以下、本発明に係る作業機用の伝動装置における基本構成を図面に基づいて説明する。
図6〜9及び図11〜13に示すように、本発明に係る作業機用の伝動装置13は、左右の走行装置7(図1参照)に個別に連動連結する一対の連動回転体92と、一対の連動回転体92への伝動を個別に断続する一対のサイドクラッチ83とを、伝動ケース43に左右向きに内蔵したサイドクラッチ軸46の軸上に装備している。
各サイドクラッチ83は、サイドクラッチ軸46に対するサイドクラッチ軸46の軸心方向での摺動による着脱が可能な状態でサイドクラッチ軸46に相対回転可能に外嵌する筒軸85と、一側端に噛合部86Aを備えた移動側回転体86と、一側端に被噛合部87Aを備えた固定側回転体87と、噛合部86Aと被噛合部87Aとが噛み合う入り位置に向けて移動側回転体86を付勢する圧縮バネ88と、移動側回転体86を入り位置にて受け止めるストッパ89と、圧縮バネ88の一端部を受け止めるバネ受け90とから構成している。
そして、各サイドクラッチ83においては、移動側回転体86と圧縮バネ88とストッパ89とバネ受け90とを、筒軸85の外周部に、ストッパ89とバネ受け90との間に移動側回転体86と圧縮バネ88とが位置する配置で、かつ、移動側回転体86が筒軸85に対してサイドクラッチ軸46の軸心方向に摺動可能な状態で筒軸85と一体回転するように装備して、筒軸85と移動側回転体86と圧縮バネ88とストッパ89とバネ受け90とを、サイドクラッチ軸46に対してサイドクラッチ軸46の軸心方向に着脱可能に一体摺動する摺動ユニット91に構成している。
伝動装置13は、一対のサイドクラッチ83を介して各連動回転体92に伝動する伝動回転体82をサイドクラッチ軸46の中央部に配備している。そして、一対のサイドクラッチ83とともに一対の連動回転体92を伝動回転体82の左右に分散配置して、一対のサイドクラッチ83が、伝動回転体82から左右同じ側に位置する連動回転体92への伝動を断続するように構成している。
各サイドクラッチ83は、移動側回転体86が従動側回転体として機能し、かつ、固定側回転体87が駆動側回転体として機能する状態に構成して、摺動ユニット91のそれぞれを、対応する連動回転体92を構成部品の一つとして備えるように構成している。
伝動ケース43は、サイドクラッチ軸46の軸心方向における一対のサイドクラッチ83のそれぞれとの対向箇所に、摺動ユニット91の通過を許容する開口43Bを備え、かつ、開口43Bを塞ぐカバー部材102を着脱可能に装備して、摺動ユニット91のそれぞれを、サイドクラッチ軸46に対して伝動ケース43の外側から着脱可能に構成している。
各カバー部材102は、サイドクラッチ軸46の端部を支持する軸支部105を備えている。
各固定側回転体87は、サイドクラッチ軸46の軸心方向での摺動によるサイドクラッチ軸46に対する着脱が可能な状態でサイドクラッチ軸46に外嵌している。そして、伝動ケース43の各開口43Bを、固定側回転体87の通過を許容する大きさに形成している。
各サイドクラッチ83は、固定側回転体87として、移動側回転体86の噛合部86Aとの噛み合い長さの2倍以上の歯幅を有する平ギヤを備えている。
各固定側回転体87は、サイドクラッチ軸46における摺動ユニット91よりも軸端側の部位に外嵌している。
伝動装置13は、一対の連動回転体92として駆動ギヤ92を備え、各摺動ユニット91は、対応する駆動ギヤ92を構成部品の一つとして筒軸85に装備している。
伝動ケース43は、対応する走行装置7を制動する多板式のサイドブレーキ84を、サイドクラッチ軸46の軸上におけるそれぞれの摺動ユニット91の外周側に装備している。そして、各摺動ユニット91は、対応するサイドブレーキ84のブレーキハブ94を構成部品の一つとして筒軸85と一体回転する状態で備えている。
各摺動ユニット91は、筒軸85と一体回転するスプラインボス99を備えている。そして、各スプラインボス99は、一端側が駆動ギヤ92として機能し、かつ、他端側がブレーキハブ94として機能する兼用部品に構成している。又、駆動ギヤ側の内周面に、対応する筒軸85の一端側に備えたスプライン軸部85Aに外嵌するスプライン穴部99Aを備え、かつ、ブレーキハブ側の内周面に、筒軸85との間に圧縮バネ88用の収納空間100を形成する拡径部99Bを備えている。
各筒軸85は、それらの外周部に備えた段差部85Cにてバネ受け90を構成して、それらのスプライン軸部85Aを、段差部85Cから大径側の軸端にわたる長さに形成している。各スプライン軸部85Aは、それらの外周側に略環状に凹入形成した係合部85Eを備え、かつ、係合部85EにC字形の止め輪101を外嵌装備している。各スプラインボス99は、それらのスプライン穴部99Aを止め輪101から段差部85Cにわたる長さに形成し、かつ、拡径部99Bを段差部85Cからブレーキハブ側のボス端にわたる長さに形成している。
各サイドブレーキ84は、サイドクラッチ軸46の軸心方向に交互に配置する複数のブレーキディスク96と複数のセパレータプレート95とを、サイドクラッチ軸46の軸心方向での摺動による伝動ケース43の横外方への取り外しが可能な状態で装備している。そして、伝動ケース43の各開口43Bは、ブレーキディスク96及びセパレータプレート95の通過を許容する大きさに形成している。
各移動側回転体86は、それらの外周部にブレーキディスク96及びセパレータプレート95に作用する押圧部86Cを備えている。そして、各サイドブレーキ84は、対応する移動側回転体86が、移動側回転体86の噛合部86Aと固定側回転体87の被噛合部87Aとが噛み合いを解除する切り位置から、入り位置とは反対方向に位置する制動位置に向けて摺動するのに伴って、ブレーキディスク96及びセパレータプレート95のそれぞれが押圧部86Cの作用による圧接を解除する制動解除状態から、ブレーキディスク96及びセパレータプレート95のそれぞれが押圧部86Cの作用により圧接する制動状態に切り替わり、かつ、対応する移動側回転体86が制動位置から切り位置に向けて摺動するのに伴って、制動状態から制動解除状態に切り替わるように構成している。
各固定側回転体87は、サイドクラッチ軸46における摺動ユニット91よりも軸端側の部位に外嵌している。そして、各カバー部材102には、固定側回転体87の通過を許容する補助開口102Aを備え、かつ、補助開口102Aを塞ぐ補助カバー部材103を着脱可能に装備し、サイドクラッチ軸46の端部を支持する軸支部105を補助カバー部材103に備えている。
各補助開口102Aは、サイドクラッチ軸46の軸心を中心とする円形に形成している。各補助カバー部材103は、補助開口102Aに内嵌する大径部103Aと、補助開口102Aとの間に環状の空間104を形成する小径部103Bとを、小径部103Bが伝動ケース43の内部側に位置する状態で備えている。各摺動ユニット91は、それらの移動側回転体86が空間104に対向する状態でサイドクラッチ軸46の軸上に装備している。そして、各空間104に、対応する移動側回転体86を摺動操作する環状のピストン106を、サイドクラッチ軸46の軸心方向に摺動可能な状態で嵌入するとともに、各空間104がピストン操作用の油室104として機能する状態に構成している。
各摺動ユニット91において、ストッパ89は、筒軸85の外周側に環状に凹入形成した係合溝85Dに着脱可能に外嵌するC字形の止め輪89により構成している。移動側回転体86は、ストッパ側の内周面に、その入り位置におけるストッパ89の入り込みを許容する拡径部86Eを備えている。そして、その拡径部86Eは、ストッパ89の係合溝85Dからの離脱を阻止する大きさに形成している。
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る作業機用の伝動装置を、作業機の一例である普通形コンバイン(全稈投入形コンバイン)に適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態で例示する普通形コンバインは、走行車体1における前端部の左側箇所に、作業走行時に車体の前方に位置する収穫対象の未刈り穀稈を刈り取って後方に搬送する収穫装置としての刈取搬送装置2を、走行車体1の前方に向けて延出する状態で昇降可能に連結している。又、走行車体1の左半部に、刈取搬送装置2が搬送した刈取穀稈に扱き処理を施し、この扱き処理で得た処理物に選別処理を施す脱穀装置3を搭載している。更に、走行車体1における右半部の後側領域に、脱穀装置3の底部から揚送コンベヤ(図示せず)を介して揚送した穀粒をホッパ4Aに一旦貯留して、その穀粒の籾袋5への詰め込みを可能にする袋詰装置4を搭載している。そして、これらにより、稲や麦あるいは大豆などの穀物を収穫し、収穫した穀物の袋詰めを可能にする袋詰め仕様に構成している。
尚、図示は省略するが、普通形コンバインは、袋詰め仕様に代えて、例えば、袋詰装置4の代わりに、揚送コンベヤにて揚送した穀粒を貯留する穀粒タンク、及び、穀粒タンクに貯留した穀粒の機外への排出を可能にするスクリュ搬送式又はバケット搬送式などの穀粒排出装置を装備する穀粒タンク仕様に構成してもよい。
図1、図3、図4及び図6に示すように、走行車体1は、角パイプ材などの複数の鋼材を連結して構成した車体フレーム6を備え、この車体フレーム6の下部に、左右の走行装置7として左右のクローラ7を配備してフルクローラ仕様に構成している。又、車体フレーム6における右半部の前側領域に搭乗運転部8を形成し、搭乗運転部8の後部側に備えた運転座席9の下方に水冷式のディーゼルエンジン(以下、エンジンと称する)10などを配備している。そして、車体フレーム6における前部の左右中央側箇所に、エンジン10の出力軸(図示せず)から左右のクローラ7への伝動を可能にするベルト式の伝動機構11と、外部機器Aとしての静油圧式の無段変速装置(以下、HSTと称する)12と、伝動装置13とを配備している。
尚、図示は省略するが、走行車体1は、フルクローラ仕様に代えて、例えば、左右の走行装置7として左右の前輪と左右の後輪とを装備するホイール仕様、あるいは、左右の走行装置7として左右の前輪と左右の後部クローラとを装備するセミクローラ仕様、などに構成してもよい。又、水冷式のディーゼルエンジン10に代えて、例えば、空冷式のディーゼルエンジン、あるいは、水冷式又は空冷式のガソリンエンジン、などを装備してもよい。更に、エンジン10と電動式の走行モータとを備えるハイブリッド仕様、あるいは、エンジン10に代えて電動式の走行モータを備える電動仕様に構成してもよい。又、搭乗運転部8を車体フレーム6における左半部の前側箇所などに形成してもよい。更に、搭乗運転部8を覆うキャビンを装備してもよい。
図1に示すように、車体フレーム6は、その搭乗運転部形成領域に台座部6Aを備えており、この台座部6Aに搭乗運転部8を形成することにより、搭乗運転部8の全体をHST12及び伝動装置13よりも上方の位置に配備している。
搭乗運転部8は、台座部6Aの前端部位に立設したフロントパネル14、及び、台座部6Aの左端部位にフロントパネル14の左端部に連接する状態で立設したサイドパネル15、などにより、車体右側からの乗降が可能な搭乗空間を形成している。そして、フロントパネル14の上部に、十字揺動式で中立復帰型に構成した操縦レバー16などを配備している。又、サイドパネル15の上部に、前後揺動式で位置保持型に構成した主変速レバー17及び副変速レバー18などを配備している。更に、その足元箇所に、踏み込み解除位置へのバネ付勢に抗した踏み込み位置での位置保持が可能な自己復帰型に構成したブレーキペダル19を配備している。
刈取搬送装置2は、収穫対象の穀稈を刈り取って所定位置に回収する刈取回収ユニット20と、所定位置に回収した刈取穀稈を脱穀装置3の穀稈投入口(図示せず)に向けて搬送するスラットコンベヤからなるフィーダ21とを装備している。
刈取回収ユニット20は、その前端部の左右両端箇所に、車体の走行に伴って、未刈り穀稈を収穫対象の穀稈と収穫対象外の穀稈とに梳き分ける左右のデバイダ22を分配装備している。又、その前部の上方箇所に、左右のデバイダ22によって梳き分けた収穫対象穀稈の穂先側を後方に向けて掻き込む回転リール23を配備している。更に、その底部に、収穫対象穀稈の株元側を切断するバリカン形の切断機構24を装備し、その切断機構24の後方箇所に、切断機構24による切断後の刈取穀稈を左右方向の所定位置に寄せ集めて、その所定位置から後方のフィーダ21に向けて送り出すオーガドラム25を配備している。
フィーダ21は、刈取回収ユニット20における所定位置の真後ろに形成した穀稈送出口(図示せず)から脱穀装置3の穀稈投入口(図示せず)にわたるように構成している。そして、その後端部に、刈取搬送装置2の入力軸を兼ねる左右向きのフィーダ駆動軸26を装備し、このフィーダ駆動軸26を脱穀装置3の前壁に相対回転可能に連結している。
図2に示すように、刈取搬送装置2は、昇降用の油圧制御ユニット27の作動によってフィーダ駆動軸26を支点にして昇降するように構成している。油圧制御ユニット27には、オイルタンク28に貯留したオイルを第1油圧ポンプ29の作動によって供給している。油圧制御ユニット27は、車体フレーム6とフィーダ21とにわたって架設した油圧式の昇降シリンダ(図示せず)、及び、この昇降シリンダに対する操作圧を変更する昇降用のバルブユニット(図示せず)、などを備えている。昇降用のバルブユニットは、操縦レバー16に昇降用の機械式連係機構(図示せず)を介して連係している。そして、操縦レバー16の前後方向での揺動操作に基づいて、オイルタンク28と第1油圧ポンプ29と昇降シリンダとの間におけるオイルの流れを制御することにより、昇降シリンダに対する操作圧を変更するように構成している。
この構成から、操縦レバー16を前後方向に揺動操作することにより、刈取搬送装置2を、収穫対象の未刈り穀稈を収穫する下側の作業領域と収穫しない上側の非作業位置とに昇降させることができる。そして、作業領域においては、収穫対象穀稈に対する切断機構24の高さ位置を変更する刈り高さ調節を行うことができ、これにより、刈取搬送装置2の作業位置を任意の高さ位置に設定変更することができる。
つまり、刈取搬送装置2は、操縦レバー16の前後方向への揺動操作によって、下側の作業領域における任意の作業位置と上側の非作業位置とにわたって昇降変位するように構成している。
図1に示すように、刈取搬送装置2は、任意の作業位置に位置する場合には、少なくとも伝動装置13における上部の前方を覆う状態(図1にて実線で示す状態)になり、非作業位置に位置する場合には、伝動装置13における上下方向全域の前方を開放する状態(図1にて二点鎖線で示す状態)になるように構成している。
尚、刈取搬送装置2は、例えば、前後揺動式で中立復帰型に構成した昇降操作専用の操作レバー、又は、昇降操作専用のスイッチ、などの操作に基づいて昇降するように構成してもよい。又、作業位置と伝動装置13の前方を開放する非作業位置とにわたって、横方向に摺動変位又は揺動変位するように構成してもよい。
図3〜7に示すように、HST12は、変速ケース30に油圧ポンプ31と油圧モータ32とを内蔵して構成している。又、油圧ポンプ31のポンプ軸がHST12の入力軸33になり、かつ、油圧モータ32のモータ軸がHST12の出力軸34になるように構成している。そして、その入力軸33及び出力軸34が左右向きになる状態で油圧ポンプ31の真下に油圧モータ32が位置する縦長の左右向き姿勢で走行車体1に装備している。
変速ケース30は、油圧ポンプ31と油圧モータ32とを収納する凹部35Aを備えたケース本体35、及び、凹部35Aを塞ぐポートブロック36、などを備えている。油圧ポンプ31には、アキシャルプランジャ形の可変容量ポンプを採用している。油圧モータ32には、アキシャルプランジャ形の固定容量モータを採用している。HST12の入力軸33及び出力軸34は、ポートブロック36を貫通してケース外に突出している。HST12の入力軸33には、ベルト式の伝動機構11の出力プーリ37を、中継軸38などを介して、出力プーリ37と入力軸33とが入力軸33の軸心を中心にして一体回転する状態に連動連結している。ポートブロック36は、その上部側に入力軸33が貫通する入力部を備え、かつ、その下部側に出力軸34が貫通する出力部を備えている。そして、その入力部に、入力軸33及び中継軸38などを外囲する筒状の入力ケース39の一端部をボルト連結している。又、その出力部を伝動装置13の入力部に連接した状態で伝動装置13の右側面の上部にボルト連結している。
HST12は、油圧ポンプ31のポンプ斜板(図示せず)を操作する変速操作軸40を、変速ケース30の前壁から前方に突出する状態で備えている。変速操作軸40は、主変速レバー17の前後方向での揺動操作に連動して、ポンプ斜板の操作角が主変速レバー17の操作位置に対応した角度に変更されるように、その前端部に備えた連係アーム41を、主変速用の機械式連係機構42を介して主変速レバー17に連係している。
つまり、HST12は、主変速装置として機能するように構成した状態で走行車体1に装備している。
図2に示すように、HST12は、その内部に備えたチャージポンプ(図示せず)などの作動により、オイルタンク28に貯留したオイルを補充するように構成している。
尚、図示は省略するが、HST12は、例えば、その入力軸33及び出力軸34が前後向きになる状態で油圧ポンプ31の真下に油圧モータ32が位置する縦長の前後向き姿勢、あるいは、その入力軸33及び出力軸34が左右向きになる状態で油圧ポンプ31と油圧モータ32とが前後に並ぶ前後に長い左右向き姿勢、などで走行車体1に装備してもよい。又、油圧モータ32としてアキシャルプランジャ形の可変容量モータを装備してもよい。
次に、伝動装置13の全体構成及び伝動ケース43の構成について説明する。
図3〜9に示すように、伝動装置13は、鋳造性の伝動ケース43に、左右向きの入力軸44と従動軸45とサイドクラッチ軸46、コンスタントメッシュ式の選択歯車式に構成した変速機47、一対のサイドクラッチブレーキユニット48、及び、左右の伝動機構49、などを内蔵して構成している。そして、伝動ケース43の下部から左右の対応するクローラ7にわたる左右向きの左右の走行駆動軸50、及び、左右の走行駆動軸50を個別に外囲した状態で回転可能に支持する左右の駆動軸ケース51、などを備えている。
伝動ケース43は、主ケース部品52と左右の補助ケース部品53とを備えている。主ケース部品52は、左ケース部材54と右ケース部材55とに分割可能な左右二分割構造に構成している。そして、左右のケース部材54,55をボルト連結することにより、その内部空間として第1空間部56と補助空間部57とを備えるように構成している。又、その左右の側壁の下部側には、主ケース部品52の内部に向けて凹入する凹入部52Aを備えている。そして、主ケース部品52の左右の側壁に、それらの凹入部52Aを覆う状態で左右の補助ケース部品53をボルト連結することにより、左右の側壁と左右の補助ケース部品53との間に左右の第2空間部58を備えるように構成している。
つまり、伝動ケース43は、その内部空間として第1空間部56と補助空間部57と左右の第2空間部58とを備えている。
図3〜7、図9及び図10に示すように、伝動ケース43は、その搭乗運転部側となる右側壁の上部に、HST12のポートブロック36に備えた出力部に連接する入力部を備えている。そして、その入力部にポートブロック36の出力部を連接させた状態で、その右側壁の上部にHST12をボルト連結によって装備している。
伝動装置13の入力軸44は、その入力側の端部となる右端部を、伝動ケース43に連接する外部機器Aとして備えたHST12の出力軸34に、筒軸59を介してスプライン嵌合することにより、出力軸34の軸心を中心にして出力軸34と一体回転するように構成している。伝動ケース43は、その左側壁の上部側に、入力軸44における入力側の端部とは反対側の端部となる左端部を露出させる第1開口43Aを備えている。
これにより、HST12の中立調節を行う場合には、主変速レバー17を中立位置に操作した状態においてHST12の出力軸34が停止しているか否かの確認を、第1開口43Aから露出している入力軸44の左端部を目視することによって簡単に行うことができる。つまり、HST12の中立調節を簡単かつ確実に行うことができる。
尚、伝動ケース43に連接する外部機器Aとして、例えば、ベルト式の無段変速装置、油圧機械式の無段変速装置(HMT)、ベルト式の伝動機構、あるいは、電動モータ、などを備えるようにしてもよい。
次に、伝動装置13における変速機47に関する構成について説明する。
図6、図7、図9及び図10に示すように、変速機47は、伝動ケース43における第1空間部56の上部に、畦越え走行時などに使用する使用頻度が最も低い低速伝動用の低速駆動ギヤ60と低速従動ギヤ61、作業走行時などに使用する使用頻度が比較的高い中速伝動用の中速駆動ギヤ62と中速従動ギヤ63、作業走行時や移動走行時などに使用する使用頻度が最も高い高速伝動用の高速駆動ギヤ64と高速従動ギヤ65、及び、それらのギヤ選択操作を可能にするシフト機構66、などを配備して、シフト機構66のギヤ選択操作による3段の変速が可能となるように構成している。
各駆動ギヤ60,62,64は、低速駆動ギヤ60を、伝動装置13の入力軸44にスプライン嵌合する筒軸59に一体形成し、中速駆動ギヤ62及び高速駆動ギヤ64を伝動装置13の入力軸44にスプライン嵌合することにより、伝動装置13の入力軸44に、その軸心を中心にして伝動装置13の入力軸44と一体回転する状態で装備している。又、低速駆動ギヤ60が入力軸44の右端側に位置し、中速駆動ギヤ62が入力軸44の左端側に位置し、高速駆動ギヤ64が入力軸44の中央側に位置する状態に配置設定している。つまり、伝動装置13の入力軸44が、各駆動ギヤ60,62,64を一体回転する状態に支持する変速機47の駆動軸を兼ねるように構成している。
各従動ギヤ61,63,65は、入力軸44の下方に隣接配備した従動軸45に相対回転可能に外嵌装備している。又、それらの一端側に、対応する駆動ギヤ60,62,64と常に噛み合う状態のギヤ部61A,63A,65Aを備え、かつ、それらの他端側にギヤ選択用の連係部Baとしてスプラインボス部61B,63B,65Bを備えて、シフト機構66に連係する連係ギヤBに構成している。そして、低速従動ギヤ61を、そのギヤ部61Aが従動軸45の右端側に位置し、かつ、そのスプラインボス部61Bが従動軸45の中央側に位置する状態で従動軸45の右端側に配備している。又、中速従動ギヤ63を、そのギヤ部63Aが従動軸45の中央側に位置し、かつ、そのスプラインボス部63Bが従動軸45の左端側に位置する状態で従動軸45の中央側に配備している。更に、高速従動ギヤ65を、そのギヤ部65Aが従動軸45の中央側に位置し、かつ、そのスプラインボス部65Bが従動軸45の右端側に位置する状態で従動軸45の中央側に配備している。
シフト機構66は、従動軸45と一体回転する状態で従動軸45に備えた第1スプライン軸部45Aと第2スプライン軸部45B、第1スプライン軸部45Aにスプライン嵌合する第1シフタ67、第2スプライン軸部45Bにスプライン嵌合する第2シフタ68、第1シフタ操作用の第1フォーク部69Aと第2シフタ操作用の第2フォーク部69Bとを備えたシフトフォーク69、シフトフォーク69を相対摺動可能に支持する左右向きの変速支軸70、シフトフォーク69と変速支軸70との間に介装した位置保持用のデテント機構71、シフトフォーク69を左右方向に摺動操作する操作アーム72、及び、操作アーム72を支持する前後向きの変速操作軸73、などを備えて構成している。
第1スプライン軸部45Aは、従動軸45における低速従動ギヤ61と高速従動ギヤ65との間に位置する右側部位に一体形成している。そして、その左右に、低速従動ギヤ61のスプラインボス部61Bと高速従動ギヤ65のスプラインボス部65Bとが隣接することにより、低速用と高速用との2つの従動ギヤ61,65を連係の対象とする状態に構成している。
第2スプライン軸部45Bは、従動軸45の左端部に着脱可能にスプライン嵌合したスプラインボス74により構成している。そして、その右側に中速従動ギヤ63のスプラインボス部63Bが隣接することにより、中速従動ギヤ63のみを連係の対象とする状態に構成している。
第1シフタ67及び第2シフタ68は、シフトフォーク69が変速支軸70の軸上で変速支軸70に沿って摺動するのに伴って、変速機47の変速状態を、第1シフタ67にて低速従動ギヤ61のスプラインボス部61Bを従動軸45の第1スプライン軸部45Aにスプライン連係する低速伝動状態と、第2シフタ68にて中速従動ギヤ63のスプラインボス部63Bを従動軸45の第2スプライン軸部45Bにスプライン連係する中速伝動状態と、第1シフタ67にて高速従動ギヤ65のスプラインボス部65Bを従動軸45の第1スプライン軸部45Aにスプライン連係する高速伝動状態との3段に切り替えるように構成している。
図9及び図10に示すように、デテント機構71は、シフトフォーク69の凹部69Cに備えたボール75と圧縮バネ76、及び、変速支軸70の外周面に環状に形成した3つの係合溝70A,70B,70C、などにより、シフトフォーク69を、変速機47の低速伝動状態に対応する低速位置と、変速機47の中速伝動状態に対応する中速位置と、変速機47の高速伝動状態に対応する高速位置とに係合保持するように構成している。
図3〜5、図9及び図10に示すように、変速機47の操作アーム72は、変速操作軸73の軸心を中心にして左右方向に揺動し、その遊端部をシフトフォーク69の相対変位を許容する状態でシフトフォーク69に係合している。
変速操作軸73は、伝動ケース43の前壁を貫通し、伝動ケース43の内部に位置する内端部に操作アーム72を備え、かつ、伝動ケース43の前壁から前方に突出する外端部に連係アーム77を備えて、操作アーム72と連係アーム77とを連動連結している。
連係アーム77は、副変速レバー18の前後方向での揺動操作に連動して、シフトフォーク69の操作位置が副変速レバー18の操作位置に対応した位置に変更されるように、その遊端部を、副変速用の機械式連係機構78を介して副変速レバー18に連係している。
つまり、変速機47は副変速装置として機能するように構成した状態で伝動ケース43に内蔵している。
上記の構成から、変速機47は、伝動装置13の入力軸44から従動軸45に伝動する状態で、伝動装置13の入力軸44と従動軸45とにわたって装備している。そして、副変速レバー18の操作に連動したシフト機構66のギヤ選択操作によって従動軸45に連動連結する従動ギヤ61,63,65を選択することにより、その伝動状態が、HST12の出力軸34からの動力を、低速駆動ギヤ60及び低速従動ギヤ61を介して従動軸45に伝達する低速伝動状態と、中速駆動ギヤ62及び中速従動ギヤ63を介して従動軸45に伝達する中速伝動状態と、高速駆動ギヤ64及び高速従動ギヤ65を介して従動軸45に伝達する高速伝動状態とに、択一的に切り替わるように構成している。
そして、この変速機47においては、伝動装置13の入力軸44を変速機47の駆動軸に兼用することから、例えば、入力軸44とは別構成の専用の駆動軸を入力軸44と平行に設ける場合に比較して、入力軸44から駆動軸に伝動するギヤなどの伝動構造を不要にすることができる。その結果、伝動ケース内での伝動構造の簡素化による製造の容易化や伝動装置13の小型軽量化などを図ることができる。
又、各従動ギヤ61,63,65を相対回転可能に支持し、かつ、第1シフタ67及び第2シフタ68を相対摺動可能に支持する従動軸45を入力軸44よりも下方の位置に配備することにより、伝動ケース43に貯留する潤滑オイルの表面高さを低くすることができ、伝動ケース43におけるオイル貯留量を少なくすることができる。その結果、オイル交換に要する作業時間の短縮やコストの削減、及び、伝動装置13の軽量化、などを図ることができる。
更に、低速従動ギヤ61と高速従動ギヤ65との2つが、従動軸45に備えた第1スプライン軸部45Aの連係対象となるように構成していることから、例えば、低速従動ギヤ61を連係の対象とする低速専用のスプライン軸部と、高速従動ギヤ65を連係の対象とする高速専用のスプライン軸部とを従動軸45に備える場合に比較して、変速機47におけるスプライン軸部及びシフタの装備数量を削減することができ、又、従動軸45の長さを短くすることができる。その結果、変速機47における構成の簡素化、及び、変速機47の小型軽量化や伝動ケース43に対する組み付け性の向上、などを図ることができる。
その上、各従動ギヤ61,63,65のうち、入力軸44の入力側端部である右端部から最も離れた位置に配置する中速従動ギヤ63を、そのギヤ部63Aが従動軸45の中央側に位置し、かつ、そのスプラインボス部63Bが従動軸45の左端側に位置する状態で従動軸45に装備していることから、この中速従動ギヤ63を、そのギヤ部63Aが従動軸45の左端側に位置し、かつ、そのスプラインボス部63Bが従動軸45の中央側に位置する反対向きの状態で従動軸45に装備する場合に比較して、この中速従動ギヤ63に噛み合い連動する中速駆動ギヤ62を右寄りに配置することができる。これにより、入力軸44の左方への延出長さを従動軸45よりも短くすることができる。又、入力軸44の左端部を支持するために伝動ケース43の左側壁に備えるベアリング79などの軸支部79の位置を、その下方において従動軸45の左端部を支持するために伝動ケース43の左側壁に備えるベアリング80などの軸支部80よりも右側に偏倚させることができる。その結果、伝動装置13の上部での左右幅を狭くすることによる伝動装置13の小型化を図ることができる。
そして、入力軸44においては、各駆動ギヤ60,62,64のうちの使用頻度が最も高い高速駆動ギヤ64を入力軸44の中央側に配備し、この高速駆動ギヤ64よりも使用頻度が低い低速駆動ギヤ60と中速駆動ギヤ62とを入力軸44の軸端側に配備していることから、使用頻度が最も高い高速駆動ギヤ64を使用する高速伝動状態において入力軸44にかかるトルクを、入力軸44の両端部を支持するために伝動ケース43の左右の側壁に備えた左右のベアリング79などの軸支部79によってバランス良く受け止めることができる。つまり、左右の軸支部79にかかるトルクが均等又は略均等になる時間を長くすることができ、その結果、使用頻度が最も高い高速駆動ギヤ64を入力軸44の軸端側に配備する場合に生じる、その軸端側を支持する一方の軸支部79にかかるトルクが他方の軸支部79にかかるトルクよりも大きくなる時間が長くなることに起因して、その一方の軸支部79の耐久性が低下して交換頻度が高くなる虞を抑制することができる。
又、従動軸45においては、各従動ギヤ61,63,65のうちの使用頻度が最も低い低速従動ギヤ61を従動軸45の右端側に配備し、この低速従動ギヤ61よりも使用頻度が高い中速従動ギヤ63と高速従動ギヤ65とを従動軸45の中央側に配備していることから、使用頻度が高い中速従動ギヤ63又は高速従動ギヤ65を使用する中速伝動状態及び高速伝動状態において従動軸45にかかるトルクを、従動軸45の両端部を支持するために伝動ケース43の左右の側壁に備えた左右のベアリング80などの軸支部80によってバランス良く受け止めることができる。つまり、左右の軸支部80にかかるトルクが均等又は略均等になる時間を長くすることができ、その結果、使用頻度が高い中速従動ギヤ63と高速従動ギヤ65とのいずれか一方又は双方を従動軸45の軸端側に配備する場合に生じる、その軸端側を支持する一方の軸支部80にかかるトルクが他方の軸支部80にかかるトルクよりも大きくなる時間が長くなることに起因して、その一方の軸支部80の耐久性が低下して交換頻度が高くなる虞を抑制することができる。
ところで、この変速機47において、第2スプライン軸部45Bを構成するスプラインボス74は、例えば、その外周面に形成する中速従動ギヤ63に対する連係用の各スプライン74aを、スプラインボス74の両端にわたる長さに形成すると、スプラインボス74を従動軸45にスプライン嵌合する際には、スプラインボス74の向きを考慮することなく、そのスプライン嵌合を簡単に行うことができる。その反面、スプラインボス74の向きにかかわらず、第2シフタ68の摺動による中速従動ギヤ63に対する連係操作を円滑に行えるようにするためには、各スプライン74aの両端部に加工費の高い面取り加工を施す必要があり、加工費の削減を図る上において改善の余地がある。
そこで、このスプラインボス74においては、その外周面の一端側のみに連係用の複数のスプライン74aを形成し、これらのスプライン74aにおけるスプラインボス74の端部に位置する一端部のみに前述した面取り加工を施すようにしている(図7及び図10参照)。
これにより、各スプライン74aの両端部に面取り加工を施す場合に比較して加工費の削減を図れるようにしながら、スプラインボス74を従動軸45にスプライン嵌合する際には、このスプライン嵌合に適したスプラインボス74の向きを、スプラインボス74の外観から容易に視認することができ、スプラインボス74の向きを間違えた状態でスプラインボス74を従動軸45にスプライン嵌合する誤組みの発生を防止することができる。
尚、図示は省略するが、以下の〔1〕〜〔7〕に変速機47に関する構成の別実施形態を例示する。
〔1〕変速機47は、コンスタントメッシュ式に代えて、例えば、従動軸45に相対摺動可能な状態で従動軸45と一体回転するように外嵌した筒軸に、各従動ギヤ61,63,65と、ギヤ選択操作用のシフト機構66に連係するギヤ選択用の連係部とを備えて、各従動ギヤ61,63,65を、それらがシフト機構66の操作によって一体的に摺動する状態にシフト機構66に連係される連係ギヤBに構成して、シフト機構66によるギヤ選択操作により、その変速状態が、低速駆動ギヤ60と低速従動ギヤ61とが噛み合い連動する低速伝動状態と、中速駆動ギヤ62と中速従動ギヤ63とが噛み合い連動する中速伝動状態と、高速駆動ギヤ64と高速従動ギヤ65とが噛み合い連動する高速伝動状態とに、択一的に切り替わるスライディングメッシュ式に構成してもよい。
〔2〕変速機47は、コンスタントメッシュ式に代えて、例えば、各従動ギヤ61,63,65を、従動軸45に個々に相対摺動可能な状態で従動軸45と一体回転するように装備し、かつ、各従動ギヤ61,63,65に、ギヤ選択操作用のシフト機構66に連係するギヤ選択用の連係部を備えて、各従動ギヤ61,63,65をシフト機構66に連係する連係ギヤBに構成するとともに、各従動ギヤ61,63,65を、それらがシフト機構66の操作によって一体的に摺動する状態にシフト機構66に連係して、シフト機構66によるギヤ選択操作により、その変速状態が、低速駆動ギヤ60と低速従動ギヤ61とが噛み合い連動する低速伝動状態と、中速駆動ギヤ62と中速従動ギヤ63とが噛み合い連動する中速伝動状態と、高速駆動ギヤ64と高速従動ギヤ65とが噛み合い連動する高速伝動状態とに、択一的に切り替わるスライディングメッシュ式に構成してもよい。
〔3〕変速機47は、コンスタントメッシュ式に代えて、例えば、各従動ギヤ61,63,65のスプラインボス部61B,63B,65Bと、それらに隣接する第1スプライン軸部45A又は第2スプライン軸部45Bとの間に、それらの周速度を同期させる同期部を備えるシンクロメッシュ式に構成してもよい。
〔4〕変速機47は、3段変速式に代えて、例えば、作業走行用の低速伝動状態と移動走行用の高速伝動状態とに切り替え可能な2段変速式に構成してもよい。又、低速伝動状態よりも低速の微速伝動状態などを備えて4段以上の切り替えが可能な多段変速式に構成してもよい。
〔5〕変速機47は、各従動ギヤ61,63,65をシフト機構66によるギヤ選択操作が可能な連係ギヤBとして従動軸45に装備する構成に代えて、各駆動ギヤ60,62,64をシフト機構66によるギヤ選択操作が可能な連係ギヤBとして入力軸44に装備するようにしてもよい。そして、この構成においては、入力軸44を従動軸45の下方に隣接配備するように構成してもよい。
〔6〕変速機47における第1スプライン軸部45Aを、従動軸45に着脱可能にスプライン嵌合するスプラインボスにより構成してもよい。又、変速機47における第2スプライン軸部45Bを従動軸45に一体形成してもよい。
〔7〕入力軸44又は従動軸45における各駆動ギヤ60,62,64及び各従動ギヤ61,63,65の配置は、各ギヤ60〜65の使用頻度に応じて種々の変更が可能である。例えば、低速駆動ギヤ60及び低速従動ギヤ61の使用頻度が高い場合には、低速駆動ギヤ60及び低速従動ギヤ61を入力軸44又は従動軸45の中央側に配置してもよい。又、高速駆動ギヤ64及び高速従動ギヤ65の使用頻度が低い場合には、高速駆動ギヤ64及び高速従動ギヤ65を入力軸44又は従動軸45の軸端側に配置してもよい。
次に、伝動装置13における変速機47の従動軸45からサイドクラッチ軸46への伝動構造について説明する。
図6〜11に示すように、従動軸45は、その中央部における中速従動ギヤ63と高速従動ギヤ65との間の部位に、変速機47の出力回転体81として機能する小径の出力ギヤ81を、従動軸45と出力ギヤ81とが一体回転するようにスプライン嵌合している。サイドクラッチ軸46は、伝動ケース43における第1空間部56の上下中間部に配備している。そして、その左右中間位置に、出力ギヤ81と噛み合い連動する伝動回転体82としての大径の伝動ギヤ82を、サイドクラッチ軸46と伝動ギヤ82とが相対摺動不能な状態で一体回転するようにスプライン嵌合している。つまり、従動軸45からサイドクラッチ軸46にわたる伝動構造を、出力ギヤ81及び伝動ギヤ82によるギヤ伝動式に構成して、変速機47による変速後の動力を、従動軸45からサイドクラッチ軸46に減速伝達するように構成している。
尚、図示は省略するが、従動軸45からサイドクラッチ軸46にわたる伝動構造は、ギヤ伝動式に代えて、例えば、従動軸45に出力回転体81として備えた小径のスプロケットと、サイドクラッチ軸46に伝動回転体82として備えた大径のスプロケットと、それらのスプロケットにわたって巻き掛けた伝動チェーンとからチェーン伝動式に構成してもよい。又、従動軸45に出力回転体81として備えた小径のプーリと、サイドクラッチ軸46に伝動回転体82として備えた大径のプーリと、それらのプーリにわたって巻き掛けた伝動ベルトとからベルト伝動式に構成してもよい。更に、出力回転体81を、例えば、従動軸45に一体形成してもよく、又、従動軸45と一体回転するように従動軸45にキーを介して連結してもよい。一方、伝動回転体82を、例えば、サイドクラッチ軸46に一体形成してもよく、又、サイドクラッチ軸46と一体回転するようにサイドクラッチ軸46にキーを介して連結してもよく、更に、サイドクラッチ軸46に相対回転可能に外嵌してもよい。
次に、伝動装置13における左右のサイドクラッチブレーキユニット48に関する構成について説明する。
図6〜9及び図11〜13に示すように、各サイドクラッチブレーキユニット48は、それぞれ、伝動ギヤ82から対応するクローラ7への伝動を断続する噛み合い式のサイドクラッチ83と、対応するクローラ7を制動する多板式のサイドブレーキ84とを備えている。そして、サイドクラッチ軸46の軸上において、伝動ギヤ82を中心にした左右対称になるように伝動ギヤ82を挟んだ状態で左右に分散配備して、左側のサイドクラッチブレーキユニット48が、左側の伝動機構49及び左側の走行駆動軸50を介して左側のクローラ7に作用し、かつ、右側のサイドクラッチブレーキユニット48が、右側の伝動機構49及び右側の走行駆動軸50を介して右側のクローラ7に作用するように構成している。
各サイドクラッチ83は、サイドクラッチ軸46に対するサイドクラッチ軸46の軸心方向での摺動による着脱が可能な状態でサイドクラッチ軸46に相対回転可能に外嵌する筒軸85、一側端に噛合部86Aを備えた移動側回転体86、被噛合部87Aを備えた固定側回転体87、噛合部86Aと被噛合部87Aとが噛み合う入り位置に向けて移動側回転体86を付勢する圧縮バネ88、移動側回転体86を入り位置にて受け止めるC字形の止め輪からなるストッパ89、及び、圧縮バネ88の一端部を受け止めるバネ受け90、などを備えている。そして、対応する移動側回転体86が、圧縮バネ88の作用によって入り位置に摺動することにより、移動側回転体86の噛合部86Aと固定側回転体87の被噛合部87Aとが噛み合う伝動状態に切り替わり、かつ、圧縮バネ88の作用に抗して切り位置に摺動することにより、移動側回転体86の噛合部86Aと固定側回転体87の被噛合部87Aとが噛み合いを解除する遮断状態に切り替わるように構成している。
各筒軸85は、伝動ギヤ82に近接する内端側に大径の第1スプライン軸部85Aを備えている。又、伝動ギヤ82から離れる外端側に小径の第2スプライン軸部85Bを備えている。そして、第1スプライン軸部85Aの内端に位置する段差部85Cがバネ受け90として機能するように構成している。又、第2スプライン軸部85Bの外端部に、ストッパ89が着脱可能に外嵌する環状の係合溝85Dを形成している。
各移動側回転体86は、それらの内周部が、筒軸85の第2スプライン軸部85Bに相対摺動可能にスプライン嵌合するスプラインボス部86Bとして機能するように構成している。又、それらの外周部を形成するリム部86Cにおける外端側の内周部分に複数の内歯を周方向に一定ピッチで形成することにより、リム部86Cの内周部分が噛合部86Aとして機能するように構成している。
各固定側回転体87は、複数の外歯を備えた平ギヤにより、その外周部が被噛合部87Aとして機能するように構成している。そして、サイドクラッチ軸46に対するサイドクラッチ軸46の軸心方向での摺動による着脱が可能な状態でサイドクラッチ軸46と一体回転するように、サイドクラッチ軸46における対応する筒軸85よりも軸端側の両端部位に、筒軸85と隣接する状態でスプライン嵌合している。これにより、各固定側回転体87が、左右のサイドクラッチ83において、サイドクラッチ軸46を介して伝動ギヤ82と一体回転する駆動側回転体として機能する状態に構成している。
図11〜13に示すように、各サイドクラッチ83においては、移動側回転体86と圧縮バネ88とストッパ89とバネ受け90とを、筒軸85の外周部に、ストッパ89とバネ受け90との間に移動側回転体86と圧縮バネ88とが左右に並んで位置する配置で、かつ、移動側回転体86が筒軸85に対してサイドクラッチ軸46の軸心方向に摺動可能な状態で筒軸85と一体回転するように装備して、筒軸85と移動側回転体86と圧縮バネ88とストッパ89とバネ受け90とを、サイドクラッチ軸46に対してサイドクラッチ軸46の軸心方向に着脱可能に一体摺動する摺動ユニット91に構成している。
各摺動ユニット91は、対応するクローラ7に連動連結する連動回転体92としての駆動ギヤ92を、構成部品の一つとして、筒軸85と一体回転する状態で備えている。これにより、各摺動ユニット91に備えた移動側回転体86が、各サイドクラッチ83において、筒軸85を介して駆動ギヤ92と一体回転する従動側回転体として機能する状態に構成している。
サイドクラッチ軸46の軸上における伝動ギヤ82と左右の摺動ユニット91との間には、それらの間においてサイドクラッチ軸46の軸心方向に働く力を受け止めるスラストカラー93を介装している。
各サイドブレーキ84は、摺動ユニット91と一体回転するブレーキハブ94、ブレーキハブ94に外嵌した複数のセパレータプレート95、複数のセパレータプレート95とサイドクラッチ軸46の軸心方向に交互に配置する複数のブレーキディスク96と単一のプレッシャプレート97、及び、複数のブレーキディスク96と単一のプレッシャプレート97とを支持するブレーキハウジング98、などを備えて構成している。
各ブレーキハブ94は、対応する摺動ユニット91に、その構成部品の一つとして外嵌装備している。そして、複数のセパレータプレート95を、サイドクラッチ軸46の軸心方向に摺動可能な状態で摺動ユニット91と一体回転するように支持している。
各ブレーキハウジング98は、セパレータプレート95及びブレーキディスク96などを外囲する略筒状で、伝動ケース43における左右の側壁の上下中間部位に一体形成している。そして、複数のブレーキディスク96と単一のプレッシャプレート97とを、サイドクラッチ軸46の軸心方向に摺動可能な状態で回転不能に支持している。又、それらの内端部位に、サイドクラッチ軸46の軸心に沿って伝動ケース43の内部側に摺動するセパレータプレート95及びブレーキディスク96を受け止める受止部98Aを備えている。
各摺動ユニット91は、筒軸85と一体回転するスプラインボス99を備えている。各スプラインボス99は、伝動ケース内の左右中央側に位置する内端側が駆動ギヤ92として機能し、かつ、伝動ケース内の左右一端側に位置する外端側がブレーキハブ94として機能する兼用部品に構成している。そして、駆動ギヤ側の内周面に、対応する筒軸85の内端側に備えた第1スプライン軸部85Aに外嵌するスプライン穴部99Aを備え、かつ、ブレーキハブ側の内周面に、筒軸85との間に圧縮バネ用の収納空間100を形成する拡径部99Bを備えている。
各筒軸85は、第1スプライン軸部85Aを、筒軸85の段差部85Cから大径側の軸端にわたる長さに形成している。そして、大径側の軸端部における第1スプライン軸部85Aの外周側に略環状に凹入形成した係合部85Eを備え、かつ、この係合部85EにC字形の止め輪101を着脱可能に外嵌装備している。
各スプラインボス99は、そのスプライン穴部99Aを止め輪101から段差部85Cにわたる長さに形成し、かつ、拡径部99Bを段差部85Cからブレーキハブ側のボス端(止め輪101から遠い側のボス端)にわたる長さに形成している。
各移動側回転体86は、それらのスプラインボス部86Bとリム部86Cとの間に、スプラインボス99におけるブレーキハブ側の端部の係入を許容するリング状の凹部86Dを形成している。これにより、各移動側回転体86をスプラインボス側に移動させた場合には、それらのスプラインボス部86Bの内端側が、対応するスプラインボス99の拡径部99Bに係入し、かつ、リム部86Cの内端側がスプラインボス99に外嵌して、リム部86Cの内端が、スプラインボス99のブレーキハブ側に外嵌配備した複数のセパレータプレート95及びブレーキディスク96を、プレッシャプレート97を介してブレーキハウジング98の受止部98Aに向けて押圧するように構成している。
つまり、各移動側回転体86のリム部86Cが、対応するサイドブレーキ84のセパレータプレート95及びブレーキディスク96に作用する押圧部86Cとして機能する状態に構成している。これにより、各サイドブレーキ84は、対応する移動側回転体86が、圧縮バネ88の作用に抗して、前述した切り位置から、入り位置とは反対方向に位置する制動位置に向けて摺動するのに伴って、複数のセパレータプレート95及びブレーキディスク96が押圧部86Cの作用による圧接を解除する制動解除状態から、複数のセパレータプレート95及びブレーキディスク96が押圧部86Cの作用により圧接する制動状態に切り替わり、かつ、圧縮バネ88の作用によって制動位置から切り位置に向けて摺動するのに伴って、制動状態から制動解除状態に切り替わるように構成している。
図2〜8及び図11〜13に示すように、伝動ケース43は、その左右の側壁におけるサイドクラッチ軸46の軸心方向での各サイドクラッチブレーキユニット48との対向箇所に、摺動ユニット91、セパレータプレート95、ブレーキディスク96、及び、プレッシャプレート97、などの通過を許容する第2開口43Bを備え、かつ、これらの第2開口43Bを塞ぐカバー部材102をボルト連結によって着脱可能に備えている。
各カバー部材102は、固定側回転体87の通過を許容する補助開口102Aを備え、かつ、この補助開口102Aを塞ぐ補助カバー部材103をボルト連結によって着脱可能に備えている。各補助開口102Aは、サイドクラッチ軸46の軸心を中心とする円形に形成している。各補助カバー部材103は、補助開口102Aに内嵌する大径部103Aと、補助開口102Aとの間に環状の空間104を形成する小径部103Bとを、小径部103Bが伝動ケース43の内部側に位置する状態で備えている。そして、その小径部103Bに、サイドクラッチ軸46の端部を支持するベアリング105などの軸支部105を備えている。
各摺動ユニット91は、移動側回転体86のリム部86Cがカバー部材102に備えた環状の空間104に対向する状態でサイドクラッチ軸46の軸上に装備している。各カバー部材102は、それらの環状の空間104に、移動側回転体86を摺動操作する環状のピストン106を、サイドクラッチ軸46の軸心方向に摺動可能な状態で嵌入装備している。そして、環状の空間104がピストン操作用の油室104として機能する状態に構成している。
各ピストン106は、ステアリング用のバルブユニット107の作動によりサイドクラッチ軸46の軸心方向に摺動し、この摺動により、対応する移動側回転体86をサイドクラッチ軸46の軸心方向に摺動操作するように構成している。具体的には、バルブユニット107の作動による油室104の昇圧に伴って、サイドクラッチ軸46の軸心に沿ってサイドクラッチ軸46の中央側に摺動し、この摺動により、対応する移動側回転体86を圧縮バネ88の作用に抗して入り位置から切り位置に摺動操作し、その後、切り位置から制動位置に摺動操作する。又、バルブユニット107の作動による油室104の減圧に伴って、サイドクラッチ軸46の軸心に沿ってサイドクラッチ軸46の軸端側に摺動し、この摺動により、対応する移動側回転体86を圧縮バネ88の作用によって制動位置から切り位置に摺動操作し、その後、切り位置から入り位置に摺動操作する。
ステアリング用のバルブユニット107は、操縦レバー16の左右方向での揺動操作に基づいて作動状態が切り替わるように、操縦レバー16にステアリング用の機械式連係機構108を介して連係している。具体的には、操縦レバー16が中立位置に位置する状態では、各ピストン106に対する操作圧を減圧する減圧状態を維持する。操縦レバー16が中立位置から左方に揺動操作されると、減圧状態から左側のピストン106に対する操作圧を昇圧する左昇圧状態に切り替わる。操縦レバー16が中立位置から右方に揺動操作されると、減圧状態から右側のピストン106に対する操作圧を昇圧する右昇圧状態に切り替わる。操縦レバー16が中立位置に揺動操作されると、左昇圧状態又は右昇圧状態から減圧状態に切り替わる。
この構成から、操縦レバー16を中立位置に保持することにより、ステアリング用のバルブユニット107を減圧状態に維持することができ、これにより、各移動側回転体86を入り位置に維持することができ、結果、走行状態を、左右のクローラ7を等速駆動する直進状態に維持することができる。又、操縦レバー16を中立位置から左方に揺動操作することにより、ステアリング用のバルブユニット107を減圧状態から左昇圧状態に切り替えることができ、これにより、右側の移動側回転体86を入り位置に維持しながら、左側の移動側回転体86を入り位置から切り位置又は制動位置に摺動させることができ、結果、走行状態を、直進状態から左側のクローラ7を従動又は制動させて車体を左方向に旋回させる左旋回状態に切り替えることができる。逆に、操縦レバー16を中立位置から右方に揺動操作することにより、ステアリング用のバルブユニット107を減圧状態から右昇圧状態に切り替えることができ、これにより、左側の移動側回転体86を入り位置に維持しながら、右側の移動側回転体86を入り位置から切り位置又は制動位置に摺動させることができ、結果、走行状態を、直進状態から右側のクローラ7を従動又は制動させて車体を右方向に旋回させる右旋回状態に切り替えることができる。そして、左旋回状態又は右旋回状態において、操縦レバー16を中立位置に揺動操作することにより、ステアリング用のバルブユニット107を左昇圧状態又は右昇圧状態から減圧状態に切り替えることができ、これにより、切り位置又は制動位置に位置する左右いずれか一方の移動側回転体86を入り位置に摺動させることができ、結果、走行状態を、左旋回状態又は右旋回状態から直進状態に切り替えることができる。
つまり、各サイドクラッチブレーキユニット48においては、各移動側回転体86をサイドクラッチ83とサイドブレーキ84との双方の操作具に兼用する兼用構造を採用して、部品点数の削減による構成の簡素化などを図りながら、サイドクラッチ83とサイドブレーキ84とを適切に連動させることができ、これにより、左右のクローラ7による走行状態を、直進状態から左旋回状態又は右旋回状態に、又、左旋回状態又は右旋回状態から直進状態に滑らかに移行させることができる。
そして、上記の構成から、各サイドクラッチブレーキユニット48においては、伝動ケース43に内蔵したサイドクラッチ軸46及び伝動ケース43に備えた各ブレーキハウジング98に対して、移動側回転体86、固定側回転体87、セパレータプレート95、及び、ブレーキディスク96、などを伝動ケース43の各開口43Aから着脱することができる。又、各サイドクラッチブレーキユニット48に対する操作用のピストン106、及び、サイドクラッチ軸用の軸支部105などは、各開口43Aを閉塞するカバー部材102とともに伝動ケース43に対して着脱することができる。これにより、移動側回転体86、固定側回転体87、セパレータプレート95、ブレーキディスク96、ピストン106、及び、軸支部105の交換などのメンテナンス作業を行う場合には、伝動ケース43から各カバー部材102を取り外すことにより、伝動ケース43を分解する手間を要することなく簡単に行うことができる。又、固定側回転体87、ピストン106、及び、軸支部105に対するメンテナンス作業に関しては、カバー部材102から補助カバー部材103を取り外すことにより、移動側回転体86、セパレータプレート95、及び、ブレーキディスク96、などをカバー部材102によって伝動ケース内に保持した状態で、固定側回転体87、ピストン106、及び、軸支部105に対するメンテナンス作業を行うことができる。
又、サイドクラッチ83の筒軸85と移動側回転体86と圧縮バネ88とストッパ89とバネ受け90、駆動ギヤ92、及び、サイドブレーキ84のブレーキハブ94、などを、サイドクラッチ軸46に対して一体的に着脱可能な摺動ユニット91としてユニット化していることから、移動側回転体86や圧縮バネ88などをサイドクラッチ軸46に対して個々に着脱する場合に比較して、サイドクラッチ軸46に対する着脱性の向上を図ることができる。
特に、移動側回転体86や圧縮バネ88などをサイドクラッチ軸46に対して個々に着脱する場合には、狭い伝動ケース43の各開口43Aから、圧縮バネ88の作用に抗する大きい力で、サイドクラッチ軸46に対する移動側回転体86やストッパ89などの着脱を行う必要があることから、サイドクラッチ軸46に対する移動側回転体86やストッパ89などの着脱が困難になる。これに対し、このサイドクラッチブレーキユニット48においては、移動側回転体86や圧縮バネ88などをユニット化した状態でサイドクラッチ軸46に対して着脱することから、圧縮バネ88の作用に抗した移動側回転体86やストッパ89などの着脱は、作業領域が制限されない伝動ケース43の外側において筒軸59に対して行えば良く、その結果、サイドクラッチ軸46に対する移動側回転体86やストッパ89などの着脱性を大幅に向上させることができる。
更に、各摺動ユニット91においては、筒軸85と一体回転するスプラインボス99が駆動ギヤ92とブレーキハブ94とを兼ねる兼用部品であることから、部品点数の削減による構成の簡素化及び組み付け性の向上などを図ることができる。又、そのスプラインボス99におけるブレーキハブ側の内周面に、筒軸85との間に圧縮バネ用の収納空間100を形成する拡径部99Bを備えることにより、筒軸85と圧縮バネ88とスプラインボス99とを筒軸85の径方向に重ね合わせた状態で装備することができる。これにより、各摺動ユニット91が軸心方向に長くなるのを防止することができ、結果、サイドクラッチ軸46の短尺化、及び、伝動装置13の上下中間部での左右幅を狭くすることによる伝動装置13の小型化を図ることができる。
図11〜13に示すように、各移動側回転体86は、そのスプラインボス部86Bにおけるストッパ側の内周面に、移動側回転体86が入り位置に摺動する際にストッパ89の入り込みを許容する拡径部86Eを形成している。各拡径部86Eは、ストッパ89の係合溝85Dからの離脱を阻止する大きさに形成している。
これにより、例えば、各筒軸85の係合溝85Dに対するストッパ89の係合が不完全で、ストッパ89が係合溝85Dから浮き上がっている場合には、圧縮バネ88の作用によって移動側回転体86が入り位置に摺動する際に、その入り位置への摺動がストッパ89との接触によって阻止される。つまり、各筒軸85の係合溝85Dに対するストッパ89の組み付け状態を、その組み付け後の圧縮バネ88の作用による移動側回転体86の摺動によって容易に判別することができる。これにより、各筒軸85の係合溝85Dに対するストッパ89の係合が不完全である場合には、その係合を直ちに改善することができる。
又、拡径部86Eを形成しない場合に比較して、各摺動ユニット91の軸心方向での長さを更に短くすることができ、これにより、サイドクラッチ軸46の短尺化、及び、伝動装置13の上下中間部での左右幅を狭くすることによる伝動装置13の小型化を更に図ることができる。
図7及び図11〜13に示すように、各固定側回転体87は、それらの被噛合部87Aを形成する各外歯が、移動側回転体86の噛合部86Aとの噛み合い長さの2倍以上の歯幅を有する状態に構成している。
これにより、固定側回転体87における被噛合部87Aの摩耗に起因して、移動側回転体86の噛合部86Aとの間においてガタツキが生じる場合には、補助カバー部材103を取り外して補助開口102Aを開放し、この補助開口102Aを利用してサイドクラッチ軸46から取り外した固定側回転体87を、その左右を反転させた後に、補助開口102Aからサイドクラッチ軸46に再び組み付けることにより、固定側回転体87を交換することなく、移動側回転体86の噛合部86Aとの間でのガタツキを解消することができる。
つまり、固定側回転体87の寿命を2倍にすることができ、サイドクラッチブレーキユニット48に要するランニングコストの削減を図ることができる。
図2に示すように、各サイドクラッチブレーキユニット48の油室104には、伝動ケース43に貯留した潤滑用のオイルを作動用として、第2油圧ポンプ109の作動によってステアリング用のバルブユニット107を介して供給している。ステアリング用のバルブユニット107は、操縦レバー16の左右方向での操作に基づいて各サイドクラッチブレーキユニット48の油室104に対するオイルの流れを切り替える切替バルブ110、及び、操縦レバー16の操作に基づいて左右のサイドクラッチブレーキユニット48の油室104に対するリリーフ圧を変更する可変リリーフバルブ111、などを備えている。
尚、図示は省略するが、以下の〔1〕〜〔17〕に一対のサイドクラッチブレーキユニット48などのステアリングに関する構成の別実施形態を例示する。
〔1〕一対のサイドクラッチブレーキユニット48が、左右揺動式で中立復帰型に構成したステアリング専用の操作レバー、又は、ステアリングホイール、などの操作に基づいて作動状態が切り替わるように構成してもよい。
〔2〕一対のサイドクラッチブレーキユニット48を、例えば、電動シリンダの作動によってサイドクラッチ83及びサイドブレーキ84の作動状態を切り替える電動式などに構成してもよい。
〔3〕一対のサイドクラッチブレーキユニット48に代えて一対のサイドクラッチ83のみを備えるように構成してもよい。
〔4〕一対のサイドクラッチ83を、サイドクラッチ軸46の軸上において伝動回転体82を挟まずに左右に並べて配備して、サイドクラッチ軸46からの動力を断続するように構成し、伝動回転体82をサイドクラッチ軸46の左右一端側に配備するように構成してもよい。
〔5〕一対のサイドクラッチ83を、移動側回転体86が駆動側回転体として機能し、固定側回転体87が従動側回転体として機能するように構成してもよい。
〔6〕サイドクラッチ軸46を固定装備し、サイドクラッチ軸46の軸上において、一対のサイドクラッチ83が伝動回転体82から対応する連動回転体92への伝動を断続するように構成してもよい。
〔7〕各摺動ユニット91を、移動側回転体86が伝動回転体82に隣接するようにサイドクラッチ軸46の軸上に配備した上で、伝動回転体82が、被噛合部87Aを備える固定側回転体87を兼用し、かつ、噛合部86Aを備える移動側回転体86が連動回転体92を兼用するように構成して、部品点数の削減による構成の簡素化などを図るようにしてもよい。又、伝動回転体82が固定側回転体87を兼用する構成に代えて、サイドクラッチ軸46に着脱可能に外嵌した固定側回転体87を、伝動回転体82と一体回転する状態に伝動回転体82に係合連結するように構成してもよい。
〔8〕各摺動ユニット91は、駆動ギヤ92とブレーキハブ94とを個別に備えるように構成してもよい。又、その構成部品として、駆動ギヤ92とブレーキハブ94とのいずれか一方又は双方を含まないように構成してもよい。
〔9〕各摺動ユニット91においては、筒軸85に、駆動ギヤ92とブレーキハブ94とを兼ねるスプラインボス99を一体形成するように構成してもよい。又、筒軸85に駆動ギヤ92とブレーキハブ94とのいずれか一方を一体形成するように構成してもよい。
〔10〕各摺動ユニット91においては、収納空間100を備えずに、筒軸85の軸心方向に圧縮バネ88とスプラインボス99とを並べて配備するように構成してもよい。
〔11〕各筒軸85に、移動側回転体86を入り位置にて受け止めるストッパ89として機能する段差部を形成してもよい。又、各移動側回転体86にストッパ89の入り込みを許容する拡径部86Eを備えないようにしてもよい。
〔12〕圧縮バネ88の一端部を受け止めるバネ受け90を、各筒軸85に外嵌固定したC字形の止め輪によって構成してよい。又、スプラインボス99の内周面におけるスプライン穴部99Aと拡径部99Bとの境界に位置する段差部がバネ受け90として機能するように構成してもよい。
〔13〕各固定側回転体87として、移動側回転体86の噛合部86Aとの噛み合い長さと同じ歯幅を有する平ギヤなどを採用してもよい。
〔14〕カバー部材102に補助開口102Aと補助カバー部材103とを備えないように構成してもよい。
〔15〕伝動ケース43と各カバー部材102との間に軸支部105を備えるように構成してもよい。
〔16〕伝動ケース43に、各移動側回転体86を摺動操作する環状のピストン106とピストン操作用の油室104とを備えるように構成してもよい。
〔17〕連動回転体92として、駆動ギヤ92に代えて駆動スプロケット又は駆動プーリを備えるように構成してもよい。
次に、伝動装置13における駐車ブレーキ112に関する構成について説明する。
図3、図5〜7及び図11に示すように、各サイドクラッチブレーキユニット48は、搭乗運転部側に位置する右側のサイドクラッチブレーキユニット48に備えたサイドブレーキ84が駐車ブレーキ112として機能するように、右側のサイドブレーキ84を、駐車ブレーキ用の操作機構113及び駐車ブレーキ用の機械式連係機構114を介してブレーキペダル19に連係している。
駐車ブレーキ用の操作機構113は、プレッシャプレート97に作用するように右側のカバー部材102に内嵌したリング状の操作部材115、操作部材115をサイドクラッチ軸46の軸心を中心にして回動操作する制動操作軸116、制動操作軸116の右端部に連結した連係アーム117、及び、操作部材115の回動を操作部材115の左右方向への摺動に変換するように右側のカバー部材102と操作部材115との間に形成した乗り上げ式のカム機構118、などを備えている。
駐車ブレーキ用の機械式連係機構114は、駐車ブレーキ用の操作機構113における連係アーム117の遊端部をブレーキペダル19に連係している。そして、この連係により、ブレーキペダル19の踏み込み解除位置から踏み込み位置への踏み込み操作を行うと、その操作に連動して制動操作軸116が正転し、この正転に連動して操作部材115が正転するとともに左方向に摺動して右側のプレッシャプレート97を押圧することにより、右側のサイドブレーキ84が制動解除状態から制動状態に切り替わるように構成している。又、ブレーキペダル19の踏み込み位置から踏み込み解除位置への踏み込み解除操作を行うと、その操作に連動して制動操作軸116が逆転し、この逆転に連動して操作部材115が逆転するとともに右方向に摺動して右側のプレッシャプレート97に対する押圧を解除することにより、右側のサイドブレーキ84が制動状態から制動解除状態に切り替わるように構成している。
ブレーキペダル19は、踏み込み位置への踏み込み操作を行うと、その操作に連動する保持機構(図示せず)の作用により、踏み込み解除位置へのバネ付勢に抗して踏み込み位置にて位置保持することができる。又、この位置保持状態においてブレーキペダル19の踏み込み操作を行うと、その操作に連動する保持機構の作用により、踏み込み位置でのブレーキペダル19の位置保持を解除することができ、バネ付勢を利用したブレーキペダル19の踏み込み位置から踏み込み解除位置への踏み込み解除操作を行うことができる。
つまり、操縦レバー16を中立位置に保持した直進状態において、ブレーキペダル19を踏み込み位置に踏み込み操作することにより、ブレーキペダル19を踏み込み位置に保持することができるとともに、右側のサイドブレーキ84を制動解除状態から制動状態に切り替え保持することができ、右側のサイドブレーキ84による制動力を左右のサイドクラッチブレーキユニット48を介して左右のクローラ7に作用させることができる。その結果、右側のサイドブレーキ84を駐車ブレーキ112として機能させることができる。
尚、図示は省略するが、以下の〔1〕〜〔4〕に駐車ブレーキ112に関する構成の別実施形態を例示する。
〔1〕左側のサイドブレーキ84が駐車ブレーキ112として機能するように構成してもよい。又、左右両方のサイドブレーキ84が駐車ブレーキ112として機能するように構成してもよい。
〔2〕左右のサイドクラッチブレーキユニット48を介して左右のクローラ7を制動する専用の駐車ブレーキ112を装備してもよい。
〔3〕駐車ブレーキ用の操作機構113を、通電の遮断により右側のサイドブレーキ84を制動解除状態から制動状態に切り替える電気式、又は、減圧により右側のサイドブレーキ84を制動解除状態から制動状態に切り替える油圧式に構成してもよい。
〔4〕ブレーキペダル19に代えて、駐車位置と駐車解除位置とに位置切り替え保持可能に構成したブレーキレバー、又は、駐車ブレーキ操作用のスイッチ、などを装備してもよい。
次に、伝動装置13における左右の伝動機構49及び左右の走行駆動軸50に関する構成について説明する。
図3〜9及び図14に示すように、伝動ケース43は、サイドクラッチ軸46と左右の走行駆動軸50との間の位置に、左右の中継軸119を、第1空間部56と対応する第2空間部58とにわたる左右向きの姿勢で配備している。そして、その主ケース部品52における左右の側壁に、対応する中継軸119における伝動ケース43の左右中央側に位置する内端部を支持するベアリング120などの第1軸支部120を備えている。又、各補助ケース部品53に、対応する中継軸119における伝動ケース43の左右両端側に位置する外端部を支持するベアリング121などの第2軸支部121を備えている。これにより、各中継軸119を、それらの両端部を支持する両持ち状態で安定性良く回転可能に支持することができる。
各伝動機構49は、伝動ケース43の左右中央側に位置する第1空間部56においてサイドクラッチ軸46と対応する中継軸119とにわたる第1伝動部122と、伝動ケース43の左右両端側に位置する左右の第2空間部58において対応する中継軸119と走行駆動軸50とにわたる第2伝動部123とを備えている。そして、第1伝動部122が第2伝動部123よりも上方に位置する状態で、伝動ギヤ82を中心にして左右対称になるように構成している。
各第1伝動部122は、対応する摺動ユニット91に備えた駆動ギヤ92と、この駆動ギヤ92よりも大径で対応する中継軸119と一体回転する従動回転体124としての従動ギヤ124とを備えて、これらのギヤ92,124が噛み合い連動するギヤ連動式で、対応するサイドクラッチブレーキユニット48を経由した動力を減速する第1減速部として機能するように構成している。各従動ギヤ124は、第1空間部56に位置する中継軸119の内端部にスプライン嵌合している。
各第2伝動部123は、対応する中継軸119に一体形成した駆動回転体125としての小径の駆動ギヤ125と、対応する走行駆動軸50と一体回転する従動回転体126としての大径の従動ギヤ126とを備えて、これらのギヤ125,126が噛み合い連動するギヤ連動式で、対応する第1伝動部122から走行駆動軸50に減速伝動する第2減速部として機能するように構成している。
つまり、各伝動機構49は、対応するサイドクラッチブレーキユニット48を経由した動力を2段階に減速して対応する走行駆動軸50に伝達する減速機構として機能するように構成している。
伝動ケース43は、その主ケース部品52における左右の側壁に、対応する従動ギヤ126における主ケース部品側のボス部126Aを回転可能に支持するベアリング127などの支持部127を備えている。又、各補助ケース部品53に、対応する従動ギヤ126における補助ケース部品側のボス部126Bを回転可能に支持するベアリング128などの支持部128を備えている。これにより、各従動ギヤ126を、それらの両端部を支持する両持ち状態で安定性良く回転可能に支持することができる。
各従動ギヤ126は、それらの中心部に、対応する走行駆動軸50との連動連結を可能にするスプライン嵌合部としてのスプライン穴部126Cを備えている。各走行駆動軸50は、それらにおける伝動ケース側の端部に、対応する従動ギヤ126との連動連結を可能にするスプライン嵌合部としてのスプライン軸部50Aを備えている。これにより、対応する従動ギヤ126と走行駆動軸50とを、走行駆動軸50の軸心方向での摺動による着脱が可能な状態で連動連結することができる。
各走行駆動軸50は、それらの外端部に、対応するクローラ7の駆動スプロケット129をスプライン嵌合した状態で抜け止め固定している。各駆動軸ケース51は、対応する走行駆動軸50を回転可能かつ走行駆動軸50の軸心方向に摺動不能に支持している。
各補助ケース部品53は、従動ギヤ126に連動連結する走行駆動軸50が通る開口53Aと、対応する駆動軸ケース51における伝動ケース側の端部に備えたフランジ部51Aが着脱可能にボルト連結される被連結部53Bとを備えている。
上記の構成から、各第2空間部58に備えた各伝動機構49の第2伝動部123などに対するメンテナンスを行う場合には、主ケース部品52に対する各補助ケース部品53のボルト連結を解除して、各補助ケース部品53を主ケース部品52の左右の側壁から主ケース部品52の横外方に離間させることにより、各第2伝動部123の駆動ギヤ125及び従動ギヤ126を主ケース部品52の各凹入部52Aに残した状態で、主ケース部品52から各補助ケース部品53とともに走行駆動軸50及び駆動軸ケース51を取り外すことができる。これにより、主ケース部品52を左右に分割する場合のような大きな手間を要することなく、比較的簡単に各第2伝動部123を露出させることができる。その結果、各第2伝動部123などに対するメンテナンス、特に、従動ギヤ126あるいは補助ケース部品側の第2軸支部(ベアリング)121や支持部(ベアリング)128の交換などを容易に行うことができる。
そして、各第2伝動部123を露出させた状態においても、各中継軸119及び各第2伝動部123の駆動ギヤ125や従動ギヤ126を、主ケース部品52の各凹入部52Aにおける適正位置に、主ケース部品側の各第1軸支部120又は各支持部127によって安定的に支持することができる。これにより、従動ギヤ126に対する走行駆動軸50のスプライン嵌合、並びに、補助ケース部品側の第2軸支部121又は支持部128による中継軸119及び従動ギヤ126の支持などを行いながら、各補助ケース部品53を主ケース部品52の左右の側壁にボルト連結する組み付け作業を容易に行うことができる。
又、伝動ケース43から各駆動軸ケース51を取り外す場合には、各補助ケース部品53に対する各駆動軸ケース51のボルト連結を解除して、各駆動軸ケース51を対応する補助ケース部品53の被連結部53Bから補助ケース部品53の横外方に離間させることにより、伝動ケース43から各駆動軸ケース51とともに走行駆動軸50を簡単に取り外すことができる。逆に、伝動ケース43に各駆動軸ケース51を取り付ける場合には、各走行駆動軸50を対応する従動ギヤ126にスプライン嵌合することにより、各補助ケース部品53に対する適正位置に駆動軸ケース51を安定的に位置させることができる。これにより、各補助ケース部品53に対する各駆動軸ケース51のボルト連結を簡単に行うことができ、この連結により、対応する走行駆動軸50と従動ギヤ126とをスプライン嵌合状態に維持することができる。
つまり、伝動ケース43に対する各走行駆動軸50及び各駆動軸ケース51の着脱を容易に行うことができる。その結果、伝動装置13を輸送する場合には、伝動ケース43から各走行駆動軸50及び各駆動軸ケース51を取り外すことにより、伝動装置13を、各走行駆動軸50及び各駆動軸ケース51の左右方向への張り出しを無くしたコンパクトな状態にすることができ、輸送の面において有利にすることができる。又、各走行駆動軸50及び各駆動軸ケース51を長さの異なるものに付け替えることにより、伝動装置13としては同じものを使用しながら、左右のクローラ7のトレッド幅を機種などに応じて容易に変更することができる。
更に、左右の伝動機構49を左右対称に構成していることにより、左右それぞれの伝動機構49に使用する各駆動ギヤ92,125、各従動ギヤ124,126、及び、中継軸119、などを共通部品にすることができる。これにより、部品管理の容易化、及び、各伝動機構49の組み付け工程などが同じになることによる組み付け性の向上、などを図ることができる。
その上、各サイドクラッチブレーキユニット48に対する伝動方向下手側に減速機構として機能する伝動機構49を備えることにより、各サイドクラッチブレーキユニット48にかかるトルクを軽減することができ、各サイドクラッチブレーキユニット48の操作を行い易くすることができる。又、入力軸44と変速機47との間に減速機構を備えない構成でありながら、左右の走行駆動軸50において大きいトルクを発生させることができる。
尚、図示は省略するが、各伝動機構49は、対応する中継軸119と一体回転する第2伝動部123の駆動ギヤ125を、中継軸119に着脱可能に外嵌装備するように構成してもよい。又、伝動ケース43に単一の中継軸119を左右向きに固定装備し、この中継軸119に、第1伝動部122の従動ギヤ124と第2伝動部123の駆動ギヤ125とを一体形成した筒軸を相対回転可能に外嵌装備するように構成してもよい。
図3〜6、図8及び図14に示すように、左右の補助ケース部品53、左右の走行駆動軸50、及び、左右の駆動軸ケース51は、それぞれ、左右に兼用可能な左右同一形状の共通部品に構成している。これにより、左右の補助ケース部品53、左右の走行駆動軸50、及び、左右の駆動軸ケース51を、それぞれ、左右固有の形状に個別に構成する場合に比較して、部品管理の容易化などを図りながら、左右の組み違えを防止することができる。
次に、伝動装置13の伝動ケース43に関する構成について説明する。
図3、図6、図8及び図9に示すように、伝動ケース43は、その底部における左右の第2伝動部123の間に位置する左右中央側部位に、その左右中央側部位を左右の第1伝動部122に近接させる上向きの凹部43Cを備えて、その底部を逆U字形に形成している。又、その凹部43Cの凹入端側が、伝動ケース43の底部における左右の走行駆動軸50の間に位置して、主ケース部品52の左右の側壁にわたるように形成している。これにより、泥の深い作業地での走行において、伝動ケース43に接触する泥などの抜けを円滑にすることができ、伝動ケース43に作用する走行抵抗を軽減することができる。又、左右の走行駆動軸50を支持する伝動ケース43の底部に対する補強を、走行駆動軸50の支持位置を考慮した適切な状態で効果的に行うことができる。
次に、伝動装置13の伝動に関する構成について説明する。
図8、図9及び図15に示すように、伝動装置13は、各中継軸119を走行駆動軸50に対する前上方の位置に配備している。又、サイドクラッチ軸46を各中継軸119に対する後上方の位置に配備している。これにより、図15において実線で示すように、使用頻度の高い前進走行時には、各中継軸119にかかるサイドクラッチ軸46からの駆動力F1と各走行駆動軸50からの駆動反力F2とが、互いの鉛直成分F1a,F2aが打ち消し合うことによって低下しながら、各中継軸119の従動ギヤ124とサイドクラッチ軸46の各駆動ギヤ92、及び、各中継軸119の駆動ギヤ125と各走行駆動軸50の従動ギヤ126、を介してサイドクラッチ軸46と各走行駆動軸50とに分散するようになる。逆に、図15において破線で示すように、使用頻度の低い後進走行時には、各中継軸119にかかる駆動力F1と駆動反力F2とが、互いの鉛直成分F1a,F2aが打ち消し合うことによって低下しながら、各中継軸119のみにかかるようになる。その結果、使用頻度の高い前進走行時に、駆動力F1と駆動反力F2とが各中継軸119のみにかかるように構成する場合に比較して、各中継軸119を支持する各軸支部(ベアリング)120,121にかかる負荷を軽減することができ、各軸支部120,121の耐久性を向上させることができる。
図7、図9及び図15に示すように、伝動装置13は、変速機47の従動軸45をサイドクラッチ軸46に対する前上方の位置に配備している。又、変速機47の駆動軸を兼ねる入力軸44を従動軸45に対する後上方の位置に配備している。これにより、図15において実線で示すように、使用頻度の高い前進走行時には、従動軸45にかかる入力軸44からの駆動力F3とサイドクラッチ軸46からの駆動反力F4とが、互いの鉛直成分F3a,F4aが打ち消し合うことによって低下しながら、従動軸45の各従動ギヤ61,63,65と入力軸44の各駆動ギヤ60,62,64、及び、従動軸45の出力ギヤ81とサイドクラッチ軸46の伝動ギヤ82、を介して入力軸44とサイドクラッチ軸46とに分散するようになる。逆に、図15において破線で示すように、使用頻度の低い後進走行時には、従動軸45にかかる駆動力F3と駆動反力F4とが、互いの鉛直成分F3a,F4aが打ち消し合うことによって低下しながら、従動軸45のみにかかるようになる。その結果、使用頻度の高い前進走行時に、駆動力F3と駆動反力F4とが従動軸45のみにかかるように構成する場合に比較して、従動軸45を支持する各軸支部(ベアリング)80にかかる負荷を軽減することができ、各軸支部80の耐久性を向上させることができる。
図9及び図15に示すように、伝動装置13は、サイドクラッチ軸46を入力軸44及び各走行駆動軸50よりも後方の位置に配備している。又、各中継軸119を従動軸45よりも前方の位置に配備している。これにより、伝動装置13の上下長さが長くなることを抑制しながら、サイドクラッチ軸46と各中継軸119との間の離間距離、及び、各中継軸119と各走行駆動軸50との間の離間距離を大きくすることができる。その結果、サイドクラッチ軸46と各中継軸119との間での各駆動ギヤ92と各従動ギヤ124との減速比、及び、各中継軸119と各走行駆動軸50との間での各駆動ギヤ125と各従動ギヤ126との減速比を大きくすることができ、左右の走行駆動軸50において大きいトルクを発生させることができる。
次に、伝動装置13に関係する伝動ケース43の周辺構造について説明する。
図1〜5及び図9に示すように、刈取搬送装置2は、前述したように、操縦レバー16の前後方向への揺動操作により、伝動装置13の前方を覆う作業位置と伝動装置13の前方を開放する非作業位置とにわたって昇降変位するように構成している。
伝動ケース43は、大径の従動ギヤ124を備える各中継軸119を、入力軸44、従動軸45、サイドクラッチ軸46、及び、各走行駆動軸50よりも前方の位置に配備することにより、その前壁における各中継軸119の配置対応箇所となる下部側を前方に膨出させている。これにより、その前壁の上部側が下部側よりも後方に偏倚した形状になっている。そして、その前壁の上部側に、伝動ケース内に貯留したオイルを濾過するオイルフィルタ130と、このオイルフィルタ130からのオイルを制御する前述したステアリング用のバルブユニット107とを、搭乗運転部側となる右側にバルブユニット107が位置するように左右に並べた状態で着脱可能に配備している。
ステアリング用のバルブユニット107は、そのバルブ操作軸131を、バルブユニット107の上部側においてバルブケース132の前壁から前方に突出する状態で装備している。そして、そのバルブ操作軸131の突出端部となる前端部に、バルブ操作軸131と一体で動く連係アーム133を、搭乗運転部側となる右側に延出させた状態で装備し、その延出端側を操縦レバー16にステアリング用の機械式連係機構108を介して連係している。
HST12は、前述したように、搭乗運転部側となる伝動ケース43における右側壁の上部に配備するとともに、その変速操作軸40を、変速ケース30の前壁から前方に突出する状態で装備している。そして、変速操作軸40の突出端部となる前端部に備えた連係アーム41を、主変速レバー17に主変速用の機械式連係機構42を介して連係している。
変速機47は、その変速操作軸73が伝動ケース43の前壁におけるオイルフィルタ130の上方箇所を貫通し、変速操作軸73の突出端部となる前端部が、ステアリング用のバルブユニット107よりも前方に位置するように構成している。そして、その変速操作軸73の前端部に、変速操作軸73と一体で動く連係アーム77を、搭乗運転部側となる右側に延出させた状態で装備し、その延出端側を副変速レバー18に副変速用の機械式連係機構78を介して連係している。
駐車ブレーキ112は、搭乗運転部側に位置する右側のサイドクラッチブレーキユニット48に備えたサイドブレーキ84を利用して構成している。そして、駐車ブレーキ用の操作機構113に備えた制動操作軸116を、搭乗運転部側に位置する伝動ケース43の右側壁から搭乗運転部側となる右外方に突出させ、その突出端部となる右端部に備えた連係アーム117を、ブレーキペダル19に駐車ブレーキ用の機械式連係機構114を介して連係している。
上記の構成から、オイルフィルタ130やステアリング用のバルブユニット107の交換、又は、ステアリング用の機械式連係機構108、主変速用の機械式連係機構42、及び、副変速用の機械式連係機構78の調整、などのメンテナンス作業を行う場合には、刈取搬送装置2を非作業位置まで上昇させることにより、オイルフィルタ130、ステアリング用のバルブユニット107、ステアリング用の機械式連係機構108、主変速用の機械式連係機構42、及び、副変速用の機械式連係機構78の前方を開放することができ、それらの前方から前述したメンテナンス作業を容易に行うことができる。
又、主変速用の機械式連係機構42、副変速用の機械式連係機構78、ステアリング用の機械式連係機構108、及び、駐車ブレーキ用の機械式連係機構114のそれぞれを、搭乗運転部8と伝動ケース43との間において、それらの連係長さを極力短くした状態で構成することができる。そして、各変速操作軸40,73及びバルブ操作軸131が前方に突出していることにより、これらの操作軸40,73,131に対する主変速用の機械式連係機構42、副変速用の機械式連係機構78、又は、ステアリング用の機械式連係機構108の接続を、それらの前方から容易に行うことができる。
しかも、変速機47の変速操作軸73がオイルフィルタ130よりも上方に位置することにより、副変速レバー18と変速機47の変速操作軸73との副変速用の機械式連係機構78を介した連係を、オイルフィルタ130により阻害されることなく簡単に行うことができる。
更に、オイルフィルタ130及びステアリング用のバルブユニット107に対する泥などの付着を、前方に膨出する伝動ケース43の下部側によって抑制することができる。又、オイルフィルタ130及びステアリング用のバルブユニット107を伝動ケース43の下部側に配備する場合に比較して、オイルフィルタ130やステアリング用のバルブユニット107の交換などを行う際の作業姿勢を無理の少ない楽な姿勢にすることができる。その結果、オイルフィルタ130及びステアリング用のバルブユニット107に対するメンテナンス性を向上させることができる。
図1〜5に示すように、伝動ケース43は、ステアリング用のバルブユニット107よりも後方の位置に各サイドクラッチブレーキユニット48を備えている。そして、その各サイドクラッチブレーキユニット48を覆う左右のケース部分となる左右のカバー部材102に、各サイドクラッチブレーキユニット48の油室104に連通する配管用の接続部102Bを備えている。各接続部102Bは、左右のカバー部材102におけるオイルフィルタ130よりも下方の位置に配備している。ステアリング用のバルブユニット107は、その左側の側壁に左側のサイドクラッチブレーキユニット48に対する配管用の接続部107Aを備え、その上側の側壁に右側のサイドクラッチブレーキユニット48に対する配管用の接続部107Bを備えている。そして、左側のサイドクラッチブレーキユニット48に対する伝動ケース側の接続部102Bとバルブユニット側の接続部107Aとにわたる左側の油圧管134を、バルブユニット107の前壁から前方に突出しない状態でオイルフィルタ130の下方を通るように配管している。又、右側のサイドクラッチブレーキユニット48に対する伝動ケース側の接続部102Bとバルブユニット側の接続部107Bとにわたる右側の油圧管135を、バルブユニット107の前壁から前方に突出しない状態でバルブユニット107の右側方を通るように配管している。
これにより、泥の深い作業地での作業走行などにおいて、サイドクラッチブレーキユニット用の各油圧管134,135を作業地の泥などからの抵抗を受け難くすることができる。その結果、それらの油圧管134,135が泥などに押されて変形するなどの不都合が生じる虞を抑制することができる。又、左側の油圧管134は、オイルフィルタ130の着脱に支障を来さない状態で配管することができ、右側の油圧管135は、ステアリング用の機械式連係機構108の後方において、ステアリング用の機械式連係機構108による操縦レバー16とバルブ操作軸131との連係に支障を来さない状態で配管することができる。つまり、オイルフィルタ130やステアリング用の機械式連係機構108に対するメンテナンス性を損なうことなく、サイドクラッチブレーキユニット用の各油圧管134,135を良好に配管することができる。
図2、図9及び図16に示すように、伝動ケース43は、その主ケース部品52の前壁における下部側の内面に、第2油圧ポンプ109の作動による伝動ケース43に貯留したオイルの吸い込みを可能にするオイル吸込口43Dを形成している。又、その主ケース部品52の前壁に、オイル吸込口43Dからオイルフィルタ130のオイル流入口130Aにわたる内部油路43Eを形成している。これにより、例えば、伝動ケース43に伝動ケース43に貯留したオイルの取り出しを可能にするオイル取出口を形成し、このオイル取出口からオイルフィルタ130のオイル流入口130Aにわたる油圧管を伝動ケース43の外部に配管する場合に比較して、部品点数の削減による配管構造の簡素化及び配管に要する手間の削減などを図ることができる。
オイル吸込口43D及び内部油路43Eは、伝動ケース43の右ケース部材55における左ケース部材54との合わせ面55Aに凹入形成した溝55Bを、左ケース部材54における右ケース部材55との合わせ面54Aにて塞ぐことにより、左ケース部材54と右ケース部材55との合わせ面55A,55Bに形成している。これにより、左ケース部材54と右ケース部材55との合わせ面55A,55Bに介装するガスケット136を、右ケース部材55の合わせ面55Aに形成する溝55Bの形状を考慮する必要のない、左ケース部材54の合わせ面54Aの全面に接合する単純な形状に形成することができる。つまり、例えば、オイル吸込口43D及び内部油路43Eを、左ケース部材54の合わせ面54Aと右ケース部材55の合わせ面55Aとの双方に凹入形成した溝によって左ケース部材54と右ケース部材55との合わせ面55A,55Bを跨いだ状態に形成する場合にガスケット136に備える必要が生じる、左ケース部材側の溝と右ケース部材側の溝とを連通させるための長穴、を不要にすることができる。その結果、左ケース部材54と右ケース部材55との合わせ面54A,55Aに対するガスケット136のシール性、及び、ガスケット136の強度を容易に確保することができる。
オイル吸込口43Dは、左右の伝動機構49の間における第1空間部56において回転数が最も低い左右の従動ギヤ126の間に形成している。つまり、左右の従動ギヤ12は、第1空間部56において回転数が最も低いことから、それらの駆動時の回転に伴って発生する気泡も少なくなっており、そして、それらの従動ギヤ12から最も離れた位置になる左右の従動ギヤ126の間にオイル吸込口43Dを形成することから、各従動ギヤ12の回転に伴って発生する気泡がオイルとともにオイル吸込口43Dから吸い込まれる不都合の発生を効果的に抑制することができる。
図3及び図9に示すように、伝動ケース43は、その下部側を前方に膨出させていることを利用して、その前壁におけるオイルフィルタ130の下方箇所に、オイルを受け止めて伝動ケース43の左側壁に案内するオイルガイド43Fを形成している。これにより、オイルフィルタ130を取り外す際に、オイルフィルタ130のオイル流入口130Aや伝動ケース43の内部油路43Eなどから漏れ出したオイルを伝動ケース43の左側壁に沿って流下させることができる。これにより、その漏れ出したオイルが伝動ケース43の前壁や左右の側壁などに広域にわたって流下する場合に比較して、オイルフィルタ130の交換などを行った後の清掃作業を容易にすることができる。
図2、図3、図5〜7及び図10に示すように、伝動ケース43は、油圧機器であるステアリング用のバルブユニット107から伝動ケース43の内部に戻すオイルを、従動軸45及び従動軸45と相対回転する各従動ギヤ61,63,65に供給する潤滑用の油路137を備えている。潤滑用の油路137は、ステアリング用のバルブユニット107から伝動ケース43にわたる油圧管138、及び、従動軸45に形成した内部油路45C、などによって形成している。これにより、例えば、伝動ケース43に対するオイルの補給を怠ることにより、伝動ケース43に貯留したオイルの表面高さが各従動ギヤ61,63,65の下端よりも低くなった場合であっても、ステアリング用のバルブユニット107からのオイルを各従動ギヤ61,63,65に供給することができ、従動軸45に対する各従動ギヤ61,63,65の焼き付きを防止することができる。
尚、昇降用のバルブユニット又はHSTなどの油圧機器からのオイルを、潤滑用の油路45Cなど介して従動軸45及び各従動ギヤ61,63,65に供給するように構成してもよい。
図4、図6、図7及び図9に示すように、伝動ケース43は、その後上部に備える補助空間部57を、作業装置用の補助伝動機構(図示せず)を内蔵することが可能な形状に形成している。そして、その入力用の第3開口43Gを備える右側壁とは反対側の左側壁における所定位置に、補助伝動機構からの補助動力の取り出しを可能にする第4開口43Hを形成し、かつ、この第4開口43Hを塞ぐ蓋部材139を着脱可能に装備している。これにより、この伝動装置13を、例えば、伝動装置13の入力軸44から分岐した動力を伝動ケース43の第4開口43Hから取り出して作業装置の一例である刈取搬送装置に伝達する構成を採用する自脱型コンバインなどに適用する場合には、補助空間部57に、刈取搬送装置に対する動力分配用の補助伝動機構を内蔵することにより、自脱型コンバインなどに適した伝動構造に簡単に仕様変更することができる。つまり、自脱型コンバインなどにも適用することができる汎用性の高い伝動装置13を得ることができる。そして、自脱型コンバインなどに適用した場合には、伝動ケース43の第4開口43Hから取り出した動力を作業装置に伝達する作業伝動系と、伝動装置13に対する入力系となるHST12などとの干渉を回避し易くなる。その上、前述したように、変速機47における入力軸44の左方への延出長さが従動軸45よりも短くなって伝動装置13の上部での左右幅が右寄りに狭くなることにより、伝動ケース43における左側壁の上部側に形成した第4開口43Hから取り出した動力を作業装置に伝達することから伝動装置13の左上部側に配備することが一般的になる作業伝動系の配置空間を、伝動装置13の左上部側において確保し易くなる。その結果、自脱型コンバインなどへの適用を促進させることができる。
図1及び図3〜5に示すように、HST12は、そのケース本体35の上部にオイルフィルタ140を着脱可能に装備している。そして、刈取搬送装置2を非作業位置まで上昇させた場合には、オイルフィルタ140の前方を開放することができ、これにより、その前方からオイルフィルタ140の交換などのオイルフィルタ140に対するメンテナンス作業を容易に行うことができる。