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JP6140974B2 - 落下物防護装置 - Google Patents

落下物防護装置 Download PDF

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JP6140974B2
JP6140974B2 JP2012234024A JP2012234024A JP6140974B2 JP 6140974 B2 JP6140974 B2 JP 6140974B2 JP 2012234024 A JP2012234024 A JP 2012234024A JP 2012234024 A JP2012234024 A JP 2012234024A JP 6140974 B2 JP6140974 B2 JP 6140974B2
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Description

本発明は、斜面からの落石や雪崩等の落下物を防御する落下物防護装置に関する。
この種の従来技術として、例えば、下記特許文献1に示す落石防護装置100がある(図11参照)。
この落石防護装置100は、斜面幅方向に間隔をあけて立設された複数の支柱101と、これら複数の支柱101によって保持されると共にその端部がアンカー102に固定される上側サポートロープ103及び下側サポートロープ104と、支柱101に対してその斜面谷側に配置されると共に上縁及び下縁が各サポートロープに連結される金網105とを備えている。そして、この金網105によって斜面からの落石を受け止め、近隣の道路等に対する落石を防止している。
また、各サポートロープ103,104とアンカー102との間には、衝撃吸収用のブレーキ装置103a,104aが組み込まれている(図11,図12参照)。このブレーキ装置103a,104aは、鋼製のループ管110と、ループ管110の両端部近傍に組み付けられた緊締部材111とで構成され、ループ管110の一端からサポートロープ103,104を挿入して同ロープの一区間をループ状に巻き回した後、ループ管の両端部を緊締部材111によってきつく共締めすることでロープとループ管内面との間に摩擦力を発生させる。すなわち、摩擦力によってサポートロープに一定のブレーキを駆けながらロープの延伸を許容する装置であり、このようにブレーキを駆けながらロープを繰り出すことで落石の衝撃を緩和している。
また、落石防護柵用の防護網として、例えば、下記特許文献2に示すエネルギー吸収型の防護網もある。
この防護網は、素線の一つ一つをコイル状に加工し、その隣り合う素線において、一方の素線を他の素線の内側に差し込むと共に、これら素線同士が各ピッチにおいて折れ曲がることなく内接するように特殊編網した防護網である。
この防護網は、従来型の汎用ひし形金網と異なり、各素線がその交点で折り曲げられること無く内接しているため、衝撃作用時には、引っ張り荷重に起因した素線の伸びに先立って各素線がその交点で曲げ荷重を受ける。このため各素線は落石の衝突に伴いその交点で弾性又は塑性変形を起し、衝突エネルギーの多くは、この交点部分における各素線の曲げ変形によって即座に吸収される。
すなわち、各素線をその線方向に変形させることに留まらず、その交点で各素線を積極的に折り曲げることで高いエネルギー吸収力を得ている。
特開2009−024378 特開2000−199210
ところで、上記したブレーキ装置103a,104aは、ロープとの間に働く摩擦を利用してブレーキをかけるため、エネルギーの吸収力が最大限に発揮されるまで時間がかかる。すなわち、摩擦を利用したブレーキ装置は、初期制動が弱く指数関数的にエネルギーの吸収量が増加するため、エネルギー量の最も高い衝突初期において落石の衝突エネルギーを十分に吸収できなかった。
また、この点に絡み、上記した落石防護柵では、衝突初期のブレーキ力が不足するため衝撃を受けたロープは必要以上に伸びてしまう。このため防護網が支柱に対して斜面谷側に大きく張り出してしまう。よって、落石防護柵を設置するときには、保護対象の道路等から支柱を十分離して設置しなければならず、その設置場所は施工性の悪い斜面を選ばざるを得なかった。
また、ブレーキ力の不足を補うべく上記したエネルギー吸収型防護網の適用も考えられるが、このエネルギー吸収型の防護網は、各網目の変形を促して衝撃を吸収するため、従来型の防護網に較べて撓みやすく、単に既存の防護網と交換しただけでは防護網の迫り出し防止に対する効果が薄かった。
本発明は、このような技術的課題を解決するためになされたもので、衝突エネルギーの吸収性能に優れ、斜面谷側への防護網の迫り出しも少ない落下物防護装置の提供を課題とする。
上記した技術的課題を解決するため本発明は、斜面からの落下物を受け止める防護網と、この防護網を支持する支柱と、を備えた落下物防護装置であって、
前記防護網は、その各素線が螺旋状に形成され、且つ隣合う素線同士が両ピッチ間で折れ曲がることなく交差し、
前記支柱は、斜面山側に空間を隔てて前記防護網を支持していることを特徴とする。
このように構成された本発明の落下物防護装置によれば、防護網として各素線が折れ曲がることなく交差したエネルギー吸収型の防護網を備えている。また、防護網は支柱によって斜面山側に支持されると共に、その防護網と支柱との間には空間が確保されている。
このため防護網に落石が衝突すると、その衝突エネルギーは防護網の変形を伴って衝突直後から吸収される。また、衝突エネルギーの吸収に伴って防護網は斜面谷側に撓むが、その撓みは支柱と防護網との間に確保された空間の幅だけ実質的に少なくなる。つまり、撓みやすいエネルギー吸収型の防護網を用いても支柱に対する斜面谷側への迫り出しが抑制されるため、その分、支柱を斜面から離して設置することができる。
また、前記空間は、前記支柱に対する防護網の衝突を抑制するための空間であってもよい。
この構成によれば、衝突エネルギーの吸収に伴って防護網が斜面谷側に撓んでも、この防護網と支柱との間に確保された空間によって支柱に対する防護網の衝突が抑制される。
また、前記防護網は、高張力鋼線を素線としてもよい。
この構成によれば、エネルギーの吸収力に富む網目形状に加え、高張力鋼線の有する引張強度を防護網に与えることでできる。すなわち、柔軟な網目構造を維持しつつ、その破網に対する剛性も高めることができる。
また、前記支柱には、この支柱から斜面山側に張り出された支持部が設けられ、
前記防護網は、前記支持部を介して斜面山側に支持されている構成でもよい。
この構成によれば、斜面山側に張り出された支持部を備え、防護網は、この支持部を介して斜面山側に支持されている。すなわち、支持部の張り出し量に相当する空間が支柱と防護網との間に自ずと確保される。
また、前記防護網を斜面幅方向に支持する横ロープと、この横ロープを固定するためのアンカーとを有し、前記横ロープとアンカーとの間には、この横ロープに作用する衝撃を吸収するための衝撃吸収機構が設けられている構成でもよい。
この構成によれば、落石の衝撃が、エネルギー吸収型の防護網のみならず、横ロープを通じて衝撃吸収機構に伝達されて吸収される。従って、その相乗効果により斜面谷側に対する防護網の迫り出しが一層少なくなる。
また、前記衝撃吸収機構は、前記横ロープに較べて縦弾性係数が小さく且つ同じ長さで比較したときに、その破断に至る伸びしろが前記横ロープに較べて長いエネルギー吸収ロープを備え、前記エネルギー吸収ロープは、前記横ロープとアンカーとの間に接続されている構成でもよい。
この構成では、摩擦ブレーキを利用せずにロープそのものの変形に委ねて衝突エネルギーを吸収させるため、エネルギー吸収型の防護網と共に衝突直後から衝突エネルギーをロス無く吸収できる。すなわち、エネルギー量の最も高い衝突初期において衝突エネルギーを効率よく吸収できる。
以上、本発明によれば、衝突エネルギーの吸収性能に優れ、斜面谷側への防護網の迫り出しも少ない落下物防護装置を提供できる。
本実施の形態に示す落下物防護装置の正面図。 本実施の形態に示す落下物防護装置の平面図。 本実施の形態に示す支柱の側面図。 本実施の形態に示す衝撃吸収機構の正面図。 本実施の形態に示す衝撃吸収機構の他の仕様を示す正面図。 本実施の形態に示す衝撃吸収機構の他の仕様を示す正面図。 本実施の形態に示す高張力防護網の要部拡大図。 本実施の形態に示す高張力防護網の防護性能を比較・評価するためのグラフ。 図6で用いる試験体(交点強度供試体)を示す図。 本実施の形態に示す支柱の他の仕様を示す側面図。 従来の落石防護柵を示す斜視図。 従来の落石防護柵に組み込まれたブレーキ装置の斜視図。
以下、本発明に係る落下物防護装置1を説明する。
本実施の形態に示す落下物防護装置1は、斜面の下縁(法尻)に沿ってその斜面幅方向(左右方向)に立設される複数本の支柱10と、各支柱10を斜面山側に引きつけて固定するための支柱控えロープ2と、支柱10に対してその上下方向に配索される連結部材である支柱補強ロープ3と、各支柱10に支持されて斜面幅方向に延びる上部横ロープ4及び下部横ロープ5と、これら上部横ロープ4及び下部横ロープ5間に設けられる高張力防護網である高張力金網6と、を備えている。
支柱10は、その本体部分11がφ114.3mm×肉厚4.5mmの鋼管製で、本体部分11の下端には、地面に設けられたアンカー20に支柱10を繋ぎ止めるためのヒンジ17が設けられている。また、ヒンジの支軸17aは、斜面上下方向と直交するように配置され、斜面に対してその上下方向に傾斜可能に支持されている。
また、支柱10の本体部分11には、上記した各種ロープを組み付けるためのブラケット(面材支持部)12が設けられている。
このブラケット12は、支柱10の頭部と地面直近の上下2カ所に設けられ、支柱10を立てた状態で斜面山側に張り出すように溶接されている。
また、各ブラケット12,12の先端部分には支柱補強ロープ3を結索するためのU字ボルト13が組み付けられている。そして、各ブラケット12,12に支柱補強ロープ3の端部がそれぞれ接続され、両ブラケット12,12は支柱補強ロープ3によって相互に連結されている。
なお、支柱補強ロープ3には、3×7φ18、両端アイ加工の鋼製ワイヤロープを採用している。また、ブラケット12の全長は、支柱補強ロープ3と支柱本体部分11との間に150mm以上の空間が確保されるように設計されている。また、支柱補強ロープ3をブラケット12に組み付けた状態で各U字ボルト13を締め込むと支柱補強ロープ3にテンションが掛かり、支柱補強ロープ3はブラケット12,12間でしっかりと張られる。
また、支柱10の頭部には通しボルト14が組み付けられている。この通しボルト14は支柱10の頭部を横方向から貫通し、支柱頭部より差し入れた支柱控えロープ2は、この通しボルト14によって支柱10の頭部に係止される。
ここで支柱控えロープ2の端部には、支柱10の直径よりも大きい輪(ループ)を有するアイ加工が施されており、支柱頭部が挿通された支柱控えロープ2の端部がこの通しボルト14に引っ掛かることで、支柱控えロープ2は支柱10の頭部から滑り落ちることなく支柱10の頭部に係止される。
続いて、斜面幅方向に支持される上部横ロープ4及び下部横ロープ5を説明する。
上部横ロープ4及び下部横ロープ5は、3×7φ18の鋼製ワイヤロープであり、支柱10の上下に設けられたブラケット12,12を介して支柱10の斜面山側に支持されている。詳細には、ブラケット12に組み付けられた支柱補強ロープ3のアイ加工部分(リング状端部3b,3c)の輪を通すように各横ロープ4,5が配索されている。すなわち、各横ロープ4,5はブラケット12にその線方向の動きを拘束されることなく支持されている。
また、本実施の形態に示す落下物防護装置1では、支柱補強ロープ3を除く各ロープ2,4,5に対して、落石衝突時のエネルギーを吸収するための衝撃吸収機構50が設けられている。そして、この衝撃吸収機構50を介して各ロープ2,4,5をアンカーに固定している。なお、図1及び図2の2a,4a,5aは、各ロープ2,4,5をアンカー側に引きつけて固定するためのターンバックルであり、ターンバックル2aは、必須のものではなく、必要に応じて設けられる。
衝撃吸収機構50は、鋼製の汎用ワイヤロープ(例えば、JIS G 3525に規定される硬鋼線の撚りロープ)と、破断荷重近傍で高いエネルギー吸収力を発揮するエネルギー吸収ロープ(東京製綱製)とを組み合わせて構成している。
具体的には、実長1〜2m程のエネルギー吸収ロープ51に対して1.3〜1.5倍程度の余長を有する従来型の汎用鋼製ロープ52を付設し、エネルギー吸収ロープ10の各端部を汎用鋼製ロープ52側にかしめ束ね合わせている。
なお、その仕様としては、エネルギー吸収ロープ51の両端部を汎用鋼製ロープ52の両端部にかしめ束ね合わせてアイ加工を施した両端末止めのもの(図4参照)、並びに、一端にアイ加工を施し、他端は現場合わせで巻付グリップ53を継ぎ足せるようにした切りっぱなしの仕様などがあり(図5参照)、各部ロープ2,4,5の端末形状に合わせて衝撃吸収機構50の仕様が適宜選択されている。また、本実施の形態では、従来型の汎用鋼製ロープ52として3×7φ18の構成のワイヤロープを採用し、エネルギー吸収ロープ51には3×7φ18の構成のものを採用している。
また、エネルギー吸収ロープ51の特性を説明すると、エネルギー吸収ロープ51は、汎用鋼製ロープ52に対して、縦弾性係数が小さく、破断荷重付近での伸びが大きい特性を有する。
この特性は、ロープの特殊な組成比率によって得られ、本出願人が出願した例では、成分比率C:0.001%〜0.15%、Si:0.01%〜1.5%、Mn:0.3%〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.02%以下、Cr:14.0%〜26.0%、Ni:86.0%〜22.0%、N:0.02%以下、残部実質上Fe等の軟質ステンレス線からなる鋼素線を伸線して撚り加工した後、このロープをオーステナイト生成熱処理して得ることができる。
表1にエネルギー吸収ロープ1本あたりのロープ長とエネルギー吸収量との関係を示す。
なお、試験体のロープ仕様は、φ18(3×7 SS/O)、断面積A:134m、破断荷重RBS:80kN、弾性伸びEL1:5%、塑性伸びEL2:15%(衝突エネルギーを受けた後の伸び EL1<EL2)、ロープ長L1:1〜20mである。
Figure 0006140974
また、エネルギー吸収量の算出式は下記式によって導かれる。
Figure 0006140974
上記数式によれば、弾性伸びEL1、及び塑性伸びEL2の値が共に大きい程、ロープ1本あたりのエネルギー吸収量が増える。すなわち、伸びやすいロープ材ほど、エネルギー吸収率が高いといえる。
また、各種試験によれば、横ロープ4,5や支柱控えロープ2に適用される従来型の汎用鋼製ロープ52の破断荷重付近における伸びは3〜5%に留まり、一方のエネルギー吸収ロープ51の破断荷重付近における伸びは50%以上の伸びを示す。つまり、落石に伴いエネルギー吸収ロープ51が引っ張られて塑性変形を起こすと、従来型の鋼製ロープに対して数倍の衝突エネルギーが吸収される。
なお、エネルギー吸収ロープとしては、上記表1に示した試験体のロープの他、他の仕様のものを用いることができる。
なお、上記のようにエネルギー吸収ロープ51は塑性変形域で多くのエネルギーを吸収するため、エネルギーの吸収量が飽和するとロープが破断し易くなる。このため本衝撃吸収機構50では、エネルギー吸収ロープ51に従来型の汎用鋼製ロープ52を余長を持たせて並列に接続し、仮にエネルギー吸収ロープ51が伸びきって破断してもこの従来型の汎用鋼製ロープ52によって各ロープ2,4,5とアンカーとを繋ぎ止めるようにしている。
このように本実施の形態に示す衝撃吸収機構50は、汎用鋼製ロープ52と、この汎用鋼製ロープ52に較べて縦弾性係数が小さく且つ同じ長さで比較したときに、その破断に至る伸びしろが汎用鋼製ロープ52に較べて長いエネルギー吸収ロープ51と、を有する。また、汎用鋼製ロープ52を撓めてエネルギー吸収ロープ51に対する余長を確保すると共に、その余長が確保された状態でエネルギー吸収ロープ52と汎用鋼製ロープ52とを並列に接続している。
上記のような衝撃吸収機構50は、例えば、次のような変形を許容するものである。すなわち、エネルギー吸収ロープ51と汎用性鋼製ロープ52とは、これらを互いに接合することなく、図6に示すように、それぞれを分割して別体に形成し、それぞれの端部を、ロープ4とターンバックル4aとに接続するようにしてもよい。このようにすれば、落下物の衝突による荷重によって変形したロープのみを交換すればよい。
そして、このように衝撃吸収機構50が組み込まれた各ロープ2,4,5によって高張力防護網である高張力金網6が斜面幅方向に支持されている。
高張力金網6は、高張力鋼線を素線として、この素線をひし形状に編網加工して得られる。また、図7に示すように素線6aと素線6bとがその両ピッチ間において交差する箇所6dでは、各素線6a,6bが折れ曲がることなく弧を描くように交差及び内接している。
具体的には、各素線に楕円状の螺旋を描くスパイラル加工を施し、隣り合う素線において、一方の素線を他の素線のピッチ間に順次差し込むように編み込む。また、同様にして他の素線6cを防護網6の幅方向に継ぎ足して網状にする。
なお、本実施の形態では、高張力鋼線として径3.2φ〜5.0φ(好ましくは4.0φ)、断面強度1400N/mm2級の線材を使用する。また、網目としては50mmの等辺ひし形目合い若しくは縦長ひし形状目合いを採用し、厚みは20〜30mm程度となるように各素線の加工量を調節している。
また、本構造の高張力防護網である高張力金網6は、落石防護用の金網として普及している従来型のひし形金網(JIS G 3552 に規定される亜鉛めっき鉄線のひし形金網)に較べてエネルギー吸収性能が高く、破網しづらい特性を有する。この特性は、上記した特殊な編網加工と、線材に用いられる高張力鋼線との相互作用によって得られる。
始めに落石等による衝撃が高張力金網6に加わると、楕円状の螺旋を描く各素線は、その螺旋の進行方向から見て楕円の長辺方向(図7中矢印A,B方向)に弾性変形しながら衝突エネルギーを吸収する。すなわち、衝突の初期では各素線がその交点で曲げ荷重を受けながら高張力金網6の幅方向に弾性変形して衝突エネルギーを吸収する。続いて、各素線の交点における変形が塑性域に達すると各素線は交点で折り曲げられ、この塑性変形によって衝突エネルギーがさらに吸収される。そして、各交点間においてその線方向に引っ張り荷重が作用すると、各素線は線方向に弾性変形及び塑性変形して衝突エネルギーを吸収する。
このように本高張力防護網である高張力金網6では、素線をその線方向に変形させることに留まらず、衝撃によって各素線が交点で折れ曲がるように編網したため、従来型のひし形金網等に較べて衝突エネルギーの吸収力が高くなっている。また、各素線の変形に委ねて衝突エネルギーを吸収させるため、衝突エネルギーは、衝撃作用直後からロス無く吸収される。
なお、図8は、上記仕様の高張力防護網6と従来型のひし形金網との防護性能を比較・評価するための荷重−伸び曲線グラフである。
各グラフにおいて縦軸は、試験荷重(単位:N)、横軸は、変形量(mm)を示している。
また、本実施の形態に示す高張力金網6の評価結果を図8(a)の実線に示し、比較対象の従来型ひし形金網の評価結果を図8(b)の実線に示す。また、試験体として、各金網を再現した交点強度供試体を使用した。なお、各試験体で再現した網仕様は、交点角度85°φ4の編網で比較した。また、図9に試験体を示している。各試験体60は上下一対の凸型ピース61,61からなり、この凸型ピース61,61間に素線62を編網して目合いを再現している。また、試験体60は各防護網毎に3体準備し、この試験体を試験機にかけて上下に引っ張り荷重をかけることで、その耐荷重を計測する。
また、その評価方法は両者のグラフを比較することで把握できる。なお、図8(a)において実線が途切れているものがあるが、これは試験中に試験体が試験機より外れたためであり、高張力金網6の試験結果は残る2本の実線a,bで評価した。
図8(a)及び図8(b)を比較すると、図8(b)に示す従来型の金網は各試行(実線c)において約7000N付近で約13mm程度の伸びを示し、図8(a)に示す高張力金網(実線a)では16000N付近で約30mm前後の伸びを示している。
すなわち、高張力金網6は耐荷重及び伸びしろが多く、従来型のひし形金網に比べて最大許容荷重で2倍程度高いと言える。
続いて、上記した高張力金網6の組み付け方法を説明する。この高張力金網6は、上部横ロープ4及び下部横ロープ5間に結合コイル16(φ4mm×70mm×300mm)を使用して組み付けられている。詳しくは、上部横ロープ4から下部横ロープ5にかけて斜面山側から高張力金網6を被せ、さらに高張力金網6の上縁及び下縁を裏側に折り返して結合コイル16を組み付ける。なお、結合コイル16は高張力金網6の上縁及び下縁に2カ所づつ設けられている。また、図1に示すように支柱10,10間に高張力金網6の切れ目がある場合には、結合コイル16を高張力金網6の縦方向に組み込んで金網同士を繋ぎ合わせる。
なお、支柱10の上下方向に配索される支柱補強ロープ3と高張力金網6とは固定されておらず、高張力金網6は支柱補強ロープ3にその動きを拘束されることなく全域で撓むことができる。つまり、高張力金網6は支柱補強ロープ3に対して移動可能に設けられている。
また、高張力金網6が横ロープ4,5に組み付けられた状態で、この高張力金網6と支柱本体部分11との間には150mm程度の幅で空間8が確保されている。この空間8は、支柱10の斜面山側においてその支柱10から離れた位置に懸架されている横ロープ4,5に高張力金網6を組み付けることで自ずと確保される。
このように本実施の形態に示す落下物防護装置1によれば、支柱10から斜面山側に張り出されたブラケット12によって支柱10と高張力金網6との間に空間8が確保されている。また、高張力金網6として、エネルギー吸収力に富む柔軟な網目構造の防護網を採用しているが、落石の衝突に伴いこの高張力金網6が斜面谷側に撓んだとしても、その撓みは支柱10と高張力金網6との間に確保された空間8の幅だけ実質的に少なくなる。つまり、撓みやすいエネルギー吸収型の高張力金網6を用いても支柱10に対する斜面谷側への迫り出しを抑制できるため、その分、施工性の悪い斜面から支柱10を離して設置できる。
また、本実施の形態では、高張力金網6と支柱10との衝突が懸念される斜面山側に高張力金網6を配置しているが、高張力金網6が落石に伴って支柱10側に撓んだとしても、その支柱10と高張力金網6との間には高張力金網6の衝突を抑制し得る空間8が確保されているため衝突が抑制される。また、このような構造を有するため、本落下物防護装置1によれば支柱10に対してその斜面山側から高張力金網6を宛うことができる。よって、高張力金網6を組み付ける際の足場の確保が容易になる。
また、本実施の形態では、高張力鋼線を素線として破網に対する剛性を高めている。すなわち、エネルギー吸収力に富む柔軟な構造を維持しつつ、さらに破れにくい網仕様とすることで落下物防護装置の耐衝撃荷重性能を高めている。
また、エネルギー吸収型の高張力金網6のみならず、衝撃吸収機構50によっても落石の衝撃エネルギーを吸収するため、その相乗効果により斜面谷側に対する高張力金網6の迫り出しが一層少なくなる。
また、衝撃吸収機構50として、摩擦ブレーキを利用せずにロープそのものの変形に委ねて衝突エネルギーを吸収するエネルギー吸収ロープ51を用いるため、エネルギー吸収型の高張力金網6と共に衝突エネルギーをその作用直後からロス無く吸収できる。つまり、エネルギー量の最も高い衝突初期にその落石の衝突エネルギーを抑えることができるため、各部に継続して掛かる負荷を早期に減らすことができる。また、このことは、落下物防護装置1の強度設計においてコスト的に有利な設計が可能になる。
なお、上記した実施の形態はあくまでも一例であり、その細部は各種仕様に応じて変更可能である。
例えば、本実施の形態では 支柱10の下部にヒンジ17を設けて支柱10を設置しているが、例えば、地中に埋設した鋼管杭18を利用して支柱10を設置することもできる。この場合、図10に示すように支柱10の下端から、例えば約1/6を地中に埋設する。埋設する支柱10の下端の長さは上記に限定されるものではないが、具体的には、基礎となる鋼管杭18を地中深くまで差し込み、次いで、この鋼管杭18の内部に支柱10の下端を差し入れ、更にその隙間にコンクリート19を流し込んで支柱10を定着させる。
また、本実施の形態では、支柱10に設けられるブラケット12の張り出し寸法を150mmに設定したが、その設定は、落石の規模、施工場所の形状等を考慮して数百mmから数千mmの範囲で適宜変更可能である。また、落下物防護装置1に組み込まれる各ロープの本数、仕様、並びに高張力金網6の仕様等も耐荷重等を考慮して変更可能である。
また、本実施の形態では、衝撃吸収機構50として衝撃作用直後からロスなくエネルギーを吸収できるエネルギー吸収ロープ51を用いたが、勿論、摩擦ブレーキを利用した従来型の衝撃吸収機構を採用してもよい。
また、本実施の形態では、本落下物防護装置1を斜面の下縁(法尻)に沿って設けたが、斜面中腹に設けても良い。また、落下物として落石を例に説明したが、本落下物防護装置1は、雪崩、土砂等に対しても有用である。
1 落下物防護装置
2 支柱控えロープ
2a ターンバックル
3 支柱補強ロープ
3b,3c 支柱補強ロープのアイ加工部分(リング状端部)
4 上部横ロープ
4a ターンバックル
5 下部横ロープ
5a ターンバックル
6 高張力防護網
6a,6b,6c 素線
6d 素線の交点
8 衝突回避用の空間
10 支柱
11 支柱の本体部分
12 ブラケット
13 U字ボルト
14 通しボルト
16 結合コイル
17 ヒンジ
17a 支軸
18 鋼管杭
19 コンクリート
50 衝撃吸収機構
51 エネルギー吸収ロープ
52 従来型の汎用鋼製ロープ
53 巻付グリップ
60 試験体
61 凸型ピース
62 素線
100 落石防護柵
101 支柱
103 上側サポートロープ
103a ブレーキ装置
104 下側サポートロープ
104a ブレーキ装置
105 金網
110 ループ管
111 緊締部材








Claims (4)

  1. 斜面からの落下物を受け止める防護網と、この防護網を支持する支柱と、を備えた落下物防護装置であって、
    前記防護網は、その各素線が螺旋状に形成され、且つ隣合う素線同士が両ピッチ間で折れ曲がることなく交差し、
    前記支柱には、この支柱から斜面山側に張り出された支持部が設けられ、
    前記支柱は、前記支持部を介して、斜面山側に空間を隔てて前記防護網を支持していることを特徴とする落下物防護装置。
  2. 前記空間は、前記支柱に対する防護網の衝突を抑制するための空間であることを特徴とする請求項1に記載の落下物防護装置。
  3. 前記防護網を斜面幅方向に支持する横ロープと、この横ロープを固定するためのアンカーとを有し、前記横ロープとアンカーとの間には、この横ロープに作用する衝撃を吸収するための衝撃吸収機構が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の落下物防護装置。
  4. 前記衝撃吸収機構は、前記横ロープに較べて縦弾性係数が小さく且つ同じ長さで比較したときに、その破断に至る伸びしろが前記横ロープに較べて長いエネルギー吸収ロープを備え、
    前記エネルギー吸収ロープは、前記横ロープとアンカーとの間に接続されていることを特徴とする請求項に記載の落下物防護装置。
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