以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。以下の説明では、液体吐出装置としてインクジェット記録装置を例に挙げて説明する。
[インクジェット記録装置の全体構成]
図1は、インクジェット記録装置に具備される描画部10の概略構成図である。同図は、図示しない払拭部の側から描画部10を見た図である。インクジェット記録装置は、図4に符号1を付して図示し、払拭部は図2に符号30を付して図示する。
図1に示す描画部10は、枚葉の用紙12を搬送する描画胴14、シアン、マゼンタ、イエロー、黒の各色インクを吐出させる液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを備えている。
本明細書に使用される吐出の用語は、打滴と同義であり、吐出と打滴とを適宜読み換えることが可能である。
描画胴14は、用紙12の先端を把持するグリッパー24を備えている。グリッパー24は、描画胴14の周面に形成された凹部の内部に配置され、用紙12の先端を把持した状態で、描画胴14の周面から突出しない構造、配置を有している。
図1に図示した描画胴14には、二か所の凹部が形成されており、各凹部にグリッパー24が配置されている。グリッパー24は、描画胴14の軸方向に沿って配置された複数の把持爪、爪台、把持爪を搖動可能に支持するグリッパー軸を備えている。
描画胴14の周面には、用紙12に吸引圧力を作用させる吸引穴が設けられている。吸引穴は負圧流路を介して負圧発生装置と接続されており、負圧発生装置を動作させて吸引穴に負圧を発生させる。描画胴14の周面に設けられ吸引穴、負圧流路、負圧発生装置の図示は省略する。
描画胴14は、回転軸18の回りに回転し、周面に保持された用紙12を周面の円弧軌道に沿って搬送する。描画胴14に図示した矢印線は、描画胴14の回転方向を表している。
図1の液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kに付したC,M,Y,Kは、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kから吐出させるインク色を表しており、Cはシアン、Mはマゼンタ、Yはイエロー、Kは黒を表している。
液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kは、用紙12の搬送方向と直交する用紙12の幅方向について、用紙12の全幅以上の長さにわたってノズル部が配置されたフルライン型である。図1に図示しないノズル部は、図8に符号281を付して図示する。
本明細書における直交という用語には、90°未満の角度、又は90°を超える角度をなして交差する態様のうち、実質的に90°の角度をなして交差する場合と同様の作用効果を発生させる態様が含まれる。
用紙12の搬送方向は、図5に符号Yを付して図示する。また、用紙12の幅方向は、図5に符号Xを付して図示する。以下の説明において、用紙12の搬送方向を用紙搬送方向と記載し、用紙12の幅方向を用紙幅方向と記載することがある。
液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kは、図示しない支持部材に支持され、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kは、インクを吐出させる描画位置と、払拭部の処理位置との間を移動可能に構成されている。
図1には、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kが描画位置に配置された状態が図示されている。液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kは、用紙搬送方向に沿って等間隔に配置され、吐出面17Y,17M,17C,17Kが水平面20に対して傾斜して配置される。
水平面20とは、インクジェット記録装置の水平基準となる面である。図1には、インクジェット記録装置が配置される配置面を水平面20とする例を図示した。
本明細書に使用される吐出面の用語は、ノズル面、打滴面、インク吐出面、インク打滴面、液体吐出面、液体打滴面などと同義であり、吐出面とノズル面、打滴面、インク吐出面、インク打滴面、液体吐出面、液体打滴面とを適宜読み換えることが可能である。
図1には、描画部10へ用紙12を受け渡す構成として渡し胴26を破線により図示した。また、描画胴14から用紙12を受け渡される構成として渡し胴28を破線により図示した。
渡し胴26に具備されるグリッパーは、符号27を付して破線により図示した。また、渡し胴28に具備されるグリッパーは、符号29を付して破線により図示した。渡し胴26,28に図示した破線の矢印線は、渡し胴26,28の回転方向を表している。
渡し胴26は描画部10へ用紙12を供給する給紙部の一部として機能する。また、渡し胴28は描画部10から用紙12を排出させる排紙部の一部として機能する。
[払拭部の説明]
図2は、描画部10と払拭部30との配置を模式的に図示した説明図である。図2では、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kのうち、用紙搬送方向の最下流側の液体吐出ヘッド16Kのみを図示し、他の液体吐出ヘッド16Y,16M,16Cの図示を省略する。図2中、図1と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図2に示す払拭部30は、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kのそれぞれに対応する払拭装置32B,31B,32A,31Aと、二方向の払拭方向について、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kと払拭装置32B,31B,32A,31Aとを相対移動方向について相対移動させる移動部36と、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを個別に昇降移動させて、吐出面17Y,17M,17C,17Kとウエブ41B,40B,41A,40Aとの距離を可変させる昇降移動部38と、払拭装置32B,31B,32A,31Aを一括して、一装置分の整数倍の単位で切換移動方向に移動させる切換部39と、を備えている。
図2に図示したウエブ40A、及び図2に図示しないウエブ40Bは、第1払拭部材として機能する。また、図2に図示しないウエブ41B,41Aは、第2払拭部材として機能する。第1払拭部材、及び第2払拭部材の他の例として払拭ローラが挙げられる。払拭ローラは、円筒形状を有し、吐出面17Y,17M,17C,17Kの端手方向の全長を超える軸方向の長さを有する構造を適用することができる。
第1払拭部材、及び第2払拭部材として払拭ローラが適用される態様では、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの吐出面17Y,17M,17C,17Kを払拭する際に、払拭ローラの周面を吐出面17Y,17M,17C,17Kに接触させて、払拭ローラと吐出面17Y,17M,17C,17Kとを、吐出面17Y,17M,17C,17Kの長手方向に沿って相対的に移動させ、払拭ローラと吐出面17Y,17M,17C,17Kとの相対移動の際に、払拭ローラを一方向に駆動回転させる。払拭ローラの駆動回転の回転方向の詳細は後述する。
図2では、払拭装置32B,31B,32A,31Aのうち、払拭装置31Aのみを図示し、他の払拭装置32B,31B,32Aの図示を省略する。払拭装置32B,31B,32A,31Aは、図2の紙面を裏面から表面に貫く方向に、払拭装置32B,31B,32A,31Aの順で配置されている。
払拭装置32B,31B,32A,31Aには、同一の構成を適用することができるので、ここでは、払拭装置31Aについて説明する。図2に図示しない払拭装置32B,31B,32Aは図9に図示する。
本実施形態では、フルライン型の液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの長手方向と平行の往復方向が、二方向の払拭方向とされる。二方向の払拭方向は、フルライン型の液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの長手方向と交差する方向についての往復方向としてもよい。二方向の払拭方向の一方方向と他方方向とは、平行でもよいし、交差してもよい。
本明細書における平行という用語には、対象とされる二方向が交差しているものの、平行と同様の作用効果を発生させる実質的な平行が含まれる。例えば、X方向と用紙の幅方向とは、実質的に平行とみなせる程度に交差していてもよい。
図2には、二方向の払拭方向の一方方向である往路方向は、符号37Aを付した矢印線により図示する。また、二方向の払拭方向の他方方向である復路方向は、符号37Bを付した矢印線により図示する。
図2の符号18は描画胴14の回転軸であり、符号21は描画胴14を支持するフレームであり、符号22は描画胴14の回転軸を支持する軸受である。
払拭装置31Aは、液体吐出ヘッド16Cの吐出面17C、又は液体吐出ヘッド16Kの吐出面17Kに接触させて、吐出面17C,17Kを払拭するウエブ40Aを一方向に走行させる構成が具備される。ウエブ40Aと吐出面17C,17Kとの接触位置におけるウエブ40Aの走行方向は、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの移動における復路方向37Bと同一方向である。
図2に図示しない払拭装置32B,31B,32Aに具備されるウエブの走行方向は後述する。
ウエブ40Aは、超極細の繊維の織り又は編みにより形成される帯状の払拭部材である。ウエブ40Aの材料には、ポリエステル、ポリプロピレンなどの繊維が用いられる。ウエブ40Aの構造、材料は既述の例に限定されず、目的とする払拭性能が得られるものであり、吐出面17Y,17M,17C,17Kに形成された撥液膜の摩耗が許容範囲であればよい。
ウエブ40Aは、液体吐出ヘッド16Kの吐出面17Kの全幅以上の幅を有しているので、ウエブ40Aと液体吐出ヘッド16Kとを払拭方向について相対的に一回移動させることで、吐出面17Kの全面にわたって払拭処理を施すことができる。
吐出面17Kの全幅とは、吐出面17Kの短手方向における全長である。また、ウエブ40Aの幅は、ウエブ40Aの走行方向と直交するウエブ40Aの幅方向における全長である。図2に図示しない吐出面17Y,17M,17C、ウエブについても同様である。
本実施形態では、既述の払拭方向について、固定配置された払拭装置32B,31B,32A,31Aに対して、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを一括して移動させる移動部36を例示したが、移動部36は固定配置された液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kに対して払拭装置32B,31B,32A,31Aを移動させてもよいし、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16K、及び払拭装置32B,31B,32A,31Aの両方を移動させてもよい。
図2には、移動部36を模式的に図示し、具体的な構成の図示は省略する。移動部36の構成例として、ボールねじ、リニアスライダー等の水平直動機構、水平直動機構の駆動源となるモータ、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを一括して案内するガイド部材を備える態様が挙げられる。
昇降移動部38は、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kのそれぞれを個別に昇降移動させて、払拭処理における液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの選択、非選択を切り換える選択部として機能する。図2には昇降移動部38を模式的に図示し、具体的な構成の図示は省略する。
昇降移動部38の構成例として、ボールねじ、リニアスライダー等の垂直直動機構、垂直直動機構の駆動源となるモータ、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを個別に案内するガイド部材とを備える態様が挙げられる。
切換部39は、垂直方向における払拭装置32B,31B,32A,31Aの姿勢を維持したまま、切換移動方向に沿って払拭装置32B,31B,32A,31Aを一括して移動させることで、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kと払拭装置32B,31B,32A,31Aとの対応関係を変更する。切換部39の動作の詳細は後述する。
本実施形態における切換部39の切換移動方向は、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの配置方向と平行方向であり、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの長手方向と非平行方向である。図9に一点破線を用いて、本実施形態における切換部39の切換移動方向を図示する。切換移動方向は、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの配置方向に対して交差する方向としてもよい。
図2では、切換部39を模式的に図示し、具体的な構成の図示は省略する。切換部39の構成例として、払拭装置32B,31B,32A,31Aを一つの支持部材に支持し、払拭装置32B,31B,32A,31Aを一括して切換移動方向に沿って回転移動させる回転移動機構が挙げられる。
[キャップ部の説明]
払拭部30の描画部10と反対側には、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの吸引処理、予備吐出を行うキャップ部34が配置される。キャップ部34は、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kのそれぞれに対応して内部が区画された構造を有するキャップ33、キャップ33に接続される廃液流路52、廃液流路52に設けられる吸引ポンプ54、廃液流路52と接続される廃液タンク56を備えて構成される。
液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kのそれぞれに対して、キャップ33、廃液流路52、吸引ポンプ54、廃液タンク56を具備する態様も可能である。
図2に二点破線を用いて図示した液体吐出ヘッド16Kは、描画位置から符号37Aを付して図示した往路方向に沿って移動させ、払拭部30の処理位置を通過し、キャップ部34の処理位置に到達した液体吐出ヘッド16Kである。
液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kがキャップ部34の処理位置に到達すると、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの吐出面17Y,17M,17C,17Kにキャップ33が取り付けられる。
液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの吐出面17Y,17M,17C,17Kにキャップ33が取り付けられた状態で、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの吸引処理、予備吐出が実行される。
吸引処理は、吸引ポンプ54を動作させ、キャップ33の内部に負圧を発生させて、ノズル部を介して液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの内部からインクを排出させる処理である。
予備吐出は、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kに具備される圧電素子を動作させて、ノズル部を介して液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの内部からインクを排出させる処理である。圧電素子は、図8に符号230を付して図示する。
本実施形態では、描画位置からキャップ部34の処理位置へ液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを移動させる際、又はキャップ部34の処理位置から描画位置へ液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを移動させる際に、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの吐出面17Y,17M,17C,17Kに対して払拭部30を用いた払拭処理が施される態様を例示したが、払拭部30を用いた払拭処理を単独で実行してもよい。
例えば、描画位置から払拭部30の処理位置へ液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを移動させ、払拭部30を用いた払拭処理が施された後に、キャップ部34の処理位置を経由させずに、払拭部30の処理位置から描画位置へ液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを移動させてもよい。
[液体吐出ヘッドの昇降移動の詳細な説明]
図3は、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの昇降移動を模式的に図示した説明図である。図3中、図1と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。なお、図3では、吐出面17Y,17M,17C,17Kの符号を省略する。
図3に実線を用いて図示した液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kは、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを描画位置から払拭部30の処理位置へ移動させる際、及び払拭部30の処理位置から描画位置へ移動させる際に吐出面17Y,17M,17C,17Kの払拭処理が施される払拭位置に配置された状態である。
図3に二点破線を用いて図示した液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kは、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを描画位置からメンテナンス位置へ移動させる際、及びメンテナンス位置から描画位置へ移動させる際に吐出面17Y,17M,17C,17Kの払拭処理が施されない非払拭位置に配置された状態である。
払拭対象の液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kと、非払拭対象液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kとを切り換える際に、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを個別に昇降移動させる。
本実施形態における昇降移動には、描画胴14の回転軸18から放射状に延びる描画胴14の法線方向に沿って液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを移動させる態様が含まれる。また、図示を省略するが、本実施形態における昇降移動には、水平面20に対して垂直方向に沿って液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを移動させる態様が含まれる。
[制御系の説明]
図4は、図1に示すインクジェット記録装置1の制御系の概略構成を示すブロック図である。同図に示すインクジェット記録装置1は、システムコントローラ100、通信部102、画像メモリ104、搬送制御部110、給紙制御部112、描画制御部118、排紙制御部120、操作部130、表示部132等が備えられる。
システムコントローラ100は、インクジェット記録装置1の各部を統括制御する全体制御部として機能し、かつ、各種演算処理を行う演算部として機能する。このシステムコントローラ100は、CPU100A及び、ROM100B、RAM100Cを内蔵している。なお、CPUはCentral Processing Unitの略語であり、ROMはRead Only Memoryの略語であり、RAMはRandom Access Memoryの略語である。
システムコントローラ100は、ROM100B、RAM100C、画像メモリ104等のメモリへのデータの書き込み、メモリからのデータの読み出しを制御するメモリコントローラとしても機能する。
図4には、システムコントローラ100にROM100B、RAM100C等のメモリを内蔵する態様を例示したが、ROM100B、RAM100C等のメモリは、システムコントローラ100の外部に設けられていてもよい。
通信部102は、所要の通信インターフェースを備え、通信インターフェースと接続されたホストコンピュータ103との間でデータの送受信を行う。
画像メモリ104は、画像データを含む各種データの一時記憶部として機能し、システムコントローラ100を通じてデータの読み書きが行われる。通信部102を介してホストコンピュータ103から取り込まれた画像データは、一旦画像メモリ104に格納される。
搬送制御部110は、インクジェット記録装置1における用紙12の搬送系11の動作を制御する。搬送系11には、図1に図示した描画部10の描画胴14、渡し胴26,28が含まれる。
給紙制御部112は、システムコントローラ100からの指令に応じて、給紙部114の動作を制御する。すなわち、給紙制御部112は、描画部10への用紙12の供給タイミング、用紙12の供給開始、用紙12の供給停止を制御する。
描画制御部118は、システムコントローラ100からの指令に応じて、図1に図示した描画部10の動作を制御する。描画制御部118の構成例として、入力画像データからドットデータを生成する画像処理部、駆動電圧の波形を生成する波形生成部、駆動電圧の波形を記憶する波形記憶部、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kのそれぞれに対して、ドットデータに応じた駆動波形を有する駆動電圧を供給する駆動部を含む構成が挙げられる。画像処理部、波形生成部、波形記憶部、駆動部の図示は省略する。
画像処理部は、画素ごとの階調値を表す入力画像データに対して、RGBの各色に分解する色分解処理、RGBをCMYKに変換する色変換処理、ガンマ補正、ムラ補正等の補正処理、各色の画像データを元の階調値未満の階調値に変換するハーフトーン処理を施し、画素ごとのドットデータを生成する。
画像処理部によって生成されたドットデータに基づいて、ノズル部ごとの吐出タイミング、インク吐出量を表す駆動電圧が生成される。駆動電圧は各ノズル部に対応する圧電素子に印加される。
圧電素子に駆動電圧が印加されると、圧電素子は駆動電圧の波形に応じてたわみ変形し、圧電素子のたわみ変形に応じてノズル部からインクが吐出される。
排紙制御部120は、システムコントローラ100からの指令に応じて、排紙部121の動作を制御する。
払拭制御部122は、システムコントローラ100からの指令に応じて、払拭装置32の動作を制御する。図4の払拭装置32は、既述の払拭装置32B,31B,32A,31Aが含まれる。
払拭装置32の動作制御には、払拭装置32に具備されるウエブの走行開始タイミングの制御、ウエブの走行停止タイミングの制御、ウエブの走行速度の制御、ウエブの傾斜角度調整の制御が含まれる。
払拭装置32に具備されるウエブは、図9に符号41B,40B,41A,40Aを付して図示する。
移動制御部124は、システムコントローラ100からの指令に応じて、移動部36の動作を制御する。移動部36の動作制御には、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの移動速度の制御、移動方向の切換制御が含まれる。
切換制御部125は、システムコントローラ100からの指令に応じて、切換部39の動作を制御する。切換部39の動作制御には、払拭装置32B,31B,32A,31Aの切換移動開始タイミングの制御、切換移動停止タイミングの制御、切換移動速度の制御が含まれる。
昇降移動制御部126は、システムコントローラ100からの指令に応じて、昇降移動部38の動作を制御する。昇降移動制御部126は、選択部として機能する昇降移動部38の動作を制御する選択制御部として機能する。
キャップ制御部128は、システムコントローラ100からの指令に応じてキャップ部34の動作を制御する。キャップ部34の動作制御には、キャップ33の昇降制御、吸引ポンプ54のオンオフタイミングの制御、吸引圧力の制御が含まれる。
操作部130は、操作ボタン、キーボード、タッチパネル等の操作部材を備え、その操作部材から入力された操作情報をシステムコントローラ100に送出する。システムコントローラ100は、操作部130から送出された操作情報に応じて各種処理を実行する。
表示部132は、液晶パネル等の表示装置を備え、システムコントローラ100からの指令に応じて、装置の各種設定情報、異常情報などの情報を表示装置に表示させる。
パラメータ記憶部134は、インクジェット記録装置1に使用される各種パラメータが記憶される。パラメータ記憶部134に記憶されている各種パラメータは、システムコントローラ100を介して読み出され、装置各部に設定される。
プログラム格納部136は、インクジェット記録装置1の各部に使用されるプログラムが格納される。プログラム格納部136に格納されている各種プログラムは、システムコントローラ100を介して読み出され、装置各部において実行される。
[インクジェットヘッドユニットの構造]
次に、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの構造について詳細に説明する。図5は、液体吐出ヘッド16の構造図であり、インク液滴が吐出される吐出面17の透視平面図である。
CMYKの各色に対応する液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kには同一の構造が適用される。液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを区別する必要がない場合には液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを液体吐出ヘッド16と記載することがある。
また、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの吐出面17Y,17M,17C,17Kについても、区別する必要がない場合には吐出面17と記載することがある。
図5に示す液体吐出ヘッド16は、用紙搬送方向であるY方向と直交する用紙幅方向であるX方向について複数のヘッドモジュール200がつなぎ合わせられた構造を有している。
本明細書における直交という用語には、90°未満の角度、又は90°を超える角度をなして交差する態様のうち、実質的に90°の角度をなして交差する場合と同様の作用効果を発生させる態様が含まれる。
液体吐出ヘッド16を構成する複数のヘッドモジュール200は同一の構造を適用することができる。また、ヘッドモジュール200は、単体で液体吐出ヘッドとして機能させることができる。
図5に図示した液体吐出ヘッド16は、複数のヘッドモジュール200をX方向に沿って一列に配置させた構造を有し、X方向における用紙12の全幅Lmaxに対応する長さにわたって、複数のノズル部が配置されたフルライン型の液体吐出ヘッドである。
ここで、X方向における用紙12の全幅Lmaxとは、X方向と平行方向の用紙幅方向における用紙12の全長である。なお、複数のサイズの用紙12が使用される場合には、用紙ごとの全幅の最大値が用紙12の全幅Lmaxである。
なお、フルライン型の液体吐出ヘッドとして、X方向について用紙12の描画領域の全長を超える長さにわたって複数のノズル部を配置させる態様を適用してもよい。用紙12の描画領域とは、余白部分を除いた領域であり、インクジェット方式の画像記録では、画像データに基づく画像が記録される領域である。
液体吐出ヘッド16を構成するヘッドモジュール200の吐出面17には、複数のノズル開口が配置されている。複数のノズル部、及び複数のノズル開口の配置の詳細は後述する。ノズル開口は、図7に符号280を付して図示する。
本実施形態では、複数のヘッドモジュール200をX方向に沿って一列に配置させた構造を有する液体吐出ヘッド16を例示したが、複数のヘッドモジュール200をX方向について千鳥状に配置させてもよいし、複数のヘッドモジュール200を一体構造としてもよいし、一つのヘッドモジュール200から液体吐出ヘッド16を構成してもよい。
[インクジェットヘッドの構造例]
図6は、ヘッドモジュール200の斜視図であり部分断面図を含む図である。図7は、図6に示したヘッドモジュール200における吐出面17の平面透視図である。
図6に示すように、ヘッドモジュール200は、ノズル板275の吐出面17と反対側である、図6において上側にインク供給室232とインク循環室236等からなるインク供給ユニットを有している。
インク供給室232は、供給管路252を介して不図示のインクタンクに接続され、インク循環室236は、循環管路256を介して不図示の回収タンクに接続される。
図7ではノズル開口280の数を省略して描いているが、一個のヘッドモジュール200のノズル板275の吐出面17には、2次元配置によって複数のノズル開口280が配置されている。
すなわち、ヘッドモジュール200は、X方向に対して角度βの傾きを有するV方向に沿った長辺側の端面と、Y方向に対して角度αの傾きを持つW方向に沿った短辺側の端面とを有する平行四辺形の平面形状となっており、V方向に沿う行方向、及びW方向に沿う列方向について、複数のノズル開口280及びノズル部がマトリクス配置されている。
なお、ノズル開口280の配置は、図7に図示した態様に限定されず、X方向に沿う行方向、及びX方向に対して斜めに交差する列方向に沿って複数のノズル開口280を配置してもよい。
すなわち、ノズル開口280、ノズル部281のマトリクス配置とは、複数のノズル開口280をX方向に投影させて、複数のノズル開口280をX方向に沿って配置させたX方向の投影ノズル列282において、ノズル開口280の配置間隔、ノズル間距離が均一となるノズル開口280、ノズル部281の配置である。
X方向の投影ノズル列において、隣接するヘッドモジュール200同士のつなぎ部分では、一方のヘッドモジュール200に属するノズル開口280と、他方のヘッドモジュール200に属するノズル開口280が混在している。
各ヘッドモジュール200に取り付け位置の誤差が存在しない場合、つなぎ領域における一方のヘッドモジュール200に属するノズル開口280と他方のヘッドモジュール200に属するノズル開口280とは同じ位置に配置されるので、つなぎ領域においてもノズル開口280の配置は均一である。
図8は、ヘッドモジュール200の内部構造を示す断面図である。符号214はインク供給路、符号218は圧力室、符号216は各圧力室218とインク供給路214とをつなぐ個別供給路、符号220は圧力室218からノズル開口280につながるノズル連通路、符号226はノズル連通路220と循環共通流路228とをつなぐ循環個別流路である。圧力室218は、液室と呼ばれることがある。
これら流路部214,216,218,220,226,228を構成する流路構造体210の上に、振動板266が設けられる。振動板266の上には接着層267を介して、下部電極265、圧電体層231及び上部電極264の積層構造から成る圧電素子230が配設されている。下部電極265は共通電極と呼ばれることがあり、上部電極264は個別電極と呼ばれることがある。
上部電極264は、各圧力室218の形状に対応してパターニングされた個別電極となっており、圧力室218ごとに、それぞれ圧電素子230が設けられている。
インク供給路214は、図6で説明したインク供給室232につながっており、インク供給路214から個別供給路216を介して圧力室218にインクが供給される。入力画像の画像データに応じて、対応する圧力室218に設けられた圧電素子230の上部電極264に駆動電圧を印加することによって、該圧電素子230及び振動板266が変形して圧力室218の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル連通路220を介してノズル開口280からインクが吐出される。
入力画像データから生成されるドットデータに応じて各ノズル開口280に対応した圧電素子230の駆動を制御することにより、ノズル開口280からインク液滴を吐出させることができる。
用紙12を一定の速度でY方向に搬送しながら、その搬送速度に合わせて各ノズル開口280からのインク吐出タイミングを制御することによって、用紙12の上に所望の画像を記録することができる。
図示は省略するが、各ノズル開口280に対応して設けられている圧力室218は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部の一方にノズル開口280への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口である個別供給路216が設けられている。
なお、圧力室の形状は、正方形に限定されない。圧力室の平面形状は、菱形、長方形などの四角形、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
ノズル開口280及びノズル連通路220を含むノズル部281には、不図示の循環出口が形成され、ノズル部281は循環出口を介して循環個別流路226と連通される。
ノズル部281のインクのうち、吐出に使用されないインクは循環個別流路226を介して循環共通流路228へ回収される。
循環共通流路228は、図6で説明したインク循環室236につながっており、循環個別流路226を通って常時インクが循環共通流路228へ回収されることにより、非吐出時におけるノズル部のインクの増粘が防止される。
ノズル開口280、ノズル部281の配置は、用紙幅方向について一列に配置してもよいし、二列の千鳥配置でもよい。
以上説明した液体吐出ヘッド16の例として、X方向に沿って17個のヘッドモジュール200を一列に並べた構成が挙げられる。また、ヘッドモジュール200の例として、2048個の記録素子を具備する構成が挙げられる。
圧電素子の例として、図8の各ノズル部281に対応して個別に分離した構造を有する圧電素子230が挙げられる。もちろん、複数のノズル部281に対して一体に圧電体層231が形成され、各ノズル部281に対応して個別電極が形成され、ノズル部281ごとに活性領域が形成される構造を適用してもよい。
圧電素子に代わり圧力発生素子として圧力室218の内部にヒータを備え、当該ヒータに駆動電圧を供給して発熱させ、膜沸騰現象を利用して圧力室218内のインクをノズル開口280から吐出させるサーマル方式を適用してもよい。
[払拭部の構成、払拭部の切換移動の説明]
図9は、払拭部30の構成、及び払拭部30の切換移動の説明図である。同図は払拭部30をキャップ部34の側から見た図であり、払拭装置32B,31B,32A,31Aの内部を透視して図示している。
図9には、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの吐出面17Y,17M,17C,17Kのそれぞれに、払拭装置32B,31B,32A,31Aのウエブ41B,40B,41A,40Aを接触させた状態が図示されている。
払拭部30に具備される払拭装置32B,31B,32A,31Aは、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの配置に対応して、用紙搬送方向である円弧に沿って配置される。図9では、一点破線を用いて、用紙搬送方向を示す円弧を図示する。
吐出面17Kとウエブ40Aとの接触位置におけるウエブ40Aの走行方向と、吐出面17Mとウエブ40Bとの接触位置におけるウエブ40Bの走行方向とは同一であり、図9の紙面を表面から裏面へ貫く方向である。
また、吐出面17Cとウエブ41Aとの接触位置におけるウエブ41Aの走行方向と、吐出面17Yとウエブ41Bとの接触位置におけるウエブ41Bの走行方向とは同一であり、図9の紙面を裏面から表面へ貫く方向である。
以下の説明において、ウエブの走行方向は、吐出面とウエブとの接触位置におけるウエブの走行方向を意味することとする。
本実施形態における払拭装置31A,31Bは、第1メンテナンス部として機能し、払拭装置32A,32Bは、第2メンテナンス部として機能する。また、本実施形態におけるウエブ40A,40Bは第1払拭部材として機能し、ウエブ41A,41Bは第2払拭部材として機能する。本実施形態では、第1払拭部材と第2払拭部材が交互に配置される態様を例示する。
図9に一点破線を用いて図示した用紙搬送方向は、払拭装置32B,31B,32A,31Aの配置方向と同一方向、又は平行方向であり、払拭装置32B,31B,32A,31Aの切換移動方向と同一方向、又は平行方向である。
図9における切換部39の図示は省略するが、切換部39は払拭装置32B,31B,32A,31Aを切換移動方向に沿って移動させることで、払拭装置32B,31B,32A,31Aと液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kとの対応関係を切り換える。
図9に二点破線により図示した払拭装置31Aは、払拭装置31Aの払拭装置32Aと反対側に一装置分、払拭装置32B,31B,32A,31Aを一括して切換移動させた状態である。
また、同図に二点破線により図示した払拭装置32Bは、払拭装置32Bの払拭装置31Bと反対側に一装置分、払拭装置32B,31B,32A,31Aを一括して切換移動させた状態である。
払拭装置32B,31B,32A,31Aの詳細な構成は後述するが、払拭装置32B,31B,32A,31Aのそれぞれは、ケース301B,300B,301A,300Aの内部に払拭ユニット303B,302B,303A,302Aが収納される構造を有している。
図9に符号395B,394B,395A,394Aを付した構成は、ウエブ41B,40B,41A,40Aを走行させる際に動作させるモータであり、符号307B,306B,307A,306Aは、モータ395B,394B,395A,394Aと連結される伝達機構である。
[払拭ユニットの説明]
図10は、払拭ユニット303B,302B,303A,302Aの概略構成を示す正面断面図である。払拭ユニット303B,302B,303A,302Aには、同一の構成を適用することができるので、図10では符号302を用いて払拭ユニットを示すこととする。
図10では、図9に図示した払拭装置32B,31B,32A,31Aの任意の一つが図示されている。図10では符号32を用いて払拭装置を図示する。また、払拭装置の構成要素についてもアルファベット、及び添え字を省略する。
図10に示す払拭ユニット302は、払拭装置32のケース300に装着された状態である。払拭装置32のケース300は、高さ方向を長手方向とする立方体であり、上面に開口が形成されている。払拭ユニット302は、ケース300の上面から開口を介してケース300に着脱される。
払拭ユニット312は、ケース300と、ウエブ40を繰り出す繰出軸314と、ウエブ40を巻き取る巻取軸316と、押圧ローラ318に巻き掛けられるウエブ40を押圧ローラ318の前段側で案内する前段ガイド320と、ウエブ40を押圧ローラ318の後段側で案内する後段ガイド322と、を備えて構成される。
ケース300は、ケース本体330、及び不図示の蓋から構成される。ケース本体330は、高さ方向を長手方向とする立方体であり、正面に不図示のヒンジを介して蓋が取り付けられており、蓋の開閉によって払拭ユニット302の正面を開閉させることができる。
本実施形態における払拭ユニット302の正面とは、繰出軸314、及び巻取軸316と直交する二面のいずれか一方である。払拭ユニット302の正面を開閉可能に構成することで、払拭ユニット302の内部へ未使用のウエブ40を取り付けることができ、使用済みのウエブ40を回収することができる。
繰出軸314は、ケース本体330に設けられた不図示の軸受によって基端が支持され、ケース本体330の内部に水平に設置される。繰出軸314には、未使用のウエブ40がロール状に巻かれた繰出コア338が着脱可能に支持される。
巻取軸316は、繰出軸314の下方位置に水平配置される。繰出軸314の下方位置とは、繰出軸314のケース本体330の開口と反対側の位置である。巻取軸316は、繰出軸314から繰り出されたウエブ40を巻き取る巻取コア342が装着される。
押圧ローラ318は、繰出軸314の上側位置に配置される。図10に示す払拭ユニット302は、上から下に向かって、押圧ローラ318、繰出軸314、巻取軸316の順に同一直線上に配置される。
押圧ローラ318は、吐出面17Y,17M,17C,17Kにウエブ40を接触させる際に、吐出面17Y,17M,17C,17Kの反対側からウエブ40を押圧する。押圧ローラ318は、軸方向についてウエブ40の幅方向の全長を超える長さを有している。図10における押圧ローラ318の軸方向は、紙面を貫く方向である。
押圧ローラ318は、支持部材318Aによって軸方向の両端を支持され、支持軸が水平面に対して傾斜して配置される。支持部材318Aは配置台370に固定される。図10では、一方の支持部材318Aのみを図示する。
払拭ユニット302は、ウエブ40を接触させる吐出面17Y,17M,17C,17Kの水平面に対する傾斜に対応して、押圧ローラ318の水平面に対する支持軸の傾斜角度を調整する傾斜角度調整部を備えている。
傾斜角度調整部の具体的な構成の図示は省略する。傾斜角度調整部の構成例として、押圧ローラ318、前段ガイド320、及び後段ガイド322が配置される配置台370の水平面に対する傾斜角度を調整する構成が挙げられる。
前段ガイド320は、ガイド360,362から構成される。ガイド360,362は、繰出軸314から繰り出されたウエブ40を押圧ローラ318へ案内する。
後段ガイド322は、ガイド364,366から構成される。ガイド364,366は、押圧ローラ318に巻き掛けられたウエブ40を巻取軸316へ案内する。
図10に示すように、払拭ユニット302を払拭装置32のケース300に差し込むと、不図示のロック機構によってガイド360、押圧ローラ318、ガイド364が位置決めされる。
グリッドローラ324は、ガイド366の下方位置であり、ケース本体330の底面近傍に配置される。グリッドローラ324の基端には、グリッドローラギア386が取り付けられる。
グリッドローラギア386は、ケース本体330に取り付けられた軸受390に回転可能に支持された回転伝達ギア388にかみ合わされる。また、巻取軸316には不図示の巻取軸ギアが取り付けられ、巻取軸ギアは回転伝達ギア388にかみ合わされる。
さらに、回転伝達ギア388は、モータ394の回転軸に取り付けられた駆動ギア392にかみ合わされる。モータ394を回転させると、駆動ギア392、回転伝達ギア388が回転し、グリッドローラギア386、及び不図示の巻取軸ギアが回転する。
グリッドローラギア386の回転に対応してグリッドローラ324が回転し、巻取軸ギアの回転に対応して巻取軸316が回転する。ウエブ40がゆるみなく走行可能な速度となる、巻取軸ギアとグリッドローラギア386とのギア比が決められる。
図9に符号307B,306B,307A,306Aを付して図示した伝達機構のそれぞれには、図10に図示したグリッドローラギア386、回転伝達ギア388、駆動ギア392、及び不図示の巻取軸ギアが含まれる。
ニップローラ400は、外周がゴム等の弾性体によって覆われた構造を有し、ケース300の内部に配置される。払拭ユニット302が払拭装置32のケース300に装着されると、ニップローラ400はケース312の底部の開口に入り込み、グリッドローラ324に巻き掛けられたウエブ40と接触する。ニップローラ400は、不図示の軸受によって回転可能に支持される。
廃液受け402は、払拭装置32のケース300の底部であり、ニップローラ400の下部に配置される。廃液受け402は、上面に開口が形成された立方体である。廃液受け402は、ニップローラ400を介してウエブ40から回収された廃液が貯留される。
図示を省略するが、払拭装置32はウエブ40に洗浄液を供給する洗浄液供給部を具備している。洗浄液によって湿潤させたウエブ40を用いることで、払拭効率を向上させ、かつ、吐出面の摩耗等が抑制される。洗浄液供給部は、払拭装置32の外部に設けられていてもよい。
本実施形態では、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kが円弧状の用紙搬送経路に沿って配置される態様を例示したが、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを水平面に沿って配置させてもよい。液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを水平面に沿って配置させる場合には、払拭装置32B,31B,32A,31Aにおけるウエブ41B,40B,41A,40Aの傾斜角度を調整する角度調整部は省略される。
[払拭処理の第1実施形態の説明]
次に、図2に図示した払拭部30を用いた液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの吐出面17Y,17M,17C,17Kの払拭処理の第1実施形態について説明する。
図11(A)から(E)、及び図12(A)から(D)は、払拭処理の第1実施形態の説明図であり、図2に図示したキャップ部34側から払拭部30及び液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを見た状態が図示されている。
第1実施形態では、四つの液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kに対して、同数の四つの払拭装置32B,31B,32A,31Aを用いた吐出面17Y,17M,17C,17Kの払拭処理について説明する。
以下の説明では、払拭部材として払拭ローラを備えた払拭装置32B,31B,32A,31Aを用いて、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの吐出面17Y,17M,17C,17Kを払拭する態様について説明する。
図11(A)から(E)、及び図12(A)から(D)では、払拭装置32B,31B,32A,31Aは、払拭ローラとして模式的に図示する。また、吐出面の符号の図示を省略する。以降の説明に使用される図においても同様とする。
以下の説明では、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを水平方向に沿って配置させ、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを垂直方向に昇降移動させる態様について説明する。
また、以下の説明では、払拭装置32B,31B,32A,31Aは、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの配置に対応して、水平方向に沿って配置され、払拭装置32B,31B,32A,31Aの切換移動方向は水平方向と平行方向とする。
払拭ローラを備えた払拭装置32B,31B,32A,31Aは、払拭ローラを一方向の駆動回転方向に駆動回転させた状態で、払拭ローラの周面を吐出面17Y,17M,17C,17Kに接触させて、吐出面17Y,17M,17C,17Kを払拭する。
払拭ローラを駆動回転させる構成として、モータと、ギア、又はカップリング等のモータの回転軸と払拭ローラの回転軸とを連結させる連結部材と、を含む構成が挙げられる。
払拭装置32B,31B,32A,31Aに具備される払拭ローラは、吐出面17Y,17M,17C,17Kを払拭する第1払拭部材、又は第2払拭部材として機能する。
払拭装置32B,31B,32A,31Aとして図示した払拭ローラに付された矢印付きの曲線は、払拭ローラの回転駆動方向を示している。払拭部材の駆動方向には、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kと払拭ローラとの接触位置における払拭ローラの回転駆動方向の接線成分の方向が含まれる。
また、払拭部材の駆動方向は、払拭部材として図9等に図示したウエブ41B,40B,41A,40Aが適用される場合には、液体吐出ヘッド16M,16Kの吐出面17Y,17M,17C,17Kとウエブ41B,40B,41A,40Aとの接触位置における、ウエブ41B,40B,41A,40Aの走行方向が含まれる。なお、以下の説明において、既述の構成の説明は適宜省略する。
図11(A)は、払拭処理開始前の状態の模式図である。液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの長手方向における一方の端が、払拭装置32B,31B,32A,31Aの処理位置に到達している。また、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kはすべて非払拭位置に位置している。
図11(B)は、払拭対象の液体吐出ヘッド16M,16Kの下降の模式図である。図4に図示した昇降移動制御部126によって動作が制御される昇降移動部38は、図11(B)に図示した液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kのうち、次の工程で払拭対象となる液体吐出ヘッド16M,16Kを下降させて非払拭位置から払拭位置へ移動させる。同図における下向き矢印線は、液体吐出ヘッド16M,16Kの下降を表している。
図4に図示した払拭制御部122によって動作が制御される、図11(B)に図示した払拭装置31Bは、矢印線により図示した回転駆動方向へ払拭ローラを回転駆動させる。
同様に、図4に図示した払拭制御部122によって動作が制御される、図11(B)に図示した払拭装置31Aは、矢印線により図示した回転駆動方向へ払拭ローラを回転駆動させる。なお、駆動回転を停止させている払拭装置32A,32Aの払拭ローラを駆動回転させてもよい。
払拭装置31B,31Aの払拭ローラの駆動回転方向は、液体吐出ヘッド16M,16Kの吐出面17M,17Kと払拭ローラの周面との接触位置における接線成分の方向が、液体吐出ヘッド16M,16Kの移動方向と反対方向とされる。
一方向に走行させたウエブを用いて液体吐出ヘッド16M,16Kを払拭する払拭装置31B,31Aの態様では、ウエブの走行方向は、液体吐出ヘッド16M,16Kの吐出面17M,17Kとの接触位置において、液体吐出ヘッド16M,16Kの移動方向と反対方向とされる。
すなわち、液体吐出ヘッドの吐出面と払拭ローラの周面との接触位置における払拭ローラの回転方向の接線成分方向、又は液体吐出ヘッドの吐出面とウエブとの接触位置におけるウエブの走行方向を含む払拭部材の駆動方向は、払拭対象の液体吐出ヘッドと第1メンテナンス部、及び第2メンテナンス部との相対移動方向と反対方向とされる。
図11(C)は、液体吐出ヘッド16M,16Kの吐出面17M,17Kに対する往路方向の払拭処理の模式図である。図4に図示した払拭制御部122によって動作が制御される、図11(C)に図示した払拭装置31B、31Aを用いて、液体吐出ヘッド16M,16Kは吐出面17M,17Kに対する往路方向の払拭処理が施される。
図4に図示した移動制御部124によって動作が制御される移動部36を用いて、図11(C)に図示した液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを一括して往路方向へ移動させると、図4に図示した払拭制御部122によって動作が制御される、図11(C)に図示した払拭装置31B、31Aを用いて、液体吐出ヘッド16M,16Kは吐出面17M,17Kに対する往路方向の払拭処理が施される。一方、液体吐出ヘッド16Y,16Cは吐出面17Y,17Cの払拭処理が施されない。
図11(D)は、払拭対象の液体吐出ヘッドを切り換える際の昇降移動の模式図である。液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの他方の端が払拭装置32B,31B,32A,31Aの処理位置に到達すると、図4に図示した昇降移動制御部126によって動作が制御される昇降移動部38を用いて、図11(D)に図示した次の工程で非払拭対象となる液体吐出ヘッド16M,16Kを上昇させて払拭位置から非払拭位置へ移動させる。
また、図4に図示した昇降移動制御部126によって動作が制御される昇降移動部38を用いて、図11(D)に図示した次の工程で払拭対象となる液体吐出ヘッド16Y,16Cを下降させて非払拭位置から払拭位置へ移動させる。
同図における上向き矢印線は、液体吐出ヘッド16M,16Kの上昇を表し、下向き矢印線は、液体吐出ヘッド16Y,16Cの下降を表している。
図11(E)は、払拭対象の液体吐出ヘッド16Y,16Cの吐出面17Y,17Cに対する復路方向の払拭処理の模式図である。図4に図示した払拭制御部122によって動作が制御される、図11(E)に図示した払拭装置32B,32Aは、矢印線により図示した回転駆動方向へ払拭ローラを回転駆動させ、図4に図示した移動制御部124によって動作が制御される移動部36を用いて、図11(E)に図示した液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを一括して復路方向へ移動させると、図4に図示した払拭制御部122によって動作が制御される、図11(E)に図示した払拭装置32B,32Aを用いて、液体吐出ヘッド16Y,16Cは吐出面17Y,17Cに対する復路方向の払拭処理が施される。一方、液体吐出ヘッド16M,16Kの吐出面17M,17Kには払拭処理が施されない。
なお、液体吐出ヘッド16Y,16Cの吐出面17Y,17Cに対する復路方向の払拭処理の際に、払拭装置31B、31Aの払拭ローラの回転駆動を停止させずに、回転駆動させたままでもよい。
一方向に走行させたウエブを用いて液体吐出ヘッド16Y,16Cの吐出面17Y,17Cを払拭する払拭装置32B,32Aが用いられる態様では、ウエブの走行方向は、液体吐出ヘッド16Y,16Cの吐出面17Y,17Cとの接触位置において、液体吐出ヘッド16Y,16Cの移動方向と反対方向とされる。
図12(A)は、払拭装置32B,31B,32A,31Aの切換移動の模式図である。図12(A)には、図4に図示した切換制御部125によって動作が制御される切換部39を用いて、図12(A)に図示した払拭装置32B,31B,32A,31Aを一括して、払拭装置32Bの側へ、一装置分移動させた状態が図示されている。
すなわち、図4に図示した切換部39によって、図12(A)に図示した液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kと払拭装置32B,31B,32A,31Aとの対応関係が切り換えられ、払拭装置31Aの払拭対象は液体吐出ヘッド16Cとされ、払拭装置31Bの払拭対象は液体吐出ヘッド16Yとされる。
また、吐出面17Y,17M,17C,17Kが水平面に対して傾斜している場合には、吐出面17Y,17M,17C,17Kの傾斜角度に合わせて、払拭装置31B、31Aの払拭ローラの傾斜角度が調整される。ウエブを備えた払拭装置31B、31Aの態様では、吐出面17Y,17M,17C,17Kの傾斜角度に合わせてウエブの傾斜角度が調整される。
図12(A)に符号33Aを付して図示した矢印線は、払拭装置32B,31B,32A,31Aの切換移動方向である。払拭装置32B,31B,32A,31Aの切換移動の際に、図4に図示した昇降移動部38を用いて、図12(A)に図示した液体吐出ヘッド16Y,16Cを上昇させて、非払拭位置へ移動させてもよい。
図12(B)は、液体吐出ヘッド16Y,16Cの吐出面17Y,17Cに対する往路方向の払拭処理の模式図である。図4に図示した移動制御部124によって動作が制御される移動部36を用いて、図12(B)に図示した液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを一括して往路方向に移動させると、液体吐出ヘッド16Y,16Cは、図4に図示した払拭制御部122によって動作が制御される払拭装置31B、31Aを用いた吐出面17Y,17Cに対する往路方向の払拭処理が施される。
図12(C)は、払拭装置32B,31B,32A,31Aの切換移動、及び液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの昇降動作の模式図である。図4に図示した切換制御部125によって動作が制御される切換部39を用いて、図12(C)に図示した払拭装置32B,31B,32A,31Aを一括して、払拭装置31Aの側へ二装置分移動させた状態であり、図4に図示した昇降移動制御部126によって動作が制御される昇降移動部38を用いて、図12(C)に図示した次の工程で非払拭対象となる液体吐出ヘッド16Y,16Cを上昇させて非払拭位置へ移動させ、図4に図示した昇降移動制御部126によって動作が制御される昇降移動部38を用いて、図12(C)に図示した次の工程で払拭対象となる液体吐出ヘッド16M,16Kを下降させて払拭位置へ移動させた状態が図示されている。
図12(C)に符号33Bを付して図示した矢印線は、払拭装置32B,31B,32A,31Aの切換移動方向である。同図における上向き矢印線は、液体吐出ヘッド16Y,16Cの上昇を表し、下向き矢印線は、液体吐出ヘッド16M,16Kの下降を表している。
また、吐出面17Y,17M,17C,17Kが水平面に対して傾斜している場合には、吐出面17Y,17M,17C,17Kの傾斜角度に合わせて、払拭装置32B、32Aの払拭ローラの傾斜角度が調整される。ウエブを備えた払拭装置32B、32Aが用いられる態様では、吐出面17Y,17M,17C,17Kの傾斜角度に合わせてウエブの傾斜角度が調整される。
図12(D)は、液体吐出ヘッド16M,16Kの吐出面17M,17Kに対する復路方向の払拭処理の模式図である。
図4に図示した移動制御部124によって動作が制御される移動部36を用いて、図12(D)に図示した液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを一括して復路方向に移動させると、図4に図示した払拭制御部122によって動作が制御される払拭装置32B、32Aを用いて、液体吐出ヘッド16M,16Kは吐出面17M,17K対する復路方向の払拭処理が施される。
図11(A)から図12(D)に図示した工程を経て、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの吐出面17Y,17M,17C,17Kに対して、長手方向に沿う往復の払拭処理が施される。
図11(A)には、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kが非払拭位置に位置する状態で、図4に図示した昇降移動制御部126によって動作が制御される昇降移動部38を用いて、図11(A)に図示した払拭装置32B,31B,32A,31Aの処理領域に移動させる態様を例示したが、払拭対象の液体吐出ヘッドを下降させるタイミングは、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを描画位置から払拭装置32B,31B,32A,31Aの処理位置まで移動させる間の任意のタイミングとすることができる。
図13は、払拭処理の第1実施形態のフローチャートである。ステップS10において払拭処理が開始されると、ステップS12の第1メンテナンス工程が実行される。
第1メンテナンス工程は、第1払拭部材を具備する第1メンテナンス部として機能する払拭装置31B,31Aを用いた往路方向の払拭処理である。第1メンテナンス工程は、図11(C)に図示した払拭装置31B、31Aを用いた液体吐出ヘッド16M,16Kの吐出面17M,17Kに対する往路方向の払拭処理、及び図12(B)に図示した払拭装置31B、31Aを用いた液体吐出ヘッド16Y,16Cの吐出面17Y,17Cに対する往路方向の払拭処理が含まれる。
図13の第1メンテナンス工程が終了すると、ステップS13の第1判断工程に進み、他の処理へ移行するか否かが判断される。ステップS13のyes判定である他の処理に移行すると判断されると、ステップS14に進み、他の処理へ移行する。他の処理の例として、描画が挙げられる。
ステップS13のno判定である払拭処理を継続すると判断されると、ステップS15の第1切換工程に進む。第1切換工程は、第1メンテナンス工程と第2メンテナンス工程との切り換えを行う工程である。第1切換工程は、図4に図示した昇降移動部38による図11(D)に図示した液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの昇降移動、図4に図示した昇降移動部38による図12(C)に図示した液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの昇降移動、及び図4に図示した切換部39による図12(C)に図示した払拭装置32B,31B,32A,31Aの切換移動が含まれる。
図13の切換工程が終了すると、ステップS16の第2メンテナンス工程に進む。第2メンテナンス工程は、第2払拭部材を具備する第2メンテナンス部として機能する払拭装置32B,32Aを用いた復路方向の払拭処理が含まれる。第2メンテナンス工程は、図11(E)に図示した払拭装置32B、32Aを用いた液体吐出ヘッド16Y,16Cの吐出面17Y,17Cに対する復路方向の払拭処理、及び図12(D)に図示した払拭装置32B、32Aを用いた液体吐出ヘッド16M,16Kの吐出面17M,17Kに対する復路方向の払拭処理が含まれる。
図13の第2メンテナンス工程が終了すると、ステップS17の第2判断工程に進み、他の処理へ移行するか否かが判断される。ステップS17のyes判定である他の処理に移行すると判断されると、ステップS18に進み、他の処理へ移行する。他の処理の例として、描画が挙げられる。
ステップS13のno判定である払拭処理を継続すると判断されると、ステップS19の第3判断工程に進む。ステップS19の第3判断工程では、すべての液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの吐出面17Y,17M,17C,17Kに対して、往復方向の払拭処理が施されたか否かが判断される。
ステップS19のno判定である、すべての液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの吐出面17Y,17M,17C,17Kに対して、往復方向の払拭処理が施されていないと判断されると、ステップS20の第2切換工程に進む。
ステップS20の第2切換工程では、第2メンテナンス工程と第1メンテナンス工程との切り換えを行う工程である。ステップS20に示す第2切換工程には、図4に図示した切換部39を用いた図12(A)に図示した払拭装置32B,31B,32A,31Aの切換移動が含まれる。
図13のステップS20の第2切換工程が終了すると、ステップS12に進み、第1メンテナンス工程、第1判断工程、第1切換工程、第2メンテナンス工程、第2判断工程、第3判断工程が繰り返し実行される。
ステップS19のyes判定である、すべての液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの吐出面17Y,17M,17C,17Kに対して、往復方向の払拭処理が施されていると判断されると、ステップS22に進み、払拭処理は終了される。
本実施形態では、第1メンテナンス工程、第1切換工程、第2メンテナンス工程の順に各工程が実行される態様を例示したが。第1メンテナンス工程が実行される順序と、第2メンテナンス工程が実行される順序を入れ換えてもよい。
複数回の第1メンテナンス工程を実行する際に、前回の第1メンテナンス工程と次回の第1メンテナンス工程との間に第2メンテナンス工程が実行される態様を例示したが、複数回の第1メンテナンス工程を連続して実行してもよい。また、複数回の第2メンテナンス工程を連続して実行してもよい。
本実施形態では、液体吐出装置として機能するインクジェット記録装置1を例に挙げて、インクジェット記録装置1に具備される液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの吐出面17Y,17M,17C,17Kの払拭処理について説明した。
液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの吐出面17Y,17M,17C,17Kに対する払拭処理は液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kのメンテナンスの一態様である。
本実施形態で説明したインクジェット記録装置1について、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの吐出面17Y,17M,17C,17Kに対する払拭処理に関する構成を抽出して、液体吐出ヘッドのメンテナンス装置を構成することも可能である。
例えば、第1メンテナンス部として機能する払拭装置31A,31B、及び第2メンテナンス部として機能する払拭装置32B,32Aを具備する払拭部30、移動部36、切換部39、払拭制御部122、移動制御部124、切換制御部125を備えた液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kのメンテナンス装置を構成することができる。
また、第1払拭部材を具備する第1メンテナンス部として機能する払拭装置31B,31Aを用いて液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの吐出面17Y,17M,17C,17Kに対する往路方向の払拭を行う第1メンテナンス工程、第2払拭部材を具備する第2メンテナンス部として機能する払拭装置32B,32Aを用いて液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの吐出面17Y,17M,17C,17Kに対する復路方向の払拭を行う第2メンテナンス工程、第1メンテナンス工程と第2メンテナンス工程とを切り換える切換工程、を含む液体吐出ヘッドのメンテナンス方法を構成することができる。
上記の如く構成されたメンテナンス装置、メンテナンス方法、及び液体吐出装置によれば、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの払拭方向を切り換える際に、切換部39を用いて、払拭装置32B,31B,32A,31Aの配置方向である切換移動方向に、払拭装置32B,31B,32A,31Aを一括して、一装置分の整数倍の単位で移動させて、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kと払拭装置32B,31B,32A,31Aとの対応関係を切り換える構成を採用することで、払拭装置32B,31B,32A,31Aを具備する払拭部30を回転させて液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの払拭方向を切り換える場合と比較して、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの払拭方向を切り換える構成を簡素化することができ、払拭部の省スペース化に寄与し、装置全体の省スペース化に寄与する。
また、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの払拭方向の切り換えに要する期間を短縮化することができ、装置全体としてのコストダウンに寄与する。
払拭対象の液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを、払拭装置32B,31B,32A,31Aに具備される払拭部材であるウエブ、又は払拭ローラに接触させ、非払拭対象の液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kと払拭部材とを非接触とすることで、非払拭対象の液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kについて、吐出面17Y,17M,17C,17Kに形成された撥液膜の摩耗が抑制される。
[払拭処理の第2実施形態の説明]
図14(A)から(E)、及び図15(A)から(D)を用いて、払拭処理の第2実施形態について説明する。以下に説明する第2実施形態は、液体吐出ヘッドの数を超える数の払拭装置を具備する態様である。
以下に説明する第2実施形態において、既述の第1実施形態と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は適宜省略する。
図14(A)から(E)、及び図15(A)から(D)は、払拭処理の説明図である。本実施形態に適用される払拭部は、第1実施形態に適用される払拭部30に対して、第1払拭部材である払拭ローラを具備する第1メンテナンス部として機能する払拭装置31Cが追加される。
追加された払拭装置31Cは、第2払拭部材を具備する第2メンテナンス部として機能する払拭装置32Bの、第1メンテナンス部として機能する払拭装置31Bと反対側に配置される。
図14(A)は、払拭処理開始前の状態の模式図であり、図11(A)に対応している。図14(B)は、払拭対象の液体吐出ヘッド16M,16Kの下降の模式図であり、図11(B)に対応している。図4に図示した昇降移動制御部126によって動作が制御される昇降移動部38を用いて、図14(B)に図示した次の工程で払拭対象となる液体吐出ヘッド16M,16Kを下降させて非払拭位置から払拭位置へ移動させる。
図14(C)は、払拭対象の液体吐出ヘッド16M,16Kの吐出面17M,17Kに対する往路方向の払拭処理の模式図であり、図11(C)に対応している。
図14(D)は、払拭対象の液体吐出ヘッドを切り換える際の昇降移動の模式図であり、図11(D)に対応している。図4に図示した昇降移動制御部126によって動作が制御される昇降移動部38を用いて、図14(D)に図示した次の工程で非払拭対象となる液体吐出ヘッド16M,16Kを上昇させて払拭位置から非払拭位置へ移動させる。また、図4に図示した昇降移動制御部126によって動作が制御される昇降移動部38を用いて、図14(D)に図示した次の工程で払拭対象となる液体吐出ヘッド16Y,16Cを下降させて非払拭位置から払拭位置へ移動させる。
図14(E)は、払拭対象の液体吐出ヘッド16Y,16Cに対する復路方向の払拭処理の模式図であり、図11(E)に対応している。
図15(A)は、払拭装置31C,32B,31B,32A,31Aの切換移動の模式図であり、図12(A)に対応している。
図15(A)には、図4に図示した切換制御部125によって動作が制御される切換部39を用いて、図15(A)に図示した払拭装置31C,32B,31B,32A,31Aを一括して、払拭装置31Aの側へ一装置分移動させた状態が図示されている。払拭装置31Bの払拭対象は液体吐出ヘッド16Cであり、払拭装置31Cの払拭対象は液体吐出ヘッド16Yである。
図15(A)に二点破線を用いて図示した払拭装置31Cは、切換移動前の払拭装置31Cを表している。また、符号33Bを付した矢印線により切換移動方向を図示する。
図15(B)は、払拭対象の液体吐出ヘッド16Y,16Cの吐出面17Y,17Cに対する往路方向の払拭処理の模式図であり、図12(B)に対応している。
図15(C)は、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの昇降移動の模式図であり、図12(C)に対応している。図4に図示した昇降移動制御部126によって動作が制御される昇降移動部38を用いて、図15(C)に図示した次の工程で非払拭対象となる液体吐出ヘッド16Y,16Cを上昇させて払拭位置から非払拭位置へ移動させ、図4に図示した昇降移動制御部126によって動作が制御される昇降移動部38を用いて、図15(C)に図示した次の工程で払拭対象となる液体吐出ヘッド16M,16Kを下降させて非払拭位置から払拭位置へ移動させる。
図15(C)に図示した液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの昇降移動では、図12(C)に図示した払拭装置32B,31B,32A,31Aの切換移動、及び液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの昇降動作と比較して、払拭装置31C,32B,31B,32A,31Aの切換移動を行う必要がなく、処理期間の短縮化に寄与する。
図15(D)は、払拭対象の液体吐出ヘッド16M,16Kの吐出面17M,17Kに対する復路方向の払拭処理の模式図であり、図12(D)に対応している。
図14(A)から(E)、及び図15(A)から(D)に図示した各工程を経て、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの吐出面17Y,17M,17C,17Kに対して、長手方向に沿う往復の払拭処理が施される。
払拭処理の第2実施形態によれば、払拭処理の第1実施形態と比較して、払拭装置31C,32B,31B,32A,31Aの切換移動の回数を減らすことができ、かつ、一回の切換移動において二装置分の切換移動を行うことがなく、切換部39の処理期間の短縮化、切換部39の動作負荷の低減化に寄与し、切換制御部125の制御負荷の低減化に寄与する。
本実施形態では、第1払拭部材を具備する第1メンテナンス部として機能する払拭装置31Cを追加する態様を例示したが、第2払拭部材を具備する第1メンテナンス部として機能する払拭装置を追加する態様も可能である。
本実施形態には、図13に図示したフローチャートを適用することができるので、ここでの説明は省略する。図13にステップS12として図示した第1メンテナンス工程は、図14(C)、図15(B)に図示した往路方向の払拭処理が含まれる。
図13にステップS15として図示した第1切換工程は、図14(D)、図15(C)に図示した液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの昇降移動が含まれる。
図13にステップS16として図示した第2メンテナンス工程は、図14(E)、図15(D)に図示した復路方向の払拭処理が含まれる。
図13にステップS20として図示した第2切換工程は、図15(A)に図示した払拭装置32B,31B,32A,31Aの切換移動が含まれる。
[払拭処理の第3実施形態の説明]
図16(A)から(E)、図17(A)から(D)、図18(A)から(E)、及び図19(A)から(E)を用いて、払拭処理の第3実施形態について説明する。以下に説明する第3実施形態は、液体吐出ヘッドの数未満の数の払拭装置を具備する態様である。
以下に説明する第3実施形態において、第1実施形態、及び第2実施形態と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は適宜省略する。
本実施形態に適用される払拭部は、第1実施形態に適用される払拭部30に対して、第2払拭部材を具備する第2メンテナンス部として機能する払拭装置32Bが省略される。
図16(A)に示す払拭処理開始前の状態は図11(A)に対応し、図16(B)に示す液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの昇降移動は図11(B)に対応し、図16(C)に示す払拭対象の液体吐出ヘッド16M,16Kに対する往路方向の払拭処理は図11(C)に対応しているので、ここでの説明は省略する。
図16(D)に示す液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの昇降移動では、図4に図示した昇降移動制御部126によって動作が制御される昇降移動部38を用いて、図16(D)に図示した次の工程で非払拭対象となる液体吐出ヘッド16M,16Kを上昇させて払拭位置から非払拭位置へ移動させる。
また、図4に図示した昇降移動制御部126によって動作が制御される昇降移動部38を用いて、図16(D)に図示した次の工程で払拭対象となる液体吐出ヘッド16Cを下降させて非払拭位置から払拭位置へ移動させ、次の工程でも非払拭対象のままである液体吐出ヘッド16Yは下降させずに非払拭位置から移動させない。
図16(E)に示す払拭対象の液体吐出ヘッド16Cに対する復路方向の払拭処理では、図4に図示した払拭制御部122によって動作が制御される、図16(E)に図示した払拭装置32Aを用いて、払拭対象の液体吐出ヘッド16Cは吐出面17Cに対する復路方向の払拭処理が施される。
図17(A)に示す液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの昇降移動では、図4に図示した昇降移動制御部126によって動作が制御される昇降移動部38を用いて、図17(A)に図示した次の工程で非払拭対象となる液体吐出ヘッド16Cを上昇させて払拭位置から非払拭位置へ移動させる。
図17(B)に示す液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの往路方向の移動では、払拭処理をせずに、図4に図示した移動制御部124によって動作が制御される移動部36を用いて、図17(B)に図示した液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを一括して往路方向へ移動させる。
図17(C)に示す払拭対象の液体吐出ヘッド16Yの下降では、図4に図示した昇降移動制御部126によって動作が制御される昇降移動部38を用いて、図17(C)に図示した次の工程で払拭対象となる液体吐出ヘッド16Yを下降させて非払拭位置から払拭位置へ移動させる。また、図17(C)に示す払拭装置31B,32A,31Aの切換移動では、図4に図示した切換制御部125によって動作が制御される切換部39を用いて、図17(C)に図示した払拭装置31B,32A,31Aを一括して払拭装置31Bの側へ二装置分移動させる。
図17(C)に二点破線を用いて図示した払拭装置31A,32Aは、切換移動前の払拭装置31A,32Aを表している。符号33Aを付して図示した矢印線は、払拭装置31A,32Aの切換移動方向を表している。
図17(D)に示す払拭対象の液体吐出ヘッド16Yに対する復路方向の払拭処理では、図4に図示した払拭制御部122によって動作が制御される、図17(D)に図示した払拭装置32Aを用いて、払拭対象の液体吐出ヘッド16Yは吐出面17Yに対する復路方向の払拭処理が施される。
図17(D)に示す払拭対象の液体吐出ヘッド16Yに対する復路方向の払拭処理が終了すると、図4に図示した昇降移動制御部126によって動作が制御される昇降移動部38を用いて、図17(D)に図示した次の工程で非払拭対象となる液体吐出ヘッド16Yを上昇させて払拭位置から非払拭位置へ移動させ、図4に図示した切換制御部125によって動作が制御される切換部39を用いて、図17(D)に図示した払拭装置31B,32A,31Aを一括して払拭装置31Aの側へ一装置分移動させる。
図18(A)は、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを非払拭位置へ移動させ、払拭装置31B,32A,31Aを図17(D)に図示した状態から払拭装置31Aの側へ一装置分移動させた状態である。
図18(B)に示す払拭対象の液体吐出ヘッド16Y,16Cの下降では、図4に図示した昇降移動制御部126によって動作が制御される昇降移動部38を用いて、図18(B)に図示した次の工程で払拭対象となる液体吐出ヘッド16Y,16Cを下降させて非払拭位置から払拭位置へ移動させる。
図18(C)に示す払拭対象の液体吐出ヘッド16Y,16Cの吐出面17Y,17Cに対する往路方向の払拭処理では、図4に図示した払拭制御部122によって動作が制御される、図18(C)に図示した払拭装置31B、31Aを用いて、払拭対象の液体吐出ヘッド16Y,16Cは吐出面17Y,17Cに対する往路方向の払拭処理が施される。
図18(D)に示す液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの昇降移動では、図4に図示した昇降移動制御部126によって動作が制御される昇降移動部38を用いて、図18(D)に図示した次の工程で非払拭対象となる液体吐出ヘッド16Y,16Cを上昇させて払拭位置から非払拭位置へ移動させ、図4に図示した昇降移動制御部126によって動作が制御される昇降移動部38を用いて、図18(D)に図示した次の工程で払拭対象となる液体吐出ヘッド16Mを下降させて非払拭位置から払拭位置へ移動させる。
図18(E)に示す払拭対象の液体吐出ヘッド16Mに対する復路方向の払拭処理では、図4に図示した払拭制御部122によって動作が制御される、図18(E)に図示した払拭装置32Aを用いて、払拭対象の液体吐出ヘッド16Mは吐出面17Mに対する復路方向の払拭処理が施される。
図19(A)に示す非払拭対象の液体吐出ヘッド16Mの上昇では、図4に図示した昇降移動制御部126によって動作が制御される昇降移動部38を用いて、図19(A)に図示した次の工程で非払拭対象となる液体吐出ヘッド16Mを上昇させて払拭位置から非払拭位置へ移動させる。
図19(B)に示す液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの往路移動工程では、払拭処理をせずに液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを一括して往路方向へ移動させる。
図19(C)に示す払拭装置31B,32A,31Aの切換移動では、図4に図示した切換制御部125によって動作が制御される切換部39を用いて、図19(C)に図示した払拭装置31B,32A,31Aを一括して払拭装置31Aの側へ二装置分移動させる。
図19(C)に二点破線を用いて図示した払拭装置31B,32Aは、切換移動前の払拭装置31B,32Aを表している。符号33Bを付して図示した矢印線は、払拭装置31B,32Aの切換移動方向を表している。
図19(D)に示す払拭対象の液体吐出ヘッド16Kの下降では、図4に図示した昇降移動制御部126によって動作が制御される昇降移動部38を用いて、図19(D)に図示した次の工程で払拭対象となる液体吐出ヘッド16Kを下降させて非払拭位置から払拭位置へ移動させる。
図19(E)に示す払拭対象の液体吐出ヘッド16Kに対する復路方向の払拭処理では、図4に図示した払拭制御部122によって動作が制御される、図19(E)に図示した払拭装置32Aを用いて、払拭対象の液体吐出ヘッド16Kは吐出面17Kに対する復路方向の払拭処理が施される。
図16(A)から(E)、図17(A)から(D)、図18(A)から(E)、及び図19(A)から(E)に図示した工程を経て、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの吐出面17Y,17M,17C,17Kに対して、長手方向に沿う往復の払拭処理が施される。
図20は、払拭処理の第3実施形態のフローチャートである。図20中、図13と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図20に示すフローチャートでは、図13に示すフローチャートのステップS16のステップ番号が、16Aに変更される。図20のステップS16Aは第1メンテナンス工程であり、第1払拭部材を具備する第1メンテナンス部として機能する払拭装置31A,31Bを用いた往路方向の払拭処理である。図20のステップS16Aは、図13のステップS16と同一の処理が施される工程である。
図20に示すフローチャートでは、図13に示すフローチャートのステップS17とステップS18との間に、ステップS102、ステップS104、ステップS106、及びステップS16Bが追加される。
ステップS102は、ステップS16Aの第2メンテナンス工程とステップS104の液体吐出ヘッド移動工程とを切り換える第3切換工程であり、図17(A)に図示した液体吐出ヘッド16Cの上昇、図19(A)に図示した液体吐出ヘッド16Mの上昇が含まれる。
ステップS104は、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを一括して往路方向へ移動させる工程であり、すべての液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kが非払拭位置に位置した状態で、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを一括して往路方向へ移動させる。
液体吐出ヘッド移動工程は、図17(B)に図示した液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの往路方向への移動、図19(B)に図示した液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの往路方向への移動が含まれる。
ステップS106は、液体吐出ヘッド移動工程とステップS16Bの第2メンテナンス工程とを切り換える第4切換工程であり、図4に図示した昇降移動部38による図17(C)に図示した液体吐出ヘッド16Yの下降、図4に図示した昇降移動部38による図17(C)に図示した払拭装置31B,32A,31Aの切換移動、図4に図示した切換部39による図19(C)に図示した液体吐出ヘッド16Kの下降、及び図4に図示した昇降移動部38による図19(C)に図示した払拭装置31B,32A,31Aの切換移動が含まれる。
ステップS16Bは、液体吐出ヘッド移動工程の後に実行される第2メンテナンス工程であり、第2払拭部材を具備する第2メンテナンス部として機能する払拭装置32Aを用いた復路方向の払拭処理である。
ステップS16Bの第2メンテナンス工程は、図17(D)に図示した払拭装置32Aによる液体吐出ヘッド16Yの吐出面17Yに対する復路方向の払拭処理、図19(E)に図示した払拭装置32Aによる液体吐出ヘッド16Kの吐出面17Kに対する復路方向の払拭処理が含まれる。
すなわち、払拭処理の第3実施形態では、第2払拭部材を具備する第2メンテナンス部として機能する払拭装置が一つとなるので、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの往路方向への移動をはさんで、第2メンテナンス工程が二回に分けて実行される。
払拭処理の第3実施形態によれば、払拭処理の第1、第2実施形態と比較して、払拭装置の数を減らすことができ、払拭装置の配置スペースの省スペース化、及び装置全体の小型化に寄与する。
本実施形態では、第2払拭部材を具備する第2メンテナンス部として機能する払拭装置を二つから一つへ減らしたが、第1払拭部材を具備する第1メンテナンス部として機能する払拭装置を二つから一つへ減らしてもよい。
以上説明した払拭処理の第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態では、一連の工程として第1メンテナンス工程、第2メンテナンス工程が実行される態様を例示したが、第1メンテナンス工程と第2メンテナンス工程とを分離してもよい。
また、複数回の第1メンテナンス工程を分離してもよいし、複数回の第2メンテナンス工程を分離してもよい。
例えば、図11(C)に図示して1回目の往路方向の払拭処理、描画、図11(E)に図示した1回目の復路方向の払拭処理、描画、図12(B)に図示した2回目の往路方向の払拭処理、描画、図12(D)に図示した2回目の復路方向の払拭処理といった態様も可能である。
上記の例において、往路方向の払拭、復路方向の払拭、描画を適宜入れ換えてもよいし、適宜描画を省略してもよい。また、往路方向の払拭処理の後にキャップ部34を用いた処理を追加してもよい。
[変形例]
図21、図22は、払拭処理の変形例の説明図である。図21、図22中、図11から図19と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は適宜省略する。以下に払拭処理の第1実施形態の変形例について説明するが、本応用例は第2実施形態、第3実施形態に対して適用可能である。
以下に説明する第1実施形態の変形例では、非払拭対象の液体吐出ヘッドを非払拭位置へ移動させずに払拭位置のまま、払拭対象の液体吐出ヘッドに対して往路方向の払拭処理、及び復路方向の払拭処理が施される。
図21(A)は払拭処理開始前の状態の模式図であり、図11(A)に対応する。図21(B)は、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの下降の模式図であり、図4に図示した昇降移動制御部126によって動作が制御される昇降移動部38を用いて、図21(B)に図示した液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを下降させて非払拭位置から払拭位置へ移動させる。
図21(C)は液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの吐出面17Y,17M,17C,17Kに対する往路方向の払拭処理の模式図である。図4に図示した払拭制御部122によって動作が制御される、図21(C)に図示した払拭装置32B,31B,32A,31Aを用いて、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kは吐出面17Y,17M,17C,17Kに対する往路方向の払拭処理が施される。
図21(D)は液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kに対する復路方向の払拭処理の模式図である。図4に図示した払拭制御部122によって動作が制御される、図21(D)に図示した払拭装置32B,31B,32A,31Aを用いて、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kは吐出面17Y,17M,17C,17Kに対する復路方向の払拭処理が施される。
図22(A)は、払拭装置32B,31B,32A,31Aの切換移動の模式図であり、図12(A)に対応する。図22(B)は、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの吐出面17Y,17M,17C,17Kに対する往路方向の払拭処理の模式図である。
図22(C)は、払拭装置32B,31B,32A,31Aの切換移動の模式図であり、図12(C)に対応する。図22(D)は液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kに対する復路方向の払拭処理の模式図である。
本変形例では、液体吐出ヘッドの移動方向と、液体吐出ヘッドと払拭部材との接触位置における払拭部材の駆動方向が同一方向となるものが含まれているが、液体吐出ヘッドの移動方向と、液体吐出ヘッドと払拭部材との接触位置における払拭部材の駆動方向とを同一方向としても、一定の効果を得ることができる。
液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kについて、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの移動方向と、払拭部材の駆動方向とを反対方向として、往復方向の払拭処理が施される点で、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
変形例によれば、払拭位置と非払拭位置との間の液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kの昇降移動を省略することができるので、液体吐出ヘッド16Y,16M,16C,16Kを昇降させる構成を簡素化することができ、処理期間を短縮化することができる。
[その他の構成例]
払拭装置の数は、二つ以上であればよい。すなわち、第1払拭部材を具備する払拭装置を少なくとも一つ、第2払拭部材を具備する払拭装置を少なくとも一つ備えていればよい。
払拭装置の配置は、直線状の配置に限定されず非直線状の配置でもよい。非直線状の配置例として曲線状が挙げられる。切換部の構成を考慮すると、直線状又は曲線状の配置が好ましい。
液体吐出装置として、インクジェット方式の画像形成を行うインクジェット記録装置を例示したが、インクジェット方式の液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置に広く適用することができる。
液体吐出ヘッドとしてフルライン型を例示したが、短尺のシリアル型ヘッドにも適用可能である。
以上説明したメンテナンス装置、メンテナンス方法、及び液体吐出装置は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更、追加、削除をすることが可能である。また、上述した各実施形態、変形例を適宜組み合わせることも可能である。