JP6188642B2 - 下注ぎ造塊方法 - Google Patents
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Description
ところで、このような「溶鋼被覆剤」は、カルシウムなどの酸化物を主成分とし、溶鋼の表面に浮遊した状態で溶湯の表面を被覆するため、通常であれば、溶鋼内に沈降して鋼塊の内部に巻き込まれることはない。しかし、浴面に浮遊する溶鋼被覆剤は、溶鋼の浴面が鋳型内で乱れるなどして溶鋼中に巻き込まれると、非金属介在物による欠陥となって製品の品質を著しく低下させたり、欠陥発生部位の切捨てにより製品の歩留まりを低下させたりする場合がある。したがって、鋳鍛鋼を鋳込む場合は、上述した非金属介在物による欠陥が完全に抑制されている状態が好ましい。そのため、従来の造塊方法では、上記非金属介在物の混入を防止するために、特許文献1や特許文献2に示すようなさまざまな手段が講じられている。
特許文献3には、下注ぎ造塊時に、介在物欠陥や表面ワレ等の欠陥発生を防止するためにスライドノズルを開閉制御する方法が開示されている。この造塊方法によれば、溶湯の表面流速が抑制され、造塊パウダーの膜切れや巻き込みを防止することで、欠陥の発生を効果的に防止することを目的としている。
対して指針を与えるものではない。
即ち、本発明の下注ぎ造塊方法は、溶鋼を、直径が30〜120mmとされた湯道及び下注入口を経由した下注ぎ注入によって、直径が500〜2900mm、高さが1300〜6000mmであって、下側に比べて上側の方が大径とされた形状の鋳型に鋳込んで重量が2〜200tonの鋳塊を造塊するに際し、まず前記鋳型内の溶鋼に溶鋼被覆剤を添加し、前記造塊が完了する鋳込完了時間が6000s以内の場合に、前記溶鋼被覆剤の添加後、前記鋳型への溶鋼の吐出速度を、前記鋳型内における溶鋼の深さに応じて下記の式を満たすように制御し、前記溶鋼の吐出速度の速度変動を0.05(m/s2)以下とすることを特徴とする。
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態による下注ぎ造塊方法が適用される下注ぎ造塊装置1について説明する。なお、図1は、下注ぎ造塊方法を行う下注ぎ造塊装置1の概略構成を示す図であり、図2は、下注ぎ造塊装置1の鋳型2の縦方向の断面形状と共に鋳型2の内部を概略的に示す図である。
具体的には、注入管4は、定盤5の上面から上方に向かって立つように設けられた塔状の部材であり、内部には溶鋼が通る湯道6が上下方向に沿って形成されている。注入管4の湯道6は、注入管4内の貫通孔に耐火物を内張りすることで円形の断面を有する円筒形状となるように形成されており、この湯道6を通じて取鍋3内の溶鋼を導くことができる。
そこで、鋳込み時の溶鋼の吐出流の速度(溶鋼吐出速度v)を低くすることができれば、溶鋼被覆剤の巻き込みは抑制できる可能性がある。しかし、鋳込み初期は溶鋼の湯面が低く、この湯面と溶鋼被覆剤の界面から鋳型2の底部に設けられた下注入口7(又は鋳型2のシュー上端)までの距離(鋳型内溶鋼深さh)が浅いため、溶鋼の吐出流の影響を強く受け、完全に溶鋼被覆剤の巻き込みを防止することは難しい。よって、吐出流を抑制するために、鋳型2に鋳込む速度を小さくする必要があるが、その場合、下注ぎを終えるまでの時間が長くなり、生産性の低下を招く。加えて、鋳込みを終えるまでの時間が長くなることで、鋳込み終了時の溶鋼温度が低下するため、沈降性非金属介在物の発生リスクが高まる。
具体的に、本願の発明者らは、溶鋼被覆剤の巻き込みが、溶鋼被覆剤と溶鋼の界面における溶鋼の流速がある臨界値を超えたときに生じることに着目した。その上で、本願の発明者らは、実験、シミュレーション、観察及び検証を経て、この界面近傍の流速が、鋳込み時の溶鋼の溶鋼吐出速度vと相関があり、溶鋼吐出速度vが大きい(つまり、鋳込速度Mが大きい)と、溶鋼被覆剤と溶鋼の界面近傍における溶鋼の流速も大きくなることを知見するに至った。
尚、鋼塊サイズが異なれば鋳型2の直径も変化するが、溶鋼被覆剤の巻き込みは、鋳込み時の吐出流が溶鋼表面にあたってその流れの方向が変化する箇所で生じるため、鋳型2の直径にはほとんど影響されないことが本願の発明らによって見出されている。そのため、本実施形態では、巻き込み挙動に関係するパラメータとして鋳型2の直径を考慮する必要がなく、溶鋼吐出速度vと鋳型内溶鋼深さhのみをパラメータとして採用する。
鋳型内溶鋼深さh(溶鋼深さh)として0.0m,0.2m,0.45m,0.56m,0.67m,0.78mを選択し、溶鋼吐出速度v(吐出速度v)として0.33m/s,0.47m/s,0.71m/s,1.04m/s,1.33m/sを選択して、これら鋳型内溶鋼深さhと溶鋼吐出速度vの組み合わせにおいて下注ぎ造塊を行い、溶鋼被覆剤の巻き込みが発生したか否かを判断した。鋳型内溶鋼深さhと溶鋼吐出速度vの各組み合わせにおいて、その組み合わせにおける鋳型内溶鋼深さhに達するまで溶鋼被覆剤の巻き込みが発生しない溶鋼吐出速度vで下注ぎ造塊を行い、鋳型内溶鋼深さhに達したときに初めて、当該組み合わせにおける溶鋼吐出速度vとなるように下注ぎ造塊を行った。
上述の下注ぎ造塊には一次精錬、及び二次精錬された溶鋼を用いた。一次精錬は、例えば、容量100tonの電気炉(交流式アーク炉)を用いてスクラップを溶解し、溶解された溶鋼を取鍋へ傾注しつつ出鋼して行った。また、二次精錬は、例えば、LF(Ladle Furnace)法を用いて、成分調整、介在物除去を行った後、取鍋を蓋で覆い、取鍋内を70Pa程度の真空状態とした上でArガスプラグ(底吹き用プラグ)からArガスを吹込み、20分間真空脱水素処理を行った。
この下注ぎ造塊において、溶鋼被覆剤は、鋳込み中に鋳型2又は鋼塊間に侵入してスラグスキンとなり消費された。そこで、溶鋼表面に裸湯が見えた場合は、溶鋼被覆剤を適宜追装した。溶鋼被覆剤の種類としては、当業者常法どおりの溶鋼被覆剤を用いた。
上述の下注ぎ造塊によって所定位置まで鋳込みが終了した後、鋳塊が完全凝固するまで静置した。なお、後述のように、表1の実験は4000(s)以内に鋳込みを完了したも
のであり、沈降性非金属介在物欠陥が発生しない条件で実施した。そして、完全凝固後、脱型し、鍛造工程に移行した。この鍛造工程に送られた鋼塊に対して超音波探傷法などの探傷を行い、非金属介在物の発生を検査することで溶鋼被覆剤の巻き込みの有無を判断した。
増大することはなかった。よって、式(4)として示す不等式が得られる。なお、tlimが4000(s)以内であれば、沈降性非金属介在物の発生は見られなくなった。
ここで、図3を参照して、溶鋼被覆剤の巻き込みを防ぎつつ鋳込みに要する時間を最も短くするには、鋳込み開始から増加する鋳型内溶鋼深さhに対して、境界線L上において対応する溶鋼吐出速度v、つまり溶鋼吐出速度vの最大値を常に採用すれば良い。
その場合は、図4に示すようなパターンの鋳込速度Mとなるようにスライドバルブ10を調整するとよい。図4は、下注ぎ造塊方法における鋳込速度Mの一つのパターンを表すグラフを示す図である。まず、鋳込み開始直後は、湯道6や下注入口7の詰まりを防止するために鋳込速度Mを大きくし、溶鋼が鋳型2に到達した直後に、上述の式(2)を満足する溶鋼吐出速度vとなるように、スライドバルブ10を調整して鋳込速度Mを低下させる。その鋳込速度Mを第1鋳込速度として一定に保ってしばらく鋳込みを行う。鋳型内溶鋼深さhがある程度大きくなった後、溶鋼吐出速度vが上述の式(2)を満足する範囲内で、徐々にスライドバルブ10を調整して鋳込速度Mを大きくし、その大きくなった鋳込速度Mを第2鋳込速度として一定に保って以降の鋳込みを行う。
図5は、溶鋼吐出速度vによる鋳込みの一例を示すグラフであり、図3に示すグラフに2つの一定の溶鋼吐出速度vを用いた鋳込みの一つのパターンPを重ねて示す図である。図5のパターンPにおいて、鋳型内溶鋼深さhがおよそ0.0〜0.32mの間は、第1鋳込速度に対応した溶鋼吐出速度vであり、およそ0.32〜0.62mの間は鋳込速度Mの上昇に伴って溶鋼吐出速度vも上昇し、0.62m以降は、第2鋳込速度に対応した溶鋼吐出速度vで鋳込が行われている。そして、このパターンPにおける溶鋼吐出速度vは、常に上述の式(2)を満たす範囲内にある。
また、図5には、鋳込み中終始一定の吐出速度を用いた鋳込みのパターンQを示している。パターンQにおいて、上述の式(2)を満たしているが、式(4)を満たさないため、取鍋3への地金付着や沈降性非金属介在物の発生リスクが高まる。
2 鋳型
3 取鍋
4 注入管
5 定盤
6 湯道
7 下注入口(溶鋼吐出口)
9 ノズル
10 スライドバルブ
Claims (1)
- 溶鋼を、直径が30〜120mmとされた湯道及び下注入口を経由した下注ぎ注入によって、直径が500〜2900mm、高さが1300〜6000mmであって、下側に比べて上側の方が大径とされた形状の鋳型に鋳込んで重量が2〜200tonの鋳塊を造塊するに際し、
まず前記鋳型内の溶鋼に溶鋼被覆剤を添加し、
前記造塊が完了する鋳込完了時間が6000s以内の場合に、前記溶鋼被覆剤の添加後、前記鋳型への溶鋼の吐出速度を、前記鋳型内における溶鋼の深さに応じて下記の式を満たすように制御し、
前記溶鋼の吐出速度の速度変動を0.05(m/s2)以下とすることを特徴とする下注ぎ造塊方法。
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