以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施例において同一の構成については、同一の符号を付し、最初の実施例においてのみ説明し、以後の実施例においてはその構成の説明を省略する。
図1は本発明に係るプリンターの用紙搬送経路を示す側断面図であり、図2は本発明に係るプリンターの斜視図であり、図3はガイドレール上に配置されたキャリッジの斜視図であり、図4(A)はキャリッジの本体前方から見た斜視図であり、図4(B)はキャリッジの本体後方から見た斜視図であり、図5はキャリッジの本体底面側から見た斜視図である。
図6はギャップ調整手段の斜視図であり、図7(A)は主ギャップ調整手段の斜視図であり、図7(B)は主ギャップ調整手段の摺動部材の斜視図であり、図8(A)は主ギャップ調整手段のギャップ調整カムの斜視図であり、図8(B)は主ギャップ調整手段のギャップ調整カムの正面図であり、図9は主ギャップ調整手段のスライド部材の斜視図であり、図10は係合レバーの斜視図である。
図11(A)はカム係合部の移動領域における係合レバーの第1姿勢の説明図であり、図11(B)はカム係合部の移動領域における係合レバーの第2姿勢の説明図であり、図12(A)はギャップ調整前の状態を示す側断面であり、図12(B)はギャップを小さくした状態を示す側断面図であり、図13(A)は第1の実施例に係るカム係合部と係合レバーとの係合状態を示す説明図であり、図13(B)は第1の実施例に係るカム係合部と係合レバーとの係合状態を示す説明図であり、図14(A)は第1の実施例の変更例に係るカム係合部と係合レバーとの係合状態を示す説明図であり、図14(B)は第1の実施例の変更例に係るカム係合部と係合レバーとの係合状態を示す説明図である。
図15(A)は第2の実施例に係るカム係合部と係合レバーとの係合状態を示す説明図であり、図15(B)はカム係合部材に対する係合レバーの各姿勢を示す側断面図であり、図16は第2の実施例における係合レバーが第3の姿勢においてスライド移動した状態を示す説明図であり、図17は第2の実施例における動力伝達切換手段の斜視図であり、図18は第4の実施例に係る規制手段の説明図であり、図19(A)は第5の実施例に係る規制手段の説明図であり、図19(B)は第5の実施例に係る規制手段の説明図である。
図20(A)は第6の実施例に係る規制手段の説明図であり、図20(B)は第6の実施例に係る規制手段の説明図であり、図21は第7の実施例に係る規制手段の説明図であり、図22(A)は第8の実施例に係るギャップ調整カムのカム形状の説明図であり、図22(B)は第8の実施例に係るギャップ調整カムのカム形状の説明図であり、図23(A)は第9の実施例に係るギャップ調整カムにおけるカムの斜面形状の一例の説明図であり、図23(B)は第9の実施例に係るギャップ調整カムにおけるカムの斜面形状の一例の説明図であり、図23(C)は第9の実施例に係るギャップ調整カムにおけるカムの斜面形状の一例の説明図であり、図23(D)は第9の実施例に係るギャップ調整カムにおけるカムの斜面形状の一例の説明図である。
図24は第10の実施例に係る衝突音の発生を抑制する手段の説明図であり、図25は第12の実施例に係る衝突音の発生を抑制する手段の説明図であり、図26は本発明に係るプリンターの制御手段の説明図であり、図27は第12の実施例に係る衝突音の発生を抑制する手段における速度制御の説明図であり、図28は他の実施形態に係るプリンターを模式的に示した斜視図である。
尚、図1はプリンター10の用紙搬送経路上に配置されるローラーを図示するために、ほぼ全てのローラーを同一面上に描いているが、その奥行き方向(図1の紙面表裏方向)の位置は必ずしも一致しているとは限らない(一致している場合もある。)。また、各図において示すX−Y−Z座標系はX方向が記録ヘッドの走査方向、Y方向が記録装置の奥行き方向、Z方向がギャップの変化する方向すなわち装置高さ方向を示している。尚、各図において−Y方向を装置前面側とし、+Y方向側を装置背面側とする。
■■■プリンターの概要■■■■■■■
以下、図1を参照しながら用紙搬送経路上の構成要素についてさらに詳説する。装置本体12は、「被記録媒体」としての用紙を収容する下段側トレイ14及び下段側トレイ14の上側に位置するとともに用紙を収容する上段側トレイ16を備えて構成されている給送部18と、給送手段20と、搬送手段22と、記録手段24と、排出手段26とを備えて構成されている。下段側トレイ14及び上段側トレイ16は、装置本体12に対しそれぞれ装置前方側から装着及び取り外し可能に構成されている。
また、上段側トレイ16は、後述する動力伝達切換手段により駆動モーター27(図17参照)により装置奥行き方向(図1、Y軸方向)に駆動され、突き当たり位置すなわち給送可能位置(図1参照)と突き当たり位置から−Y方向に所定量変位した退避位置(不図示)との間を移動可能に構成されている。尚、図1においては、下段側トレイ14に収容される用紙を符号P1で、上段側トレイ16に収容される用紙を符号P2で、それぞれ示している(以下特に区別する必要がない場合は「用紙P」という)。尚、用紙Pは、被搬送媒体の一例である。
各トレイの上方には駆動モーター27(図17参照)によって回転駆動されるピックアップローラー28が設けられている。ピックアップローラー28は、揺動軸30を中心に揺動する揺動部材32に設けられている。ピックアップローラー28は、上段側トレイ16が給送可能位置にある場合、上段側トレイ16に収容された用紙P2の最上位のものと接して回転することにより、当該最上位の用紙P2を上段側トレイ16から給送経路へ送り出す。
ピックアップローラー28は、上段側トレイ16が退避位置にある場合、下段側トレイ14に収容された用紙P1の最上位のものと接して回転することにより、当該最上位の用紙P1を下段側トレイ14から給送経路へ送り出す。
また、ピックアップローラー28により下段側トレイ14に収容された用紙P1または上段側トレイ16に収容された用紙P2は、給送経路下流側に配置された給送手段20に送られる。給送手段20は、図示しない駆動機構を介して駆動モーター27により駆動される給送駆動ローラー34と、分離ローラー36と、給送従動ローラー38とを備えている。分離ローラー36は、給送駆動ローラー34と接するとともに用紙Pに対して分離を行い、確実に最上位の用紙Pのみを給送経路下流側に送る。
また、分離ローラー36の下流側には、給送駆動ローラー34との間で用紙Pを挟持して従動回転する給送従動ローラー38が設けられている。さらに、給送従動ローラー38の給送経路下流側には、駆動モーター27により駆動される搬送駆動ローラー40と、該搬送駆動ローラーに圧接して従動回転する搬送従動ローラー42とを備える搬送手段22が設けられている。この搬送手段22により、用紙Pがさらに下流側へと送られる。
搬送手段22の下流側には、記録手段24が設けられている。記録手段24は、記録ヘッド44と、該記録ヘッドと対向し、用紙Pを支持する支持面としての下部案内部材46とを備えている。記録ヘッド44は、キャリッジ48の底部に設けられ、用紙Pと対向する。キャリッジ48は、「駆動モーター」としてのキャリッジ駆動モーター47によって主走査方向(図1の紙面表裏方向すなわちX軸方向)に往復動する様に駆動される。
下部案内部材46は、用紙Pを支持し、下部案内部材46と記録ヘッド44との距離すなわちギャップPGを規定する。そして下部案内部材46の下流側には、記録の行われた用紙Pを送り出す排出手段26が設けられている。排出手段26は、駆動モーター27によって回転駆動される第1ローラー軸49の周囲に形成された第1ローラー50と、当該第1ローラーに接して従動回転する第2ローラー52とを備えている。
記録手段24により記録の行われた用紙Pは、第1ローラー50と第2ローラー52とに狭持され、装置本体12の前面側(図1右方)に設けられた排紙スタッカー54へ排出される。尚、排紙スタッカー54は、操作パネル部56の装置本体12に対する回動とともに装置本体12の外側に突出する方向に変位するすなわちY軸方向に沿って引き出される状態又は装置本体12の内側に引き込まれる方向に変位する状態に切換可能に構成されている。
また、プリンター10において用紙Pの両面に記録を行う場合には、記録手段24によって用紙Pの第1面に記録が行われた後、用紙Pは搬送手段22及び排出手段26の逆送り動作により前記第1面に記録が実行された際に用紙後端となっていた側が先端となって搬送手段22の上流側に戻される。さらに用紙Pは、搬送手段22の逆戻り動作により反転経路58へと送られる。反転経路58内に送られた用紙Pは、駆動ローラー34と反転ローラー60とにより挟持され、再度給送経路に戻される。
給送経路に戻された用紙Pは、分離ローラー36及び従動ローラー38を経て駆動ローラー34により給送経路下流側の搬送手段22へと再度送られる。このとき、用紙Pの第1面と第2面とは湾曲反転させられ、該第2面が記録ヘッド44と対向する。用紙Pは、搬送手段22により記録手段24へ送られる。記録手段24により前記第2面の記録が行われた用紙Pは、排出手段26に狭持され、装置前方側に設けられた排紙スタッカー54へ排出される。
尚、プリンター10は「制御手段」としての制御部61(図26参照)を備えている。制御部61は、操作パネル部56からの入力指令に応じて用紙Pの搬送、排出、キャリッジ48の走査方向における移動及び移動速度、記録ヘッド44におけるインク吐出動作等のプリンター10の記録実行に必要な動作を制御している。
また、プリンター10は図示しないエンコーダー及びリニアスケールを備えている。制御部61は、前記エンコーダーからの前記リニアスケールの検出信号に基づいてキャリッジ48の位置及び速度を算出し、キャリッジ駆動モーター47によりキャリッジ48の位置及び速度を制御する。
更に、図2及び図3を参照して本発明に係る第1の実施例の記録手段24について詳細に説明する。装置本体12において、記録ヘッド44の走査方向(図2X軸方向)に延びる「ガイド部材」としての一対のガイドレール62、63が設けられている。一対のガイドレール62、63にはそれぞれ摺動面64が設けられている(図3参照)。これにより、記録手段24のキャリッジ48は、キャリッジ駆動モーター47及び図示しない駆動機構により一対のガイドレール62、63にガイドされて前記走査方向に移動する。
図4(A)、図4(B)及び図5を参照するに第1の実施例に係るキャリッジ48が示されている。キャリッジ48は、本体66と、本体66の上部に設けられ、複数のインクカートリッジを収容するインクカートリッジ収容部68と、本体66の下部に設けられた開口部に下部案内部材46と対向するように配置された記録ヘッド44と、記録ヘッド44と用紙Pを支持する下部案内部材46との間のギャップPGを調整するギャップ調整手段70とを備えている。
本体66の前面側(図4(A)において−Y側)と背面側(図4(B)においてY方向側)には、記録ヘッド44と下部案内部材46との間隔すなわちギャップPGを調整するギャップ調整手段70が配置されている。ギャップ調整手段70については後で詳細に説明するが、本体66の背面側(図5において右方)には「第1ギャップ調整手段」としての主ギャップ調整手段72が配置され、本体66の前面側(図5において左方)には「第2ギャップ調整手段」としての副ギャップ調整手段74が配置されている。
本体66の背面側に配置された主ギャップ調整手段72は、装置背面側(図3における+Y方向側)のガイドレール62の摺動面64(図3参照)に当接するとともに装置背面側のガイドレール62に支持されている。本体66の前面側に配置された副ギャップ調整手段74は、装置前面側(図3における−Y方向側)のガイドレール63の摺動面64(図3参照)に当接するとともに装置前面側のガイドレール63に支持されている。キャリッジ48は、主ギャップ調整手段72及び副ギャップ調整手段74を各摺動面64にそれぞれ摺動させることにより、前記走査方向に移動することができる。
図6を参照して、ギャップ調整手段70について更に詳説する。ギャップ調整手段70は、キャリッジ48の本体66内において背面側に配置された主ギャップ調整手段72と、キャリッジ48の本体66の前面側に配置された副ギャップ調整手段74と、主ギャップ調整手段72から副ギャップ調整手段74へ動力を伝達する動力伝達部76とを備えて構成されている。
主ギャップ調整手段72には、走査方向(図6においてX軸方向)に延びるとともに前記走査方向に変移するラック部78が設けられ、副ギャップ調整手段74にも前記走査方向に延びるとともに前記走査方向に変移するラック部80が設けられている。
動力伝達部76は、ラック部78と係合する第1伝達ギヤ82と、該第1伝達ギヤに係合する第2伝達ギヤ84と、該第2伝達ギヤと係合し、主ギャップ調整手段72と副ギャップ調整手段74との間に延びるピニオンギヤ軸86と、該ピニオンギヤ軸と係合する第3伝達ギヤ88と、該第3伝達ギヤ及びラック部80と係合する第4伝達ギヤ90とを備えて構成されている。
動力伝達部76は、ラック部78が前記走査方向に変移する際、ラック部78の直線運動を第1伝達ギヤ82により回転運動に変換し、第2伝達ギヤ84、ピニオンギヤ軸86、第3伝達ギヤ88を介して前記回転運動を第4伝達ギヤ90によりラック部80に前記直線運動として伝達する。すなわち、動力伝達部76は、主ギャップ調整手段72から副ギャップ調整手段74に動力を伝達し、ラック部78が移動する方向と同じ方向にラック部80を移動させる。
図7(A)を参照するに、主ギャップ調整手段72が示されている。主ギャップ調整手段72は、ガイドレール62と当接し、ガイドレール62に対して摺動する摺動部材92と、該摺動部材と係合する第1ギャップ調整カム94と、該第1ギャップ調整カム94と係合するスライド部材96とを備えて構成されている。
摺動部材92は、図7(B)に示すようにX軸方向に延びている。摺動部材92の下面(図7(B)において−Z方向)のX軸方向両端部にはガイドレール62の摺動面64と当接する摺動部98(図6参照)が設けられている。また、摺動部材92のX軸方向の両端部には、キャリッジ48の本体66と当接し、該本体66に対して主ギャップ調整手段72のX軸方向の動きを規制する規制部100が設けられている。
また摺動部材92には、Y軸方向における一方の側に第1ギャップ調整カム94と係合する係合部102(図7(B)において+Y方向側)が形成されている。係合部102は、後述する第1ギャップ調整カム94のカム部104の形状に対応して階段状に形成されている。さらに、摺動部材92には、前記一方の側にスライド部材96を案内するガイドピン105が設けられている。
また、摺動部材92の上面には、後述する第1ギャップ調整カム94のカム部104と接触する「カム面係合部」としての接触部108が複数設けられている。更に摺動部材92の上面のX軸方向両端部には、後述する第1付勢手段110を掛止するフック部112が設けられている。
図8(A)及び図8(B)には第1ギャップ調整カム94が示されている。第1ギャップ調整カム94の上面には、ラック部78が形成されている。また、第1ギャップ調整カム94の上面は、キャリッジ48の本体66と当接し、該本体66を支持する支持面114として機能する。第1ギャップ調整カム94のY軸方向における一方の側面(図8(B)参照)には、摺動部材92の係合部102と係合する第1の係合ピン116が設けられている。
また、第1ギャップ調整カム94の前記一方の側面には、「階段状カム面」としての階段状のカム部104が設けられている。カム部104は、ギャップPGを維持する「第2カム面」としての第1段部104a、第2段部104c、第3段部104e、第4段部104gと、ギャップPGを変化させる「第1カム面」としての第1傾斜部104b、第2傾斜部104d、第3傾斜部104fとを有している。
第1段部104a、第2段部104c、第3段部104e、第4段部104gのいずれかが摺動部材92の接触部108と係合して、ギャップPGを規定するとともにギャップPGを維持する。また、第1傾斜部104b、第2傾斜部104d、第3傾斜部104fは、摺動部材92に対して第1ギャップ調整カム94がスライドする際、ギャップPGを変化させる。
尚、第1ギャップ調整カム94において各段部104a,104c,104e,104gと各傾斜部104b,104d,104fとは交互に階段状に配置されている。さらに段部104c,104e,104gにおいて傾斜部104b,104d,104fと隣接する側には各段部104c,104e,104gから隆起する隆起状部104h、104j、104kが各段部と各傾斜部との接続部すなわち「第1カム面と第2カム面との接続部」として設けられている。隆起状部104h、104j、104kは、段部104c,104e,104gにおいて隣接する傾斜部104b,104d,104fへ接触部108が滑落することを防止する。
また、第1ギャップ調整カム94のY軸方向における他方の側面(図8(A)において+Y方向側)には、スライド部材96と係合する、第2の係合ピン118が形成され、更にキャリッジ48の本体66と係合する係合部120が形成されている。
図9には、スライド部材96が示されている。スライド部材96はX軸方向に延びる板状部材として形成されている。スライド部材96には、摺動部材92のガイドピン105が遊挿されることにより該ガイドピン105によりスライド部材96が案内される、X軸方向に延びるガイド溝122が設けられている。また、スライド部材96には、第1ギャップ調整カム94の第2の係合ピン118が遊挿される長穴124が設けられている。
長穴124は、Z軸方向に延びるとともにX軸方向にも傾斜して延びている。長穴124は、X軸方向において、スライド部材96のスライドに伴って第2の係合ピン118が長穴124内で移動すべき方向に案内されるようにZ軸方向すなわちギャップPGの変化方向に対して所定の角度で傾斜している。また、スライド部材96には、Y軸方向において第1ギャップ調整カム94と係合する側(図9において−Y方向側)と反対の側(図9において+Y方向側)にカム係合部126が設けられている。
カム係合部126は、前記反対の側からY方向側(図9参照)に突出している。また、本実施例においてカム係合部126は、後述する「係合部材」としての係合レバー128の揺動半径を小さくするためにスライド部材96のZ軸方向における下端部に設けられている。尚、スライド部材96は、摺動部材92に対してスライドする際、X軸方向すなわち走査方向においてスライドし、Z軸方向にはスライドしないように構成されている。このため、カム係合部126は、X軸方向には変位するが、Z軸方向には変位しない。
また、図7(A)に示すように摺動部材92のX軸方向における両端部にはばね部材130が設けられている。ばね部材130は摺動部材92とキャリッジ48の本体66との間に配置され、その付勢力により摺動部材92をY軸方において装置本体12側に付勢している。このため、摺動部材92は、ガイドレール62に対して走査方向すなわちX軸方向に摺動する際、Y軸方向のガタつきを防止することができる。
また、摺動部材92のフック部112には第1付勢手段110の一端が掛止され、第1付勢手段110の他端はキャリッジ48の本体66に取り付けられている。このため、第1ギャップ調整カム94は、摺動部材92を介して第1付勢手段110の付勢力により本体66に付勢されている。このため、摺動部材92と本体66との間のZ軸方向におけるガタつきを少なくすることができる。尚、本実施例において第1付勢手段110は、ばね部材として構成されている。
さらに、第1付勢手段110は、キャリッジ48の駆動時にキャリッジ48の本体66がギャップ調整カム94、138から浮き上がり、或いはギャップ調整カム94、138が摺動部材92、136から浮き上がることを抑制できる。即ちキャリッジ48の首振りを抑制することができ、用紙Pにおいて良好な記録結果を得ることができる。
次いで、図10ないし図13を参照して、主ギャップ調整手段72の切換手段及びギャップPGの切換方法について説明する。図10には、「係合部材」としての係合レバー128が示されている。係合レバー128は、X軸方向におけるキャリッジ48の移動可能な範囲の一方の側端近傍に設けられている。係合レバー128が設けられた位置に対応してガイドレール62には開口部132が設けられている。係合レバー128は、揺動軸134に取り付けられ、図示しない駆動源により、揺動軸134の周りを揺動する。
図11(A)及び図11(B)は係合レバー128の揺動状態を示している。図11(A)は、揺動軸134を中心に反時計回りに係合レバー128を揺動させ、係合レバー128の先端部128aを開口部132に通してカム係合部126の移動領域に突出させた状態すなわち係合部材の第1姿勢である。この状態において、係合レバー128の先端部128aは、X軸方向に移動する主ギャップ調整手段72のスライド部材96のカム係合部126と係合することができる。
図11(B)は、係合レバー128を揺動軸134の中心に時計回りに揺動させ、係合レバー128の先端部128aをカム係合部126の移動領域から退避させた状態すなわち係合部材の第2姿勢である。この状態において、係合レバー128の先端部128aは、X軸方向に移動する主ギャップ調整手段72のスライド部材96のカム係合部126と当接しない。
次いで図12(A)及び図12(B)を参照して、記録ヘッド44と用紙Pを支持する下部案内部材46との間のギャップPGを調整する際の動作を説明する。図12(A)はギャップPGを小さくする前である。一方、図12(B)はギャップPGを小さくしたときである。図12(A)に示すように用紙Pを送っていない状態において、先ず、キャリッジ48をX軸方向における係合レバー128が設けられている一端側に向けて(図12(A)において−X方向)移動させる。
そして、スライド部材96のカム係合部126が、図12(A)において係合レバー128の右側方となる位置まで、キャリッジ48を移動させて停止させる。その後、係合レバー128を揺動させて第1姿勢とする。すなわち、係合レバー128の先端部128aは、スライド部材96のカム係合部126と当接可能な状態となる。
そして、図12(B)に示すようにキャリッジ48を+X方向に移動させる。この際、第1ギャップ調整カム94及びスライド部材96は、キャリッジ48とともに+X方向に移動しようとするが、係合レバー128の先端部128aがスライド部材96のカム係合部126と当接することにより、+X方向への移動が妨げられる。
これにより、キャリッジ48に対して第1ギャップ調整カム94及びスライド部材96が相対的に「第1方向」としての−X方向に移動することとなる。そして、第1ギャップ調整カム94における摺動部材92の接触部108との接触箇所を第4段部104gから第3段部104e、第2段部104c、第1段部104aのいずれかに変えることができる。尚、一例として図12(B)では、第1段部104aに変えた様子を示している。
そして、キャリッジ48を停止させてから、カム係合部126の移動領域から退避させるために係合レバー128を揺動させて第2姿勢とする。その結果、キャリッジ48の本体66を支持する支持面114と接触部108との間の距離を長くすることができ、記録ヘッド44と用紙Pを支持する下部案内部材46との間のギャップPGを小さくすることができる。
尚、第4段部104gから第3段部104e、第2段部104c、第1段部104aのいずれかに変えるかは、キャリッジ48の移動量を制御することにより行う。また、一例として第4段部104gから第3段部104e、第2段部104c、第1段部104aのいずれかに変えることについて説明したが第3段部104eから第2段部104cまたは第1段部104aに変えても良いし、第2段部104cから第1段部104aに変えても良い。係る場合も動作は同様であるから、説明は省略する。
また、ギャップPGを大きくするときは、キャリッジ48をX軸方向における係合レバー128が設けられている一端側に向けて(図19(A)においてX方向)移動させる。このとき、係合レバー128を揺動させて第1姿勢とする。そして、キャリッジ48をX方向に移動させる。そして係合レバー128の先端部128aがカム係合部126と当接する。
これにより、キャリッジ48に対して第1ギャップ調整カム94及びスライド部材96が相対的に「第2方向」としての+X方向に移動することとなる。そして、第1ギャップ調整カム94おける摺動部材92の接触部108との接触箇所をギャップPGが大きくなるように変更することができる。
また、副ギャップ調整手段74は、ガイドレール63と当接し、ガイドレール63に対して摺動する摺動部材136と、該摺動部材と係合する第2ギャップ調整カム138とを備えている。尚、副ギャップ調整手段74はスライド部材96を備えていない点で主ギャップ調整手段72と相違するが、その他の構成は同一のため、説明を省略する。
尚、ここでギャップ調整カム94、138の自己スライド現象について説明する。キャリッジ48のギャップPGを小さくする際、一例として摺動部材92の接触部108は、第1ギャップ調整カム94のカム部104において、第4段部104gから第3傾斜部104fを介して第3段部104eに移動する。この際、摺動部材92には、第1付勢手段110によるキャリッジ48の本体66への付勢力及びキャリッジ48の自重が作用している。すなわち、摺動部材92には、ギャップPGを小さくしようとする力が作用している。
このため、接触部108が第3傾斜部104fを移動する際、前記力の作用により第3傾斜部104fに対して接触部108が加速されて接触部108の移動速度が大きくなる。これにより、係合レバー128により押圧されていたカム係合部126が係合レバー128から離間して、第1ギャップ調整カム94及びスライド部材96が第3段部104eに向けて先行して移動する。すなわち第1ギャップ調整カム94の自己スライド現象が発生する。このため、接触部108が第4段部104gから第3段部104eに急激に変位することとなり、接触部108が第3段部104eと衝突して衝突音を発生させることとなる。
また、キャリッジ48のギャップPGを大きくする際、一例として接触部108は、第3段部104eから第3傾斜部104fを介して第4段部104gに移動する。この際、接触部108は、第3傾斜部104fを移動することにより、X軸方向だけでなくZ軸方向にも移動する。このとき、接触部108は、移動速度に応じて第3傾斜部104fと第4段部104gとの接続部すなわち隆起状部104kにおいてZ軸方向に飛び跳ねることがある。
そして、飛び跳ねた接触部108が第4段部104gと衝突することにより衝突音が生じる。尚、ギャップPGを大きくする際の衝突音の大きさは、キャリッジ48の移動速度に依存し、ギャップPGを小さくする際の衝突音の大きさは、キャリッジ48の移動速度に依存しない。
以下、第1の実施例ないし第12の実施例においてキャリッジ48の本体66に対するギャップ調整カム94、138の相対的な移動においてギャップ調整カム94、138の係合レバー128から離れる方向への移動すなわち自己スライド現象を規制する規制手段およびギャップPGの変化時に発生する衝突音の発生を抑制する手段について順次説明する。
■■■第1の実施例■■■■
図13(A)及び図13(B)を参照して、第1の実施例における規制手段について説明する。本実施例において、係合レバー128の先端部128aは、キャリッジ48の走査方向すなわちX軸方向において間隔をおいた一対のレバーから構成され、カム係合部126のX軸方向における動きを規制する「規制手段」としての挟み込み部140として機能する。
尚、前記間隔は、X軸方向においてカム係合部126を一対のレバー間に受け入れることができるように設定されている。また、係合レバー128と装置本体12との間には、第2付勢手段144が設けられている。第2付勢手段144は、係合レバー128を+X方向に付勢している。尚、本実施例において第2付勢手段144は、ばね部材として構成されている。また、第2付勢手段144の付勢力は、係合レバー128のがたつきを押さえる程度に設定されている。
具体的には、図13(A)において「第2方向」としての+X方向(図13(A)矢印参照)にキャリッジ48が移動すると、カム係合部126は、第1姿勢にある係合レバー128の先端部128aの+X方向側のレバー140aと当接する。さらに、キャリッジ48が+X方向に移動すると、カム係合部126は、先端部128aの+X方向側のレバー140aに押圧される。このため、カム係合部126は「第1方向」としての−X方向に移動を開始する。このとき、カム係合部126が、第1付勢手段110の付勢力及びキャリッジ48の自重により先端部128aの+X方向側のレバー140aから離間し、自ら−X方向側に先行して移動する自己スライド現象を起こそうとする。
尚、図13(A)及び図13(B)においてキャリッジ48が+X方向に移動する際、摺動部材92はキャリッジ48とともに+X方向に移動し、第1ギャップ調整カム94及びスライド部材96(カム係合部126)は、−X方向に移動する。
しかし、先端部128aの+X方向側のレバー140aから離間したカム係合部126は、図13(B)に示すように離間した直後に先端部128aの−X方向側のレバー140bと当接することとなる。カム係合部126は、−X方向への移動に伴って先端部128aの−X方向側のレバー140bを押圧する。しかし、係合レバー128は第2付勢手段144により+X方向に付勢されていることから、カム係合部126は、係合レバー128の挟み込み部140によりカム係合部126が係合レバー128から離間して自ら先行してX軸方向へ移動することを規制される。
したがって、カム係合部126及びギャップ調整カム94、138の自己スライド現象を抑制し、或いは防止することができる。また、係合レバー128の先端部128aを挟み込み部140として構成することから前記規制手段を少ない部品点数で構成できる。
また、第2付勢手段144は、第1姿勢に位置する係合レバー128を+X方向側に付勢していることから、カム係合部126が−X方向に変位する際、その付勢力をカム係合部126に作用させることができる。これにより、カム係合部126及びギャップ調整カム94、138の自己スライド現象を抑制し、或いは防止することができる。
<<<第1の実施例の変形例>>>
(1)本変形例では、挟み込み部が係合レバー128の先端部128aではなく、カム係合部126に形成されている点で第1の実施例と相違する。本変形例におけるカム係合部126には、X軸方向において係合レバー128の先端部128aを受け入れる間隙126aが設けられている。すなわち、カム係合部126は係合レバー128の先端部128aを挟み込み、係合レバー128に対してカム係合部126のX軸方向の動きを規制する「規制手段」としての挟み込み部142として機能する。
図14(A)を参照するに、第1の姿勢に位置する係合レバー128が間隙126aに受け入れられている状態において、キャリッジ48を+X方向(図14(A)矢印参照)に移動させるとカム係合部126の−X方向側の部位が係合レバー128の先端部128aと当接する。さらに、キャリッジ48が+X方向に移動すると、カム係合部126の−X方向側の部位は、係合レバー128の先端部128aに押圧される。このため、カム係合部126は−X方向に移動を開始する。このとき、カム係合部126の−X方向側の部位が、第1付勢手段110の付勢力及びキャリッジ48の自重により先端部128aから離間し、自ら−X方向側に先行して移動する自己スライド現象を起こそうとする。
尚、図14(A)及び図14(B)においてキャリッジ48が+X方向に移動する際、摺動部材92はキャリッジ48とともに+X方向に移動し、第1ギャップ調整カム94及びスライド部材96(カム係合部126)は、−X方向に移動する。
しかし、図14(B)に示すようにカム係合部126において係合レバー128の先端部128aから離間した直後に係合レバー128の先端部128aとカム係合部126の+X方向側の部位とが当接することとなる。このため、係合レバー128の先端部128aは、カム係合部126の+X方向側の部位を+X方向側に付勢する。これにより、カム係合部126は、係合レバー128の先端部128aを挟み込む挟み込み部142として機能していることからカム係合部126が係合レバー128から離間して自ら先行してX軸方向へ移動することを規制される。
したがって、カム係合部126及びギャップ調整カム94、138の自己スライド現象を抑制し、或いは防止することができる。また、カム係合部126に間隙126aを設けるだけで挟み込み部142を構成することができることから前記規制手段を少ない部品点数で構成できる。
(2)第1の実施例及び変形例において第2付勢手段144に代えて係合レバー128と揺動軸134との間に粘性の高いグリスを塗布することもできる。
(3)また、係合レバー128及びカム係合部126の一部に挟み込み部140、142を設けて一体の部材とする構成としたが、挟み込み部140、142を複数の部材から構成してもよい。
■■■第2の実施例■■■■
図15(A)、図15(B)、図16及び図17を参照して、第2の実施例における規制手段について説明する。図15(A)に示すように、「スライド規制部材」として機能するガイドレール62に設けられた開口部132は、係合レバー128が第1姿勢に位置する際、係合レバー128のX軸方向へのスライドを規制する規制部132aと、後述する第3姿勢において係合レバー128のX軸方向へのスライドを許容する長穴132bとを備えている。
また、本実施例におけるカム係合部126には、第1の実施例の変形例と同様に間隙126aが設けられ、「規制手段」としての挟み込み部142が構成されている。また、係合レバー128は、第2付勢手段144により+X方向に付勢されている。
また、図15(B)に示すように係合レバー128は、第1姿勢及び第2姿勢に加えて第1姿勢よりも+Y方向側に揺動した第3姿勢(図15(B)実線部参照)を取りうる。第3姿勢において、係合レバー128の先端部128aはY軸方向において開口部132の長穴132b内に位置する。このため、係合レバー128の先端部128aは、長穴132b内においてX軸方向にスライド移動可能である(図16参照)。
具体的には、係合レバー128が第3の姿勢に位置する際、キャリッジ48を−X方向側に移動させると、係合レバー128はカム係合部126に押圧されて、長穴132b内を第2付勢手段144の+X方向への付勢力に抗して−X方向に移動する。
ここで、図17を参照して動力伝達切換手段129について説明する。揺動軸134には係合レバー128に隣接して中間ギヤ135が設けられている。中間ギヤ135は、駆動モーター27により駆動させられる第1ローラー軸49を介して駆動モーター27の駆動力を受ける。また、揺動軸134には、係合レバー128とともに揺動軸134の軸線方向(図17においてX軸方向)にスライド可能に構成された動力切換ギヤ137を備えている。
また、揺動軸134には、動力切換ギヤ137が係合レバー128とともに図17における−X方向にスライド移動した際、動力切換ギヤ137と嵌合する伝達ギヤ139が設けられている。伝達ギヤ139は、揺動軸134の回転力を伝達ギヤ139と嵌合した動力切換ギヤ137を介して後述する上段側トレイ駆動ギヤ141に伝達する。また、中間ギヤ135は、図示しない歯車輪列により駆動モーター27の駆動力をピックアップローラー28に供給する。また、上段側トレイ16には、伝達ギヤ139と嵌合した状態にある動力切換ギヤ137と係合可能な上段側トレイ駆動ギヤ141が設けられている。
ここで、動力伝達切換作業について説明する。図17において駆動モーター27が回転すると、中間ギヤ135及び図示しない歯車輪列を介してピックアップローラー28が回転駆動させられる。係合レバー128が第1姿勢に位置する際、カム係合部126が−X方向に変位すると係合レバー128も−X方向に移動しようとするが、係合レバー128に第2付勢手段144の+X方向への付勢力が作用すること及び係合レバー128の先端部128aが規制部132aに位置することから、X軸方向へのスライドが規制される。
このため、係合レバー128が第1姿勢に位置する場合、キャリッジ48のX軸方向に伴うギャップPGの変化は許容するが、係合レバー128がX軸方向にスライドしないことから、駆動モーター27の駆動対象は切り換わらない。
次いで、係合レバー128が第3姿勢に位置する場合、係合レバー128の先端部128aが長穴132b内に位置することから、係合レバー128のX軸方向におけるスライド移動が許容される。このため、カム係合部126が−X方向に変位すると第2付勢手段144の付勢力に抗して係合レバー128も−X方向に移動する。尚、このときキャリッジ48のギャップPGもあわせて変化する。これにより、動力切換ギヤ137は係合レバー128のスライド移動に伴って−X方向に移動し、伝達ギヤ139と嵌合する。そして、動力切換ギヤ137は伝達ギヤ139と嵌合した状態で上段側トレイ駆動ギヤ141と係合する。これにより、駆動モーター27の駆動力が上段側トレイ16に供給される。
また、上段側トレイ16への動力供給を停止するには、カム係合部126を+X方向に移動させることにより、係合レバー128を+X方向に移動させる。これにより、動力切換ギヤ137が係合レバー128とともに+X方向に移動し、伝達ギヤ139との嵌合状態が解消されるとともに上段側トレイ駆動ギヤ141との係合状態も解消される。そして係合レバー128を第3姿勢から第1姿勢あるいは第2姿勢に戻すことにより動力伝達切換作業は終了する。尚、動力切換時に変位したキャリッジ48のギャップPGは、用紙Pへの記録実行前に係合レバー128を第1姿勢に変化させ、キャリッジ48を変位させることにより所望のギャップPG量に調整する。
上記説明をまとめると、係合レバー128がカム係合部126とともに−X方向に移動すると、ピックアップローラー28を回転駆動させる「一の駆動源」としての駆動モーター27の駆動力がピックアップローラー28から上段側トレイ16へと切り替わる。これにより上段側トレイ16が前記給送可能位置(図1参照)と前記退避位置との間で移動する。これにより、係合レバー128は、一の駆動源(駆動モーター27)と複数の駆動対象(ピックアップローラー28及び上段側トレイ16)との間で前記駆動源により駆動される駆動対象を切り替える動力伝達切換手段129を機能させる。
本実施例において、係合レバー128は、X軸方向にスライド移動することにより動力伝達切換手段129を機能させる。このため、係合レバー128は第1ギャップ調整カム94を押す機能と動力伝達切換手段129の動力伝達切り換えを行う機能とを兼ねる。これにより、ピックアップローラー28と上段側トレイ16への駆動力を切り替えることができる。さらに、係合レバー128が第1姿勢に位置する際、係合レバー128のX軸方向のスライド移動が規制部132aに規制されていることから、第1ギャップ調整カム94の自己スライドを確実に抑制し、或いは防止できる。
■■■第3の実施例■■■■
第3の実施例における規制手段について説明する。本実施例において規制手段は、ギャップ調整カム94、138とキャリッジ48の本体66の一部との間、及びギャップ調整カム94、138とガイドレール62との間のすくなくともいずれかに介在するグリスとして構成されている。
一例として、前記グリスは、第1ギャップ調整カム94のカム部104と摺動部材92の接触部108との間、あるいは第1ギャップ調整カム94の第2の係合ピン118とスライド部材96の長穴124との間に塗布されている。また、グリスは第1ギャップ調整カム94の支持面114及び係合部120とキャリッジ48の本体66との間、摺動部材92の係合部102と第1ギャップ調整カム94の第1の係合ピン116との間等に塗布することもできる。
すなわち、グリスは、キャリッジ48の本体66、摺動部材92、136、ギャップ調整カム94、138、スライド部材96、ガイドレール62の各部材間において相対移動する箇所に塗布することにより規制手段として機能する。
また、本実施例において用いられるグリスは、100mm2/sec以上の動粘度を有している。望ましくは、動粘度が100mm2/sec以上10000mm2/sec以下の範囲内のグリスを規制手段として用いることが望ましい。
規制手段をグリスで構成することから、グリスの粘性のよって各部材間の相対移動に負荷をかけることになり、ギャップ調整カム94、138の自己スライドをしようとする動きを抑制し、或いは防止できる。
<<<第3の実施例の変形例>>>
また、グリスは第1ギャップ調整カム94とキャリッジ48との間のみ、第1ギャップ調整カム94とスライド部材96との間のみ、主ギャップ調整手段72のみ、あるいは副ギャップ調整手段74のみに塗布する構成とすることもできる。
■■■第4の実施例■■■■
図18を参照して第4の実施例における規制手段について説明する。本実施例において規制手段は、第1ギャップ調整カム94の変位方向(図18におけるX軸方向)と交差する方向(図18におけるY軸方向)に第1ギャップ調整カム94に押圧力を付与するカム押圧部146として構成されている。
一例として、カム押圧部146はキャリッジ48の本体66、或いはガイドレール62にばね部材148を介して設けられている。カム押圧部146は、ばね部材148からの付勢力により第1ギャップ調整カム94を押圧する。これにより、第1ギャップ調整カム94がX軸方向に移動する際、第1ギャップ調整カム94とカム押圧部146との間で摩擦力が生じる。
尚、図18(A)及び図18(B)においてキャリッジ48が+X方向に移動する際、摺動部材92及びカム押圧部146はキャリッジ48とともに+X方向に移動し、第1ギャップ調整カム94及びスライド部材96(カム係合部126)は、−X方向に移動する。
この摩擦力により、第1ギャップ調整カム94のX軸方向における移動に負荷を与えて、第1ギャップ調整カム94の自己スライド現象を抑制し、或いは防止することができる。また、規制手段は、カム押圧部146及びばね部材148のみで構成されることから、前記規制手段を少ない部品点数で構成することができる。
<<<第4の実施例の変更例>>>
カム押圧部146は副ギャップ調整手段74の第2ギャップ調整カム138に設けることができ、動力伝達部76の第1伝達ギヤ82、第2伝達ギヤ84、第3伝達ギヤ88及び第4伝達ギヤ90の少なくとも一つに設ける構成とすることもできる。
■■■第5の実施例■■■■
図19(A)及び図19(B)を参照して第5の実施例における規制手段について説明する。本実施例において規制手段は、ギャップ調整カム94の変位方向(図19(A)におけるX軸方向)と交差する方向(図19(A)におけるY軸方向)においてギャップ調整カム94に押圧力を付与するカム押圧部146及び第1ギャップ調整カム94に設けられた被押圧部150として構成されている。
本実施例では、被押圧部150は、第1ギャップ調整カム94において当該第1ギャップ調整カム94の変位方向すなわち図19(A)におけるX軸方向と交差する方向(Y軸方向)に突出して凸状に形成されている。また、被押圧部150は、X軸方向においてカム部104の傾斜部104b、104d、104fのそれぞれに対応する位置に設けられている。尚、図19(A)及び図19(B)では説明のために1つのみ表示している。
本実施例の規制手段は、カム押圧部146と被押圧部150とが当接することにより機能する。具体的には、第1ギャップ調整カム94がX軸方向に移動すると、カム押圧部146は、第1ギャップ調整カム94の被押圧部150が設けられていない部分では、第1ギャップ調整カム94と当接することなく第1ギャップ調整カム94の移動を許容する。そして、第1ギャップ調整カム94がさらにX軸方向に移動すると、カム押圧部146と被押圧部150とが当接する。これにより、カム押圧部146と被押圧部150との間で摩擦力が生じる。
尚、図19(A)及び図19(B)においてキャリッジ48が+X方向に移動する際、摺動部材92及びカム押圧部146はキャリッジ48とともに+X方向に移動し、第1ギャップ調整カム94、被押圧部150及びスライド部材96(カム係合部126)は、−X方向に移動する。
この摩擦力は、第1ギャップ調整カム94において被押圧部150が設けられたカム部104の傾斜部104b、104d、104fに対応する位置で生じることから、第1ギャップ調整カム94において自己スライド現象が発生する部分にのみ作用する。その結果、規制手段としてのカム押圧部146及び被押圧部150は、第1ギャップ調整カム94の自己スライド現象を抑制し、或いは防止することができる。
また、第1ギャップ調整カム94がギャップPGを変化させる際にのみ、カム押圧部146は、被押圧部150を押圧してギャップ調整カム94の自己スライドを規制する。その結果、第1ギャップ調整カム94のX軸方向における変位領域の全域で被押圧部150が押圧されず、これにより第1ギャップ調整カム94を変位させる為の駆動負荷(キャリッジ48の駆動負荷)が前記変位領域の全域に渡って一様に上昇してしまうことを防止できる。
■■■第6の実施例■■■■
図20(A)及び図20(B)を参照して第5の実施例における規制手段について説明する。本実施例において規制手段は、動力伝達部76の第1伝達ギヤ82、第2伝達ギヤ84、第3伝達ギヤ88及び第4伝達ギヤ90の少なくとも一つに設けられた抵抗付与部材152及び押圧部154として構成されている。
一例として、第1伝達ギヤ82の側面82aには、該側面82aから第1伝達ギヤ82の軸線方向に突出する抵抗付与部材152が設けられている。抵抗付与部材152は、第1伝達ギヤ82の周方向における一部に設けられている。また、押圧部154は、キャリッジ48の本体66に設けられている。押圧部154は、図20(A)におけるY軸方向において抵抗付与部材152と当接する位置に設けられ、第1伝達ギヤ82の側面82aとは当接しないように構成されている。
また、一例として抵抗付与部材152は、第1ギャップ調整カム94から駆動力が伝達されて第1伝達ギヤ82が回転し、抵抗付与部材152と押圧部154とが当接する際、第1伝達ギヤ82と係合する第1ギャップ調整カム94における傾斜部104b、104d、104f(図12参照)の少なくとも1つに対応するように側面82aに設けられている。尚、図示の例では説明のために抵抗付与部材152を1つの構成としたが、第1伝達ギヤ82の周方向において傾斜部104b、104d、104fにそれぞれ対応する位置に設けることができる。
このため、キャリッジ48がX軸方向に移動し、傾斜部104b、104d、104fに摺動部材92の接触部108が接触すると、傾斜部104b、104d、104fに対応する抵抗付与部材152と押圧部154とが当接することとなる。これにより、第1伝達ギヤ82に第1ギャップ調整カム94の傾斜部104b、104d、104fに対応する回転抵抗を与えることとなる。その結果、第1伝達ギヤ82とラック部78を介して第1ギャップ調整カム94に第1伝達ギヤ82における回転抵抗が作用する。
このため、動力伝達部76を介してギャップ調整カム94、138のX軸方向における移動に負荷が与えられ、ギャップ調整カム94、138の自己スライド現象を抑制し、或いは防止できる。また、規制手段は、抵抗付与部材152及び押圧部154のみで構成されることから、前記規制手段を少ない部品点数で構成することができる。これにより、本実施例の規制手段である抵抗付与部材152及び押圧部154は、複数のギャップ調整カム94、138に対して少ない部品点数で自己スライド現象を抑制し、或いは防止できる。
■■■第7の実施例■■■■
図21を参照して第7の実施例における規制手段について説明する。本実施例において規制手段は、第1ギャップ調整カム94を第2方向すなわち図21における+X方向に付勢する第3付勢手段155として構成されている。尚、本実施例において第3付勢手段155は、ばね部材として構成されている。
第3付勢手段155において、一端はキャリッジ48の本体66に取り付けられ、他端は、第1ギャップ調整カム94に取り付けられている。これにより、第1ギャップ調整カム94は、第3付勢手段155により図21における+X方向に付勢される。このため、第1ギャップ調整カム94には、自己スライドする方向すなわち−X方向と反対方向に付勢力が作用する。
尚、図21においてキャリッジ48が+X方向に移動する際、摺動部材92はキャリッジ48とともに+X方向に移動し、第1ギャップ調整カム94及びスライド部材96(カム係合部126)は、−X方向に移動する。
また、第3付勢手段155のばね力は、第1ギャップ調整カム94の自己スライド現象を抑制する程度に弱く設定されている。このため、キャリッジ48が図21における+X方向に移動する際、第1ギャップ調整カム94は−X方向に移動することができる。すなわち、第3付勢手段155は、第1ギャップ調整カム94の移動を妨げない。これにより、本実施例では、第1ギャップ調整カム94は自己スライド現象を抑制しつつ、カム係合部126とともにX軸方向の移動をすることができる。
したがって、第3付勢手段155は、第1ギャップ調整カム94の自己スライド現象を抑制し、或いは防止することができる。また、規制手段は、第3付勢手段155のみで構成されることから、前記規制手段を少ない部品点数で構成することができる。
■■■第8の実施例■■■■
図22(A)及び図22(B)を参照して第8の実施例におけるギャップPGの変化時に発生する衝突音の発生を抑制する手段について説明する。本実施例において衝突音の発生を抑制する手段は、第1ギャップ調整カム94に設けられた2つの階段状のカム部により構成されている。
具体的には、第1ギャップ調整カム94は第1の実施例における摺動部材92に面する側に設けられた階段状のカム部104に加え、キャリッジ48の本体66に面する側に設けられた階段状のカム部156を備えている。
カム部156は、ギャップPGを維持する「第2カム面」としての第1段部156a、第2段部156c、第3段部156e、第4段部156gと、ギャップPGを変化させる「第1カム面」としての第1傾斜部156b、第2傾斜部156d、第3傾斜部156fとを有している。
第1段部156a、第2段部156c、第3段部156e、第4段部156gのいずれかがキャリッジ48の本体66の当接部66a(図22(A)参照)と係合して、ギャップPGを規定するとともにギャップPGを維持する。また、第1傾斜部156b、第2傾斜部156d、第3傾斜部156fは、キャリッジ48の本体66に対して第1ギャップ調整カム94がスライドする際、ギャップPGを変化させる。
尚、第1ギャップ調整カム94において各段部156a,156c,156e,156gと各傾斜部156b,156d,156fとは交互に階段状に配置されている(図22(A)参照)。さらに段部156c,156e,156gにおいて傾斜部156b,156d,156fと隣接する側には各段部156c,156e,156gから隆起する隆起状部156h、156j、156kが設けられている。「第1カム面と第2カムとを接続する接続部」としての隆起状部156h、156j、156kは、段部156c,156e,156gにおいて隣接する傾斜部156b,156d,156fへキャリッジ48の本体66の当接部66aが滑落することを防止する。
また、本実施例において、図22(A)におけるX軸方向においてカム部156の各段部156a,156c,156e,156g、各傾斜部156b,156d,156f及び各隆起状部156h、156j、156kは、カム部104の各段部104a,104c,104e,104g、各傾斜部104b,104d,104f及び各隆起状部104h、104j、104kの設けられた位置に対応して設けられている。
また、本実施例において、第1ギャップ調整カム94がカム係合部126とともに移動する際、第1ギャップ調整カム94は、摺動部材92及びキャリッジ48の本体66に対して相対移動する。このため、図22(A)において第1ギャップ調整カム94が−X方向に移動すると、摺動部材92及びキャリッジ48の本体66は+X方向に移動することになる。すなわち、摺動部材92の接触部108は、カム部104において段部104gから段部104aに移動し、キャリッジ48の本体66の当接部66aはカム部156において段部156gから段部156aに移動する。これにより、第1ギャップ調整カム94はギャップPGを変化させることができる。
また、第1ギャップ調整カム94において、摺動部材92に面する側にカム部104を設け、キャリッジ48の本体66に面する側にカム部156を設けることから、摺動部材92に面する側にのみカム部104を設ける構成に比べて、各段部の段差を小さくすることができる。その結果、各傾斜部の傾斜角度を小さくできる。このため、第1ギャップ調整カム94の移動時における傾斜部における加速度を小さくすることができる。このため、第1ギャップ調整カム94の自己スライド現象を抑制し、或いは防止できる。
さらに前記段差が小さくなることによりギャップ調整時における接触部108及び当接部66aとカム部104、156の衝突音が小さくなり、ギャップ調整時における騒音を抑制し、静音化を図ることができる。
■■■第9の実施例■■■■
図23(A)、図23(B)、図23(C)及び図23(D)を参照して第9の実施例における規制手段について説明する。本実施例において規制手段は、カム部104の各傾斜部104b,104d,104fにおいて自己スライド現象を抑制する形状に第1ギャップ調整カム94の傾斜面を形成することにより構成されている。
傾斜面の形状の一例として、図23(A)に示すように傾斜部104bの傾斜面は、ギャップPGが小さくなる側の段部(図示の例では段部104a側)に傾斜面が滑らかにつなげられている。また、傾斜面の形状の他の一例として図23(B)に示すように各傾斜部104bの傾斜面は、傾斜の途中に段部が設けられている。尚、この段部は、ギャップPGを規定する段部としては機能せず、記録ヘッドの記録作業には用いられない。
また、傾斜面の形状の他の一例として図23(C)に示すように各傾斜部104bの傾斜面は、傾斜の途中に逆段部が設けられている。また、傾斜面の形状の他の一例として図23(D)に示すように各傾斜部104bの傾斜面は、傾斜の途中に突起部が設けられている。
例えば、図23(A)から図23(D)までに示した各傾斜部104bにおいて、ギャップPGが小さくなるように第1ギャップ調整カム94を−X方向に移動させると、第2段部104cと当接している接触部108に対してカム部104は、第2段部104cから傾斜部104bを介して第1段部104aへと移動する。
この際、図23(A)、図23(B)、図23(C)及び図23(D)に示された傾斜部104bの各斜面形状は、第2段部104cから第1段部104aへの移動速度を低減する形状に形成されていることから、第1ギャップ調整カム94の自己スライド現象を抑制し、あるいは防止できる。また、規制手段は、傾斜部の形状を第1ギャップ調整カム94の自己スライド現象を抑制する傾斜面の形状とすることで構成されることから、前記規制手段を少ない部品点数で構成することができる。
尚、説明では、一例として傾斜部104bを説明したが、傾斜部104bに限定するものではなく、カム部104を構成するその他の傾斜部104d、104fに適用することができる。
■■■第10の実施例■■■■
図24を参照して第10の実施例におけるギャップPGの変化時に発生する衝突音の発生を抑制する手段について説明する。本実施例において衝突音の発生を抑制する手段は、主ギャップ調整手段72の第1ギャップ調整カム94のカム部104と副ギャップ調整手段74の第2ギャップ調整カム138のカム部158の位相をずらすことにより構成されている。尚、図示していないが、第2ギャップ調整カム138においても第1ギャップ調整カム94のカム部104と同様にカム部158が設けられている。
図24において、紙面下側に主ギャップ調整手段72の第1ギャップ調整カム94のカム部104のプロファイルが示され、紙面上側に副ギャップ調整手段74の第2ギャップ調整カム138のカム部158のプロファイルが示されている。
本実施例では、第1ギャップ調整カム94のカム部104に対して第2ギャップ調整カム138のカム部158の位相がずれるように配置されている。具体的には、図24におけるX軸方向においてカム部104の各傾斜部104b,104d,104fが設けられた位置に対して、カム部158の各傾斜部158b,158d,158fが設けられた位置をずらしている。
尚、図24において摺動部材92、136は+X方向に移動し、第1ギャップ調整カム94及び第2ギャップ調整カム138は、−X方向に移動する。
このため、主ギャップ調整手段72及び副ギャップ調整手段74において、キャリッジ48をX軸方向に移動させた際、キャリッジ48の本体66のギャップPGを変化させる方向すなわち図24におけるZ軸方向の位置を変化させるタイミングをずらすことができる。すなわち、主ギャップ調整手段72及び副ギャップ調整手段74のギャップPGを異なるタイミングで変化させる。このため、キャリッジ48の本体66の装置前面側(図4(A)における−Y方向側)と装置背面側(図4(A)における+Y方向側)とが同時にZ軸方向に変位することがなく、キャリッジ48の本体66のZ軸方向における変位を緩やかに行うことができる。
このため、主ギャップ調整手段72における衝突音と、副ギャップ調整手段74における衝突音とが同時に発生しないことから、衝突音の大きさを小さくすることができる。これにより、主ギャップ調整手段72及び副ギャップ調整手段74のギャップPGを変化させるタイミングをずらすことにより、ギャップPGの変化に伴う騒音を同時に発生することを防止でき、ギャップ調整時における騒音を抑制し、静音化を図ることができる。
<<<第10の実施例の変更例>>>
(1)カム部104、158の位相をずらす構成に代えて、主ギャップ調整手段72のギャップPGの変化とは独立して異なるタイミングで副ギャップ調整手段74のギャップPGを変化させる係合レバーを副ギャップ調整手段74側に設ける構成としてもよい。尚、この構成において、主ギャップ調整手段72を変化させる係合レバーの位置と、副ギャップ調整手段74を変化させる係合レバーの位置とはX軸方向においてずらして配置されている。
■■■第11の実施例■■■■
第11の実施例において、規制手段はキャリッジ48の本体66に設けられた、動力伝達部76の第1伝達ギヤ82、第2伝達ギヤ84、第3伝達ギヤ88、第4伝達ギヤ90の少なくとも1つと係合するギヤ(図示せず)である。
前記ギヤは第1伝達ギヤ82、第2伝達ギヤ84、第3伝達ギヤ88、第4伝達ギヤ90の少なくとも1つに駆動力を伝達することができるように構成されている。このため、第1ギャップ調整カム94及び第2ギャップ調整カム138において接触部108がカム部104、158の傾斜部を移動している間、第1ギャップ調整カム94及び第2ギャップ調整カム138の移動方向と反対方向となるように前記ギヤを駆動することができる。
このため、第1ギャップ調整カム94及び第2ギャップ調整カム138における傾斜部の移動速度を抑制することから、第1ギャップ調整カム94及び第2ギャップ調整カム138の自己スライド現象を抑制し、或いは防止できる。
■■■第12の実施例■■■■
図25を参照して第12の実施例におけるギャップPGの変化時に発生する衝突音の発生を抑制する手段について説明する。本実施例において衝突音の発生を抑制する手段は、キャリッジ48の移動速度を制御することである。尚、キャリッジ48の走査方向すなわち図25におけるX軸方向の移動速度は、制御部61(図26参照)により制御されている。また、図25においてキャリッジ48が+X方向に移動する際、摺動部材92は+X方向に移動し、第1ギャップ調整カム94は、−X方向に移動する。
図25において、カム部104において区間S1、S2、S3、S4、S5及びS6が設けられている。カム部104において、区間S1は第1段部104aから第1傾斜部104bまでの範囲であり、区間S2は隆起状部104hから第2段部104cの中間位置までの範囲であり、区間S3は第2段部104cの中間位置から第2傾斜部104dまでの範囲である。区間S4は隆起状部104jから第3段部104eの中間位置までの範囲であり、区間S5は第3段部104eの中間位置から第3傾斜部104fまでの範囲であり、区間S6は隆起状部104kから第4段部104gの中間位置までの範囲である。
すなわち、区間S2、S4及びS6は、カム部104における第1段部104aと第1傾斜部104bとの接続部、第2段部104cと第2傾斜部104dとの接続部、第3段部104eと第3傾斜部104fとの接続部、言い換えると第1カム面と第2カム面との接続部すなわち隆起状部104h、104j、104kを含んでいる。
ここで、制御部61は、キャリッジ48をX軸方向に移動させる際、区間S1、S3及びS5におけるキャリッジ48の移動速度に対して区間S2、S4及びS6におけるキャリッジ48の移動速度が低くなるように制御する。
ここで第1カム面と第2カム面との接続部は形状が大きく変化する部分であるが、当該接続部すなわち区間S2、S4及びS6を摺動部材92の接触部108が相対移動する際、キャリッジ48の移動速度が低くなることから、前記接続部において接触部108が飛び跳ねることを抑制し、或いは防止できる。このため、ギャップPGの調整時における騒音を抑制し、静音化を図ることができる。
<<<キャリッジの区間S2、S4及びS6における移動速度について>>>
図27を参照して、キャリッジ48の区間S2、S4及びS6における移動速度について説明する。ここで、第1速度V1(図27参照)とは、制御部61が制御するキャリッジ48に設定された最も遅い速度設定の移動速度であり、キャリッジ48のギャップPGを小さくする場合及びキャリッジ48により動力伝達切換手段129を駆動する際に用いられる速度である。また、本実施例では、第2速度V2(図27参照)は速度0として設定されている。また、キャリッジ48の移動速度モード毎にキャリッジ48を駆動させる最小駆動量(図27参照)が設定されている。
制御部61は、キャリッジ48が各区間S2、S4及びS6を移動する際、キャリッジ48を最も遅い速度設定である第1速度V1に設定された最小駆動量に対応する距離の移動を複数回繰り返すことにより移動させる。制御部61がキャリッジ48を最小駆動量に対応する距離を移動させる際、キャリッジ駆動モーター47を制御してキャリッジ48を第1速度V1となるように加速する。そして、キャリッジ48の移動速度が第1速度V1に達すると、制御部61はキャリッジ駆動モーター47を停止させる。
キャリッジ48は、キャリッジ駆動モーター47が停止することによりガイドレール62、63との摩擦等により第1速度V1から徐々に減速され、第2速度V2まで減速される。つまり、制御部61は、キャリッジ48が当該キャリッジの最小駆動量に対応する距離を1回移動する間にキャリッジ48に対して加速及び減速を行う。
次に制御部61は、キャリッジ48が第2速度V2まで減速されると、キャリッジ48において再度最小駆動量に対応する距離を移動させるべく、キャリッジ駆動モーター47を駆動させて再度キャリッジ48を第1速度まで加速する。そして、制御部61は、キャリッジ48が再度第1速度V1まで加速されると再度キャリッジ駆動モーター47を停止させる。以後、制御部61は、キャリッジ48が各区間S2、S4及びS6を通過するまでキャリッジ48を最小駆動量に対応する距離を複数回繰り返し移動させながら、最小駆動量毎において加速と減速とを繰り返させる。
このように、キャリッジ48の移動速度が短時間に第1速度V1と第2速度V2との間を変化すると、キャリッジ48は第1速度V1と第2速度V2との間の速度である実効速度V3で移動することとなる。つまり、キャリッジ48は一番遅い移動速度モードで、かつ最小駆動量で繰り返し移動することにより、第1速度V1よりも遅い実効速度V3で各区間S2、S4及びS6を移動する。
その結果、制御部61は、キャリッジ48の移動速度における最も遅い速度として設定されている第1速度V1よりも遅い実効速度V3でキャリッジ48を移動させることができる。したがって、キャリッジ48の区間S2、S4及びS6における移動速度をより遅くできるので、ギャップPGの調整時における騒音を抑制し、より静音化を図ることができる。また、制御部61にキャリッジ48を第1速度V1より遅い速度で制御するモードを新たに備える必要がない。
尚、本実施例において第1速度V1をキャリッジ48の最も遅い速度設定の移動速度としたが、これに限定するものではなく、より速い速度としてもよい。また、本実施例において第2速度V2を速度0としたが、これに限定するものではなく、より速い速度としてもよい。
また、第1の実施例から第12の実施例の説明において、主に第1ギャップ調整カム94への規制手段及び衝突音の発生を抑制する手段の適用を説明したが、第1ギャップ調整カム94に限定するものではなく、第2ギャップ調整カム138への適用も含むものである。
また、本明細書に記載された発明は第1の実施例から第7の実施例、第9の実施例及び第11の実施例における規制手段の少なくとも1つを備えていることから、ギャップ調整カム94、138をキャリッジ48の本体66に対して相対的に変位させることによりギャップPGを調整する構成において、ギャップ調整カム94、138を変位方向に押す係合レバー128からギャップ調整カム94、138が離れるのを規制する。このため、第1の実施例から第7の実施例、第9の実施例及び第11の実施例における規制手段は、ギャップ調整カム94、138の自己スライドを規制することで、ギャップ調整時の騒音を抑え、静音化を図ることができる。
また記録ヘッドから吐出する液体であるインクの供給元は、キャリッジに装着したインクカートリッジであっても良いし、キャリッジ外部に設けたインク収容体であっても良い。キャリッジ外部のインク収容体は、記録装置の外観を構成する筐体の内部に設けても良いし、筐体の外部に設けても良い。キャリッジにインクカートリッジを装着するタイプであると、カートリッジ内のインク容量に制約があるが、キャリッジ外部にインク収容体を設けることで、インク容量がより多くなり、より多くの回数の記録をすることが可能となる。
なお、筐体外部から記録ヘッドへインクを供給する際には、インクを供給するためのインク供給チューブを筐体内部に引き回す必要がある。よって、筐体に孔や切欠きを設け、インク供給チューブはその孔や切欠きを通すとよい。あるいは筐体に開閉可能に設けられたスキャナーユニットやカバーなどの開閉体が筐体に対して完全に閉じないようにボスなどを立て、ボスによって形成された隙間を利用してチューブを筐体内部に引き回しても良い。このようにすれば、インク供給チューブの流路におけるインクの供給を確保できる。
図28はその一例であり、他の実施形態に係るプリンターを模式的に示した斜視図である。図28において符号160はインクジェットプリンター、符号162は記録部、符号164は記録部162に対して開閉可能なスキャナーユニット、符号166は操作部(装置前面側となる)、符号168はインク収容体、符号170はインク収容体168から記録ヘッド(図17では不図示)へインクを供給するインク供給チューブを示している。記録部162の上部にはボス(突起)172が設けられており、このボス172により、スキャナーユニット164が記録部162に対して完全な閉状態とならず、隙間174が形成された状態となる。
インク供給チューブ170は、隙間174からプリンター内部に入り込んでおり、これによりスキャナーユニット164がインク供給チューブ170のインク流路を遮断しない様に構成されている。この様にキャリッジ外部に設けたインク収容体168を利用することで、インク容量がより多くなり、より多くの回数の記録を行うことができる。
用紙Pに記録を行う記録ヘッド44を備えた、当該記録ヘッド44の走査方向(X軸方向)に移動可能なキャリッジ48と、記録ヘッド44と用紙Pとの間のギャップPGが変化する方向(Z軸方向)においてキャリッジ48を構成するキャリッジ48の本体66との相対位置を変位可能に設けられ、キャリッジとともに走査方向(X軸方向)に移動する、キャリッジ48を構成する摺動部材92、136と、該摺動部材92、136が接するとともに摺動部材92、136を介してキャリッジ48の自重を受ける、走査方向(X軸方向)に延設されたガイドレール62、63と、摺動部材92、136とキャリッジ48の本体66の一部との間に介在してキャリッジ48の自重を受け、摺動部材92、136及びキャリッジ48の本体66に対して走査方向(X軸方向)に相対的に変位することによりギャップPGを変化させる、キャリッジ48を構成するギャップ調整カム94、138と、ギャップ調整カム94、138とともに変位するカム係合部126と、該カム係合部126がキャリッジ48の移動に伴って移動する移動領域に対し進退可能に設けられ、前記移動領域に進出しカム係合部126と係合した状態においてキャリッジ48の移動動作を介してギャップ調整カム94、138を変位方向に押す係合レバー128とを備える。ギャップ調整カム94は、ギャップPGを変化させる傾斜部104b、104d及び104fと、前記ギャップを維持する段部104a、104c、104e及び104gと、が交互に配置されて成る階段状のカム部104を備える。キャリッジ48の移動動作を制御する制御部61は、少なくともキャリッジ48の本体66の一部または摺動部材92に設けられた、階段状のカム部104と係合する接触部108が傾斜部104b、104d及び104fと、段部104a、104c、104e及び104gとの接続部すなわち区間S2、S4及びS6を通過する際のキャリッジ48の移動速度を、接触部108が傾斜部104b、104d、104f及び段部104a、104c、104e、104gと摺動する際のキャリッジ48の移動速度より低くする。
プリンター10は、キャリッジ48を駆動するキャリッジ駆動モーター47を備え、接触部108が傾斜部104b、104d及び104fと、段部104a、104c、104e及び104gとの接続部すなわち区間S2、S4及びS6を通過する際のキャリッジ48の移動速度は、キャリッジ駆動モーター47の駆動力によりキャリッジ48を第1速度V1まで加速させ、キャリッジ48が第1速度V1に達した後キャリッジ駆動モーター47の駆動力を切断することによりキャリッジ48を第2速度V2まで減速させ、キャリッジ48が第2速度V2まで減速した後再度第1速度V1まで加速することを繰り返すことにより得られる第1速度V1より遅い実効速度V3である。
上記説明をまとめると本実施例の記録装置10は、用紙Pに記録を行う記録ヘッド44を備えた、当該記録ヘッド44の走査方向(X軸方向)に移動可能なキャリッジ48と、記録ヘッド44と用紙Pとの間のギャップPGが変化する方向(Z軸方向)においてキャリッジ48を構成するキャリッジ48の本体66との相対位置を変位可能に設けられ、キャリッジ48とともに走査方向(X軸方向)に移動する、キャリッジ48を構成する摺動部材92、136と、該摺動部材92、136が接するとともに摺動部材92、136を介してキャリッジ48の自重を受ける、走査方向(X軸方向)に延設されたガイドレール62、63と、摺動部材92、136とキャリッジ48の本体66の一部との間に介在してキャリッジ48の自重を受け、摺動部材92、136及びキャリッジ48の本体66に対して走査方向(X軸方向)に相対的に変位することによりギャップPGを変化させる、キャリッジ48を構成するギャップ調整カム94、138と、ギャップ調整カム94、138とともに変位するカム係合部126と、カム係合部126がキャリッジ48の移動に伴って移動する移動領域に対し進退可能に設けられ、前記移動領域に進出しカム係合部126と係合した状態においてキャリッジ48の移動動作を介してギャップ調整カム94、138を変位方向に押す係合レバー128と、キャリッジ48の本体66に対するギャップ調整カム94、138の相対的な移動であって、ギャップ調整カム94、138の係合レバー128から離れる方向への移動を規制する第1の実施例から第7の実施例、第9の実施例及び第11の実施例における少なくとも1つの規制手段とを備える。
摺動部材92とキャリッジ48の本体66とを引き寄せる方向に摺動部材92とキャリッジ48の本体66との間で付勢力を発揮する、キャリッジ48を構成する第1付勢手段110を備える。
規制手段は、係合レバー128に設けられた、カム係合部126をギャップ調整カム94の移動方向両側で挟み込む挟み込み部140、又はカム係合部126に設けられた、係合レバー128をギャップ調整カム94の移動方向両側で挟み込む挟み込み部142を備える。挟み込み部140、142によりギャップ調整カム94の移動を規制する。
プリンター10は、駆動モーター27と複数の駆動対象(ピックアップローラー28及び上段側トレイ16)との間で駆動モーター27により駆動される駆動対象を切り換える動力伝達切換手段129を備える。係合レバー128は、動力伝達切換手段129を構成し、キャリッジ48の移動方向に沿って延びる揺動軸134を中心に揺動することによりカム係合部126の移動領域に対して進出する第1姿勢と前記移動領域から退避する第2姿勢とを切り換え可能であるとともに、揺動軸134の軸線方向(X軸方向)にスライドすることにより前記駆動対象が切り換わる。係合レバー128は、前記第1姿勢及び前記第2姿勢に加え、更にキャリッジ48と係合可能な第3姿勢に切り換わりが可能であり、係合レバー128の前記軸線方向(X軸方向)へのスライドを規制するガイドレール62の開口部132を備える。開口部132は、係合レバーの前記第3姿勢において当該係合部材のスライドを許容する長穴132bと、係合レバー128の前記第1姿勢において当該係合レバー128のスライドを規制する規制部132aと、を備える。
ギャップPGが小さくなる方向に前記ギャップ調整カムが変位する際の当該ギャップ調整カムの変位方向である第1方向(−X方向)に対し反対方向の第2方向(+X方向)に係合レバー128を付勢する第2付勢手段144を備える。
規制手段は、ギャップ調整カム94とキャリッジ48の本体66の一部との間、およびギャップ調整カム94とガイドレール62との間、の少なくともいずれかに介在するグリスを備えて成る。当該グリスによりギャップ調整カム94の移動を規制する。
規制手段は、ギャップ調整カム94の変位方向(X軸方向)と交差する方向(Y軸方向)にギャップ調整カム94に押圧力を付与するカム押圧部146を備えて成る。カム押圧部146によりギャップ調整カム94の移動を規制する。
ギャップ調整カム94には、カム押圧部146によって押圧される凸状の被押圧部150が設けられている。
被押圧部150は、ギャップ調整カム94の変位領域においてギャップ調整カム94がギャップPGを変化させる際にカム押圧部146に押圧され、ギャップ調整カム94がギャップPGを維持する際にはカム押圧部146から離間する。
キャリッジ48は摺動部材92及びギャップ調整カム94、138を複数備え、キャリッジ48において複数箇所でギャップPGを変化させる構成を備える。複数のギャップ調整カム94、138は、係合レバー128と係合可能であるとともに、ラックピニオン機構を構成するラック部78を有する第1ギャップ調整カム94と、第1ギャップ調整カム94のラック部78と係合する動力伝達部76から動力が伝達され、第1ギャップ調整カム94と同期して変位動作する第2ギャップ調整カム138とを備える。
規制手段は、動力伝達部76を構成する第1伝達ギヤ82、第2伝達ギヤ84、第3伝達ギヤ88及び第4伝達ギヤ90に対し回転抵抗を与える抵抗付与部材152を備えて成り、当該抵抗付与部材152によりギャップ調整カム94、138の移動を規制する。
規制手段は、ギャップPGが小さくなる方向にギャップ調整カム94が変位する際の当該ギャップ調整カム94の変位方向である第1方向(−X方向)に対し反対方向の第2方向(+X方向)にギャップ調整カム94を付勢する第3付勢手段155を備える。当該第3付勢手段155により前記ギャップ調整カムの移動を規制する。
用紙Pに記録を行う記録ヘッド44を備えた、当該記録ヘッド44の走査方向に移動可能なキャリッジ48と、記録ヘッド44と用紙Pとの間のギャップPGが変化する方向においてキャリッジ48を構成するキャリッジ48の本体66との相対位置を変位可能に設けられ、キャリッジ48とともに走査方向(X軸方向)に移動する、キャリッジ48を構成する摺動部材92、136と、該摺動部材92、136が接するとともに摺動部材92、136を介してキャリッジ48の自重を受ける、走査方向(X軸方向)に延設されたガイドレール62、63と、摺動部材92、136とキャリッジ48の本体66の一部との間に介在してキャリッジ48の自重を受け、摺動部材92、136及びキャリッジ48の本体66に対して走査方向(X軸方向)に相対的に変位することによりギャップPGを変化させる、キャリッジ48を構成するギャップ調整カム94、138と、ギャップ調整カム94、138とともに変位するカム係合部126と、カム係合部126がキャリッジ48の移動に伴って移動する移動領域に対し進退可能に設けられ、前記移動領域に進出しカム係合部126と係合した状態においてキャリッジ48の移動動作を介してギャップ調整カム94、138を変位方向に押す係合レバー128とを備える。ギャップ調整カム94、138は、ギャップPGを変化させる傾斜部104b、104d、104f、156b、156d、156fと、前記ギャップを維持する段部104a、104c、104e、104g、156a、156c、156e、156gと、が交互に配置されて成る階段状のカム部104、156を、前記キャリッジ48の本体66の一部に面する側、及び摺動部材92に面する側の双方に備える。
用紙Pに記録を行う記録ヘッド44を備えた、当該記録ヘッド44の走査方向(X軸方向)に移動可能なキャリッジ48と、記録ヘッド44と用紙Pとの間のギャップPGが変化する方向においてキャリッジ48を構成するキャリッジ48の本体66との相対位置を変位可能に設けられ、キャリッジ48とともに走査方向(X軸方向)に移動する、キャリッジ48を構成する摺動部材92、136と、該摺動部材92、136が接するとともに摺動部材92、136を介してキャリッジ48の自重を受ける、走査方向(X軸方向)に延設されたガイドレール62、63と、摺動部材92、136とキャリッジ48の本体66の一部との間に介在してキャリッジ48の自重を受け、摺動部材92、136及びキャリッジ48の本体66に対して走査方向(X軸方向)に相対的に変位することによりギャップPGを変化させる、キャリッジ48を構成するギャップ調整カム94、138と、ギャップ調整カム94、138とともに変位するカム係合部126と、カム係合部126がキャリッジ48の移動に伴って移動する移動領域に対し進退可能に設けられ、前記移動領域に進出しカム係合部126と係合した状態においてキャリッジ48の移動動作を介してギャップ調整カム94、138を変位方向に押す係合レバー128とを備える。キャリッジ48は摺動部材92、136及びギャップ調整カム94、138を複数備え、キャリッジ48において複数箇所でギャップPGを変化させる構成を備える。複数のギャップ調整カム94、138は、第1ギャップ調整カム94と、第2ギャップ調整カム138と、を備えて成る。第1ギャップ調整カム94及び第2ギャップ調整カム138は、ギャップPGを変化させる傾斜部104b、104d、104f、158b、158d、158fと、前記ギャップを維持する段部104a、104c、104e、104g、158a、158c、158e、158gと、が交互に配置されて成る階段状のカム部104、158を備える。第1ギャップ調整カム94が有する階段状のカム部104及び第2ギャップ調整カム138が有する階段状のカム部158は、ギャップPGを所定の状態に変化させるに際して異なるタイミングで変化させる。
その他、上記各実施例では本発明に係る規制手段及びギャップPGの変化時に発生する衝突音の発生を抑制する手段を記録装置の一例としてのインクジェットプリンターに適用したが、その他液体噴射装置一般に適用することも可能である。
ここで、液体噴射装置とは、インクジェット式記録ヘッドが用いられ、該記録ヘッドからインクを吐出して被記録媒体に記録を行うプリンター、複写機及びファクシミリ等の記録装置に限らず、インクに代えてその用途に対応する液体を前記インクジェット式記録ヘッドに相当する液体噴射ヘッドから被記録媒体に相当する被噴射媒体に噴射して、前記液体を前記被噴射媒体に付着させる装置を含むものである。
液体噴射ヘッドとして、前記記録ヘッドの他に、液晶ディスプレー等のカラーフィルター製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレーや面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料噴射ヘッド等が挙げられる。
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。