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JP6151962B2 - 繊維強化複合体 - Google Patents

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Description

本発明は、繊維強化複合体に関する。
省エネルギーの観点から、近年、自動車、航空機、鉄道車両などの分野においては、軽量性に劣る金属材料の代わりに、繊維強化プラスチックなどの高強度素材と、合成樹脂発泡シートなどの軽量芯材とを複合化させてなる繊維強化複合体を用いる動きが強くなっており、熱可塑性樹脂を発泡させて得られる軽量で且つ衝撃吸収性及び機械的強度に優れた繊維強化複合体を製造することが企図されている。
又、特許文献1には、芯材と、該芯材の両面に配される強化繊維にマトリックス樹脂が含浸された繊維強化樹脂を含む表皮材とから構成されるサンドイッチパネルにおいて、前記表皮材中の強化繊維が引張弾性率が200〜850GPaの範囲内の強化繊維を含み、該表皮材中の強化繊維含有率が40〜80重量%の範囲内であり、前記芯材にポリプロピレンまたはポリメタクリルイミドのいずれかの発泡性樹脂を使用するとともに、前記芯材と前記表皮材とからなる積層体を加熱、加圧同時成形したサンドイッチパネルの全体厚みが0.5〜5mmの範囲内である繊維強化樹脂製サンドイッチパネルが開示されている。
特許文献1は、段落番号〔0019〕に芯材に用いられる熱可塑性樹脂が例示されているが、汎用の熱可塑性樹脂を単に列記しているに過ぎず、実施例においては、ポリプロピレン発泡シート又はポリメタクリルイミド発泡シートを用いている。
しかしながら、ポリプロピレン発泡シートは耐熱性が不十分であり、表皮材に含まれているマトリックス樹脂との接着性が低く、繊維強化複合体の耐衝撃性が低いという問題点を有しており、ポリメタクリルイミド発泡シートは、脆性が高いので、繊維強化複合体の耐衝撃性が低いという問題点を有している。
特開2005−313613号公報
本発明は、耐熱性及び耐衝撃性に優れた繊維強化複合体を提供する。
本発明の繊維強化複合体Aは、平均気泡径が10〜400μmで且つ接触角が30〜90°である合成樹脂発泡シート1と、この合成樹脂発泡シートの表面に積層一体化された繊維強化プラスチック層2とを有することを特徴とする。
合成樹脂発泡シート1を構成している合成樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂などが挙げられる。なお、合成樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
ポリカーボネート樹脂としては、例えば、ジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、ジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体が挙げられ、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィドなどのジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類などが挙げられる。
変性ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテルとポリスチレン系樹脂との混合物、ポリフェニレンエーテルにスチレン系モノマーをグラフト共重合してなる変性ポリフェニレンエーテル、この変性ポリフェニレンエーテルとポリスチレン系樹脂との混合物、フェノール系モノマーとスチレン系モノマーとを銅(II) のアミン錯体などの触媒存在下で酸化重合させて得られるブロック共重合体、このブロック共重合体とポリスチレン系樹脂との混合物などが挙げられる。なお、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
ポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6,12、ナイロン12,12、ナイロン4,6などが挙げられる。ポリアミド樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。ポリアミド樹脂は、例えば、ジアミン、ジカルボン酸、ω−アミノ−ω′カルボン酸の重縮合又は環状ラクタムの開環重合などによって製造される。
上記ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、フェニレンジアミン、メタキシリレンジアミンなどが挙げられる。
上記ジカルボン酸としては、例えば、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、フマル酸、フタル酸、キシリレンジカルボン酸などが挙げられる。
上記ω−アミノ−ω′カルボン酸としては、例えば、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などが挙げられる。
上記環状ラクタムとしては、例えば、ε−カプロラクタム、ω−エナントラクタム、ω−ラウリルラクタムなどが挙げられる。
熱可塑性ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸と二価アルコールとが、縮合反応を行った結果得られた高分子量の線状ポリエステルである。熱可塑性ポリエステル樹脂としては、例えば、芳香族ポリエステル樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。
芳香族ポリエステル樹脂とは、芳香族ジカルボン酸成分とジオール成分とを含むポリエステルであり、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどが挙げられ、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。なお、芳香族ポリエステル樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
ポリエチレンテレフタレートは架橋剤によって架橋されていてもよい。架橋剤としては、公知のものが用いられ、例えば、無水ピロメリット酸などの酸二無水物、多官能エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物などが挙げられる。なお、架橋剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
ポリエチレンテレフタレートを架橋剤によって架橋する場合には、押出機にポリエチレンテレフタレートと共に架橋剤を供給すればよい。押出機に供給する架橋剤の量は、少ないと、ポリエチレンテレフタレートの溶融時の溶融粘度が小さくなりすぎて、破泡してしまうことがあり、多いと、ポリエチレンテレフタレートの溶融時の溶融粘度が大きくなりすぎて、合成樹脂発泡シートを押出発泡によって製造する場合には押出発泡が困難となることがあるので、ポリエチレンテレフタレート100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、0.1〜1重量部がより好ましい。
なお、芳香族ポリエステル樹脂は、芳香族ジカルボン酸成分及びジオール成分以外に、例えば、トリメリット酸などのトリカルボン酸、ピロメリット酸などのテトラカルボン酸などの三価以上の多価カルボン酸やその無水物、グリセリンなどのトリオール、ペンタエリスリトールなどのテトラオールなどの三価以上の多価アルコールなどを構成成分として含有していてもよい。
又、芳香族ポリエステル樹脂は、使用済のペットボトルなどから回収、再生したリサイクル材料を用いることもできる。芳香族ポリエステル樹脂は、PCT樹脂(ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート)などと混合させて用いてもよい。
脂肪族ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリ乳酸系樹脂が挙げられる。ポリ乳酸系樹脂としては、乳酸がエステル結合により重合した樹脂を用いることができ、商業的な入手容易性及びポリ乳酸系樹脂粒子への発泡性付与の観点から、D−乳酸(D体)及びL−乳酸(L体)の共重合体、D−乳酸又はL−乳酸のいずれか一方の単独重合体、D−ラクチド、L−ラクチド及びDL−ラクチドからなる群から選択される1又は2以上のラクチドの開環重合体が好ましい。なお、ポリ乳酸系樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
ポリ乳酸系樹脂は、成形工程及び得られる繊維強化複合体の物性に影響を与えない限り、乳酸以外の単量体成分として、例えば、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸などの脂肪族ヒドロキシカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、トリメシン酸、プロパントリカルボン酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸などの脂肪族多価カルボン酸;エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリットなどの脂肪族多価アルコールなどを含有していてもよい。
ポリ乳酸系樹脂は、成形工程及び得られる繊維強化複合体の物性に影響を与えない限り、アルキル基、ビニル基、カルボニル基、芳香族基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基などのその他の官能基を含んでいてもよい。ポリ乳酸系樹脂はイソシアネート系架橋剤などによって架橋されていてもよく、エステル結合以外の結合手により結合していてもよい。
合成樹脂発泡シート1は、その平均気泡径が10〜400μmに限定され、100〜300μmが好ましく、150〜200μmがより好ましい。この理由は、繊維強化複合体Aに衝撃力が加わった場合に、合成樹脂発泡シート1の気泡壁の一部が衝撃力によって破壊し、この気泡壁の破壊が隣接する気泡壁に次々と伝播して生じることがある。この時、合成樹脂発泡シートの平均気泡径が大きすぎると、合成樹脂発泡シート内に存在する気泡の数が少なくなる。合成樹脂発泡シートに衝撃力が加わって一部の気泡壁が破壊されると、上述のように、気泡壁の破壊が隣接する気泡壁に次々と伝播し、気泡の数が少ないために、気泡壁の破壊が後述する合成樹脂発泡シートと繊維強化プラスチック層との界面に達しやすくなる。合成樹脂発泡シートの気泡壁の破壊が、合成樹脂発泡シートと繊維強化プラスチック層との界面に達すると、合成樹脂発泡シートの表面が破壊される結果、合成樹脂発泡シートと繊維強化プラスチック層との一体化が破壊され、繊維強化プラスチック層が合成樹脂発泡シートの表面から剥離し、繊維強化複合体の耐衝撃性が低下するという問題を生じる。
一方、合成樹脂発泡シート1の平均気泡径が小さすぎると、合成樹脂発泡シートに含まれている気泡の数が多くなりすぎ、気泡壁の厚みが薄くなりすぎる結果、合成樹脂発泡シートに加えられる衝撃力によって気泡壁が破壊され易くなり、気泡壁の破壊が後述する合成樹脂発泡シートと繊維強化プラスチック層との界面に達しやすくなる。その結果、上記と同様の理由で、繊維強化プラスチック層が合成樹脂発泡シートの表面から剥離し、繊維強化複合体の耐衝撃性が低下するという問題を生じる。
合成樹脂発泡シート1の平均気泡径は、次の試験方法にて測定した。図1に示すように、合成樹脂発泡シートをその幅方向の中央部においてMD方向(押出方向)に沿い且つ発泡シート面に対して垂直な面αで切断し、切断面を走査型電子顕微鏡で18〜20倍(場合によっては200倍)に拡大して撮影し、拡大写真Aを得る。なお、拡大写真Aの大きさとしては、A4の大きさの1/4程度の大きさとする。
合成樹脂発泡シートをTD方向(幅方向)に沿い且つ発泡シート面に対して垂直な面βで切断し、切断面を走査型電子顕微鏡で18〜20倍(場合によっては200倍)に拡大して撮影し、拡大写真Bを得る。なお、拡大写真Bの大きさとしては、A4の大きさの1/4程度の大きさとする。
合成樹脂発泡シートをMD方向及びTD方向に直交する面γで切断し、切断面を走査型電子顕微鏡で18〜20倍(場合によっては200倍)に拡大して撮影し、拡大写真Cを得る。なお、拡大写真Cの大きさとしては、A4の大きさの1/4程度の大きさとする。
印刷した写真上に60mmの直線を描いた時に、この直線上に存在する気泡の数が10〜20個程度となるように上記走査型電子顕微鏡での拡大倍率を調整する。
合成樹脂発泡シートの任意の2箇所において拡大写真A〜Cをそれぞれ撮影し、拡大写真A〜Cをそれぞれ2枚づつ得る。
なお、走査型電子顕微鏡としては、日立製作所社から商品名「S−3000N」にて市販されている走査型電子顕微鏡、日立ハイテクノロジーズ社から商品名「S−3400N」にて市販されている走査型電子顕微鏡を用いることができる。
拡大写真Aにおいて、MD方向及びVD方向(写真上においてMD方向に直交する方向)のそれぞれに平行な長さ60mmの直線を任意の箇所にて描き、この直線上にある気泡数から気泡の各方向における平均弦長(t)を下記式により算出する。但し、試験片の厚みが薄く、VD方向(シートの厚み方向)に60mm長さ分の気泡数を数えられない場合は、30mm又は20mm分の気泡数を数えて60mm分の気泡数に換算する。直線はできる限り気泡の全体が直線上にのるように描いた。直線上に部分的にしかのらない気泡も1個として気泡数に含める。
平均弦長t(mm)=60/(気泡数×写真の倍率)
拡大写真Bにおいて、TD方向及びVD方向(写真上においてTD方向に直交する方向)のそれぞれに平行な長さ60mmの直線を任意の箇所にて描き、この直線上にある気泡数から気泡の各方向における平均弦長(t)を上記式により算出する。
拡大写真Cにおいて、MD方向及びTD方向のそれぞれに平行な長さ60mmの直線を任意の箇所にて描き、この直線上にある気泡数から気泡の各方向における平均弦長(t)を上記式により算出する。
写真の拡大倍率は写真上のスケールバーを1/100mmまで計測し、下記式により求める。なお、スケールバーとしては、例えば、ミツトヨ社から商品名「デジマチックキャリパ」にて市販されているものを用いることができる。
写真の拡大倍率=スケールバー実測値(mm)/スケールバーの表示値(mm)
そして、次式により各方向における気泡径を算出した。
D(mm)=t/0.616
得られたMD方向の気泡径(DMD)、TD方向の気泡径(DTD)、VD方向の気泡径(DVD)に基づいて下記式により合成樹脂発泡シートの平均気泡径を算出する。なお、MD方向の気泡径DMDは、上記算出した二つのMD方向の気泡径の相加平均値である。TD方向の気泡径DTDは、上記算出した二つのTD方向の気泡径の相加平均値である。VD方向の気泡径DVDは、上記算出した二つのVD方向の気泡径の相加平均値である。
平均気泡径(mm)=(DMD×DTD×DVD1/3
MD:MD方向の気泡径(mm)
TD:TD方向の気泡径(mm)
VD:VD方向の気泡径(mm)
繊維強化複合体を構成している合成樹脂発泡シートの厚みは、薄すぎると、繊維強化複合体の耐衝撃性が低下することがあり、厚すぎると、繊維強化複合体に加わった衝撃力によって合成樹脂発泡シートが大きく変形して繊維強化プラスチック層に亀裂が生じて繊維強化複合体の耐衝撃性が低下することがあるので、0.1〜5mmが好ましく、0.3〜4mmがより好ましい。
繊維強化複合体を構成している合成樹脂発泡シートの引張破断点伸度は5〜30%が好ましく、5〜25%がより好ましく、5〜20%が特に好ましい。合成樹脂発泡シートの引張破断点伸度が低すぎると、合成樹脂発泡シートの脆性が大きくなり、繊維強化複合体に加わった衝撃力によって合成樹脂発泡シートが破断して繊維強化複合体の耐衝撃性が低下することがある。合成樹脂発泡シートの引張破断点伸度が高すぎると、繊維強化複合体に加わった衝撃力によって合成樹脂発泡シートが大きく変形して、繊維強化プラスチック層に亀裂が生じて繊維強化複合体の耐衝撃性が低下することがある。
なお、合成樹脂発泡シートの引張破断点伸度は、JIS K6767:1999「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」記載の方法に準拠して測定した。具体的には、試験片を温度23±2℃、相対湿度50±5%の環境下に16時間以上に亘って保持した後、温度23±2℃、相対湿度50±5%の環境下にて測定を行う。テンシロン万能試験機及び万能試験機データ処理ソフトを用いて、引張速度が500mm/分、つかみ具間隔が100mm、 試験片がダンベル形タイプ1(ISO1798:2008規定)の条件下にて測定する。但し、伸びは、試験前のつかみ具間の距離と、試験片の切断時のつかみ具間の距離との差とした。試験片を5個用意し、各試験片の引張破断点伸度の相加平均値を合成樹脂発泡シートの引張破断点伸度とする。なお、テンシロン万能試験機としては、例えば、オリエンテック社から商品名「UCT−10T」にて市販されている試験機を用いることができる。データ処理ソフトとしては、例えば、ソフトブレーン社から商品名「UTPS−237S」にて市販されているものを用いることができる。
合成樹脂発泡シートの接触角は、小さすぎると、繊維強化プラスチック層中の強化用合成樹脂が合成樹脂発泡シート側に過剰量、移行してしまい、繊維強化プラスチック層の機械的強度が低下し、その結果、繊維強化複合体の耐衝撃性などの機械的強度が低下し、大きすぎると、繊維強化プラスチック層に含まれている強化用合成樹脂と合成樹脂発泡シートとの接着性が低下し、繊維強化複合体に衝撃力が加わった場合に、繊維強化プラスチック層が合成樹脂発泡シートの表面から剥離し、繊維強化複合体の耐衝撃性が低下するので、30〜90°に限定され、40〜85°が好ましく、50〜80°がより好ましい。
なお、合成樹脂発泡シートの接触角は、JIS R3257:1999「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」の静滴法に準拠した測定方法で得られた接触角θ値を意味する。具体的には、合成樹脂発泡シートから幅50mm×長さ150mmの平面長方形状の試験片を2個切り出して測定に用いる。固液界面解析装置を用いて液滴法により測定する。滴下液は蒸留水で液量は1μL、滴下直後の接触角を測定することにより求める。接触角の計算はθ/2法により算出する。試験数は試験片ごとに10回とし、全ての接触角の測定値の相加平均値を合成樹脂発泡シートの接触角とする。状態調節及び試験環境は温度20±2℃、湿度65±5%、16時間以上とする。なお、固液界面解析装置としては、例えば、協和界面科学社から商品名「DropMaster300」にて市販されている装置を用いることができる。接触角の計算は、例えば、協和界面科学社から商品名「DropMaster300」にて市販されている固液界面解析装置に付属しているソフト「FAMAS」を用いて行うことができる。
繊維強化複合体を構成している合成樹脂発泡シート1の見掛け密度は、低すぎると、繊維強化複合体に衝撃力が加わった場合に、合成樹脂発泡シートの気泡壁が容易に破壊され、この気泡壁の破壊が、合成樹脂発泡シートと繊維強化プラスチック層との界面に容易に到達して、繊維強化プラスチック層が合成樹脂発泡シートの表面から剥離し、繊維強化複合体の耐衝撃性が低下する虞れや、合成樹脂発泡シートが過度に変形し、この変形によって繊維強化プラスチック層に亀裂が生じて繊維強化複合体の耐衝撃性が低下することがあり、高すぎると、合成樹脂発泡シートの衝撃吸収性が低下し、上述と同様の理由で繊維強化複合体の耐衝撃性が低下する虞れがあるので、0.1〜1.1g/cm3が好ましく、0.5〜0.9g/cm3がより好ましい。なお、合成樹脂発泡シートの見掛け密度は、JIS K7222に準拠して測定された値をいう。
繊維強化複合体を構成している合成樹脂発泡シートに結晶性合成樹脂が含有されている場合、合成樹脂発泡シートの結晶化度は、低すぎると、繊維強化複合体に衝撃力が加わった場合に、合成樹脂発泡シートが柔らかすぎて、合成樹脂発泡シートが過度に変形し、この変形によって繊維強化プラスチック層に亀裂が生じて繊維強化複合体の耐衝撃性が低下する虞れがあるので、15%以上が好ましく、20%以上がより好ましいが、高すぎると、合成樹脂発泡シートの衝撃吸収性が低下して繊維強化複合体の耐衝撃性が低下することがあるので、15〜30%が好ましく、20〜30%がより好ましい。
なお、合成樹脂発泡シートの結晶化度は、JIS K7122:1987「プラスチックの転移熱測定方法」に記載されている方法で測定する。
具体的には、示差走査熱量計装置(エスアイアイナノテクノロジー社製 商品名「DSC6220型」)を用い、アルミニウム製の測定容器の底に隙間のないように、合成樹脂発泡シートから切り出した好ましくは直方体形状の試料を約6mg充填して、試料を窒素ガス流量30mL/分の条件下にて30℃で2分間に亘って保持する。
しかる後、試料を速度10℃/分で30℃から290℃まで昇温した時のDSC曲線を得る。その時の基準物質はアルミナを用いた。合成樹脂発泡シートの結晶化度は、融解ピークの面積から求められる融解熱量(mJ/mg)と結晶化ピークの面積から求められる結晶化熱量(mJ/mg)の差を熱可塑性ポリエステル樹脂の完全結晶の理論融解熱量ΔH0で徐して求められる割合である。例えば、ポリエチレンテレフタレートのΔH0は140.1mJ/mgである。合成樹脂発泡シートの結晶化度は下記式に基づいて算出される。
合成樹脂発泡シートの結晶化度(%)
=100×(│融解熱量(mJ/mg)│−│結晶化熱量(mJ/mg)│)/ΔH0(mJ/mg)
別に4個の合成樹脂発泡シートを更に用意し、それぞれの合成樹脂発泡シートの結晶化度を上述と同様の要領で測定し、5個の合成樹脂発泡シートのそれぞれの結晶化度の相加平均値を合成樹脂発泡シートの結晶化度とする。
合成樹脂発泡シートの結晶化度の調整方法としては、例えば、後述するように、合成樹脂発泡シートの表面に繊維強化プラスチック層形成材を積層して得られた積層体をその厚み方向に加熱、押圧する際の加熱温度又は加熱時間を調整することによって合成樹脂発泡シートの結晶化度を調整することができる。積層体の加熱温度を高くし、又は、積層体の加熱時間を長くすることによって、合成樹脂発泡シートの結晶化度を向上させることができる。
以上のように、本発明の繊維強化複合体は、合成樹脂発泡シートの平均気泡径を所定範囲に限定することによって、合成樹脂発泡シートは適度な柔軟性及び気泡数を有している。従って、繊維強化複合体に加えられる衝撃力を円滑に吸収して、衝撃力による気泡壁の破壊を合成樹脂発泡シートと繊維強化プラスチック層との界面に到達させないようにしていると共に、合成樹脂発泡シートが衝撃力によって過度に変形することもなく衝撃力によって繊維強化プラスチック層に亀裂が生じるのを防止しており、よって、本発明の繊維強化複合体は優れた耐衝撃性を有している。
次に、合成樹脂発泡シートの製造方法について説明する。合成樹脂発泡シートの製造方法としては、公知の製造方法を用いることができる。具体的には、(1)合成樹脂を押出機に供給して化学発泡剤又は物理発泡剤などの発泡剤の存在下にて溶融混練し押出機から押出発泡させて合成樹脂発泡シートを製造する方法(押出発泡法)、(2)合成樹脂及び化学発泡剤を押出機に供給して化学発泡剤の分解温度未満にて溶融混練し押出機から発泡性樹脂シートを製造し、この発泡性樹脂シートを発泡させて合成樹脂発泡シートを製造する方法などが挙げられる。
又、化学発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ヒドラゾイルジカルボンアミド、重炭酸ナトリウムなどが挙げられる。なお、化学発泡剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
物理発泡剤は、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素、ジメチルエーテルなどのエーテル類、塩化メチル、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタンなどのフロン、二酸化炭素、窒素などが挙げられ、ジメチルエーテル、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素が好ましく、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンがより好ましく、ノルマルブタン、イソブタンが特に好ましい。なお、物理発泡剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
本発明において、合成樹脂発泡シート1の平均気泡径は10〜400μmに限定されているが、合成樹脂発泡シート1の平均気泡径は、例えば、気泡核材の量を調整することによって制御することができる。
又、本発明において、合成樹脂発泡シート1の引張破断点伸度は、例えば、合成樹脂発泡シートの気泡径を調節したり、合成樹脂発泡シートの架橋度を調節することによって制御することができる。
本発明の繊維強化複合体Aは、合成樹脂発泡シート1の表面に、好ましくは両面に、繊維強化プラスチック層2が積層一体化されている。なお、図2では、繊維強化複合体Aの耐衝撃性が優れていることから、合成樹脂発泡シート1の両面に繊維強化プラスチック層2、2を積層一体化してなる繊維強化複合体Aを示したが、これに限定されるものではなく、用途に応じて適宜、決定されればよく、合成樹脂発泡シート1の片面にのみ繊維強化プラスチック層2が積層一体化されてなるものであってもよい。
本発明の繊維強化複合体Aに用いられる繊維強化プラスチック層2は、強化繊維に強化用合成樹脂を含浸させてなるものである。
繊維強化プラスチック層2を構成している強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、チラノ繊維、玄武岩繊維、セラミックス繊維などの無機繊維;ステンレス繊維やスチール繊維などの金属繊維;アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサドール(PBO)繊維などの有機繊維;ボロン繊維などが挙げられる。強化繊維は、一種単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。なかでも、強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維及びアラミド繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。これらの強化繊維は、軽量であるにも関わらず優れた機械的強度を有している。
強化繊維は、所望の形状に加工された強化繊維基材として用いられることが好ましい。強化繊維基材としては、織物、編物、不織布、及び繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)を糸で結束(縫合)してなる面材などが挙げられる。織物の織り方としては、平織、綾織、朱子織などが挙げられる。また、糸としては、ポリアミド樹脂糸やポリエステル樹脂糸などの合成樹脂糸、及びガラス繊維糸などのステッチ糸が挙げられる。
繊維強化基材は、一枚の繊維強化基材のみを単層として用いても、複数枚の繊維強化基材を積層して積層体として用いてもよい。複数枚の繊維強化基材を積層した積層体としては、(1)一種のみの繊維強化基材を複数枚用意し、これらの繊維強化基材を積層した積層体、(2)複数種の繊維強化基材を用意し、これらの繊維強化基材を積層した積層体、(3)繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)を糸で結束(縫合)してなる面材を複数枚用意し、これらの面材を繊維束の繊維方向が互いに相違した方向を指向するように重ね合わせ、重ね合わせた面材同士を糸で一体化(縫合)してなる積層体などが用いられる。なお、糸としては、ポリアミド樹脂糸やポリエステル樹脂糸などの合成樹脂糸、及びガラス繊維糸などのステッチ糸が挙げられる。
上記(1)及び(2)の繊維強化基材を積層した積層体において、織物を複数枚、積層してなる積層体の場合、各織物を構成している経糸(緯糸)の長さ方向が織物の平面方向からみて放射状に配列されていることが好ましい。具体的には、図3及び図4に示したように、各織物を構成している経糸(緯糸)の長さ方向をそれぞれ1a、1b・・・としたとき、これら経糸(緯糸)の長さ方向1a、1b・・・が放射状に配列されていることが好ましく、経糸(緯糸)の長さ方向1a、1b・・・のうちの任意の経糸(緯糸)の長さ方向1aを特定したとき、特定の経糸(緯糸)の長さ方向1aを中心にして他の経糸(緯糸)の長さ方向1b、1c・・・が線対称となるように配列していることがより好ましい。
また、各織物を構成している経糸(緯糸)の長さ方向1a、1b・・・同士の交差角度は、繊維強化基材の強度が一方向に偏らず任意の方向において略同一の機械的強度を付与することができるので、織物を二枚重ね合わせる場合には90°が好ましく、織物を三枚以上重ね合わせる場合には45°が好ましい。
上記(3)の積層体において、各面材を構成している繊維束の繊維の長さ方向が面材の平面方向からみて放射状に配列されていることが好ましい。具体的には、図3及び図4に示したように、各面材を構成している繊維束の繊維の長さ方向をそれぞれ1a、1b・・・としたとき、これら繊維の長さ方向1a、1b・・・が放射状に配列されていることが好ましく、繊維の長さ方向1a、1b・・・のうちの任意の長さ方向1aを特定したとき、特定の長さ方向1aを中心にして線対称となるように他の長さ方向1b、1c・・・が配列していることがより好ましい。
また、各面材を構成している繊維束の繊維の長さ方向1a、1b・・・同士の交差角度は、繊維強化基材の強度が一方向に偏らず任意の方向において略同一の機械的強度を付与することができることから、面材を二枚重ね合わせる場合には90°が好ましく、面材を三枚以上重ね合わせる場合には45°が好ましい。
繊維強化プラスチック層は強化繊維に強化用合成樹脂が含浸されてなるものである。含浸させた強化用合成樹脂によって、強化繊維同士を結着一体化させることができる。強化繊維に含浸させる強化用合成樹脂としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の何れが用いられてもよいが、熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂とを予備重合した樹脂などが挙げられ、耐熱性、衝撃吸収性又は耐薬品性に優れていることから、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂には、硬化剤、硬化促進剤などの添加剤が含有されていてもよい。なお、熱硬化性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
又、熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂、アミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、サルファイド系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられ、合成樹脂発泡シートとの接着性又は繊維強化プラスチック層形成材を構成している繊維同士の接着性に優れていることから、ポリエステル系樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂が好ましい。なお、熱可塑性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
熱可塑性エポキシ樹脂としては、エポキシ化合物同士の重合体又は共重合体であって直鎖構造を有する重合体や、エポキシ化合物と、このエポキシ化合物と重合し得る単量体との共重合体であって直鎖構造を有する共重合体が挙げられる。具体的には、熱可塑性エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、長鎖脂肪族型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂が好ましい。なお、熱可塑性エポキシ樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
熱可塑性ポリウレタン樹脂としては、ジオールとジイソシアネートとを重合させて得られる直鎖構造を有する重合体が挙げられる。ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールなどが挙げられる。ジオールは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。ジイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートが挙げられる。ジイソシアネートは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
繊維強化プラスチック層中における強化繊維の含有量は30〜80重量%が好ましく、30〜60重量%がより好ましい。強化繊維の含有量が少なすぎると、繊維強化プラスチック層の曲げ弾性率などの機械的強度が低下して、繊維強化複合体の耐衝撃性などの機械的強度を十分に向上させることができない虞れがある。強化繊維の含有量が多すぎると、強化繊維同士の結着性や、繊維強化プラスチック層と合成樹脂発泡シートとの接着性が不十分となり、繊維強化プラスチック層の曲げ弾性率などの機械的強度や繊維強化複合体の耐衝撃性を十分に向上させることができない虞れがある。
繊維強化プラスチック層の厚みは、0.02〜2mmが好ましく、0.05〜1mmがより好ましい。厚みが上記範囲内である繊維強化プラスチック層は、軽量であるにも関わらず機械的強度に優れている。
繊維強化プラスチック層の目付は、50〜4000g/m2が好ましく、100〜1000g/m2がより好ましい。目付が上記範囲内である繊維強化プラスチック層は、軽量であるにも関わらず機械的強度に優れている。
本発明の繊維強化複合体は、衝撃吸収性に優れた合成樹脂発泡シートの表面に繊維強化プラスチック層が積層一体化されており、繊維強化複合体は機械的強度及び衝撃吸収性が向上されている。更に、本発明の繊維強化複合体は、合成樹脂発泡シートの表面に繊維強化プラスチック層が積層一体化されているので、繊維強化複合体に加わった衝撃力は、繊維強化プラスチック層全体に伝播し拡散した上で合成樹脂発泡シートの全体に伝達される。従って、繊維強化複合体に加わった衝撃力は、合成樹脂発泡シートの全体で効率良く吸収され、よって、本発明の繊維強化複合体は、優れた耐衝撃性(衝撃吸収力)を有している。このような繊維強化複合体は、特に制限されないが、航空機、自動車、船舶、及び建築物などの構成部材や電子機器の筐体として好適に用いられる。
次に、本発明の繊維強化複合体Aの製造方法について説明する。繊維強化複合体Aの製造方法としては、特に限定されず、例えば、合成樹脂発泡シートの表面(片面又は両面)に、強化用合成樹脂が含浸されている強化繊維を含む繊維強化プラスチック層形成材を積層して積層体を製造した後、積層体を加熱して、積層体を合成樹脂発泡シートの厚み方向に押圧することによって、繊維強化プラスチック層形成材を繊維強化プラスチック層として合成樹脂発泡シートの表面に積層一体化させる方法が挙げられる。
具体的には、上述した合成樹脂発泡シートの表面に、強化用合成樹脂が含浸されている強化繊維を含む繊維強化プラスチック層形成材を積層して積層体を製造する。合成樹脂発泡シートにおける繊維強化プラスチック層形成材を積層する面は、得られる繊維強化複合体の用途に応じて決定すればよく、特に制限されない。従って、合成樹脂発泡シートの少なくとも一面であってもよいし両面の何れであってもよい。得られる繊維強化複合体の耐衝撃性を考慮すると、合成樹脂発泡シートの両面に繊維強化プラスチック層形成材を積層することが好ましい。
なお、積層体に用いられる合成樹脂発泡シートや繊維強化プラスチック層形成材に用いられる合成樹脂、強化用合成樹脂及び強化繊維については、上述した繊維強化複合体における合成樹脂発泡シートや繊維強化プラスチック層に用いられる合成樹脂、強化用合成樹脂及び強化繊維と同様であるため、これらの詳細な説明を省略する。
強化繊維中に強化用合成樹脂を含浸させる方法としては、特に限定されず、例えば、(1)強化繊維を強化用合成樹脂中に浸漬して強化繊維中に強化用合成樹脂を含浸させる方法、(2)強化繊維に強化用合成樹脂を塗布し、強化繊維に強化用合成樹脂を含浸させる方法、及び(3)強化繊維基材上に強化用合成樹脂を含むシートを積層した後にこれらを加熱加圧して、強化繊維基材を構成している強化繊維中にシートに含まれている強化用合成樹脂を含浸させる方法などが挙げられる。また、(1)及び(2)の方法では、強化繊維を強化繊維基材として用い、強化繊維基材を強化用合成樹脂に浸漬することによって、又は強化繊維基材に強化用合成樹脂を塗布することによって、強化繊維基材を構成している強化繊維に強化用合成樹脂を含浸させることもできる。
なお、強化繊維基材、又は強化用合成樹脂が含浸されている強化繊維基材を含む強化繊維プラスチック層形成材は市販されているものを用いることができる。強化繊維基材は、例えば、三菱レイヨン社から商品名「パイロフィル」にて市販されている。また、熱硬化性樹脂が含浸されている強化繊維基材を含む繊維強化プラスチック層形成材は、例えば、三菱レイヨン社から商品名「パイロフィルプリプレグ」にて市販されている。熱可塑性樹脂が含浸されている強化繊維基材を含む繊維強化プラスチック層形成材は、長瀬ケムテック社から商品名「NNGF60−03s」にて市販されている。
上述の如くして製造された積層体を赤外線ヒータなどの汎用の要領で加熱しながら積層体をその厚み方向に押圧する。積層体の加熱によって、繊維強化プラスチック層形成材及び合成樹脂発泡シートが加熱される。積層体の加熱によって、繊維強化プラスチック層形成材に含まれている強化用合成樹脂を軟化させて流動性を有する状態とし、必要に応じて、繊維強化プラスチック層形成材及び合成樹脂発泡シートを所望形状に成形する。強化用合成樹脂が熱硬化性樹脂を含む場合、熱硬化性樹脂を軟化させて硬化させることなく流動性を有する状態とする。熱硬化性樹脂は、加熱によって熱硬化する前に流動性を有する状態となるので、この流動性を有する状態を維持するように温度制御する。強化用合成樹脂が熱可塑性樹脂を含む場合、熱可塑性樹脂が流動性を有する状態となるように温度制御する。
積層体の加熱温度は、低すぎると、繊維強化プラスチック層形成材に含浸させている強化用合成樹脂の軟化が不十分となって、繊維強化プラスチック層形成材から形成された繊維強化プラスチック層を合成樹脂発泡シートに十分な強度でもって積層一体化させることができないことがあり、高すぎると、合成樹脂発泡シートの気泡が熱によって破壊されて、得られる繊維強化複合体の軽量性及び衝撃吸収性が低下することがあるので、(強化用合成樹脂のガラス転移温度−60℃)〜(強化用合成樹脂のガラス転移温度+80℃)が好ましく、(強化用合成樹脂のガラス転移温度−50℃)〜(強化用合成樹脂のガラス転移温度+70℃)がより好ましい。本発明において、積層体Bの加熱温度とは、積層体Bの繊維強化プラスチック層形成材の表面温度をいう。強化用合成樹脂中に二種類以上の熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂が含有されている場合、強化用合成樹脂のガラス転移温度は、強化用合成樹脂に含まれている合成樹脂のガラス転移温度のうちの最も高いガラス転移温度とする。強化用合成樹脂中に二種類以上の熱硬化性樹脂が含有されている場合、全ての熱硬化性樹脂が硬化することなく流動性を有する状態となるように積層体の加熱温度を調整する必要がある。
なお、本発明において、熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法で測定する。但し、サンプリング方法・温度条件に関しては以下のように行う。示差走査熱量計装置を用いアルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう試料を約6mg充てんして、窒素ガス流量20mL/分のもと、試料を30℃から−40℃まで降温した後に10分間に亘って保持した後、試料を−40℃から290℃まで昇温(1st Heating)し290℃に10分間に亘って保持した後に290℃から−40℃まで降温(Cooling)、10分間に亘って保持した後に−40℃から290℃まで昇温(2nd Heating)した時のDSC曲線を得た。なお、全ての昇温速度及び降温速度は10℃/分で行い、基準物質としてアルミナを用いる。本発明において、ガラス転移点とは、2nd Heating過程で得られたDSC曲線より得られた中間点ガラス転移温度のことをいう。又、この中間点ガラス転移温度はJIS K7121:1987(9.3「ガラス転移温度の求め方」)より求める。なお、示差走査熱量計装置としては、例えば、エスアイアイナノテクノロジー社から商品名「DSC6220型」で市販されている示差走査熱量計装置を用いることができる。
本発明において、熱硬化性樹脂のガラス転移温度は下記の要領で測定された温度をいう。熱硬化性樹脂のガラス転移温度を測定する場合には熱硬化性樹脂を予め硬化させる必要がある。熱硬化性樹脂の硬化温度はJIS K7121:1987において測定される発熱ピーク温度±10℃が目安とされる。熱硬化性樹脂の硬化時間は60分間が目安とされ、硬化後の熱硬化性樹脂の発熱ピークをJIS K7121:1987に準拠して測定した際に、発熱ピークが観察されなければ、硬化が完了されたとみなせ、この硬化後の熱硬化性樹脂を用いて、後述する要領で熱硬化性樹脂のガラス転移温度を測定する。なお、上述した熱硬化性樹脂の硬化温度の目安となる発熱ピーク温度の詳細な測定方法は、下記の通りである。熱硬化性樹脂の発熱ピーク温度は、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法で測定する。但し、サンプリング方法・温度条件に関しては以下の要領で行う。示差走査熱量計装置を用いてアルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう試料を約6mg充てんして、窒素ガス流量20mL/分のもと、基準物質としてアルミナを用い、試料を30℃から220℃まで速度5℃/分で昇温させる。本発明において、熱硬化性樹脂の発熱ピーク温度とは1回目昇温時のピークトップの温度を読みとった値である。なお、示差走査熱量計装置としては、例えば、エスアイアイナノテクノロジー社から商品名「DSC6220型」にて市販されている示差走査熱量計装置を用いることができる。
熱硬化性樹脂のガラス転移温度は、JIS K7121(1987)「プラスチックの転移温度測定方法」における規格9.3「ガラス転移温度の求め方」に準拠して測定された温度とする。具体的には、ガラス転移温度を測定する、硬化後の熱硬化性樹脂6mgを試料として採取する。示差走査熱量計装置を用い、装置内で流量20mL/分の窒素ガス流の下、試料を20℃/分の昇温速度で30℃から200℃まで昇温して200℃にて試料を10分間に亘って保持する。その後、試料を装置から速やかに取出して25±10℃まで冷却した後、装置内で、流量20mL/分の窒素ガス流の下、20℃/分の昇温速度で試料を200℃まで再度、昇温した時に得られるDSC曲線よりガラス転移温度(中間点)を算出する。測定においては基準物質としてアルミナを用いる。なお、示差走査熱量計装置としては、例えば、エスアイアイナノテクノロジー社から商品名「DSC6220型」にて市販されている示差走査熱量計装置を用いることができる。
繊維強化プラスチック層形成材に含まれている強化用合成樹脂が熱硬化性樹脂を含む場合には、熱硬化性樹脂を硬化させることによって強化繊維同士を結着、固定一体化させて繊維強化プラスチック層とし、この繊維強化プラスチック層を該繊維強化プラスチック層に含まれている硬化した熱硬化性樹脂によって発泡成形体の表面に積層一体化させて繊維強化複合体を得る。
積層体の繊維強化プラスチック層形成材に含有されている未硬化の熱硬化性樹脂を硬化させるための加熱温度は、プレス時の積層体の加熱温度と同一であってもよいし変化させてもよいが、熱硬化性樹脂の硬化を促進するために積層体の加熱温度を上昇させることが好ましい。
積層体の繊維強化プラスチック層形成材に含有されている未硬化の熱硬化性樹脂を硬化させるための加熱温度は、低すぎると、熱硬化性樹脂の硬化が不十分となって、得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下することがあり、高すぎると、合成樹脂発泡シートの気泡が熱によって破壊されて、得られる繊維強化複合体の軽量性及び耐衝撃性が低下することがあるので、(熱硬化性樹脂のガラス転移温度−50℃)〜(熱硬化性樹脂のガラス転移温度+50℃)が好ましく、(熱硬化性樹脂のガラス転移温度−40℃)〜(熱硬化性樹脂のガラス転移温度+40℃)がより好ましい。強化用合成樹脂中に二種類以上の熱硬化性樹脂が含有されている場合、熱硬化性樹脂のガラス転移温度は、強化用合成樹脂に含まれている熱硬化性樹脂のガラス転移温度のうちの最も高いガラス転移温度とする。
又、繊維強化プラスチック層形成材に含まれている強化用合成樹脂が熱可塑性樹脂を含む場合には、熱硬化性樹脂を含んでいる場合と異なり上述の硬化工程は必要なく、繊維強化プラスチック層形成材を冷却して繊維強化プラスチック層として合成樹脂発泡シートの表面に積層一体化させて繊維強化複合体を得る。この場合も、繊維強化プラスチック層の熱可塑性樹脂の作用によって、繊維強化プラスチック層は発泡成形体の表面に積層一体化される。
複数枚の繊維強化プラスチック層形成材を重ね合わせた状態に発泡成形体の表面に積層している場合には、上述の積層体の加熱及び押圧によって、繊維強化プラスチック層形成材同士がこれら繊維強化プラスチック層形成材に含まれている強化用合成樹脂によって積層一体化されて繊維強化プラスチック層を形成する。
上述の積層体の加熱及び押圧工程は大気圧下において行ってもよいし、減圧下において行ってもよい。積層体の加熱及び押圧工程を減圧下において行うと、繊維強化プラスチック層形成材中の余分な強化用合成樹脂を吸引、除去することができると共に、繊維強化プラスチック層形成材中、又は、繊維強化プラスチック層形成材と合成樹脂発泡シートとの間、若しくは、繊維強化プラスチック層形成材間に存在している空気を吸引、除去することができ、得られる繊維強化プラスチック層の強化繊維を強化用合成樹脂によってより強固に結着、固定一体化することができると共に、繊維強化プラスチック層と合成樹脂発泡シートとをより強固に一体化することができる。
繊維強化プラスチック層を積層一体化させる前の合成樹脂発泡シートの結晶化度は、高すぎると、合成樹脂発泡シートを構成している熱可塑性ポリエステル樹脂の流動性が低下して、合成樹脂発泡シートと繊維強化プラスチック層との熱融着性が低下し、合成樹脂発泡シートと繊維強化プラスチック層との一体化が不十分となって、得られる繊維強化複合体の耐衝撃性が低下することがあるので、14%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。なお、繊維強化プラスチック層を積層一体化させる前の合成樹脂発泡シートの結晶化度の測定方法は上述した方法と同様であるのでその説明を省略する。
合成樹脂発泡シートの表面に、強化用合成樹脂が含浸されている強化繊維を含む繊維強化プラスチック層形成材を積層して得られた積層体を加熱する時に、合成樹脂発泡シートと繊維強化プラスチック層との一体化と同時に、合成樹脂発泡シートの結晶化度を上昇させることによって、合成樹脂発泡シートの耐熱性を向上させることができると共に、合成樹脂発泡シートの結晶化度を向上させることによって、合成樹脂発泡シートの引張破断点伸度を上昇させて、繊維強化複合体の耐衝撃性を向上させることができる。
得られた繊維強化複合体の見掛け密度は、低すぎると、繊維強化複合体の耐衝撃性が低下することがあり、高すぎると、繊維強化複合体の軽量性が損なわれることがあるので、0.3〜1.5g/cm3が好ましく、0.5〜1.3g/cm3がより好ましい。なお、繊維強化複合体の見掛け密度は、JIS K7222に準拠して測定された値をいう。
次に、上述した積層体を減圧下にて加熱、押圧工程を行う要領の一例を説明する。図5に示したように、合成樹脂発泡シート1の表面に繊維強化プラスチック層形成材21を積層して積層体Bを形成する。なお、図5では、合成樹脂発泡シート1の両面に繊維強化プラスチック層形成材21、21を積層して積層体Bを形成している。
更に、図5に示したように、積層体Bの繊維強化プラスチック層形成材21上に押圧板6bを載置した後、押圧板6b上にリリースフィルム3を介してブリーザークロス4を積層する。上記リリースフィルム3は、繊維強化プラスチック層形成材21に対して容易に剥離可能に構成されている。リリースフィルム3は、合成樹脂フィルムから構成されており、このような合成樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(4フッ化エチレン−エチレン共重合体)などのフッ素系樹脂などが挙げられる。
上記ブリーザークロス4は、繊維強化プラスチック層形成材21中に含浸させていた余分な強化用合成樹脂を吸収するために用いられ、積層体Bの加熱、加圧時に変形、変質しないものであればよく、不織布が挙げられる。不織布としては、例えば、ナイロン繊維などのアミド樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維などからなる不織布、ガラスクロスなどが挙げられる。
次に、積層体Bを押圧板6a上に載置し、積層体B上にバギングフィルム5を被せてバギングフィルム5によって積層体Bを密封する。バギングフィルム5は、積層体Bを密封し、積層体B全体を真空引きするためのフィルムである。バギングフィルム5を構成している合成樹脂としては、ナイロンなどのアミド樹脂が挙げられる。バギングフィルム5の外周縁部の全周と押圧板6aとの対向間には封止材7を介在させて気密性を確保する。
しかる後、バギングフィルム5で密封された空間部8内を排気することによって空間部8内を減圧する。次に、バギングフィルム5で密封された空間部8内の減圧後又は減圧の開始と同時に空間部8内の積層体Bを加熱して、繊維強化プラスチック層形成材21中の強化用合成樹脂を軟化させる。強化用合成樹脂が軟化した後、積層体Bを加圧板6a、6bによって積層体Bに対する繊維強化プラスチック層形成材21の積層方向に加圧すると共に上記加熱を継続する。なお、積層体Bの加熱及び加圧中において空間部8内の減圧状態は維持されている。
この積層体Bの加圧によって、繊維強化プラスチック層形成材中の空気をより確実に排除して、繊維強化プラスチック層中にボイドが生成されるのを防止することができると共に繊維同士の密着性を向上させ、更に、繊維強化プラスチック層形成材を発泡体の表面に沿って変形させつつ、繊維強化プラスチック層形成材を発泡体の表面に押圧させて、繊維強化プラスチック層形成材を発泡体の表面に全面的に密着した状態に積層させることができる。更に、繊維強化プラスチック層形成材が発泡体の表面に沿って密着された状態に積層された状態において、繊維強化プラスチック層形成材と発泡体の表面との界面に存在していた空気は略完全に排除されており、繊維強化プラスチック層形成材は合成樹脂発泡シートの表面に良好に密着した状態となっている。
加えて、積層体Bを加圧することによって、繊維強化プラスチック層形成材中に含浸させた強化用合成樹脂を強化繊維全体になじませて強化繊維同士を必要最小限の量の強化用合成樹脂で確実に結着することができる。このように、必要最小限の量の強化用合成樹脂によって強化繊維同士を結着することができるので、強化繊維間に余分な強化用合成樹脂が存在することはなく、強化繊維を高度に配向させた状態とすることができ、繊維強化プラスチック層の機械的強度の向上を図ることができると共に、繊維強化プラスチック層の外観も優れたものとなる。
又、繊維強化プラスチック層形成材を複数重ね合わせている場合には、加圧によって互いに重ね合わせられている繊維強化プラスチック層形成材同士を強固に一体化することができ、得られる繊維強化複合体は機械的強度に優れている。
一方、積層体Bを加圧することによって繊維強化プラスチック層形成材中に含浸されている余分な強化用合成樹脂が繊維強化プラスチック層形成材の表面に浮き出してくることがあるが、このような場合には、余分な強化用合成樹脂はブリーザークロス4に吸収され、得られる繊維強化複合体の繊維強化プラスチック層の表面は余分な強化用合成樹脂は存在せず優れた外観性を有している。
上述のように積層体を加圧した状態において積層体の加熱を継続しており、この加熱によって、積層体の合成樹脂発泡シートの結晶化度を上昇させると共に、繊維強化プラスチック層形成材中に含まれている強化用合成樹脂が熱硬化性樹脂を含む場合には熱硬化性樹脂を硬化させる。
上記熱硬化性樹脂の硬化によって繊維強化プラスチック層形成材中の強化繊維同士は結着、固定されると共に繊維強化プラスチック層形成材は発泡体の表面に沿って変形した状態にて繊維強化プラスチック層として合成樹脂発泡シートの表面に硬化した熱硬化性樹脂によって積層一体化されて繊維強化複合体Aを得ることができる。
又、上記繊維強化プラスチック層形成材中に含まれている強化用合成樹脂が熱可塑性樹脂を含む場合、後述する冷却によって、繊維強化プラスチック層形成材中の強化繊維同士は結着、固定されると共に繊維強化プラスチック層形成材は発泡体の表面に沿って変形した状態にて繊維強化プラスチック層として合成樹脂発泡シートの表面に熱可塑性樹脂によって積層一体化されて繊維強化複合体Aを得ることができる。
次に、繊維強化複合体を冷却すると共に繊維強化複合体に加えている加圧力を解除した後、空間部8内の減圧を解除した上で空間部8を開放して繊維強化複合体Aを取り出せばよい。
上記では、積層体Bにバギングフィルム5を被せてバギングフィルム5によって積層体Bを密封し、積層体Bの加圧を減圧下にて行った場合を説明したが、積層体Bの加圧は常圧下にて行ってもよい。具体的には、図5において、積層体Bに、リリースフィルム3、ブリーザークロス4及びバギングフィルム5を積層し又は被せることなく、押圧板6a、6bによって積層体Bを挟持すると共に積層体Bを加熱し、押圧板6a、6bによって積層体Bを常圧下にて加圧して繊維強化複合体Aを製造してもよい。
上述した繊維強化複合体Aの製造方法において、押圧板6a、6bは平板状である必要はなく、所望形状を有する成形面を有していてもよい。押圧板6a、6bの成形面によって、積層体Bの合成樹脂発泡シート及び繊維強化プラスチック層形成材を所望形状に成形しつつ、合成樹脂発泡シートの表面に、繊維強化プラスチック層形成材から形成された繊維強化プラスチック層を積層一体化させて所望形状を有する繊維強化複合体Aを得ることができる。
又、繊維強化複合体の製造方法としては、公知の熱成形方法を用いることができ、例えば、真空成形法、圧空成形法などが挙げられる。真空成形法及び圧空成形法を応用した熱成形方法として、例えば、ストレート成形法、ドレープ成形法、プラグアシスト成形法、プラグアシスト・リバースドロー成形法、エアスリップ成形法、スナップバック成形法、リバースドロー成形法、プラグアシスト・エアスリップ成形法、マッチモールド成形法、及び、これらの成形法を組み合わせた熱成形方法が挙げられ、成形性に乏しい繊維強化プラスチック層形成材を使用しても外観の良好な繊維強化複合体を得ることができるので、マッチモールド成形法が好ましい。
繊維強化複合体を熱成形方法を用いて製造する要領の一例を具体的に説明する。先ず、合成樹脂発泡シート1の少なくとも一面に上述の繊維強化プラスチック層形成材21を積層して積層体Mを製造する(積層工程)。なお、図6では、合成樹脂発泡シート1の両面に繊維強化プラスチック層形成材21、21を積層した場合を示したが、合成樹脂発泡シート1の片面にのみ繊維強化プラスチック層形成材21を積層してもよい。
更に、積層体Mの繊維強化プラスチック層形成材21上に雌雄金型からの離型性を向上させるために離型フィルム3を積層させてもよい。離型フィルム3は、合成樹脂フィルムから構成されている。離型フィルムを構成している合成樹脂としては、繊維強化プラスチック層形成材2及び雌雄金型に対して剥離性を有しておれば、特に限定されず、例えば、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(4フッ化エチレン−エチレン共重合体)などのフッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられる。
次に、上記積層工程に続いて成形工程を行う。先ず、図6に示したように、成形工程において、積層体Mの合成樹脂発泡シート1を把持する一方、繊維強化プラスチック層形成材21は一切把持しない。
このように、繊維強化プラスチック層形成材21を把持しないことによって、積層体Mのプレス成形時に、合成樹脂発泡シート1上において自由に移動可能な状態とし、合成樹脂発泡シート1のプレス成形に伴う伸びに繊維強化プラスチック層形成材21が追従する必要がなくなり、繊維強化プラスチック層形成材21を独立して雌雄金型41、42によって円滑にプレス成形することができ、プレス成形が困難とされている繊維強化プラスチック層形成材2を合成樹脂発泡シート1上において容易に且つ正確にプレス成形することができる。
又、合成樹脂発泡シート1の把持は、積層体Mをプレス成形する際に合成樹脂発泡シート1を雌雄金型41、42に対して正確な位置に保持して合成樹脂発泡シート1を安定的に支持し、合成樹脂発泡シート1を正確にプレス成形可能にすると共に、安定的に支持された合成樹脂発泡シート1上にて繊維強化プラスチック層形成材21を安定的にプレス成形して所望形状に成形することができるようにしており、積層体Mの合成樹脂発泡シート1及び繊維強化プラスチック層形成材21を所望形状に正確にプレス成形することができる。
合成樹脂発泡シート1の把持は公知のクランプ5を用いて行われればよい。又、合成樹脂発泡シート1を把持する位置は、上記目的が達成されるのであれば、特に限定されず、例えば、合成樹脂発泡シート1の対向する外周縁部や、発泡シートの四方外周縁部などが挙げられる。
上述のように、合成樹脂発泡シート1を把持した上で、積層体Mを加熱する。積層体Mの加熱によって繊維強化プラスチック層形成材21中に含浸されている強化用合成樹脂を軟化させる。強化用合成樹脂が未硬化の熱硬化性樹脂を含む場合、未硬化の熱硬化性樹脂を軟化させて硬化させることなく流動性を有する状態とする。熱硬化性樹脂は、加熱によって熱硬化する前に流動性を有する状態となるので、この流動性を有する状態を維持するように温度制御する。強化用合成樹脂が熱可塑性樹脂を含む場合、熱可塑性樹脂が流動性を有する状態となるように温度制御する。なお、積層体Mの加熱手段は、赤外線ヒータなどの公知の加熱装置を用いればよい。
上記積層体Mの加熱によって、繊維強化プラスチック層形成材21は、これに含浸させている強化用合成樹脂を流動性を有する状態としてプレス加工可能な状態となっていると共に、合成樹脂発泡シート1も加熱によって軟化しプレス成形によって容易に成形可能な状態となっている。
この状態で、図6及び図7に示したように、上記積層体Mを雌雄金型41、42間に配設し、雌雄金型41、42を型締めすることによって、プレス成形によって、積層体Mの合成樹脂発泡シート1を所望形状に成形すると共に、繊維強化プラスチック層形成材21を合成樹脂発泡シート1上にて滑らしながら所望形状に成形する。プレス成形中、繊維強化プラスチック層形成材21の強化用合成樹脂が流動性を保持するように雌雄金型の温度を制御する。プレス成形時、積層体Mは、雌雄金型41、42によって押圧されることから、繊維強化プラスチック層形成材21に含まれている強化用合成樹脂は繊維強化プラスチック層形成材21の表面に滲出して繊維強化プラスチック層形成材21の表面に表皮層を形成し、よって、得られる繊維強化複合体Aの表面は、繊維強化プラスチック層の繊維が露出することのない平滑面に形成される。
上記では、積層体Mを加熱した上で雌雄金型41、42間に配設した場合を説明したが、積層体Mを雌雄金型41、42間に配設した上で、積層体Mを加熱してもよい。
次に、積層体Mを雌雄金型41、42によってプレス成形して所望形状に成形した後、繊維強化プラスチック層形成材21に未硬化の熱硬化性樹脂が含浸されている場合には、積層体Mの繊維強化プラスチック層形成材21に含有されている未硬化の熱硬化性樹脂を硬化させて、繊維強化プラスチック層形成材の強化繊維同士を硬化した熱硬化性樹脂で結着、固定して繊維強化プラスチック層形成材21を繊維強化プラスチック層2とし、この繊維強化プラスチック層2を硬化した熱硬化性樹脂によって合成樹脂発泡シート1の少なくとも一面に積層一体化させて繊維強化複合体Aを製造する(硬化工程)。
積層体Mの繊維強化プラスチック層形成材21に含有されている未硬化の熱硬化性樹脂を硬化させるための加熱温度は、プレス成形時の積層体Mの加熱温度と同一であってもよいし変化させてもよいが、熱硬化性樹脂の硬化を促進するために積層体Mの加熱温度を上昇させることが好ましい。
又、繊維強化プラスチック層形成材21に含浸させている強化用合成樹脂が熱可塑性樹脂である場合、熱硬化性樹脂の場合と異なり、上述した硬化工程は必要なく、後述するように冷却することによって熱可塑性樹脂を固化させて、繊維強化プラスチック層形成材の強化繊維同士を固化した熱可塑性樹脂で結着、固定して繊維強化プラスチック層形成材21を繊維強化プラスチック層2とし、この繊維強化プラスチック層2を固化した熱可塑性樹脂によって合成樹脂発泡シート1の少なくとも一面に積層一体化させて繊維強化複合体Aを製造する。
次に、繊維強化複合体Aを必要に応じて冷却した後、雌雄金型41、42を開いて繊維強化複合体Aを得ることができる(図8参照)。得られた繊維強化複合体Aは、強化用合成樹脂によって強化繊維同士が結着され且つ雌雄金型41、42に沿って所望形状に成形された繊維強化プラスチック層2が合成樹脂発泡シート1の表面に沿って全面的に密着した状態に積層一体化されている。なお、図8においては、繊維強化プラスチック層2上に離型フィルム3が積層された状態を示したが、離型フィルム3は、繊維強化複合体Aの繊維強化プラスチック層2から容易に剥離、除去することができる。又、図8において、合成樹脂発泡シート1は、その両端部を切除した状態を示した。
本発明の繊維強化複合体は、上述の如き構成を有していることから、所定の平均気泡径及び接触角を有する合成樹脂発泡シートと、繊維強化プラスチック層との組合せによって優れた耐衝撃性及び耐熱性を有している。
発泡シートの平均気泡径を測定する要領を示した模式図である。 繊維強化複合体を示した断面図である。 繊維強化プラスチック層を構成している強化繊維の配向性を示した図である。 繊維強化プラスチック層を構成している強化繊維の配向性を示した図である。 繊維強化複合体の製造要領の一例を示した模式断面図である。 積層体を雌雄金型間に配設した状態を示した模式図である。 積層体を雌雄金型によってプレス成形している状態を示した模式図である。 雌雄金型を型開きして繊維強化複合体を取り出して合成樹脂発泡シートの両端部を切除した状態を示した模式図である。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本実施例に何ら限定されるものでない。
(実施例1)
押圧板6aとしてアルミニウム板を用意し、このアルミニウム板の上面に離型剤(ケムリースジャパン社製 商品名「ケムリース2166」)を塗布して一日放置し、アルミニウム板の上面に離型処理を施した。
炭素繊維からなる綾織の織物から形成された繊維強化基材に、熱硬化性樹脂として未硬化のエポキシ樹脂(ガラス転移温度:126℃)を40重量%含有させた厚みが0.23mmの繊維強化プラスチック層形成材(CFRP、三菱レイヨン社製 商品名「パイロフィルプリプレグ TR3523 381GMP」、目付:200g/m2)を2枚、用意した。繊維強化プラスチック層形成材を一辺が16cmの平面正方形状となるように切断した。2枚の繊維強化プラスチック層形成材をそれらの経糸の長さ方向がなす角度が90°となるように重ね合わせた。
合成樹脂発泡シートとして一辺が16cmの平面正方形状で且つ厚みが0.4mmのポリエチレンテレフタレート発泡シートを用いた。なお、ポリエチレンテレフタレート発泡シートの平均気泡径、接触角、引張破断点伸度及び見掛け密度は表1に示した通りであった。ポリエチレンテレフタレート発泡シートは、樹脂成分としてポリエチレンテレフタレート(三井化学社製 商品名「SA−135」、融点:247.1℃)を含んでいた。
次に、アルミニウム板6aの離型処理面上に、重ね合わせた2枚の繊維強化プラスチック層形成材21を載置し、これらの繊維強化プラスチック層形成材21上にポリエチレンテレフタレート発泡シート1を載置した。
上記とは別に、上記と同一の繊維強化プラスチック層形成材21を2枚用意し、2枚の繊維強化プラスチック層形成材を上記と同様の要領で重ね合わせた。これらの重ね合わせた2枚の繊維強化プラスチック層形成材21をポリエチレンテレフタレート発泡シート1上に載置して積層体Bを作製した。
しかる後、積層体Bの上側の繊維強化プラスチック層形成材21上に押圧板6bを載置した後、押圧板6bを全面的に被覆するように、貫通孔を有するリリースフィルム3(AIRTECH社製 商品名「WL5200B−P」)及びブリーザークロス4(AIRTECH社製 商品名「AIRWEAVE N4」)を順に積層した。ブリーザークロス4は積層体Bの両側面(図5における左右側面)も被覆していた。リリースフィルム3は、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体フィルムから形成され、両面間に亘って貫通し且つ繊維強化プラスチック層形成材21中の熱硬化性樹脂が通過可能な貫通孔が多数、形成されていた。ブリーザークロス4は、ポリエステル樹脂繊維から構成された不織布から形成されており、熱硬化性樹脂を含浸可能に構成されていた。
積層体B上にバギングフィルム5(AIRTECH社製 商品名「WL7400」)を被せ、バギングフィルム5の外周縁部とこれに対向するアルミニウム板との間を封止材7としてシーラントテープ(AIRTECH社製 商品名「GS43MR」)を用いて気密的に接合して積層体Bをバギングフィルム5によって密封した。バギングフィルム5は、ナイロンフィルムから構成されていた。バギングフィルム5の一部にバックバルブ11(AIRTECH社製 商品名「VAC VALVE 402A」)を配置して積層構造体を作製した。
次に、上記積層構造体を加熱硬化試験用オートクレーブ(羽生田鉄工所社製 商品名「DL−2010」)内に供給し、積層構造体のバックバルブ11を真空ラインと接続し、バギングフィルム5で密封された空間部8内を積層体Bからこの積層体Bの側面を被覆しているブリーザークロス4の方向に排気して真空度0.10MPaに減圧した。なお、空間部8の減圧はその後も継続して行った。
しかる後、オートクレーブ内を昇温速度4℃/分にて90℃となるまで昇温して積層体Bを加熱し、オートクレーブ内を90℃に90分間に亘って加熱して繊維強化プラスチック層形成材中の熱硬化性樹脂を軟化させて流動性を有する状態として繊維強化プラスチック層形成材をポリエチレンテレフタレート発泡シートの表面に沿って変形させると共に、繊維強化プラスチック層形成材中に存在している空気を吸引、除去した。
次に、オートクレーブ内を0.3MPaのゲージ圧力に加圧して積層体Bに押圧力を加えると共に、オートクレーブ内を昇温速度4℃/分にて130℃となるまで昇温して積層体Bを加熱して、オートクレーブ内を130℃にて60分間に亘って加熱して繊維強化プラスチック層形成材中の熱硬化性樹脂を硬化させると共に、繊維強化プラスチック層形成材21、21を硬化した熱硬化性樹脂によってポリエチレンテレフタレート発泡シート1の両面に積層一体化させて繊維強化複合体Aを得た。繊維強化プラスチック層形成材21、21同士は、これに含まれている熱硬化性樹脂が硬化することによって一体化して繊維強化プラスチック層を形成していた。なお、積層体Bへの加圧によって繊維強化プラスチック層形成材21、21中の余分な熱硬化性樹脂はリリースフィルム3の貫通孔及び外方を通じてブリーザークロス4に吸収されていた。
オートクレーブ内を冷却してオートクレーブ内が60℃となった時点でオートクレーブ内の加圧を解除して大気圧に戻して繊維強化複合体Aを取り出した。繊維強化複合体Aは、ポリエチレンテレフタレート発泡シートの両面に繊維強化プラスチック層2、2が積層一体化されていた。
(実施例2)
実施例1で用いた繊維強化プラスチック層形成材を8枚、用意した。4枚の繊維強化プラスチック層形成材をそれらの経糸の長さ方向が順次、0°、90°、45°、−45°となるように順次、重ね合わせた。4枚の繊維強化プラスチック層形成材が全て重なり合っている部分を一辺16cmの平面正方形状となるように切断した。なお、経糸の長さ方向は、任意の繊維強化プラスチック層形成材の経糸の長さ方向を基準(0°)とし、この基準となる方向に対してなす角度を時計回り方向を+(プラス)、反時計回り方向を−(マイナス)として表記した。
繊維強化プラスチック層形成材として、4枚の繊維強化プラスチック層形成材を重ね合わせたものを用い、4枚の繊維強化プラスチック層形成材21をポリエチレンテレフタレート発泡シートの両面のそれぞれに積層したこと以外は実施例1と同様にして繊維強化複合体Aを得た。
(実施例3)
実施例1で用いた繊維強化プラスチック層形成材を12枚、用意した。6枚の繊維強化プラスチック層形成材をそれらの経糸の長さ方向が順次、0°、45°、90°、90°、−45°、0°となるように順次、重ね合わせた。6枚の繊維強化プラスチック層形成材が全て重なり合っている部分を一辺16cmの平面正方形状となるように切断した。なお、経糸の長さ方向は、任意の繊維強化プラスチック層形成材の経糸の長さ方向を基準(0°)とし、この基準となる方向に対してなす角度を時計回り方向を+(プラス)、反時計回り方向を−(マイナス)として表記した。
繊維強化プラスチック層形成材として、6枚の繊維強化プラスチック層形成材を重ね合わせたものを用い、6枚の繊維強化プラスチック層形成材21をポリエチレンテレフタレート発泡シートの両面のそれぞれに積層したこと以外は実施例1と同様にして繊維強化複合体Aを得た。
(実施例4)
合成樹脂発泡シートとして、表1に示した平均気泡径、接触角、引張破断点伸度及び見掛け密度を有する一辺が16cmの平面正方形状で且つ厚みが1.2mmのポリエチレンテレフタレート発泡シートを用いたこと以外は実施例1と同様にして繊維強化複合体Aを得た。
(実施例5)
合成樹脂発泡シートとして、表1に示した平均気泡径、接触角、引張破断点伸度及び見掛け密度を有する一辺が16cmの平面正方形状で且つ厚みが1.9mmのポリエチレンテレフタレート発泡シートを用いたこと以外は実施例1と同様にして繊維強化複合体Aを得た。
(実施例6)
合成樹脂発泡シートとして、表1に示した平均気泡径、接触角、引張破断点伸度及び見掛け密度を有する一辺が16cmの平面正方形状で且つ厚みが1.2mmの熱可塑性ポリエステル樹脂発泡シートを用いたこと以外は実施例1と同様にして繊維強化複合体Aを得た。熱可塑性ポリエステル樹脂発泡シートは、樹脂成分として、ポリエチレンテレフタレート(三井化学社製 商品名「SA−135」、融点:247.1℃)70重量%及びPCT樹脂(ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート)(イーストマン・ケミカル・カンパニー社製 商品名「トライタン FX−100」、芳香族ジカルボン酸成分:テレフタル酸、ジオール成分:1,4−シクロヘキサンジメタノール79モル%及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール21モル%、ガラス転移温度:108℃、固有粘度:0.72)30重量%を含んでいた。
(実施例8)
合成樹脂発泡シートとして、表1に示した平均気泡径、接触角、引張破断点伸度及び見掛け密度を有する一辺が16cmの平面正方形状で且つ厚みが0.4mmの変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートを用いたこと以外は実施例1と同様にして繊維強化複合体Aを得た。変性ポリフェニレンエーテル系樹脂発泡シートは、ポリフェニレンエーテルとポリスチレン系樹脂との混合物(ジーイープラスチックス社製 商品名「NORYL NLV025−111」、ポリフェニレンエーテル量:70重量%、ポリスチレン系樹脂量:30重量%)57.1重量%及びポリスチレン(東洋スチレン社製 商品名「HRM−26」)42.9重量%を混合してなる変性ポリフェニレンエーテル系樹脂(変性PPE、フェニレンエーテル(PPE)成分:40重量%、スチレン(PS)成分:60重量%)100重量部に対して粉末タルク0.55重量部を含んでいた。
(実施例9)
合成樹脂発泡シートとして、表1に示した平均気泡径、接触角、引張破断点伸度及び見掛け密度を有する一辺が16cmの平面正方形状で且つ厚みが0.8mmのポリアミド樹脂発泡シートを用いたこと以外は実施例1と同様にして繊維強化複合体Aを得た。ポリアミド樹脂発泡シートは、樹脂成分としてポリアミド樹脂(ユニチカ社製 商品名「A1025」、融点220℃)100重量部に対して改質剤としてスチレン・無水マレイン酸共重合体(アーコケミカル社製 「ダイラーク232」)2重量部を含み、且つ無機成分としてタルクの微粉末1重量部を含有していた。
(実施例10)
合成樹脂発泡シートとして、表1に示した平均気泡径、接触角、引張破断点伸度及び見掛け密度を有する一辺が350mmの平面正方形状で且つ厚みが0.4mmのポリエチレンテレフタレート発泡シートを用意した。
次に、炭素繊維からなる綾織の織物から形成された強化繊維基材に、熱硬化性樹脂として未硬化のエポキシ樹脂(ガラス転移温度:121℃)を40重量%含有させた厚みが0.23mmの繊維強化プラスチック層形成材(三菱レイヨン社製 商品名「パイロフィルプリプレグ TR3523−395GMP」、目付:200g/m2)を2枚、用意した。繊維強化プラスチック層形成材は、一辺250mmの平面正方形状であった。
2枚の繊維強化プラスチック層形成材をそれらの経糸の長さ方向が互いに90°の角度をなすように重ね合わせた。2枚の繊維強化プラスチック層形成材同士をこれに含まれているエポキシ樹脂によって一体化して1枚の繊維強化プラスチック層形成材とした。同様の要領で繊維強化プラスチック層形成材を更に1枚作製した。
上記ポリエチレンテレフタレート発泡シート1の両面に繊維強化プラスチック層形成材21を積層し、圧着用器具(石崎電機製作所社製 商品名「シェアーショットアイロン SI−39S」、器具重量860g)を用いて、圧着用器具の圧着面温度が18±3℃、圧着用器具のみの重量で圧着〔559±196Pa(5.7±2gf/cm2)〕して繊維強化プラスチック層形成材21に含まれているエポキシ樹脂によって、繊維強化プラスチック層形成材21をポリエチレンテレフタレート発泡シート1の両面に仮接着して、次に、離型フィルム3(クラボウ社製 商品名「オイディス」、特殊ポリスチレン系樹脂フィルム、厚み50μm)を繊維強化プラスチック層形成材21上に積層して積層体Mを製造した(積層工程)。
次に、積層体Mのポリエチレンテレフタレート発泡シート1をその対向する二辺の縁部においてクランプを用いて把持する一方、繊維強化プラスチック層形成材21は一切把持しなかった。しかる後、積層体Mをその繊維強化プラスチック層形成材21の表面温度が150℃となるように5秒間に亘って加熱して繊維強化プラスチック層形成材21に含浸されている未硬化のエポキシ樹脂を軟化させて硬化させることなく流動性を有する状態とした。この状態において、ポリエチレンテレフタレート発泡シート1と繊維強化プラスチック層形成材21との仮接着は完全に解除され、繊維強化プラスチック層形成材21はポリエチレンテレフタレート発泡シート1上において自由に移動可能な状態となっていた。
続いて、図6及び図7に示したように、上記積層体Mを雌雄金型41、42間に配設し、雌雄金型41、42を1分間に亘って型締めすることによって、プレス成形により、積層体Mの発泡シート1を所望形状に成形すると共に、繊維強化プラスチック層形成材21をポリエチレンテレフタレート発泡シート1上にて滑らしながら所望形状に成形した。プレス成形時、積層体Mの繊維強化プラスチック層形成材21の表面温度が140℃となるように保持し、繊維強化プラスチック層形成材21に含まれているエポキシ樹脂が流動性を保持するように制御した。
プレス成形時、上記積層体Mのポリエチレンテレフタレート発泡シート1を二次発泡させると共にポリエチレンテレフタレート発泡シートを構成しているポリエチレンテレフタレートの結晶化度を上昇させた。
次に、積層体Mをその繊維強化プラスチック層形成材21の表面温度が140℃となるように5分間に亘って加熱して、繊維強化プラスチック層形成材21に含有されている未硬化のエポキシ樹脂を硬化させて、繊維強化プラスチック層形成材の強化繊維同士を硬化したエポキシ樹脂で結着、固定して繊維強化プラスチック層形成材21を繊維強化プラスチック層H1とし、この繊維強化プラスチック層H1を硬化したエポキシ樹脂によって熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1の両面に積層一体化させて繊維強化複合体Aを製造した(硬化工程)。
しかる後、繊維強化複合体Aをその繊維強化プラスチック層2の表面温度が30℃以下となるまで冷却した後、雌雄金型41、42を開いて繊維強化複合体Aを得た。得られた繊維強化複合体Aは、硬化したエポキシ樹脂によって強化繊維同士が結着され且つ雌雄金型41、42に沿って所望形状に成形された繊維強化プラスチック層2がポリエチレンテレフタレート発泡シート1の表面に沿って全面的に密着した状態に積層一体化されていた。
(実施例11)
合成樹脂発泡シートとして、表1に示した平均気泡径、接触角、引張破断点伸度及び見掛け密度を有する一辺が350mmの平面正方形状で且つ厚みが1.2mmのポリエチレンテレフタレート発泡シートを用いたこと以外は実施例10と同様にして繊維強化複合体Aを得た。
得られた繊維強化複合体Aは、硬化したエポキシ樹脂によって強化繊維同士が結着、固定され且つ雌雄金型41、42に沿って所望形状に成形された繊維強化プラスチック層2が、硬化したエポキシ樹脂によって、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1の両面にそれらの表面に沿って全面的に密着した状態に積層一体化されていた。
(実施例12)
合成樹脂発泡シートとして、表1に示した平均気泡径、接触角、引張破断点伸度及び見掛け密度を有する一辺が350mmの平面正方形状で且つ厚みが0.4mmのポリエチレンテレフタレート発泡シートを用意した。
次に、積層一体化する前の繊維強化プラスチック層形成材として、ガラス繊維(日東紡績社製 商品名「WE181D」)からなる朱子織の織物から形成された強化繊維基材に、テレフタル酸とアジピン酸を主たるジカルボン酸成分とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分としてなる結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂(東京インキ社製 商品名「G−125」、融点:100.6℃、ガラス転移温度:8.3℃)を強化繊維基材60重量部に対して40重量部含浸させた繊維強化プラスチック層形成材を2枚、用意した。繊維強化プラスチック層形成材は、一辺250mmの平面正方形状であった。
2枚の繊維強化プラスチック層形成材をそれらの経糸の長さ方向が互いに90°の角度をなすように重ね合わせた。2枚の繊維強化プラスチック層形成材同士をこれに含まれている熱可塑性エポキシ樹脂によって一体化して1枚の繊維強化プラスチック層形成材とした。同様の要領で繊維強化プラスチック層形成材を更に1枚作製した。
上記ポリエチレンテレフタレート発泡シート1の両面に繊維強化プラスチック層形成材21を積層し、圧着用器具(石崎電機製作所社製 商品名「シェアーショットアイロン SI−39S」、器具重量860g)を用いて、圧着用器具の圧着面温度が110℃、圧着用器具のみの重量で圧着〔559±196Pa(5.7±2gf/cm2)〕して繊維強化プラスチック層形成材21に含まれている結晶性熱可塑性エポキシ樹脂によって、繊維強化プラスチック層形成材21をポリエチレンテレフタレート発泡シート1の両面に仮接着して、次に、離型フィルム3(クラボウ社製 商品名「オイディス」、特殊ポリスチレン系樹脂フィルム、厚み50μm)を繊維強化プラスチック層形成材21上に積層して積層体Mを製造した(積層工程)。
次に、積層体Mのポリエチレンテレフタレート発泡シート1をその対向する二辺の縁部においてクランプを用いて把持する一方、繊維強化プラスチック層形成材21は一切把持しなかった。しかる後、積層体Mをその繊維強化プラスチック層形成材21の表面温度が150℃となるように30秒間に亘って加熱して繊維強化プラスチック層形成材21に含浸されている結晶性熱可塑性エポキシ樹脂を軟化させて流動性を有する状態とした。この状態において、ポリエチレンテレフタレート発泡シート1と繊維強化プラスチック層形成材21との仮接着は完全に解除され、繊維強化プラスチック層形成材21はポリエチレンテレフタレート発泡シート1上において自由に移動可能な状態となっていた。
続いて、図6及び図7に示したように、上記積層体Mを雌雄金型41、42間に配設し、雌雄金型41、42を1分間に亘って型締めすることによって、プレス成形により、積層体Mの発泡シート1を所望形状に成形すると共に、繊維強化プラスチック層形成材21をポリエチレンテレフタレート発泡シート1上にて滑らしながら所望形状に成形した。プレス成形時、積層体Mの繊維強化プラスチック層形成材21の表面温度が110℃となるように保持し、繊維強化プラスチック層形成材21に含まれている熱可塑性エポキシ樹脂が流動性を保持するように制御した。
プレス成形時、上記積層体Mのポリエチレンテレフタレート発泡シート1を二次発泡させると共にポリエチレンテレフタレート発泡シートを構成しているポリエチレンテレフタレートの結晶化度を上昇させた。
次に、積層体Mをその繊維強化プラスチック層形成材21の表面温度が30℃以下となるまで冷却した後、雌雄金型41、42を開いて繊維強化複合体Aを得た。得られた繊維強化複合体Aは、結晶性熱可塑性エポキシ樹脂によって強化繊維同士が結着、固定され且つ雌雄金型41、42に沿って所望形状に成形された繊維強化プラスチック層2が、結晶性熱可塑性エポキシ樹脂によって、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1の両面にそれらの表面に沿って全面的に密着した状態に積層一体化されていた。
(実施例13)
積層一体化させる前の繊維強化プラスチック層形成材として、ガラス繊維(日東紡績社製 商品名「WE181D」)からなる朱子織の織物から形成された強化繊維基材に熱可塑性エポキシ樹脂(ガラス転移温度:97℃)が40重量%含浸され且つ一辺が250mmの平面正方形状の繊維強化プラスチック層形成材(長瀬ケムテック社製 商品名「NNGF60−03s」、目付:300g/m2、厚み:0.3mm)を用いたこと、繊維強化プラスチック層形成材21をポリエチレンテレフタレート発泡シート1の両面に仮接着する際の圧着用器具の圧着面温度を100℃としたこと、プレス成形時、積層体Mの繊維強化プラスチック層形成材21の表面温度が100℃となるように保持したこと以外は実施例12と同様にして繊維強化複合体Aを得た。
得られた繊維強化複合体Aは、熱可塑性エポキシ樹脂によって強化繊維同士が結着、固定され且つ雌雄金型41、42に沿って所望形状に成形された繊維強化プラスチック層2が、熱可塑性エポキシ樹脂によって、ポリエチレンテレフタレート発泡シート1の両面にそれらの表面に沿って全面的に密着した状態に積層一体化されていた。
(比較例1)
合成樹脂発泡シートの代わりにポリプロピレン発泡シート(PP、積水化成品工業社製 商品名「ミクロレン」)を用いたこと以外は実施例1と同様にして繊維強化複合体を製造しようとしたが、ポリプロピレン発泡シートと繊維強化プラスチック層形成材とが一体化せず、繊維強化複合体を得ることができなかった。
(比較例2)
合成樹脂発泡としてポリメタクリルイミド発泡シート(PMI、ダイセルエボニック社製 商品名「ロハセル IG−51」)を用いたこと以外は実施例1と同様にして繊維強化複合体を得た。なお、ポリメタクリルイミド発泡シートの両面は、非発泡のスキン層が除去されており、気泡断面が露出していた。
(比較例3)
合成樹脂発泡シートとして、表1に示した平均気泡径、接触角、引張破断点伸度及び見掛け密度を有する一辺が16cmの平面正方形状で且つ厚みが2.5mmのポリエチレンテレフタレート発泡シートを用いたこと以外は実施例1と同様にして繊維強化複合体を得た。
(比較例4)
合成樹脂発泡シートとして、表1に示した平均気泡径、接触角、引張破断点伸度及び見掛け密度を有する一辺が16cmの平面正方形状で且つ厚みが0.6mmのポリプロピレン発泡シートを用いたこと以外は実施例12と同様にして繊維強化複合体を得た。
(比較例5)
合成樹脂発泡シートとして、表1に示した平均気泡径、接触角、引張破断点伸度及び見掛け密度を有する一辺が16cmの平面正方形状で且つ厚みが0.6mmのポリプロピレン発泡シートを用いたこと以外は実施例12と同様にして繊維強化複合体を得た。
得られた繊維強化複合体の合成樹脂発泡シートについて平均気泡径、引張破断点伸度、厚み及び見掛け密度を測定し、その結果を表2に示した。得られた繊維強化複合体の繊維強化プラスチック層について、強化繊維の含有率及び厚みを測定し、その結果を表2に示した。得られた繊維強化複合体について、全体厚み、全体の見掛け密度、最大点エネルギー及び比吸収エネルギーを下記の要領で測定し、その結果を表2に示した。
なお、繊維強化プラスチックの発泡シート及び繊維強化プラスチック層の各種物性の測定にあたっては、繊維強化複合体の発泡シートと繊維強化プラスチック層とを分離した上で行った。
(最大点エネルギー及び比吸収エネルギー)
繊維強化複合体から縦25mm×横150mmの平面長方形状の試験片を5個切り出した。各試験片について、試験片の大きさ以外はJIS K7221−1:2006「硬質発泡プラスチック−曲げ試験−第1部:たわみ特性の求め方」に準拠して測定した。即ち、試験片を温度23±2℃、湿度50±5%の環境下で16時間以上に亘って維持した後、温度23±2℃、湿度50±5%の環境下で測定を行った。テンシロン万能試験機(オリエンテック社製 商品名「UCT−10T」)及び万能試験機データ処理ソフト(ソフトブレーン社製 商品名「UTPS−237S」)を用いて、圧縮速度10mm/分、加圧くさび5R、支持台5Rとして支点間距離100mmの条件下にて測定した。試験片の数は5個とした。
比吸収エネルギーは、最大点エネルギーを試験片重量で割った値とした。各試験片の最大点エネルギー及び比吸収エネルギーのそれぞれの相加平均値を、最大点エネルギー及び比吸収エネルギーとした。最大点エネルギーは、耐衝撃性の指標となり、大きいほど耐衝撃性に優れている。
Figure 0006151962
Figure 0006151962


1 合成樹脂発泡シート
2 繊維強化プラスチック層
3 リリースフィルム
4 ブリーザークロス
5 バギングフィルム
6a、6b 押圧板
7 封止材
8 空間部
21 繊維強化プラスチック層形成材
A 繊維強化複合体
B 積層体

Claims (6)

  1. 平均気泡径が10〜400μmで且つ接触角が30〜82°である合成樹脂発泡シートと、この合成樹脂発泡シートの片面又は両面に積層一体化された繊維強化プラスチック層とを有することを特徴とする繊維強化複合体。
  2. 合成樹脂発泡シートの引張破断点伸度が5〜30%であることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化複合体。
  3. 合成樹脂発泡シートの厚みが0.1〜5mmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の繊維強化複合体。
  4. 繊維強化プラスチック層中の強化繊維の含有率が30〜80重量%であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の繊維強化複合体。
  5. 合成樹脂発泡シートの見掛け密度が0.1〜1.1g/cm3であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の繊維強化複合体。
  6. 見掛け密度が0.3〜1.5g/cm3であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の繊維強化複合体。
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