以下に本発明に係るトナーについて説明する。
本発明者らは、上述したような結晶性を有する樹脂および2種のワックスを用いたトナーの種々の問題点について検討を重ねた結果、特定の構造を有するワックスを組み合わせることにより、これらの問題を解決できることを見出し本発明に至った。
本発明のトナーは、結着樹脂、着色剤、第一のワックス及び第二のワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、前記結着樹脂は、結晶構造をとりうるポリエステル構造部を有する樹脂Aを含有し、前記結晶構造をとりうるポリエステル構造部の含有量は前記結着樹脂の30.0質量%以上であり、前記第一のワックス及び第二のワックスが、4官能以上のエステルワックスであり、示差走査熱量測定で測定される1回目昇温時の最大吸熱ピーク温度(以下、「融点」と称すこともある)に関し、前記結着樹脂、前記第一のワックス及び前記第二のワックスの最大吸熱ピークのピーク温度をそれぞれTc(℃)、Tw1(℃)及びTw2(℃)としたとき、50≦Tc≦80及びTc<Tw1<Tw2の関係を満たし、前記結着樹脂100質量部に対する前記第一のワックス及び前記第二のワックスの含有量をそれぞれW1(質量部)、W2(質量部)としたとき、2.0≦W1+W2≦15.0及び0.1≦W2/W1≦1.0の関係を満たすことを特徴とする。
本発明における結着樹脂は結晶構造をとりうるポリエステル構造部を有する樹脂Aを含有する。ここで結晶構造をとりうるポリエステル構造部とは、それ自体が多数集合すると、規則的に配列し結晶性を発現する部分であり、結晶性ポリエステル鎖を意味する。樹脂Aの有する結晶構造をとりうるポリエステル構造部の含有量は結着樹脂の30.0質量%以上であることが好ましく、より好ましくは50.0質量%以上であり、特に好ましくは70.0質量%である。樹脂Aの有する結晶構造をとりうるポリエステル構造部の含有量が30.0質量%より小さいと、結晶性樹脂の特徴であるシャープメルト性がトナーとして十分に発現しないため好ましくない。
また、結着樹脂の融点Tc(℃)は、50≦Tc≦80であることが好ましい。Tcが50℃より小さいと、トナー化した際の耐熱保存性が十分ではなく、トナーを高温環境下に放置した場合、ブロッキングが起こりやすくなる。Tcが80℃より大きいと、トナー化した際に十分な低温定着性が得られない。また、上記Tcの範囲は、より好ましくは55≦Tc≦70である。
本発明のトナーは、第一のワックスおよび第二のワックスを含有する。第一のワックスおよび第二のワックスはいずれも分子中に4個以上のエステル結合を有する、4官能以上のエステルワックスである。
エステルワックスはトナー中における分散性に優れ、定着時においては、トナーから容易に染み出すため、特に低温度条件で定着を行う場合のコールドオフセットの防止に対し有効である。ところがエステルワックスは結晶性ポリエステルと類似構造を有するため結晶性ポリエステルと相溶しやすい。相溶した場合、結晶性ポリエステルの結晶内部に入り、結晶性ポリエステルの結晶構造を崩しやすいため、結晶性が低下し、耐熱保存性が不十分になりやすかった。本発明のように第一のワックスとして4官能以上のエステルワックスを用いた場合、当該ワックスは分岐構造を有するため、直鎖構造をもつ結晶性ポリエステルと相溶し難くなり、結晶性ポリエステルの結晶構造を維持しやすくなる。さらに本発明者らは、融点の高い第二のワックスにも4官能以上のエステルワックスを用いた場合、定着可能な温度領域の拡大効果に加え、低温定着時の離型性がさらに向上し、また耐熱保存性も良化することを見出した。第一のワックスと類似の構造である第二のワックスを用いると、ワックス同士の相互作用により、結晶性ポリエステルとの相溶がさらに抑制され、結晶構造の維持がよりなされるものと推測される。より好ましくは、第一のワックス及び第二のワックスは6官能以上のエステルワックスであることが好ましい。
また、第一のワックス及び第二のワックスの融点Tw1(℃)及びTw2(℃)と、前述の結着樹脂の融点Tcとの間にはTc<Tw1<Tw2の関係を有する。ここで、Tw1またはTw2がTc以下であると、トナー化した際の耐熱保存性が十分ではなく、ブロッキングが起こりやすくなる。また、Tw1とTw2が等しく融点に差がないと、2種類のワックスを用いることによる定着可能な温度領域の拡大が期待できなくなる。
本発明に使用可能な4官能以上のエステルワックスは、例えば4官能以上の酸と長鎖直鎖飽和アルコールの縮合、または4官能以上のアルコールと長鎖直鎖飽和脂肪酸の縮合によって得られる。
4官能以上のアルコールとしては以下の化合物を挙げることが出来るが、これに限定されるものではなく、場合によっては混合して用いることも可能である。エリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビトール。また、グリセリンの縮合したジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ヘキサグリセリン及びデカグリセリン等のいわゆるポリグリセリン、トリメチロールプロパンの縮合したジトリメチロールプロパン、トリトリメチロールプロパン及びペンタエリスリトールの縮合したジペンタエリスリトール及びトリペンタエリスリトールが挙げられる。これらのうち、分岐構造をもつ構造が好ましく、ペンタエルスリトール、又はジペンタエリスリトールがより好ましく、特にジペンタエリスリトールが好ましい。
長鎖直鎖飽和脂肪酸は、一般式CnH2n+1COOHで表され、nが5以上28以下のものが好ましく用いられる。
例えば以下の化合物を挙げることが出来るが、これに限定されるものではない。これらは混合して用いることも可能である。カプロン酸、カプリル酸、オクチル酸、ノニル酸、デカン酸、ドデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸が挙げられる。ワックスの融点の面からミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸が好ましい。
4官能以上の酸としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸を挙げることが出来るが、これに限定されるものではない。
長鎖直鎖飽和アルコールはCnH2n+1OHで表され、nが5以上28以下のものが好ましく用いられる。
例えば以下の化合物を挙げることが出来るが、これに限定されるものではない。これらは混合して用いることも可能である。カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが挙げられる。ワックスの融点の面からミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが好ましい。
本発明のトナーにおいて、前記結着樹脂100質量部に対する第一のワックスおよび第二のワックスの含有量をそれぞれW1(質量部)およびW2(質量部)した場合、2.0≦W1+W2≦15.0の関係を有することが好ましい。W1+W2が2.0より小さいとワックスによる十分な離型効果が発現しない。W1+W2が15.0より大きいと離型効果は得られるものの、トナー化した際にワックスがトナー表面に露出しやすくなり、耐熱保存性の低下やワックスによる部材汚染に起因する画像弊害が起こるため好ましくない。W1+W2のより好ましい範囲は3.0≦W1+W2≦12.0である。
また、W1とW2は0.1≦W2/W1≦1.0の関係を有することが好ましい。W2/W1が0.1より小さいと第二のワックスの割合が少なすぎるため、定着可能な温度領域の拡大効果が得られないばかりでなく。第一のワックスに対する結晶性ポリエステルへの相溶抑制の効果が発現しない。W2/W1が1.0より大きいと第一のワックスの結晶性ポリエステルへの相溶抑制の効果は得られるものの、第二のワックスの割合が大きくなりすぎるため、定着画像でのグロスの低下が発生する恐れがある。W2/W1のより好ましい範囲は0.2≦W2/W1≦0.8である。
第一のワックスの融点Tw1および第二のワックスの融点Tw2の関係は、5≦Tw2−Tw1≦20であることが好ましい。この場合、2種のワックス間の相互作用を良好に利用しつつ、第二のワックスによる高温側への定着可能領域の拡大を特に良好に図ることができる。Tw2−Tw1のより好ましい範囲は7≦Tw2−Tw1≦17である。
結着樹脂の融点Tcおよび第一のワックスの融点Tw1の関係は、5≦Tw1−Tc≦20であることが好ましい。この場合、良好なシャープメルト性を維持しつつ、第一のワックスによる低温領域での離型性を十分に得ることができる。Tw1−Tcのより好ましい範囲は6≦Tw1−Tc≦18である。
本発明のトナーに用いる結着樹脂に含有される樹脂Aは、結晶構造をとりうるポリエステル構造部分を有する以外特に限定されず、結晶構造をとりうる部分以外にはトナー用の結着樹脂として知られている公知の非晶性樹脂を含有させることができる。前記樹脂Aに前記非晶性樹脂を含有させることで、結晶構造をとり得る部位が溶融した後における弾性の維持が可能となる。なかでも、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂が好適に使用される。
前記結晶構造をとり得る部位として結晶性ポリエステルを用いる場合、その合成には、脂肪族ジオール及び多価カルボン酸を原料として用いることが好ましい。
前記脂肪族ジオールとしては、炭素数4以上、20以下の直鎖脂肪族ジオールが好ましく、以下のものが挙げられる。
1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
これらのうち、本発明では低温定着性に適した融点の観点から、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールがより好ましい。また、二重結合を持つ脂肪族ジオールを用いることもできる。前記二重結合を持つ脂肪族ジオールとしては、例えば以下を挙げることができる。2−ブテン−1,4−ジオール、3−ヘキセン−1,6−ジオール、4−オクテン−1,8−ジオール。
次に、多価カルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸が好ましく、中でも脂肪族ジカルボン酸がより好ましく、直鎖脂肪族ジカルボン酸が特に好ましい。
前記直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、以下を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
蓚酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸。あるいはその低級アルキルエステルや酸無水物。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
芳香族ジカルボン酸としては、以下を挙げることができる。
テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸。
これらのうち、本発明では、低温定着性に適した融点の観点から、アジピン酸、セバシン酸および1,10−デカンジカルボン酸が好ましい。また、二重結合を有するジカルボン酸を用いることもできる。二重結合を有するジカルボン酸は、その二重結合を利用して樹脂全体を架橋させ得る点で、定着時の高温オフセットを防ぐために好適に用いることができる。このようなジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物も挙げられる。
前記結晶性ポリエステル成分を作製する方法には特に制限はなく、アルコール成分と酸成分を反応させる一般的なポリエステル樹脂の重合法によって作製することができる。例えば直接重縮合、エステル交換法を用い、使用するジオールやジカルボン酸の種類によって使い分けて作製することができる。
前記結晶性ポリエステル成分の製造は、重合温度180℃以上、230℃以下の間で行うのが好ましく、必要に応じて反応系内を減圧し、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させるのが好ましい。モノマーが反応温度下で溶解または相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加えて溶解させるのがよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーと、そのモノマーと重縮合予定の酸またはアルコールとを縮合させておいてから、主成分とともに重縮合させるのが好ましい。
前記結晶性ポリエステル成分の製造時に使用可能な触媒としては、以下を挙げることができる。
チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシドのチタン触媒。ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシドのスズ触媒。
前記樹脂Aの分子構造に含まれる結晶性ポリエステル成分は、示差走査熱量計(DSC)による測定における最大吸熱ピークのピーク温度が50℃以上、80℃以下、より好ましくは55℃以上、70℃以下であることが好ましい。
前記樹脂Aに含まれる結晶性ポリエステル成分は、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)において、数平均分子量(Mn)が3,000以上、20,000以下であることが好ましく、より好ましくは4,000以上、15,000以下である。また、重量平均分子量(Mw)が8,000以上30,000以下であることが好ましく、より好ましくは10,000以上25,000以下である。この範囲であることで、耐熱保存性を良好に保つことができ、更にトナーにシャープメルト性を付与することが可能となる。
前記樹脂Aに含有させる非晶性樹脂としてのポリエステル樹脂について述べる。
ポリエステル樹脂に用いるモノマーとしては、「高分子データハンドブック:基礎編」(高分子学会編:培風館)に記載されているような2価または3価以上のカルボン酸と、2価または3価以上のアルコールが挙げられる。これらのモノマー成分の具体例としては、以下の化合物を挙げることができる。
2価のカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マロン酸、ドデセニルコハク酸の二塩基酸、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸の脂肪族不飽和ジカルボン酸。3価以上のカルボン酸としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、これらの無水物やこれらの低級アルキルエステル。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
2価のアルコールとしては、以下の化合物を挙げることができる。
ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール。3価以上のアルコールとしては、例えば以下の化合物を挙げることができる。グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、必要に応じて、酸価や水酸基価の調整の目的で、酢酸、安息香酸の如き1価の酸や、シクロヘキサノール、ベンジルアルコールの如き1価のアルコールも使用することができる。
前記ポリエステル樹脂は、前記のモノマー成分を用いて従来公知の方法により合成することができる。
次に、前記樹脂Aに含有させる非晶性樹脂としてのポリウレタン樹脂について述べる。
ポリウレタン樹脂はジオールとジイソシアネートとの反応物であり、脂肪族ジオール及びジイソシアネートを変えることにより、得られる樹脂の機能性を変えることができる。
前記ジイソシネートとしては以下のものが挙げられる。前記ジイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、及びこれらジイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物。以下、ジイソシアネートの変性物を変性ジイソシアネートともいう)が挙げられる。
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、炭素数4以上、12以下(イソシアネート基中の炭素を除く、以下同様)の脂肪族ジイソシアネートが好ましく、例えば以下のものが挙げられる。
エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート。
前記脂環式ジイソシアネートとしては、炭素数4以上、15以下の脂環式ジイソシアネートが好ましく、以下のものが挙げられる。
イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート。
前記芳香族ジイソシアネートとしては、炭素数6以上、15以下の芳香族ジイソシアネートが好ましく、以下のものが挙げられる。
m−及び/またはp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート。
これらのうちで好ましいものは、炭素数6以上、15以下の芳香族ジイソシアネート、炭素数4以上、12以下の脂肪族ジイソシアネート、及び炭素数4以上、15以下の脂環式ジイソシアネート、炭素数8以上、15以下の芳香族炭化水素ジイソシアネートであり、特に好ましいものはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及びキシリレンジイソシアネート(XDI)である。
前記したジイソシアネートに加えて、3官能以上のイソシアネート化合物を用いることもできる。
また、前記ジオールとしては、以下のものが挙げられる。
アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール);アルキレンエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール);ビスフェノール類(ビスフェノールA);前記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド)付加物;前記アルキレンエーテルグリコールのアルキル部分は直鎖状であっても、分岐していてもよい。本発明においては分岐構造のアルキレングリコールも好ましく用いることができる。
前記樹脂Aに含有される非晶性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上、130℃以下であることが好ましく、より好ましくは、70℃以上、130℃以下である。この範囲であることで、トナーが溶融した後であっても弾性が維持されやすい。
更に、本発明のトナーにおいて、前記樹脂Aが結晶構造をとりうる部位と結晶構造を取りえない部位とが化学的に結合したブロックポリマーであることが好ましい。
前記ブロックポリマーとは、一分子内でポリマー同士が共有結合にて結ばれたポリマーである。ここで、結晶構造を取りうる部位が、結晶性ポリエステルであることが好ましく、結晶構造をとりえない部位が、非晶性樹脂としてのポリエステルやポリウレタンであることが好ましい。
前記ブロックポリマーは、結晶構造を取りうる部位(A)と結晶構造を取りえない部位(B)とのAB型ジブロックポリマー、ABA型トリブロックポリマー、BAB型トリブロックポリマー、ABAB・・・・型マルチブロックポリマーが挙げられ、本発明において、どの形態をも用いることが可能である。
前記ブロックポリマーにおいて、結晶構造を取りうる部位と結晶構造を取りえない部位とを共有結合で結ぶ結合形態としては、エステル結合、ウレア結合、ウレタン結合が挙げられる。中でも、ウレタン結合で結合したブロックポリマーであることがより好ましい。ウレタン結合で結合されたブロックポリマーであることで、トナーが溶融した後であっても弾性が維持されやすくなる。
前記結晶構造を取り得る部分としての結晶性ポリエステルはアルコール末端であることが前記ブロックポリマーを調製する上で好ましい。そのため、前記結晶性ポリエステルの調製では酸成分とアルコール成分のモル比(アルコール成分/カルボン酸成分)は1.02以上1.20以下であることが好ましい。
ブロックポリマーを調製する方法としては、結晶構造を取りうる部位を形成する成分と結晶構造を取りえない部位を形成する成分とを別々に調製し、両者を結合する方法(二段階法)を用いることができる。また、結晶構造を取りうる部位を形成する成分および結晶構造を取りえない部位を形成する成分の原料を同時に仕込み、一度で調製する方法(一段階法)も用いることができる。
本発明におけるブロックポリマーは、それぞれの末端官能基の反応性を考慮して、種々の方法の中から選択して合成することができる。
結晶構造を取りうる部位および結晶構造を取りえない部位がともにポリエステル樹脂であるブロックポリマーの場合、各成分を別々に調製した後、結合剤を用いて結合することにより調製できる。特に、片方のポリエステルの酸価が高く、もう一方のポリエステルの水酸基価が高い場合は、結合剤を使う必要はなく、そのまま加熱減圧しつつ縮合反応を進めることができる。このとき、反応温度は200℃付近で行うのが好ましい。
なお、結合剤を使用する場合、以下のものを結合剤として用いることができる。
多価カルボン酸、多価アルコール、多価イソシアネート、多官能エポキシ、多価酸無水物。
これらの結合剤を用いて、脱水反応や付加反応によって合成することができる。
また、結晶構造を取りうる部位が結晶性ポリエステルで、結晶構造をとりえない部位がポリウレタンであるブロックポリマーの場合は、各部位を別々に調製した後、結晶性ポリエステルのアルコール末端とポリウレタンのイソシアネート末端とをウレタン化反応させることにより調製できる。また、アルコール末端を持つ結晶性ポリエステルおよびポリウレタンを構成するジオール、ジイソシアネートを混合し、加熱することでも合成が可能である。この場合、前記ジオールおよびジイソシアネートの濃度が高い反応初期は、これらが選択的に反応してポリウレタンを形成し、ある程度分子量が大きくなった後に、ポリウレタンのイソシアネート末端と結晶性ポリエステルのアルコール末端とのウレタン化が起こる。
上記ブロックポリマーの効果を有効に発現するためには、可能な限り結晶性ポリエステルのホモポリマーや非晶性樹脂のホモポリマーがトナー中に存在しないほうが好ましい。すなわち、ブロック化率が高いことが好ましい。
また、上記ブロックポリマーは、結晶構造をとりうる部位を、30.0質量%以上、より好ましくは50.0質量%以上、特に好ましくは70.0質量%以上含有することが好ましい。ブロックポリマーにおける結晶構造をとりうる部位の含有量が50質量%以上であることで、結晶構造をとりうる部位の集合体である結晶性部位のシャープメルト性が有効に発現されやすくなる。より好ましくは、60質量%以上85質量%以下である。
一方、ブロックポリマーにおける上記結晶構造をとりえない部位の含有量は、10質量%以上であることが好ましい。結晶構造をとりえない部位の含有量が10質量%以上であることで、シャープメルト後の結晶構造をとりえない部位の集合体である非晶性部位の弾性の維持が良好になる。より好ましくは、15質量%以上である。
上記ブロックポリマーは、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定において、数平均分子量(Mn)が8,000以上、30,000以下であることが好ましい。より好ましい範囲は、10,000以上25,000以下である。また、重量平均分子量(Mw)が15,000以上60,000以下であることが好ましい。Mwのより好ましい範囲は、20,000以上50,000以下である。
示差走査熱量計(DSC)で測定された最大吸熱ピークのピーク温度が50℃以上80℃以下であることが好ましく、55℃以上70℃以下であることがより好ましい。
本発明のトナーにおいて、結着樹脂は、前記結晶構造とり得るポリエステル構造部分を有する樹脂Aに加えて他の非晶性樹脂を含有していてもよい。このときの結着樹脂に対する樹脂Aの含有量は、70.0質量%以上が好ましく、より好ましくは100質量%である。
前記結着樹脂に用いることのできる非晶性樹脂は、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂(スチレンアクリル樹脂やポリスチレン)が挙げられるが、その限りではない。また、これら樹脂は、ウレタン、ウレア、エポキシの変性を行っても良い。
本発明のトナーは、耐久性の付与、耐熱保存性のさらなる向上を図る目的で結着樹脂、着色剤、第一のワックスおよび第二のワックスを含有するコア部の表面をシェル材で被覆したコアシェル構造とすることができる。シェル材にはコア部のシャープメルト効果を阻害しない観点から結晶構造をとりうる部分を有する樹脂(以下、樹脂Bと呼ぶ)を用いることが好ましい。また、結晶構造をとりうる部分としては結晶性ポリエステル構造を有する部分であることが好ましい。
結晶構造をとりうる部位としての結晶性ポリエステル成分を樹脂中に導入する方法としては、以下の方法が挙げられる。
(A)結晶構造をとり得るポリエステル部位を分子構造に含むビニル系モノマーb1とその他のビニル系モノマーb2とを共重合する方法。
(B)結晶構造をとり得るポリエステル部位を導入するための前駆体となるビニル系モノマーb1’とその他のビニル系モノマーb2を用いて共重合した後、前記結晶構造をとり得るポリエステル部位を反応させる方法。
これらの方法の中でも、前記ポリエステル部位の導入しやすさの点で、(A)の方法が好ましい。以下にビニル系モノマーb1、b1’及びb2について説明する。
(ビニル系モノマーb1)
前記ビニル系モノマーb1に含まれる結晶構造をとりうる部位としては、炭素数4以上20以下の脂肪族ジオールおよび脂肪族ジカルボン酸を反応して得られる結晶性ポリエステルが好ましい。
さらに、前記脂肪族ジオールは、結晶性を上げやすい直鎖脂肪族ジオールであることが好ましい。
前記脂肪族ジオールおよび前記脂肪族ジカルボン酸は、前記樹脂Aに用いたものと同様のものを用いることが可能である。
ビニル系モノマーb1の製造方法としては、以下の方法が挙げられる。
(1)ヒドロキシル基を有するビニル系モノマー、又は、カルボキシル基を有するビニル系モノマーと前記結晶性ポリエステル成分をエステル化反応させて、結晶性ポリエステル成分を分子構造に含むビニル系モノマーを製造する方法。
(2)イソシアネート基を有するビニル系モノマーと前記結晶性ポリエステル成分をウレタン化反応させて、結晶性ポリエステル成分を分子構造に含むビニル系モノマーを製造する方法。
(3)ヒドロキシル基を有するビニル系モノマーと前記結晶性ポリエステル成分を、結合剤であるジイソシアネートとそれぞれウレタン化反応させて結晶性ポリエステル成分を分子構造に含むビニル系モノマーを製造する方法。
これらの方法の中でも、前記結晶性ポリエステル成分との反応性の点で、前記(2)および(3)の方法が特に好ましい。
ここで、結晶性ポリエステル成分の導入をカルボキシル基とのエステル化反応によって行う場合、あるいはイソシアネート基とのウレタン化反応によって行う場合、前記結晶性ポリエステル成分は、アルコール末端であることが好ましい。そのため、前記結晶性ポリエステル成分は、ジオールとジカルボン酸のモル比(ジオール/ジカルボン酸)が1.02以上、1.20以下であることが好ましい。一方、結晶性ポリエステル成分の導入をヒドロキシル基とのエステル化反応によって行う場合は酸末端であることが好ましく、ジオールとジカルボン酸のモル比はその逆であることが好ましい。
前記ヒドロキシル基を有するビニル系モノマーとしては、以下のものが挙げられる。
ヒドロキシスチレン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタアクリレート、アリルアルコール、メタアリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオール、プロパルギルアルコール、2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、庶糖アリルエーテル。これらの中でも、特に好ましいものはヒドロキシエチルメタアクリレート。
前記カルボキシル基を有するビニル系モノマーとしては、炭素数30以下の不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、及びその無水物が好ましく、具体的には以下のものが挙げられる。
アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、イサコン酸、ケイ皮酸、並びにその無水物。これらの中でも、特に好ましいものはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸。
前記イソシアネート基を有するビニル系モノマーとしては、以下のものが挙げられる。
2−イソシアナトエチルアクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート、メタクリル酸2−(0−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート。
これらの中でも、特に好ましいものは2−イソシアナトエチルアクリレート及び2−イソシアナトエチルメタクリレートである。
前記ビニル系モノマーb1の結晶性ポリエステル成分は、示差走査熱量計(DSC)による測定における最大吸熱ピークのピーク温度が55℃以上、90℃以下であることが好ましい。
前記ビニル系モノマーb1の分子構造に含まれる結晶性ポリエステル成分は、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)において、数平均分子量(Mn)が1,000以上、20,000以下であることが好ましく、より好ましくは2,000以上、15,000以下である。また、重量平均分子量(Mw)が2,000以上、40,000以下であることが好ましく、より好ましくは3,000以上、20,000以下である。この範囲であることで、耐熱保存性を良好に保つことができ、更にトナーにシャープメルト性を付与することが可能となる。
前記樹脂Bの共重合に用いる全モノマーの量に対して、前記ビニル系モノマーb1の割合が20.0質量%以上、50.0質量%以下であることが好ましい。前記範囲内でシェル材に結晶性部位を導入することで、トナーのシャープメルト効果を損なうことなく、耐久性と耐熱保存性の両立が可能となる。
(ビニル系モノマーb1’)
前記ビニル系モノマーb1’としては、前記結晶性ポリエステル成分を導入するための前駆体となり得るものであればよく、上述のヒドロキシル基を含有するビニル系モノマー、カルボキシル基を含有するビニル系モノマー、イソシアネート基を有するビニル系モノマーを用いることができる。結晶性ポリエステル成分は、これらの基と結晶性ポリエステルのアルコール末端または酸末端とのエステル化反応もしくはウレタン化反応によって導入することができる。
(ビニル系モノマーb2)
本発明において前記ビニル系モノマーb2としては、以下のモノマーを使用することができる。
脂肪族ビニル炭化水素:アルケン類(エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、前記以外のα−オレフィン);アルカジエン類(ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6−ヘキサジエンおよび1,7−オクタジエン)。
脂環式ビニル炭化水素:モノ−もしくはジ−シクロアルケンおよびアルカジエン類(シクロヘキセン、シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、エチリデンビシクロヘプテン);テルペン類(ピネン、リモネン、インデン)。
芳香族ビニル炭化水素:スチレンおよびそのハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキルおよび/またはアルケニル)置換体(α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン);およびビニルナフタレン。
前記カルボキシル基及び/又はその塩を有するビニル系モノマー:炭素数3以上30以下の不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸ならびにその無水物(マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸のカルボキシル基含有ビニル系モノマー)。
ビニルエステル:酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル4−ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、エチルα−エトキシアクリレート、炭素数1以上30以下のアルキル基(直鎖もしくは分岐)を有するアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレート(メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系モノマー(ポリエチレングリコール(分子量300)モノアクリレート、ポリエチレングリコール(分子量300)モノメタクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノアクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノメタクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド(エチレンオキサイドを以下EOと略記する)10モル付加物アクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド(エチレンオキサイドを以下EOと略記する)10モル付加物メタクリレート、ラウリルアルコールEO30モル付加物アクリレートラウリルアルコールEO30モル付加物メタクリレート)、ポリアクリレート類およびポリメタクリレート類(多価アルコール類のポリアクリレートおよびポリメタクリレート:エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート。ポリエチレングリコールジメタクリレート。
前記ビニル系モノマーb2としては、上記のモノマー以外に有機ポリシロキサン構造を有するビニル系モノマーも使用できる。
有機ポリシロキサンは、界面張力が低い材料である。前記有機ポリシロキサン構造を有するビニル系モノマーを樹脂Bの材料として用いることにより、トナー融着による部材汚染に対して、より抑制効果に優れたトナーの実現が可能となる。
また、前記有機ポリシロキサン構造を有するビニルモノマーの使用は、樹脂Bを後述する高圧状態の二酸化炭素を分散媒体として使用する溶解懸濁法によるトナー粒子を製造する場合の分散剤の材料として使用する上でも好適である。
ここで、有機ポリシロキサン構造とは、Si−O結合の繰り返し単位を有し、且つ、各Si原子に一価の有機基が二つずつ結合した構造である。
前記有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を挙げることができ、これらの有機基は置換基を有していてもよい。また、各々の有機基は同一であってもよく、異なっていてもよい。これらの有機基の中でも、アルキル基及びアリール基が有機ポリシロキサンの特長を発現しやすくなる点で好ましく、炭素数1以上、3以下のアルキル基がより好ましい。特に好ましくはメチル基である。
前記有機ポリシロキサン構造を有するビニル系モノマーの好適な例を、下記化学式(1)に示す。
化学式(1)
ここで、R1及びR2は、それぞれ独立して、置換基を有していても良いアルキル基、又は置換基を有していても良いアリール基であることが好ましい。これらの中でも、炭素数1以上、3以下のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。また、R3はアルキレン基であることが好ましく、炭素数は1以上、10以下であることが好ましい。また、R4は水素原子又はメチル基を表している。そして、nは重合度を表し、2以上、100以下の整数であることが好ましく、より好ましくは2以上、15以下である。
前記有機ポリシロキサン構造を有するビニル系モノマーの割合は、樹脂Bの共重合に用いる全モノマー量に対して、5.0質量%以上、20.0質量%以下の割合であることが好ましい。有機ポリシロキサン構造を有するビニル系モノマーが、上記範囲内であることにより、部材汚染に対する抑制効果を発現することができる。
上記有機ポリシロキサン構造を有するビニル系モノマーの作製方法としては特に限定されないが、例えば、有機ポリシロキサンの片末端をカルビノール変性した後、アクリル酸クロライド若しくはメタクリル酸クロライドと脱塩酸反応させることによって作製することができる。
本発明のトナーにおいて、前記樹脂Bの数平均分子量(Mn)は8,000以上40,000以下であることが好ましく、より好ましくは8,000以上25,000以下である。また、前記樹脂Bの重量平均分子量(Mw)は15,000以上110,000以下であることが好ましく、より好ましくは20,000以上、80,000以下である。MnおよびMwの値がこの範囲であることで、コアのシャープメルト性を阻害することなく、耐久性を向上させることができる。
本発明におけるシェル相を形成する樹脂は、後述する溶解懸濁法による製造方法でトナー粒子を作製する場合に、分散媒体中でのコアを形成する材料の分散性を維持させるために分散媒体に溶解しないことが好ましい。従って、樹脂に架橋構造を導入してもよい。
本発明のトナーにおいて、前記トナー粒子は、前記コア100質量部に対して、前記樹脂Bを3.0質量部以上、15.0質量部以下含有することが好ましい。樹脂Bの含有量を上記範囲内とすることによって、トナー粒子表面がシェル相の厚みが過剰に厚くなることなく、且つ、十分に被覆されるため、耐久性と低温定着性の両立が可能となる。
本発明のトナーには、着色力を付与するために着色剤を含有する。従来トナーに用いられている着色剤を用いることが出来るが、好ましく使用される着色剤として、以下の有機顔料、有機染料、無機顔料、黒色着色剤としてのカーボンブラック、磁性粉体が挙げられる。
イエロー用着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、155、168、180が好適に用いられる。
マゼンタ用着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が好適に用いられる。
シアン用着色剤としては、以下のものが挙げられる。銅フタロシアニン化合物およびその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が好適に用いられる。
本発明のトナーに用いられる着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、トナー中の分散性の観点から選択される。磁性粉体以外の着色剤の添加量は、好ましくは結着樹脂100.0質量部に対し、1.0質量部以上20.0質量部以下である。
また黒色着色剤として磁性粉体を用いる場合、その添加量は結着樹脂100.0質量部に対し、40.0質量部以上150.0質量部以下であることが好ましい。
本発明のトナーにおいては、必要に応じて荷電制御剤をトナー粒子と混合して用いることも可能である。また、トナー粒子製造時に添加してもよい。荷電制御剤を配合することにより、荷電特性を安定化し、現像システムに応じた最適の摩擦帯電量のコントロールが可能となる。
荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。
荷電制御剤として、トナーを負荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。有機金属化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物が挙げられる。
本発明のトナーは、これら荷電制御剤を単独で或いは2種類以上組み合わせて含有することができる。
荷電制御剤の好ましい配合量は、結着樹脂100.0質量部に対して0.01質量部以上20.0質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上10.0質量部以下である。
本発明のトナーを製造するのに適した方法としては、乳化凝集法または溶解懸濁法が挙げられる。
乳化凝集法は結着樹脂、ワックス、着色剤等の微粒子分散液を混合し、凝集剤を添加してヘテロ凝集を生じさせることにより凝集粒子を形成し、その後、結着樹脂の融点以上、またはガラス転移点以上の温度に加熱して前記凝集粒子を融合合一し、洗浄、乾燥することによってトナーを得る方法である。
溶解懸濁法においては、結着樹脂、着色剤、第一のワックス及び第二のワックスを、前記結着樹脂を溶解する有機溶媒と混合して、樹脂溶解物を得、該樹脂溶解物を、分散媒体中に分散して該樹脂溶解物の液滴を形成し、該樹脂溶解物の液滴から有機溶媒を除去してトナーを得る方法である。
どちらの方法においても、適切な段階でシェル用の材料を添加することにより、得られるトナーにコアシェル構造を持たせることができる。
これらの方法のうちでも、下記の理由から、本発明のトナーを得るためには、溶解懸濁法を用いることが好ましい。
結晶性ポリエステルは、融点以上の加熱を行うと、結晶性が崩れやすい。従って、非加熱にてトナーの製造を行えば、トナーに含有される結晶性ポリエステルの結晶性を崩すことなく、結晶性を維持した結晶性ポリエステルを含有するトナーが得られる。
非加熱でトナーを製造するためには、分散媒体として高圧状態の二酸化炭素を用いた溶解懸濁法が好適である。すなわち、トナーに使用する結着樹脂の溶解液を高圧状態の二酸化炭素中に分散させて造粒を行い、造粒後の粒子に含まれる有機溶媒を二酸化炭素の相に抽出して除去した後、圧力を開放することによって二酸化炭素を分離し、トナー粒子として得る方法である。本発明に用いられる高圧状態の二酸化炭素とは、液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素である。
ここで、液体の二酸化炭素とは、二酸化炭素の相図上における三重点(温度=−57℃、圧力=0.5MPa)と臨界点(温度=31℃、圧力=7.4MPa)を通る気液境界線、臨界温度の等温線、および固液境界線に囲まれた部分の温度、圧力条件にある二酸化炭素を表す。また、超臨界状態の二酸化炭素とは、上記二酸化炭素の臨界点以上の温度、圧力条件にある二酸化炭素を表す。
本発明において、分散媒体中には他の成分として有機溶媒が含まれていてもよい。この場合、二酸化炭素と有機溶媒とが均一相を形成することが好ましい。
この方法によれば、高圧下で造粒が行われるため、結晶性ポリエステルの結晶性を維持しやすいばかりでなく、より高めることも可能である点で特に好適である。
以下に、本発明のトナー粒子を得る上で好適な、高圧状態の二酸化炭素を分散媒体として用いるトナー粒子の製造法を例示して説明する。
まず、結着樹脂を溶解することのできる有機溶媒中に、結着樹脂、着色剤、ワックスおよび必要に応じて他の添加物を加え、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機の如き分散機によって均一に溶解または分散させる。
本発明で用いる有機溶媒としては、結着樹脂を溶解できるものが好ましく、アセトン、メチルエチルケトンのケトン系溶媒が好ましい。中でも、アセトンを用いることが好ましい。
次に、こうして得られた溶解液あるいは分散液(以下、単に結着樹脂溶解液という)を、高圧状態の二酸化炭素中に分散させて油滴を形成する。
このとき、分散媒体としての高圧状態の二酸化炭素中には、分散剤を分散させておくことが好ましい。分散剤は前記溶解液を高圧状態の二酸化炭素中に分散する前に予め二酸化炭素中に分散させておいてもよいし、前記溶解液を二酸化炭素中に分散した後で分散させてもよい。分散剤としては、無機微粒子分散剤、有機微粒子分散剤、それらの混合物のいずれでもよく、目的に応じて単独で用いても2種以上を併用してもよい。
上記無機微粒子分散剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、チタニア、酸化カルシウムの無機酸化物が挙げられる。
上記有機微粒子分散剤としては、例えば、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート、セルロースおよびこれらの混合物が挙げられる。
さらに上記分散剤に加え、分散助剤としてフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤のノニオン系界面活性剤を使用することもできる。
非晶性樹脂からなる有機樹脂微粒子を分散剤として使用すると、二酸化炭素が前記樹脂中に溶解して樹脂を可塑化させ、ガラス転移温度を低下させるため、造粒の際に粒子同士が凝集を起こしやすくなる。したがって、有機樹脂微粒子としては結晶性を有する樹脂を使用することが好ましく、非晶性樹脂を用いる場合は、架橋構造を導入することが好ましい。また非晶性樹脂粒子を結晶性樹脂で被覆した微粒子であってもよい。
上記分散剤は、そのまま用いてもよいが、造粒時における上記油滴表面への吸着性を向上させるため、各種処理によって表面改質したものを用いてもよい。具体的には、シラン系、チタネート系、アルミネート系のカップリング剤による表面処理や、各種界面活性剤による表面処理、ポリマーによるコーティング処理が挙げられる。
油滴の表面に吸着した分散剤は、トナー粒子形成後もそのまま残留するため、分散剤として樹脂微粒子を用いた場合には、樹脂微粒子で表面が被覆されたトナー粒子を形成することができる。
上記樹脂微粒子の粒径は、個数平均粒子径で30nm以上、300nm以下であることが好ましい。より好ましくは、50nm以上、100nm以下である。樹脂微粒子の粒径が小さ過ぎる場合、造粒時の油滴の安定性が低下する傾向にある。大き過ぎる場合は、油滴の粒径を所望の大きさに制御することが困難になる。
また、上記樹脂微粒子の配合量は、油滴の形成に使用する上記結着樹脂溶解液中の固形分100質量部に対して3.0質量部以上、15.0質量部以下であることが好ましく、油滴の安定性や所望する粒径に合わせて適宜調整することができる。
本発明において、上記分散剤を高圧状態の二酸化炭素中に分散させる方法は、如何なる方法を用いてもよい。具体例としては、上記分散剤と高圧状態の二酸化炭素を容器内に仕込み、撹拌や超音波照射により直接分散させる方法が挙げられる。また、高圧状態の二酸化炭素を仕込んだ容器に、上記分散剤を有機溶媒に分散させた分散液を、高圧ポンプを用いて導入する方法が挙げられる。
また、本発明において、上記結着樹脂溶解液を高圧状態の二酸化炭素中に分散させる方法は、如何なる方法を用いてもよい。具体例としては、上記分散剤を分散させた状態の高圧状態の二酸化炭素を入れた容器に、上記結着樹脂溶解液を、高圧ポンプを用いて導入する方法が挙げられる。また、上記結着樹脂溶解液を仕込んだ容器に、高圧状態の二酸化炭素を導入し樹脂溶解液を分散させた後に、上記分散剤を容器に圧入してもよい。
本発明において、上記高圧状態の二酸化炭素による分散媒体は、単一相であることが好ましい。上記結着樹脂溶解液を高圧状態の二酸化炭素中に分散させて造粒を行う場合、油滴中の有機溶媒の一部は分散体中に移行する。このとき、二酸化炭素の相と有機溶媒の相が分離した状態で存在することは、油滴の安定性が損なわれる原因となり好ましくない。したがって、上記分散媒体の温度や圧力、液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素に対する上記結着樹脂溶解液の量は、二酸化炭素と有機溶媒とが均一相を形成し得る範囲内に調整することが好ましい。
また、上記分散媒体の温度および圧力については、造粒性(油滴形成のし易さ)や上記結着樹脂溶解液中の構成成分の上記分散媒体への溶解性にも注意が必要である。例えば、上記結着樹脂溶解液中の結着樹脂やワックスは、温度条件や圧力条件によっては、上記分散媒体に溶解することがある。通常、低温、低圧になるほど上記成分の分散媒体への溶解性は抑制されるが、形成した油滴が凝集・合一を起こし易くなり、造粒性は低下する。一方、高温、高圧になるほど造粒性は向上するものの、上記成分が上記分散媒体に溶解し易くなる傾向を示す。
さらに、上記分散媒体の温度については、結晶性ポリエステル成分の結晶性が損なわれないよう、結晶性ポリエステルの融点よりも低い温度でなければならない。
したがって、本発明のトナー粒子の製造において、上記分散媒体の温度は10℃以上、結晶性ポリエステルの融点未満の温度範囲であることが好ましい。
また、上記分散媒体を形成する容器内の圧力は、1MPa以上、20MPa以下であることが好ましく、2MPa以上、15MPa以下であることがより好ましい。尚、本発明における圧力とは、分散媒体中に二酸化炭素以外の成分が含まれる場合には、その全圧を示す。
また、本発明における分散媒体中に占める二酸化炭素の割合は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
造粒工程が終了した後、油滴中に残留している有機溶媒を、高圧状態の二酸化炭素による分散媒体を介して除去する。具体的には、油滴が分散された上記分散媒体にさらに液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素を混合して、残留する有機溶媒を二酸化炭素の相に抽出し、この有機溶媒を含む二酸化炭素を、さらに液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素で置換することによって行う。
上記分散媒体と上記高圧状態の二酸化炭素の混合は、上記分散媒体に、これよりも高圧の高圧状態の二酸化炭素を加えてもよく、また、上記分散媒体を、これよりも低圧の高圧状態の二酸化炭素中に加えてもよい。
そして、有機溶媒を含む二酸化炭素をさらに高圧状態の二酸化炭素で置換する方法としては、容器内の圧力を一定に保ちつつ、高圧状態の二酸化炭素を流通させる方法が挙げられる。このとき、形成されるトナー粒子は、フィルターで補足しながら行う。
上記高圧状態の二酸化炭素による置換が十分でなく、分散媒体中に有機溶媒が残留した状態であると、得られたトナー粒子を回収するために容器を減圧する際、上記分散媒体中に溶解した有機溶媒が凝縮してトナー粒子が再溶解したり、トナー粒子同士が合一したりするといった不具合が生じる場合がある。したがって、上記高圧状態の二酸化炭素による置換は、有機溶媒が完全に除去されるまで行う必要がある。流通させる高圧状態の二酸化炭素の量は、上記分散媒体の体積に対して1倍以上、100倍以下が好ましく、さらに好ましくは1倍以上、50倍以下、最も好ましくは1倍以上、30倍以下である。
容器を減圧し、トナー粒子が分散した液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素を含む分散体からトナー粒子を取り出す際は、一気に常温、常圧まで減圧してもよいが、独立に圧力制御された容器を多段に設けることによって段階的に減圧してもよい。減圧速度は、トナー粒子が発泡しない範囲で設定することが好ましい。
尚、本発明において使用する有機溶媒や、液体あるいは超臨界状態の二酸化炭素は、リサイクルすることが可能である。
更に本発明のトナーは、結晶性ポリエステルの融点よりも低い温度条件にて加熱処理する工程を経ることが好ましい。本発明では、以後、この熱処理をアニール処理と称する。一般に、結晶性樹脂は、アニール処理を施すことによって結晶性が高まることが知られている。その原理は以下のように考えられている。すなわち、結晶性材料にアニール処理を行うと、その熱によって高分子鎖の分子運動性がある程度高くなるために、高分子鎖がより安定な構造、すなわち規則的な結晶構造へと再配向することで、結晶化が起こるというものである。結晶性材料の融点以上の温度で処理した場合には、高分子鎖は再配向に必要なエネルギーよりも高いエネルギーを得ることになるため、再結晶化は起こらない。
したがって、本発明におけるアニール処理は、トナー中の結晶性ポリエステルの分子運動を可能な限り活発化させるため、結晶性ポリエステルの融点に対して、限られた温度範囲内で行うことが重要である。
本発明において、アニール処理温度は、予め得られたトナー粒子の示差走査熱量(DSC)測定を行い、結晶性ポリエステルに由来する吸熱ピークのピーク温度を求めた後、このピーク温度に応じて決めればよい。具体的には、昇温速度10.0℃/minの条件でDSC測定したときに求められるピーク温度から15℃差し引いた温度以上、5℃差し引いた温度以下で熱処理を行うことが好ましい。より好ましくは、上記ピーク温度から10℃差し引いた温度以上、5℃差し引いた温度以下の温度範囲である。
本発明において、アニール処理は、トナー粒子の形成工程後であれば、どの段階で行ってもよい。
また、アニール処理時間は、トナー中の結晶性ポリエステルの割合や種類、結晶状態によって適宜調整可能であるが、通常は1時間以上、50時間以下の範囲で行うことが好ましい。アニール時間が1時間に満たない場合は、再結晶化の効果は得られにくい。一方、50時間を超えるアニール処理を行っても、それ以上の効果は期待できない。より好ましくは、2時間以上、24時間以下の範囲である。
ワックスを含有するトナーを用いる場合、結晶性ポリエステルとの相溶で、アニール速度が変わる場合がある。結晶性ポリエステルとワックスの相溶が小さい場合、結晶性ポリエステルの結晶化速度は速くなりやすく、製造面において相溶を抑えたワックスを用いることは有効である。
トナー粒子には、流動性向上剤として、無機微粉体を添加することが好ましい。無機微粉体としては、シリカ微粉体、酸化チタン微粉体、アルミナ微粉体またはそれらの複酸化物微粉体の如き微粉体が挙げられる。該無機微粉体の中でもシリカ微粉体及び酸化チタン微粉体が好ましい。
シリカ微粉体としては、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ又はヒュームドシリカ、及び水ガラスから製造される湿式シリカが挙げられる。無機微粉体としては、表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3 2−の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカは、製造工程において、塩化アルミニウム、塩化チタン他の如き金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって製造された、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体であっても良い。無機微粉体は、トナーの流動性改良及びトナー粒子の帯電均一化のためにトナー粒子に外添されることが好ましい。無機微粉体を疎水化処理することによって、トナーの帯電量の調整、環境安定性の向上、高湿環境下での特性の向上を達成することができるので、疎水化処理された無機微粉体を用いることがより好ましい。
無機微粉体の疎水化処理の処理剤としては、未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物が挙げられる。これらの処理剤は単独で或いは併用して用いられても良い。
その中でも、シリコーンオイルにより処理された無機微粉体が好ましい。より好ましくは、無機微粉体をカップリング剤で疎水化処理すると同時或いは処理した後に、シリコーンオイル処理された疎水化処理無機微粉体が高湿環境下でもトナー粒子の帯電量を高く維持し、選択現像性を低減する上でよい。
上記無機微粉体の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、0.1質量部以上4.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.2質量部以上3.5質量部以下である。
本発明のトナーの重量平均粒子径(D4)は、3.0μm以上、8.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは、5.0μm以上、7.0μm以下である。このような重量平均粒子径(D4)のトナーを用いることは、ハンドリング性を良好にしつつ、ドットの再現性を十分に満足する上で好ましい。
更に、本発明のトナーの重量平均粒子径(D4)と個数平均粒子径(D1)の比D4/D1は1.25以下であることが好ましい。より好ましくは1.20以下である。
本発明のトナーの各種物性の測定方法について以下に説明する。
<樹脂およびワックスの最大吸熱ピーク温度の測定方法>
本発明における樹脂およびワックスの最大吸熱ピークのピーク温度は、DSC Q1000(TA Instruments社製)を使用して以下の条件にて測定を行う。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料約5mgを精秤し、銀製のパンの中に入れ、一回測定を行う。リファレンスとしては銀製の空パンを用いる。最大吸熱ピークは、ピークが複数あった場合に、吸熱量が最大となるピークのことを意味する。
一方、最大吸熱ピークの吸熱量はピークの面積から装置付属の解析ソフトを用いて計算により求める。
<非晶性樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定方法>
Tgの測定方法は、DSC Q1000(TA Instruments社製)を用いて以下の条件にて測定を行う。
《測定条件》
・モジュレーションモード
・昇温速度:2.0℃/分
・モジュレーション温度振幅:±1.0℃/分
・測定開始温度:20℃
・測定終了温度:130℃
昇温は1度のみ行い、「Reversing Heat Frow」を縦軸にとることでDSCカーブを得、オンセット値をTgとした。
<重量平均粒子径(D4)、個数平均粒子径(D1)の測定方法>
トナーの重量平均粒子径(D4)および個数平均粒子径(D1)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒子径(D4)および個数平均粒子径(D1)を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒子径(D4)であり、前記専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒子径(D1)である。
<ワックス粒子、シェル用樹脂微粒子の粒子径の測定方法>
樹脂微粒子等の粒子径は、マイクロトラック粒度分布測定装置HRA(X−100)(日機装社製)を用い、0.001μm乃至10μmのレンジ設定で測定を行い、体積平均粒子径(μm)として測定する。
<樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)の測定方法>
樹脂(ブロックポリマーを含む)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、樹脂のテトラヒドロフラン(THF)可溶分を、THFを溶媒としたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定する。測定条件は以下の通りである。
(1)測定試料の作製
樹脂(試料)とTHFとを5mg/mlの濃度で混合し、室温にて5乃至6時間放置した後、充分に振とうし、THFと試料を試料の合一体がなくなるまで良く混ぜた。更に、室温にて12時間以上静置した。この時、試料とTHFの混合開始時点から、静置終了の時点までの時間が24時間以上となる様にした。
その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.45乃至0.5μm、マイショリディスクH−25−2[東ソー社製])を通過させたものをGPCの試料とする。
(2)試料の測定
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度に於けるカラムに、溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、試料濃度を5mg/mlに調整した樹脂のTHF試料溶液を200μl注入して測定する。
試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作製された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。
検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、Pressure Chemical Co.製或いは東洋ソーダ工業社製の、分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用いる。又、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
尚、カラムとしては、1×103乃至2×106の分子量領域を適確に測定する為に、市販のポリスチレンゲルカラムを下記のように複数組合せて用いた。本発明における、GPCの測定条件は以下の通りである。
[GPC測定条件]
装置:LC−GPC 150C(ウォーターズ社製)
カラム:KF801、802、803、804、805、806、807(ショウデックス製)の7連
カラム温度:40℃
移動相:THF(テトラヒドロフラン)
以下、実施例を持って本発明を更に詳細に説明するが、本発明は何らこれに制約されるものではない。なお、実施例及び比較例の部数及び%は特に断りが無い場合、すべて質量基準である。
<結晶性ポリエステル1の合成>
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・セバシン酸 125.0質量部
・1,6−ヘキサンジオール 75.0質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
減圧操作により系内を窒素置換した後、180℃にて6時間撹拌を行った。その後、撹拌を続けながら減圧下にて230℃まで徐々に昇温し、更に2時間保持した。粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させることで、結晶性ポリエステル1を合成した。結晶性ポリエステル1の物性を表1に示す。
<結晶性ポリエステル2の合成>
原料の仕込みを以下のように変えた以外は、全て結晶性ポリエステル1の合成と同様にして、結晶性ポリエステル2を合成した。結晶性ポリエステル2の物性を表1に示す。
・アジピン酸 23.5質量部
・セバシン酸 110.1質量部
・1,4−ブタンジオール 66.4質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
<結晶性ポリエステル3の合成>
原料の仕込みを以下のように変えた以外は、全て結晶性ポリエステル1の合成と同様にして、結晶性ポリエステル3を合成した。結晶性ポリエステル3の物性を表1に示す。
・セバシン酸 151.0質量部
・エチレングリコール 49.0質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
<結晶性ポリエステル4の合成>
原料の仕込みを以下のように変えた以外は、全て結晶性ポリエステル1の合成と同様にして、結晶性ポリエステル4を合成した。結晶性ポリエステル4の物性を表1に示す。
・テトラデカン二酸 137.0質量部
・1,6−ヘキサンジオール 63.0質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
<結晶性ポリエステル5の合成>
原料の仕込みを以下のように変えた以外は、全て結晶性ポリエステル1の合成と同様にして、結晶性ポリエステル5を合成した。結晶性ポリエステル5の物性を表1に示す。
・セバシン酸 136.0質量部
・1,4−ブタンジオール 64.0質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
<結晶性ポリエステル6の合成>
原料の仕込みを以下のように変えた以外は、全て結晶性ポリエステル1の合成と同様にして、結晶性ポリエステル6を合成した。結晶性ポリエステル6の物性を表1に示す。
・アジピン酸 22.0質量部
・セバシン酸 112.0質量部
・1,4−ブタンジオール 66.0質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
<結晶性ポリエステル7の合成>
原料の仕込みを以下のように変えた以外は、全て結晶性ポリエステル1の合成と同様にして、結晶性ポリエステル7を合成した。結晶性ポリエステル7の物性を表1に示す。
・アジピン酸 30.0質量部
・セバシン酸 100.0質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
<結晶性ポリエステル8の合成>
原料の仕込みを以下のように変えた以外は、全て結晶性ポリエステル1の合成と同様にして、結晶性ポリエステル8を合成した。結晶性ポリエステル8の物性を表1に示す。
・コハク酸 130.0質量部
・エチレングリコール 70.0質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
<結晶性ポリエステル9の合成>
原料の仕込みを以下のように変えた以外は、全て結晶性ポリエステル1の合成と同様にして、結晶性ポリエステル9を合成した。結晶性ポリエステル9の物性を表1に示す。
・セバシン酸 134.0質量部
・1,4−ブタンジオール 66.0質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
<ブロックポリマー1の合成>
・結晶性ポリエステル1 210.0質量部
・キシリレンジイソシアネート(XDI) 56.0質量部
・シクロヘキサンジメタノール(CHDM) 34.0質量部
・テトラヒドロフラン(THF) 300.0質量部
撹拌装置および温度計を備えた反応容器中に、窒素置換をしながら上記を仕込んだ。50℃まで加熱し、15時間かけてウレタン化反応を施した。その後、ターシャリーブチルアルコール3.0質量部を添加し、イソシアネート末端を修飾した。溶媒であるTHFを留去し、ブロックポリマー1を得た。得られたブロックポリマーの物性を表2に示す。
<ブロックポリマー2乃至10の合成>
ターシャリーブチルアルコール以外の材料、配合量を表2に示すように変更したこと以外は、ブロックポリマー1の合成と全く同様の操作でブロックポリマー2乃至10を得た。得られたブロックポリマー2乃至10の物性を表2に示す。
<ブロックポリマー樹脂溶液1乃至10の調製>
撹拌装置のついたビーカーに、アセトンを100.0質量部、ブロックポリマー1を100.0質量部投入し、温度40℃で完全に溶解するまで撹拌を続け、ブロックポリマー樹脂溶液1を調製した。同様にして、ブロックポリマー樹脂溶液2乃至10を調製した。
<非晶性樹脂1の合成>
・キシリレンジイソシアネート(XDI) 117.0質量部
・シクロヘキサンジメタノール(CHDM) 83.0質量部
・アセトン 200.0質量部
撹拌装置および温度計を備えた反応容器中に、窒素置換をしながら上記を仕込んだ。50℃まで加熱し、15時間かけてウレタン化反応を施した。その後、ターシャリーブチルアルコール3.0質量部を添加し、イソシアネート末端を修飾した。溶媒であるアセトンを留去し、非晶性樹脂1を得た。得られた非晶性樹脂1はMnが4,400、Mwが20,000であった。またDSCによるTgは140℃であった。
<結晶性ポリエステル/非晶性樹脂混合溶液の調製>
撹拌装置のついたビーカーに、アセトンを100.0質量部、結晶性ポリエステル6を30.0質量部、非晶性樹脂1を70.0質量部投入し、温度40℃で完全に溶解するまで撹拌を続け、結晶性ポリエステル/非晶性樹脂混合溶液を調製した。この一部を取り出してロータリーエバポレーターにより40℃で5時間減圧してアセトンを除去したものについてDSC測定を行ったところ、Tcは60℃であった。
<非晶性ポリエステル1の合成例>
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 30.0質量部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 33.0質量部
・テレフタル酸 21.0質量部
・無水トリメリット酸 1.0質量部
・フマル酸 3.0質量部
・ドデセニルコハク酸 12.0質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
攪拌装置および温度計を備えた反応容器中に、窒素置換をしながら上記を仕込んだ。215℃にて5時間撹拌を行った。その後、撹拌を続けながら減圧下にて230℃まで徐々に昇温し、更に2時間保持した。粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させることで、非晶性ポリエステル1を得た。非晶性ポリエステル1の数平均分子量Mnが7,200、重量平均分子量Mwが43,000、Mw/Mnが、6.0、ガラス転移温度Tgは63.0℃であった。
<ビニル系モノマー1の合成例>
・結晶性ポリエステル9 100.0質量部
・テトラヒドロフラン 100.0質量部
上記の材料を攪拌装置および温度計を備えた反応容器中に、窒素置換をしながら投入し、40℃で溶解させた。
2−イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工社製 カレンズMOI)を6.2質量部滴下し、40℃で2時間反応させ、ビニル系モノマー1溶液を得た。続いて、ロータリーエバポレーターによりテトラヒドロフランを40℃で5時間減圧除去を行い、ビニル系モノマー1を得た。
<シェル用樹脂分散液1の合成例>
・ビニル系モノマー1 40.0質量部
・有機ポリシロキサン構造を有するビニル系モノマー 15.0質量部
(X−22−2475:信越化学工業社製)
・スチレン(St) 37.5質量部
・メタクリル酸(MAA) 7.5質量部
・アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル 0.3質量部
・ノルマルヘキサン 80.0質量部
上記の材料を攪拌装置および温度計を備えた反応容器中に、窒素置換をしながら投入した。20℃にて攪拌、混合してモノマー溶液を調製し、あらかじめ加熱乾燥しておいた滴下漏斗に導入した。これとは別に、加熱乾燥した二口フラスコに、ノルマルヘキサン300.0質量部を仕込んだ。窒素置換した後、滴下漏斗を取り付け、密閉下、反応温度40℃にて1時間かけてモノマー溶液を滴下した。滴下終了から3時間攪拌を続け、アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル0.3質量部およびノルマルヘキサン20.0質量部の混合物を再度滴下し、反応温度を40℃にて3時間攪拌を行った。その後、室温まで冷却することで固形分量20.0質量%のシェル用樹脂分散液1を得た。分散液中のシェル用樹脂の体積平均粒径は0.15μmであった。
なお、有機ポリシロキサン構造を有するビニル系モノマーであるX−22−2475は、上記化学式(1)においてR1がメチル基、R2がメチル基、R3がプロピレン基、R4がメチル基、nが3である構造を有するビニル系モノマーである。
続いて、シェル用樹脂分散液1の一部をロータリーエバポレーターにより40℃で5時間減圧除去を行い、シェル用樹脂1を得た。シェル用樹脂1についてDSC測定を行ったところ、最大吸熱ピークのピーク温度が65.0℃であった。また、GPCによる測定によれば数平均分子量Mnが14000、重量平均分子量Mwが70000であった。
<シェル用樹脂分散液2の調製例>
・シェル用樹脂1 100.0質量部
・イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬) 5.0質量部
・イオン交換水 395.0質量部
以上の各成分を混合し100℃に加熱して、IKA社製ウルトラタラックスT50にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理を1時間行った。体積平均粒径が0.18μm、固形分量が20.0質量%のシェル用樹脂分散液2を得た。
<シェル用樹脂分散液3の調製例>
・非晶性ポリエステル1 100.0質量部
・イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬) 5.0質量部
・イオン交換水 395.0質量部
以上の各成分を混合し100℃に加熱して、IKA社製ウルトラタラックスT50にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理を1時間行った。体積平均粒径が0.18μm、固形分量が20.0質量%のシェル用樹脂分散液30を得た。
<ワックス分散液1の調製>
・第一のワックス(ジペンタエリスリトールパルチミン酸エステルワックス)
16.0質量部
・第二のワックス(ジペンタエリスリトールベヘン酸エステルワックス)
6.4質量部
・ワックス分散剤(ポリエチレン15.0質量部の存在下、スチレン50.0質量部、n−ブチルアクリレート25.0質量部、アクリロニトリル10.0質量部をグラフト重合させた、ピーク分子量8,500の共重合体) 11.2質量部
・アセトン 66.4質量部
上記を撹拌羽根突きのガラスビーカー(IWAKIガラス製)に投入し、系内を50℃に加熱することでワックスをアセトンに溶解させた。ついで、系内を50rpmで緩やかに撹拌しながら徐々に冷却し、3時間かけて25℃にまで冷却させ乳白色の液体を得た。
この溶液を1mmのガラスビーズ20質量部とともに耐熱性の容器に投入し、ペイントシェーカー(東洋精機製)にて3時間の分散を行い、ワックス分散液1を得た。
上記ワックス分散液1中のワックス粒子径を測定したところ、体積平均粒子径で0.15μmであった。得られたワックス分散液1の物性を表3に示す。
<ワックス分散液2乃至15の調製>
ワックス分散液1で用いた第一のワックスおよび第二のワックスの代わりに、表3に示す組合せのワックスを用いたこと以外はワックス分散液1の調製と同様にしてワックス分散液2乃至15を調製した。得られたワックス分散液2乃至15の物性を表3に示す。
<ワックス分散液16の調製>
・第一のワックス(ジペンタエリスリトールパルミチン酸エステルワックス)
51.4質量部
・第二のワックス(ジペンタエリスリトールベヘン酸エステルワックス)
20.6質量部
・ワックス分散剤(ポリエチレン15.0質量部の存在下、スチレン50.0質量部、n−ブチルアクリレート25.0質量部、アクリロニトリル10.0質量部をグラフト重合させた、ピーク分子量8,500の共重合体) 36.0質量部
・カチオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬) 8.6質量部
・イオン交換水 133.4質量部
以上を混合し95℃に加熱して、IKA社製ウルトラタラックスT50にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、体積平均粒径が0.20nm、ワックス分量が28.8質量%のワックス分散液16を得た。
<着色剤分散液1の調製>
・C.I.ピグメントブルー15:3 100.0質量部
・アセトン 150.0質量部
・ガラスビーズ(1mm) 200.0質量部
上記材料を耐熱性のガラス容器に投入し、ペイントシェーカーにて5時間分散を行い、ナイロンメッシュでガラスビーズを取り除き、着色剤分散液1を得た。
<着色剤分散液2の調製>
・C.I.ピグメントブルー15:3 45.0質量部
・イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬) 5.0質量部
・イオン交換水 200.0質量部
・ガラスビーズ(1mm) 250.0質量部
上記材料を耐熱性のガラス容器に投入し、ペイントシェーカーにて5時間分散を行い、ナイロンメッシュにてガラスビーズを取り除き、着色剤分散液2を得た。
<トナー粒子1の製造>
図1の実験装置において、まず、バルブV1、V2、および圧力調整バルブV3を閉じ、トナー粒子を捕捉するためのフィルターと撹拌機構とを備えた耐圧の造粒タンクT1にシェル用樹脂分散液1(表4では「樹脂微粒子1」と記載)を仕込み、内部温度を30℃に調整した。次に、バルブV1を開き、ボンベB1からポンプP1を用いて二酸化炭素(純度99.99%)を耐圧容器T1に導入し、内部圧力が5MPaに到達したところでバルブV1を閉じた。
一方、樹脂溶解液タンクT2にブロックポリマー樹脂溶液1、ワックス分散液1、着色剤分散液1、アセトンを仕込み、内部温度を30℃に調整した。
次に、バルブV2を開き、造粒タンクT1の内部を2000rpmで撹拌しながら、ポンプP2を用いて樹脂溶解液タンクT2の内容物を造粒タンクT1内に導入し、すべて導入を終えたところでバルブV2を閉じた。
導入後の、造粒タンクT1の内部圧力は8MPaとなった。
尚、各種材料の仕込み量(質量比)は、次の通りである。使用される結着樹脂の融点Tc、第一のワックスの融点Tw1および第二のワックスの融点Tw2の関係を表4に示す。
・ブロックポリマー樹脂溶液1 200.0質量部
・ワックス分散液1 31.3質量部
・着色剤分散液1 14.3質量部
・アセトン 35.6質量部
・シェル用樹脂分散液1 28.5質量部
・二酸化炭素 280.0質量部
尚、導入した二酸化炭素の質量は、二酸化炭素の温度(30℃)、および圧力(8MPa)から、二酸化炭素の密度を文献(Journal of Physical and Chemical Reference data、vol.25、P.1509〜1596)に記載の状態式より算出し、これに造粒タンクT1の体積を乗じることにより算出した。
樹脂溶解液タンクT2の内容物の造粒タンクT1への導入を終えた後、さらに、2000rpmで3分間撹拌して造粒を行った。
次に、バルブV1を開き、ボンベB1からポンプP1を用いて二酸化炭素を造粒タンクT1内に導入した。この際、圧力調整バルブV3を10MPaに設定し、造粒タンクT1の内部圧力を10MPaに保持しながら、さらに二酸化炭素を流通させた。この操作により、造粒後の液滴中から抽出された有機溶媒(主にアセトン)を含む二酸化炭素を、溶剤回収タンクT3に排出し、有機溶媒と二酸化炭素を分離した。
造粒タンクT1内への二酸化炭素の導入は、最初に造粒タンクT1に導入した二酸化炭素質量の5倍量に到達した時点で停止した。この時点で、有機溶媒を含む二酸化炭素を、有機溶媒を含まない二酸化炭素で置換する操作は完了した。
さらに、圧力調整バルブV3を少しずつ開き、造粒タンクT1の内部圧力を大気圧まで減圧することで、フィルターに捕捉されているトナー粒子1を回収した。得られたトナー粒子の粒径を表5に示す。
<トナー粒子2乃至18及び比較トナー粒子1乃至8の製造>
使用する材料の種類および仕込み量を表4に示す組合せに変えた他は、トナー粒子1の製造と同様にしてトナー粒子2乃至18及び比較トナー粒子1乃至8の製造を行った。使用した結着樹脂の融点Tc、第一のワックスの融点Tw1および第二のワックスの融点Tw2の関係を表4に合わせて示す。また、得られたトナー粒子および比較トナー粒子の粒径を表5に示す。
<トナー粒子19の製造>
・結晶性ポリエステル/非晶性樹脂混合溶液 400.0質量部
・アニオン系界面活性剤 3.0質量部
(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)
・イオン交換水 400.0質量部
上記材料を混合し、40℃に加熱して、乳化機(IKA製、ウルトラタラックス T−50)を用いて回転速度8000rpmにて10分攪拌し、その後、アセトンを留去することでコア用樹脂分散液1を調製した。
・コア用樹脂分散液1 303.0質量部
・着色剤分散液2 31.7質量部
・ワックス分散液16 24.3質量部
・10質量%ポリ塩化アルミニウム水溶液 1.5質量部
以上を丸型ステンレス製フラスコ中に混合し、IKA社製ウルトラタラックスT50にて混合分散した後、攪拌しながら45℃にて60分間保持した。その後、シェル用樹脂分散液2を28.5質量部緩やかに添加した。0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを6にした後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて攪拌を継続しながら96℃まで加熱して、5時間保持した。
反応終了後、冷却し、濾過、イオン交換水で十分に洗浄した後、トナー粒子19のろ過ケーキを得た。上記ろ過ケーキを減圧乾燥機にて常温で3日間乾燥しトナー粒子19を得た。得られたトナー粒子の粒径および粒度分布を表5に示す。また、トナー粒子19においては、Tw2−Tw1は11、Tw1−Tcは13である。また、W1+W2は7.0質量部であり、W2/W1は0.4である。
<トナー粒子20の製造>
シェル用樹脂分散液2にかえて、シェル用樹脂分散液3を用いた他はトナー粒子19の製造と全く同様にしてトナー粒子20を得た。得られたトナー粒子の粒径および粒度分布を表5に示す。このときTw2−Tw1は11、Tw1−Tcは13である。また、W1+W2は7.0質量部であり、W2/W1は0.4である。
<アニール処理工程>
アニール処理は、恒温乾燥器(佐竹化学製41−S5)を用いて行った。恒温乾燥器の内部温度を50℃に調整した。
上述の工程までで得られたトナー粒子1乃至20及び比較トナー粒子1乃至8を、ステンレス製バットに均等になるように広げて入れ、これを前記恒温乾燥器に入れて2時間静置した後、取り出し、アニール処理されたトナー粒子及び比較トナー粒子を得た。
<実施例1乃至20及び比較例1乃至8>
次に、上記アニール処理されたトナー粒子1乃至20及び比較トナー粒子1乃至8のそれぞれ100.0質量部に対し、アナターゼ型酸化チタン微粉末(BET比表面積80m2/g、個数平均粒径(D1)15nm、イソブチルトリメトキシシラン12質量%処理)0.9質量部をまずヘンシェルミキサーにより外添した。さらにオイル処理シリカ微粒子(BET比表面積95m2/g、シリコーンオイル15質量%処理)1.2質量部、ゾルゲルシリカ微粒子(BET比表面積24m2/g、個数平均粒径(D1)110nm)1.5質量部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株)製)FM−10Bにて混合し、トナー及び比較トナーを得た。
<トナーおよび比較トナーの評価>
得られたトナー1乃至20及び比較トナー1乃至8について、以下の評価を行った。評価の結果を表6に示す。
<耐熱保存性の評価>
約10gのトナーを100mlのポリカップに入れ、50℃で3日放置した後、目視で評価した。
(耐熱保存性の評価基準)
A:まったく凝集物は確認されず、初期とほぼ同様の状態。
B:若干、凝集気味であるが、ポリカップを軽く5回振る程度で崩れる状態であり、特に問題とならない。
C:凝集気味であるが、指でほぐすと簡単にほぐれる状態であり、実使用に耐えうる。
D:凝集が激しく発生。
E:固形化しており、使用できない。
<低温定着性の評価>
トナーの低温定着性は、剥離性による定着開始温度とコールドオフセットによる定着開始温度の2種類の方法で評価した
(剥離性による定着開始温度の評価)
市販のキヤノン製プリンターLBP5300を使用し、評価を行った。
LBP5300は、一成分接触現像方式を採用しており、トナー規制部材によって現像担持体上のトナー量を規制している。評価用カートリッジは、市販のカートリッジ中に入っているトナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、上記トナーを充填したものを使用した。上記カートリッジを、シアンステーションに装着し、その他にはダミーカートリッジを装着した。
次いで、厚紙A4用紙(「プローバーボンド紙」:105g/m2、フォックスリバー社製)上に、先端余白5mm、幅100mm、長さ25mmの「べた」の未定着のトナー画像(単位面積あたりのトナー載り量1.2mg/cm2)を形成した。
市販のキヤノン製プリンターLBP5900の定着器を、手動による定着温度設定が可能となるように改造し、定着器の回転速度を300mm/sに、ニップ内圧力を98kPaに変更した。この改造定着器を用い、常温常湿環境下(23℃、60%RH)にて、80℃から120℃の範囲で5℃ずつ定着温度を上昇させながら、上記「べた」の未定着画像の各温度における定着画像を得た。
得られた定着画像の画像領域に、柔和な薄紙(例えば、商品名「ダスパー」、小津産業社製)を被せ、該薄紙の上から4.9kPaの荷重をかけつつ5往復、該画像領域を摺擦した。摺擦前と摺擦後の画像濃度をそれぞれ測定して、下記式により剥離による画像濃度の低下率ΔD(%)を算出した。このΔD(%)が10%未満のときの温度を剥離性による定着開始温度とし、以下のような評価基準で評価した。
尚、画像濃度はカラー反射濃度計(Color reflection densitometer X−Rite 404A:製造元 X−Rite社製)で測定した。
(式):ΔD(%)=(摺擦前の画像濃度−摺擦後の画像濃度)/摺擦前の画像濃度×100
(評価基準)
A:定着開始温度が95℃以下
B:定着開始温度が100℃
C:定着開始温度が105℃
D:定着開始温度が110℃
E:定着開始温度が115℃以上
尚、本発明においてはA、B、Cランクを良好な低温定着性と判断した。
(コールドオフセットによる定着開始温度の評価)
上記剥離性による定着開始温度の評価で得られた定着画像を用いて、コールドオフセットの評価を行った。評価は、「べた」画像の周方向末端から定着ベルト1周分後方の白地になる部位で濃度変化を確認した。測定は東京電色技術センター製DENSITOMETER TC−6DSを用い、反射率(%)を、測定し、濃度の値とした。濃度が0.5%変化したところをコールドオフセット発生点とし、コールドオフセットが発生しなかった最低温度をコールドオフセット性による定着開始温度とした。
(定着開始温度の評価基準)
A:定着開始温度が95℃以下
B:定着開始温度が100℃
C:定着開始温度が105℃
D:定着開始温度が110℃
E:定着開始温度が115℃以上
尚、本発明においてはA、B、Cランクを良好なコールドオフセット性と判断した。
<ホットオフセットによる高温定着温度の評価>
上記低温定着性の評価から、紙を普通紙A4用紙(「オフィスプランナー」:64g/m2、キヤノン製)に変更して定着性の評価を行った。140℃から200℃の範囲で5℃ずつ定着温度を上昇させながら、上記「べた」の未定着画像の各温度における定着画像を得た。定着後の画像より、目視にて定着器2周目に、前周期のホットオフセットトナーが見られた点をホットオフセット開始温度と判断し、ホットオフセット開始温度より低い温度の最高温度を高温定着温度と判断した。なお、200℃までホットオフセットが発生しなかったものに関しては、200℃を高温定着温度とした。
(高温定着温度の評価基準)
A:高温定着温度が185℃以上
B:高温定着温度が180℃
C:高温定着温度が175℃
D:高温定着温度が170℃
E:高温定着温度が165℃以下
尚、本発明においてはA、B、Cランクを良好なホットオフセット性と判断した。
(定着可能な温度領域の評価)
上記剥離性による定着開始温度と、コールドオフセットによる定着開始温度のうち高い方を定着開始温度とし、定着開始温度と前記高温定着温度の差(高温定着温度−定着開始温度)を定着可能な温度領域とし、以下の基準で評価を行った。
(定着可能な温度領域の評価基準)
A:定着可能な温度領域が90℃以上
B:定着可能な温度領域が80℃以上90℃未満
C:定着可能な温度領域が70℃以上80℃未満
D:定着可能な温度領域が60℃以上70℃未満
E:定着可能な温度領域が60℃未満
尚、本発明においてはA、B、Cランクを良好な定着可能な温度領域と判断した。
<過酷放置後の耐久性の評価>
市販のキヤノン製プリンターLBP5400を用い、この現像器に40℃、95RHの過酷環境下に60日間放置した各トナーおよび比較トナーを150g充填した。高温高湿環境下(30℃、80%RH)で、転写紙としてA4用紙(「GF−R300」:66g/m2、キヤノン製)を用い、印字比率1%のチャートを20000枚出力した。出力後、現像容器を分解しトナー担持体の表面を目視により観察した。
耐久性の評価基準は以下のとおりである。尚、本発明においてはA、B、Cランクを良好な耐久性と判断した。
(耐久性の評価基準)
A:トナー付着がなく、周方向スジの発生が全く無い
B:トナー付着は目立たないが、周方向スジが端部において1乃至2本発生
C:トナー付着は軽微であるが、周方向スジが端部において3乃至5本発生
D:フィルミングが見られ、周方向スジが前面に渡って6本以上発生
E:フィルミングが著しく、トナー担持体の端部削れによるトナー漏れが発生