JP6186927B2 - 新規なグルコースオキシダーゼ及びそれをコードするポリペプチド配列 - Google Patents
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Description
下記の(a)〜(c)のいずれかのポリペプチドからなるグルコースオキシダーゼ;
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、グルコースオキシダーゼ活性を有するポリペプチド、
(c)配列番号1に示されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなり、グルコースオキシダーゼ活性を有するポリペプチド。
項2
以下の(A)〜(E)のいずれかのDNA:
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列をコードするDNA、
(B)配列番号2に示される塩基配列からなるDNA、
(C)配列番号2に示される塩基配列との相同性が80%以上である塩基配列からなり、且つ、グルコースオキシダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA;
(D)配列番号2に示される塩基配列に相補的な塩基配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであり、且つグルコースオキシダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA、
(E)配列番号2に示される塩基配列において、一若しくは数個の塩基が置換、欠失、挿入、付加および/または逆位されている塩基配列であり、グルコースオキシダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA、
(F)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、且つ、グルコースオキシダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
項3
項2に記載のDNAを組み込んだベクター。
項4
項3に記載のベクターを含む形質転換体。
項5
項4に記載の形質転換体を培養することを含む、項1に記載のグルコースオキシダーゼの製造方法。
項6
項1に記載のグルコースオキシダーゼをグルコースに作用させることを含む、グルコース濃度の測定方法。
項7
項1に記載のグルコースオキシダーゼを含むグルコースアッセイキット。
1.フラビン結合型グルコースオキシダーゼ(GOX)
1−1.グルコースオキシダーゼ活性(GOX活性)
本発明のポリペプチドはグルコースオキシダーゼをコードする。グルコースオキシダーゼとは、分子状酸素を使ってグルコースをグルコノ−δ−ラクトンと過酸化水素に変換する反応を触媒する酵素である。
<試薬>
100mM MES−Na緩衝液pH5.7
0.5% 4AA溶液
40mM EHSPT溶液
500PU/mL ペルオキシダーゼ(POD)溶液
15% D−グルコース溶液
上記MES−Na緩衝液30.0mL、4AA溶液0.3mL、EHSPT溶液0.3mL、POD溶液0.3mL、D―グルコース溶液6.0mLを混合して反応試薬とする。
反応試薬3mLを37℃で5分間予備加温する。GOX溶液0.1mLを添加しゆるやかに混和後、水を対照に37℃に制御された分光光度計で、555nmの吸光度変化を5分記録し、直線部分から(即ち、反応速度が一定になってから)1分間あたりの吸光度変化(ΔODTEST)を測定する。盲検はGOX溶液の代わりにGOXを溶解する溶媒を試薬混液に加えて同様に1分間あたりの吸光度変化(ΔODBLANK)を測定する。これらの値から次の式に従ってGOX活性を求める。ここでGOX活性における1単位(U)とは、濃度131mMのD−グルコース存在下で1分間に1マイクロモルのH2O2を生成する酵素量である。
活性(U/mL)={−(ΔODTEST−ΔODBLANK)×3.1×希釈倍率}/{32.8×0.5×0.1×1.0}
なお、式中の3.1は反応試薬+酵素溶液の液量(mL)、32.8は本活性測定条件におけるミリモル分子吸光係数(cm2/マイクロモル)、0.5は酵素反応で生成したH2O2の1分子から形成するQuinoneimine色素は1/2分子であることによる係数、0.1は酵素溶液の液量(mL)、1.0はセルの光路長(cm)を示す。本書においては、別段の表示しない限り、GOX酵素活性は上記の測定方法に従って、測定される。
1−2.フラビン結合型グルコースオキシダーゼ活性を有するポリペプチド
本発明のGOXは、下記(a)〜(c)のいずれかのポリペプチドで構成されることが好ましい。
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、グルコースオキシダーゼ活性を有するポリペプチド;
(c)配列番号1に示されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなり、グルコースオキシダーゼ活性を有するポリペプチド。
本書では、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の相同性アルゴリズムBLAST(Basic local alignment search tool)http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/においてデフォルト(初期設定)のパラメータを用いることにより、アミノ酸配列の同一性を算出する。
本発明のGOXは、基質特異性に優れている。特に、本発明のGOXは、D−グルコースに対する反応性を基準とした場合に、少なくともマルトース、D−キシロース、D−ガラクトースに対する反応性が有意に低い。より具体的に、本発明のGOXは、同一濃度のD−グルコースに対する反応性を100%とした場合に、マルトースに対する反応性が0.5%以下、D−キシロースに対する反応性が0.8%以下、D−ガラクトースに対する反応性が0.5%以下であることが好ましい。
本発明のGOXは、本来の基質であるD−グルコースに対する親和性が高いことが好ましい。親和性が高いことにより、試料中のD−グルコースの濃度が低い場合であっても、上述する触媒反応を進めることができ、より正確なD−グルコース濃度の測定、より短時間での測定、及びより少ない酵素量での測定に資するからである。GOXのD−グルコースに対する親和性は、Km値によって示される。Km値は、いわゆるミカエリス・メンテン式から求められる値であり、具体的には、上記1−1.に示す活性測定方法においてD−グルコースの濃度を変化させて各濃度における活性を測定し、ラインウィーバー・バーク・プロットを作成することによって求めることができる。
本発明のGOXを構成するポリペプチド部分の分子量は、約65kDaである。SDS−PAGEで測定した場合には通常60−70kDaである。「60−70kDa」とは、SDS−PAGEで分子量を測定した際に、当業者が、通常60kDaから70kDaの間の位置にバンドがあると判断する範囲を含むことを意味する。「ポリペプチド部分」とは、実質的に糖鎖が結合していない状態のGOXを意味する。なお、実質的に糖鎖が結合していない状態のGOXは、精製した酵素を加熱処理して変性させた後、エンドグリコシダーゼ等でタンパク質に付加している糖鎖を分解することにより得られる。
SDS−PAGEでの分子量の測定は、一般的な手法及び装置を用い、市販される分子量マーカーを用いて行うことができる。なお、本発明のGOXは糖鎖を含み、糖鎖部分を含んだ分子量はSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で測定することができる。この場合には80−90kDaの分子量を示す。
本発明のGOXは、上述する特性を備える限り、その由来は特に制限されない。本発明
のGOXは、例えば、タラロマイセス(Talaromyces)属に帰属する微生物に由来し得る。タラロマイセス属に属する微生物としては、特に制限されないが、例えば、Talaromyces sp. RD59338を例示することができる。該菌株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構に保管された菌株であり、所定の手続を経ることによってその分譲を受けることができる。
本発明のDNAは、上記1−2.に示されるGOX活性を有するポリペプチドをコードするDNAであり、具体的には以下の(A)〜(F)のいずれかである。
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列をコードするDNA;
(B)配列番号2に示される塩基配列からなるDNA;
(C)配列番号2に示される塩基配列との相同性が80%以上である塩基配列をからなり、且つ、グルコースオキシダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA;
(D)配列番号2に示される塩基配列に相補的な塩基配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを含み、且つグルコースオキシダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA;
(E)配列番号2に示される塩基配列において、一若しくは数個の塩基が置換、欠失、挿入、付加及び/又は逆位されている塩基配列であり、グルコースオキシダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA;
(F)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、且つ、グルコースオキシダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
本書では、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の相同性アルゴリズムAdvanced BLAST 2.1において、プログラムにblastnを用い、各種パラメータはデフォルト値に設定して検索を行うことにより、ヌクレオチド配列の相同性の値(%)を算出する。
ハイブリダイゼーション液として50%ホルムアミド、5×SSC(0.15M NaCl, 15mM sodium citrate, pH 7.0)、1×Denhardt溶液、1%SDS、10%デキストラン硫酸、10μg/mLの変性サケ精子DNA、50mMリン酸バッファー(pH7.5))を用いる。
本発明のベクターは、上記2.で説明する本発明のGOXをコードするDNAが組み込まれたベクターである。ここで「ベクター」とは、それに挿入された核酸分子を細胞等のターゲット内へと輸送することができる核酸性分子(キャリアー)であり、適当な宿主細胞内で本発明のDNAを複製可能であり、且つ、その発現が可能である限り、その種類や構造は特に限定されない。即ち、本発明のベクターは発現ベクターである。ベクターの種類は、宿主細胞の種類を考慮して適当なベクターが選択される。ベクターの具体例としては、プラスミドベクター、コスミドベクター、ファージベクター、ウイルスベクター(アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター等)等を挙げることができる。また、糸状菌を宿主とする場合に適したベクターや、セルフクローニングに適したベクターを使用することも可能である。
本発明は、宿主細胞に本発明のDNAが導入された形質転換体に関する。本発明のDNAの宿主への導入手段は特に制限されないが、例えば、上記3.で説明するベクターに組み込まれた状態で宿主に導入される。宿主細胞は、本発明のDNAを発現してGOXを生産することが可能である限り、特に制限されない。具体的には、大腸菌、枯草菌等の原核細胞や、酵母、カビ、昆虫細胞、植物培養細胞、哺乳動物細胞等の真核細胞等を使用することができる。
宿主が原核細胞の場合は、エシェリヒア(Escherichia)属、バチルス(Bacillus)属、ブレビバチルス(Brevibacillus)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属などが例として挙げられ、それぞれ、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)C600、エシェリヒア・コリHB101、エシェリヒア・コリDH5α、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、ブレビバチルス・チョウシネンシス(Brevibacillus choshinensis)、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)などが例として挙げられる。また、ベクターとしてはpBR322、pUC19、pBluescriptなどが例として挙げられる。
宿主が酵母の場合は、サッカロミセス(Saccharomyces)属、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、キャンデイダ(Candida)属、ピキア(Pichia)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属などが例として挙げられ、それぞれ、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、キャンデイダ・ウチリス(Candida utilis)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、クリプトコッカス・エスピー(Cryptococcus sp.)などが例として挙げられる。ベクターとしてはpAUR101、pAUR224、pYE32などが挙げられる。
宿主が糸状菌細胞である場合は、アスペルギルス(Aspergillus)属、トリコデルマ(Trichoderma)属、コレトトリカム(Colletotrichum)属などが例として挙げられ、それぞれ、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、トリコデルマ・レセイ(Trichoderma reesei)、コレトトリカム・ヒエマリス(Colletotrichum hiemalis)等を例示することができる。また、本発明のGOXが単離されたタラロマイセス(Talaromyces)属に帰属する微生物を宿主とすることも好ましい。即ち、形質転換体では、通常、外来性のDNAが宿主細胞中に存在するが、DNAが由来する微生物を宿主とするいわゆるセルフクローニングによって得られる形質転換体も好適な実施形態である。
本発明のGOXは、典型的には、本発明のGOXの生産能を有する微生物を培養することで製造される。培養に供される微生物は、本発明のGOXを産生する能力を有する限り特に制限されず、例えば、上記1.に示すタラロマイセス属に帰属する野生型の微生物及び上記4.に示す形質転換体を好適に利用することができる。
グルコースオキシダーゼを用いたグルコースの測定方法は既に当該技術分野において確立されている。よって、公知の方法に従い、本発明のGOXを用いて、各種試料中のグルコースの量又は濃度を測定することができる。本発明のGOXを用いてグルコースの濃度又は量が測定可能である限り、その態様は特に制限されないが、例えば、本発明のGOXを試料中のグルコースに作用させ、グルコースの酸化反応に伴う電子受容体(例えば、4AA)の構造変化を吸光度で測定することにより実施することができる。より具体的には、上記1−1.に示す方法に従って、実施することができる。本発明に従った、グルコース濃度の測定は、試料に本発明のGOXを添加すること、又は添加して混合することにより実施することができる。グルコースを含有する試料は、特に制限されないが、例えば、血液、飲料、食品等を挙げることができる。グルコース濃度又は量の測定が可能である限り、試料に添加する酵素の量は特に制限されない。
本発明のグルコースアッセイキットは、本発明のGOXを少なくとも1回のアッセイに十分な量で含む。典型的には、キットは、本発明のGOXに加えて、アッセイに必要な緩衝液、メディエーター、キャリブレーションカーブ作製のためのグルコース標準溶液、ならびに使用の指針を含む。本発明のGOXは種々の形態で、例えば、凍結乾燥された試薬として、または適切な保存溶液中の溶液として提供することができる。
本発明はまた、本発明のGOXを用いるグルコースセンサを提供する。本発明のグルコースセンサは、電極として、カーボン電極、金電極、白金電極などを用い、この電極上に本発明の酵素を固定化することで作製することができる。固定化方法としては、架橋試薬を用いる方法、高分子マトリックス中に封入する方法、透析膜で被覆する方法、光架橋性ポリマー、導電性ポリマー、酸化還元ポリマーなどがある。その他、フェロセン又はその誘導体に代表される電子メディエーターとともにポリマー中に固定あるいは電極上に吸着固定してもよく、またこれらを組み合わせて用いてもよい。典型的には、グルタルアルデヒドを用いて本発明のGOXをカーボン電極上に固定化した後、アミン基を有する試薬で処理してグルタルアルデヒドをブロッキングすることができる。
独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンター国際連携課から、Talaromyces sp. RD59338株を入手した。入手した菌株は、グリセロールストックであったため、保存菌体及び胞子を復元培地に滴下し、25℃で3日間から7日間、静置培養することで菌株を復元させた。復元培地としては、DP培地(デキストリン2.0%、ポリペプトン1.0%、KH2PO4 1.0%、アガロース1.5%)を使用した。
DP培地100mLをオートクレーブで121℃、20分間滅菌し、実施例1で復元させたTalaromyces sp. RD59338株を一白金耳植菌し、25℃、180rpmで7日間振とう培養した。培養後、培養液上清を回収し、粗酵素液とした。
実施例2で得た粗酵素液中のグルコースオキシダーゼ活性を、上記1−1.に示したグルコースオキシダーゼ活性測定方法を用いて測定した。その結果を表1に示す。
60mLのDP液体培地を200mLバッフル付三角フラスコに入れ、オートクレーブで滅菌し、前培養用の培地とした。予めDPプレート培地で復元したTalaromyces sp. RD59338を前培養培地に一白金耳植菌し、25℃、180rpmで2日間振とう培養し、種培養液とした。
実施例4で精製したTaGOXを100℃、10分間、加熱処理して変性させた後、500UのEndoglycosidase H(ニューイングランドバイオラボ製)で37℃、16時間処理し、タンパク質に付加している糖鎖を分解した。その後、実施例4と同様の方法でSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法で測定を行った。分子量マーカーは、実施例4と同じものを使用した。結果を図2に示す。その結果、精製したTaGOXのポリペプチド部分の分子量は約65,000ダルトンであることが判明した。実施例4で示すとおり、TaGOXの分子量は糖鎖を含んで80,000〜90,000ダルトンであることから、全分子量中の19%〜28%は糖鎖部分の分子量であることが判明した。また、糖鎖部分の分子量は発現に用いる宿主生物を選択することにより、変化させることが可能である。
上記1−1.に示したGOXの活性測定法に従い、実施例4で精製したTaGOXについて、D−グルコース、マルトース、D−ガラクトース、D−キシロースを基質とした場合の活性を測定した。D−グルコースを基質とした場合の活性を100%とし、それと比較した他の糖に対する活性を求めた。各糖の濃度は20mMとした。結果を表2に示す。
基質であるD−グルコースの濃度を変化させて、上記1−1.に示したGOXの活性測定法に従って、精製したTaGOXの酵素活性測定を行い、基質濃度と反応速度のグラフを作成した。これに基づいてLineweaver−burk plotを作成し、Km値を算出した。その結果、TaGOXのD−グルコースに対するKm値は、3.8mMであり、D−グルコースに対する親和性が高いことが判明した。
実施例4で示したSDS−PAGEゲルからゲル断片を切り出し、nano−LC−MS/MS解析を行った。nano―LC−MS/MS解析は日本バイオサービスに解析を依頼した。解析の結果、TaGOXは、Talaromyces variabilisと最も相同性の高いGOXである事が判明した。
(1)染色体DNAの抽出
実施例2で示した、Talaromyces sp. RD59338の培養液をブフナー漏斗及びヌッチェ吸引瓶を用いて培養液をろ過し、菌体を得た。そのうち、約0.3gの菌体を液体窒素中で凍結させ、乳鉢を用いて菌糸を粉砕し、Extraction buffer(1% hexadecyltrimethylammonium bromide、0.7M NaCl、50mM Tris−HCl(pH8.0)、10mM EDTA、1% メルカプトエタノール)12mLに懸濁した。室温で30分回転撹拌を続けた後、等量のフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)溶液を加えて攪拌、遠心分離(1,500g、5分、室温)して上清を得た。得られた上清に等量のクロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)溶液を加えて攪拌し、その後遠心分離(1,500g、5分、室温)を行った。その結果得られた上清に等量のイソプロパノールを穏やかに加えた。この処理によって析出した染色体DNAを遠心分離(20,000g、10分、4℃)して得られた沈殿を70%エタノールで洗浄し、真空乾燥した。このようにして得られた染色体DNAを再び4mLのTEに溶解し、10mg/mLのRNase A(シグマアルドリッチジャパン株式会社)を200μL加えた後、37℃で、30分間インキュベートした。次いで、20mg/mLのProteinase K,recombinant,PCR Grade(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)溶液40μLを加えて37℃で、30分間インキュベートした後、等量のフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)溶液を加えた。攪拌後、遠心分離(1,500g、5分、室温)し、上清を得た。この洗浄操作を2回繰り返した後、得られた上清に等量のクロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)溶液を加えて攪拌し、その後遠心分離(1,500g、5分、室温)を行った。その結果得られた上清に対して、その1/10容量の3M NaOAc(pH4.8)と2.5倍容量のエタノールを加えて遠心処理(20,000g、20分、4℃)を行うことにより回収した。回収された染色体DNAを70%エタノールで洗浄した後、真空乾燥させ、最後に400μLのTE溶液に溶解して濃度約1mg/mLの染色体DNA溶液を得た。
公知のTalaromyces属に由来するGOXのアミノ酸配列やその他公知のアミノ配列を参考にして、比較的アミノ酸配列が保存されていると判断できる領域に基づいて、ミックス塩基を含有する縮重プライマー、TaGOXdgF、TaGOXdgR(配列番号3、4)を合成した。
上記(1)で調製した染色体DNAを鋳型として、DNAポリメラーゼKOD−Fx−neo(東洋紡製)を用いて推奨する条件のもとでPCRを行った。プライマーには、上記(2)で作製したプライマー(配列番号3、4)を使用した。そのPCR反応液をアガロースゲル電気泳動に供したところ、約1500bp程度の長さに相当するバンドが確認されたので、この増幅されたDNA断片を精製し、クローニングキットTarget Clone−Plus(東洋紡製)を用いて、そのプロトコールに従って操作を行い、ベクターpTA2にクローニングし、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)DH5α株コンピテントセル(東洋紡製)に形質転換し、形質転換体を取得した。該形質転換体をLB培地で培養し、プラスミドを抽出し、当該酵素遺伝子に相当する領域の塩基配列解析を実施した。シークエンス反応はBigDyeTM Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(アプライドバイオシステムズジャパン株式会社)を用い、製品の使用説明書に従ってシークエンス反応を行った。解析にはABI PRISM 310シークエンサー(アプライドバイオシステムズジャパン株式会社)を使用した。当該酵素遺伝子の塩基配列解析を実施するためには、上記で使用したプライマー(配列番号3、4)を使用した。その塩基配列解析の結果、約1500bpのTaGOXの部分配列を取得した。
上記のようにして得られた、塩基配列に基づき、開始コドンを含むN末端方向の遺伝子配列取得のために、遺伝子の外側方向に向けた2種類のインバースPCR用プライマー、TaGOXinvF及びTaGOXinvR(配列番号5、6)を新たに設計した。このインバースPCR用プライマーを用い、上記(1)で得た染色体DNAを制限酵素XbaIで処理し、ライゲーションを行ったものを鋳型としてDNAポリメラーゼKOD−FX−neo(東洋紡製)を用いて推奨する条件のもとで、Inverse PCRを行った。これにより、増幅される断片の配列解析を、上記記載と同様にして行い、開始コドンと終止コドンと推測される配列を含む上流及び下流の塩基配列を明らかにした。
N末端の決定は、公知の情報を最大限に活用し、アミノ酸配列の相同性、塩基配列の長さなどの観点から(4)で得られた配列と多角的な比較を行い、開始コドンを判断した。また、C末端の決定も同様の方法にて判断した。さらに、決定したDNA配列にはイントロンが含まれていないことが予測された。
(6)公知のGDHとのアミノ酸配列比較
上記(5)で明らかにしたアミノ酸配列と公知のGOXとの同一性を解析した結果を表3に示す。アミノ酸配列解析は、上記1−2.で説明した方法に従い、BLASTを用いて算出した。表3にはBLAST検索の結果、配列の同一性が高かったものを列挙してある。
(5)での判断結果に基づき、開始コドンを含む領域にアニーリングするプライマー、TaGOX_F(配列番号7)及び終止コドンを含む領域にアニーリングするプライマー、TaGOX_R(配列番号8)を設計した。TaGOX_F及びTaGOX_Rには制限酵素SpeI認識サイトを付加しており、SpeIにより消化、ライゲーションを行うことにより発現ベクターにクローニングすることが可能である。上記(1)で抽出した染色体DNAを鋳型として、KOD−FX−neo(東洋紡製)を用いて推奨する条件の下でPCRをいった。これにより、増幅される断片を精製し、クローニングキットTarget Clone−Plus(東洋紡製)を用いて、そのプロトコールに従って操作を行い、ベクターpTA2にクローニングし、pTaGOXベクターを作製した。pTaGOXベクターを制限酵素SpeIにより消化し、TaGOX遺伝子断片を切り出し、同じく制限酵素SpeIにより消化したAspergillus oryzae発現ベクターpTNEとライゲーションすることによりEF1 promoterの直下に同方向になるように遺伝子断片を挿入しpTNETaGOXを作製した。作製した発現ベクターpTNETaGOXをアスペルギルス・オリゼに形質転換を行った。方法は、Biosci. Biotech.Biochem.,61(8)1367−1369.1997に記載の方法に準じて実施し、宿主にはNS4株を用い、選択マーカーにはniaD遺伝子を用いた。なお、本菌株は、Biosci. Biotech.Biochem.,61(8)1367−1369.1997に記載されているもので(独)酒類総合研究所より得たものである。形質転換体の選抜は硝酸イオン(NO3)の資化性により選抜し、得られた形質転換体は最小培地に3度の植え継ぎを行うことにより核の純化を行った。純化された形質転換体を酵素生産培地(5%酵母エキス、2%ダイズペプチド、5%マルトース)を含む培地に植菌し、30℃で3日間培養した後、培養液上清の活性を確認したところ、TaGOXが発現されていることが確認された。なお、形質転換前の宿主にGOX活性は認められなかった。
(7)で取得された形質転換体を10L容ジャーファーメンター(BMS10−PI/バイオット)を使用して培養した。酵素生産培地にて、培地液量7.0L、攪拌数600rpm、温度30℃、通気量1.0vvmの条件で培養した。培養液からの酵素の精製は、実施例4に示す方法で行った。精製された酵素を実施例6、実施例7で示す方法で基質特異性、Kmを測定した。さらにタンパク質濃度の測定は、Bio−Rad Protein assay(バイオラッド社製)によりBSAを対象にして行いタンパク質濃度を算出し、Vmaxを算出した。また、対照として、アスペルギルス・ニガーに由来するGOX(GLO−201(東洋紡製))についても測定を行った。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
Claims (7)
- 下記の(a)または(c)のポリペプチドからなるグルコースオキシダーゼ;
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(c)配列番号1に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列からなり、グルコースオキシダーゼ活性を有するポリペプチド。 - 以下の(A)〜(C)のいずれかのDNA:
(A)配列番号1に示されるアミノ酸配列をコードするDNA、
(B)配列番号2に示される塩基配列からなるDNA、
(C)配列番号2に示される塩基配列との同一性が90%以上である塩基配列からなり、且つ、グルコースオキシダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNA; - 請求項2に記載のDNAを組み込んだベクター。
- 請求項3に記載のベクターを含む形質転換体。
- 請求項4に記載の形質転換体を培養することを含む、請求項1に記載のグルコースオキシダーゼの製造方法。
- 請求項1に記載のグルコースオキシダーゼをグルコースに作用させることを含む、グルコース濃度の測定方法。
- 請求項1に記載のグルコースオキシダーゼを含むグルコースアッセイキット。
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