指示する。歪観測器906は、3次歪成分下側帯域Ab1,Bb1と3次歪成分上側帯域Ab2,Bb2の各電力を測定し、測定結果を選択部1073に通知する。
(ステップS22)
選択部1073は、歪観測器906からの各電力の測定結果を比較し、電力が最も大きい帯域を選択する。次いで、電力測定器101からの各電力の測定結果を比較し、選択された帯域に対応する歪信号の電力うち電力が高い方の歪信号を選択する。帯域の選択結果と選択した歪信号が入力するベクトル調整器の選択結果を管理部1072に通知する。
(ステップS23)
管理部1072は、選択部1073が選択したベクトル調整器を制御するようにベクトル調整器制御部1071に指示する。ベクトル調整器制御部1071は、上述の摂動法もしくは2次関数近似を用いる計算法などの既知の方法によって管理部1072から通知されたベクトル調整器に与える振幅と位相を制御し、歪成分を補償するための振幅と位相の調整量を求める。この処理では、歪観測器906で測定する帯域はステップS22の処理にて選択部1073が選択した帯域を用いる。これによって最も歪成分の電力が大きい帯域の結果を用いることができるため、歪成分を低減する振幅と位相を求めやすい場合がある。ベクトル調整器制御部1071は、求めた調整量を管理部1072に通知する。
(ステップS24)
第2実施形態におけるステップS24の処理は、第1実施形態におけるステップS4の処理と同じである。
第2実施形態では、選択部1073にて歪信号の電力だけでなく歪成分の電力を用いてベクトル調整器を選択する。これによって、歪成分の電力が最も大きい帯域をベクトル調整器の調整において指定できる観点から、歪成分を補償するためのベクトル調整器の振幅と位相の調整量を求めやすい場合がある。
<第3実施形態>
図9に第3実施形態のプリディストータ300の構成とその周辺装置を示す。この例における周辺装置は、二つの信号発生装置A,Bと、増幅装置980と、帰還信号生成装置960である。また、この例では、信号発生装置Aが発生する信号は、1つ目の周波数帯域を用いて送信する複素ベースバンド信号s1であり、I相信号とQ相信号(以下、I/Q信号ともいう)から成るディジタル信号とする。信号発生装置Bが発生する信号は、1つ目の周波数帯域とは異なる二つ目の周波数帯域を用いて送信する複素ベースバンド信号s2であり、I相信号とQ相信号(以下、I/Q信号ともいう)から成るディジタル信号とする。
プリディストータ300は、入力された信号を合成する信号加算器308と、歪補償信号を発生するための歪補償信号発生経路309と、信号発生装置Aからの信号を信号加算器308と歪補償信号発生経路309に分配する分配器302Aと、信号発生装置Bからの信号を信号加算器308と歪補償信号発生経路309に分配する分配器302Bと、歪補償信号発生経路309で生じる遅延時間だけ信号加算器308の出力信号を遅延させる遅延器を含む線形伝達経路301と、線形伝達経路301の出力と歪補償信号発生経路309の出力を合成する信号加算器303と、信号加算器303の出力(歪補償成分が付加されたディジタルI/Q信号)をアナログI/Q信号に変換するディジタルアナログ変換器(DAC)304と、増幅装置980の出力の一部を帰還信号として取り込む帰還信号生成装置960の出力(アナログI/Q信号)をディジタルI/Q信号に変換するアナログディジタル変換器(ADC)305と、ADC305の出力から歪成分を測定する歪観測器306と、歪観測器306の出力に基づき、歪補償信号発生経路309で用いられるベクトル係数(振幅と位相)や周波数特性補償器係数(振幅と位相)などの調整量を決定する制御器307を含む。制御器307は、ベクトル調整器制御部3071と、ベクトル係数推定部3075とを含んでいる。なお、信号発生装置A,Bの信号s1,s2が直流を中心としたベースバンド信号の場合、分配器302A,302Bは、信号帯域Abの中心周波数と信号帯域Bbの中心周波数との周波数差となるように各信号発生装置からの信号の周波数をそれぞれシフトさせる。この理由は、周波数をシフトしない場合、同一中心周波数に信号s1と信号s2が生じるからである。周波数のシフトは例えばFFTとIFFTを用いることで行うことができる。例えば、FFTによって信号s1,s2を周波数領域に変換し、それぞれの周波数を所望の周波数(例えば、信号s1に対して−ΔF/2、信号s2に対して+ΔF/2とする)にシフトさせたのちIFFTを用いることで行う。
増幅装置980は、DAC304の出力であるアナログI/Q信号を直交変調する直交変調器981と、直交変調器981からの変調出力の周波数をキャリア周波数に変換するアップコンバータ982と、アップコンバータ982の出力信号を電力増幅する電力増幅器984を含む。電力増幅された高周波信号は出力端子970から、例えば図示していないデュープレクサを介してアンテナに供給される。
帰還信号生成装置960は、増幅装置950の出力の一部を帰還信号として取り出す方向性結合器961と、帰還信号を周波数変換する周波数ダウンコンバータ962と、ダウンコンバートされた帰還信号を直交復調する直交復調器963を含む。
図10に歪補償信号発生経路309の機能ブロック図を示す。
歪補償信号発生経路909は、3次歪信号|s121を発生する3次歪発生器9092A1と3次歪信号|s121のベクトル係数(振幅と位相)の調整を行う3次歪ベクトル調整器9092A2を含む歪信号生成部9092Aと、3次歪信号|s222を発生する3次歪発生器9092B1と3次歪信号|s222のベクトル係数(振幅と位相)の調整を行う3次歪ベクトル調整器9092B2を含む歪信号生成部9092Bと、相互変調歪信号2|s221と2|s122とs2 21 *とs1 22 *を発生する相互変調歪生成部30950と相互変調歪信号2|s221のベクトル係数(振幅と位相)の調整を行う副3次歪ベクトル調整器90951と相互変調歪信号2|s122のベクトル係数(振幅と位相)の調整を行う副3次歪ベクトル調整器90952と相互変調歪信号s1 22 *のベクトル係数(振幅と位相)の調整を行う副3次歪ベクトル調整器30953と相互変調歪信号s2 21 *のベクトル係数(振幅と位相)の調整を行う副3次歪ベクトル調整器30954とを含む副歪信号生成部3095と、分配器302Aからの信号を歪信号生成部9092Aと副歪信号生成部3095にそれぞれ分配する信号分配部9091Aと、分配器302Bからの信号を歪信号生成部9092Bと副歪信号生成部3095にそれぞれ分配する信号分配部9091Bと、歪信号生成部9092Aの出力と副歪信号生成部3095の出力と歪信号生成部9092Aの出力とを合成する信号合成部3093を含む。信号合成部3093の出力は信号加算器303の入力となる。3次歪ベクトル調整器9092A2、3次歪ベクトル調整器9092B2、副3次歪ベクトル調整器90951、副3次歪ベクトル調整器90952、副3次歪ベクトル調整器30953および副3次歪ベクトル調整器30954のそれぞれで調整するベクトル係数の値は制御器307の指示に基づく。
歪補償信号発生経路309が信号帯域Ab,Bb近傍以外の帯域に発生する歪成分を補償するための歪信号s2 21 *とs1 22 *も生成し、その歪信号も用いてベクトル調整器に与える振幅と位相を求める点が既述の実施形態と異なる。また、第3実施形態では、各ベクトル調整器に与える振幅と位相をそれぞれ推定する点が既述の実施形態と異なり、電力増幅器の特性によっては既述の実施形態と比べて歪成分をより低減できる場合がある。
以下、図11を参照して、プリディストータ300の制御方法を叙述する。
(ステップS31)
ベクトル係数推定部3075は、副3次歪ベクトル調整器30953を制御するようにベクトル調整器制御部3071に指示する。ベクトル調整器制御部3071は、上述の摂動法もしくは2次関数近似を用いる計算法などの既知の方法によってベクトル係数推定部3075から通知された副3次歪ベクトル調整器30953に与える振幅と位相を制御し、歪成分を補償するための振幅と位相の調整量を求める。このとき、歪観測器306は、図12に示す相互変調歪成分下側帯域Cbの電力を測定し、測定結果をベクトル調整器制御部3071に通知する。ベクトル調整器制御部3071は、求めた調整量をベクトル係数推定部3075に通知する。
(ステップS32)
ベクトル係数推定部3075は、副3次歪ベクトル調整器30954を制御するようにベクトル調整器制御部3071に指示する。ベクトル調整器制御部3071は、上述の摂動法もしくは2次関数近似を用いる計算法などの既知の方法によってベクトル係数推定部3075から通知された副3次歪ベクトル調整器30954に与える振幅と位相を制御し、歪成分を補償するための振幅と位相の調整量を求める。このとき、歪観測器306は、図12に示す相互変調歪成分上側帯域Dbの電力を測定し、測定結果をベクトル調整器制御部3071に通知する。ベクトル調整器制御部3071は、求めた調整量をベクトル係数推定部3075に通知する。
ここでは、副3次歪ベクトル調整器30953、副3次歪ベクトル調整器30954の順にベクトル係数の調整量の決定を行っているが、この順番は逆でもよいし、副3次歪ベクトル調整器30953と副3次歪ベクトル調整器30954とで補償する歪成分の帯域が異なるため並行処理してもよい。並行処理をする場合、電力増幅器の特性によっては調整時間を短縮できる場合がある。
(ステップS33)
ベクトル係数推定部3075は、ステップS31とステップS32の各処理で得られた振幅と位相の調整量を用いて3次歪ベクトル調整器9092A2,9092B2、副3次歪ベクトル調整器90951,90952に与える振幅と位相の調整量を推定する。以下に振幅を推定する例を示すが、位相の推定も同じである。ステップS31の処理で得られた歪成分を補償する振幅の調整量をYA5、ステップS32の処理で得られた歪成分を補償する振幅の調整量をYA6とする。
副3次歪ベクトル調整器30953で補償する歪成分の中心周波数をfd3、副3次歪ベクトル調整器30954で補償する歪成分の中心周波数fd4、3次歪ベクトル調整器9092A2と副3次歪ベクトル調整器90951で補償する歪成分の中心周波数fd1、3次歪ベクトル調整器9092B2と副3次歪ベクトル調整器90952で補償する歪成分の中心周波数fd2する。
3次歪ベクトル調整器9092A2および副3次歪ベクトル調整器90951に与える各振幅の調整量をYA5+(fd1-fd3)(YA6−YA5)/(fd4-fd3)とする。3次歪ベクトル調整器9092B2および副3次歪ベクトル調整器90952に与える各振幅の調整量をYA5+(fd2-fd3)(YA6−YA5)/(fd4-fd3)とする。
電力増幅器で発生する歪成分が周波数特性を持つとき、このように線形補間によってベクトル係数を推定することによって、各ベクトル調整器に同一の値を設定する場合に比べて歪成分を高精度に補償できる場合がある。
(ステップS34)
ベクトル係数推定部3075は、ステップS33の処理で得られた振幅と位相の調整量を各ベクトル調整器に設定するようにベクトル調整器制御部3071に指示する。ベクトル調整器制御部3071は、ベクトル係数推定部3075から通知された振幅と位相の調整量を各ベクトル調整器の振幅と位相の調整量として設定する。
上記の例では、コンポーネントキャリアが不連続に配置されている例を示したが、図13に示すようにコンポーネントキャリアが連続している場合の動作を以下に示す。
ステップS31の処理では、3次歪成分下側帯域Ab1内の電力を測定し、副3次歪ベクトル調整器30953の振幅と位相の調整量を求める。ステップS32の処理では、3次歪成分上側帯域Bb2内の電力を測定し、副3次歪ベクトル調整器30954の振幅と位相の調整量を求める。ステップS33の処理では、次のような処理を行う。副3次歪ベクトル調整器30953で得られた振幅を副3次歪ベクトル調整器30953によって補償する歪成分が発生する帯域の中心周波数に配置し、副3次歪ベクトル調整器30954で得られた振幅を副3次歪ベクトル調整器30954によって補償する歪成分が発生する帯域の中心周波数に配置し、これらの振幅値に基づく線形補間によって、3次歪ベクトル調整器9092A2と副3次歪ベクトル調整器90951によって補償する歪成分が発生する帯域の中心周波数における振幅の調整量と、3次歪ベクトル調整器9092B2と副3次歪ベクトル調整器90952によって補償する歪成分が発生する帯域の中心周波数における振幅の調整量を求める。位相の推定も、この振幅の推定と同じである。
コンポーネントキャリアが連続して配置している場合においても本実施例だけでなく他の実施例に記載した方法を用いてもよい。
上述の実施形態では、二つの異なる周波数帯域を同時に使用する信号を一つの信号発生装置によって発生できない場合を想定した。本発明の実施形態は、このような場合に限定されるものではない。一つの信号発生装置が複数の異なる周波数帯域を同時に使用する信号を発生する場合、当該信号を分波してから帯域ごとに歪信号の生成と調整の各処理を行うことによって、上記各実施形態に帰着させることができる。

Claims (4)

  1. 電力増幅器で発生する歪成分を打ち消すような歪補償信号を、複数のコンポーネントキャリアを含む入力信号に予め付加するプリディストータであって、
    上記コンポーネントキャリアの信号を遅延伝達する線形伝達経路と、
    上記コンポーネントキャリアごとに当該コンポーネントキャリアの信号だけを用いて得られる自己歪信号、および、互いに異なる二つ以上の上記コンポーネントキャリアの信号を用いて得られる相互変調歪信号のうち少なくとも一部(以下、自己歪信号と相互変調歪信号のうち少なくとも一部を歪信号と総称する)、のそれぞれを生成する歪信号生成手段と、これら歪信号それぞれに対応して設けられており、対応する歪信号の振幅と位相を調整するベクトル調整器とを含み、上記歪補償信号を出力する歪補償信号発生経路と、
    上記線形伝達経路の出力と上記歪補償信号発生経路の出力とを合成する信号加算器と、
    各上記歪信号の電力を上記コンポーネントキャリアの信号を用いて測定する電力測定器と、
    上記信号加算器の出力に対して電力増幅を行う上記電力増幅器の出力に含まれる歪成分を観測する歪観測器と、
    少なくとも上記電力測定器の測定結果を用いて上記複数のベクトル調整器のうち一部のベクトル調整器を選択して、この選択されたベクトル調整器に与える振幅および/または位相の調整量を上記歪観測器の観測結果に基づいて決定し、さらに、決定された当該調整量または当該調整量に基づく調整量を選択されなかったベクトル調整器の振幅および/または位相の調整量として設定する制御器と
    を含むプリディストータ。
  2. 請求項1に記載のプリディストータであって、
    上記制御器は、選択部と、ベクトル調整器制御部とを含み、
    上記選択部は、上記電力測定器の測定結果を比較して、最も電力が大きい歪信号が入力されるベクトル調整器を選択し、
    上記ベクトル調整器制御部は、上記歪観測器の観測結果に基づいて、上記電力増幅器で発生する歪成分を低減するように、上記選択部が選択したベクトル調整器に与える振幅および/または位相の調整量を決定し、さらに、決定された当該調整量または当該調整量に基づく調整量を選択されなかったベクトル調整器の振幅および/または位相の調整量として設定する
    ことを特徴とするプリディストータ。
  3. 請求項1に記載のプリディストータであって、
    上記制御器は、選択部と、ベクトル調整器制御部とを含み、
    上記選択部は、上記歪観測器の観測結果を比較して、上記電力増幅器で発生する歪成分のうち電力が最も大きい歪成分が発生する帯域を選択し、さらに、上記電力測定器の測定結果のうち当該選択された帯域に対応する歪信号の電力を比較し、最も電力が大きい歪信号が入力されるベクトル調整器を選択し、
    上記ベクトル調整器制御部は、上記歪観測器の観測結果に基づいて、上記電力増幅器で発生する歪成分を低減するように、上記選択部が選択したベクトル調整器に与える振幅および/または位相の調整量を決定し、さらに、決定された当該調整量または当該調整量に基づく調整量を選択されなかったベクトル調整器の振幅および/または位相の調整量として設定する
    ことを特徴とするプリディストータ。
  4. 電力増幅器で発生する歪成分を打ち消すような歪補償信号を、複数のコンポーネントキャリアを含む入力信号に予め付加するプリディストータの制御方法であって、
    上記プリディストータは、
    上記コンポーネントキャリアの信号を遅延伝達する線形伝達経路と、
    上記コンポーネントキャリアごとに当該コンポーネントキャリアの信号だけを用いて得られる自己歪信号、および、互いに異なる二つ以上の上記コンポーネントキャリアの信号を用いて得られる相互変調歪信号のうち少なくとも一部(以下、自己歪信号と相互変調歪信号のうち少なくとも一部を歪信号と総称する)、のそれぞれを生成する歪信号生成手段と、これら歪信号それぞれに対応して設けられており、対応する歪信号の振幅と位相を調整するベクトル調整器とを含み、上記歪補償信号を出力する歪補償信号発生経路と、
    上記線形伝達経路の出力と上記歪補償信号発生経路の出力とを合成する信号加算器と、
    各上記歪信号の電力を上記コンポーネントキャリアの信号を用いて測定する電力測定器と、
    上記信号加算器の出力に対して電力増幅を行う上記電力増幅器の出力に含まれる歪成分を観測する歪観測器と、
    各上記ベクトル調整器の振幅と位相の調整量を設定する制御器とを含み、
    上記制御方法は、
    上記電力測定器が、各上記歪信号の電力を上記コンポーネントキャリアの信号を用いて測定するステップと、
    上記制御器が、少なくとも上記電力測定器の測定結果を用いて上記複数のベクトル調整器のうち一部のベクトル調整器を選択するステップと、
    上記制御器が、選択されたベクトル調整器に与える振幅および/または位相の調整量を上記歪観測器の観測結果に基づいて決定するステップと、
    上記制御器が、決定された上記調整量または当該調整量に基づく調整量を選択されなかったベクトル調整器の振幅および/または位相の調整量として設定するステップと
    を有するプリディストータの制御方法。
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